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霊界物語
舎身活躍(第37~48巻)
第40巻(卯の巻)
序文に代へて
緒言
総説
第1篇 恋雲魔風
第1章 大雲山
第2章 出陣
第3章 落橋
第4章 珍客
第5章 忍ぶ恋
第2篇 寒梅照国
第6章 仁愛の真相
第7章 文珠
第8章 使者
第9章 雁使
第3篇 霊魂の遊行
第10章 衝突
第11章 三途館
第12章 心の反映
第13章 試の果実
第14章 空川
第4篇 関風沼月
第15章 氷嚢
第16章 春駒
第17章 天幽窟
第18章 沼の月
第19章 月会
第20章 入那の森
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<<< 雁使
(B)
(N)
三途館 >>>
第一〇章
衝突
(
しやうとつ
)
〔一〇九四〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第40巻 舎身活躍 卯の巻
篇:
第3篇 霊魂の遊行
よみ(新仮名遣い):
れいこんのゆうこう
章:
第10章 衝突
よみ(新仮名遣い):
しょうとつ
通し章番号:
1094
口述日:
1922(大正11)年11月02日(旧09月14日)
口述場所:
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年5月25日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
黄金姫と清照姫に同行していたレーブは、ハルナの都まで母娘の共をすることを懇願したが、黄金姫は宣伝使として共を連れて行くことは許されない、とレーブを諭した。
そうするうちに、バラモン教のランチ将軍の一軍が近づいてきた。彼らが斎苑館を攻撃するために進んでくると悟ったレーブは、自分が進軍を止めてみせると勇み立った。
黄金姫は、天則にしたがってあくまで言向け和すようにとレーブを諭した。軍勢の先頭に立ちはだかったレーブは、大音声で神素盞嗚大神の館への進軍を止めるようにと呼ばわった。
バラモン軍の小頭・カルは、レーブがバラモン教でありながら三五教の味方をしていることをとがめた。レーブは細く険しい山道にたちはだかり、岩つぶてを傍らに積み重ね、バラモン軍に狙いを定めている。
それでも進軍してくるバラモン軍に対し、レーブは岩つぶてを投げつけ、カルの首筋をつかんで谷底へ放り投げた。レーブは先頭の十人ばかりを相手に奮闘し、皆谷底へ放り投げたが、ついにバラモン軍によって自分も谷底に投げられてしまった。
黄金姫と清照姫はレーブが谷底に投げられてしまったのを見て、もはや天則違反もやむなしと打って出て、軍勢を相手に暴れまわった。矢を射かけるバラモン軍によって二人は谷底に転落した。武術の心得ある二人は柔らかい砂の上に無事に着地し、追ってくるバラモン軍を待ち受けていた。
バラモン軍は谷底へ降りてきて二人を取り囲み、矢を射掛けだした。その勢いに二人は最期を覚悟したが、どこからともなく狼の群れが現れて、ランチ将軍の軍勢に襲い掛かった。
ランチ将軍の軍勢は敗走し、斎苑館への近道である玉山峠を通ることをあきらめたようであった。黄金姫、清照姫の母娘は狼に送られて玉山峠を降り、無人の野を行くごとく進んで行った。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-11-30 15:54:23
OBC :
rm4010
愛善世界社版:
121頁
八幡書店版:
第7輯 462頁
修補版:
校定版:
127頁
普及版:
56頁
初版:
ページ備考:
001
レーブ『
初秋
(
しよしう
)
の
風
(
かぜ
)
はザワザワと
002
峰
(
みね
)
の
尾上
(
をのへ
)
を
吹
(
ふ
)
きまくる
003
玉山峠
(
たまやまたうげ
)
の
坂道
(
さかみち
)
を
004
黄金姫
(
わうごんひめ
)
を
初
(
はじ
)
めとし
005
清照姫
(
きよてるひめ
)
の
母娘
(
おやこ
)
連
(
づ
)
れ
006
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのをの
)
大神
(
おほかみ
)
の
007
御言
(
みこと
)
畏
(
かしこ
)
み
月
(
つき
)
の
国
(
くに
)
008
ハルナの
都
(
みやこ
)
に
蟠
(
わだか
)
まる
009
八岐
(
やまた
)
の
大蛇
(
をろち
)
に
憑
(
つ
)
かれたる
010
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
枉神
(
まがかみ
)
を
011
言向和
(
ことむけやは
)
し
天地
(
あめつち
)
の
012
尊
(
たふと
)
き
神
(
かみ
)
の
御光
(
みひかり
)
に
013
救
(
すく
)
はむものと
両人
(
りやうにん
)
は
014
険
(
けは
)
しき
山川
(
やまかは
)
打渡
(
うちわた
)
り
015
雨
(
あめ
)
にはそぼち
荒風
(
あらかぜ
)
に
016
吹
(
ふ
)
かれながらもやうやうに
017
此処迄
(
ここまで
)
進
(
すす
)
み
来
(
きた
)
りけり
018
険
(
けは
)
しき
坂
(
さか
)
の
傍
(
かたはら
)
に
019
スツクと
立
(
た
)
てる
千引岩
(
ちびきいは
)
020
これ
幸
(
さいは
)
ひと
立寄
(
たちよ
)
つて
021
母娘
(
おやこ
)
二人
(
ふたり
)
は
腰
(
こし
)
をかけ
022
息
(
いき
)
を
休
(
やす
)
むる
折
(
をり
)
もあれ
023
矢
(
や
)
を
射
(
い
)
る
如
(
ごと
)
く
峻坂
(
しゆんぱん
)
を
024
地響
(
ぢひび
)
きさせつトントンと
025
下
(
くだ
)
り
来
(
きた
)
れる
男
(
をとこ
)
あり
026
よくよくすかし
眺
(
なが
)
むれば
027
玉山峠
(
たまやまたうげ
)
の
登
(
のぼ
)
り
口
(
ぐち
)
028
思
(
おも
)
はず
出会
(
であ
)
うた
神司
(
かむづかさ
)
029
レーブの
姿
(
すがた
)
と
見
(
み
)
るよりも
030
母娘
(
おやこ
)
は
声
(
こゑ
)
をはり
上
(
あ
)
げて
031
手招
(
てまね
)
きすれば
立止
(
たちど
)
まり
032
行
(
ゆ
)
き
過
(
すご
)
したる
坂道
(
さかみち
)
を
033
再
(
ふたた
)
び
登
(
のぼ
)
りて
両人
(
りやうにん
)
が
034
側
(
そば
)
に
近寄
(
ちかよ
)
りシトシトと
035
流
(
なが
)
るる
汗
(
あせ
)
を
押拭
(
おしぬぐ
)
ひ
036
貴方
(
あなた
)
は
母娘
(
おやこ
)
の
神司
(
かむづかさ
)
037
私
(
わたし
)
はレーブで
厶
(
ござ
)
ります
038
尊
(
たふと
)
き
神
(
かみ
)
の
引合
(
ひきあ
)
はせ
039
思
(
おも
)
はぬ
処
(
とこ
)
で
会
(
あ
)
ひました
040
貴方
(
あなた
)
に
別
(
わか
)
れた
其
(
その
)
時
(
とき
)
は
041
酷
(
むご
)
いお
方
(
かた
)
と
心
(
こころ
)
にて
042
きつく
怨
(
うら
)
んで
居
(
を
)
りました
043
一人
(
ひとり
)
の
男
(
をとこ
)
は
森林
(
しんりん
)
へ
044
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
し
行衛
(
ゆくゑ
)
をば
045
尋
(
たづ
)
ぬる
折
(
をり
)
しも
河
(
かは
)
渡
(
わた
)
り
046
向
(
むか
)
ふへ
越
(
こ
)
えた
釘彦
(
くぎひこ
)
の
047
手下
(
てした
)
の
武士
(
つはもの
)
二騎
(
にき
)
三騎
(
さんき
)
048
再
(
ふたた
)
び
河
(
かは
)
を
打渡
(
うちわた
)
り
049
レーブの
前
(
まへ
)
に
現
(
あら
)
はれて
050
今
(
いま
)
居
(
ゐ
)
た
母娘
(
おやこ
)
の
巡礼
(
じゆんれい
)
は
051
蜈蚣
(
むかで
)
の
姫
(
ひめ
)
に
小糸姫
(
こいとひめ
)
052
テツキリそれに
違
(
ちが
)
ひない
053
後
(
あと
)
追
(
お
)
つかけて
引捕
(
ひつとら
)
へ
054
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
御
(
おん
)
前
(
まへ
)
に
055
引連
(
ひきつ
)
れ
行
(
ゆ
)
かむと
呶鳴
(
どな
)
る
故
(
ゆゑ
)
056
ハツと
当惑
(
たうわく
)
しながらも
057
早速
(
さそく
)
の
頓智
(
とんち
)
此
(
この
)
レーブ
058
そしらぬ
顔
(
かほ
)
の
惚
(
とぼ
)
け
面
(
づら
)
059
馬
(
うま
)
の
轡
(
くつわ
)
を
引掴
(
ひつつか
)
み
060
こりやこりや
待
(
ま
)
つた、こりや
待
(
ま
)
つた
061
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
に
仕
(
つか
)
へたる
062
私
(
わし
)
はレーブの
司
(
つかさ
)
ぞや
063
吾
(
われ
)
も
汝
(
なれ
)
等
(
ら
)
と
同様
(
どうやう
)
に
064
母娘
(
おやこ
)
二人
(
ふたり
)
の
巡礼
(
じゆんれい
)
は
065
蜈蚣
(
むかで
)
の
姫
(
ひめ
)
の
母娘
(
おやこ
)
ぞと
066
疑
(
うたが
)
ひながら
近寄
(
ちかよ
)
つて
067
よくよく
顔
(
かほ
)
を
調
(
しら
)
ぶれば
068
似
(
に
)
ても
似
(
に
)
つかぬ
雪
(
ゆき
)
と
墨
(
すみ
)
069
片目
(
かため
)
婆
(
ば
)
さまの
皺苦茶
(
しわくちや
)
に
070
痘痕
(
あばた
)
をあしらふ
御
(
ご
)
面相
(
めんさう
)
071
娘
(
むすめ
)
は
如何
(
いか
)
にと
眺
(
なが
)
むれば
072
これ
亦
(
また
)
偉
(
えら
)
いドテ
南瓜
(
かぼちや
)
073
下賤
(
げせん
)
の
姿
(
すがた
)
の
母娘
(
おやこ
)
づれ
074
決
(
けつ
)
して
探
(
たづ
)
ぬる
人
(
ひと
)
でない
075
くだらぬことに
骨
(
ほね
)
を
折
(
を
)
り
076
貴重
(
きちよう
)
な
光陰
(
くわういん
)
潰
(
つぶ
)
すより
077
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
くカルマタの
078
都
(
みやこ
)
に
進
(
すす
)
み
抜群
(
ばつぐん
)
の
079
功名
(
こうみやう
)
手柄
(
てがら
)
をしたがよい
080
何
(
なん
)
ぢやかんぢやと
口
(
くち
)
極
(
きは
)
め
081
罵
(
ののし
)
り
散
(
ち
)
らせば
釘彦
(
くぎひこ
)
の
082
手下
(
てした
)
の
騎士
(
きし
)
は
首肯
(
うなづ
)
いて
083
再
(
ふたた
)
び
河
(
かは
)
を
打渡
(
うちわた
)
り
084
帰
(
かへ
)
り
行
(
ゆ
)
くこそ
嬉
(
うれ
)
しけれ
085
つらつら
思
(
おも
)
ひ
廻
(
まは
)
らせば
086
貴女
(
あなた
)
が
私
(
わたし
)
を
捨
(
す
)
てたのは
087
深
(
ふか
)
い
仕組
(
しぐみ
)
のありしこと
088
前知
(
ぜんち
)
の
明
(
めい
)
なき
此
(
この
)
レーブ
089
今更
(
いまさら
)
の
如
(
ごと
)
感嘆
(
かんたん
)
し
090
勢込
(
いきほひこ
)
んでスタスタと
091
お
後
(
あと
)
を
慕
(
した
)
ひ
玉山
(
たまやま
)
の
092
峠
(
たうげ
)
を
越
(
こ
)
えて
後
(
あと
)
を
追
(
お
)
ひ
093
此処
(
ここ
)
に
目出度
(
めでた
)
く
面会
(
めんくわい
)
し
094
これほど
嬉
(
うれ
)
しい
事
(
こと
)
はない
095
あゝ
願
(
ねが
)
はくば
両人
(
りやうにん
)
よ
096
レーブの
司
(
つかさ
)
を
月
(
つき
)
の
国
(
くに
)
097
ハルナの
都
(
みやこ
)
に
伴
(
ともな
)
ひて
098
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
の
館
(
やかた
)
まで
099
進
(
すす
)
ませ
給
(
たま
)
へ
惟神
(
かむながら
)
100
神
(
かみ
)
に
誓
(
ちか
)
ひて
願
(
ね
)
ぎまつる
101
途中
(
とちう
)
に
如何
(
いか
)
なる
枉神
(
まがかみ
)
の
102
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
りて
騒
(
さ
)
やるとも
103
神
(
かみ
)
に
任
(
まか
)
せし
此
(
この
)
レーブ
104
命
(
いのち
)
を
的
(
まと
)
に
投
(
な
)
げ
出
(
だ
)
して
105
無事
(
ぶじ
)
に
貴女
(
あなた
)
の
目的
(
もくてき
)
を
106
達成
(
たつせい
)
せしめにやおきませぬ
107
何卒
(
なにとぞ
)
お
供
(
とも
)
を
許
(
ゆる
)
されよ
108
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
109
神
(
かみ
)
の
御前
(
みまへ
)
に
祈
(
ね
)
ぎまつる』
110
と
歌
(
うた
)
に
代
(
か
)
へて
所感
(
しよかん
)
を
述
(
の
)
べ、
111
ハルナの
都
(
みやこ
)
まで
随行
(
ずゐかう
)
を
許
(
ゆる
)
されむ
事
(
こと
)
を
懇願
(
こんぐわん
)
した。
112
黄金姫
(
わうごんひめ
)
は
言葉
(
ことば
)
厳
(
おごそ
)
かに、
113
黄金姫
『
折角
(
せつかく
)
の
其方
(
そなた
)
の
親切
(
しんせつ
)
な
願
(
ねがひ
)
なれど
吾々
(
われわれ
)
母娘
(
おやこ
)
は
日
(
ひ
)
の
出別
(
でわけ
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
特命
(
とくめい
)
を
受
(
う
)
け、
114
もとより
供
(
とも
)
を
許
(
ゆる
)
されなかつたのだから、
115
今
(
いま
)
になつて
何程
(
なにほど
)
お
前
(
まへ
)
が
頼
(
たの
)
んでも
連
(
つ
)
れて
行
(
ゆ
)
く
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ない、
116
さうだと
云
(
い
)
つて
貴方
(
あなた
)
を
排斥
(
はいせき
)
するのではない
程
(
ほど
)
に、
117
何卒
(
どうぞ
)
悪
(
わる
)
くとらぬ
様
(
やう
)
にしてお
呉
(
く
)
れ』
118
レーブ『さう
仰
(
あふ
)
せらるれば、
119
たつてお
頼
(
たの
)
み
申
(
まを
)
すわけには
参
(
まゐ
)
りませぬ。
120
それなら
私
(
わたし
)
も
是非
(
ぜひ
)
が
御座
(
ござ
)
いませぬから
単独
(
たんどく
)
行動
(
かうどう
)
をとり、
121
貴女
(
あなた
)
方
(
がた
)
母娘
(
おやこ
)
の
前後
(
あとさき
)
を
守
(
まも
)
つて
参
(
まゐ
)
りませう』
122
清照
(
きよてる
)
『
何卒
(
どうぞ
)
吾々
(
われわれ
)
母娘
(
おやこ
)
の
目
(
め
)
に
見
(
み
)
えない
範囲内
(
はんゐない
)
で
行
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さいや。
123
もしもお
供
(
とも
)
をつれて
行
(
い
)
つたと
云
(
い
)
はれては
吾々
(
われわれ
)
母娘
(
おやこ
)
の
申訳
(
まをしわけ
)
が
立
(
た
)
ちませぬからな』
124
レーブ『
左様
(
さやう
)
なれば、
125
たつて
無理
(
むり
)
にはお
願
(
ねがひ
)
を
申
(
まを
)
しませぬ。
126
私
(
わたし
)
は
之
(
これ
)
より
不離
(
ふり
)
不即
(
ふそく
)
の
態度
(
たいど
)
を
保
(
たも
)
ち、
127
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
もハルナの
都
(
みやこ
)
へ
参
(
まゐ
)
ります、
128
どうぞハルナの
都
(
みやこ
)
へおいでになつたら
私
(
わたし
)
を
一度
(
いちど
)
御
(
ご
)
引見
(
いんけん
)
下
(
くだ
)
さる
様
(
やう
)
に
御
(
お
)
願
(
ねがひ
)
を
致
(
いた
)
しておきます。
129
私
(
わたし
)
も
貴女
(
あなた
)
様
(
さま
)
お
二人
(
ふたり
)
の
所在
(
ありか
)
を
尋
(
たづ
)
ぬべく
御
(
ご
)
主人
(
しゆじん
)
様
(
さま
)
に
命令
(
めいれい
)
を
受
(
う
)
けたもので
厶
(
ござ
)
いますから、
130
貴方
(
あなた
)
等
(
たち
)
の
所在
(
ありか
)
さへ
分
(
わか
)
れば、
131
それで
宜
(
よ
)
いので
厶
(
ござ
)
います。
132
それなら
之
(
これ
)
から
見
(
み
)
え
隠
(
がく
)
れにお
供
(
とも
)
をしますから、
133
こればかりはお
含
(
ふく
)
みを
願
(
ねが
)
ひます』
134
黄金
(
わうごん
)
『あゝ
仕方
(
しかた
)
がない。
135
お
前
(
まへ
)
の
勝手
(
かつて
)
にしたが
宜
(
よ
)
からう』
136
レーブ『はい、
137
有難
(
ありがた
)
う』
138
と
落涙
(
らくるい
)
に
咽
(
むせ
)
んでゐる。
139
此
(
この
)
時
(
とき
)
谷底
(
たにそこ
)
より
聞
(
きこ
)
え
来
(
く
)
る
法螺貝
(
ほらがひ
)
、
140
陣太鼓
(
ぢんだいこ
)
、
141
鐘
(
かね
)
の
音
(
おと
)
、
142
矢叫
(
やさけ
)
びの
声
(
こゑ
)
、
143
木谺
(
こだま
)
を
驚
(
おどろ
)
かして
響
(
ひび
)
き
来
(
く
)
る。
144
黄金姫、清照姫
『
素破
(
すは
)
こそ
一大事
(
いちだいじ
)
、
145
バラモン
教
(
けう
)
の
大黒主
(
おほくろぬし
)
が
部下
(
ぶか
)
の
者
(
もの
)
ならむ。
146
彼
(
かれ
)
に
捕
(
つか
)
まつては
大変
(
たいへん
)
』
147
と
母娘
(
おやこ
)
は
岩
(
いは
)
の
後
(
うしろ
)
に
身
(
み
)
を
隠
(
かく
)
し、
148
一隊
(
いつたい
)
の
通過
(
つうくわ
)
を
待
(
ま
)
たむとした。
149
レーブは
勇
(
いさ
)
み
立
(
た
)
ち、
150
レーブ
『やあ、
151
愈
(
いよいよ
)
忠義
(
ちうぎ
)
の
現
(
あら
)
はし
時
(
どき
)
、
152
もしもし
御
(
ご
)
両人
(
りやうにん
)
様
(
さま
)
、
153
貴女
(
あなた
)
は
此
(
この
)
岩影
(
いはかげ
)
に
身
(
み
)
を
忍
(
しの
)
びお
待
(
ま
)
ち
下
(
くだ
)
さいませ。
154
此
(
この
)
軍隊
(
ぐんたい
)
をイソの
館
(
やかた
)
へ
進
(
すす
)
ませてはなりませぬ。
155
これより
私
(
わたし
)
が
力限
(
ちからかぎ
)
り
戦
(
たたか
)
つて
敵
(
てき
)
を
退却
(
たいきやく
)
させて
見
(
み
)
ませう』
156
黄金
(
わうごん
)
『
決
(
けつ
)
して
敵
(
てき
)
を
傷
(
きず
)
つけてはなりませぬよ。
157
善言
(
ぜんげん
)
美詞
(
びし
)
の
言霊
(
ことたま
)
を
以
(
もつ
)
てお
防
(
ふせ
)
ぎなさい。
158
此
(
この
)
細谷道
(
ほそたにみち
)
、
159
而
(
しか
)
も
急坂
(
きふはん
)
、
160
何程
(
なにほど
)
数多
(
あまた
)
の
敵
(
てき
)
が
攻
(
せ
)
め
上
(
のぼ
)
り
来
(
きた
)
るとも、
161
一度
(
いちど
)
にドツとかかる
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
まい。
162
片端
(
かたつぱし
)
から
言向和
(
ことむけやは
)
すが
神慮
(
しんりよ
)
に
叶
(
かな
)
うたやり
方
(
かた
)
、
163
先
(
ま
)
づ
其方
(
そなた
)
が
第一戦
(
だいいつせん
)
を
試
(
こころ
)
みたが
宜
(
よ
)
からう。
164
とても
叶
(
かな
)
はぬと
見
(
み
)
てとつた
時
(
とき
)
は
此
(
この
)
黄金姫
(
わうごんひめ
)
が
立
(
た
)
ち
代
(
かは
)
つて
言霊戦
(
ことたません
)
を
開
(
ひら
)
いて
見
(
み
)
ようから』
165
レーブ『
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
しました。
166
一卒
(
いつそつ
)
これに
拠
(
よ
)
れば
万卒
(
ばんそつ
)
進
(
すす
)
むべからずと
云
(
い
)
ふ
此
(
この
)
難所
(
なんしよ
)
、
167
私
(
わたし
)
一人
(
ひとり
)
で
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
です』
168
と
武者振
(
むしやぶる
)
ひして
勇
(
いさ
)
み
立
(
た
)
つた。
169
かかる
処
(
ところ
)
へブウブウと
先登
(
せんとう
)
に
立
(
た
)
つた
武士
(
つはもの
)
は
法螺貝
(
ほらがひ
)
を
吹
(
ふ
)
き
陣容
(
ぢんよう
)
を
整
(
ととの
)
へ
登
(
のぼ
)
り
来
(
く
)
る。
170
旗指物
(
はたさしもの
)
、
171
幾十
(
いくじふ
)
となく
風
(
かぜ
)
に
翻
(
ひるがへ
)
り
単縦陣
(
たんじうじん
)
を
作
(
つく
)
りて
進
(
すす
)
む
其
(
その
)
光景
(
くわうけい
)
、
172
恰
(
あだか
)
も
絵巻物
(
ゑまきもの
)
を
見
(
み
)
る
如
(
ごと
)
くであつた。
173
レーブは
千引
(
ちびき
)
の
岩
(
いは
)
の
上
(
うへ
)
に
直立
(
ちよくりつ
)
し、
174
此
(
この
)
光景
(
くわうけい
)
を
眺
(
なが
)
め
敵軍
(
てきぐん
)
の
近
(
ちか
)
づくのを
今
(
いま
)
や
遅
(
おそ
)
しと
待
(
ま
)
つてゐる。
175
先頭
(
せんとう
)
に
立
(
た
)
つた
武士
(
つはもの
)
は
急坂
(
きふはん
)
を
上
(
のぼ
)
りつつ
勇
(
いさ
)
ましく
軍歌
(
ぐんか
)
を
歌
(
うた
)
つてゐる。
176
『
東西南
(
とうざいなん
)
の
三方
(
さんぱう
)
に
177
青海
(
あをみ
)
ケ
原
(
はら
)
を
巡
(
めぐ
)
らせる
178
世界
(
せかい
)
で
一
(
いち
)
の
月
(
つき
)
の
国
(
くに
)
179
神
(
かみ
)
の
御稜威
(
みいづ
)
も
明
(
あきら
)
かに
180
照
(
て
)
り
輝
(
かがや
)
きしバラモンの
181
教
(
をしへ
)
の
柱
(
はしら
)
は
畏
(
かしこ
)
くも
182
大黒主
(
おほくろぬし
)
と
現
(
あ
)
れましぬ
183
此
(
この
)
度
(
たび
)
イソの
神館
(
かむやかた
)
184
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのを
)
の
枉神
(
まがかみ
)
が
185
手下
(
てした
)
の
者
(
もの
)
共
(
ども
)
集
(
あつ
)
まりて
186
朝
(
あさ
)
な
夕
(
ゆふ
)
なに
武
(
ぶ
)
を
練
(
ね
)
りつ
187
一挙
(
いつきよ
)
に
月
(
つき
)
へ
攻
(
せ
)
め
寄
(
よ
)
せて
188
バラモン
教
(
けう
)
の
本城
(
ほんじやう
)
を
189
覆
(
くつが
)
へさむと
企
(
たく
)
み
居
(
ゐ
)
る
190
其
(
その
)
曲業
(
まがわざ
)
を
前知
(
ぜんち
)
して
191
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
が
奉
(
ほう
)
ずる
神柱
(
かむばしら
)
192
大黒主
(
おほくろぬし
)
は
畏
(
かしこ
)
くも
193
鬼春別
(
おにはるわけ
)
を
将
(
しやう
)
となし
194
ランチ
将軍
(
しやうぐん
)
片彦
(
かたひこ
)
の
195
大武士
(
おほつはもの
)
を
任
(
ま
)
け
給
(
たま
)
ひ
196
悪魔
(
あくま
)
の
征途
(
せいと
)
に
上
(
のぼ
)
ります
197
其
(
その
)
神業
(
しんげふ
)
に
仕
(
つか
)
へ
行
(
ゆ
)
く
198
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
の
身
(
み
)
こそ
楽
(
たの
)
しけれ
199
朝日
(
あさひ
)
は
照
(
て
)
るとも
曇
(
くも
)
るとも
200
月
(
つき
)
は
盈
(
み
)
つとも
虧
(
か
)
くるとも
201
仮令
(
たとへ
)
大地
(
だいち
)
は
沈
(
しづ
)
むとも
202
三五教
(
あななひけう
)
の
本城
(
ほんじやう
)
を
203
覆
(
くつが
)
へさずにおくべきか
204
常世
(
とこよ
)
の
国
(
くに
)
の
自在天
(
じざいてん
)
205
大国彦
(
おほくにひこ
)
の
御
(
おん
)
守
(
まも
)
り
206
愈
(
いよいよ
)
深
(
ふか
)
くましませば
207
如何
(
いか
)
なる
枉
(
まが
)
の
猛
(
たけ
)
ぶとも
208
鬼神
(
きしん
)
を
挫
(
ひし
)
ぐ
勇
(
ゆう
)
あるも
209
などか
恐
(
おそ
)
れむバラモンの
210
教
(
をしへ
)
に
鍛
(
きた
)
へし
此
(
この
)
体
(
からだ
)
211
刃向
(
はむか
)
ふ
敵
(
てき
)
はあらざらめ
212
進
(
すす
)
めよ
進
(
すす
)
め いざ
進
(
すす
)
め
213
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのを
)
の
曲神
(
まがかみ
)
の
214
手下
(
てした
)
の
残
(
のこ
)
らず
亡
(
ほろ
)
ぶまで
215
枉津
(
まがつ
)
の
軍
(
ぐん
)
の
失
(
う
)
するまで』
216
と
歌
(
うた
)
ひながら
旗鼓
(
きこ
)
堂々
(
だうだう
)
と
進
(
すす
)
み
来
(
きた
)
る
物々
(
ものもの
)
しさ。
217
ランチ
将軍
(
しやうぐん
)
の
部下
(
ぶか
)
は
早
(
はや
)
くもレーブの
立
(
た
)
てる
岩
(
いは
)
の
麓
(
ふもと
)
まで
進
(
すす
)
んで
来
(
き
)
た。
218
レーブは
大音声
(
だいおんぜう
)
を
張
(
は
)
り
上
(
あ
)
げながら、
219
レーブ
『ヤアヤア、
220
吾
(
われ
)
こそはバラモン
教
(
けう
)
の
神司
(
かむづかさ
)
、
221
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
が
身内
(
みうち
)
の
者
(
もの
)
、
222
只今
(
ただいま
)
大自在天
(
だいじざいてん
)
のお
告
(
つ
)
げにより
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
一行
(
いつかう
)
此処
(
ここ
)
に
来
(
きた
)
る
事
(
こと
)
を
前知
(
ぜんち
)
し、
223
今
(
いま
)
や
遅
(
おそ
)
しと
待
(
ま
)
ち
構
(
かま
)
へ
居
(
ゐ
)
たり。
224
汝
(
なんぢ
)
も
亦
(
また
)
バラモンの
部下
(
ぶか
)
に
相違
(
さうゐ
)
はない。
225
云
(
い
)
はば
味方
(
みかた
)
同士
(
どうし
)
だ。
226
案内
(
あんない
)
するは
本意
(
ほんい
)
なれども、
227
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
は
今
(
いま
)
の
軍歌
(
ぐんか
)
によつて
聞
(
き
)
けば
仁慈
(
じんじ
)
無限
(
むげん
)
の
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのをの
)
大神
(
おほかみ
)
の
館
(
やかた
)
に
押寄
(
おしよ
)
するものと
聞
(
きこ
)
えたり。
228
かう
聞
(
き
)
く
上
(
うへ
)
は
少
(
すこ
)
しも
猶予
(
いうよ
)
はならぬ。
229
片端
(
かたつぱし
)
から
神変
(
しんぺん
)
不思議
(
ふしぎ
)
の
言霊
(
ことたま
)
を
発射
(
はつしや
)
して
一人
(
ひとり
)
も
残
(
のこ
)
らず
言向和
(
ことむけやは
)
し
呉
(
く
)
れむ。
230
暫
(
しばら
)
く
待
(
ま
)
て』
231
と
呼
(
よ
)
ばはつた。
232
先頭
(
せんとう
)
に
立
(
た
)
つた
武士
(
つはもの
)
はカルと
云
(
い
)
ふ
一寸
(
ちよつと
)
気
(
き
)
の
利
(
き
)
いた
小頭
(
こがしら
)
である。
233
カルはレーブの
此
(
この
)
声
(
こゑ
)
を
聞
(
き
)
くより
立
(
た
)
ち
止
(
とど
)
まり、
234
カル
『ハテ、
235
心得
(
こころえ
)
ぬ
汝
(
なんぢ
)
の
言葉
(
ことば
)
、
236
汝
(
なんぢ
)
バラモン
教
(
けう
)
の
神司
(
かむづかさ
)
でありながら、
237
何
(
なに
)
を
血迷
(
ちまよ
)
うて
左様
(
さやう
)
な
事
(
こと
)
を
申
(
まを
)
すか。
238
大方
(
おほかた
)
発狂
(
はつきやう
)
致
(
いた
)
したのであらう。
239
そこ
退
(
の
)
け、
240
邪魔
(
じやま
)
になるわい』
241
と
進
(
すす
)
まむとするをレーブは
早
(
はや
)
くも
尖
(
とが
)
つた
石
(
いし
)
を
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
にか
岩
(
いは
)
の
上
(
うへ
)
に
幾十
(
いくじふ
)
となく
積
(
つ
)
み
重
(
かさ
)
ね、
242
一歩
(
いつぽ
)
たりとも
前進
(
ぜんしん
)
せば、
243
此
(
この
)
岩
(
いは
)
を
以
(
もつ
)
て
脳天
(
なうてん
)
より
打挫
(
うちくじ
)
かむと
右手
(
めて
)
に
岩
(
いは
)
をささげて
睨
(
ね
)
めつけてゐる。
244
カルは
目
(
め
)
を
瞋
(
いか
)
らし、
245
カル
『こりや、
246
こりやレーブ、
247
左様
(
さやう
)
な
石
(
いし
)
を
捧
(
ささ
)
げて
如何
(
どう
)
致
(
いた
)
す
心算
(
つもり
)
だ。
248
チツと
危険
(
きけん
)
ではないか』
249
レーブ『ハヽヽヽチツとも、
250
やつとも
危険
(
きけん
)
だ。
251
何程
(
なにほど
)
汝
(
なんぢ
)
の
味方
(
みかた
)
は
沢山
(
たくさん
)
押寄
(
おしよ
)
せ
来
(
きた
)
るとも
此
(
この
)
一条
(
いちでう
)
の
難路
(
なんろ
)
、
252
一人
(
ひとり
)
も
残
(
のこ
)
らず
討滅
(
うちほろぼ
)
すに
何
(
なん
)
の
手間暇
(
てまひま
)
要
(
い
)
るものか。
253
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
くここを
引
(
ひ
)
き
返
(
かへ
)
せよ』
254
カルはレーブの
顔
(
かほ
)
を
睨
(
ね
)
めつけ、
255
互
(
たがひ
)
に
無言
(
むごん
)
のまま
睨
(
にら
)
みあつて
居
(
ゐ
)
ると、
256
後
(
うしろ
)
の
方
(
はう
)
より、
257
『
進
(
すす
)
め
進
(
すす
)
め』
258
と
登
(
のぼ
)
り
来
(
く
)
る
其
(
その
)
勢
(
いきほひ
)
にカルもやむなく
後
(
あと
)
より
押
(
お
)
されて
前進
(
ぜんしん
)
せむとする
時
(
とき
)
、
259
レーブは
無法
(
むはふ
)
にも
其
(
その
)
岩
(
いは
)
をとつて
一
(
ひと
)
つ
嚇
(
おど
)
かし
呉
(
く
)
れむと、
260
敵
(
てき
)
に
中
(
あた
)
らぬ
様
(
やう
)
にと
狙
(
ねら
)
ひを
定
(
さだ
)
めて
投
(
な
)
げつくれば、
261
岩
(
いは
)
はカツカツと
音
(
おと
)
をたてて
谷底
(
たにそこ
)
へ
転落
(
てんらく
)
して
了
(
しま
)
つた。
262
カル『こりやこりや
危
(
あぶ
)
ないわい。
263
何
(
なに
)
を
致
(
いた
)
すか』
264
レーブ『
何
(
なに
)
も
致
(
いた
)
さない。
265
其方
(
そのはう
)
等
(
ら
)
を
片端
(
かたつぱし
)
から
殲殺
(
みなごろ
)
しに
致
(
いた
)
さねば
俺
(
おれ
)
の
心
(
こころ
)
が
得心
(
とくしん
)
せぬのだ』
266
と
云
(
い
)
ひながら
今度
(
こんど
)
は
両手
(
りやうて
)
に
二
(
ふた
)
つの
石
(
いし
)
を
引掴
(
ひつつか
)
み、
267
又
(
また
)
もや
登
(
のぼ
)
り
来
(
く
)
る
敵
(
てき
)
に
向
(
むか
)
つて
投
(
な
)
げつけむとする
気色
(
けしき
)
を
示
(
しめ
)
した。
268
ランチ
将軍
(
しやうぐん
)
は
稍
(
やや
)
後
(
うしろ
)
の
方
(
はう
)
より、
269
『
進
(
すす
)
め
進
(
すす
)
め』
270
と
下知
(
げち
)
をする。
271
已
(
や
)
むを
得
(
え
)
ずしてカルは
前進
(
ぜんしん
)
せむとするを、
272
レーブは
道
(
みち
)
の
真中
(
まんなか
)
に
立
(
た
)
ちはだかり、
273
第一着
(
だいいちちやく
)
にカルの
首筋
(
くびすぢ
)
を
掴
(
つか
)
んで
谷底
(
たにそこ
)
目
(
め
)
がけて
投
(
な
)
げつけた。
274
又
(
また
)
来
(
く
)
る
奴
(
やつ
)
を
引掴
(
ひつつか
)
み
十
(
じふ
)
人
(
にん
)
ばかりも
谷川
(
たにがは
)
目蒐
(
めが
)
けて
投
(
な
)
げつくる。
275
かかる
処
(
ところ
)
へ
遥
(
はる
)
か
下
(
した
)
の
方
(
はう
)
より
数多
(
あまた
)
の
軍卒
(
ぐんそつ
)
を
押
(
お
)
し
分
(
わ
)
けて
登
(
のぼ
)
り
来
(
く
)
る
大
(
だい
)
の
男
(
をとこ
)
、
276
忽
(
たちま
)
ちレーブの
前
(
まへ
)
に
現
(
あら
)
はれ、
277
若芽の春造
『
何者
(
なにもの
)
ならばわが
行軍
(
かうぐん
)
を
妨害
(
ばうがい
)
致
(
いた
)
すか。
278
吾
(
われ
)
こそはランチ
将軍
(
しやうぐん
)
の
懐刀
(
ふところがたな
)
と
聞
(
きこ
)
えたる
若芽
(
わかめ
)
の
春造
(
はるざう
)
だ』
279
と
云
(
い
)
ひながらレーブの
素首
(
そつくび
)
引掴
(
ひつつか
)
み、
280
谷川
(
たにがは
)
目
(
め
)
がけてドスンとばかり
投
(
な
)
げ
込
(
こ
)
んで
了
(
しま
)
つた。
281
此
(
この
)
態
(
てい
)
を
窺
(
うかが
)
ひ
見
(
み
)
たる
黄金姫
(
わうごんひめ
)
、
282
清照姫
(
きよてるひめ
)
は、
283
黄金姫、清照姫
『
今
(
いま
)
は
最早
(
もはや
)
是
(
これ
)
までなり、
284
天則
(
てんそく
)
違反
(
ゐはん
)
かは
知
(
し
)
らね
共
(
ども
)
、
285
何
(
なん
)
とかして
敵
(
てき
)
を
追
(
お
)
ひちらし、
286
只
(
ただ
)
一人
(
ひとり
)
も
此
(
この
)
峠
(
たうげ
)
を
越
(
こ
)
えさせじ』
287
と
腕
(
うで
)
に
撚
(
より
)
をかけ
金剛杖
(
こんがうづゑ
)
を
前後
(
ぜんご
)
左右
(
さいう
)
に
打振
(
うちふ
)
り
打振
(
うちふ
)
り、
288
単縦陣
(
たんじうぢん
)
を
張
(
は
)
つて
登
(
のぼ
)
り
来
(
く
)
る
敵
(
てき
)
に
向
(
むか
)
つて
打込
(
うちこ
)
めば、
289
素破
(
すは
)
一大事
(
いちだいじ
)
とランチ
将軍
(
しやうぐん
)
は
弓
(
ゆみ
)
に
矢
(
や
)
をつがえ、
290
二人
(
ふたり
)
を
目
(
め
)
がけて
発矢
(
はつし
)
と
射
(
い
)
かけた。
291
続
(
つづ
)
いて
数多
(
あまた
)
の
軍勢
(
ぐんぜい
)
は
弓
(
ゆみ
)
を
背
(
せ
)
より
下
(
おろ
)
し
雨
(
あめ
)
の
如
(
ごと
)
く
二人
(
ふたり
)
に
向
(
むか
)
つて
射
(
い
)
かける。
292
其
(
その
)
間
(
あひだ
)
を
杖
(
つゑ
)
を
以
(
もつ
)
て
避
(
よ
)
けながら
獅子
(
しし
)
奮迅
(
ふんじん
)
の
勢
(
いきほひ
)
を
以
(
もつ
)
て
前後
(
ぜんご
)
左右
(
さいう
)
に
母娘
(
おやこ
)
が
荒
(
あ
)
れまはる。
293
二人
(
ふたり
)
は
遂
(
つひ
)
に
坂道
(
さかみち
)
より
足
(
あし
)
踏
(
ふ
)
み
外
(
はづ
)
し、
294
谷底
(
たにそこ
)
にヅデンドウと
母娘
(
おやこ
)
一
(
いち
)
時
(
じ
)
に
転落
(
てんらく
)
した。
295
流石
(
さすが
)
の
黄金姫
(
わうごんひめ
)
、
296
清照姫
(
きよてるひめ
)
は
武術
(
ぶじゆつ
)
の
心得
(
こころえ
)
あれば
少
(
すこ
)
しも
体
(
からだ
)
に
負傷
(
ふしやう
)
をなさず、
297
谷底
(
たにそこ
)
の
真砂
(
まさご
)
の
上
(
うへ
)
にヒラリと
体
(
たい
)
を
下
(
おろ
)
し
敵軍
(
てきぐん
)
来
(
きた
)
れと
手
(
て
)
に
唾
(
つばき
)
して
待
(
ま
)
つてゐる。
298
ランチ
将軍
(
しやうぐん
)
は
母娘
(
おやこ
)
両人
(
りやうにん
)
を
逃
(
にが
)
すなと
下知
(
げち
)
すれば、
299
数多
(
あまた
)
の
軍卒
(
ぐんそつ
)
は
都合
(
つがふ
)
よき
谷川
(
たにがは
)
の
下
(
お
)
り
口
(
ぐち
)
を
探
(
さが
)
し
求
(
もと
)
めて、
300
雲霞
(
うんか
)
の
如
(
ごと
)
く
二人
(
ふたり
)
を
取囲
(
とりかこ
)
み
弓
(
ゆみ
)
を
頻
(
しき
)
りに
射
(
い
)
かけ
出
(
だ
)
した。
301
二人
(
ふたり
)
は
進退
(
しんたい
)
惟
(
これ
)
谷
(
きは
)
まつて
最早
(
もはや
)
運命
(
うんめい
)
尽
(
つ
)
きたりと
覚悟
(
かくご
)
の
臍
(
ほぞ
)
をかたむる
折
(
をり
)
しもあれ、
302
谷底
(
たにそこ
)
よりウーウーと
狼
(
おほかみ
)
の
呻声
(
うなりごゑ
)
聞
(
きこ
)
ゆると
共
(
とも
)
に、
303
幾百
(
いくひやく
)
とも
知
(
し
)
れぬ
狼軍
(
らうぐん
)
はランチ
将軍
(
しやうぐん
)
に
向
(
むか
)
つて
牙
(
きば
)
を
剥
(
む
)
き
目
(
め
)
を
瞋
(
いか
)
らして
暴
(
あば
)
れ
入
(
い
)
る。
304
其
(
その
)
勢
(
いきほひ
)
に
辟易
(
へきえき
)
し、
305
ランチ
将軍
(
しやうぐん
)
を
始
(
はじ
)
め
一同
(
いちどう
)
は
玉山峠
(
たまやまたうげ
)
を
雪崩
(
なだれ
)
の
如
(
ごと
)
くバラバラバツと
逃
(
に
)
げて
行
(
ゆ
)
く。
306
黄金姫
(
わうごんひめ
)
、
307
清照姫
(
きよてるひめ
)
は
前後
(
ぜんご
)
に
心
(
こころ
)
を
配
(
くば
)
りながら、
308
数十
(
すうじふ
)
の
狼
(
おほかみ
)
に
送
(
おく
)
られて
玉山峠
(
たまやまたうげ
)
を
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
歌
(
うた
)
ひながら
悠々
(
いういう
)
として
下
(
くだ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
309
谷口
(
たにぐち
)
に
到
(
いた
)
り
見
(
み
)
れば、
310
ランチ
将軍
(
しやうぐん
)
の
部下
(
ぶか
)
は
如何
(
いかが
)
なりしか、
311
影
(
かげ
)
だにも
見
(
み
)
えずなつて
居
(
ゐ
)
た。
312
これは
玉山峠
(
たまやまたうげ
)
を
登
(
のぼ
)
れば
余程
(
よほど
)
の
近道
(
ちかみち
)
なれども、
313
危険
(
きけん
)
を
恐
(
おそ
)
れて
道
(
みち
)
を
東
(
ひがし
)
に
向
(
むか
)
ひて
進軍
(
しんぐん
)
したものと
見
(
み
)
える。
314
黄金姫
(
わうごんひめ
)
、
315
清照姫
(
きよてるひめ
)
は
無人
(
むじん
)
の
野
(
の
)
を
行
(
ゆ
)
く
心地
(
ここち
)
して
悠々
(
いういう
)
と
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
くのであつた。
316
(
大正一一・一一・二
旧九・一四
北村隆光
録)
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