霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第二二章 春(はる)の雪(ゆき)〔一〇一〇〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第36巻 海洋万里 亥の巻 篇:第4篇 言霊神軍 よみ(新仮名遣い):ことたましんぐん
章:第22章 春の雪 よみ(新仮名遣い):はるのゆき 通し章番号:1010
口述日:1922(大正11)年09月24日(旧08月4日) 口述場所: 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年12月30日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
神地の城は天恵的に火の洗礼を施され、すべての建造物は焼け落ちたが浄化された。また人々はその身にまったく傷を負うこともなかった。人々はサガレン王派も竜雲にしたがっていた者も、一同神徳に感謝した。
そして天の目一つの神の導師のもとに、国治立大神、塩長彦大神、大国彦大神を祀る祭壇を作り、天津祝詞を奏上して感謝と悔い改めの祈願をこらした。敵味方、宗教の異動も忘却してひたすら神恩を感謝し、たちまち地上の天国は築かれた。
サガレン王がもしもの時のための用意に造っていた河森川の向こう岸の八尋殿は、火災に遭わずに残っていた。王は一同を率いて新しい八尋殿に入り、天の目一つの神、君子姫、清子姫を主賓として感謝慰労の宴会を開いた。
竜雲とケールス姫も、この宴の片隅に息を殺してかしこまっていた。悪霊が脱出した竜雲は、依然と打って変わってその身は委縮し、以前のような気品や勢いがなくあわれな姿になってしまった。
人は守護する神の如何によってその身魂を向上したり向下したりするものであり、善悪正邪の行動を行うものである。
また悪魔は、常に悪相をもって顕現するものではなく、善の仮面をかぶって人の眼をくらませ、悪を敢行しようとするものである。逆に悪魔のごとく恐ろしく見える人々の中にも、かえって誠の神の身魂の活動をなし、善事善行をなす者のたくさんある。
ゆえに人間の弱い眼力ではとうてい人の善悪正邪は判別しえるものではない。人を裁く権力を有し給うのは、ただ神様だけなのである。みだりに人を裁くのは神の権限を冒すものであり、大きな罪なのである。
悪霊が脱出して委縮した竜雲も、再び正義公道に立ち返って信仰を重ね、神の恩寵に浴すれば、以前に勝る身魂を授けられるのである。ケールス姫は一足先に改心をなしたため、比較的泰然としてこの場に会った。
竜雲とケールス姫は懺悔の歌を歌い、恥ずかしげに片隅に身をひそめてうずくまっている姿は、人々の同情を誘うほどであった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2022-10-14 12:44:56 文字数:4006 OBC :rm3622
愛善世界社版:247頁 八幡書店版:第6輯 670頁 修補版: 校定版:257頁 普及版:108頁 初版: ページ備考:
001 神地(かうぢ)の城(しろ)は、002天恵(てんけい)的(てき)に火(ひ)の洗礼(せんれい)を施(ほどこ)され、003城内(じやうない)の悪魔(あくま)は残(のこ)らず退散(たいさん)し、004すべての建造物(けんざうぶつ)は烏有(ういう)に帰(き)し、005天(てん)清(きよ)く風(かぜ)爽(さはや)かに、006土(つち)また総(すべ)ての塵芥(ぢんかい)を焼(や)き尽(つく)し、007天清浄(てんしやうじやう)、008地清浄(ちしやうじやう)、009人清浄(じんしやうじやう)、010六根(ろくこん)清浄(しやうじやう)の娑婆(しやば)即(そく)寂光土(じやくくわうど)を現出(げんしゆつ)した。
011 サガレン王(わう)の率(ひき)ゐ来(きた)れる正義(せいぎ)の人々(ひとびと)をはじめ、012城内(じやうない)に止(とど)まりて竜雲(りううん)の頤使(いし)に甘(あま)んじ、013知(し)らず知(し)らず邪道(じやだう)に陥(おちい)り居(ゐ)たる数多(あまた)の人々(ひとびと)も残(のこ)らず目(め)を醒(さま)し、014広(ひろ)き城(しろ)の馬場(ばんば)に集(あつ)まつて、015何(いづ)れも身(み)に微傷(びしやう)だにも負(お)はざりし神徳(しんとく)に感謝(かんしや)の涙(なみだ)を流(なが)しつつ、016天(あめ)の目一(まひと)つの神(かみ)の導師(だうし)の下(もと)に、017国治立(くにはるたちの)大神(おほかみ)、018塩長彦(しほながひこの)大神(おほかみ)、019大国彦(おほくにひこの)大神(おほかみ)を斎(いつ)くべく、020俄作(にはかづく)りの祭壇(さいだん)の前(まへ)に、021天津(あまつ)祝詞(のりと)を奏上(そうじやう)し、022神徳(しんとく)を讃美(さんび)し、023悔(く)い改(あらた)めの祈願(きぐわん)を凝(こ)らし、024敵(てき)と味方(みかた)の障壁(しやうへき)もなく、025宗教(しうけう)の異同(いどう)も忘却(ばうきやく)して只管(ひたすら)神恩(しんおん)を感謝(かんしや)するのみにして忽(たちま)ち地上(ちじやう)の天国(てんごく)は築(きづ)かれけり。
026 神地(かうぢ)の城(しろ)は火(ひ)の洗礼(せんれい)によりて、027地上(ちじやう)に一物(いちもつ)も止(とど)めず烏有(ういう)に帰(き)したれども、028サガレン王(わう)がまさかの時(とき)の用意(ようい)にと、029新(あらた)に造(つく)り置(お)きたる河森川(かうもりがは)の向岸(むかふぎし)の八尋殿(やひろどの)は、030未(いま)だ一人(ひとり)の住込(すみこ)みたるものもなきままに、031完全(くわんぜん)に残(のこ)されありしかば、032サガレン王(わう)は一同(いちどう)の人々(ひとびと)を率(ひき)ゐて新(あたら)しき八尋殿(やひろどの)に立入(たちい)り、033都下(とか)の人々(ひとびと)が先(さき)を争(あらそ)うて、034火事(くわじ)見舞(みまひ)として奉(たてまつ)りたる諸々(もろもろ)の飲食(おんじき)を並(なら)べ一同(いちどう)を饗応(きやうおう)し、035且(か)つ天(あめ)の目一(まひと)つの神(かみ)、036君子姫(きみこひめ)、037清子姫(きよこひめ)を主賓(しゆひん)として、038感謝(かんしや)慰労(ゐらう)の宴会(えんくわい)を開(ひら)く事(こと)とはなりぬ。
039 ケールス姫(ひめ)も竜雲(りううん)も亦(また)悄然(せうぜん)として、040此(この)席(せき)に恥(はづ)かしげに小(ちひ)さくなつて片隅(かたすみ)に控(ひか)へ居(ゐ)る。041人(ひと)の性(せい)は善(ぜん)なりとは宜(むべ)なるかな、042ケールス姫(ひめ)は一(いち)時(じ)、043妖邪(えうじや)の気(き)に迷(まよ)はされ、044心(こころ)汚(きたな)き竜雲(りううん)が計略(けいりやく)の罠(わな)に陥(おちい)り、045恐(おそ)れ多(おほ)くもわが夫(をつと)たり君(きみ)たる国別彦(くにわけひこ)の神司(かむつかさ)を無視(むし)し、046且(か)つ放逐(はうちく)したる其(その)悪業(あくげふ)を心(こころ)の底(そこ)より悔(く)い、047身(み)も世(よ)もあられぬ思(おも)ひにて、048良心(りやうしん)に責(せ)められながら、049つつましやかに片隅(かたすみ)に息(いき)を殺(ころ)して畏(かしこ)まり居(ゐ)る。050又(また)竜雲(りううん)も一(いち)時(じ)の欲(よく)に搦(から)まれ、051悪鬼(あくき)邪神(じやしん)の捕虜(ほりよ)となり、052悪逆(あくぎやく)無道(むだう)の醜業(しこわざ)を繰返(くりかへ)したることを深(ふか)く悔(く)い、053今(いま)迄(まで)犯(おか)せし罪(つみ)の恐(おそ)ろしく心(こころ)の呵責(かしやく)に身(み)の置(お)き処(どころ)もなく、054人々(ひとびと)に顔(かほ)を向(む)ける勇気(ゆうき)もなく、055頭(かしら)を下(さ)げて片隅(かたすみ)に縮(ちぢ)こまり居(ゐ)る。056今(いま)迄(まで)の竜雲(りううん)は大兵(たいひやう)肥満(ひまん)にして、057一見(いつけん)温良(おんりやう)の神人(しんじん)の如(ごと)く見(み)え居(ゐ)たりしが、058己(おのれ)が悪事(あくじ)を悔悟(くわいご)すると共(とも)に、059深(ふか)く身魂(しんこん)に浸(し)み渡(わた)り居(ゐ)たる曲神(まがかみ)の、060身内(しんない)より脱出(だつしゆつ)し終(をは)りたる彼(かれ)の身(み)は、061忽(たちま)ち縮小(しゆくせう)し、062萎微(ゐび)し、063以前(いぜん)の如(ごと)き気品(きひん)もなければ、064打(う)つて変(かは)つた痩坊主(やせばうず)の見(み)るもいぶせき姿(すがた)となりしぞ憐(あは)れなり。
065 これを思(おも)へば、066総(すべ)ての人(ひと)は憑霊(ひようれい)の如何(いかん)によつて其(その)身魂(しんこん)を向上(かうじやう)せしめ、067或(あるひ)は向下(かうか)せしめ、068善悪(ぜんあく)正邪(せいじや)、069種々(しゆじゆ)雑多(ざつた)の行動(かうどう)を知(し)らず知(し)らずに行(おこな)ふものなるを悟(さと)らるるなり。070神諭(しんゆ)にも、
071『善(ぜん)の神(かみ)が守護(しゆご)致(いた)せば善(ぜん)の行(おこな)ひのみをなし、072悪(あく)の霊(みたま)が其(その)肉体(にくたい)を守護(しゆご)すれば悪(あく)の行(おこな)ひをなすものだ』
073と示(しめ)されてあるは宜(うべ)なりと謂(い)ふべし。074又(また)悪魔(あくま)は決(けつ)して悪相(あくさう)をもつて顕現(けんげん)するものではなく、075必(かなら)ず善(ぜん)の仮面(かめん)を被(かぶ)りて人(ひと)の眼(まなこ)を眩(くら)ませ、076悪(あく)を敢行(かんかう)せむとするものである。077一見(いつけん)して至正(しせい)至直(しちよく)の君子人(くんしじん)と見(み)え、078温良(おんりやう)慈悲(じひ)の聖者(せいじや)と見(み)ゆる人々(ひとびと)にも、079また柔順(じうじゆん)にして女(をんな)の如(ごと)く淑(しと)やかに見(み)ゆる男子(だんし)の中(なか)にも、080悪逆(あくぎやく)無道(むだう)の行(おこな)ひをなすものがあるのは、081要(えう)するに悪神(あくがみ)の憑依(ひようい)して、082其(その)人(ひと)の身魂(しんこん)を自由(じいう)自在(じざい)に使役(しえき)するからである。083又(また)一見(いつけん)して鬼(おに)の如(ごと)く、084悪魔(あくま)の如(ごと)く恐(おそ)ろしく見(み)ゆる人々(ひとびと)の中(なか)に、085却(かへつ)て誠(まこと)の神(かみ)の身魂(みたま)活動(くわつどう)し、086善事(ぜんじ)善行(ぜんかう)をなすものも非常(ひじやう)に沢山(たくさん)あるものである。087故(ゆゑ)に人間(にんげん)の弱(よわ)き眼力(がんりき)にては到底(たうてい)人(ひと)の善悪(ぜんあく)正邪(せいじや)は判別(はんべつ)し得(え)らるるものでない。088人(ひと)を裁(さば)くは到底(たうてい)人(ひと)の力(ちから)の能(よ)くし能(あた)はざる処(ところ)、089これを裁(さば)く権力(けんりよく)を享有(きやういう)し給(たま)ふものは、090只(ただ)神(かみ)様(さま)計(ばか)りである。091故(ゆゑ)に三五教(あななひけう)の宣伝歌(せんでんか)にも、
092『神(かみ)が表(おもて)に現(あら)はれて善(ぜん)と悪(あく)とを立(た)て別(わ)ける』
093云々(うんぬん)と宣示(せんじ)されてあるのである。094漫(みだ)りに人(ひと)の善悪(ぜんあく)正邪(せいじや)を裁(さば)くは所謂(いはゆる)神(かみ)の権限(けんげん)を冒(をか)すものであつて、095正(ただ)しき神(かみ)の御(おん)目(め)よりは由々(ゆゆ)しき大罪人(だいざいにん)である。096又(また)心魂(しんこん)の清(きよ)く行(おこな)ひの正(ただ)しき人(ひと)が一見(いつけん)して其(その)心(こころ)の儘(まま)が現(あら)はれ、097至善(しぜん)至美(しび)至直(しちよく)の善人(ぜんにん)と見(み)ゆる事(こと)もある。098又(また)心(こころ)の中(なか)の曲(まが)り汚(けが)れて悪事(あくじ)をなす人(ひと)の肉体(にくたい)が、099一見(いつけん)して悪(あく)に見(み)え卑劣(ひれつ)に見(み)える事(こと)もある。100総(すべ)ての人(ひと)の容貌(ようばう)は心(こころ)の鏡(かがみ)であるから諺(ことわざ)にも云(い)ふ通(とほ)り、
101『思(おも)ひ内(うち)にあれば色(いろ)必(かなら)ず外(そと)に現(あら)はる』
102の箴言(しんげん)に漏(も)れないものも沢山(たくさん)にある。103然(しか)るに凶悪(きやうあく)獰猛(だうまう)なる邪神(じやしん)は容易(ようい)に其(その)醜状(しうじやう)を憑依(ひようい)せる人(ひと)の容貌(ようばう)に現(あら)はさず、104却(かへ)つて聖人(せいじん)君子(くんし)の如(ごと)き面貌(めんばう)を表(あら)はし、105悪(あく)を行(おこな)ひ世人(せじん)を苦(くる)しめ、106以(もつ)て自(みづか)ら快(こころよ)しとする者(もの)も沢山(たくさん)にある。107故(ゆゑ)に徒(いたづら)に人(ひと)の容貌(ようばう)の善悪(ぜんあく)美醜(びしう)を見(み)て其(その)人(ひと)の善悪(ぜんあく)や人格(じんかく)を品評(ひんぺう)する事(こと)は到底(たうてい)不可能(ふかのう)なる事(こと)を考(かんが)へねばならぬ。
108 千変(せんぺん)万化(ばんくわ)、109変幻(へんげん)出没(しゆつぼつ)極(きは)まりなく、110白昼(はくちう)に悪事(あくじ)を敢行(かんかう)するは悪魔(あくま)の得意(とくい)とする処(ところ)である。111悪魔(あくま)は清明(せいめい)を嫌(きら)ひ、112暗黒(あんこく)を喜(よろこ)び、113暗(やみ)にかくれて種々(しゆじゆ)雑多(ざつた)の罪悪(ざいあく)を喜(よろこ)んで行(おこな)ふものである。114然(しか)しこれは一般(いつぱん)的(てき)悪魔(あくま)の為(な)すべき働(はたら)きである。115大悪魔(だいあくま)に至(いた)つては然(しか)らず、116却(かへ)つて清明(せいめい)なる天地(てんち)に公然(こうぜん)横行(わうかう)し、117万民(ばんみん)を誑惑(きやうわく)し、118白日(はくじつ)の下(もと)正々(せいせい)堂々(だうだう)と其(その)悪事(あくじ)を敢行(かんかう)し、119却(かへ)つて心(こころ)暗(くら)き人々(ひとびと)より、120聖人(せいじん)君子(くんし)英雄(えいゆう)豪傑(がうけつ)の尊称(そんしよう)を与(あた)へられ、121得々(とくとく)として誇(ほこ)り、122世人(せじん)与(くみ)し易(やす)しと蔭(かげ)に廻(まは)つて、123そつと舌(した)を吐(は)き出(だ)す者(もの)も沢山(たくさん)ないとは云(い)へない世(よ)の中(なか)である。
124 一旦(いつたん)悪魔(あくま)の容器(ようき)となつて縦横(じうわう)無尽(むじん)に暴威(ばうゐ)を振(ふる)ひ、125旭日(きよくじつ)昇天(しようてん)の勢(いきほひ)を以(もつ)て数多(あまた)の部下(ぶか)に臨(のぞ)みたる竜雲(りううん)も、126悪霊(あくれい)の神威(しんゐ)に恐(おそ)れて雲(くも)を霞(かすみ)と脱出(だつしゆつ)したるより、127今(いま)迄(まで)威風(ゐふう)堂々(だうだう)たりし彼(かれ)も今(いま)は全(まつた)く別人(べつじん)の如(ごと)く、128身体(しんたい)の各部(かくぶ)に変異(へんい)を来(きた)し、129非力(ひりき)下劣(げれつ)の生(うま)れながらの劣等(れつとう)人格者(じんかくしや)となつてしまつた。130されどもこの竜雲(りううん)にして、131再(ふたた)び正義(せいぎ)公道(こうどう)を踏(ふ)み、132信仰(しんかう)を重(かさ)ね、133神(かみ)の恩寵(おんちやう)に浴(よく)しなば、134以前(いぜん)に勝(まさ)る聖人(せいじん)君子(くんし)の身魂(しんこん)を授(さづ)けられ、135温厚(をんこう)篤実(とくじつ)の君子人(くんしじん)と改造(かいざう)さるるは当然(たうぜん)である。136ケールス姫(ひめ)は竜雲(りううん)に一歩(いつぽ)先(さき)んじて心(こころ)の妖雲(えううん)を払(はら)ひ、137心魂(しんこん)に真如(しんによ)の日月(じつげつ)を輝(かがや)かし、138前非(ぜんぴ)を悔(く)ゆるに至(いた)りしかば、139今(いま)此(この)場(ば)になつても比較(ひかく)的(てき)身魂(しんこん)を動揺(どうえう)せしめず、140自若(じじやく)として神(かみ)に一身(いつしん)を任(まか)せつつあつた。
141 竜雲(りううん)は恥(はづ)かしげに立(た)ち上(あが)り一同(いちどう)に向(むか)つて懺悔(ざんげ)の歌(うた)を謡(うた)ひ、142天地(てんち)の神明(しんめい)に謝罪(しやざい)の誠(まこと)を尽(つく)した。143其(その)歌(うた)、
144竜雲『天(あめ)と地(つち)とは古(いにしへ)の
145無限(むげん)絶対(ぜつたい)無始(むし)無終(むしう)
146神徳(しんとく)無辺(むへん)の大神(おほかみ)が
147陰(いん)と陽(やう)との息(いき)をもて
148造(つく)り固(かた)めし御国(みくに)なり
149国治立(くにはるたちの)大神(おほかみ)は
150天津(あまつ)御神(みかみ)の勅(みこと)もて
151尊(たふと)き御(おん)身(み)を顧(かへり)みず
152豊葦原(とよあしはら)の瑞穂国(みづほくに)
153下津(したつ)岩根(いはね)にあもりまし
154大海原(おほうなばら)に漂(ただよ)へる
155島(しま)の八十島(やそしま)八十国(やそくに)を
156完美(うまら)に委曲(つばら)に造(つく)り終(を)へ
157百(もも)の神人(かみびと)悉(ことごと)く
158守(まも)らせたまふ有難(ありがた)さ
159神世(かみよ)はやすく平(たいら)けく
160治(をさ)まりまして吹(ふ)き荒(すさ)ぶ
161醜(しこ)の魔風(まかぜ)の跡(あと)もなく
162罪(つみ)も汚(けが)れも無(な)かりしが
163神(かみ)の御息(みいき)に生(うま)れたる
164蒼生(あをひとぐさ)の親(おや)とます
165天足(あだる)の彦(ひこ)や胞場姫(えばひめ)の
166天地(てんち)の道(みち)を踏(ふ)み外(はづ)し
167皇(すめ)大神(おほかみ)の御心(みこころ)に
168背(そむ)きたるより天ケ下(あめがした)
169四方(よも)の国(くに)には汚(けが)れたる
170妖邪(えうじや)の息(いき)は充満(じうまん)し
171其(その)息(いき)凝(こ)りて鬼(おに)となり
172八岐(やまた)大蛇(をろち)や醜狐(しこぎつね)
173醜女(しこめ)探女(さぐめ)を発生(はつせい)し
174世(よ)は常闇(とこやみ)となりにけり
175それより漸(やうや)く世(よ)の中(なか)に
176悪魔(あくま)は盛(さかん)に蔓(はびこ)りて
177天地(てんち)曇(くも)らせ現身(うつそみ)の
178世人(よびと)の身魂(みたま)を蹂躙(じうりん)し
179尊(たふと)き神(かみ)の生宮(いきみや)と
180生(うま)れ出(い)でたる人(ひと)の身(み)を
181いつとはなしに曲神(まがかみ)の
182珍(うづ)の住家(すみか)となし終(を)へぬ
183吾(われ)も神(かみ)の子(こ)神(かみ)の宮(みや)
184恵(めぐみ)に漏(も)れぬ身(み)なれども
185いつとはなしに曲神(まがかみ)に
186つけ狙(ねら)はれて由々(ゆゆ)しくも
187天地(てんち)容(い)れざる大罪(だいざい)を
188重(かさ)ね来(きた)りし恐(おそ)ろしさ
189至仁(しじん)至愛(しあい)の大神(おほかみ)は
190吾(われ)等(ら)が汚(きたな)き行(おこな)ひを
191憐(あはれ)みたまひて忽(たちま)ちに
192各自(てんで)に洗礼(せんれい)与(あた)へまし
193心(こころ)に潜(ひそ)む曲神(まがかみ)を
194苦(く)もなく追(お)ひ出(だ)し給(たま)ひけり
195あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
196御霊(みたま)幸倍(さちはへ)ましまして
197サガレン王(わう)に背(そむ)きたる
198吾(われ)等(ら)が罪(つみ)を許(ゆる)させよ
199ケールス姫(ひめ)を朝夕(あさゆふ)に
200汚(けが)しまつりし醜業(しこわざ)は
201天地(てんち)容(い)れざる罪(つみ)なれど
202神(かみ)の尊(たふと)き御心(みこころ)に
203清(きよ)く見直(みなほ)し聞(き)き直(なほ)し
204宣(の)り直(なほ)しませ天地(あめつち)の
205尊(たふと)き百(もも)の神(かみ)の前(まへ)
206罪(つみ)に沈(しづ)みし竜雲(りううん)が
207今(いま)迄(まで)犯(おか)せし罪(つみ)を悔(く)い
208心(こころ)を清(きよ)めて大前(おほまへ)に
209慎(つつし)み敬(うやま)ひ詫(わ)びまつる
210天(あめ)の目一(まひと)つ神司(かむつかさ)
211君子(きみこ)の姫(ひめ)や清子姫(きよこひめ)
212其(その)外(ほか)百(もも)の人々(ひとびと)の
213尊(たふと)き今日(けふ)の働(はたら)きを
214喜(よろこ)びゐやまひ心(こころ)より
215慎(つつし)み讃美(さんび)し奉(たてまつ)る
216斯(か)くなる上(うへ)は竜雲(りううん)が
217今(いま)迄(まで)悩(なや)みし村肝(むらきも)の
218胸(むね)の曇(くも)りも晴(は)れ渡(わた)り
219黒雲(くろくも)遠(とほ)く吹(ふ)き散(ち)りて
220大空(おほぞら)渡(わた)る日月(じつげつ)の
221光(ひかり)を拝(をが)む心地(ここち)よさ
222国別彦(くにわけひこ)の神(かみ)様(さま)よ
223ケールス姫(ひめ)よ竜雲(りううん)が
224今(いま)迄(まで)汝(なれ)に加(くは)へたる
225きたなき罪(つみ)や曲業(まがわざ)を
226広(ひろ)き心(こころ)に宣(の)り直(なほ)し
227許(ゆる)させ給(たま)へ惟神(かむながら)
228神(かみ)に誓(ちか)ひて将来(ゆくすゑ)の
229わが改心(かいしん)を開陳(かいちん)し
230身(み)を退(しりぞ)きて天(あめ)の下(した)
231四方(よも)の国々(くにぐに)駆廻(かけめぐ)り
232命(いのち)の限(かぎ)り身(み)の限(かぎ)り
233世人(よびと)を救(すく)ひ身(み)の罪(つみ)を
234亡(ほろ)ぼしまつるわが覚悟(かくご)
235安(やす)く諾(うべな)ひたまへかし
236あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
237神(かみ)の御前(みまへ)に願(ね)ぎまつる』
238 ケールス姫(ひめ)は又(また)謡(うた)ふ。
239ケールス姫『醜(しこ)の魔神(まがみ)に迷(まよ)はされ
240神(かみ)の末裔(みすゑ)と現(あ)れませる
241国別彦(くにわけひこ)の神司(かむつかさ)
242わが背(せ)の君(きみ)に相背(あひそむ)き
243曲(まが)のかかりし醜人(しこびと)に
244心(こころ)の限(かぎ)り身(み)の限(かぎ)り
245媚(こ)び諂(へつら)ひて何時(いつ)となく
246罪(つみ)の淵(ふち)へと沈淪(ちんりん)し
247あらむかぎりの罪悪(ざいあく)を
248尽(つく)し来(きた)りし恐(おそ)ろしさ
249大慈(だいじ)大悲(だいひ)の大神(おほかみ)の
250霊(みたま)の光(ひか)りに照(て)らされて
251曇(くも)りし胸(むね)も晴(は)れ渡(わた)り
252眩(くら)みし眼(まなこ)も明(あきら)かに
253輝(かがや)き渡(わた)りて身(み)の罪(つみ)を
254直日(なほひ)に見直(みなほ)し聞(き)き直(なほ)し
255顧(かへり)みすれば恐(おそ)ろしや
256天地(てんち)の神(かみ)の許(ゆる)さざる
257重(おも)き罪(つみ)をば知(し)らずして
258重(かさ)ね来(きた)りしうたてさよ
259あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
260御霊(みたま)幸(さち)はひましまして
261日(ひ)の出神(でのかみ)や木(こ)の花(はな)の
262咲耶姫(さくやのひめ)の神言(みこと)もて
263神(かむ)素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)が
264世人(よびと)を普(あまね)く救(すく)はむと
265三五教(あななひけう)の御(おん)道(みち)を
266四方(よも)の国々(くにぐに)島々(しまじま)に
267開(ひら)かせ給(たま)ふ神司(かむつかさ)
268数(かず)ある中(なか)に取(と)りわけて
269清(きよ)き尊(たふと)き北光(きたてる)の
270神(かみ)の司(つかさ)や君子姫(きみこひめ)
271清子(きよこ)の姫(ひめ)を下(くだ)しまし
272火(ひ)の洗礼(せんれい)を施(ほどこ)して
273神地(かうぢ)の都(みやこ)に蟠(わだか)まる
274醜(しこ)の魔神(まがみ)を吹(ふ)き払(はら)ひ
275清(きよ)めたまひし尊(たふと)さよ
276心(こころ)の闇(やみ)は晴(は)れ渡(わた)り
277元(もと)つ御霊(みたま)に嬉(うれ)しくも
278立(た)ち帰(かへ)りたる吾(われ)なれど
279一度(ひとたび)魔神(まがみ)に汚(けが)されし
280吾(わが)身体(からたま)を如何(いか)にせむ
281寄辺渚(よるべなぎさ)の捨小舟(すてをぶね)
282取(と)りつく島(しま)もなく涙(なみだ)
283いづれに向(むか)つて吐却(ときやく)せむ
284サガレン王(わう)の御心(みこころ)は
285仮令(たとへ)吾(われ)等(ら)を許(ゆる)すとも
286重(かさ)ねし罪(つみ)の吾(わ)が体(からだ)
287如何(いか)でか元(もと)に帰(かへ)るべき
288妾(わらは)は是(これ)より聖城(せいじやう)を
289後(あと)に眺(なが)めて葦原(あしはら)の
290瑞穂(みづほ)の国(くに)を隈(くま)もなく
291風雲(ふううん)雷雨(らいう)をしのぎつつ
292三五教(あななひけう)の御教(みをしへ)を
293開(ひら)きて世人(よびと)を善道(ぜんだう)に
294導(みちび)きまつり皇神(すめかみ)の
295恵(めぐみ)の露(つゆ)の万分一(まんぶいち)
296報(むく)いまつらむ吾(わが)心(こころ)
297許(ゆる)させたまへ天津(あまつ)神(かみ)
298国津(くにつ)神(かみ)達(たち)八百万(やほよろづ)
299国魂神(くにたまがみ)の御(おん)前(まへ)に
300ケールス姫(ひめ)が誠心(まごころ)を
301誓(ちか)ひて願(ねが)ひ奉(たてまつ)る
302あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
303御霊(みたま)幸(さち)はひましませよ』
304と謡(うた)ひ終(をは)り、305恥(はづ)かしげに片隅(かたすみ)に身(み)を潜(ひそ)めて蹲(うづく)まり居(を)る様(さま)、306人(ひと)の見(み)る目(め)も哀(あは)れげに感(かん)ぜられ、307一同(いちどう)は期(き)せずして同情(どうじやう)の涙(なみだ)にかき暮(く)れにける。
308(大正一一・九・二四 旧八・四 加藤明子録)
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