霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第九章 身魂(みたま)の浄化(じやうくわ)〔六五四〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第19巻 如意宝珠 午の巻 篇:第3篇 至誠通神 よみ(新仮名遣い):しせいつうしん
章:第9章 身魂の浄化 よみ(新仮名遣い):みたまのじょうか 通し章番号:654
口述日:1922(大正11)年05月08日(旧04月12日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年2月28日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一部の章はAIによって要約を作成しています。[×閉じる]:
荒鷹と鬼鷹は、旅の途上、峠の巌に腰を掛けてこれまでの経緯を思い出し話し合っていた。
二人は、ウラナイ教の拠点・高城山に、最近立派な雲が棚引くようになったのを見て、様子を探りに行こうと麓の千代川の郷の、鳴石の傍らまでやってきた。
二人は石の傍らで休息したが、石が温かいのに気づいて、その上に座った。すると、岩が鳴動を始め、次第に音響が大きくなってきた。二人は驚いて、岩から飛び降りた。
二人は岩から煙が立ち上る様を驚いてみていたが、すると一人の女神が現れた。荒鷹と鬼鷹は、岩が名高い鳴き岩であることに気づき、その上に座ってしまったことを謝罪して平伏した。
女神は二人に対して、「しばらくであった」と声を掛けた。女神の傍らの二人の稚児は、荒鷹と鬼鷹の額に、小さな紫の玉を打ち込んだ。すると荒鷹と鬼鷹の心は、穏やかになり春のように和らいだ。
女神は荒鷹に隆靖彦、鬼鷹に隆光彦と名を賜った。二人はお礼を言った。そして女神が丹州であることに気づいた。二人は丹州の本当の神名を請うたが、女神はまだそれを明かすときではない、と告げると、煙となって消えてしまった。
二人は鳴き石に礼拝すると、高城山に向かって進んでいった。すると馬公と鹿公に行きあたった。馬公と鹿公は、二人を荒鷹・鬼鷹とは気づかず、丹州だと勘違いしている。
荒鷹と鬼鷹は、宣伝歌にこれまでの経緯を説明して歌った。道すがら、馬公と鹿公は、高城山の言霊戦は、主人の失態を取り戻すためなので、自分たちに譲って欲しいと隆靖彦、隆光彦に頼んだ。
隆靖彦、隆光彦は後ろで見守ることなり、馬公、鹿公が高城山の館に挑むこととなった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2024-03-17 06:55:31 文字数:8145 OBC :rm1909
愛善世界社版:139頁 八幡書店版:第4輯 81頁 修補版: 校定版:141頁 普及版:64頁 初版: ページ備考:
001 心(こころ)の暗(やみ)の空(そら)晴(は)れて、002世界(せかい)に鬼(おに)は梨(なし)の木(き)の、003峠(たうげ)の巌(いはほ)に腰(こし)打掛(うちか)け、004雪雲(ゆきぐも)の空(そら)を眺(なが)めて、005雑談(ざつだん)に耽(ふけ)る二人(ふたり)の男(をとこ)あり。
006荒鷹(あらたか)『アヽ思(おも)ひまはせば今年(ことし)の春(はる)の初(はじめ)、007鬼熊別(おにくまわけ)の部下(ぶか)となつて、008三岳山(みたけやま)の岩窟(がんくつ)に数多(あまた)の手下(てした)を引連(ひきつ)れ、009善(よ)からぬ事(こと)計(ばか)りを得意(とくい)になつて、010自己(じこ)保存(ほぞん)は人生(じんせい)の本領(ほんりやう)だと思(おも)ひ詰(つ)め、011利己(りこ)主義(しゆぎ)の行動(かうどう)を以(もつ)て金科(きんくわ)玉条(ぎよくでう)として居(ゐ)たが、012まだ天道(てんだう)様(さま)は吾々(われわれ)を捨(す)て給(たま)はざりしか、013音彦(おとひこ)、014加米彦(かめひこ)、015悦子姫(よしこひめ)様(さま)の一行(いつかう)に救(すく)はれ、016飜然(ほんぜん)と悟(さと)り、017三五教(あななひけう)に入信(にふしん)さして頂(いただ)き、018鬼熊別(おにくまわけ)の本城(ほんじやう)に逆襲(ぎやくしふ)し、019言向和(ことむけやは)さむと心力(しんりよく)を尽(つく)して見(み)たが、020まだ鬼熊別(おにくまわけ)の大将(たいしやう)は、021神(かみ)の救(すく)ひのお綱(つな)が掛(かか)つて居(ゐ)なかつたと見(み)え、022吾々(われわれ)の熱誠(ねつせい)なる言霊(ことたま)の忠告(ちうこく)を馬耳(ばじ)東風(とうふう)と聞(き)き流(なが)し、023終(つひ)には鬼雲彦(おにくもひこ)の後(あと)を追(お)うて何処(いづこ)ともなく遁走(とんそう)して了(しま)つた。024仮令(たとへ)三日(みつか)でも同(おな)じ鍋(なべ)はだの飯(めし)を食(く)つた間柄(あひだがら)だから、025我々(われわれ)としては何処(どこ)までも、026誠(まこと)の道(みち)に救(すく)はねばならないのだが、027何処(どこ)へお出(い)でになつたか行衛(ゆくへ)は知(し)れず、028三五教(あななひけう)へ這入(はい)つてから、029此(こ)れと云(い)ふ様(やう)な神(かみ)様(さま)に御(ご)奉仕(ほうし)も出来(でき)ず、030困(こま)つたものだ。031竹生島(ちくぶしま)へ行(い)つて見(み)れば、032英子姫(ひでこひめ)様(さま)は神業(しんげふ)を完成(くわんせい)遊(あそ)ばして、033素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)様(さま)と共(とも)に、034フサの国(くに)斎苑(いそ)の御(ご)住居(ぢうきよ)へお帰(かへ)り遊(あそ)ばした後(あと)なり、035三五教(あななひけう)の方々(かたがた)には、036散(ち)り散(ぢ)りバラになつて別(わか)れて了(しま)ひ、037殆(ほとん)ど方向(はうかう)に迷(まよ)ふ今日(けふ)の有様(ありさま)、038せめては高城山(たかしろやま)の松姫(まつひめ)でも言向和(ことむけやは)して、039一(ひと)つ功(こう)を立(た)てねばなるまい………ナア鬼鷹(おにたか)』
040鬼鷹(おにたか)『オーそうだ。041此処(ここ)も所(ところ)は違(ちが)ふが、042ヤツパリ大枝山(おほえやま)だ。043あの向(むか)うに見(み)えるは確(たし)かに高城山(たかしろやま)だ。044何時(いつ)も悪神(あくがみ)の邪気(じやき)に依(よ)つて黒雲(くろくも)が山(やま)の頂(いただき)を包(つつ)んで居(ゐ)たが、045今日(けふ)は又(また)どうしたものだ。046何時(いつ)にない立派(りつぱ)な雲(くも)が棚引(たなび)いて居(を)るではないか。047何(なん)でも三五教(あななひけう)の誰(たれ)かが征服(せいふく)して、048結構(けつこう)な神(かみ)様(さま)を祀(まつ)り、049神徳(しんとく)が現(あら)はれて居(ゐ)るのではなからうかな。050万一(まんいち)さうであるとすれば、051結構(けつこう)は結構(けつこう)だが、052吾々(われわれ)はモウ此(この)自転倒(おのころ)島(じま)に於(お)いて活動(くわつどう)する所(ところ)が無(な)くなつた様(やう)なものだ。053兎(と)も角(かく)高城山(たかしろやま)を一度(いちど)踏査(たふさ)して実否(じつぴ)を探(さぐ)り、054万々一(まんまんいち)三五教(あななひけう)に帰順(きじゆん)して居(ゐ)たとすれば、055モウ仕方(しかた)がない。056どつと張(は)り込(こ)んで此(この)海(うみ)を渡(わた)り、057竜宮(りうぐう)の一(ひと)つ島(じま)へでも往(い)つて、058一働(ひとはたら)きしようぢやないか』
059荒鷹(あらたか)『オウそれが上分別(じやうふんべつ)だ。060併(しか)し第一(だいいち)着手(ちやくしゆ)として、061高城山(たかしろやま)の探険(たんけん)と出(で)かけやうぢやないか』
062鬼鷹(おにたか)『高城山(たかしろやま)に立派(りつぱ)な雲(くも)が棚引(たなび)いて居(ゐ)るが、063あれ見(み)よ、064真西(まにし)に当(あた)つて又(また)もや弥仙山(みせんざん)の麓(ふもと)の様(やう)に紫(むらさき)の雲(くも)が靉靆(たなび)いて居(ゐ)るぢやないか。065玉照姫(たまてるひめ)様(さま)に匹敵(ひつてき)した男神(をがみ)様(さま)が御(ご)出現(しゆつげん)遊(あそ)ばしたのではあるまいかなア。066併(しか)し何(なに)は兎(と)も角(かく)高城山(たかしろやま)へ打向(うちむか)ひ、067其(その)次(つぎ)に紫(むらさき)の雲(くも)の出処(でどころ)を調(しら)べる事(こと)としようかい。068サアサア行(ゆ)かう』
069と板(いた)を立(た)てた様(やう)な坂道(さかみち)を下(くだ)り、070西(にし)へ西(にし)へと駆出(かけだ)した。071満目(まんもく)蕭然(せうぜん)として地(ち)は一面(いちめん)の薄雪(はくせつ)の白布(はくふ)を被(かぶ)つて居(ゐ)る。072仁王(にわう)の様(やう)な足型(あしがた)を印(いん)し乍(なが)ら、073高城山(たかしろやま)の山麓(さんろく)、074千代川(ちよかは)の郷(さと)、075鳴石(なきいし)の傍(かたはら)までやつて来(き)た。
076荒鷹(あらたか)『一方(いつぱう)は樹木(じゆもく)鬱蒼(うつさう)とした箱庭(はこには)式(しき)の小山(こやま)に、077卯(う)の花(はな)の咲(さ)いた様(やう)に、078白雪(はくせつ)が梢(こずゑ)に止(と)まり、079時(とき)ならぬ花(はな)を咲(さ)かせ、080前(まへ)は何(なん)とも知(し)れぬ綺麓(きれい)な水(みづ)の流(なが)れた大堰川(おほいがは)、081こんな佳(い)い景色(けしき)は大枝(おほえ)の坂(さか)を越(こ)えてこのかた、082見(み)た事(こと)も無(な)い。083一(ひと)つ此(この)辺(へん)で休息(きうそく)した上(うへ)、084ボツボツと高城山(たかしろやま)に向(むか)ふ事(こと)にしようかい』
085鬼鷹(おにたか)『何(なん)だか妙(めう)な声(こゑ)がし出(だ)したぢやないか。086別(べつ)に人間(にんげん)らしい者(もの)も居(を)らず、087獣(けだもの)とても居(ゐ)ないやうだ。088狐(きつね)や狸(たぬき)の足型(あしがた)は薄雪(はくせつ)の上(うへ)に残(のこ)つて居(ゐ)るが、089併(しか)し狐(きつね)の声(こゑ)でもなし、090人間(にんげん)の声(こゑ)でもなし、091合点(がつてん)のいかぬ響(ひび)きがするぢやないか。092兎(と)も角(かく)此処(ここ)に大(おほ)きな岩(いは)がある。093どこもかも薄雪(うすゆき)だらけだが、094此(この)岩(いは)に限(かぎ)つて一片(いつぺん)の雪(ゆき)もたまつて居(ゐ)ない、095さうして又(また)カラカラに乾(かわ)いて居(ゐ)る。096幸(さいは)ひ此(この)岩(いは)の上(うへ)で、097楊柳(やうりう)観音(くわんおん)ぢやないが、098一(ひと)つ瞑目(めいもく)静坐(せいざ)し心胆(しんたん)を錬(ね)つて見(み)たらどうだ』
099 荒鷹(あらたか)は打首肯(うちうなづ)き乍(なが)ら、100平坦(へいたん)な巌(いはほ)の上(うへ)にドツカと坐(すわ)つた。
101荒鷹(あらたか)『オイ兄弟(きやうだい)、102大変(たいへん)此(この)岩(いは)は温(あたた)かいぞ。103お前(まへ)も一寸(ちよつと)此処(ここ)に坐(すわ)つて見(み)よ』
104鬼鷹(おにたか)『ヤア本当(ほんたう)に温(あたた)かい岩(いは)だなア。105地上(ちじやう)一面(いちめん)冷(つめ)たい雪(ゆき)が降(ふ)り、106冷酷(れいこく)な世界(せかい)の人情(にんじやう)は此(この)通(とほ)りと、107天地(てんち)から鑑(かがみ)を出(だ)して、108俺(おれ)達(たち)に示(しめ)して御座(ござ)るのに、109こりや又(また)どうしたものだ。110僅(わづ)か一(ひと)坪(つぼ)ばかりの此(この)岩(いは)の上(うへ)許(ばか)りは、111冷酷(れいこく)な雪(ゆき)もたまらず、112春(はる)の様(やう)な暖(あたた)かみを帯(お)びて居(ゐ)る。113是(こ)れを見(み)ても、114どつかに暖(あたた)かい人間(にんげん)も、115チツとは残(のこ)つて居(ゐ)ると云(い)ふ神(かみ)様(さま)の暗示(あんじ)だらうよ』
116 忽(たちま)ち膝下(しつか)の平面岩(へいめんいは)は鳴動(めいどう)を始(はじ)め、117刻々(こくこく)に音響(おんきやう)強大(きやうだい)猛烈(まうれつ)の度(ど)を加(くは)へて来(き)た。118二人(ふたり)は驚(おどろ)いて足早(あしばや)に飛(と)び下(お)り、119七八間(しちはちけん)此方(こなた)に引(ひ)き返(かへ)し、120岩石(がんせき)を見詰(みつ)めて居(ゐ)た。121忽(たちま)ち岩石(がんせき)は白煙(はくえん)を吐(は)き出(だ)した。122続(つづ)いて紫(むらさき)の雲(くも)細(ほそ)く長(なが)く、123白煙(はくえん)の中(なか)に棹(さを)を立(た)てた様(やう)に天(てん)に冲(ちう)し、124蕨(わらび)が握(にぎ)り拳(こぶし)を固(かた)めたやうな恰好(かつかう)になつては、125二三十(にさんじつ)間(けん)中空(ちうくう)に消(き)え、126又(また)同(おな)じく現(あら)はれては消(き)え、127幾回(いくくわい)となく紫(むらさき)の円柱(ゑんちゆう)が立昇(たちのぼ)り、128生々(せいせい)滅々(めつめつ)して居(ゐ)る。129二人(ふたり)は『ヤアヤア』と声(こゑ)を張(は)り上(あ)げ驚(おどろ)くばかりであつた。130猛烈(まうれつ)なる大爆音(だいばくおん)は次第(しだい)々々(しだい)に低声(ていせい)となり、131遂(つひ)にピタリと止(と)まつた。132白煙(はくえん)は依然(いぜん)として盛(さかん)に立昇(たちのぼ)つて居(ゐ)る。133此(この)時(とき)金(きん)の冠(かむり)を戴(いただ)き、134種々(しゆじゆ)の宝玉(ほうぎよく)を以(もつ)て造(つく)られたる瓔珞(やうらく)を身体(しんたい)一面(いちめん)に着飾(きかざ)り、135白(しろ)き薄衣(うすぎぬ)を着(ちやく)したる、136白面(はくめん)豊頬(ほうけふ)の女神(めがみ)、137眉目(びもく)の位置(ゐち)と謂(ゐ)ひ、138鼻(はな)の附(つき)具合(ぐあひ)と云(い)ひ、139唇(くちびる)の色(いろ)紅(くれなゐ)を呈(てい)し、140雪(ゆき)の如(ごと)き歯(は)を少(すこ)しく見(み)せ、141ニヤリと笑(わら)ひ乍(なが)ら現(あら)はれ給(たま)うた。
142荒鷹(あらたか)『ヤア音(おと)に名高(なだか)い川堰(かはぜき)の鳴石(なきいし)であつたか。143それとは知(し)らずに御(ご)無礼千万(ぶれいせんばん)にも、144吾々(われわれ)の汚(けが)れた体(からだ)で踏(ふ)みにじり、145誠(まこと)に申訳(まをしわけ)のない事(こと)を致(いた)したワイ。146キツと鳴石(なきいし)の霊(れい)が現(あら)はれて、147何(なに)か吾々(われわれ)に対(たい)して厳(きび)しい御(ご)託宣(たくせん)を下(くだ)されるのであらう。148何(なに)はともあれお詫(わび)をするより仕方(しかた)がない』
149と荒鷹(あらたか)は薄雪(はくせつ)の積(つ)もる大地(だいち)にペタリと平太張(へたば)つて、150謝罪(しやざい)の意(い)を表(へう)した。151鬼鷹(おにたか)も同(おな)じく大地(だいち)に鰭伏(ひれふ)し慄(ふる)うて居(を)る。152忽(たちま)ち虚空(こくう)に音楽(おんがく)聞(きこ)え、153蓮(はす)の葉(は)の様(やう)な大花弁(だいくわべん)がパラパラと降(ふ)つて来(き)た。154四辺(あたり)はえも云(い)はれぬ芳香(はうかう)に包(つつ)まれた。155荒鷹(あらたか)は頭(かしら)を地(ち)に附(つ)け乍(なが)ら、156少(すこ)しく首(くび)を曲(ま)げ、157一方(いつぱう)の目(め)にて恐(おそ)る恐(おそ)る岩上(がんじやう)の女神(めがみ)を眺(なが)めた。158女神(めがみ)は二人(ふたり)の美(うつく)しき稚児(ちご)を左右(さいう)に侍(はべ)らせ、159例(れい)の白烟(はくえん)の中(なか)に莞爾(くわんじ)として立現(たちあら)はれ、160白(しろ)に稍(やや)桃色(ももいろ)を帯(お)びたる繊手(せんしゆ)を差(さ)し延(の)べて、161此方(こなた)の両人(りやうにん)に向(むか)ひ手招(てまね)きして居(を)る。
162荒鷹(あらたか)『オイ鬼鷹(おにたか)、163ソウツと頭(あたま)を上(あ)げてあの女神(めがみ)を拝(をが)んで見(み)よ。164何(なん)だか吾々(われわれ)両人(りやうにん)に対(たい)して御用(ごよう)が有(あ)りそうだぞ』
165 此(この)声(こゑ)に鬼鷹(おにたか)はコワゴワ乍(なが)ら、166女神(めがみ)の方(はう)に眼(め)を注(そそ)いだ刹那(せつな)、167鬼鷹(おにたか)は『アツ』と叫(さけ)んで、168又(また)もや大地(だいち)に頭(あたま)を摺付(すりつ)けた。169何時(いつ)の間(ま)にやら両人(りやうにん)の体(からだ)は何者(なにもの)にか引(ひ)きずらるる様(やう)な心地(ここち)し、170以前(いぜん)の平岩(ひらいは)の前(まへ)に安着(あんちやく)して居(ゐ)た。171女神(めがみ)は淑(しと)やかに、
172女神『荒鷹(あらたか)どの、173鬼鷹(おにたか)どの、174しばらくで御座(ござ)つたなア』
175 此(この)声(こゑ)に両人(りやうにん)は一度(いちど)に頭(かしら)を擡(もた)げ、176熟々(つくづく)と女神(めがみ)の姿(すがた)を打眺(うちなが)め、177腑(ふ)に落(お)ちぬ面色(おももち)にて頭(あたま)を掻(か)いて居(を)る。178女神(めがみ)は二人(ふたり)の稚児(ちご)に、179懐(ふところ)より麗(うるは)しき玉(たま)を持(も)たせ、180何事(なにごと)か目配(めくば)せした。181二人(ふたり)の稚児(ちご)は両人(りやうにん)の前(まへ)に進(すす)みより、182小(ちひ)さき紫(むらさき)の玉(たま)を両人(りやうにん)の額(ひたひ)に当(あ)て、183コンコンと打(う)ち込(こ)んだ。184二人(ふたり)は『アイタタ』と云(い)ふ間(ま)もなく、185痛(いた)みは止(と)まつた。186二人(ふたり)の稚児(ちご)は忽(たちま)ち女神(めがみ)の両脇(りやうわき)に復帰(ふくき)し、187さも愉快(ゆくわい)げに笑(わら)つて居(を)る。188此(この)時(とき)より荒鷹(あらたか)、189鬼鷹(おにたか)の二人(ふたり)は何(なん)となく心(こころ)穏(おだや)かに春(はる)の様(やう)な気分(きぶん)が漂(ただよ)うた。
190女神(めがみ)は静(しづか)に、
191女神『唯今(ただいま)より荒鷹(あらたか)、192鬼鷹(おにたか)では有(あ)りませぬ。193隆靖彦(たかやすひこ)、194隆光彦(たかてるひこ)と名(な)を与(あた)へます。195どうぞ今後(こんご)は誠(まこと)の神人(しんじん)となつて、196神業(しんげふ)に参加(さんか)して下(くだ)さい。197妾(わらは)の顔(かほ)を覚(おぼ)えて居(ゐ)ますか』
198 荒鷹(あらたか)はやつと安堵(あんど)の態(てい)、
199荒鷹『隆靖彦(たかやすひこ)の名(な)を賜(たま)はり、200有難(ありがた)き、201身(み)に取(と)つての光栄(くわうえい)で御座(ござ)います』
202隆光彦(たかてるひこ)『私(わたくし)の如(ごと)き曇(くも)り切(き)つた身魂(みたま)に対(たい)し、203隆光彦(たかてるひこ)と御(おん)名(な)を下(くだ)さいましたのは、204何(なん)ともお礼(れい)の申様(まをしやう)が御座(ござ)いませぬ。205失礼(しつれい)乍(なが)ら貴神(あなた)様(さま)は吾々(われわれ)と共(とも)に三岳山(みたけやま)の岩窟(がんくつ)にお住居(すまゐ)遊(あそ)ばした丹州(たんしう)様(さま)では御座(ござ)いませぬか』
206 女神(めがみ)は莞爾(くわんじ)として首肯(うなづ)く。
207隆靖彦(たかやすひこ)『アヽ是(こ)れで世界晴(せかいば)れが致(いた)しました。208モウ此(この)上(うへ)は高城山(たかしろやま)の松姫(まつひめ)を言向(ことむ)け和(やは)し、209瑞(みづ)の御霊(みたま)の大神(おほかみ)様(さま)の御(ご)神業(しんげふ)に奉仕(ほうし)し、210天地(てんち)に蟠(わだか)まる八岐(やまた)の大蛇(をろち)を言向(ことむ)け和(やは)す御(ご)神力(しんりき)は、211十分(じふぶん)に与(あた)へられた様(やう)な心持(こころもち)になりました。212有難(ありがた)う御座(ござ)います』
213 隆光彦(たかてるひこ)も無言(むごん)の儘(まま)、214頭(かしら)を下(さ)げ感謝(かんしや)の意(い)を表示(へうじ)する。
215隆靖彦(たかやすひこ)『あなた様(さま)は今(いま)まで丹州(たんしう)と身(み)を変(へん)じ、216吾々(われわれ)の身魂(みたま)を研(みが)く為(ため)に、217種々(しゆじゆ)雑多(ざつた)と御(ご)苦労(くらう)を遊(あそ)ばした神(かみ)様(さま)、218どうぞ御(おん)名(な)を現(あら)はし下(くだ)さいませ』
219女神(めがみ)『今(いま)は我(わが)名(な)を現(あら)はすべき時(とき)にあらず。220自然(しぜん)に貴方(あなた)等(がた)の身魂(みたま)に感得(かんとく)し得(う)る所(ところ)まで磨(みが)いて下(くだ)さい。221妾(わらは)の素性(すじやう)が明瞭(はつきり)お分(わか)りになつた其(その)時(とき)は、222貴方(あなた)等(がた)の身魂(みたま)は天晴(あつぱ)れの神人(しんじん)となられた時(とき)です。223それまでは、224あなた方(がた)の為(ため)に懸案(けんあん)として暫(しばら)く留保(りうほ)して置(お)きませう』
225と云(い)ふかと見(み)れば、226三柱(みはしら)の姿(すがた)は煙(けぶり)となつて消(き)えて了(しま)つた。227鳴石(なきいし)は依然(いぜん)として小(ちひ)さき唸(うな)りを立(た)てて居(ゐ)る。
228隆靖彦(たかやすひこ)『なんと不思議(ふしぎ)な事(こと)が有(あ)つたもんですなア。229吾々(われわれ)に不思議(ふしぎ)な女神(めがみ)さまが現(あら)はれて、230隆靖彦(たかやすひこ)だとか、231隆光彦(たかてるひこ)だとか、232身分(みぶん)不相応(ふさうおう)の神名(しんめい)を下(くだ)さつたが、233実際(じつさい)に於(おい)て責任(せきにん)を尽(つく)す事(こと)が出来(でき)るであらうかと、234又(また)一(ひと)つ心配(しんぱい)が殖(ふ)えて来(き)たやうだ』
235隆光彦(たかてるひこ)『そうだ、236私(わたくし)も同感(どうかん)だ。237併(しか)しあの女神(めがみ)様(さま)は何処(どこ)となく丹州(たんしう)さまにソツくりだつた。238お前(まへ)もさう思(おも)つただらう』
239隆靖彦(たかやすひこ)『ヤア私(わし)はあまり勿体(もつたい)なくて、240とつくりと顔(かほ)を、241ヨウ拝(をが)まなんだよ。242何(なん)とはなしに目(め)がマクマクして、243面(おもて)を向(む)ける事(こと)が出来(でき)なかつた。244そうして何(なん)だか心(こころ)の底(そこ)から恥(はづか)しくつて、245自分(じぶん)の今迄(いままで)の罪悪(ざいあく)を照(てら)される様(やう)な気(き)がして、246随分(ずゐぶん)苦(くる)しかつた。247是(こ)れはヒヨツとしたら夢(ゆめ)ぢや有(あ)るまいかなア』
248隆光彦(たかてるひこ)『ナニ、249夢(ゆめ)所(どころ)か本当(ほんたう)に顕(あら)はれ給(たま)うたのだ。250斯(こ)うなつた以上(いじやう)は、251層一層(そういつそう)言行(げんかう)を慎(つつし)んで立派(りつぱ)な宣伝使(せんでんし)にならなくちや、252今(いま)の女神(めがみ)様(さま)に対(たい)して申訳(まをしわけ)が無(な)からう。253併(しか)し乍(なが)ら此(こ)の鳴石(なきいし)は依然(いぜん)として唸(うな)つて居(ゐ)るぢやないか。254又々(またまた)どんな神(かみ)様(さま)が出現(しゆつげん)遊(あそ)ばすか分(わか)らないよ。255モウ暫(しばら)く此処(ここ)に祝詞(のりと)を奏上(そうじやう)して待(ま)つて居(ゐ)たらどうだらう』
256隆靖彦(たかやすひこ)『ヤア此(この)上(うへ)立派(りつぱ)な神(かみ)様(さま)に出(で)られてたまるものかい。257モウ此(こ)れで結構(けつこう)だ。258恥(はづ)かしくつて仕方(しかた)がない。259サアサア早(はや)く高城山(たかしろやま)へ行(ゆ)かう』
260 二人(ふたり)は鳴石(なきいし)に恭(うやうや)しく礼拝(れいはい)し、261足早(あしばや)に大川(おほかは)の堤(つつみ)を伝(つた)つて上(のぼ)り行(ゆ)く。262忽(たちま)ちドンと突(つ)き当(あた)つた二人(ふたり)の男(をとこ)、263驚(おどろ)いて、
264二人(ふたり)『ヤアこれはこれは誠(まこと)に無調法(ぶてうはふ)致(いた)しました。265あまり俯(うつ)むいて道(みち)を急(いそ)いで居(ゐ)ましたので、266女神(めがみ)様(さま)の御(お)通(とほ)りとも知(し)らず、267衝突(しようとつ)を致(いた)しまして、268申訳(まをしわけ)が御座(ござ)いませぬ。269どうぞお許(ゆる)し下(くだ)さいませ』
270隆靖彦(たかやすひこ)『ヤアお前(まへ)は、271馬公(うまこう)に鹿公(しかこう)ぢやないか。272エライ勢(いきほ)ひで何処(どこ)へ行(ゆ)く積(つも)りぢや』
273馬公(うまこう)『ハイ吾々(われわれ)の大将(たいしやう)、274紫姫(むらさきひめ)、275青彦(あをひこ)の両人(りやうにん)さま、276大失敗(だいしつぱい)を演(えん)じ、277聖地(せいち)にも居(を)れないと云(い)ふ立場(たちば)になつて苦(くるし)んで居(ゐ)られます。278私(わたくし)等(ら)両人(りやうにん)はあまりお気(き)の毒(どく)で、279見(み)て居(ゐ)る訳(わけ)にも行(ゆ)かず、280そつと館(やかた)を飛(と)び出(だ)し、281江州(ごうしう)の竹生島(ちくぶしま)へ参(まゐ)つて、282英子姫(ひでこひめ)様(さま)にお目(め)にかかり、283お情(なさけ)を以(もつ)て、284素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)様(さま)に両人(りやうにん)のお詫(わび)をして頂(いただ)かうと思(おも)ひ、285取(と)る物(もの)も取敢(とりあへ)ず参(まゐ)りました。286どうぞ丹州(たんしう)さま、287何(なん)とか、288あなたもお力添(ちからぞへ)をして下(くだ)さいませぬか、289お頼(たの)み申(まを)します』
290隆靖彦(たかやすひこ)『私(わたし)は丹州(たんしう)さまぢやない。291お前(まへ)さんと一緒(いつしよ)に、292鬼(おに)ケ城(じやう)の言霊戦(ことたません)に向(むか)つた大悪人(だいあくにん)たりし、293荒鷹(あらたか)で御座(ござ)いますよ』
294馬公(うまこう)『モシモシ丹州(たんしう)さま、295ソラ何(なに)を仰有(おつしや)います。296眉目(びもく)清秀(せいしう)、297厳(げん)として冒(をか)す可(べか)らざるあなたの御(ご)容貌(ようばう)、298女神(めがみ)の姿(すがた)に化(ば)けて居(ゐ)らつしやるが、299適切(てつき)りあなたは擬(まが)ふ方(かた)なき丹州(たんしう)様(さま)、300そんな意地(いぢ)の悪(わる)い事(こと)を仰有(おつしや)らずに、301気(き)を許(ゆる)して、302打解(うちと)けて下(くだ)さいな』
303鹿公(しかこう)『ヤア不思議(ふしぎ)だ。304此処(ここ)にも丹州(たんしう)さまそつくりの方(かた)が又(また)現(あら)はれた。305一目(ひとめ)見(み)た時(とき)から変(かは)つたお方(かた)ぢやと思(おも)つて居(ゐ)たが、306ヤツパリ神(かみ)様(さま)の化身(けしん)で御座(ござ)いましたか。307どうぞ唯今(ただいま)申(まを)した通(とほ)りの始末(しまつ)ですから、308宜(よろ)しく御(ご)神力(しんりき)を以(もつ)てお助(たす)け下(くだ)さいませ』
309隆光彦(たかてるひこ)『イエイエ決(けつ)して決(けつ)して、310私(わたくし)は丹州(たんしう)さまでは御座(ござ)いませぬ。311荒鷹(あらたか)の兄弟分(きやうだいぶん)鬼鷹(おにたか)と云(い)ふ、312三岳山(みたけやま)の岩窟(がんくつ)に於(おい)て、313悪(あく)ばかり働(はたら)いて居(を)つた男(をとこ)で御座(ござ)いますよ』
314馬(うま)、315鹿(しか)『なんと仰有(おつしや)つても、316鬼鷹(おにたか)、317荒鷹(あらたか)の様(やう)な粗雑(そざつ)な容貌(ようばう)ぢや有(あ)りませぬワ。318彼奴(あいつ)ア、319一旦(いつたん)改心(かいしん)はしよつたが、320又(また)地金(ぢがね)を出(だ)して、321どつかへ迂路(うろ)つき、322此(この)頃(ごろ)は鬼雲彦(おにくもひこ)や鬼熊別(おにくまわけ)の後(あと)を追(お)うて、323悪(あく)の道(みち)へ逆転(ぎやくてん)旅行(りよかう)をやつて居(を)るだらうと、324吾々(われわれ)仲間(なかま)の評定(へうぢやう)に上(のぼ)つて居(を)る位(くらゐ)な男(をとこ)です。325そんな善悪(ぜんあく)不可解(ふかかい)の筒井(つつゐ)式(しき)の男(をとこ)の名(な)を騙(かた)つたりなさらずに、326本当(ほんたう)の事(こと)を言(い)つて下(くだ)さい。327私(わたくし)達(たち)は千騎(せんき)一騎(いつき)の場合(ばあひ)で御座(ござ)います』
328隆靖彦(たかやすひこ)『世間(せけん)の眼識(めがね)は違(ちが)はぬものだなア。329何程(なにほど)改心(かいしん)してもヤツパリどつかに、330副守(ふくしゆ)が割拠(かつきよ)して居(を)つたと見(み)えて、331三五教(あななひけう)の御(ご)連中(れんちう)からは、332今(いま)、333馬公(うまこう)、334鹿公(しかこう)の言(い)つた様(やう)に見(み)られて居(を)つたのだなア。335アーア仕方(しかた)のないものだ。336どうぞしてあの時(とき)の姿(すがた)になつて、337此(この)両人(りやうにん)の疑(うたがひ)を晴(は)らしたいものだ。338斯(こ)うなると、339麗(うるは)しき容貌(ようばう)になつたのが、340却(かへつ)て有難(ありがた)迷惑(めいわく)だ。341ナア鬼鷹(おにたか)否々(いやいや)、342隆光彦(たかてるひこ)さま…』
343隆光彦(たかてるひこ)『アヽさうですなア。344併(しか)し、345馬公(うまこう)さま、346鹿公(しかこう)さまにまで疑(うたが)はれる程(ほど)、347霊魂(みたま)が向上(かうじやう)し、348体(からだ)の相貌(さうばう)までが変(かは)つて来(き)たと云(い)ふ事(こと)は、349実(じつ)に尊(たふと)いものだ。350ヤツパリ人間(にんげん)は霊魂(みたま)が第一(だいいち)だ。351……モシモシ馬(うま)さま鹿(しか)さま、352決(けつ)して嘘(うそ)は申(まを)しませぬ。353たつた今(いま)、354何(なん)とも知(し)れぬ立派(りつぱ)な女神(めがみ)様(さま)から、355玉(たま)を頂(いただ)いたが最後(さいご)、356斯(こ)んなに変化(へんくわ)して了(しま)つたのだ。357名(な)も隆靖彦(たかやすひこ)、358隆光彦(たかてるひこ)と頂(いただ)いたのだが、359つい今(いま)の先(さき)まで依然(いぜん)として、360荒鷹(あらたか)、361鬼鷹(おにたか)の姿(すがた)で居(を)つたのだ。362どうぞ疑(うたがひ)を晴(は)らして下(くだ)さい』
363 馬(うま)、364鹿(しか)の二人(ふたり)は疑団(ぎだん)の雲(くも)に包(つつ)まれ、365両人(りやうにん)の姿(すがた)を頭(あたま)の上(うへ)から足(あし)の爪先(つまさき)まで、366念入(ねんい)りに見詰(みつ)めて居(ゐ)る。
367隆靖彦(荒鷹)・隆光彦(鬼鷹)『バラモン教(けう)の総大将(そうだいしやう)
368鬼雲彦(おにくもひこ)の部下(ぶか)となり
369三岳(みたけ)の山(やま)の岩窟(がんくつ)に
370心(こころ)も荒(あら)き荒鷹(あらたか)や
371生血(いきち)を絞(しぼ)る鬼鷹(おにたか)と
372現(あら)はれ出(い)でて四方(よも)八方(やも)の
373老若(らうにやく)男女(なんによ)を拐(かど)はかし
374無慈悲(むじひ)の限(かぎ)りを尽(つく)したる
375鬼熊別(おにくまわけ)と諸共(もろとも)に
376大江(おほえ)の山(やま)や鬼(おに)ケ城(じやう)
377三岳(みたけ)の山(やま)に山砦(さんさい)を
378構(かま)へて住(す)まへる折(をり)もあれ
379天津(あまつ)御空(みそら)の雲(くも)別(わ)けて
380降(くだ)りましたか地(ち)を掘(ほ)りて
381現(あら)はれましたか知(し)らねども
382何(なん)とはなしに威厳(ゐげん)ある
383丹州(たんしう)さまがやつて来(き)て
384俺(わし)の乾児(こぶん)にして呉(く)れと
385頭(かしら)を下(さ)げて頼(たの)まれる
386二人(ふたり)は素(もと)より神(かみ)ならぬ
387身(み)の悲(かな)しさに丹州(たんしう)を
388奴隷(どれい)の如(ごと)く酷(こ)き使(つか)ひ
389紫姫(むらさきひめ)の主従(しゆじゆう)を
390ウマウマ岩窟(いはや)に騙(だま)し込(こ)み
391馬公(うまこう)、鹿公(しかこう)二人(ふたり)をば
392地獄(ぢごく)に等(ひと)しき岩穴(いはあな)へ
393情(なさけ)容赦(ようしや)も荒縄(あらなは)に
394縛(しば)つてヤツと放(ほ)り込(こ)みし
395天地(てんち)容(い)れざる大悪(だいあく)の
396罪(つみ)をも憎(にく)まず三五(あななひ)の
397神(かみ)の教(をしへ)の宣伝使(せんでんし)
398音彦(おとひこ)、加米彦(かめひこ)現(あら)はれて
399悦子(よしこ)の姫(ひめ)を守(まも)りつつ
400深(ふか)き罪(つみ)をば差(さ)し赦(ゆる)し
401神(かみ)の教(をしへ)に導(みちび)きて
402忽(たちま)ち変(かは)る神心(かみごころ)
403人(ひと)を悩(なや)める鬼(おに)ケ城(じやう)
404悪魔(あくま)の砦(とりで)に立向(たちむか)ひ
405聞(き)くも芽出(めで)たき言霊(ことたま)の
406清(きよ)き戦(いくさ)に参加(さんか)して
407神(かみ)の尊(たふと)き事(こと)を知(し)り
408三五教(あななひけう)の神(かみ)の道(みち)
409四方(よも)の国々(くにぐに)弘(ひろ)めむと
410心(こころ)を配(くば)る折柄(をりから)に
411弥仙(みせん)の山(やま)の山麓(さんろく)に
412神(かみ)の知(し)らせか紫(むらさき)の
413雲(くも)立昇(たちのぼ)る麗(うるは)しさ
414吾々(われわれ)二人(ふたり)は何(なん)となく
415雲(くも)に引(ひ)かるる心地(ここち)して
416木(こ)の花姫(はなひめ)の斎(まつ)りたる
417御山(みやま)の麓(ふもと)に来(き)て見(み)れば
418豈計(あにはか)らむや丹州(たんしう)の
419威厳(ゐげん)備(そな)はる御姿(みすがた)に
420再(ふたた)び驚(おどろ)き畏(かしこ)みて
421踵(きびす)を返(かへ)し須知山(しゆちやま)の
422峠(たうげ)の上(うへ)に来(き)て見(み)れば
423常彦(つねひこ)さまや滝(たき)、板(いた)の
424二人(ふたり)の姿(すがた)に驚(おどろ)きつ
425一言(ひとこと)二言(ふたこと)云(い)ひかはし
426丹州(たんしう)さまの仰(あふ)せをば
427畏(かしこ)み仕(つか)へ東路(あづまぢ)を
428指(さ)して山坂(やまさか)打渉(うちわた)り
429荒波(あらなみ)猛(たけ)る琵琶(びは)の湖(うみ)
430英子(ひでこ)の姫(ひめ)の隠(かく)れます
431竹生(ちくぶ)の島(しま)に往(い)て見(み)れば
432藻抜(もぬ)けの殻(から)の果敢(はか)なさに
433駒(こま)の首(かしら)を立(た)て直(なほ)し
434彼方(あちら)此方(こちら)と彷徨(さまよ)ひつ
435吾(わが)信仰(しんかう)も堅木原(かたぎはら)
436足並(あしなみ)揃(そろ)へて沓掛(くつかけ)の
437郷(さと)を踏(ふ)み越(こ)え懺悔坂(ざんげざか)
438漸(やうや)く登(のぼ)り梨(なし)の木(き)の
439峠(たうげ)に立(た)ちて眺(なが)むれば
440遥(はるか)に見(み)ゆる西(にし)の空(そら)
441高城山(たかしろやま)の頂(いただ)きに
442五色(ごしき)の雲(くも)の棚引(たなび)きし
443其(その)光景(くわうけい)に憧憬(あこが)れつ
444薄雪(はくせつ)踏(ふ)み締(し)め来(き)て見(み)れば
445風(かぜ)の音(ね)高(たか)く鳴石(なきいし)の
446上(うへ)より昇(のぼ)る白煙(しらけぶり)
447また立昇(たちのぼ)る紫(むらさき)の
448雲(くも)に心(こころ)を奪(うば)はれつ
449両手(りやうて)を合(あは)せ拝(をが)む内(うち)
450煙(けぶり)の中(なか)より現(あら)はれし
451荘厳(さうごん)無比(むひ)の女神(めがみ)さま
452二人(ふたり)の稚児(ちご)を伴(ともな)ひて
453吾(わ)れにうつしき宝玉(ほうぎよく)を
454授(さづ)け給(たま)うと見(み)る間(うち)に
455鬼(おに)をも欺(あざむ)く醜体(しうたい)の
456二人(ふたり)は忽(たちま)ち此(この)通(とほ)り
457白衣(びやくい)の袖(そで)に包(つつ)まれて
458容貌(ようばう)忽(たちま)ち一変(いつぺん)し
459隆靖彦(たかやすひこ)や隆光彦(たかてるひこ)の
460教(をしへ)の司(つかさ)と名付(なづ)けられ
461やうやう此処(ここ)に来(き)て見(み)れば
462顔(かほ)見覚(みおぼ)えた馬公(うまこう)や
463鹿公(しかこう)二人(ふたり)に巡(めぐ)り会(あ)ひ
464俄(にはか)に変(かは)る吾(わが)姿(すがた)
465如何(いか)程(ほど)言葉(ことば)を尽(つく)すとも
466諾(うべ)なひまさぬは道理(だうり)なれ
467アヽ然(さ)り乍(なが)ら然(さ)り乍(なが)ら
468吾(わ)れはヤツパリ荒鷹(あらたか)に
469鬼鷹(おにたか)二人(ふたり)の向上身(こうじやうしん)
470どうぞ疑(うたがひ)晴(は)らしませ
471人(ひと)は心(こころ)が第一(だいいち)よ
472霊魂(みたま)研(みが)けば忽(たちま)ちに
473鬼(おに)も変(へん)じて神(かみ)となり
474心(こころ)一(ひと)つの持方(もちかた)で
475神(かみ)も忽(たちま)ち鬼(おに)となる
476さは然(さ)り乍(なが)ら人(ひと)の身(み)の
477如何(いか)に霊魂(みたま)を研(みが)くとも
478神(かみ)の力(ちから)に依(よ)らざれば
479徹底(てつてい)的(てき)に魂(たましひ)は
480清(きよ)まるものに有(あ)らざらむ
481自力(じりき)信仰(しんかう)もよけれども
482唯(ただ)何事(なにごと)も人(ひと)の世(よ)は
483他力(たりき)の神(かみ)に身(み)を任(まか)せ
484心(こころ)を任(まか)せ皇神(すめかみ)の
485救(すく)ひを得(う)るより途(みち)はない
486人(ひと)の賢(さか)しき利巧(りかう)もて
487誠(まこと)の道(みち)を究(きは)めむと
488思(おも)うた事(こと)の誤(あやま)りを
489今(いま)漸(やうや)くに悟(さと)りけり
490吁(あゝ)馬公(うまこう)よ鹿公(しかこう)よ
491人間心(にんげんごころ)を振棄(ふりす)てて
492唯(ただ)何事(なにごと)も惟神(かむながら)
493神(かみ)の他力(たりき)に打任(うちまか)せ
494誠(まこと)の信仰(しんかう)積(つ)むがよい
495吾(わ)れは是(こ)れより高城(たかしろ)の
496山(やま)の麓(ふもと)に現(あら)はれし
497ウラナイ教(けう)の宣伝使(せんでんし)
498松姫(まつひめ)さまを言向(ことむ)けて
499誠(まこと)の道(みち)に救(すく)はむと
500思(おも)ひ定(さだ)めて進(すす)み行(ゆ)く
501紫姫(むらさきひめ)や若彦(わかひこ)の
502二人(ふたり)の心(こころ)は察(さつ)すれど
503人間心(にんげんごころ)の如何(いか)にして
504救(すく)ふ手段(てだて)がありませうか
505魂(たま)を研(みが)いて今(いま)は唯(ただ)
506花(はな)咲(さ)く春(はる)を待(ま)てばよい
507神(かむ)素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)の
508無量(むりやう)無限(むげん)のお慈悲心(じひしん)
509如何(いか)でか見捨(みす)て給(たま)はむや
510アヽ惟神(かむながら)々々(かむながら)
511御霊(みたま)幸(さち)はひましまして
512紫姫(むらさきひめ)や若彦(わかひこ)に
513如何(いか)なる罪(つみ)の有(あ)りとても
514心(こころ)平(たひ)らに安(やす)らかに
515直日(なほひ)に見直(みなほ)し聞直(ききなほ)し
516宣(の)り直(なほ)しませ素盞嗚(すさのを)の
517大神(おほかみ)様(さま)に祈(ね)ぎ奉(まつ)る
518朝日(あさひ)は照(て)るとも曇(くも)るとも
519月(つき)は盈(み)つとも虧(か)くるとも
520仮令(たとへ)大地(だいち)は沈(しづ)むとも
521誠(まこと)一(ひと)つの麻柱(あななひ)の
522道(みち)を貫(つらぬ)く吾々(われわれ)は
523神(かみ)の救(すく)ひは目(ま)の前(あたり)
524必(かなら)ずともに二人(ふたり)共(とも)
525心(こころ)を痛(いた)め給(たま)ふまじ
526女神(めがみ)の姿(すがた)と現(あら)はれし
527吾々(われわれ)二人(ふたり)は先頭(せんとう)に
528高城山(たかしろやま)に向(むか)ひ行(ゆ)く
529馬公(うまこう)、鹿公(しかこう)両人(りやうにん)よ
530執着心(しふちやくしん)を振(ふ)り棄(す)てて
531吾(われ)等(ら)と共(とも)に言霊(ことたま)の
532清(きよ)き戦(いくさ)に加(くは)はりて
533太(ふと)しき功績(いさを)を立(た)て給(たま)へ
534いざいざさらば、いざさらば
535一(いち)時(じ)も早(はや)く片時(かたとき)も
536疾(と)く速(すむや)けく参(まゐ)りませう
537神(かみ)は汝(なんぢ)と倶(とも)にあり
538神(かみ)の恵(めぐみ)は海(うみ)よりも
539深(ふか)しと聞(き)けば高城(たかしろ)の
540山(やま)は如何(いか)程(ほど)嶮(さか)しとも
541悪魔(あくま)の勢(いきほひ)強(つよ)くとも
542神(かみ)の光(ひかり)を身(み)に受(う)けて
543常世(とこよ)の暗(やみ)を照(てら)し行(ゆ)く
544三五教(あななひけう)の吾々(われわれ)が
545身(み)の上(うへ)こそは楽(たの)しけれ
546アヽ惟神(かむながら)々々(かむながら)
547御霊(みたま)幸(さち)はひ坐(ま)しませよ』
548と宣伝歌(せんでんか)を歌(うた)ひつつ、549一行(いつかう)四(よ)人(にん)は一歩(ひとあし)々々(ひとあし)、550ウラナイ教(けう)の松姫(まつひめ)が館(やかた)を指(さ)して近付(ちかづ)きぬ。
551馬公(うまこう)『モシモシ最前(さいぜん)のお歌(うた)に依(よ)つて、552私(わたくし)達(たち)もスツカリと信仰(しんかう)の妙味(めうみ)と効果(かうくわ)が、553心底(しんてい)から諒解(りやうかい)出来(でき)ました。554併(しか)し乍(なが)ら吾々(われわれ)両人(りやうにん)は、555紫姫(むらさきひめ)様(さま)のお供(とも)を致(いた)し、556比沼(ひぬ)の真奈井(まなゐ)の貴(うづ)の宝座(ほうざ)へ参拝(さんぱい)の途中(とちう)、557あなた方(がた)に拐(かど)はかされ、558其(その)お蔭(かげ)にて尊(たふと)き三五教(あななひけう)の信者(しんじや)となり、559御(ご)主人(しゆじん)の紫姫(むらさきひめ)様(さま)は、560世(よ)にも尊(たふと)き宣伝使(せんでんし)とまでお成(な)り遊(あそ)ばし、561吾々(われわれ)両人(りやうにん)は昼夜(ちうや)感涙(かんるい)に咽(むせ)び……アーア吾々(われわれ)主従(しゆじゆう)は何(なん)とした果報者(くわほうもの)だ……と喜(よろこ)んで居(を)りましたが、562計(はか)らずも紫姫(むらさきひめ)様(さま)は若彦(わかひこ)さまと共(とも)に、563大神(おほかみ)様(さま)の御(ご)不興(ふきよう)を蒙(かうむ)り、564少(すこ)しの取違(とりちがひ)より、565今(いま)は三五教(あななひけう)を除名(ぢよめい)され、566神(かみ)様(さま)に対(たい)しては申訳(まをしわけ)なく、567其(その)罪(つみ)万死(ばんし)に値(あたひ)すると言(い)つて、568日夜(にちや)紫姫(むらさきひめ)様(さま)のお歎(なげ)き、569家来(けらい)の吾々(われわれ)両人(りやうにん)、570これがどうして見(み)て居(ゐ)られませう。571そこで吾々(われわれ)は紫姫(むらさきひめ)様(さま)にお暇(いとま)を願(ねが)ひ、572一(ひと)つの功名(こうみやう)を立(た)て、573大神(おほかみ)様(さま)に誠(まこと)を現(あら)はし、574其(その)功(いさを)に依(よ)りて御(ご)主人(しゆじん)の罪(つみ)を赦(ゆる)して戴(いただ)かうと思(おも)ひ、575それとはなしにお願(ねがひ)致(いた)しましたが、576どうしても紫姫(むらさきひめ)様(さま)は吾々(われわれ)に暇(いとま)を下(くだ)さらないので、577血(ち)を吐(は)くやうな思(おも)ひをして、578心(こころ)にも有(あ)らぬ主人(しゆじん)に対(たい)し罵詈(ばり)雑言(ざふごん)を逞(たくま)しうし、579ヤツと勘当(かんどう)されて此処(ここ)までやつて来(き)ました。580モウ斯(こ)うなる上(うへ)は、581仮令(たとへ)失敗(しつぱい)を致(いた)さうとも、582御(ご)主人(しゆじん)の御(おん)身(み)には何(なん)の関係(くわんけい)も及(およ)ぼさないなり、583万々一(まんまんいち)吾々(われわれ)が功名(こうみやう)手柄(てがら)を現(あら)はした時(とき)には御(ご)主人(しゆじん)様(さま)に帰参(きさん)をお願(ねがひ)致(いた)し、584さうして紫姫(むらさきひめ)様(さま)の名誉(めいよ)を回復(くわいふく)したいばつかりで、585両人(りやうにん)申合(まをしあは)せ、586何(なん)とか良(い)い御用(ごよう)をして見(み)たいと思(おも)つて、587此処(ここ)まで参(まゐ)りました。588併(しか)し乍(なが)らあなたは既(すで)に高城山(たかしろやま)を言向(ことむ)け和(やは)さむと御(ご)決心(けつしん)なされた以上(いじやう)は、589吾々(われわれ)はお供(とも)の身(み)の上(うへ)、590仮令(たとへ)成功(せいこう)を致(いた)しましても、591それが御(ご)主人(しゆじん)様(さま)のお詫(わび)の材料(ざいれう)にはなりませぬ。592あなたは既(すで)に其(そ)れだけの御(ご)神徳(しんとく)をお頂(いただ)きになつたのだから、593此(この)言霊戦(ことたません)はどうぞ、594私(わたくし)に譲(ゆづ)つて下(くだ)さいますまいか』
595鹿公(しかこう)『いま馬公(うまこう)の申(まを)した通(とほ)りの事情(じじやう)で御座(ござ)います。596どうぞ、597吾々(われわれ)の切(せつ)なる胸中(きようちう)をお察(さつ)し下(くだ)さいまして、598今回(こんくわい)は吾々(われわれ)にお任(まか)せ下(くだ)さいませ。599万々一(まんまんいち)失敗(しつぱい)を致(いた)しました時(とき)は、600第二軍(だいにぐん)として、601あなた方(がた)御(ご)両人(りやうにん)が、602弔戦(とむらひいくさ)をやつて下(くだ)さいませぬか』
603と涙(なみだ)をハラハラと流(なが)し、604真心(まごころ)を面(おもて)に現(あら)はして頼(たの)みゐる。
605隆靖彦(たかやすひこ)『吾々(われわれ)も入信(にふしん)以来(いらい)、606一(ひと)つの功労(こうらう)もなく、607せめては頑強(ぐわんきやう)なる松姫(まつひめ)を言向(ことむ)け和(やは)し、608神(かみ)様(さま)にお目(め)にかけたいと思(おも)つてやつて来(き)たが、609武士(ぶし)は相身互(あひみたがひ)だ。610それだけの事情(じじやう)を聞(き)いた以上(いじやう)は、611強(た)つて断(ことわ)る訳(わけ)にも行(ゆ)かぬ。612ナア隆光彦(たかてるひこ)さま、613此(この)言霊戦(ことたません)は馬公(うまこう)、614鹿公(しかこう)に手柄(てがら)を譲(ゆづ)りませうか。615己(おのれ)の欲(ほつ)する所(ところ)は人(ひと)に施(ほどこ)せとの御(ご)神勅(しんちよく)を思(おも)ひ出(いだ)せば、616無情(むげ)に撥(は)ねつける訳(わけ)にもゆきますまい』
617隆光彦(たかてるひこ)『あなたの仰有(おつしや)る通(とほ)りです。618馬公(うまこう)、619鹿公(しかこう)、620御(ご)苦労(くらう)乍(なが)ら華々(はなばな)しくやつて見(み)て下(くだ)さい。621私(わたくし)は彼(あ)の川縁(かはべり)の景色(けしき)の佳(よ)い所(ところ)で、622あなたの武者振(むしやぶり)を拝見(はいけん)致(いた)します』
623馬(うま)、624鹿(しか)『それは早速(さつそく)の御(ご)承諾(しようだく)、625有難(ありがた)う御座(ござ)います。626何分(なにぶん)身魂(みたま)の磨(みが)けぬ吾々(われわれ)の言霊戦(ことたません)、627蔭(かげ)乍(なが)ら御(ご)保護(ほご)を御(お)願(ねが)ひ致(いた)します』
628隆靖彦(たかやすひこ)『天晴(あつぱ)れ功名(こうみやう)手柄(てがら)を現(あら)はして下(くだ)さい』
629隆光彦(たかてるひこ)『大勝利(だいしようり)を祈(いの)ります』
630 馬(うま)、631鹿(しか)の両人(りやうにん)は『有難(ありがた)う』と感謝(かんしや)の意(い)を表(へう)し、632二人(ふたり)に別(わか)れ、633松姫(まつひめ)の館(やかた)を指(さ)してイソイソ進(すす)み行(ゆ)く。
634(大正一一・五・八 旧四・一二 松村真澄録)
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