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霊界物語
舎身活躍(第37~48巻)
第40巻(卯の巻)
序文に代へて
緒言
総説
第1篇 恋雲魔風
第1章 大雲山
第2章 出陣
第3章 落橋
第4章 珍客
第5章 忍ぶ恋
第2篇 寒梅照国
第6章 仁愛の真相
第7章 文珠
第8章 使者
第9章 雁使
第3篇 霊魂の遊行
第10章 衝突
第11章 三途館
第12章 心の反映
第13章 試の果実
第14章 空川
第4篇 関風沼月
第15章 氷嚢
第16章 春駒
第17章 天幽窟
第18章 沼の月
第19章 月会
第20章 入那の森
余白歌
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> 第1篇 恋雲魔風 > 第1章 大雲山
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(B)
(N)
出陣 >>>
第一章
大雲山
(
たいうんざん
)
〔一〇八五〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第40巻 舎身活躍 卯の巻
篇:
第1篇 恋雲魔風
よみ(新仮名遣い):
れんうんまふう
章:
第1章 大雲山
よみ(新仮名遣い):
たいうんざん
通し章番号:
1085
口述日:
1922(大正11)年11月01日(旧09月13日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年5月25日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
鬼雲彦は、左守の鬼春別、右守の雲依別、石生能姫、鬼熊別その他の幹部連を大雲山の岩窟に集めて三五教・ウラル教に対して取るべき手段を謀議していた。
鬼雲彦は、鬼熊別の妻子が三五教に帰順して宣伝使となり、バラモン教の教線をかく乱しているとの報をしばしば耳にしていたので、二人の中にはいつしか大障壁が築かれた。
鬼熊別は左守の職を辞して部下たちと共に自分の館に潜んでバラモン教の行く末を案じ祈願していた。
今日は珍しく鬼雲彦の使いによって呼び出され、この協議の席に姿を現していた。この席には鬼雲彦の腹心ばかりが集まっていたので、鬼熊別との間には何となく意志の疎隔を来していた。
鬼雲彦(大黒主)は、三五教がバラモン教の本城であるハルナの都を覆そうとする計画を遂行しつつあることを示し、腹心たちにこれに対する対策を練るようにと申し渡して、奥の間に姿を隠した。
鬼雲彦の寵愛を受けている石生能姫が議長となって会議は始まった。左守は、鬼熊別が三五教のスパイとなっているとあからさまに疑いをかけた。鬼熊別はこれに反論して口論となるが、右守は鬼熊別を弁護した。
最終的には、石生能姫が鬼熊別監督の役を担うことになり、また明日からは大黒主の館へ出勤するようにと鬼熊別に情けをかけた。
石生能姫は大黒主の代理権を発揮し、左守の鬼春別には斎苑の館を、大足別にはカルマタ国のウラル教の本城を攻め落とすべく出陣を命じた。鬼春別が帰るまでは鬼熊別を左守に任命し、これをもって会議は終了した。
右守の雲依別は表面上左守と態度を合わせていたが、その実は鬼熊別を心中畏敬していた。石生能姫は、鬼熊別の男らしく威儀備わる容貌にひそかに恋着心を抱いていた。そのため、鬼熊別に同情する右守を止め、鬼熊別を讒言する左守と大足別に出陣を命じたのであった。
大黒主も恋愛の雲に包まれて、石生能姫に対しては善悪にかかわらず一言半句も反対したことはなかったのである。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-11-26 11:20:13
OBC :
rm4001
愛善世界社版:
9頁
八幡書店版:
第7輯 421頁
修補版:
校定版:
9頁
普及版:
4頁
初版:
ページ備考:
001
空
(
そら
)
すみ
渡
(
わた
)
る
初秋
(
はつあき
)
の
002
風
(
かぜ
)
も
涼
(
すず
)
しき
月
(
つき
)
の
国
(
くに
)
003
花
(
はな
)
は
散
(
ち
)
れどもハルナの
都
(
みやこ
)
004
バラモン
教
(
けう
)
を
開設
(
かいせつ
)
し
005
大雲山
(
たいうんざん
)
の
岩窟
(
がんくつ
)
に
006
館
(
やかた
)
を
構
(
かま
)
へて
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
は
007
大黒主
(
おほくろぬし
)
と
改名
(
かいめい
)
し
008
梵天王
(
ぼんてんわう
)
の
直胤
(
ちよくいん
)
と
009
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
偽
(
いつは
)
る
曲津業
(
まがつわざ
)
010
数多
(
あまた
)
の
軍隊
(
ぐんたい
)
引連
(
ひきつ
)
れて
011
左手
(
ゆんで
)
に
教書
(
けうしよ
)
を
捧
(
ささ
)
げつつ
012
右手
(
めて
)
に
剣
(
つるぎ
)
をぬきかざし
013
七千
(
しちせん
)
余国
(
よこく
)
の
印度
(
つき
)
の
国
(
くに
)
014
刹帝利
(
せつていり
)
族
(
ぞく
)
の
大半
(
たいはん
)
を
015
おのが
幕下
(
ばくか
)
に
従
(
したが
)
へつ
016
飛
(
と
)
ぶ
鳥
(
とり
)
さへも
落
(
おと
)
すよな
017
其
(
その
)
勢
(
いきほひ
)
の
凄
(
すさま
)
じさ
018
時
(
とき
)
しもあれやウラル
彦
(
ひこ
)
019
ウラルの
姫
(
ひめ
)
の
御教
(
みをしへ
)
を
020
宣伝
(
せんでん
)
しゆく
神司
(
かむづかさ
)
021
常暗彦
(
とこやみひこ
)
は
月
(
つき
)
の
国
(
くに
)
022
デカタン
高原
(
かうげん
)
に
現
(
あら
)
はれて
023
教
(
をしへ
)
の
旗
(
はた
)
をひらめかし
024
これ
又
(
また
)
左手
(
ゆんで
)
にコーランを
025
捧
(
ささ
)
げつ
右手
(
めて
)
に
剣
(
つるぎ
)
持
(
も
)
ち
026
バラモン
教
(
けう
)
の
向
(
むか
)
ふ
張
(
は
)
り
027
勢
(
いきほひ
)
やうやう
加
(
くは
)
はりて
028
バラモン
教
(
けう
)
の
根底
(
こんてい
)
は
029
危殆
(
きたい
)
に
瀕
(
ひん
)
し
来
(
きた
)
りけり
030
かてて
加
(
くは
)
へてウブスナの
031
山
(
やま
)
に
建
(
た
)
てたるイソ
館
(
やかた
)
032
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのをの
)
大神
(
おほかみ
)
の
033
教
(
をしへ
)
を
伝
(
つた
)
ふる
日
(
ひ
)
の
出別
(
でわけ
)
034
八島
(
やしま
)
の
主
(
ぬし
)
の
声望
(
せいばう
)
は
035
東
(
あづま
)
の
空
(
そら
)
に
天津
(
あまつ
)
日
(
ひ
)
の
036
豊栄昇
(
とよさかのぼ
)
る
如
(
ごと
)
くにて
037
気
(
き
)
が
気
(
き
)
でならぬバラモンの
038
教司
(
をしへつかさ
)
は
岩窟
(
がんくつ
)
に
039
集
(
あつ
)
まり
来
(
きた
)
りいろいろと
040
対抗戦
(
たいかうせん
)
を
開
(
ひら
)
かむと
041
鳩首
(
きゆうしゆ
)
謀議
(
ぼうぎ
)
の
折柄
(
をりから
)
に
042
早馬
(
はやうま
)
使
(
つか
)
ひのテルヂーが
043
勢
(
いきほひ
)
込
(
こ
)
んで
馳
(
は
)
せ
帰
(
かへ
)
り
044
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのをの
)
大神
(
おほかみ
)
の
045
部下
(
ぶか
)
の
面々
(
めんめん
)
イソ
館
(
やかた
)
046
味方
(
みかた
)
を
集
(
あつ
)
めて
迫
(
せま
)
り
来
(
く
)
る
047
其
(
その
)
勢
(
いきほひ
)
はライオンの
048
速瀬
(
はやせ
)
の
如
(
ごと
)
く
急
(
いそ
)
がしく
049
旗鼓
(
きこ
)
堂々
(
だうだう
)
と
攻
(
せ
)
め
来
(
きた
)
る
050
気配
(
けはい
)
と
確
(
たしか
)
に
覚
(
おぼ
)
えたり
051
今
(
いま
)
此
(
この
)
時
(
とき
)
に
躊躇
(
ちうちよ
)
して
052
月日
(
つきひ
)
を
仇
(
あだ
)
に
送
(
おく
)
りなば
053
臍
(
ほぞ
)
をかむとも
及
(
およ
)
ぶまじ
054
早
(
はや
)
く
精鋭
(
せいえい
)
の
軍卒
(
ぐんそつ
)
を
055
さし
向
(
む
)
け
彼
(
かれ
)
が
計画
(
けいくわく
)
を
056
根本
(
こんぽん
)
的
(
てき
)
に
覆
(
くつが
)
へし
057
一泡
(
ひとあわ
)
吹
(
ふ
)
かしてこらさねば
058
ハルナの
都
(
みやこ
)
は
忽
(
たちま
)
ちに
059
土崩
(
どほう
)
瓦解
(
ぐわかい
)
の
虞
(
おそれ
)
あり
060
用意
(
ようい
)
めされと
息
(
いき
)
早
(
はや
)
め
061
虚実
(
きよじつ
)
交々
(
こもごも
)
取混
(
とりま
)
ぜて
062
注進
(
ちゆうしん
)
すれば
神司
(
かむつかさ
)
063
大黒主
(
おほくろぬし
)
は
驚
(
おどろ
)
いて
064
左守
(
さもり
)
右守
(
うもり
)
に
相対
(
あひたい
)
し
065
如何
(
いかが
)
はせむと
謀
(
はか
)
る
折
(
をり
)
066
又
(
また
)
もや
入
(
い
)
り
来
(
く
)
る
足音
(
あしおと
)
に
067
何人
(
なんぴと
)
ならむと
眺
(
なが
)
むれば
068
カルマタ
国
(
こく
)
に
遣
(
つか
)
はせし
069
斥候隊
(
せきこうたい
)
のケリスタン
070
汗
(
あせ
)
をタラタラ
流
(
なが
)
しつつ
071
カルマタ
国
(
こく
)
に
割拠
(
かつきよ
)
する
072
常暗彦
(
とこやみひこ
)
は
日
(
ひ
)
に
月
(
つき
)
に
073
猛虎
(
まうこ
)
の
勢
(
いきほひ
)
加
(
くは
)
はりつ
074
数多
(
あまた
)
の
軍勢
(
ぐんぜい
)
を
引率
(
いんそつ
)
し
075
山野
(
さんや
)
をわたりはるばると
076
月
(
つき
)
の
都
(
みやこ
)
に
攻
(
せ
)
めよせて
077
一挙
(
いつきよ
)
に
城
(
しろ
)
を
覆
(
くつが
)
へし
078
バラモン
教
(
けう
)
を
根底
(
こんてい
)
より
079
絶滅
(
ぜつめつ
)
せむと
計
(
はか
)
りゐる
080
其
(
その
)
計画
(
けいくわく
)
はありありと
081
手
(
て
)
に
取
(
と
)
る
如
(
ごと
)
く
見
(
み
)
えにけり
082
今
(
いま
)
此
(
この
)
時
(
とき
)
に
此
(
この
)
時
(
とき
)
に
083
一挙
(
いつきよ
)
に
彼
(
かれ
)
を
討
(
う
)
ちすてて
084
国
(
くに
)
の
災
(
わざはひ
)
払
(
はら
)
はねば
085
臍
(
ほぞ
)
をかむとも
及
(
およ
)
ぶまじ
086
一日
(
ひとひ
)
も
早
(
はや
)
く
片時
(
かたとき
)
も
087
勇敢
(
ゆうかん
)
決死
(
けつし
)
の
軍卒
(
ぐんそつ
)
を
088
差向
(
さしむ
)
け
給
(
たま
)
へと
汗
(
あせ
)
拭
(
ぬぐ
)
ひ
089
風声
(
ふうせい
)
鶴唳
(
かくれい
)
におぢ
怖
(
おそ
)
れ
090
注進
(
ちゆうしん
)
するこそ
可笑
(
をか
)
しけれ
091
大黒主
(
おほくろぬし
)
は
色
(
いろ
)
を
変
(
か
)
へ
092
大足別
(
おほだるわけ
)
に
打向
(
うちむか
)
ひ
093
如何
(
いかが
)
はせむと
尋
(
たづ
)
ぬれば
094
大足別
(
おほだるわけ
)
は
肱
(
ひぢ
)
を
張
(
は
)
り
095
われは
武勇
(
ぶゆう
)
の
神将
(
しんしやう
)
ぞ
096
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのをの
)
大神
(
おほかみ
)
や
097
常暗彦
(
とこやみひこ
)
が
現
(
あら
)
はれて
098
獅子
(
しし
)
奮迅
(
ふんじん
)
の
勢
(
いきほひ
)
に
099
本城
(
ほんじやう
)
に
攻
(
せ
)
めかけ
来
(
きた
)
るとも
100
何
(
なに
)
かは
恐
(
おそ
)
れむバラモンの
101
教
(
をしへ
)
の
神力
(
しんりき
)
身
(
み
)
に
受
(
う
)
けて
102
刃向
(
はむか
)
ふ
奴輩
(
やつばら
)
ことごとく
103
追
(
お
)
つかけちらし
薙
(
な
)
ぎ
倒
(
たふ
)
し
104
敵
(
てき
)
を
千
(
せん
)
里
(
り
)
に
郤
(
しりぞ
)
けて
105
君
(
きみ
)
の
危難
(
きなん
)
を
救
(
すく
)
ふべし
106
何
(
なに
)
は
兎
(
と
)
もあれ
諸々
(
もろもろ
)
の
107
神
(
かみ
)
の
司
(
つかさ
)
と
謀
(
はか
)
らひて
108
其
(
その
)
上
(
うへ
)
着否
(
ちやくひ
)
を
決
(
けつ
)
せむと
109
苦
(
にが
)
り
切
(
き
)
つたる
顔付
(
かほつき
)
に
110
ドカリと
其
(
その
)
場
(
ば
)
に
胡坐
(
あぐら
)
かき
111
豪傑
(
がうけつ
)
笑
(
わら
)
ひに
紛
(
まぎ
)
らしぬ。
112
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
を
始
(
はじ
)
め
左守
(
さもり
)
の
鬼春別
(
おにはるわけ
)
、
113
右守
(
うもり
)
の
雲依別
(
くもよりわけ
)
、
114
石生能
(
いその
)
姫
(
ひめ
)
、
115
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
其
(
その
)
他
(
た
)
四五
(
しご
)
の
幹部
(
かんぶ
)
連
(
れん
)
、
116
大雲山
(
たいうんざん
)
の
岩窟
(
がんくつ
)
、
117
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
隠家
(
かくれが
)
に
集
(
あつ
)
まつて、
118
三五教
(
あななひけう
)
、
119
ウラル
教
(
けう
)
に
対
(
たい
)
し
取
(
と
)
るべき
手段
(
しゆだん
)
を
首
(
くび
)
を
鳩
(
あつ
)
めて
謀議
(
ぼうぎ
)
しつつあつた。
120
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
は
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
の
其
(
その
)
妻子
(
さいし
)
が
[
※
初版・三版・愛世版は「鬼熊別は其妻子が」だが、校定版・八幡版では「鬼雲彦は鬼熊別のその妻子が」に直してある。主語が鬼熊別だと、それ以降の文章の意味が通じなくなるため、霊界物語ネットでも校定版と同じように直した。
]
三五教
(
あななひけう
)
に
帰順
(
きじゆん
)
し、
121
宣伝使
(
せんでんし
)
となつてバラモン
教
(
けう
)
の
教線
(
けうせん
)
を
攪乱
(
かくらん
)
せりとの
急報
(
きふはう
)
を
屡々
(
しばしば
)
耳
(
みみ
)
にし、
122
猜疑
(
さいぎ
)
の
眼
(
まなこ
)
を
怒
(
いか
)
らし、
123
いつとはなしに
二人
(
ふたり
)
の
中
(
なか
)
には
大障壁
(
だいしやうへき
)
が
築
(
きづ
)
かれ、
124
大溝渠
(
だいこうきよ
)
が
穿
(
うが
)
たれ、
125
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
も
怏々
(
わうわう
)
として
楽
(
たのし
)
まず、
126
遂
(
つひ
)
には
自
(
みづか
)
ら
左守
(
さもり
)
の
職
(
しよく
)
を
辞
(
じ
)
し、
127
部下
(
ぶか
)
の
神司
(
かむつかさ
)
と
共
(
とも
)
に、
128
己
(
おの
)
が
館
(
やかた
)
に
潜
(
ひそ
)
みて、
129
梵天王
(
ぼんてんわう
)
を
祀
(
まつ
)
りたる
神殿
(
しんでん
)
に
端坐
(
たんざ
)
し、
130
何卒
(
なにとぞ
)
一
(
いち
)
日
(
にち
)
も
早
(
はや
)
く
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
教主
(
けうしゆ
)
が
善道
(
ぜんだう
)
に
立帰
(
たちかへ
)
り、
131
大自在天
(
だいじざいてん
)
の
教
(
をしへ
)
を
完全
(
くわんぜん
)
に
発揮
(
はつき
)
し、
132
且
(
か
)
つ
大国別
(
おほくにわけ
)
の
御子
(
みこ
)
国別彦
(
くにわけひこ
)
の
所在
(
ありか
)
の
分
(
わか
)
りて、
133
ハルナの
都
(
みやこ
)
に
大教主
(
だいけうしゆ
)
として
臨
(
のぞ
)
まるる
日
(
ひ
)
の
一
(
いち
)
日
(
にち
)
も
早
(
はや
)
かれ……と
祈
(
いの
)
りつつ、
134
一方
(
いつぱう
)
には
妻子
(
さいし
)
の
所在
(
ありか
)
を
探
(
たづ
)
ねむと、
135
日夜
(
にちや
)
祈願
(
きぐわん
)
に
余念
(
よねん
)
なかつたのである。
136
然
(
しか
)
るに
今日
(
けふ
)
は
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
珍
(
めづら
)
しき
使
(
つかひ
)
に
依
(
よ
)
つて、
137
心
(
こころ
)
ならずも
主命
(
しゆめい
)
もだし
難
(
がた
)
く、
138
此
(
この
)
席
(
せき
)
に
面
(
おもて
)
を
現
(
あら
)
はしてゐたのである。
139
今
(
いま
)
此処
(
ここ
)
に
集
(
あつ
)
まれる
幹部
(
かんぶ
)
は、
140
何
(
いづ
)
れも
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
股肱
(
ここう
)
と
頼
(
たの
)
む
部下
(
ぶか
)
のみで、
141
信任
(
しんにん
)
最
(
もつと
)
も
厚
(
あつ
)
き
人物
(
じんぶつ
)
ばかりであつた。
142
そこへ
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
が
列席
(
れつせき
)
したのは
恰
(
あだか
)
も
白米
(
しらが
)
に
籾
(
もみ
)
の
混
(
まじ
)
つた
如
(
ごと
)
く、
143
油
(
あぶら
)
に
水
(
みづ
)
を
注
(
さ
)
したやうなもので、
144
何
(
なん
)
とはなしに
意思
(
いし
)
の
疎隔
(
そかく
)
を
来
(
きた
)
したのも
免
(
まぬが
)
れ
難
(
がた
)
き
所
(
ところ
)
であつた。
145
大黒主
(
おほくろぬし
)
は
立上
(
たちあが
)
つて
一同
(
いちどう
)
に
向
(
むか
)
ひ、
146
大黒主
『
今日
(
こんにち
)
一同
(
いちどう
)
をここに
召集
(
せうしふ
)
したのは
一
(
いち
)
日
(
にち
)
も
看過
(
かんくわ
)
す
可
(
べか
)
らざる
緊急
(
きんきふ
)
事件
(
じけん
)
が
突発
(
とつぱつ
)
したからである。
147
抑
(
そもそ
)
も
吾
(
わが
)
バラモン
教
(
けう
)
は
常世
(
とこよ
)
の
国
(
くに
)
の
常世城
(
とこよじやう
)
より、
148
大国別
(
おほくにわけ
)
は
神命
(
しんめい
)
を
奉
(
ほう
)
じて
埃及
(
エヂプト
)
に
渡
(
わた
)
り、
149
神徳
(
しんとく
)
を
四方
(
よも
)
に
輝
(
かがや
)
かし
給
(
たま
)
ふ
際
(
さい
)
、
150
憎
(
につく
)
き
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
、
151
吾
(
わが
)
本城
(
ほんじやう
)
を
攻撃
(
こうげき
)
して、
152
神
(
かみ
)
の
聖場
(
せいぢやう
)
を
蹂躙
(
じうりん
)
し、
153
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
も
衆寡
(
しうくわ
)
敵
(
てき
)
せず、
154
大国別
(
おほくにわけ
)
の
教主
(
けうしゆ
)
と
共
(
とも
)
に、
155
メソポタミヤの
顕恩郷
(
けんおんきやう
)
に
居
(
きよ
)
を
転
(
てん
)
じ、
156
漸
(
やうや
)
く
神業
(
しんげふ
)
の
端緒
(
たんちよ
)
を
開
(
ひら
)
きし
折
(
をり
)
、
157
執念深
(
しふねんぶか
)
き
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
輩
(
はい
)
は、
158
言霊軍
(
ことたまぐん
)
を
引率
(
いんそつ
)
し、
159
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
の
命
(
めい
)
と
称
(
しよう
)
し、
160
短兵急
(
たんぺいきふ
)
に
攻
(
せ
)
めよせ
来
(
きた
)
り、
161
内外
(
ないぐわい
)
相応
(
あひおう
)
じて、
162
再
(
ふたた
)
びバラモンの
本城
(
ほんじやう
)
を
破壊
(
はくわい
)
し
去
(
さ
)
り、
163
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
は
已
(
や
)
むを
得
(
え
)
ず、
164
涙
(
なみだ
)
を
呑
(
の
)
んで
親子
(
おやこ
)
夫婦
(
ふうふ
)
の
生別
(
いきわか
)
れ、
165
漸
(
やうや
)
く
忠勇
(
ちうゆう
)
義烈
(
ぎれつ
)
なる
部下
(
ぶか
)
と
共
(
とも
)
に
自転倒
(
おのころ
)
島
(
じま
)
に
渡
(
わた
)
り、
166
又
(
また
)
もや
神業
(
しんげふ
)
を
開始
(
かいし
)
する
折
(
をり
)
しも、
167
三五教
(
あななひけう
)
の
神司
(
かむつかさ
)
の
言霊
(
ことたま
)
に
破
(
やぶ
)
られ、
168
無念
(
むねん
)
やる
方
(
かた
)
なく
再
(
ふたた
)
び
残党
(
ざんたう
)
を
集
(
あつ
)
めて、
169
此
(
この
)
都
(
みやこ
)
に
来
(
きた
)
り、
170
月
(
つき
)
の
国
(
くに
)
の
七千
(
しちせん
)
余
(
よ
)
ケ
国
(
こく
)
の
大半
(
たいはん
)
を
征服
(
せいふく
)
し、
171
今
(
いま
)
や
旭日
(
きよくじつ
)
昇天
(
しようてん
)
の
勢
(
いきほひ
)
となり、
172
神業
(
しんげふ
)
を
葦原
(
あしはら
)
の
瑞穂国
(
みづほのくに
)
全体
(
ぜんたい
)
に
拡充
(
くわくじゆう
)
し、
173
バラモンの
威力
(
ゐりよく
)
を
示
(
しめ
)
さむと
致
(
いた
)
す
折
(
をり
)
しも、
174
天
(
あま
)
の
岩戸
(
いはと
)
を
閉鎖
(
へいさ
)
したると
云
(
い
)
ふ
悪神
(
あくがみ
)
の
張本
(
ちやうほん
)
素盞嗚
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
、
175
再
(
ふたた
)
び
部下
(
ぶか
)
をかりあつめ、
176
黄金山
(
わうごんざん
)
、
177
コーカス
山
(
ざん
)
、
178
イソ
館
(
やかた
)
と
相俟
(
あひまつ
)
つて、
179
再
(
ふたた
)
び
吾
(
わが
)
本城
(
ほんじやう
)
を
覆
(
くつが
)
へさむず
計画
(
けいくわく
)
ありと
聞
(
き
)
く。
180
今
(
いま
)
に
及
(
およ
)
んで
敵
(
てき
)
の
牙城
(
がじやう
)
に
迫
(
せま
)
り、
181
之
(
これ
)
を
殲滅
(
せんめつ
)
せざれば、
182
バラモン
教
(
けう
)
は
風前
(
ふうぜん
)
の
灯火
(
ともしび
)
の
如
(
ごと
)
し。
183
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
の
忠勇
(
ちうゆう
)
義烈
(
ぎれつ
)
に
依頼
(
いらい
)
して、
184
吾
(
われ
)
は
此
(
この
)
災
(
わざはひ
)
を
芟除
(
せんじよ
)
せむと
欲
(
ほつ
)
す。
185
左守
(
さもり
)
を
始
(
はじ
)
め、
186
一同
(
いちどう
)
は
吾
(
わが
)
旨
(
むね
)
を
体
(
たい
)
し、
187
最善
(
さいぜん
)
の
方法
(
はうはふ
)
を
講究
(
かうきう
)
すべし』
188
と
宣示
(
せんじ
)
し、
189
軽
(
かる
)
く
一瞥
(
いちべつ
)
を
与
(
あた
)
へて、
190
奥
(
おく
)
の
間
(
ま
)
に
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
した。
191
石生能
(
いその
)
姫
(
ひめ
)
は、
192
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
立去
(
たちさ
)
りし
後
(
あと
)
の
席
(
せき
)
に
儼然
(
げんぜん
)
として
立現
(
たちあら
)
はれ、
193
いとおごそかに、
194
石生能姫
『
只今
(
ただいま
)
大教主
(
だいけうしゆ
)
の
仰
(
あふ
)
せの
如
(
ごと
)
く、
195
本教
(
ほんけう
)
は
危急
(
ききふ
)
存亡
(
そんばう
)
の
機
(
き
)
に
瀕
(
ひん
)
せり、
196
速
(
すみやか
)
に
評議
(
ひやうぎ
)
を
凝
(
こら
)
し、
197
至誠
(
しせい
)
を
吐露
(
とろ
)
して、
198
大教主
(
だいけうしゆ
)
の
御心
(
みこころ
)
に
応
(
こた
)
へ
奉
(
まつ
)
れよ』
199
と
宣示
(
せんじ
)
するや、
200
左守
(
さもり
)
は
立上
(
たちあが
)
つて、
201
鬼春別
『
吾々
(
われわれ
)
はバラモン
教
(
けう
)
の
為
(
ため
)
、
202
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
御
(
おん
)
為
(
ため
)
ならば
素
(
もと
)
より
身命
(
しんめい
)
を
惜
(
をし
)
まぬ
覚悟
(
かくご
)
で
厶
(
ござ
)
る。
203
就
(
つい
)
ては
慎重
(
しんちよう
)
に
審議
(
しんぎ
)
を
致
(
いた
)
さねば、
204
此
(
この
)
大問題
(
だいもんだい
)
を
軽々
(
けいけい
)
に
決
(
けつ
)
することは
出来
(
でき
)
ませぬ。
205
私
(
わたし
)
は
断言
(
だんげん
)
します。
206
今
(
いま
)
に
至
(
いた
)
りて
考
(
かんが
)
ふれば、
207
此
(
この
)
城内
(
じやうない
)
には
二心
(
ふたごころ
)
ある
有力
(
いうりよく
)
なる
幹部
(
かんぶ
)
の
伏在
(
ふくざい
)
して、
208
三五教
(
あななひけう
)
やウラル
教
(
けう
)
に
款
(
くわん
)
を
通
(
つう
)
じ、
209
内外
(
ないぐわい
)
相応
(
あひおう
)
じて
本教
(
ほんけう
)
を
転覆
(
てんぷく
)
せむとたくらむ
曲者
(
くせもの
)
が
厶
(
ござ
)
います。
210
第一
(
だいいち
)
此
(
この
)
悪人
(
あくにん
)
を
取調
(
とりしら
)
べなくては、
211
如何
(
いか
)
なる
妙案
(
めうあん
)
奇策
(
きさく
)
も
敵
(
てき
)
に
漏洩
(
ろうえい
)
する
虞
(
おそれ
)
があり、
212
到底
(
たうてい
)
目的
(
もくてき
)
は
達
(
たつ
)
せられますまい』
213
と
目
(
め
)
を
瞋
(
いか
)
らし、
214
ワザとに
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
の
面体
(
めんてい
)
を
睨
(
にら
)
みつけた。
215
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
は
平然
(
へいぜん
)
として
顔
(
かほ
)
の
色
(
いろ
)
をも
変
(
か
)
へず
控
(
ひか
)
へてゐる。
216
右守
(
うもり
)
の
雲依別
(
くもよりわけ
)
は
立上
(
たちあが
)
り、
217
卓
(
たく
)
を
叩
(
たた
)
いて
声
(
こゑ
)
を
励
(
はげ
)
まし、
218
雲依別
『
鬼春別
(
おにはるわけ
)
様
(
さま
)
の
仰
(
あふ
)
せの
如
(
ごと
)
く、
219
敵
(
てき
)
の
巨魁
(
きよくわい
)
は
此
(
この
)
城中
(
じやうちう
)
に
潜
(
ひそ
)
み
居
(
を
)
るは
一目
(
いちもく
)
瞭然
(
れうぜん
)
たる
事実
(
じじつ
)
で
厶
(
ござ
)
いませう。
220
さうでなくては
今日
(
こんにち
)
まで
世界
(
せかい
)
の
秘密国
(
ひみつこく
)
として
自由
(
じいう
)
自在
(
じざい
)
にバラモンの
教
(
をしへ
)
を
拡張
(
くわくちやう
)
し、
221
無人
(
むじん
)
の
野
(
の
)
を
行
(
ゆ
)
く
如
(
ごと
)
き
有様
(
ありさま
)
でありしもの、
222
俄
(
にはか
)
に
各地方
(
かくちはう
)
の
刹帝利
(
せつていり
)
は
反旗
(
はんき
)
を
翻
(
ひるがへ
)
し、
223
尊
(
たふと
)
きバラモン
神
(
しん
)
に
向
(
むか
)
つて
不順
(
ふじゆん
)
の
色
(
いろ
)
あり、
224
人心
(
じんしん
)
恟々
(
きようきよう
)
として
安
(
やす
)
からず、
225
天下
(
てんか
)
の
騒擾
(
さうぜう
)
将
(
まさ
)
に
勃発
(
ぼつぱつ
)
せむとする
兆
(
てう
)
ある
時
(
とき
)
、
226
ウブスナ
山
(
やま
)
、
227
カルマタ
城
(
じやう
)
より、
228
数多
(
あまた
)
の
神軍
(
しんぐん
)
を
引連
(
ひきつ
)
れ
押寄
(
おしよ
)
せ
来
(
きた
)
らむとの
注進
(
ちゆうしん
)
は、
229
決
(
けつ
)
して
虚言
(
きよげん
)
ではありますまい。
230
いざこれより、
231
城内
(
じやうない
)
に
潜
(
ひそ
)
む
巨魁
(
きよくわい
)
を
誅伐
(
ちうばつ
)
し、
232
首途
(
かどで
)
の
血祭
(
ちまつり
)
となして、
233
怨敵
(
をんてき
)
調伏
(
てうふく
)
の
出師
(
すゐし
)
をなさむ、
234
列座
(
れつざ
)
の
面々
(
めんめん
)
如何
(
いかが
)
思召
(
おぼしめ
)
さるるや』
235
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
は
立上
(
たちあが
)
り、
236
鬼熊別
『
怪
(
あや
)
しき
事
(
こと
)
を
承
(
うけたま
)
はるものかな。
237
バラモン
教
(
けう
)
の
本城
(
ほんじやう
)
に
敵
(
てき
)
に
款
(
くわん
)
を
通
(
つう
)
ずる
巨魁
(
きよくわい
)
ありとは、
238
そは
何人
(
なんぴと
)
の
事
(
こと
)
で
厶
(
ござ
)
るか。
239
左様
(
さやう
)
な
悪神
(
あくがみ
)
は
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
誅伐
(
ちうばつ
)
し、
240
国家
(
こくか
)
の
災
(
わざはひ
)
を
根底
(
こんてい
)
より
除
(
のぞ
)
かねば、
241
バラモン
教
(
けう
)
は、
242
いかに
神力
(
しんりき
)
強
(
つよ
)
くとも
未
(
いま
)
だ
安心
(
あんしん
)
する
所
(
ところ
)
へは
参
(
まゐ
)
りますまい。
243
左守
(
さもり
)
殿
(
どの
)
のお
言葉
(
ことば
)
によれば、
244
確
(
たしか
)
に
其
(
その
)
巨魁
(
きよくわい
)
は
此
(
この
)
城中
(
じやうちう
)
に
潜
(
ひそ
)
みゐる
事
(
こと
)
を
御
(
ご
)
承知
(
しようち
)
のやうに
聞
(
き
)
きました。
245
其
(
その
)
悪人
(
あくにん
)
は
何人
(
なんぴと
)
なるか、
246
速
(
すみやか
)
に
御
(
ご
)
発表
(
はつぺう
)
を
願
(
ねが
)
ひます』
247
と
言
(
い
)
はせも
果
(
は
)
てず、
248
鬼春別
(
おにはるわけ
)
はクワツと
目
(
め
)
を
見
(
み
)
ひらき、
249
声
(
こゑ
)
を
荒
(
あら
)
らげ、
250
顔
(
かほ
)
を
真赤
(
まつか
)
に
彩
(
いろ
)
どりながら、
251
鬼春別
『お
黙
(
だま
)
り
召
(
め
)
され、
252
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
どの、
253
其
(
その
)
張本人
(
ちやうほんにん
)
と
申
(
まを
)
すは
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
といふ
悪虐
(
あくぎやく
)
無道
(
ぶだう
)
の
侫人
(
ねいじん
)
ばらで
厶
(
ござ
)
る。
254
言
(
い
)
はずと
知
(
し
)
れた、
255
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
は
此
(
この
)
城内
(
じやうない
)
に
一人
(
ひとり
)
より
厶
(
ござ
)
るまい。
256
速
(
すみやか
)
に
事情
(
じじやう
)
を
逐一
(
ちくいち
)
白状
(
はくじやう
)
致
(
いた
)
して
其
(
その
)
赤誠
(
せきせい
)
を
現
(
あら
)
はすか、
257
さなくば
吾々
(
われわれ
)
が
面前
(
めんぜん
)
に
於
(
おい
)
て
男
(
をとこ
)
らしく
切腹
(
せつぷく
)
めされよ』
258
鬼熊
(
おにくま
)
『こは
心得
(
こころえ
)
ぬ
左守
(
さもり
)
殿
(
どの
)
の
御
(
お
)
言葉
(
ことば
)
、
259
何
(
なに
)
を
証拠
(
しようこ
)
に、
260
左様
(
さやう
)
な
事
(
こと
)
を
仰
(
あふ
)
せらるるか。
261
痩
(
や
)
せても
枯
(
か
)
れても、
262
バラモン
教
(
けう
)
の
柱石
(
ちうせき
)
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
、
263
めつたな
事
(
こと
)
を
申
(
まを
)
さるると、
264
聞
(
き
)
き
捨
(
すて
)
はなりませぬぞ』
265
鬼春
(
おにはる
)
『アハヽヽヽ
悪人
(
あくにん
)
猛々
(
たけだけ
)
しいとは
此処
(
ここ
)
の
事
(
こと
)
、
266
よくもマア、
267
ヌツケリと
白々
(
しらじら
)
しい
其
(
その
)
言葉
(
ことば
)
、
268
ハルナの
城
(
しろ
)
には
盲
(
めくら
)
は
一人
(
ひとり
)
も
居
(
を
)
りませぬぞ。
269
左様
(
さやう
)
な
事
(
こと
)
が
看破
(
かんぱ
)
出来
(
でき
)
ないやうな
事
(
こと
)
で、
270
如何
(
どう
)
して
大切
(
たいせつ
)
な
左守
(
さもり
)
が
勤
(
つと
)
まらうか』
271
鬼熊別
『
確
(
たしか
)
な
証拠
(
しようこ
)
あつての
仰
(
あふ
)
せか。
272
サアそれが
承
(
うけたま
)
はりたい。
273
サア
如何
(
いかが
)
で
御座
(
ござ
)
る』
274
鬼春別
『サア それは』
275
鬼熊別
『サアサア
如何
(
いかが
)
で
厶
(
ござ
)
る、
276
御
(
ご
)
返答
(
へんたふ
)
を
承
(
うけたま
)
はりませう』
277
鬼春別
『サア それは』
278
『サア サア サア』
279
と
二人
(
ふたり
)
は
両方
(
りやうはう
)
より
意気
(
いき
)
まいてゐる。
280
右守
(
うもり
)
はツと
立
(
た
)
つて、
281
雲依別
『アイヤ
両人
(
りやうにん
)
暫
(
しば
)
らく
待
(
ま
)
たれよ』
282
と
制
(
せい
)
すれば、
283
二人
(
ふたり
)
は
不承
(
ふしよう
)
々々
(
ぶしよう
)
に
己
(
おの
)
が
座
(
ざ
)
につき、
284
互
(
たがひ
)
に
睨
(
にら
)
み
合
(
あ
)
つてゐる。
285
雲依
(
くもより
)
『
左守
(
さもり
)
の
仰
(
あふ
)
せは
数多
(
あまた
)
の
斥候
(
せきこう
)
どもの
種々
(
いろいろ
)
の
注進
(
ちゆうしん
)
を
綜合
(
そうがふ
)
して、
286
これは
正
(
まさ
)
しく
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
が、
287
敵方
(
てきがた
)
に
款
(
くわん
)
を
通
(
つう
)
ずる
者
(
もの
)
ならむとの
推定
(
すいてい
)
に
過
(
す
)
ぎますまい。
288
私
(
わたし
)
が
考
(
かんが
)
へますには
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
様
(
さま
)
の
斯
(
か
)
かる
嫌疑
(
けんぎ
)
を
受
(
う
)
けられたのも
二三
(
にさん
)
の
原因
(
げんいん
)
があるだらうと
思
(
おも
)
ひます。
289
今
(
いま
)
茲
(
ここ
)
に
羅列
(
られつ
)
すれば、
290
先
(
ま
)
づ
第一
(
だいいち
)
に
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
殿
(
どの
)
の
妻
(
つま
)
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
殿
(
どの
)
は
今
(
いま
)
は
三五教
(
あななひけう
)
に
帰順
(
きじゆん
)
し、
291
堂々
(
だうだう
)
たる
宣伝使
(
せんでんし
)
となつて
天下
(
てんか
)
を
布教
(
ふけう
)
し
居
(
を
)
らるる
事
(
こと
)
、
292
これが
第一
(
だいいち
)
大黒主
(
おほくろぬし
)
さまの
御
(
ご
)
気勘
(
きかん
)
に
叶
(
かな
)
はぬ
点
(
てん
)
で
疑惑
(
ぎわく
)
の
起
(
おこ
)
る
導火線
(
だうくわせん
)
で
厶
(
ござ
)
る。
293
……
又
(
また
)
第二
(
だいに
)
は
小糸姫
(
こいとひめ
)
殿
(
どの
)
が
竜宮
(
りうぐう
)
の
一
(
ひと
)
つ
島
(
じま
)
へ
渡
(
わた
)
り、
294
地恩城
(
ちおんじやう
)
に
於
(
おい
)
て
女王
(
ぢよわう
)
となり
三五教
(
あななひけう
)
を
拡
(
ひろ
)
め、
295
部下
(
ぶか
)
の
友彦
(
ともひこ
)
までも
三五教
(
あななひけう
)
に
帰順
(
きじゆん
)
せしめたるとの
噂
(
うはさ
)
、
296
これが
第二
(
だいに
)
の
疑
(
うたがひ
)
の
原因
(
げんいん
)
。
297
次
(
つぎ
)
には
妻子
(
さいし
)
は
三五教
(
あななひけう
)
に
心酔
(
しんすゐ
)
し、
298
最早
(
もはや
)
バラモン
教
(
けう
)
に
復帰
(
ふくき
)
する
形勢
(
けいせい
)
もなきに、
299
何時
(
いつ
)
までも
独身
(
どくしん
)
生活
(
せいくわつ
)
を
続
(
つづ
)
け、
300
悪虐
(
あくぎやく
)
無道
(
ぶだう
)
の
妻子
(
さいし
)
と
再
(
ふたた
)
び
家庭
(
かてい
)
を
作
(
つく
)
らむとの
御
(
ご
)
所存
(
しよぞん
)
と
見
(
み
)
える、
301
これが
第三
(
だいさん
)
の
疑
(
うたがひ
)
をまく
種
(
たね
)
。
302
次
(
つぎ
)
には
大黒主
(
おほくろぬし
)
さまが
鬼雲姫
(
おにくもひめ
)
さまの
不都合
(
ふつがふ
)
を
詰
(
なじ
)
り、
303
別宅
(
べつたく
)
を
造
(
つく
)
りて
退隠
(
たいいん
)
を
命
(
めい
)
じ
給
(
たま
)
うた
時
(
とき
)
、
304
之
(
これ
)
に
対
(
たい
)
して
極力
(
きよくりよく
)
反抗
(
はんかう
)
的
(
てき
)
態度
(
たいど
)
を
用
(
もち
)
ひ、
305
新夫人
(
しんふじん
)
の
石生能
(
いその
)
姫
(
ひめ
)
に
対
(
たい
)
し
悪感情
(
あくかんじやう
)
を
抱
(
いだ
)
き
居
(
を
)
らるる
事
(
こと
)
、
306
これも
亦
(
また
)
疑惑
(
ぎわく
)
の
種
(
たね
)
。
307
大黒主
(
おほくろぬし
)
と
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
との
間
(
あひだ
)
には
深
(
ふか
)
き
溝渠
(
こうきよ
)
が
穿
(
うが
)
たれ、
308
意思
(
いし
)
の
疎通
(
そつう
)
を
欠
(
か
)
きし
事
(
こと
)
。
309
……
次
(
つぎ
)
には
兵馬
(
へいば
)
の
権
(
けん
)
を
握
(
にぎ
)
り、
310
片手
(
かたて
)
に
教権
(
けうけん
)
を
掌握
(
しやうあく
)
し
玉
(
たま
)
ふ
大黒主
(
おほくろぬし
)
よりも、
311
武力
(
ぶりよく
)
なき
身
(
み
)
を
以
(
もつ
)
て、
312
数多
(
あまた
)
の
国人
(
くにびと
)
の
信用
(
しんよう
)
を
受
(
う
)
け
居
(
を
)
らるる
事
(
こと
)
。
313
これ
亦
(
また
)
疑惑
(
ぎわく
)
の
種
(
たね
)
となつて
居
(
ゐ
)
るのだらうと
私
(
わたし
)
は
推察
(
すいさつ
)
致
(
いた
)
します。
314
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
神
(
かみ
)
に
仕
(
つか
)
へ
給
(
たま
)
ふ
身
(
み
)
を
以
(
もつ
)
て
左様
(
さやう
)
な
疑惑
(
ぎわく
)
の
種
(
たね
)
を
蒔
(
ま
)
く
如
(
ごと
)
き
御
(
ご
)
精神
(
せいしん
)
では
厶
(
ござ
)
いますまい………と
私
(
わたし
)
は
信
(
しん
)
ずるのであります。
315
今
(
いま
)
は
斯様
(
かやう
)
な
内紛
(
ないふん
)
を
繰返
(
くりかへ
)
す
時
(
とき
)
では
厶
(
ござ
)
らぬ。
316
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
外
(
そと
)
に
向
(
むか
)
つて
敵
(
てき
)
の
襲来
(
しふらい
)
に
備
(
そな
)
へ、
317
且
(
か
)
つ
敵
(
てき
)
を
根底
(
こんてい
)
より
滅亡
(
めつぼう
)
させねばならぬ
国家
(
こくか
)
の
危機
(
きき
)
だから、
318
小異
(
せうい
)
を
棄
(
す
)
て、
319
大同
(
だいどう
)
に
合
(
がつ
)
し、
320
協心
(
けふしん
)
戮力
(
りくりよく
)
して
此
(
この
)
国家
(
こくか
)
の
大事
(
だいじ
)
に
備
(
そな
)
へようではありませぬか。
321
これ
右守
(
うもり
)
が
偽
(
いつは
)
らざる
至誠
(
しせい
)
の
告白
(
こくはく
)
否
(
いな
)
忠告
(
ちうこく
)
で
厶
(
ござ
)
る』
322
と
堂々
(
だうだう
)
として
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
の
寃罪
(
ゑんざい
)
を
弁護
(
べんご
)
しつつ
説
(
と
)
き
来
(
きた
)
り
説
(
と
)
き
去
(
さ
)
り
座
(
ざ
)
に
着
(
つ
)
いた。
323
鬼春別
(
おにはるわけ
)
は
不機嫌
(
ふきげん
)
顔
(
がほ
)
にて
再
(
ふたた
)
び
立上
(
たちあが
)
り、
324
鬼春別
『
如何
(
いか
)
にも
心得
(
こころえ
)
ぬ
右守
(
うもり
)
の
御
(
お
)
言葉
(
ことば
)
、
325
吾々
(
われわれ
)
は
一向
(
いつかう
)
合点
(
がてん
)
が
参
(
まゐ
)
らぬ。
326
然
(
しか
)
らば
右守
(
うもり
)
どの、
327
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
の
一身
(
いつしん
)
に
就
(
つい
)
ては、
328
貴殿
(
あなた
)
に
一任
(
いちにん
)
しますから、
329
キツト
過
(
あやま
)
ちのなき
様
(
やう
)
に
御
(
ご
)
監督
(
かんとく
)
を
願
(
ねが
)
ひます』
330
雲依
(
くもより
)
『
神徳
(
しんとく
)
高
(
たか
)
き
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
さまの
御
(
ご
)
監督
(
かんとく
)
とは
思
(
おも
)
ひもよらぬ
大役
(
たいやく
)
なれど、
331
今日
(
こんにち
)
の
場合
(
ばあひ
)
止
(
や
)
むを
得
(
え
)
ませぬ、
332
仰
(
おほせ
)
に
従
(
したが
)
つて
監督
(
かんとく
)
を
承
(
うけたま
)
はりませう』
333
鬼熊
(
おにくま
)
『これは
心得
(
こころえ
)
ぬ、
334
御
(
ご
)
両人
(
りやうにん
)
の
御
(
お
)
言葉
(
ことば
)
、
335
悪虐
(
あくぎやく
)
無道
(
ぶだう
)
の
叛逆者
(
はんぎやくしや
)
ならばいざ
知
(
し
)
らず、
336
吾々
(
われわれ
)
如
(
ごと
)
き
忠臣
(
ちうしん
)
義士
(
ぎし
)
に
対
(
たい
)
して、
337
何
(
なん
)
の
為
(
ため
)
に
御
(
ご
)
監督
(
かんとく
)
を
遊
(
あそ
)
ばすか。
338
あらぬ
嫌疑
(
けんぎ
)
をかけられ、
339
憤慨
(
ふんがい
)
の
至
(
いた
)
りに
堪
(
た
)
へねども、
340
国家
(
こくか
)
の
一大事
(
いちだいじ
)
を
慮
(
おもんぱか
)
り、
341
陰忍
(
いんにん
)
自重
(
じちよう
)
しつつある
吾
(
われ
)
に、
342
其
(
その
)
心遣
(
こころづか
)
ひは
御
(
ご
)
無用
(
むよう
)
に
願
(
ねが
)
ひませう』
343
石生
(
いそ
)
『
此
(
この
)
問題
(
もんだい
)
はどうぞ
妾
(
わたし
)
に
任
(
まか
)
して
貰
(
もら
)
ひませう。
344
イヤ
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
さま、
345
エライ
気
(
き
)
を
揉
(
も
)
ませました。
346
今
(
いま
)
の
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
誠
(
まこと
)
の
者
(
もの
)
が
虐
(
しひた
)
げられ、
347
疑
(
うたが
)
はれ、
348
大悪人
(
だいあくにん
)
の
時
(
とき
)
めく
時代
(
じだい
)
なれば、
349
あなたもそれだけの
御
(
お
)
疑
(
うたがひ
)
を
受
(
う
)
けさせられる
半面
(
はんめん
)
にはキツト
善
(
よ
)
い
事
(
こと
)
があるでせう。
350
どうぞ
御
(
ご
)
機嫌
(
きげん
)
を
直
(
なほ
)
して、
351
今日
(
こんにち
)
以後
(
いご
)
は
日々
(
にちにち
)
国家
(
こくか
)
の
為
(
ため
)
に、
352
教
(
をしへ
)
の
為
(
ため
)
に、
353
御
(
ご
)
登城
(
とじやう
)
御
(
ご
)
出勤
(
しゆつきん
)
を
願
(
ねが
)
ひますよ』
354
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
は
石生能
(
いその
)
姫
(
ひめ
)
の
言葉
(
ことば
)
に
感謝
(
かんしや
)
の
涙
(
なみだ
)
を
秘
(
ひそ
)
かに
流
(
なが
)
しながら、
355
鬼熊別
『ハイ
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います。
356
然
(
しか
)
らば
御
(
お
)
言葉
(
ことば
)
に
従
(
したが
)
ひ、
357
明日
(
みやうにち
)
より
出勤
(
しゆつきん
)
致
(
いた
)
すことにきめませう。
358
今迄
(
いままで
)
の
不都合
(
ふつがふ
)
は
平
(
ひら
)
にお
赦
(
ゆる
)
しを
願
(
ねが
)
ひます』
359
石生能
(
いその
)
姫
(
ひめ
)
は
儼然
(
げんぜん
)
として
言葉
(
ことば
)
を
改
(
あらた
)
め、
360
石生能姫
『イソの
館
(
やかた
)
へは
左守
(
さもり
)
鬼春別
(
おにはるわけ
)
殿
(
どの
)
、
361
部下
(
ぶか
)
の
軍卒
(
ぐんそつ
)
を
引連
(
ひきつ
)
れ
出発
(
しゆつぱつ
)
さるべし。
362
又
(
また
)
大足別
(
おほだるわけ
)
は
軍勢
(
ぐんぜい
)
を
引率
(
いんそつ
)
して、
363
カルマタ
国
(
こく
)
のウラル
教
(
けう
)
が
本城
(
ほんじやう
)
へ
向
(
むか
)
つて
攻
(
せ
)
め
寄
(
よ
)
せらるべし。
364
鬼春別
(
おにはるわけ
)
が
目出度
(
めでた
)
く
凱旋
(
がいせん
)
ある
迄
(
まで
)
は
元
(
もと
)
の
如
(
ごと
)
く
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
殿
(
どの
)
、
365
左守
(
さもり
)
となつて
奉仕
(
ほうし
)
されたし。
366
右守
(
うもり
)
は
従前
(
じうぜん
)
のまま、
367
何
(
いづ
)
れも
神妙
(
しんめう
)
に
心
(
こころ
)
を
併
(
あは
)
せ、
368
手
(
て
)
を
引合
(
ひきあ
)
ひ
神務
(
しんむ
)
に
従事
(
じうじ
)
されよ。
369
大教主
(
だいけうしゆ
)
の
命
(
めい
)
に
依
(
よ
)
りて、
370
石生能
(
いその
)
姫
(
ひめ
)
、
371
代理権
(
だいりけん
)
を
執行
(
しつかう
)
致
(
いた
)
す』
372
一同
(
いちどう
)
は
此
(
この
)
言葉
(
ことば
)
に、
373
一同
『ハハア』
374
と
首
(
こうべ
)
を
傾
(
かたむ
)
け、
375
承諾
(
しようだく
)
の
意
(
い
)
を
示
(
しめ
)
した。
376
因
(
ちなみ
)
に
右守
(
うもり
)
の
雲依別
(
くもよりわけ
)
は
時
(
とき
)
の
勢
(
いきほひ
)
に
抗
(
かう
)
し
難
(
がた
)
く、
377
左守
(
さもり
)
と
表面
(
へうめん
)
バツを
合
(
あは
)
せてゐたが、
378
其
(
その
)
実
(
じつ
)
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
の
美
(
うる
)
はしき
心
(
こころ
)
と
日夜
(
にちや
)
の
行動
(
かうどう
)
に
感激
(
かんげき
)
し、
379
心中
(
しんちう
)
潜
(
ひそ
)
かに
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
を
畏敬
(
ゐけい
)
尊信
(
そんしん
)
してゐた。
380
それ
故
(
ゆゑ
)
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
の
無辜
(
むこ
)
を
憐
(
あは
)
れみ
弁解
(
べんかい
)
的
(
てき
)
弁論
(
べんろん
)
をまくしたてたのである。
381
又
(
また
)
石生能
(
いその
)
姫
(
ひめ
)
は
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
のどこともなく
男
(
をとこ
)
らしく、
382
威儀
(
ゐぎ
)
備
(
そな
)
はる
容貌
(
ようばう
)
に、
383
心
(
こころ
)
私
(
ひそ
)
かに
恋着
(
れんちやく
)
してゐた。
384
それ
故
(
ゆゑ
)
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
余
(
あま
)
り
好
(
この
)
まぬ
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
を
代理権
(
だいりけん
)
を
執行
(
しつかう
)
して
左守
(
さもり
)
となし、
385
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
に
同情
(
どうじやう
)
をよせつつある
右守
(
うもり
)
を
止
(
とど
)
め、
386
常
(
つね
)
に
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
を
讒言
(
ざんげん
)
する
鬼春別
(
おにはるわけ
)
、
387
大足別
(
おほだるわけ
)
を
出陣
(
しゆつぢん
)
させて
了
(
しま
)
つたのであつた。
388
女
(
をんな
)
の
美貌
(
びばう
)
は
城
(
しろ
)
を
傾
(
かたむ
)
くるとか
云
(
い
)
ふ。
389
実
(
じつ
)
に
女
(
をんな
)
位
(
くらゐ
)
恐
(
おそ
)
ろしきものはない。
390
大黒主
(
おほくろぬし
)
も
此
(
この
)
石生能
(
いその
)
姫
(
ひめ
)
には
恋愛
(
れんあい
)
の
雲
(
くも
)
に
包
(
つつ
)
まれて、
391
善悪
(
ぜんあく
)
に
関
(
かかは
)
らず、
392
一言
(
いちごん
)
半句
(
はんく
)
も
背
(
そむ
)
いた
事
(
こと
)
はなかつたのである。
393
(
大正一一・一一・一
旧九・一三
松村真澄
録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
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(N)
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