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霊界物語
舎身活躍(第37~48巻)
第40巻(卯の巻)
序文に代へて
緒言
総説
第1篇 恋雲魔風
第1章 大雲山
第2章 出陣
第3章 落橋
第4章 珍客
第5章 忍ぶ恋
第2篇 寒梅照国
第6章 仁愛の真相
第7章 文珠
第8章 使者
第9章 雁使
第3篇 霊魂の遊行
第10章 衝突
第11章 三途館
第12章 心の反映
第13章 試の果実
第14章 空川
第4篇 関風沼月
第15章 氷嚢
第16章 春駒
第17章 天幽窟
第18章 沼の月
第19章 月会
第20章 入那の森
余白歌
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第40巻(卯の巻)
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<<< 落橋
(B)
(N)
忍ぶ恋 >>>
第四章
珍客
(
ちんきやく
)
〔一〇八八〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第40巻 舎身活躍 卯の巻
篇:
第1篇 恋雲魔風
よみ(新仮名遣い):
れんうんまふう
章:
第4章 珍客
よみ(新仮名遣い):
ちんきゃく
通し章番号:
1088
口述日:
1922(大正11)年11月01日(旧09月13日)
口述場所:
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年5月25日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
午前の五つ時、鬼熊別の館の前に石生能姫が現れて門番に門を開けるよう急き立てた。門番の注進によりやってきた熊彦は、一目見てそれが石生能姫であることを認めた。そして慌てて鬼熊別の奥殿に通した。
鬼熊別は、熊彦に伴われて石生能姫がやってきたことに驚きを隠せなかった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-11-27 10:10:28
OBC :
rm4004
愛善世界社版:
44頁
八幡書店版:
第7輯 434頁
修補版:
校定版:
45頁
普及版:
21頁
初版:
ページ備考:
001
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
の
館
(
やかた
)
に
午前
(
ごぜん
)
の
五
(
いつ
)
ツ
時
(
どき
)
[
※
朝8時頃
]
、
002
妙齢
(
めうれい
)
の
美人
(
びじん
)
が
深編笠
(
ふかあみがさ
)
を
被
(
かぶ
)
り、
003
面
(
おもて
)
を
包
(
つつ
)
み
門前
(
もんぜん
)
に
現
(
あら
)
はれた。
004
これは
読者
(
どくしや
)
の
耳
(
みみ
)
には
新
(
あら
)
たなる
石生能
(
いその
)
姫
(
ひめ
)
たることは
間違
(
まちが
)
ひのない
事実
(
じじつ
)
である。
005
石生能
(
いその
)
姫
(
ひめ
)
は
涼
(
すず
)
しき
細
(
ほそ
)
き
声
(
こゑ
)
にて、
006
石生能姫
『もしもし
門番
(
もんばん
)
さま、
007
一寸
(
ちよつと
)
此
(
この
)
門
(
もん
)
をあけて
下
(
くだ
)
さい。
008
早
(
はや
)
く
早
(
はや
)
く』
009
とせき
立
(
た
)
てる。
010
門番
(
もんばん
)
の
朝寝坊
(
あさねばう
)
は
漸
(
やうや
)
く
起
(
お
)
き
上
(
あが
)
り、
011
まだ
手水
(
てうづ
)
もつかはず、
012
寝
(
ね
)
ぶた
目
(
め
)
を
擦
(
こす
)
つてゐた
所
(
ところ
)
であつた。
013
門番(捨公)
『エー
何
(
なん
)
だ。
014
やもめ
の
御
(
ご
)
主人
(
しゆじん
)
の
家
(
いへ
)
へ、
015
なまめかしい
女
(
をんな
)
の
声
(
こゑ
)
で「もしもし
門番
(
もんばん
)
さま、
016
此
(
この
)
門
(
もん
)
をあけて
下
(
くだ
)
さい。
017
早
(
はや
)
く
早
(
はや
)
く」なんて
馬鹿
(
ばか
)
にしてけつからア』
018
と
云
(
い
)
ひながら
門
(
もん
)
の
節孔
(
ふしあな
)
から
一寸
(
ちよつと
)
外
(
そと
)
を
覗
(
のぞ
)
き、
019
門番(捨公)
『やあ
何
(
なん
)
だ。
020
深編笠
(
ふかあみがさ
)
を
被
(
かぶ
)
つてゐるから、
021
どんな
御
(
ご
)
面相
(
めんさう
)
か
拝見
(
はいけん
)
する
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ないが、
022
あの
姿
(
すがた
)
のいい
事
(
こと
)
、
023
花顔
(
くわがん
)
柳腰
(
りうえう
)
とは
此
(
この
)
事
(
こと
)
、
024
「
窈窕
(
えうてう
)
嬋娟
(
せんけん
)
たる
美人
(
びじん
)
門
(
もん
)
を
叩
(
たた
)
いて
恋
(
こひ
)
しの
君
(
きみ
)
を
訪
(
と
)
ふ」と
云
(
い
)
ふ
幕
(
まく
)
だな。
025
家
(
うち
)
の
主人
(
しゆじん
)
も
余程
(
よほど
)
堅造
(
かたざう
)
だと
思
(
おも
)
つたが、
026
こんな
代物
(
しろもの
)
が
訪
(
たづ
)
ねて
来
(
く
)
るとは
油断
(
ゆだん
)
のならぬものだ。
027
三五教
(
あななひけう
)
が
世
(
よ
)
が
変
(
かは
)
るとか
何
(
なん
)
とか
云
(
い
)
つてるが、
028
本当
(
ほんたう
)
に、
029
こんな
事
(
こと
)
があると
世
(
よ
)
が
変
(
かは
)
るかも
知
(
し
)
れない。
030
どれどれ
開
(
あ
)
けてやらうか』
031
と
起
(
お
)
き
上
(
あが
)
らうとする。
032
一人
(
ひとり
)
の
門番
(
もんばん
)
は
寝
(
ね
)
そばつたまま、
033
門番(権公)
『オイ
捨公
(
すてこう
)
、
034
無暗
(
むやみ
)
に
此
(
この
)
門
(
もん
)
をあけちやならないぞ。
035
夜前
(
やぜん
)
、
036
遅
(
おそ
)
う
家老職
(
からうしよく
)
の
熊彦
(
くまひこ
)
様
(
さま
)
が
俺
(
おれ
)
を
呼
(
よ
)
んで、
037
此
(
この
)
門
(
もん
)
は
寝
(
ね
)
ずに
警戒
(
けいかい
)
して
居
(
を
)
れ。
038
まして
此
(
この
)
二三
(
にさん
)
日
(
にち
)
は
特
(
とく
)
に
注意
(
ちうい
)
しろと
云
(
い
)
ひ
渡
(
わた
)
した。
039
トツクリ
調
(
しら
)
べてからでないと
無暗
(
むやみ
)
に
開
(
あ
)
けてはならないぞ。
040
捨公
(
すてこう
)
、
041
すて
ておけ』
042
捨公
(
すてこう
)
『それでも
権
(
ごん
)
さま、
043
あんな
立派
(
りつぱ
)
なシヤンが
鈴
(
すず
)
の
様
(
やう
)
な
声
(
こゑ
)
で
頼
(
たの
)
んで
居
(
を
)
るのだもの、
044
これが
開
(
あ
)
けずにをれようかい。
045
男
(
をとこ
)
なら
又
(
また
)
剣呑
(
けんのん
)
と
云
(
い
)
ふ
案
(
あん
)
じも
要
(
い
)
るが、
046
あんな
繊弱
(
かよわ
)
い
女
(
をんな
)
一人
(
ひとり
)
位
(
くらゐ
)
、
047
門
(
もん
)
を
通
(
とほ
)
してやつた
処
(
ところ
)
で
剣呑
(
けんのん
)
な
事
(
こと
)
があるものか。
048
あまり
取越
(
とりこし
)
苦労
(
くらう
)
をせないでも
俺
(
おれ
)
はもう
堪
(
たま
)
らぬ
様
(
やう
)
になつた。
049
開
(
あ
)
けてやるわ』
050
権公
(
ごんこう
)
『
待
(
ま
)
てと
云
(
い
)
つたら
待
(
ま
)
たぬかい。
051
上官
(
じやうくわん
)
の
命令
(
めいれい
)
に
服従
(
ふくじゆう
)
せぬか』
052
捨公
『
上燗
(
じやうかん
)
の
命
(
めい
)
に
服従
(
ふくじゆう
)
して
昨夜
(
ゆふべ
)
も
余程
(
よほど
)
酔払
(
よつぱら
)
つたぢやないか。
053
お
前
(
まへ
)
は、
054
あれほどの
上燗
(
じやうかん
)
を「こりや、
055
一寸
(
ちよつと
)
熱燗
(
あつかん
)
だ」なんて、
056
人
(
ひと
)
に
燗
(
かん
)
させやがつて、
057
あつかましい
叱言
(
こごと
)
ほざ
きやがつて、
058
二日酔
(
ふつかゑひ
)
で
肝腎
(
かんじん
)
の
使命
(
しめい
)
を
忘
(
わす
)
れやがつて
頭
(
あたま
)
も
上
(
あが
)
らぬ
癖
(
くせ
)
に、
059
何俺
(
なにおれ
)
の
職権
(
しよくけん
)
を
干渉
(
かんせう
)
するのだ。
060
俺
(
おれ
)
は
俺
(
おれ
)
の
特権
(
とくけん
)
を
以
(
もつ
)
て
開門
(
かいもん
)
するのだ』
061
とふりきつて
行
(
ゆ
)
かうとするのを、
062
権公
(
ごんこう
)
はグツと
引
(
ひ
)
き
戻
(
もど
)
し、
063
権公
『
待
(
ま
)
て
待
(
ま
)
て、
064
俺
(
おれ
)
が
一
(
ひと
)
つ
調
(
しら
)
べてやらう』
065
捨公
『こりや
着物
(
きもの
)
が
破
(
やぶ
)
れるぢやないか。
066
お
前
(
まへ
)
等
(
ら
)
の
様
(
やう
)
な
荒
(
あら
)
くれ
男
(
をとこ
)
に
袖
(
そで
)
を
引
(
ひ
)
つ
張
(
ぱ
)
られても、
067
根
(
ね
)
つから
葉
(
は
)
つから
勘定
(
かんぢやう
)
が
合
(
あ
)
ひませぬわい。
068
同
(
おな
)
じ
引
(
ひ
)
かれるならあのシヤンに
引
(
ひ
)
つ
張
(
ぱ
)
つて
破
(
やぶ
)
つて
貰
(
もら
)
ふわい……ヘヽヽヽやア、
069
ぼろいぼろい
ぼろけつ
ぢや。
070
これだから
門番
(
もんばん
)
は
止
(
や
)
められぬと
云
(
い
)
ふのだよ。
071
あのスタイルでは
随分
(
ずゐぶん
)
美人
(
びじん
)
だらう。
072
あの
風体
(
ふうてい
)
の
高尚
(
かうしやう
)
、
073
言辞
(
げんじ
)
の
尽
(
つく
)
すべき
限
(
かぎ
)
りに
非
(
あら
)
ずと
云
(
い
)
ふ
代物
(
しろもの
)
だ。
074
エヘヽヽヽ』
075
権公
(
ごんこう
)
は
委細
(
ゐさい
)
構
(
かま
)
はず
門戸
(
もんこ
)
の
節孔
(
ふしあな
)
から
外
(
そと
)
を
眺
(
なが
)
め、
076
権公
『ヤア
此奴
(
こいつ
)
ア
大変
(
たいへん
)
だ。
077
ウツカリ
開
(
あ
)
ける
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ない。
078
どうも
合点
(
がつてん
)
の
行
(
ゆ
)
かぬ
風体
(
ふうてい
)
だ。
079
そしてどこかに
見覚
(
みおぼ
)
えのある
風体
(
ふうてい
)
だ。
080
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
、
081
御
(
ご
)
家老
(
からう
)
様
(
さま
)
に
伺
(
うかが
)
つて
来
(
く
)
る
迄
(
まで
)
此処
(
ここ
)
に
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
てくれ。
082
それまで
決
(
けつ
)
して
何程
(
なにほど
)
外
(
そと
)
から
請求
(
せいきう
)
しても
開
(
あ
)
けちやならないぞ』
083
と
言
(
い
)
ひすてて
奥
(
おく
)
をさして
権公
(
ごんこう
)
は
駆
(
か
)
け
出
(
だ
)
した。
084
門
(
もん
)
の
外
(
そと
)
より、
085
石生能姫
『もしもし
門番
(
もんばん
)
さまエ、
086
ジレツタイ、
087
早
(
はや
)
く
開
(
あ
)
けて
下
(
くだ
)
さい。
088
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
様
(
さま
)
に
折入
(
をりい
)
つて
急
(
いそ
)
ぎの
用
(
よう
)
があるのだ。
089
サア
早
(
はや
)
う
早
(
はや
)
う、
090
人
(
ひと
)
に
見
(
み
)
られちや
大変
(
たいへん
)
だから』
091
捨公
(
すてこう
)
『
何
(
なに
)
、
092
人
(
ひと
)
に
見
(
み
)
られちや
大変
(
たいへん
)
だと、
093
愈
(
いよいよ
)
以
(
もつ
)
て
怪
(
あや
)
しいわい。
094
然
(
しか
)
し
無理
(
むり
)
はない。
095
家
(
うち
)
の
御
(
ご
)
主人
(
しゆじん
)
も
奥様
(
おくさま
)
の
行衛
(
ゆくゑ
)
は
知
(
し
)
れず、
096
たつた
一人
(
ひとり
)
のお
嬢様
(
ぢやうさま
)
も
永
(
なが
)
らく
何処
(
どこ
)
へお
出
(
い
)
で
遊
(
あそ
)
ばしたか
行衛
(
ゆくゑ
)
は
知
(
し
)
れず、
097
こんな
立派
(
りつぱ
)
なお
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
になつても
唯
(
ただ
)
一人
(
ひとり
)
空閨
(
くうけい
)
を
守
(
まも
)
つてゐらつしやるのだから、
098
感心
(
かんしん
)
なお
方
(
かた
)
だ……と
思
(
おも
)
うてゐたが、
099
矢張
(
やつぱり
)
何処
(
どこ
)
かへあんなものが
囲
(
かこ
)
うてあつたものと
見
(
み
)
えるわい。
100
油断
(
ゆだん
)
のならぬ
御
(
ご
)
主人
(
しゆじん
)
だ。
101
磁石
(
じしやく
)
が
鉄
(
てつ
)
をひきつける
様
(
やう
)
に
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
男
(
をとこ
)
と
女
(
をんな
)
とは
遠
(
とほ
)
いやうで
近
(
ちか
)
いものだな。
102
エヘヽヽヽ、
103
もしお
女中
(
ぢよちう
)
さま、
104
あなたの
腕前
(
うでまへ
)
は
大
(
たい
)
したものですな。
105
私
(
わたし
)
も
木石漢
(
ぼくせきかん
)
ではありませぬよ。
106
チツとは
恋
(
こひ
)
を
語
(
かた
)
る
資格
(
しかく
)
のある
男
(
をとこ
)
、
107
そんな
粋
(
すゐ
)
の
利
(
き
)
かぬ、
108
私
(
わたし
)
ぢや
厶
(
ござ
)
いませぬわい。
109
当家
(
たうけ
)
の
家老
(
からう
)
の
熊彦
(
くまひこ
)
といふ
不粋
(
ぶすゐ
)
の
男
(
をとこ
)
や
権助
(
ごんすけ
)
の
門番
(
もんばん
)
奴
(
め
)
が
無茶
(
むちや
)
苦茶
(
くちや
)
に
糊付物
(
のりつけもの
)
の
様
(
やう
)
に
固
(
かた
)
ばりやがつて「
此
(
この
)
門
(
もん
)
は
許
(
ゆる
)
しがなけりや
勝手
(
かつて
)
にあけちやならないぞ」なんて
吐
(
ぬか
)
しやがるのですよ。
110
御
(
ご
)
主人
(
しゆじん
)
だつてお
前
(
まへ
)
さまのやうな
シヤントコセ
の
シヤン
がおいでになつても、
111
心
(
こころ
)
の
中
(
うち
)
ではお
喜
(
よろこ
)
びでも
表向
(
おもてむき
)
は
故意
(
わざ
)
と
七
(
しち
)
むつかしい
顔
(
かほ
)
して「
当家
(
たうけ
)
の
主人
(
しゆじん
)
は
一人暮
(
ひとりぐら
)
しだから
女
(
をんな
)
に
用
(
よう
)
はない、
112
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
追
(
お
)
ひ
払
(
はら
)
へよ」なんて
口
(
くち
)
と
心
(
こころ
)
と
正反対
(
せいはんたい
)
の
事
(
こと
)
を
仰有
(
おつしや
)
る
事
(
こと
)
はキマつた
生粋
(
きつすゐ
)
だ。
113
そこを
御
(
ご
)
主人
(
しゆじん
)
様
(
さま
)
とお
前
(
まへ
)
のために
粋
(
すゐ
)
を
利
(
き
)
かしてやるのが、
114
家
(
いへ
)
の
隅
(
すみ
)
にも
捨
(
す
)
てておけぬ
此
(
この
)
捨
(
すて
)
さまだ。
115
捨
(
す
)
てる
神
(
かみ
)
さまもあれば
拾
(
ひろ
)
ふ
神
(
かみ
)
もあると
云
(
い
)
ふ
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に、
116
拾
(
ひろ
)
ふばかりで
一寸
(
ちよつと
)
も
捨
(
す
)
てぬと
云
(
い
)
ふ
捨
(
すて
)
さまだ。
117
すつて
の
事
(
こと
)
で
此
(
この
)
捨
(
すて
)
さまが
居
(
を
)
らなかつたならば
権公
(
ごんこう
)
の
奴
(
やつ
)
が、
118
ゴーンと
肱鉄砲
(
ひぢでつぱう
)
をかまし、
119
膠
(
にべ
)
も
杓子
(
しやくし
)
もなく
榎
(
えのき
)
で
鼻
(
はな
)
を
擦
(
こす
)
つた
様
(
やう
)
な
惨
(
むご
)
い
挨拶
(
あいさつ
)
でおつ
放
(
ぽ
)
り
出
(
だ
)
しでもされようものなら、
120
それこそステテコテンのテンツクテンだ。
121
さうなれば
折角
(
せつかく
)
お
前
(
まへ
)
さまも「
山野
(
やまの
)
を
越
(
こ
)
えて
遥々
(
はるばる
)
と
訪
(
たづ
)
ねて
来
(
き
)
て
捨
(
す
)
てられようとは
知
(
し
)
らなんだ。
122
エーもう
捨鉢
(
すてばち
)
だ、
123
捨
(
す
)
てて
甲斐
(
かひ
)
ある
吾
(
わが
)
命
(
いのち
)
だ」と
自暴自棄
(
やけ
)
を
起
(
おこ
)
し、
124
スツテに
自害
(
じがい
)
と
見
(
み
)
えけるが「アイヤ
暫
(
しばら
)
く
待
(
ま
)
たれよ。
125
死
(
し
)
は
一旦
(
いつたん
)
にして
易
(
やす
)
し、
126
死
(
し
)
にたくば
何時
(
いつ
)
でも
死
(
し
)
ねる、
127
死
(
し
)
んで
花実
(
はなみ
)
が
咲
(
さ
)
くものか」と
鼻
(
はな
)
の
下
(
した
)
の
長
(
なが
)
い
男
(
をとこ
)
が
飛
(
と
)
んで
出
(
で
)
る
幕
(
まく
)
だが、
128
此
(
この
)
捨
(
すて
)
さまは
捨身
(
しやしん
)
になつて、
129
職
(
しよく
)
を
賭
(
と
)
してもお
前
(
まへ
)
さまを
通過
(
つうくわ
)
さしてあげませう。
130
あまり
捨
(
す
)
てた
男
(
をとこ
)
ではありませぬぞや』
131
と
捨台詞
(
すてぜりふ
)
を
振
(
ふ
)
りまきながらガラガラと
門
(
もん
)
を
開
(
ひら
)
いた。
132
石生能
(
いその
)
姫
(
ひめ
)
は
会釈
(
ゑしやく
)
もせず、
133
ツツと
門
(
もん
)
を
跨
(
また
)
げるや
否
(
いな
)
や、
134
捨公
(
すてこう
)
は
小袖
(
こそで
)
をグツと
引掴
(
ひつつか
)
み、
135
捨公
『まゝゝゝ
待
(
ま
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
136
お
前
(
まへ
)
さま、
137
何処
(
どこ
)
の
女郎衆
(
ぢよろしう
)
か
知
(
し
)
らぬが、
138
門番
(
もんばん
)
にこれだけ
厄介
(
やくかい
)
をかけて
心配
(
しんぱい
)
をさせながら
目礼
(
もくれい
)
もせず、
139
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
だとも
云
(
い
)
はず
這入
(
はい
)
らうとはあまり
無躾
(
ぶしつけ
)
ぢや
厶
(
ござ
)
いませぬか。
140
卑
(
いや
)
しい
門番
(
もんばん
)
だと
思
(
おも
)
つて
軽蔑
(
けいべつ
)
なさるのか
知
(
し
)
らぬが、
141
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
目
(
め
)
から
見
(
み
)
れば
人間
(
にんげん
)
として
貴賤
(
きせん
)
の
別
(
べつ
)
は
御座
(
ござ
)
りませぬぞや』
142
石生能姫
『ヤアこれは
門番
(
もんばん
)
さま、
143
済
(
す
)
まなかつた。
144
まア
許
(
ゆる
)
して
頂戴
(
ちやうだい
)
、
145
さア
早
(
はや
)
く
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
のお
側
(
そば
)
へ
案内
(
あんない
)
しや』
146
捨公
『
案内
(
あんない
)
を
申上
(
まをしあ
)
げたいは
山々
(
やまやま
)
なれど、
147
私
(
わたし
)
には
此
(
この
)
門
(
もん
)
を
守
(
まも
)
るだけの
役
(
やく
)
で、
148
大奥
(
おほおく
)
まで
御
(
ご
)
案内
(
あんない
)
する
権限
(
けんげん
)
は
厶
(
ござ
)
りませぬ』
149
石生能姫
『
何
(
なん
)
とまア、
150
人種
(
じんしゆ
)
平等
(
べうどう
)
の
唱
(
とな
)
へられる
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
へ
頑迷
(
ぐわんめい
)
固陋
(
ころう
)
な
御
(
ご
)
家風
(
かふう
)
だこと……』
151
捨公
『これこれ
女中
(
ぢよちう
)
さま、
152
何
(
なに
)
仰有
(
おつしや
)
います。
153
御
(
ご
)
無礼千万
(
ぶれいせんばん
)
にも
門口
(
もんぐち
)
を
這入
(
はい
)
るや
否
(
いな
)
や
御
(
ご
)
家風
(
かふう
)
までゴテゴテ
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
が
厶
(
ござ
)
いますか。
154
サア サア トツトと
自由
(
じいう
)
に
奥
(
おく
)
へ
行
(
ゆ
)
かつしやい。
155
熊彦
(
くまひこ
)
の
家老
(
からう
)
が
屹度
(
きつと
)
居
(
を
)
りませうから、
156
それと
交渉
(
かうせふ
)
をした
上
(
うへ
)
、
157
御
(
ご
)
主人
(
しゆじん
)
様
(
さま
)
にトツクリと
積
(
つも
)
る
海山
(
うみやま
)
の
話
(
はなし
)
を
遊
(
あそ
)
ばし、
158
久
(
ひさ
)
し
振
(
ぶ
)
りに
泣
(
な
)
き
満足
(
たんのう
)
をなさいませや』
159
石生能姫
『これ
門番
(
もんばん
)
の
捨
(
すて
)
とやら、
160
お
前
(
まへ
)
は
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふ
嫌
(
いや
)
らしい
事
(
こと
)
をいふのだい。
161
チと
心得
(
こころえ
)
なされや』
162
捨公
『チヨツコと
仰有
(
おつしや
)
いますわい。
163
ヘン』
164
と
鼻
(
はな
)
の
先
(
さき
)
で
笑
(
わら
)
つてゐる。
165
そこへ
羽織
(
はおり
)
袴
(
はかま
)
厳
(
いか
)
めしくバサバサと
袴
(
はかま
)
の
音
(
おと
)
をさせながら
権助
(
ごんすけ
)
を
伴
(
ともな
)
ひやつて
来
(
き
)
たのは
熊彦
(
くまひこ
)
であつた。
166
熊彦
(
くまひこ
)
は
一目
(
ひとめ
)
見
(
み
)
るより
腰
(
こし
)
をかがめ
叮嚀
(
ていねい
)
に
会釈
(
ゑしやく
)
し、
167
熊彦
『あゝ
貴女
(
あなた
)
はイ……』
168
と
云
(
い
)
ひかけて、
169
熊彦
『
何処
(
どこ
)
の
御
(
お
)
女中
(
ぢよちう
)
か
知
(
し
)
りませぬが、
170
何卒
(
どうぞ
)
奥
(
おく
)
へ
御
(
お
)
通
(
とほ
)
り
下
(
くだ
)
さいませ。
171
さア
私
(
わたし
)
が
御
(
ご
)
案内
(
あんない
)
を
致
(
いた
)
しませう。
172
オイ
権助
(
ごんすけ
)
、
173
捨造
(
すてざう
)
、
174
門番
(
もんばん
)
を
確
(
しつ
)
かり
致
(
いた
)
せよ。
175
さア
御
(
ご
)
案内
(
あんない
)
致
(
いた
)
しませう。
176
失礼
(
しつれい
)
ながらお
先
(
さき
)
へ
参
(
まゐ
)
ります。
177
私
(
わたし
)
の
後
(
あと
)
について
御
(
お
)
出
(
い
)
で
下
(
くだ
)
さい。
178
主人
(
しゆじん
)
もさぞお
喜
(
よろこ
)
びで
厶
(
ござ
)
りませう』
179
といそいそとして
石生能
(
いその
)
姫
(
ひめ
)
を
伴
(
ともな
)
ひ、
180
館
(
やかた
)
の
奥
(
おく
)
深
(
ふか
)
く
姿
(
すがた
)
をかくした。
181
捨公
(
すてこう
)
『オイ
権
(
ごん
)
、
182
権
(
ごん
)
さま、
183
一体
(
いつたい
)
ありや
何
(
なん
)
だい。
184
家
(
うち
)
のレコぢやあるまいかな』
185
と
親指
(
おやゆび
)
と
子指
(
こゆび
)
とを
出
(
だ
)
して
見
(
み
)
せる。
186
権公
(
ごんこう
)
『ウン』
187
捨公
(
すてこう
)
『(
熊彦
(
くまひこ
)
の
声色
(
こわいろ
)
)これはこれはハイ、
188
貴女
(
あなた
)
はイ……いやお
女中
(
ぢよちう
)
さま、
189
さぞさぞ
御
(
ご
)
主人
(
しゆじん
)
様
(
さま
)
がお
喜
(
よろこ
)
びで
厶
(
ござ
)
りませう。
190
サア
私
(
わたし
)
が
御
(
ご
)
案内
(
あんない
)
致
(
いた
)
しますから
失礼
(
しつれい
)
ながらお
先
(
さき
)
へ……なんて
吐
(
ぬか
)
しやがつて、
191
お
竈
(
かまど
)
の
不動
(
ふどう
)
を
焼木杭
(
やけぼくくひ
)
でたたかれた
様
(
やう
)
な
顔
(
かほ
)
をしてゐる
熊彦
(
くまひこ
)
さまの
顔
(
かほ
)
の
紐
(
ひも
)
がサツパリ
解
(
ほど
)
けて
了
(
しま
)
ひ、
192
奥
(
おく
)
へ
這入
(
はい
)
りやがつた
時
(
とき
)
の
態
(
ざま
)
は
見
(
み
)
られたものぢやないな。
193
男
(
をとこ
)
ばつかりの
此
(
この
)
館
(
やかた
)
へ
偶
(
たま
)
に
女
(
をんな
)
が
出
(
で
)
て
来
(
く
)
ると
騒
(
さわ
)
がしいものだ。
194
万緑
(
ばんりよく
)
叢中
(
そうちう
)
紅一点
(
こういつてん
)
だから、
195
此
(
この
)
お
館
(
やかた
)
もチツとは
春
(
はる
)
めき
渡
(
わた
)
るだろう。
196
今迄
(
いままで
)
はあまり
陰気
(
いんき
)
なものだから、
197
此
(
この
)
お
屋敷
(
やしき
)
の
梅
(
うめ
)
まで
何
(
なん
)
となく
陰気
(
いんき
)
に
咲
(
さ
)
き、
198
鶯
(
うぐひす
)
までがド
拍子
(
びやうし
)
のぬけた
鳴
(
な
)
き
声
(
ごゑ
)
をしやがると
思
(
おも
)
つてゐたが、
199
これからは
天国
(
てんごく
)
浄土
(
じやうど
)
が
出現
(
しゆつげん
)
するだらうよ。
200
アーア
俺
(
おれ
)
も
俄
(
にはか
)
に
女房
(
にようばう
)
が
欲
(
ほ
)
しくなつて
来
(
き
)
たわい』
201
権公
『ウフヽヽヽ
馬鹿
(
ばか
)
だなア』
202
捨公
『
馬鹿
(
ばか
)
は
貴様
(
きさま
)
の
事
(
こと
)
だよ。
203
あんなナイスを
見
(
み
)
てニツコリともせぬ
奴
(
やつ
)
が
何処
(
どこ
)
にあるかい。
204
無情
(
むじやう
)
無血漢
(
むけつかん
)
奴
(
め
)
、
205
恋
(
こひ
)
の
味
(
あぢ
)
を
知
(
し
)
らぬ
人情
(
にんじやう
)
を
解
(
かい
)
せぬ
奴
(
やつ
)
だ。
206
あゝ
困
(
こま
)
つた
奴
(
やつ
)
と
同
(
おな
)
じ
門番
(
もんばん
)
をさせられたものだな。
207
朝
(
あさ
)
から
晩
(
ばん
)
まで
酒
(
さけ
)
ばつかり
喰
(
くら
)
つて、
208
お
前
(
まへ
)
は
門
(
もん
)
を
開
(
ひら
)
くことと
酒
(
さけ
)
を
喰
(
くら
)
ふことより
芸
(
げい
)
がないなア』
209
とまだ
昨夜
(
ゆふべ
)
の
酒
(
さけ
)
の
残
(
のこ
)
りが
祟
(
たた
)
つて
無性
(
むしやう
)
矢鱈
(
やたら
)
に
吐
(
ほざ
)
いてゐる。
210
権助
(
ごんすけ
)
は
物
(
もの
)
も
言
(
い
)
はず
拳骨
(
げんこつ
)
を
固
(
かた
)
めて
捨
(
すて
)
の
頭
(
あたま
)
を
三
(
み
)
つ
四
(
よ
)
つカツンカツンと
殴
(
なぐ
)
りつけ、
211
悠々
(
いういう
)
として
門
(
もん
)
の
傍
(
かたへ
)
の
番所
(
ばんしよ
)
に
帰
(
かへ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
212
館
(
やかた
)
の
大奥
(
おほおく
)
には
宣伝歌
(
せんでんか
)
が
聞
(
きこ
)
えて
来
(
き
)
た。
213
(鬼熊別)
『バラモン
教
(
けう
)
の
御教
(
みをしへ
)
を
214
開
(
ひら
)
き
給
(
たま
)
ひし
常世国
(
とこよくに
)
215
大国別
(
おほくにわけ
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
は
216
普
(
あまね
)
く
世人
(
よびと
)
を
救
(
すく
)
はむと
217
心
(
こころ
)
を
尽
(
つく
)
し
身
(
み
)
を
竭
(
つく
)
し
218
遠
(
とほ
)
き
海原
(
うなばら
)
乗
(
の
)
り
越
(
こ
)
えて
219
筑紫
(
つくし
)
の
島
(
しま
)
やイホの
国
(
くに
)
220
埃及都
(
エヂプトみやこ
)
に
現
(
あ
)
れまして
221
教
(
をしへ
)
を
開
(
ひら
)
き
給
(
たま
)
ひしが
222
三五教
(
あななひけう
)
の
言霊
(
ことたま
)
に
223
打
(
う
)
ちはじかれて
顕恩
(
けんおん
)
の
224
郷
(
さと
)
に
数多
(
あまた
)
の
郎党
(
らうたう
)
を
225
率
(
ひき
)
ゐて
世
(
よ
)
をば
忍
(
しの
)
びまし
226
教
(
をしへ
)
の
基礎
(
きそ
)
を
開
(
ひら
)
く
折
(
をり
)
227
フトした
事
(
こと
)
より
幽界
(
かくりよ
)
の
228
神
(
かみ
)
とはならせ
給
(
たま
)
ひけり
229
教司
(
をしへつかさ
)
を
初
(
はじ
)
めとし
230
信徒
(
まめひと
)
等
(
たち
)
も
悲
(
かな
)
しみて
231
上
(
うへ
)
を
下
(
した
)
へと
騒
(
さわ
)
ぎしが
232
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
の
神司
(
かむづかさ
)
233
漸
(
やうや
)
う
之
(
これ
)
を
鎮
(
しづ
)
めまし
234
自
(
みづか
)
ら
代
(
かは
)
つて
後
(
あと
)
をつぎ
235
大棟梁
(
だいとうりやう
)
と
自称
(
じしよう
)
して
236
大国彦
(
おほくにひこ
)
の
神霊
(
しんれい
)
に
237
仕
(
つか
)
へ
居
(
ゐ
)
たりし
折
(
をり
)
もあれ
238
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのをの
)
大神
(
おほかみ
)
の
239
生
(
う
)
ませる
八人
(
やたり
)
乙女
(
をとめ
)
等
(
たち
)
240
太玉神
(
ふとだまがみ
)
の
司
(
つかさ
)
等
(
ら
)
が
241
又
(
また
)
もや
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
りまし
242
生言霊
(
いくことたま
)
を
発射
(
はつしや
)
して
243
きため
給
(
たま
)
へば
大棟梁
(
だいとうりやう
)
244
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
を
初
(
はじ
)
めとし
245
一同
(
いちどう
)
此処
(
ここ
)
を
立
(
た
)
ち
逃
(
のが
)
れ
246
天ケ下
(
あめがした
)
をば
遠近
(
をちこち
)
と
247
彷徨
(
さまよ
)
ひ
巡
(
めぐ
)
りし
悲
(
かな
)
しさよ
248
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
と
吾々
(
われわれ
)
は
249
心
(
こころ
)
を
協
(
あは
)
せ
力
(
ちから
)
をば
250
一
(
ひと
)
つになしてバラモンの
251
再起
(
さいき
)
を
図
(
はか
)
りし
甲斐
(
かひ
)
ありて
252
空
(
そら
)
照
(
て
)
り
渡
(
わた
)
る
月
(
つき
)
の
国
(
くに
)
253
花
(
はな
)
咲
(
さ
)
くハルナの
都
(
みやこ
)
にて
254
再
(
ふたた
)
び
開
(
ひら
)
くバラモン
教
(
けう
)
255
七千
(
しちせん
)
余国
(
よこく
)
の
大半
(
たいはん
)
は
256
残
(
のこ
)
らず
教
(
をしへ
)
に
帰順
(
きじゆん
)
して
257
稍
(
やや
)
安心
(
あんしん
)
と
思
(
おも
)
ふ
折
(
をり
)
258
油断
(
ゆだん
)
を
見
(
み
)
すまし
曲津
(
まがつ
)
神
(
かみ
)
259
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
体
(
たい
)
に
入
(
い
)
り
260
神
(
かみ
)
の
司
(
つかさ
)
にあるまじき
261
悪逆
(
あくぎやく
)
無道
(
ぶだう
)
の
振舞
(
ふるまひ
)
を
262
日
(
ひ
)
に
夜
(
よ
)
に
勧
(
すす
)
め
給
(
たま
)
ひつつ
263
道
(
みち
)
を
汚
(
けが
)
すぞうたてけれ
264
側
(
そば
)
に
仕
(
つか
)
ふる
悪神
(
わるがみ
)
の
265
輩
(
やから
)
の
者
(
もの
)
に
遮
(
さへぎ
)
られ
266
二人
(
ふたり
)
の
仲
(
なか
)
に
溝渠
(
こうきよ
)
をば
267
穿
(
うが
)
たれたるぞ
嘆
(
うた
)
てけれ
268
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
269
バラモン
教
(
けう
)
の
厳霊
(
いづみたま
)
270
幸
(
さち
)
はひまして
逸早
(
いちはや
)
く
271
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
身魂
(
みたま
)
をば
272
払
(
はら
)
ひ
清
(
きよ
)
めて
真心
(
まごころ
)
に
273
かへらせ
給
(
たま
)
へ
惟神
(
かむながら
)
274
神
(
かみ
)
の
御前
(
みまへ
)
に
祈
(
ね
)
ぎまつる』
275
と
一絃琴
(
いちげんきん
)
を
弾
(
ひ
)
きながら
声
(
こゑ
)
も
静
(
しづ
)
かに
歌
(
うた
)
ひゐるのは、
276
此
(
この
)
家
(
や
)
の
主人
(
しゆじん
)
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
であつた。
277
かかる
処
(
ところ
)
へ
熊彦
(
くまひこ
)
の
案内
(
あんない
)
につれて
恥
(
はづ
)
かしげに
静々
(
しづしづ
)
と
入
(
い
)
り
来
(
きた
)
る
女
(
をんな
)
は
石生能
(
いその
)
姫
(
ひめ
)
である
事
(
こと
)
は
云
(
い
)
ふまでもない。
278
熊彦
(
くまひこ
)
は
襖
(
ふすま
)
を
押開
(
おしあ
)
け
両手
(
りやうて
)
を
支
(
つか
)
へ、
279
熊彦
『
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
、
280
遥々
(
はるばる
)
と
石生能
(
いその
)
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
が
只
(
ただ
)
一人
(
ひとり
)
御
(
ご
)
訪問
(
はうもん
)
になりました。
281
何事
(
なにごと
)
か
起
(
おこ
)
つたのでは
御座
(
ござ
)
いますまいか。
282
何卒
(
なにとぞ
)
詳
(
くは
)
しくお
話
(
はなし
)
をお
聞
(
き
)
き
下
(
くだ
)
さいませ』
283
と
云
(
い
)
ひながら
吾
(
わが
)
居間
(
ゐま
)
に
下
(
さが
)
る。
284
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
は
一目
(
ひとめ
)
見
(
み
)
るより
驚
(
おどろ
)
いて、
285
鬼熊別
『よう、
286
貴方
(
あなた
)
は
石生能
(
いその
)
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
、
287
どうして
又
(
また
)
お
一人
(
ひとり
)
、
288
拙宅
(
せつたく
)
をお
訪
(
たづ
)
ね
下
(
くだ
)
さいましたか。
289
何
(
なに
)
は
兎
(
と
)
もあれ、
290
そこは
端近
(
はしぢか
)
、
291
先
(
ま
)
づ
先
(
ま
)
づこれへお
直
(
なほ
)
りを
願
(
ねが
)
ひます』
292
石生能姫
『ハイ、
293
突然
(
とつぜん
)
お
邪魔
(
じやま
)
を
致
(
いた
)
しまして
申訳
(
まをしわけ
)
が
御座
(
ござ
)
りませぬ。
294
左様
(
さやう
)
なれば
御免
(
ごめん
)
蒙
(
かうむ
)
りまして
通
(
とほ
)
らして
頂
(
いただ
)
きませう』
295
(
大正一一・一一・一
旧九・一三
北村隆光
録)
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