霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
×
設定
URL:
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
行間
ルビの表示


アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注[※]用語解説 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

脚注[*]編集用 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

外字の外周色 [?]一般のフォントに存在しない文字は専用の外字フォントを使用しています。目立つようにその文字の外周の色を変えます。[×閉じる]
現在のページには外字は使われていません

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。

第一五章 氷嚢(ひようなう)〔一〇九九〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第40巻 舎身活躍 卯の巻 篇:第4篇 関風沼月 よみ(新仮名遣い):かんぷうしょうげつ
章:第15章 氷嚢 よみ(新仮名遣い):ひょうのう 通し章番号:1099
口述日:1922(大正11)年11月04日(旧09月16日) 口述場所: 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年5月25日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一部の章はAIによって要約を作成しています。[×閉じる]:
照国別の主従一行は岩彦のありかを訪ねたが見いだせず、テームス山を登りつめて山頂の関所に着いた。ここは大黒主の命によって春公、雪公、紅葉ほか二人が名ばかりの関守をやっている。
大酒をあおって大地に倒れ、酔いざめの風邪をひいては熱をだしている。春公は熱を出しながらも、酔って一同馬鹿話に時を費やしていた。
そこへ照国別一行がやってきて、春公が病んでいることを知ると、関所の中へ入ってきて鎮魂を始めた。春公は咳をすると小さな百足が飛び出した。百足は見る間に五六尺の大百足となると、一目散に逃げて行った。
春公は熱が下がり、身体は元のとおりに治ってしまった。春公は命を救われたことに感謝し、心から悔い改めた。そして照国別に従い、案内役として月の国に供をすることになった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2022-12-03 11:18:58 文字数:4854 OBC :rm4015
愛善世界社版:197頁 八幡書店版:第7輯 490頁 修補版: 校定版:203頁 普及版:91頁 初版: ページ備考:
001照国別(てるくにわけ)の宣伝使(せんでんし)
002仁慈(じんじ)無限(むげん)の大神(おほかみ)の
003教(をしへ)を四方(よも)に伝(つた)へつつ
004月(つき)の都(みやこ)にバラモンの
005教(をしへ)を開(ひら)き世(よ)を乱(みだ)す
006大黒主(おほくろぬし)の神司(かむづかさ)を
007三五教(あななひけう)の御教(みをしへ)に
008言向和(ことむけやは)し照国(てるくに)の
009尊(たふと)き御代(みよ)と立直(たてなほ)し
010一切(いつさい)衆生(しゆじやう)の身魂(みたま)をば
011救(すく)はむものと勇(いさ)み立(た)ち
012険(けは)しき山(やま)を打渉(うちわた)り
013荒野(あらの)ケ原(はら)を踏(ふ)み越(こ)えて
014岩彦(いはひこ)、照公(てるこう)、梅公(うめこう)の
015三人(みたり)と共(とも)にクルスの森(もり)
016進(すす)み来(きた)りて疲(つか)れをば
017休(やす)むる折(をり)しも向(むか)ふより
018イソの館(やかた)に攻(せ)め上(のぼ)る
019鬼春別(おにはるわけ)の一部隊(いちぶたい)
020片彦(かたひこ)、久米彦(くめひこ)両将(りやうしやう)が
021先頭(せんと)に立(た)ちて進(すす)み来(く)る
022此(こ)は一大事(いちだいじ)と一行(いつかう)は
023森(もり)の茂(しげ)みに身(み)をかくし
024敵(てき)の様子(やうす)を窺(うかが)へば
025大胆(だいたん)不敵(ふてき)の命令(めいれい)を
026采配(さいはい)振(ふ)つて号令(がうれい)する
027それの態度(たいど)の忌々(ゆゆ)しさに
028照国別(てるくにわけ)は木影(こかげ)より
029声(こゑ)張(は)りあげて宣伝歌(せんでんか)
030涼(すず)しく清(きよ)く宣(の)りつれば
031敵(てき)は驚(おどろ)き照国(てるくに)の
032別(わけ)の命(みこと)に四方(しはう)より
033攻(せ)めかけ来(きた)る猪口才(ちよこざい)さ
034無抵抗(むていかう)主義(しゆぎ)の三五(あななひ)の
035教(をしへ)を伝(つた)ふる神司(かむづかさ)
036善言(ぜんげん)美詞(びし)の言霊(ことたま)に
037成(な)るべくならば言向(ことむ)けて
038悔悟(くわいご)させむと思(おも)へども
039暴逆(ばうぎやく)無道(ぶだう)の敵軍(てきぐん)は
040何(なん)の容赦(ようしや)も荒風(あらかぜ)の
041吹(ふ)きまくる如(ごと)迫(せま)り来(く)る
042正当(せいたう)防衛(ばうゑい)と云(い)ひながら
043清春山(きよはるやま)より現(あら)はれし
044岩彦司(いはひこつかさ)は杖(つゑ)を振(ふ)り
045縦横(じうわう)無尽(むじん)に敵軍(てきぐん)に
046阿修羅(あしゆら)の如(ごと)く打込(うちこ)めば
047負傷者(ふしやうしや)を残(のこ)し馬(うま)を棄(す)て
048皆(みな)散々(さんざん)に逃(に)げて行(ゆ)く
049照国別(てるくにわけ)は敵軍(てきぐん)の
050手傷(てきず)を負(お)ひて倒(たふ)れたる
051二人(ふたり)の男(をとこ)を介抱(かいほう)し
052信書(しんしよ)を認(したた)め清春(きよはる)の
053醜(しこ)の岩窟(いはや)を守(まも)り居(ゐ)る
054ポーロ司(つかさ)を戒(いまし)めつ
055イソの館(やかた)に三五(あななひ)の
056教(をしへ)の道(みち)を学(まな)ぶべく
057遣(つか)はしやりて照(てる)、梅(うめ)の
058二人(ふたり)と共(とも)に駒(こま)に乗(の)り
059轡(くつわ)を並(なら)べてシトシトと
060テームス山(ざん)にさしかかる
061折(をり)から吹(ふ)き来(く)る凩(こがらし)の
062風(かぜ)に面(おもて)を吹(ふ)かれつつ
063これぞ尊(たふと)き神風(かみかぜ)と
064勇気(ゆうき)日頃(ひごろ)に百倍(ひやくばい)し
065蹄(ひづめ)の音(おと)も戞々(かつかつ)と
066険(けは)しき坂(さか)を登(のぼ)り行(ゆ)く
067あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
068御霊(みたま)幸(さち)はひましませよ。
069 照国別(てるくにわけ)は岩彦(いはひこ)の所在(ありか)を失(うしな)ひ、070彼(かれ)が行衛(ゆくゑ)を求(もと)めて、071森(もり)の小蔭(こかげ)や薄原(すすきばら)隈(くま)なく探(さぐ)り、072一行(いつかう)は漸(やうや)くにしてテームス山(ざん)を登(のぼ)りつめ、073頂上(ちやうじやう)の関所(せきしよ)に着(つ)いた。074ここには大黒主(おほくろぬし)の命(めい)を奉(ほう)じて春公(はるこう)、075雪公(ゆきこう)、076紅葉(もみぢ)他(ほか)二人(ふたり)が小(ちひ)さな庵(いほり)を構(かま)へて名(な)ばかりの関守(せきもり)をやつてゐる。077大酒(おほざけ)を煽(あふ)つては大地(だいち)に倒(たふ)れ、078風(かぜ)に吹(ふ)かれ酔醒(よひざ)めの風(かぜ)を引(ひ)いては熱(ねつ)を出(だ)し、079手拭(てぬぐひ)で鉢巻(はちまき)をしながら狐(きつね)の泣(な)き声(ごゑ)の様(やう)な百日咳(ひやくにちぜき)に悩(なや)んで居(ゐ)る。080何奴(どいつ)も此奴(こいつ)もコンコンカンカンの言霊(ことたま)の競争(きやうそう)をやつて居(ゐ)た。081風(かぜ)の神(かみ)を追(お)ひ出(だ)すのは、082磐若湯(はんにやたう)に限(かぎ)ると云(い)ふので捻鉢巻(ねぢはちまき)をしながら、083酒(さけ)の勢(いきほひ)で昼夜(ひるよる)風(かぜ)の神(かみ)と競争(きやうそう)をやり、084薬鑵(やくわん)から熱(ねつ)を出(だ)し汗(あせ)をタラタラと流(なが)しながら格闘(かくとう)してゐる真最中(まつさいちう)であつた。
085春公(はるこう)『ウンウン、086痛(いた)い痛(いた)い、087風(かぜ)の神(かみ)の奴(やつ)、088暴威(ばうゐ)を逞(たくま)しうしやがつて、089此(この)春(はる)さまの頭蓋骨(づがいこつ)を鉄鎚(かなづち)でカンカンと殴(なぐ)りやがるやうな痛(いた)さだ。090腹(はら)の中(なか)へは狐(きつね)でも這入(はい)りやがつたと見(み)えて、091コンコンと吐(ぬか)すなり、092テームス山(ざん)の関守(せきもり)も中(なか)から斯(か)う咳(せき)が出(で)ては副守(ふくしゆ)の奴(やつ)、093関守(せきもり)に早変(はやがは)りしやがつたと見(み)える。094本当(ほんたう)に咳(せき)がチツとやソツとぢやない、095痰(たん)と出(で)やがつた。096アハヽヽヽイヒヽヽヽ、097痛(いた)い痛(いた)い、098こりや雪公(ゆきこう)、099一(ひと)つ天眼通(てんがんつう)で風(かぜ)の神(かみ)の正体(しやうたい)を透視(とうし)してくれないか』
100雪公(ゆきこう)『あまり酒(さけ)を喰(くら)つて寒風(かんぷう)にあたると凍死(とうし)するものだ。101何卒(どうぞ)凍死(とうし)してくれと云(い)つても、102俺(おれ)は凍死(とうし)ばかりは御免(ごめん)だ。103それよりも万劫(まんごふ)末代(まつだい)生(いき)とほしになりたいからなア』
104春公『こりや、105貴様(きさま)も余程(よほど)訳(わけ)の分(わか)らぬ唐変木(たうへんぼく)だな。106俺(おれ)の云(い)ふ透視(とうし)と云(い)ふのは、107そんな怪体(けつたい)の悪(わる)い凍死(とうし)ぢやないわい。108腹(はら)の底(そこ)まで何(なに)が憑(つ)いて居(を)るか透視(とうし)してくれと云(い)ふのだ。109アイタヽヽヽオイ早(はや)く透視(とうし)せぬかい』
110雪公『おれは雪(ゆき)さまだから、111あまり雪(ゆき)さまばかりに溺(おぼ)れて居(を)ると凍死(とうし)する虞(おそれ)があるぞ。112貴様(きさま)の腹(はら)の中(なか)を一寸(ちよつと)見(み)ると大変(たいへん)な腹通(はらとほ)しだ。113上(あ)げる下(くだ)す、114まるで此(この)テームス峠(たうげ)の頂上(ちやうじやう)の関守(せきもり)には持(も)つて来(こ)いだ。115貴様(きさま)も生命(いのち)の大峠(おほたうげ)が来(き)たのだから、116これ迄(まで)の因縁(いんねん)と諦(あきら)めて潔(いさぎよ)く成仏(じやうぶつ)せい。117風声(ふうせい)鶴唳(かくれい)にもド肝(ぎも)を冷(ひや)し微躯(びく)付(つ)いて居(ゐ)る様(やう)な関守(せきもり)では到底(たうてい)生存(せいぞん)の価値(かち)がない。118よい加減(かげん)に娑婆塞(しやばふさ)ぎは冥土(めいど)参(まゐ)りした方(はう)が社会(しやくわい)の為(ため)だからなア』
119春公『こりや雪(ゆき)、120貴様(きさま)は何(なん)と云(い)ふ冷酷(れいこく)な事(こと)を云(い)ふのだ。121ド頭(あたま)をポカンとハル公(こう)にしてやるぞ』
122雪公『雪(ゆき)と云(い)ふものは火(ひ)のやうに温(あたた)かいものでも、123熱(あつ)いものでもない。124冷酷(れいこく)なのが当(あた)り前(まへ)だ。125冷然(れいぜん)として人(ひと)の病躯(びやうく)を冷笑(れいせう)するのが雪(ゆき)さまの特性(とくせい)だ。126然(しか)しそれだけ熱(ねつ)があつては貴様(きさま)も堪(たま)るまい。127氷嚢(ひようなう)の代(かは)りに此(この)雪公(ゆきこう)さまの冷(つめ)たい尻(けつ)を貴様(きさま)の薬鑵頭(やくわんあたま)に載(の)せてやらうか。128さうすれば、129少(すこ)しは熱(ねつ)が減退(げんたい)するかも知(し)れないぞ』
130春公『斯(か)う熱(ねつ)が高(たか)うては仕方(しかた)がない。131貴様(きさま)の尻(けつ)で俺(おれ)の熱(ねつ)が下(さが)る事(こと)なら臭(くさ)うても幸抱(しんぼう)せうかい』
132雪公『よし、133時々(ときどき)風(かぜ)が吹(ふ)くかも知(し)れぬが、134前(まへ)以(もつ)てお断(ことわ)りを云(い)うておく』
135と云(い)ひながら冷(つめ)たい尻(しり)をまくつて春公(はるこう)の頭(あたま)の上(うへ)にドツカと載(の)せた。
136雪公(ゆきこう)『おい、137随分(ずゐぶん)冷(つめた)い尻(けつ)だらう。138血(ち)も涙(なみだ)もない冷(れい)ケツ動物(どうぶつ)だから……熱病(ねつびやう)の対症(たいしやう)療法(れうほふ)には持(も)つて来(こ)いだ。139実(じつ)にケツ構(こう)な療治法(れうぢほふ)だ、140アハヽヽヽ』
141春公(はるこう)『こりや、142俺(おれ)の鼻(はな)の上(うへ)に何(なん)だか袋(ふくろ)を載(の)せたぢやないか。143冷(ひ)いやりするが、144怪体(けつたい)な香(にほひ)がするぞ』
145雪公『これは豚(ぶた)の氷嚢(ひようなう)代理(だいり)に睾嚢(きんなう)を張(は)り込(こ)んでやつたのだ。146イヒヽヽヽ』
147春公『あゝ苦(くる)しい、148重(おも)たいわい。149チツと重量(ぢうりやう)を軽減(けいげん)する様(やう)に中腰(ちうごし)になつてくれないか』
150雪公『雪隠(せんち)のまたげ穴(あな)をふん張(ば)つたやうな調子(てうし)で中心(ちうしん)を保(たも)つて居(を)るのだから重(おも)たい筈(はず)はない。151熱病(ねつびやう)と云(い)ふものは頭(あたま)の重(おも)いものだ。152おもひおもひにお神徳(かげ)をとつたが宜(よ)からうぞ。153(義太夫(ぎだいふ))あゝ思(おも)へば思(おも)へば前(さき)の世(よ)で如何(いか)なる事(こと)の罪悪(ざいあく)を、154やつて来(き)たのか知(し)らねども、155そりや人間(にんげん)の知(し)らぬ事(こと)、156現在(げんざい)テームス山(ざん)の関守(せきもり)を仰(あふ)せ付(つ)けられながら、157其(その)職責(しよくせき)を完(まつた)うせず、158肝腎要(かんじんかなめ)の蜈蚣姫(むかでひめ)、159小糸姫(こいとひめ)を知(し)つて見逃(みのが)した其(その)天罰(てんばつ)が報(むく)い来(きた)つて、160今(いま)ここに臆病風(おくびやうかぜ)の神(かみ)様(さま)に襲(おそ)はれたるか、161いぢらしやア……悪(わる)い事(こと)とはしりながら、162しりのつぼめが合(あ)はぬよな、163しり滅裂(めつれつ)の報告(はうこく)が、164如何(どう)してハルナの神館(かむやかた)に、165鎮(しづ)まりゐます大黒主(おほくろぬし)に、166致(いた)されうか……許(ゆる)して下(くだ)されバラモン天王(てんわう)様(さま)、167お願(ねが)ひ申(まを)すと計(ばか)りにて、168コンコンコンとせき上(あ)げて、169苦(くる)し涙(なみだ)にくれにける。170シヤシヤ シヤン シヤン シヤン』
171春公『ウンウンウン、172こら雪公(ゆきこう)、173そんな気楽(きらく)な事(こと)どこかい。174俺(おれ)や、175もう生命(いのち)のゆきつまりだ。176もちとシツカリ尻(しり)をあててくれぬかい』
177雪公『(義太夫(ぎだいふ))「ゆきつ、178戻(もど)りつ、179とつおいつ、180又(また)もや咳(せき)の声(こゑ)すれば、181これがお声(こゑ)の聞(き)きをさめと……思(おも)へば弱(よわ)る後(うしろ)が……み……寂滅(じやくめつ)為楽(ゐらく)も近(ちか)づきて、182無情(むじやう)の風(かぜ)は非時(ときじく)に、183吹(ふ)き荒(すさ)ぶこそ哀(あは)れなり、184トテチン トテチン トツトツチン、185テンテン」いやもう瀕死(ひんし)の病人(びやうにん)に対(たい)し応急(おうきふ)療法(れうほふ)も最早(もはや)駄目(だめ)だ。186お前(まへ)の一生(いつしやう)も最早(もはや)けつ末(まつ)がついた。187けつして決(けつ)して娑婆(しやば)に執着心(しふちやくしん)を残(のこ)し、188踏(ふ)み迷(まよ)うて来(き)てはならぬぞ。189大黒主(おほくろぬし)様(さま)の御(おん)目(め)が届(とど)かぬと思(おも)うて慢心(まんしん)を致(いた)し、190神(かみ)を尻敷(しりし)きにした天罰(てんばつ)で、191此(この)清明(せいめい)無垢(むく)の雪(ゆき)のやうな身魂(みたま)の雪(ゆき)さまに尻敷(しりし)きにしられるのだ。192因果(いんぐわ)応報(おうはう)、193罰(ばつ)は覿面(てきめん)、194憐(あは)れなりける次第(しだい)なり。195エヘヽヽヽ』
196紅葉(もみぢ)『こりや雪(ゆき)、197貴様(きさま)は俺(おれ)が最前(さいぜん)から聞(き)いて居(を)れば、198春公(はるこう)さまに対(たい)し親切(しんせつ)にして居(を)るのか、199不親切(ふしんせつ)にして居(を)るのか、200或(あるひ)は介抱(かいほう)するのか、201虐待(ぎやくたい)するのか、202テンと訳(わけ)が分(わか)らぬぢやないか』
203雪公(ゆきこう)『かうゆきつまつた世(よ)の中(なか)、204訳(わけ)が分(わか)らぬのはあたり前(まへ)だ。205俺(おれ)はゆきつまつた社会(しやくわい)の反映(はんえい)だから、206これで普通(ふつう)だよ。207親切(しんせつ)さうに見(み)せて不親切(ふしんせつ)の奴(やつ)もあり、208善(ぜん)の仮面(かめん)を被(かぶ)つて悪(あく)を行(おこな)ふ奴(やつ)もあり、209人(ひと)を助(たす)けてやらうと云(い)つて甘(うま)くチヨロまかし、210其(その)実(じつ)人(ひと)は死(し)なうが倒(たふ)れやうが吾(われ)不関(かんせず)焉(えん)だ。211自分(じぶん)さへ甘(うま)い汁(しる)を鱈腹(たらふく)吸(す)うて自分(じぶん)が助(たす)からうとする奴(やつ)ばかりだ。212こんな悪魔(あくま)横行(わうかう)の世(よ)の中(なか)に如何(どう)して真面目(まじめ)な事(こと)が出来(でき)ようか。213俺(おれ)の天眼通(てんがんつう)だつてその通(とほ)りだ。214当(あた)る時(とき)もあれば外(はづ)れる事(こと)もある。215社会(しやくわい)の利益(りえき)になる事(こと)もあれば社会(しやくわい)の害毒(がいどく)になる事(こと)もある。216それだから善悪(ぜんあく)不二(ふじ)、217正邪(せいじや)一如(いちによ)と云(い)ふのだわい。218オツホン』
219紅葉『人(ひと)の難儀(なんぎ)を見(み)て貴様(きさま)は平気(へいき)で居(ゐ)やがるが、220本当(ほんたう)に怪(け)しからぬ奴(やつ)ぢやないか』
221雪公『貴様(きさま)何(なん)だい、222袖手(しうしゆ)傍観(ばうくわん)してるぢやないか。223貴様(きさま)こそ本当(ほんたう)に友人(いうじん)に対(たい)し冷酷(れいこく)な代物(しろもの)だ。224大方(おほかた)触(さは)らぬ神(かみ)に祟(たたり)なしと云(い)ふ猾(づる)い考(かんが)へを持(も)つて俺(おれ)ばつかりに介抱(かいほう)させ、225さうして善(ぜん)だの悪(あく)だの親切(しんせつ)だの不親切(ふしんせつ)だのと小言(こごと)を垂(た)れやがるのだな。226尻(けつ)でも喰(くら)つたがよいわい。227屁(へ)なつと吸(す)へ』
228紅葉『俺(おれ)は貴様(きさま)等(たち)の二人(ふたり)の手(て)が塞(ふさ)がつてゐるなり、229あと二匹(にひき)の奴(やつ)はズブ六(ろく)に酔(よ)ひやがつて役(やく)に立(た)たぬなり、230仕方(しかた)がないから貴様(きさま)の代(かは)りに関守(せきもり)を勤(つと)めて居(を)るのだ。231もしも斯(こ)んな処(ところ)へ三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)が堂々(だうだう)とやつて来(き)よつたら如何(どう)するのだ』
232雪公『そりや、233その時(とき)のまた風(かぜ)が吹(ふ)くわい。234春公(はるこう)の風邪(かぜ)ぢやないがコンコンと懇談(こんだん)して関守(せきもり)としてのベストを尽(つく)すだけのものだ。235これだけ熱(ねつ)が多(おほ)いと此(この)春公(はるこう)も黒死病(ペスト)になりやせぬか知(し)らぬて、236困(こま)つたものだ。237俺(おれ)の尻(しり)がソロソロ焼(や)けて来(き)だしたぞ。238大変(たいへん)な熱(ねつ)だ』
239紅葉『おい、240あんまり貴様(きさま)が大(おほ)きな尻(しり)で志士(しし)仁人(じんじん)たる春公(はるこう)を圧迫(あつぱく)するものだから、241如何(どう)やら息(いき)が絶(き)れたと見(み)え、242呼吸(こきふ)が止(と)まつたぢやないか』
243雪公『俺(おれ)は智慧(ちゑ)の文珠(もんじゆ)師利(しり)菩薩(ぼさつ)だ。244今朝(けさ)も文珠(もんじゆ)師利(しり)菩薩(ぼさつ)が獅子(しし)に乗(の)つて、245此処(ここ)を大変(たいへん)な勢(いきほひ)で通(とほ)つたぢやないか。246それだから俺(おれ)も春公(はるこう)の頭(あたま)に腰掛(こしか)け、247尻(しり)からプン珠利(しゆり)菩薩(ぼさつ)となつて、248あらゆる最善(さいぜん)の知識(ちしき)を傾(かたむ)けて治療(ちれう)に従事(じうじ)してるのだ。249此(この)辛(から)い時節(じせつ)に薬礼(やくれい)も貰(もら)はず、250これだけ親切(しんせつ)に介抱(かいほう)するものが何処(どこ)にあるかい』
251 かく話(はな)す処(ところ)へ関所(せきしよ)の押戸(おしど)をポンポンと叩(たた)くものがある。252紅葉(もみぢ)は慌(あわ)てて戸外(こぐわい)に飛(と)び出(だ)し仰(あふ)ぎ見(み)れば照国別(てるくにわけ)一行(いつかう)であつた。
253照国(てるくに)『此処(ここ)はテームス山(ざん)の大黒主(おほくろぬし)の関所(せきしよ)だと聞(き)いて居(ゐ)るが、254関守(せきもり)の頭(かしら)に一寸(ちよつと)お目(め)にかかりたい』
255紅葉(もみぢ)『ハイ、256関守(せきもり)の大将(たいしやう)は、257……実(じつ)は……今年(ことし)の今月(こんげつ)の始(はじ)めから……今日(こんにち)今夜(こんや)に至(いた)るまで臆病風(おくびやうかぜ)を引(ひ)きましてコンコンとせきをやつて居(ゐ)ますので、258生憎(あひにく)こん回(くわい)はお目(め)にかかる事(こと)は出来(でき)ますまい』
259照国別『それは気(き)の毒(どく)な事(こと)だ。260斯様(かやう)な峠(たうげ)の吹(ふ)きはなしでは風(かぜ)も引(ひ)きませう。261吾々(われわれ)が一(ひと)つ神(かみ)様(さま)にお願(ねが)ひ致(いた)して鎮魂(ちんこん)をやつて上(あ)げませうかな』
262紅葉『エー滅相(めつさう)もない。263貴方(あなた)は三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)、264左様(さやう)なお方(かた)に鎮魂(ちんこん)とやらをやられましては、265サツパリコンと駄目(だめ)になつて了(しま)ひます。266何卒(どうぞ)こん度(ど)に限(かぎ)つてお断(こと)わりを申(まを)します。267サアお通(とほ)りなさい』
268照国別『決(けつ)して吾々(われわれ)は貴方(あなた)等(がた)がバラモン教(けう)の関守(せきもり)だからと云(い)つて、269悪(わる)くするのではない。270よくして上(あ)げたいと思(おも)ふからだ』
271紅葉『何程(なにほど)御(ご)こん切(せつ)に仰有(おつしや)つて下(くだ)さつても、272三五教(あななひけう)のお方(かた)にお世話(せわ)になるのは一寸(ちよつと)こん難(なん)で厶(ござ)います』
273照国別『お前(まへ)は同僚(どうれう)が九死(きうし)一生(いつしやう)の場合(ばあひ)を助(たす)けたい事(こと)はないのか』
274紅葉『晨(あした)の紅顔(こうがん)、275夕(ゆふ)べの白骨(はくこつ)、276どうで一度(いちど)は死(し)なねばならぬ人生(じんせい)の行路(かうろ)、277夢(ゆめ)の浮世(うきよ)で厶(ござ)いますから、278春公(はるこう)も一層(いつそう)の事(こと)ここで死(し)んだ方(はう)が、279彼(かれ)の為(た)めには好都合(かうつがふ)かも知(し)れませぬ。280親切(しんせつ)が却(かへ)つて無(む)になりますから、281何卒(どうぞ)鎮魂(ちんこん)ばかりは平(ひら)に御(ご)容赦(ようしや)を願(ねが)ひます』
282照国別『何(なん)とバラモン教(けう)は友人(いうじん)に対(たい)してさへも随分(ずゐぶん)冷淡(れいたん)なやり方(かた)ですなア。283一切(いつさい)衆生(しゆじやう)に対(たい)しては尚更(なほさら)冷酷(れいこく)なと云(い)ふ事(こと)は此(この)一事(いちじ)にても看取(かんしゆ)される、284かう云(い)ふ事(こと)を聞(き)くと如何(どう)してもバラモン教(けう)を改造(かいざう)してやらねばなるまい』
285紅葉『実(じつ)は此(この)通(とほ)り五(ご)人(にん)の関守(せきもり)が四(よ)人(にん)まで手抜(てぬ)きが出来(でき)ませぬので、286困(こま)つて居(ゐ)る所(ところ)で厶(ござ)います。287何卒(どうぞ)御存(ごぞん)じの通(とほ)り取(と)り込(こ)んで居(を)りますから、288御用(ごよう)があれば又(また)明日(あす)来(き)て下(くだ)され』
289照国別『アハヽヽヽ、290まるで吾々(われわれ)を乞食(こじき)扱(あつか)ひにして居(ゐ)よるわい。291然(しか)し乍(なが)ら仮令(たとへ)バラモン教(けう)にもせよ、292人(ひと)の困難(こんなん)を見(み)て之(これ)を救(すく)はずに素通(すどほ)りする事(こと)は出来(でき)ない。293照公(てるこう)さま、294梅公(うめこう)さま、295お前(まへ)は奥(おく)へ這入(はい)つて此処(ここ)に屁垂(へた)つてゐる病人(びやうにん)を鎮魂(ちんこん)してやつて下(くだ)さい』
296紅葉『メヽヽ滅相(めつさう)な、297病人(びやうにん)は春公(はるこう)一人(ひとり)で厶(ござ)います。298外(ほか)の奴(やつ)は風(かぜ)を引(ひ)いたといつてもホンの鼻腔(びこう)加答児(カタル)をやつただけ、299風(かぜ)の神(かみ)をおつ払(ぱら)ふとてスヤスヤと寝(やす)んで居(を)るのですから、300何卒(どうぞ)お構(かま)ひ下(くだ)さるな』
301 照公(てるこう)、302梅公(うめこう)は委細(ゐさい)構(かま)はず奥(おく)に入(い)り、303両方(りやうはう)より天(あま)の数歌(かずうた)を歌(うた)ひあげた。304雪公(ゆきこう)は驚(おどろ)いて春公(はるこう)の頭(あたま)の上(うへ)にのせて居(ゐ)た尻(しり)をあげ、305番小屋(ばんごや)の小隅(こすみ)に蹲(しやが)んで震(ふる)うて居(ゐ)る。306天(あま)の数歌(かずうた)を二三回(にさんくわい)唱(とな)へた時(とき)、307春公(はるこう)はカツカツと大(おほ)きな咳(せき)を二(ふた)つした。308その途端(とたん)に小(ちひ)さい百足虫(むかで)が二匹(にひき)飛(と)んで出(で)た。309見(み)る間(ま)に五六(ごろく)尺(しやく)の大(おほ)百足虫(むかで)となり一目散(いちもくさん)にテームス峠(たうげ)を矢(や)の如(ごと)くに逃(に)げ下(くだ)り行(ゆ)く。310春公(はるこう)は初(はじ)めて熱(ねつ)もさめ、311身体(しんたい)元(もと)の如(ごと)くなり汗(あせ)を拭(ふ)きながら、
312春公『何(いづ)れのお方(かた)か知(し)りませぬが九死(きうし)一生(いつしやう)の場合(ばあひ)、313よくまあ助(たす)けて下(くだ)さいまして、314誠(まこと)に有難(ありがた)う厶(ござ)いました』
315と感謝(かんしや)の声(こゑ)と共(とも)に不図(ふと)見(み)あぐれば、316三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)照国別(てるくにわけ)一行(いつかう)の三(さん)人(にん)であつた。317春公(はるこう)は生命(いのち)の親(おや)の宣伝使(せんでんし)様(さま)と喜(よろこ)び勇(いさ)み、318これより四(よ)人(にん)を後(あと)に残(のこ)し照国別(てるくにわけ)に従(したが)つて心(こころ)の底(そこ)より悔(く)い改(あらた)め、319案内役(あんないやく)として月(つき)の御国(みくに)へ従(したが)ひ行(ゆ)く事(こと)となつた。
320(大正一一・一一・四 旧九・一六 北村隆光録)
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス】
合言葉「みろく」を入力して下さい→