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霊界物語
海洋万里(第25~36巻)
第36巻(亥の巻)
序文
総説
第1篇 天意か人意か
第1章 二教対立
第2章 川辺の館
第3章 反間苦肉
第4章 無法人
第5章 バリーの館
第6章 意外な答
第7章 蒙塵
第8章 悪現霊
第2篇 松浦の岩窟
第9章 濃霧の途
第10章 岩隠れ
第11章 泥酔
第12章 無住居士
第13章 恵の花
第14章 歎願
第3篇 神地の暗雲
第15章 眩代思潮
第16章 門雀
第17章 一目翁
第18章 心の天国
第19章 紅蓮の舌
第4篇 言霊神軍
第20章 岩窟の邂逅
第21章 火の洗礼
第22章 春の雪
第23章 雪達磨
第24章 三六合
余白歌
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霊界物語
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海洋万里(第25~36巻)
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第36巻(亥の巻)
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<<< 門雀
(B)
(N)
心の天国 >>>
第一七章
一目翁
(
ひとつめをう
)
〔一〇〇五〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第36巻 海洋万里 亥の巻
篇:
第3篇 神地の暗雲
よみ(新仮名遣い):
こうじのあんうん
章:
第17章 一目翁
よみ(新仮名遣い):
ひとつめおう
通し章番号:
1005
口述日:
1922(大正11)年09月23日(旧08月3日)
口述場所:
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年12月30日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
門番のシールは、ベスの帰りと報告を待っていた。ベスは戻ってきたが、シールの問いかけにはぐらかして答え、さっぱり要領を得ない。シールはベスに酒を勧める。
シールの思惑通りベスは酒に酔って、竜雲やケールス姫に口止めされていたにもかかわらず、テールがサガレン王軍襲来の夢を見てから騒ぎをやらかしたことをしゃべってしまった。
シールとベスは酔ってかみ合わない雑談を続けている。その中でシールは竜雲たち上層部の悪逆無道を憂いベスに問いかけるが、ベスは気楽に仕えていればよいとはぐらかす。
すると門前に宣伝歌が聞こえてきた。宣伝歌は神の正道は永遠に変わらないと歌い、一時の欲に踏み迷い、今は勢いの強い竜雲の勢いもたちまち色あせて滅びは近いと予言し、心の立て直しを説いていた。
シールとベスは酔って朦朧としながらも宣伝歌の声に胸も刺さる心地がして門を開くと、白髪異様の老人が左手に太い杖をつき、右手に扇を握って厳然と仁王立ちになっていた。
シールは老人の片目の異様な姿に驚きながらも、竜雲を諫めようとしても無駄だから、帰ったがよかろうと洒落を交えて声をかけた。老人はシールの問いかけに大笑いし、門番にしてこれほどの粋人ならば、竜雲の城はさぞかし上下一致しているだろうと感心した。そして、飲めよ騒げよ一寸先は闇よ、とウラル教の宣伝歌の一節を歌った。
ベスは面白い老人がやってきたと、奥に通して城内の空気を払ってもらおうと注進に行った。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-10-11 13:43:59
OBC :
rm3617
愛善世界社版:
176頁
八幡書店版:
第6輯 645頁
修補版:
校定版:
182頁
普及版:
77頁
初版:
ページ備考:
001
神地
(
かうぢ
)
の
城
(
しろ
)
の
表門
(
おもてもん
)
の
番人
(
ばんにん
)
シールは、
002
只
(
ただ
)
一人
(
ひとり
)
チビリチビリと
酒
(
さけ
)
を
傾
(
かたむ
)
けながら、
003
奥殿
(
おくでん
)
に
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
つたるベスの
帰
(
かへ
)
りを
今
(
いま
)
や
遅
(
おそ
)
しと
待
(
ま
)
ち
居
(
ゐ
)
たり。
004
かかる
処
(
ところ
)
へニコニコとして
立
(
た
)
ち
帰
(
かへ
)
り
来
(
きた
)
りしベスの
顔
(
かほ
)
を
見
(
み
)
るより
噛
(
か
)
みつく
様
(
やう
)
に
忙
(
いそが
)
しく、
005
シール
『オイ、
006
ベス、
007
如何
(
どう
)
だつたい。
008
大奥
(
おほおく
)
の
首尾
(
しゆび
)
はイヤ
様子
(
やうす
)
は……』
009
ベス
『
大山
(
たいざん
)
鳴動
(
めいどう
)
して
鼠一匹
(
ねずみいつぴき
)
だ。
010
何事
(
なにごと
)
ならむと
身
(
み
)
をかため、
011
恐
(
おそ
)
れ
気
(
げ
)
もなく
竜雲王
(
りううんわう
)
の
奥殿
(
おくでん
)
に
忍
(
しの
)
び
入
(
い
)
り、
012
ケールス
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
のあの
御
(
ご
)
様子
(
やうす
)
にては
何事
(
なにごと
)
の
大事変
(
だいじへん
)
突発
(
とつぱつ
)
せしかと
窺
(
うかが
)
ひ
見
(
み
)
れば、
013
豈
(
あに
)
図
(
はか
)
らむや、
014
平穏
(
へいおん
)
無事
(
ぶじ
)
、
015
天下
(
てんか
)
太平
(
たいへい
)
、
016
国土
(
こくど
)
成就
(
じやうじゆ
)
、
017
四民
(
しみん
)
安堵
(
あんど
)
、
018
瑞祥
(
ずゐしやう
)
の
気
(
き
)
が
殿内
(
でんない
)
に
漲
(
みなぎ
)
り
渡
(
わた
)
り、
019
床
(
とこ
)
に
飾
(
かざ
)
られた
福禄寿
(
げほう
)
の
置物
(
おきもの
)
が……ベスさまお
早
(
はや
)
う……と
腰
(
こし
)
を
屈
(
かが
)
めて
挨拶
(
あいさつ
)
をして
居
(
ゐ
)
ると
云
(
い
)
ふ
長閑
(
のどか
)
さだつたよ。
020
も
早
(
はや
)
此
(
この
)
上
(
うへ
)
は
一言
(
いちごん
)
も
口外
(
こうぐわい
)
は
出来
(
でき
)
ない。
021
先
(
ま
)
づこれが
俺
(
おれ
)
の
使命
(
しめい
)
だ。
022
アハヽヽヽ』
023
シール
『そんな
事
(
こと
)
で
如何
(
どう
)
して
全権
(
ぜんけん
)
公使
(
こうし
)
が
勤
(
つと
)
まるか。
024
も
少
(
すこ
)
し
戦況
(
せんきやう
)
を
詳細
(
しやうさい
)
に
報告
(
はうこく
)
致
(
いた
)
さぬかい』
025
ベス
『
報告
(
はうこく
)
しようにも
実
(
じつ
)
の
処
(
ところ
)
は
仕方
(
しかた
)
がないのだ。
026
サツパリ
アフン
が
宙
(
ちう
)
に
迷
(
まよ
)
つて
了
(
しま
)
つた。
027
驚異
(
きやうい
)
の
面相
(
めんさう
)
を
遺憾
(
ゐかん
)
なく
陳列
(
ちんれつ
)
してある
羅漢堂
(
らかんだう
)
を
覗
(
のぞ
)
いて
来
(
き
)
た
様
(
やう
)
なものだつた。
028
されども
明智
(
めいち
)
の
某
(
それがし
)
、
029
黒雲
(
こくうん
)
深
(
ふか
)
く
包
(
つつ
)
みたる
不可解
(
ふかかい
)
の
事実
(
じじつ
)
も、
030
遺憾
(
ゐかん
)
なく
道破
(
だうは
)
して
来
(
き
)
たのだから
偉
(
えら
)
いものだらう。
031
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
明敏
(
めいびん
)
な
頭脳
(
づなう
)
の
持
(
も
)
ち
主
(
ぬし
)
だから、
032
凡
(
すべ
)
ての
事実
(
じじつ
)
の
核心
(
かくしん
)
に
触
(
ふ
)
れるのは
此
(
この
)
ベスに
限
(
かぎ
)
つて
居
(
ゐ
)
るワイ、
033
ウフヽヽヽフツフ。
034
アヽ、
035
小便
(
せうべん
)
の
大
(
だい
)
タンクが
溢
(
あふ
)
れて
腎臓
(
じんざう
)
が
破裂
(
はれつ
)
しさうだ』
036
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
037
エチエチと
怪
(
あや
)
しき
足許
(
あしもと
)
にて
便所
(
べんじよ
)
に
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
す。
038
シールは
腕
(
うで
)
を
組
(
く
)
み
独語
(
ひとりごと
)
。
039
シール
『マア、
040
何
(
なん
)
と
訳
(
わけ
)
の
分
(
わか
)
らぬ
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
たのだらう。
041
ベスの
奴
(
やつ
)
、
042
一向
(
いつかう
)
不得
(
ふとく
)
要領
(
えうりやう
)
の
返答
(
へんたふ
)
ばかりを
並
(
なら
)
べ
立
(
た
)
て
肝腎
(
かんじん
)
の
問題
(
もんだい
)
を
外
(
はづ
)
さうとつとめて
居
(
ゐ
)
よる。
043
これには
何
(
なに
)
か
深
(
ふか
)
い
訳
(
わけ
)
がなくてはならぬ。
044
一
(
ひと
)
つ
巧
(
うま
)
く
酒
(
さけ
)
を
勧
(
すす
)
めて
酔
(
よ
)
ひ
潰
(
つぶ
)
し、
045
泥
(
どろ
)
を
吐
(
は
)
かしてやらなくちや、
046
一通
(
ひととほ
)
りの
料理
(
れうり
)
では
駄目
(
だめ
)
だ。
047
背骨
(
せぼね
)
を
抜
(
ぬ
)
き
取
(
と
)
り、
048
腹
(
はら
)
の
中
(
なか
)
迄
(
まで
)
開
(
ひら
)
きにして、
049
鰌鍋
(
どぜうなべ
)
の
様
(
やう
)
に
何
(
なに
)
もかも
暴露
(
ばくろ
)
させてやらうかナ』
050
と
呟
(
つぶや
)
き
乍
(
なが
)
ら
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
051
ベスは
漸
(
やうや
)
く
小用
(
こよう
)
を
済
(
す
)
ませ
帰
(
かへ
)
り
来
(
きた
)
るを、
052
シール『オイ、
053
チツと
酒
(
さけ
)
でも
聞
(
きこ
)
し
召
(
め
)
したら
如何
(
どう
)
だい。
054
斯
(
か
)
う
四辺
(
しへん
)
暗雲
(
あんうん
)
に
包
(
つつ
)
まれ、
055
蒸
(
む
)
し
暑
(
あつ
)
き
無風
(
むふう
)
地帯
(
ちたい
)
にあつては、
056
やり
切
(
き
)
れないぢやないか。
057
ドツと
奮発
(
ふんぱつ
)
して
鯨飲
(
げいいん
)
馬食
(
ばしよく
)
と
洒落
(
しやれ
)
て、
058
暑
(
あつ
)
さを
凌
(
しの
)
がうぢやないか。
059
ウラル
教
(
けう
)
の
古
(
ふる
)
い
教
(
をしへ
)
にも……
飲
(
の
)
めよ
騒
(
さわ
)
げよ
一寸先
(
いつすんさき
)
や
暗
(
やみ
)
よ、
060
暗
(
やみ
)
の
後
(
あと
)
には
月
(
つき
)
が
出
(
で
)
る……と
云
(
い
)
つてあるからにや、
061
酒
(
さけ
)
さへ
飲
(
の
)
めば
屹度
(
きつと
)
御
(
ご
)
神慮
(
しんりよ
)
に
叶
(
かな
)
つて、
062
大空
(
おほぞら
)
の
陰鬱
(
いんうつ
)
の
雲
(
くも
)
も
晴
(
は
)
れ、
063
涼風
(
りやうふう
)
颯々
(
さつさつ
)
として
面
(
おもて
)
を
吹
(
ふ
)
き、
064
天
(
てん
)
青
(
あを
)
く
日
(
ひ
)
は
清
(
きよ
)
く、
065
天
(
あま
)
の
岩戸
(
いはと
)
開
(
びら
)
きが
出来
(
でき
)
るであらうよ。
066
酒
(
さけ
)
なくて
何
(
なん
)
の
己
(
おのれ
)
がナイスかなだ。
067
何程
(
なにほど
)
立派
(
りつぱ
)
なナイスの
給仕
(
きふじ
)
でも、
068
飯
(
めし
)
ばつかりでは
機
(
はづ
)
まないからな。
069
酒
(
さけ
)
は
百薬
(
ひやくやく
)
の
長
(
ちやう
)
だ、
070
酒
(
さけ
)
は
やつこす
だ。
071
薬師
(
やくし
)
如来
(
によらい
)
だ、
072
般若湯
(
はんにやたう
)
だ、
073
甘露水
(
かんろすゐ
)
だ、
074
釈迦
(
しやか
)
だ、
075
イエスだ。
076
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
を
天国
(
てんごく
)
に
救
(
すく
)
ふ
大
(
だい
)
救世主
(
きうせいしゆ
)
は
盤古
(
ばんこ
)
神王
(
しんわう
)
でもなければ
常世
(
とこよ
)
神王
(
しんわう
)
でもない。
077
飲
(
の
)
めば
直
(
ただち
)
に
心
(
こころ
)
浮
(
う
)
き
立
(
た
)
ち、
078
天国
(
てんごく
)
を
自由
(
じいう
)
自在
(
じざい
)
に
逍遥
(
せうえう
)
せしめ
給
(
たま
)
ふ
酒
(
くし
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
だ。
079
現実
(
げんじつ
)
に
天国
(
てんごく
)
に
救
(
すく
)
ひ
下
(
くだ
)
さる
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
は
吾
(
わが
)
前
(
まへ
)
に
出現
(
しゆつげん
)
ましますぞよ』
080
ベス
『あまり
酒
(
くし
)
の
神
(
かみ
)
の
御
(
ご
)
厄介
(
やくかい
)
になると、
081
門番
(
もんばん
)
の
役
(
やく
)
が
疎
(
おろ
)
そかになつて、
082
免
(
めん
)
の
字
(
じ
)
に
職
(
しよく
)
の
字
(
じ
)
を
頂戴
(
ちやうだい
)
せなくては、
083
ならなくなつて
了
(
しま
)
ふぞ。
084
チツと
心得
(
こころえ
)
ねばなるまい』
085
シール
『
酒
(
さけ
)
の
用意
(
ようい
)
はもう
宜
(
よ
)
い。
086
これで
沢山
(
たくさん
)
だ。
087
此
(
この
)
上
(
うへ
)
は
一滴
(
いつてき
)
も
飲
(
の
)
めない。
088
アヽえらく
酔
(
よ
)
うた……と
云
(
い
)
ひ
出
(
だ
)
した
時
(
とき
)
が
本当
(
ほんたう
)
の
酒
(
さけ
)
の
興味
(
きようみ
)
を
覚
(
おぼ
)
えた
時
(
とき
)
だ。
089
強
(
し
)
ひられない
酒
(
さけ
)
は
飲
(
の
)
めぬと
云
(
い
)
ふから、
090
此
(
この
)
シールさまが
斯
(
か
)
うしてお
前
(
まへ
)
に
酒
(
さけ
)
を
シール
のだ。
091
アハヽヽヽ』
092
ベスは
喉
(
のど
)
の
虫
(
むし
)
がキユーキユーと
催促
(
さいそく
)
をして
居
(
ゐ
)
る。
093
到頭
(
たうとう
)
堪
(
たま
)
らなくなつてシールの
言葉
(
ことば
)
に
従
(
したが
)
ひ、
094
度胸
(
どきよう
)
を
据
(
す
)
ゑてグイグイと
飲
(
の
)
み
始
(
はじ
)
めた。
095
忽
(
たちま
)
ち
舌
(
した
)
は
縺
(
もつ
)
れ
出
(
だ
)
し、
096
近
(
ちか
)
くに
居
(
を
)
つてさへ
其
(
その
)
言霊
(
ことたま
)
は
聞
(
き
)
き
分
(
わ
)
け
難
(
がた
)
き
迄
(
まで
)
酔
(
よ
)
つぱらつて
了
(
しま
)
つた。
097
酔
(
よ
)
へば
如何
(
いか
)
なる
秘密
(
ひみつ
)
も
喋
(
しやべ
)
り
立
(
た
)
てるは
小人
(
せうじん
)
の
常
(
つね
)
だ。
098
シールはベスを
一寸
(
ちよつと
)
むかつかせ、
099
其
(
その
)
勢
(
いきほひ
)
に
一切
(
いつさい
)
の
秘密
(
ひみつ
)
を
吐
(
は
)
かしてやらうと、
100
稍
(
やや
)
声
(
こゑ
)
を
高
(
たか
)
めて、
101
シール
『オイ、
102
ハベルの
塔
(
たふ
)
、
103
貴様
(
きさま
)
は
何時
(
いつ
)
までも
此
(
この
)
門番
(
もんばん
)
に
仕
(
つか
)
へ
ハベル
名物
(
めいぶつ
)
男
(
をとこ
)
で、
104
云
(
い
)
つてもよい
事
(
こと
)
はチツとも
言
(
い
)
はず、
105
云
(
い
)
はいでも
宜
(
よ
)
い
人
(
ひと
)
の
蔭口
(
かげぐち
)
は
能
(
よ
)
くハベル……オツトドツコイ
喋
(
しやべ
)
る
代物
(
しろもの
)
だから、
106
今日
(
けふ
)
は
何
(
なに
)
もかも
俺
(
おれ
)
の
前
(
まへ
)
で
白状
(
はくじやう
)
するのだ。
107
サア、
108
最前
(
さいぜん
)
の
復命
(
ふくめい
)
を
細
(
つぶ
)
さに
吾
(
わが
)
前
(
まへ
)
に
陳列
(
ちんれつ
)
するのだぞ』
109
ベス
『あんまり
馬鹿
(
ばか
)
らしくて、
110
話
(
はな
)
すだけの
実
(
じつ
)
は
価値
(
かち
)
がないのだよ。
111
テールの
青二才
(
あをにさい
)
奴
(
め
)
、
112
サガレン
王
(
わう
)
様
(
さま
)
が
数多
(
あまた
)
の
軍勢
(
ぐんぜい
)
を
引率
(
ひきつ
)
れ、
113
此
(
この
)
館
(
やかた
)
に
押
(
お
)
し
寄
(
よ
)
せ
来
(
きた
)
り
給
(
たま
)
ひし
夢
(
ゆめ
)
を
見
(
み
)
よつて、
114
竜雲
(
りううん
)
様
(
さま
)
やケールス
姫
(
ひめ
)
に
慌
(
あは
)
てて
報告
(
はうこく
)
しよつたのが
元
(
もと
)
で、
115
あの
様
(
やう
)
な
空騒
(
からさわ
)
ぎがオツ
始
(
ぱじ
)
まつたのだ。
116
あまり
馬鹿
(
ばか
)
らしいから
誰
(
たれ
)
にもこんな
事
(
こと
)
は
口外
(
こうぐわい
)
してはならないぞと、
117
ケールス
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
から
箝口令
(
かんこうれい
)
を
布
(
し
)
かれて
了
(
しま
)
つたのだ。
118
然
(
しか
)
し
秘密
(
ひみつ
)
は
何処迄
(
どこまで
)
も
秘密
(
ひみつ
)
だから、
119
天機
(
てんき
)
洩
(
も
)
らすべからず、
120
此
(
この
)
先
(
さき
)
は
諸君
(
しよくん
)
の
御
(
ご
)
推量
(
すゐりやう
)
に
任
(
まか
)
すより
仕方
(
しかた
)
がないのだ。
121
アハヽヽヽ』
122
シール
『オイ、
123
俺
(
おれ
)
一人
(
ひとり
)
に
向
(
むか
)
つて、
124
諸君
(
しよくん
)
とは
何
(
なん
)
だ。
125
チト
脱線
(
だつせん
)
ぢやないか』
126
ベス
『
脱線
(
だつせん
)
するのも
当然
(
たうぜん
)
だよ。
127
脱線
(
だつせん
)
に
始
(
はじ
)
まつて
脱線
(
だつせん
)
に
終
(
をは
)
つたのだからな。
128
こんな
事
(
こと
)
を
誰
(
たれ
)
が
聞
(
き
)
いても
皆
(
みな
)
唖然
(
あぜん
)
として
笑
(
わら
)
ふにも
笑
(
わら
)
はれない
事
(
こと
)
になる。
129
共鳴
(
きようめい
)
するものは
森
(
もり
)
の
烏
(
からす
)
位
(
くらゐ
)
なものだ。
130
ケールス
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
があの
美
(
うつく
)
しき
身体
(
からだ
)
に
満艦飾
(
まんかんしよく
)
を
施
(
ほどこ
)
して、
131
甲斐
(
かひ
)
々々
(
がひ
)
しくも
薙刀
(
なぎなた
)
を
小脇
(
こわき
)
にかい
込
(
こ
)
み、
132
赤
(
あか
)
い
裾
(
すそ
)
をべらつかせ、
133
白
(
しろ
)
き
脛
(
すね
)
を
顕
(
あら
)
はして……
強敵
(
きやうてき
)
御座
(
ござ
)
んなれ……と
立現
(
たちあら
)
はれ
給
(
たま
)
ひし
時
(
とき
)
の
其
(
その
)
健気
(
けなげ
)
さ、
134
凛々
(
りり
)
しさ。
135
一目
(
ひとめ
)
拝
(
をが
)
んでも、
136
胸
(
むね
)
に
清涼水
(
せいりやうすゐ
)
を
注入
(
ちゆうにふ
)
した
様
(
やう
)
な
感
(
かん
)
じがするぢやないか』
137
シール
『テールの
近侍
(
きんじ
)
はそんな
馬鹿
(
ばか
)
な
事
(
こと
)
を
申
(
まを
)
し
上
(
あ
)
げた
以上
(
いじやう
)
は、
138
竜雲
(
りううん
)
様
(
さま
)
の
怒
(
いか
)
りに
触
(
ふ
)
れ、
139
屹度
(
きつと
)
お
手打
(
てう
)
ちになるだらうなア』
140
ベス
『ならいでかい、
141
毎日
(
まいにち
)
日日
(
ひにち
)
お
手打
(
てう
)
ちを
得意
(
とくい
)
になつて、
142
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
とケラケラ
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
続行
(
ぞくかう
)
して
居
(
を
)
られるではないか』
143
シール
『
何
(
なん
)
と
俺
(
おれ
)
は
今
(
いま
)
まで
知
(
し
)
らなかつた。
144
三十万
(
さんじふまん
)
年
(
ねん
)
未来
(
みらい
)
の
殷
(
いん
)
の
紂王
(
ちうわう
)
か
姐己
(
だつき
)
の
様
(
やう
)
な
悪逆
(
あくぎやく
)
無道
(
むだう
)
を
喜
(
よろこ
)
んで
遊
(
あそ
)
ばすのか。
145
そんな
暴君
(
ばうくん
)
に
心
(
こころ
)
を
安
(
やす
)
んじて
仕
(
つか
)
へて
居
(
ゐ
)
る
事
(
こと
)
はチツと
考
(
かんが
)
へねばなるまいぞ。
146
一
(
ひと
)
つ
風向
(
かざなみ
)
が
悪
(
わる
)
ければ、
147
直
(
すぐ
)
にお
手打
(
てう
)
ちとやられちや
堪
(
たま
)
らないからな。
148
オイ、
149
ベス、
150
それ
丈
(
だけ
)
毎日
(
まいにち
)
お
手打
(
てう
)
ちをして
後
(
あと
)
は
如何
(
どう
)
片
(
かた
)
づけて
仕舞
(
しま
)
はれるのだらう。
151
根
(
ね
)
つから
此
(
この
)
門
(
もん
)
を
潜
(
くぐ
)
つたお
手打者
(
てうちもの
)
は
無
(
な
)
い
様
(
やう
)
だがのう』
152
ベス
『
何
(
なに
)
造作
(
ざうさ
)
があるものか、
153
皆
(
みな
)
雪隠
(
せつちん
)
へ
落
(
おと
)
して
了
(
しま
)
はれるのだ』
154
シール
『
雪隠
(
せついん
)
の
中
(
なか
)
は
随分
(
ずゐぶん
)
沢山
(
たくさん
)
な
亡者
(
まうじや
)
だらうなア』
155
ベス
『
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても、
156
竜雲
(
りううん
)
様
(
さま
)
と
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
が
箸
(
はし
)
の
先
(
さき
)
にひつかけて、
157
ツルツルと
口
(
くち
)
から
飲
(
の
)
み
込
(
こ
)
んで
了
(
しま
)
はれるのだから
埒
(
らち
)
の
宜
(
い
)
いものだ、
158
近侍
(
きんじ
)
の
奴
(
やつ
)
等
(
ら
)
は
目
(
め
)
を
三角
(
さんかく
)
にして、
159
そば
から
指
(
ゆび
)
をくはへて
見
(
み
)
て
居
(
ゐ
)
るさうだが、
160
何
(
なん
)
と
気
(
き
)
の
利
(
き
)
かぬ
ウドン
な
代物
(
しろもの
)
ぢやないか』
161
シール
『
何
(
なん
)
だい、
162
手打
(
てうち
)
とは
蕎麦
(
そば
)
の
事
(
こと
)
だつたか。
163
要
(
い
)
らぬ
事
(
こと
)
に
強
(
きつ
)
う
気
(
き
)
を
揉
(
も
)
ましよつた、
164
ウフヽヽヽ。
165
然
(
しか
)
しベスよ、
166
よく
考
(
かんが
)
へて
見
(
み
)
ると
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
宜
(
い
)
い
加減
(
かげん
)
なものだな。
167
神
(
かみ
)
さま
神
(
かみ
)
さまと
朝
(
あさ
)
から
晩
(
ばん
)
まで、
168
下手
(
へた
)
な
調髪師
(
てうはつし
)
の
様
(
やう
)
に
云
(
い
)
つて
御座
(
ござ
)
つたサガレン
王
(
わう
)
様
(
さま
)
は、
169
大自在天
(
だいじざいてん
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
保護
(
ほご
)
もなく、
170
あんな
惨
(
みぢ
)
めな
目
(
め
)
にお
遭
(
あ
)
ひなされ、
171
今
(
いま
)
に
行方
(
ゆくへ
)
も
判然
(
はんぜん
)
せず、
172
何処
(
どこ
)
かの
山野
(
さんや
)
を
落
(
お
)
ちぶれて
逍遥
(
さまよ
)
うて
御座
(
ござ
)
るであらうが、
173
それに
引換
(
ひきか
)
へ、
174
あんな
没義道
(
もぎだう
)
な
事
(
こと
)
をやつた
竜雲
(
りううん
)
が、
175
ヌツケリコと
王
(
わう
)
様
(
さま
)
気取
(
きど
)
りになつて、
176
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
と
相対
(
あひたい
)
し、
177
朝
(
あさ
)
から
晩
(
ばん
)
まで
手打
(
てうち
)
をしたり、
178
手
(
て
)
を
曳
(
ひ
)
き
合
(
あ
)
うたり、
179
抱擁
(
はうよう
)
接吻
(
キツス
)
したり、
180
所在
(
あらゆる
)
体主
(
たいしゆ
)
霊従
(
れいじう
)
の
限
(
かぎ
)
りを
尽
(
つく
)
して
脂下
(
やにさが
)
つて
御座
(
ござ
)
るのは、
181
コレは
又
(
また
)
何
(
なん
)
とした
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
矛盾
(
むじゆん
)
であらうか。
182
俺
(
おれ
)
ヤもうこれを
思
(
おも
)
へば
此
(
この
)
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に
大自在天
(
だいじざいてん
)
もなければ、
183
盤古
(
ばんこ
)
神王
(
しんわう
)
も
名
(
な
)
のみあつて、
184
其
(
その
)
実
(
じつ
)
なきものと
断定
(
だんてい
)
せざるを
得
(
え
)
なくなつて
来
(
き
)
たよ。
185
本当
(
ほんたう
)
に
無明
(
むみやう
)
暗黒
(
あんこく
)
の
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
だ。
186
如何
(
どう
)
したらこれが
誠
(
まこと
)
の
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
になるだらうかな』
187
ベス
『オイ
門番
(
もんばん
)
の
分際
(
ぶんざい
)
としてそんな
大
(
だい
)
それた
事
(
こと
)
を
囀
(
さへづ
)
つて、
188
若
(
も
)
しも
竜雲
(
りううん
)
様
(
さま
)
のお
耳
(
みみ
)
に
達
(
たつ
)
したら
如何
(
どう
)
する
積
(
つも
)
りだい。
189
チツと
嗜
(
たしな
)
まないか。
190
何程
(
なにほど
)
貴様
(
きさま
)
が
心
(
こころ
)
を
苛
(
いら
)
ち、
191
忙殺
(
ばうさつ
)
的
(
てき
)
足踏
(
あしぶ
)
みをして
藻掻
(
もが
)
いた
処
(
ところ
)
で、
192
決
(
けつ
)
して
其
(
その
)
意志
(
いし
)
の
万分一
(
まんぶんいち
)
も
貫徹
(
くわんてつ
)
するものでない。
193
門番
(
もんばん
)
は
門番
(
もんばん
)
らしく
上
(
うへ
)
の
方
(
かた
)
の
評定
(
ひやうぢやう
)
をやめて、
194
おとなしく
朝
(
あさ
)
から
晩
(
ばん
)
まで
此処
(
ここ
)
に
沈澱
(
ちんでん
)
するのが、
195
それが
第一
(
だいいち
)
の
安全弁
(
あんぜんべん
)
だよ』
196
シール
『オイ、
197
ベス、
198
お
前
(
まへ
)
は
竜雲
(
りううん
)
様
(
さま
)
の
将来
(
しやうらい
)
は
如何
(
どう
)
なると
考
(
かんが
)
へるか』
199
ベス
『
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
がそんな
事
(
こと
)
を
干渉
(
かんせう
)
する
丈
(
だ
)
けの
権能
(
けんのう
)
は
無
(
な
)
い。
200
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
喉元
(
のどもと
)
へ
這入
(
はい
)
つて、
201
お
鬚
(
ひげ
)
の
塵
(
ちり
)
さへ
払
(
はら
)
つて
居
(
を
)
れば
宜
(
い
)
いぢやないか。
202
袖
(
そで
)
の
下
(
した
)
からも
廻
(
まは
)
る
子
(
こ
)
は
可愛
(
かあい
)
いと
云
(
い
)
ふことがあるよ。
203
テールの
奴
(
やつ
)
、
204
力
(
ちから
)
も
何
(
なに
)
もない
癖
(
くせ
)
に
敏
(
すば
)
しこく
廻
(
まは
)
りよつて、
205
アレあの
通
(
とほ
)
り、
206
竜雲
(
りううん
)
様
(
さま
)
の
丸
(
まる
)
で
懐刀
(
ふところがたな
)
の
様
(
やう
)
な
地位
(
ちゐ
)
に
立
(
た
)
ち、
207
羽振
(
はぶ
)
りを
利
(
き
)
かして
居
(
ゐ
)
よるぢやないか。
208
下
(
くだ
)
らぬ
道徳論
(
だうとくろん
)
に
囚
(
とら
)
へられて
理窟
(
りくつ
)
を
喋
(
しやべ
)
つて
居
(
ゐ
)
ると、
209
彼奴
(
あいつ
)
は
頭
(
あたま
)
が
古
(
ふる
)
い、
210
時代遅
(
じだいおく
)
れだ、
211
一
(
ひと
)
つ
頭脳
(
づなう
)
のキルクを
抜
(
ぬ
)
いて
古
(
ふる
)
い
血
(
ち
)
をぬき
取
(
と
)
り、
212
新
(
あたら
)
しく
入
(
い
)
れ
替
(
か
)
へて
今
(
いま
)
一度
(
いちど
)
鍛
(
きた
)
へ
上
(
あ
)
げてやらねば、
213
こんな
寝息
(
ねいき
)
ものは
夜店
(
よみせ
)
へ
出
(
だ
)
した
処
(
ところ
)
で、
214
乞食
(
こじき
)
も
買
(
か
)
つて
呉
(
く
)
れないと
云
(
い
)
つて、
215
親切
(
しんせつ
)
に
頭脳
(
づなう
)
の
解剖
(
かいばう
)
をやられて
了
(
しま
)
ふよ。
216
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
、
217
人間
(
にんげん
)
は
自己
(
じこ
)
の
生活
(
せいくわつ
)
を
安全
(
あんぜん
)
にするのが
第一
(
だいいち
)
だ。
218
道
(
みち
)
の
為
(
た
)
め、
219
君
(
きみ
)
の
為
(
た
)
め、
220
世
(
よ
)
の
為
(
た
)
め、
221
人
(
ひと
)
の
為
(
た
)
め
等
(
など
)
と
巧
(
うま
)
い
雅号
(
ががう
)
を
表
(
おもて
)
に
使
(
つか
)
つて、
222
何奴
(
どいつ
)
も
此奴
(
こいつ
)
も
羊頭
(
やうとう
)
を
掲
(
かか
)
げて
狗肉
(
くにく
)
を
売
(
う
)
つてるのだから、
223
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
が
斯
(
か
)
う
堕落
(
だらく
)
して
了
(
しま
)
つちや、
224
到底
(
たうてい
)
昔気質
(
むかしかたぎ
)
の
馬鹿
(
ばか
)
正直
(
しやうぢき
)
では、
225
牛馬
(
ぎうば
)
にだつて
噛
(
か
)
み
殺
(
ころ
)
されて
了
(
しま
)
ふよ。
226
チツとシツカリせないと
社会
(
しやくわい
)
の
無用物
(
むようぶつ
)
となつて
了
(
しま
)
はねばならぬからなア。
227
アハヽヽヽ』
228
斯
(
か
)
く
話
(
はな
)
す
折
(
をり
)
しも、
229
何処
(
いづこ
)
ともなく
門前
(
もんぜん
)
近
(
ちか
)
くに
宣伝歌
(
せんでんか
)
の
声
(
こゑ
)
聞
(
きこ
)
え
来
(
きた
)
る。
230
(天の目一つの神)
『
神
(
かみ
)
が
表
(
おもて
)
に
現
(
あら
)
はれて
231
善悪
(
ぜんあく
)
正邪
(
せいじや
)
を
立
(
た
)
て
別
(
わ
)
ける
232
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
造
(
つく
)
りし
神直日
(
かむなほひ
)
233
心
(
こころ
)
も
広
(
ひろ
)
き
大直日
(
おほなほひ
)
234
只
(
ただ
)
何事
(
なにごと
)
も
人
(
ひと
)
の
世
(
よ
)
は
235
直日
(
なほひ
)
に
見直
(
みなほ
)
し
聞直
(
ききなほ
)
し
236
身
(
み
)
の
過
(
あやま
)
ちは
宣
(
の
)
り
直
(
なほ
)
す
237
尊
(
たふと
)
き
神
(
かみ
)
の
御
(
おん
)
教
(
をしへ
)
238
仮令
(
たとへ
)
天地
(
てんち
)
は
変
(
かは
)
るとも
239
誠
(
まこと
)
一
(
ひと
)
つの
正道
(
まさみち
)
は
240
ミロクの
御世
(
みよ
)
の
末
(
すゑ
)
迄
(
まで
)
も
241
堅磐
(
かきは
)
常磐
(
ときは
)
に
変
(
かは
)
らまじ
242
一
(
いち
)
時
(
じ
)
の
欲
(
よく
)
に
踏
(
ふ
)
み
迷
(
まよ
)
ひ
243
焼
(
や
)
け
朽
(
く
)
ち
錆
(
さ
)
びて
腐
(
くさ
)
るてふ
244
形
(
かたち
)
の
上
(
うへ
)
の
御宝
(
みたから
)
に
245
天
(
てん
)
より
受
(
う
)
けたる
分霊
(
ぶんれい
)
と
246
心
(
こころ
)
を
曇
(
くも
)
らせ
身
(
み
)
を
穢
(
けが
)
し
247
知
(
し
)
らず
知
(
し
)
らずに
根
(
ね
)
の
国
(
くに
)
や
248
底
(
そこ
)
の
国
(
くに
)
へと
落
(
お
)
ち
行
(
ゆ
)
きて
249
吾
(
われ
)
と
吾
(
わが
)
手
(
て
)
に
苦
(
くる
)
しめる
250
世人
(
よびと
)
の
艱
(
なや
)
みを
救
(
すく
)
はむと
251
天津
(
あまつ
)
御神
(
みかみ
)
や
国津
(
くにつ
)
神
(
かみ
)
252
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
救
(
すく
)
ふ
生神
(
いきがみ
)
の
253
教
(
をしへ
)
をもちて
四方
(
よも
)
の
国
(
くに
)
254
導
(
みちび
)
き
諭
(
さと
)
す
宣伝使
(
せんでんし
)
255
此処
(
ここ
)
に
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
りけり
256
勢
(
いきほ
)
ひ
強
(
つよ
)
き
竜雲
(
りううん
)
も
257
今
(
いま
)
は
桜
(
さくら
)
の
花盛
(
はなざか
)
り
258
常世
(
とこよ
)
の
春
(
はる
)
と
楽
(
たの
)
しみて
259
不義
(
ふぎ
)
の
快楽
(
けらく
)
に
耽
(
ふけ
)
る
折
(
をり
)
260
天津
(
あまつ
)
御空
(
みそら
)
は
忽
(
たちま
)
ちに
261
黒雲
(
くろくも
)
起
(
おこ
)
りて
無残
(
むざん
)
にも
262
嵐
(
あらし
)
となりて
吹
(
ふ
)
き
散
(
ち
)
らす
263
明日
(
あす
)
明後日
(
あさつて
)
も
来年
(
らいねん
)
も
264
百
(
ひやく
)
年
(
ねん
)
千
(
せん
)
年
(
ねん
)
先
(
さき
)
迄
(
まで
)
も
265
此
(
この
)
儘
(
まま
)
栄
(
さか
)
え
行
(
ゆ
)
くべしと
266
思
(
おも
)
ふ
心
(
こころ
)
の
徒桜
(
あだざくら
)
267
忽
(
たちま
)
ち
強
(
つよ
)
き
夜嵐
(
よあらし
)
に
268
打
(
う
)
ちたたかれて
諸人
(
もろびと
)
に
269
もて
囃
(
はや
)
されし
桜
(
さくら
)
さへ
270
嵐
(
あらし
)
に
散
(
ち
)
りて
老若
(
らうにやく
)
の
271
足
(
あし
)
に
踏
(
ふ
)
まれる
世
(
よ
)
の
習
(
なら
)
ひ
272
因果
(
いんぐわ
)
応報
(
おうはう
)
忽
(
たちま
)
ちに
273
廻
(
めぐ
)
る
浮世
(
うきよ
)
の
有様
(
ありさま
)
を
274
知
(
し
)
らず
知
(
し
)
らずに
日
(
ひ
)
を
送
(
おく
)
る
275
曲津
(
まがつ
)
の
業
(
わざ
)
ぞ
悲
(
かな
)
しけれ
276
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
277
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はひましまして
278
一日
(
ひとひ
)
も
早
(
はや
)
く
竜雲
(
りううん
)
が
279
心
(
こころ
)
に
棲
(
す
)
める
曲神
(
まがかみ
)
を
280
神
(
かみ
)
の
御水火
(
みいき
)
の
弥高
(
いやたか
)
く
281
払
(
はら
)
はせ
給
(
たま
)
へケールス
姫
(
ひめ
)
の
282
君
(
きみ
)
の
命
(
みこと
)
の
迷
(
まよ
)
ひをば
283
科戸
(
しなど
)
の
風
(
かぜ
)
のいと
清
(
きよ
)
く
284
払
(
はら
)
ひ
清
(
きよ
)
めて
旧
(
もと
)
の
如
(
ごと
)
285
赤
(
あか
)
き
心
(
こころ
)
となさしめよ
286
朝日
(
あさひ
)
は
照
(
て
)
るとも
曇
(
くも
)
るとも
287
月
(
つき
)
は
盈
(
み
)
つとも
虧
(
か
)
くるとも
288
仮令
(
たとへ
)
大地
(
だいち
)
は
沈
(
しづ
)
むとも
289
誠
(
まこと
)
の
力
(
ちから
)
は
世
(
よ
)
を
救
(
すく
)
ふ
290
誠
(
まこと
)
は
此
(
この
)
世
(
よ
)
の
宝
(
たから
)
ぞや
291
悪
(
あく
)
の
身魂
(
みたま
)
も
一時
(
ひととき
)
は
292
茂
(
しげ
)
り
栄
(
さか
)
ゆる
事
(
こと
)
あるも
293
天地
(
てんち
)
の
神
(
かみ
)
の
敏
(
さと
)
き
目
(
め
)
に
294
如何
(
いか
)
でか
洩
(
も
)
れむ
枉
(
まが
)
の
罪
(
つみ
)
295
亡
(
ほろ
)
ぼされむは
目
(
ま
)
の
前
(
あたり
)
296
早
(
はや
)
く
心
(
こころ
)
を
立
(
た
)
て
直
(
なほ
)
せ
297
さすれば
神
(
かみ
)
は
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
が
298
心
(
こころ
)
に
潜
(
ひそ
)
む
曲鬼
(
まがおに
)
を
299
罰
(
きた
)
め
給
(
たま
)
ひて
天地
(
あめつち
)
の
300
神
(
かみ
)
の
御霊
(
みたま
)
になりませる
301
清
(
きよ
)
き
御霊
(
みたま
)
を
授
(
さづ
)
けまし
302
此
(
この
)
世
(
よ
)
の
宝
(
たから
)
となさしめむ
303
神世
(
かみよ
)
の
柱
(
はしら
)
となさしめむ
304
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
305
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はひましませよ』
306
と
謡
(
うた
)
ひ
終
(
をは
)
ると
共
(
とも
)
に、
307
早
(
はや
)
くも
歌
(
うた
)
の
主
(
ぬし
)
は
門前
(
もんぜん
)
に
姿
(
すがた
)
を
現
(
あら
)
はしにけり。
308
シール、
309
ベスの
両人
(
りやうにん
)
は
酔眼
(
すゐがん
)
朦朧
(
もうろう
)
としながら、
310
此
(
この
)
宣伝歌
(
せんでんか
)
の
声
(
こゑ
)
に
胸
(
むね
)
も
刺
(
さ
)
さるる
如
(
ごと
)
き
心地
(
ここち
)
して、
311
恐
(
おそ
)
る
恐
(
おそ
)
る
表門
(
おもてもん
)
をパツと
開
(
ひら
)
き
見
(
み
)
れば、
312
白髪
(
はくはつ
)
異様
(
いやう
)
の
老人
(
らうじん
)
、
313
左手
(
ゆんで
)
に
太
(
ふと
)
き
杖
(
つゑ
)
をつき、
314
右手
(
めて
)
に
扇
(
あふぎ
)
を
固
(
かた
)
く
握
(
にぎ
)
り、
315
儼然
(
げんぜん
)
として
仁王立
(
にわうだ
)
ちになつて
居
(
ゐ
)
る。
316
シールは
老人
(
らうじん
)
の
異様
(
いやう
)
の
姿
(
すがた
)
に
驚
(
おどろ
)
いて
舌
(
した
)
を
縺
(
もつ
)
らしながら、
317
シール
『お
前
(
まへ
)
は
何処
(
どこ
)
の
爺
(
ぢい
)
さまか
知
(
し
)
らぬが、
318
今日
(
けふ
)
は
此
(
この
)
お
城
(
しろ
)
の
館
(
やかた
)
は
公休日
(
こうきうび
)
だから
帰
(
かへ
)
つて
下
(
くだ
)
され。
319
明日
(
あす
)
は
又
(
また
)
日曜
(
にちえう
)
、
320
明後日
(
あさつて
)
は
国際日
(
こくさいび
)
、
321
其
(
その
)
翌日
(
よくじつ
)
は
王
(
わう
)
様
(
さま
)
のお
父
(
とう
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
命日
(
めいにち
)
、
322
其
(
その
)
又
(
また
)
翌日
(
よくじつ
)
は
御
(
お
)
誕生日
(
たんじやうび
)
、
323
其
(
その
)
又
(
また
)
翌日
(
よくじつ
)
はお
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
誕生日
(
たんじやうび
)
だ。
324
さうして
其
(
その
)
先
(
さき
)
は
役人
(
やくにん
)
共
(
ども
)
の
誕生日
(
たんじやうび
)
や
両親
(
りやうしん
)
の
命日
(
めいにち
)
が
続
(
つづ
)
くのだから、
325
何卒
(
どうぞ
)
其
(
その
)
日
(
ひ
)
を
除
(
のぞ
)
いて
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
され。
326
これ
丈
(
だけ
)
機嫌
(
きげん
)
好
(
よ
)
う
般若湯
(
はんにやたう
)
に
喰
(
くら
)
ひ
酔
(
よ
)
うて
居
(
ゐ
)
る
処
(
ところ
)
へ、
327
殺風景
(
さつぷうけい
)
な
独眼爺
(
ひとつめぢい
)
さまがやつて
来
(
き
)
ちや
面白
(
おもしろ
)
くない。
328
何
(
なん
)
とか
竜雲
(
りううん
)
様
(
さま
)
の
悪心
(
あくしん
)
を
直
(
なほ
)
してやらうと
思
(
おも
)
うて
来
(
き
)
て
呉
(
く
)
れたのだらうが
到底
(
たうてい
)
駄目
(
だめ
)
だ。
329
そんな
老爺心
(
らうやしん
)
は
誰
(
たれ
)
も
聞
(
き
)
くものはないから、
330
可惜口
(
あつたらぐち
)
に
風
(
かぜ
)
引
(
ひ
)
かすよりもトツトと
帰
(
かへ
)
つた
方
(
はう
)
が、
331
お
前
(
まへ
)
の
為
(
た
)
めにお
得
(
とく
)
だ。
332
物
(
もの
)
言
(
い
)
へば
唇
(
くちびる
)
寒
(
さむ
)
し
秋
(
あき
)
の
風
(
かぜ
)
、
333
サアサア
帰
(
い
)
んだり
帰
(
い
)
んだり』
334
老人(天の目一つの神)
『アハヽヽヽ
何
(
なん
)
と
面白
(
おもしろ
)
い
門番
(
もんばん
)
もあつたものだな。
335
門番
(
もんばん
)
にしてこれ
丈
(
だ
)
けの
粋人
(
すゐじん
)
が
居
(
を
)
る
以上
(
いじやう
)
は、
336
随分
(
ずゐぶん
)
大奥
(
おほおく
)
は
百花
(
ひやくくわ
)
爛漫
(
らんまん
)
たる
天国
(
てんごく
)
の
光景
(
くわうけい
)
が
展開
(
てんかい
)
されて
居
(
ゐ
)
るだらう。
337
和気
(
わき
)
靄々
(
あいあい
)
として
上下
(
しやうか
)
一致
(
いつち
)
、
338
其
(
その
)
楽
(
たの
)
しみを
倶
(
とも
)
にする
竜雲
(
りううん
)
のやり
方
(
かた
)
、
339
誠
(
まこと
)
に
以
(
もつ
)
て
感服
(
かんぷく
)
の
至
(
いた
)
りだ。
340
イヤもう
人
(
ひと
)
は
斯
(
か
)
うなくては
叶
(
かな
)
はぬ。
341
飲
(
の
)
めよ
騒
(
さわ
)
げよ
一寸先
(
いつすんさき
)
は
闇
(
やみ
)
よ、
342
闇
(
やみ
)
の
後
(
あと
)
には
月
(
つき
)
が
出
(
で
)
る。
343
アハヽヽヽ』
344
ベス『やア
此奴
(
こいつ
)
ア
面白
(
おもしろ
)
い
死損
(
しにぞこな
)
ひだ。
345
あまり
大奥
(
おほおく
)
が
何々
(
なになに
)
だから、
346
一
(
ひと
)
つ
竜雲
(
りううん
)
様
(
さま
)
に
申
(
まを
)
し
上
(
あ
)
げて、
347
城内
(
じやうない
)
の
空気
(
くうき
)
を
一洗
(
いつせん
)
して
貰
(
もら
)
ふ
事
(
こと
)
に
取計
(
とりはか
)
らふて
見
(
み
)
ませう。
348
これこれ
老爺
(
おやぢ
)
どの、
349
其処
(
そこ
)
に
暫
(
しばら
)
く
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
ておくれ』
350
老人(天の目一つの神)
『アハヽヽヽ
別
(
べつ
)
に
竜雲
(
りううん
)
の
返答
(
へんたふ
)
を
待
(
ま
)
つまでもなく、
351
此
(
この
)
独眼
(
ひとつめ
)
老爺
(
おやぢ
)
がどしどしと
侵入
(
しんにふ
)
するであらう』
352
ベス『アもしもし、
353
そんな
事
(
こと
)
をして
貰
(
もら
)
つてはタヽヽ
大変
(
たいへん
)
です。
354
此
(
この
)
門番
(
もんばん
)
も
忽
(
たちま
)
ち
今日
(
けふ
)
から
足袋屋
(
たびや
)
の
看板
(
かんばん
)
で
足上
(
あしあが
)
りになつちや
堪
(
たま
)
りませぬ、
355
愚図
(
ぐづ
)
々々
(
ぐづ
)
して
居
(
を
)
れば
首
(
くび
)
が
飛
(
と
)
びます。
356
何卒
(
どうぞ
)
大奥
(
おほおく
)
のお
返事
(
へんじ
)
を
聞
(
き
)
いて
来
(
く
)
る
迄
(
まで
)
暫時
(
ざんじ
)
の
猶予
(
いうよ
)
を
願
(
ねが
)
ひます。
357
門番
(
もんばん
)
は
門番
(
もんばん
)
としての
職務
(
しよくむ
)
を
固
(
かた
)
く
守
(
まも
)
らねばなりませぬからな』
358
老人(天の目一つの神)
『アハヽヽヽ、
359
お
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
はそれだから
現代
(
げんだい
)
に
容
(
い
)
れられないのだ。
360
あまり
謹
(
つつし
)
んで
門番
(
もんばん
)
を
勤
(
つと
)
めるものだから、
361
到頭
(
たうとう
)
大将
(
たいしやう
)
に……
彼奴
(
あいつ
)
ア
門番
(
もんばん
)
には
最
(
もつと
)
も
適当
(
てきたう
)
な
人物
(
じんぶつ
)
だ……と
鑑定
(
かんてい
)
されて
了
(
しま
)
ひ、
362
一生
(
いつしやう
)
一代
(
いちだい
)
卑
(
いや
)
しき
門番
(
もんばん
)
を
勤
(
つと
)
めて
居
(
を
)
らねばならないのだ。
363
常世
(
とこよ
)
の
国
(
くに
)
の
常世城
(
とこよじやう
)
の
門番
(
もんばん
)
は、
364
失敗
(
しつぱい
)
の
結果
(
けつくわ
)
抜擢
(
ばつてき
)
されて
右守
(
うもり
)
の
神
(
かみ
)
に
昇進
(
しようしん
)
したことがあるぞよ。
365
此
(
この
)
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
にお
前
(
まへ
)
の
様
(
やう
)
な
馬鹿
(
ばか
)
正直
(
しやうぢき
)
な
者
(
もの
)
が、
366
如何
(
どう
)
して
生活
(
せいくわつ
)
を
完全
(
くわんぜん
)
に
続
(
つづ
)
けて
行
(
ゆ
)
く
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
るか。
367
さてもさても
可憐相
(
かはいさう
)
な
腰抜
(
こしぬけ
)
男
(
をとこ
)
だなア。
368
アハヽヽヽ』
369
と
肩
(
かた
)
を
揺
(
ゆす
)
つて
大
(
おほ
)
きく
笑
(
わら
)
ふ。
370
シール『ヤア
此奴
(
こいつ
)
は
中々
(
なかなか
)
話
(
はな
)
せる
爺
(
ぢい
)
さまだ。
371
一々
(
いちいち
)
肯綮
(
こうけい
)
に
中
(
あた
)
る
名論
(
めいろん
)
卓説
(
たくせつ
)
を
吐
(
は
)
きよる。
372
オイ、
373
ベス、
374
仲々
(
なかなか
)
前途
(
ぜんと
)
有望
(
いうばう
)
だ。
375
早
(
はや
)
く
大奥
(
おほおく
)
へ
報告
(
はうこく
)
して
来
(
こ
)
い。
376
屹度
(
きつと
)
ウラル
教
(
けう
)
だぞ……
飲
(
の
)
めよ
騒
(
さわ
)
げよ
一寸先
(
いつすんさき
)
は
闇
(
やみ
)
よ……と
云
(
い
)
つたらう』
377
ベス『オウさうだ。
378
此奴
(
こいつ
)
ア
面白
(
おもしろ
)
い!』
379
とベスは
慌
(
あわただ
)
しく
大奥
(
おほおく
)
さして
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
る。
380
(
大正一一・九・二三
旧八・三
北村隆光
録)
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(N)
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