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霊界物語
如意宝珠(第13~24巻)
第19巻(午の巻)
序
凡例
総説三十三魂
第1篇 神慮洪遠
第1章 高熊山
第2章 鶍の嘴
第3章 千騎一騎
第4章 善か悪か
第2篇 意外の意外
第5章 零敗の苦
第6章 和合と謝罪
第7章 牛飲馬食
第8章 大悟徹底
第3篇 至誠通神
第9章 身魂の浄化
第10章 馬鹿正直
第11章 変態動物
第12章 言照姫
第4篇 地異天変
第13章 混線
第14章 声の在所
第15章 山神の滝
第16章 玉照彦
第17章 言霊車
霊の礎(五)
余白歌
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霊界物語
>
如意宝珠(第13~24巻)
>
第19巻(午の巻)
> 第1篇 神慮洪遠 > 第4章 善か悪か
<<< 千騎一騎
(B)
(N)
零敗の苦 >>>
第四章
善
(
ぜん
)
か
悪
(
あく
)
か〔六四九〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第19巻 如意宝珠 午の巻
篇:
第1篇 神慮洪遠
よみ(新仮名遣い):
しんりょこうえん
章:
第4章 善か悪か
よみ(新仮名遣い):
ぜんかあくか
通し章番号:
649
口述日:
1922(大正11)年05月06日(旧04月10日)
口述場所:
筆録者:
藤津久子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年2月28日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
悦子姫は、夏彦、常彦、加米彦、滝公、板公を連れて、使命を明かさずに世継王山麓の館を後にして神業に出立した。音彦と五十子姫も、別の使命を受けて何処ともなく出立して行った。
後には、紫姫、若彦(青彦)、お節、お玉、馬公、鹿公の面々が玉照姫を保育していた。いつしか秋の半ばになっていた。
ある真夜中、門の戸を叩く者があった。鹿公と馬公はその音に驚いて目を覚ました。激しく叩く音に、鹿公が誰何すると、男は江州竹生島から、紫姫を尋ねてやって来た者だ、と答えた。
鹿公は正体が分からない限り、夜に門は開けられない、と答えると、男は亀彦だと名乗った。そして、神素盞嗚大神の使いとしてやってきたのだ、と告げた。
鹿公、馬公は、若彦と紫姫に注進した。一同は急いで寝間を片付けると、門を開けた。すると亀彦は金色の冠、夜光の玉を身につけ、薄絹の白衣を着て威儀厳然としていた。亀彦は門内に入ると玉照姫の前に拍手再拝、神言を奏上して正座に着いた。
そして、神素盞嗚大神は若彦、紫姫が黒姫をたばかって玉照姫を迎え入れたことに対して非常なご不興を蒙っていることを告げると、大神の命として玉照姫を黒姫に渡すこと、若彦と紫姫は宣伝使の職を去ることを言い渡した。
紫姫は非を認め、謹んで大神の責めを受けたが、若彦は、玉照姫を迎え入れた手柄に対して責めを受けるのは納得がいかない、亀彦は偽物だろう、と霊縛を加えようとした。すると亀彦の背後から女神が現れて、その光が若彦を射ると、若彦はその場に倒れてしまった。
亀彦は、「泣いて馬謖を斬る」が大神と英子姫の心であると告げ、直日に見直し聞きなおして奇魂の覚りによってこの大望を遂行すれば、再び神業に参加することを得るであろう、と言い残すと、女神とともに忽然と姿を消した。
若彦はようやく自分の非を悟り、拍手を打って大神に感謝した。玉照姫はにこにこを笑い出した。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
滝(滝公)、板(板公)
データ凡例:
データ最終更新日:
2021-03-31 17:21:32
OBC :
rm1904
愛善世界社版:
46頁
八幡書店版:
第4輯 46頁
修補版:
校定版:
47頁
普及版:
20頁
初版:
ページ備考:
001
瑞穂
(
みづほ
)
の
国
(
くに
)
の
真秀良場
(
まほらば
)
や
002
青垣山
(
あをがきやま
)
を
繞
(
めぐ
)
らせる
003
下津
(
したつ
)
岩根
(
いはね
)
と
聞
(
きこ
)
えたる
004
要害
(
えうがい
)
堅固
(
けんご
)
の
神策地
(
しんさくち
)
005
小三災
(
せうさんさい
)
の
饑病戦
(
きびやうせん
)
006
大三災
(
だいさんさい
)
の
風水火
(
ふうすゐくわ
)
007
夢
(
ゆめ
)
にも
知
(
し
)
らぬ
世継王
(
よつわう
)
の
008
山
(
やま
)
の
麓
(
ふもと
)
に
現
(
あ
)
れませる
009
玉照姫
(
たまてるひめ
)
の
御
(
おん
)
稜威
(
みいづ
)
010
光
(
ひかり
)
は
四方
(
よも
)
に
照妙
(
てるたへ
)
の
011
衣
(
きぬ
)
を
纏
(
まと
)
ひて
経緯
(
たてよこ
)
の
012
綾
(
あや
)
と
錦
(
にしき
)
の
機
(
はた
)
を
織
(
お
)
る
013
棚機姫
(
たなばたひめ
)
と
現
(
あら
)
はれし
014
紫姫
(
むらさきひめ
)
に
侍
(
かしづ
)
かれ
015
月日
(
つきひ
)
を
重
(
かさ
)
ね
年
(
とし
)
を
越
(
こ
)
え
016
其
(
その
)
名
(
な
)
は
四方
(
よも
)
に
轟
(
とどろ
)
きぬ。
017
悦子姫
(
よしこひめ
)
は、
018
夏彦
(
なつひこ
)
、
019
常彦
(
つねひこ
)
、
020
加米彦
(
かめひこ
)
、
021
滝
(
たき
)
、
022
板
(
いた
)
を
伴
(
ともな
)
ひ、
023
我
(
わが
)
使命
(
しめい
)
を
明
(
あ
)
かさず、
024
世継王
(
よつわう
)
山麓
(
さんろく
)
の
住家
(
すみか
)
を
後
(
あと
)
にして、
025
何処
(
いづこ
)
ともなく
神業
(
しんげふ
)
の
為
(
た
)
めに
出発
(
しゆつぱつ
)
したり。
026
音彦
(
おとひこ
)
、
027
五十子
(
いそこ
)
姫
(
ひめ
)
は
別
(
べつ
)
の
使命
(
しめい
)
を
受
(
う
)
け、
028
是
(
これ
)
亦
(
また
)
何処
(
いづく
)
ともなく、
029
行先
(
ゆくさき
)
を
明
(
あ
)
かさず、
030
惟神
(
かむながら
)
的
(
てき
)
に、
031
世継王
(
よつわう
)
の
住家
(
すみか
)
を
後
(
あと
)
にして
出発
(
しゆつぱつ
)
せり。
032
後
(
あと
)
には、
033
紫姫
(
むらさきひめ
)
、
034
若彦
(
わかひこ
)
、
035
お
節
(
せつ
)
、
036
お
玉
(
たま
)
、
037
馬公
(
うまこう
)
、
038
鹿公
(
しかこう
)
の
面々
(
めんめん
)
朝
(
あさ
)
な
夕
(
ゆふ
)
なに、
039
玉照姫
(
たまてるひめ
)
の
保育
(
ほいく
)
に
全力
(
ぜんりよく
)
を
尽
(
つく
)
し
居
(
ゐ
)
たりける。
040
夏
(
なつ
)
も
何時
(
いつ
)
しか
暮
(
く
)
れ
果
(
は
)
て、
041
天
(
てん
)
高
(
たか
)
く、
042
風
(
かぜ
)
清
(
きよ
)
く、
043
野
(
の
)
には
稲穂
(
いなほ
)
が
黄金
(
こがね
)
の
波
(
なみ
)
を
打
(
う
)
ち、
044
佐保姫
(
さほひめ
)
の
錦
(
にしき
)
織
(
おり
)
なす
紅葉
(
もみぢば
)
の、
045
愈
(
いよいよ
)
秋
(
あき
)
の
半
(
なかば
)
となりぬ。
046
時
(
とき
)
しもあれ、
047
真夜中
(
まよなか
)
に
戸
(
と
)
を
叩
(
たた
)
く
一人
(
ひとり
)
の
男
(
をとこ
)
あり。
048
馬公
(
うまこう
)
、
049
鹿公
(
しかこう
)
は
此
(
この
)
音
(
おと
)
に
驚
(
おどろ
)
き
目
(
め
)
を
醒
(
さ
)
まし、
050
馬公
(
うまこう
)
『オイ
鹿公
(
しかこう
)
、
051
何
(
なん
)
だか
表
(
おもて
)
の
戸
(
と
)
を
叩
(
たた
)
く
音
(
おと
)
がするではないか、
052
お
前
(
まへ
)
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
だが
一
(
ひと
)
つ
調
(
しら
)
べて
見
(
み
)
て
呉
(
く
)
れないか』
053
鹿公
『
何
(
なに
)
、
054
あれは
秋
(
あき
)
の
夜
(
よ
)
の
紅葉
(
もみぢ
)
を
散
(
ち
)
らす
凩
(
こがらし
)
の
戸
(
と
)
を
叩
(
たた
)
く
音
(
おと
)
だ。
055
余程
(
よほど
)
お
前
(
まへ
)
も
神経
(
しんけい
)
過敏
(
くわびん
)
になつたものだな、
056
そりや
無理
(
むり
)
もない、
057
五六七
(
みろく
)
神政
(
しんせい
)
の
生御霊
(
いくみたま
)
玉照姫
(
たまてるひめ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
保護
(
ほご
)
の
任
(
にん
)
に
当
(
あた
)
つて
居
(
ゐ
)
るのだから、
058
雨
(
あめ
)
の
音
(
おと
)
、
059
風
(
かぜ
)
の
響
(
ひびき
)
にも
注意
(
ちうい
)
を
払
(
はら
)
ふのは
当然
(
たうぜん
)
だ。
060
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
余
(
あま
)
り
思
(
おも
)
ひ
過
(
す
)
ぎると
神経病
(
しんけいびやう
)
を
起
(
おこ
)
す
様
(
やう
)
になつては
詰
(
つま
)
らないから、
061
何事
(
なにごと
)
も
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
にお
任
(
まか
)
せして、
062
吾々
(
われわれ
)
は
能
(
あた
)
ふ
限
(
かぎ
)
りのベストを
尽
(
つく
)
し、
063
忠実
(
ちうじつ
)
に
務
(
つと
)
めさへすれば
宜
(
よ
)
いのだよ』
064
馬公
『そりやお
前
(
まへ
)
の
云
(
い
)
ふ
通
(
とほ
)
りだが、
065
併
(
しか
)
し
今
(
いま
)
の
音
(
おと
)
は
決
(
けつ
)
して
雨
(
あめ
)
や
風
(
かぜ
)
の
音
(
おと
)
ではない、
066
何
(
なに
)
か
訪
(
おとづ
)
るる
人
(
ひと
)
が
門
(
かど
)
にありさうだよ』
067
鹿公
(
しかこう
)
『
峰
(
みね
)
の
嵐
(
あらし
)
か
松風
(
まつかぜ
)
か、
068
一
(
ひと
)
つ
違
(
ちが
)
へば
狐狸
(
こり
)
の
悪戯
(
いたづら
)
か、
069
尻尾
(
しつぽ
)
を
以
(
もつ
)
て
雨戸
(
あまど
)
を
叩
(
たた
)
き、
070
吾々
(
われわれ
)
を
脅威
(
おどか
)
さうとするのだ。
071
此
(
この
)
間
(
あひだ
)
から
幾度
(
いくたび
)
となく、
072
ウラナイ
教
(
けう
)
の
間者
(
まはしもの
)
がやつて
来
(
き
)
て、
073
玉照姫
(
たまてるひめ
)
様
(
さま
)
を
奪
(
うば
)
ひ
返
(
かへ
)
さうとかかつて
居
(
ゐ
)
るらしい、
074
迂濶
(
うつか
)
り
夜中
(
やちう
)
に
戸
(
と
)
でも
開
(
あ
)
け
様
(
やう
)
ものなら
大変
(
たいへん
)
だ、
075
英子姫
(
ひでこひめ
)
様
(
さま
)
、
076
悦子姫
(
よしこひめ
)
様
(
さま
)
に
申訳
(
まをしわけ
)
がない、
077
先
(
ま
)
づ
此処
(
ここ
)
は、
078
見
(
み
)
ざる、
079
聞
(
き
)
かざる、
080
言
(
い
)
はざるの
三猿
(
さんゑん
)
主義
(
しゆぎ
)
を
取
(
と
)
る
方
(
はう
)
が
安全
(
あんぜん
)
第一
(
だいいち
)
だ。
081
俺
(
おれ
)
の
鹿
(
しか
)
とお
前
(
まへ
)
の
馬
(
うま
)
とでシカりとウマウマ
守
(
まも
)
るのだナア』
082
戸
(
と
)
を
叩
(
たた
)
く
音
(
おと
)
益々
(
ますます
)
烈
(
はげ
)
しくなり
来
(
きた
)
る。
083
馬公
『それでも
益々
(
ますます
)
烈
(
はげ
)
しく
叩
(
たた
)
くぢやないか、
084
どうだ
一
(
ひと
)
つ
紫姫
(
むらさきひめ
)
様
(
さま
)
に
伺
(
うかが
)
つて
見
(
み
)
たら』
085
鹿公
『それもさうだな、
086
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
折角
(
せつかく
)
よくお
寝
(
やす
)
みになつて
居
(
ゐ
)
られるのだから、
087
夜中
(
やちう
)
にお
目
(
め
)
を
醒
(
さ
)
まさせるのもお
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
だ』
088
表
(
おもて
)
を
叩
(
たた
)
く
音
(
おと
)
益々
(
ますます
)
烈
(
はげ
)
しい。
089
鹿公
(
しかこう
)
はムツとした
様
(
やう
)
な
声
(
こゑ
)
で、
090
鹿公
『
誰
(
たれ
)
だい、
091
人
(
ひと
)
の
寝
(
ね
)
しづまつた
家
(
うち
)
を
無闇
(
むやみ
)
に
叩
(
たた
)
くものは』
092
外から声(亀彦)
『
吾
(
わ
)
れは
英子姫
(
ひでこひめ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
命令
(
めいれい
)
によつて、
093
江州
(
ごうしう
)
竹生島
(
ちくぶしま
)
よりはるばる
単騎
(
たんき
)
旅行
(
りよかう
)
でやつて
来
(
き
)
た
者
(
もの
)
だ。
094
紫姫
(
むらさきひめ
)
は
在宅
(
ざいたく
)
か、
095
若彦
(
わかひこ
)
は
居
(
を
)
るか』
096
鹿公
(
しかこう
)
『
紫姫
(
むらさきひめ
)
様
(
さま
)
や
若彦
(
わかひこ
)
様
(
さま
)
の
名
(
な
)
を
知
(
し
)
つて
居
(
ゐ
)
るからには、
097
何
(
なん
)
でも
何
(
なん
)
だらう、
098
さう
考
(
かんが
)
へると
容易
(
ようい
)
に
開
(
あ
)
ける
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ない。
099
吾々
(
われわれ
)
は
昼
(
ひる
)
は
寝
(
い
)
ね
夜
(
よる
)
は
不寝番
(
ふしんばん
)
をつとめて
居
(
ゐ
)
るのだ。
100
夜
(
よる
)
の
間
(
あひだ
)
は
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
の
権限
(
けんげん
)
があるのだから
誰
(
たれ
)
が
開
(
あ
)
けいと
云
(
い
)
つても、
101
此
(
この
)
鹿公
(
しかこう
)
の
本
(
ほん
)
守護神
(
しゆごじん
)
が
開
(
あ
)
けと
命令
(
めいれい
)
を
下
(
くだ
)
す
迄
(
まで
)
は
開
(
あ
)
けられぬのだ。
102
マアマア
暫
(
しばら
)
く
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
だが
正体
(
しやうたい
)
が
分
(
わか
)
らぬから、
103
自然
(
しぜん
)
に
開
(
あ
)
ける
迄
(
まで
)
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
たが
宜
(
よ
)
からう。
104
日光
(
につくわう
)
に
照
(
てら
)
されて、
105
モウモウした
毛
(
け
)
を
体
(
からだ
)
一面
(
いちめん
)
に
現
(
あら
)
はすのだらう。
106
吾々
(
われわれ
)
は
夜分
(
やぶん
)
は
目
(
め
)
の
見
(
み
)
えぬ
人間
(
にんげん
)
だから、
107
平
(
ひら
)
にお
断
(
ことわ
)
り
申
(
まを
)
す』
108
外
(
そと
)
より、
109
(亀彦)
『さう
云
(
い
)
ふ
声
(
こゑ
)
は
鹿公
(
しかこう
)
ぢやないか、
110
今日
(
こんにち
)
参
(
まゐ
)
つたのは
余
(
よ
)
の
儀
(
ぎ
)
ではない。
111
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのをの
)
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
の
御心
(
みこころ
)
により、
112
英子姫
(
ひでこひめ
)
様
(
さま
)
の
大命
(
たいめい
)
を
奉
(
ほう
)
じて
御
(
お
)
直使
(
ぢきし
)
として
出張
(
しゆつちやう
)
致
(
いた
)
した、
113
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
亀彦
(
かめひこ
)
であるぞよ』
114
鹿公
『
何
(
なに
)
、
115
亀彦
(
かめひこ
)
さまか、
116
ソンナラ
開
(
あ
)
けぬ
事
(
こと
)
は
無
(
な
)
いが
若
(
も
)
しや
作
(
つく
)
り
声
(
ごゑ
)
ではあるまいかなア』
117
亀彦
『
何
(
なに
)
、
118
作
(
つく
)
り
声
(
ごゑ
)
する
必要
(
ひつえう
)
があるか、
119
紫姫
(
むらさきひめ
)
以下
(
いか
)
一同
(
いちどう
)
に
申
(
まを
)
し
渡
(
わた
)
す
仔細
(
しさい
)
がある。
120
一時
(
いつとき
)
も
早
(
はや
)
く
開
(
あ
)
けたが
宜
(
よ
)
からうぞ』
121
鹿公
『
何
(
なん
)
だか
亀彦
(
かめひこ
)
さま、
122
今日
(
けふ
)
に
限
(
かぎ
)
つて
言葉
(
ことば
)
つき
迄
(
まで
)
厳粛
(
げんしゆく
)
に
構
(
かま
)
へて
御座
(
ござ
)
る、
123
何
(
なに
)
かこれに
就
(
つい
)
ては
善
(
ぜん
)
か
悪
(
あく
)
か、
124
吉
(
きち
)
か
凶
(
きよう
)
か、
125
普通
(
ふつう
)
のお
使
(
つかい
)
ではあるまい、
126
なア
馬公
(
うまこう
)
、
127
どうしたら
宜
(
よ
)
からうなア』
128
馬公
『
荘重
(
さうちよう
)
な
語気
(
ごき
)
だな、
129
今日
(
けふ
)
は
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
の
代理権
(
だいりけん
)
を
以
(
もつ
)
て
来
(
き
)
て
居
(
を
)
るのだと
見
(
み
)
えて、
130
いつもとは
言霊
(
ことたま
)
の
響
(
ひび
)
きが
何処
(
どこ
)
とは
無
(
な
)
しに
森厳
(
しんげん
)
だぞ』
131
鹿公
『
何
(
なに
)
、
132
アンナ
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
つて
洒落
(
しやれ
)
てるのだよ。
133
大変
(
たいへん
)
な
用向
(
ようむ
)
きがある
様
(
やう
)
な
語調
(
ごてう
)
で
吾々
(
われわれ
)
を
威喝
(
ゐかつ
)
しようと
思
(
おも
)
つて
居
(
ゐ
)
るのだ。
134
何
(
なに
)
、
135
心配
(
しんぱい
)
する
事
(
こと
)
はないさ、
136
大山
(
たいざん
)
鳴動
(
めいどう
)
して
鼠
(
ねずみ
)
一匹
(
いつぴき
)
位
(
くらゐ
)
なものだ。
137
アハヽヽヽ』
138
亀彦
(
かめひこ
)
『
早
(
はや
)
く
開
(
あ
)
けぬか、
139
何
(
なに
)
をぐづぐづ
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
るぞ』
140
鹿公
(
しかこう
)
『ヨオ
高圧
(
かうあつ
)
的
(
てき
)
に
大袈裟
(
おほげさ
)
に
出
(
で
)
やがつたな、
141
これでは
吾々
(
われわれ
)
両人
(
りやうにん
)
にては
一寸
(
ちよつと
)
解決
(
かいけつ
)
がつき
難
(
にく
)
い、
142
若彦
(
わかひこ
)
の
大将
(
たいしやう
)
に
一寸
(
ちよつと
)
相談
(
さうだん
)
して
見
(
み
)
ようか』
143
馬公
(
うまこう
)
『それが
宜
(
よ
)
からう』
144
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
若彦
(
わかひこ
)
の
居間
(
ゐま
)
に
立
(
た
)
ち
入
(
い
)
り
肩
(
かた
)
を
揺
(
ゆす
)
つて、
145
馬公
『モシモシ
若彦
(
わかひこ
)
さまか、
146
青彦
(
あをひこ
)
さまか、
147
どちらを
云
(
い
)
つて
宜
(
よ
)
いのか
知
(
し
)
らぬが
一寸
(
ちよつと
)
起
(
お
)
きて
下
(
くだ
)
さい。
148
門口
(
かどぐち
)
に
大変
(
たいへん
)
な
者
(
もの
)
が
現
(
あら
)
はれました。
149
サアサア
早
(
はや
)
く
起
(
お
)
きたり
起
(
お
)
きたり』
150
若彦
『
誰
(
たれ
)
かと
思
(
おも
)
へば
馬公
(
うまこう
)
ぢやないか。
151
夜
(
よる
)
の
夜中
(
よなか
)
に
何
(
なに
)
を
喧
(
やかま
)
しう
云
(
い
)
ふのだい』
152
馬公
『イエイエ
急
(
きふ
)
な
事件
(
じけん
)
が
突発
(
とつぱつ
)
しました。
153
素盞嗚
(
すさのをの
)
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
の
御心
(
みこころ
)
により
英子姫
(
ひでこひめ
)
様
(
さま
)
より
御
(
お
)
直使
(
ぢきし
)
として、
154
亀彦
(
かめひこ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
が
見
(
み
)
えました』
155
若彦
(
わかひこ
)
『
何
(
なに
)
、
156
亀彦
(
かめひこ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
が
見
(
み
)
えたと、
157
何
(
なん
)
と
遅
(
おそ
)
かつたな、
158
もう
英子姫
(
ひでこひめ
)
様
(
さま
)
よりお
褒
(
ほ
)
めの
言葉
(
ことば
)
が
下
(
さが
)
るか
下
(
さが
)
るかと
指折
(
ゆびを
)
り
数
(
かぞ
)
へて、
159
紫姫
(
むらさきひめ
)
を
始
(
はじ
)
め
吾々
(
われわれ
)
一同
(
いちどう
)
は
首
(
くび
)
を
伸
(
の
)
ばして
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
たのだ。
160
馬公
(
うまこう
)
喜
(
よろこ
)
べ
屹度
(
きつと
)
御
(
ご
)
褒美
(
ほうび
)
を
頂戴
(
ちやうだい
)
するのだらう』
161
馬公
『それは
有難
(
ありがた
)
い、
162
ソンナラ
開
(
あ
)
けませうか』
163
若彦
『
一寸
(
ちよつと
)
待
(
ま
)
つて
呉
(
く
)
れ、
164
寝間
(
ねま
)
を
片付
(
かたづ
)
け、
165
其処
(
そこ
)
いらを
掃除
(
さうぢ
)
してそれから
御
(
お
)
這入
(
はい
)
りを
願
(
ねが
)
はないと、
166
こう
散
(
ちら
)
けては
御
(
お
)
直使
(
ぢきし
)
に
対
(
たい
)
して
御
(
ご
)
無礼
(
ぶれい
)
だ。
167
モシモシ
紫姫
(
むらさきひめ
)
さま、
168
お
玉
(
たま
)
さま、
169
早
(
はや
)
く
起
(
お
)
きて
下
(
くだ
)
さい、
170
英子姫
(
ひでこひめ
)
様
(
さま
)
のお
使
(
つかい
)
として
亀彦
(
かめひこ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
が
只今
(
ただいま
)
見
(
み
)
えました』
171
紫姫
(
むらさきひめ
)
『ア、
172
さうですか、
173
そりや
大変
(
たいへん
)
です、
174
困
(
こま
)
つた
事
(
こと
)
になりましたねエ』
175
若彦
『あれだけの
吾々
(
われわれ
)
は
苦心
(
くしん
)
惨憺
(
さんたん
)
を
重
(
かさ
)
ね
玉照姫
(
たまてるひめ
)
様
(
さま
)
を
三五教
(
あななひけう
)
へお
迎
(
むか
)
へ
申
(
まを
)
したのだから、
176
褒
(
ほ
)
めて
貰
(
もら
)
ふ
事
(
こと
)
はあつてもお
咎
(
とが
)
めを
蒙
(
かうむ
)
る
様
(
やう
)
な
道理
(
だうり
)
がない。
177
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
なさいますな、
178
何程
(
なにほど
)
立派
(
りつぱ
)
な
神人
(
しんじん
)
ぢやと
云
(
い
)
つても、
179
女
(
をんな
)
は
矢張
(
やつぱ
)
り
女
(
をんな
)
だナア、
180
そンな
取越
(
とりこし
)
苦労
(
くらう
)
はするものぢやありませぬよ』
181
紫姫
『それでも
何
(
なん
)
だか
気掛
(
きがか
)
りでなりませぬワ。
182
何
(
なに
)
は
兎
(
と
)
もあれ、
183
早
(
はや
)
く
室内
(
しつない
)
を
片
(
かた
)
づけて
這入
(
はい
)
つて
貰
(
もら
)
ひませう』
184
と
一同
(
いちどう
)
は
夜着
(
よぎ
)
を
片付
(
かたづ
)
け、
185
綺麗
(
きれい
)
に
掃除
(
さうぢ
)
をなし
終
(
をは
)
り、
186
若彦
(
わかひこ
)
『サア
準備
(
じゆんび
)
は
出来
(
でき
)
た、
187
馬公
(
うまこう
)
、
188
鹿公
(
しかこう
)
、
189
表
(
おもて
)
を
開
(
あ
)
けて
亀彦
(
かめひこ
)
さまを
御
(
ご
)
案内
(
あんない
)
申
(
まを
)
したがよからう』
190
馬
(
うま
)
、
191
鹿
(
しか
)
の
両人
(
りやうにん
)
は
畏
(
かしこ
)
まりましたと
表戸
(
おもてど
)
をサラリと
開
(
あ
)
け、
192
驚
(
おどろ
)
いたのは
両人
(
りやうにん
)
、
193
亀彦
(
かめひこ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
は
威儀
(
ゐぎ
)
儼然
(
げんぜん
)
として
金色
(
こんじき
)
の
冠
(
かむり
)
を
頂
(
いただ
)
き、
194
夜光
(
やくわう
)
の
宝玉
(
ほうぎよく
)
四辺
(
あたり
)
を
照
(
て
)
らし、
195
薄
(
うす
)
き
絹
(
きぬ
)
の
袖
(
そで
)
長
(
なが
)
き
白衣
(
びやくい
)
を
着
(
ちやく
)
し、
196
入口
(
いりぐち
)
狭
(
せま
)
しと
悠々
(
いういう
)
と
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
り、
197
二人
(
ふたり
)
に
一揖
(
いちいふ
)
し、
198
つかつかと
奥
(
おく
)
の
間
(
ま
)
に
進
(
すす
)
み、
199
玉照姫
(
たまてるひめ
)
の
御前
(
みまへ
)
に
端坐
(
たんざ
)
し、
200
拍手
(
はくしゆ
)
再拝
(
さいはい
)
、
201
神言
(
かみごと
)
を
奏
(
そう
)
し
終
(
をは
)
り
正座
(
しやうざ
)
に
着
(
つ
)
きける。
202
紫姫
(
むらさきひめ
)
は
手
(
て
)
を
突
(
つ
)
ひて、
203
紫姫
『これはこれは
亀彦
(
かめひこ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
、
204
否
(
いな
)
、
205
英子姫
(
ひでこひめ
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
直使
(
ぢきし
)
様
(
さま
)
、
206
夜陰
(
やいん
)
といひ
遠方
(
ゑんぱう
)
の
処
(
ところ
)
、
207
ようこそ
御
(
ご
)
入来
(
じゆらい
)
下
(
くだ
)
さいました。
208
御用
(
ごよう
)
の
趣
(
おもむき
)
仰
(
あふ
)
せ
聞
(
き
)
けられ
下
(
くだ
)
さいませ』
209
亀彦
(
かめひこ
)
は
威儀
(
ゐぎ
)
を
正
(
ただ
)
し、
210
亀彦
『
今日
(
けふ
)
只今
(
ただいま
)
此
(
この
)
館
(
やかた
)
に
参
(
まゐ
)
りしは
余
(
よ
)
の
儀
(
ぎ
)
では
厶
(
ござ
)
らぬ。
211
此
(
この
)
度
(
たび
)
其
(
その
)
方
(
はう
)
紫姫
(
むらさきひめ
)
を
始
(
はじ
)
め
若彦
(
わかひこ
)
の
行為
(
かうゐ
)
に
就
(
つ
)
いて
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのをの
)
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
、
212
以
(
もつ
)
ての
外
(
ほか
)
の
御
(
ご
)
不興
(
ふきよう
)
、
213
英子姫
(
ひでこひめ
)
様
(
さま
)
に
御
(
ご
)
神示
(
しんじ
)
あらせられたれば、
214
亀彦
(
かめひこ
)
ここに
英子姫
(
ひでこひめ
)
の
命
(
みこと
)
の
直使
(
ぢきし
)
としてわざわざ
参
(
まゐ
)
りたり』
215
紫姫
(
むらさきひめ
)
、
216
若彦
(
わかひこ
)
はハツと
両手
(
りやうて
)
をつき、
217
紫姫、若彦
『これはこれは
御
(
お
)
直使
(
ぢきし
)
様
(
さま
)
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
に
存
(
ぞん
)
じます。
218
御用
(
ごよう
)
の
趣
(
おもむき
)
、
219
速
(
すみやか
)
にお
聞
(
き
)
かせ
下
(
くだ
)
さいませ』
220
亀彦
『
其
(
その
)
方
(
はう
)
事
(
こと
)
は
神界
(
しんかい
)
経綸
(
けいりん
)
の
玉照姫
(
たまてるひめ
)
を
天地
(
てんち
)
の
律法
(
りつぱう
)
を
忘却
(
ばうきやく
)
し、
221
権謀
(
けんぼう
)
術数
(
じゆつすう
)
の
秘策
(
ひさく
)
を
用
(
もち
)
ゐ、
222
反間
(
はんかん
)
苦肉
(
くにく
)
の
策
(
さく
)
を
以
(
もつ
)
て
目的
(
もくてき
)
を
達
(
たつ
)
したる
事
(
こと
)
神意
(
しんい
)
に
叶
(
かな
)
はず、
223
彼
(
か
)
れ
玉照姫
(
たまてるひめ
)
の
神
(
かみ
)
は、
224
一旦
(
いつたん
)
、
225
ウラナイ
教
(
けう
)
の
黒姫
(
くろひめ
)
に
与
(
あた
)
ふべきものなり。
226
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
玉照姫
(
たまてるひめ
)
様
(
さま
)
及
(
およ
)
びお
玉
(
たま
)
を
黒姫
(
くろひめ
)
の
手許
(
てもと
)
に
送
(
おく
)
り、
227
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
は
此
(
この
)
責任
(
せきにん
)
を
負
(
お
)
ひて
宣伝使
(
せんでんし
)
の
職
(
しよく
)
を
去
(
さ
)
るべし、
228
との
厳命
(
げんめい
)
で
御座
(
ござ
)
る』
229
と
厳
(
おごそ
)
かに
云
(
い
)
ひ
渡
(
わた
)
したり。
230
紫姫
(
むらさきひめ
)
は
顔
(
かほ
)
を
赤
(
あか
)
らめ、
231
紫姫
『
実
(
じつ
)
に
理義
(
りぎ
)
明白
(
めいはく
)
なる
御
(
お
)
直使
(
ぢきし
)
のお
言葉
(
ことば
)
、
232
妾
(
わらは
)
不徳
(
ふとく
)
の
致
(
いた
)
す
処
(
ところ
)
、
233
今
(
いま
)
となつては
最早
(
もはや
)
弁解
(
べんかい
)
の
辞
(
じ
)
も
御座
(
ござ
)
いませぬ。
234
謹
(
つつし
)
みてお
受
(
う
)
け
致
(
いた
)
します』
235
若彦
『モシモシ
紫姫
(
むらさきひめ
)
さま、
236
此
(
この
)
若彦
(
わかひこ
)
を
差
(
さ
)
し
置
(
お
)
き、
237
さうづけづけと
もの
を
仰有
(
おつしや
)
つては
後
(
あと
)
の
結
(
むす
)
びがつきませぬ。
238
仮令
(
たとへ
)
権謀
(
けんぼう
)
術数
(
じゆつすう
)
の
策
(
さく
)
にもしろ
五六七
(
みろく
)
神政
(
しんせい
)
の
貴
(
うづ
)
の
御
(
おん
)
宝
(
たから
)
、
239
玉照姫
(
たまてるひめ
)
の
生御霊
(
いくみたま
)
を
三五教
(
あななひけう
)
に
迎
(
むか
)
へ
奉
(
たてまつ
)
りたる
抜群
(
ばつぐん
)
の
功名
(
こうみやう
)
手柄
(
てがら
)
、
240
御
(
ご
)
賞詞
(
しやうし
)
こそ
頂
(
いただ
)
くべきに、
241
却
(
かへ
)
つて
吾々
(
われわれ
)
の
職
(
しよく
)
を
免
(
めん
)
じ、
242
剰
(
あま
)
つさへ
玉照姫
(
たまてるひめ
)
様
(
さま
)
を
黒姫
(
くろひめ
)
に
渡
(
わた
)
せとは
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
始
(
はじ
)
め
英子姫
(
ひでこひめ
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
言葉
(
ことば
)
とも
覚
(
おぼ
)
えませぬ。
243
オイ、
244
コラ
亀彦
(
かめひこ
)
、
245
貴様
(
きさま
)
は
吾々
(
われわれ
)
の
成功
(
せいこう
)
を
嫉
(
ねた
)
み、
246
左様
(
さやう
)
な
事
(
こと
)
を
申
(
まを
)
すのであらう。
247
否
(
いな
)
、
248
汝
(
なんぢ
)
の
本
(
ほん
)
守護神
(
しゆごじん
)
より
出
(
い
)
でたる
世迷
(
よま
)
ひ
言
(
ごと
)
ではあるまい、
249
屹度
(
きつと
)
副
(
ふく
)
守護神
(
しゆごじん
)
の
悪戯
(
いたづら
)
ならむ。
250
只今
(
ただいま
)
若彦
(
わかひこ
)
が
神霊
(
しんれい
)
注射
(
ちうしや
)
を
行
(
おこな
)
ひ、
251
汝
(
なんぢ
)
に
憑依
(
ひようい
)
せる
悪魔
(
あくま
)
を
現
(
あら
)
はし
呉
(
く
)
れむ』
252
と
早
(
はや
)
くも
両手
(
りやうて
)
を
組
(
く
)
みウンと
一声
(
ひとこゑ
)
霊縛
(
れいばく
)
を
加
(
くは
)
へむとするや、
253
亀彦
(
かめひこ
)
の
背後
(
はいご
)
より
煙
(
けぶり
)
の
如
(
ごと
)
く
忽然
(
こつぜん
)
として
顕
(
あら
)
はれ
給
(
たま
)
うた
光華
(
くわうくわ
)
明彩
(
めいさい
)
六合
(
りくがふ
)
を
照徹
(
せうてつ
)
する
許
(
ばか
)
りの
女神
(
めがみ
)
顕
(
あら
)
はれ
給
(
たま
)
ひ、
254
若彦
(
わかひこ
)
が
面
(
おもて
)
を
射
(
い
)
させ
給
(
たま
)
ひぬ。
255
紫姫
(
むらさきひめ
)
、
256
若彦
(
わかひこ
)
は
身体
(
しんたい
)
萎縮
(
ゐしゆく
)
し
其
(
その
)
場
(
ば
)
に
畏伏
(
ゐふく
)
しワナワナと
震
(
ふる
)
ひ
戦
(
をのの
)
き、
257
涙
(
なみだ
)
に
畳
(
たたみ
)
を
潤
(
うるほ
)
すに
至
(
いた
)
りぬ。
258
亀彦
(
かめひこ
)
は
顔色
(
がんしよく
)
を
和
(
やは
)
らげ、
259
亀彦
『
英雄
(
えいゆう
)
涙
(
なみだ
)
を
振
(
ふる
)
つて
馬稷
(
ばしよく
)
を
斬
(
き
)
るとは
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのをの
)
大神
(
おほかみ
)
、
260
英子姫
(
ひでこひめ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
心事
(
しんじ
)
、
261
さり
乍
(
なが
)
ら
汝
(
なんぢ
)
よく
直日
(
なほひ
)
に
見直
(
みなほ
)
し
聞
(
き
)
き
直
(
なほ
)
し、
262
奇魂
(
くしみたま
)
の
覚
(
さと
)
りによりて
此
(
この
)
大望
(
たいもう
)
を
完全
(
くわんぜん
)
に
遂行
(
すゐかう
)
せば、
263
再
(
ふたた
)
び
神業
(
しんげふ
)
に
参加
(
さんか
)
する
事
(
こと
)
を
得
(
え
)
む』
264
と
稍
(
やや
)
俯
(
うつ
)
むき、
265
同情
(
どうじやう
)
の
涙
(
なみだ
)
を
流
(
なが
)
しつつ
女神
(
めがみ
)
と
共
(
とも
)
に、
266
亀彦
(
かめひこ
)
の
姿
(
すがた
)
は
忽然
(
こつぜん
)
として
此
(
この
)
場
(
ば
)
より
消
(
き
)
えにける。
267
玉照姫
(
たまてるひめ
)
の
泣
(
な
)
き
給
(
たま
)
ふ
声
(
こゑ
)
は
此
(
この
)
時
(
とき
)
より
時々
(
じじ
)
刻々
(
こくこく
)
に
烈
(
はげ
)
しくなり
来
(
き
)
たれり。
268
お
玉
(
たま
)
『
玉照姫
(
たまてるひめ
)
様
(
さま
)
、
269
どうぞ
御
(
ご
)
機嫌
(
きげん
)
を
直
(
なほ
)
して
下
(
くだ
)
さいませ。
270
何
(
なに
)
かお
気障
(
きざは
)
りが
御座
(
ござ
)
いますか。
271
幾重
(
いくへ
)
にも
御
(
お
)
詫
(
わび
)
致
(
いた
)
します』
272
と
頭
(
かしら
)
を
畳
(
たたみ
)
にすり
付
(
つ
)
け
詫入
(
わびい
)
る。
273
若彦
『
紫姫
(
むらさきひめ
)
さま、
274
大変
(
たいへん
)
な
事
(
こと
)
になりましたねエ。
275
若彦
(
わかひこ
)
はどう
致
(
いた
)
したら
宜
(
よろ
)
しいのでせう』
276
紫姫
『
仕方
(
しかた
)
がありませぬ、
277
成功
(
せいこう
)
を
急
(
いそ
)
ぐの
余
(
あま
)
り
無理
(
むり
)
をやつたものですから、
278
何程
(
なにほど
)
目的
(
もくてき
)
は
手段
(
しゆだん
)
を
選
(
えら
)
ばずといつても、
279
それは
俗人
(
ぞくじん
)
の
為
(
な
)
すべき
事
(
こと
)
、
280
吾々
(
われわれ
)
宣伝使
(
せんでんし
)
の
分際
(
ぶんざい
)
として
余
(
あま
)
り
立派
(
りつぱ
)
な
行動
(
かうどう
)
をやつたとは
云
(
い
)
はれますまい。
281
吾々
(
われわれ
)
両人
(
りやうにん
)
を
殊勲者
(
しゆくんしや
)
として
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
より
賞詞
(
しやうし
)
さるる
様
(
やう
)
な
事
(
こと
)
あらば、
282
それこそ
三五教
(
あななひけう
)
の
生命
(
せいめい
)
は
茲
(
ここ
)
に
全
(
まつた
)
く
滅亡
(
めつぼう
)
を
告
(
つ
)
げ、
283
ウラル
教
(
けう
)
となつて
了
(
しま
)
ひませう。
284
アヽ
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
言葉
(
ことば
)
には
千
(
せん
)
に
一
(
ひと
)
つもあだは
御座
(
ござ
)
いませぬ。
285
是
(
これ
)
よりは
前非
(
ぜんぴ
)
を
悔
(
く
)
い
身魂
(
みたま
)
を
研
(
みが
)
いて
本当
(
ほんたう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
にならなくちやなりませぬ。
286
玉照姫
(
たまてるひめ
)
様
(
さま
)
のあの
御
(
お
)
泣
(
ンな
)
き
声
(
ごゑ
)
、
287
御
(
ご
)
神慮
(
しんりよ
)
に
叶
(
かな
)
つて
居
(
ゐ
)
ないのは
当然
(
たうぜん
)
です』
288
若彦
『エヽ
仕方
(
しかた
)
がありませぬなア』
289
馬公
(
うまこう
)
は、
290
(
小声
(
こごゑ
)
で)
291
馬公
『オイ
鹿公
(
しかこう
)
、
292
梟鳥
(
ふくろどり
)
の
宵企
(
よひだく
)
み、
293
夜食
(
やしよく
)
に
外
(
はづ
)
れて
難
(
むつ
)
かしい
顔
(
かほ
)
を
致
(
いた
)
すぞよ。
294
ドンナ
良
(
よ
)
い
事
(
こと
)
でも
誠
(
まこと
)
で
致
(
いた
)
した
事
(
こと
)
でなければ、
295
毛筋
(
けすぢ
)
の
横巾
(
よこはば
)
程
(
ほど
)
でも
悪
(
あく
)
が
混
(
まじ
)
りたら、
296
物事
(
ものごと
)
成就
(
じやうじゆ
)
致
(
いた
)
さぬぞよ、
297
と
云
(
い
)
ふ
三五教
(
あななひけう
)
の
御
(
ご
)
神諭
(
しんゆ
)
を
知
(
し
)
つて
居
(
を
)
るか』
298
鹿公
『ウン、
299
いつか
聞
(
き
)
いた
様
(
やう
)
に
思
(
おも
)
ふ。
300
ナント
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
といふものは
七難
(
しちむつ
)
かしい
事
(
こと
)
を
仰有
(
おつしや
)
るものだな。
301
三千
(
さんぜん
)
世界
(
せかい
)
を
自由
(
じいう
)
になさる
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
が、
302
ソンナ
小
(
ちひ
)
さい
事
(
こと
)
をゴテゴテ
仰有
(
おつしや
)
る
様
(
やう
)
では
神政
(
しんせい
)
成就
(
じやうじゆ
)
も
覚束
(
おぼつか
)
ないワイ。
303
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
若彦
(
わかひこ
)
さまや、
304
吾々
(
われわれ
)
の
師匠
(
ししやう
)
と
仰
(
あふ
)
ぎ
主人
(
しゆじん
)
と
崇
(
あが
)
むる
紫姫
(
むらさきひめ
)
様
(
さま
)
迄
(
まで
)
が、
305
御
(
ご
)
退職
(
たいしよく
)
なさる
以上
(
いじやう
)
は
吾々
(
われわれ
)
とても
同
(
おな
)
じ
事
(
こと
)
だ。
306
何
(
なん
)
とか
考
(
かんが
)
へないと
馬鹿
(
うましか
)
な
目
(
め
)
に
遭
(
あ
)
はねばならぬぞ』
307
馬公
『モシモシ
若彦
(
わかひこ
)
さま、
308
紫姫
(
むらさきひめ
)
さま、
309
御
(
お
)
目出度
(
めでた
)
う、
310
お
祝
(
いは
)
ひ
致
(
いた
)
します』
311
鹿公
(
しかこう
)
は
慌
(
あは
)
てて
馬公
(
うまこう
)
の
口
(
くち
)
に
手
(
て
)
を
当
(
あ
)
て、
312
鹿公
『コラコラ
馬公
(
うまこう
)
何
(
なに
)
を
云
(
い
)
ふのだ、
313
些
(
ちつ
)
と
失礼
(
しつれい
)
ぢやないか』
314
紫姫
『
馬公
(
うまこう
)
、
315
よう
云
(
い
)
ふて
下
(
くだ
)
さつた。
316
本当
(
ほんたう
)
にコンナ
目出度
(
めでた
)
い
事
(
こと
)
はありませぬワ。
317
今日
(
こんにち
)
只今
(
ただいま
)
始
(
はじ
)
めて
臍下丹田
(
したついはね
)
の
天
(
あま
)
の
岩戸
(
いはと
)
が
開
(
ひら
)
けました。
318
これから
本当
(
ほんたう
)
の
真如
(
しんによ
)
の
日月
(
じつげつ
)
が
現
(
あら
)
はれませう。
319
お
互
(
たがひ
)
様
(
さま
)
にお
目出度
(
めでた
)
う
存
(
ぞん
)
じます』
320
若彦
(
わかひこ
)
は
拍手
(
かしはで
)
を
打
(
う
)
つて、
321
若彦
『
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います。
322
愈
(
いよいよ
)
私
(
わたくし
)
も
心天
(
しんてん
)
の
妖雲
(
えううん
)
が
晴
(
は
)
れました』
323
と
感謝
(
かんしや
)
の
辞
(
じ
)
を
涙
(
なみだ
)
と
共
(
とも
)
に
述
(
の
)
べたて
居
(
ゐ
)
る。
324
玉照姫
(
たまてるひめ
)
は
何
(
なん
)
とも
形容
(
けいよう
)
の
出来
(
でき
)
ない
美
(
うる
)
はしき
顔色
(
かほいろ
)
にて、
325
御
(
ご
)
機嫌斜
(
きげんななめ
)
ならずニコニコと
笑
(
わら
)
ひ
始
(
はじ
)
め
給
(
たま
)
ひ、
326
お
玉
(
たま
)
は
嬉
(
うれ
)
し
泣
(
な
)
きに
泣
(
な
)
き
入
(
い
)
る。
327
馬公
(
うまこう
)
、
328
鹿公
(
しかこう
)
二人
(
ふたり
)
は
互
(
たがひ
)
に
顔
(
かほ
)
を
見合
(
みあは
)
せ、
329
馬公、鹿公
『ハテ
合点
(
がてん
)
がゆかぬ。
330
こりやマアどうなり
往
(
ゆ
)
くのであらうかな』
331
紫姫
(
むらさきひめ
)
、
332
若彦
(
わかひこ
)
は
今後
(
こんご
)
果
(
はた
)
して
如何
(
いか
)
なる
行動
(
かうどう
)
に
出
(
い
)
づるならむか。
333
(
大正一一・五・六
旧四・一〇
藤津久子
録)
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【第4章 善か悪か|第19巻|如意宝珠|霊界物語|/rm1904】
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