霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
×
設定
URL:
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
行間
ルビの表示


アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注[※]用語解説 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

脚注[*]編集用 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

外字の外周色 [?]一般のフォントに存在しない文字は専用の外字フォントを使用しています。目立つようにその文字の外周の色を変えます。[×閉じる]
現在のページには外字は使われていません

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。

第一六章 想曖(おもひあひ)〔一二二六〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第46巻 舎身活躍 酉の巻 篇:第3篇 神明照赫 よみ(新仮名遣い):しんめいしょうかく
章:第16章 想曖 よみ(新仮名遣い):おもいあい 通し章番号:1226
口述日:1922(大正11)年12月16日(旧10月28日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年9月25日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一部の章はAIによって要約を作成しています。[×閉じる]:
お寅は小北山開設以来打って変った活き活きした顔をしながら、身も軽く箒や払いを持って室内の掃除に余念がなかった。そこへ寒そうに袖に手を入れ、失望落胆の極に達した魔我彦が淋しい容貌で入ってきた。
お寅は魔我彦を見て、神を理解せよと諭し、一個の罪人となって謙譲の徳を心につちかい養えば、たちまち天国が開けると説いた。
魔我彦はあくまで、お寅がそんなに元気になったのは蠑螈別と密かに会って、大金を手に入れる約束をしたからだろうと勘繰り、こうなったのも三五教の曲津神が善の仮面をかぶって小北山にやってきたからだとののしった。
魔我彦はあくまで、煩悶苦悩の淵に身を置くことこそ、永遠無窮の歓喜の園を開くのだ、万民を救うために苦悩することに意味があるのだと言い張る。
お寅は自分自身が不幸悲哀の淵に沈んでいて、どうして人が救えるのかと問い、自己を救い了解した上で初めて世を救い道を伝える完全な神力が備わるのだと説いた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2023-03-16 20:03:12 文字数:5067 OBC :rm4616
愛善世界社版:202頁 八幡書店版:第8輯 430頁 修補版: 校定版:213頁 普及版:81頁 初版: ページ備考:
001 お寅婆(とらばあ)さまは小北山(こぎたやま)開設(かいせつ)以来(いらい)の打(う)つて変(かは)つた活々(いきいき)とした水々(みづみづ)しい顔(かほ)をしながら、002身(み)も軽々(かるがる)しく、003棕櫚箒(しゆろばうき)や采払(さいはらひ)を持(も)ちて、004パタパタパタパタ、005スースースーと心(こころ)の清潔法(せいけつはふ)をすませ、006室内(しつない)の掃除(さうぢ)に余念(よねん)なかつた。007そこへ寒(さむ)さうに筒袖(つつそで)の中(なか)へ手(て)を入(い)れて、008フーフーと冷(つめ)たい空気(くうき)を吹(ふ)きながらやつて来(き)たのは魔我彦(まがひこ)であつた。009殆(ほとん)ど失望(しつばう)落胆(らくたん)の極(きよく)に達(たつ)し、010地獄(ぢごく)の底(そこ)から捕手(とりて)の出(で)て来(き)たやうな、011えも言(い)はれぬ淋(さび)しい容貌(ようばう)を曝(さら)け出(だ)して入(はい)つて来(き)た。
012お寅(とら)『魔我彦(まがひこ)さま、013一寸(ちよつと)鏡(かがみ)を見(み)て御覧(ごらん)、014お前(まへ)の顔(かほ)は年(とし)の若(わか)いにも似(に)ず八十爺(はちじふぢい)さまのやうな萎(しな)びやうだよ。015チツト心(こころ)の持方(もちかた)を変(か)へなくちや駄目(だめ)ですよ』
016魔我(まが)『余(あま)り馬鹿(ばか)らしくて、017世(よ)の中(なか)が淋(さび)しくなり、018何(なん)とはなしに不平(ふへい)の雲(くも)が襲(おそ)つて来(き)て、019地(ち)の上(うへ)に身(み)をおく所(ところ)もない様(やう)な思(おも)ひが致(いた)します。020それにお寅(とら)さま、021貴女(あなた)は今日(けふ)に限(かぎ)つて、022大変(たいへん)水々(みづみづ)しい愉快(ゆくわい)さうな顔(かほ)をしてゐるぢやありませぬか。023○○博士(はかせ)の若返(わかがへ)り法(はふ)でも研究(けんきう)なさつたのですか。024但(ただ)しはニコニコ雑誌(ざつし)でも耽読(たんどく)されたのですか。025大変(たいへん)な変(かは)り様(やう)ですワ』
026お寅『ニコニコ雑誌(ざつし)や若返(わかがへ)り法(はふ)位(ぐらゐ)で、027さう俄(にはか)に元気(げんき)が出(で)るものですか。028そんな人間(にんげん)の頭脳(づなう)から捻(ひね)り出(だ)した厄雑物(やくざもの)で、029何(ど)うしてこんな愉快(ゆくわい)な気分(きぶん)になれるものですか』
030魔我彦『それなら何(ど)うすればよいのです。031何(なん)だかそこら中(ぢう)がウヂウヂして来(き)て、032冬(ふゆ)の冷(つめ)たい日(ひ)に雪隠(せつちん)の中(なか)へ突(つ)つ込(こ)まれたやうな、033クソ面白(おもしろ)くもない空気(くうき)に襲(おそ)はれて仕方(しかた)がありませぬ』
034お寅『お前(まへ)さまは神(かみ)様(さま)に対(たい)して、035真(しん)の理解(りかい)がないからだ。036神(かみ)様(さま)さへ理解(りかい)すれば、037すぐに私(わたし)のやうに、038地獄(ぢごく)は忽(たちま)ち化(くわ)して天国(てんごく)の境域(きやうゐき)に進(すす)むことが出来(でき)るのだよ』
039魔我彦『神(かみ)を理解(りかい)せよと云(い)つたつて、040人間(にんげん)の知慧(ちゑ)には限(かぎ)りがあります。041これだけウラナイの尊(たふと)き教(をしへ)を信(しん)じ神々(かみがみ)様(さま)を念(ねん)じながら、042狐(きつね)につままれて馬鹿(ばか)を見(み)せられるのだから、043私(わたし)は神(かみ)の存在(そんざい)を疑(うたが)ひます』
044お寅『神(かみ)の存在(そんざい)を認(みと)めず、045神(かみ)の救(すく)ひを忘(わす)れた時(とき)は心身(しんしん)共(とも)に衰耗(すゐもう)廃絶(はいぜつ)するものだ。046そして神(かみ)の愛(あい)と神(かみ)の信(しん)とに直接(ちよくせつ)触(ふ)れ、047真(しん)に理解(りかい)した時(とき)は忽(たちま)ち歓喜(くわんき)の夕立(ゆふだち)、048吾(わが)全身(ぜんしん)を浸(ひた)し、049霊肉(れいにく)共(とも)に不老(ふらう)不死(ふし)的(てき)に栄(さか)えるものだ。050併(しか)しながらヘグレ神社(じんしや)や種物(たねもの)神社(じんしや)では駄目(だめ)ですよ。051お前(まへ)さまもよい加減(かげん)に、052義理(ぎり)天上(てんじやう)日(ひ)の出神(でのかみ)の雅号(ががう)を返上(へんじやう)しなさい、053そして一個(いつこ)の罪人(つみびと)とおなりなさい。054卑(いや)しき一個(いつこ)の下僕(しもべ)となり、055乞食(こじき)の靴(くつ)を取(と)る謙譲(けんじやう)の徳(とく)を心(こころ)の畠(はたけ)に培(つちか)ひ養(やしな)ひさへすれば、056忽(たちま)ち天国(てんごく)は開(ひら)けますよ』
057魔我彦『それだと云(い)つて、058今(いま)まで一生(いつしやう)懸命(けんめい)に信仰(しんかう)して来(き)たユラリ彦様(ひこさま)やヘグレ神社(じんじや)、059種物(たねもの)神社(じんじや)、060大門(おほもん)神社(じんしや)の神々(かみがみ)様(さま)を捨(す)てる事(こと)は出来(でき)ませぬ。061さうクレクレと此(この)頃(ごろ)の空(そら)の様(やう)に変(かは)つては、062誠(まこと)が貫(つらぬ)けますまい』
063お寅『お前(まへ)さまは神(かむ)素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)様(さま)の御(ご)仁慈(じんじ)を有難(ありがた)く思(おも)ひませぬか。064救世主(きうせいしゆ)だといふ事(こと)が理解(りかい)されませぬか』
065魔我彦『何処迄(どこまで)も私(わたし)は信(しん)じられませぬ。066お寅(とら)さま、067よく考(かんが)へてごらん、068素盞嗚(すさのをの)尊(みこと)を信(しん)ずるのならば、069別(べつ)にウラナイ教(けう)を立(た)てたり、070小北山(こぎたやま)の神殿(しんでん)を造営(ざうえい)し、071一派(いつぱ)を立(た)てる必要(ひつえう)はないぢやありませぬか』
072お寅『そこが改心(かいしん)といふものだ。073間違(まちが)つて居(を)つたといふことが分(わか)れば、074直様(すぐさま)改(あらた)めるのが人間(にんげん)の務(つと)めだ。075何程(なにほど)魔我彦(まがひこ)さまが神力(しんりき)が強(つよ)うても、076荒金(あらがね)の土(つち)を主管(しゆくわん)し給(たま)ふ瑞(みづ)の御霊(みたま)の御(ご)神徳(しんとく)に比(くら)べては大海(たいかい)の一滴(いつてき)、077どうして比較(ひかく)になりませう。078チツと胸(むね)に手(て)を当(あ)てて御(お)考(かんが)へなさい』
079魔我彦『お寅(とら)さま、080貴女(あなた)はさう生々(いきいき)として元気(げんき)さうに言(い)つてゐるのは、081要(えう)するに三万(さんまん)両(りやう)のお土産(みやげ)を蠑螈別(いもりわけ)から貰(もら)つたからだらう』
082お寅『エヽあた汚(きたな)い、083お前(まへ)さまはそれだから苦(くるし)むのだ。084吾(われ)と吾(わが)心(こころ)に造(つく)つた鬼(おに)に責(せ)められてゐるのだよ。085物質(ぶつしつ)的(てき)の欲望(よくばう)なんか物(もの)の数(かず)でもありませぬワ。086それよりも、087モツトモツト尊(たふと)い宝(たから)が、088そこら中(ぢう)にブラついてゐることをお悟(さと)りなさい。089夢(ゆめ)の中(なか)で貰(もら)つた三万(さんまん)両(りやう)は、090物質(ぶつしつ)的(てき)の宝(たから)としては使(つか)へばなくなるものだ。091仮令(たとへ)それが現実(げんじつ)の黄金(わうごん)にした所(ところ)で、092一(ひと)つお宮(みや)を建(た)てたら、093それで仕舞(しまひ)ぢやないか。094何程(なにほど)使(つか)つても使(つか)ひ切(き)れぬ、095使(つか)へば使(つか)ふ程(ほど)殖(ふ)える無限(むげん)の宝(たから)がおちてゐるのだよ。096それを拾(ひろ)ふのが神(かみ)を信仰(しんかう)する者(もの)の余徳(よとく)だ。097その尊(たふと)い神(かみ)の御(ご)余光(よくわう)を毎日(まいにち)日日(ひにち)ふみつけてゐるのだから、098駄目(だめ)だよ。099お金(かね)で譬(たと)へたら、100幾(いく)十万億(じふまんおく)両(りやう)とも知(し)れぬお宝(たから)を、101私(わたし)は頂戴(ちやうだい)したのだ、102つまり世界一(せかいいち)の富者(ふうしや)になつたのだ。103それだから此(この)通(とほ)り若(わか)やいで活々(いきいき)としてゐるのだよ』
104魔我彦『お寅(とら)さま、105世(よ)の中(なか)に阿呆(あはう)と気違(きちがひ)位(ぐらゐ)幸福(かうふく)な者(もの)はありませぬネ。106お前(まへ)さまは夜前(やぜん)狐(きつね)につままれて、107三万(さんまん)両(りやう)の金(かね)を貰(もら)つたのでせう。108そして蠑螈別(いもりわけ)さまとしつぽり会(あ)つたのでせう。109それから二世(にせ)も三世(さんぜ)もといふお目出度(めでた)い情約(じようやく)を締結(ていけつ)し、110批准(ひじゆん)交換(かうくわん)がすんだと思(おも)つて喜(よろこ)んでゐるのでせう。111そんな泡沫(はうまつ)に等(ひと)しき喜(よろこ)びは、112霧(きり)の如(ごと)く煙(けむり)の如(ごと)く、113瞬(またた)く間(うち)に消滅(せうめつ)して了(しま)ひますよ。114其(その)時(とき)にアフンとせないやうになさいませや』
115お寅『お前(まへ)も狐(きつね)に騙(だま)され、116お民(たみ)さまと手(て)に手(て)を取(と)つて、117二十万(にじふまん)両(りやう)の持参金(ぢさんきん)と共(とも)に小北山(こぎたやま)の教祖(けうそ)になると云(い)つて、118顎(あご)まで外(はづ)して居(を)つたぢやないか。119なぜそんな目(め)に遇(あ)つたのか、120分(わか)つてゐますか』
121魔我彦『三五教(あななひけう)の曲津(まがつ)神(かみ)が善(ぜん)の仮面(かめん)を被(かぶ)り、122六(ろく)人(にん)もやつて来(き)やがつて、123いろいろと奇怪(きくわい)な事(こと)ばかり致(いた)し此(この)聖場(せいぢやう)を蹂躙(じうりん)せむとして居(ゐ)るのですよ。124私(わたし)は昨日(きのふ)の事(こと)からスツカリ目(め)が覚(さ)めました。125お前(まへ)さまはまだ年(とし)がよつて居(ゐ)るので、126精神(せいしん)上(じやう)の欠陥(けつかん)がヒドイと見(み)えて、127依然(いぜん)として狐(きつね)につままれ、128糞壺(くそつぼ)へ投込(なげこ)まれて結構(けつこう)な温泉(をんせん)へ入(はい)つたと思(おも)ひ、129牛糞(うしぐそ)や馬糞(うまぐそ)をつきつけられて結構(けつこう)な牡丹餅(ぼたもち)と信(しん)じ、130瓦(かはら)かけを持(も)たされて三万(さんまん)両(りやう)の黄金(わうごん)だと思(おも)つてゐるのだから、131本当(ほんたう)にお目出度(めでた)いものだ。132一層(いつそう)の事(こと)、133お前(まへ)さまのやうに無知識(むちしき)に生(うま)れて来(き)たら、134此(この)世(よ)を夢現(ゆめうつつ)で喜(よろこ)んで暮(くら)せるのだけれど、135何(なん)と云(い)つても知識(ちしき)の光(ひかり)が強(つよ)いものだから、136お前(まへ)さまのやうな気(き)にはなれませぬワイ。137鑑別(かんべつ)だとか、138認識(にんしき)だとか、139肯定(こうてい)だとか、140否定(ひてい)だとか、141いろいろの什器(じふき)が心(こころ)の宝庫(はうこ)に充実(じうじつ)してるのだから、142私(わたし)の悲痛(ひつう)な思(おも)ひは、143要(えう)するに将来(しやうらい)の歓喜(くわんき)の源泉(げんせん)となるものだ。144お前(まへ)さまの歓喜(くわんき)は、145丁度(ちやうど)阿片(あへん)煙草(たばこ)に熟睡(じゆくすい)して世事(せじ)万端(ばんたん)を忘(わす)れ、146夢(ゆめ)の世界(せかい)に逍遥(せうえう)し恍惚(くわうこつ)とし霊肉(れいにく)を蕩(とろ)かしてるやうなものだ。147丁度(ちやうど)田螺(たにし)の母親(ははおや)が、148自分(じぶん)の生(う)んだ沢山(たくさん)な子(こ)に、149体(からだ)を餌食(ゑじき)にされ、150いつとはなしになめ尽(つく)されて、151愉快(ゆくわい)な気(き)になつてゐる間(うち)に、152自分(じぶん)の肉体(にくたい)をスツカリ食(く)ひ殺(ころ)されてる様(やう)な愉快(ゆくわい)さだ。153コレ寅(とら)さま、154チツト気(き)をつけないと駄目(だめ)ですよ。155変性(へんじやう)女子(によし)の悪御霊(あくみたま)が、156全力(ぜんりよく)をあげて小北山(こぎたやま)を滅亡(めつぼう)せしめむとして千変(せんぺん)万化(ばんくわ)の画策(くわくさく)をめぐらしてゐるのだからなア。157灯台(とうだい)下暗(もとくら)しと云(い)ふからは、158中々(なかなか)油断(ゆだん)がなりませぬぞ。159お前(まへ)さまがそんな心(こころ)で、160何(ど)うして此(この)小北山(こぎたやま)の本山(ほんざん)が立(た)つて行(ゆ)きますか。161チツトしつかりして貰(もら)はないと、162淋(さび)しくてたまらぬぢやありませぬか』
163お寅『あゝ困(こま)つた男(をとこ)だなア、164これ程(ほど)言(い)つても目(め)が覚(さ)めぬのかなア』
165魔我彦『あゝ困(こま)つた婆(ば)アさまだなア、166何(なん)と云(い)つても思想(しさう)が単純(たんじゆん)だから、167私(わたし)の言(い)ふ事(こと)が、168充分(じうぶん)魂(みたま)に沁(し)み込(こ)まないと見(み)えるワイ。169女子(ぢよし)と小人(せうにん)は養(やしな)ひ難(がた)しとは、170あゝよく言(い)つたものだ』
171お寅『本当(ほんたう)にお前(まへ)と私(わたし)と斯(か)うして寝食(しんしよく)を共(とも)にし、172口(くち)の中(なか)に入(い)れたものでも食(く)ひ合(あ)ふやうにしてゐる親(した)しい近(ちか)い仲(なか)でも、173心(こころ)は千(せん)里(り)の距離(きより)があるのだから、174どうしても容易(ようい)にバツが合(あ)はないのだ。175これ魔我彦(まがひこ)さま、176一(ひと)つ直日(なほひ)の霊(みたま)に見直(みなほ)し聞直(ききなほ)し、177省(かへり)みたら何(ど)うだい』
178魔我彦『あゝお寅(とら)さまは、179たうとう地獄(ぢごく)の底(そこ)へ落(お)ちて了(しま)つたのだなア、180本当(ほんたう)に可哀(かあい)さうだ。181世界(せかい)の人民(じんみん)も救(すく)うてやらねばならないが、182肝腎要(かんじんかなめ)のお寅(とら)さまから救(すく)ひ助(たす)けておかねば、183到底(たうてい)万民(ばんみん)を助(たす)ける事(こと)は出来(でき)ない、184困(こま)つた事(こと)になつて来(き)たワイ』
185お寅『魔我彦(まがひこ)さま、186お前(まへ)は救(すく)はれてゐる積(つもり)かい。187貴方(あなた)御(ご)自身(じしん)が真(まこと)の神(かみ)の愛(あい)にふれ、188真(まこと)の信仰(しんかう)に接(せつ)し、189真(しん)の神(かみ)を理解(りかい)することが出来(でき)て、190お前(まへ)の魂(みたま)も肉体(にくたい)も天国(てんごく)浄土(じやうど)の歓喜(くわんき)を味(あぢ)はふ事(こと)が出来(でき)ましたか。191それから一(ひと)つ聞(き)かして貰(もら)ひたい』
192魔我彦『始(はじめ)から何事(なにごと)も都合(つがふ)よく行(ゆ)くものぢやない、193私(わたし)は今(いま)煩悶(はんもん)苦悩(くなう)の最中(さいちう)だよ。194本当(ほんたう)に此(この)世(よ)が厭(いや)になることが幾度(いくたび)あるか知(し)れない。195そこを耐(こら)へ忍(しの)んで行(ゆ)きさへすれば、196所謂(いはゆる)天国(てんごく)の門(もん)が開(ひら)かれるのだ。197人間(にんげん)は悲境(ひきやう)のドン底(ぞこ)に沈(しづ)んだ時(とき)に於(おい)て始(はじ)めて幸(さいはひ)の種(たね)を蒔(ま)くものだ。198幸(さいはひ)の時(とき)、199得意(とくい)満面(まんめん)の時(とき)に却(かへ)つて地獄(ぢごく)の種(たね)を蒔(ま)いてゐるのだ。200お前(まへ)は曲神(まがかみ)に誑惑(きやうわく)されて地獄(ぢごく)に落(お)ちながら、201まだ目(め)が覚(さ)めないのだよ、202本当(ほんたう)に可哀(かあい)さうなものだなア。203此(この)魔我彦(まがひこ)は今(いま)や天国(てんごく)の門(もん)を開(ひら)かむとする首途(かどで)にあるのだ。204よい後(あと)は悪(わる)い、205悪(わる)い後(あと)はよいと云(い)つてなア、206今(いま)の間(うち)に苦(くるし)みをしておけば、207永遠(ゑいゑん)無窮(むきう)の歓喜(くわんき)の園(その)を開(ひら)く事(こと)になるのだ。208あゝ惟神(かむながら)霊(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)……どうぞお寅(とら)さまの曇(くも)り切(き)つた魂(みたま)が豁然(くわつぜん)として開(ひら)けますやう、209魔我彦(まがひこ)がお願(ねが)ひ致(いた)します。210ユラリ彦(ひこ)の大神(おほかみ)様(さま)、211五六七(みろく)成就(じやうじゆ)の大神(おほかみ)様(さま)……』
212お寅『コレ魔我(まが)さま、213ユラリ彦(ひこ)さまも、214ヘグレ神社(じんじや)さまも、215モウ言(い)つておくれな、216私(わたし)は本当(ほんたう)の信仰(しんかう)を握(にぎ)つたのだから。217よく考(かんが)へて御覧(ごらん)なさい。218人間(にんげん)は永遠(ゑいゑん)無窮(むきう)に生(い)き通(とほ)しだよ。219僅(わづ)か二百(にひやく)年(ねん)や三百(さんびやく)年(ねん)の肉体(にくたい)を受得(じゆとく)する為(ため)に生(うま)れて来(き)たのではない。220天国(てんごく)浄土(じやうど)に於(おい)て永遠(ゑいゑん)無窮(むきう)に繁(しげ)り栄(さか)え、221天国(てんごく)の御用(ごよう)をする為(ため)に生(うま)れて来(き)たのだ。222吾々(われわれ)の意志(いし)も観念(くわんねん)も記憶(きおく)も正(ただ)しい知識(ちしき)も一切(いつさい)残(のこ)らず高天原(たかあまはら)の天国(てんごく)へ此(この)儘(まま)留存(りうぞん)して行(ゆ)くのだから、223現肉体(げんにくたい)のある間(うち)に歓喜(くわんき)の雨(あめ)にぬれ、224此(この)身(み)此(この)儘(まま)天国(てんごく)の住民(ぢゆうみん)となつておかねば、225どうして死後(しご)の生涯(しやうがい)が楽(たの)しく送(おく)れませうか。226此(この)世(よ)の中(なか)は神(かみ)の造(つく)り給(たま)うたものだから悩(なや)み苦(くるし)みなどのあるべき筈(はず)がない。227豁然(くわつぜん)として神(かみ)の真(まこと)の愛(あい)にふれ、228真(まこと)の知慧(ちゑ)にふれ、229神(かみ)様(さま)を理解(りかい)する事(こと)が出来(でき)たならば、230此(この)世(よ)此(この)儘(まま)最上(さいじやう)天国(てんごく)だよ。231悲痛(ひつう)な思(おも)ひをしたり些々(ささ)たる欲望(よくばう)に心(こころ)を悩(なや)めてゐるのは、232所謂(いはゆる)此(この)世(よ)からなる地獄道(ぢごくだう)に陥没(かんぼつ)してゐるのだ。233お前(まへ)さまは小智(せうち)小欲(せうよく)が勝(か)つてゐるから、234自(みづか)ら造(つく)つた地獄(ぢごく)へ落(お)ち、235自(みづか)ら築(きづ)いた牢獄(らうごく)に呻吟(しんぎん)してゐるのだ。236一(いち)日(にち)でも此(この)世(よ)に於(おい)て歓喜(くわんき)と感謝(かんしや)の生活(せいくわつ)を続(つづ)け、237仮令(たとへ)一息(ひといき)の間(ま)も悲観(ひくわん)などしちや仁慈(じんじ)の神(かみ)様(さま)へ対(たい)して大変(たいへん)な罪(つみ)になりますぞや。238人(ひと)は心(こころ)の持様(もちやう)一(ひと)つだよ』
239魔我彦『それでも、240苦労(くらう)を致(いた)せよ、241苦労(くらう)致(いた)さねば誠(まこと)の花(はな)は咲(さ)かぬぞよ……と神(かみ)様(さま)は仰有(おつしや)るぢやありませぬか。242世(よ)の為(ため)、243人(ひと)の為(ため)、244道(みち)の為(ため)に苦(くるし)み且(か)つ世(よ)を悲(かな)しむのは最善(さいぜん)の人事(じんじ)ぢやありませぬか。245吾(わが)身(み)をすてて万民(ばんみん)を救(すく)ふといふ事(こと)は善事中(ぜんじちう)の善事(ぜんじ)でせう。246それだから私(わたし)は何(ど)うなつてもいい、247人(ひと)さへ助(たす)かれば、248それで人間(にんげん)の本分(ほんぶん)が尽(つく)せるもの、249神(かみ)様(さま)に対(たい)して忠実(ちうじつ)な御(ご)奉公(ほうこう)だと確(かた)く信(しん)じてゐるのだ』
250お寅『ホツホヽヽヽ、251何(なん)と分(わか)らぬ男(をとこ)だこと、252どうにも斯(か)うにも助(たす)け様(やう)がないワ。253お前(まへ)さま、254自分(じぶん)が不幸(ふかう)悲哀(ひあい)の淵(ふち)に沈(しづ)み、255涙(なみだ)の生活(せいくわつ)を送(おく)りながら、256どうして人(ひと)が救(すく)へると思(おも)つてゐますか、257先(ま)づ自己(じこ)を救(すく)ひ、258自己(じこ)を了解(れうかい)した上(うへ)で、259始(はじ)めて世(よ)を救(すく)ひ、260道(みち)を伝(つた)ふる完全(くわんぜん)な神力(しんりき)が備(そな)はるぢやありませぬか。261よう考(かんが)へて御覧(ごらん)なさい、262ここに一人(ひとり)の川(かは)はまりがある。263今(いま)已(すで)に溺(おぼ)れ死(し)せむとしてゐる所(ところ)を人(ひと)が通(とほ)る、264モシ其(その)人(ひと)が盲(めくら)であつたならば、265救(すく)ひを求(もと)むる声(こゑ)は聞(きこ)えても、266決(けつ)して救(すく)ふ事(こと)は出来(でき)ますまい。267此(この)時(とき)には水泳(すゐえい)に達(たつ)した人(ひと)で、268体(からだ)の壮健(さうけん)な、269目(め)の見(み)える人間(にんげん)でなければ、270其(その)溺没者(できぼつしや)を救(すく)ふといふ事(こと)は到底(たうてい)不可能(ふかのう)でせう。271それだからお前(まへ)さまも、272先(ま)づ自己(じこ)を強(つよ)くし、273自己(じこ)を照(てら)し、274自己(じこ)の神力(しんりき)を十二分(じふにぶん)に受(う)けなくてはなりませぬ。275神力(しんりき)さへ備(そな)はらば、276自然(しぜん)に歓喜(くわんき)の悦楽(えつらく)が吾(わが)身辺(しんぺん)を襲(おそ)うて来(く)るものだ。277私(わたし)も夜前(やぜん)から神(かみ)の慈光(じくわう)に照(てら)されて、278悲哀(ひあい)の極(きよく)、279遂(つひ)に歓楽境(くわんらくきやう)に救(すく)はれたのだ。280どうぞして、281お前(まへ)を私(わたし)と同(おな)じ精神(せいしん)状態(じやうたい)に救(すく)うてやりたいのだが、282余(あま)り距離(きより)があるので、283可哀(かあい)さうながら救(すく)ふ事(こと)が出来(でき)ないのかな。284併(しか)し乍(なが)ら私(わたし)も第一(だいいち)着手(ちやくしゆ)としてお前(まへ)を救(すく)ふ事(こと)が出来(でき)ないやうで、285何(ど)うして万民(ばんみん)を救(すく)ふ事(こと)が出来(でき)よう。286あゝ私(わたし)は、287大変(たいへん)な神(かみ)様(さま)から試験(しけん)をうけてるやうだ。288魔我彦(まがひこ)峠(たうげ)を突破(とつぱ)するのは中々(なかなか)容易(ようい)ぢやないワイ。289あゝ神(かみ)様(さま)、290あなたの御(ご)慈光(じくわう)に依(よ)つて、291私(わたし)に誠(まこと)の光(ひかり)と誠(まこと)の愛(あい)をお与(あた)へ下(くだ)さいまして、292魔我彦(まがひこ)が心(こころ)に潜(ひそ)む曲(まが)を照(てら)し、293どうぞ天国(てんごく)浄土(じやうど)へ霊肉(れいにく)共(とも)に導(みちび)かして下(くだ)さいませ。294偏(ひとへ)に神(かみ)の御(ご)恩寵(おんちやう)を御(お)願(ねが)ひ申上(まをしあ)げ奉(たてまつ)ります』
295魔我彦『あゝあ、296どうしても駄目(だめ)だなア、297可哀(かあい)さうなものだ。298私(わたし)も此(この)お寅(とら)さまを第一(だいいち)着手(ちやくしゆ)として救(すく)はなくちや到底(たうてい)万民(ばんみん)を救(すく)ふ事(こと)は出来(でき)ぬであらう。299どうぞユラリ彦(ひこ)の神(かみ)様(さま)、300ヘグレ神社(じんじや)の大神(おほかみ)様(さま)、301あなたの栄光(えいくわう)と権威(けんゐ)と慈愛(じあい)とに依(よ)りまして、302可憐(かれん)なるお寅(とら)婆(ば)アさま、303魔我彦(まがひこ)が最(もつと)も敬愛(けいあい)する此(この)老婦人(らうふじん)の心(こころ)に一道(いちだう)の光明(くわうみやう)を与(あた)へ下(くだ)さいまして、304あなたをよく信(しん)じ、305あなたを理解(りかい)し、306あなたの愛(あい)を徹底(てつてい)的(てき)に悟(さと)る事(こと)が出来(でき)ますやうに、307特別(とくべつ)の御(ご)恩寵(おんちやう)を此(この)老婦人(らうふじん)の上(うへ)に垂(た)れさせ給(たま)はむ事(こと)を、308偏(ひとへ)に希(こひねが)ひ上(あ)げ奉(たてまつ)ります。309あゝ惟神(かむながら)霊(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)、310末代(まつだい)日(ひ)の王天(わうてん)の神(かみ)様(さま)、311五六七(みろく)成就(じやうじゆ)の大神(おほかみ)様(さま)、312旭(あさひ)の豊栄昇(とよさかのぼ)り姫(ひめ)様(さま)、313義理(ぎり)天上(てんじやう)日(ひ)の出神(でのかみ)様(さま)、314大広木(おほひろき)正宗(まさむね)様(さま)、315大将軍(だいしやうぐん)様(さま)、316常世姫(とこよひめ)様(さま)、317偏(ひとへ)にお願(ねが)ひ申上(まをしあ)げ奉(たてまつ)ります』
318お寅『コレ魔我彦(まがひこ)さま、319モウ其(その)神名(しんめい)は私(わたし)の前(まへ)で言(い)つて下(くだ)さるなといふに、320訳(わけ)の分(わか)らぬ人(ひと)だなア、321どしても目(め)が覚(さ)めぬのかいなア、322あゝ何(ど)うしたらよからうぞ、323惟神(かむながら)霊(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)、324国治立(くにはるたちの)大神(おほかみ)様(さま)……』
325魔我彦『あゝ何(ど)うしたら、326お寅(とら)さまの迷(まよ)ひを解(と)く事(こと)が出来(でき)るだらう、327あゝ惟神(かむながら)霊(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)』
328(大正一一・一二・一六 旧一〇・二八 松村真澄録)
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス】
合言葉「みろく」を入力して下さい→