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霊界物語
如意宝珠(第13~24巻)
第24巻(亥の巻)
序文
総説
第1篇 流転の涙
第1章 粉骨砕身
第2章 唖呍
第3章 波濤の夢
第4章 一島の女王
第2篇 南洋探島
第5章 蘇鉄の森
第6章 アンボイナ島
第7章 メラの滝
第8章 島に訣別
第3篇 危機一髪
第9章 神助の船
第10章 土人の歓迎
第11章 夢の王者
第12章 暴風一過
第4篇 蛮地宣伝
第13章 治安内教
第14章 タールス教
第15章 諏訪湖
第16章 慈愛の涙
霊の礎(一〇)
霊の礎(一一)
神諭
余白歌
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第24巻(亥の巻)
> 第3篇 危機一髪 > 第10章 土人の歓迎
<<< 神助の船
(B)
(N)
夢の王者 >>>
第一〇章
土人
(
どじん
)
の
歓迎
(
くわんげい
)
〔七四〇〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第24巻 如意宝珠 亥の巻
篇:
第3篇 危機一髪
よみ(新仮名遣い):
ききいっぱつ
章:
第10章 土人の歓迎
よみ(新仮名遣い):
どじんのかんげい
通し章番号:
740
口述日:
1922(大正11)年07月03日(旧閏05月09日)
口述場所:
筆録者:
加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年5月10日
概要:
舞台:
ニュージーランド(沓島)、地恩城(地恩郷)
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
玉治別の漕ぐ船は、ニュージーランドの沓島にやってきた。上陸した一行は、島の人々の歓迎を受けた。友彦は言葉の通じないのを幸い、木の上に登って口から出任せの言葉を叫んだ。
友彦の出鱈目の言葉は、島の人々には、玉能姫と初稚姫は尊い女神であり、蜈蚣姫は一つ島の女王の母上だ、と聞こえた。そのため玉能姫、初稚姫、蜈蚣姫は非常に歓迎を受けた。
玉治別やスマートボールも樹上に登って出鱈目な言葉を叫ぶ。スマートボールが叫ぶと、島の人々は高姫を取り囲んで尻をまくって馬鹿にし始めた。高姫は怒るが、高姫の言葉は島の人々にはまったく通じなかった。
玉能姫は、樹上の玉治別に、すぐに一つ島に行かなければならないと告げた。島の人々は一斉に散って、豪華な船をしつらえて持ってきてくれた。
島の人々は玉能姫、初稚姫、蜈蚣姫らを豪華な船に乗せた。玉治別らは自分たちが乗ってきた船に乗った。島の人々はなぜか、高姫とチャンキー、モンキーだけは泥舟に無理矢理乗せてしまった。
島の人たちは船を漕いで、一行を一つ島に案内した。玉治別は島の神霊に感じて、南洋語をにわかに感得し、島の言葉で宣伝歌を歌った。島人たちはこれを聞いて、感涙に咽んだ。
一つ島に着くと、ニュージーランドの酋長は一つ島の黄竜姫に到着を告げに先に出立した。他の人々は丁重に手車に乗せられて案内されたが、高姫だけは道中非常に侮辱を受けながら連れて行かれた。
黄竜姫の使いとしてブランジーが現れ、蜈蚣姫を輿車に乗せ変えて迎えた。一行は城内に入った。玄関にはクロンバーがいた。玉能姫、初稚姫は黒姫だと気が付き、声をかけた。
黒姫は南洋に玉を探しに出ていた経緯を語ったが、今は黄竜姫の宰相として仕えていると権力を楯にして、三五教の面々を見下した態度をあらわにした。
そこへ、惨めな姿で高姫が現れた。高姫を認めた黒姫、高山彦は、お互いに涙を流して喜び合い、手を取って城の中へ姿を隠した。この様を見て、玉治別、初稚姫、玉能姫ら一行は密かに裏門から城外にのがれ、裏山の森林に姿を隠して休息した。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
ニユージランド(ニュージーランド)
データ凡例:
データ最終更新日:
2021-08-04 20:29:09
OBC :
rm2410
愛善世界社版:
164頁
八幡書店版:
第4輯 672頁
修補版:
校定版:
168頁
普及版:
76頁
初版:
ページ備考:
001
南洋一
(
なんやういち
)
の
竜宮島
(
りうぐうじま
)
002
アンボイナをば
後
(
あと
)
に
見
(
み
)
て
003
救
(
すく
)
ひの
船
(
ふね
)
に
身
(
み
)
を
任
(
まか
)
せ
004
進
(
すす
)
み
来
(
きた
)
れる
高姫
(
たかひめ
)
や
005
蜈蚣
(
むかで
)
の
姫
(
ひめ
)
の
一行
(
いつかう
)
は
006
夜
(
よ
)
を
日
(
ひ
)
に
継
(
つ
)
いでオセアニヤ
007
一
(
ひと
)
つ
島根
(
しまね
)
に
渡
(
わた
)
らむと
008
心
(
こころ
)
勇
(
いさ
)
みて
漕
(
こ
)
ぎ
来
(
きた
)
る
009
時
(
とき
)
しもあれや
海中
(
わだなか
)
に
010
すつくと
立
(
た
)
てる
岩島
(
いはしま
)
を
011
左手
(
ゆんで
)
に
眺
(
なが
)
めて
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く
012
俄
(
にはか
)
に
海風
(
うなかぜ
)
吹
(
ふ
)
き
荒
(
すさ
)
び
013
浪
(
なみ
)
高
(
たか
)
まりて
船体
(
せんたい
)
を
014
操
(
あやつ
)
る
術
(
すべ
)
も
無
(
な
)
きままに
015
浪
(
なみ
)
を
避
(
さ
)
けむと
岩島
(
いはしま
)
の
016
蔭
(
かげ
)
に
漕
(
こ
)
ぎつけ
眺
(
なが
)
むれば
017
怪
(
あや
)
しき
影
(
かげ
)
の
唯
(
ただ
)
二
(
ふた
)
つ
018
何者
(
なにもの
)
ならむと
立
(
た
)
ち
寄
(
よ
)
つて
019
素性
(
すじやう
)
を
聞
(
き
)
けば
錫蘭島
(
シロしま
)
の
020
チヤンキー モンキー
両人
(
りやうにん
)
が
021
顕恩城
(
けんおんじやう
)
の
小糸姫
(
こいとひめ
)
022
竜宮城
(
りうぐうじやう
)
[
※
校定版・八幡版では「竜宮洲」に修正されている。
]
へ
送
(
おく
)
る
折
(
をり
)
023
俄
(
にはか
)
の
時化
(
しけ
)
に
船
(
ふね
)
を
破
(
わ
)
り
024
茲
(
ここ
)
に
非難
(
ひなん
)
し
居
(
ゐ
)
たりしを
025
漸
(
やうや
)
く
悟
(
さと
)
り
高姫
(
たかひめ
)
は
026
日頃
(
ひごろ
)
探
(
たづ
)
ぬる
神宝
(
しんぱう
)
の
027
匿
(
かく
)
せし
場所
(
ばしよ
)
は
此
(
この
)
島
(
しま
)
と
028
疑惑
(
ぎわく
)
の
眼
(
まなこ
)
光
(
ひか
)
らせつ
029
二人
(
ふたり
)
の
男
(
をとこ
)
を
引
(
ひ
)
つ
捉
(
とら
)
へ
030
ためつ
賺
(
すか
)
しつ
尋
(
たづ
)
ぬれど
031
元
(
もと
)
より
訳
(
わけ
)
は
白浪
(
しらなみ
)
の
032
中
(
なか
)
に
漂
(
ただよ
)
ふ
二人
(
ふたり
)
連
(
づ
)
れ
033
取
(
とり
)
つく
島
(
しま
)
も
泣
(
な
)
き
寝入
(
ねい
)
り
034
蜈蚣
(
むかで
)
の
姫
(
ひめ
)
は
両人
(
りやうにん
)
が
035
話
(
はなし
)
を
聞
(
き
)
いて
仰天
(
ぎやうてん
)
し
036
小糸
(
こいと
)
の
姫
(
ひめ
)
は
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に
037
もはや
命
(
いのち
)
は
無
(
な
)
きものと
038
悲歎
(
ひたん
)
の
涙
(
なみだ
)
に
暮
(
く
)
れながら
039
船底
(
ふなそこ
)
深
(
ふか
)
くかぢりつく
040
ころしもあれや
南洋
(
なんやう
)
に
041
其
(
その
)
名
(
な
)
も
高
(
たか
)
き
一巨島
(
いちきよたう
)
042
テンカオ
島
(
たう
)
は
海中
(
かいちう
)
に
043
大音響
(
だいおんきやう
)
と
諸共
(
もろとも
)
に
044
苦
(
く
)
もなく
沈
(
しづ
)
みし
勢
(
いきほひ
)
に
045
海水
(
かいすゐ
)
俄
(
にはか
)
に
立
(
た
)
ち
騒
(
さわ
)
ぎ
046
水量
(
みづかさ
)
まさりて
魔
(
ま
)
の
島
(
しま
)
を
047
早
(
はや
)
一呑
(
ひとの
)
みに
呑
(
の
)
まむとす
048
高姫
(
たかひめ
)
其
(
その
)
他
(
た
)
の
一同
(
いちどう
)
は
049
九死
(
きうし
)
一生
(
いつしやう
)
の
苦
(
くる
)
しみに
050
生
(
い
)
きたる
心地
(
ここち
)
も
荒浪
(
あらなみ
)
の
051
肝
(
きも
)
を
潰
(
つぶ
)
せる
折柄
(
をりから
)
に
052
黄昏時
(
たそがれどき
)
の
海原
(
うなばら
)
を
053
声
(
こゑ
)
を
目当
(
めあて
)
に
進
(
すす
)
み
来
(
く
)
る
054
救
(
すく
)
ひの
船
(
ふね
)
に
助
(
たす
)
けられ
055
やつと
安心
(
あんしん
)
胸
(
むね
)
を
撫
(
な
)
で
056
進
(
すす
)
む
折
(
をり
)
しも
玉能姫
(
たまのひめ
)
057
初稚姫
(
はつわかひめ
)
や
田吾作
(
たごさく
)
の
058
助
(
たす
)
けの
船
(
ふね
)
と
悟
(
さと
)
りてゆ
059
高姫
(
たかひめ
)
持病
(
ぢびやう
)
は
再発
(
さいはつ
)
し
060
竹篦返
(
しつぺいがへ
)
しの
減
(
へ
)
らず
口
(
ぐち
)
061
頤
(
あご
)
を
叩
(
たた
)
くぞ
憎
(
にく
)
らしき
062
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
063
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐみ
)
は
何処
(
どこ
)
までも
064
悪
(
あく
)
の
身魂
(
みたま
)
も
懇
(
ねんごろ
)
に
065
誠
(
まこと
)
の
教
(
をしへ
)
に
導
(
みちび
)
きて
066
救
(
すく
)
ひ
給
(
たま
)
ふぞ
有難
(
ありがた
)
き
067
玉治別
(
たまはるわけ
)
の
漕
(
こ
)
ぐ
船
(
ふね
)
は
068
夜
(
よ
)
に
日
(
ひ
)
を
重
(
かさ
)
ねてやうやうに
069
ニユージランドの
沓島
(
くつじま
)
の
070
磯端
(
いそばた
)
近
(
ちか
)
く
着
(
つ
)
きにけり
071
浪打
(
なみう
)
ち
際
(
ぎは
)
に
近
(
ちか
)
づけば
072
思
(
おも
)
ひもよらぬ
高潮
(
たかしほ
)
の
073
寄
(
よ
)
せては
返
(
かへ
)
す
物凄
(
ものすご
)
さ
074
船
(
ふね
)
の
操縦
(
さうじう
)
に
悩
(
なや
)
みつつ
075
スマートボールや
貫州
(
くわんしう
)
や
076
チヤンキー モンキー
諸共
(
もろとも
)
に
077
汗
(
あせ
)
を
流
(
なが
)
して
櫂
(
かい
)
を
漕
(
こ
)
ぎ
078
漸
(
やうや
)
く
上陸
(
じやうりく
)
したりける
079
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
080
御霊
(
みたま
)
の
幸
(
さち
)
ぞ
尊
(
たふと
)
けれ
081
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐみ
)
ぞ
畏
(
かしこ
)
けれ。
082
物珍
(
ものめづ
)
らしげに
島
(
しま
)
の
土人
(
どじん
)
は
小山
(
こやま
)
の
如
(
ごと
)
く
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
り、
083
口々
(
くちぐち
)
に
手
(
て
)
を
打
(
う
)
ち「ウツポー、
084
クツター クツター」と
叫
(
さけ
)
びゐたり。
085
これは「
珍
(
めづら
)
しき
尊
(
たふと
)
き
神人
(
しんじん
)
来
(
きた
)
り
給
(
たま
)
へり」と
云
(
い
)
ふ
意味
(
いみ
)
なり。
086
一同
(
いちどう
)
は「ウツポー、
087
クツター クツター」の
諸声
(
もろこゑ
)
に
送
(
おく
)
られ、
088
禿
(
はげ
)
計
(
ばか
)
りの
島
(
しま
)
に
似合
(
にあ
)
はず、
089
樹木
(
じゆもく
)
鬱蒼
(
うつさう
)
たる
大森林
(
だいしんりん
)
の
樹下
(
じゆか
)
に
導
(
みちび
)
かれ、
090
珍
(
めづら
)
しき
果物
(
くだもの
)
を
饗応
(
きやうおう
)
され、
091
神
(
かみ
)
の
如
(
ごと
)
くに
尊敬
(
そんけい
)
されたりける。
092
友彦
(
ともひこ
)
は
得意
(
とくい
)
満面
(
まんめん
)
に
溢
(
あふ
)
れ、
093
言語
(
げんご
)
の
通
(
つう
)
ぜざるを
幸
(
さいは
)
ひ、
094
猿
(
ましら
)
の
如
(
ごと
)
く
大樹
(
たいじゆ
)
の
枝
(
えだ
)
にかけ
登
(
のぼ
)
り、
095
懐
(
ふところ
)
より
麻
(
ぬさ
)
を
取
(
と
)
り
出
(
だ
)
し
左右左
(
さいうさ
)
に
打
(
う
)
ち
振
(
ふ
)
りながら、
096
友彦
『ウツポツポー ウツポツポー、
097
テンツルトウ テンツルトウ、
098
チンプクリンノチンプクリン、
099
プクプクリンノプクプクリン、
100
ペンコ ペンコ、
101
チヤツク チヤツク、
102
ジヤンコ ジヤンコ、
103
テンツルテンノテンツルトウ、
104
トコトンポーリー トコトンポーリー、
105
カンカラカンノケンケラケン、
106
高姫
(
たかひめ
)
さまのガンガラガンノコンコロコン、
107
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
のパーパーサン、
108
コンコンチキチン、
109
コンチキチン、
110
小糸
(
こいと
)
の
姫
(
ひめ
)
の
婿
(
むこ
)
様
(
さま
)
は、
111
トントコトンの
友彦
(
ともひこ
)
が、
112
ウツパツパー ウツパツパー、
113
シヤンツクテンテンツクテンテン、
114
キンプクリンノフクリンリン』
115
と
囀
(
さへづ
)
り
初
(
はじ
)
めたり。
116
数多
(
あまた
)
の
土人
(
どじん
)
は
一行中
(
いつかうちう
)
の
最
(
もつと
)
も
貴
(
たつと
)
き
神
(
かみ
)
と
早合点
(
はやがつてん
)
し、
117
随喜
(
ずいき
)
の
涙
(
なみだ
)
を
零
(
こぼ
)
し
合掌
(
がつしやう
)
しゐたり。
118
スマートボールは
又
(
また
)
もや
駆
(
か
)
け
登
(
のぼ
)
り、
119
矢庭
(
やには
)
に
木
(
き
)
の
枝
(
えだ
)
を
手折
(
たお
)
り、
120
左右左
(
さいうさ
)
に
打
(
う
)
ち
振
(
ふ
)
り、
121
スマートボール
『ウツポツポー ウツポツポー、
122
キンライライノクタクタライ、
123
キンプクリンノキンライライ、
124
ウツポツポー ウツポツポー』
125
と
囀
(
さへづ
)
り
出
(
だ
)
したり。
126
スマートボールは
自分
(
じぶん
)
の
云
(
い
)
うた
事
(
こと
)
を
自分
(
じぶん
)
ながら
些
(
ちつ
)
とも
解
(
かい
)
して
居
(
ゐ
)
ない。
127
されど
土人
(
どじん
)
の
胸
(
むね
)
には、
128
先
(
さき
)
に
上
(
のぼ
)
つた
友彦
(
ともひこ
)
よりも
最上位
(
さいじやうい
)
の
神
(
かみ
)
たる
事
(
こと
)
を
悟
(
さと
)
りたり。
129
友彦
(
ともひこ
)
は
又
(
また
)
もや、
130
友彦
『ウツポツポー、
131
ペンペコペン、
132
ウツポツポ、
133
パーパーサン、
134
エツポツポー、
135
エツポツポー』
136
と
囀
(
さへづ
)
り
出
(
だ
)
したり。
137
是
(
これ
)
は
土人
(
どじん
)
の
言葉
(
ことば
)
に
対照
(
たいせう
)
すると、
138
『
二人
(
ふたり
)
の
女
(
をんな
)
は
真
(
まこと
)
の
平和
(
へいわ
)
の
女神
(
めがみ
)
だ。
139
さうして
若
(
わか
)
い
方
(
はう
)
の
婆
(
ばば
)
アは
悪党
(
あくたう
)
だ。
140
色
(
いろ
)
の
黒
(
くろ
)
い
婆
(
ばば
)
アは
一
(
ひと
)
つ
島
(
じま
)
の
女王
(
ぢよわう
)
の
母上
(
ははうへ
)
だ』
141
と
云
(
い
)
ふ
意味
(
いみ
)
になる。
142
数多
(
あまた
)
の
土人
(
どじん
)
は
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
の
前
(
まへ
)
に
跪
(
ひざまづ
)
き、
143
手
(
て
)
を
拍
(
う
)
ち
嬉
(
うれ
)
し
涙
(
なみだ
)
に
暮
(
く
)
れながら
恭敬
(
きようけい
)
の
意
(
い
)
を
表
(
へう
)
し、
144
踊
(
をど
)
り
狂
(
くる
)
ひ、
145
其
(
その
)
次
(
つぎ
)
に
玉能姫
(
たまのひめ
)
、
146
初稚姫
(
はつわかひめ
)
を
胴上
(
どうあ
)
げにし「エイヤ エイヤ」と
声
(
こゑ
)
を
揃
(
そろ
)
へて
森
(
もり
)
の
木蔭
(
こかげ
)
を
舁
(
かつ
)
ぎ
廻
(
まは
)
り、
147
踊
(
をど
)
り
狂
(
くる
)
ふ
其
(
その
)
可笑
(
をか
)
しさ。
148
玉能姫
(
たまのひめ
)
、
149
初稚姫
(
はつわかひめ
)
は
様子
(
やうす
)
分
(
わか
)
らねど、
150
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
も
自分
(
じぶん
)
等
(
ら
)
を
尊敬
(
そんけい
)
せしものたる
事
(
こと
)
は、
151
其
(
その
)
態度
(
たいど
)
に
依
(
よ
)
つて
悟
(
さと
)
る
事
(
こと
)
を
得
(
え
)
たりける。
152
森林
(
しんりん
)
の
最
(
もつと
)
も
高
(
たか
)
き
所
(
ところ
)
に
七八丈
(
しちはちじやう
)
許
(
ばか
)
りの
方形
(
ほうけい
)
の
岩
(
いは
)
が、
153
地
(
ち
)
の
底
(
そこ
)
から
湧
(
わ
)
き
出
(
で
)
たやうに
現
(
あら
)
はれ
居
(
ゐ
)
たり。
154
其
(
その
)
上
(
うへ
)
に
玉能姫
(
たまのひめ
)
、
155
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
、
156
初稚姫
(
はつわかひめ
)
の
三
(
さん
)
人
(
にん
)
を
舁
(
かつ
)
ぎ
往
(
ゆ
)
き、
157
種々
(
いろいろ
)
の
果物
(
くだもの
)
を
各自
(
てんで
)
に
持
(
も
)
ち
来
(
きた
)
り、
158
所
(
ところ
)
狭
(
せ
)
き
迄
(
まで
)
並
(
なら
)
べ
立
(
た
)
て、
159
此
(
この
)
岩
(
いは
)
を
中心
(
ちうしん
)
に
踊
(
をど
)
り
狂
(
くる
)
ひ
廻
(
まは
)
つた。
160
残
(
のこ
)
りの
一隊
(
いつたい
)
は
大樹
(
たいじゆ
)
の
下
(
もと
)
に
移
(
うつ
)
り
往
(
ゆ
)
き、
161
何事
(
なにごと
)
か
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
祈願
(
きぐわん
)
し
初
(
はじ
)
めたり。
162
玉治別
(
たまはるわけ
)
は
一向
(
いつかう
)
構
(
かま
)
つて
呉
(
く
)
れないのに
稍
(
やや
)
悄気
(
しよげ
)
気味
(
ぎみ
)
となり、
163
又
(
また
)
もや
樹上
(
じゆじやう
)
に
駆
(
か
)
け
登
(
のぼ
)
り
木
(
き
)
の
枝
(
えだ
)
を
手折
(
たお
)
つて、
164
前後
(
ぜんご
)
左右
(
さいう
)
に
無精
(
むしやう
)
に
打
(
う
)
ち
振
(
ふ
)
り、
165
玉治別
『ウツパツパーウツパツパー、
166
キンライライノクタクタライ、
167
ラーテンドウ ラーテンドウ』
168
と
幾度
(
いくたび
)
も
繰返
(
くりかへ
)
しける。
169
此
(
この
)
意味
(
いみ
)
は、
170
『
吾
(
われ
)
は
海底
(
かいてい
)
の
竜神
(
りうじん
)
、
171
今
(
いま
)
此
(
この
)
島
(
しま
)
を
平安
(
へいあん
)
無事
(
ぶじ
)
ならしめむために
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
り』
172
と
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
になる。
173
又
(
また
)
もや
土人
(
どじん
)
は
玉治別
(
たまはるわけ
)
を
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
拝
(
をが
)
み
初
(
はじ
)
めたり。
174
スマートボールは、
175
スマートボール
『パーパーチンチン、
176
パーチンチン』
177
と
囀
(
さへづ
)
りぬ。
178
数多
(
あまた
)
の
群集
(
ぐんしふ
)
は
各
(
おのおの
)
尻
(
しり
)
をまくり、
179
高姫
(
たかひめ
)
の
身辺
(
しんぺん
)
近
(
ちか
)
く
取
(
と
)
り
巻
(
ま
)
き「
我
(
わが
)
臀肉
(
でんにく
)
を
喰
(
くら
)
へ」と
云
(
い
)
ふ
意味
(
いみ
)
にて、
180
土人
『パーパーキントウ、
181
キントウ、
182
パーパーキントウ、
183
キントウ、
184
パースパース』
185
と
云
(
い
)
ひながら
御
(
ご
)
丁寧
(
ていねい
)
に
一人
(
ひとり
)
も
残
(
のこ
)
らず
尻
(
しり
)
をまくりて、
186
三間
(
さんげん
)
許
(
ばか
)
り
四
(
よ
)
つ
這
(
ばひ
)
になり、
187
各
(
おのおの
)
此
(
この
)
場
(
ば
)
を
捨
(
す
)
てて、
188
初稚姫
(
はつわかひめ
)
等
(
ら
)
が
坐
(
ざ
)
せる
石
(
いし
)
の
宝座
(
ほうざ
)
の
方
(
はう
)
に、
189
先
(
さき
)
を
争
(
あらそ
)
うて
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
190
樹下
(
じゆか
)
に
蹲踞
(
しやが
)
み、
191
感涙
(
かんるい
)
に
咽
(
むせ
)
んで
居
(
ゐ
)
る
数十
(
すうじふ
)
人
(
にん
)
の、
192
残
(
のこ
)
つた
土人
(
どじん
)
の
敬虔
(
けいけん
)
の
態度
(
たいど
)
を
眺
(
なが
)
めた
高姫
(
たかひめ
)
は、
193
そろそろむかづき
初
(
はじ
)
め、
194
高姫
『これこれ
此処
(
ここ
)
の
土人
(
どじん
)
さま、
195
お
前
(
まへ
)
は
何
(
なん
)
と
思
(
おも
)
つて
居
(
を
)
るか。
196
あの
先
(
さき
)
に
登
(
のぼ
)
つた
奴
(
やつ
)
は
友彦
(
ともひこ
)
と
云
(
い
)
ふ、
197
それはそれは
恐
(
おそ
)
ろしい、
198
人
(
ひと
)
を
騙
(
だま
)
して
金
(
かね
)
を
奪
(
と
)
り、
199
嬶盗人
(
かかぬすびと
)
をやつた
悪
(
わる
)
い
悪
(
わる
)
い
男
(
をとこ
)
だよ。
200
そして
後
(
あと
)
から
上
(
のぼ
)
つた
細長
(
ほそなが
)
い
猿
(
さる
)
の
様
(
やう
)
な
男
(
をとこ
)
はスマートボールと
云
(
い
)
ふ、
201
最前
(
さいぜん
)
行
(
い
)
つた
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
の
乾児
(
こぶん
)
の
中
(
なか
)
でも
一番
(
いちばん
)
意地
(
いぢ
)
くねの
悪
(
わる
)
い
代物
(
しろもの
)
だ。
202
三番目
(
さんばんめ
)
に
登
(
のぼ
)
つた
奴
(
やつ
)
は
神
(
かみ
)
でも
何
(
なん
)
でもない。
203
自転倒
(
おのころ
)
島
(
じま
)
の
宇都山
(
うづやま
)
の
里
(
さと
)
に、
204
蚯蚓切
(
みみずき
)
りの
蛙飛
(
かへると
)
ばしを
商売
(
しやうばい
)
にする、
205
田吾作
(
たごさく
)
と
云
(
い
)
ふ
男
(
をとこ
)
だ。
206
如何
(
いか
)
に
盲
(
めくら
)
千
(
せん
)
人
(
にん
)
の
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
だと
云
(
い
)
うても、
207
取違
(
とりちが
)
ひするにも
程
(
ほど
)
がある。
208
此
(
この
)
中
(
なか
)
で
一番
(
いちばん
)
尊
(
たふと
)
い
御
(
お
)
方
(
かた
)
は
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
たる
此
(
この
)
高姫
(
たかひめ
)
だよ、
209
取
(
と
)
り
違
(
ちが
)
ひをするな』
210
と
癇癪声
(
かんしやくごゑ
)
を
張
(
は
)
り
上
(
あ
)
げながら、
211
自分
(
じぶん
)
の
鼻先
(
はなさき
)
をチヨンと
押
(
おさ
)
へて
見
(
み
)
せたれど
土人
(
どじん
)
には
何
(
なん
)
の
事
(
こと
)
か
一
(
ひと
)
つも
通
(
つう
)
ぜず、
212
歯脱
(
はぬ
)
け
婆
(
ばば
)
が
気
(
き
)
を
焦
(
いら
)
つて、
213
尻
(
しり
)
をかまされた
腹立紛
(
はらだちまぎ
)
れに
怒鳴
(
どな
)
つて
居
(
を
)
るのだ
位
(
くらゐ
)
に
解
(
かい
)
され
居
(
ゐ
)
たり。
214
一同
(
いちどう
)
の
土人
(
どじん
)
は
高姫
(
たかひめ
)
に
向
(
むか
)
ひ、
215
両手
(
りやうて
)
の
食指
(
ひとさしゆび
)
を
突
(
つ
)
き
出
(
だ
)
し、
216
左右
(
さいう
)
の
指
(
ゆび
)
を
交
(
かは
)
る
交
(
がは
)
る
鼻
(
はな
)
の
前
(
まへ
)
に
突出
(
つきだ
)
し、
217
しやくつて
見
(
み
)
せたり。
218
高姫
(
たかひめ
)
も
何事
(
なにごと
)
か
訳
(
わけ
)
が
分
(
わか
)
らず、
219
同
(
おな
)
じやうに
今度
(
こんど
)
は
指
(
ゆび
)
を
外向
(
そとむ
)
けにして、
220
水田
(
みづた
)
の
中
(
なか
)
を
熊手
(
くまで
)
で
掘
(
ほ
)
るやうに
空中
(
くうちう
)
を
掻
(
か
)
いて
見
(
み
)
せる。
221
其
(
その
)
スタイルは
蟷螂
(
かまきり
)
の
怒
(
おこ
)
つた
時
(
とき
)
の
様子
(
やうす
)
に
似
(
に
)
たりける。
222
数十
(
すうじふ
)
人
(
にん
)
の
土人
(
どじん
)
は
何故
(
なにゆゑ
)
か
一度
(
いちど
)
に
頭
(
かしら
)
を
大地
(
だいち
)
につけたり。
223
高姫
(
たかひめ
)
は
調子
(
てうし
)
に
乗
(
の
)
つて
幾回
(
いくくわい
)
となく
空中
(
くうちう
)
を
掻
(
か
)
く。
224
樹上
(
じゆじやう
)
の
友彦
(
ともひこ
)
は
又
(
また
)
もや、
225
友彦
『エツポツポー エツポツポー、
226
パーパーチクリン、
227
パーチクリン、
228
ポコポコペンノポコポコペン、
229
ペンポコペンポコ、
230
チンタイタイ』
231
と
叫
(
さけ
)
べば、
232
一同
(
いちどう
)
はムクムクと
頭
(
あたま
)
を
上
(
あ
)
げ、
233
日
(
ひ
)
に
焦
(
や
)
けた
真黒
(
まつくろ
)
な
腕
(
うで
)
をニウと
前
(
まへ
)
に
出
(
だ
)
し、
234
一斉
(
いつせい
)
に
高姫
(
たかひめ
)
に
向
(
むか
)
つて
突
(
つ
)
きかかり
来
(
く
)
る。
235
此
(
この
)
時
(
とき
)
玉治別
(
たまはるわけ
)
は
樹上
(
じゆじやう
)
より、
236
玉治別
『エイムツエイムツ、
237
ツウツウター』
238
と
叫
(
さけ
)
ぶ。
239
一同
(
いちどう
)
は
俄
(
にはか
)
に
腕
(
うで
)
をすくめ、
240
力
(
ちから
)
無
(
な
)
げに
又
(
また
)
元
(
もと
)
の
座
(
ざ
)
に
平伏
(
へいふく
)
し、
241
樹上
(
じゆじやう
)
の
三
(
さん
)
人
(
にん
)
に
向
(
むか
)
つて
合掌
(
がつしやう
)
し、
242
何事
(
なにごと
)
か
声低
(
こゑびく
)
に
祈
(
いの
)
り
居
(
ゐ
)
る。
243
暫
(
しばら
)
くありて
玉能姫
(
たまのひめ
)
は、
244
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
と
共
(
とも
)
に
初稚姫
(
はつわかひめ
)
を
中
(
なか
)
に
置
(
お
)
き、
245
後前
(
あとさき
)
を
警固
(
けいご
)
しながら
数多
(
あまた
)
の
土人
(
どじん
)
に
送
(
おく
)
られて、
246
大樹
(
たいじゆ
)
の
下
(
もと
)
に
引
(
ひ
)
き
返
(
かへ
)
し
来
(
きた
)
りぬ。
247
玉治別
(
たまはるわけ
)
は
調子
(
てうし
)
に
乗
(
の
)
つて
口
(
くち
)
から
出任
(
でまか
)
せに、
248
玉治別
『ダールダール、
249
ネースネース、
250
ツツーテクテクテレリントン、
251
ニウジイランドテテーポーポー、
252
ツツーポーポ、
253
タターポーポー、
254
エーポーポー、
255
エーツクエーツク、
256
エーポーポー、
257
エーツクエーツク、
258
エーテイテイ』
259
と
叫
(
さけ
)
ぶや
否
(
いな
)
や、
260
土人
(
どじん
)
の
大多数
(
だいたすう
)
は
蜘蛛
(
くも
)
の
子
(
こ
)
を
散
(
ち
)
らすが
如
(
ごと
)
く
此
(
この
)
場
(
ば
)
を
立
(
た
)
ち
去
(
さ
)
りにける。
261
玉能姫
(
たまのひめ
)
は
樹上
(
じゆじやう
)
を
見上
(
みあ
)
げながら、
262
玉能姫
『
玉治別
(
たまはるわけ
)
さま、
263
スマートボールさま、
264
早
(
はや
)
く
下
(
お
)
りて
下
(
くだ
)
さい、
265
玉能姫
(
たまのひめ
)
は
一
(
ひと
)
つ
島
(
じま
)
に
往
(
ゆ
)
かねばなりますまい。
266
サア
早
(
はや
)
く
早
(
はや
)
く』
267
と
手招
(
てまね
)
きするにぞ、
268
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
此
(
この
)
声
(
こゑ
)
に
応
(
おう
)
じて、
269
ずるずると
樹下
(
じゆか
)
に
苦
(
く
)
もなく
下
(
くだ
)
り
来
(
き
)
たりぬ。
270
暫
(
しばら
)
くありて
土人
(
どじん
)
は
満艦飾
(
まんかんしよく
)
を
施
(
ほどこ
)
したる
立派
(
りつぱ
)
な
船
(
ふね
)
を
一艘
(
いつそう
)
と、
271
其
(
その
)
他
(
た
)
に
堅固
(
けんご
)
なる
船
(
ふね
)
十数艘
(
じふすうそう
)
を
率
(
ひき
)
ゐ
来
(
きた
)
り、
272
中
(
なか
)
には
至
(
いた
)
つて
見苦
(
みぐる
)
しき
泥船
(
どろふね
)
一艘
(
いつそう
)
を
交
(
ま
)
ぜて
居
(
ゐ
)
た。
273
最
(
もつと
)
も
麗
(
うるは
)
しき
船
(
ふね
)
に
玉能姫
(
たまのひめ
)
、
274
初稚姫
(
はつわかひめ
)
、
275
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
を
丁寧
(
ていねい
)
に
寄
(
よ
)
つて
集
(
たか
)
つて
舁
(
かつ
)
ぎながら、
276
恭
(
うやうや
)
しく
乗
(
の
)
せた。
277
玉治別
(
たまはるわけ
)
は
我
(
わが
)
乗
(
の
)
り
来
(
きた
)
りし
船
(
ふね
)
に、
278
スマートボール、
279
友彦
(
ともひこ
)
と
三
(
さん
)
人
(
にん
)
分乗
(
ぶんじやう
)
した。
280
久助
(
きうすけ
)
、
281
お
民
(
たみ
)
は
土人
(
どじん
)
と
共
(
とも
)
に
麗
(
うるは
)
しき
船
(
ふね
)
に
乗
(
の
)
せられた。
282
チヤンキー、
283
モンキー
及
(
およ
)
び
高姫
(
たかひめ
)
は
泥船
(
どろぶね
)
に
無理
(
むり
)
に
捻込
(
ねぢこ
)
まれ、
284
艫
(
ろ
)
を
漕
(
こ
)
ぎながら、
285
数百
(
すうひやく
)
人
(
にん
)
の
土人
(
どじん
)
は
大船
(
おほぶね
)
に
満乗
(
まんじやう
)
して、
286
一
(
ひと
)
つ
島
(
じま
)
目蒐
(
めが
)
けて
送
(
おく
)
つて
行
(
ゆ
)
く。
287
高姫
(
たかひめ
)
は
不平
(
ふへい
)
で
堪
(
たま
)
らず、
288
種々
(
いろいろ
)
と
言葉
(
ことば
)
を
尽
(
つく
)
して……
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
を
最
(
もつと
)
も
立派
(
りつぱ
)
な
船
(
ふね
)
に
乗
(
の
)
せるのが
至当
(
したう
)
だ、
289
玉能姫
(
たまのひめ
)
ナンカは
普通
(
ふつう
)
の
船
(
ふね
)
でよい……と
身
(
み
)
を
踠
(
もが
)
いて
喋
(
しやべ
)
り
立
(
た
)
てたが、
290
土人
(
どじん
)
には
一向
(
いつかう
)
言葉
(
ことば
)
も
通
(
つう
)
じないと
見
(
み
)
えて、
291
土人
『エツポツポー エツポツポー、
292
パーパーチツク、
293
パーチツク』
294
と
云
(
い
)
ひながら、
295
一
(
ひと
)
つ
島
(
じま
)
目蒐
(
めが
)
けて
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
296
玉治別
(
たまはるわけ
)
は
船中
(
せんちう
)
にて
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
歌
(
うた
)
ひ
初
(
はじ
)
めたり。
297
玉治別
『コーツーコーツーオーリンス
298
セイセイオウオウオウセンス
299
チーサーオーサーツウツクリン
300
コモトヨコモト、カンツクリン
301
ターツーテーツーテーリンス
302
ノウミス ノウミス ヨーリンス
303
メースヤーツノーブクリン』
304
と
歌
(
うた
)
ひ
出
(
だ
)
しぬ。
305
土人
(
どじん
)
は
此
(
この
)
声
(
こゑ
)
に
随喜
(
ずいき
)
の
涙
(
なみだ
)
を
澪
(
こぼ
)
し、
306
手
(
て
)
を
拍
(
う
)
つて
合掌
(
がつしやう
)
したり。
307
この
意味
(
いみ
)
は、
308
『
神
(
かみ
)
が
表
(
おもて
)
に
現
(
あら
)
はれて、
309
善
(
ぜん
)
と
悪
(
あく
)
とを
立
(
た
)
て
別
(
わ
)
ける、
310
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
造
(
つく
)
りし
神直日
(
かむなほひ
)
、
311
心
(
こころ
)
も
広
(
ひろ
)
き
大直日
(
おほなほひ
)
、
312
唯
(
ただ
)
何事
(
なにごと
)
も
人
(
ひと
)
の
世
(
よ
)
は、
313
直日
(
なほひ
)
に
見直
(
みなほ
)
せ
聞
(
き
)
き
直
(
なほ
)
せ、
314
身
(
み
)
の
過
(
あやま
)
ちは
宣
(
の
)
り
直
(
なほ
)
せ』
315
と
云
(
い
)
ふ
宣伝歌
(
せんでんか
)
の
直訳
(
ちよくやく
)
なり。
316
玉治別
(
たまはるわけ
)
は
此
(
この
)
島
(
しま
)
の
神霊
(
しんれい
)
に
感
(
かん
)
じ、
317
俄
(
にはか
)
に
南洋
(
なんやう
)
の
語
(
ご
)
を
感得
(
かんとく
)
したるなりき。
318
其
(
その
)
他
(
た
)
の
一同
(
いちどう
)
も、
319
残
(
のこ
)
らず
此
(
この
)
島
(
しま
)
に
上陸
(
じやうりく
)
して
神霊
(
しんれい
)
に
感
(
かん
)
じ
用語
(
ようご
)
を
悟
(
さと
)
りぬ。
320
されど
我慢
(
がまん
)
にして
猜疑心
(
さいぎしん
)
深
(
ふか
)
き
高姫
(
たかひめ
)
には、
321
一語
(
いちご
)
も
神
(
かみ
)
より
言葉
(
ことば
)
を
与
(
あた
)
へ
給
(
たま
)
はざりしなり。
322
船中
(
せんちう
)
は
残
(
のこ
)
らず
南洋語
(
なんやうご
)
で
持
(
も
)
ち
切
(
き
)
り、
323
恰
(
あたか
)
も
燕
(
つばくろ
)
の
巣
(
す
)
の
如
(
ごと
)
く「チーチーパーパー、
324
キウキウ」の
声
(
こゑ
)
に
満
(
み
)
たされ、
325
漸
(
やうや
)
くにして
一
(
ひと
)
つ
島
(
じま
)
のタカ(テーク)の
港
(
みなと
)
に
無事
(
ぶじ
)
上陸
(
じやうりく
)
したりける。
326
土人
(
どじん
)
の
中
(
なか
)
にても
最
(
もつと
)
も
羽振
(
はぶり
)
の
利
(
き
)
いた
酋長
(
しうちやう
)
のカーチヤンは、
327
二三
(
にさん
)
人
(
にん
)
の
供人
(
ともびと
)
と
共
(
とも
)
に
辛
(
から
)
うじて
港
(
みなと
)
に
上陸
(
じやうりく
)
するや
否
(
いな
)
や、
328
黄竜姫
(
わうりようひめ
)
の
鎮
(
しづ
)
まる
王城
(
わうじやう
)
の
都
(
みやこ
)
を
指
(
さ
)
して、
329
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
一行
(
いつかう
)
の
到着
(
たうちやく
)
を
報告
(
はうこく
)
すべく、
330
一目散
(
いちもくさん
)
に
島内
(
たうない
)
深
(
ふか
)
く
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
しけり。
331
初稚姫
(
はつわかひめ
)
、
332
玉能姫
(
たまのひめ
)
、
333
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
は
土人
(
どじん
)
の
手車
(
てぐるま
)
に
乗
(
の
)
せられて、
334
之
(
これ
)
を
舁
(
かつ
)
ぐやうな
体裁
(
ていさい
)
で、
335
「エツサアサア エツサアサア」と
云
(
い
)
ひながら
都
(
みやこ
)
をさして
送
(
おく
)
られて
行
(
ゆ
)
く。
336
玉治別
(
たまはるわけ
)
は
驢馬
(
ろば
)
に
跨
(
また
)
がり、
337
友彦
(
ともひこ
)
其
(
その
)
他
(
た
)
を
従
(
したが
)
へ
悠々
(
いういう
)
として
土人
(
どじん
)
の
一隊
(
いつたい
)
に
守
(
まも
)
られ
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
338
高姫
(
たかひめ
)
は
非常
(
ひじやう
)
の
侮辱
(
ぶじよく
)
と
虐待
(
ぎやくたい
)
を
受
(
う
)
けながら
意気
(
いき
)
銷沈
(
せうちん
)
の
体
(
てい
)
にて、
339
恨
(
うら
)
めしげにとぼとぼと、
340
どん
後
(
あと
)
から
随従
(
つい
)
て
往
(
ゆ
)
く。
341
往
(
ゆ
)
く
事
(
こと
)
数十丁
(
すうじつちやう
)
、
342
前方
(
ぜんぱう
)
より
麗
(
うるは
)
しき
輿
(
こし
)
を
舁
(
かつ
)
ぎ、
343
騎馬
(
きば
)
の
兵士
(
つはもの
)
数十
(
すうじふ
)
人
(
にん
)
、
344
前後
(
ぜんご
)
につき
添
(
そ
)
ひ、
345
威風
(
ゐふう
)
堂々
(
だうだう
)
として
来
(
きた
)
る
真先
(
まつさき
)
に
立
(
た
)
てる
勝
(
すぐ
)
れて
背
(
せ
)
の
高
(
たか
)
い
男
(
をとこ
)
、
346
馬上
(
ばじやう
)
より、
347
ブランジー
『
我
(
われ
)
こそは
黄竜姫
(
わうりようひめ
)
の
宰相
(
さいしやう
)
、
348
ブランジーと
申
(
まを
)
すもの、
349
今日
(
けふ
)
は
女王
(
ぢよわう
)
の
御
(
おん
)
母上
(
ははうへ
)
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
様
(
さま
)
御
(
ご
)
来臨
(
らいりん
)
と
承
(
うけたま
)
はり、
350
これ
迄
(
まで
)
お
迎
(
むか
)
ひのため
罷
(
まか
)
り
越
(
こ
)
したり。
351
……サア
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
様
(
さま
)
、
352
この
輿
(
こし
)
にお
乗
(
の
)
り
下
(
くだ
)
さいませ』
353
とすすむるにぞ、
354
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
は
意外
(
いぐわい
)
の
待遇
(
たいぐう
)
に
嬉
(
うれ
)
しさ
余
(
あま
)
つて
言葉
(
ことば
)
も
得出
(
えだ
)
さず
差俯
(
さしうつ
)
むき
居
(
ゐ
)
る。
355
群衆
(
ぐんしう
)
は
何
(
なん
)
の
容赦
(
ようしや
)
もなく
手車
(
てぐるま
)
の
儘
(
まま
)
輿
(
こし
)
の
傍
(
そば
)
に
近
(
ちか
)
づき、
356
御輿
(
みこし
)
の
戸
(
と
)
を
開
(
あ
)
けて、
357
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
を
乗
(
の
)
らしめたり。
358
初稚姫
(
はつわかひめ
)
、
359
玉能姫
(
たまのひめ
)
は
土人
(
どじん
)
の
手車
(
てぐるま
)
に
乗
(
の
)
りしまま
輿
(
こし
)
の
後
(
あと
)
に
従
(
したが
)
ひ
行
(
ゆ
)
く。
360
行
(
ゆ
)
く
事
(
こと
)
数十丁
(
すうじつちやう
)
、
361
忽
(
たちま
)
ち
黄竜姫
(
わうりようひめ
)
の
城内
(
じやうない
)
に
一同
(
いちどう
)
迎
(
むか
)
へ
入
(
い
)
れられ、
362
御輿
(
みこし
)
は
玄関
(
げんくわん
)
の
前
(
まへ
)
に
据
(
す
)
ゑられける。
363
此
(
この
)
時
(
とき
)
黄竜姫
(
わうりようひめ
)
はクロンバーを
従
(
したが
)
へ
玄関
(
げんくわん
)
に
立
(
た
)
ち
現
(
あら
)
はれ、
364
輿
(
こし
)
より
出
(
い
)
づる
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
の
手
(
て
)
を
取
(
と
)
り、
365
嬉
(
うれ
)
し
涙
(
なみだ
)
を
湛
(
たた
)
へながら
奥
(
おく
)
深
(
ふか
)
く
姿
(
すがた
)
を
匿
(
かく
)
しけり。
366
クロンバーは
玄関
(
げんくわん
)
に
佇
(
たたず
)
み、
367
一行
(
いつかう
)
の
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
やりながら、
368
クロンバー
『ヤアお
前
(
まへ
)
はお
節
(
せつ
)
ぢやないか。
369
お
初
(
はつ
)
、
370
何
(
なん
)
ぢや
偉
(
えら
)
さうに
手車
(
てぐるま
)
に
乗
(
の
)
つて……
慢神
(
まんしん
)
するにも
程
(
ほど
)
がある。
371
ヤア
田吾作
(
たごさく
)
、
372
スマートボールに
鼻
(
はな
)
の
先
(
さき
)
の
赤
(
あか
)
い
男
(
をとこ
)
、
373
ヤア
何
(
なん
)
とした
今日
(
けふ
)
は
怪態
(
けつたい
)
な
日
(
ひ
)
だらう。
374
高山
(
たかやま
)
さまも
高山
(
たかやま
)
さまだ、
375
なぜコンナ
代物
(
しろもの
)
を
迎
(
むか
)
へ
入
(
い
)
れたのだらう……それにつけても
高姫
(
たかひめ
)
さま、
376
酷
(
きつ
)
い
事
(
こと
)
を
仰有
(
おつしや
)
つて
私
(
わたし
)
を
追
(
お
)
ひ
出
(
だ
)
しなさつたが、
377
嘸
(
さぞ
)
や
今頃
(
いまごろ
)
は
心細
(
こころぼそ
)
く
思
(
おも
)
うて
居
(
ゐ
)
なさるだらう、
378
アヽお
哀憫
(
いと
)
しい。
379
コンナ
連中
(
れんちう
)
に
遭
(
あ
)
ふのも
嫌
(
いや
)
だが、
380
高姫
(
たかひめ
)
さまに
何
(
ど
)
うかして
一目
(
ひとめ
)
遭
(
あ
)
ひたいものだ』
381
と
独
(
ひと
)
り
呟
(
つぶや
)
き
居
(
ゐ
)
る。
382
玉能姫
(
たまのひめ
)
、
383
初稚姫
(
はつわかひめ
)
はクロンバーに
向
(
むか
)
ひ、
384
初稚姫
『ヤア
貴女
(
あなた
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
黒姫
(
くろひめ
)
さまでは
御座
(
ござ
)
いませぬか、
385
妾
(
わたし
)
は
初稚
(
はつわか
)
で
厶
(
ござ
)
います』
386
黒姫
『ハイ、
387
左様
(
さやう
)
で
御座
(
ござ
)
います。
388
世間
(
せけん
)
は
広
(
ひろ
)
いもの、
389
自転倒
(
おのころ
)
島
(
じま
)
に
居
(
を
)
つて、
390
皆
(
みな
)
さまに
笑
(
わら
)
はれ
譏
(
そし
)
られ、
391
邪魔
(
じやま
)
計
(
ばか
)
りしられて
居
(
を
)
りましては
真実
(
ほんと
)
の
神力
(
しんりき
)
が
出
(
で
)
ませぬが、
392
此
(
この
)
広
(
ひろ
)
い
島
(
しま
)
に
渡
(
わた
)
つて
来
(
き
)
て
自由
(
じいう
)
自在
(
じざい
)
に
神力
(
しんりき
)
を
発揮
(
はつき
)
し、
393
今
(
いま
)
では
此
(
この
)
通
(
とほ
)
り
立派
(
りつぱ
)
な
一国
(
いつこく
)
の
宰相
(
さいしやう
)
の
北
(
きた
)
の
方
(
かた
)
となりました。
394
お
前
(
まへ
)
さまは
矢張
(
やつぱり
)
言依別
(
ことよりわけの
)
命
(
みこと
)
について
自転倒
(
おのころ
)
島
(
じま
)
を
宣伝
(
せんでん
)
に
廻
(
まは
)
り、
395
失敗
(
しつぱい
)
の
結果
(
けつくわ
)
、
396
又
(
また
)
ボロイ
事
(
こと
)
があらうかと
思
(
おも
)
つて、
397
南洋
(
なんやう
)
三界
(
さんかい
)
迄
(
まで
)
彷徨
(
さまよ
)
うて
来
(
き
)
なさつたのだな。
398
ウンよしよし、
399
世界
(
せかい
)
に
鬼
(
おに
)
は
無
(
な
)
い。
400
改心
(
かいしん
)
さへ
出来
(
でき
)
れば
黒姫
(
くろひめ
)
が
助
(
たす
)
けて
上
(
あ
)
げよう。
401
窮鳥
(
きうてう
)
懐
(
ふところ
)
に
入
(
い
)
れば
猟師
(
れふし
)
も
之
(
これ
)
を
取
(
と
)
らずと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
がある。
402
もうかうなつては
今迄
(
いままで
)
のやうに
我
(
が
)
を
張
(
は
)
らずに、
403
お
節
(
せつ
)
……ハイ、
404
……お
初
(
はつ
)
……ハイ……と
云
(
い
)
うて
黒姫
(
くろひめ
)
に
絶対
(
ぜつたい
)
服従
(
ふくじゆう
)
をなさるのが
身
(
み
)
の
為
(
た
)
めぢやぞエ。
405
……お
前
(
まへ
)
は
田吾作
(
たごさく
)
ぢやないか。
406
矢張
(
やつぱり
)
周章者
(
あわてもの
)
は
周章者
(
あわてもの
)
ぢや。
407
自転倒
(
おのころ
)
島
(
じま
)
ではもう
相手
(
あひて
)
が
無
(
な
)
くなつたかや。
408
オホヽヽヽ、
409
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
な
事
(
こと
)
いのう』
410
玉治別
(
たまはるわけ
)
は
余
(
あま
)
りの
侮辱
(
ぶじよく
)
にむツとしたが、
411
堪忍袋
(
かんにんぶくろ
)
を
押
(
おさ
)
へて
素知
(
そし
)
らぬ
顔
(
かほ
)
にて
笑
(
わら
)
ひ
居
(
ゐ
)
る。
412
ブランジーの
高山彦
(
たかやまひこ
)
は
馬
(
うま
)
に
跨
(
また
)
がり
乍
(
なが
)
ら、
413
高山彦
『ヤアヤア
数多
(
あまた
)
の
人々
(
ひとびと
)
、
414
遥々
(
はるばる
)
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
なりしよ。
415
城
(
しろ
)
の
馬場
(
ばんば
)
に
沢山
(
たくさん
)
の
酒肴
(
しゆかう
)
の
用意
(
ようい
)
もしてあらば、
416
自由
(
じいう
)
自在
(
じざい
)
に
飲
(
の
)
み
食
(
く
)
ひしてお
帰
(
かへ
)
り
下
(
くだ
)
さい』
417
群衆
(
ぐんしう
)
はウローウローと
云
(
い
)
ひながら、
418
雪崩
(
なだれ
)
を
打
(
う
)
つて
城門
(
じやうもん
)
を
駆出
(
かけだ
)
し、
419
広
(
ひろ
)
き
馬場
(
ばんば
)
に
列
(
なら
)
べられたる
酒肴
(
さけさかな
)
に
舌鼓
(
したつづみ
)
をうち、
420
酔
(
ゑひ
)
が
廻
(
まは
)
るに
連
(
つ
)
れて
唄
(
うた
)
ひ
舞
(
ま
)
ひ、
421
踊
(
をど
)
り
狂
(
くる
)
ひ、
422
歓喜
(
くわんき
)
の
声
(
こゑ
)
は
天地
(
てんち
)
も
揺
(
ゆる
)
ぐ
許
(
ばか
)
りなり。
423
高姫
(
たかひめ
)
は
悄々
(
しほしほ
)
として、
424
漸
(
やうや
)
く
玄関
(
げんくわん
)
に
現
(
あらは
)
れ
来
(
きた
)
り、
425
黒姫
(
くろひめ
)
の
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
るより、
426
矢庭
(
やには
)
に
飛
(
と
)
び
込
(
こ
)
み
獅噛
(
しが
)
みつき、
427
高姫
『アヽ
貴女
(
あなた
)
は
黒姫
(
くろひめ
)
様
(
さま
)
、
428
お
久
(
ひさ
)
しう
御座
(
ござ
)
います』
429
また
黒姫
(
くろひめ
)
は、
430
黒姫
『アヽ
貴女
(
あなた
)
は
高姫
(
たかひめ
)
様
(
さま
)
、
431
会
(
あ
)
ひたかつた、
432
懐
(
なつ
)
かしや』
433
と
他所
(
よそ
)
の
見
(
み
)
る
目
(
め
)
も
憚
(
はばか
)
らず、
434
互
(
たがひ
)
に
抱
(
いだ
)
きつき
嬉
(
うれ
)
し
涙
(
なみだ
)
に
掻
(
か
)
き
曇
(
くも
)
る。
435
高山彦
(
たかやまひこ
)
は
馬
(
うま
)
を
乗
(
の
)
り
捨
(
す
)
て
其
(
その
)
場
(
ば
)
に
現
(
あら
)
はれ、
436
高山彦
『
高姫
(
たかひめ
)
さまですか、
437
私
(
わたくし
)
は
高山彦
(
たかやまひこ
)
ですよ。
438
ようまア
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さいました』
439
と
涙
(
なみだ
)
含
(
ぐ
)
み
乍
(
なが
)
ら、
440
二人
(
ふたり
)
の
手
(
て
)
を
取
(
と
)
り
奥
(
おく
)
深
(
ふか
)
く
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
る。
441
玉治別
(
たまはるわけ
)
、
442
初稚姫
(
はつわかひめ
)
、
443
玉能姫
(
たまのひめ
)
其
(
その
)
他
(
た
)
の
一同
(
いちどう
)
は
裏門
(
うらもん
)
より
密
(
ひそか
)
に
逃
(
のが
)
れ
出
(
い
)
で、
444
裏山
(
うらやま
)
の
森林
(
しんりん
)
に
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
し
息
(
いき
)
を
休
(
やす
)
め
居
(
ゐ
)
たりける。
445
(
大正一一・七・三
旧閏五・九
加藤明子
録)
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(N)
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