霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第二章 川辺(かはべ)(やかた)〔九九〇〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第36巻 海洋万里 亥の巻 篇:第1篇 天意か人意か よみ(新仮名遣い):てんいかじんいか
章:第2章 川辺の館 よみ(新仮名遣い):かわべのやかた 通し章番号:990
口述日:1922(大正11)年09月21日(旧08月1日) 口述場所: 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年12月30日
概要: 舞台:ケールス姫の別宅 あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
神地の城は東北西の三方を美しい青山に囲まれ、南方はやや展開し、城の東西には水清く流れている。ケールス姫の別宅は、絶景の地点を選んで建てられていた。
ケールス姫は竜雲をここに招いて不義の快楽にふけっていた。サガレン王はいつも神地の館で政務を執り、バラモン教の神殿にこもって祈願に余念がなかった。サガレン王は信仰をもって唯一の楽しみとしていた。
ケールス姫と竜雲は、王を厄介払いし、竜雲が王と成り変わる計画を相談しつつあった。そこへ竜雲の部下・ベールが泥まみれになって慌ただしく戻ってきた。ベールは、ユーズとシルレングの二人が、竜雲を除く計画を立てていることを注進した。
ベールは、ユーズとシルレングが王に姫と竜雲の関係を上申して不利な状況になる前に、先手を打って王にユーズとシルレングを誣告し、彼らの仲を裂くべきだと献策した。
ケールス姫と竜雲は不安にかられて、慌ただしく登城の支度を始めた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2022-10-04 11:22:13 OBC :rm3602
愛善世界社版:16頁 八幡書店版:第6輯 588頁 修補版: 校定版:16頁 普及版:7頁 初版: ページ備考:
001 神地(かうぢ)(しろ)東北西(とうほくせい)三方(さんぱう)002(うつく)しき青山(せいざん)(かこ)まれ、003南方(なんぱう)(やや)展開(てんかい)し、004(しろ)東西(とうざい)(あま)(ひろ)からねども、005(みづ)(きよ)(なが)(ふか)清泉(せいせん)(とほ)つて()る。006奇石(きせき)怪岩(くわいがん)(もつと)(おほ)く、007奇勝(きしよう)絶景(ぜつけい)地点(ちてん)(えら)んで、008ケールス(ひめ)別宅(べつたく)()てられてあつた。009(ひがし)(かは)別館(べつくわん)西(にし)(なが)れ、010(かは)(なか)には種々(しゆじゆ)雑多(ざつた)(かたち)をしたる大小(だいせう)無数(むすう)岩石(がんせき)点在(てんざい)し、011(その)(あひだ)淙々(そうそう)(なが)るる水音(みなおと)012()くも()るも壮快(さうくわい)(おも)ひに()たされる。
013 ケールス(ひめ)は、014ウラル(けう)神司(かむづかさ)竜雲(りううん)此処(ここ)(まね)き、015朝夕(あさゆふ)となく不義(ふぎ)快楽(けらく)(ふけ)つて()た。016サガレン(わう)はいつも神地(かうぢ)(やかた)にあつて政務(せいむ)()017バラモン(けう)大自在天(だいじざいてん)(まつ)りたる神殿(しんでん)に、018(ほとん)()(こも)祈願(きぐわん)余念(よねん)なく、019信仰(しんかう)をもつて唯一(ゆゐいつ)(たのし)みとして()た。
020ケールス(ひめ)竜雲(りううん)さま、021どうして(また)(わう)(さま)()のやうな結構(けつこう)なウラル(けう)(をしへ)(わか)らないのでせう。022(なん)とかしてウラル(けう)信奉(しんぽう)さるるやうに、023貴方(あなた)神力(しんりき)(もつ)悦服(えつぷく)さして(くだ)さる(こと)出来(でき)ますまいかなア』
024竜雲(りううん)盤古(ばんこ)神王(しんわう)()威勢(ゐせい)025天ケ下(あめがした)何一(なにひと)()自由(じいう)にならない(こと)はありませぬ。026(わう)(さま)をウラル(けう)入信(にふしん)させるのは朝飯前(あさめしまへ)(こと)御座(ござ)いますが、027これには(なに)(ふか)(かみ)(さま)思召(おぼしめし)があつて、028吾々(われわれ)(ひと)つの決心(けつしん)(あた)ふべく仕組(しぐ)まれたので御座(ござ)いませう。029バラモンの(ごと)き、030(ひと)()()なくては到底(たうてい)承知(しようち)せないと()ふやうな(かみ)(さま)(まつ)り、031これを信仰(しんかう)すると()ふは、032一身(いつしん)(じやう)不幸(ふかう)のみならず、033()いて国家(こくか)国民(こくみん)大不幸(だいふかう)です。034(しか)(なが)ら、035この錫蘭島(セイロンたう)にて誰一人(たれひとり)(ゆび)をさへるものなき(わう)(さま)(こと)ですから、036吾々(われわれ)人間(にんげん)としては、037何程(なにほど)教理(けうり)申上(まをしあ)げた(ところ)で、038いやと一口(ひとくち)(くび)をお()りになつたが最後(さいご)039もはや申上(まをしあ)げる(こと)出来(でき)ますまい』
040ケールス姫本当(ほんたう)(こま)つたことで御座(ござ)いますなア。041(なん)とかよい分別(ふんべつ)貴方(あなた)にありますまいか。042かうして(たがひ)(した)しうなつた二人(ふたり)(なか)043(なに)遠慮(ゑんりよ)()りますまい。044どうぞ貴方(あなた)のお(かんが)へを、045(つつ)まず(かく)さず(わたくし)()()けて(くだ)さいませ』
046竜雲(なん)(あふ)せられても、047(これ)(ばか)りは(くち)頬張(ほほば)つて、048如何(いか)親密(しんみつ)貴女(あなた)(さま)にでも申上(まをしあ)げる(こと)出来(でき)ませぬ』
049ケールス姫竜雲(りううん)さま、050貴方(あなた)随分(ずゐぶん)冷静(れいせい)(かた)ですなア。051()(わたくし)(こころ)(わか)らないのですか、052イヤ信用(しんよう)して(くだ)さらないのですか』
053竜雲(けつ)して(けつ)して信用(しんよう)せない(どころ)か、054貴女(あなた)より(ほか)に、055(この)()(なか)(わたし)(ちから)になつて()れる(かた)はありませぬ。056(わたし)貴女(あなた)()めには(ひと)つより()生命(いのち)(まで)(ささ)げて()ります』
057ケールス姫『それなら何故(なぜ)()つて(くだ)さらないのですか』
058竜雲(これ)(ばか)りは(しばら)()猶予(いうよ)(ねが)ひます』
059ケールス姫『ハイ、060宜敷(よろし)御座(ござ)います、061貴方(あなた)はタールチンの女房(にようばう)キングス(ひめ)には(なん)でも仰有(おつしや)(くせ)に、062信用(しんよう)のない(わたくし)にはお(かく)しになるのでせう、063宜敷(よろし)御座(ござ)います。064それならそれで(わたくし)にも(ひと)つの(かんが)へが御座(ござ)いますから……』
065竜雲『さう悪気(わるぎ)(まは)されては大変(たいへん)(こま)るぢやありませぬか。066どうぞ冷静(れいせい)(むね)()をあてて、067今日(こんにち)(わたし)地位(ちゐ)境遇(きやうぐう)とをお(かんが)(くだ)さいませ』
068ケールス姫貴方(あなた)今日(こんにち)地位(ちゐ)がお()()らないのですか。069そりやさうでせう。070(わたくし)だつて貴方(あなた)(しん)(をつと)(あふ)ぎ、071この錫蘭(セイロン)(しま)をして、072ウラル(けう)(をしへ)立替(たてか)へ、073島民(たうみん)(やす)(たの)しく(くら)さしてやりたいのは(むね)(いつ)ぱいで御座(ござ)います。074(しか)(なが)貴方(あなた)が、075エツトキング、076サーチ、077エール、078アイ、079シエール、080ビーベツトになると()(こと)(ひと)(かんが)へものです。081うつかり()(そこな)ふものなら、082それこそ、083大変(たいへん)ですからなア』
084竜雲第一(だいいち)邪魔(じやま)になるのはタールチン、085シルレング、086ユーズの頑固派(ぐわんこは)です。087あれを(なん)とかせなくては、088到底(たうてい)(この)目的(もくてき)達成(たつせい)する(こと)不可能(ふかのう)です』
089ケールス姫『そんな(こと)()心配(しんぱい)には(およ)びますまい。090(しか)しながら蟻穴(ぎけつ)堤防(ていばう)(くづ)すとか()つて、091(ちつ)とも油断(ゆだん)はなりますまい』
092 竜雲(りううん)は、093ケールス(ひめ)(みみ)(くち)()せ、
094竜雲『エールベツト、095キング、096シヤームン、097デー、098イツクス、099バー』
100(ささや)いた。101(この)言葉(ことば)如何(いか)なる意義(いぎ)(ふく)んで()るか、102読者(どくしや)判断(はんだん)(まか)(こと)とする。
103 かかる(ところ)へ、104ベールは(どろ)まぶれとなつて(あわただ)しく馳帰(はせかへ)り、
105ベール『モシモシ、106ケールス(ひめ)(さま)申上(まをしあ)げます。107大変(たいへん)な、108プロテスタントが(あら)はれ、109竜雲(りううん)さまをベツトすると()つて、110計劃(けいくわく)おさおさ(をこた)りなき有様(ありさま)です。111愚図(ぐづ)々々(ぐづ)して()れば、112(いま)竜雲(りううん)(さま)(まを)すに(およ)ばず、113ケールス(ひめ)(さま)()身辺(しんぺん)(あやふ)くなりますから、114(いのち)からがら()注進(ちゆうしん)(まゐ)りました』
115ケールス(ひめ)『シルレング、116ユーズの両人(りやうにん)が、117竜雲(りううん)(さま)をベツトせむと()計劃(けいくわく)(めぐ)らして()るのでは()いか』
118ベール『ハイ、119(その)(とほ)りで御座(ござ)います。120貴女(あなた)さまの()命令(めいれい)により、121(はす)花見(はなみ)(こと)よせ、122娑羅(さら)双樹(さうじゆ)(もり)両人(りやうにん)(おび)()し、123(かれ)心底(しんてい)(さぐ)りみたる(ところ)124(かはづ)(くち)から、125(なに)()(さけ)()つて(しやべ)つて仕舞(しま)ひました。126さうして(わたくし)貴女(あなた)(さま)間者(まはしもの)相違(さうゐ)ないと()つて、127両人(りやうにん)双方(さうはう)より(わたくし)()びかかり、128ベツトせむと息巻(いきま)(きた)るを、129死物狂(しにものぐるひ)(ちから)()して格闘(かくとう)結果(けつくわ)130(やうや)()(まぎ)れてここ(まで)()げて(かへ)りました。131あなた(がた)斯様(かやう)(ところ)にお()(あそ)ばしては、132生命(いのち)(あやふ)御座(ござ)います。133どうぞ(はや)神地(かうぢ)(やかた)にお()()(くだ)さいませ。134何時(いつ)(かれ)()徒党(とたう)()んで()()(きた)るかも(はか)られませぬ』
135竜雲(りううん)『それは大変(たいへん)だ。136(ひめ)(さま)一先(ひとま)城内(じやうない)()(かへ)(こと)(いた)しませう』
137ケールス(ひめ)(べつ)(おどろ)くには(およ)びますまい。138盤古(ばんこ)神王(しんわう)(さま)吾々(われわれ)信仰(しんかう)をお(みと)めになつた以上(いじやう)はキツト()保護(ほご)をして(くだ)さいませう。139かう()(とき)(さわ)がないやう胆力(たんりよく)()るために平常(へいじやう)から信仰(しんかう)(はげ)んで()るのではありませぬか。140竜雲(りううん)(さま)141もしシルレング、142ユーズの()()(きた)るとも、143神変(しんぺん)不思議(ふしぎ)貴方(あなた)霊力(れいりよく)をもつて()(こら)してやれば、144すぐ(らち)のつく(こと)では御座(ござ)いませぬか』
145迷信(めいしん)しきつたるケールス(ひめ)は、146竜雲(りううん)神力(しんりき)過信(くわしん)して平然(へいぜん)(かま)へて()る。
147ベール『モシモシ(ひめ)(さま)148何程(なにほど)竜雲(りううん)(さま)()神力(しんりき)があればとて、149()()()たず、150()(はふ)()たず、151(はふ)(けん)()たずと()ふことが御座(ござ)います。152()寸鉄(すんてつ)()びざる貴方(あなた)(がた)(たい)数多(あまた)反逆者(はんぎやくしや)(ども)凶器(きやうき)(たづさ)闖入(ちんにふ)(きた)(こと)あらば、153(とき)場合(ばあひ)()つては、154いかなる運命(うんめい)(おちい)るやも(わか)りませぬ。155(また)貴女(あなた)竜雲(りううん)(さま)との、156トツチケーアイの一伍(いちぶ)一什(しじふ)を、157(かれ)()看破(かんぱ)して()ますから、158何時(いつ)サガレン(わう)(さま)に、159貴女(あなた)()不在(ふざい)(うかが)上申(じやうしん)するやも(わか)りませぬ。160さうならば、161ますますもつて(こと)面倒(めんだう)となります(ゆゑ)162どうぞ一時(いつとき)(はや)此処(ここ)()()り、163(やかた)へお(かへ)りになつた(うへ)164(ひめ)(さま)()(くち)より(わう)(さま)(むか)ひ、165シルレング、166ユーズの一派(いつぱ)は、167クーデターを企劃(きくわく)し、168()ならず(やかた)侵入(しんにふ)(きた)るべければ、169(はや)(わう)(さま)(その)()処置(しよち)(あそ)ばすやうと、170申上(まをしあ)げて(くだ)さいませ。171(さき)んずれば(ひと)(せい)す、172愚図(ぐづ)々々(ぐづ)して()(かれ)()(はか)られては(おん)()一大事(いちだいじ)173竜雲(りううん)(さま)()身辺(しんぺん)()づかはしければ、174何卒(どうぞ)ベールの申上(まをしあ)げる(こと)をお()きとどけの(ほど)(ねがひ)()(たてまつ)ります』
175顔色(かほいろ)(まで)()へて()()てた。176竜雲(りううん)顔色(かほいろ)をサツと()へ、
177竜雲()(かく)178(ひめ)(さま)一刻(いつこく)猶予(いうよ)もなりますまい。179サア(はや)帰城(きじやう)(いた)しませう』
180(あわ)てて()()つ。181ケールス(ひめ)(やや)不安(ふあん)(ねん)にかられながら、182城内(じやうない)さして()(かへ)り、183(おく)(ふか)艶姿(えんし)(かく)したり。
184大正一一・九・二一 旧八・一 加藤明子録)
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