霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
×
設定
URL:
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
行間
ルビの表示


アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注[※]用語解説 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

脚注[*]編集用 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

外字の外周色 [?]一般のフォントに存在しない文字は専用の外字フォントを使用しています。目立つようにその文字の外周の色を変えます。[×閉じる]
現在のページには外字は使われていません

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。

第一二章 心(こころ)の反映(はんえい)〔一〇九六〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第40巻 舎身活躍 卯の巻 篇:第3篇 霊魂の遊行 よみ(新仮名遣い):れいこんのゆうこう
章:第12章 心の反映 よみ(新仮名遣い):こころのはんえい 通し章番号:1096
口述日:1922(大正11)年11月03日(旧09月15日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年5月25日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一部の章はAIによって要約を作成しています。[×閉じる]:
二人は着衣のまま、広い川を意外にも無事に渡った。見れば美しい花が咲き匂っている花園が見えた。二人は神界へ来たのかと舞い上がったが、カルは自分の身を省みれば、決してこのような結構なところに来られる道理はないといぶかった。
いつの間にか二人が立っていた地面は持ち上がり、両側の低いところには大道が通じ、種々雑多な人や獣が往来していた。前方から悲鳴が聞こえてきた。二人が駆け寄ると、一人の男が血刀を持ち、四五才ばかりの童子の胸を突き刺そうとしているところであった。
レーブとカルは男に飛び掛かったが、びくともしない。男は童子を突き殺してしまった。カルとレーブは男を非難したが、男は自分はお前たちの心の反映だと言い、生前には童子にひとしい青人草の生血を吸い、修羅の戦場に身を置いた罪がここに顕現しているのだと嘲笑った。
レーブは、幽界旅行がさびしくて道連れがほしくてカルと打ち解けたが、その実はこのような悪人はいつかは地獄道へ突き落さなければと思っていたことを懺悔した。カルは殺された童子は自分のレーブへの恐怖心だったと悟った。
二人はお互いに自分の心を開きあい、両手を合わせて天地に祈願した。しばらくして目を開けば、あたりは紅の花が咲き匂い、美しい蝶が舞い遊んでいる。両人は初めて心の迷いをさまし、天津祝詞を奏上しながら北へと仲良く手をつないで進んで行った。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2022-12-01 11:21:04 文字数:4771 OBC :rm4012
愛善世界社版:158頁 八幡書店版:第7輯 476頁 修補版: 校定版:164頁 普及版:73頁 初版: ページ備考:
001秋風(あきかぜ)切(しき)りに吹(ふ)きすさぶ
002玉山峠(たまやまたうげ)の谷間(たにあひ)で
003バラモン教(けう)の大棟梁(だいとうりやう)
004イソの館(やかた)の征討(せいたう)に
005上(のぼ)りしランチ将軍(しやうぐん)の
006部下(ぶか)に仕(つか)へしカル司(つかさ)
007鬼熊別(おにくまわけ)の家(いへ)の子(こ)と
008仕(つか)へて名高(なだか)きレーブ等(ら)と
009衡突(しようとつ)したる其(その)結果(けつくわ)
010互(たがひ)に谷間(たにま)に墜落(つゐらく)し
011人事(じんじ)不省(ふせい)に陥(おちい)りて
012いつとはなしに幽界(いうかい)の
013枯野(かれの)ケ原(はら)を歩(あゆ)みつつ
014野中(のなか)の巌(いはほ)に休(やす)む折(をり)
015カルの部下(ぶか)なる八(はち)人(にん)は
016赤黒(あかくろ)二人(ふたり)の鬼(おに)共(ども)に
017引(ひ)つ立(た)てられて枯草(かれくさ)の
018莽々(ばうばう)茂(しげ)る野原(のはら)をば
019一途(いちづ)の川(かは)を指(さ)して行(ゆ)く
020レーブとカルの両人(りやうにん)は
021青(あを)き鬼(おに)奴(め)に誘(いざな)はれ
022三途(せうづ)の川(かは)の渡場(わたしば)に
023漸(やうや)く辿(たど)り来(き)て見(み)れば
024果(はて)しも知(し)らぬ広(ひろ)い川(かは)
025清(きよ)き流(なが)れは滔々(たうたう)と
026白(しろ)き泡(あわ)をば吐(は)きながら
027大蛇(をろち)のうねる如(ごと)くなり
028川(かは)の畔(ほとり)の一(ひと)つ家(や)は
029金光(こんくわう)きらめく玉楼(ぎよくろう)の
030眼(まなこ)まばゆきばかりなり
031金門(かなど)をあけて青鬼(あをおに)は
032館(やかた)の中(なか)に身(み)を隠(かく)し
033二人(ふたり)の男(をとこ)をやうやうと
034ここ迄(まで)誘(さそ)ひ参(まゐ)りしぞ
035受取(うけと)りめされと云(い)ふ声(こゑ)の
036聞(きこ)えて暫(しば)し経(た)つ間(うち)に
037以前(いぜん)の鬼(おに)は会釈(ゑしやく)して
038何処(どこ)ともなしに消(き)えにける
039二人(ふたり)は川辺(かはべ)に佇(たたず)みて
040思(おも)はぬ美(うつ)しき此(この)家(いへ)は
041土地(とち)に似合(にあ)はぬ不思議(ふしぎ)さと
042囁(ささや)く折(をり)しも金鈴(きんれい)を
043振(ふ)るよな清(きよ)き女声(をんなごゑ)
044早(はや)く来(きた)れと呼(よ)びかくる
045不思議(ふしぎ)の眼(まなこ)をみはりつつ
046近(ちか)づき見(み)れば鬼婆(おにばば)と
047思(おも)うた事(こと)は間違(まちがひ)か
048花(はな)も恥(はぢ)らふ優姿(やさすがた)
049年(とし)は二八(にはち)か二九(にく)からぬ
050神妙(しんめう)無比(むひ)の光美人(くわうびじん)
051いとニコニコと笑(わら)ひ居(を)る
052二人(ふたり)は驚(おどろ)き川端(かはばた)の
053女(をんな)と暫(しば)し掛合(かけあ)ひつ
054一間(ひとま)を奥(おく)へと入(い)りみれば
055奥(おく)の一間(ひとま)は草野原(くさのはら)
056三途(せうづ)の川(かは)の滔々(たうたう)と
057以前(いぜん)の如(ごと)く鳴(な)りゐたり
058水晶館(すゐしやうやかた)に導(みちび)かれ
059鏡(かがみ)の如(ごと)く透(す)きとほる
060館(やかた)の中(なか)で出口(でぐち)をば
061失(うしな)ひ互(たがひ)に辟易(へきえき)し
062千言(せんげん)万語(ばんご)を並(なら)べつつ
063救(すく)ひを乞(こ)へば川端(かはばた)の
064美人(びじん)は二人(ふたり)の手(て)を取(と)つて
065醜(しこ)けき小屋(こや)の其(その)前(まへ)に
066立(た)ちあらはれて言(い)ひけらく
067今迄(いままで)汝(なんぢ)の立入(たちい)りし
068家屋(かをく)は娑婆(しやば)と神界(しんかい)の
069住居(すまゐ)の姿(すがた)の模型(もけい)ぞや
070此(この)茅屋(あばらや)は鬼婆(おにばば)の
071弥(いや)永久(とこしへ)に鎮(しづ)まりて
072娑婆(しやば)にて重(おも)き罪(つみ)かさね
073十万(じふまん)億土(おくど)の旅立(たびだち)を
074致(いた)す亡者(まうじや)の皮(かは)を剥(は)ぐ
075脱衣婆(だついば)さまの関所(せきしよ)ぞと
076いふより早(はや)く忽(たちま)ちに
077娘(むすめ)は醜(みにく)き婆(ばば)となり
078痩(や)せからびたる手(て)を伸(の)べて
079二人(ふたり)の素(そ)ツ首(くび)引(ひ)つ掴(つか)む
080其(その)いやらしさ冷(つめ)たさに
081三途(せうづ)の川(かは)の中(なか)つ瀬(せ)に
082身(み)を躍(をど)らして両人(りやうにん)は
083ザンブとばかり飛(と)び込(こ)んで
084抜手(ぬきて)を切(き)つて向(むか)ふ岸(きし)
085やうやう渡(わた)り着(つ)きにけり。
086 二人(ふたり)は着衣(ちやくい)の儘(まま)、087際限(さいげん)もなき広(ひろ)い川(かは)を、088意外(いぐわい)にも易々(やすやす)と無事(ぶじ)に渡(わた)つたのを、089非常(ひじやう)な大手柄(おほてがら)をしたよな気分(きぶん)になり、090爽快(さうくわい)の念(ねん)に堪(た)へられず、091川(かは)の面(おも)を眺(なが)めて、092紺青(こんぜう)の波(なみ)を見入(みい)つてゐた。
093レーブ『鬼婆(おにば)アさまに首筋(くびすぢ)を掴(つか)まれ、094生命(いのち)カラガラ此(この)川(かは)へ飛込(とびこ)んだものの、095これだけ広(ひろ)い川(かは)、096到底(たうてい)無事(ぶじ)には渡(わた)れまいと真中(まんなか)程(ほど)で思(おも)うたが、097此(この)激流(げきりう)にも似合(にあ)はず、098弓(ゆみ)の矢(や)が通(とほ)つたやうに、099一直線(いつちよくせん)に易々(やすやす)と、100而(しか)も匆急(さうきふ)に渡(わた)られたのは何(なん)とも知(し)れぬ不思議(ふしぎ)ぢやないか』
101カル『そこが現界(げんかい)と神界(しんかい)との異(ことな)る点(てん)だ。102ヤアあれを見(み)よ。103何時(いつ)の間(ま)にか川(かは)はどつかへ沈没(ちんぼつ)して了(しま)ひ、104美(うる)はしい花(はな)が百花(ひやくくわ)爛漫(らんまん)と咲(さ)き匂(にほ)うてるぢやないか。105アヽ何(なん)とも知(し)れぬ芳香(はうかう)が鼻(はな)をついて来(く)る。106あれ見(み)よ。107川(かは)ぢやないぞ。108エデンの花園(はなぞの)みたいだ』
109レーブ『ヤアほんにほんに、110何(なん)とマア不思議(ふしぎ)な事(こと)ぢやないか。111ようよう白梅(しらうめ)の花(はな)が大(おほ)きな木(き)の枝(えだ)に所々(ところどころ)に咲(さ)いてゐる。112バラの花(はな)に牡丹(ぼたん)の花(はな)、113紫雲英(げんげ)に白連華(しろれんげ)其(その)外(ほか)いろいろの草花(くさばな)が所(ところ)せき迄(まで)咲(さ)いて来(き)た。114ヤツパリ天国(てんごく)の様子(やうす)は違(ちが)つたものだ。115モウこんな所(ところ)へ来(き)た以上(いじやう)は虚偽(きよぎ)ばかりの生活(せいくわつ)をつづけてゐる現界(げんかい)へは、116万劫(まんごふ)末代(まつだい)帰(かへ)りたくないワイ。117なあカル公(こう)、118お前(まへ)と俺(おれ)とは、119少(すこ)しばかりの意地(いぢ)から、120忠義(ちうぎ)だとか義務(ぎむ)だとかいつて主人(しゆじん)の為(ため)に互(たがひ)に鎬(しのぎ)を削(けづ)り、121名誉(めいよ)を誇(ほこ)らうと思(おも)つて、122猟師(れふし)にケシをかけられた尨犬(むくいぬ)の様(やう)にいがみ合(あ)ひ、123恨(うらみ)も何(なに)もない者(もの)同士(どうし)が、124命(いのち)の取(と)りやりをやつてゐたが、125竜虎(りうこ)互(たがひ)に勢(いきほひ)全(まつた)からず、126とうとう玉山峠(たまやまたうげ)の谷底(たにそこ)で寂滅(じやくめつ)為楽(ゐらく)急転(きふてん)直下(ちよくか)、127神界(しんかい)の旅立(たびだち)となつたのだ。128が之(これ)を思(おも)へば現界(げんかい)の奴(やつ)位(くらゐ)可哀相(かあいさう)な者(もの)はないのう』
129カル『併(しか)し乍(なが)ら、130お前(まへ)と俺(おれ)と偽善(ぎぜん)の行(や)り比(くら)べをやつたおかげに、131互(たがひ)に娑婆(しやば)の苦(く)を逃(のが)れ、132こんな天国(てんごく)浄土(じやうど)へ来(こ)られるやうになつたのだから、133何(なに)が御(ご)都合(つがふ)になるとも分(わか)らぬぢやないか。134昨日(きのふ)の敵(てき)は今日(けふ)の味方(みかた)、135虎(とら)狼(おほかみ)の唸(うな)り声(ごゑ)も極楽(ごくらく)の花園(はなぞの)を渡(わた)る花(はな)の薫風(くんぷう)となりにけりだ。136モウ斯(か)うして神界(しんかい)へ来(き)た以上(いじやう)は、137名位(めいゐ)寿福(じゆふく)の必要(ひつえう)もなければ互(たがひ)に争(あらそ)ふ余地(よち)もない。138勝手(かつて)に広大(くわうだい)無辺(むへん)な花園(はなぞの)を逍遥(せうえう)し、139自由(じいう)自在(じざい)に木(こ)の実(み)を取(と)つて食(く)ひ、140一切(いつさい)の系累(けいるゐ)を捨(す)てて単身(たんしん)天国(てんごく)の旅(たび)をするのだから、141これ位(くらゐ)愉快(ゆくわい)な事(こと)はないぢやないか。142併(しか)し乍(なが)ら善因(ぜんいん)善果(ぜんぐわ)、143悪因(あくいん)悪果(あくくわ)といふからは、144斯様(かやう)な所(ところ)へ来(こ)られる様(やう)になるのは余程(よほど)現界(げんかい)に於(おい)て善(ぜん)を尽(つく)したものでなければならぬ筈(はず)だ。145俺(おれ)達(たち)の過去(くわこ)を追懐(つゐくわい)すれば、146決(けつ)してかやうな所(ところ)へやつて来(こ)られる道理(だうり)はない。147ヒヨツとしたら、148神(かみ)様(さま)が人違(ひとちがひ)を遊(あそ)ばしたか、149感違(かんちがひ)をなさつたかも知(し)れぬぞ。150モシそんな事(こと)であつたなら、151俺(おれ)達(たち)は大変(たいへん)だ。152此(この)美(うる)はしき楽(たの)しき境遇(きやうぐう)が忽(たちま)ち一変(いつぺん)して、153至醜(ししう)至苦(しく)の地獄道(ぢごくだう)へ落(おと)されるかも知(し)れない。154之(これ)を思(おも)へばヤツパリ執着心(しふちやくしん)が起(おこ)つて来(く)る。155何程(なにほど)執着心(しふちやくしん)をとれと云(い)つても、156此(この)天国(てんごく)に執着(しふちやく)が残(のこ)らいでたまらうか。157あゝ惟神(かむながら)霊(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)。158どうぞ神(かみ)様(さま)、159夢(ゆめ)でも構(かま)ひませぬから、160どこ迄(まで)も此(この)境地(きやうち)において下(くだ)さいますやうに』
161と手(て)を合(あは)して一生(いつしやう)懸命(けんめい)に天地(てんち)を拝(をが)んでゐる。162何時(いつ)の間(ま)にか、163二人(ふたり)の立(た)つてゐた地面(ぢめん)は二十間(にじつけん)ばかり持上(もちあが)り、164左右(さいう)の低(ひく)い所(ところ)に坦々(たんたん)たる大道(だいだう)が通(つう)じて、165種々(しゆじゆ)雑多(ざつた)の人物(じんぶつ)や禽獣(きんじう)が右往(うわう)左往(さわう)に往来(わうらい)してゐるのが見(み)えて来(き)た。
166レーブ『ヤア俄(にはか)に又(また)様子(やうす)が変(かは)つて来(き)たぞ。167オイ、168カル、169気(き)をつけないと、170どんな事(こと)になるか知(し)れぬぞ、171チツとも油断(ゆだん)は出来(でき)ないからな』
172 かく話(はな)す折(をり)しも、173二三丁(にさんちやう)前方(ぜんぱう)に当(あた)つて猿(さる)をしめる様(やう)な悲鳴(ひめい)が聞(きこ)えて来(き)た。174二人(ふたり)は物(もの)をも言(い)はず、175其(その)声(こゑ)を尋(たづ)ねて何人(なんびと)か悪魔(あくま)に迫害(はくがい)され居(を)るならむ、176救(すく)うてやらねばなるまいと、177無言(むごん)のまま駆出(かけだ)した。178近(ちか)よつて見(み)れば、179白衣(びやくい)をダラリと着流(きなが)した丸(まる)ポチヤの青白(あをじろ)い顔(かほ)をした男(をとこ)が、180右手(めて)に血刀(ちがたな)を持(も)ち、181左手(ゆんで)に四五(しご)才(さい)ばかりの美(うる)はしき童子(どうじ)の首筋(くびすぢ)を引掴(ひつつか)み、182今(いま)や胸先(むなさき)へ短刀(たんたう)を突(つ)き刺(さ)さむとする間際(まぎは)であつた。
183 レーブ、184カルの二人(ふたり)は吾(われ)を忘(わす)れて、185其(その)男(をとこ)に飛(と)びかかり、186血刀(ちがたな)を引(ひ)つたくり、187童子(どうじ)を助(たす)けむと、188力限(ちからかぎ)りにもがけども、189白衣(びやくい)の男(をとこ)は地(ち)から生(は)えた岩(いは)のやうに、190押(お)せども突(つ)けどもビクとも動(うご)かぬ。191みるみる間(うち)に其(その)童子(どうじ)を無残(むざん)にも突(つ)き殺(ころ)して了(しま)つた。
192レーブ『コリヤ悪魔(あくま)奴(め)、193此処(ここ)は何処(どこ)と心得(こころえ)てゐる、194勿体(もつたい)なくもかかる尊(たふと)き天国(てんごく)に於(おい)て、195左様(さやう)な兇行(きやうかう)を演(えん)ずるといふ事(こと)があるか』
196男(をとこ)『アハヽヽヽ阿呆(あはう)らしいワイ。197悪魔(あくま)の容物(いれもの)の分際(ぶんざい)として、198此(この)方(はう)を悪魔(あくま)呼(よ)ばはりするとは何(なん)の事(こと)だ。199糞虫(くそむし)は糞(くそ)の臭気(しうき)を知(し)らぬとは貴様(きさま)の事(こと)だ。200サアこれから其(その)方(はう)の番(ばん)だ、201そこ動(うご)くな。202イヒヽヽヽ、203なんとマアいぢらしいものだなア、204いかさま野郎(やらう)のインチキ亡者(まうじや)奴(め)、205身魂(みたま)の因縁(いんねん)に依(よ)つて、206此(この)天来(てんらい)菩薩(ぼさつ)が之(これ)から汝(なんぢ)を制敗(せいばい)致(いた)すから、207喜(よろこ)んで此(この)方(はう)の刃(やいば)を受(う)けたがよからうぞ』
208レーブ『アハヽヽヽ天来(てんらい)菩薩(ぼさつ)とはソラ何(なに)を吐(ぬ)かす、209苟(いやし)くも菩薩(ぼさつ)たる者(もの)が凶器(きやうき)をふりまはし、210天国(てんごく)の街道(かいだう)に於(おい)て殺生(せつしやう)をするといふ事(こと)があるか。211況(ま)して罪(つみ)のない童子(どうじ)を殺害(さつがい)するとは、212以(もつ)ての外(ほか)の代物(しろもの)だ。213コリヤ悪魔(あくま)、214イヤ天来(てんらい)、215よつく聞(き)け、216此(この)方(はう)こそはバラモン教(けう)にて英雄(えいゆう)豪傑(がうけつ)と世(よ)に謳(うた)はれた武術(ぶじゆつ)の達人(たつじん)、217カル、218レーブの両人(りやうにん)だ。219汝(なんぢ)の如(ごと)き小童(こわつぱ)共(ども)、220仮令(たとへ)幾(いく)百万(ひやくまん)人(にん)一団(いちだん)となつて武者(むしや)ぶりつくとも、221千引(ちびき)の岩(いは)に蚊軍(ぶんぐん)の襲撃(しふげき)した様(やう)なものだ。222サア今(いま)に此(この)方(はう)の武勇(ぶゆう)を現(あら)はし、223汝(なんぢ)が剣(つるぎ)をボツたくり、224寸断(すんだん)にしてくれむ、225覚悟(かくご)を致(いた)したがよからうぞ。226神界(しんかい)の名残(なごり)に神文(しんもん)でも称(とな)へたがよからう』
227男(をとこ)『ウツフヽヽヽうろたへ者(もの)奴(め)が、228神界(しんかい)の法則(はふそく)に依(よ)つて、229此(この)方(はう)が使命(しめい)を全(まつた)くする為(ため)、230此(この)童子(どうじ)を制敗(せいばい)してゐるのだ。231汝(なんぢ)はいつも現界(げんかい)でホザいて居(を)るだらう、232神(かみ)が表(おもて)に現(あら)はれて、233善(ぜん)と悪(あく)とを立別(たてわ)ける、234神(かみ)でなくて、235身魂(みたま)の善悪(ぜんあく)が分(わか)るものか。236貴様(きさま)達(たち)の容喙(ようかい)すべき限(かぎり)でない、237人間(にんげん)は人間(にんげん)らしく黙(だま)つて自分(じぶん)の行(ゆ)くべき所(ところ)へ行(ゆ)けばいいのだ。238訳(わけ)も知(し)らずに安(やす)つぽい慈悲心(じひしん)だとか、239義侠心(ぎけふしん)を発揮(はつき)しようと思(おも)つても、240そんな事(こと)は、241鏡(かがみ)の如(ごと)き明(あきら)かな神界(しんかい)に於(おい)ては通用(つうよう)致(いた)さぬぞ』
242レーブ『仮令(たとへ)此(この)童子(どうじ)に如何(いか)なる罪(つみ)があらうとも、243神界(しんかい)に於(おい)ては何事(なにごと)も善意(ぜんい)に解(かい)し、244神直日(かむなほひ)大直日(おほなほひ)に見直(みなほ)し聞(き)き直(なほ)し宣直(のりなほ)し給(たま)ふのが大慈(だいじ)大悲(だいひ)の神(かみ)様(さま)の御(お)恵(めぐみ)だ。245其(その)方(はう)は使命(しめい)だと申(まを)すが、246娑婆(しやば)地獄(ぢごく)ならば知(し)らぬこと、247天地(てんち)の神(かみ)の分霊(ぶんれい)たる人間(にんげん)を自(みづか)ら手(て)を下(くだ)して制敗(せいばい)するといふ道理(だうり)があるか』
248男(をとこ)『エヘヽヽヽぬかしたりな ぬかしたりな、249それ程(ほど)よく理屈(りくつ)の分(わか)つた其(その)方(はう)なれば、250此(この)方(はう)を神直日(かむなほひ)大直日(おほなほひ)に見直(みなほ)し聞(き)き直(なほ)し宣直(のりなほ)さぬか。251娑婆(しやば)で少(すこ)しく覚(おぼ)えた武勇(ぶゆう)を鼻(はな)にかけ、252吾々(われわれ)を悪魔(あくま)呼(よ)ばはりになし、253此(この)方(はう)の刀(かたな)を掠奪(りやくだつ)して盗賊(たうぞく)の罪(つみ)を重(かさ)ね、254又(また)此(この)方(はう)を寸断(すんだん)せむとは自家(じか)撞着(どうちやく)も甚(はなは)だしいではないか。255そんな事(こと)で如何(どう)して神界(しんかい)の旅(たび)が出来(でき)るか。256テもさても分(わか)らぬ奴(やつ)だな。257オツホヽヽヽ鬼(おに)の上前(うはまへ)を貴様(きさま)ははねようと致(いた)すのか、258何(なん)と恐(おそ)ろしい我(が)の強(つよ)い代物(しろもの)だなア』
259カル『コリヤ悪魔(あくま)、260ここは神界(しんかい)だぞ、261貴様(きさま)の居(を)る世界(せかい)は幽界(いうかい)だらう。262かやうな所(ところ)へやつて来(く)るといふ事(こと)があるか、263早(はや)く立去(たちさ)れ。264グヅグヅ致(いた)して居(を)ると、265神界(しんかい)幽界(いうかい)の国際(こくさい)談判(だんぱん)が始(はじ)まり、266遂(つひ)には談判(だんぱん)破裂(はれつ)して、267地獄(ぢごく)征伐(せいばつ)の宣示(せんじ)が渙発(くわんぱつ)されるやうになるかも知(し)れぬぞ』
268男(をとこ)『イツヒヽヽヽ其(その)方(はう)は現界(げんかい)に於(おい)て一(ひと)つの善事(ぜんじ)もなさず、269まぐれ当(あた)りに神界(しんかい)へふみ迷(まよ)うて来(き)よつて、270一角(ひとかど)善人面(ぜんにんづら)をさらして、271ツベコベと理屈(りくつ)を囀(さへづ)つてゐやがるが、272此(この)悪魔(あくま)も此(この)血刀(ちがたな)も、273皆(みな)貴様(きさま)の心(こころ)の反映(はんえい)だ。274貴様(きさま)は八岐(やまたの)大蛇(をろち)の悪魔(あくま)の憑(つ)いた大黒主(おほくろぬし)の部下(ぶか)に仕(つか)ふる鬼春別(おにはるわけ)の乾児(こぶん)の乾児(こぶん)の其(その)乾児(こぶん)たる小悪人(せうあくにん)で居(ゐ)ながら、275三(さん)才(さい)の童子(どうじ)に等(ひと)しき天(あめ)の下(した)の青人草(あをひとぐさ)の生血(いきち)を吸(す)ひ、276少(すこ)しの武勇(ぶゆう)を鼻(はな)にかけ、277修羅(しゆら)の戦場(せんぢやう)に疾駆(しつく)した其(その)罪(つみ)が今(いま)ここに顕現(けんげん)してゐるのだ。278要(えう)するに此(この)方(はう)は貴様(きさま)の罪(つみ)が生(う)んだ悪魔(あくま)だから、279貴様(きさま)が本当(ほんたう)に神直日(かむなほひ)大直日(おほなほひ)に見直(みなほ)し宣直(のりなほ)し、280発(ほつ)ごんと改心(かいしん)を致(いた)したならば、281かかる尊(たふと)き神界(しんかい)の大道(だいだう)に如何(どう)して俺(おれ)が現(あら)はれる事(こと)が出来(でき)ようか。282俺(おれ)が亡(ほろ)ぼしたくば、283貴様(きさま)の心(こころ)から改心(かいしん)したがよからう。284人(ひと)が悪魔(あくま)だと思(おも)うて居(を)れば、285みんな自分(じぶん)の事(こと)だぞ。286コリヤ、287レーブ、288其(その)方(はう)は今(いま)の先(さき)黄金姫(わうごんひめ)に出会(であ)ひ、289三五教(あななひけう)の教理(けうり)を聞(き)いたであらう。290人(ひと)が悪(わる)いと思(おも)うてゐると皆(みな)われの事(こと)ぢやぞよ………と玉山峠(たまやまたうげ)の岩蔭(いはかげ)で聞(き)かされたぢやないか』
291レーブ『成程(なるほど)さうすると、292お前(まへ)は俺(おれ)の言(い)はば副(ふく)守護神(しゆごじん)だなア。293何(なん)と悪(わる)い副守(ふくしゆ)が居(ゐ)やがつたものだなア』
294男(をとこ)『アハヽヽヽ都合(つがふ)のよい勝手(かつて)な事(こと)をいふな。295副(ふく)守護神(しゆごじん)所(どころ)か、296貴様(きさま)の本(ほん)守護神(しゆごじん)の断片(だんぺん)だ。297トコトン改心(かいしん)致(いた)さぬと、298まだまだ此(この)先(さき)で貴様(きさま)の生(う)んだ鬼(おに)が貴様(きさま)に肉迫(にくはく)して、299どんな目(め)に会(あ)はすか知(し)れぬぞ。300己(おの)が刀(かたな)で己(おの)が首切(くびき)るやうなことが出来(しゆつたい)致(いた)すから、301早(はや)く改心(かいしん)致(いた)したがよからう。302レーブばかりでない、303カルも其(その)通(とほ)りだ、304此(この)童子(どうじ)はヤツパリ、305カルの身魂(みたま)の化身(けしん)だ。306どうだ判(わか)つたか』
307レーブ『ヤア判(わか)つた、308斯(か)うして二人(ふたり)仲(なか)よくして神界(しんかい)の旅行(りよかう)をやつてゐるものの、309本当(ほんたう)のことを言(い)へば、310おれも淋(さび)しくて仕方(しかた)がないから、311道伴(みちづ)れにしようと思(おも)ひ、312表面(へうめん)こそ親切(しんせつ)に打解(うちと)けたらしくしてゐるものの、313行(ゆ)く所(ところ)まで行(い)つたならば斯様(かやう)な悪人(あくにん)は此(この)下(した)に見(み)ゆる地獄道(ぢごくだう)へつき落(おと)してやらうと、314心(こころ)の端(はし)に思(おも)うてゐたのだ。315ヤア悪(わる)かつた、316オイ、317カル公(こう)、318俺(おれ)は本当(ほんたう)に済(す)まなかつた。319心(こころ)の罪(つみ)を赦(ゆる)してくれ』
320カル『あゝさうか、321おれも実(じつ)はお前(まへ)と打解(うちと)けて歩(ある)いて居(ゐ)るものの、322何時(いつ)お前(まへ)が俺(おれ)の素首(そつくび)を引抜(ひきぬ)くか知(し)れぬと思(おも)うて、323戦々(せんせん)兢々(きやうきやう)と心(こころ)の底(そこ)でしてゐたのだ。324さうするとあの童子(どうじ)は俺(おれ)の恐怖心(きようふしん)が塊(かたま)つて現(あら)はれたのだな。325お前(まへ)がさう改心(かいしん)してくれる以上(いじやう)は、326最早(もはや)お前(まへ)も恐(おそ)れはせぬ。327互(たがひ)に打解(うちと)けて心(こころ)の底(そこ)から仲(なか)よくして、328此(この)天国(てんごく)を遊行(いうかう)しようぢやないか。329あゝ惟神(かむながら)霊(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)』
330と両手(りやうて)を合(あは)せ、331両人(りやうにん)は目(め)をとぢて天地(てんち)に祈願(きぐわん)をこめた。332暫(しばら)くあつて、333目(め)を開(ひら)きあたりを見(み)れば、334男(をとこ)の影(かげ)も童子(どうじ)の影(かげ)もなく、335大地(だいち)に流(なが)れた血潮(ちしほ)と見(み)えしは紅(くれなゐ)の花(はな)、336紛々(ふんぷん)と咲(さ)き匂(にほ)ひ、337白(しろ)黄(き)紫(むらさき)青(あを)などの美(うる)はしき羽(はね)の蝶(てふ)翩翻(へんぽん)と花(はな)を目(め)がけて舞(ま)ひ遊(あそ)んでゐる。338両人(りやうにん)は初(はじ)めて心(こころ)の迷(まよ)ひを醒(さ)まし、339天津(あまつ)祝詞(のりと)を奏上(そうじやう)しながら、340北(きた)へ北(きた)へと手(て)をつなぎつつ、341いと睦(むつま)じげに進(すす)み行(ゆ)く。
342(大正一一・一一・三 旧九・一五 松村真澄録)
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス】
合言葉「みろく」を入力して下さい→