霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一六章 霊丹(れいたん)〔一二四九〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第47巻 舎身活躍 戌の巻 篇:第3篇 天国巡覧 よみ(新仮名遣い):てんごくじゅんらん
章:第16章 霊丹 よみ(新仮名遣い):れいたん 通し章番号:1249
口述日:1923(大正12)年01月09日(旧11月23日) 口述場所: 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年10月6日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
木花姫の化身に案内されて第二天国にやってきた治国別と竜公は、目はくらみ頭は痛み、胸はとどろき手から力が抜けてふるえだした。二人は木花姫に助けを求めつつ、第二天国の入り口で倒れてしまった。木花姫は巨大な光と化して天の一方に姿を隠させ給うた。
治国別は自愛の欲によって我が身の苦しさについ木花姫に救助を求める心を起こしてしまったことを悔い、死人のように青ざめながら大神に祈った。治国別はこのような境遇にあっても神に従い神に頼り、神の神格を信じて微塵も不平怨恨の念を持たなかった。
治国別の祈りの声も細り、絶体絶命のときに天上から金色の衣をまとった神人が下り、霊丹という天国の薬を取り出して二人の口に含ませた。二人はたちまち蘇生した。二人が神人の顔をよく見れば、木花姫命であった。
木花姫命は、治国別が肝心要の宣伝使としての如意宝珠を途中で落としたために息が絶えそうになったのを見て、月の大神様の御殿から霊丹をいただいてきたのだと語った。お礼を述べる治国別に対し、自分は命の親の月の大神様のお取次ぎをさせていただいただけだと諭した。
治国別は、途中で落とした如意宝珠とは何かという木花姫命の問いに答えあぐねていた。竜公は不意に手を打って、下層天国から中間天国に上る途中、善言美詞たる天津祝詞、神言を奏上し忘れていたことを指摘した。
治国別は竜公の指摘を謝した。木花姫命は祝詞を上げながら第二天国を行くようにと諭し、二人に別れを告げた。二人が命に感謝を述べ首を垂れる刹那に雲上高く消えさせ給うた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2023-04-27 20:08:31 文字数:3547 OBC :rm4716
愛善世界社版:222頁 八幡書店版:第8輯 555頁 修補版: 校定版:232頁 普及版:109頁 初版: ページ備考:
001天教山(てんけうざん)にあれませる
002木花姫(このはなひめ)の御(ご)化身(けしん)に
003案内(あんない)されて第三(だいさん)の
004天国界(てんごくかい)を後(あと)にして
005五色(ごしき)の雲(くも)を踏(ふ)み分(わ)けつ
006東(ひがし)をさして上(のぼ)り行(ゆ)く
007治国別(はるくにわけ)や竜公(たつこう)は
008如何(いかが)はしけむ目(め)は眩(くら)み
009頭(あたま)は痛(いた)み足(あし)はなえ
010胸(むね)は轟(とどろ)き両(りやう)の手(て)は
011力(ちから)も落(お)ちてブルブルと
012慄(ふる)ひ出(いだ)すぞ是非(ぜひ)なけれ
013木花姫(このはなひめ)の御(ご)化身(けしん)は
014順風(じゆんぷう)に真帆(まほ)をかかげたる
015磯(いそ)の小舟(こぶね)の進(すす)むごと
016何(なん)の故障(こしやう)もあら不思議(ふしぎ)
017とんとんとんと上(のぼ)ります
018治国別(はるくにわけ)や竜公(たつこう)は
019吹(ふ)く息(いき)さへも絶(た)え絶(だ)えに
020命(いのち)限(かぎ)りの声(こゑ)しぼり
021(治国別、竜公)『これこれもうし木花(このはな)の
022姫(ひめ)の命(みこと)の神司(かむつかさ)
023暫(しばら)く待(ま)たせ給(たま)へかし
024如何(いか)なる訳(わけ)か知(し)らねども
025何(なん)とはなしに目(め)は眩(くら)み
026意識(いしき)は衰(おとろ)へ力(ちから)落(お)ち
027進退(しんたい)茲(ここ)に極(きは)まりて
028最早(もはや)一歩(いつぽ)も進(すす)めない
029何卒(なにとぞ)お慈悲(じひ)に両人(りやうにん)を
030も一度(いちど)後(あと)に引返(ひきかへ)し
031お助(たす)けなさつて下(くだ)されや
032偏(ひとへ)に願(ねが)ひ奉(たてまつ)る
033朝日(あさひ)は照(て)るとも曇(くも)るとも
034月(つき)は盈(み)つとも虧(か)くるとも
035仮令(たとへ)大地(だいち)は沈(しづ)むとも
036尊(たふと)き神(かみ)の御恵(みめぐみ)は
037いつの世(よ)にかは忘(わす)れませう
038抑(そもそも)天国(てんごく)の存在(そんざい)は
039神(かみ)の慈愛(じあい)を善真(ぜんしん)の
040其(その)高徳(かうとく)に構成(こうせい)され
041愛(あい)と善(ぜん)とに満(み)ち満(み)ちし
042神(かみ)の国土(こくど)で御座(ござ)いませう
043貴神(あなた)も尊(たふと)き神(かみ)なれば
044吾(われ)等(ら)二人(ふたり)の苦(くるし)みを
045決(けつ)して見捨(みす)て給(たま)ふまじ
046かへさせたまへ惟神(かむながら)
047木花姫(このはなひめ)の御(おん)前(まへ)に
048命(いのち)限(かぎ)りに願(ね)ぎまつる
049嗚呼(ああ)惟神(かむながら)々々(かむながら)
050御霊(みたま)幸(さち)はへましませよ』
051と歌(うた)ふ声(こゑ)も切(き)れ切(ぎ)れに第二(だいに)天国(てんごく)の入口(いりぐち)迄(まで)来(き)てバタリと平太(へた)り込(こ)んで了(しま)つた。052竜公(たつこう)は唯(ただ)一言(ひとこと)も発(はつ)し得(え)ず、053痴呆(ちはう)の如(ごと)く口(くち)をポカンと開(ひら)いたまま僅(わづ)かに指先(ゆびさき)を間歇(かんけつ)的(てき)に動(うご)かして居(ゐ)る。054木花姫(このはなひめ)は後(あと)ふり向(む)きもせず巨大(きよだい)なる光(ひかり)と化(くわ)して、055天(てん)の一方(いつぱう)に姿(すがた)を隠(かく)させ給(たま)うた。056治国別(はるくにわけ)は後(あと)打(う)ち眺(なが)め、
057治国別『あゝ、058過(あやま)つたりな過(あやま)つたりな。059自愛(じあい)の欲(よく)に制(せい)せられ、060吾(わが)身(み)の苦(くる)しさに木花姫(このはなひめ)様(さま)の救助(きうじよ)を求(もと)めた愚(おろ)かしさよ。061「師匠(ししやう)を杖(つゑ)につくな、062人(ひと)を頼(たよ)りにするな」と云(い)ふ御教(みをしへ)を、063正勝(まさか)の時(とき)になつて忘(わす)れて居(ゐ)たか。064あゝ人間(にんげん)と云(い)ふものは、065何(なん)と云(い)ふ浅(あさ)ましいものであらう。066竜公(たつこう)はもはや虫(むし)の息(いき)、067かかる天国(てんごく)に於(おい)て、068精霊(せいれい)の命(いのち)までも捨(す)てねばならぬのか、069あゝ何(ど)うしたらよからうな。070国治立(くにはるたちの)大神(おほかみ)様(さま)、071豊国主(とよくにぬしの)大神(おほかみ)様(さま)、072神(かむ)素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)様(さま)、073何卒(なにとぞ)々々(なにとぞ)此(この)窮状(きうじやう)を、074も一度(いちど)お救(すく)ひ下(くだ)さいませ』
075と色(いろ)蒼(あを)ざめ、076殆(ほとん)ど死人(しにん)の如(ごと)くなつて、077合(あは)す両(りやう)の手(て)もピリピリ慄(ふる)ひ戦(をのの)き、078実(じつ)に憐(あは)れ至極(しごく)の有様(ありさま)となつて来(き)た。079願(ねが)へど、080祈(いの)れど、081呼(よ)べど、082叫(さけ)べど唯(ただ)一柱(ひとはしら)の天人(てんにん)も目(め)に入(い)らず、083神(かみ)の御声(みこゑ)も聞(きこ)えず、084四辺(しへん)寂然(せきぜん)として物淋(ものさび)しく、085立(た)つても居(ゐ)ても居(ゐ)られなくなつて来(き)た。086竜公(たつこう)はと顧(かへり)みれば、087哀(あは)れにも大地(だいち)に蛙(かはず)をぶつつけた如(ごと)く手足(てあし)をのばし、088殆(ほとん)ど死人(しにん)同様(どうやう)になつて居(ゐ)る。089されど治国別(はるくにわけ)は何処(どこ)迄(まで)も神(かみ)に従(したが)ひ神(かみ)に頼(たよ)り、090神(かみ)の神格(しんかく)を信(しん)じ、091斯(か)かる場合(ばあひ)にも微塵(みじん)も神(かみ)に対(たい)し不平(ふへい)又(また)は怨恨(ゑんこん)の念(ねん)を持(も)たなかつた。092治国別(はるくにわけ)は決心(けつしん)の臍(ほぞ)を固(かた)め、
093治国別『あゝどうなり行(ゆ)くも神(かみ)の御心(みこころ)、094吾々(われわれ)人間(にんげん)の如何(いかん)ともすべき限(かぎ)りでない。095神(かみ)様(さま)、096御心(みこころ)の儘(まま)に遊(あそ)ばして下(くだ)さい。097罪悪(ざいあく)を重(かさ)ねたる治国別(はるくにわけ)、098過分(おほけなく)も此(この)清(きよ)き尊(たふと)き天国(てんごく)に上(のぼ)り来(きた)り、099身(み)の程(ほど)をわきまへざる無礼(ぶれい)の罪(つみ)、100順序(じゆんじよ)を乱(みだ)した吾(われ)等(ら)の罪悪(ざいあく)を、101何卒(なにとぞ)神直日(かむなほひ)、102大直日(おほなほひ)に見直(みなほ)し下(くだ)さいまして、103相当(さうたう)の御(ご)処分(しよぶん)を願(ねが)ひます』
104と祈(いの)る声(こゑ)も細(ほそ)り行(ゆ)き、105最早(もはや)絶体(ぜつたい)絶命(ぜつめい)となつて来(き)た。106此(この)時(とき)俄(にはか)に天(あま)の戸(と)開(あ)けて天上(てんじやう)より金色(こんじき)の衣(きぬ)を纏(まと)ひたる目(め)も眩(まばゆ)きばかりの神人(しんじん)、107二人(ふたり)の脇立(わきだち)を従(したが)へ、108雲(くも)に乗(の)つて二人(ふたり)の前(まへ)に悠々(いういう)と下(くだ)らせ給(たま)ひ、109懐(ふところ)より霊丹(れいたん)と云(い)ふ天国(てんごく)の薬(くすり)を取(と)り出(だ)し、110二人(ふたり)の口(くち)に含(ふく)ませたまへば、111不思議(ふしぎ)なるかな二人(ふたり)は正気(しやうき)に返(かへ)り、112勇気(ゆうき)頓(とみ)に加(くは)はり、113痩衰(やせおとろ)へた体(からだ)は元(もと)の如(ごと)く肥太(こえふと)り、114顔色(がんしよく)は鮮花色(せんくわしよく)と変(へん)じ、115得(え)も云(い)はれぬ爽快(さうくわい)の気分(きぶん)に充(みた)されて来(き)た。116二人(ふたり)は恐(おそ)る恐(おそ)る面(おもて)を上(あ)ぐれば、117威容(ゐよう)儼然(げんぜん)たる男(をとこ)とも女(をんな)とも判別(はんべつ)し難(がた)き優(やさ)しき天人(てんにん)、118その前(まへ)に莞爾(くわんじ)として立(た)たせたまふのであつた。119治国別(はるくにわけ)は思(おも)はず手(て)を拍(う)ち、
120治国別『あゝ有難(ありがた)し有難(ありがた)し、121大神(おほかみ)の御(ご)仁慈(じんじ)、122罪(つみ)深(ふか)い吾々(われわれ)をよくもお助(たす)け下(くだ)さいました。123有難(ありがた)う存(ぞん)じます』
124とよくよくお顔(かほ)を見(み)れば、125以前(いぜん)に別(わか)れた木花姫(このはなひめの)命(みこと)が、126二人(ふたり)の侍女(じぢよ)を連(つ)れ立(た)たせ給(たま)ふのであつた。
127治国別『ヤア、128貴神(きしん)は木花姫(このはなひめの)命(みこと)様(さま)で厶(ござ)いましたか。129誠(まこと)に誠(まこと)に御(ご)仁慈(じんじ)の段(だん)感謝(かんしや)の至(いた)りに堪(た)へませぬ』
130竜公『神(かみ)様(さま)、131能(よ)くまアお助(たす)け下(くだ)さいました。132竜公(たつこう)は既(すで)に既(すで)に天国(てんごく)に於(おい)て野垂(のた)れ死(じに)をする所(ところ)で厶(ござ)いました。133天国(てんごく)と云(い)ふ所(ところ)は、134真(まこと)に苦(くる)しい所(ところ)で厶(ござ)いますなア』
135木花姫『総(すべ)て天国(てんごく)には善(ぜん)と真(しん)とに相応(さうおう)する順序(じゆんじよ)が儼然(げんぜん)として立(た)つて居(を)りますから、136此(この)順序(じゆんじよ)に逆(さか)らへば大変(たいへん)に苦(くる)しいものですよ。137身霊(みたま)相応(さうおう)の生涯(しやうがい)をさへ送(おく)れば、138世(よ)の中(なか)は実(じつ)に安楽(あんらく)なものです。139水(みづ)に棲(す)む魚(うを)は、140陸(をか)に上(あが)れば直(ただち)に生命(いのち)がなくなるやうなもので厶(ござ)ります』
141治国別『成程(なるほど)御尤(ごもつと)もで厶(ござ)います。142八衢(やちまた)に籍(せき)を置(お)いて居(ゐ)る分際(ぶんざい)をも顧(かへり)みず、143神(かみ)様(さま)のお言葉(ことば)に甘(あま)え、144慢心(まんしん)を起(おこ)し、145天国(てんごく)の巡覧(じゆんらん)などを思(おも)ひ立(た)つたのは、146吾々(われわれ)の不覚(ふかく)不調法(ぶてうはふ)の罪(つみ)、147何卒(なにとぞ)々々(なにとぞ)大神(おほかみ)様(さま)にお詫(わび)を願(ねが)ひ上(あ)げます』
148木花姫『治国別(はるくにわけ)殿(どの)、149其方(そなた)は媒介者(ばいかいしや)によつて天国(てんごく)の巡覧(じゆんらん)に来(こ)られたのだから、150決(けつ)して身分(みぶん)不相応(ふさうおう)だとは申(まを)されますまい。151貴方(あなた)は宣伝使(せんでんし)としての肝腎要(かんじんかなめ)の如意(によい)宝珠(ほつしゆ)を道(みち)で落(おと)しましたから、152それで苦(くる)しかつたのですよ。153殆(ほとん)ど息(いき)が絶(た)えさうに見(み)えましたので、154妾(わたし)は急(いそ)ぎ月(つき)の大神(おほかみ)様(さま)の御殿(ごてん)に上(のぼ)り、155霊丹(れいたん)を頂(いただ)いて再(ふたた)び此処(ここ)に現(あら)はれ、156貴方(あなた)等(がた)の御(お)生命(いのち)をつなぎ留(と)める事(こと)を得(え)たので厶(ござ)りますよ。157まア結構(けつこう)で厶(ござ)いましたなア』
158治国別『ハイ、159吾々(われわれ)が命(いのち)の親(おや)の木花姫(このはなひめ)様(さま)、160此(この)御恩(ごおん)は決(けつ)して忘(わす)れは致(いた)しませぬ』
161木花姫『妾(わらは)は貴方(あなた)の命(いのち)の親(おや)ではありませぬ。162貴方(あなた)の命(いのち)の親(おや)は月(つき)の大神(おほかみ)様(さま)ですよ。163妾(わらは)は唯(ただ)お取次(とりつぎ)をさして頂(いただ)いたのみですよ。164左様(さやう)にお礼(れい)を申(まを)されては、165何(なん)だか大神(おほかみ)様(さま)の御(ご)神徳(しんとく)を妾(わらは)が横領(わうりやう)するやうに思(おも)はれて、166何(なん)となく心苦(こころぐる)しう厶(ござ)います。167宇宙(うちう)一切(いつさい)は月(つき)の大神(おほかみ)様(さま)の御(ご)神格(しんかく)に包(つつ)まれて居(ゐ)るので厶(ござ)います。168吾々(われわれ)には御(ご)神徳(しんとく)を伝達(でんたつ)する事(こと)は出来(でき)ても、169命(いのち)をつないだり御(ご)神徳(しんとく)を授(さづ)ける事(こと)は出来(でき)ませぬ。170此(この)後(ご)は何事(なにごと)がありても、171仮令(たとへ)少(すこ)しの善(ぜん)を行(おこな)ひましても、172愛(あい)を注(そそ)ぎましても、173決(けつ)して礼(れい)を云(い)うて貰(もら)つては迷惑(めいわく)に存(ぞん)じます。174何卒(どうぞ)神(かみ)様(さま)に直接(ちよくせつ)にお礼(れい)を仰有(おつしや)つて下(くだ)さい』
175治国別『ハイ、176理義(りぎ)明白(めいはく)なる御(おん)教(をしへ)、177頑迷(ぐわんめい)なる治国別(はるくにわけ)も貴神(あなた)の御(ご)伝教(でんけう)によつて、178豁然(くわつぜん)と眠(ねむ)りより醒(さ)めたるやうで厶(ござ)います。179あゝ国治立(くにはるたちの)大神(おほかみ)様(さま)、180月(つき)の大神(おほかみ)様(さま)、181最高(さいかう)天国(てんごく)にまします天照(あまてらす)大御神(おほみかみ)様(さま)、182唯今(ただいま)は木花姫(このはなひめ)様(さま)の御(おん)身(み)を通(とほ)して吾(われ)等(ら)に命(いのち)と栄(さか)えと喜(よろこ)びを授(さづ)け給(たま)ひし事(こと)を、183有難(ありがた)く、184ここに感謝(かんしや)致(いた)します』
185木花姫『貴方(あなた)は途中(とちう)でお落(おと)しになつたものを未(ま)だ御(ご)記憶(きおく)に浮(う)かびませぬか、186如意(によい)宝珠(ほつしゆ)の玉(たま)ですよ』
187治国別『ハイ、188私(わたし)は高姫(たかひめ)さまのやうに如意(によい)宝珠(ほつしゆ)の玉(たま)などは一度(いちど)も拝(をが)んだ事(こと)もない、189手(て)に触(ふ)れさせて頂(いただ)いた事(こと)も厶(ござ)いませぬから、190従(したが)つて落(おと)す理由(りいう)も厶(ござ)いませぬ。191何(なに)かの謎(なぞ)では厶(ござ)いますまいかな。192心(こころ)愚(おろか)なる治国別(はるくにわけ)には、193どうしても此(この)謎(なぞ)が解(と)けませぬ』
194木花姫『高姫(たかひめ)さまの執着心(しふちやくしん)を起(おこ)された如意(によい)宝珠(ほつしゆ)は、195あれは自然界(しぜんかい)の形態(けいたい)を具(そな)へた宝玉(ほうぎよく)です。196天界(てんかい)の事象(じしやう)事物(じぶつ)は総(すべ)て霊的(れいてき)事物(じぶつ)より構成(こうせい)されて居(を)りますれば、197想念(さうねん)上(じやう)より作(つく)り出(だ)す如意(によい)宝珠(ほつしゆ)で厶(ござ)いますよ。198先(ま)づ御悠(ごゆる)りとお考(かんが)へなさいませ。199妾(わらは)が申上(まをしあ)げるのはお易(やす)い事(こと)で厶(ござ)いますけれど、200これ位(くらゐ)の事(こと)がお分(わか)りにならない位(くらゐ)では、201到底(たうてい)中間(ちうかん)天国(てんごく)の天人(てんにん)に出会(であ)つて、202一言(ひとこと)も交(まじ)へる事(こと)が出来(でき)ませぬ。203神(かみ)の愛(あい)と神(かみ)の信(しん)に照(てら)され、204神格(しんかく)の内流(ないりう)をお受(う)け遊(あそ)ばし、205智慧(ちゑ)と証覚(しようかく)を得(う)れば、206何(なん)でもない事(こと)で厶(ござ)います』
207 治国別(はるくにわけ)は、
208治国別『ハイ』
209と答(こた)へた儘(まま)双手(もろて)を組(く)み、210眼(め)を閉(と)ぢ暫(しばら)く考(かんが)へ込(こ)んで居(ゐ)る。211遉(さすが)鋭敏(えいびん)の頭脳(づなう)の持主(もちぬし)と聞(きこ)えて居(ゐ)る治国別(はるくにわけ)も、212霊界(れいかい)へ来(き)ては殆(ほとん)ど痴呆(ちはう)の如(ごと)く、213何程(なにほど)思索(しさく)を廻(めぐ)らしても容易(ようい)に此(この)謎(なぞ)が解(と)けなかつた。214竜公(たつこう)は傍(かたはら)より手(て)を打(う)ち嬉(うれ)しさうな元気(げんき)のよい声(こゑ)を出(だ)して、
215竜公『もし先生(せんせい)、216霊界(れいかい)の如意(によい)宝珠(ほつしゆ)と云(い)ふのは善言(ぜんげん)美詞(びし)の言霊(ことたま)ですよ。217中間(ちうかん)天国(てんごく)へ上(のぼ)る途中(とちう)に於(おい)て天津(あまつ)祝詞(のりと)や神言(かみごと)の奏上(そうじやう)を忘(わす)れたので、218姫(ひめの)命(みこと)様(さま)が、219お気(き)をつけて下(くだ)さつたのですよ』
220治国別『成程(なるほど)、221ヤ、222ウツカリして居(を)つた。223木花姫(このはなひめ)様(さま)、224有難(ありがた)う厶(ござ)います。225ほんに竜公(たつこう)さま、226お前(まへ)は私(わたし)の先生(せんせい)だ、227ヤア実(じつ)に感心(かんしん)々々(かんしん)』
228竜公『先生(せんせい)、229そんな事(こと)云(い)つて貰(もら)ふと大(おほい)に迷惑(めいわく)を致(いた)します。230決(けつ)して竜公(たつこう)の智慧(ちゑ)で言(い)つたのではありませぬ。231御(ご)神格(しんかく)の内流(ないりう)によつて、232斯様(かやう)に思(おも)ひ浮(うか)べて頂(いただ)かせられたのです』
233木花姫『現界(げんかい)に於(お)きましては、234竜公(たつこう)さまは治国別(はるくにわけ)さまのお弟子(でし)でありませう。235併(しか)しこの天国(てんごく)に於(おい)ては愛善(あいぜん)と信真(しんしん)より来(きた)る智慧(ちゑ)証覚(しようかく)の勝(すぐ)れたものが最(もつと)も高(たか)き位置(ゐち)につくので厶(ござ)います。236神(かみ)を信(しん)ずる事(こと)が厚(あつ)ければ厚(あつ)い程(ほど)、237神格(しんかく)の内流(ないりう)が厚(あつ)いので厶(ござ)いますから』
238治国別『いや実(じつ)に恐(おそ)れ入(い)りました。239天国(てんごく)に参(まゐ)りましても、240やはり現界(げんかい)の虚偽(きよぎ)的(てき)階級(かいきふ)を固持(こぢ)して居(を)つたのが重々(ぢゆうぢゆう)の誤(あやま)りで厶(ござ)います。241あゝ月(つき)の大神(おほかみ)様(さま)、242日(ひ)の大神(おほかみ)様(さま)、243木花姫(このはなひめ)様(さま)の肉(にく)の御(お)宮(みや)を通(とほ)し、244又(また)竜公(たつこう)さまの肉(にく)の宮(みや)を通(とほ)して、245愚鈍(ぐどん)なる治国別(はるくにわけ)に尊(たふと)き智慧(ちゑ)を与(あた)へて下(くだ)さつた事(こと)を有難(ありがた)く感謝(かんしや)致(いた)します』
246木花姫『サア皆(みな)さま、247是(これ)より天津(あまつ)祝詞(のりと)の言霊(ことたま)を奏上(そうじやう)しながら、248第二(だいに)天国(てんごく)をお廻(まは)りなさいませ。249左様(さやう)ならば、250是(これ)にてお別(わか)れ致(いた)します』
251 治国別(はるくにわけ)、252竜公(たつこう)両人(りやうにん)は、
253治国別、竜公『ハイ有難(ありがた)う』
254と首(かうべ)を垂(た)れ感謝(かんしや)を表(へう)する一刹那(いちせつな)、255嚠喨(りうりやう)たる音楽(おんがく)につれて木花姫(このはなひめ)の御姿(みすがた)は、256雲上(うんじやう)高(たか)く消(き)えさせ給(たま)ふのであつた。
257 あゝ惟神(かむながら)霊(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)。
258(大正一二・一・九 旧一一・一一・二三 加藤明子録)
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