霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
目 次設 定
設定
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
フォント

ルビの表示



アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注 [?][※]や[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。まだ少ししか付いていませんが、目障りな場合は「表示しない」設定に変えて下さい。ただし[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]


文字の色
背景の色
ルビの色
傍点の色 [?]底本で傍点(圏点)が付いている文字は、『霊界物語ネット』では太字で表示されますが、その色を変えます。[×閉じる]
外字1の色 [?]この設定は現在使われておりません。[×閉じる]
外字2の色 [?]文字がフォントに存在せず、画像を使っている場合がありますが、その画像の周囲の色を変えます。[×閉じる]

  

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。


【新着情報】サイトの全面改修に伴いサブスク化します。詳しくはこちらをどうぞ。(2023/12/19)
マーキングパネル
設定パネルで「全てのアンカーを表示」させてアンカーをクリックして下さい。

【引数の設定例】 &mky=a010-a021a034  アンカー010から021と、034を、イエローでマーキング。

          

第二章 唖呍(あうん)〔七三二〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第24巻 如意宝珠 亥の巻 篇:第1篇 流転の涙 よみ(新仮名遣い):るてんのなみだ
章:第2章 唖呍 よみ(新仮名遣い):あうん 通し章番号:732
口述日:1922(大正11)年06月14日(旧05月19日) 口述場所: 筆録者:外山豊二 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年5月10日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
友彦は、鬼熊別夫婦の信任を一段と集めた。また小糸姫も友彦の親切にほだされて、いつとはなしに、面貌卑しい友彦にも好意を抱くようになった。
友彦は小糸姫と割りなき仲になり、それを利用して鬼熊別の後継となるよう、蜈蚣姫を通じて工作を開始した。しかし鬼熊別は友彦の心性を考慮して、自分の後継として指名することは決して許さなかった。
友彦と小糸姫は鬼熊別の心中を悟り、将来を心配して、ついに顕恩郷から出奔して行方をくらましてしまった。
二人は波斯を越えて印度の国の南までやって来たが、この辺りには露の都というバラモン教の大きな拠点があった。事の露見を恐れた二人は、さらに南下してセイロン島に渡った。
セイロン島の人々は、小糸姫の容貌を見て天女の降臨だと思って尊敬し、女王のように扱った。友彦は表向き従者となって過ごした。
しかし友彦はおいおい本性を現して小糸姫が持って来た金銭を湯水のように使って酒に浸り、島の女に戯れ出した。小糸姫の恋はすっかり醒めて、二人の反りは日に日に合わなくなっていった。ついに小糸姫は二人の島人に舟を漕がせて逃げてしまった。
友彦は島人の報せを受けて、小糸姫の出奔を知った。小糸姫の書置きを守り袋にしまうと、後を追って印度の国へ舟を出した。しかしすでに友彦は無一文になっていた。島人たちへの駄賃に着物を与えてしまい、守り袋を首から下げただけの姿で印度の国の浜辺に降り立ち歩き始めた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2021-07-15 19:11:28 OBC :rm2402
愛善世界社版:29頁 八幡書店版:第4輯 621頁 修補版: 校定版:29頁 普及版:13頁 初版: ページ備考:
001 友彦(ともひこ)鬼熊別(おにくまわけ)夫婦(ふうふ)信任(しんにん)益々(ますます)(あつ)く、002(つひ)には鬼熊別(おにくまわけ)(おく)()内事係(ないじがかり)主任(しゆにん)として(つか)ふる(こと)となりぬ。003小糸姫(こいとひめ)(あさ)(ゆふ)なに友彦(ともひこ)親切(しんせつ)にほだされ、004()かぬ(かほ)とは(おも)(なが)らも何時(いつ)とは()しにスツカリ無二(むに)(ちから)(たの)むに(いた)りける。005蔭裏(かげうら)()えた(まめ)でも時節(じせつ)()ればはぢける道理(だうり)006十五(じふご)(はる)(むか)へたオボコ(むすめ)も、007何時(いつ)とはなしに(こゑ)(がは)りがし、008臀部(でんぶ)恰好(かつかう)余程(よほど)大人(おとな)()たりぬ。009男女(だんぢよ)交情(かうじやう)(むす)第一(だいいち)要点(えうてん)談話(だんわ)()(かさ)ぬること、010会見(くわいけん)()(おほ)きこと、011(およ)時間(じかん)関係(くわんけい)大影響(だいえいきやう)(およ)ぼすものなるべし。
012 小糸姫(こいとひめ)何時(いつ)とはなしに友彦(ともひこ)(かほ)()(ごと)に、013(かほ)(あか)らめ、014(ふすま)(かげ)(かく)れ、015(ぬす)()(のぞ)(まで)になりぬ。016蜈蚣姫(むかでひめ)信任(しんにん)(あつ)友彦(ともひこ)に、017小糸姫(こいとひめ)身辺(しんぺん)世話(せわ)委託(ゐたく)したるが、018遠近(ゑんきん)上下(じやうげ)(へだ)てなきは(こひ)(みち)019優柔(いうじう)不断(ふだん)フナフナ(ごし)友彦(ともひこ)何時(いつ)とは()しに(めう)(かんが)へを(おこ)し、020(つい)には小糸姫(こいとひめ)(をつと)となつてバラモン(けう)実権(じつけん)(にぎ)らむと、021野心(やしん)火焔(くわえん)(つつ)まれ昼夜(ちうや)(こころ)(こが)()たり。
022 友彦(ともひこ)(つの)恋路(こひぢ)に、023小糸姫(こいとひめ)(ふすま)開閉(あけたて)にも、024()れつ(もつ)れつ相生(あひおひ)(まつ)(まつ)との若緑(わかみどり)025手折(たお)るものなき高嶺(たかね)()いた(まつ)(はな)026(つい)友彦(ともひこ)得意(とくい)時代(じだい)到来(たうらい)した。027猪食(ししく)(いぬ)蜈蚣姫(むかでひめ)(さと)くも二人(ふたり)関係(くわんけい)推知(すゐち)し、028(をつと)鬼熊別(おにくまわけ)(むか)つて言葉(ことば)(つく)し、029友彦(ともひこ)をして小糸姫(こいとひめ)(をつと)となし、030鬼熊別(おにくまわけ)後継者(こうけいしや)たらしめむとする意志(いし)を、031(こと)()れ、032(もの)(せつ)し、033遠廻(とほまは)しにかけて鬼熊別(おにくまわけ)にいろいろと斡旋(あつせん)(らう)()りぬ。
034 されど鬼熊別(おにくまわけ)友彦(ともひこ)下劣(げれつ)なる品性(ひんせい)と、035野卑(やひ)なる面貌(めんばう)(こころ)(いた)め、036到底(たうてい)副棟梁(ふくとうりやう)後継者(こうけいしや)として不適任(ふてきにん)たることを(さと)り、037何時(いつ)蜈蚣姫(むかでひめ)千言(せんげん)万語(ばんご)(つく)しての斡旋(あつせん)馬耳(ばじ)東風(とうふう)()(なが)した。
038 友彦(ともひこ)039小糸姫(こいとひめ)(ちち)心中(しんちう)(さつ)し、040人目(ひとめ)(しの)んでは二人(ふたり)行末(ゆくすゑ)(あん)(わづら)ひつつ、041ヒソヒソ(ばなし)(ふけ)()たりける。
042 ある(とき)友彦(ともひこ)は、
043友彦小糸姫(こいとひめ)(さま)044(わたし)今日(こんにち)(かぎ)貴方(あなた)()(わか)(いた)さねばならぬことが出来(でき)ました。045(いま)までの御縁(ごえん)(あきら)めて(くだ)さいませ』
046 小糸姫(こいとひめ)(やうや)(くち)(ひら)(はづか)()に、
047小糸姫友彦(ともひこ)(さま)048そりや(また)()うした理由(わけ)御座(ござ)います。049たとへ()うなつても小糸姫(こいとひめ)のためには(ちから)(つく)し、050生命(いのち)でも差出(さしだ)すと仰有(おつしや)つたではありませぬか』
051友彦『ハイ、052(わたし)(こころ)(すこ)しも(かは)つては()りませぬ。053()()可愛(かあい)さ、054(こひ)しさが弥増(いやま)し、055片時(かたとき)()貴女(あなた)のお(かほ)()えねば、056ジツクリとして()られないやうに、057(こひ)(ほのほ)()()つて()()ります。058(しか)(なが)貴女(あなた)(たふと)副棟梁(ふくとうりやう)一人娘(ひとりむすめ)059何時(いつ)までも(わたし)のやうな(いや)しき(もの)関係(くわんけい)(むす)(わけ)には(まゐ)りませぬ。060()(とう)(さま)()意中(いちう)(けつ)して吾々(われわれ)両人(りやうにん)()(かな)へては(くだ)さいませぬ。061何程(なにほど)()母上(ははうへ)()取持(とりもち)(くだ)さつても、062最早(もはや)駄目(だめ)だと()ふことが(わか)りました。063(わたし)(これ)より()煩悶(はんもん)(わす)れるため、064貴女(あなた)()(そば)(とほ)(はな)れ、065世界(せかい)遍歴(へんれき)一苦労(ひとくらう)(いた)しませう。066これが()(かほ)見納(みをさ)めで御座(ござ)いますれば、067()うぞ()両親(りやうしん)孝養(かうやう)(つく)し、068立派(りつぱ)(をつと)()つてバラモン(けう)のために()(つく)(くだ)さいませ』
069 小糸姫(こいとひめ)(おどろ)いて()()()()し、
070小糸姫『アー()うしませう。071父上(ちちうへ)(さま)072(きこ)えませぬ』
073()(さけ)ぶを友彦(ともひこ)は、
074友彦『モシモシ()(ぢやう)(さま)075(くや)んで(かへ)らぬ(たがひ)(えん)076(しば)しの(ゆめ)()たと()(あきら)(くだ)さいませ。077(まこと)(いや)しき()(もつ)て、078貴女(あなた)(さま)(たい)失礼(しつれい)(いた)しました重々(ぢゆうぢゆう)(つみ)079何卒(なにとぞ)()(ゆる)(くだ)さいませ……左様(さやう)なら、080これにて(いと)しき貴女(あなた)()(わか)(いた)しませう』
081立去(たちさ)らむとするを(すそ)()()め、
082小糸姫(しば)らくお()(くだ)さいませ。083(わたし)(をんな)(はし)くれ、084たとへ天地(てんち)(かは)るとも、085一旦(いつたん)()(かは)した貴方(あなた)見捨(みす)てて()うして(をんな)(みち)()ちませう。086苦楽(くらく)(とも)にするのが夫婦(ふうふ)(みち)087仮令(たとへ)(なん)仰有(おつしや)つても、088(わたし)何処(どこ)までも(はな)しませぬ。089()うしても(わか)れねばならなければ貴方(あなた)のお()(わたし)刺殺(さしころ)し、090何処(どこ)へなりと()()(くだ)さいませ』
091()()す。
092友彦『アヽ(こま)つたことが出来(でき)たワイ、093(わか)れようと()へば()(ぢやう)(さま)(つよ)()決心(けつしん)094生命(いのち)にも(かか)はる一大事(いちだいじ)095大恩(たいおん)ある鬼熊別(おにくまわけ)()夫婦(ふうふ)(たい)申訳(まをしわけ)()い。096さうだと()つて大切(たいせつ)()(ぢやう)(さま)伴出(つれだ)しては(なほ)()まず、097アヽ仕方(しかた)がない……。098モシ()(ぢやう)(さま)099(わたし)此処(ここ)(はら)()()つて相果(あひは)てまする。100()うぞ貴女(あなた)両親(りやうしん)(つか)へて孝養(かうやう)()(つく)(あそ)ばされ、101(さいはひ)(わたし)(こと)(おも)()された(とき)は、102(みづ)一杯(いつぱい)手向(たむ)けて(くだ)さいませ。103千万(せんまん)(にん)宣伝使(せんでんし)読経(どくきやう)よりも貴女(あなた)()()づから(あた)へて(くだ)さつた一滴(いつてき)(みづ)が、104何程(なにほど)(うれ)しいか()れませぬ。105小糸姫(こいとひめ)(さま)106さらばで御座(ござ)いまする』
107懐剣(くわいけん)スラリと引抜(ひきぬ)き、108(はら)(いま)()てむとする(とき)109小糸姫(こいとひめ)()(うで)(すが)りつき、
110小糸姫『モシモシ友彦(ともひこ)(さま)111(しば)らくお()(くだ)さいませ。112(ねが)ひいたし()いことが御座(ござ)います』
113 友彦(ともひこ)は、
114友彦最早(もはや)覚悟(かくご)(いた)した(うへ)申訳(まをしわけ)のため(ただ)()あるのみ。115()うぞ立派(りつぱ)()なして(くだ)され』
116小糸姫『どうして(これ)()なされませう。117()うなる(うへ)是非(ぜひ)がない。118(おや)につくか、119(をつと)につくか、120()ちつく(みち)(ただ)(ひと)つ。121暫時(しばし)(おや)()苦労(くらう)をかけるか()れないが、122(いづ)(この)()(なが)らへて()れば、123()両親(りやうしん)孝養(かうやう)(つく)すことも出来(でき)ませう。124何卒(どうぞ)友彦(ともひこ)(さま)125(わたし)()れて()げて(くだ)さいませぬか』
126友彦『これはしたり()(ぢやう)(さま)127親子(おやこ)一世(いつせ)128夫婦(ふうふ)二世(にせ)(まを)しまして、129(この)()(おや)ほど大切(たいせつ)なものは御座(ござ)いますまい。130友彦(ともひこ)ばかりが(をとこ)ではありませぬ。131モツトモツト立派(りつぱ)(をとこ)沢山(たくさん)御座(ござ)いますれば、132(わたし)のことは只今(ただいま)(かぎ)(おも)()り、133両親(りやうしん)()孝養(かうやう)(ねが)ひます。134さらば、135(これ)にて()(わか)れ……』
136(また)もや懐剣(くわいけん)()()てようとする。137小糸姫(こいとひめ)(かな)しさやる()なく(うで)()ひつき満身(まんしん)(ちから)()めて友彦(ともひこ)(ころ)さじと(あせ)()る。138友彦(ともひこ)感慨(かんがい)無量(むりやう)(てい)にて、
139友彦『アヽ其処(そこ)まで(わたし)(おも)うて(くだ)さるか。140左様(さやう)なれば(あふ)せに(したが)ひ、141(しば)らく(わたし)一緒(いつしよ)何処(どこ)かへ(かく)れて、142(たの)しき月日(つきひ)(おく)りませう』
143 小糸姫(こいとひめ)は、
144小糸姫『あゝそれで安心(あんしん)(いた)しました』
145(おく)()り、146(ひそ)かに数多(あまた)路銀(ろぎん)懐中(くわいちう)し、147()()くるを()つて二人(ふたり)(やかた)(あと)に、148何処(いづこ)ともなく顕恩郷(けんおんきやう)より()えにけり。
149 親子(おやこ)のやうに(とし)(ちが)うた二人(ふたり)男女(だんぢよ)は、150()()をとつて波斯(フサ)(くに)を、151彼方(あちら)此方(こちら)彷徨(さまよ)ひ、152(つい)には高山(かうざん)(いく)つか()えて印度(ツキ)(くに)(みなみ)(はし)(すす)んで()た。153此処(ここ)には(つゆ)(みやこ)()つて相当(さうたう)繁華(はんくわ)土地(とち)がある。154バラモン(けう)宣伝使(せんでんし)市彦(いちひこ)相当(さうたう)(はば)()かし、155遠近(ゑんきん)()(とどろ)かして()た。156友彦(ともひこ)(かか)地点(ちてん)彷徨(さまよ)ふは、157発覚(はつかく)(おそ)れありとなし、158(つき)()(まぎ)れて(うみ)(わた)り、159セイロンの(しま)()ぎつけ、160(おく)(ふか)(すす)みシロ(やま)谷間(たにあひ)(きよ)(かま)へ、161二人(ふたり)(くら)(こと)となつた。162物珍(ものめづ)らしき島人(しまびと)は、163(はな)(あざむ)小糸姫(こいとひめ)容貌(ようばう)()て、164天女(てんによ)降臨(かうりん)せしものと(おも)尊敬(そんけい)(ねん)(はら)ひ、165日夜(にちや)()(いほり)(たづ)ねて参拝(さんぱい)するもの()きも()らぬ有様(ありさま)であつた。166小糸姫(こいとひめ)表向(おもてむき)友彦(ともひこ)下僕(しもべ)となし、167女王(ぢよわう)気取(きど)りで無鳥島(むてうたう)蝙蝠王(へんぷくわう)となりすまし、168友彦(ともひこ)(とも)日夜(にちや)快楽(くわいらく)(ふけ)りゐたり。
169 友彦(ともひこ)(にはか)()りたてた身魂(みたま)鍍金(めつき)は、170()(つき)剥脱(はくだつ)し、171父母(ふぼ)両親(りやうしん)()(とほ)(はな)れたるを(さいは)ひ、172横柄(わうへい)小糸姫(こいとひめ)(あご)(さき)にて使(つか)(やう)になつた。173さうして小糸姫(こいとひめ)()(きた)れる旅費(りよひ)取出(とりだ)しては日夜(にちや)(さけ)(ひた)り、174(あるひ)島人(しまびと)(をんな)(たい)他愛(たあい)なく(たはむ)()した。175小糸姫(こいとひめ)は、176(やうや)(こひ)(ゆめ)()むるとともに、177友彦(ともひこ)()ふこと()すことを、178蛇蝎(だかつ)(ごと)()(きら)ひ、179友彦(ともひこ)(はう)より()きくる(かぜ)さへも、180()()(ごと)くに(かん)じた。181百度(ひやくど)以上(いじやう)逆上(のぼ)()つた(こひ)(なつ)何時(いつ)しか()ぎて、182ソロソロ秋風(あきかぜ)()(おこ)り、183()()冷気(れいき)(くは)はり(こがらし)(さむ)(ふゆ)(ごと)く、184友彦(ともひこ)(おも)(こひ)(ねつ)はスツカリ冷却(れいきやく)して(こほり)(ごと)くになり(をは)りけり。
185 友彦(ともひこ)小糸姫(こいとひめ)様子(やうす)()()につれなくなるに(ごふ)()やし、186時々(ときどき)鉄拳(てつけん)(ふる)ひ、187自暴酒(やけざけ)()み、188(しわ)がれ(ごゑ)呶鳴(どな)()て、189二人(ふたり)(なか)()()(そり)(あは)なくなりにける。
190 (ある)()小糸姫(こいとひめ)友彦(ともひこ)大酒(おほざけ)(あふ)り、191()(つぶ)れたる(すき)(うかが)ひ、192一通(いつつう)遺書(かきおき)(のこ)し、193浜辺(はまべ)(つな)げる小舟(こぶね)()ぎ、194島人(しまびと)(くろ)(ばう)二人(ふたり)(とも)なひ、195太平洋(たいへいやう)目蒐(めが)けて大胆(だいたん)にも()()したり。
196 友彦(ともひこ)(さけ)(ゑひ)()め、197()()()れば()はカラリと()けはなれ小鳥(ことり)(こゑ)(かしま)し。
198 友彦(ともひこ)(ねむ)たき()(こす)(なが)ら、
199友彦小糸姫(こいとひめ)200(みづ)(みづ)だ』
201 ()べど(さけ)べど(なん)応答(いらへ)もなきに友彦(ともひこ)は、
202友彦『アヽ(また)(うら)(やま)へでも果物(くだもの)()りに()きよつたのかなア。203(なに)()うても()(ぢやう)さまで気儘(きまま)(そだ)つた(をんな)だから仕方(しかた)()い。204(しか)()()ふものの、205まだ十六(じふろく)だから子供(こども)(やう)なものだ。206(あま)りケンケン()つてやるのも可哀想(かあいさう)だ。207チツトこれから可愛(かあい)がつてやらねばなるまい。208顕恩郷(けんおんきやう)()れば、209彼方(あちら)からも、210此方(こちら)からも()(ぢやう)さまと(たてまつ)られ、211女王(ぢよわう)(やう)()(はや)され、212栄耀(えいよう)栄華(えいぐわ)(くら)せる身分(みぶん)だ。213()友彦(ともひこ)(おも)はぬ手柄(てがら)()つてそれをきつかけに(うま)たらし()み、214世間(せけん)()らずのオボコ(むすめ)をチヨロマカした(おれ)腕前(うでまへ)215(さだ)めてバラモン(けう)幹部(かんぶ)(れん)(おどろ)いたであらう。216(おれ)(かほ)自分(じぶん)(なが)愛想(あいさう)()きるやうなものだが、217それでも生命(いのち)(おや)だと(おも)つて、218すねたり、219(はね)たりし(なが)()いて()るのはまだ(しほ)らしい。220たとへ(おれ)(きら)つて()(かへ)らうと(おも)つても、221(とほ)山坂(やまさか)()えコンナ(はな)(じま)()()まれては、222孱弱(かよわ)(をんな)()うすることも出来(でき)よまい。223(おも)へば可哀想(かあいさう)なものであるワイ……アヽ(のど)(かわ)いた。224(ひと)友彦(ともひこ)(みづか)玉水(ぎよくすゐ)を、225()みて()(あが)(あそ)ばす(こと)としよう』
226()(なが)ら、227門前(もんぜん)(なが)るる谷川(たにがは)(みづ)竹製(たけせい)柄杓(ひしやく)突込(つつこ)み、228グイと一杯(いつぱい)()()(こゑ)()へて、
229友彦『さア、230旦那(だんな)(さま)231()(あが)(あそ)ばせ。232あまり()(さけ)(あが)りますと(おん)()のためによろしく御座(ござ)いませぬ。233()しも貴方(あなた)()病気(びやうき)にでも()なり(あそ)ばしたら、234(わたし)()うしませう。235ねー貴方(あなた)236(わたし)可愛(かあい)いと思召(おぼしめ)すなら、237()うぞ()(さけ)(あま)()ごさない(やう)にして頂戴(ちやうだい)……ナンテ(ぬか)しよるのだけれど、238今日(けふ)(かぎ)つて若山(わかやま)(かみ)(さま)何処(どこ)かへ()出張(しゆつちやう)(あそ)ばした。239(やが)()帰館(きくわん)になるだらう。240それまで(やま)(かみ)代理(だいり)(つと)めるのかなア』
241独語(ひとりごと)()(なが)ら、242グツト一杯(いつぱい)()()し、
243友彦『アヽ酔醒(よひざ)めの(みづ)美味(うま)さは下戸知(げこし)らずだ。244アヽうまいうまい、245(みづ)()らさぬ二人(ふたり)恋仲(こひなか)246媒酌人(ばいしやくにん)()しに自由(じいう)結婚(けつこん)洒落(しやれ)たのだから、247()(しやく)媒酌人(ばいしやくにん)仮定(かてい)して()一杯(いつぱい)やりませう。248何程(なにほど)しやくだと()つても、249顕恩郷(けんおんきやう)(とほ)(はな)れた()(しま)250二人(ふたり)恋仲(こひなか)(みづ)()(やつ)滅多(めつた)にあるまい。251(しか)(なが)小糸姫(こいとひめ)時々(ときどき)(しやく)(おこ)すのには、252一寸(ちよつと)(おれ)(こま)る………「もしわが夫様(つまさま)253(しやく)がさしこみました。254どうぞ()介錯(かいしやく)(ねが)ひます」………なんて本当(ほんたう)になまめかしい(こゑ)()しやがつて、255(おれ)何時(いつ)もそれが(しやく)(さは)………らせぬワ。256アヽうまいうまい』
257と、258()んでは()()くんでは()一人(ひとり)(きよう)がりゐる。
259 ()かる(ところ)(くろ)(ばう)一人(ひとり)(あら)はれ(きた)り、
260黒ン坊『モシモシ友彦(ともひこ)(さま)261女王(ぢよわう)(さま)夜前(やぜん)(ふね)()つて何処(どこ)かへ()かれたのを、262貴方(あなた)()存知(ぞんじ)御座(ござ)いますか』
263()くより友彦(ともひこ)真蒼(まつさを)になり、
264友彦(なに)ツ、265小糸姫(こいとひめ)(ふね)()つて此処(ここ)()つたとは、266そりや本当(ほんたう)か』
267黒ン坊(なに)(わたくし)(うそ)(まを)しませう。268チヤンキーとモンキーの二人(ふたり)が、269櫓櫂(ろかい)(あやつ)(みなと)船出(ふなで)しましたのを、270月夜(つきよ)(ひかり)(たしか)見届(みとど)けました。271(わたくし)ばかりでない、272四五(しご)(にん)のものがみんな()()りますよ』
273友彦『ソンナラ何故(なぜ)早速(さつそく)()らして()ぬのだ』
274黒ン坊早速(さつそく)()らせに(まゐ)つたのですが、275()承知(しようち)(とほ)()急坂(きふはん)276さう着々(ちやくちやく)()られませぬワ』
277友彦『さうして小糸姫(こいとひめ)何処(どこ)()つたか()つて()るか』
278黒ン坊『そこまではハツキリしませぬが、279(なん)でも(へさき)印度(ツキ)(くに)(はう)()けて()られましたから、280大方(おほかた)(つゆ)(みやこ)()()しになつたのでせう』
281 友彦(ともひこ)両手(りやうて)()みウンウンと吐息(といき)()き、282両眼(りやうがん)より(あら)(なみだ)をポロリポロリと(こぼ)して()る。283(しばら)くして友彦(ともひこ)立上(たちあが)り、
284友彦『おのれチヤンキー、285モンキーの両人(りやうにん)286大切(たいせつ)女房(にようばう)(そその)かし、287何処(どこ)()()つたか、288たとへ(てん)をかけり、289()(くぐ)神変(しんぺん)不思議(ふしぎ)(じゆつ)あるとも、290(くさ)をわけても(さが)()し、291女房(にようばう)()はねば()かぬ。292(その)(とき)にチヤンキー、293モンキーの二人(ふたり)血祭(ちまつ)りに(いた)して()れむ』
294狂気(きやうき)(ごと)()(くる)ひ、295(なべ)296(かま)297火鉢(ひばち)()げ、298()障子(しやうじ)(うら)みを(てん)じ、299(みづか)乱暴(らんばう)狼藉(ろうぜき)(かぎ)りを(つく)し、300家財(かざい)(のこ)らず滅茶(めつちや)苦茶(くちや)(たた)(こは)し、301小糸姫(こいとひめ)(のこ)()いた衣服(いふく)手道具(てだうぐ)引裂(ひきさ)き、302打砕(うちくだ)き、303地団駄(ぢだんだ)()んで室内(しつない)七八回(しちはちくわい)もクルクルと(まは)(くる)ひ、304()(まは)してパタリと(たふ)れた。
305 (くろ)(ばう)一人(ひとり)(おどろ)いて(そば)駆寄(かけよ)り、
306黒ン坊『モシモシ友彦(ともひこ)(さま)307狂気(きやうき)めされたか。308マア()()(しづ)めなされ、309何程(なにほど)(あせ)つても()ひつくことは出来(でき)ますまい。310(いづ)印度(ツキ)(くに)(つゆ)(みやこ)市彦(いちひこ)()名高(なだか)宣伝使(せんでんし)()られますから、311其処(そこ)大方(おほかた)()()しなつたのでせう』
312 友彦(ともひこ)(この)(こゑ)にハツト()がつき、
313友彦(なに)ツ、314市彦(いちひこ)()うしたと()ふのだ』
315黒ン坊大方(おほかた)女王(ぢよわう)(さま)(つゆ)(みやこ)市彦(いちひこ)(やかた)()()しになつたのだらうと、316(みな)(もの)(うはさ)(いた)して()りましたと()ふのです』
317友彦『それは貴様(きさま)318よく()らせて()れた。319さア、320駄賃(だちん)をやらう』
321金凾(かねばこ)(ひら)()れば、322こは如何(いか)に、323(から)ツけつ勘左衛門(かんざゑもん)324(びた)一文(いちもん)(のこ)つて()ない。325(はこ)(そこ)(のこ)つた折紙(をりがみ)手早(てばや)(つか)(ひら)()て、
326友彦『アヽ(なん)だか(ちつと)(わか)らない。327スパルタ文字(もじ)で………意地(いぢ)(わる)い、328(おれ)()めぬのを()(なが)ら、329遺書(かきおき)をして()きやがつたのだらう。330(しか)しこれは(のち)証拠(しようこ)だ。331大切(たいせつ)にせなくてはならない』
332(まも)(ぶくろ)(なか)大事(だいじ)(さう)にしまひ()み、333(くろ)(ばう)案内(あんない)させ、334一生(いつしやう)懸命(けんめい)にシロ(やま)急坂(きふはん)をドンドン威喝(ゐかつ)させ(なが)ら、335大股(おほまた)(くだ)()く。
336 (やうや)くシロの(みなと)(かけ)ついた。337滅法(めつぱふ)矢鱈(やたら)(くろ)(ばう)二人(ふたり)がマラソン競走(きやうそう)をやつた結果(けつくわ)338(みなと)()くや、339()(ゆる)みバツタリと此処(ここ)(たふ)れて(しま)つた。340(みなと)(あつ)まる(くろ)(ばう)二三十(にさんじふ)(にん)()つて(たか)つて(みづ)をかけたり、341(はな)()ぢたり、342いろいろとして(やうや)()をつけた。
343 友彦(ともひこ)四辺(あたり)キヨロキヨロ見廻(みまは)(なが)ら、
344友彦『オー此処(ここ)はシロの(みなと)だ。345さア、346(おまへ)()(いち)()(はや)(ふね)用意(ようい)(いた)し、347印度(ツキ)(くに)(おく)れ』
348黒ン坊の一人賃銭(ちんせん)幾何(いくら)()れますか』
349友彦『エーコンナ(とき)賃銭(ちんせん)(はなし)どころか、350一刻(いつこく)(はや)猶予(いうよ)がならぬ。351賃銭(ちんせん)(のぞ)次第(しだい)(あと)から(つか)はす。352さア、353(はや)()け』
354()()てる。
355 友彦(ともひこ)懐中(くわいちゆう)実際(じつさい)無一物(むいちぶつ)であつた。356(はち)(にん)(くろ)(ばう)八挺櫓(はつちやうろ)()(なが)()()(ごと)友彦(ともひこ)(めい)のまにまに印度洋(いんどやう)横切(よこぎ)り、357印度(ツキ)(くに)浜辺(はまべ)(やうや)()いた。358此処(ここ)真砂(まさご)(はま)()遠浅(とほあさ)になつてゐる。359(ふね)十町(じつちやう)ばかり(おき)にかかり、360それより(しり)(まく)つて徒歩(とほ)上陸(じやうりく)する(こと)となりゐるなり。
361黒ン坊『モシモシ大将(たいしやう)さま、362賃銭(ちんせん)(いただ)きませう』
363友彦『ウン一寸(ちよつと)()て、364賃銭(ちんせん)はシロの(みなと)まで(かへ)つた(とき)365往復(わうふく)(とも)()りこんでやる。366二度(にど)にやるのは邪魔臭(じやまくさ)いから、367此処(ここ)(ふね)()かべて()つてゐるがよからう』
368黒ン坊『さうだと()つて………(つゆ)(みやこ)までは二日(ふつか)三日(みつか)では()けませぬ。369往復(わうふく)十日(とをか)もかかるのに、370コンナ(ところ)()つてゐられますかい』
371友彦()つのが(いや)なら(さき)(かへ)つてシロの(みなと)()つてゐるがよからう。372帰途(かへり)には(また)(ほか)(ふね)()るから………』
373黒ン坊『ソンナ(こと)()はずに(わた)して(くだ)さいなア。374女房(にようばう)(なべ)(あら)つて()つてゐるのですから』
375友彦(じつ)(かね)をあまり周章(あわて)(わす)れて()たのだ』
376黒ン坊『ヘンうまいこと()ふない。377女王(ぢよわう)にスツパ()けを()はされ、378(かね)(なに)()つて()げられたのだらう。379(いま)までは女王(ぢよわう)(さま)(ひか)りで、380貴様(きさま)尊敬(そんけい)して()つたが、381モー()うなつちや(たれ)貴様(きさま)(したが)ふものがあるか。382(かね)()ければ仕方(しかた)がない。383貴様(きさま)()につけたものを(のこ)らず(おれ)(わた)せ。384グヅグヅ(ぬか)すと、385()つて(たか)つて()海中(かいちう)水葬(すゐさう)してやらうか』
386友彦『エー仕方(しかた)()い、387ソンナラ(あつ)(くに)(こと)でもあり、388(はだか)でもしのげぬ(こと)()いのだから、389これなつと()つて()け』
390とクルクルと真裸(まつぱだか)になり、391(ふね)(なか)()げつけたるに(くろ)(ばう)は、
392黒ン坊『ヨー(おも)ひの(ほか)立派(りつぱ)着物(きもの)だ。393何分(なにぶん)(かね)あかし(こしら)へよつた品物(しなもの)だから………オイその(くび)にかけて()(まも)(ぶくろ)此方(こちら)寄越(よこ)せ』
394友彦(これ)貴様(きさま)()()()れると、395(たちま)身体(からだ)がしびれるぞ。396さア()つて()け』
397(くび)()()す。398(はち)(にん)(くろ)(ばう)は、
399黒ン坊『ヤア、400ソンナ(おそ)ろしいものは()らぬワイ。401勝手(かつて)()つて()け』
402()()遠浅(とほあさ)(うみ)友彦(ともひこ)(のこ)し、403八挺(はつちやう)()()ぎ、404(むらさき)(しほ)(ただよ)海面(かいめん)()(ごと)(かへ)つて()く。
405 友彦(ともひこ)(すな)(あし)(ぼつ)し、406()むを()(くび)守袋(まもりぶくろ)をプリンと()げ、407飼犬(かひいぬ)よろしくと()ふスタイルで、408遠浅(とほあさ)(うみ)をノタノタと、409()()ひになつて岸辺(きしべ)()して(すす)()く。
410大正一一・六・一四 旧五・一九 外山豊二録)

王仁三郎が著した「大作」がこれ1冊でわかる!
飯塚弘明・他著『あらすじで読む霊界物語』(文芸社文庫)
絶賛発売中!

目で読むのに疲れたら耳で聴こう!
霊界物語の朗読 ユーチューブに順次アップ中!
霊界物語の音読まとめサイト
オニド関連サイト最新更新情報
10/22【霊界物語ネット】王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)』をテキスト化しました。
5/8【霊界物語ネット】霊界物語ネットに出口王仁三郎の第六歌集『霧の海』を掲載しました。
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス
合言葉「みろく」を入力して下さい→