霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一〇章 震士(しんし)震商(しんしやう)〔一二四三〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第47巻 舎身活躍 戌の巻 篇:第2篇 中有見聞 よみ(新仮名遣い):ちゅううけんぶん
章:第10章 震士震商 よみ(新仮名遣い):しんししんしょう 通し章番号:1243
口述日:1923(大正12)年01月09日(旧11月23日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年10月6日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
治国別と竜公は、伊吹戸主神の関所で優待されしばらく休息していた。するとその前を勢いよく通りかかった六十男がある。赤顔の守衛があわてて男を引き留める。
男は鬼淫偽員の欲野深蔵だと名乗り、威張りかえっている。守衛たちに尋問された深蔵は、逆におかしな理屈をまくし立て、大股で関所を突破しようとした。
この騒ぎに伊吹戸主の神は関所の窓を開けてちょっと覗かせ給うた。欲野深蔵は伊吹戸主神の霊光に打たれてその場に悶絶し、泡を吹いて苦しみだした。番卒たちは深蔵の体を荷車に乗せ、地獄道の大門内へ運び去ってしまった。
八衢では、色の白い守衛が天国に行くべき人間を調べ、恐ろしい顔の赤い守衛が地獄へ行くべき人間を調べることになっている。
しばらくすると、バラモン教の宣伝使がここをくぐろうとした。宣伝使は自分が死んだことに気付かずに門を通ろうとするが、守衛に一喝されてようやくここが死後の世界であることを認めた。
守衛の取り調べにより、この宣伝使は神を信ぜずに世人を迷わせた偽宣伝使であることが判明したが、神の存在を無信仰者に伝えた徳によって地獄行きだけは免れた。そして、しばらく中有界で心を磨いて修業する猶予を与えらえた。
守衛は、その間に神様の御神格の内流を得て善と真を知覚し、意識し、証覚しうるものであり、自分の力でそれを得ると思ったら、たちまち天の賊となって地獄へおちなければならない、と注意を与えた。
治国別と竜公は、この様子を見ながら話し合っている。治国別は、善のために善をおこない真のために真を行う真人間にならなければならないと自らを省みた。そして、少しばかり言霊が利くようになったのは自分が修業した結果神力が備わったと思っていたが、それはたいへんな間違いであったと悟った。
いずれも瑞の御霊・神素盞嗚尊様の御神格が自分の精霊を充たし、肉体をお使いになっておられたということに思い至った。そして神様の恵みによってはっきりと霊界の様子を見、悟らせていただいたことに感謝を表した。
治国別と竜公が、神の諭しへの感謝の涙に暮れていると、伊吹戸主神は会釈して座を立ち、館の奥深くに入らせ給うた。二人がその姿を見ると、伊吹戸主神は丸い玉のように光り輝き、その神姿は判然と見えず、月のような光が七つ八つ九つの円球の周囲を取り巻き、次第に奥の間に隠れ給うのだった。
智慧と証覚のすぐれた神人を、それより劣った証覚者が拝するときは、光のように見えて目もまばゆくなるもののである。神の神格は神善と神真であり、それより発する智慧証覚はすなわち光である。
二人は愕然としてものも言わず、再び関所に目を放ち、ここに集まり来る精霊の様子を瞬きもせずにうかがっていた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2023-04-22 18:58:05 OBC :rm4710
愛善世界社版:143頁 八幡書店版:第8輯 524頁 修補版: 校定版:151頁 普及版:70頁 初版: ページ備考:
001 治国別(はるくにわけ)002竜公(たつこう)両人(りやうにん)伊吹戸主(いぶきどぬし)(かみ)関所(せきしよ)(おい)優待(いうたい)され茶果(さくわ)饗応(きやうおう)せられ、003少時(しばらく)休息(きうそく)してゐると、004(その)(まへ)をスタスタと(いきほひ)よく(とほ)りかかつたデツプリ()えた六十(ろくじふ)(をとこ)がある。
005 赤顔(あかがほ)守衛(しゆゑい)はあわてて、006(その)(をとこ)()きとめ、
007赤顔の守衛『コラ()てツ』
008一喝(いつかつ)した。009(をとこ)(あと)振返(ふりかへ)り、010不機嫌(ふきげん)(かほ)をして、
011男(欲野深蔵)(なん)天下(てんか)大道(だいだう)往来(わうらい)するのに、012()てと()つて(さまた)げる不道理(ふだうり)(こと)があるか、013エー、014(おれ)をどなたと心得(こころえ)()る。015(しやう)死位(しゐ)(くん)死等(しとう)死爵(ししやく)鬼族婬(きぞくゐん)偽員(ぎゐん)欲野(よくの)深蔵(ふかざう)といふ紳士(しんし)だ。016邪魔(じやま)(いた)すと、017交番(かうばん)引渡(ひきわた)さうか』
018赤顔の守衛『オイ、019(その)(はう)はここをどこと心得(こころえ)()る』
020欲野深蔵()はいでもきまつた(こと)だ。021野蛮(やばん)未開(みかい)北海道(ほくかいだう)ぢやないか』
022赤顔の守衛(その)(はう)()うして此処(ここ)()たのだ』
023欲野深蔵空中(くうちう)視察(しさつ)(ため)024飛行機(ひかうき)()つて()つた(ところ)025プロペラの加減(かげん)(わる)くて、026風波(かざなみ)でこんな(はう)へやつて()たのだ。027()うだ(おれ)本国(ほんごく)案内(あんない)してくれないか、028さうすりや(くさ)つた(さけ)一杯(いつぱい)()ましてやらぬこともないワイ』
029赤顔の守衛『コリヤコリヤ欲野(よくの)深蔵(ふかざう)030ここは冥途(めいど)だぞ、031(あめ)八衢(やちまた)()らぬか』
032欲野深蔵鳴動(めいどう)爆発(ばくはつ)もあつたものかい、033そんなメードウな(こと)()ふない、034(おれ)こそはフサの(くに)(おい)遠近(ゐんきん)()()られた紳士(しんし)だ……(いな)紳士(しんし)(けん)紳商(しんしやう)だ。035(をとこ)のボーイに(さけ)をつがす(とき)には男酌(だんしやく)閣下(かくか)で、036自分(じぶん)一人(ひとり)ついで()(とき)には私酌(ししやく)閣下(かくか)だ。037エヽーン、038そんなおどし文句(もんく)(なら)べて、039鳴動(めいどう)だの、040破裂(はれつ)だのと()はずに、041(おれ)案内(あんない)でもしたらどうだ、042貴様(きさま)もこんな(ところ)二銭(にせん)銅貨(どうくわ)(やう)(かほ)をして、043しやちこ()つて()つても、044()()かぬぢやないか。045銅銭(どうせん)ロクな(やつ)ぢやあろまいが、046(おれ)大度量(だいどりやう)をオツ()()して、047椀給(わんきふ)門番(もんばん)にでも(すく)うてやらう』
048赤顔の守衛『コリヤ深蔵(ふかざう)049貴様(きさま)はチツとばかり(さけ)(くら)()うてゐるな、050(いま)紳士(しんし)紳商(しんしやう)だと(ぬか)したが(よく)にかけたら親子(しんし)(あひだ)でも公事(くじ)(いた)したり、051(また)(ひと)悪口(あくこう)針小(しんせう)棒大(ぼうだい)吹聴(ふいちやう)(いた)し、052自己(じこ)名利(めいり)栄達(えいたつ)(はか)り、053身上(しんじやう)(こしら)へた真極道(しんごくだう)だらう、054チヤンとここな帳面(ちやうめん)についてゐるのだ、055何程(なんぼ)娑婆(しやば)羽振(はぶり)がよくても霊界(れいかい)()ては最早(もはや)駄目(だめ)だ。056サ、057ここの(はかり)にかかれ、058貴様(きさま)(つみ)測量(そくりやう)してやらう』
059欲野深蔵『さうすると、060此処(ここ)はヤツパリ冥途(めいど)でげすかなア』
061赤顔の守衛()がついたか、062貴様(きさま)積悪(せきあく)(むくい)()りて、063地震(ぢしん)(ため)震死(しんし)した震死(しんし)代物(しろもの)だらう』
064欲野深蔵成程(なるほど)065さう(うけたま)はれば(おぼろ)げに記憶(きおく)()かむで()ますワイ。066飛行機(ひかうき)()つたと(おも)つたのは……さうすると(たましひ)(ちう)()んだのかな』
067 赤面(あかづら)守衛(しゆゑい)帳面(ちやうめん)をくりながら、
068赤顔の守衛(その)(はう)欲野(よくの)深蔵(ふかざう)()つたな、069幼名(えうめい)渋柿(しぶがき)泥右衛門(どろうゑもん)(まを)さうがな』
070欲野深蔵『ハイ、071ヨク、072(ふか)(ところ)まで御存(ごぞん)じで(ござ)いますなア、073それに間違(まちが)ひは(ござ)いませぬ』
074赤顔の守衛(その)(はう)娑婆(しやば)(おい)て、075殺人(さつじん)鉄道(てつだう)嵐脈(らんみやく)会社(くわいしや)社長(しやちやう)(けん)取締役(とりしまりやく)(いた)して()つたであらう』
076欲野深蔵『ハイ(その)(とほ)りで(ござ)います』
077赤顔の守衛優先株(いうせんかぶ)だとか、078幽霊株(いうれいかぶ)だとか(まを)して、079沢山(たくさん)(かぶら)大根(だいこん)を、080(かね)()さずに吾物(わがもの)(いた)しただらう』
081欲野深蔵『ハイそんな(こと)もあつたでせう、082(しか)しそれを(いた)さねば現界(げんかい)(おい)ては、083鬼族院(きぞくゐん)偽員(ぎゐん)になる(こと)出来(でき)ず、084紳士(しんし)紳商(しんしやう)といはれる(こと)出来(でき)ませぬから、085娑婆(しやば)規則(きそく)()つて()むを()優勝(いうしよう)劣敗(れつぱい)(てき)行動(かうどう)(いた)しました、086コリヤ(けつ)して(わたし)(つみ)ではありませぬ、087社会(しやくわい)(つみ)(ござ)います、088何分(なにぶん)社会(しやくわい)組織(そしき)制度(せいど)が、089さうせなくちやならない(やう)になつてゐるのですからなア』
090赤顔の守衛馬鹿(ばか)(まを)せ、091そんな法律(はふりつ)何時(いつ)発布(はつぷ)されたか』
092欲野深蔵表面(へうめん)から()れば、093左様(さやう)(こと)はありませぬが、094(その)内容(ないよう)(および)精神(せいしん)から(かんが)へれば、095法文(はふぶん)(うら)をくぐるべく仕組(しぐ)まれてあるものですから、096(これ)をうまく切抜(きりぬ)ける(もの)が、097娑婆(しやば)有力者(いうりよくしや)()(もの)です、098総理(そうり)大臣(だいじん)(あるひ)小爵(こしやく)柄杓(ひしやく)疳癪(かんしやく)などの高位(かうゐ)(のぼ)らうと(おも)へば、099真面目(まじめ)(くさ)く、100法文(はふぶん)などを(まも)つて()つちや、101娑婆(しやば)では(いぬ)小便(せうべん)をかけられ(ねこ)にふみつぶされて(しま)ひますワ。102(がう)()つては(がう)(したが)へですから、103娑婆(しやば)ではこれでも立派(りつぱ)公民(こうみん)104紳士(しんし)(ちう)でも錚々(さうさう)たる人物(じんぶつ)(ござ)います、105ここへ()れば、106(すべ)ての行方(やりかた)(ちが)ふでせうが、107娑婆(しやば)娑婆(しやば)法律(はふりつ)108霊界(れいかい)霊界(れいかい)法律(はふりつ)があるでせう、109まだ霊界(れいかい)()てから(ぜん)もやつた(こと)がない(かは)りに、110(あく)をやる(ひま)もありませぬ、111娑婆(しやば)(こと)(まで)112()んだ()(とし)をくる(やう)に、113こんな(ところ)でゴテゴテ()はれちや、114やり()れませぬからなア。115エヽ、116(なん)だか()がせく、117斯様(かやう)(ところ)でヒマ()つては、118第一(だいいち)タイムの損害(そんがい)だ、119娑婆(しやば)金貸(かねか)しをして()つた(とき)にや、120()とつても()きとつても、121時計(とけい)(はり)がケチケチと()(うち)に、122(かね)利息(りそく)が、123十円札(じふゑんさつ)(いち)(まい)づつ、124輪転機(りんてんき)新聞(しんぶん)印刷(いんさつ)する(やう)に、125ポイポイと(うま)れて()たものだが、126最早(もはや)ここへ()ては無一物(むいちぶつ)だ、127(これ)から(ひと)冥途(めいど)開拓(かいたく)して、128娑婆(しやば)()つた(とき)よりもモ(ひと)勉強家(べんきやうか)となり、129大地主(おほぢぬし)となつて、130冥途(めいど)一生(いつしやう)(おく)りたい。131どうぞ邪魔(じやま)をして(くだ)さるな』
132()ひながら、133大股(おほまた)にふん()つて、134関所(せきしよ)突破(とつぱ)せむとする。
135 (この)(さわ)ぎに伊吹戸主(いぶきどぬし)(かみ)関所(せきしよ)(まど)をあけて、136一寸(ちよつと)(のぞ)かせ(たま)うた。137欲野(よくの)深蔵(ふかざう)判神(はんしん)霊光(れいくわう)()たれて、138アツと(その)()悶絶(もんぜつ)し、139(かに)(やう)(あわ)()いて(くるし)()した。140(たちま)(やかた)一方(いつぱう)より数人(すうにん)番卒(ばんそつ)(あら)はれ(きた)り、141欲野(よくの)深蔵(ふかざう)(からだ)荷車(にぐるま)()せ、142ガラガラガラガラと(いや)らしき(おと)をさせながら、143何処(どこ)ともなく(はこ)()つた。144(これ)地獄道(ぢごくだう)大門口(おほもんぐち)(ない)(はふ)()みに()つたのである。145深蔵(ふかざう)(くら)門内(もんない)(はう)()まれ、146ハツと()がつき、147ブツブツ小言(こごと)小声(こごゑ)(ささや)きながら、148トボトボと欲界(よくかい)地獄(ぢごく)()して(すす)()くのであつた。
149 (そもそ)(この)八衢(やちまた)関所(せきしよ)天国(てんごく)(のぼ)()人間(にんげん)地獄(ぢごく)()ちる人間(にんげん)とを(しら)べる(ふた)つの役人(やくにん)があつて、150天国(てんごく)()くべき人間(にんげん)(たい)しては、151(いろ)(しろ)(やさ)しき守衛(しゆゑい)(これ)(しら)べ、152地獄(ぢごく)()くべき人間(にんげん)(たい)しては形相(ぎやうさう)(すさま)じい(あか)(かほ)した守衛(しゆゑい)(これ)(しら)べる(こと)になつてゐる。
153 竜公(たつこう)(この)光景(くわうけい)()て、154(なん)とも()へぬ(おそ)れを(いだ)治国別(はるくにわけ)(たもと)(かた)(にぎ)り、155不安(ふあん)顔付(かほつき)にて(すこ)しばかり(ふる)へながら、156(いき)をこらして数多(あまた)精霊(せいれい)取査(とりしら)べらるるのを冷々(ひやひや)しながら(なが)めて()る。157(しばら)くすると錫杖(しやくじやう)をガチヤンガチヤンと()はせながらやつて()たのは、158バラモン(けう)宣伝使(せんでんし)であつた。159宣伝使(せんでんし)(この)赤門(あかもん)をくぐらうとするや(しろ)160(あか)二人(ふたり)守衛(しゆゑい)門口(もんぐち)立塞(たちふさ)がり、
161二人の守衛(しば)らくお()ちなさい、162取調(とりしら)ぶる(こと)がある』
163()びかけた。164宣伝使(せんでんし)(あと)振返(ふりかへ)怪訝(けげん)(かほ)をして、
165宣伝使(ハリス)拙者(せつしや)大自在天(だいじざいてん)大国彦(おほくにひこの)(みこと)()仁慈(じんじ)()神徳(しんとく)天下(てんか)紹介(せうかい)(いた)すバラモン(けう)宣伝使(せんでんし)(ござ)る。166拙者(せつしや)をお呼止(よびと)めになつたのは何用(なによう)(ござ)るかな』
167(あか)『ここは霊界(れいかい)八衢(やちまた)だ。168(その)(はう)生前(せいぜん)()ける善悪(ぜんあく)行為(かうゐ)(しら)べた(うへ)でなくては、169(この)(もん)通行(つうかう)させることはなりませぬ。170ここに()()ちなされ』
171宣伝使(ハリス)『ハテ心得(こころえ)ぬ、172吾々(われわれ)大黒主(おほくろぬし)(めい)(ほう)じ、173(つき)(くに)巡回(じゆんくわい)(いた)し、174デカタン高原(かうげん)(むか)ふハリスと(まを)(もの)175(けつ)して吾々(われわれ)()んだ(おぼ)えは(ござ)らぬ。176いい加減(かげん)戯談(じやうだん)()つておきなさるがよからう。177大黒主(おほくろぬし)()命令(めいれい)178片時(かたとき)猶予(いうよ)してゐる(わけ)には(まゐ)らぬ』
179(また)もや()かむとする。180(あか)()(いか)らし、181大喝(だいかつ)一声(いつせい)
182赤顔の守衛(にせ)宣伝使(せんでんし)183(しばら)()てツ』
184呶鳴(どな)りつけた。185ハリスは(この)(こゑ)にハツと()()き、186あたりをキヨロキヨロ見廻(みまは)しながら、
187ハリス『ヤアどうやらこれは霊界(れいかい)(やう)(ござ)る、188いつの()斯様(かやう)(ところ)()たのかなア』
189赤顔の守衛(その)(はう)世界(せかい)人民(じんみん)(かみ)福音(ふくいん)()(つた)天国(てんごく)案内(あんない)すると(まを)しながら、190(その)実際(じつさい)(おい)霊界(れいかい)存在(そんざい)(しん)ぜず、191(かみ)(みと)めず、192半信(はんしん)半疑(はんぎ)状態(じやうたい)()つて、193数多(あまた)人間(にんげん)中有界(ちううかい)(また)地獄(ぢごく)幾人(いくにん)(おと)したか()れない偽善者(きぜんしや)だ。194(いま)ここで浄玻璃(じやうはり)(かがみ)にかけて、195(その)(はう)霊肉(れいにく)(とも)(をか)したる罪悪(ざいあく)(しら)べてやらう』
196ハリス『イヤもう(おそ)()りました。197(あふ)せの(とほ)社会(しやくわい)人民(じんみん)(たい)し、198勧善(くわんぜん)懲悪(ちようあく)(みち)()(また)天国(てんごく)地獄(ぢごく)存在(そんざい)(あさ)から(ばん)(まで)()(さと)して(まゐ)りましたが、199実際(じつさい)(おい)左様(さやう)(ところ)があるものか、200人間(にんげん)(この)肉体(にくたい)()らば、201(あと)(けむり)(ごと)()()せるものだ、202コーランに(しめ)されたる天国(てんごく)地獄(ぢごく)状態(じやうたい)は、203(えう)するに、204社会(しやくわい)人心(じんしん)調節(てうせつ)する方便(はうべん)()ぎないものだと(しん)じて()りました。205それ(ゆゑ)()うしてもハツキリとした(こと)(まを)されず、206自分(じぶん)半信(はんしん)半疑(はんぎ)ながら天国(てんごく)地獄(ぢごく)消息(せうそく)説諭(ときさと)して()たので(ござ)います。207(いま)となつて(かんが)へてみれば、208死後(しご)世界(せかい)()くも儼然(げんぜん)として存在(そんざい)するとは、209(じつ)驚愕(きやうがく)(いた)りで(ござ)います』
210赤顔の守衛(その)(はう)宣伝使(せんでんし)のレツテルをつけて世人(よびと)(まよ)はした(つみ)(だい)なりと(いへど)も、211(また)一方(いつぱう)(おい)(おぼろ)げながら、212(かみ)存在(そんざい)無信仰(むしんかう)(しや)(つた)へた(とく)()つて、213地獄行(ぢごくゆき)(だけ)(ゆる)して(つか)はす、214少時(しばらく)(この)中有界(ちううかい)にあつて(こころ)(みが)(かみ)(ぜん)(しん)何如(いか)なるものなるかを了解(れうかい)()(まで)215修業(しうげふ)(いた)したがよからう。216ここ三十(さんじふ)(にち)(あひだ)217中有界(ちううかい)(とど)まることを(ゆる)してやるから、218(その)(あひだ)智慧(ちゑ)証覚(しようかく)()219(あい)(ぜん)(しん)(しん)了得(れうとく)()るならば、220霊相応(みたまさうおう)天国(てんごく)(のぼ)()るであらう。221(この)期限内(きげんない)万々一(まんまんいち)改過(かいくわ)遷善(せんぜん)(じつ)をあげ()ざるに(おい)ては、222()(どく)ながら地獄(ぢごく)(おと)さねばならない、223サア(はや)(ひがし)()して(すす)んだがよからう』
224ハリス『ハイ、225特別(とくべつ)()憐愍(れんびん)(もつ)地獄落(ぢごくおち)猶予(いうよ)期間(きかん)をお(あた)(くだ)さいまして有難(ありがた)(ござ)います。226左様(さやう)なればこれから中有界(ちううかい)遍歴(へんれき)し、227(ちから)一杯(いつぱい)(ぜん)(ため)(ぜん)(おこな)ひ、228(まよ)()精霊(せいれい)(たい)し、229十分(じふぶん)努力(どりよく)(もつ)て、230(わたし)(さと)()たる(ところ)(つた)へるで(ござ)いませう』
231赤顔の守衛『コリヤコリヤ、232ハリス、233(その)(はう)(さと)()たと(おも)つたら大変(たいへん)間違(まちがひ)であるぞ、234(みな)(かみ)さまの()神格(しんかく)内流(ないりう)()つて、235知覚(ちかく)し、236意識(いしき)し、237証覚(しようかく)()るものだ。238(けつ)して(なんぢ)一力(いちりき)のものと(おも)つたら、239(たちま)(てん)(ぞく)となつて地獄(ぢごく)()ちねばならないぞ、240ええか、241(わか)つたか』
242ハリス『ハイ、243(わか)りまして(ござ)います、244(しか)らば(これ)より(ひがし)()して修業(しうげふ)(まゐ)ります』
245赤顔の守衛期限内(きげんない)(かなら)ずここへ(かへ)つて()るのだぞ、246(その)(とき)(あらた)めて(なんぢ)改過(かいくわ)遷善(せんぜん)度合(どあひ)(しら)べ、247(なんぢ)所住(しよぢゆう)決定(けつてい)するであらう』
248ハリス『どうも()手数(てすう)をかけまして、249(まこと)にすみませぬ、250左様(さやう)なれば御免(ごめん)(くだ)さいませ』
251()ひながら、252(はじ)めの(いきほひ)どこへやら、253悄然(せうぜん)として次第(しだい)々々(しだい)(その)(かげ)はうすれつつ、254(もや)(なか)()えて(しま)つた。
255 竜公(たつこう)治国別(はるくにわけ)(そで)をひき、256小声(こごゑ)になつて、
257竜公『モシ先生(せんせい)258宣伝使(せんでんし)霊界(れいかい)()ては、259カラキーシ駄目(だめ)ですなア、260現界(げんかい)では(まる)(すくひ)(かみ)(さま)(やう)()はれて()つても、261(ここ)()ると本当(ほんたう)()(かげ)もないぢやありませぬか』
262治国別『ウン、263さうぢや、264(おれ)(たち)もまだ天国(てんごく)へは()けず、265中有界(ちううかい)(まよ)うて()るのだからなア、266それだから吾々(われわれ)八衢(やちまた)人足(にんそく)と、267信者(しんじや)以外(いぐわい)連中(れんちう)から()はれても仕方(しかた)がないのだ』
268竜公()うしたら天国(てんごく)()けるでせうかな』
269治国別『さうだ、270(こころ)のドン(ぞこ)より、271(かみ)さまの神格(しんかく)理解(りかい)し、272(かみ)真愛(しんあい)会得(ゑとく)し、273(あい)(ため)(あい)(おこな)ひ、274(ぜん)(ため)(ぜん)(おこな)ひ、275(しん)(ため)(しん)(おこな)真人間(まにんげん)とならなくちや到底(たうてい)駄目(だめ)だ。276(おれ)(たち)(すこ)しばかり言霊(ことたま)()くやうになつて、277自分(じぶん)修行(しうぎやう)した結果(けつくわ)神力(しんりき)(そな)はつたと(おも)うて()つたが、278大変(たいへん)間違(まちが)ひだつた、279(いづ)れも(みな)(みづ)御霊(みたま)(かむ)素盞嗚(すさのをの)(みこと)(さま)()神格(しんかく)(わが)精霊(せいれい)()たし、280(わが)肉体(にくたい)をお使(つか)ひになつて()つたのだつた。281(これ)(おも)へば人間(にんげん)はチツとも()()すことは出来(でき)ない、282何事(なにごと)自分(じぶん)智慧(ちゑ)(ちから)器量(きりやう)だと(おも)ふのは、283所謂(いはゆる)大神(おほかみ)()神徳(しんとく)横領(わうりやう)(いた)(てん)(ぞく)だ。284斯様(かやう)(かんが)へで()つたならば、285到底(たうてい)何時迄(いつまで)中有界(ちううかい)(まよ)ふか、286(つひ)には地獄道(ぢごくだう)()ちねばならぬ、287有難(ありがた)(たふと)や、288(かみ)(さま)御恵(みめぐみ)()つて、289ハツキリと霊界(れいかい)様子(やうす)()せて(いただ)き、290(じつ)感謝(かんしや)(いた)りである。291(これ)から吾々(われわれ)は、292今迄(いままで)(こころ)()()へて、293何事(なにごと)(かみ)(さま)()(まか)せするのだなア、294自分(じぶん)(ちから)だと(おも)へば、295そこに慢心(まんしん)(くも)()いて()る。296(つつし)んだ(うへ)にも(つつし)むべきは(こころ)持方(もちかた)である。297あゝ惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)
298合掌(がつしやう)感涙(かんるゐ)(むせ)ぶのであつた。299竜公(たつこう)(また)無言(むごん)のまま()(あは)せ、300感謝(かんしや)(なみだ)にくれてゐる。301伊吹戸主(いぶきどぬしの)(かみ)二人(ふたり)会釈(ゑしやく)し、302スーツと()()つて、303(やかた)(おく)(ふか)()らせ(たま)うた。304二人(ふたり)(あと)(なが)むれば、305伊吹戸主(いぶきどぬしの)(かみ)姿(すがた)(まる)(たま)(ごと)(ひか)(かがや)き、306(その)神姿(しんし)判然(はんぜん)()えず、307(つき)(ごと)(ひかり)(なな)()(あるひ)(ここの)円球(ゑんきう)周囲(しうゐ)取巻(とりま)き、308次第(しだい)々々(しだい)(おく)()(かく)(たま)ふのであつた。
309 (すべ)智慧(ちゑ)証覚(しようかく)のすぐれたる神人(しんじん)を、310それより(おと)りし証覚者(しようかくしや)(はい)する(とき)は、311(ひかり)(ごと)()えて、312()(まばゆ)くなるものである。313(かみ)神格(しんかく)神善(しんぜん)神真(しんしん)であり、314それより(はつ)する智慧(ちゑ)証覚(しようかく)(すなは)(ひかり)なるが(ゆゑ)である。315二人(ふたり)愕然(がくぜん)としてものをも()はず、316(ふたた)八衢(やちまた)関所(せきしよ)()(はな)ちここに(あつ)まり(きた)精霊(せいれい)様子(やうす)(またた)きもせず(うかが)つてゐた。
317大正一二・一・九 旧一一・一一・二三 松村真澄録)
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