霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第九章 身魂(みたま)浄化(じやうくわ)〔六五四〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第19巻 如意宝珠 午の巻 篇:第3篇 至誠通神 よみ(新仮名遣い):しせいつうしん
章:第9章 身魂の浄化 よみ(新仮名遣い):みたまのじょうか 通し章番号:654
口述日:1922(大正11)年05月08日(旧04月12日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年2月28日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
荒鷹と鬼鷹は、旅の途上、峠の巌に腰を掛けてこれまでの経緯を思い出し話し合っていた。
二人は、ウラナイ教の拠点・高城山に、最近立派な雲が棚引くようになったのを見て、様子を探りに行こうと麓の千代川の郷の、鳴石の傍らまでやってきた。
二人は石の傍らで休息したが、石が温かいのに気づいて、その上に座った。すると、岩が鳴動を始め、次第に音響が大きくなってきた。二人は驚いて、岩から飛び降りた。
二人は岩から煙が立ち上る様を驚いてみていたが、すると一人の女神が現れた。荒鷹と鬼鷹は、岩が名高い鳴き岩であることに気づき、その上に座ってしまったことを謝罪して平伏した。
女神は二人に対して、「しばらくであった」と声を掛けた。女神の傍らの二人の稚児は、荒鷹と鬼鷹の額に、小さな紫の玉を打ち込んだ。すると荒鷹と鬼鷹の心は、穏やかになり春のように和らいだ。
女神は荒鷹に隆靖彦、鬼鷹に隆光彦と名を賜った。二人はお礼を言った。そして女神が丹州であることに気づいた。二人は丹州の本当の神名を請うたが、女神はまだそれを明かすときではない、と告げると、煙となって消えてしまった。
二人は鳴き石に礼拝すると、高城山に向かって進んでいった。すると馬公と鹿公に行きあたった。馬公と鹿公は、二人を荒鷹・鬼鷹とは気づかず、丹州だと勘違いしている。
荒鷹と鬼鷹は、宣伝歌にこれまでの経緯を説明して歌った。道すがら、馬公と鹿公は、高城山の言霊戦は、主人の失態を取り戻すためなので、自分たちに譲って欲しいと隆靖彦、隆光彦に頼んだ。
隆靖彦、隆光彦は後ろで見守ることなり、馬公、鹿公が高城山の館に挑むこととなった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2024-03-17 06:55:31 OBC :rm1909
愛善世界社版:139頁 八幡書店版:第4輯 81頁 修補版: 校定版:141頁 普及版:64頁 初版: ページ備考:
001 (こころ)(やみ)(そら)()れて、002世界(せかい)(おに)(なし)()の、003(たうげ)(いはほ)(こし)打掛(うちか)け、004雪雲(ゆきぐも)(そら)(なが)めて、005雑談(ざつだん)(ふけ)二人(ふたり)(をとこ)あり。
006荒鷹(あらたか)『アヽ(おも)ひまはせば今年(ことし)(はる)(はじめ)007鬼熊別(おにくまわけ)部下(ぶか)となつて、008三岳山(みたけやま)岩窟(がんくつ)数多(あまた)手下(てした)引連(ひきつ)れ、009()からぬ(こと)(ばか)りを得意(とくい)になつて、010自己(じこ)保存(ほぞん)人生(じんせい)本領(ほんりやう)だと(おも)()め、011利己(りこ)主義(しゆぎ)行動(かうどう)(もつ)金科(きんくわ)玉条(ぎよくでう)として()たが、012まだ天道(てんだう)(さま)吾々(われわれ)()(たま)はざりしか、013音彦(おとひこ)014加米彦(かめひこ)015悦子姫(よしこひめ)(さま)一行(いつかう)(すく)はれ、016飜然(ほんぜん)(さと)り、017三五教(あななひけう)入信(にふしん)さして(いただ)き、018鬼熊別(おにくまわけ)本城(ほんじやう)逆襲(ぎやくしふ)し、019言向和(ことむけやは)さむと心力(しんりよく)(つく)して()たが、020まだ鬼熊別(おにくまわけ)大将(たいしやう)は、021(かみ)(すく)ひのお(つな)(かか)つて()なかつたと()え、022吾々(われわれ)熱誠(ねつせい)なる言霊(ことたま)忠告(ちうこく)馬耳(ばじ)東風(とうふう)()(なが)し、023(つひ)には鬼雲彦(おにくもひこ)(あと)()うて何処(いづこ)ともなく遁走(とんそう)して(しま)つた。024仮令(たとへ)三日(みつか)でも(おな)(なべ)はだ(めし)()つた間柄(あひだがら)だから、025我々(われわれ)としては何処(どこ)までも、026(まこと)(みち)(すく)はねばならないのだが、027何処(どこ)へお()でになつたか行衛(ゆくへ)()れず、028三五教(あななひけう)這入(はい)つてから、029()れと()(やう)(かみ)(さま)()奉仕(ほうし)出来(でき)ず、030(こま)つたものだ。031竹生島(ちくぶしま)()つて()れば、032英子姫(ひでこひめ)(さま)神業(しんげふ)完成(くわんせい)(あそ)ばして、033素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)(さま)(とも)に、034フサの(くに)斎苑(いそ)()住居(ぢうきよ)へお(かへ)(あそ)ばした(あと)なり、035三五教(あななひけう)方々(かたがた)には、036()()りバラになつて(わか)れて(しま)ひ、037(ほとん)方向(はうかう)(まよ)今日(けふ)有様(ありさま)038せめては高城山(たかしろやま)松姫(まつひめ)でも言向和(ことむけやは)して、039(ひと)(こう)()てねばなるまい………ナア鬼鷹(おにたか)
040鬼鷹(おにたか)『オーそうだ。041此処(ここ)(ところ)(ちが)ふが、042ヤツパリ大枝山(おほえやま)だ。043あの(むか)うに()えるは(たし)かに高城山(たかしろやま)だ。044何時(いつ)悪神(あくがみ)邪気(じやき)()つて黒雲(くろくも)(やま)(いただき)(つつ)んで()たが、045今日(けふ)(また)どうしたものだ。046何時(いつ)にない立派(りつぱ)(くも)棚引(たなび)いて()るではないか。047(なん)でも三五教(あななひけう)(たれ)かが征服(せいふく)して、048結構(けつこう)(かみ)(さま)(まつ)り、049神徳(しんとく)(あら)はれて()るのではなからうかな。050万一(まんいち)さうであるとすれば、051結構(けつこう)結構(けつこう)だが、052吾々(われわれ)はモウ(この)自転倒(おのころ)(じま)()いて活動(くわつどう)する(ところ)()くなつた(やう)なものだ。053()(かく)高城山(たかしろやま)一度(いちど)踏査(たふさ)して実否(じつぴ)(さぐ)り、054万々一(まんまんいち)三五教(あななひけう)帰順(きじゆん)して()たとすれば、055モウ仕方(しかた)がない。056どつと()()んで(この)(うみ)(わた)り、057竜宮(りうぐう)(ひと)(じま)へでも()つて、058一働(ひとはたら)きしようぢやないか』
059荒鷹(あらたか)『オウそれが上分別(じやうふんべつ)だ。060(しか)第一(だいいち)着手(ちやくしゆ)として、061高城山(たかしろやま)探険(たんけん)()かけやうぢやないか』
062鬼鷹(おにたか)高城山(たかしろやま)立派(りつぱ)(くも)棚引(たなび)いて()るが、063あれ()よ、064真西(まにし)(あた)つて(また)もや弥仙山(みせんざん)(ふもと)(やう)(むらさき)(くも)靉靆(たなび)いて()るぢやないか。065玉照姫(たまてるひめ)(さま)匹敵(ひつてき)した男神(をがみ)(さま)()出現(しゆつげん)(あそ)ばしたのではあるまいかなア。066(しか)(なに)()(かく)高城山(たかしろやま)打向(うちむか)ひ、067(その)(つぎ)(むらさき)(くも)出処(でどころ)調(しら)べる(こと)としようかい。068サアサア()かう』
069(いた)()てた(やう)坂道(さかみち)(くだ)り、070西(にし)西(にし)へと駆出(かけだ)した。071満目(まんもく)蕭然(せうぜん)として()一面(いちめん)薄雪(はくせつ)白布(はくふ)(かぶ)つて()る。072仁王(にわう)(やう)足型(あしがた)(いん)(なが)ら、073高城山(たかしろやま)山麓(さんろく)074千代川(ちよかは)(さと)075鳴石(なきいし)(かたはら)までやつて()た。
076荒鷹(あらたか)一方(いつぱう)樹木(じゆもく)鬱蒼(うつさう)とした箱庭(はこには)(しき)小山(こやま)に、077()(はな)()いた(やう)に、078白雪(はくせつ)(こずゑ)()まり、079(とき)ならぬ(はな)()かせ、080(まへ)(なん)とも()れぬ綺麓(きれい)(みづ)(なが)れた大堰川(おほいがは)081こんな()景色(けしき)大枝(おほえ)(さか)()えてこのかた、082()(こと)()い。083(ひと)(この)(へん)休息(きうそく)した(うへ)084ボツボツと高城山(たかしろやま)(むか)(こと)にしようかい』
085鬼鷹(おにたか)(なん)だか(めう)(こゑ)がし()したぢやないか。086(べつ)人間(にんげん)らしい(もの)()らず、087(けだもの)とても()ないやうだ。088(きつね)(たぬき)足型(あしがた)薄雪(はくせつ)(うへ)(のこ)つて()るが、089(しか)(きつね)(こゑ)でもなし、090人間(にんげん)(こゑ)でもなし、091合点(がつてん)のいかぬ(ひび)きがするぢやないか。092()(かく)此処(ここ)(おほ)きな(いは)がある。093どこもかも薄雪(うすゆき)だらけだが、094(この)(いは)(かぎ)つて一片(いつぺん)(ゆき)もたまつて()ない、095さうして(また)カラカラに(かわ)いて()る。096(さいは)(この)(いは)(うへ)で、097楊柳(やうりう)観音(くわんおん)ぢやないが、098(ひと)瞑目(めいもく)静坐(せいざ)心胆(しんたん)()つて()たらどうだ』
099 荒鷹(あらたか)打首肯(うちうなづ)(なが)ら、100平坦(へいたん)(いはほ)(うへ)にドツカと(すわ)つた。
101荒鷹(あらたか)『オイ兄弟(きやうだい)102大変(たいへん)(この)(いは)(あたた)かいぞ。103(まへ)一寸(ちよつと)此処(ここ)(すわ)つて()よ』
104鬼鷹(おにたか)『ヤア本当(ほんたう)(あたた)かい(いは)だなア。105地上(ちじやう)一面(いちめん)(つめ)たい(ゆき)()り、106冷酷(れいこく)世界(せかい)人情(にんじやう)(この)(とほ)りと、107天地(てんち)から(かがみ)()して、108(おれ)(たち)(しめ)して御座(ござ)るのに、109こりや(また)どうしたものだ。110(わづ)(ひと)(つぼ)ばかりの(この)(いは)(うへ)(ばか)りは、111冷酷(れいこく)(ゆき)もたまらず、112(はる)(やう)(あたた)かみを()びて()る。113()れを()ても、114どつかに(あたた)かい人間(にんげん)も、115チツとは(のこ)つて()ると()(かみ)(さま)暗示(あんじ)だらうよ』
116 (たちま)膝下(しつか)平面岩(へいめんいは)鳴動(めいどう)(はじ)め、117刻々(こくこく)音響(おんきやう)強大(きやうだい)猛烈(まうれつ)()(くは)へて()た。118二人(ふたり)(おどろ)いて足早(あしばや)()()り、119七八間(しちはちけん)此方(こなた)()(かへ)し、120岩石(がんせき)見詰(みつ)めて()た。121(たちま)岩石(がんせき)白煙(はくえん)()()した。122(つづ)いて(むらさき)(くも)(ほそ)(なが)く、123白煙(はくえん)(なか)(さを)()てた(やう)(てん)(ちう)し、124(わらび)(にぎ)(こぶし)(かた)めたやうな恰好(かつかう)になつては、125二三十(にさんじつ)(けん)中空(ちうくう)()え、126(また)(おな)じく(あら)はれては()え、127幾回(いくくわい)となく(むらさき)円柱(ゑんちゆう)立昇(たちのぼ)り、128生々(せいせい)滅々(めつめつ)して()る。129二人(ふたり)は『ヤアヤア』と(こゑ)()()(おどろ)くばかりであつた。130猛烈(まうれつ)なる大爆音(だいばくおん)次第(しだい)々々(しだい)低声(ていせい)となり、131(つひ)にピタリと()まつた。132白煙(はくえん)依然(いぜん)として(さかん)立昇(たちのぼ)つて()る。133(この)(とき)(きん)(かむり)(いただ)き、134種々(しゆじゆ)宝玉(ほうぎよく)(もつ)(つく)られたる瓔珞(やうらく)身体(しんたい)一面(いちめん)着飾(きかざ)り、135(しろ)薄衣(うすぎぬ)(ちやく)したる、136白面(はくめん)豊頬(ほうけふ)女神(めがみ)137眉目(びもく)位置(ゐち)()ひ、138(はな)(つき)具合(ぐあひ)()ひ、139(くちびる)(いろ)(くれなゐ)(てい)し、140(ゆき)(ごと)()(すこ)しく()せ、141ニヤリと(わら)(なが)(あら)はれ(たま)うた。
142荒鷹(あらたか)『ヤア(おと)名高(なだか)川堰(かはぜき)鳴石(なきいし)であつたか。143それとは()らずに()無礼千万(ぶれいせんばん)にも、144吾々(われわれ)(けが)れた(からだ)()みにじり、145(まこと)申訳(まをしわけ)のない(こと)(いた)したワイ。146キツと鳴石(なきいし)(れい)(あら)はれて、147(なに)吾々(われわれ)(たい)して(きび)しい()託宣(たくせん)(くだ)されるのであらう。148(なに)はともあれお(わび)をするより仕方(しかた)がない』
149荒鷹(あらたか)薄雪(はくせつ)()もる大地(だいち)にペタリと平太張(へたば)つて、150謝罪(しやざい)()(へう)した。151鬼鷹(おにたか)(おな)じく大地(だいち)鰭伏(ひれふ)(ふる)うて()る。152(たちま)虚空(こくう)音楽(おんがく)(きこ)え、153(はす)()(やう)大花弁(だいくわべん)がパラパラと()つて()た。154四辺(あたり)はえも()はれぬ芳香(はうかう)(つつ)まれた。155荒鷹(あらたか)(かしら)()()(なが)ら、156(すこ)しく(くび)()げ、157一方(いつぱう)()にて(おそ)(おそ)岩上(がんじやう)女神(めがみ)(なが)めた。158女神(めがみ)二人(ふたり)(うつく)しき稚児(ちご)左右(さいう)(はべ)らせ、159(れい)白烟(はくえん)(なか)莞爾(くわんじ)として立現(たちあら)はれ、160(しろ)(やや)桃色(ももいろ)()びたる繊手(せんしゆ)()()べて、161此方(こなた)両人(りやうにん)(むか)手招(てまね)きして()る。
162荒鷹(あらたか)『オイ鬼鷹(おにたか)163ソウツと(あたま)()げてあの女神(めがみ)(をが)んで()よ。164(なん)だか吾々(われわれ)両人(りやうにん)(たい)して御用(ごよう)()りそうだぞ』
165 (この)(こゑ)鬼鷹(おにたか)はコワゴワ(なが)ら、166女神(めがみ)(はう)()(そそ)いだ刹那(せつな)167鬼鷹(おにたか)は『アツ』と(さけ)んで、168(また)もや大地(だいち)(あたま)摺付(すりつ)けた。169何時(いつ)()にやら両人(りやうにん)(からだ)何者(なにもの)にか()きずらるる(やう)心地(ここち)し、170以前(いぜん)平岩(ひらいは)(まへ)安着(あんちやく)して()た。171女神(めがみ)(しと)やかに、
172女神荒鷹(あらたか)どの、173鬼鷹(おにたか)どの、174しばらくで御座(ござ)つたなア』
175 (この)(こゑ)両人(りやうにん)一度(いちど)(かしら)(もた)げ、176熟々(つくづく)女神(めがみ)姿(すがた)打眺(うちなが)め、177()()ちぬ面色(おももち)にて(あたま)()いて()る。178女神(めがみ)二人(ふたり)稚児(ちご)に、179(ふところ)より(うるは)しき(たま)()たせ、180何事(なにごと)目配(めくば)せした。181二人(ふたり)稚児(ちご)両人(りやうにん)(まへ)(すす)みより、182(ちひ)さき(むらさき)(たま)両人(りやうにん)(ひたひ)()て、183コンコンと()()んだ。184二人(ふたり)は『アイタタ』と()()もなく、185(いた)みは()まつた。186二人(ふたり)稚児(ちご)(たちま)女神(めがみ)両脇(りやうわき)復帰(ふくき)し、187さも愉快(ゆくわい)げに(わら)つて()る。188(この)(とき)より荒鷹(あらたか)189鬼鷹(おにたか)二人(ふたり)(なん)となく(こころ)(おだや)かに(はる)(やう)気分(きぶん)(ただよ)うた。
190女神(めがみ)(しづか)に、
191女神唯今(ただいま)より荒鷹(あらたか)192鬼鷹(おにたか)では()りませぬ。193隆靖彦(たかやすひこ)194隆光彦(たかてるひこ)()(あた)へます。195どうぞ今後(こんご)(まこと)神人(しんじん)となつて、196神業(しんげふ)参加(さんか)して(くだ)さい。197(わらは)(かほ)(おぼ)えて()ますか』
198 荒鷹(あらたか)はやつと安堵(あんど)(てい)
199荒鷹隆靖彦(たかやすひこ)()(たま)はり、200有難(ありがた)き、201()()つての光栄(くわうえい)御座(ござ)います』
202隆光彦(たかてるひこ)(わたくし)(ごと)(くも)()つた身魂(みたま)(たい)し、203隆光彦(たかてるひこ)(おん)()(くだ)さいましたのは、204(なん)ともお(れい)申様(まをしやう)御座(ござ)いませぬ。205失礼(しつれい)(なが)貴神(あなた)(さま)吾々(われわれ)(とも)三岳山(みたけやま)岩窟(がんくつ)にお住居(すまゐ)(あそ)ばした丹州(たんしう)(さま)では御座(ござ)いませぬか』
206 女神(めがみ)莞爾(くわんじ)として首肯(うなづ)く。
207隆靖彦(たかやすひこ)『アヽ()れで世界晴(せかいば)れが(いた)しました。208モウ(この)(うへ)高城山(たかしろやま)松姫(まつひめ)言向(ことむ)(やは)し、209(みづ)御霊(みたま)大神(おほかみ)(さま)()神業(しんげふ)奉仕(ほうし)し、210天地(てんち)(わだか)まる八岐(やまた)大蛇(をろち)言向(ことむ)(やは)()神力(しんりき)は、211十分(じふぶん)(あた)へられた(やう)心持(こころもち)になりました。212有難(ありがた)御座(ござ)います』
213 隆光彦(たかてるひこ)無言(むごん)(まま)214(かしら)()感謝(かんしや)()表示(へうじ)する。
215隆靖彦(たかやすひこ)『あなた(さま)(いま)まで丹州(たんしう)()(へん)じ、216吾々(われわれ)身魂(みたま)(みが)(ため)に、217種々(しゆじゆ)雑多(ざつた)()苦労(くらう)(あそ)ばした(かみ)(さま)218どうぞ(おん)()(あら)はし(くだ)さいませ』
219女神(めがみ)(いま)(わが)()(あら)はすべき(とき)にあらず。220自然(しぜん)貴方(あなた)(がた)身魂(みたま)感得(かんとく)()(ところ)まで(みが)いて(くだ)さい。221(わらは)素性(すじやう)明瞭(はつきり)(わか)りになつた(その)(とき)は、222貴方(あなた)(がた)身魂(みたま)天晴(あつぱ)れの神人(しんじん)となられた(とき)です。223それまでは、224あなた(がた)(ため)懸案(けんあん)として(しばら)留保(りうほ)して()きませう』
225()ふかと()れば、226三柱(みはしら)姿(すがた)(けぶり)となつて()えて(しま)つた。227鳴石(なきいし)依然(いぜん)として(ちひ)さき(うな)りを()てて()る。
228隆靖彦(たかやすひこ)『なんと不思議(ふしぎ)(こと)()つたもんですなア。229吾々(われわれ)不思議(ふしぎ)女神(めがみ)さまが(あら)はれて、230隆靖彦(たかやすひこ)だとか、231隆光彦(たかてるひこ)だとか、232身分(みぶん)不相応(ふさうおう)神名(しんめい)(くだ)さつたが、233実際(じつさい)(おい)責任(せきにん)(つく)(こと)出来(でき)るであらうかと、234(また)(ひと)心配(しんぱい)()えて()たやうだ』
235隆光彦(たかてるひこ)『そうだ、236(わたくし)同感(どうかん)だ。237(しか)しあの女神(めがみ)(さま)何処(どこ)となく丹州(たんしう)さまにソツくりだつた。238(まへ)もさう(おも)つただらう』
239隆靖彦(たかやすひこ)『ヤア(わし)はあまり勿体(もつたい)なくて、240とつくりと(かほ)を、241ヨウ(をが)まなんだよ。242(なん)とはなしに()がマクマクして、243(おもて)()ける(こと)出来(でき)なかつた。244そうして(なん)だか(こころ)(そこ)から(はづか)しくつて、245自分(じぶん)今迄(いままで)罪悪(ざいあく)(てら)される(やう)()がして、246随分(ずゐぶん)(くる)しかつた。247()れはヒヨツとしたら(ゆめ)ぢや()るまいかなア』
248隆光彦(たかてるひこ)『ナニ、249(ゆめ)(どころ)本当(ほんたう)(あら)はれ(たま)うたのだ。250()うなつた以上(いじやう)は、251層一層(そういつそう)言行(げんかう)(つつし)んで立派(りつぱ)宣伝使(せんでんし)にならなくちや、252(いま)女神(めがみ)(さま)(たい)して申訳(まをしわけ)()からう。253(しか)(なが)()鳴石(なきいし)依然(いぜん)として(うな)つて()るぢやないか。254又々(またまた)どんな(かみ)(さま)出現(しゆつげん)(あそ)ばすか(わか)らないよ。255モウ(しばら)此処(ここ)祝詞(のりと)奏上(そうじやう)して()つて()たらどうだらう』
256隆靖彦(たかやすひこ)『ヤア(この)(うへ)立派(りつぱ)(かみ)(さま)()られてたまるものかい。257モウ()れで結構(けつこう)だ。258(はづ)かしくつて仕方(しかた)がない。259サアサア(はや)高城山(たかしろやま)()かう』
260 二人(ふたり)鳴石(なきいし)(うやうや)しく礼拝(れいはい)し、261足早(あしばや)大川(おほかは)(つつみ)(つた)つて(のぼ)()く。262(たちま)ちドンと()(あた)つた二人(ふたり)(をとこ)263(おどろ)いて、
264二人(ふたり)『ヤアこれはこれは(まこと)無調法(ぶてうはふ)(いた)しました。265あまり(うつ)むいて(みち)(いそ)いで()ましたので、266女神(めがみ)(さま)()(とほ)りとも()らず、267衝突(しようとつ)(いた)しまして、268申訳(まをしわけ)御座(ござ)いませぬ。269どうぞお(ゆる)(くだ)さいませ』
270隆靖彦(たかやすひこ)『ヤアお(まへ)は、271馬公(うまこう)鹿公(しかこう)ぢやないか。272エライ(いきほ)ひで何処(どこ)()(つも)りぢや』
273馬公(うまこう)『ハイ吾々(われわれ)大将(たいしやう)274紫姫(むらさきひめ)275青彦(あをひこ)両人(りやうにん)さま、276大失敗(だいしつぱい)(えん)じ、277聖地(せいち)にも()れないと()立場(たちば)になつて(くるし)んで()られます。278(わたくし)()両人(りやうにん)はあまりお()(どく)で、279()()(わけ)にも()かず、280そつと(やかた)()()し、281江州(ごうしう)竹生島(ちくぶしま)(まゐ)つて、282英子姫(ひでこひめ)(さま)にお()にかかり、283(なさけ)(もつ)て、284素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)(さま)両人(りやうにん)のお(わび)をして(いただ)かうと(おも)ひ、285()(もの)取敢(とりあへ)(まゐ)りました。286どうぞ丹州(たんしう)さま、287(なん)とか、288あなたもお力添(ちからぞへ)をして(くだ)さいませぬか、289(たの)(まを)します』
290隆靖彦(たかやすひこ)(わたし)丹州(たんしう)さまぢやない。291(まへ)さんと一緒(いつしよ)に、292(おに)(じやう)言霊戦(ことたません)(むか)つた大悪人(だいあくにん)たりし、293荒鷹(あらたか)御座(ござ)いますよ』
294馬公(うまこう)『モシモシ丹州(たんしう)さま、295ソラ(なに)仰有(おつしや)います。296眉目(びもく)清秀(せいしう)297(げん)として(をか)(べか)らざるあなたの()容貌(ようばう)298女神(めがみ)姿(すがた)()けて()らつしやるが、299適切(てつき)りあなたは(まが)(かた)なき丹州(たんしう)(さま)300そんな意地(いぢ)(わる)(こと)仰有(おつしや)らずに、301()(ゆる)して、302打解(うちと)けて(くだ)さいな』
303鹿公(しかこう)『ヤア不思議(ふしぎ)だ。304此処(ここ)にも丹州(たんしう)さまそつくりの(かた)(また)(あら)はれた。305一目(ひとめ)()(とき)から(かは)つたお(かた)ぢやと(おも)つて()たが、306ヤツパリ(かみ)(さま)化身(けしん)御座(ござ)いましたか。307どうぞ唯今(ただいま)(まを)した(とほ)りの始末(しまつ)ですから、308(よろ)しく()神力(しんりき)(もつ)てお(たす)(くだ)さいませ』
309隆光彦(たかてるひこ)『イエイエ(けつ)して(けつ)して、310(わたくし)丹州(たんしう)さまでは御座(ござ)いませぬ。311荒鷹(あらたか)兄弟分(きやうだいぶん)鬼鷹(おにたか)()ふ、312三岳山(みたけやま)岩窟(がんくつ)(おい)て、313(あく)ばかり(はたら)いて()つた(をとこ)御座(ござ)いますよ』
314(うま)315鹿(しか)『なんと仰有(おつしや)つても、316鬼鷹(おにたか)317荒鷹(あらたか)(やう)粗雑(そざつ)容貌(ようばう)ぢや()りませぬワ。318彼奴(あいつ)ア、319一旦(いつたん)改心(かいしん)はしよつたが、320(また)地金(ぢがね)()して、321どつかへ迂路(うろ)つき、322(この)(ごろ)鬼雲彦(おにくもひこ)鬼熊別(おにくまわけ)(あと)()うて、323(あく)(みち)逆転(ぎやくてん)旅行(りよかう)をやつて()るだらうと、324吾々(われわれ)仲間(なかま)評定(へうぢやう)(のぼ)つて()(くらゐ)(をとこ)です。325そんな善悪(ぜんあく)不可解(ふかかい)筒井(つつゐ)(しき)(をとこ)()(かた)つたりなさらずに、326本当(ほんたう)(こと)()つて(くだ)さい。327(わたくし)(たち)千騎(せんき)一騎(いつき)場合(ばあひ)御座(ござ)います』
328隆靖彦(たかやすひこ)世間(せけん)眼識(めがね)(ちが)はぬものだなア。329何程(なにほど)改心(かいしん)してもヤツパリどつかに、330副守(ふくしゆ)割拠(かつきよ)して()つたと()えて、331三五教(あななひけう)()連中(れんちう)からは、332(いま)333馬公(うまこう)334鹿公(しかこう)()つた(やう)()られて()つたのだなア。335アーア仕方(しかた)のないものだ。336どうぞしてあの(とき)姿(すがた)になつて、337(この)両人(りやうにん)(うたがひ)()らしたいものだ。338()うなると、339(うるは)しき容貌(ようばう)になつたのが、340(かへつ)有難(ありがた)迷惑(めいわく)だ。341ナア鬼鷹(おにたか)否々(いやいや)342隆光彦(たかてるひこ)さま…』
343隆光彦(たかてるひこ)『アヽさうですなア。344(しか)し、345馬公(うまこう)さま、346鹿公(しかこう)さまにまで(うたが)はれる(ほど)347霊魂(みたま)向上(かうじやう)し、348(からだ)相貌(さうばう)までが(かは)つて()たと()(こと)は、349(じつ)(たふと)いものだ。350ヤツパリ人間(にんげん)霊魂(みたま)第一(だいいち)だ。351……モシモシ(うま)さま鹿(しか)さま、352(けつ)して(うそ)(まを)しませぬ。353たつた(いま)354(なん)とも()れぬ立派(りつぱ)女神(めがみ)(さま)から、355(たま)(いただ)いたが最後(さいご)356()んなに変化(へんくわ)して(しま)つたのだ。357()隆靖彦(たかやすひこ)358隆光彦(たかてるひこ)(いただ)いたのだが、359つい(いま)(さき)まで依然(いぜん)として、360荒鷹(あらたか)361鬼鷹(おにたか)姿(すがた)()つたのだ。362どうぞ(うたがひ)()らして(くだ)さい』
363 (うま)364鹿(しか)二人(ふたり)疑団(ぎだん)(くも)(つつ)まれ、365両人(りやうにん)姿(すがた)(あたま)(うへ)から(あし)爪先(つまさき)まで、366念入(ねんい)りに見詰(みつ)めて()る。
367隆靖彦(荒鷹)・隆光彦(鬼鷹)『バラモン(けう)総大将(そうだいしやう)
368鬼雲彦(おにくもひこ)部下(ぶか)となり
369三岳(みたけ)(やま)岩窟(がんくつ)
370(こころ)(あら)荒鷹(あらたか)
371生血(いきち)(しぼ)鬼鷹(おにたか)
372(あら)はれ()でて四方(よも)八方(やも)
373老若(らうにやく)男女(なんによ)(かど)はかし
374無慈悲(むじひ)(かぎ)りを(つく)したる
375鬼熊別(おにくまわけ)諸共(もろとも)
376大江(おほえ)(やま)(おに)(じやう)
377三岳(みたけ)(やま)山砦(さんさい)
378(かま)へて()まへる(をり)もあれ
379天津(あまつ)御空(みそら)(くも)()けて
380(くだ)りましたか()()りて
381(あら)はれましたか()らねども
382(なん)とはなしに威厳(ゐげん)ある
383丹州(たんしう)さまがやつて()
384(わし)乾児(こぶん)にして()れと
385(かしら)()げて(たの)まれる
386二人(ふたり)(もと)より(かみ)ならぬ
387()(かな)しさに丹州(たんしう)
388奴隷(どれい)(ごと)()使(つか)
389紫姫(むらさきひめ)主従(しゆじゆう)
390ウマウマ岩窟(いはや)(だま)()
391馬公(うまこう)鹿公(しかこう)二人(ふたり)をば
392地獄(ぢごく)(ひと)しき岩穴(いはあな)
393(なさけ)容赦(ようしや)荒縄(あらなは)
394(しば)つてヤツと()()みし
395天地(てんち)()れざる大悪(だいあく)
396(つみ)をも(にく)まず三五(あななひ)
397(かみ)(をしへ)宣伝使(せんでんし)
398音彦(おとひこ)加米彦(かめひこ)(あら)はれて
399悦子(よしこ)(ひめ)(まも)りつつ
400(ふか)(つみ)をば()(ゆる)
401(かみ)(をしへ)(みちび)きて
402(たちま)(かは)神心(かみごころ)
403(ひと)(なや)める(おに)(じやう)
404悪魔(あくま)(とりで)立向(たちむか)
405()くも芽出(めで)たき言霊(ことたま)
406(きよ)(いくさ)参加(さんか)して
407(かみ)(たふと)(こと)()
408三五教(あななひけう)(かみ)(みち)
409四方(よも)国々(くにぐに)(ひろ)めむと
410(こころ)(くば)折柄(をりから)
411弥仙(みせん)(やま)山麓(さんろく)
412(かみ)()らせか(むらさき)
413(くも)立昇(たちのぼ)(うるは)しさ
414吾々(われわれ)二人(ふたり)(なん)となく
415(くも)()かるる心地(ここち)して
416()花姫(はなひめ)(まつ)りたる
417御山(みやま)(ふもと)()()れば
418豈計(あにはか)らむや丹州(たんしう)
419威厳(ゐげん)(そな)はる御姿(みすがた)
420(ふたた)(おどろ)(かしこ)みて
421(きびす)(かへ)須知山(しゆちやま)
422(たうげ)(うへ)()()れば
423常彦(つねひこ)さまや(たき)(いた)
424二人(ふたり)姿(すがた)(おどろ)きつ
425一言(ひとこと)二言(ふたこと)()ひかはし
426丹州(たんしう)さまの(あふ)せをば
427(かしこ)(つか)東路(あづまぢ)
428()して山坂(やまさか)打渉(うちわた)
429荒波(あらなみ)(たけ)琵琶(びは)(うみ)
430英子(ひでこ)(ひめ)(かく)れます
431竹生(ちくぶ)(しま)()()れば
432藻抜(もぬ)けの(から)果敢(はか)なさに
433(こま)(かしら)()(なほ)
434彼方(あちら)此方(こちら)彷徨(さまよ)ひつ
435(わが)信仰(しんかう)堅木原(かたぎはら)
436足並(あしなみ)(そろ)へて沓掛(くつかけ)
437(さと)()()懺悔坂(ざんげざか)
438(やうや)(のぼ)(なし)()
439(たうげ)()ちて(なが)むれば
440(はるか)()ゆる西(にし)(そら)
441高城山(たかしろやま)(いただ)きに
442五色(ごしき)(くも)棚引(たなび)きし
443(その)光景(くわうけい)憧憬(あこが)れつ
444薄雪(はくせつ)()()()()れば
445(かぜ)()(たか)鳴石(なきいし)
446(うへ)より(のぼ)白煙(しらけぶり)
447また立昇(たちのぼ)(むらさき)
448(くも)(こころ)(うば)はれつ
449両手(りやうて)(あは)(をが)(うち)
450(けぶり)(なか)より(あら)はれし
451荘厳(さうごん)無比(むひ)女神(めがみ)さま
452二人(ふたり)稚児(ちご)(ともな)ひて
453()れにうつしき宝玉(ほうぎよく)
454(さづ)(たま)うと()(うち)
455(おに)をも(あざむ)醜体(しうたい)
456二人(ふたり)(たちま)(この)(とほ)
457白衣(びやくい)(そで)(つつ)まれて
458容貌(ようばう)(たちま)一変(いつぺん)
459隆靖彦(たかやすひこ)隆光彦(たかてるひこ)
460(をしへ)(つかさ)名付(なづ)けられ
461やうやう此処(ここ)()()れば
462(かほ)見覚(みおぼ)えた馬公(うまこう)
463鹿公(しかこう)二人(ふたり)(めぐ)()
464(にはか)(かは)(わが)姿(すがた)
465如何(いか)(ほど)言葉(ことば)(つく)すとも
466(うべ)なひまさぬは道理(だうり)なれ
467アヽ()(なが)()(なが)
468()れはヤツパリ荒鷹(あらたか)
469鬼鷹(おにたか)二人(ふたり)向上身(こうじやうしん)
470どうぞ(うたがひ)()らしませ
471(ひと)(こころ)第一(だいいち)
472霊魂(みたま)(みが)けば(たちま)ちに
473(おに)(へん)じて(かみ)となり
474(こころ)(ひと)つの持方(もちかた)
475(かみ)(たちま)(おに)となる
476さは()(なが)(ひと)()
477如何(いか)霊魂(みたま)(みが)くとも
478(かみ)(ちから)()らざれば
479徹底(てつてい)(てき)(たましひ)
480(きよ)まるものに()らざらむ
481自力(じりき)信仰(しんかう)もよけれども
482(ただ)何事(なにごと)(ひと)()
483他力(たりき)(かみ)()(まか)
484(こころ)(まか)皇神(すめかみ)
485(すく)ひを()るより(みち)はない
486(ひと)(さか)しき利巧(りかう)もて
487(まこと)(みち)(きは)めむと
488(おも)うた(こと)(あやま)りを
489(いま)(やうや)くに(さと)りけり
490(あゝ)馬公(うまこう)鹿公(しかこう)
491人間心(にんげんごころ)振棄(ふりす)てて
492(ただ)何事(なにごと)惟神(かむながら)
493(かみ)他力(たりき)打任(うちまか)
494(まこと)信仰(しんかう)()むがよい
495()れは()れより高城(たかしろ)
496(やま)(ふもと)(あら)はれし
497ウラナイ(けう)宣伝使(せんでんし)
498松姫(まつひめ)さまを言向(ことむ)けて
499(まこと)(みち)(すく)はむと
500(おも)(さだ)めて(すす)()
501紫姫(むらさきひめ)若彦(わかひこ)
502二人(ふたり)(こころ)(さつ)すれど
503人間心(にんげんごころ)如何(いか)にして
504(すく)手段(てだて)がありませうか
505(たま)(みが)いて(いま)(ただ)
506(はな)()(はる)()てばよい
507(かむ)素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)
508無量(むりやう)無限(むげん)のお慈悲心(じひしん)
509如何(いか)でか見捨(みす)(たま)はむや
510アヽ惟神(かむながら)々々(かむながら)
511御霊(みたま)(さち)はひましまして
512紫姫(むらさきひめ)若彦(わかひこ)
513如何(いか)なる(つみ)()りとても
514(こころ)(たひ)らに(やす)らかに
515直日(なほひ)見直(みなほ)聞直(ききなほ)
516()(なほ)しませ素盞嗚(すさのを)
517大神(おほかみ)(さま)()(まつ)
518朝日(あさひ)()るとも(くも)るとも
519(つき)()つとも()くるとも
520仮令(たとへ)大地(だいち)(しづ)むとも
521(まこと)(ひと)つの麻柱(あななひ)
522(みち)(つらぬ)吾々(われわれ)
523(かみ)(すく)ひは()(あたり)
524(かなら)ずともに二人(ふたり)(とも)
525(こころ)(いた)(たま)ふまじ
526女神(めがみ)姿(すがた)(あら)はれし
527吾々(われわれ)二人(ふたり)先頭(せんとう)
528高城山(たかしろやま)(むか)()
529馬公(うまこう)鹿公(しかこう)両人(りやうにん)
530執着心(しふちやくしん)()()てて
531(われ)()(とも)言霊(ことたま)
532(きよ)(いくさ)(くは)はりて
533(ふと)しき功績(いさを)()(たま)
534いざいざさらば、いざさらば
535(いち)()(はや)片時(かたとき)
536()(すむや)けく(まゐ)りませう
537(かみ)(なんぢ)(とも)にあり
538(かみ)(めぐみ)(うみ)よりも
539(ふか)しと()けば高城(たかしろ)
540(やま)如何(いか)(ほど)(さか)しとも
541悪魔(あくま)(いきほひ)(つよ)くとも
542(かみ)(ひかり)()()けて
543常世(とこよ)(やみ)(てら)()
544三五教(あななひけう)吾々(われわれ)
545()(うへ)こそは(たの)しけれ
546アヽ惟神(かむながら)々々(かむながら)
547御霊(みたま)(さち)はひ()しませよ』
548宣伝歌(せんでんか)(うた)ひつつ、549一行(いつかう)()(にん)一歩(ひとあし)々々(ひとあし)550ウラナイ(けう)松姫(まつひめ)(やかた)()して近付(ちかづ)きぬ。
551馬公(うまこう)『モシモシ最前(さいぜん)のお(うた)()つて、552(わたくし)(たち)もスツカリと信仰(しんかう)妙味(めうみ)効果(かうくわ)が、553心底(しんてい)から諒解(りやうかい)出来(でき)ました。554(しか)(なが)吾々(われわれ)両人(りやうにん)は、555紫姫(むらさきひめ)(さま)のお(とも)(いた)し、556比沼(ひぬ)真奈井(まなゐ)(うづ)宝座(ほうざ)参拝(さんぱい)途中(とちう)557あなた(がた)(かど)はかされ、558(その)(かげ)にて(たふと)三五教(あななひけう)信者(しんじや)となり、559()主人(しゆじん)紫姫(むらさきひめ)(さま)は、560()にも(たふと)宣伝使(せんでんし)とまでお()(あそ)ばし、561吾々(われわれ)両人(りやうにん)昼夜(ちうや)感涙(かんるい)(むせ)び……アーア吾々(われわれ)主従(しゆじゆう)(なん)とした果報者(くわほうもの)だ……と(よろこ)んで()りましたが、562(はか)らずも紫姫(むらさきひめ)(さま)若彦(わかひこ)さまと(とも)に、563大神(おほかみ)(さま)()不興(ふきよう)(かうむ)り、564(すこ)しの取違(とりちがひ)より、565(いま)三五教(あななひけう)除名(ぢよめい)され、566(かみ)(さま)(たい)しては申訳(まをしわけ)なく、567(その)(つみ)万死(ばんし)(あたひ)すると()つて、568日夜(にちや)紫姫(むらさきひめ)(さま)のお(なげ)き、569家来(けらい)吾々(われわれ)両人(りやうにん)570これがどうして()()られませう。571そこで吾々(われわれ)紫姫(むらさきひめ)(さま)にお(いとま)(ねが)ひ、572(ひと)つの功名(こうみやう)()て、573大神(おほかみ)(さま)(まこと)(あら)はし、574(その)(いさを)()りて()主人(しゆじん)(つみ)(ゆる)して(いただ)かうと(おも)ひ、575それとはなしにお(ねがひ)(いた)しましたが、576どうしても紫姫(むらさきひめ)(さま)吾々(われわれ)(いとま)(くだ)さらないので、577()()くやうな(おも)ひをして、578(こころ)にも()らぬ主人(しゆじん)(たい)罵詈(ばり)雑言(ざふごん)(たくま)しうし、579ヤツと勘当(かんどう)されて此処(ここ)までやつて()ました。580モウ()うなる(うへ)は、581仮令(たとへ)失敗(しつぱい)(いた)さうとも、582()主人(しゆじん)(おん)()には(なん)関係(くわんけい)(およ)ぼさないなり、583万々一(まんまんいち)吾々(われわれ)功名(こうみやう)手柄(てがら)(あら)はした(とき)には()主人(しゆじん)(さま)帰参(きさん)をお(ねがひ)(いた)し、584さうして紫姫(むらさきひめ)(さま)名誉(めいよ)回復(くわいふく)したいばつかりで、585両人(りやうにん)申合(まをしあは)せ、586(なん)とか()御用(ごよう)をして()たいと(おも)つて、587此処(ここ)まで(まゐ)りました。588(しか)(なが)らあなたは(すで)高城山(たかしろやま)言向(ことむ)(やは)さむと()決心(けつしん)なされた以上(いじやう)は、589吾々(われわれ)はお(とも)()(うへ)590仮令(たとへ)成功(せいこう)(いた)しましても、591それが()主人(しゆじん)(さま)のお(わび)材料(ざいれう)にはなりませぬ。592あなたは(すで)()れだけの()神徳(しんとく)をお(いただ)きになつたのだから、593(この)言霊戦(ことたません)はどうぞ、594(わたくし)(ゆづ)つて(くだ)さいますまいか』
595鹿公(しかこう)『いま馬公(うまこう)(まを)した(とほ)りの事情(じじやう)御座(ござ)います。596どうぞ、597吾々(われわれ)(せつ)なる胸中(きようちう)をお(さつ)(くだ)さいまして、598今回(こんくわい)吾々(われわれ)にお(まか)(くだ)さいませ。599万々一(まんまんいち)失敗(しつぱい)(いた)しました(とき)は、600第二軍(だいにぐん)として、601あなた(がた)()両人(りやうにん)が、602弔戦(とむらひいくさ)をやつて(くだ)さいませぬか』
603(なみだ)をハラハラと(なが)し、604真心(まごころ)(おもて)(あら)はして(たの)みゐる。
605隆靖彦(たかやすひこ)吾々(われわれ)入信(にふしん)以来(いらい)606(ひと)つの功労(こうらう)もなく、607せめては頑強(ぐわんきやう)なる松姫(まつひめ)言向(ことむ)(やは)し、608(かみ)(さま)にお()にかけたいと(おも)つてやつて()たが、609武士(ぶし)相身互(あひみたがひ)だ。610それだけの事情(じじやう)()いた以上(いじやう)は、611()つて(ことわ)(わけ)にも()かぬ。612ナア隆光彦(たかてるひこ)さま、613(この)言霊戦(ことたません)馬公(うまこう)614鹿公(しかこう)手柄(てがら)(ゆづ)りませうか。615(おのれ)(ほつ)する(ところ)(ひと)(ほどこ)せとの()神勅(しんちよく)(おも)(いだ)せば、616無情(むげ)()ねつける(わけ)にもゆきますまい』
617隆光彦(たかてるひこ)『あなたの仰有(おつしや)(とほ)りです。618馬公(うまこう)619鹿公(しかこう)620()苦労(くらう)(なが)華々(はなばな)しくやつて()(くだ)さい。621(わたくし)()川縁(かはべり)景色(けしき)()(ところ)で、622あなたの武者振(むしやぶり)拝見(はいけん)(いた)します』
623(うま)624鹿(しか)『それは早速(さつそく)()承諾(しようだく)625有難(ありがた)御座(ござ)います。626何分(なにぶん)身魂(みたま)(みが)けぬ吾々(われわれ)言霊戦(ことたません)627(かげ)(なが)()保護(ほご)()(ねが)(いた)します』
628隆靖彦(たかやすひこ)天晴(あつぱ)功名(こうみやう)手柄(てがら)(あら)はして(くだ)さい』
629隆光彦(たかてるひこ)大勝利(だいしようり)(いの)ります』
630 (うま)631鹿(しか)両人(りやうにん)は『有難(ありがた)う』と感謝(かんしや)()(へう)し、632二人(ふたり)(わか)れ、633松姫(まつひめ)(やかた)()してイソイソ(すす)()く。
634大正一一・五・八 旧四・一二 松村真澄録)

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