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霊界物語
如意宝珠(第13~24巻)
第19巻(午の巻)
序
凡例
総説三十三魂
第1篇 神慮洪遠
第1章 高熊山
第2章 鶍の嘴
第3章 千騎一騎
第4章 善か悪か
第2篇 意外の意外
第5章 零敗の苦
第6章 和合と謝罪
第7章 牛飲馬食
第8章 大悟徹底
第3篇 至誠通神
第9章 身魂の浄化
第10章 馬鹿正直
第11章 変態動物
第12章 言照姫
第4篇 地異天変
第13章 混線
第14章 声の在所
第15章 山神の滝
第16章 玉照彦
第17章 言霊車
霊の礎(五)
余白歌
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霊界物語
>
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第19巻(午の巻)
> 第2篇 意外の意外 > 第7章 牛飲馬食
<<< 和合と謝罪
(B)
(N)
大悟徹底 >>>
第七章
牛飲
(
ぎういん
)
馬食
(
ばしよく
)
〔六五二〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第19巻 如意宝珠 午の巻
篇:
第2篇 意外の意外
よみ(新仮名遣い):
いがいのいがい
章:
第7章 牛飲馬食
よみ(新仮名遣い):
ぎゅういんばしょく
通し章番号:
652
口述日:
1922(大正11)年05月07日(旧04月11日)
口述場所:
筆録者:
加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年2月28日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
厳の御魂の大御神の和魂を祀った元伊勢に、紫姫や若彦らの一行が参拝していた。若彦は馬公と鹿公に、魔窟ケ原へ行って黒姫に、玉照姫をウラナイ教にお渡ししたいと伝えるように言いつけた。
魔窟ケ原では梅公を頭に、一同黒姫と高山彦の留守を幸い、備蓄した食糧を持ち出して大宴会を開いていた。そこへ馬公と鹿公がやってくる。梅公は二人を中へ引き入れると、宴会の仲間に加えた。
そこへ、フサの国から高姫の使いとして鶴公と亀公がやってきた。酔って迎えた鳶公と鷹公は、一喝されて大慌てになり、鳶公は徳利を隠させようと中へ急ぐ。鶴公と亀公はかまわず中へ入ってきた。
鶴公は、高姫の意向を皆に伝える。しかし梅公が、中に三五教の馬公と鹿公が混じっているのに気づいた。馬公と鹿公は、紫姫と若彦が改心して、玉照姫をウラナイ教に差し出そうとしていることを伝えた。
鶴公は、一度フサの国へ帰って高姫の意向を聞くこととし、馬公と鹿公は、いったん元伊勢に戻っていった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2021-04-03 17:54:03
OBC :
rm1907
愛善世界社版:
102頁
八幡書店版:
第4輯 67頁
修補版:
校定版:
105頁
普及版:
47頁
初版:
ページ備考:
001
厳
(
いづ
)
の
御霊
(
みたま
)
の
大御神
(
おほみかみ
)
、
002
その
和魂
(
にぎみたま
)
を
祭
(
まつ
)
りたる、
003
神
(
かみ
)
の
光
(
ひかり
)
の
元伊勢
(
もといせ
)
の、
004
大御前
(
おほみまへ
)
に
額
(
ぬか
)
づきて、
005
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し、
006
心
(
こころ
)
の
空
(
そら
)
の
雲霧
(
くもきり
)
を
晴
(
は
)
らせ
給
(
たま
)
へと、
007
汗
(
あせ
)
をたらたら
祈
(
いの
)
り
居
(
を
)
る、
008
三男
(
さんなん
)
二女
(
にぢよ
)
の
信徒
(
まめひと
)
ありけり。
009
若彦
(
わかひこ
)
『コレコレ
馬公
(
うまこう
)
に
鹿公
(
しかこう
)
、
010
お
前
(
まへ
)
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
だが
是
(
これ
)
から、
011
魔窟
(
まくつ
)
ケ
原
(
はら
)
の
黒姫
(
くろひめ
)
さまの
岩窟館
(
がんくつやかた
)
を
訪
(
たづ
)
ねて
往
(
い
)
つて
貰
(
もら
)
へまいかな、
012
私
(
わたくし
)
は
玉照姫
(
たまてるひめ
)
様
(
さま
)
を
御
(
ご
)
保護
(
ほご
)
申上
(
まをしあ
)
げて、
013
紫姫
(
むらさきひめ
)
様
(
さま
)
、
014
お
玉
(
たま
)
さまと
此
(
この
)
御
(
ご
)
神殿
(
しんでん
)
に
円満
(
ゑんまん
)
解決
(
かいけつ
)
の
祈願
(
きぐわん
)
を
凝
(
こ
)
らして
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
るから、
015
黒姫
(
くろひめ
)
さまに
会
(
あ
)
つて、
016
とつくりと
吾々
(
われわれ
)
の
真心
(
まごころ
)
を
伝
(
つた
)
へて
貰
(
もら
)
ひたいのだ』
017
馬公
(
うまこう
)
『ハイハイ、
018
かうなればもう
破
(
やぶ
)
れかぶれだ。
019
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
仰有
(
おつしや
)
る
事
(
こと
)
は
何
(
なに
)
が
何
(
なん
)
だか
訳
(
わけ
)
が
分
(
わか
)
らない、
020
行
(
い
)
つて
参
(
まゐ
)
りませう』
021
若彦
(
わかひこ
)
『
分
(
わか
)
らない
所
(
ところ
)
に
妙味
(
めうみ
)
があるのだらう、
022
往
(
ゆ
)
く
所
(
ところ
)
迄
(
まで
)
行
(
ゆ
)
かねば
到底
(
たうてい
)
吾々
(
われわれ
)
の
限
(
かぎ
)
りある
知識
(
ちしき
)
では
御
(
ご
)
神慮
(
しんりよ
)
を
窺知
(
きち
)
し
奉
(
たてまつ
)
る
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ない。
023
此
(
この
)
度
(
たび
)
は
十分
(
じふぶん
)
に
低
(
ひく
)
う
出
(
で
)
て、
024
黒姫
(
くろひめ
)
さまが、
025
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
うても
一言
(
いちごん
)
も
口答
(
くちごた
)
へをしてはならないよ』
026
鹿公
(
しかこう
)
『ソンナラ
馬公
(
うまこう
)
、
027
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
偵察
(
ていさつ
)
がてら
行
(
い
)
つて
来
(
き
)
ませう。
028
何
(
なん
)
だか
張合
(
はりあひ
)
の
無
(
な
)
いやうな
気
(
き
)
が
致
(
いた
)
します
哩
(
わい
)
。
029
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
黒姫
(
くろひめ
)
が
居
(
ゐ
)
なかつたらどうしませう』
030
若彦
(
わかひこ
)
『
万一
(
まんいち
)
フサの
国
(
くに
)
へでも
帰
(
かへ
)
られた
後
(
あと
)
であつたならば、
031
誰
(
たれ
)
か
代理者
(
だいりしや
)
が
置
(
お
)
いてあらうから、
032
其
(
その
)
代理者
(
だいりしや
)
に
懸
(
か
)
け
合
(
あ
)
つて
来
(
く
)
ればよいのだ』
033
鹿公
(
しかこう
)
『
代理者
(
だいりしや
)
が
居
(
ゐ
)
なかつたら
何
(
ど
)
うしませう。
034
万一
(
まんいち
)
留守
(
るす
)
であつたら
何
(
ど
)
うなるのです』
035
若彦
(
わかひこ
)
『エヽ、
036
ソンナ
事
(
こと
)
迄
(
まで
)
尋
(
たづ
)
ねる
必要
(
ひつえう
)
が
無
(
な
)
いぢやないか。
037
臨機
(
りんき
)
応変
(
おうへん
)
でやつて
来
(
く
)
るのだ』
038
馬
(
うま
)
、
039
鹿
(
しか
)
両人
(
りやうにん
)
一度
(
いちど
)
に、
040
馬公、鹿公
『
委細
(
ゐさい
)
承知
(
しようち
)
仕
(
つかまつ
)
りました。
041
オイ
兄弟
(
きやうだい
)
、
042
駆歩
(
かけあし
)
だ』
043
と
早
(
はや
)
くも
尻引
(
しりひ
)
きからげ
飛
(
と
)
び
出
(
だ
)
さむとするを、
044
若彦
(
わかひこ
)
は、
045
若彦
『オイオイ
両人
(
りやうにん
)
、
046
用向
(
ようむき
)
は
知
(
し
)
つて
居
(
を
)
るか』
047
馬公
(
うまこう
)
『ハイ
知
(
し
)
つて
居
(
ゐ
)
ます。
048
黒姫
(
くろひめ
)
が
居
(
を
)
るか
居
(
を
)
らぬか
見
(
み
)
て
来
(
き
)
たらよいのでせう』
049
鹿公
(
しかこう
)
『
黒姫
(
くろひめ
)
が
居
(
ゐ
)
なかつたら、
050
代理
(
だいり
)
を
見
(
み
)
て
来
(
く
)
る。
051
代理
(
だいり
)
が
居
(
ゐ
)
なかつたら
臨機
(
りんき
)
応変
(
おうへん
)
、
052
酒
(
さけ
)
でもあつたら
一杯
(
いつぱい
)
飲
(
の
)
みて
来
(
く
)
るのでせう』
053
紫姫
(
むらさきひめ
)
『ホヽヽヽヽ』
054
若彦
(
わかひこ
)
『ハヽヽヽヽ、
055
狼狽者
(
あはてもの
)
だなア、
056
黒姫
(
くろひめ
)
さまが
被居
(
いらつしや
)
らなかつたら、
057
吾々
(
われわれ
)
両人
(
りやうにん
)
は
紫姫
(
むらさきひめ
)
様
(
さま
)
や、
058
若彦
(
わかひこ
)
の
代理
(
だいり
)
にお
詫
(
わび
)
に
参
(
まゐ
)
りました。
059
玉照姫
(
たまてるひめ
)
様
(
さま
)
を
献上
(
けんじやう
)
致
(
いた
)
しますから、
060
今迄
(
いままで
)
の
御
(
ご
)
立腹
(
りつぷく
)
は
河
(
かは
)
に
流
(
なが
)
して
下
(
くだ
)
さいませ、
061
是非
(
ぜひ
)
とも
宜敷
(
よろし
)
くお
願
(
ねが
)
ひ
致
(
いた
)
します。
062
と
云
(
い
)
うて
返事
(
へんじ
)
を
聞
(
き
)
いて
来
(
く
)
るのだよ』
063
馬公
(
うまこう
)
『ソンナ
察
(
さつ
)
しの
無
(
な
)
い
馬公
(
うまこう
)
とは
違
(
ちが
)
ひます
哩
(
わい
)
。
064
亀彦
(
かめひこ
)
のお
直使
(
ぢきし
)
がお
出
(
い
)
でになつた
時
(
とき
)
からチヤンと
筋書
(
すぢがき
)
は
分
(
わか
)
つて
居
(
ゐ
)
るのだ。
065
なア
鹿公
(
しかこう
)
』
066
鹿公
(
しかこう
)
『
鹿
(
しか
)
り
鹿
(
しか
)
り、
067
サア
往
(
ゆ
)
かう。
068
三人
(
さんにん
)
様
(
さま
)
、
069
玉照姫
(
たまてるひめ
)
さまを
大切
(
たいせつ
)
にして
御
(
ご
)
保護
(
ほご
)
なさいませや、
070
たつた
今
(
いま
)
黒姫
(
くろひめ
)
の
手
(
て
)
に
渡
(
わた
)
すかと
思
(
おも
)
へば、
071
何
(
なん
)
だかお
世話
(
せわ
)
の
仕甲斐
(
しがひ
)
が
無
(
な
)
いやうな
気
(
き
)
が
致
(
いた
)
しまするが、
072
これも
成行
(
なりゆき
)
だ。
073
因縁
(
いんねん
)
づくぢやと
諦
(
あきら
)
めましてな、
074
是非
(
ぜひ
)
とも
宜敷
(
よろし
)
うお
頼
(
たの
)
み
申
(
まをし
)
やす』
075
と
云
(
い
)
ひ
捨
(
す
)
てて
谷川
(
たにがは
)
伝
(
づた
)
ひ、
076
崎嶇
(
きく
)
たる
小径
(
せうけい
)
を
魔窟
(
まくつ
)
ケ
原
(
はら
)
指
(
さ
)
して
驀地
(
まつしぐら
)
に
駆
(
か
)
けり
往
(
ゆ
)
く。
077
話
(
はなし
)
変
(
かは
)
つて
魔窟
(
まくつ
)
ケ
原
(
はら
)
の
岩窟
(
がんくつ
)
には
主人
(
しゆじん
)
の
留守
(
るす
)
の
間鍋
(
まなべ
)
たき、
078
梅公
(
うめこう
)
の
留守
(
るす
)
師団長
(
しだんちやう
)
、
079
丑
(
うし
)
、
080
寅
(
とら
)
、
081
辰
(
たつ
)
、
082
鷹
(
たか
)
、
083
鳶
(
とび
)
其
(
その
)
他
(
た
)
七八
(
しちはち
)
名
(
めい
)
は、
084
食
(
く
)
つては
寝
(
ね
)
、
085
寝
(
ね
)
ては
起
(
お
)
き、
086
朝
(
あさ
)
から
晩
(
ばん
)
迄
(
まで
)
、
087
土竜
(
むぐらもち
)
のやうに
穴住
(
あなずま
)
ひ
許
(
ばか
)
りに
日
(
ひ
)
を
暮
(
くら
)
し、
088
宣伝
(
せんでん
)
にも
行
(
ゆ
)
かず、
089
貯蔵
(
ちよざう
)
せし
酒
(
さけ
)
や
米
(
こめ
)
を
出
(
だ
)
し
放題
(
はうだい
)
に
出
(
だ
)
して、
090
白蟻
(
しろあり
)
が
柱
(
はしら
)
を
食
(
く
)
ふやうにちびちびと、
091
獅子
(
しし
)
身中
(
しんちう
)
の
虫
(
むし
)
の
本領
(
ほんりやう
)
を
遺憾
(
ゐかん
)
なく
発揮
(
はつき
)
して
居
(
を
)
る。
092
寅若
(
とらわか
)
『コレコレ
梅
(
うめ
)
の
大将
(
たいしやう
)
、
093
去年
(
きよねん
)
の
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
だつたねエ、
094
普甲峠
(
ふかふたうげ
)
の
突発
(
とつぱつ
)
事件
(
じけん
)
、
095
黒姫
(
くろひめ
)
さまに
分
(
わか
)
つた
時
(
とき
)
にや
随分
(
ずゐぶん
)
ひやひやしたぢやないか』
096
梅公
(
うめこう
)
『
過
(
す
)
ぎ
去
(
さ
)
つた
事
(
こと
)
は
云
(
い
)
ふものぢやない
哩
(
わい
)
。
097
あれが
抑
(
そもそ
)
もの
序幕
(
じよまく
)
で、
098
玉照姫
(
たまてるひめ
)
の
事件
(
じけん
)
が
起
(
おこ
)
り、
099
それが
失敗
(
しつぱい
)
の
原因
(
げんいん
)
となつて、
100
意地癖
(
いぢくせ
)
の
悪
(
わる
)
い
高山彦
(
たかやまひこ
)
夫婦
(
ふうふ
)
が、
101
吾々
(
われわれ
)
に
城
(
しろ
)
を
明
(
あ
)
け
渡
(
わた
)
してフサの
国
(
くに
)
の
本山
(
ほんざん
)
へ
帰
(
かへ
)
つて
行
(
い
)
つた。
102
お
蔭
(
かげ
)
で
目
(
め
)
の
上
(
うへ
)
の
瘤
(
こぶ
)
が
取
(
と
)
れて
毎日
(
まいにち
)
ウラル
教
(
けう
)
ぢやないが、
103
飲
(
の
)
めよ
騒
(
さわ
)
げよ
一寸先
(
いつすんさき
)
ア
闇
(
やみ
)
よと、
104
牛飲
(
ぎういん
)
馬食
(
ばしよく
)
が
続
(
つづ
)
けられるのだ。
105
矢張
(
やつぱり
)
これも
梅公
(
うめこう
)
の
方寸
(
はうすん
)
から
出
(
で
)
たのだ。
106
一年前
(
いちねんまへ
)
から
見越
(
みこ
)
しての
梅公
(
うめこう
)
の
計画
(
けいくわく
)
と
云
(
い
)
ふものは
偉
(
えら
)
いものだらう。
107
黒姫
(
くろひめ
)
迄
(
まで
)
おつ
放
(
ぽ
)
り
出
(
だ
)
すと
云
(
い
)
ふ
土台
(
どだい
)
を
作
(
つく
)
つた
凄
(
すご
)
い
腕前
(
うでまへ
)
だから、
108
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
うても
哥兄
(
にい
)
さまだよ』
109
寅若
(
とらわか
)
『ソンナ
自慢
(
じまん
)
は
置
(
お
)
いて
貰
(
もら
)
はうかい。
110
此
(
この
)
新
(
あたら
)
しがる
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に、
111
黴
(
かび
)
の
生
(
は
)
えたやうな
一年越
(
いちねんごし
)
の
自慢話
(
じまんばなし
)
は
買手
(
かひて
)
がないぞ。
112
それにつけても
漁夫
(
ぎよふ
)
の
利
(
り
)
を
占
(
しめ
)
たのは
三五教
(
あななひけう
)
の
奴
(
やつ
)
だ。
113
一敗
(
いつぱい
)
地
(
ち
)
に
塗
(
まみ
)
れ
馬鹿
(
ばか
)
を
見
(
み
)
たのは
黒姫
(
くろひめ
)
さまだよ。
114
紫姫
(
むらさきひめ
)
や、
115
青彦
(
あをひこ
)
を
特別
(
とくべつ
)
待遇
(
たいぐう
)
で
下
(
した
)
にも
置
(
お
)
かぬ
様
(
やう
)
な
信任振
(
しんにんぶり
)
を
発揮
(
はつき
)
して
居
(
ゐ
)
たが、
116
豈
(
あに
)
図
(
はか
)
らむや、
117
妹
(
いもうと
)
図
(
はか
)
らむやだ。
118
あの
態
(
ざま
)
つたらないぢやないか。
119
アンナ
奴
(
やつ
)
は
又
(
また
)
三五教
(
あななひけう
)
で
愛想
(
あいさう
)
尽
(
つ
)
かされて、
120
盆
(
ぼん
)
過
(
す
)
ぎの
幽霊
(
いうれい
)
の
様
(
やう
)
に
矢張
(
やつぱり
)
ウラナイ
教
(
けう
)
が
誠
(
まこと
)
だつた、
121
改心
(
かいしん
)
致
(
いた
)
しましたなぞと
尾
(
を
)
を
掉
(
ふ
)
つて
帰
(
かへ
)
つて
来
(
く
)
るかも
知
(
し
)
れやしないぞ。
122
今度
(
こんど
)
はドンナ
事
(
こと
)
があつても
相手
(
あひて
)
になつてはいけないよ』
123
梅公
(
うめこう
)
『
何程
(
なにほど
)
鉄面皮
(
てつめんぴ
)
の
青彦
(
あをひこ
)
だつて、
124
さう
何度
(
なんど
)
も
謝罪
(
あやま
)
つて
来
(
こ
)
られた
態
(
ざま
)
ぢやあるまい。
125
ソンナ
事
(
こと
)
は
絶対
(
ぜつたい
)
にないと
俺
(
おれ
)
は
確信
(
かくしん
)
して
居
(
を
)
る、
126
マアマア
悠
(
ゆつ
)
くり
飲
(
の
)
みて
騒
(
さわ
)
ぐがよからうぞ。
127
一寸先
(
いつすんさき
)
は
暗
(
やみ
)
の
世
(
よ
)
だ。
128
ある
中
(
うち
)
に
飲
(
の
)
ンだり
食
(
く
)
つたりして
置
(
お
)
かない
事
(
こと
)
には、
129
三五教
(
あななひけう
)
は
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
バラモン
教
(
けう
)
の
残党
(
ざんたう
)
が
押
(
お
)
し
寄
(
よ
)
せて
来
(
き
)
て
奪
(
と
)
つて
行
(
ゆ
)
くかも
分
(
わか
)
つたものぢやない。
130
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
腹
(
はら
)
の
中
(
なか
)
に
入
(
い
)
れて
置
(
お
)
けば
損
(
そん
)
は
無
(
な
)
いのだから、
131
人数
(
にんずう
)
は
減
(
へ
)
つたなり、
132
二
(
に
)
年
(
ねん
)
ぶりの
食糧
(
しよくりやう
)
や
酒
(
さけ
)
があるのだから、
133
お
前
(
まへ
)
方
(
がた
)
勉強
(
べんきやう
)
して
胃
(
ゐ
)
の
腑
(
ふ
)
を
働
(
はたら
)
かし、
134
毎日
(
まいにち
)
日日
(
ひにち
)
、
135
五六
(
ごろく
)
人前
(
にんまへ
)
宛
(
づつ
)
勉強
(
べんきやう
)
せないと
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
済
(
す
)
まないぞ』
136
と
他愛
(
たあい
)
もなく、
137
酒
(
さけ
)
に
酔
(
よ
)
うて
勝手
(
かつて
)
な
理屈
(
りくつ
)
を
囀
(
さへづ
)
り
居
(
を
)
る。
138
此
(
この
)
時
(
とき
)
門口
(
もんぐち
)
より
岩
(
いは
)
の
戸
(
と
)
を
覗
(
のぞ
)
いて『オイオイ』と
呼
(
よ
)
ぶ
男
(
をとこ
)
ありき。
139
寅若
(
とらわか
)
『オイ
鷹公
(
たかこう
)
、
140
鳶公
(
とびこう
)
、
141
何
(
なん
)
だか
入口
(
いりぐち
)
からオイオイと
云
(
い
)
つて
居
(
ゐ
)
やがるぢやないか。
142
何処
(
どこ
)
の
奴
(
やつ
)
か
知
(
し
)
らないが、
143
敵
(
てき
)
でも
味方
(
みかた
)
でも
構
(
かま
)
はぬ、
144
引張込
(
ひつぱりこ
)
んで
飯
(
めし
)
を
鱈腹
(
たらふく
)
喰
(
く
)
はせ、
145
酒
(
さけ
)
を
十分
(
じふぶん
)
飲
(
の
)
ませて
穀潰
(
ごくつぶ
)
しの
御用
(
ごよう
)
をさせるんだ。
146
早
(
はや
)
く
行
(
い
)
つて
引張
(
ひつぱ
)
つて
来
(
こ
)
い。
147
是
(
これ
)
から
酒責
(
さけぜ
)
め、
148
飯責
(
めしぜ
)
め、
149
御
(
ご
)
馳走責
(
ちそうぜ
)
めだ』
150
『オイ
合点
(
がつてん
)
だ』と
鳶
(
とび
)
、
151
鷹
(
たか
)
の
両人
(
ふたり
)
は
握
(
にぎ
)
り
飯
(
めし
)
を
片手
(
かたて
)
に
持
(
も
)
ち、
152
片手
(
かたて
)
に
酒徳利
(
さけどつくり
)
を
各自
(
めいめい
)
提
(
さ
)
げながら、
153
穴
(
あな
)
の
入口
(
いりぐち
)
迄
(
まで
)
やつて
来
(
く
)
る。
154
馬公
(
うまこう
)
『モシモシ、
155
私
(
わたくし
)
は
馬
(
うま
)
で
御座
(
ござ
)
います。
156
どうぞ
通
(
とほ
)
して
下
(
くだ
)
さいませぬか』
157
鳶公
(
とびこう
)
『ウン、
158
荷
(
に
)
つけ
馬
(
うま
)
か、
159
乗馬馬
(
じやうめうま
)
か、
160
木馬
(
きうま
)
か、
161
尻馬
(
しりうま
)
か
知
(
し
)
らぬが、
162
マアこの
うま
い
酒
(
さけ
)
を
飲
(
の
)
んで
握
(
にぎ
)
り
飯
(
めし
)
でも
食
(
く
)
へ。
163
さうして
誠意
(
せいい
)
を
現
(
あら
)
はすのだ』
164
馬公
(
うまこう
)
『
飯相
(
めしさう
)
な、
165
何
(
ど
)
う
致
(
いた
)
しまして、
166
お
酒
(
さけ
)
を
頂戴
(
ちやうだい
)
しては
済
(
す
)
みませぬ。
167
実
(
じつ
)
は
謝罪
(
あやま
)
りに
参
(
まゐ
)
りました。
168
是非
(
ぜひ
)
共
(
とも
)
宜敷
(
よろし
)
くお
願
(
ねが
)
ひ
致
(
いた
)
します』
169
鳶公
(
とびこう
)
『エヽ、
170
ちよろ
臭
(
くさ
)
い、
171
徳利
(
とくり
)
の
顔
(
かほ
)
を
見
(
み
)
て
謝罪
(
あやま
)
る
奴
(
やつ
)
があるか。
172
二升
(
にしよう
)
や
三升
(
さんじよう
)
グツとやつて
其
(
その
)
上
(
うへ
)
で
謝罪
(
あやま
)
るのなら
筋
(
すぢ
)
が
立
(
た
)
つが、
173
徳利
(
とくり
)
の
顔
(
かほ
)
をみて
謝罪
(
あやま
)
る
奴
(
やつ
)
が
何処
(
どこ
)
にあるかい』
174
馬公
(
うまこう
)
『イエイエ、
175
私
(
わたくし
)
は
黒姫
(
くろひめ
)
さまに
反対
(
はんたい
)
致
(
いた
)
しました
青彦
(
あをひこ
)
や、
176
紫姫
(
むらさきひめ
)
の
部下
(
ぶか
)
の
者
(
もの
)
で
御座
(
ござ
)
います。
177
誠
(
まこと
)
に
済
(
す
)
まない
事
(
こと
)
で、
178
黒姫
(
くろひめ
)
さまにお
詫
(
わび
)
に
参
(
まゐ
)
りました』
179
鳶公
(
とびこう
)
『ウン、
180
あの
黒姫
(
くろひめ
)
の
奴
(
やつ
)
か、
181
彼奴
(
あいつ
)
はお
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
のお
蔭
(
かげ
)
で
縮尻
(
しゆくじ
)
りやがつた。
182
とうの
昔
(
むかし
)
フサの
国
(
くに
)
の
本山
(
ほんざん
)
に
引
(
ひ
)
き
上
(
あ
)
げよつた、
183
其
(
その
)
後
(
ご
)
と
云
(
い
)
ふものは
毎日
(
まいにち
)
日日
(
ひにち
)
、
184
食
(
く
)
つたり
飲
(
の
)
んだり、
185
気楽
(
きらく
)
なものだ。
186
青彦
(
あをひこ
)
様々
(
さまさま
)
だ。
187
お
前
(
まへ
)
も
其
(
その
)
家来
(
けらい
)
であらば
尚々
(
なほなほ
)
結構
(
けつこう
)
だ。
188
マアマア
祝
(
いは
)
ひに
一杯
(
いつぱい
)
やれ』
189
馬公
(
うまこう
)
『オイ
鹿公
(
しかこう
)
、
190
何
(
ど
)
うやらこいつは
風並
(
かざなみ
)
が
変
(
へん
)
だよ』
191
鹿公
(
しかこう
)
『
変
(
へん
)
でも
何
(
なん
)
でも
唯
(
ただ
)
飲
(
の
)
めと
云
(
い
)
ふのだから
飲
(
の
)
んだらいいぢやないか。
192
モシモシ
皆
(
みな
)
さま、
193
是非
(
ぜひ
)
共
(
とも
)
宜敷
(
よろし
)
く、
194
私
(
わたくし
)
は
決
(
けつ
)
して
決
(
けつ
)
して
謝罪
(
あやま
)
りなどは
致
(
いた
)
しませぬ』
195
鳶公
(
とびこう
)
『ヤアお
前
(
まへ
)
は
鹿公
(
しかこう
)
だつたな。
196
ウンよしよし、
197
一寸
(
ちよつと
)
話
(
はな
)
せる、
198
我
(
わが
)
党
(
たう
)
の
士
(
し
)
だ。
199
サア
是
(
これ
)
から
酒責
(
さけぜ
)
め、
200
飯責
(
めしぜ
)
め、
201
牡丹餅
(
ぼたもち
)
責
(
ぜ
)
めの
御
(
ご
)
馳走責
(
ちそうぜ
)
めだ。
202
去年
(
きよねん
)
の
返報
(
へんぱう
)
がへしだ。
203
おぢおぢせずに
男
(
をとこ
)
らしう
牛飲
(
ぎういん
)
馬食
(
ばしよく
)
するのだぞ。
204
黒姫
(
くろひめ
)
が
留守
(
るす
)
になつたから
梅公
(
うめこう
)
の
会長
(
くわいちやう
)
で、
205
牛飲
(
ぎういん
)
馬食
(
ばしよく
)
会
(
くわい
)
の
本部
(
ほんぶ
)
が
設立
(
せつりつ
)
されたのだ。
206
貴様
(
きさま
)
も
成績
(
せいせき
)
次第
(
しだい
)
で
幹部
(
かんぶ
)
にしてやらぬ
事
(
こと
)
も
無
(
な
)
いし、
207
特別
(
とくべつ
)
会員
(
くわいいん
)
に
推薦
(
すいせん
)
しないにも
限
(
かぎ
)
らない、
208
岩窟
(
いはや
)
にも
春
(
はる
)
は
来
(
き
)
にけり
酒
(
さけ
)
の
花
(
はな
)
209
だ。
210
アハヽヽヽ、
211
サア
這入
(
はい
)
つたり
這入
(
はい
)
つたり』
212
鷹
(
たか
)
、
213
鳶
(
とび
)
の
両人
(
ふたり
)
は、
214
馬
(
うま
)
、
215
鹿
(
しか
)
の
手
(
て
)
を
無理
(
むり
)
無体
(
むたい
)
に
引張
(
ひつぱ
)
り、
216
大勢
(
おほぜい
)
の
前
(
まへ
)
に
連
(
つ
)
れて
来
(
き
)
た。
217
梅公
(
うめこう
)
『ヤアお
前
(
まへ
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
連中
(
れんちう
)
ぢやないか』
218
馬公
(
うまこう
)
『
今日
(
けふ
)
から
牛飲
(
ぎういん
)
馬食
(
ばしよく
)
会
(
くわい
)
へ
入会
(
にふくわい
)
を
願
(
ねが
)
ひます』
219
梅公
(
うめこう
)
『ヤア、
220
二人
(
ふたり
)
だな、
221
本会
(
ほんくわい
)
創立
(
さうりつ
)
以来
(
いらい
)
創立者
(
さうりつしや
)
の
外
(
ほか
)
に、
222
入会
(
にふくわい
)
を
申込
(
まをしこ
)
んだのは
君
(
きみ
)
達
(
たち
)
が
最初
(
さいしよ
)
だ。
223
普通
(
あたりまへ
)
なれば
飲
(
の
)
みぶり、
224
食
(
く
)
ひぶりを
検査
(
けんさ
)
した
上
(
うへ
)
に
会員
(
くわいいん
)
の
等級
(
とうきふ
)
を
定
(
き
)
めるのだが、
225
今日
(
けふ
)
は
祝意
(
しゆくい
)
を
表
(
へう
)
する
為
(
ため
)
、
226
特別
(
とくべつ
)
会員
(
くわいいん
)
に
推薦
(
すいせん
)
するから、
227
特別
(
とくべつ
)
会員
(
くわいいん
)
の
名誉
(
めいよ
)
を
保持
(
ほぢ
)
する
為
(
ため
)
に、
228
腹
(
はら
)
が
破
(
やぶ
)
れる
程
(
ほど
)
食
(
く
)
つて、
229
天
(
てん
)
が
地
(
ち
)
になり、
230
地
(
ち
)
が
天
(
てん
)
になる
所
(
ところ
)
迄
(
まで
)
酒
(
さけ
)
を
飲
(
の
)
むのだ。
231
いいか、
232
合点
(
がつてん
)
か』
233
馬公
(
うまこう
)
『これはこれは
特別
(
とくべつ
)
の
御
(
ご
)
詮議
(
せんぎ
)
を
以
(
もつ
)
て』
234
鹿公
(
しかこう
)
『
しか
も
特別
(
とくべつ
)
会員
(
くわいいん
)
に
列
(
れつ
)
せられまして
有難
(
ありがた
)
う。
235
飽迄
(
あくまで
)
頂戴
(
ちやうだい
)
仕
(
つかまつ
)
ります』
236
梅公
(
うめこう
)
『ヤア、
237
これで
同志
(
どうし
)
がざつと
二人
(
ふたり
)
増加
(
ぞうか
)
した。
238
黒姫
(
くろひめ
)
の
信徒
(
しんと
)
募集
(
ぼしふ
)
とは
余程
(
よほど
)
早
(
はや
)
い
哩
(
わい
)
。
239
否
(
いな
)
効果
(
かうくわ
)
が
挙
(
あ
)
がると
云
(
い
)
ふものだ』
240
寅若
(
とらわか
)
『オイ
皆
(
みな
)
の
奴
(
やつ
)
、
241
会長
(
くわいちやう
)
万歳
(
ばんざい
)
を
三唱
(
さんしやう
)
しようぢやないか』
242
一同
(
いちどう
)
『オー
宜
(
よ
)
からう
宜
(
よ
)
からう、
243
牛飲
(
ぎういん
)
馬食
(
ばしよく
)
会
(
くわい
)
万歳
(
ばんざい
)
、
244
会長
(
くわいちやう
)
さん
万歳
(
ばんざい
)
、
245
馬
(
うま
)
、
246
鹿
(
しか
)
両人
(
りやうにん
)
万歳
(
ばんざい
)
、
247
会員
(
くわいいん
)
一同
(
いちどう
)
万々歳
(
ばんばんざい
)
、
248
ワハヽヽヽ』
249
と
岩窟
(
がんくつ
)
も
崩
(
くづ
)
るる
許
(
ばか
)
り
笑
(
わら
)
ひ
倒
(
こ
)
ける。
250
此
(
この
)
時
(
とき
)
岩窟
(
がんくつ
)
の
外
(
そと
)
には
鶴
(
つる
)
、
251
亀
(
かめ
)
の
両人
(
りやうにん
)
四五
(
しご
)
の
従者
(
じゆうしや
)
を
引
(
ひ
)
き
連
(
つ
)
れやつて
来
(
き
)
た。
252
鶴公
(
つるこう
)
『これこれ
亀公
(
かめこう
)
、
253
随分
(
ずゐぶん
)
賑
(
にぎ
)
やかな
声
(
こゑ
)
がするぢやないか』
254
亀公
(
かめこう
)
『オウ、
255
そうだなア、
256
何
(
なん
)
でも
此
(
この
)
中
(
なか
)
に
天眼通
(
てんがんつう
)
の
利
(
き
)
く
奴
(
やつ
)
があつて、
257
吾々
(
われわれ
)
の
歓迎会
(
くわんげいくわい
)
でも
開
(
ひら
)
いて
前祝
(
まへいはひ
)
でもしとるのだらう』
258
鶴公
(
つるこう
)
『それだけ
天眼
(
てんがん
)
の
利
(
き
)
いて
居
(
ゐ
)
る
奴
(
やつ
)
があるのなら、
259
何故
(
なぜ
)
吾々
(
われわれ
)
を
迎
(
むか
)
ひに
来
(
こ
)
ないのだらう』
260
亀公
(
かめこう
)
『
余
(
あま
)
り
嬉
(
うれ
)
しいので
酒
(
さけ
)
に
喰
(
くら
)
ひ
酔
(
よ
)
うて
忘
(
わす
)
れたのかも
知
(
し
)
れない。
261
併
(
しか
)
し
霊
(
れい
)
は
屹度
(
きつと
)
迎
(
むか
)
ひに
来
(
き
)
て
居
(
を
)
るよ。
262
何事
(
なにごと
)
も
善意
(
ぜんい
)
に
解
(
かい
)
するのが
安全
(
あんぜん
)
第一
(
だいいち
)
だ』
263
鶴公
(
つるこう
)
『
併
(
しか
)
し
何
(
なん
)
だかチと
変梃
(
へんてこ
)
だ。
264
鬼
(
おに
)
の
来
(
こ
)
ぬ
間
(
ま
)
に
体
(
からだ
)
の
洗濯
(
せんたく
)
、
265
睾丸
(
きんたま
)
の
皺伸
(
しわの
)
ばしをやつて
居
(
を
)
るのぢやなからうかなア。
266
何
(
なに
)
は
兎
(
と
)
もあれ
一
(
ひと
)
つ
呶鳴
(
どな
)
つて
見
(
み
)
ようぢやないか』
267
斯
(
か
)
く
話
(
はな
)
す
折
(
をり
)
しも、
268
鳶
(
とび
)
、
269
鷹
(
たか
)
の
二人
(
ふたり
)
は
行歩
(
かうほ
)
蹣跚
(
まんさん
)
として
入口
(
いりぐち
)
に
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
り、
270
鳶公、鷹公
『ダヽヽ
誰人
(
だれ
)
だ。
271
羨望
(
けな
)
りさうに
入口
(
いりぐち
)
から
覗
(
のぞ
)
きよつて、
272
何
(
なに
)
も
遠慮
(
ゑんりよ
)
は
要
(
い
)
らない。
273
サア
思
(
おも
)
ひ
切
(
き
)
り
飲
(
の
)
んで、
274
思
(
おも
)
ひ
切
(
き
)
り
食
(
く
)
つて
踊
(
をど
)
るんだ。
275
今日
(
けふ
)
は
三五教
(
あななひけう
)
からも
二人
(
ふたり
)
も
入会者
(
にふくわいしや
)
があつた。
276
ヤア
七八
(
しちはち
)
人
(
にん
)
も
連
(
つ
)
れて
居
(
ゐ
)
やがるな。
277
牛飲
(
ぎういん
)
馬食
(
ばしよく
)
会
(
くわい
)
の
隆盛
(
りうせい
)
、
278
旭日
(
きよくじつ
)
昇天
(
しようてん
)
の
勢
(
いきほひ
)
だ。
279
今日
(
けふ
)
の
祝意
(
しゆくい
)
を
表
(
へう
)
するため、
280
特別
(
とくべつ
)
会員
(
くわいいん
)
に
推薦
(
すいせん
)
してやる。
281
そんなに
入口
(
いりぐち
)
に
乞食
(
こじき
)
のやうに
立
(
た
)
つて
居
(
ゐ
)
ないで、
282
トツトと
辷
(
すべ
)
り
込
(
こ
)
めい』
283
鶴公
(
つるこう
)
『
貴様
(
きさま
)
は
鷹公
(
たかこう
)
と
鳶公
(
とびこう
)
ぢやないか。
284
黒姫
(
くろひめ
)
の
留守役
(
るすやく
)
たる
梅公
(
うめこう
)
は
何
(
なに
)
をして
居
(
を
)
るか。
285
此
(
この
)
方
(
はう
)
はフサの
国
(
くに
)
の
本山
(
ほんざん
)
より
出張
(
しゆつちやう
)
致
(
いた
)
したる
鶴
(
つる
)
、
286
亀
(
かめ
)
の
両人
(
りやうにん
)
だ。
287
一刻
(
いつこく
)
も
早
(
はや
)
く
梅公
(
うめこう
)
の
奴
(
やつ
)
に
注進
(
ちうしん
)
致
(
いた
)
せ』
288
鷹
(
たか
)
と
鳶
(
とび
)
とは
此
(
こ
)
の
声
(
こゑ
)
を
聞
(
き
)
いて
一度
(
いちど
)
に
酔
(
ゑひ
)
を
醒
(
さ
)
まし、
289
ぶるぶる
慄
(
ふる
)
へながら、
290
鷹公、鳶公
『ヤア、
291
これはこれは
鶴公
(
つるこう
)
に
亀公
(
かめこう
)
、
292
鷹公
(
たかこう
)
に
鳶公
(
とびこう
)
、
293
馬公
(
うまこう
)
に
鹿公
(
しかこう
)
、
294
鶴公
(
つるこう
)
に
亀公
(
かめこう
)
、
295
鷹公
(
たかこう
)
に
鳶公
(
とびこう
)
、
296
馬公
(
うまこう
)
に
鹿公
(
しかこう
)
』
297
鶴公
(
つるこう
)
『
何
(
なに
)
を
云
(
い
)
つて
居
(
を
)
るのだ。
298
狼狽
(
うろた
)
へやがつて、
299
早
(
はや
)
く
注進
(
ちうしん
)
せぬかい』
300
鷹公
(
たかこう
)
『オイ
鳶公
(
とびこう
)
、
301
気
(
き
)
の
利
(
き
)
かぬ
奴
(
やつ
)
だ。
302
早
(
はや
)
く
今
(
いま
)
の
内
(
うち
)
に
奥
(
おく
)
に
行
(
い
)
つて
皆
(
みな
)
に
注進
(
ちうしん
)
して、
303
酒徳利
(
さけどつくり
)
や
何
(
なに
)
かを
隠
(
かく
)
すのだ。
304
それ
迄
(
まで
)
俺
(
おれ
)
は
何
(
なん
)
とか
彼
(
か
)
とか
云
(
い
)
うて
閉塞隊
(
へいそくたい
)
の
御用
(
ごよう
)
を
務
(
つと
)
めて
居
(
を
)
るから』
305
亀公
(
かめこう
)
『オイ、
306
鷹公
(
たかこう
)
、
307
その
狭
(
せま
)
い
入口
(
いりぐち
)
に
何
(
なに
)
をうごうごして
居
(
ゐ
)
るのだ。
308
早
(
はや
)
く
退
(
の
)
かぬかい、
309
這入
(
はい
)
れないぢやないか』
310
鷹公
(
たかこう
)
『
今
(
いま
)
這入
(
はい
)
られて
何
(
ど
)
う
耐
(
たま
)
らう。
311
出口
(
でぐち
)
入口
(
いりぐち
)
一寸
(
ちよつと
)
一
(
ひと
)
つ
門
(
もん
)
、
312
徳利
(
とくり
)
の
口
(
くち
)
で
一口
(
ひとくち
)
ぢや、
313
土瓶
(
どびん
)
の
口
(
くち
)
ぢや
二口
(
ふたくち
)
ぢや、
314
口
(
くち
)
は
幸福
(
かうふく
)
の
門
(
もん
)
、
315
今日
(
けふ
)
の
口
(
くち
)
はどうやら
禍
(
わざはい
)
の
門
(
もん
)
ぢや。
316
謹
(
つつし
)
んで
漫
(
みだ
)
りに
口
(
くち
)
を
開
(
ひら
)
くぢやないぞ。
317
口
(
くち
)
は
禍
(
わざはい
)
の
基
(
もと
)
だぞよ。
318
口
(
くち
)
程
(
ほど
)
恐
(
こわ
)
いものはないぞよ。
319
今
(
いま
)
に
天
(
あま
)
の
岩戸
(
いはと
)
を
開
(
ひら
)
いて
見
(
み
)
せるぞよ』
320
鶴公
(
つるこう
)
『コラ
鷹公
(
たかこう
)
、
321
貴様
(
きさま
)
酒
(
さけ
)
に
喰
(
くら
)
ひ
酔
(
よ
)
つて
居
(
を
)
るな、
322
大方
(
おほかた
)
誰
(
たれ
)
も
彼
(
かれ
)
も
残
(
のこ
)
らず
酒
(
さけ
)
を
喰
(
くら
)
ひ、
323
御
(
ご
)
馳走
(
ちそう
)
に
飽
(
あ
)
いて
居
(
を
)
るのぢやらう』
324
鷹公
(
たかこう
)
『
滅相
(
めつさう
)
な
滅相
(
めつさう
)
な、
325
何
(
ど
)
うして
何
(
ど
)
うして、
326
黒姫
(
くろひめ
)
様
(
さま
)
のお
留守中
(
るすちう
)
は
慎
(
つつし
)
んだ
上
(
うへ
)
にも
慎
(
つつし
)
まねばなりませぬ、
327
その
故
(
ゆゑ
)
に
牛飲
(
ぎういん
)
馬食
(
ばしよく
)
会
(
くわい
)
が
創立
(
さうりつ
)
されました』
328
鶴公
(
つるこう
)
『
何
(
なに
)
、
329
牛飲
(
ぎういん
)
馬食
(
ばしよく
)
会
(
くわい
)
、
330
そりや
何
(
なに
)
をする
会
(
くわい
)
だ』
331
鷹公
(
たかこう
)
『エイエイ、
332
それは
彼
(
あ
)
の
何
(
なん
)
です。
333
大江山
(
おほえやま
)
に
八岐
(
やまた
)
の
大蛇
(
をろち
)
が
現
(
あらは
)
れまして
大
(
おほ
)
きな
牛
(
うし
)
を
五六匹
(
ごろつぴき
)
も
一遍
(
いつぺん
)
に
ぎう
と
飲
(
の
)
み、
334
馬
(
うま
)
も
七八匹
(
しちはつぴき
)
一遍
(
いつぺん
)
に
食
(
く
)
つたと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
です。
335
それで
呑
(
のむ
)
のが
商売
(
しやうばい
)
の
八岐
(
やまた
)
の
大蛇
(
をろち
)
の
牛飲
(
ぎういん
)
馬食
(
ばしよく
)
をやつて
居
(
を
)
る
其
(
その
)
型
(
かた
)
を
一寸
(
ちよつと
)
して
見
(
み
)
たのですよ。
336
ちと
位
(
くらゐ
)
酒
(
さけ
)
を
飲
(
の
)
んで
飯
(
めし
)
を
食
(
く
)
つたつて
矢張
(
やつぱり
)
一升袋
(
いつしようぶくろ
)
は
一升
(
いつしよう
)
だ。
337
何
(
いづ
)
れ
留守中
(
るすちう
)
の
事
(
こと
)
だからチツと
位
(
くらゐ
)
不都合
(
ふつがふ
)
があつても
大目
(
おほめ
)
に
見
(
み
)
なさるがよからう。
338
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
憎
(
にく
)
まれるのは
損
(
そん
)
だ。
339
八方
(
はつぱう
)
美人
(
びじん
)
主義
(
しゆぎ
)
が
当世
(
たうせい
)
だから』
340
奥
(
おく
)
の
方
(
はう
)
では
鳶公
(
とびこう
)
の
注進
(
ちうしん
)
によつて
俄
(
にはか
)
の
大騒
(
おほさわ
)
ぎ、
341
徳利
(
とくり
)
を
持
(
も
)
つて
雪隠
(
せつちん
)
に
隠
(
かく
)
るる
奴
(
やつ
)
、
342
丼鉢
(
どんぶりばち
)
を
抱
(
かか
)
へて
床下
(
ゆかした
)
に
這
(
は
)
ひ
込
(
こ
)
む
奴
(
やつ
)
、
343
着物
(
きもの
)
を
前
(
まへ
)
後
(
うしろ
)
に
着
(
き
)
る
奴
(
やつ
)
、
344
大騒
(
おほさわ
)
ぎをやつて
居
(
を
)
る。
345
鶴
(
つる
)
、
346
亀
(
かめ
)
両人
(
りやうにん
)
は
遂
(
つひ
)
に
鷹公
(
たかこう
)
を
蹴飛
(
けと
)
ばし、
347
六
(
ろく
)
人
(
にん
)
の
従者
(
じゆうしや
)
と
共
(
とも
)
にこの
乱痴気
(
らんちき
)
騒
(
さわ
)
ぎの
現場
(
げんぢやう
)
に
現
(
あら
)
はれ
来
(
き
)
たり、
348
鶴公
(
つるこう
)
『ヤア
御
(
おん
)
大将
(
たいしやう
)
梅公
(
うめこう
)
さま、
349
仲々
(
なかなか
)
の
元気
(
げんき
)
ですなア。
350
流石
(
さすが
)
は
黒姫
(
くろひめ
)
様
(
さま
)
が
留守
(
るす
)
師団長
(
しだんちやう
)
に
選抜
(
せんばつ
)
せられるだけあつて
好
(
よ
)
く
隅
(
すみ
)
から
隅
(
すみ
)
迄
(
まで
)
行
(
ゆ
)
き
届
(
とど
)
いて
居
(
ゐ
)
ます。
351
余程
(
よほど
)
貴方
(
あなた
)
の
御
(
ご
)
政治
(
せいぢ
)
が
良
(
よ
)
いと
見
(
み
)
えて
四辺
(
あたり
)
の
草木
(
くさき
)
は
申
(
まを
)
すに
及
(
およ
)
ばず、
352
室内
(
しつない
)
の
徳利
(
とくり
)
や
土瓶
(
どびん
)
、
353
膳
(
ぜん
)
、
354
椀
(
わん
)
、
355
箸
(
はし
)
にいたる
迄
(
まで
)
貴方
(
あなた
)
の
余徳
(
よとく
)
で
交歓
(
かうくわん
)
抃舞
(
べんぶ
)
雀躍
(
じやくやく
)
手
(
て
)
の
舞
(
ま
)
ひ
足
(
あし
)
の
踏
(
ふ
)
む
所
(
ところ
)
を
知
(
し
)
らずと
云
(
い
)
ふ
有様
(
ありさま
)
ですな』
356
梅公
(
うめこう
)
『イヤもう、
357
さう
云
(
い
)
はれましては
答弁
(
たふべん
)
の
辞
(
じ
)
が
御座
(
ござ
)
いませぬ。
358
何分
(
なにぶん
)
有力
(
いうりよく
)
な
黒姫
(
くろひめ
)
様
(
さま
)
がお
留守
(
るす
)
になつたものですから、
359
吾々
(
われわれ
)
は
粉骨
(
ふんこつ
)
砕身
(
さいしん
)
大車輪
(
だいしやりん
)
の
活動
(
くわつどう
)
を
致
(
いた
)
さねばならぬと
思
(
おも
)
うて、
360
部下
(
ぶか
)
の
者共
(
ものども
)
に
奨励
(
しやうれい
)
を
致
(
いた
)
して
居
(
ゐ
)
ます。
361
其
(
その
)
感化力
(
かんくわりよく
)
に
依
(
よ
)
りまして、
362
土瓶
(
どびん
)
から
徳利
(
とくり
)
の
端
(
はし
)
に
至
(
いた
)
る
迄
(
まで
)
活溌
(
くわつぱつ
)
に
働
(
はたら
)
いて
見
(
み
)
せて
呉
(
く
)
れます
哩
(
わい
)
。
363
アハヽヽヽ』
364
亀公
(
かめこう
)
『コレコレ
梅公
(
うめこう
)
、
365
それは
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふ
不真面目
(
ふまじめ
)
な
云
(
い
)
ひ
分
(
ぶん
)
だ。
366
一体
(
いつたい
)
此
(
この
)
態
(
ざま
)
は
何
(
なん
)
だ、
367
落花
(
らくくわ
)
狼藉
(
らうぜき
)
名状
(
めいじやう
)
すべからざる
為体
(
ていたらく
)
ぢやないか』
368
鳶
(
とび
)
、
369
グダグダに
酔
(
よ
)
ひながら、
370
鳶公
『お
前
(
まへ
)
は
亀
(
かめ
)
ぢやな、
371
亀
(
かめ
)
は
酒
(
さけ
)
の
好
(
す
)
きなものだ。
372
そんな
四角張
(
しかくば
)
つた
面構
(
つらがま
)
へをせずにちつと
命
(
いのち
)
の
水
(
みづ
)
を
飲
(
の
)
んだら
何
(
ど
)
うだい。
373
酒
(
さけ
)
は
百薬
(
ひやくやく
)
の
長
(
ちやう
)
だ、
374
酒
(
さけ
)
位
(
くらゐ
)
元気
(
げんき
)
な、
375
曲芸
(
きよくげい
)
をする
奴
(
やつ
)
はないぞ』
376
亀
(
かめ
)
、
377
儼然
(
げんぜん
)
として、
378
亀公
『
吾
(
われ
)
こそは、
379
フサの
国
(
くに
)
北山村
(
きたやまむら
)
の
本山
(
ほんざん
)
より、
380
高姫
(
たかひめ
)
の
使者
(
ししや
)
として
罷
(
まか
)
り
越
(
こ
)
したるものである。
381
これより
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
一同
(
いちどう
)
の
者
(
もの
)
はフサの
国
(
くに
)
へ
連
(
つ
)
れ
帰
(
かへ
)
るから
其
(
その
)
用意
(
ようい
)
を
致
(
いた
)
されよ。
382
ヤア
梅公
(
うめこう
)
、
383
其
(
その
)
方
(
はう
)
は
特別
(
とくべつ
)
をもつて
亀公
(
かめこう
)
の
御
(
お
)
伴
(
とも
)
申付
(
まをしつ
)
ける』
384
梅公
(
うめこう
)
『
斯
(
か
)
くある
事
(
こと
)
とかねて
承知
(
しようち
)
を
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
りました。
385
それ
故
(
ゆゑ
)
先見
(
せんけん
)
の
明
(
めい
)
ある
吾々
(
われわれ
)
、
386
敵
(
てき
)
に
糧
(
かて
)
を
渡
(
わた
)
すも
約
(
つま
)
らぬと
存
(
ぞん
)
じ、
387
皆
(
みな
)
の
奴
(
やつ
)
等
(
ら
)
に
昼夜
(
ちうや
)
間断
(
かんだん
)
なく
勉強
(
べんきやう
)
して
牛飲
(
ぎういん
)
馬食
(
ばしよく
)
をさせ
置
(
お
)
いて
御座
(
ござ
)
る。
388
斯
(
か
)
くの
如
(
ごと
)
く
体内
(
たいない
)
に
滲
(
し
)
み
込
(
こ
)
ませて
置
(
お
)
けば、
389
今後
(
こんご
)
一
(
いち
)
年
(
ねん
)
や
二
(
に
)
年
(
ねん
)
、
390
半粒
(
はんつぶ
)
の
米
(
こめ
)
も
一滴
(
いつてき
)
の
水
(
みづ
)
も
飲
(
の
)
ます
必要
(
ひつえう
)
は
御座
(
ござ
)
らぬ。
391
アハヽヽヽ』
392
鷹公
(
たかこう
)
『オイ
鳶公
(
とびこう
)
、
393
辰
(
たつ
)
、
394
寅
(
とら
)
、
395
皆
(
みな
)
の
奴
(
やつ
)
、
396
梅
(
うめ
)
の
大将
(
たいしやう
)
甚
(
ひど
)
い
事
(
こと
)
を
吐
(
ぬか
)
すぢやないか。
397
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
を
蛇
(
へび
)
か
蛙
(
かはづ
)
のやうに
思
(
おも
)
ひやがつて
夏中
(
なつぢう
)
餌食
(
ゑば
)
みさせて、
398
二
(
に
)
年
(
ねん
)
三
(
さん
)
年
(
ねん
)
はもう
喰
(
く
)
はいでもよいなぞと
云
(
い
)
うて
居
(
ゐ
)
やがるぜ。
399
こんな
処
(
ところ
)
にいつ
迄
(
まで
)
も
居
(
を
)
つたら
蛙
(
かへる
)
の
干乾
(
ひぼし
)
になつて
仕舞
(
しま
)
ふぞ。
400
今
(
いま
)
の
内
(
うち
)
に
逃
(
に
)
げ
出
(
だ
)
さうかな』
401
梅公
(
うめこう
)
『オイ
丑公
(
うしこう
)
、
402
皆
(
みな
)
の
奴
(
やつ
)
が
逃
(
に
)
げ
出
(
だ
)
さぬやう
一方口
(
いつぱうぐち
)
に
立塞
(
たちふさ
)
がり、
403
槍
(
やり
)
をもつて
立番
(
たちばん
)
を
致
(
いた
)
せ。
404
無理
(
むり
)
に
逃走
(
たうそう
)
を
企
(
くはだ
)
てた
奴
(
やつ
)
があれば
容赦
(
ようしや
)
なし
芋刺
(
いもざ
)
しにするのだぞ』
405
丑公
(
うしこう
)
『
畏
(
かしこ
)
まりました』
406
と
長押
(
なげし
)
の
槍
(
やり
)
を
取
(
と
)
るより
早
(
はや
)
く、
407
一方口
(
いつぱうぐち
)
に
立
(
た
)
ち
塞
(
ふさ
)
がり、
408
儼然
(
げんぜん
)
として
警戒
(
けいかい
)
の
任
(
にん
)
に
当
(
あた
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
409
梅公
(
うめこう
)
は
馬
(
うま
)
、
410
鹿
(
しか
)
の
両人
(
りやうにん
)
が
此
(
この
)
場
(
ば
)
に
混
(
まじ
)
り
居
(
を
)
るに
初
(
はじ
)
めて
気
(
き
)
がついたものか、
411
目
(
め
)
を
丸
(
まる
)
くして
頓狂
(
とんきやう
)
な
声
(
こゑ
)
で、
412
梅公
(
うめこう
)
『ヤア、
413
お
前
(
まへ
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
馬
(
うま
)
、
414
鹿
(
しか
)
と
云
(
い
)
ふ
男
(
をとこ
)
ぢやないか』
415
馬公
(
うまこう
)
『ヘイ、
416
さうでげす。
417
最前
(
さいぜん
)
貴方
(
あなた
)
様
(
さま
)
の
前
(
まへ
)
に
於
(
おい
)
て
特別
(
とくべつ
)
会員
(
くわいいん
)
に
推薦
(
すいせん
)
されました
馬
(
うま
)
、
418
鹿
(
しか
)
の
両人
(
りやうにん
)
、
419
吾々
(
われわれ
)
も
特別
(
とくべつ
)
会員
(
くわいいん
)
に
列
(
れつ
)
せられたチヤキチヤキです。
420
もしもしフサの
国
(
くに
)
からお
越
(
こ
)
しになつた
鶴公
(
つるこう
)
さま、
421
亀公
(
かめこう
)
さま、
422
よい
所
(
ところ
)
でお
目
(
め
)
に
懸
(
かか
)
りました。
423
実
(
じつ
)
の
処
(
ところ
)
、
424
特別
(
とくべつ
)
火急
(
くわきふ
)
のお
願
(
ねが
)
ひがあつて
黒姫
(
くろひめ
)
さまにお
目
(
め
)
に
懸
(
か
)
からうと
出
(
で
)
て
参
(
まゐ
)
りました
処
(
ところ
)
、
425
生憎
(
あいにく
)
御
(
ご
)
不在
(
ふざい
)
の
上
(
うへ
)
、
426
梅公
(
うめこう
)
の
会長
(
くわいちやう
)
の
下
(
もと
)
に
盛
(
さかん
)
な
牛飲
(
ぎういん
)
馬食
(
ばしよく
)
会
(
くわい
)
が
開会
(
かいくわい
)
されて
居
(
ゐ
)
ましたので、
427
吾々
(
われわれ
)
も
鷹公
(
たかこう
)
、
428
鳶公
(
とびこう
)
の
推薦
(
すいせん
)
によつて
特別
(
とくべつ
)
会員
(
くわいいん
)
たるの
光栄
(
くわうえい
)
を
得
(
え
)
ました。
429
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
鶴公
(
つるこう
)
さま、
430
貴方
(
あなた
)
は
黒姫
(
くろひめ
)
さまに
一
(
ひと
)
つ
吾々
(
われわれ
)
の
願
(
ねがひ
)
を
取次
(
とりつい
)
で
下
(
くだ
)
さいますまいかな』
431
鶴公
(
つるこう
)
『
是
(
これ
)
は
又
(
また
)
妙
(
めう
)
な
事
(
こと
)
を
聞
(
き
)
きます。
432
一体
(
いつたい
)
取次
(
とりつ
)
げと
云
(
い
)
ふ
要件
(
えうけん
)
は
何
(
ど
)
んな
事
(
こと
)
で
御座
(
ござ
)
いますか』
433
鹿公
(
しかこう
)
『
実
(
じつ
)
は
紫姫
(
むらさきひめ
)
、
434
青彦
(
あをひこ
)
が
改心
(
かいしん
)
を
致
(
いた
)
しまして、
435
折角
(
せつかく
)
手
(
て
)
に
入
(
い
)
れた
玉照姫
(
たまてるひめ
)
様
(
さま
)
母子
(
おやこ
)
を
黒姫
(
くろひめ
)
様
(
さま
)
に
献
(
けん
)
じ
度
(
た
)
いと
申
(
まを
)
し
出
(
で
)
たので
御座
(
ござ
)
います』
436
鶴公
(
つるこう
)
暫
(
しば
)
し
首
(
くび
)
を
傾
(
かたむ
)
け
稍
(
やや
)
思案
(
しあん
)
に
暮
(
く
)
れ
居
(
ゐ
)
たりしが、
437
亀公
(
かめこう
)
は
不思議
(
ふしぎ
)
さうに、
438
亀公
『
又
(
また
)
そんな
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
つてウラナイ
教
(
けう
)
を
打
(
ぶ
)
ち
返
(
かへ
)
しに
来
(
く
)
るのだらう。
439
そんな
下手
(
へた
)
な
計略
(
けいりやく
)
はよしたがよからうぜ』
440
鹿公
(
しかこう
)
『
是非
(
ぜひ
)
とも
宜敷
(
よろし
)
うお
願
(
ねが
)
ひ
申
(
まを
)
します』
441
鶴公
(
つるこう
)
は
手
(
て
)
を
打
(
う
)
つて、
442
鶴公
『
嗚呼
(
ああ
)
流石
(
さすが
)
は
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
だ、
443
斯
(
こ
)
うなくては
叶
(
かな
)
はぬ
道理
(
だうり
)
だ、
444
イヤ
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
しました。
445
直様
(
すぐさま
)
お
伝
(
つた
)
へ
致
(
いた
)
しませう。
446
馬公
(
うまこう
)
、
447
鹿公
(
しかこう
)
、
448
貴方
(
あなた
)
は
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
帰
(
かへ
)
つて
皆
(
みな
)
さまに
報告
(
はうこく
)
して
下
(
くだ
)
さい。
449
私
(
わたくし
)
は
一寸
(
ちよつと
)
飛行船
(
ひかうせん
)
を
飛
(
と
)
ばしてフサの
本山
(
ほんざん
)
に
立帰
(
たちかへ
)
り、
450
高姫
(
たかひめ
)
、
451
黒姫
(
くろひめ
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
両人
(
ふたり
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
意見
(
いけん
)
を
承
(
うけたま
)
はつて
参
(
まゐ
)
りませう』
452
馬公
(
うまこう
)
『
是非
(
ぜひ
)
共
(
とも
)
宜敷
(
よろし
)
くお
頼
(
たの
)
み
申
(
まを
)
します』
453
鹿公
(
しかこう
)
『
私
(
わたくし
)
も
同
(
おな
)
じく
是非
(
ぜひ
)
共
(
とも
)
宜敷
(
よろし
)
う』
454
と、
455
いそいそとして
門番
(
もんばん
)
の
丑公
(
うしこう
)
に
事情
(
じじやう
)
を
明
(
あ
)
かし、
456
元伊勢
(
もといせ
)
指
(
さ
)
して
帰
(
かへ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
457
(
大正一一・五・七
旧四・一一
加藤明子
録)
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