霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第三章 噛言(かむごと)〔一二一三〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第46巻 舎身活躍 酉の巻 篇:第1篇 仕組の縺糸 よみ(新仮名遣い):しぐみのれんし
章:第3章 噛言 よみ(新仮名遣い):かむごと 通し章番号:1213
口述日:1922(大正11)年12月15日(旧10月27日) 口述場所: 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年9月25日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一部の章はAIによって要約を作成しています。[×閉じる]:
夜が明けて大門神社の広前の合図の太鼓が聞こえてきた。一同は祭壇の前に座を占めた。魔我彦は天津祝詞、お寅は神言を奏上した。
しかしその祝詞には蠑螈別とお民の逐電を読み込み、祝詞が終わった後も、蠑螈別とお民を返せなければ狐などの世話はもうしない、と祀ってある神たちに向かって大声でしゃべりだした。
お寅ははっと気が付いて教祖館へ姿を隠した。五三公と万公は、アク、タク、テクを信者の中へ交えておき、松姫の館をさして上って行った。
信者たちはお寅の祝詞や様子を見聞きして合点がゆかず、首を傾けて思案にくれていた。アクは壇上に登り、演説気取りで話し始めた。
そしてウラナイ教を開いた高姫自身が三五教に改心したこと、蠑螈別がお民と駆け落ちして逃げてしまったことを話し、それでもまだウラナイ教を信じるのかとすっぱ抜いた。
信者たちは道場破りだと騒ぎだし、自分は神の生き宮だとわめきたてる信者が壇上のアクめがけて襲撃した。アクは人ごみの中をすばしこく姿を隠してしまった。代わりにタクが捕えられ、鉄拳の雨を浴びせられている。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2023-03-09 17:55:07 文字数:4025 OBC :rm4603
愛善世界社版:42頁 八幡書店版:第8輯 375頁 修補版: 校定版:43頁 普及版:18頁 初版: ページ備考:
001 夜(よ)はカラリと明(あ)け放(はな)れ、002大門(おほもん)神社(じんしや)広前(ひろまへ)の合図(あひづ)の太鼓(たいこ)が七五三(しちごさん)に聞(きこ)えて来(き)た。003五三公(いそこう)、004万公(まんこう)、005お寅(とら)、006魔我彦(まがひこ)其(その)他(た)アク、007タク、008テクは数十(すうじふ)人(にん)の信者(しんじや)の中(なか)を通(とほ)つて一段(いちだん)高(たか)き祭壇(さいだん)の前(まへ)に座(ざ)を占(し)め、009魔我彦(まがひこ)先(ま)づ天津(あまつ)祝詞(のりと)を奏上(そうじやう)した。010つづいてお寅(とら)は又(また)もや神言(かみごと)を奏上(そうじやう)した。
011 小北(こぎた)の山(やま)に神言(かみごと)。
012(お寅)『小北(こぎた)の山(やま)に神(かみ)つまります、013五六七(みろく)成就(じやうじゆ)の大神(おほかみ)、014旭(あさひ)の豊栄昇(とよさかのぼ)り姫(ひめ)の命(みこと)もちて、015嘘(うそ)八百万(やほよろづ)の神(かみ)等(たち)を餓鬼集(がきつど)へに集(つど)へ給(たま)ひ、016餓鬼議(がきはか)りに議(はか)り給(たま)ひて、017大広木(おほひろき)正宗(まさむね)、018鈴野姫(すずのひめの)命(みこと)は、019泥足原(どろあしはら)の水鼻汁(みづばな)を安国(やすくに)平姫(たひらひめの)命(みこと)と知(し)らぬ事(こと)依(よ)さしまつりき。020頭(あたま)と恥(はぢ)をかくよさしまつりし国土(くぬち)に汗膏(あせあぶら)とり神(かみ)共(ども)をば、021雁灯(がんど)まはしにまはし給(たま)ひ、022神掃(かむはき)に掃出(はきだ)し給(たま)ひて、023今年(ことし)は岩根(いはね)木根立(きねたち)穴草(あなくさ)の片屏風(かたびやうぶ)をも断(ことわ)りて、024頭(あたま)の髪(かみ)の毛(け)ぬき放(はな)ち、025頭(あたま)の焼(やけ)を何時(いつ)の間(ま)にやら墨(すみ)塗(ぬ)つて、026頭(あたま)かくし依(よ)さしまつりき。027斯(か)く冠(かぶ)せまつりし夜(よる)の鬘(かつら)と大山子(おほやまこ)欲高姫(よくたかひめの)命(みこと)、028ヤンチヤ女(をんな)と定(さだ)めまつりて、029白髪頭(しらがあたま)に墨(すみ)塗立(ぬりた)て、030高姫(たかひめ)の腹(はら)に枉津(まがつ)高知(たかし)りて、031雀親方(すずめおやかた)の命(みこと)の耳(みみ)の御穴(みあな)を塞(ふさ)ぎまつりて、032頭(あたま)の御鬘(みかつら)、033日(ひ)の焼(やけ)を隠(かく)しまして、034やさし女(をんな)と誑(たばか)り、035喋(しやべ)る口中(くちなか)に泣(な)き出(い)でむ、036赤(あか)の他人(たにん)等(ら)が過(あやま)ち犯(をか)しけむ、037クサグサの罪事(つみこと)は、038枉津罪(まがつつみ)とは、039頭(あたま)はられ、040耳引(みみひ)かれ、041目玉(めだま)は火放(ひはな)ち、042尻頻蒔(しりしきま)き、043禿頭(はげあたま)に櫛(くし)さし、044鶏屋(とや)の頭(あたま)の、045生剥(いきは)ぎ、046逆毛剥(さかげは)ぎ、047糞(くそ)小便(せうべん)屁(へ)許々多久(ここたく)の罪(つみ)を、048枉津罪(まがつつみ)と詔(の)り別(わ)けて、049臭(くさ)き罪(つみ)とは、050生膚断(いきはだだち)、051即(すなは)ち腋臭(わきが)、052死膚断(しにはだだち)、053即(すなは)ちトベラ、054白日床組(しらひとこくみ)、055黒日(くろひ)床組(とこくみ)、056夜(よ)も昼(ひる)も、057己(おの)が母(はは)のやうな、058年(とし)の違(ちが)つた女(をんな)と、059をかしことせる罪(つみ)、060ハアハアと息(いき)喘(はづ)ませ、061叱言(こごと)云(い)ふ罪(つみ)、062獣(けもの)犯(をか)せる罪(つみ)、063襟(えり)に這(は)ふ虫(むし)虱(しらみ)の災(わざはひ)、064高姫神(たかひめがみ)の災(わざはひ)、065黒姫鳥(くろひめどり)の災(わざはひ)、066借(か)り借(か)り倒(たふ)し、067うまい事(こと)せる罪(つみ)、068此処(ここ)彼処(かしこ)でボツタクリの罪(つみ)、069沢山(たくさん)出(い)でむ、070斯(か)く出(い)でば、071枉津(まがつ)神(かみ)乱(みだ)れ言(ごと)以(もち)て、072余(あま)りもせない金(かね)を、073元(もと)も子(こ)も無(な)く、074打(うち)きり取(と)られ、075血(ち)を吐(は)く思(おも)ひの、076吾(わが)身(み)の果(はて)、077剰(あまつさ)へ、078此(この)お寅姫(とらひめ)を置去(おきざ)りにして、079剰(あまつさ)へ元(もと)のお民(たみ)を連立(つれた)ち、080末(すゑ)の末(すゑ)までと、081目(め)を忍(しの)び、082二人(ふたり)の仲(なか)を取(と)り割(さ)きて、083枉津(まがつ)の鶏屋(とや)の太(ふと)い婆(ばば)だと、084旅装束(たびしやうぞく)にて、085川(かは)を乗(の)り越(こ)え、086逃(に)げ失(う)せにけり。087斯(か)くならば、088最早(もはや)是非(ぜひ)なし、089枉津(まがつ)神(かみ)は魔我(まが)の岩戸(いはと)を押開(おしひら)きて、090魔我(まが)の八重雲(やへくも)を、091厳(いづ)の千別(ちわき)に千別(ちわ)きて、092聞召(きこしめ)さむ、093砕(くだ)けつ神(かみ)は、094高姫(たかひめ)の尻(しり)に、095黒姫(くろひめ)の尻(しり)に、096とりつきまして、097高姫(たかひめ)の便(いばり)、098黒姫(くろひめ)の便(いばり)を、099嗅別(かぎわ)けて聞召(きこしめ)さむ、100かく聞召(きこしめ)しては、101罪(つみ)と云(い)ふ罪(つみ)は、102充(み)ち充(み)ちにけりと、103吝(し)みたれ神(がみ)の、104阿呆(あはう)の痩我慢(やせがまん)、105泡吹(あわふ)き放(はな)つ事(こと)の如(ごと)く、106悪縁(あくえん)生(う)みきり、107夕(ゆふべ)のお神酒(みき)を、108悪神(あくがみ)、109貧乏神(びんばふがみ)の、110吹払(ふきはら)ふ事(こと)の如(ごと)く、111尻(しり)をうつべに居(を)る大船(おほふね)を、112屁(へ)こき放(はな)ち、113糞(ばば)こき放(はな)ちて、114雪隠(せんち)の中(なか)に放(こ)き落(おと)す事(こと)の如(ごと)く、115落(お)ちた沫(しぶき)が、116元(もと)に返(かへ)りて、117返(かへ)り討(うち)する事(こと)の如(ごと)く、118飲(の)んだる酒(さけ)は一(ひと)つもあらじと、119腹(はら)を痛(いた)め気(き)を痛(いた)め給(たま)ふ事(こと)を、120高姫(たかひめ)の尻(しり)、121お民(たみ)の尻(しり)より、122真逆(まつさか)様(さま)に落(お)ち滝津(たきつ)、123河鹿川(かじかがは)の瀬(せ)に在(ま)す性悪姫(しやうわるひめ)と云(い)ふ神(かみ)、124蠑螈別(いもりわけ)を大肌(おほはだ)の腹(はら)の中(なか)に喰(く)はへ行(ゆ)かむ、125かく喰(く)はへ行(ゆ)けば、126阿呆(あはう)らしの尻(しり)の、127尻糞(しりくそ)の、128焼糞(やけくそ)の、129沫(しぶき)の矢鱈(やたら)に飛(と)びます、130穴(あな)あけつ姫(ひめ)と云(い)ふ神(かみ)、131大広木(おほひろき)正宗(まさむね)、132お民(たみ)を抱(かか)へ持(も)ち、133嬶(かか)となして酒(さけ)飲(の)みてむ、134かく嬶(かか)と酒(さけ)飲(の)みては、135屁吹(へふ)き戸(ど)に在(ま)す屁放戸主(へこきどぬし)と云(い)ふ神(かみ)、136根(ね)の国(くに)、137底(そこ)の国(くに)に屁(へ)こき放(はな)ちてむ、138かく屁(へ)放(こ)き放(はな)ちては、139根(ね)の国(くに)、140底(そこ)の国(くに)に在(ま)す、141腹立(はらだ)ち擦(さす)り姫(ひめ)と云(い)ふ神(かみ)、142揉(も)みさすらひ失(うしな)ひてむ、143かく牛馬(うしうま)泣(な)いては、144ウツソリした、145お寅(とら)の身(み)にも、146心(こころ)にも、147恋(こひ)と云(い)ふ恋(こひ)はあらまし、148遂(と)げさし給(たま)へと、149議(はか)らひ給(たま)へ、150気(き)をつけ給(たま)へと申(まを)すことを、151馬鹿(うましか)の耳振(みみふ)り立(た)てて聞召(きこしめ)せと、152頭(かしら)つつこみ、153つつ込(こ)みも枉申(まがまを)す、154あゝ叶(かな)はぬから、155目玉飛(めだまと)び出(だ)しましませよ』
156お寅(とら)『さあ、157皆(みな)さま、158御(ご)苦労(くらう)で厶(ござ)りました。159これで大方(おほかた)、160蠑螈別(いもりわけ)さまも帰(かへ)つて来(く)るだらう。161もしも帰(かへ)らなかつたら神罰(しんばつ)が当(あた)り、162野垂死(のたれじに)をせにやならぬから、163嫌(いや)でも応(おう)でも帰(かへ)つて来(く)るだらう。164松姫(まつひめ)さまが御(ご)祈願(きぐわん)して下(くだ)さつてるのだから、165もはや間(ま)もあるまい。166大広木(おほひろき)正宗(まさむね)の肉(にく)の宮(みや)、167貞子姫(さだこひめの)命(みこと)、168行長春(ゆきながはるの)命(みこと)、169言足姫(ことたるひめの)命(みこと)、170鈴野姫(すずのひめ)さま、171桃上彦(ももがみひこの)命(みこと)さま、172地上姫(ちじやうひめの)命(みこと)様(さま)、173いつもお前(まへ)さまは俺(わし)の世話(せわ)になつてるのだから、174正念(しやうねん)があるのなら、175今日(けふ)一遍(いつぺん)でよいから、176手別(てわ)けして大神(おほかみ)様(さま)のお助(たす)けによつて、177大広木(おほひろき)正宗(まさむね)さまの肉(にく)の宮(みや)を、178袖(そで)か袂(たもと)を皆(みな)銜(くは)へて引張(ひつぱ)つて来(く)るのだよ。179之(これ)が出来(でき)ぬやうの事(こと)だつたら、180お前(まへ)は犬(いぬ)より劣(おと)つた狐(きつね)だ。181如何(どう)しても今日中(けふぢう)に大広木(おほひろき)正宗(まさむね)さまの肉(にく)の宮(みや)を俺(わし)の前(まへ)につん出(だ)して下(くだ)さらなくちや、182もう此(この)お寅(とら)もお給仕(きふじ)致(いた)しませぬぞや。183お給仕(きふじ)どころか、184皆(みな)宮(みや)から放(ほ)り出(だ)して焼(や)いて了(しま)ふのだから、185お前(まへ)さまも今日(けふ)は千騎(せんき)一騎(いつき)の処(ところ)だ。186狐(きつね)が出世(しゆつせ)して神(かみ)の名(な)を名告(なの)り、187結構(けつこう)なお給仕(きふじ)をして頂(いただ)いた方(はう)がよいか、188放(ほ)り出(だ)されたがよいか、189ここは一(ひと)つ思案(しあん)のし所(どころ)ぢやぞや。190此(この)お寅(とら)に対(たい)しても素知(そし)らぬ顔(かほ)をして居(を)られる義理(ぎり)ぢやあるまい』
191と何時(いつ)の間(ま)にやら、192人(ひと)の前(まへ)も忘(わす)れて大(おほ)きな声(こゑ)で喋(しやべ)り出(だ)し、193ハツと気(き)がつき袖(そで)に口(くち)をあて、194顔(かほ)を隠(かく)しながら教祖(けうそ)の館(やかた)へ逸早(いちはや)く姿(すがた)を隠(かく)した。
195 五三公(いそこう)、196万公(まんこう)はアク、197タク、198テクを信者(しんじや)の中(なか)へ交(まじ)へ、199一同(いちどう)の噂(うはさ)を聞(き)き取(と)らしむべく云(い)ひ含(ふく)めおき、200松姫(まつひめ)の館(やかた)をさして上(のぼ)つて行(ゆ)く。
201七五三(しちごさん)の太鼓(たいこ)の音(ね)
202響(ひび)き渡(わた)ると諸共(もろとも)に
203彼処(かしこ)や此処(ここ)の宿舎(しゆくしや)より
204寄(よ)り集(あつ)まりし信徒(まめひと)は
205大門(おほもん)神社(じんしや)の広前(ひろまへ)に
206有難涙(ありがたなみだ)を零(こぼ)しつつ
207鼻汁(はな)をすすつて太祝詞(ふとのりと)
208唱(とな)へ居(ゐ)るこそ殊勝(しゆしよう)なれ
209お寅(とら)婆(ば)さまは中啓(ちうけい)を
210右手(めて)にキチンと握(にぎ)りしめ
211左(ひだり)の手(て)にて袖(そで)たたみ
212其(その)足音(あしおと)も淑(しとや)かに
213水色袴(みづいろばかま)をサラサラと
214音(おと)させながら五三公(いそこう)や
215万公(まんこう)其(その)外(ほか)三(さん)人(にん)を
216後(あと)に従(したが)へ神壇(しんだん)の
217前(まへ)に現(あら)はれ叩頭(こうとう)し
218手(て)を拍(う)ち終(をは)り例(れい)の如(ごと)
219天津(あまつ)祝詞(のりと)を奏上(そうじやう)し
220生神言(いくかみごと)を宣(の)りつれど
221心(こころ)乱(みだ)れし其(その)故(ゆゑ)か
222側(そば)より耳(みみ)たて覗(うかが)へば
223以前(いぜん)の如(ごと)く不可思議(ふかしぎ)な
224祝詞(のりと)の如(ごと)くに聞(きこ)え来(く)る
225心(こころ)のせいか耳(みみ)のせいか
226或(あるひ)は曲津(まがつ)の悪戯(いたづら)か
227合点(がてん)の行(ゆ)かぬ次第(しだい)ぢやと
228五三公(いそこう)、万公(まんこう)初(はじ)めとし
229並(な)み居(ゐ)る信者(しんじや)も首傾(くびかた)げ
230思案(しあん)にくれて居(ゐ)たりけり
231中上(ちうじやう)先生(せんせい)のアクさまは
232鳥(とり)なき郷(さと)の蝙蝠(かうもり)を
233気取(きど)つて壇上(だんじやう)にはね上(あが)り
234高卓子(たかテーブル)を前(まへ)に置(お)き
235コツプの水(みづ)をグツと飲(の)み
236演説(えんぜつ)気取(きど)りで述(の)べ立(た)てる
237其(その)スタイルの可笑(をか)しさよ
238懐(ふところ)探(さぐ)りて塵紙(ちりがみ)を
239取(と)り出(だ)し鼻(はな)をツンとかみ
240又(また)もや紙(かみ)を折(を)り重(かさ)ね
241再(ふたた)び鼻(はな)をツンとかみ
242目(め)やにを拭(ぬぐ)ひ歯糞(はくそ)とり
243無雑作(むざふさ)に懐(ふところ)へつつ込(こ)んで
244又(また)もやグツと水(みづ)を飲(の)み
245オホンと一声(ひとこゑ)咳払(せきばら)ひ
246(アク)『これこれ満場(まんぢやう)の諸君(しよくん)達(たち)
247貴方(あなた)は此処(ここ)の神(かみ)様(さま)を
248信仰(しんかう)なさるは宜(よ)けれども
249随分(ずゐぶん)用心(ようじん)なさらぬと
250商売(しやうばい)繁昌(はんじやう)病気(びやうき)平癒(へいゆ)
251子孫(しそん)長久(ちやうきう)は中々(なかなか)に
252思(おも)うた様(やう)には出来(でき)ませぬ
253天国(てんごく)浄土(じやうど)の有様(ありさま)を
254皆(みな)さま心(こころ)に刻(きざ)み込(こ)み
255中有界(ちううかい)や地獄道(ぢごくだう)
256いろいろ雑多(ざつた)の神(かみ)様(さま)の
257尊(たふと)き教(をしへ)を体得(たいとく)し
258置(お)かねば何程(なにほど)信神(しんじん)を
259して見(み)た処(ところ)で無益(むえき)ぞや
260私(わたし)はもとはバラモンの
261神(かみ)に仕(つか)へた者(もの)ですが
262野中(のなか)の森(もり)で図(はか)らずも
263三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)
264治国別(はるくにわけ)の弟(おとうと)なる
265松彦(まつひこ)一行(いつかう)に廻(めぐ)り会(あ)ひ
266誠(まこと)の道(みち)をよく悟(さと)り
267此処迄(ここまで)ついて参(まゐ)りました
268まだ温々(ぬくぬく)の信者(しんじや)とて
269教理(けうり)はしつかり知(し)らねども
270岡目(をかめ)八目(はちもく)人(ひと)の目(め)は
271あんまり違(ちが)ふものでない
272バラモン教(けう)に比(くら)ぶれば
273ウラナイ教(けう)はましだらう
274さはさりながら皆(みな)さまよ
275此処(ここ)に祀(まつ)つた神(かみ)さまは
276天地(てんち)の元(もと)の根本(こつぽん)の
277月日(つきひ)の神(かみ)や世(よ)の初(はじ)め
278御用(ごよう)なされた神(かみ)さまが
279祀(まつ)つてあると思(おも)ひますか
280それ程(ほど)尊(たふと)い神(かみ)ならば
281ウラナイ教(けう)を開(ひら)いたる
282高姫(たかひめ)さまは何(なん)として
283三五教(あななひけう)に兜(かぶと)脱(ぬ)ぎ
284黒姫(くろひめ)さまと諸共(もろとも)に
285神(かみ)の司(つかさ)になつただらう
286ここの点(てん)をばよくよくも
287考(かんが)へなさればウラナイの
288教(をしへ)の値打(ねうち)も分(わか)るでせう
289正宗(まさむね)さまの肉宮(にくみや)は
290信者(しんじや)となつて来(き)て居(を)つた
291衣笠村(きぬがさむら)のお民(たみ)さまと
292暗(やみ)に紛(まぎ)れて此(この)館(やかた)
293脱(ぬ)け出(い)で一本橋(いつぽんばし)渡(わた)り
294野中(のなか)の森(もり)を乗(の)り越(こ)えて
295もう今頃(いまごろ)は河鹿山(かじかやま)
296祠(ほこら)の森(もり)の近辺(きんぺん)に
297逃(に)げて行(い)つたに違(ちが)ひない
298お寅(とら)婆(ば)さまが驚(おどろ)いて
299髪(かみ)ふり乱(みだ)し其(その)後(あと)を
300追(お)つ駆(か)け行(ゆ)きし其(その)様(さま)を
301眺(なが)めて愛想(あいさう)がつきたぞえ
302之(これ)でも皆(みな)さま御(ご)一同(いちどう)は
303まだ懲(こ)りずまにウラナイの
304道(みち)を信仰(しんかう)なされますか
305一寸(ちよつと)意見(いけん)が尋(たづ)ねたい
306同(おな)じ事(こと)なら三五(あななひ)の
307神(かみ)の教(をしへ)を信仰(しんかう)して
308喜(よろこ)び勇(いさ)んで現界(げんかい)に
309生(うま)れ出(い)でたる本分(ほんぶん)を
310尽(つく)して神(かみ)をよく信(しん)じ
311天国(てんごく)浄土(じやうど)へ上(のぼ)るべき
312準備(じゆんび)を早(はや)くなされませ
313松姫(まつひめ)さまは久(ひさ)し振(ぶ)り
314別(わか)れて程経(ほどへ)し夫(つま)に会(あ)ひ
315夫婦(めをと)親子(おやこ)の名告(なの)りをば
316首尾(しゆび)克(よ)くなされましたぞや
317頂上(ちやうじやう)に建(た)つた石(いし)の宮(みや)
318三社(みやしろ)ともに祀(まつ)り替(か)へ
319此(この)世(よ)の元(もと)の神(かみ)様(さま)を
320斎(いつ)きまつりて天地(あめつち)に
321怯(お)ぢも恐(おそ)れも致(いた)さない
322国治立(くにはるたち)の大神(おほかみ)の
323誠(まこと)の御霊(みたま)を鎮祭(ちんさい)し
324神(かみ)の恵(めぐみ)を十分(じふぶん)に
325頂(いただ)く事(こと)になりました
326是非(ぜひ)に今夜(こんや)は小北山(こぎたやま)
327小宮(こみや)の端(はし)に至(いた)る迄(まで)
328一(ひと)つも残(のこ)らず祀(まつ)り替(か)へ
329変性(へんじやう)男子(なんし)の御(おん)霊(みたま)
330教(をし)へ給(たま)ひし神(かみ)様(さま)を
331お祀(まつ)り替(か)へる段取(だんどり)と
332愈(いよいよ)なつて来(き)ましたぞ
333嘸(さぞ)や皆(みな)さま驚(おどろ)いて
334狼狽(うろた)へなさることだらう
335もしや嫌(いや)なら今(いま)の内(うち)
336ここをば捨(す)ててスタスタと
337吾(わが)家(や)をさしてお帰(かへ)りよ
338あんまりうまい口車(くちぐるま)
339乗(の)り切(き)りなさつた皆(みな)さまは
340容易(ようい)に私(わたし)の言(い)ふ事(こと)を
341受取(うけと)り遊(あそ)ばす筈(はず)はない
342もしや此(この)中(うち)一人(ひとり)でも
343分(わか)つた人(ひと)があるならば
344今夜(こんや)の此処(ここ)の御(ご)遷宮(せんぐう)に
345参加(さんか)なさるが宜(よろ)しからう
346強(た)つて勧(すす)めはせぬ程(ほど)に
347一寸(ちよつと)気(き)をつけ置(お)きまする
348あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
349御霊(みたま)幸(さち)はひましませよ』
350 斯(かく)の如(ごと)くアク公(こう)は小北山(こぎたやま)の祭神(さいじん)の素性(すじやう)をスツパ抜(ぬ)いた。351百(ひやく)人(にん)許(ばか)り集(あつ)まつてゐた金太郎(きんたらう)の信者(しんじや)は俄(にはか)に騒(さわ)ぎ出(だ)し、352形勢(けいせい)刻々(こくこく)に怪(あや)しくなり、353彼方(あちら)此方(こちら)の隅々(すみずみ)から、
354(声)『アク公(こう)とやらを引摺(ひきず)り落(おと)せ、355叩(たた)き伸(の)ばせ、356道場(だうぢやう)破(やぶ)りだ、357宮(みや)つぶしだ。358俺(おれ)達(たち)は、359こんなことを聞(き)いて見逃(みのが)しにやならない。360リントウビテン大臣(だいじん)の生宮(いきみや)が承知(しようち)致(いた)さぬ』
361と喚(わめ)き立(た)てるものがある。362一方(いつぱう)には岩照姫(いはてるひめ)の生宮(いきみや)が承知(しようち)致(いた)さぬぞやと、363金切(かなき)り声(ごゑ)を絞(しぼ)つて泣声(なきごゑ)でぞめく。364其(その)外(ほか)五六七(みろく)成就(じやうじゆ)の大神(おほかみ)、365木曽(きそ)義姫(よしひめ)の大神(おほかみ)、366大照皇(たいせうくわう)大神宮(たいじんぐう)の肉宮(にくみや)などと自称(じしよう)する信者(しんじや)が、367俄(にはか)に狂(くる)ひ立(た)ち、368壇上(だんじやう)のアクを目(め)がけて襲撃(しふげき)し、369鉄拳(てつけん)の雨(あめ)を降(ふ)らす、370足(あし)を取(と)つて引摺(ひきず)りおとす、371恰(あだか)も日比谷(ひびや)ケ原(はら)の選良(せんりやう)其(その)儘(まま)の光景(くわうけい)を演出(えんしゆつ)した。372アクは人込(ひとごみ)の中(なか)を、373スバしこく潜(くぐ)つて姿(すがた)を隠(かく)した。374其(その)代(かは)りにタクが捉(とら)へられ、375悪言(あくげん)暴語(ばうご)の代償(だいしやう)として鉄拳(てつけん)の雨(あめ)を浴(あ)びせかけられ半死(はんし)半生(はんしやう)となつて、376其(その)場(ば)に倒(たふ)れて了(しま)つた。377忽(たちま)ち大門(おほもん)神社(じんしや)の広前(ひろまへ)は阿鼻(あび)叫喚(けうくわん)、378一大(いちだい)修羅場(しゆらぢやう)が勃発(ぼつぱつ)することとなつた。379あゝ叶(かな)はぬから目玉(めだま)飛出(とびだ)しましませよ。
380(大正一一・一二・一五 旧一〇・二七 北村隆光録)
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