霊界物語.ネット
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霊界物語
舎身活躍(第37~48巻)
第47巻(戌の巻)
序文
総説
第1篇 浮木の盲亀
第1章 アーク灯
第2章 黒士会
第3章 寒迎
第4章 乱痴将軍
第5章 逆襲
第6章 美人草
第2篇 中有見聞
第7章 酔の八衢
第8章 中有
第9章 愛と信
第10章 震士震商
第11章 手苦駄女
第3篇 天国巡覧
第12章 天界行
第13章 下層天国
第14章 天開の花
第15章 公義正道
第16章 霊丹
第17章 天人歓迎
第18章 一心同体
第19章 化相神
第20章 間接内流
第21章 跋文
余白歌
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★☆★
天理教シリーズ最終回/踊る宗教
★☆★
霊界物語
>
舎身活躍(第37~48巻)
>
第47巻(戌の巻)
> 第2篇 中有見聞 > 第11章 手苦駄女
<<< 震士震商
(B)
(N)
天界行 >>>
第一一章
手苦駄
(
てくだ
)
女
(
をんな
)
〔一二四四〕
インフォメーション
著者:
巻:
篇:
よみ(新仮名遣い):
章:
よみ(新仮名遣い):
通し章番号:
口述日:
口述場所:
筆録者:
校正日:
校正場所:
初版発行日:
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
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備考:
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データ凡例:
データ最終更新日:
文字数:
OBC :
rm4711
愛善世界社版:
八幡書店版:
修補版:
校定版:
普及版:
初版:
ページ備考:
001
人間
(
にんげん
)
の
肉体
(
にくたい
)
は
所謂
(
いはゆる
)
精霊
(
せいれい
)
の
容器
(
ようき
)
である。
002
そして
天人
(
てんにん
)
の
養成所
(
やうせいしよ
)
ともなり、
003
或
(
あるひ
)
は
邪鬼
(
じやき
)
、
004
悪鬼
(
あくき
)
共
(
ども
)
の
巣窟
(
さうくつ
)
となるものである。
005
斯
(
かく
)
の
如
(
ごと
)
く
同
(
おな
)
じ
人間
(
にんげん
)
にして
種々
(
しゆじゆ
)
の
変化
(
へんくわ
)
を
来
(
きた
)
すのは、
006
人間
(
にんげん
)
が
主
(
しゆ
)
とする
所
(
ところ
)
の
愛
(
あい
)
の
情動
(
じやうどう
)
如何
(
いかん
)
に
依
(
よ
)
つて、
007
或
(
あるひ
)
は
天人
(
てんにん
)
となり、
008
或
(
あるひ
)
は
精霊界
(
せいれいかい
)
に
迷
(
まよ
)
ひ、
009
或
(
あるひ
)
は
地獄
(
ぢごく
)
の
妖怪
(
えうくわい
)
的
(
てき
)
人物
(
じんぶつ
)
となるのである。
010
さうして、
011
人間
(
にんげん
)
が
現世
(
げんせ
)
に
住
(
す
)
んでゐる
間
(
うち
)
は、
012
すべての
思索
(
しさく
)
は
自然
(
しぜん
)
的
(
てき
)
なるが
故
(
ゆゑ
)
に、
013
人間
(
にんげん
)
の
本体
(
ほんたい
)
たる
精霊
(
せいれい
)
として、
014
其
(
その
)
精霊
(
せいれい
)
の
団体中
(
だんたいちう
)
に
加
(
くは
)
はることはない、
015
併
(
しか
)
しながら
其
(
その
)
想念
(
さうねん
)
が
迥然
(
けいぜん
)
として
肉体
(
にくたい
)
を
離脱
(
りだつ
)
する
時
(
とき
)
は、
016
其
(
その
)
間
(
かん
)
精霊
(
せいれい
)
の
中
(
うち
)
にあるを
以
(
もつ
)
て
或
(
あるひ
)
は
各自
(
かくじ
)
所属
(
しよぞく
)
の
団体中
(
だんたいちう
)
に
現
(
あら
)
はるることがある。
017
此
(
この
)
時
(
とき
)
或
(
ある
)
精霊
(
せいれい
)
が
彼
(
かれ
)
を
見
(
み
)
る
者
(
もの
)
は
容易
(
ようい
)
に
之
(
これ
)
を
他
(
た
)
の
諸々
(
もろもろ
)
の
精霊
(
せいれい
)
と
分別
(
ぶんべつ
)
することが
出来
(
でき
)
るのである。
018
何
(
なん
)
とならば
肉体
(
にくたい
)
を
持
(
も
)
つてゐる
精霊
(
せいれい
)
は、
019
前
(
まへ
)
に
述
(
の
)
べた
万公
(
まんこう
)
の
精霊
(
せいれい
)
の
如
(
ごと
)
く、
020
思
(
おも
)
ひに
沈
(
しづ
)
みつつ、
021
黙然
(
もくねん
)
として
前後
(
ぜんご
)
左右
(
さいう
)
に
徘徊
(
はいくわい
)
し、
022
他
(
た
)
を
省
(
かへり
)
みざること、
023
恰
(
あだか
)
も
盲目者
(
まうもくしや
)
の
如
(
ごと
)
くに
見
(
み
)
ゆるからである。
024
若
(
も
)
しも
精霊
(
せいれい
)
が
之
(
これ
)
とものを
言
(
い
)
はむとすれば、
025
彼
(
か
)
の
精霊
(
せいれい
)
は
忽然
(
こつぜん
)
として
煙
(
けむり
)
の
如
(
ごと
)
く
消失
(
せうしつ
)
するものである。
026
人間
(
にんげん
)
は
如何
(
いか
)
にして
肉体
(
にくたい
)
を
脱離
(
だつり
)
し、
027
精霊界
(
せいれいかい
)
に
入
(
い
)
るかと
云
(
い
)
ふに、
028
此
(
この
)
時
(
とき
)
の
人間
(
にんげん
)
は
睡眠
(
すゐみん
)
にも
居
(
を
)
らず、
029
覚醒
(
かくせい
)
にもあらざる
一種
(
いつしゆ
)
異様
(
いやう
)
の
情態
(
じやうたい
)
に
居
(
を
)
るものであつて、
030
此
(
この
)
情態
(
じやうたい
)
に
在
(
あ
)
る
時
(
とき
)
は、
031
其
(
その
)
人間
(
にんげん
)
は、
032
只
(
ただ
)
自分
(
じぶん
)
は
充分
(
じうぶん
)
に
覚醒
(
かくせい
)
して
居
(
を
)
るものとのみ
思
(
おも
)
うて
居
(
を
)
るものである。
033
而
(
しか
)
して
此
(
この
)
際
(
さい
)
に
於
(
お
)
ける
諸々
(
もろもろ
)
の
感覚
(
かんかく
)
は
醒々
(
さめざめ
)
として、
034
恰
(
あだか
)
も
肉体
(
にくたい
)
の
最
(
もつと
)
も
覚醒
(
かくせい
)
せる
時
(
とき
)
に
少
(
すこ
)
しも
変
(
かは
)
りはないのである。
035
五官
(
ごくわん
)
の
感覚
(
かんかく
)
も、
036
四肢
(
しこ
)
五体
(
ごたい
)
の
触覚
(
しよくかく
)
も
特
(
とく
)
に
精妙
(
せいめう
)
となることは
肉体
(
にくたい
)
覚醒時
(
かくせいじ
)
の
諸感覚
(
しよかんかく
)
や
触覚
(
しよくかく
)
の
到底
(
たうてい
)
及
(
およ
)
ばざる
所
(
ところ
)
である。
037
此
(
この
)
情態
(
じやうたい
)
にあつて、
038
天人
(
てんにん
)
及
(
およ
)
び
精霊
(
せいれい
)
を
見
(
み
)
る
時
(
とき
)
は、
039
其
(
その
)
精気
(
せいき
)
凛々
(
りんりん
)
として
活躍
(
くわつやく
)
するを
認
(
みと
)
むべく、
040
又
(
また
)
彼
(
かれ
)
等
(
ら
)
の
言語
(
げんご
)
をも
明瞭
(
めいれう
)
に
聞
(
き
)
く
事
(
こと
)
を
得
(
え
)
らるるのである。
041
尚
(
なほ
)
も
不可思議
(
ふかしぎ
)
とすべきは、
042
彼
(
かれ
)
等
(
ら
)
天人
(
てんにん
)
及
(
およ
)
び
精霊
(
せいれい
)
に
親
(
した
)
しく
接触
(
せつしよく
)
し
得
(
う
)
ることである。
043
此
(
この
)
故
(
ゆゑ
)
は
人間
(
にんげん
)
肉体
(
にくたい
)
に
属
(
ぞく
)
するもの、
044
少
(
すこ
)
しも
此
(
この
)
間
(
かん
)
に
混入
(
こんにふ
)
し
来
(
きた
)
らないからである。
045
此
(
この
)
情態
(
じやうたい
)
を
呼
(
よ
)
んで
霊界
(
れいかい
)
にては
肉体
(
にくたい
)
離脱
(
りだつ
)
の
時
(
とき
)
と
云
(
い
)
ひ、
046
現界
(
げんかい
)
より
見
(
み
)
ては
之
(
これ
)
を
死
(
し
)
と
称
(
しよう
)
するのである。
047
此
(
この
)
時
(
とき
)
人間
(
にんげん
)
は
其
(
その
)
肉体
(
にくたい
)
の
中
(
なか
)
に
自分
(
じぶん
)
の
居
(
を
)
る
事
(
こと
)
を
覚
(
おぼ
)
えず、
048
又
(
また
)
其
(
その
)
肉体
(
にくたい
)
の
外
(
そと
)
に
出
(
で
)
て
居
(
を
)
ることをも
覚
(
おぼ
)
えないものである。
049
人間
(
にんげん
)
は
其
(
その
)
内分
(
ないぶん
)
即
(
すなは
)
ち
霊的
(
れいてき
)
生涯
(
しやうがい
)
に
於
(
おい
)
て
精霊
(
せいれい
)
なりといふ
理由
(
りいう
)
は、
050
其
(
その
)
想念
(
さうねん
)
及
(
およ
)
び
意思
(
いし
)
に
所属
(
しよぞく
)
せる
事物
(
じぶつ
)
の
上
(
うへ
)
から
見
(
み
)
てしか
云
(
い
)
ふのである。
051
何
(
なん
)
とならば
此
(
この
)
間
(
かん
)
の
事物
(
じぶつ
)
は
人
(
ひと
)
の
内分
(
ないぶん
)
にして
即
(
すなは
)
ち
霊主
(
れいしゆ
)
体従
(
たいじう
)
の
法則
(
はふそく
)
に
依
(
よ
)
つて
活動
(
くわつどう
)
するから、
052
人
(
ひと
)
をして
人
(
ひと
)
たらしむる
所以
(
ゆゑん
)
である。
053
人
(
ひと
)
は
其
(
その
)
内分
(
ないぶん
)
以外
(
いぐわい
)
に
出
(
い
)
づることを
得
(
え
)
ないものであるから、
054
精霊
(
せいれい
)
即
(
すなは
)
ち
人間
(
にんげん
)
である。
055
人
(
ひと
)
の
肉体
(
にくたい
)
は
人間
(
にんげん
)
の
家
(
いへ
)
又
(
また
)
は
容器
(
ようき
)
と
云
(
い
)
つても
可
(
い
)
いものである。
056
人
(
ひと
)
の
肉体
(
にくたい
)
にして
即
(
すなは
)
ち
精霊
(
せいれい
)
の
活動
(
くわつどう
)
機関
(
きくわん
)
にして、
057
自己
(
じこ
)
の
本体
(
ほんたい
)
たる
精霊
(
せいれい
)
が
有
(
いう
)
する
所
(
ところ
)
の
諸々
(
もろもろ
)
の
想念
(
さうねん
)
と
諸多
(
しよた
)
の
情動
(
じやうだう
)
に
相応
(
あひおう
)
じて、
058
其
(
その
)
自然界
(
しぜんかい
)
に
於
(
お
)
ける
諸官能
(
しよくわんのう
)
を
全
(
まつた
)
うし
得
(
え
)
ざるに
立到
(
たちいた
)
つた
時
(
とき
)
は、
059
肉体
(
にくたい
)
上
(
じやう
)
より
見
(
み
)
て
之
(
これ
)
を
死
(
し
)
と
呼
(
よ
)
ぶのである。
060
精霊
(
せいれい
)
と
呼吸
(
こきふ
)
及
(
および
)
心臓
(
しんざう
)
の
鼓動
(
こどう
)
との
間
(
あひだ
)
に
内的
(
ないてき
)
交通
(
かうつう
)
なるものがある。
061
そは
精霊
(
せいれい
)
の
想念
(
さうねん
)
とは
呼吸
(
こきふ
)
と
相通
(
あひつう
)
じ、
062
其
(
その
)
愛
(
あい
)
より
来
(
きた
)
る
情動
(
じやうだう
)
は
心臓
(
しんざう
)
と
通
(
つう
)
ずる
故
(
ゆゑ
)
である。
063
夫
(
それ
)
だから
肺臓
(
はいざう
)
心臓
(
しんざう
)
の
活動
(
くわつどう
)
が
全
(
まつた
)
く
止
(
や
)
む
時
(
とき
)
こそ、
064
霊
(
れい
)
と
肉
(
にく
)
とが
忽
(
たちま
)
ち
分離
(
ぶんり
)
する
時
(
とき
)
である。
065
肺臓
(
はいざう
)
の
呼吸
(
こきふ
)
と
心臓
(
しんざう
)
の
鼓動
(
こどう
)
とは、
066
人間
(
にんげん
)
の
本体
(
ほんたい
)
たる
精霊
(
せいれい
)
其
(
その
)
ものを
繋
(
つな
)
ぐ
所
(
ところ
)
の
命脈
(
めいみやく
)
であつて、
067
此
(
この
)
二
(
ふた
)
つの
官能
(
くわんのう
)
を
破壊
(
はくわい
)
する
時
(
とき
)
は
精霊
(
せいれい
)
は
忽
(
たちま
)
ちおのれに
帰
(
かへ
)
り、
068
独立
(
どくりつ
)
し
復活
(
ふくくわつ
)
し
得
(
う
)
るのである。
069
斯
(
か
)
くて
肉体
(
にくたい
)
即
(
すなは
)
ち
精霊
(
せいれい
)
の
躯殻
(
くかく
)
は
其
(
その
)
精霊
(
せいれい
)
より
分離
(
ぶんり
)
されたが
故
(
ゆゑ
)
に
次第
(
しだい
)
に
冷却
(
れいきやく
)
して、
070
遂
(
つひ
)
に
腐敗
(
ふはい
)
糜爛
(
びらん
)
するに
至
(
いた
)
るものである。
071
人間
(
にんげん
)
の
精霊
(
せいれい
)
が
呼吸
(
こきふ
)
及
(
および
)
心臓
(
しんざう
)
と
内的
(
ないてき
)
交通
(
かうつう
)
をなす
所以
(
ゆゑん
)
は、
072
人間
(
にんげん
)
の
生死
(
せいし
)
に
関
(
くわん
)
する
活動
(
くわつどう
)
に
就
(
つ
)
いては、
073
全般
(
ぜんぱん
)
的
(
てき
)
に、
074
又
(
また
)
個々
(
ここ
)
肺臓
(
はいざう
)
心臓
(
しんざう
)
の
両機関
(
りやうきくわん
)
に
拠
(
よ
)
る
所
(
ところ
)
である。
075
而
(
しか
)
して
人間
(
にんげん
)
の
精霊
(
せいれい
)
即
(
すなは
)
ち
本体
(
ほんたい
)
は
肉体
(
にくたい
)
分離後
(
ぶんりご
)
と
雖
(
いへど
)
も、
076
尚
(
なほ
)
少時
(
しばらく
)
は
其
(
その
)
体内
(
たいない
)
に
残
(
のこ
)
り、
077
心臓
(
しんざう
)
の
鼓動
(
こどう
)
全
(
まつた
)
く
止
(
や
)
むを
待
(
ま
)
つて、
078
全部
(
ぜんぶ
)
脱出
(
だつしゆつ
)
するのである。
079
而
(
しか
)
して
之
(
これ
)
は
人間
(
にんげん
)
の
死因
(
しいん
)
如何
(
いかん
)
に
依
(
よ
)
つて
生
(
しやう
)
ずる
所
(
ところ
)
の
現象
(
げんしやう
)
である。
080
或
(
ある
)
場合
(
ばあひ
)
には
心臓
(
しんざう
)
の
鼓動
(
こどう
)
が
永
(
なが
)
く
継続
(
けいぞく
)
し、
081
或
(
ある
)
場合
(
ばあひ
)
は
長
(
なが
)
からざることがある。
082
此
(
この
)
鼓動
(
こどう
)
が
全
(
まつた
)
く
止
(
や
)
んだ
時
(
とき
)
は、
083
人間
(
にんげん
)
の
本体
(
ほんたい
)
たる
精霊
(
せいれい
)
は
直
(
ただち
)
に
霊界
(
れいかい
)
に
復活
(
ふくくわつ
)
し
得
(
う
)
るのである。
084
併
(
しか
)
しながらこれは
瑞
(
みづ
)
の
御霊
(
みたま
)
の
大神
(
おほかみ
)
のなし
給
(
たま
)
ふ
所
(
ところ
)
であつて、
085
人間
(
にんげん
)
自己
(
じこ
)
の
能
(
よ
)
くする
所
(
ところ
)
ではない。
086
而
(
しか
)
して
心臓
(
しんざう
)
の
鼓動
(
こどう
)
が
全
(
まつた
)
く
休止
(
きうし
)
する
迄
(
まで
)
、
087
精霊
(
せいれい
)
が
其
(
その
)
肉体
(
にくたい
)
より
分離
(
ぶんり
)
せない
理由
(
りいう
)
は、
088
心臓
(
しんざう
)
なるものは、
089
情動
(
じやうだう
)
に
相応
(
さうおう
)
するが
故
(
ゆゑ
)
である。
090
凡
(
すべ
)
て
情動
(
じやうだう
)
なるものは
愛
(
あい
)
に
属
(
ぞく
)
し、
091
愛
(
あい
)
は
人間
(
にんげん
)
生命
(
せいめい
)
の
本体
(
ほんたい
)
である。
092
人間
(
にんげん
)
は
此
(
この
)
愛
(
あい
)
に
依
(
よ
)
るが
故
(
ゆゑ
)
に、
093
各
(
おのおの
)
生命
(
せいめい
)
の
熱
(
ねつ
)
があり、
094
而
(
しか
)
して
此
(
この
)
和合
(
わがふ
)
の
継続
(
けいぞく
)
する
間
(
うち
)
は、
095
相応
(
さうおう
)
の
存在
(
そんざい
)
あるを
以
(
もつ
)
て、
096
精霊
(
せいれい
)
の
生命
(
せいめい
)
尚
(
なほ
)
肉体中
(
にくたいちう
)
にあるのである。
097
人
(
ひと
)
の
精霊
(
せいれい
)
は
肉体
(
にくたい
)
の
脱離期
(
だつりき
)
即
(
すなは
)
ち
最後
(
さいご
)
の
死期
(
しき
)
に
当
(
あた
)
つて
其
(
その
)
瞬間
(
しゆんかん
)
抱持
(
はうぢ
)
した
所
(
ところ
)
の、
098
最後
(
さいご
)
の
想念
(
さうねん
)
をば、
099
死後
(
しご
)
暫
(
しばら
)
くの
間
(
あひだ
)
は
保存
(
ほぞん
)
するものであるが、
100
時
(
とき
)
を
経
(
へ
)
るに
従
(
したが
)
つて、
101
精霊
(
せいれい
)
は
元
(
もと
)
世
(
よ
)
に
在
(
あ
)
つた
時
(
とき
)
、
102
平素
(
へいそ
)
抱持
(
はうぢ
)
したる
諸々
(
もろもろ
)
の
想念
(
さうねん
)
の
内
(
うち
)
に
復帰
(
ふくき
)
するものである。
103
さて
此
(
これ
)
等
(
ら
)
の
諸々
(
もろもろ
)
の
想念
(
さうねん
)
は、
104
彼
(
か
)
れ
精霊
(
せいれい
)
が
全般
(
ぜんぱん
)
的
(
てき
)
情動
(
じやうだう
)
即
(
すなは
)
ち
主
(
しゆ
)
とする
所
(
ところ
)
の
愛
(
あい
)
の
情動
(
じやうだう
)
より
来
(
きた
)
るものである。
105
人
(
ひと
)
の
心
(
こころ
)
の
内分
(
ないぶん
)
即
(
すなは
)
ち
精霊
(
せいれい
)
が、
106
肉体
(
にくたい
)
より
引
(
ひ
)
かるるが
如
(
ごと
)
く、
107
又
(
また
)
殆
(
ほとん
)
ど
抽出
(
ちうしゆつ
)
さるるが
如
(
ごと
)
きを
知覚
(
ちかく
)
し、
108
且
(
か
)
つ
感覚
(
かんかく
)
するものである。
109
古人
(
こじん
)
の
諺
(
ことわざ
)
に
最後
(
さいご
)
の
一念
(
いちねん
)
は
死後
(
しご
)
の
生
(
せい
)
を
引
(
ひ
)
くと
云
(
い
)
つてゐるのは
誤謬
(
ごびう
)
である。
110
どうしても
平素
(
へいそ
)
の
愛
(
あい
)
の
情動
(
じやうだう
)
が
之
(
これ
)
を
左右
(
さいう
)
するものたる
以上
(
いじやう
)
は、
111
人間
(
にんげん
)
は
平素
(
へいそ
)
より
其
(
その
)
身魂
(
しんこん
)
を
清
(
きよ
)
め、
112
善
(
ぜん
)
を
云
(
い
)
ひ
善
(
ぜん
)
の
為
(
ため
)
に
善
(
ぜん
)
を
行
(
おこな
)
ひ、
113
且
(
か
)
つ
智慧
(
ちゑ
)
と
証覚
(
しようかく
)
とを
得
(
え
)
ておかなくてはならないものである。
114
さて
治国別
(
はるくにわけ
)
、
115
竜公
(
たつこう
)
は
極
(
きは
)
めて
謹慎
(
きんしん
)
の
態度
(
たいど
)
を
以
(
もつ
)
て、
116
赤
(
あか
)
、
117
白
(
しろ
)
の
守衛
(
しゆゑい
)
がここに
進
(
すす
)
み
来
(
く
)
る
精霊
(
せいれい
)
との
問答
(
もんだふ
)
を
一言
(
ひとこと
)
も
洩
(
も
)
らさじと、
118
小男鹿
(
さをしか
)
の
耳
(
みみ
)
ふり
立
(
た
)
てて
聞
(
き
)
き
入
(
い
)
つた。
119
そこへノコノコやつて
来
(
き
)
たのは
男女
(
なんによ
)
二人
(
ふたり
)
の
精霊
(
せいれい
)
であつた。
120
赤面
(
せきめん
)
の
守衛
(
しゆゑい
)
は
両人
(
りやうにん
)
に
向
(
むか
)
ひ、
121
赤顔の守衛
『ヤアヤアそれなる
両人
(
りやうにん
)
、
122
暫
(
しばら
)
く
待
(
ま
)
て。
123
ここは
八衢
(
やちまた
)
の
関所
(
せきしよ
)
だ。
124
汝
(
なんぢ
)
生前
(
せいぜん
)
の
行動
(
かうどう
)
に
就
(
つ
)
いて
取査
(
とりしら
)
べる
必要
(
ひつえう
)
がある』
125
と
呶鳴
(
どな
)
りつけた。
126
二人
(
ふたり
)
はオヅオヅしながら、
127
二人
『ハイ』
128
と
云
(
い
)
つたきり、
129
路上
(
ろじやう
)
にうづくまつて
了
(
しま
)
つた。
130
赤顔の守衛
『
其
(
その
)
方
(
はう
)
両人
(
りやうにん
)
は
何者
(
なにもの
)
だ』
131
男(徳)
『ハイ、
132
私
(
わたし
)
は
呉服屋
(
ごふくや
)
の
番頭
(
ばんとう
)
で
徳
(
とく
)
と
申
(
まを
)
します』
133
女(叶枝)
『
私
(
わたくし
)
は
叶枝
(
かなえ
)
と
申
(
まを
)
す
芸者
(
げいしや
)
で
厶
(
ござ
)
います』
134
赤顔の守衛
『ウンさうだらう、
135
其
(
その
)
方
(
はう
)
両人
(
りやうにん
)
は
情死
(
じやうし
)
を
致
(
いた
)
して、
136
ここ
迄
(
まで
)
気楽
(
きらく
)
相
(
さう
)
に
手
(
て
)
に
手
(
て
)
を
取
(
と
)
つて
意茶
(
いちや
)
ついて
来
(
き
)
たのだらう。
137
さてもさても
暢気
(
のんき
)
な
代物
(
しろもの
)
だなア』
138
徳
『ハイ、
139
誠
(
まこと
)
に
面目
(
めんぼく
)
次第
(
しだい
)
も
厶
(
ござ
)
いませぬ。
140
中々
(
なかなか
)
何
(
ど
)
うして
何
(
ど
)
うして、
141
気楽
(
きらく
)
所
(
どころ
)
か、
142
今
(
いま
)
此
(
この
)
先
(
さき
)
で、
143
三途
(
せうづ
)
の
川
(
かは
)
を
渡
(
わた
)
り、
144
お
婆
(
ば
)
アさまに
散々
(
さんざん
)
膏
(
あぶら
)
をとられた
上
(
うへ
)
、
145
いろいろと
恥
(
はぢ
)
をかかされ、
146
ヤツとのことで
此処
(
ここ
)
まで
逃
(
に
)
げて
参
(
まゐ
)
りました』
147
赤顔の守衛
『
其
(
その
)
方
(
はう
)
徳
(
とく
)
とやら、
148
暫
(
しばら
)
く
此方
(
こちら
)
へ
来
(
き
)
て
待
(
ま
)
つてをれ。
149
女
(
をんな
)
の
方
(
はう
)
から
査
(
しら
)
べてやる』
150
徳
『ハイ、
151
どうぞ
一緒
(
いつしよ
)
に、
152
なることならば………
査
(
しら
)
べて
頂
(
いただ
)
き
度
(
た
)
う
厶
(
ござ
)
います。
153
二世
(
にせ
)
も
三世
(
さんせ
)
も、
154
仮令
(
たとへ
)
野
(
の
)
の
末
(
すゑ
)
山
(
やま
)
の
奥
(
おく
)
、
155
どこへ
行
(
い
)
つても
離
(
はな
)
れないといふ
固
(
かた
)
い
約束
(
やくそく
)
を
結
(
むす
)
んで
参
(
まゐ
)
つたので
厶
(
ござ
)
いますから、
156
仮令
(
たとへ
)
一
(
いつ
)
分間
(
ぷんかん
)
たりとも
離
(
はな
)
れることは
出来
(
でき
)
ませぬ』
157
赤顔の守衛
『そんな
勝手
(
かつて
)
な
事
(
こと
)
が、
158
霊界
(
れいかい
)
では
通
(
とほ
)
ると
思
(
おも
)
ふか。
159
暫
(
しばら
)
く
控
(
ひか
)
へて
居
(
を
)
らう………オイ
白
(
しろ
)
さま、
160
暫
(
しばら
)
く
此
(
この
)
徳
(
とく
)
を
豚箱
(
ぶたばこ
)
の
中
(
なか
)
へ
放
(
ほ
)
り
込
(
こ
)
んでおいて
下
(
くだ
)
さい』
161
白顔の守衛
『コレ
徳
(
とく
)
さま、
162
辛
(
つら
)
からうが、
163
少時
(
しばらく
)
の
間
(
あひだ
)
だから、
164
マアこちらへ
来
(
き
)
てゐなさい。
165
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
も
一服
(
いつぷく
)
してゐられるから………
豚箱
(
ぶたばこ
)
なんどに
入
(
い
)
れやしないから、
166
霊界
(
れいかい
)
のお
茶
(
ちや
)
でも
呑
(
の
)
んで、
167
叶枝
(
かなえ
)
さまの
査
(
しら
)
べが
済
(
す
)
むまで、
168
此方
(
こちら
)
でお
休
(
やす
)
みなさい』
169
徳
(
とく
)
は
涙
(
なみだ
)
を
流
(
なが
)
しながら………
170
徳
『ハイ
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います。
171
あなたの
様
(
やう
)
に
同情
(
どうじやう
)
のあるお
言葉
(
ことば
)
でいつて
下
(
くだ
)
されば、
172
半日
(
はんにち
)
や
仮令
(
たとへ
)
一
(
いち
)
日
(
にち
)
位
(
くらゐ
)
離
(
はな
)
れた
所
(
ところ
)
で
別
(
べつ
)
に
苦
(
くる
)
しいことは
厶
(
ござ
)
いませぬ。
173
頭
(
あたま
)
から
役人面
(
やくにんづら
)
して、
174
怖
(
こは
)
い
顔
(
かほ
)
で
呶鳴
(
どな
)
り
立
(
た
)
てられると
一寸
(
いつすん
)
の
虫
(
むし
)
にも
五分
(
ごぶ
)
の
魂
(
たましひ
)
、
175
チツとはムカツきますからなア』
176
赤
(
あか
)
は
目
(
め
)
を
怒
(
いか
)
らし、
177
赤顔の守衛
『
黙
(
だま
)
れ!
人間
(
にんげん
)
の
分際
(
ぶんざい
)
として
左様
(
さやう
)
なことを
申
(
まを
)
すと
直様
(
すぐさま
)
地獄
(
ぢごく
)
へ
落
(
おと
)
してやるぞ』
178
徳
『ハイ………どうせ、
179
私
(
わたし
)
は
男地獄
(
をとこぢごく
)
、
180
叶枝
(
かなえ
)
は
女地獄
(
をんなぢごく
)
と、
181
娑婆
(
しやば
)
でさへも
仇名
(
あだな
)
をとつてきた
位
(
くらゐ
)
で
厶
(
ござ
)
いますから、
182
地獄落
(
ぢごくおち
)
は
覚悟
(
かくご
)
して
居
(
を
)
ります。
183
併
(
しか
)
しながら、
184
どんな
辛
(
つら
)
い
所
(
ところ
)
でも
構
(
かま
)
ひませぬから、
185
二人
(
ふたり
)
一緒
(
いつしよ
)
にやつて
下
(
くだ
)
さい。
186
そればつかりが
一生
(
いつしやう
)
の
御
(
お
)
願
(
ねがひ
)
で
厶
(
ござ
)
います』
187
赤顔の守衛
『エヽ
喧
(
やかま
)
しい、
188
白
(
しろ
)
さま、
189
早
(
はや
)
く
徳
(
とく
)
を
隔離
(
かくり
)
して
下
(
くだ
)
さい』
190
白顔の守衛
『サア
徳
(
とく
)
さま、
191
こちらへお
出
(
い
)
でなさい』
192
徳
『オイ、
193
叶枝
(
かなえ
)
、
194
おれのことを
忘
(
わす
)
れちやならないよ。
195
俺
(
おれ
)
もお
前
(
まへ
)
のこた、
196
一瞬間
(
いつしゆんかん
)
も
忘
(
わす
)
れないからなア』
197
叶枝
(
かなえ
)
は
何
(
なん
)
の
応答
(
いらへ
)
もなく、
198
うつむいてメソメソ
泣
(
な
)
いて
居
(
ゐ
)
る。
199
徳
(
とく
)
は
色
(
いろ
)
白
(
しろ
)
き
守衛
(
しゆゑい
)
に
導
(
みちび
)
かれ
館
(
やかた
)
の
玄関
(
げんくわん
)
指
(
さ
)
して
行
(
ゆ
)
く。
200
赤
(
あか
)
は
帳面
(
ちやうめん
)
をくりながら、
201
赤顔の守衛
『オイ
女
(
をんな
)
、
202
其
(
その
)
方
(
はう
)
は
随分
(
ずゐぶん
)
悪
(
わる
)
い
事
(
こと
)
を
致
(
いた
)
して
居
(
ゐ
)
るが、
203
逐一
(
ちくいち
)
此処
(
ここ
)
で
白状
(
はくじやう
)
致
(
いた
)
すのだぞ』
204
叶枝
『ハイ、
205
別
(
べつ
)
に
悪
(
わる
)
い
事
(
こと
)
を
致
(
いた
)
した
覚
(
おぼ
)
えは
厶
(
ござ
)
いませぬよ』
206
赤顔の守衛
『バカを
申
(
まを
)
せ、
207
其
(
その
)
方
(
はう
)
は
芸者
(
げいしや
)
で
在
(
あ
)
りながら、
208
芸
(
げい
)
を
売
(
う
)
らずに
肉
(
にく
)
を
売
(
う
)
つてゐるぢやないか』
209
叶枝
『ハイ、
210
芸
(
げい
)
を
売
(
う
)
つても
肉
(
にく
)
を
売
(
う
)
つても、
211
商売
(
しやうばい
)
に
二
(
ふた
)
つは
厶
(
ござ
)
いませぬ。
212
歌
(
うた
)
を
唄
(
うた
)
つたり
三味
(
しやみ
)
をひいたり、
213
太鼓
(
たいこ
)
や
鼓
(
つづみ
)
を
拍
(
う
)
つのは
遊芸
(
いうげい
)
で
厶
(
ござ
)
います。
214
そして
肉
(
にく
)
をうるのは
岩戸
(
いはと
)
開
(
びら
)
きの
神楽舞
(
かぐらまひ
)
、
215
曲芸
(
きよくげい
)
をやつて、
216
お
客
(
きやく
)
さまに
喜
(
よろこ
)
ばせ
楽
(
たの
)
します
清
(
きよ
)
き
商売
(
しやうばい
)
で
厶
(
ござ
)
います。
217
それ
故
(
ゆゑ
)
相場師
(
さうばし
)
か
博奕打
(
ばくちうち
)
の
様
(
やう
)
に
片一方
(
かたいつぱう
)
が
喜
(
よろこ
)
び
片一方
(
かたいつぱう
)
が
悔
(
くや
)
むといふよなことは、
218
決
(
けつ
)
してやつた
覚
(
おぼ
)
えは
厶
(
ござ
)
いませぬ。
219
どのお
客
(
きやく
)
さまも
此
(
この
)
お
客
(
きやく
)
さまも、
220
皆
(
みな
)
、
221
アハヽヽ、
222
オホヽヽ、
223
エヘヽヽと
笑
(
わら
)
ひ
興
(
きよう
)
じ、
224
まるで
天国
(
てんごく
)
の
春
(
はる
)
に
逢
(
あ
)
うたやうだと
仰有
(
おつしや
)
つて、
225
喜
(
よろこ
)
んで
下
(
くだ
)
さる
方
(
かた
)
ばかりで
厶
(
ござ
)
います。
226
両方
(
りやうはう
)
のよい
商売
(
しやうばい
)
といふのは、
227
芸者
(
げいしや
)
と
頬冠
(
ほほかぶ
)
り
位
(
くらゐ
)
なものです。
228
これ
程
(
ほど
)
人間
(
にんげん
)
を
喜
(
よろこ
)
ばして
来
(
き
)
た
芸者
(
げいしや
)
に
罪
(
つみ
)
が
厶
(
ござ
)
いますなら、
229
政治家
(
せいぢか
)
や
宗教家
(
しうけうか
)
、
230
一番
(
いちばん
)
悪
(
わる
)
いのはお
医者
(
いしや
)
さま、
231
其
(
その
)
外
(
ほか
)
娑婆
(
しやば
)
に
居
(
ゐ
)
る
一般
(
いつぱん
)
の
人間
(
にんげん
)
は
皆
(
みな
)
大悪人
(
だいあくにん
)
で
厶
(
ござ
)
います。
232
私
(
わたし
)
は
一旦
(
いつたん
)
言
(
い
)
ひ
交
(
かは
)
した
男
(
をとこ
)
に
心中立
(
しんぢうだ
)
てをして、
233
命
(
いのち
)
まですてて、
234
ここ
迄
(
まで
)
やつて
来
(
き
)
た
貞節
(
ていせつ
)
な
女
(
をんな
)
で
厶
(
ござ
)
います。
235
どうぞ
私
(
わたし
)
の
清
(
きよ
)
い
美
(
うつく
)
しい
心
(
こころ
)
をお
調
(
しら
)
べ
下
(
くだ
)
さいまして、
236
どうぞ
天国
(
てんごく
)
へやつて
下
(
くだ
)
さいませ。
237
そしてあの
徳
(
とく
)
さまだつて、
238
決
(
けつ
)
して
悪
(
わる
)
い
人
(
ひと
)
ぢや
厶
(
ござ
)
いませぬ。
239
どうぞ
私
(
わたし
)
と
一緒
(
いつしよ
)
に
天国
(
てんごく
)
の
旅
(
たび
)
をさして
下
(
くだ
)
さいます
様
(
やう
)
に
御
(
お
)
願
(
ねがひ
)
致
(
いた
)
します』
240
赤顔の守衛
『
馬鹿
(
ばか
)
を
申
(
まを
)
せ、
241
徳
(
とく
)
のこと
迄
(
まで
)
、
242
貴様
(
きさま
)
がゴテゴテ
云
(
い
)
ふ
場所
(
ばしよ
)
ぢやない。
243
貴様
(
きさま
)
のことばかり
白状
(
はくじやう
)
すればいいのだ。
244
何
(
なん
)
だベラベラと
自己
(
じこ
)
弁護
(
べんご
)
ばかしやりやがつて、
245
おマケに
情夫
(
じやうふ
)
の
事
(
こと
)
迄
(
まで
)
口出
(
くちだ
)
しするとは、
246
中々
(
なかなか
)
以
(
もつ
)
ての
外
(
ほか
)
の
代物
(
しろもの
)
だ。
247
斯
(
か
)
うなると
何
(
ど
)
うしても、
248
貴様
(
きさま
)
達
(
たち
)
両人
(
りやうにん
)
は
一緒
(
いつしよ
)
におくことは
出来
(
でき
)
ぬ』
249
叶枝
『あ、
250
左様
(
さやう
)
で
厶
(
ござ
)
いますか、
251
折角
(
せつかく
)
ここ
迄
(
まで
)
ついて
来
(
き
)
ましたけれど、
252
あなた
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
命令
(
めいれい
)
で
引分
(
ひきわ
)
けて
下
(
くだ
)
さるのならば、
253
冥土
(
めいど
)
の
規則
(
きそく
)
だと
思
(
おも
)
うて、
254
妾
(
わたし
)
はチツとも
異議
(
いぎ
)
は
申
(
まを
)
しませぬ。
255
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
私
(
わたし
)
は
無理
(
むり
)
心中
(
しんぢう
)
をさされましたのです。
256
現界
(
げんかい
)
といふ
所
(
ところ
)
は
思
(
おも
)
ふ
様
(
やう
)
に
行
(
ゆ
)
かぬ
所
(
ところ
)
で
厶
(
ござ
)
いまして、
257
好
(
す
)
きなお
方
(
かた
)
は
色々
(
いろいろ
)
故障
(
こしやう
)
が
出来
(
でき
)
て、
258
常住
(
じやうじう
)
会
(
あ
)
ふ
訳
(
わけ
)
には
行
(
ゆ
)
かず、
259
お
金
(
かね
)
はなし、
260
これに
反
(
はん
)
して、
261
嫌
(
きら
)
ひで
嫌
(
きら
)
ひで
仕方
(
しかた
)
のない
男
(
をとこ
)
は
金
(
かね
)
を
持
(
も
)
つて、
262
丸
(
まる
)
で
大根畑
(
だいこんばたけ
)
へネチがついた
程
(
ほど
)
、
263
うるさい
位
(
くらゐ
)
しがみつきに
来
(
き
)
ますなり、
264
本当
(
ほんたう
)
に
浮世
(
うきよ
)
がイヤになつて
了
(
しま
)
つたのですよ。
265
……
266
嫌
(
いや
)
なお
客
(
きやく
)
に
笑
(
わら
)
うてみせて
267
好
(
す
)
きの
膝
(
ひざ
)
にて
泣
(
な
)
きくらす
268
といふ
憐
(
あは
)
れな
生涯
(
しやうがい
)
を
続
(
つづ
)
けて
来
(
き
)
ました。
269
実際
(
じつさい
)
のこと
申
(
まを
)
しますれば、
270
あの
徳
(
とく
)
といふ
男
(
をとこ
)
、
271
御存
(
ごぞん
)
じの
通
(
とほ
)
り、
272
頭
(
あたま
)
迄
(
まで
)
がトク
頭病
(
とうびやう
)
で、
273
そしてヅぬけたトク
等
(
とう
)
の
馬鹿
(
ばか
)
で
厶
(
ござ
)
います。
274
とく
とお
査
(
しら
)
べの
上
(
うへ
)
、
275
どうぞ
私
(
わたし
)
と
一所
(
ひとところ
)
に
居
(
を
)
らない
様
(
やう
)
に、
276
特別
(
とくべつ
)
の
御
(
お
)
取扱
(
とりあつかひ
)
を
御
(
お
)
願
(
ねがひ
)
致
(
いた
)
します』
277
赤顔の守衛
『アハヽヽヽ、
278
貴様
(
きさま
)
は
余程
(
よほど
)
やり
手
(
て
)
だつたと
見
(
み
)
えるのう。
279
およそ
幾人
(
いくにん
)
ばかり
地獄
(
ぢごく
)
へおとしたか』
280
叶枝
『ハイ、
281
私
(
わたし
)
が
落
(
おと
)
したのぢや
厶
(
ござ
)
いませぬが、
282
勝手
(
かつて
)
にお
客
(
きやく
)
さまの
方
(
はう
)
から
落
(
お
)
ちたのです』
283
赤顔の守衛
『それでも
貴様
(
きさま
)
が
原動力
(
げんどうりよく
)
だ。
284
直接
(
ちよくせつ
)
におとさいでも、
285
間接
(
かんせつ
)
に
落
(
おと
)
して
居
(
ゐ
)
るのだ。
286
現
(
げん
)
に
今
(
いま
)
来
(
き
)
た
徳公
(
とくこう
)
でもさうぢやないか』
287
叶枝
(
かなえ
)
は
稍
(
やや
)
言葉
(
ことば
)
馴
(
な
)
れ、
288
娑婆
(
しやば
)
で
人間
(
にんげん
)
をあやつつて
来
(
き
)
た
地金
(
ぢがね
)
を
出
(
だ
)
し、
289
赤
(
あか
)
の
肩先
(
かたさき
)
を
平手
(
ひらて
)
で
三
(
み
)
つ
四
(
よ
)
つポンポン
叩
(
たた
)
き、
290
おチヨボ
口
(
ぐち
)
に
袖
(
そで
)
をあてながら、
291
叶枝
『ホヽヽヽヽ、
292
あの
六
(
むつ
)
かしい
顔
(
かほ
)
わいな。
293
わたえ、
294
そんな
赤
(
あか
)
い
面
(
つら
)
した、
295
目
(
め
)
のクルリと
大
(
おほ
)
きい、
296
口
(
くち
)
の
大
(
おほ
)
きい
男
(
をとこ
)
らしい
男
(
をとこ
)
、
297
本当
(
ほんたう
)
に
好
(
す
)
きだワ。
298
なア
赤
(
あか
)
さま、
299
チツと
可愛
(
かあい
)
がつて
頂戴
(
ちやうだい
)
ね』
300
赤顔の守衛
『コリヤ
怪
(
け
)
しからぬ、
301
何
(
なん
)
と
心得
(
こころえ
)
てゐる。
302
ここは
言
(
い
)
はば
霊界
(
れいかい
)
の
予審廷
(
よしんてい
)
だぞ。
303
審判官
(
しんぱんくわん
)
に
向
(
むか
)
つて、
304
何
(
なん
)
といふ
失礼
(
しつれい
)
なことを
申
(
まを
)
すか』
305
叶枝
『ホヽヽヽヽ、
306
あのマア、
307
六
(
むつ
)
かしい
顔
(
かほ
)
しやんすことえな。
308
あたえ、
309
ますます
可愛
(
かあい
)
くなつてよ』
310
赤顔の守衛
『エヽ、
311
馬鹿
(
ばか
)
に
致
(
いた
)
すな。
312
何
(
なん
)
と
心得
(
こころえ
)
て
居
(
ゐ
)
る』
313
叶枝
『お
気
(
き
)
に
障
(
さは
)
りましたら
御免
(
ごめん
)
なさいませ。
314
併
(
しか
)
しながら
霊界
(
れいかい
)
だつて、
315
愛
(
あい
)
の
情動
(
じやうどう
)
に
変
(
かは
)
りはありますまい。
316
現界
(
げんかい
)
の
役人
(
やくにん
)
だつて
六
(
むつ
)
かしい
顔
(
かほ
)
をして
被告人
(
ひこくにん
)
を
裁
(
さば
)
いてゐやはりますが、
317
女
(
をんな
)
の
被告
(
ひこく
)
が
行
(
ゆ
)
きますと、
318
忽
(
たちま
)
ち
目
(
め
)
を
細
(
ほそ
)
うし、
319
涎
(
よだれ
)
をくらはります。
320
あんただつて、
321
女
(
をんな
)
に
対
(
たい
)
する
男
(
をとこ
)
やおまへんか、
322
さう
七六
(
しちむつ
)
かしう、
323
四角
(
しかく
)
ばつてゐなしては、
324
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
が
殺風景
(
さつぷうけい
)
でたまりませぬワ。
325
どこもかも
行詰
(
ゆきつま
)
り、
326
不景気
(
ふけいき
)
風
(
かぜ
)
に
吹捲
(
ふきまく
)
られて、
327
娑婆
(
しやば
)
の
人間
(
にんげん
)
は
青息
(
あをいき
)
吐息
(
といき
)
の
為体
(
ていたらく
)
、
328
憂鬱
(
いううつ
)
に
沈
(
しづ
)
んでゐる
亡者
(
まうじや
)
共
(
ども
)
を、
329
妙音
(
めうおん
)
菩薩
(
ぼさつ
)
にも
比
(
ひ
)
すべき
芸者
(
げいしや
)
が、
330
慰安
(
ゐあん
)
を
与
(
あた
)
へ、
331
小口
(
こぐち
)
から
天国
(
てんごく
)
に
救
(
すく
)
うて
上
(
あ
)
げて
来
(
き
)
たのですよ。
332
お
前
(
まへ
)
さまだつて、
333
何時
(
いつ
)
迄
(
まで
)
もこんな
所
(
ところ
)
に、
334
そんな
六
(
むつ
)
かしい
顔
(
かほ
)
をして、
335
しやちこばつてゐるよりも、
336
私
(
わたし
)
と
一緒
(
いつしよ
)
に
天国
(
てんごく
)
へでも
新婚
(
しんこん
)
旅行
(
りよかう
)
と
洒落
(
しやれ
)
たらどうだす………
余
(
あま
)
り
悪
(
わる
)
い
心持
(
こころもち
)
やしませぬで。
337
わたえの
荷
(
に
)
位
(
ぐらゐ
)
は
持
(
も
)
たして
上
(
あ
)
げますワ』
338
赤顔の守衛
『エヽ
仕方
(
しかた
)
のない
代物
(
しろもの
)
だなア。
339
貴様
(
きさま
)
余程
(
よほど
)
娑婆
(
しやば
)
で
暴威
(
ばうゐ
)
を
揮
(
ふる
)
うて
来
(
き
)
たのだらう。
340
中々
(
なかなか
)
弁舌
(
べんぜつ
)
はうまいものだ』
341
叶枝
『ホヽヽヽヽ、
342
その
声
(
こゑ
)
で
蜥蜴
(
とかげ
)
くらふか
時鳥
(
ほととぎす
)
、
343
外面
(
げめん
)
如
(
によ
)
菩薩
(
ぼさつ
)
内心
(
ないしん
)
如
(
によ
)
夜叉
(
やしや
)
、
344
表裏
(
へうり
)
反覆
(
はんぷく
)
常
(
つね
)
なきは
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
の
真相
(
しんさう
)
ですよ。
345
お
前
(
まへ
)
さまもチツと
世間
(
せけん
)
を
知
(
し
)
つて
来
(
き
)
なさい。
346
さうすりや、
347
そんな
偏狭
(
へんけふ
)
な
頭
(
あたま
)
が
改造
(
かいざう
)
されて、
348
新
(
あたら
)
しい
男
(
をとこ
)
の
仲間
(
なかま
)
に
這入
(
はい
)
れないものでもありませぬワ、
349
大臣
(
だいじん
)
だつて
国会
(
こくくわい
)
議員
(
ぎゐん
)
だつて、
350
元帥
(
げんすゐ
)
だつて、
351
紳士
(
しんし
)
紳商
(
しんしやう
)
だつて、
352
片
(
かた
)
つ
端
(
ぱし
)
からこの
靨
(
ゑくぼ
)
の
中
(
なか
)
へ、
353
皆
(
みな
)
吸
(
す
)
ひ
込
(
こ
)
んで
了
(
しま
)
ふ
技能
(
ぎのう
)
を
持
(
も
)
つてゐる、
354
天然
(
てんねん
)
の
美貌
(
びばう
)
、
355
千変
(
せんぺん
)
万化
(
ばんくわ
)
の
魔力
(
まりよく
)
を
使
(
つか
)
ふ
女
(
をんな
)
ですもの、
356
門番
(
もんばん
)
さまの
一人
(
ひとり
)
や
二人
(
ふたり
)
位
(
ぐらゐ
)
、
357
噛
(
か
)
んだり
吐
(
は
)
いたりするのは、
358
屁
(
へ
)
のお
茶
(
ちや
)
でもありませぬワ。
359
お
前
(
まへ
)
さまも
有名
(
いうめい
)
な
芸者
(
げいしや
)
の
叶枝
(
かなえ
)
にこれ
丈
(
だけ
)
言葉
(
ことば
)
をかけて
貰
(
もら
)
うたら、
360
余程
(
よほど
)
の
光栄
(
くわうえい
)
ですよ、
361
本当
(
ほんたう
)
に
仕合
(
しあは
)
せな
御
(
お
)
方
(
かた
)
ねえ』
362
竜公
(
たつこう
)
は
思
(
おも
)
はず
知
(
し
)
らず、
363
竜公
『ウツフヽヽ』
364
と
吹
(
ふ
)
き
出
(
だ
)
した。
365
赤顔の守衛
『
貴様
(
きさま
)
の
調
(
しら
)
べは
一朝
(
いつてう
)
一夕
(
いつせき
)
に
行
(
ゆ
)
かない。
366
人
(
ひと
)
の
庫
(
くら
)
を
呑
(
の
)
み、
367
山
(
やま
)
を
呑
(
の
)
み、
368
田畑
(
でんぱた
)
を
呑
(
の
)
み、
369
数多
(
あまた
)
の
亡者
(
まうじや
)
を
製造
(
せいざう
)
した
したたか
者
(
もの
)
だから、
370
又
(
また
)
追
(
お
)
つて
調
(
しら
)
べてやる。
371
サア
立
(
た
)
てツ』
372
と
云
(
い
)
ひながら、
373
松
(
まつ
)
の
木
(
き
)
の
荒皮
(
あらかは
)
の
様
(
やう
)
な
腕
(
うで
)
をグツと
突出
(
つきだ
)
し、
374
葦
(
あし
)
の
芽
(
め
)
の
様
(
やう
)
な
柔
(
やはら
)
こい
腕
(
うで
)
をグツと
握
(
にぎ
)
り、
375
岩
(
いは
)
の
戸
(
と
)
をパツとあけて、
376
岩窟内
(
がんくつない
)
へ
放
(
ほ
)
り
込
(
こ
)
みおき、
377
再
(
ふたた
)
び
徳
(
とく
)
を
此
(
この
)
場
(
ば
)
に
引
(
ひき
)
ずり
来
(
きた
)
り、
378
鹿爪
(
しかつめ
)
らしい
顔
(
かほ
)
をして
査
(
しら
)
べ
始
(
はじ
)
めた。
379
赤顔の守衛
『
其
(
その
)
方
(
はう
)
は
生前
(
せいぜん
)
に
何商売
(
なにしやうばい
)
を
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
つたか』
380
徳
『ハイ、
381
最前
(
さいぜん
)
申
(
まを
)
した
様
(
やう
)
に
呉服屋
(
ごふくや
)
の
番頭
(
ばんとう
)
に
間違
(
まちが
)
ひ
厶
(
ござ
)
いませぬ』
382
赤顔の守衛
『
其
(
その
)
方
(
はう
)
は
幾
(
いく
)
らの
月給
(
げつきふ
)
を
貰
(
もら
)
つて
居
(
を
)
つたか』
383
徳
『ハイ、
384
月
(
つき
)
に
親方
(
おやかた
)
の
食事持
(
しよくじもち
)
で
十
(
じふ
)
円
(
ゑん
)
ばかり
頂
(
いただ
)
いて
居
(
を
)
りました』
385
赤顔の守衛
『
其
(
その
)
方
(
はう
)
は
月
(
つき
)
に
十五六
(
じふごろく
)
回
(
くわい
)
も
叶枝
(
かなえ
)
の
側
(
そば
)
へ
通
(
かよ
)
うたであらう。
386
チヤンと
此
(
この
)
帳面
(
ちやうめん
)
に
記
(
しる
)
してあるぞ』
387
徳
『ハイ
仕方
(
しかた
)
がありませぬ、
388
仰有
(
おつしや
)
る
通
(
とほり
)
で
厶
(
ござ
)
います』
389
赤顔の守衛
『
一度
(
いちど
)
遊
(
あそ
)
びに
行
(
ゆ
)
くと
幾
(
いく
)
らの
金
(
かね
)
が
要
(
い
)
るか』
390
徳
『ハイ、
391
少
(
すくな
)
い
時
(
とき
)
が
七八
(
しちはち
)
円
(
ゑん
)
、
392
多
(
おほ
)
い
時
(
とき
)
は
五十
(
ごじふ
)
円
(
ゑん
)
も
要
(
い
)
ります』
393
赤顔の守衛
『
僅
(
わづ
)
か
一
(
いつ
)
ケ
月
(
げつ
)
十
(
じふ
)
円
(
ゑん
)
の
給料
(
きふれう
)
で、
394
何
(
ど
)
うして
其
(
その
)
金
(
かね
)
が
出来
(
でき
)
るのだ』
395
徳
『ハイ、
396
私
(
わたし
)
の
役徳
(
やくとく
)
によつて、
397
それ
丈
(
だけ
)
生
(
う
)
み
出
(
だ
)
します』
398
赤顔の守衛
『バカを
申
(
まを
)
せ。
399
帳面
(
ちやうめん
)
づらをゴマかしたのだらう』
400
徳
『
帳面
(
ちやうめん
)
づらをゴマかすのは
悪
(
わる
)
う
厶
(
ござ
)
いますか。
401
娑婆
(
しやば
)
の
人間
(
にんげん
)
は
筆
(
ふで
)
の
先
(
さき
)
で
一遍
(
いつぺん
)
に
五万
(
ごまん
)
両
(
りやう
)
、
402
十万
(
じふまん
)
両
(
りやう
)
とゴマかして
居
(
を
)
りますよ。
403
現
(
げん
)
に
積善
(
せきぜん
)
銀行
(
ぎんかう
)
を
御覧
(
ごらん
)
なさい。
404
二千万
(
にせんまん
)
円
(
ゑん
)
も
筆
(
ふで
)
の
先
(
さき
)
でゴマかしたぢや
厶
(
ござ
)
いませぬか。
405
それでもヤツパリ
紳士
(
しんし
)
とか
紳商
(
しんしやう
)
とか、
406
有力者
(
いうりよくしや
)
とかの
名
(
な
)
を
恣
(
ほしいまま
)
にして
居
(
を
)
ります。
407
そして
政府
(
せいふ
)
は
余
(
あま
)
り
之
(
これ
)
を
厳
(
きび
)
しく
詮議
(
せんぎ
)
立
(
だ
)
て
致
(
いた
)
しませぬ。
408
之
(
これ
)
を
思
(
おも
)
へば
一
(
ひと
)
つでもウマく
帳面
(
ちやうめん
)
づらをゴマかした
奴
(
やつ
)
が、
409
所謂
(
いはゆる
)
社会
(
しやくわい
)
の
善人
(
ぜんにん
)
です。
410
私
(
わたし
)
の
様
(
やう
)
な
者
(
もの
)
をお
責
(
せ
)
めなさるよりも、
411
モツと
大
(
おほ
)
きな
奴
(
やつ
)
をお
査
(
しら
)
べなさりませ。
412
月
(
つき
)
に
金
(
かね
)
の
百
(
ひやく
)
両
(
りやう
)
や
二百
(
にひやく
)
両
(
りやう
)
誤魔化
(
ごまくわ
)
した
弱
(
よわ
)
い
人間
(
にんげん
)
や、
413
米
(
こめ
)
の
一升
(
いつしよう
)
や
金
(
かね
)
の
五十銭
(
ごじつせん
)
位
(
くらゐ
)
盗
(
ぬす
)
んだ
憐
(
あは
)
れな
人間
(
にんげん
)
を
査
(
しら
)
べるよりも、
414
なぜモツと
大
(
おほ
)
きな
悪人
(
あくにん
)
の
巨頭
(
きよとう
)
をお
査
(
しら
)
べなさらぬのですか。
415
そんなことで
何
(
ど
)
うして
八衢
(
やちまた
)
審判所
(
しんぱんしよ
)
の
権威
(
けんゐ
)
が
保
(
たも
)
たれませうか。
416
現界
(
げんかい
)
に
於
(
おい
)
ても
微罪
(
びざい
)
不検挙
(
ふけんきよ
)
の
内規
(
ないき
)
が
行
(
おこな
)
はれて
居
(
を
)
りますよ』
417
赤顔の守衛
『
馬鹿
(
ばか
)
を
申
(
まを
)
せ、
418
現界
(
げんかい
)
と
違
(
ちが
)
つて、
419
霊界
(
れいかい
)
の
審判所
(
しんぱんしよ
)
は、
420
一厘
(
いちりん
)
一毛
(
いちまう
)
の
相違
(
さうゐ
)
も
許
(
ゆる
)
さぬのだ。
421
仮令
(
たとへ
)
塵切
(
ちりぎ
)
れ
一本
(
いつぽん
)
でも
取
(
と
)
つた
奴
(
やつ
)
は
盗人
(
ぬすびと
)
だ』
422
徳
『それなら
何故
(
なぜ
)
冥土
(
めいど
)
の
法律
(
はふりつ
)
を
現界
(
げんかい
)
へ
発布
(
はつぷ
)
して
下
(
くだ
)
さらぬのか。
423
私
(
わたし
)
達
(
たち
)
は
現界
(
げんかい
)
の
最善
(
さいぜん
)
を
尽
(
つく
)
さうと
思
(
おも
)
へば、
424
霊界
(
れいかい
)
へ
来
(
き
)
て
咎
(
とが
)
められる、
425
本当
(
ほんたう
)
に
善悪
(
ぜんあく
)
の
去就
(
きよしう
)
に
困
(
こま
)
ります。
426
それ
程
(
ほど
)
、
427
今
(
いま
)
となつて
小
(
ちひ
)
さいこと
迄
(
まで
)
詮議立
(
せんぎだ
)
てなさるのなら、
428
なぜ
夢
(
ゆめ
)
になりとも、
429
冥土
(
めいど
)
の
法律
(
はふりつ
)
は
斯
(
か
)
うだと
知
(
し
)
らしては
下
(
くだ
)
さらぬのだ。
430
丸
(
まる
)
で
人間
(
にんげん
)
を
陥穽
(
おとしあな
)
へおとすよな、
431
そんな
残酷
(
ざんこく
)
な
法律
(
はふりつ
)
がどこにありますか。
432
私
(
わたし
)
は
決
(
けつ
)
して
左様
(
さやう
)
な
不徹底
(
ふてつてい
)
な
不完全
(
ふくわんぜん
)
な
法律
(
はふりつ
)
命令
(
めいれい
)
には
絶対
(
ぜつたい
)
服従
(
ふくじゆう
)
致
(
いた
)
しませぬ。
433
それよりも、
434
あなた、
435
大切
(
たいせつ
)
な
私
(
わたし
)
の
女房
(
にようばう
)
をどこへ
隠
(
かく
)
しましたか。
436
あべこべに
誘拐罪
(
いうかいざい
)
で、
437
冥府
(
めいふ
)
の
審判所
(
しんぱんしよ
)
へ
告発
(
こくはつ
)
致
(
いた
)
しますぞ』
438
赤顔の守衛
『
今
(
いま
)
の
娑婆
(
しやば
)
に
居
(
ゐ
)
る
奴
(
やつ
)
は、
439
ドイツも
此奴
(
こいつ
)
も、
440
皆
(
みな
)
弱肉
(
じやくにく
)
強食
(
きやうしよく
)
、
441
優勝
(
いうしよう
)
劣敗
(
れつぱい
)
を
以
(
もつ
)
て
最善
(
さいぜん
)
の
生活法
(
せいくわつはふ
)
ときめてゐやがるからサツパリ
始末
(
しまつ
)
に
了
(
を
)
へない。
442
スツカリ
良心
(
りやうしん
)
が
痳痺
(
まひ
)
し、
443
癲狂
(
てんきやう
)
痴呆
(
ちはう
)
の
境遇
(
きやうぐう
)
に
陥落
(
かんらく
)
して
居
(
ゐ
)
るのだから、
444
罪
(
つみ
)
の
断
(
だん
)
じやうもない、
445
癲狂者
(
てんきやうしや
)
や
痴呆
(
ちはう
)
に
対
(
たい
)
し、
446
法律
(
はふりつ
)
の
適用
(
てきよう
)
は
出来
(
でき
)
ないから、
447
貴様
(
きさま
)
は
放免
(
はうめん
)
する。
448
其
(
その
)
代
(
かは
)
り
一生
(
いつしやう
)
八衢
(
やちまた
)
の
四辻
(
よつつじ
)
に
立
(
た
)
つて、
449
亡者
(
まうじや
)
の
道案内
(
みちあんない
)
なと
致
(
いた
)
すがよからう』
450
徳
『
構
(
かま
)
うて
下
(
くだ
)
さるな、
451
自由
(
じいう
)
の
権
(
けん
)
です。
452
お
前
(
まへ
)
さま
達
(
たち
)
が
人間
(
にんげん
)
を
審
(
さば
)
く
権利
(
けんり
)
がどこにあるか。
453
人間
(
にんげん
)
を
審
(
さば
)
く
者
(
もの
)
は
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
より
外
(
ほか
)
にない
筈
(
はず
)
だ。
454
ヘン
余
(
あま
)
り
偉相
(
えらさう
)
に
言
(
い
)
ふな、
455
婦人
(
ふじん
)
誘拐者
(
いうかいしや
)
奴
(
め
)
が、
456
今度
(
こんど
)
は
俺
(
おれ
)
の
方
(
はう
)
から
承知
(
しようち
)
をしないのだ。
457
サ
早
(
はや
)
く
叶枝
(
かなえ
)
をここへ
出
(
だ
)
せばよし、
458
出
(
だ
)
さぬに
於
(
おい
)
ては
死物狂
(
しにものぐる
)
ひだ。
459
荒
(
あ
)
れて
荒
(
あ
)
れて
荒
(
あ
)
れまはしてやらうか』
460
赤顔の守衛
『あゝあ、
461
困
(
こま
)
つた
気違
(
きちがひ
)
の
夫婦
(
ふうふ
)
がやつて
来
(
き
)
たものだなア。
462
現界
(
げんかい
)
の
人間
(
にんげん
)
は
何奴
(
どいつ
)
も
此奴
(
こいつ
)
も
皆
(
みな
)
こんなものだ。
463
なア
白
(
しろ
)
さま、
464
コリヤ
一
(
ひと
)
つ
現界
(
げんかい
)
から
根本
(
こんぽん
)
改良
(
かいりやう
)
やらねば
駄目
(
だめ
)
だなア』
465
白顔の守衛
『あゝさうだから、
466
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
から
厳
(
いづ
)
の
御霊
(
みたま
)
、
467
瑞
(
みづ
)
の
御霊
(
みたま
)
の
神柱
(
かむばしら
)
を
現界
(
げんかい
)
に
送
(
おく
)
り、
468
今
(
いま
)
や
改造
(
かいざう
)
に
着手
(
ちやくしゆ
)
されつつあるのですよ。
469
やがて
四五
(
しご
)
年
(
ねん
)
も
先
(
さき
)
にゆけばキツと
効果
(
かうくわ
)
が
現
(
あら
)
はれ、
470
癲狂者
(
てんきやうしや
)
や
痴呆
(
ちはう
)
や、
471
盲
(
めくら
)
聾
(
つんぼ
)
の
数
(
かず
)
が
減
(
へ
)
るでせう。
472
さうすれば
吾々
(
われわれ
)
も
御用
(
ごよう
)
が
勤
(
つと
)
めよくなるでせう』
473
竜公
『モシ
先生
(
せんせい
)
、
474
厳
(
いづ
)
の
御霊
(
みたま
)
、
475
瑞
(
みづ
)
の
御霊
(
みたま
)
の
神柱
(
かむばしら
)
が
現界
(
げんかい
)
へ
出
(
だ
)
してあると
言
(
い
)
はれましたなア。
476
大方
(
おほかた
)
変性
(
へんじやう
)
男子
(
なんし
)
、
477
変性
(
へんじやう
)
女子
(
によし
)
の
事
(
こと
)
ぢやありますまいか』
478
治国別
『ウンさうだ。
479
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
も
余程
(
よほど
)
シツカリ
致
(
いた
)
さねばならないわい。
480
お
前
(
まへ
)
も
之
(
これ
)
から
十分
(
じふぶん
)
注意
(
ちうい
)
をして
娑婆
(
しやば
)
へ
帰
(
かへ
)
つたら、
481
舎身
(
しやしん
)
的
(
てき
)
活動
(
くわつどう
)
をやるのだなア』
482
(
大正一二・一・九
旧一一・一一・二三
松村真澄
録)
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