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霊界物語
如意宝珠(第13~24巻)
第19巻(午の巻)
序
凡例
総説三十三魂
第1篇 神慮洪遠
第1章 高熊山
第2章 鶍の嘴
第3章 千騎一騎
第4章 善か悪か
第2篇 意外の意外
第5章 零敗の苦
第6章 和合と謝罪
第7章 牛飲馬食
第8章 大悟徹底
第3篇 至誠通神
第9章 身魂の浄化
第10章 馬鹿正直
第11章 変態動物
第12章 言照姫
第4篇 地異天変
第13章 混線
第14章 声の在所
第15章 山神の滝
第16章 玉照彦
第17章 言霊車
霊の礎(五)
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第19巻(午の巻)
> 第3篇 至誠通神 > 第10章 馬鹿正直
<<< 身魂の浄化
(B)
(N)
変態動物 >>>
第一〇章
馬鹿
(
ばか
)
正直
(
しやうぢき
)
〔六五五〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第19巻 如意宝珠 午の巻
篇:
第3篇 至誠通神
よみ(新仮名遣い):
しせいつうしん
章:
第10章 馬鹿正直
よみ(新仮名遣い):
ばかしょうじき
通し章番号:
655
口述日:
1922(大正11)年05月08日(旧04月12日)
口述場所:
筆録者:
藤津久子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年2月28日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
松姫館の門では、門番の竜若、熊彦、虎彦の三人が、四方山話の中で、ウラナイ教の凋落を嘆きあっていた。
三人は、三五教の隆盛や、黒姫が出し抜かれて玉照姫を奪われた経緯から、松姫館にお節が入り込んで松姫の信任を得ていることを警戒し、嘆いている。
そこへ馬公と鹿公がやってきた。熊彦と虎彦は、三五教の輩を入れるわけにはいかない、と言って六尺棒や拳で殴りかかった。
馬公と鹿公は、大神の教えを思って怒りをこらえている。虎彦と熊彦は二人をさらに虐待すると、門を閉めてしまった。
馬公と鹿公は、お互いに試練に耐えたことを讃えあい、忍び泣きに泣いた。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2021-04-04 18:21:59
OBC :
rm1910
愛善世界社版:
162頁
八幡書店版:
第4輯 89頁
修補版:
校定版:
165頁
普及版:
74頁
初版:
ページ備考:
001
雲
(
くも
)
を
抜
(
ぬ
)
き
出
(
で
)
てそそり
立
(
た
)
つ
002
高城山
(
たかしろやま
)
の
峰伝
(
みねづた
)
ひ
003
松樹
(
しようじゆ
)
茂
(
しげ
)
れる
神
(
かみ
)
の
山
(
やま
)
004
木
(
こ
)
の
間
(
ま
)
に
閃
(
ひらめ
)
く
十曜
(
とえう
)
の
神紋
(
もん
)
005
国治立
(
くにはるたち
)
の
大神
(
おほかみ
)
や
006
埴安
(
はにやす
)
神
(
かみ
)
や
木
(
こ
)
の
花
(
はな
)
の
007
姫
(
ひめ
)
の
命
(
みこと
)
の
御教
(
みをしへ
)
を
008
四方
(
よも
)
に
伝
(
つた
)
ふるウラナイの
009
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
の
出社
(
でやしろ
)
と
010
鳴
(
な
)
り
響
(
ひび
)
きたる
神館
(
かむやかた
)
011
五六七
(
みろく
)
の
御世
(
みよ
)
を
松姫
(
まつひめ
)
が
012
朝
(
あさ
)
な
夕
(
ゆふ
)
なに
真心
(
まごころ
)
を
013
こめて
祈
(
いの
)
りの
言霊
(
ことたま
)
に
014
百
(
もも
)
の
神
(
かみ
)
たち
寄
(
よ
)
り
集
(
つど
)
ひ
015
醜
(
しこ
)
の
教
(
をしへ
)
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
016
御国
(
みくに
)
を
思
(
おも
)
ひ
世
(
よ
)
を
思
(
おも
)
ふ
017
其
(
その
)
御心
(
みこころ
)
を
諾
(
うべ
)
なひて
018
守
(
まも
)
らせ
給
(
たま
)
ふぞ
尊
(
たふと
)
けれ。
019
松姫館
(
まつひめやかた
)
の
表門
(
おもてもん
)
には、
020
受付
(
うけつけ
)
兼
(
けん
)
門番
(
もんばん
)
の
溜
(
たま
)
り
所
(
どころ
)
が
設
(
まう
)
けられてある。
021
竜若
(
たつわか
)
、
022
熊彦
(
くまひこ
)
、
023
虎彦
(
とらひこ
)
の
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は、
024
あどけ
なき
話
(
はなし
)
に
冬
(
ふゆ
)
の
短
(
みじか
)
き
日
(
ひ
)
を
潰
(
つぶ
)
して
居
(
ゐ
)
る。
025
竜若
(
たつわか
)
『
此
(
この
)
春
(
はる
)
頃
(
ごろ
)
は
陽気
(
やうき
)
も
良
(
よ
)
し、
026
日々
(
ひび
)
木
(
き
)
の
芽
(
め
)
を
萌
(
ふ
)
く
様
(
やう
)
に、
027
求道者
(
きうだうしや
)
が
踵
(
くびす
)
を
接
(
せつ
)
し、
028
随分
(
ずゐぶん
)
吾々
(
われわれ
)
も
受付
(
うけつけ
)
や
門
(
もん
)
の
開閉
(
かいへい
)
に
繁忙
(
はんばう
)
を
極
(
きは
)
めたものだが、
029
春
(
はる
)
逝
(
ゆ
)
き、
030
夏
(
なつ
)
過
(
す
)
ぎ、
031
秋
(
あき
)
去
(
さ
)
り、
032
冬
(
ふゆ
)
来
(
きた
)
る
今日
(
けふ
)
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
、
033
雪
(
ゆき
)
は
散
(
ち
)
らつく、
034
凩
(
こがらし
)
は
吹
(
ふ
)
く、
035
梢
(
こずゑ
)
は
真裸
(
まつぱだか
)
となり
白
(
しろ
)
い
白
(
しろ
)
い
花
(
はな
)
が
咲
(
さ
)
く
様
(
やう
)
になつた
様
(
やう
)
に、
036
ウラナイ
教
(
けう
)
の
此
(
この
)
館
(
やかた
)
も、
037
一葉
(
ひとは
)
落
(
お
)
ちて
天下
(
てんか
)
の
秋
(
あき
)
を
知
(
し
)
る
処
(
どころ
)
か、
038
全葉
(
ぜんえふ
)
落
(
お
)
ちて
寂寥
(
せきれう
)
極
(
きは
)
まる
天下
(
てんか
)
の
冬
(
ふゆ
)
となつて
来
(
き
)
たぢやないか。
039
如何
(
いか
)
に
栄枯
(
ゑいこ
)
盛衰
(
せいすゐ
)
は
世
(
よ
)
の
習
(
なら
)
ひだと
云
(
い
)
つても、
040
ウラナイ
教
(
けう
)
の
凋落
(
てうらく
)
と
云
(
い
)
つたら、
041
実
(
じつ
)
に
哀
(
あは
)
れ
儚
(
はか
)
なき
有様
(
ありさま
)
だ。
042
我々
(
われわれ
)
は
斯
(
こ
)
うチヨコナンとして
用
(
よう
)
も
無
(
な
)
いのに、
043
借
(
か
)
つて
来
(
き
)
た
狆
(
ちん
)
の
様
(
やう
)
にして
居
(
を
)
るのも、
044
何
(
なん
)
だか
気
(
き
)
が
利
(
き
)
かない。
045
松姫
(
まつひめ
)
様
(
さま
)
に
対
(
たい
)
しても
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
な
様
(
やう
)
な
気
(
き
)
がしてならないワ。
046
嗚呼
(
ああ
)
ウラナイ
教
(
けう
)
にも、
047
冷酷
(
れいこく
)
無残
(
むざん
)
の
冬
(
ふゆ
)
が
来
(
き
)
たのかなア』
048
熊彦
(
くまひこ
)
『それが
身魂
(
みたま
)
の
恩頼
(
ふゆ
)
だ。
049
冬
(
ふゆ
)
が
有
(
あ
)
りやこそ
春
(
はる
)
が
来
(
く
)
るのだ。
050
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
は
引懸
(
ひつか
)
け
戻
(
もど
)
しの
仕組
(
しぐみ
)
ぢやと
仰有
(
おつしや
)
るぢやないか。
051
海
(
うみ
)
の
波
(
なみ
)
だつて
風
(
かぜ
)
だつて
其
(
その
)
通
(
とほ
)
りだ。
052
七五三
(
しちごさん
)
と
風
(
かぜ
)
が
吹
(
ふ
)
き、
053
波
(
なみ
)
は
立
(
た
)
つ、
054
ウラナイ
教
(
けう
)
も
此
(
この
)
春
(
はる
)
頃
(
ごろ
)
は
七
(
しち
)
の
風
(
かぜ
)
が
吹
(
ふ
)
き、
055
七
(
しち
)
の
波
(
なみ
)
が
立
(
た
)
つて
居
(
ゐ
)
た。
056
夏
(
なつ
)
になると
五
(
ご
)
の
風
(
かぜ
)
や
五
(
ご
)
の
波
(
なみ
)
、
057
秋
(
あき
)
の
末
(
すゑ
)
から
冬
(
ふゆ
)
のかかりにかけて、
058
三
(
さん
)
の
風
(
かぜ
)
が
吹
(
ふ
)
き、
059
三
(
さん
)
の
波
(
なみ
)
が
打
(
う
)
つて
居
(
ゐ
)
る
様
(
やう
)
なものだ。
060
又
(
また
)
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
の
歴史
(
れきし
)
は
繰返
(
くりかへ
)
すものだから、
061
花
(
はな
)
咲
(
さ
)
く
春
(
はる
)
は
屹度
(
きつと
)
ウラナイ
教
(
けう
)
に
見舞
(
みま
)
うて
来
(
く
)
るよ。
062
天下
(
てんか
)
の
春
(
はる
)
にウラナイ
教
(
けう
)
計
(
ばか
)
り
何時迄
(
いつまで
)
も、
063
冬
(
ふゆ
)
の
冷酷
(
れいこく
)
を
眺
(
なが
)
めて
居
(
を
)
る
様
(
やう
)
な
事
(
こと
)
はあるまい、
064
さう
悲観
(
ひくわん
)
したものぢやないよ』
065
虎彦
(
とらひこ
)
『
熊公
(
くまこう
)
、
066
随分
(
ずゐぶん
)
お
前
(
まへ
)
は
楽観者
(
らくくわんしや
)
だなア。
067
蜘蛛
(
くも
)
が
巣
(
す
)
をかけて、
068
虫
(
むし
)
が
引
(
ひ
)
つかかるのを
待
(
ま
)
ち
受
(
う
)
ける
様
(
やう
)
なやり
方
(
かた
)
では
何時迄
(
いつまで
)
経
(
た
)
つても、
069
ウラナイ
教
(
けう
)
に
春
(
はる
)
は
見舞
(
みま
)
うて
呉
(
く
)
れない。
070
矢張
(
やつぱり
)
能
(
あた
)
ふ
限
(
かぎ
)
り
最善
(
さいぜん
)
の
努力
(
どりよく
)
を
費
(
つひ
)
やさねば
駄目
(
だめ
)
だ。
071
運
(
うん
)
と
云
(
い
)
ふものは
手
(
て
)
を
束
(
つか
)
ねて
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
たつて、
072
来
(
く
)
るものではない。
073
矢張
(
やつぱり
)
こちらから、
074
活動
(
くわつどう
)
を
開始
(
かいし
)
せねばならないぢやないか。
075
それに
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
は
館
(
やかた
)
の
松姫
(
まつひめ
)
様
(
さま
)
も、
076
宣伝使
(
せんでんし
)
の
布教
(
ふけう
)
をお
止
(
と
)
めなさつたぢやないか。
077
一体
(
いつたい
)
吾々
(
われわれ
)
は
諒解
(
りやうかい
)
に
苦
(
くるし
)
まざるを
得
(
え
)
ないのだ』
078
竜若
(
たつわか
)
『
吾々
(
われわれ
)
一同
(
いちどう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
が
御
(
ご
)
神慮
(
しんりよ
)
に
叶
(
かな
)
つて
居
(
ゐ
)
ないのだから、
079
十分
(
じふぶん
)
に
此
(
この
)
静
(
しづ
)
かな
間
(
うち
)
に、
080
身魂
(
みたま
)
を
研
(
みが
)
き
上
(
あ
)
げ、
081
御
(
ご
)
神慮
(
しんりよ
)
を
悟
(
さと
)
り、
082
本当
(
ほんたう
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
大御心
(
おほみこころ
)
を
体得
(
たいとく
)
して、
083
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
から
是
(
こ
)
れなら
宣伝
(
せんでん
)
をしにやつても
差支
(
さしつか
)
へ
無
(
な
)
いと
御
(
お
)
認
(
みと
)
めになる
迄
(
まで
)
、
084
吾々
(
われわれ
)
は
修行
(
しうぎやう
)
をさされて
居
(
を
)
るのだ。
085
月日
(
つきひ
)
の
駒
(
こま
)
は
再
(
ふたた
)
び
帰
(
かへ
)
り
来
(
きた
)
らず、
086
一日
(
いちじつ
)
再
(
ふたた
)
び
晨
(
あした
)
成
(
な
)
り
難
(
がた
)
し、
087
此
(
この
)
機会
(
きくわい
)
に、
088
吾々
(
われわれ
)
は
充分
(
じゆうぶん
)
の
魂磨
(
たまみが
)
きをやつて
置
(
お
)
くのだ。
089
今迄
(
いままで
)
の
様
(
やう
)
な
脱線
(
だつせん
)
だらけの
宣伝
(
せんでん
)
をしたつて、
090
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
を
益々
(
ますます
)
混乱
(
こんらん
)
誑惑
(
けうわく
)
させるだけだ。
091
一
(
いつ
)
かど
立派
(
りつぱ
)
な
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御用
(
ごよう
)
を
勉
(
つと
)
めた
積
(
つも
)
りで、
092
お
邪魔
(
じやま
)
許
(
ばか
)
りして
居
(
ゐ
)
たのだから、
093
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
が
戒
(
いまし
)
めの
為
(
ため
)
に、
094
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
の
様
(
やう
)
に
宣伝
(
せんでん
)
もお
止
(
と
)
めなさつたり、
095
求道者
(
きうだうしや
)
もお
寄
(
よ
)
せにならないのだらうよ。
096
吾々
(
われわれ
)
一同
(
いちどう
)
の
者
(
もの
)
が、
097
本当
(
ほんたう
)
の
誠
(
まこと
)
の
神心
(
かみごころ
)
が
解
(
わか
)
つたならば、
098
宣伝
(
せんでん
)
にもやつて
下
(
くだ
)
さらうし、
099
因縁
(
いんねん
)
の
身魂
(
みたま
)
も
寄
(
よ
)
せて
下
(
くだ
)
さるだらう。
100
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
は
何処
(
どこ
)
から
何処迄
(
どこまで
)
抜
(
ぬ
)
け
目
(
め
)
が
無
(
な
)
いからなア』
101
熊彦
(
くまひこ
)
『それに
就
(
つ
)
いても
三五教
(
あななひけう
)
は
比較
(
ひかく
)
的
(
てき
)
隆盛
(
りうせい
)
ぢやないか。
102
高姫
(
たかひめ
)
さまや、
103
黒姫
(
くろひめ
)
さまの
大頭株
(
おほあたまかぶ
)
が
得意
(
とくい
)
の
神算
(
しんさん
)
鬼智
(
きち
)
を
発輝
(
はつき
)
して、
104
玉照姫
(
たまてるひめ
)
様
(
さま
)
をウラナイ
教
(
けう
)
に
奉迎
(
ほうげい
)
せむとなさつたが、
105
薩張
(
さつぱり
)
三五教
(
あななひけう
)
の
紫姫
(
むらさきひめ
)
や、
106
青彦
(
あをひこ
)
の
奴
(
やつ
)
に
裏
(
うら
)
をかかれて
馬鹿
(
ばか
)
を
見
(
み
)
たと
云
(
い
)
ふのだから、
107
油断
(
ゆだん
)
も
隙
(
すき
)
もあつたものぢやない。
108
それに
又
(
また
)
合点
(
がてん
)
のゆかぬは
松姫
(
まつひめ
)
さまぢや。
109
青彦
(
あをひこ
)
の
裏返
(
うらがへ
)
り
者
(
もの
)
の
女房
(
にようばう
)
お
節
(
せつ
)
が、
110
此
(
この
)
間
(
あひだ
)
から
猫撫
(
ねこな
)
で
声
(
ごゑ
)
を
出
(
だ
)
しよつて、
111
旨
(
うま
)
く
松姫
(
まつひめ
)
さまに
取
(
と
)
り
入
(
い
)
り、
112
今
(
いま
)
では
奥
(
おく
)
の
間
(
ま
)
の
御用
(
ごよう
)
を
務
(
つと
)
めて
居
(
ゐ
)
るぢやないか。
113
又
(
また
)
黒姫
(
くろひめ
)
の
二
(
に
)
の
舞
(
まひ
)
を
演
(
えん
)
じてアフンとなさる
様
(
やう
)
な
事
(
こと
)
はあるまいかなア。
114
何程
(
なにほど
)
、
115
清濁
(
せいだく
)
併
(
あは
)
せ
呑
(
の
)
む
大海
(
たいかい
)
の
様
(
やう
)
な
松姫
(
まつひめ
)
さまの
御心
(
みこころ
)
でも、
116
お
節
(
せつ
)
の
様
(
やう
)
な
危険
(
きけん
)
人物
(
じんぶつ
)
を
奥
(
おく
)
に
住
(
す
)
み
込
(
こ
)
ませて
置
(
お
)
くのは、
117
爆裂弾
(
ばくれつだん
)
を
抱
(
かか
)
へて
寝
(
ね
)
る
様
(
やう
)
なものだ。
118
此
(
この
)
位
(
くらゐ
)
な
分
(
わか
)
り
切
(
き
)
つた
道理
(
だうり
)
がどうして
松姫
(
まつひめ
)
さまは
気
(
き
)
が
付
(
つ
)
かぬのだらうか』
119
虎彦
(
とらひこ
)
『
何
(
なに
)
は
兎
(
と
)
もあれ、
120
権謀
(
けんぼう
)
術数
(
じゆつすう
)
至
(
いた
)
らざるなき、
121
素盞嗚
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
の
悪神
(
あくがみ
)
の
一派
(
いつぱ
)
だから
千変
(
せんぺん
)
万化
(
ばんくわ
)
に
身
(
み
)
を
窶
(
やつ
)
し、
122
大胆
(
だいたん
)
不敵
(
ふてき
)
にも、
123
女
(
をんな
)
の
分際
(
ぶんざい
)
としてこんな
所
(
ところ
)
へ、
124
恐
(
おそ
)
れ
気
(
げ
)
もなくやつて
来居
(
きを
)
つた
危険性
(
きけんせい
)
を
帯
(
お
)
びた
化物
(
ばけもの
)
だから、
125
一
(
ひと
)
つでもお
節
(
せつ
)
の
欠点
(
けつてん
)
を
発見
(
はつけん
)
したら、
126
それを
機会
(
きくわい
)
に
松姫
(
まつひめ
)
の
大将
(
たいしやう
)
が
何
(
なん
)
と
仰有
(
おつしや
)
つても、
127
吾々
(
われわれ
)
は
職
(
しよく
)
を
賭
(
と
)
してお
諫
(
いさ
)
め
申
(
まを
)
し、
128
お
節
(
せつ
)
をおつ
放
(
ぽ
)
り
出
(
だ
)
さねばなるまいぞ』
129
竜若
(
たつわか
)
『それもそうだ。
130
女
(
をんな
)
でさへも
三五教
(
あななひけう
)
へ
這入
(
はい
)
つた
奴
(
やつ
)
は、
131
あれだけの
胆力
(
たんりよく
)
が
据
(
す
)
わつて
居
(
を
)
るのだから、
132
男
(
をとこ
)
は
尚更
(
なほさら
)
手
(
て
)
に
合
(
あ
)
はぬ
奴
(
やつ
)
計
(
ばか
)
りだ。
133
又
(
また
)
何時
(
なんどき
)
三五教
(
あななひけう
)
の
奴
(
やつ
)
がやつて
来居
(
きを
)
つて、
134
魔窟
(
まくつ
)
ケ
原
(
はら
)
の
岩窟
(
いはや
)
の
二
(
に
)
の
舞
(
ま
)
ひをやらうと
掛
(
かか
)
るかも
知
(
し
)
れないから
良
(
よ
)
く
気
(
き
)
を
付
(
つ
)
けて、
135
三五教
(
あななひけう
)
の
連中
(
れんちう
)
だつたら、
136
此
(
この
)
門内
(
もんない
)
へ
一足
(
ひとあし
)
でも
入
(
い
)
れさす
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ないぞ。
137
箒
(
はうき
)
で
掃出
(
はきだ
)
すか、
138
それも
聞
(
き
)
かねば
六尺棒
(
ろくしやくぼう
)
で
袋叩
(
ふくろだた
)
きにしても
懲
(
こ
)
らしめてやらねば、
139
ウラナイ
教
(
けう
)
は
何時
(
なんどき
)
根底
(
こんてい
)
から
顛覆
(
てんぷく
)
さされるやら
分
(
わか
)
つたものぢやない。
140
松姫
(
まつひめ
)
さまは
狼
(
おほかみ
)
であらうが、
141
虎
(
とら
)
であらうが、
142
老若
(
らうにやく
)
男女
(
なんによ
)
の
区別
(
くべつ
)
なく、
143
物食
(
ものぐ
)
ひがよいから
困
(
こま
)
つて
了
(
しま
)
ふ。
144
腹
(
はら
)
の
中
(
なか
)
へ
毒薬
(
どくやく
)
を
呑
(
の
)
み
込
(
こ
)
んで
平気
(
へいき
)
で
居
(
を
)
るのだから
実
(
じつ
)
に
剣呑
(
けんのん
)
千万
(
せんばん
)
だ。
145
もうこれからは、
146
一々
(
いちいち
)
出
(
で
)
て
来
(
く
)
る
奴
(
やつ
)
を
誰何
(
すゐか
)
して、
147
身魂
(
みたま
)
を
調
(
しら
)
べた
上
(
うへ
)
でなければ、
148
通行
(
つうかう
)
させる
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ないぞ。
149
此
(
この
)
門
(
もん
)
の
出入
(
しゆつにふ
)
を
許否
(
きよひ
)
するは
吾々
(
われわれ
)
一同
(
いちどう
)
の
権限
(
けんげん
)
でもあり
大責任
(
だいせきにん
)
だから、
150
今後
(
こんご
)
吾々
(
われわれ
)
は
三角
(
さんかく
)
同盟
(
どうめい
)
を
形造
(
かたちづく
)
り、
151
結束
(
けつそく
)
を
固
(
かた
)
うして、
152
毛色
(
けいろ
)
の
変
(
かは
)
つた
怪
(
あや
)
しき
人物
(
じんぶつ
)
は、
153
断乎
(
だんこ
)
として
通過
(
つうくわ
)
させない
事
(
こと
)
にして
締盟
(
ていめい
)
仕様
(
しやう
)
ぢやないか、
154
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
でも
竜宮
(
りうぐう
)
の
乙姫
(
おとひめ
)
さまの
生宮
(
いきみや
)
でも、
155
月夜
(
つきよ
)
に
釜
(
かま
)
を
抜
(
ぬ
)
かれた
様
(
やう
)
な
馬鹿
(
ばか
)
らしい、
156
悲惨
(
みじめ
)
な
目
(
め
)
に
遭
(
あ
)
はされ
給
(
たま
)
ふのだから、
157
余程
(
よほど
)
警戒
(
けいかい
)
を
厳重
(
げんぢう
)
にせなくては
国家
(
こくか
)
の
一大事
(
いちだいじ
)
だ。
158
此
(
この
)
門
(
もん
)
一
(
ひと
)
つが
危急
(
ききふ
)
存亡
(
そんばう
)
の
分
(
わか
)
るる
所
(
ところ
)
だからなア』
159
斯
(
か
)
かる
処
(
ところ
)
へ
馬
(
うま
)
、
160
鹿
(
しか
)
の
両人
(
りやうにん
)
、
161
潜
(
くぐ
)
り
戸
(
ど
)
をガラガラと
開
(
あ
)
けて
這入
(
はい
)
り
来
(
き
)
たり。
162
熊彦
(
くまひこ
)
『ヤア、
163
門番
(
もんばん
)
の
吾々
(
われわれ
)
に
何
(
なん
)
の
応答
(
こたへ
)
もなく、
164
潜
(
くぐ
)
り
戸
(
ど
)
を
開
(
あ
)
けて
這入
(
はい
)
つて
来
(
く
)
るとは、
165
怪
(
け
)
しからぬぢやないか、
166
サア
出
(
で
)
て
下
(
くだ
)
さい』
167
馬公
(
うまこう
)
『ヤアこれは
誠
(
まこと
)
に
失礼
(
しつれい
)
を
致
(
いた
)
しました。
168
余
(
あま
)
り
森閑
(
しんかん
)
として
居
(
ゐ
)
たものですから、
169
貴方
(
あなた
)
等
(
がた
)
が
厳
(
いかめ
)
しい
御
(
ご
)
装束
(
しやうぞく
)
をして
門
(
もん
)
を
守
(
まも
)
つて
御座
(
ござ
)
るとは
露
(
つゆ
)
知
(
し
)
らず、
170
心
(
こころ
)
急
(
せ
)
く
儘
(
まま
)
ついお
応答
(
こたへ
)
もせず
御
(
ご
)
無礼
(
ぶれい
)
致
(
いた
)
しました。
171
何卒
(
どうぞ
)
此
(
この
)
不都合
(
ふつがふ
)
は、
172
神直日
(
かむなほひ
)
大直日
(
おほなほひ
)
に
見直
(
みなほ
)
し
聞直
(
ききなほ
)
し
下
(
くだ
)
さいまして
通過
(
つうくわ
)
させて
下
(
くだ
)
さいませ』
173
熊彦
(
くまひこ
)
『
成
(
な
)
らぬと
云
(
い
)
つたら
絶対
(
ぜつたい
)
にならぬのだ。
174
事
(
こと
)
と
品
(
しな
)
によつたら
通
(
とほ
)
してやらぬ
事
(
こと
)
もないが、
175
貴様
(
きさま
)
に
限
(
かぎ
)
つて
通
(
とほ
)
す
事
(
こと
)
出来
(
でき
)
ぬ
哩
(
わい
)
。
176
其
(
その
)
理由
(
りいう
)
とする
処
(
ところ
)
は
今
(
いま
)
貴様
(
きさま
)
が、
177
神直日
(
かむなほひ
)
大直日
(
おほなほひ
)
に
見直
(
みなほ
)
し
聞
(
き
)
き
直
(
なほ
)
して
呉
(
く
)
れと
云
(
い
)
つたぢやないか。
178
そんな
文句
(
もんく
)
を
称
(
とな
)
へる
者
(
もの
)
は、
179
此
(
この
)
広
(
ひろ
)
い
世界
(
せかい
)
にウラナイ
教
(
けう
)
と
三五教
(
あななひけう
)
の
二派
(
には
)
あるのみだ。
180
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
貴様
(
きさま
)
はウラナイ
教
(
けう
)
の
人間
(
にんげん
)
ぢやない。
181
てつきり
三五教
(
あななひけう
)
の
瓦落多
(
がらくた
)
だらう。
182
貴様
(
きさま
)
の
様
(
やう
)
な
奴
(
やつ
)
を
此
(
この
)
館
(
やかた
)
へ
侵入
(
しんにふ
)
させ
様
(
やう
)
ものなら、
183
それこそ
館
(
やかた
)
の
中
(
なか
)
は
忽
(
たちま
)
ちぢや、
184
さうならば、
185
我々
(
われわれ
)
も
何々
(
なになに
)
に
何々
(
なになに
)
しられては
矢張
(
やつぱり
)
忽
(
たちま
)
ちぢや。
186
忽
(
たちま
)
ち
変
(
かは
)
る
秋
(
あき
)
の
空
(
そら
)
、
187
冬
(
ふゆ
)
の
来
(
く
)
るのにブルブルと、
188
面
(
つら
)
の
皮
(
かは
)
剥
(
は
)
ぎオツポリ
出
(
だ
)
されて、
189
七
(
しち
)
尺
(
しやく
)
の
男子
(
だんし
)
も
矢張
(
やつぱり
)
忽
(
たちま
)
ちぢや』
190
馬公
(
うまこう
)
『ヤアヤアそれは
誠
(
まこと
)
に
御
(
ご
)
親切
(
しんせつ
)
有難
(
ありがた
)
う。
191
我々
(
われわれ
)
三五教
(
あななひけう
)
の
馬
(
うま
)
、
192
鹿
(
しか
)
の
二人
(
ふたり
)
が
此処
(
ここ
)
へ
参
(
まゐ
)
る
事
(
こと
)
を、
193
流石
(
さすが
)
明智
(
めいち
)
の
松姫
(
まつひめ
)
様
(
さま
)
が
御存
(
ごぞん
)
じ
遊
(
あそ
)
ばして、
194
門番
(
もんばん
)
に
命
(
めい
)
じ
吾々
(
われわれ
)
を
歓迎
(
くわんげい
)
の
為
(
た
)
め
立待
(
たちま
)
ちさせて
置
(
お
)
かしやつたのだな。
195
たちまち
開
(
ひら
)
く
心
(
こころ
)
の
門
(
もん
)
、
196
是
(
こ
)
れから
愈
(
いよいよ
)
日
(
ひ
)
の
出
(
で
)
の
守護
(
しゆご
)
になるであらう、
197
サア
鹿公
(
しかこう
)
、
198
御免
(
ごめん
)
を
蒙
(
かうむ
)
つて
奥
(
おく
)
へ
参
(
まゐ
)
りませうかい』
199
熊彦
(
くまひこ
)
『
何
(
なん
)
だ、
200
怪
(
け
)
つ
体
(
たい
)
な、
201
馬
(
うま
)
だとか
鹿
(
しか
)
だとか、
202
道理
(
だうり
)
で
馬鹿
(
うましか
)
な
面付
(
つらつき
)
をして
居
(
ゐ
)
やがる
哩
(
わい
)
。
203
コラコラ
此
(
この
)
門
(
もん
)
は
善一筋
(
ぜんひとすぢ
)
、
204
誠
(
まこと
)
一
(
ひと
)
つの
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
や
人間
(
にんげん
)
の
通行門
(
つうかうもん
)
だ。
205
四足
(
よつあし
)
の
通
(
とほ
)
るべき
処
(
ところ
)
ぢやない。
206
トツトと
帰
(
かへ
)
らぬか』
207
馬公
(
うまこう
)
『
如何
(
いか
)
にも
吾々
(
われわれ
)
の
名
(
な
)
は
馬
(
うま
)
、
208
鹿
(
しか
)
、
209
四足
(
よつあし
)
に
間違
(
まちが
)
ひありませぬが、
210
此
(
この
)
御門
(
ごもん
)
を
御覧
(
ごらん
)
なさい、
211
これも
矢張
(
やつぱり
)
四足
(
よつあし
)
ぢやないか。
212
それにお
前
(
まへ
)
の
名
(
な
)
も、
213
竜
(
たつ
)
とか
熊
(
くま
)
とか、
214
虎
(
とら
)
とか
云
(
い
)
うぢやないか。
215
矢張
(
やつぱり
)
四足
(
よつあし
)
だらう。
216
四足門
(
よつあしもん
)
を、
217
四足
(
よつあし
)
が
守
(
まも
)
るとは、
218
余程
(
よほど
)
よいコントラストだ、
219
アハヽヽヽ』
220
虎彦
(
とらひこ
)
『トラ
何
(
なに
)
を
吐
(
ぬか
)
しやがるのだ。
221
それ
程
(
ほど
)
コントラストが
望
(
のぞ
)
みなら、
222
貴様
(
きさま
)
の
薬鑵
(
やかん
)
を
此
(
この
)
棍棒
(
こんぼう
)
でコントラストと
叩
(
たた
)
き
付
(
つ
)
けてやらうか』
223
と
云
(
い
)
ふより
早
(
はや
)
く
傍
(
かたはら
)
の
六尺棒
(
ろくしやくぼう
)
を
以
(
もつ
)
て、
224
馬
(
うま
)
、
225
鹿
(
しか
)
の
前頭部
(
ぜんとうぶ
)
を
二
(
ふた
)
つ
三
(
み
)
つ
撲
(
なぐ
)
り
付
(
つ
)
けた。
226
鹿公
(
しかこう
)
『
随分
(
ずゐぶん
)
ウラナイ
教
(
けう
)
は、
227
手荒
(
てあら
)
い
事
(
こと
)
をなされますなア』
228
虎彦
(
とらひこ
)
『
何
(
なに
)
、
229
ウラナイ
教
(
けう
)
が
手荒
(
てあら
)
い
事
(
こと
)
をするのだ
無
(
な
)
い、
230
貴様
(
きさま
)
の
悪心
(
あくしん
)
が
此
(
この
)
虎彦
(
とらひこ
)
をして、
231
貴様
(
きさま
)
を
打
(
う
)
たしめるのだ。
232
心
(
こころ
)
の
虎
(
とら
)
が
身
(
み
)
を
責
(
せ
)
めると
云
(
い
)
ふのは
此
(
この
)
事
(
こと
)
だ。
233
名詮
(
めいせん
)
自性
(
じしやう
)
、
234
馬鹿
(
うましか
)
な
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
つて
通過
(
つうくわ
)
を
懇望
(
こんもう
)
するものだからそれで
御
(
ご
)
註文
(
ちゆうもん
)
通
(
どほ
)
り、
235
棍棒
(
こんぼう
)
を
頂
(
いただ
)
かしてやつたのだ。
236
今後
(
こんご
)
は
謹
(
つつし
)
んで、
237
斯様
(
かやう
)
な
乱暴
(
らんばう
)
な
事
(
こと
)
を
致
(
いた
)
すでないぞよ。
238
馬
(
うま
)
、
239
鹿
(
しか
)
の
守護神
(
しゆごじん
)
、
240
勿体
(
もつたい
)
なくも、
241
虎彦
(
とらひこ
)
さんの
肉体
(
にくたい
)
を
使
(
つか
)
つて
馬鹿
(
うましか
)
にして
けつ
かる、
242
アハヽヽヽ』
243
馬公
(
うまこう
)
『
重々
(
ぢうぢう
)
私
(
わたくし
)
が
悪
(
わる
)
う
御座
(
ござ
)
いました。
244
何卒
(
どうぞ
)
御
(
ご
)
勘弁
(
かんべん
)
下
(
くだ
)
さいませ』
245
熊彦
(
くまひこ
)
『
悪
(
わる
)
いと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
が
分
(
わか
)
つたか。
246
悪
(
わる
)
かつたら
勘弁
(
かんべん
)
せい、
247
と
云
(
い
)
つて、
248
それで
勘弁
(
かんべん
)
が
出来
(
でき
)
ると
思
(
おも
)
ふか。
249
結構
(
けつこう
)
な
御
(
ご
)
神門
(
しんもん
)
を、
250
四足門
(
よつあしもん
)
だの、
251
吾々
(
われわれ
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
を
四足
(
よつあし
)
だのと
失敬
(
しつけい
)
千万
(
せんばん
)
な、
252
劫託
(
ごふたく
)
を
吐
(
ほざ
)
きやがつて、
253
何
(
なん
)
だ、
254
三五教
(
あななひけう
)
はそんな
無茶
(
むちや
)
な
身勝手
(
みがつて
)
な
理屈
(
りくつ
)
は
通
(
とほ
)
るか
知
(
し
)
らぬが、
255
誠一途
(
まこといちづ
)
のウラナイ
教
(
けう
)
ではそんな
屁理屈
(
へりくつ
)
は
通
(
とほ
)
らぬぞ』
256
鹿公
(
しかこう
)
『イヤもう、
257
通
(
とほ
)
つても
通
(
とほ
)
らひでも
結構
(
けつこう
)
です、
258
吾々
(
われわれ
)
の
目的
(
もくてき
)
は
此
(
この
)
門
(
もん
)
を
通
(
とほ
)
りさへすれば
宜
(
よ
)
いのだ。
259
黙
(
だま
)
つて
門
(
もん
)
を
開
(
あ
)
けたのは
誠
(
まこと
)
に
済
(
す
)
まないけれど、
260
諺
(
ことわざ
)
にも「
桃李
(
たうり
)
物
(
もの
)
云
(
い
)
はず」と
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
がある。
261
それだから、
262
物静
(
ものしづ
)
かに
敬虔
(
けいけん
)
の
態度
(
たいど
)
を
以
(
もつ
)
て
通行
(
つうかう
)
したのです』
263
虎彦
(
とらひこ
)
『エヽツベコベと、
264
よう
囀
(
さへづ
)
る
奴
(
やつ
)
だ。
265
愚図
(
ぐづ
)
々々
(
ぐづ
)
吐
(
ぬか
)
すと、
266
鬼
(
おに
)
の
蕨
(
わらび
)
がお
見舞
(
みま
)
ひ
申
(
まを
)
すぞ』
267
と
骨
(
ほね
)
だらけの
握拳
(
にぎりこぶし
)
を
固
(
かた
)
めて、
268
鹿
(
しか
)
の
顔
(
かほ
)
を
二
(
ふた
)
つ
三
(
み
)
つガツンとやつた。
269
鹿公
(
しかこう
)
『アイタヽヽ、
270
随分
(
ずゐぶん
)
気張
(
きば
)
り
応
(
ごたへ
)
があります
哩
(
わい
)
』
271
虎彦
(
とらひこ
)
『
定
(
きま
)
つた
事
(
こと
)
だ、
272
斯
(
こ
)
う
見
(
み
)
えても、
273
朝
(
あさ
)
から
晩
(
ばん
)
迄
(
まで
)
、
274
剣術
(
けんじゆつ
)
に
柔術
(
じうじゆつ
)
で
鍛
(
きた
)
え
上
(
あ
)
げた
百段
(
ひやくだん
)
の
免状
(
めんじやう
)
取
(
と
)
りだ。
275
全身
(
ぜんしん
)
鉄
(
くろがね
)
を
以
(
もつ
)
て
固
(
かた
)
めた、
276
虎彦
(
とらひこ
)
さまの
鉄身
(
てつしん
)
、
277
鉄腸
(
てつちやう
)
、
278
槍
(
やり
)
でも
鉄砲
(
てつぱう
)
でも
持
(
も
)
つて
来
(
き
)
て、
279
撃
(
う
)
つなと、
280
突
(
つ
)
くなとやつて
見
(
み
)
よ。
281
鋼鉄艦
(
かうてつかん
)
にブトが
襲撃
(
しふげき
)
する
様
(
やう
)
なものだ、
282
アハヽヽヽ』
283
と
得意
(
とくい
)
の
鼻
(
はな
)
を
蠢
(
うごめ
)
かし、
284
四角
(
しかく
)
な
肩
(
かた
)
を
不恰好
(
ぶかつかう
)
に
腰
(
こし
)
迄
(
まで
)
揺
(
ゆす
)
つて
嘲笑
(
てうせう
)
する。
285
馬公
(
うまこう
)
、
286
鹿公
(
しかこう
)
は
堪忍袋
(
かんにんぶくろ
)
の
緒
(
を
)
が
今
(
いま
)
やプツリと
切
(
きれ
)
かけた。
287
エヽ
残念
(
ざんねん
)
だ、
288
もう
此
(
この
)
上
(
うへ
)
は
善
(
ぜん
)
も
悪
(
あく
)
もあつたものかい、
289
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
奴
(
やつ
)
を
片
(
かた
)
ツ
端
(
ぱし
)
から
打
(
うち
)
のめし、
290
三五教
(
あななひけう
)
の
腕力
(
わんりよく
)
を
見
(
み
)
せてやらうか。
291
イヤイヤ、
292
なる
勘忍
(
かんにん
)
は
誰
(
たれ
)
もする、
293
ならぬ
堪忍
(
かんにん
)
するが
堪忍
(
かんにん
)
だ。
294
訳
(
わけ
)
の
分
(
わか
)
らぬ
下劣
(
げれつ
)
な
奴
(
やつ
)
を
相手
(
あひて
)
にしての
争
(
あらそ
)
ひは
自
(
みづか
)
ら
好
(
この
)
んで
人格
(
じんかく
)
を
失墜
(
しつつゐ
)
するのみならず、
295
延
(
ひ
)
いては、
296
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
の
御心
(
みこころ
)
に
背
(
そむ
)
き、
297
三五教
(
あななひけう
)
の
名誉
(
めいよ
)
を
毀損
(
きそん
)
する
生死
(
せいし
)
の
境
(
さかひ
)
だ。
298
仮令
(
たとへ
)
叩
(
たた
)
き
殺
(
ころ
)
されても
柔和
(
にうわ
)
と
誠
(
まこと
)
を
以
(
もつ
)
て、
299
彼
(
かれ
)
等
(
ら
)
悪人
(
あくにん
)
を
心
(
こころ
)
の
底
(
そこ
)
より、
300
改心
(
かいしん
)
させるのが
吾々
(
われわれ
)
信者
(
しんじや
)
の
第一
(
だいいち
)
の
務
(
つと
)
めだ。
301
国治立
(
くにはるたち
)
の
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
や
素盞嗚
(
すさのをの
)
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
おん
)
事
(
こと
)
を
思
(
おも
)
へば、
302
これ
位
(
くらゐ
)
の
口惜
(
くやし
)
残念
(
ざんねん
)
は
宵
(
よひ
)
の
口
(
くち
)
だ。
303
怒
(
いか
)
りに
乗
(
じやう
)
じ
手向
(
てむか
)
ひすれば、
304
一
(
いち
)
時
(
じ
)
の
胸
(
むね
)
は
治
(
をさ
)
まるだらうが、
305
叩
(
たた
)
かれた
者
(
もの
)
は、
306
安楽
(
あんらく
)
に
夜分
(
やぶん
)
も
寝
(
ね
)
られる、
307
叩
(
たた
)
いた
者
(
もの
)
は
夜分
(
やぶん
)
に
寝
(
ね
)
られぬといふ
事
(
こと
)
だ。
308
嗚呼
(
ああ
)
、
309
何事
(
なにごと
)
も
大慈
(
だいじ
)
大悲
(
だいひ
)
の
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
の
深遠
(
しんゑん
)
なる
恵
(
めぐみ
)
の
鞭
(
むち
)
だ。
310
吾々
(
われわれ
)
は
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
の
試錬
(
しれん
)
を
受
(
う
)
けて
居
(
を
)
るのだ。
311
紫姫
(
むらさきひめ
)
様
(
さま
)
のお
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
に
関
(
くわん
)
する
様
(
やう
)
な
失敗
(
しつぱい
)
を
演
(
えん
)
じては
済
(
す
)
まない。
312
と、
313
馬
(
うま
)
、
314
鹿
(
しか
)
両人
(
りやうにん
)
は
一度
(
いちど
)
に、
315
心中
(
しんちう
)
の
光明
(
くわうみやう
)
に
照
(
てら
)
されて、
316
嬉
(
うれ
)
し
涙
(
なみだ
)
をタラタラと
流
(
なが
)
し
大地
(
だいち
)
にカヂリ
付
(
つ
)
いて
神恩
(
しんおん
)
を
感謝
(
かんしや
)
して
居
(
を
)
る。
317
虎彦
(
とらひこ
)
『オイ
馬
(
うま
)
、
318
鹿
(
しか
)
、
319
どうだ、
320
往生
(
わうじやう
)
致
(
いた
)
したか。
321
初
(
はじ
)
めの
高言
(
かうげん
)
に
似
(
に
)
ずメソメソと
泣面
(
なきづら
)
掻
(
か
)
きやがつてチヨロ
臭
(
くさ
)
い。
322
女郎
(
めらう
)
の
腐
(
くさ
)
つた
様
(
やう
)
な
奴
(
やつ
)
だなア。
323
貴様
(
きさま
)
は
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
にか、
324
睾丸
(
きんたま
)
を
落
(
おと
)
して
来
(
き
)
やがつたのだらう。
325
オイ
熊彦
(
くまひこ
)
、
326
貴様
(
きさま
)
は
馬
(
うま
)
の
睾丸
(
きんたま
)
を
検査
(
けんさ
)
するのだ。
327
俺
(
おれ
)
は
鹿
(
しか
)
の
睾丸
(
きんたま
)
を
実地
(
じつち
)
検分
(
けんぶん
)
してやらう』
328
と
目
(
め
)
と
目
(
め
)
を
見合
(
みあは
)
せ
両人
(
りやうにん
)
の
尻
(
しり
)
を
引捲
(
ひきまく
)
り、
329
三
(
み
)
つ
四
(
よ
)
つ
臀部
(
でんぶ
)
を
叩
(
たた
)
き、
330
虎彦
(
とらひこ
)
『ヤア
腰抜
(
こしぬ
)
けだと
思
(
おも
)
つたら、
331
矢張
(
やつぱり
)
此奴
(
こいつ
)
の
体
(
からだ
)
は
女
(
をんな
)
に
出来
(
でき
)
て
居
(
ゐ
)
やがる。
332
骨盤
(
こつばん
)
が
非常
(
ひじやう
)
に
大
(
でか
)
いぞ。
333
ヤア
長
(
なが
)
い
睾丸
(
きんたま
)
を
垂
(
た
)
らして
居
(
ゐ
)
やがる』
334
とギユツと
握
(
にぎ
)
り、
335
無理
(
むり
)
無体
(
むたい
)
に
後向
(
うしろむ
)
けに
引張
(
ひつぱ
)
つた。
336
馬
(
うま
)
、
337
鹿
(
しか
)
両人
(
りやうにん
)
は
睾丸
(
きんたま
)
を
引張
(
ひつぱ
)
られ
痛
(
いた
)
さに
堪
(
たま
)
らず、
338
後向
(
うしろむ
)
けにノタノタと
這
(
は
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
339
門
(
もん
)
の
外
(
そと
)
へ
引摺
(
ひきず
)
り
出
(
だ
)
された。
340
熊彦
(
くまひこ
)
、
341
虎彦
(
とらひこ
)
両人
(
りやうにん
)
は、
342
手早
(
てばや
)
く
門内
(
もんない
)
に
駆入
(
かけい
)
り、
343
潜
(
くぐ
)
り
戸
(
ど
)
の
錠前
(
ぢやうまへ
)
を
下
(
お
)
ろし、
344
熊
(
くま
)
、
345
虎
(
とら
)
『アハヽヽヽ、
346
態
(
ざま
)
ア
見
(
み
)
やがれ、
347
ノソノソとやつて
来
(
く
)
ると
又
(
また
)
こんなものだぞ。
348
早
(
はや
)
く
帰
(
かへ
)
つて
三五教
(
あななひけう
)
の
奴
(
やつ
)
に、
349
酷
(
えら
)
い
目
(
め
)
に
遭
(
あ
)
はされましたと
報告
(
はうこく
)
しやがれ』
350
馬公
(
うまこう
)
『モシモシ、
351
それは
余
(
あま
)
りで
御座
(
ござ
)
います。
352
開
(
あ
)
けて
下
(
くだ
)
さいと
無理
(
むり
)
に
申
(
まを
)
しませぬ、
353
何卒
(
どうぞ
)
、
354
馬
(
うま
)
、
355
鹿
(
しか
)
の
両人
(
りやうにん
)
が、
356
門
(
もん
)
の
外
(
そと
)
迄
(
まで
)
参
(
まゐ
)
りました、
357
と
松姫
(
まつひめ
)
さまに
報告
(
はうこく
)
して
下
(
くだ
)
さいませ』
358
虎彦
(
とらひこ
)
『
報告
(
はうこく
)
すると、
359
せぬとは、
360
吾々
(
われわれ
)
の
自由
(
じいう
)
の
権利
(
けんり
)
だ。
361
犬
(
いぬ
)
の
遠吠
(
とほぼえ
)
の
様
(
やう
)
に、
362
見
(
み
)
つともない、
363
門
(
もん
)
の
外
(
そと
)
で、
364
ワンワン
吐
(
ぬか
)
すな』
365
鹿公
(
しかこう
)
『
左様
(
さやう
)
で
御座
(
ござ
)
いませうが、
366
どうぞ、
367
何
(
なに
)
かのお
話
(
はなし
)
の
序
(
ついで
)
に、
368
一言
(
ひとこと
)
でも
宜
(
よろ
)
しいから、
369
仰有
(
おつしや
)
つて
下
(
くだ
)
さいませ』
370
虎彦
(
とらひこ
)
(
大
(
おほ
)
きな
声
(
こゑ
)
で)『
喧
(
やかま
)
しう
云
(
い
)
ふない。
371
貴様
(
きさま
)
が
言
(
い
)
つて
呉
(
く
)
れなと
云
(
い
)
つたつて、
372
此
(
この
)
手柄話
(
てがらばなし
)
を
黙
(
だま
)
つて
居
(
ゐ
)
る
馬鹿
(
ばか
)
が
何処
(
どこ
)
にあるかい。
373
ウラナイ
教
(
けう
)
の
邪魔
(
じやま
)
計
(
ばか
)
り
致
(
いた
)
す、
374
三五教
(
あななひけう
)
の
馬
(
うま
)
、
375
鹿
(
しか
)
の
両人
(
りやうにん
)
の
睾丸
(
きんたま
)
を
掴
(
つか
)
んで、
376
門外
(
もんぐわい
)
におつ
放
(
ぽ
)
り
出
(
だ
)
してやつたと
云
(
い
)
ふ、
377
古今
(
ここん
)
独歩
(
どつぽ
)
、
378
珍無類
(
ちんむるゐ
)
の
功名
(
こうみやう
)
手柄
(
てがら
)
を
包
(
つつ
)
み
隠
(
かく
)
す
必要
(
ひつえう
)
があるか、
379
縁
(
えん
)
の
下
(
した
)
の
舞
(
まひ
)
は、
380
我々
(
われわれ
)
の
取
(
と
)
らざる
所
(
ところ
)
だ、
381
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
帰
(
かへ
)
らぬか、
382
愚図
(
ぐづ
)
々々
(
ぐづ
)
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
ると、
383
薬鑵
(
やかん
)
に
熱湯
(
ねつたう
)
を
浴
(
あ
)
びせてやらうか。
384
シーツ、
385
シー、
386
こん
畜生
(
ちくしやう
)
ツ、
387
アハヽヽヽ。
388
是
(
こ
)
れで
俺
(
おれ
)
も
日頃
(
ひごろ
)
の
鬱憤
(
うつぷん
)
が
晴
(
は
)
れ、
389
溜飲
(
りういん
)
が
下
(
さが
)
つた。
390
サアこれから、
391
松姫
(
まつひめ
)
様
(
さま
)
に
申上
(
まをしあ
)
げて
喜
(
よろこ
)
んで
頂
(
いただ
)
かう、
392
さうすれば
又
(
また
)
、
393
御
(
ご
)
褒美
(
ほうび
)
に
御
(
お
)
神酒
(
みき
)
の
一升
(
いつしよう
)
もお
下
(
さ
)
げ
下
(
くだ
)
さるかも
知
(
し
)
れぬぞ、
394
オホヽヽヽ』
395
馬公
(
うまこう
)
『オイ
鹿公
(
しかこう
)
、
396
随分
(
ずゐぶん
)
結構
(
けつこう
)
な
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
試錬
(
しれん
)
に
遭
(
あ
)
つたぢやないか。
397
ようお
前
(
まへ
)
も
辛抱
(
しんばう
)
して
呉
(
く
)
れた。
398
俺
(
わし
)
は、
399
お
前
(
まへ
)
が
短気
(
たんき
)
を
起
(
おこ
)
しはせぬかと
思
(
おも
)
つて、
400
どれだけ
胸
(
むね
)
を
怯々
(
びくびく
)
さして
心配
(
しんぱい
)
したか
知
(
し
)
れなかつたよ。
401
それでこそ
俺
(
おれ
)
の
親友
(
しんいう
)
だ、
402
有難
(
ありがた
)
い、
403
此
(
この
)
通
(
とほ
)
りだ、
404
手
(
て
)
を
合
(
あは
)
して
拝
(
をが
)
むワ』
405
と
涙
(
なみだ
)
を
滝
(
たき
)
の
如
(
ごと
)
くに
流
(
なが
)
し
男泣
(
をとこな
)
きに
泣
(
な
)
き
沈
(
しづ
)
む。
406
鹿公
(
しかこう
)
『そうだな、
407
本当
(
ほんたう
)
に
結構
(
けつこう
)
な
御
(
お
)
神徳
(
かげ
)
を
頂
(
いただ
)
いた。
408
これで
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
も、
409
余程
(
よほど
)
、
410
身魂
(
みたま
)
に
力
(
ちから
)
が
出来
(
でき
)
て
胴
(
どう
)
が
据
(
す
)
わつた。
411
身魂
(
みたま
)
に
千人力
(
せんにんりき
)
の
御
(
ご
)
神徳
(
しんとく
)
を
与
(
あた
)
へて
下
(
くだ
)
さつた。
412
アヽ
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
、
413
あなたの
深
(
ふか
)
き
広
(
ひろ
)
き
御恵
(
みめぐ
)
み、
414
身
(
み
)
に
浸
(
し
)
み
渡
(
わた
)
つて
有難
(
ありがた
)
う
感謝
(
かんしや
)
致
(
いた
)
します』
415
と
嬉
(
うれ
)
し
涙
(
なみだ
)
に
掻
(
か
)
きくれる。
416
馬公
(
うまこう
)
『オー
鹿公
(
しかこう
)
、
417
よう
云
(
い
)
うて
呉
(
く
)
れた。
418
嬉
(
うれ
)
しい』
419
と、
420
しがみ
付
(
つ
)
く。
421
鹿公
(
しかこう
)
も
亦
(
また
)
、
422
馬公
(
うまこう
)
の
体
(
からだ
)
に
しがみ
付
(
つ
)
き、
423
互
(
たがひ
)
に
抱
(
いだ
)
き
合
(
あ
)
ひ、
424
忍
(
しの
)
び
泣
(
な
)
きに
泣
(
な
)
いて
居
(
を
)
る。
425
秋
(
あき
)
の
名残
(
なご
)
りの
柿
(
かき
)
の
実
(
み
)
、
426
只
(
ただ
)
二
(
ふた
)
つ、
427
冬枯
(
ふゆが
)
れの
梢
(
こずゑ
)
に
淋
(
さび
)
しげにブラ
下
(
さが
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
428
凩
(
こがらし
)
に
煽
(
あふ
)
られて、
429
烏
(
からす
)
の
雌雄
(
めをと
)
連
(
づ
)
れは
忽
(
たちま
)
ち
此
(
この
)
柿
(
かき
)
の
木
(
き
)
に
羽
(
はね
)
を
休
(
やす
)
め、
430
悲
(
かな
)
しさうに
可愛
(
かあ
)
い
可愛
(
かあ
)
いと
啼
(
な
)
き
立
(
た
)
てる。
431
嗚呼
(
ああ
)
此
(
この
)
結果
(
けつくわ
)
は、
432
如何
(
いかが
)
なるならむか。
433
(
大正一一・五・八
旧四・一二
藤津久子
録)
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