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霊界物語
如意宝珠(第13~24巻)
第24巻(亥の巻)
序文
総説
第1篇 流転の涙
第1章 粉骨砕身
第2章 唖呍
第3章 波濤の夢
第4章 一島の女王
第2篇 南洋探島
第5章 蘇鉄の森
第6章 アンボイナ島
第7章 メラの滝
第8章 島に訣別
第3篇 危機一髪
第9章 神助の船
第10章 土人の歓迎
第11章 夢の王者
第12章 暴風一過
第4篇 蛮地宣伝
第13章 治安内教
第14章 タールス教
第15章 諏訪湖
第16章 慈愛の涙
霊の礎(一〇)
霊の礎(一一)
神諭
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霊界物語
>
如意宝珠(第13~24巻)
>
第24巻(亥の巻)
> 第1篇 流転の涙 > 第3章 波濤の夢
<<< 唖呍
(B)
(N)
一島の女王 >>>
第三章
波濤
(
はたう
)
の
夢
(
ゆめ
)
〔七三三〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第24巻 如意宝珠 亥の巻
篇:
第1篇 流転の涙
よみ(新仮名遣い):
るてんのなみだ
章:
第3章 波濤の夢
よみ(新仮名遣い):
はとうのゆめ
通し章番号:
733
口述日:
1922(大正11)年06月14日(旧05月19日)
口述場所:
筆録者:
加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年5月10日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
小糸姫は二人の島人に舟を漕がせて、友彦から逃げ出した。しかし舟が大海原に来ると、二人の島人は小糸姫に襲いかかろうとする。
小糸姫は逃げ回るが、捕まってしまいあわやというところへ、四人の女が乗った一艘の船が疾走して来た。船から一人の女が乗り込んで来て、島人に当て身を食わして小糸姫を助けた。
小糸姫を助けてくれた女は、よくよく見れば、顕恩郷の侍女・今子姫であった。今子姫は小糸姫に両親のところへ帰るように諭すが、小糸姫はどうしても竜宮の一つ島に渡るのだ、と言う。
今子姫は、小糸姫が出奔した後に顕恩郷は三五教に奪い返され、鬼雲彦や鬼熊別もどこかへ逃げてしまったことを告げた。そして自分は今は素盞嗚尊の娘に仕えており、バラモン教と闘って破れ、この船で流されたところだと経緯を物語った。
小糸姫はそれを聞いて、今子姫をバラモン教の裏切り者として身構えるが、四対一で今は敵わないことを悟り、降参の覚悟を決めた。
今子姫は二人の島人に活を入れて起こした。小糸姫は二人に対して、自分はこれから三五教の宣伝使になると宣言し、駄賃を上げてセイロン島に返した。小糸姫は今子姫らの船に乗り込んだ。
五人は船を漕いでオーストラリヤの一つ島に上陸した。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2021-07-27 18:56:09
OBC :
rm2403
愛善世界社版:
45頁
八幡書店版:
第4輯 627頁
修補版:
校定版:
46頁
普及版:
21頁
初版:
ページ備考:
001
野卑
(
やひ
)
下劣
(
げれつ
)
なる
友彦
(
ともひこ
)
の
態度
(
たいど
)
にぞつ
魂
(
コン
)
愛想
(
あいさう
)
をつかし、
002
ぞぞがみ
を
立
(
た
)
て
蛇蝎
(
だかつ
)
の
如
(
ごと
)
く
忌
(
い
)
み
恐
(
おそ
)
れたるセイロン
島
(
たう
)
の
女王
(
ぢよわう
)
小糸姫
(
こいとひめ
)
は、
003
友彦
(
ともひこ
)
が
大酒
(
おほざけ
)
に
酔
(
よ
)
ひ
潰
(
つぶ
)
れ
前後
(
ぜんご
)
不覚
(
ふかく
)
になつた
隙
(
すき
)
を
窺
(
うかが
)
ひ
三行半
(
みくだりはん
)
を
後
(
あと
)
に
残
(
のこ
)
し、
004
黄金
(
こがね
)
を
腹巻
(
はらまき
)
にどつさりと
重
(
おも
)
い
程
(
ほど
)
締込
(
しめこ
)
み
錫蘭
(
シロ
)
の
港
(
みなと
)
より、
005
黒
(
くろ
)
ン
坊
(
ぼう
)
チヤンキー、
006
モンキーの
二人
(
ふたり
)
に
船
(
ふね
)
を
操
(
あやつ
)
らせ、
007
月
(
つき
)
照
(
て
)
り
渡
(
わた
)
る
海原
(
うなばら
)
を
力
(
ちから
)
限
(
かぎ
)
りに
辷
(
すべ
)
り
往
(
ゆ
)
く。
008
天上
(
てんじやう
)
には
浄玻璃
(
じやうはり
)
の
鏡
(
かがみ
)
厳
(
おごそ
)
かに
懸
(
かか
)
り、
009
大地
(
だいち
)
の
水陸
(
すゐりく
)
森羅
(
しんら
)
万象
(
ばんしやう
)
を
映
(
うつ
)
して
居
(
ゐ
)
る。
010
小糸姫
(
こいとひめ
)
が
今
(
いま
)
往
(
ゆ
)
く
此
(
この
)
船
(
ふね
)
も、
011
矢張
(
やは
)
り
月
(
つき
)
の
面
(
おも
)
にかかつた
天然画
(
てんねんぐわ
)
中
(
ちう
)
のものであらう。
012
小糸姫
(
こいとひめ
)
は
漸
(
やうや
)
く
虎口
(
ここう
)
を
逃
(
のが
)
れホツと
一息
(
ひといき
)
つきながら
独言
(
ひとりごと
)
………。
013
小糸姫
『アヽ
妾
(
わたし
)
程
(
ほど
)
罪
(
つみ
)
深
(
ふか
)
い
者
(
もの
)
が
世
(
よ
)
に
有
(
あ
)
らうか。
014
山
(
やま
)
より
高
(
たか
)
き
父
(
ちち
)
の
恩
(
おん
)
、
015
海
(
うみ
)
より
深
(
ふか
)
き
母
(
はは
)
の
恩
(
おん
)
、
016
恩
(
おん
)
に
甘
(
あま
)
え、
017
親
(
おや
)
の
心
(
こころ
)
子
(
こ
)
知
(
し
)
らずの
譬
(
たとへ
)
に
漏
(
も
)
れず、
018
人
(
ひと
)
も
有
(
あ
)
らうに、
019
万人
(
ばんにん
)
の
見
(
み
)
て
以
(
もつ
)
て
蛇蝎
(
だかつ
)
の
如
(
ごと
)
く
忌
(
い
)
み
嫌
(
きら
)
ふ
友彦
(
ともひこ
)
のやうな
下劣
(
げれつ
)
な
男
(
をとこ
)
に、
020
何
(
ど
)
うして
妾
(
わたし
)
は
迷
(
まよ
)
つたであらうか。
021
我
(
われ
)
と
我
(
わが
)
身
(
み
)
が
怪
(
あや
)
しくなつて
来
(
き
)
た。
022
執念深
(
しふねんぶか
)
き
男
(
をとこ
)
の
常
(
つね
)
として、
023
嘸
(
さぞ
)
今頃
(
いまごろ
)
は
酔
(
ゑひ
)
も
醒
(
さ
)
め、
024
四辺
(
あたり
)
をキヨロキヨロ
見廻
(
みまは
)
し、
025
我
(
わが
)
残
(
のこ
)
せし
手紙
(
てがみ
)
を
見
(
み
)
てアツト
腰
(
こし
)
を
抜
(
ぬ
)
かし、
026
例
(
れい
)
の
いかい
目
(
め
)
を
剥
(
む
)
き
出
(
だ
)
し、
027
嘸
(
さぞ
)
や
嘸
(
さぞ
)
、
028
腹
(
はら
)
を
立
(
た
)
てて
居
(
ゐ
)
るだらう。
029
思
(
おも
)
へば
可憐
(
かはい
)
さうな
様
(
やう
)
でもあり、
030
小気味
(
こぎみ
)
がよいやうにもある。
031
妾
(
わたし
)
の
心
(
こころ
)
は
鬼
(
おに
)
か
蛇
(
じや
)
か
神
(
かみ
)
か
仏
(
ほとけ
)
か、
032
我
(
われ
)
と
我
(
わ
)
が
心
(
こころ
)
を
解
(
と
)
き
兼
(
か
)
ねる。
033
それにしてもあの
友彦
(
ともひこ
)
と
云
(
い
)
ふ
男
(
をとこ
)
、
034
金
(
かね
)
さへあれば
朝
(
あさ
)
から
晩
(
ばん
)
まで
飲
(
の
)
み
倒
(
たふ
)
し、
035
体
(
からだ
)
を
砕
(
くだ
)
き
魂
(
たましひ
)
を
腐
(
くさ
)
らせ、
036
殆
(
ほとん
)
ど
人間
(
にんげん
)
としての
資格
(
しかく
)
は
最早
(
もはや
)
ゼロになつて
仕舞
(
しま
)
つた
所
(
ところ
)
だから、
037
今度
(
こんど
)
の
驚
(
おどろ
)
きで
些
(
ちつ
)
とは
性念
(
しやうねん
)
も
直
(
なほ
)
るであらう。
038
真人間
(
まにんげん
)
にさへなつて
呉
(
く
)
れたならば、
039
妾
(
わたし
)
とても
別
(
べつ
)
に
憎
(
にく
)
みはせぬ。
040
あの
男
(
をとこ
)
に
一片
(
いつぺん
)
良心
(
りやうしん
)
の
光
(
ひかり
)
があれば、
041
キツト
心
(
こころ
)
を
取
(
と
)
り
直
(
なほ
)
し、
042
立派
(
りつぱ
)
な
人間
(
にんげん
)
になるであらう。
043
さすれば
今
(
いま
)
見捨
(
みす
)
てて
逃
(
に
)
げ
出
(
だ
)
す
妾
(
わたし
)
の
非常
(
ひじやう
)
手段
(
しゆだん
)
も、
044
あの
男
(
をとこ
)
の
為
(
ため
)
には
却
(
かへ
)
つて
幸福
(
かうふく
)
の
種
(
たね
)
、
045
腐
(
くさ
)
つた
魂
(
たましひ
)
は
清
(
きよ
)
まり、
046
酒
(
さけ
)
に
砕
(
くだ
)
けた
肉体
(
にくたい
)
は
又
(
また
)
元
(
もと
)
の
如
(
ごと
)
く
健
(
すこや
)
かになり、
047
神界
(
しんかい
)
の
為
(
ため
)
、
048
社会
(
しやくわい
)
のために、
049
活動
(
くわつどう
)
するだけの
神力
(
しんりき
)
が
備
(
そな
)
はるであらう………
友彦
(
ともひこ
)
殿
(
どの
)
、
050
妾
(
わたし
)
が
書置
(
かきおき
)
を
見
(
み
)
て
嘸
(
さぞ
)
憤慨
(
ふんがい
)
して
居
(
ゐ
)
るであらう。
051
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
之
(
これ
)
も
妾
(
わたし
)
が
御
(
おん
)
身
(
み
)
に
対
(
たい
)
する
恵
(
めぐみ
)
の
鞭
(
むち
)
だと
思
(
おも
)
つて、
052
有難
(
ありがた
)
く
感謝
(
かんしや
)
するがよいぞや。
053
必
(
かなら
)
ず
必
(
かなら
)
ず
迷
(
まよ
)
うてはならないよ。
054
破
(
わ
)
れ
鍋
(
なべ
)
に
閉
(
と
)
ぢ
蓋
(
ぶた
)
、
055
それ
相当
(
さうたう
)
の
女
(
をんな
)
を
見
(
み
)
つけ
出
(
だ
)
して
夫婦
(
ふうふ
)
仲
(
なか
)
よく
暮
(
くら
)
しやんせ。
056
提灯
(
ちやうちん
)
に
釣鐘
(
つりがね
)
、
057
釣
(
つ
)
り
合
(
あは
)
ぬは
不縁
(
ふえん
)
の
基
(
もと
)
と
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
は
昔
(
むかし
)
からの
金言
(
きんげん
)
友彦
(
ともひこ
)
の
守護神
(
しゆごじん
)
殿
(
どの
)
、
058
肉体
(
にくたい
)
、
059
いざさらば
之
(
これ
)
にて
万劫
(
まんご
)
末代
(
まつだい
)
お
別
(
わか
)
れ
致
(
いた
)
します』
060
と
頤
(
あご
)
をしやくり、
061
傍
(
かたはら
)
に
人
(
ひと
)
無
(
な
)
き
如
(
ごと
)
き
横柄
(
わうへい
)
なスタイルにて
喋
(
しやべ
)
り
立
(
た
)
てて
居
(
ゐ
)
る。
062
無心
(
むしん
)
の
月
(
つき
)
は
浄玻璃
(
じやうはり
)
の
鏡
(
かがみ
)
の
如
(
ごと
)
く
真澄
(
ますみ
)
の
空
(
そら
)
に
緩
(
ゆる
)
やかに
懸
(
かか
)
り、
063
小糸姫
(
こいとひめ
)
が
船中
(
せんちう
)
のモノログを
床
(
ゆか
)
しげに
見詰
(
みつ
)
めて
聞
(
き
)
いて
居
(
ゐ
)
るものの
如
(
ごと
)
くに
思
(
おも
)
はれた。
064
チヤンキー、
065
モンキーの
二人
(
ふたり
)
は
大海原
(
おほうなばら
)
の
真中
(
まんなか
)
に
浮
(
うか
)
び
出
(
で
)
たのを
幸
(
さいは
)
ひ、
066
目
(
め
)
と
目
(
め
)
を
見合
(
みあは
)
せ、
067
そろそろ
肩
(
かた
)
を
聳
(
そび
)
やかせながら
体
(
からだ
)
迄
(
まで
)
四角
(
しかく
)
にして、
068
機械
(
きかい
)
人形
(
にんぎやう
)
の
様
(
やう
)
に
小糸姫
(
こいとひめ
)
の
両脇
(
りやうわき
)
にチヨコナンと
坐
(
すわ
)
り、
069
チャンキー
『
何
(
なん
)
と
今日
(
けふ
)
のお
月様
(
つきさま
)
は、
070
まんまるい
綺麗
(
きれい
)
なお
顔
(
かほ
)
ぢやないか。
071
恰
(
まる
)
で
小糸姫
(
こいとひめ
)
女王
(
ぢよわう
)
のやうな、
072
玲瓏
(
れいろう
)
たる
容色
(
ようしよく
)
。
073
空
(
そら
)
を
仰
(
あふ
)
げば
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
の
如
(
ごと
)
き
月光
(
げつくわう
)
如来
(
によらい
)
、
074
船中
(
せんちう
)
を
眺
(
なが
)
むれば
雪
(
ゆき
)
を
欺
(
あざむ
)
く
純白
(
じゆんぱく
)
の
光明
(
くわうみやう
)
女来
(
によらい
)
の
御
(
ご
)
出現
(
しゆつげん
)
、
075
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
も
男
(
をとこ
)
と
生
(
うま
)
れた
上
(
うへ
)
は、
076
一
(
ひと
)
つ
此
(
この
)
様
(
やう
)
な
美人
(
びじん
)
と
握手
(
あくしゆ
)
をしたいものだなア、
077
アハヽヽヽ』
078
と
作
(
つく
)
つたやうな
笑
(
わら
)
ひ
声
(
ごゑ
)
を
出
(
だ
)
す。
079
モンキー
『オイ、
080
チヤン、
081
擽
(
くすぐ
)
つたいやうな
遠廻
(
とほまは
)
しにかけて
何
(
なに
)
を
云
(
い
)
ふのだ。
082
一
(
いち
)
里
(
り
)
や
二
(
に
)
里
(
り
)
ならまだしもだが、
083
大空
(
おほぞら
)
のお
月
(
つき
)
さま
迄
(
まで
)
引張
(
ひつぱ
)
り
出
(
だ
)
しやがつて、
084
そんな
廻
(
まは
)
り
遠
(
とほ
)
い
事
(
こと
)
は
今
(
いま
)
の
世
(
よ
)
には
流行
(
りうかう
)
せないぞ。
085
何事
(
なにごと
)
も
簡単
(
かんたん
)
敏捷
(
びんせう
)
を
貴
(
たつと
)
ぶ
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
だ。
086
海底
(
うなそこ
)
にも
此
(
この
)
通
(
とほ
)
り
立派
(
りつぱ
)
な
月
(
つき
)
が
浪
(
なみ
)
のまにまに
漂
(
ただよ
)
うて
居
(
ゐ
)
る。
087
月
(
つき
)
の
上
(
うへ
)
を
渡
(
わた
)
る
此
(
この
)
船
(
ふね
)
は、
088
天人
(
てんにん
)
の
乗
(
の
)
つた
天
(
あま
)
の
鳥船
(
とりふね
)
も
同様
(
どうやう
)
だ。
089
これ
見
(
み
)
よ………
海
(
うみ
)
の
底
(
そこ
)
には
幾十万
(
いくじふまん
)
とも
知
(
し
)
れぬ
星
(
ほし
)
の
影
(
かげ
)
、
090
月
(
つき
)
と
月
(
つき
)
、
091
星
(
ほし
)
と
星
(
ほし
)
とに
包
(
つつ
)
まれた
此
(
この
)
大空
(
おほぞら
)
仮令
(
たとへ
)
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
の
色
(
いろ
)
が
黒
(
くろ
)
いと
云
(
い
)
うても、
092
唇
(
くちびる
)
が
厚
(
あつ
)
いと
云
(
い
)
うても、
093
最早
(
もはや
)
此
(
この
)
通
(
とほ
)
り
天上
(
てんじやう
)
を
翔
(
かけ
)
る
様
(
やう
)
になつたのだから、
094
顕恩郷
(
けんおんきやう
)
のお
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
に
何
(
なに
)
遠慮
(
ゑんりよ
)
する
事
(
こと
)
があるものかい。
095
僅
(
わづ
)
か
十六
(
じふろく
)
歳
(
さい
)
の
繊弱
(
かよわ
)
き
女
(
をんな
)
、
096
此
(
この
)
通
(
とほ
)
り
頑丈
(
ぐわんぢやう
)
な
鉄
(
てつ
)
のやうな
固
(
かた
)
い
腕
(
うで
)
をした
我々
(
われわれ
)
の
自由
(
じいう
)
にならぬ
道理
(
だうり
)
があるか。
097
際限
(
さいげん
)
も
無
(
な
)
き
此
(
この
)
海原
(
うなばら
)
、
098
何一
(
なにひと
)
つ
楽
(
たの
)
しみなくして
何
(
ど
)
うして
之
(
これ
)
が
勤
(
つと
)
まらう。
099
………これ
小糸姫
(
こいとひめ
)
さま、
100
お
前
(
まへ
)
の
家来
(
けらい
)
だと
云
(
い
)
うて
連
(
つ
)
れて
居
(
を
)
つた
友彦
(
ともひこ
)
の
鼻曲
(
はなまが
)
りや、
101
出歯亀
(
でばがめ
)
に
比
(
くら
)
ぶれば
幾層倍
(
いくそうばい
)
立派
(
りつぱ
)
だか
知
(
し
)
れやしまい。
102
色
(
いろ
)
は
黒
(
くろ
)
うても
浅漬
(
あさづけ
)
茄子
(
なすび
)
、
103
何
(
ど
)
うだ
一
(
ひと
)
つ
妥協
(
だけふ
)
をやらうではないか』
104
小糸姫
『ホヽヽヽヽ、
105
これ
二人
(
ふたり
)
の
黒
(
くろ
)
ン
坊
(
ばう
)
さま、
106
冗談
(
じようだん
)
を
云
(
い
)
ふにも
程
(
ほど
)
がある。
107
女
(
をんな
)
だと
思
(
おも
)
うて
無礼
(
ぶれい
)
な
事
(
こと
)
をなさると
了見
(
りやうけん
)
はせぬぞエ』
108
チャンキー
『アハヽヽヽ、
109
見事
(
みごと
)
云
(
い
)
ふだけの
事
(
こと
)
は
仰有
(
おつしや
)
りますワイ。
110
まさかの
時
(
とき
)
になれば
言論
(
げんろん
)
よりも
実力
(
じつりよく
)
が
勝
(
か
)
つ
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
だ。
111
もうかうなつちや
此
(
この
)
方
(
はう
)
の
自由
(
じいう
)
自在
(
じざい
)
、
112
何事
(
なにごと
)
も
因縁
(
いんねん
)
ぢやと
諦
(
あきら
)
めて
我々
(
われわれ
)
の
要求
(
えうきう
)
を
全部
(
ぜんぶ
)
容
(
い
)
れるがお
前
(
まへ
)
さまの
身
(
み
)
の
為
(
ため
)
だ。
113
可憐
(
かはい
)
さうに、
114
あれ
程
(
ほど
)
焦
(
こが
)
れて
居
(
を
)
つた
友彦
(
ともひこ
)
を
酒
(
さけ
)
を
飲
(
の
)
まして
酔潰
(
ゑひつぶ
)
し、
115
其
(
その
)
間
(
ま
)
にすつかり
路銀
(
ろぎん
)
を
腹
(
はら
)
に
巻
(
ま
)
き、
116
逃
(
に
)
げ
出
(
だ
)
すと
云
(
い
)
ふ
大
(
だい
)
それた
年
(
とし
)
にも
似合
(
にあ
)
はぬ
豪胆者
(
がうたんもの
)
、
117
後
(
あと
)
に
残
(
のこ
)
つた
友彦
(
ともひこ
)
は………
僅
(
わづ
)
か
肩揚
(
かたあげ
)
の
取
(
と
)
れた
計
(
ばか
)
りの
小娘
(
こむすめ
)
に
三十
(
さんじふ
)
男
(
をとこ
)
が
馬鹿
(
ばか
)
にされ、
118
どうして
世間
(
せけん
)
に
顔出
(
かほだ
)
しがなるものか、
119
「エヽ
残念
(
ざんねん
)
や
口惜
(
くちをし
)
や、
120
仮令
(
たとへ
)
千尋
(
ちひろ
)
の
海
(
うみ
)
の
底
(
そこ
)
迄
(
まで
)
も
小糸
(
こいと
)
の
後
(
あと
)
を
探
(
たづ
)
ねて、
121
恨
(
うら
)
みを
云
(
い
)
はねば
死
(
し
)
んでも
死
(
し
)
ねぬ」………と
恨
(
うら
)
んだ
男
(
をとこ
)
の
魂
(
たましひ
)
が
結晶
(
けつしやう
)
して
副
(
ふく
)
守護神
(
しゆごじん
)
となり
我々
(
われわれ
)
両人
(
りやうにん
)
にすつかり
憑依
(
のりうつ
)
つたのだ、
122
因縁
(
いんねん
)
と
云
(
い
)
ふものは
恐
(
おそ
)
ろしいものだらう。
123
かう
申
(
まを
)
す
言葉
(
ことば
)
は
決
(
けつ
)
して
黒
(
くろ
)
ン
坊
(
ばう
)
が
云
(
い
)
ふのではない、
124
友彦
(
ともひこ
)
の
霊魂
(
みたま
)
が
口
(
くち
)
を
籍
(
か
)
つて
云
(
い
)
うて
居
(
ゐ
)
るのだ。
125
さア
返答
(
へんたふ
)
は
如何
(
どう
)
だ』
126
と
形相
(
ぎやうさう
)
凄
(
すさま
)
じく
肩肱
(
かたひぢ
)
を
怒
(
いか
)
らせ
汗臭
(
あせくさ
)
い
体
(
からだ
)
で
両方
(
りやうはう
)
から
詰寄
(
つめよ
)
せて
来
(
く
)
る。
127
小糸姫
『ホヽヽヽヽ、
128
これこれ
黒
(
くろ
)
ン
坊
(
ばう
)
さま、
129
何
(
なん
)
ぢやお
前
(
まへ
)
は、
130
卑怯
(
ひけふ
)
千万
(
せんばん
)
な、
131
友彦
(
ともひこ
)
の
霊魂
(
れいこん
)
だなぞと……なぜ
黒
(
くろ
)
ン
坊
(
ばう
)
のチヤンキー、
132
モンキーが
女王
(
ぢよわう
)
さまに
惚
(
ほ
)
れましたと、
133
キツパリ
云
(
い
)
はぬのだい』
134
チャンキー
『ヤア
割
(
わり
)
とは
開
(
ひら
)
けた
女王
(
ぢよわう
)
様
(
さま
)
だ。
135
それも
其
(
その
)
筈
(
はず
)
十五
(
じふご
)
やそこらで
大
(
おほ
)
きな
男
(
をとこ
)
を
翻弄
(
ほんろう
)
し
故郷
(
こきやう
)
を
飛
(
と
)
び
出
(
だ
)
すやうな
阿婆摺
(
あばず
)
れ
女
(
をんな
)
だから、
136
其
(
その
)
位
(
くらゐ
)
な
度胸
(
どきよう
)
は
有
(
あ
)
りさうなものだ。
137
そんなら
小糸姫
(
こいとひめ
)
さま、
138
改
(
あらた
)
めて
私
(
わたし
)
等
(
ら
)
二人
(
ふたり
)
は、
139
お
前
(
まへ
)
さまに
心
(
こころ
)
の
底
(
そこ
)
から、
140
スヰートハートをして
居
(
ゐ
)
るのだ。
141
余
(
あま
)
り
憎
(
にく
)
うもありますまい』
142
小糸姫
『ホヽヽヽヽ、
143
あゝさうですかいな。
144
それ
程
(
ほど
)
私
(
わたし
)
に
御
(
ご
)
執着
(
しふちやく
)
ですかな。
145
矢張
(
やつぱり
)
天下
(
てんか
)
無双
(
むさう
)
のナイスでせう』
146
モンキー
『ナイスは
云
(
い
)
はぬでも
分
(
わか
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
147
何
(
ど
)
うだ、
148
吾々
(
われわれ
)
両人
(
りやうにん
)
の
思召
(
おぼしめし
)
を
聞
(
き
)
いて
下
(
くだ
)
さるのか』
149
小糸姫
『
妾
(
わたし
)
は
聾
(
つんぼ
)
ぢやありませぬよ。
150
最前
(
さいぜん
)
から
一言
(
ひとこと
)
も
残
(
のこ
)
らず
聞
(
き
)
いて
居
(
ゐ
)
るぢやありませぬか』
151
チャンキー
『ソンナ
聞
(
き
)
きやうとは
違
(
ちが
)
ひますワイ。
152
要
(
えう
)
するに、
153
吾々
(
われわれ
)
の
要求
(
えうきう
)
を
容
(
い
)
れて
下
(
くだ
)
さるかと
云
(
い
)
ふのだ』
154
小糸姫
『アタ
阿呆
(
あはう
)
らしい、
155
誰
(
たれ
)
が
炭団玉
(
たどんだま
)
のやうな
黒
(
くろ
)
い
男
(
をとこ
)
に
秋波
(
しうは
)
を
送
(
おく
)
りますか、
156
烏
(
からす
)
の
芝居
(
しばゐ
)
だと
思
(
おも
)
つて、
157
最前
(
さいぜん
)
から、
158
面白
(
おもしろ
)
可笑
(
をか
)
しう
観覧
(
くわんらん
)
して
居
(
ゐ
)
るのだよ』
159
チャンキー
『コラ
阿魔女
(
あまつちよ
)
……かう
見
(
み
)
えても
俺
(
おれ
)
は
男
(
をとこ
)
だぞ。
160
女
(
をんな
)
の
癖
(
くせ
)
に、
161
裸一貫
(
はだかいつくわん
)
の
大男
(
おほをとこ
)
を
嘲弄
(
てうろう
)
するのか』
162
小糸姫
『
何程
(
なにほど
)
胴殻
(
どうがら
)
は
大
(
おほ
)
きうても、
163
お
前
(
まへ
)
の
肝
(
きも
)
は
余
(
あま
)
り
小
(
ちひ
)
さいから、
164
サツク
迄
(
まで
)
が
矢張
(
やつぱり
)
小
(
ちひ
)
さく
見
(
み
)
えて
仕方
(
しかた
)
がないワ』
165
チャンキー
『
何処迄
(
どこまで
)
も
吾々
(
われわれ
)
を
馬鹿
(
ばか
)
にするのだな。
166
よしよし、
167
この
船
(
ふね
)
を
何処
(
どこ
)
へやらうと
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
の
勝手
(
かつて
)
だから、
168
往生
(
わうじやう
)
する
所
(
ところ
)
迄
(
まで
)
苦
(
くる
)
しめてやるからさう
思
(
おも
)
へ』
169
小糸姫
『
同
(
おな
)
じ
船
(
ふね
)
に
乗
(
の
)
つた
以上
(
いじやう
)
は、
170
妾
(
わたし
)
の
苦
(
くる
)
しい
時
(
とき
)
は
矢張
(
やつぱり
)
お
前
(
まへ
)
も
苦
(
くる
)
しいのだ。
171
妾
(
わたし
)
はかうしてお
客
(
きやく
)
さまだから
手
(
て
)
を
束
(
つか
)
ねて
見
(
み
)
て
居
(
ゐ
)
るが、
172
お
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
は
労働
(
らうどう
)
せなくては
一
(
いち
)
日
(
にち
)
も
暮
(
く
)
れない
身分
(
みぶん
)
だ。
173
常世
(
とこよ
)
の
国
(
くに
)
の
果
(
はて
)
迄
(
まで
)
なりと
勝手
(
かつて
)
に
漕
(
こ
)
いで
往
(
い
)
つたがよからう。
174
妾
(
わたし
)
は
此
(
この
)
広々
(
ひろびろ
)
とした
此
(
この
)
海面
(
かいめん
)
を
天国
(
てんごく
)
のやうに
思
(
おも
)
うて、
175
仮令
(
たとへ
)
三
(
さん
)
年
(
ねん
)
でも
十
(
じふ
)
年
(
ねん
)
でも
漂
(
ただよ
)
うて
居
(
ゐ
)
るのが
好
(
す
)
きなのだ』
176
チャンキー
『
何
(
なん
)
と
豪胆
(
がうたん
)
な
女
(
をんな
)
だな。
177
流石
(
さすが
)
は
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
の
血
(
ち
)
の
流
(
なが
)
れを
受
(
う
)
けた
丈
(
だけ
)
あつて、
178
どことはなしに
違
(
ちが
)
つた
所
(
ところ
)
があるワイ。
179
なア、
180
モンキー、
181
用心
(
ようじん
)
せぬと
此奴
(
こいつ
)
は
化物
(
ばけもの
)
か
知
(
し
)
れないぞ。
182
何程
(
なにほど
)
胆力
(
たんりよく
)
があると
云
(
い
)
うても
十五
(
じふご
)
や
十六
(
じふろく
)
で
之
(
これ
)
だけ
胴
(
どう
)
の
据
(
す
)
わる
筈
(
はず
)
がない。
183
三五教
(
あななひけう
)
の
守護
(
しゆご
)
を
致
(
いた
)
して
居
(
ゐ
)
る
高倉
(
たかくら
)
か
旭
(
あさひ
)
の
化身
(
けしん
)
かも
知
(
し
)
れない。
184
………オイ
一寸
(
ちよつと
)
尻
(
しり
)
をあげて
見
(
み
)
い。
185
尻尾
(
しつぽ
)
でも
下
(
さ
)
げて
居
(
ゐ
)
やがりやせぬか』
186
と
小糸姫
(
こいとひめ
)
の
背部
(
はいぶ
)
を
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
見詰
(
みつ
)
めながら、
187
チャンキー
『
矢張
(
やつぱり
)
此奴
(
こいつ
)
は
正真
(
しやうしん
)
正銘
(
しやうめい
)
の
小糸姫
(
こいとひめ
)
だ。
188
………オイ、
189
モンキー
愈
(
いよいよ
)
是
(
これ
)
から
不言
(
ふげん
)
実行
(
じつかう
)
だ』
190
モンキー
『ヨシ
合点
(
がつてん
)
だ』
191
とモンキーは
前
(
まへ
)
より、
192
チヤンキーは
後
(
うしろ
)
より
小糸姫
(
こいとひめ
)
に
武者
(
むしや
)
振
(
ぶ
)
りつき、
193
手籠
(
てごめ
)
にせむと
飛
(
と
)
び
掛
(
かか
)
るを
小糸姫
(
こいとひめ
)
は
右
(
みぎ
)
に
左
(
ひだり
)
にぬるりぬるりと
身
(
み
)
を
躱
(
かは
)
し、
194
暫
(
しば
)
し
揉
(
も
)
み
合
(
あ
)
ひ
居
(
ゐ
)
たりしが、
195
強力
(
がうりき
)
なる
二人
(
ふたり
)
の
男
(
をとこ
)
に
取
(
と
)
り
押
(
おさ
)
へられ「キヤツ」と
叫
(
さけ
)
ぶ
折
(
をり
)
しも、
196
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
乗
(
の
)
つた
一艘
(
いつそう
)
の
船
(
ふね
)
、
197
此
(
この
)
場
(
ば
)
に
浪
(
なみ
)
を
切
(
き
)
つて
疾走
(
しつそう
)
し
来
(
きた
)
り、
198
一人
(
ひとり
)
の
女
(
をんな
)
は
二人
(
ふたり
)
の
男
(
をとこ
)
に
当身
(
あてみ
)
を
喰
(
く
)
はしたれば、
199
二人
(
ふたり
)
は
脆
(
もろ
)
くも
船
(
ふね
)
の
中
(
なか
)
にウンと
云
(
い
)
つたきり
大
(
だい
)
の
字
(
じ
)
になり
打
(
う
)
ち
倒
(
たふ
)
れける。
200
小糸姫
(
こいとひめ
)
は
思
(
おも
)
はぬ
助
(
たす
)
け
船
(
ぶね
)
のために
危難
(
きなん
)
を
救
(
すく
)
はれ、
201
一人
(
ひとり
)
の
女
(
をんな
)
に
向
(
むか
)
ひ、
202
小糸姫
『
危
(
あやふ
)
い
所
(
ところ
)
をお
救
(
すく
)
ひ
下
(
くだ
)
さいまして
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います』
203
と
月夜
(
つきよ
)
に
透
(
す
)
かし
見
(
み
)
て、
204
小糸姫
『
貴女
(
あなた
)
は
今子姫
(
いまこひめ
)
様
(
さま
)
、
205
何
(
ど
)
うしてまア
斯様
(
かやう
)
な
所
(
ところ
)
へ
御
(
お
)
入来
(
いで
)
遊
(
あそ
)
ばしました』
206
と
聞
(
き
)
かれて
今子姫
(
いまこひめ
)
は
驚
(
おどろ
)
き、
207
今子姫
『さう
云
(
い
)
ふ
貴女
(
あなた
)
は
顕恩郷
(
けんおんきやう
)
の
副棟梁
(
ふくとうりやう
)
様
(
さま
)
のお
娘子
(
むすめご
)
、
208
小糸姫
(
こいとひめ
)
様
(
さま
)
では
御座
(
ござ
)
いませぬか。
209
去年
(
きよねん
)
の
春
(
はる
)
、
210
友彦
(
ともひこ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
と
手
(
て
)
に
手
(
て
)
を
取
(
と
)
つて
何処
(
いづく
)
へかお
越
(
こ
)
し
遊
(
あそ
)
ばし、
211
御
(
ご
)
両親
(
りやうしん
)
のお
歎
(
なげ
)
きは
一通
(
ひととほ
)
りでは
御座
(
ござ
)
いませぬ。
212
傍
(
そば
)
の
見
(
み
)
る
目
(
め
)
もお
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
で
耐
(
たま
)
りませなんだ。
213
さア
貴女
(
あなた
)
は
一
(
いち
)
日
(
にち
)
も
早
(
はや
)
くお
帰
(
かへ
)
り
遊
(
あそ
)
ばして、
214
御
(
ご
)
両親
(
りやうしん
)
に
御
(
ご
)
安心
(
あんしん
)
おさせ
遊
(
あそ
)
ばすが
宜
(
よろ
)
しからう』
215
小糸姫
『イエイエ
何
(
ど
)
うあつても
妾
(
わたし
)
は
竜宮
(
りうぐう
)
の
一
(
ひと
)
つ
島
(
じま
)
へ
参
(
まゐ
)
らねばなりませぬ。
216
少
(
すこ
)
し
様子
(
やうす
)
あつて
友彦
(
ともひこ
)
に
別
(
わか
)
れ、
217
今
(
いま
)
渡海
(
とかい
)
の
途中
(
とちう
)
で
御座
(
ござ
)
います。
218
顕恩郷
(
けんおんきやう
)
の
本山
(
ほんざん
)
は
益々
(
ますます
)
隆盛
(
りうせい
)
で
御座
(
ござ
)
いますか』
219
今子姫
『
私
(
わたし
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
大神
(
おほかみ
)
、
220
素盞嗚
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
娘子
(
むすめご
)
五十子
(
いそこ
)
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
の
侍女
(
じぢよ
)
となり、
221
三五教
(
あななひけう
)
の
信者
(
しんじや
)
で
御座
(
ござ
)
いましたが、
222
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
様
(
さま
)
や、
223
貴女
(
あなた
)
の
御
(
ご
)
両親
(
りやうしん
)
に
改心
(
かいしん
)
して
頂
(
いただ
)
かうと、
224
種々
(
いろいろ
)
心
(
こころ
)
は
砕
(
くだ
)
きましたなれど
何
(
ど
)
うしても
駄目
(
だめ
)
、
225
とうとう
天
(
あめ
)
の
太玉
(
ふとだまの
)
命
(
みこと
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
が
御
(
お
)
入来
(
いで
)
になり、
226
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
初
(
はじ
)
め、
227
御
(
ご
)
両親
(
りやうしん
)
は
何処
(
どこ
)
へか
身
(
み
)
を
匿
(
かく
)
され、
228
顕恩郷
(
けんおんきやう
)
は
今
(
いま
)
や
三五教
(
あななひけう
)
の
霊場
(
れいぢやう
)
となつて
居
(
を
)
ります。
229
そして
妾
(
わたし
)
は
五十子
(
いそこ
)
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
、
230
梅子姫
(
うめこひめ
)
様
(
さま
)
と
宣伝
(
せんでん
)
の
途中
(
とちう
)
、
231
片彦
(
かたひこ
)
、
232
釘彦
(
くぎひこ
)
等
(
ら
)
部下
(
ぶか
)
の
為
(
ため
)
に
促
(
とら
)
へられ、
233
此
(
この
)
船
(
ふね
)
に
乗
(
の
)
せて
流
(
なが
)
されました
途中
(
とちう
)
で
御座
(
ござ
)
います』
234
と
聞
(
き
)
いて
小糸姫
(
こいとひめ
)
は
大
(
おほ
)
いに
驚
(
おどろ
)
き、
235
小糸姫
『さすれば
貴女
(
あなた
)
は
三五教
(
あななひけう
)
に
寝返
(
ねがへ
)
りを
打
(
う
)
つた
謀反人
(
むほんにん
)
。
236
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
様
(
さま
)
を
初
(
はじ
)
め、
237
妾
(
わたし
)
の
両親
(
りやうしん
)
の
敵
(
かたき
)
も
同様
(
どうやう
)
、
238
サア
此
(
この
)
上
(
うへ
)
は
覚悟
(
かくご
)
をなされ』
239
と
懐剣
(
くわいけん
)
をスラリと
抜
(
ぬ
)
いて
斬
(
き
)
り
掛
(
かか
)
らうとする。
240
五十子
(
いそこ
)
姫
(
ひめ
)
、
241
梅子姫
(
うめこひめ
)
、
242
宇豆姫
(
うづひめ
)
は、
243
乗
(
の
)
り
来
(
き
)
し
船
(
ふね
)
の
上
(
うへ
)
より、
244
騒
(
さわ
)
がず
焦
(
あせ
)
らず
端然
(
たんぜん
)
として
此
(
この
)
光景
(
くわうけい
)
を
打
(
う
)
ち
看守
(
みまも
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
245
今子姫
(
いまこひめ
)
は
言葉
(
ことば
)
淑
(
しと
)
やかに、
246
今子姫
『マアマアお
鎮
(
しづ
)
まり
遊
(
あそ
)
ばせ。
247
何程
(
なにほど
)
貴女
(
あなた
)
がお
焦慮
(
いらち
)
なさつても、
248
此
(
この
)
通
(
とほ
)
り
此方
(
こちら
)
は
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
女
(
をんな
)
、
249
貴女
(
あなた
)
は
一人
(
ひとり
)
、
250
到底
(
たうてい
)
駄目
(
だめ
)
ですよ。
251
それより
貴女
(
あなた
)
の
度胸
(
どきよう
)
を
活用
(
くわつよう
)
し、
252
竜宮
(
りうぐう
)
の
一
(
ひと
)
つ
島
(
じま
)
へ
渡
(
わた
)
りお
道
(
みち
)
の
宣伝
(
せんでん
)
を
開始
(
かいし
)
なさつたら
何
(
ど
)
うでせう。
253
妾
(
わたし
)
もお
力
(
ちから
)
になりまする』
254
小糸姫
(
こいとひめ
)
は
勝敗
(
しようはい
)
の
数
(
すう
)
既
(
すで
)
に
決
(
けつ
)
せりと
覚悟
(
かくご
)
を
極
(
き
)
め、
255
小糸姫
『
世界
(
せかい
)
は
皆
(
みな
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
造
(
つく
)
り
遊
(
あそ
)
ばしたもの、
256
謂
(
い
)
はば
世界
(
せかい
)
の
人間
(
にんげん
)
は
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御子
(
みこ
)
で
御座
(
ござ
)
います。
257
神
(
かみ
)
の
目
(
め
)
から
御覧
(
ごらん
)
になれば
妾
(
わたし
)
も
貴女
(
あなた
)
も
皆
(
みな
)
姉妹
(
きやうだい
)
、
258
今迄
(
いままで
)
の
事
(
こと
)
はスツカリと
河
(
かは
)
へ
流
(
なが
)
しイヤ
海
(
うみ
)
に
流
(
なが
)
し、
259
相
(
あひ
)
提携
(
ていけい
)
して
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
奉仕
(
ほうし
)
しようではありませぬか』
260
今子姫
『それは
真
(
まこと
)
に
結構
(
けつこう
)
で
御座
(
ござ
)
います。
261
……
五十子
(
いそこ
)
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
、
262
梅子姫
(
うめこひめ
)
様
(
さま
)
、
263
宇豆姫
(
うづひめ
)
様
(
さま
)
、
264
貴女
(
あなた
)
方
(
がた
)
の
御
(
お
)
考
(
かんが
)
へは
如何
(
どう
)
でせう』
265
三
(
さん
)
人
(
にん
)
一度
(
いちど
)
に
頷
(
うなづ
)
く。
266
今子姫
『アレ
彼
(
あ
)
の
通
(
とほ
)
りお
三
(
さん
)
人
(
にん
)
共
(
とも
)
、
267
妾
(
わたし
)
と
御
(
ご
)
同感
(
どうかん
)
、
268
さア
是
(
これ
)
から
御
(
ご
)
一緒
(
いつしよ
)
に
一
(
ひと
)
つの
船
(
ふね
)
で
参
(
まゐ
)
りませう。
269
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
二人
(
ふたり
)
の
男
(
をとこ
)
に
活
(
くわつ
)
を
入
(
い
)
れ、
270
助
(
たす
)
けてやらねばなりますまい』
271
と
今子姫
(
いまこひめ
)
は『ウン』と
力
(
ちから
)
を
籠
(
こ
)
めて
活
(
くわつ
)
を
入
(
い
)
れた。
272
忽
(
たちま
)
ち
二人
(
ふたり
)
は
正気
(
しやうき
)
づき
涙
(
なみだ
)
を
流
(
なが
)
して
謝罪
(
あやま
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
273
小糸姫
『これはこれは
二人
(
ふたり
)
の
黒
(
くろ
)
ン
坊
(
ばう
)
さま、
274
長々
(
ながなが
)
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
であつた。
275
妾
(
わたし
)
は
是
(
これ
)
より
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
となつて、
276
世界
(
せかい
)
の
隅々
(
すみずみ
)
迄
(
まで
)
巡歴
(
じゆんれき
)
するから、
277
お
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
はこれで
帰
(
かへ
)
つてお
呉
(
く
)
れ』
278
と
懐中
(
くわいちゆう
)
より
小判
(
こばん
)
を
取
(
と
)
り
出
(
だ
)
し
投
(
な
)
げやれば、
279
二人
(
ふたり
)
は
押
(
お
)
し
頂
(
いただ
)
き、
280
チャンキー、モンキー
『
誠
(
まこと
)
に
御
(
ご
)
無礼
(
ぶれい
)
を
到
(
いた
)
しました
上
(
うへ
)
に、
281
之
(
これ
)
程
(
ほど
)
沢山
(
たくさん
)
お
金
(
かね
)
を
頂戴
(
ちやうだい
)
致
(
いた
)
しまして
有
(
あ
)
り
難
(
がた
)
う
御座
(
ござ
)
います。
282
左様
(
さやう
)
なれば
貴女
(
あなた
)
は
彼方
(
あちら
)
の
船
(
ふね
)
にお
乗
(
の
)
り
下
(
くだ
)
さいませ。
283
私
(
わたし
)
共
(
ども
)
は
此
(
この
)
船
(
ふね
)
で
錫蘭
(
シロ
)
の
港
(
みなと
)
に
引返
(
ひきかへ
)
します、
284
万一
(
まんいち
)
友彦
(
ともひこ
)
様
(
さま
)
に
遇
(
あ
)
うたら
何
(
ど
)
う
申
(
まを
)
して
置
(
お
)
きませうか』
285
小糸姫
『アー
知
(
し
)
らないと
云
(
い
)
うて
置
(
お
)
くが
無難
(
ぶなん
)
でよからう』
286
二人
(
ふたり
)
は『ハイ
有難
(
ありがた
)
う』と
感謝
(
かんしや
)
し
乍
(
なが
)
ら
手早
(
てばや
)
く
櫓
(
ろ
)
を
操
(
あやつ
)
り、
287
東北
(
とうほく
)
さして
漕
(
こ
)
ぎ
帰
(
かへ
)
る。
288
茲
(
ここ
)
に
五
(
ご
)
人
(
にん
)
の
女
(
をんな
)
は
代
(
かは
)
る
代
(
がは
)
る
櫓
(
ろ
)
を
操
(
あやつ
)
りながら、
289
浪
(
なみ
)
のまにまに
流
(
なが
)
されて、
290
遂
(
つひ
)
にオーストラリヤの
一
(
ひと
)
つ
島
(
じま
)
に
無事
(
ぶじ
)
上陸
(
じやうりく
)
する
事
(
こと
)
となりける。
291
(
大正一一・六・一四
旧五・一九
加藤明子
録)
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