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霊界物語
海洋万里(第25~36巻)
第36巻(亥の巻)
序文
総説
第1篇 天意か人意か
第1章 二教対立
第2章 川辺の館
第3章 反間苦肉
第4章 無法人
第5章 バリーの館
第6章 意外な答
第7章 蒙塵
第8章 悪現霊
第2篇 松浦の岩窟
第9章 濃霧の途
第10章 岩隠れ
第11章 泥酔
第12章 無住居士
第13章 恵の花
第14章 歎願
第3篇 神地の暗雲
第15章 眩代思潮
第16章 門雀
第17章 一目翁
第18章 心の天国
第19章 紅蓮の舌
第4篇 言霊神軍
第20章 岩窟の邂逅
第21章 火の洗礼
第22章 春の雪
第23章 雪達磨
第24章 三六合
余白歌
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霊界物語
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海洋万里(第25~36巻)
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第36巻(亥の巻)
> 第2篇 松浦の岩窟 > 第13章 恵の花
<<< 無住居士
(B)
(N)
歎願 >>>
第一三章
恵
(
めぐみ
)
の
花
(
はな
)
〔一〇〇一〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第36巻 海洋万里 亥の巻
篇:
第2篇 松浦の岩窟
よみ(新仮名遣い):
まつうらのがんくつ
章:
第13章 恵の花
よみ(新仮名遣い):
めぐみのはな
通し章番号:
1001
口述日:
1922(大正11)年09月22日(旧08月2日)
口述場所:
筆録者:
加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年12月30日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
無住居士が去った後、テーリスは一人腕を組み、考え込んでしまった。あたりには集めた同志の兵たちが撃剣術を訓練する声が響いている。テーリスは無住居士の言葉を思いだし、神の力に比べて武力のむなしさを感じていた。
そして、幼年のころより三五教の教えを聞きながら、暴力をもって暴力を制すやり方で竜雲を討伐しようとしていたことの愚かさを悟った。
テーリスは、アナンに率いられたサガレン王派軍がかえって人命を失ったのに比して、竜雲は無道ながらもタールチンやキングス姫らを投獄しながらも相応の飲食を与えて身体には危害を加えなかったことに思い至った。
それでいながら自分たちは忠臣義士だと信じて敵の討伐を企てていたことに気づき、それを神様が助けるはずがないと悟った。国治立大神、豊国姫大神、神素盞嗚大神のご神号を唱えて涙ながらに祈願した。
そこにエームスは王を連れて戻ってきた。テーリスは王に、無住居士の教えと自分の悟りを諄々として伝えた。王もまたその意を悟り、落涙した。そしてエームスも王も、ただいま限り武術の訓練は止めにして、一同御魂磨きにかかることに同意した。
王がエームスを連れて岩窟に帰った後、テーリスは武術の修練場に現れ、一同に向かって王の命令として武術を廃し、心身を清めて誠一つの修行をなすように、と呼びかけた。
一同の中でもっとも剣術に優れたチールという男は、テーリスに敬意を表しつつも、反逆の徒・竜雲を赦すわけにはゆかず、何としても討伐すべきだと食って掛かった。
テーリスは諄々として道理を諭し、チールも王の命を容れることになった。またテーリスは、竜雲の間者として入り込んでいたヨール他四人の元捕り手を呼び、彼らを裏切り者として処刑する手はずだったが、大神の御心にならって無罪放免とすることを言い渡した。
ヨールはテーリスの処置に感じ、面に真心を現して改心し、竜雲に仕えることを断念したと告白した。ヨールは涙ながらに懺悔し、改心の述懐歌を歌った。
テーリスは改めて部下たち一同に誠の道を説き諭した。一同はこれより日夜魂磨きに専念し、神の救いを求めることとなった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-10-09 11:59:44
OBC :
rm3613
愛善世界社版:
129頁
八幡書店版:
第6輯 628頁
修補版:
校定版:
133頁
普及版:
56頁
初版:
ページ備考:
001
無住
(
むぢゆう
)
居士
(
こじ
)
と
自称
(
じしよう
)
する
白髪
(
はくはつ
)
の
老人
(
らうじん
)
が
蒼惶
(
さうくわう
)
として
立去
(
たちさ
)
りたる
後
(
あと
)
に、
002
テーリスは
腕
(
うで
)
を
組
(
く
)
み、
003
さし
俯向
(
うつむ
)
いて
何事
(
なにごと
)
か
考
(
かんが
)
へ
込
(
こ
)
んで
居
(
ゐ
)
る。
004
今
(
いま
)
の
今
(
いま
)
まで
勇壮
(
ゆうさう
)
活溌
(
くわつぱつ
)
にして
孤骸
(
こがい
)
胡羯
(
こかつ
)
を
呑
(
の
)
む
的
(
てき
)
武勇
(
ぶゆう
)
の
気
(
き
)
に
満
(
み
)
たされたるテーリスの
耳
(
みみ
)
にも「ヤー、
005
エー、
006
トー」と
打
(
う
)
ち
合
(
あ
)
ふ
竹刀
(
しなひ
)
の
音
(
おと
)
、
007
何
(
なん
)
となく
物憂
(
ものう
)
げに
響
(
ひび
)
くやうになつて
来
(
き
)
た。
008
広大
(
くわうだい
)
無辺
(
むへん
)
の
神
(
かみ
)
の
力
(
ちから
)
に
比
(
くら
)
ぶれば、
009
一人
(
いちにん
)
対
(
たい
)
一人
(
いちにん
)
の
撃剣術
(
げきけんじゆつ
)
に
対
(
たい
)
し
何
(
なん
)
となく
力
(
ちから
)
なく、
010
自
(
おのづか
)
ら
軽侮
(
けいぶ
)
の
念
(
ねん
)
の
漂
(
ただよ
)
はざるを
得
(
え
)
なかつた。
011
テーリスは
四辺
(
あたり
)
を
見廻
(
みまは
)
し
人
(
ひと
)
無
(
な
)
きを
見
(
み
)
て
独言
(
ひとりごと
)
。
012
テーリス
『アヽ
今
(
いま
)
此処
(
ここ
)
に
飄然
(
へうぜん
)
として
現
(
あら
)
はれたまひし
宣伝使
(
せんでんし
)
と
称
(
しよう
)
する
白髪
(
はくはつ
)
の
老人
(
らうじん
)
は、
013
果
(
はた
)
して
何神
(
なにがみ
)
の
化身
(
けしん
)
であつたか。
014
但
(
ただし
)
は
何教
(
なにけう
)
の
有力
(
いうりよく
)
なる
宣伝使
(
せんでんし
)
であつたか。
015
実
(
じつ
)
に
其
(
その
)
教訓
(
けうくん
)
は
大神
(
おほかみ
)
の
示現
(
じげん
)
の
如
(
ごと
)
くに
感
(
かん
)
じられた……
思
(
おも
)
へば
思
(
おも
)
へば
吾
(
われ
)
は
今
(
いま
)
まで、
016
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふ
誤解
(
ごかい
)
をして
居
(
ゐ
)
たのであらう。
017
幼年
(
えうねん
)
の
頃
(
ころ
)
より
無抵抗
(
むていかう
)
主義
(
しゆぎ
)
の
三五教
(
あななひけう
)
の
道
(
みち
)
を
聞
(
き
)
きながら、
018
神
(
かみ
)
の
大御心
(
おほみこころ
)
を
忘却
(
ばうきやく
)
し、
019
暴
(
ばう
)
に
対
(
たい
)
するに
暴
(
ばう
)
をもつてし、
020
悪魔
(
あくま
)
の
憑依
(
ひようい
)
せる
竜雲
(
りううん
)
を
討伐
(
たうばつ
)
せむとしたる
吾
(
わが
)
心
(
こころ
)
の
愚
(
おろか
)
さよ、
021
否
(
いな
)
無残
(
むざん
)
さや。
022
兵
(
へい
)
は
所謂
(
いはゆる
)
凶器
(
きやうき
)
である。
023
先
(
さき
)
頃
(
ごろ
)
も
一挙
(
いつきよ
)
にして
彼
(
かれ
)
竜雲
(
りううん
)
を
討伐
(
たうばつ
)
せむとし、
024
数多
(
あまた
)
の
部下
(
ぶか
)
に
武装
(
ぶさう
)
を
凝
(
こ
)
らさせ、
025
神地城
(
かうぢじやう
)
の
表門
(
おもてもん
)
より
闖入
(
ちんにふ
)
し、
026
敵
(
てき
)
を
打
(
う
)
ち
悩
(
なや
)
まさむとして
却
(
かへつ
)
て
味方
(
みかた
)
を
傷
(
きず
)
つけ
殺
(
ころ
)
したる
事
(
こと
)
、
027
返
(
かへ
)
す
返
(
がへ
)
すも
迂愚
(
うぐ
)
の
骨頂
(
こつちやう
)
、
028
拙
(
せつ
)
の
拙
(
せつ
)
なるもの、
029
悔
(
く
)
いても
及
(
およ
)
ばぬ
殺生
(
せつしやう
)
をしたものだ。
030
如斯
(
かくのごとく
)
部下
(
ぶか
)
の
人命
(
じんめい
)
を
損
(
そん
)
し、
031
天地
(
てんち
)
の
神
(
かみ
)
の
愛児
(
あいじ
)
を
殺
(
ころ
)
したる
大罪人
(
だいざいにん
)
、
032
如何
(
いか
)
でか
彼
(
かれ
)
竜雲
(
りううん
)
を
討伐
(
たうばつ
)
する
事
(
こと
)
を
得
(
え
)
む。
033
竜雲
(
りううん
)
如何
(
いか
)
に
無道
(
むだう
)
なればとてタールチン、
034
キングス
姫
(
ひめ
)
其
(
その
)
他
(
た
)
の
人々
(
ひとびと
)
を
牢獄
(
らうごく
)
に
投
(
とう
)
じ
苦
(
くる
)
しめたれども、
035
相当
(
さうたう
)
の
飲食
(
いんしよく
)
を
与
(
あた
)
へ、
036
且
(
か
)
つ
身体
(
しんたい
)
に
危害
(
きがい
)
を
及
(
およ
)
ぼさざりしは
実
(
じつ
)
に
見上
(
みあ
)
げたやり
方
(
かた
)
である。
037
吾
(
われ
)
は
彼
(
かれ
)
に
勝
(
まさ
)
りて
豺狼
(
さいらう
)
の
心
(
こころ
)
深
(
ふか
)
く、
038
王
(
わう
)
を
思
(
おも
)
ひ、
039
彼
(
かれ
)
を
憎
(
にく
)
むの
余
(
あま
)
り、
040
竜雲
(
りううん
)
に
従
(
したが
)
ふ
悪人
(
あくにん
)
どもを
片端
(
かたつぱし
)
より
鏖殺
(
おうさつ
)
し
国家
(
こくか
)
の
禍
(
わざはひ
)
を
絶
(
た
)
たむとして、
041
却
(
かへ
)
つて
敵
(
てき
)
の
一
(
いち
)
人
(
にん
)
をも
傷
(
きず
)
つくる
事
(
こと
)
を
得
(
え
)
ず、
042
味方
(
みかた
)
の
三分
(
さんぶ
)
迄
(
まで
)
死傷
(
ししやう
)
を
生
(
しやう
)
じたるは
全
(
まつた
)
く
天
(
てん
)
の
誡
(
いまし
)
めならむ。
043
神
(
かみ
)
が
表
(
おもて
)
に
現
(
あら
)
はれて
善
(
ぜん
)
と
悪
(
あく
)
とを
立
(
た
)
て
別
(
わ
)
けたまふとは
此
(
この
)
事
(
こと
)
であらう。
044
竜雲
(
りううん
)
も
亦
(
また
)
天地
(
てんち
)
容
(
い
)
れざる
大罪人
(
だいざいにん
)
なれども
吾
(
われ
)
も
亦
(
また
)
彼
(
かれ
)
に
劣
(
おと
)
らざる
大罪人
(
だいざいにん
)
なり。
045
然
(
しか
)
るに
忠臣
(
ちうしん
)
義士
(
ぎし
)
と
自任
(
じにん
)
して
討伐
(
たうばつ
)
を
企
(
くはだ
)
てたる
吾
(
わが
)
心
(
こころ
)
の
浅
(
あさ
)
はかさよ。
046
彼
(
かれ
)
老人
(
らうじん
)
の
言葉
(
ことば
)
の
中
(
なか
)
に
自負心
(
じふしん
)
を
脱却
(
だつきやく
)
せよ! と
力
(
ちから
)
を
込
(
こ
)
め
教
(
をし
)
へられたのは
此
(
この
)
事
(
こと
)
であらう。
047
神
(
かみ
)
は
一片
(
いつぺん
)
の
依怙
(
えこ
)
贔屓
(
ひいき
)
もない。
048
総
(
すべ
)
て
世界
(
せかい
)
の
人類
(
じんるゐ
)
を
初
(
はじ
)
め、
049
森羅
(
しんら
)
万象
(
ばんしやう
)
を
平等
(
べうどう
)
的
(
てき
)
に
愛
(
あい
)
したまふ、
050
斯
(
か
)
かる
仁慈
(
じんじ
)
の
大御心
(
おほみこころ
)
を
悟
(
さと
)
らず、
051
自分
(
じぶん
)
免許
(
めんきよ
)
の
誠
(
まこと
)
を
楯
(
たて
)
に、
052
竜雲
(
りううん
)
にも
劣
(
おと
)
る
罪悪
(
ざいあく
)
を
行
(
おこな
)
はむとし、
053
得々
(
とくとく
)
として
兵
(
へい
)
を
養
(
やしな
)
ひ
武
(
ぶ
)
を
練
(
ね
)
り
居
(
ゐ
)
たる
此
(
この
)
恥
(
はづ
)
かしさ。
054
サガレン
王
(
わう
)
を
初
(
はじ
)
め、
055
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
にして
真
(
しん
)
に
神
(
かみ
)
の
大御心
(
おほみこころ
)
を
悟
(
さと
)
り、
056
神
(
かみ
)
に
叶
(
かな
)
へる
誠
(
まこと
)
を
尽
(
つく
)
さば、
057
無限
(
むげん
)
絶対力
(
ぜつたいりよく
)
の
神
(
かみ
)
は
如何
(
いか
)
でか
是
(
これ
)
を
助
(
たす
)
けたまはざらむや。
058
アヽ
誤
(
あやま
)
れり
誤
(
あやま
)
れり……
国
(
くに
)
の
大御祖
(
おほみおや
)
国治立
(
くにはるたちの
)
大神
(
おほかみ
)
、
059
豊国姫
(
とよくにひめの
)
大神
(
おほかみ
)
、
060
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのをの
)
大神
(
おほかみ
)
、
061
許
(
ゆる
)
させたまへ!
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸
(
ち
)
はへませ……』
062
と
涙
(
なみだ
)
にかき
暮
(
く
)
れながら
祈願
(
きぐわん
)
に
時
(
とき
)
を
移
(
うつ
)
す。
063
斯
(
か
)
かる
処
(
ところ
)
へエームスは
危険
(
きけん
)
極
(
きは
)
まる
岩壁
(
がんぺき
)
を
伝
(
つた
)
ひ、
064
サガレン
王
(
わう
)
に
従
(
したが
)
ひ、
065
此
(
この
)
館
(
やかた
)
の
前
(
まへ
)
にいそいそとして
入
(
い
)
り
来
(
きた
)
り、
066
四辺
(
あたり
)
をキヨロキヨロ
見廻
(
みまは
)
し、
067
以前
(
いぜん
)
の
老人
(
らうじん
)
の
姿
(
すがた
)
の
見
(
み
)
えざるに
不審
(
ふしん
)
を
抱
(
いだ
)
きながらテーリスに
向
(
むか
)
ひ、
068
エームス
『オー、
069
テーリス
殿
(
どの
)
、
070
王
(
わう
)
様
(
さま
)
をお
迎
(
むか
)
へ
申
(
まを
)
して
参
(
まゐ
)
つた。
071
彼
(
あ
)
の
老人
(
らうじん
)
はどこに
居
(
を
)
られますかな』
072
テーリスは
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
万感
(
ばんかん
)
交々
(
こもごも
)
胸
(
むね
)
に
浮
(
うか
)
んで
悔悟
(
くわいご
)
の
涙
(
なみだ
)
にくれ、
073
吾
(
わが
)
身
(
み
)
の
此処
(
ここ
)
にあるをも
殆
(
ほとん
)
ど
忘
(
わす
)
れて
居
(
ゐ
)
たが、
074
エームスの
此
(
この
)
声
(
こゑ
)
に、
075
ハツ
と
気
(
き
)
が
付
(
つ
)
いたやうに
四辺
(
あたり
)
を
見廻
(
みまは
)
し、
076
サガレン
王
(
わう
)
を
見
(
み
)
て
恭
(
うやうや
)
しく
頭
(
かしら
)
を
下
(
さ
)
げ
一礼
(
いちれい
)
し
終
(
をは
)
つて、
077
テーリス
『サガレン
王
(
わう
)
様
(
さま
)
、
078
アーよくこそ
御
(
ご
)
光臨
(
くわうりん
)
下
(
くだ
)
さいました。
079
異様
(
いやう
)
の
老人
(
らうじん
)
飄然
(
へうぜん
)
として
此処
(
ここ
)
に
現
(
あら
)
はれ、
080
種々
(
しゆじゆ
)
と
尊
(
たふと
)
き
教訓
(
けうくん
)
を
垂
(
た
)
れさせられ、
081
テーリスも
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
の
愚
(
ぐ
)
を
今更
(
いまさら
)
の
如
(
ごと
)
く
悔悟
(
くわいご
)
致
(
いた
)
しました……
唯今
(
ただいま
)
王
(
わう
)
様
(
さま
)
が
御
(
ご
)
出臨
(
しゆつりん
)
になるから、
082
しばらく
待
(
ま
)
つて
下
(
くだ
)
さい……と
百方
(
ひやつぱう
)
礼
(
れい
)
を
尽
(
つく
)
してお
願
(
ねが
)
ひ
致
(
いた
)
しましたが、
083
無住
(
むぢゆう
)
居士
(
こじ
)
と
名乗
(
なの
)
る
老人
(
らうじん
)
は……
吾
(
われ
)
は
天下
(
てんか
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
だから、
084
一刻
(
いつこく
)
のタイムも
空費
(
くうひ
)
する
訳
(
わけ
)
には
往
(
ゆ
)
かない……と
云
(
い
)
つて、
085
何程
(
なにほど
)
お
止
(
と
)
め
申
(
まを
)
してもお
聞
(
き
)
き
入
(
い
)
れなく、
086
袖
(
そで
)
を
払
(
はら
)
つて
電光
(
でんくわう
)
石火
(
せきくわ
)
の
如
(
ごと
)
く
立
(
た
)
ち
帰
(
かへ
)
つて
仕舞
(
しま
)
はれました。
087
折角
(
せつかく
)
此処迄
(
ここまで
)
お
越
(
こ
)
し
下
(
くだ
)
さいまして、
088
誠
(
まこと
)
に
申上
(
まをしあ
)
げやうもなき
不都合
(
ふつがふ
)
なれども、
089
何卒
(
なにとぞ
)
お
許
(
ゆる
)
しを
願
(
ねが
)
ひ
上
(
あ
)
げまする』
090
サガレン
王
(
わう
)
『
老人
(
らうじん
)
の
言葉
(
ことば
)
に
汝
(
なんぢ
)
は
得
(
う
)
る
処
(
ところ
)
があつたか、
091
参考
(
さんかう
)
のためわれに
詳細
(
しやうさい
)
を
伝
(
つた
)
へて
呉
(
く
)
れないか』
092
テーリス『お
言葉
(
ことば
)
迄
(
まで
)
も
御座
(
ござ
)
いませぬ』
093
と、
094
以前
(
いぜん
)
の
老人
(
らうじん
)
の
教
(
をしへ
)
を
諄々
(
じゆんじゆん
)
として、
095
一言
(
ひとこと
)
も
漏
(
も
)
らさず
王
(
わう
)
の
前
(
まへ
)
に
上申
(
じやうしん
)
するに、
096
王
(
わう
)
は
頭
(
かうべ
)
を
傾
(
かたむ
)
け
腕
(
うで
)
を
組
(
く
)
み、
097
しばし
思案
(
しあん
)
に
暮
(
く
)
れけるが、
098
漸
(
やうや
)
くにして
頭
(
かうべ
)
を
上下
(
じやうげ
)
に
幾度
(
いくど
)
となくふり、
099
サガレン王
『
成
(
な
)
る
程
(
ほど
)
!
成
(
な
)
る
程
(
ほど
)
!』
100
と
云
(
い
)
ひながら、
101
落涙
(
らくるゐ
)
滂沱
(
ぼうだ
)
として
腮辺
(
しへん
)
に
伝
(
つた
)
ふ。
102
エームス『
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
は
老人
(
らうじん
)
の
教
(
をしへ
)
を
聞
(
き
)
いて、
103
心
(
こころ
)
の
底
(
そこ
)
より
悔悟
(
くわいご
)
せし
上
(
うへ
)
は、
104
もはや
物々
(
ものもの
)
しき
武術
(
ぶじゆつ
)
の
修練
(
しうれん
)
も
必要
(
ひつえう
)
なし。
105
唯
(
ただ
)
天地
(
てんち
)
惟神
(
かむながら
)
の
大道
(
だいだう
)
に
則
(
のつと
)
り、
106
皇神
(
すめかみ
)
の
仁慈
(
じんじ
)
無限
(
むげん
)
なる
大御心
(
おほみこころ
)
に
神
(
かむ
)
倣
(
なら
)
ひ、
107
愛
(
あい
)
と
誠
(
まこと
)
とを
第一
(
だいいち
)
の
武器
(
ぶき
)
として
戦
(
たたか
)
はむ。
108
テーリス
殿
(
どの
)
、
109
如何
(
いかが
)
思召
(
おぼしめ
)
さるるや』
110
テーリス
『
王
(
わう
)
様
(
さま
)
にして
御
(
ご
)
同意
(
どうい
)
下
(
くだ
)
さらば、
111
唯今
(
ただいま
)
限
(
かぎ
)
り
武術
(
ぶじゆつ
)
の
練習
(
れんしふ
)
を
廃止
(
はいし
)
し、
112
先
(
ま
)
ず
第一
(
だいいち
)
着手
(
ちやくしゆ
)
として
御魂磨
(
みたまみが
)
きにかかりませう』
113
と
憮然
(
ぶぜん
)
として
語
(
かた
)
る。
114
サガレン
王
(
わう
)
は
莞爾
(
くわんじ
)
としてエームスを
伴
(
ともな
)
ひ、
115
再
(
ふたた
)
び
元
(
もと
)
の
岩窟
(
がんくつ
)
の
間
(
ま
)
に
帰
(
かへ
)
り
往
(
ゆ
)
く。
116
後
(
あと
)
にテーリスは、
117
武術
(
ぶじゆつ
)
修練場
(
しうれんば
)
に
立
(
た
)
ち
現
(
あら
)
はれ、
118
稍
(
やや
)
高
(
たか
)
き
処
(
ところ
)
に
直立
(
ちよくりつ
)
して
一同
(
いちどう
)
に
向
(
むか
)
ひ、
119
テーリス
『
今日
(
こんにち
)
唯今
(
ただいま
)
より
武術
(
ぶじゆつ
)
の
修練
(
しうれん
)
を
全廃
(
ぜんぱい
)
すべし。
120
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
は
王
(
わう
)
の
命
(
めい
)
に
従
(
したが
)
ひ、
121
今日
(
こんにち
)
唯今
(
ただいま
)
より
心
(
こころ
)
を
清
(
きよ
)
め、
122
身
(
み
)
を
清
(
きよ
)
め、
123
仁慈
(
じんじ
)
無限
(
むげん
)
の
大神
(
おほかみ
)
の
大御心
(
おほみこころ
)
を
拝戴
(
はいたい
)
し、
124
誠
(
まこと
)
一
(
ひと
)
つの
修業
(
しうげふ
)
をなせ!』
125
と
厳然
(
げんぜん
)
として
云
(
い
)
ひ
渡
(
わた
)
したるに、
126
一同
(
いちどう
)
の
中
(
なか
)
より
最
(
もつと
)
も
撃剣
(
げきけん
)
に
上達
(
じやうたつ
)
したる、
127
チールと
云
(
い
)
ふ
男
(
をとこ
)
、
128
テーリスの
前
(
まへ
)
に
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
り、
129
チール
『これはこれは、
130
お
師匠
(
ししやう
)
様
(
さま
)
のお
言葉
(
ことば
)
とも
覚
(
おぼ
)
えず、
131
大敵
(
たいてき
)
を
前
(
まへ
)
に
控
(
ひか
)
へながら、
132
肝腎要
(
かんじんかなめ
)
の
武術
(
ぶじゆつ
)
を
廃止
(
はいし
)
したまふは
何故
(
なにゆゑ
)
ぞ。
133
武術
(
ぶじゆつ
)
はもつて
国
(
くに
)
を
守
(
まも
)
るもの、
134
国家
(
こくか
)
の
実力
(
じつりよく
)
は
武術
(
ぶじゆつ
)
をもつて
第一
(
だいいち
)
とす。
135
然
(
しか
)
るに
何
(
なに
)
を
血迷
(
ちまよ
)
つてか、
136
斯
(
かく
)
の
如
(
ごと
)
き
命令
(
めいれい
)
を
発
(
はつ
)
せらるるや』
137
と、
138
息
(
いき
)
を
喘
(
はづ
)
ませ、
139
些
(
すこ
)
しく
怒気
(
どき
)
を
帯
(
お
)
びて
言葉
(
ことば
)
せはしく
詰
(
つ
)
め
寄
(
よ
)
つた。
140
テーリスは
冷然
(
れいぜん
)
として
答
(
こた
)
ふるやう、
141
テーリス
『つらつら
考
(
かんが
)
ふれば、
142
天
(
あめ
)
の
下
(
した
)
には
敵
(
てき
)
もなければ
味方
(
みかた
)
もなし。
143
総
(
すべ
)
ての
敵
(
てき
)
は
皆
(
みな
)
吾々
(
われわれ
)
の
心
(
こころ
)
より
発生
(
はつせい
)
し、
144
次第
(
しだい
)
に
成長
(
せいちやう
)
して
遂
(
つひ
)
には
吾
(
わが
)
身
(
み
)
を
亡
(
ほろ
)
ぼすに
至
(
いた
)
るものである。
145
心
(
こころ
)
に
慈悲
(
じひ
)
の
日月
(
じつげつ
)
輝
(
かがや
)
き
渡
(
わた
)
る
時
(
とき
)
は、
146
天地
(
てんち
)
清明
(
せいめい
)
にして
一点
(
いつてん
)
の
暗雲
(
あんうん
)
もなければ
混濁
(
こんだく
)
もない。
147
凡
(
すべ
)
て
敵
(
てき
)
と
云
(
い
)
ひ
味方
(
みかた
)
と
云
(
い
)
ふも、
148
心
(
こころ
)
の
迷
(
まよ
)
ひから
生
(
しやう
)
ずるのだ』
149
と
事
(
こと
)
も
無
(
な
)
げに
云
(
い
)
ひ
放
(
はな
)
つを、
150
チールは、
151
チール
『
仰
(
あふ
)
せの
如
(
ごと
)
く
個人
(
こじん
)
としての
敵
(
てき
)
は、
152
心
(
こころ
)
の
持
(
も
)
ちやう
一
(
ひと
)
つに
依
(
よ
)
つて
自然
(
しぜん
)
と
消滅
(
せうめつ
)
するでせう。
153
さりながら、
154
恐
(
おそ
)
れ
多
(
おほ
)
くも
神地
(
かうぢ
)
の
都
(
みやこ
)
の
神司
(
かむづかさ
)
、
155
サガレン
王
(
わう
)
に
向
(
むか
)
つて
反逆
(
はんぎやく
)
を
企
(
くはだ
)
てたる
大悪人
(
だいあくにん
)
竜雲
(
りううん
)
なるものは、
156
王
(
わう
)
の
敵
(
てき
)
ではありませぬか。
157
吾々
(
われわれ
)
は
王
(
わう
)
の
忠良
(
ちうりやう
)
なる
臣下
(
しんか
)
として、
158
どうして
是
(
これ
)
を
看過
(
かんくわ
)
する
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ませうか。
159
何卒
(
なにとぞ
)
御
(
ご
)
再考
(
さいかう
)
をお
願
(
ねが
)
ひ
致
(
いた
)
します』
160
テーリス
『
成
(
な
)
る
程
(
ほど
)
汝
(
なんぢ
)
の
云
(
い
)
ふ
如
(
ごと
)
く、
161
竜雲
(
りううん
)
は
実
(
じつ
)
に
悪逆
(
あくぎやく
)
無道
(
むだう
)
の
曲者
(
くせもの
)
にして、
162
主君
(
しゆくん
)
の
為
(
ため
)
には
大
(
だい
)
の
仇敵
(
きうてき
)
だ。
163
臣下
(
しんか
)
の
分際
(
ぶんざい
)
として
之
(
これ
)
を
看過
(
かんくわ
)
するは
所謂
(
いはゆる
)
臣
(
しん
)
の
道
(
みち
)
に
背
(
そむ
)
くものである。
164
とは
云
(
い
)
へ、
165
如何
(
いか
)
に
竜雲
(
りううん
)
暴悪
(
ばうあく
)
非道
(
ひだう
)
なりとは
雖
(
いへど
)
も、
166
此
(
この
)
方
(
はう
)
より
大慈
(
だいじ
)
大悲
(
だいひ
)
の
至誠
(
しせい
)
をもつて
彼
(
かれ
)
に
当
(
あた
)
らむか、
167
必
(
かなら
)
ずやその
仁慈
(
じんじ
)
の
鞭
(
むち
)
に
打
(
う
)
たれて、
168
心
(
こころ
)
の
底
(
そこ
)
より
王
(
わう
)
に
服
(
まつろ
)
ひまつり、
169
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
の
罪
(
つみ
)
を
謝
(
しや
)
し
忠実
(
ちうじつ
)
なる
臣下
(
しんか
)
となりて
仕
(
つか
)
ふるは
決
(
けつ
)
して
難事
(
なんじ
)
ではない。
170
吾々
(
われわれ
)
にして
彼
(
かれ
)
竜雲
(
りううん
)
如
(
ごと
)
き
悪人
(
あくにん
)
を
言向
(
ことむ
)
け
和
(
やは
)
し、
171
悔悟
(
くわいご
)
せしむる
事
(
こと
)
を
得
(
え
)
ずとすれば、
172
これ
全
(
まつた
)
く
誠
(
まこと
)
の
足
(
た
)
らざるものである。
173
如何
(
いか
)
なる
悪魔
(
あくま
)
といへども、
174
大慈
(
だいじ
)
大悲
(
だいひ
)
の
大神
(
おほかみ
)
の
御心
(
みこころ
)
を
奉戴
(
ほうたい
)
し、
175
至誠
(
しせい
)
至実
(
しじつ
)
を
旨
(
むね
)
とし
打
(
う
)
ち
向
(
むか
)
ふ
時
(
とき
)
は、
176
必
(
かなら
)
ずや
喜
(
よろこ
)
び
勇
(
いさ
)
んで、
177
感謝
(
かんしや
)
とともに
従
(
したが
)
ひまつるは、
178
火
(
ひ
)
を
睹
(
み
)
るよりも
明
(
あきら
)
かならむ。
179
先
(
ま
)
づ
先
(
ま
)
づ
武術
(
ぶじゆつ
)
を
思
(
おも
)
ひ
止
(
とど
)
まり、
180
一刻
(
いつこく
)
も
早
(
はや
)
く
魂
(
たま
)
を
磨
(
みが
)
けよ』
181
と
再
(
ふたた
)
び
宣示
(
せんじ
)
した。
182
チール『
何
(
なに
)
は
兎
(
と
)
もあれ、
183
知識
(
ちしき
)
に
暗
(
くら
)
き
吾々
(
われわれ
)
、
184
長者
(
ちやうじや
)
の
言
(
げん
)
に
従
(
したが
)
ふより
道
(
みち
)
はありませぬ。
185
何卒
(
なにとぞ
)
十二分
(
じふにぶん
)
の
御
(
ご
)
注意
(
ちうい
)
をもつて、
186
王
(
わう
)
の
為
(
ため
)
に
尽
(
つく
)
されむ
事
(
こと
)
を
希望
(
きばう
)
致
(
いた
)
します』
187
テーリス『
然
(
しか
)
らばいよいよ
唯今
(
ただいま
)
限
(
かぎ
)
り、
188
此
(
この
)
道場
(
だうぢやう
)
は
稽古
(
けいこ
)
を
廃止
(
はいし
)
して、
189
御魂磨
(
みたまみが
)
きの
神聖
(
しんせい
)
なる
道場
(
だうぢやう
)
と
致
(
いた
)
します。
190
ついては、
191
今
(
いま
)
此
(
この
)
列座
(
れつざ
)
の
中
(
なか
)
に
竜雲
(
りううん
)
の
密使
(
みつし
)
として、
192
王
(
わう
)
其
(
その
)
他
(
た
)
の
有志
(
いうし
)
を
捕縛
(
ほばく
)
せむと
表面
(
へうめん
)
帰順
(
きじゆん
)
を
装
(
よそほ
)
ひ
来
(
きた
)
れるヨール、
193
ビツト
外
(
ほか
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
に
対
(
たい
)
し、
194
今夜
(
こんや
)
の
子
(
ね
)
の
刻
(
こく
)
を
期
(
き
)
して
誅戮
(
ちうりく
)
を
加
(
くは
)
へむ
計劃
(
けいくわく
)
なりしも、
195
至仁
(
しじん
)
至愛
(
しあい
)
の
大神
(
おほかみ
)
の
大御心
(
おほみこころ
)
に
神
(
かむ
)
倣
(
なら
)
ひ、
196
唯今
(
ただいま
)
限
(
かぎ
)
り
其
(
その
)
罪
(
つみ
)
を
許
(
ゆる
)
すべし。
197
ヨール、
198
ビツト
以下
(
いか
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
、
199
早
(
はや
)
く
此
(
この
)
場
(
ば
)
を
立
(
た
)
ち
去
(
さ
)
つて
神地
(
かうぢ
)
の
館
(
やかた
)
に
立帰
(
たちかへ
)
れ』
200
と
宣示
(
せんじ
)
するや、
201
ヨール
外
(
ほか
)
四
(
よ
)
人
(
にん
)
はテーリスの
前
(
まへ
)
に
恐
(
おそ
)
る
恐
(
おそ
)
る
現
(
あらは
)
れ
来
(
きた
)
り、
202
大地
(
だいち
)
に
平伏
(
へいふく
)
し、
203
ヨール
『
唯今
(
ただいま
)
の
無抵抗
(
むていかう
)
主義
(
しゆぎ
)
の
御教
(
みをしへ
)
、
204
仁慈
(
じんじ
)
のお
心
(
こころ
)
に
感
(
かん
)
じ、
205
吾々
(
われわれ
)
はもはや
竜雲
(
りううん
)
に
仕
(
つか
)
ふる
事
(
こと
)
は
断念
(
だんねん
)
致
(
いた
)
しました。
206
罪
(
つみ
)
深
(
ふか
)
き
悪人
(
あくにん
)
なれども、
207
何卒
(
なにとぞ
)
広
(
ひろ
)
き
心
(
こころ
)
に
見直
(
みなほ
)
し
聞
(
き
)
き
直
(
なほ
)
し
下
(
くだ
)
さいまして、
208
貴方
(
あなた
)
がたの
弟子
(
でし
)
の
中
(
うち
)
に
御
(
お
)
加
(
くは
)
へ
下
(
くだ
)
さらば、
209
此
(
この
)
上
(
うへ
)
なき
有難
(
ありがた
)
き
仕合
(
しあは
)
せに
存
(
ぞん
)
じます。
210
嗚呼
(
ああ
)
何
(
なん
)
として
吾々
(
われわれ
)
は
斯
(
かか
)
る
悪人
(
あくにん
)
に
媚
(
こ
)
び
諂
(
へつら
)
ひ、
211
恩顧
(
おんこ
)
を
受
(
う
)
けし
王
(
わう
)
様
(
さま
)
に
刃向
(
はむか
)
はむとせしや。
212
思
(
おも
)
へば
思
(
おも
)
へば
実
(
じつ
)
に
吾
(
わが
)
心
(
こころ
)
の
汚
(
きたな
)
さが
恥
(
はづ
)
かしくなつて
参
(
まゐ
)
りました。
213
何卒
(
なにとぞ
)
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
の
御
(
ご
)
無礼
(
ぶれい
)
はお
許
(
ゆる
)
し
下
(
くだ
)
さいまして、
214
お
引
(
ひ
)
き
立
(
た
)
ての
程
(
ほど
)
を
偏
(
ひとへ
)
に
希
(
こひねが
)
ひ
上
(
あげ
)
奉
(
たてまつ
)
ります』
215
と
誠心
(
まごころ
)
を
面
(
おもて
)
に
現
(
あらは
)
して、
216
涙
(
なみだ
)
ながらに
懺悔
(
ざんげ
)
する
其
(
その
)
しをらしさ。
217
ヨールは
立
(
た
)
ち
上
(
あが
)
り、
218
一同
(
いちどう
)
の
中
(
なか
)
に
立
(
た
)
つて
述懐
(
じゆつくわい
)
を
謡
(
うた
)
ふ。
219
ヨール
『
神
(
かみ
)
が
表
(
おもて
)
に
現
(
あら
)
はれて
220
善神
(
ぜんしん
)
邪神
(
じやしん
)
を
委曲
(
まつぶさ
)
に
221
立
(
た
)
て
別
(
わ
)
けたまふ
時
(
とき
)
は
来
(
き
)
ぬ
222
邪非道
(
よこしまひだう
)
の
竜雲
(
りううん
)
が
223
お
鬚
(
ひげ
)
の
塵
(
ちり
)
を
払
(
はら
)
ひつつ
224
身
(
み
)
の
栄達
(
えいたつ
)
を
一向
(
ひたすら
)
に
225
急
(
いそ
)
ぎし
余
(
あま
)
り
畏
(
かしこ
)
くも
226
恩顧
(
おんこ
)
を
受
(
う
)
けし
神司
(
かむづかさ
)
227
サガレン
王
(
わう
)
の
御
(
おん
)
前
(
まへ
)
に
228
汚
(
きたな
)
き
心
(
こころ
)
を
現
(
あらは
)
して
229
罪
(
つみ
)
さへ
深
(
ふか
)
き
谷道
(
たにみち
)
に
230
行幸
(
みゆき
)
を
待
(
ま
)
ちて
捕
(
とら
)
へむと
231
勢
(
いきほ
)
ひこんで
来
(
きた
)
りたる
232
曲
(
まが
)
の
心
(
こころ
)
の
恐
(
おそ
)
ろしさ
233
斯
(
か
)
かる
尊
(
たふと
)
き
仁愛
(
じんあい
)
の
234
神
(
かみ
)
の
司
(
つかさ
)
と
知
(
し
)
らずして
235
心
(
こころ
)
汚
(
きたな
)
き
曲神
(
まがかみ
)
に
236
媚
(
こ
)
び
諂
(
へつら
)
ひし
浅
(
あさ
)
はかさ
237
万死
(
ばんし
)
に
比
(
ひ
)
すべき
吾
(
わが
)
罪
(
つみ
)
を
238
罰
(
きた
)
めたまはず
惟神
(
かむながら
)
239
誠
(
まこと
)
の
道
(
みち
)
を
説
(
と
)
き
示
(
しめ
)
し
240
許
(
ゆる
)
したまひし
有難
(
ありがた
)
さ
241
かかる
尊
(
たふと
)
きバラモンの
242
神
(
かみ
)
の
司
(
つかさ
)
と
現
(
あ
)
れませる
243
君
(
きみ
)
をば
捨
(
す
)
てていづくんぞ
244
曲津
(
まがつ
)
のかかりし
竜雲
(
りううん
)
に
245
従
(
したが
)
ひまつる
事
(
こと
)
を
得
(
え
)
む
246
神
(
かみ
)
の
司
(
つかさ
)
のテーリスよ
247
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
五
(
ご
)
人
(
にん
)
は
心
(
こころ
)
より
248
悔
(
く
)
い
改
(
あらた
)
めてバラモンの
249
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
に
神
(
かむ
)
倣
(
なら
)
ひ
250
サガレン
王
(
わう
)
に
真心
(
まごころ
)
の
251
限
(
かぎ
)
りを
尽
(
つく
)
し
身
(
み
)
を
尽
(
つく
)
し
252
骨
(
ほね
)
を
粉
(
こな
)
にし
身
(
み
)
を
砕
(
くだ
)
き
253
此
(
この
)
御
(
おん
)
君
(
きみ
)
の
為
(
ため
)
ならば
254
仮令
(
たとへ
)
屍
(
かばね
)
は
風
(
かぜ
)
荒
(
すさ
)
ぶ
255
荒野
(
あらの
)
ケ
原
(
はら
)
に
曝
(
さら
)
[
※
愛世版「曝」
]
すとも
256
海
(
うみ
)
の
藻屑
(
もくづ
)
となるとても
257
などか
厭
(
いと
)
はむ
敷島
(
しきしま
)
の
258
誠
(
まこと
)
の
心
(
こころ
)
を
現
(
あらは
)
して
259
清
(
きよ
)
く
正
(
ただ
)
しく
仕
(
つか
)
ふべし
260
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
261
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はひましまして
262
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
に
宿
(
とま
)
る
曲神
(
まがかみ
)
を
263
伊吹
(
いぶき
)
の
狭霧
(
さぎり
)
に
吹
(
ふ
)
き
払
(
はら
)
ひ
264
救
(
すく
)
はせたまへ
天津
(
あまつ
)
神
(
かみ
)
265
国津
(
くにつ
)
御神
(
みかみ
)
の
御
(
おん
)
前
(
まへ
)
に
266
謹
(
つつし
)
み
拝
(
をろが
)
み
奉
(
たてまつ
)
る
267
朝日
(
あさひ
)
は
照
(
て
)
るとも
曇
(
くも
)
るとも
268
月
(
つき
)
は
盈
(
み
)
つとも
虧
(
か
)
くるとも
269
仮令
(
たとへ
)
大地
(
だいち
)
は
沈
(
しづ
)
むとも
270
皇
(
すめ
)
大神
(
おほかみ
)
の
御
(
おん
)
道
(
みち
)
に
271
仁慈
(
じんじ
)
の
君
(
きみ
)
の
御
(
おん
)
為
(
ため
)
に
272
尽
(
つく
)
しまつらむ
神
(
かみ
)
の
前
(
まへ
)
273
確
(
たしか
)
に
誓
(
ちか
)
ひ
奉
(
たてまつ
)
る
274
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
275
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はひましませよ』
276
と
謡
(
うた
)
ひ
終
(
をは
)
り、
277
テーリスに
向
(
むか
)
つてわが
改心
(
かいしん
)
の
次第
(
しだい
)
を
述
(
の
)
べ
立
(
た
)
てる。
278
テーリスはさも
愉快
(
ゆくわい
)
げに、
279
ヨール
外
(
ほか
)
四
(
よ
)
人
(
にん
)
に
向
(
むか
)
ひ
慇懃
(
いんぎん
)
に
誠
(
まこと
)
の
道
(
みち
)
を
説
(
と
)
き
諭
(
さと
)
し、
280
一同
(
いちどう
)
の
部下
(
ぶか
)
に
対
(
たい
)
しても
一場
(
いちぢやう
)
の
訓戒
(
くんかい
)
を
垂
(
た
)
れ、
281
これより
日夜
(
にちや
)
魂磨
(
たまみが
)
きに
浮身
(
うきみ
)
を
窶
(
やつ
)
し、
282
神
(
かみ
)
の
救
(
すく
)
ひを
求
(
もと
)
むる
事
(
こと
)
となりぬ。
283
(
大正一一・九・二二
旧八・二
加藤明子
録)
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<<< 無住居士
(B)
(N)
歎願 >>>
霊界物語
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海洋万里(第25~36巻)
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第36巻(亥の巻)
> 第2篇 松浦の岩窟 > 第13章 恵の花
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【第13章 恵の花|第36巻|海洋万里|霊界物語|/rm3613】
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