霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一九章 化相神(けさうしん)〔一二五二〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第47巻 舎身活躍 戌の巻 篇:第3篇 天国巡覧 よみ(新仮名遣い):てんごくじゅんらん
章:第19章 化相神 よみ(新仮名遣い):けそうしん 通し章番号:1252
口述日:1923(大正12)年01月10日(旧11月24日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年10月6日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一部の章はAIによって要約を作成しています。[×閉じる]:
祭典を行うことは、天国団体の天人の重要な務めの一つとなっている。天国の天人は愛の善に居るため、大神を愛し同僚を愛し、天地惟神の法則にしたがって宇宙の創造主たる神を厳粛に祀り、種々の供物を献じて神の愛に浴することを唯一の歓喜、神業としている。しかし天国人は決してエンゼルになったり宣伝使にはならない。それは霊国天人の任務である。
祭典が済むと、霊国からエンゼルまたは宣伝使が出張し来たって愛善を説き、真信を諭し、天人の智慧と証覚をますます円満たらしめるよう務める。
治国別と竜公は、珍彦に伴われて神の家と称する、天人が祭典を行い霊国宣伝使が説教を行う木造の殿堂に導かれた。この宮は想念によって建てられているから、決して腐朽したり古くなったりすることはない。
天国の祭典は実に荘厳といおうか、優美といおうか、華麗といおうか、たとえ方のない情態である。団体中で証覚のすぐれたものが祭典に関する役目を務める。珍彦は団体長として斎主を務めている。
すべて天国は清潔主義、統一主義、進取主義、楽観主義であるから、何とも言えぬ良い気分に充たされるものである。祭典によって神人は和合の極度に達し、歓喜悦楽に酔うのである。
天国の祭典は神に報恩謝徳の道を尽くし、またその団体の円満を祈り、天人各自の歓喜悦楽に酔うためにする。したがって現界の祭典のごとく四角張らず、小笠原流式もなく、円滑に自由自在に愛善より来る想念のままに情動するから、何ともいえない完全な祭典が行われる。
しかし現界のごとく天津祝詞や神言を奏上して神慮を慰め、天人各自の心を喜ばせて一切の罪汚れを払しょくする神業である。天国においても憂いや悲しみや驚きに遭遇することは絶無ではないので、天人は日を定めて荘厳な祭典式を行い、福利を得ようと祈るのである。
朝は日の天国の愛善に相応し、夕べは月の霊国の真信に相応する。ゆえに天国の祭典は午前中に行われ、午後に至って、霊国から出張した宣伝使が説教を始めるのが例となっている。
直会の宴も無事に終了し午後の情態になったとき、霊国の宣伝使が嚠喨たる音楽に送られて、二人の侍者を伴い神の家に進んできた。霊国の宣伝使が珍彦の案内で演壇上に就くと、諸天人は半月形に席を取り、その教示を嬉しそうに聴聞している。
治国別と竜公はまだ天国の言葉を解することができないので、特別席に黙然として耳を傾け、宣伝使の抑揚や身振りから何事を語りたるかをおぼろげに窺い知るのみであった。一時ばかり経ったと思うころ、宣伝使は説教の終結を告げ、各天人は拍手讃嘆しながら各自の住所に帰って行った。
珍彦は霊国宣伝使一行を自宅に招いた。治国別と竜公も共に珍彦館に帰りゆく。珍彦と珍姫夫婦は珍しい果物を並べ葡萄酒をついで宣伝使一行を歓待した。治国別と竜公は宣伝使の光明に眼がくらみ、あわてて被面布をかぶった。
そして宣伝使の顔をよく見れば、野中の森で別れた五三公であった。治国別は霊国宣伝使が五三公の顔であることに驚いて逡巡していたが、竜公は構わず、五三公にそっくりだと治国別に話しかけ、霊国宣伝使に五三公として話しかけた。
宣伝使は言霊別命と名乗り、月の大神の命で地上に降って五三公の精霊を充たし、神国成就のために活動しているのだと明かした。そして地上天国を建設するために化相して活動しているため、地上では徒弟の五三公として接するようにと願い出た。
治国別は驚いていたが、言霊別命は竜公と親しく語りだし、ぱっと上衣を脱いだ。たちまち現界の五三公と風体まで変わらないようになり、言葉もなれなれしくなってきた。そして治国別と竜公に天国の案内しようと申し出た。
治国別一行は、珍彦と珍姫に厚く礼を述べ、五三公の案内で宣伝歌を歌いながら南方指して進んで行った。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2023-05-01 18:33:56 文字数:4443 OBC :rm4719
愛善世界社版:262頁 八幡書店版:第8輯 570頁 修補版: 校定版:275頁 普及版:129頁 初版: ページ備考:
派生[?]この文献を底本として書かれたと思われる文献です。[×閉じる]:出口王仁三郎全集 > 第二巻 宗教・教育編 > 第四篇 神霊世界 > 第十六章 化相神
001 天国人(てんごくじん)の祭典(さいてん)を行(おこな)ふのは、002天国(てんごく)団体(だんたい)の重要(ぢうえう)なる務(つと)めの一(ひとつ)となつてゐる。003天国(てんごく)の天人(てんにん)は愛(あい)の善(ぜん)に居(を)るが故(ゆゑ)に、004大神(おほかみ)を愛(あい)し且(かつ)同僚(どうれう)を愛(あい)し、005天地(てんち)惟神(かむながら)の法則(はふそく)に従(したが)つて宇宙(うちう)の創造主(さうざうぬし)たる神(かみ)を厳粛(げんしゆく)に斎(まつ)り、006種々(しゆじゆ)の珍(めづ)らしき供物(くもつ)を献(けん)じ、007而(しか)して後(のち)神(かみ)の愛(あい)に浴(よく)するを以(もつ)て唯一(ゆゐいつ)の歓喜(くわんき)となし、008唯一(ゆゐいつ)の神業(しんげふ)としてゐるのである。009而(しか)して天国人(てんごくじん)は決(けつ)してエンゼルになつたり、010或(あるひ)は宣伝使(せんでんし)にはならないのである。011エンゼルや宣伝使(せんでんし)になる天人(てんにん)は、012すべて霊国(れいごく)天人(てんにん)の任務(にんむ)である。013何(なん)とならば霊国(れいごく)は信(しん)の真(しん)に充(み)ちたる者(もの)多(おほ)く、014天国(てんごく)は愛(あい)の善(ぜん)にみちたる者(もの)多(おほ)き国土(こくど)なるが故(ゆゑ)である。015祭典(さいてん)がすむと、016霊国(れいごく)よりエンゼル又(また)は宣伝使(せんでんし)出張(しゆつちやう)し来(きた)つて愛善(あいぜん)を説(と)き、017信真(しんしん)を諭(さと)し、018円満(ゑんまん)なる天人(てんにん)の智慧(ちゑ)と証覚(しようかく)をして益々(ますます)円満(ゑんまん)ならしめむと務(つと)めるのである。019又(また)天人(てんにん)は其(その)説教(せつけう)を聞(き)いて自分(じぶん)の人格(じんかく)を円満(ゑんまん)ならしめ、020処世(しよせい)上(じやう)の福利(ふくり)を計(はか)らむとするものである。021そして天国(てんごく)の団体(だんたい)は大(だい)なるものに至(いた)つては十万(じふまん)も集(あつ)まつて居(を)り、022少(すくな)いのは五六十(ごろくじふ)人(にん)の団体(だんたい)もある。023之(これ)は愛(あい)と信(しん)より来(きた)る想念(さうねん)の情動(じやうどう)如何(いかん)に依(よ)つて相似(さうじ)相応(さうおう)の理(り)により団体(だんたい)を形成(けいせい)するからである。
024 治国別(はるくにわけ)、025竜公(たつこう)は珍彦(うづひこ)に伴(ともな)はれ、026神(かみ)の家(いへ)と称(しよう)する、027天人(てんにん)が祭典(さいてん)を行(おこな)ひ霊国(れいごく)宣伝使(せんでんし)が説教(せつけう)を行(おこな)ふ木造(きづくり)の殿堂(でんだう)に導(みちび)かれた。028いつまでも木(き)の香(か)新(あたら)しく薫(かを)り、029幾年(いくねん)経(へ)ても新築(しんちく)した時(とき)の想念(さうねん)に依(よ)つて建(た)てられてあるから、030決(けつ)して腐朽(ふきう)したり或(あるひ)は古(ふる)くなつたりするものではない。
031 珍彦(うづひこ)夫婦(ふうふ)は光沢(くわうたく)にみちた赤(あか)の装束(しやうぞく)をつけ、032神(かみ)の家(いへ)に悠々(いういう)と進(すす)み入(い)つた。033団体(だんたい)の天人(てんにん)は赤子(あかご)に至(いた)る迄(まで)此処(ここ)に集(あつ)まり、034祭典(さいてん)に与(あづか)らむと、035えも言(い)はれぬ歓喜(くわんき)に充(み)ちた面貌(めんばう)を表(あら)はして控(ひか)へてゐる。036この天人(てんにん)も智慧(ちゑ)証覚(しようかく)の如何(いかん)に仍(よ)りて、037幾分(いくぶん)か差等(さとう)はあれども、038大抵(たいてい)は相似(さうじ)の面貌(めんばう)をしてゐる。039現界(げんかい)の形式(けいしき)的(てき)祭典(さいてん)に比(くら)ぶれば、040実(じつ)に荘厳(さうごん)と云(い)はうか、041優美(いうび)と言(い)はうか、042華麗(くわれい)と言(い)はうか、043譬方(たとへかた)のない情態(じやうたい)である。044此(この)団体中(だんたいちう)にて、045最(もつと)も証覚(しようかく)の秀(すぐ)れたる者(もの)が、046祓戸(はらひど)や神饌係(しんせんがかり)や祭典(さいてん)に関(くわん)するいろいろの役目(やくめ)をつとめ、047珍彦(うづひこ)は団体長(だんたいちやう)として斎主(さいしゆ)の役(やく)に当(あた)ることとなつた。048凡(すべ)て天国(てんごく)は清潔(せいけつ)主義(しゆぎ)、049統一(とういつ)主義(しゆぎ)、050進取(しんしゆ)主義(しゆぎ)、051楽観(らくくわん)主義(しゆぎ)であるから、052何(なん)とも云(い)へぬ良(よ)い気分(きぶん)に充(み)たされるものである。053此(この)祭典(さいてん)に依(よ)つて、054神人(しんじん)は和合(わがふ)の極度(きよくど)に達(たつ)し、055歓喜(くわんき)悦楽(えつらく)に酔(よ)ふのである。056而(しか)して天国(てんごく)の祭典(さいてん)は神(かみ)に報恩(はうおん)謝徳(しやとく)の道(みち)を尽(つく)すは言(い)ふも更(さら)なれど、057又(また)一方(いつぱう)には其(その)団体(だんたい)の円満(ゑんまん)を祈(いの)り、058天人(てんにん)各自(かくじ)の歓喜(くわんき)を味(あぢ)はひ、059悦楽(えつらく)に酔(よ)ふ為(ため)である。060故(ゆゑ)に現界(げんかい)の祭典(さいてん)の如(ごと)く四角張(しかくば)らず、061小笠原流(をがさはらりう)式(しき)もなく、062実(じつ)に円滑(ゑんくわつ)に自由(じいう)自在(じざい)に、063愛善(あいぜん)より来(きた)る想念(さうねん)の儘(まま)に情動(じやうだう)するのであるから、064何(なん)とも云(い)へぬ完全(くわんぜん)な祭典(さいてん)が行(おこな)はれる。065法(はふ)なくして法(はふ)あり、066式(しき)なくして式(しき)あり、067到底(たうてい)現界(げんかい)にて夢想(むさう)だもなし能(あた)はざる光景(くわうけい)である。068而(しか)して祝詞(のりと)はやはり現界(げんかい)の如(ごと)く天津(あまつ)祝詞(のりと)や神言(かみごと)を奏上(そうじやう)して、069神慮(しんりよ)を慰(なぐさ)め、070且(かつ)天人(てんにん)各自(かくじ)の心(こころ)を喜(よろこ)ばせ、071一切(いつさい)の罪(つみ)汚(けが)れ過失(あやまち)を払拭(ふつしき)する神業(かむわざ)である。072天国(てんごく)に於(おい)ても時(とき)に或(あるひ)は少々(せうせう)の憂(うれ)ひにみたされ、073悲(かなし)みや驚(おどろ)きに遭遇(さうぐう)することは絶無(ぜつむ)とは言(い)へない、074故(ゆゑ)に天人(てんにん)は日(ひ)を定(さだ)めて、075荘厳(さうごん)なる祭典式(さいてんしき)を行(おこな)ひ、076其(その)生涯(しやうがい)に対(たい)して福利(ふくり)を得(え)むことを祈(いの)るのである。
077 祭典(さいてん)の式(しき)も漸(やうや)く済(す)み、078八尋殿(やひろどの)に於(おい)て直会(なほらひ)の宴(えん)が開(ひら)かれた。079大抵(たいてい)此(この)祭典(さいてん)は午前中(ごぜんちう)に行(おこな)はるるものである。080併(しか)し天国(てんごく)に於(おい)ては時間(じかん)空間(くうかん)など云(い)ふものはなく、081従(したが)つて午前(ごぜん)午後(ごご)昼夜(ちうや)などの区別(くべつ)はない。082併(しか)しながら情動(じやうだう)の変異(へんい)に依(よ)つて、083朝(あさ)たり夕(ゆふ)べたるの感覚(かんかく)が起(おこ)るものである。084而(しか)して朝(あさ)は太陽(たいやう)の愛(あい)に相応(さうおう)し、085天国(てんごく)の愛善(あいぜん)に和合(わがふ)するものである。086又(また)夕(ゆふ)べは信真(しんしん)に相応(さうおう)し、087月(つき)に相応(さうおう)するものである。088故(ゆゑ)に天国人(てんごくじん)の祭典(さいてん)は午前中(ごぜんちう)に行(おこな)はれ、089霊国(れいごく)即(すなは)ち月(つき)の国(くに)から出張(しゆつちやう)し来(きた)る宣伝使(せんでんし)は午後(ごご)に至(いた)つて説教(せつけう)を初(はじ)むるのが例(れい)となつてゐる。090現代(げんだい)に於(お)ける各宗教(かくしうけう)の儀式(ぎしき)も祭事(さいじ)に関(くわん)することは凡(すべ)て午前(ごぜん)に行(おこな)ひ、091説教(せつけう)などは午後(ごご)に行(おこな)はるるのは、092知(し)らず知(し)らずに天国(てんごく)の情態(じやうたい)が地上(ちじやう)に映(うつ)つてゐるのである。
093 各天人(かくてんにん)は思(おも)ひ思(おも)ひの歌(うた)を歌(うた)ひ、094舞(まひ)を舞(ま)ひ、095音楽(おんがく)を奏(そう)し、096祭典後(さいてんご)一切(いつさい)を忘(わす)れて面白(おもしろ)可笑(をか)しく茶番(ちやばん)狂言(きやうげん)なども交(まじ)へて、097時(とき)の移(うつ)るのも知(し)らず、098遊(あそ)び狂(くる)ふのである。
099 天人(てんにん)の歌(うた)や演舞(えんぶ)の状況(じやうきやう)は茲(ここ)には省略(しやうりやく)して、100後日(ごじつ)又(また)時(とき)を得(え)て述(の)ぶることとする。101さて直会(なほらひ)の宴(えん)も無事(ぶじ)終了(しうれう)し、102各天人(かくてんにん)の情動(じやうだう)は初(はじ)めて午後(ごご)に相応(さうおう)する感覚(かんかく)になつた時(とき)、103霊国(れいごく)の宣伝使(せんでんし)が何処(どこ)ともなく嚠喨(りうりやう)たる音楽(おんがく)に送(おく)られて、104四辺(あたり)を輝(かがや)かしながら、105二人(ふたり)の侍者(じしや)と共(とも)に神(かみ)の家(いへ)に向(むか)つて進(すす)んで来(き)た。106諸天人(しよてんにん)は此(この)宣伝使(せんでんし)を『ウオーウオー』と、107愛(あい)の声(こゑ)を注(そそ)ぎながら迎(むか)へ入(い)れる。108宣伝使(せんでんし)は莞爾(くわんじ)としてさも嬉(うれ)しげに、109諸天人(しよてんにん)に目礼(もくれい)を施(ほどこ)し、110団体長(だんたいちやう)なる珍彦(うづひこ)の案内(あんない)に連(つ)れて、111半円形(はんゑんけい)に組立(くみた)てられた演壇(えんだん)上(じやう)に悠々(いういう)と座(ざ)を占(し)めた。112而(しか)して其(その)左右(さいう)には証覚(しようかく)の光明(くわうみやう)稍(やや)劣(をと)つた者(もの)が控(ひか)へてゐる。113これは宣伝使(せんでんし)の侍者(じしや)である。114諸天人(しよてんにん)は半月形(はんげつけい)に演壇(えんだん)の前(まへ)に席(せき)を取(と)り、115宣伝使(せんでんし)の視線(しせん)を外(はづ)さない様(やう)にして、116其(その)教示(けうじ)を嬉(うれ)し気(げ)に聴聞(ちやうもん)してゐる。117宣伝使(せんでんし)の天国(てんごく)に於(お)ける説教(せつけう)は大神(おほかみ)の御(ご)神格(しんかく)を徹底(てつてい)的(てき)に理解(りかい)すべく、118且(かつ)愛善(あいぜん)と信真(しんしん)の何(なん)たるかを、119極(きは)めて微細(びさい)に説(と)きさとし、120天人(てんにん)が処世(しよせい)上(じやう)の利便(りべん)を計(はか)らしむるべく努(つと)むるより外(ほか)にはないのである。
121 治国別(はるくにわけ)、122竜公(たつこう)は天国(てんごく)の言葉(ことば)を解(かい)し得(え)ず、123特別(とくべつ)の席(せき)に黙然(もくねん)として耳(みみ)を傾(かたむ)け、124其(その)教示(けうじ)を一言(ひとこと)なりとも会得(ゑとく)せむと努(つと)めてゐる。125されど此(これ)等(ら)の両人(りやうにん)は未(いま)だ第二(だいに)天国(てんごく)の天人(てんにん)の言葉(ことば)さへ聞分(ききわ)くる丈(だけ)の智慧(ちゑ)証覚(しようかく)も備(そな)はつてゐないのだから、126此(これ)等(ら)の天人(てんにん)を説(と)き諭(さと)す幽遠(いうゑん)美妙(びめう)なる説教(せつけう)などは到底(たうてい)聴取(ききと)れる筈(はず)はない。127従(したが)つて感得(かんとく)することは出来(でき)ない。128デクの棒然(ぼうぜん)として、129其(その)美妙(びめう)なる声調(せいてう)や言語(げんご)の抑揚(よくやう)頓挫(とんざ)曲折(きよくせつ)などの巧妙(かうめう)ぶりや、130顔面(がんめん)筋肉(きんにく)の動(うご)き振(ぶ)り、131形容(けいよう)身振(みぶり)などを考(かんが)へて、132略(ほぼ)其(その)何事(なにごと)を語(かた)り居(を)るかを、133おぼろげに窺知(きち)し得(う)るのみであつた。134殆(ほとん)ど一時(ひととき)ばかり経(た)つたと思(おも)ふ時(とき)、135宣伝使(せんでんし)は説教(せつけう)の終結(しうけつ)を告(つ)げた。136各天人(かくてんにん)は頻(しき)りに拍手(はくしゆ)し、137讃嘆(さんたん)しながら、138ウオーウオーと叫(さけ)びつつ神(かみ)の家(いへ)を立(た)つて各自(かくじ)の住所(ぢゆうしよ)に帰(かへ)り行(ゆ)く。139珍彦(うづひこ)夫婦(ふうふ)は宣伝使(せんでんし)の先頭(せんとう)に立(た)ち、140己(おの)が館(やかた)を指(さ)して迎(むか)へ帰(かへ)る。141治国別(はるくにわけ)、142竜公(たつこう)も後(あと)に従(したが)ひ、143珍彦(うづひこ)の館(やかた)に入(い)る。
144 宣伝使(せんでんし)は奥(おく)の間(ま)に進(すす)み、145冠(かむり)を取(と)り、146法服(はふふく)を着替(きか)へ、147くつろいで主客(しゆきやく)対坐(たいざ)し、148茲(ここ)に少時(しばらく)雑談(ざつだん)に耽(ふけ)るのが例(れい)となつてゐる、149珍彦(うづひこ)夫婦(ふうふ)は珍(めづ)らしき果物(くだもの)を並(なら)べ、150葡萄酒(ぶだうしゆ)を注(つ)いで宣伝使(せんでんし)に勧(すす)めた。151宣伝使(せんでんし)は栄(さか)えにみちた面貌(めんばう)を珍彦(うづひこ)に向(む)けながら、152一口(ひとくち)グツと呑(の)み珍彦(うづひこ)にさした。153珍彦(うづひこ)は恭敬(きようけい)礼拝(れいはい)しつつ押戴(おしいただ)いてグツと呑(の)み、154其(その)残(のこ)りを珍姫(うづひめ)にさした。155珍姫(うづひめ)も同(おな)じく押(おし)いただいて之(これ)を呑(の)み終(をは)り、156宣伝使(せんでんし)に返(かへ)し、157宣伝使(せんでんし)は二人(ふたり)の侍者(じしや)に盃(さかづき)を与(あた)へ、158手(て)づから葡萄酒(ぶだうしゆ)をつぐ。159二人(ふたり)の侍者(じしや)は何事(なにごと)か解(かい)し難(がた)き歌(うた)を歌(うた)ひ出(だ)した。160治国別(はるくにわけ)、161竜公(たつこう)は宣伝使(せんでんし)の面貌(めんばう)の高尚(かうしやう)優美(いうび)にして光明(くわうみやう)に充(み)てるに眼(まなこ)くらみ、162容易(ようい)に面(おもて)を向(む)くることが出来(でき)なかつた。163之(これ)は智慧(ちゑ)と証覚(しようかく)の度(ど)に非常(ひじやう)の相違(さうゐ)があるが故(ゆゑ)である。164あわてて被面布(ひめんぷ)を取出(とりだ)し、165治国別(はるくにわけ)、166竜公(たつこう)は之(これ)をかぶつた。167そして宣伝使(せんでんし)の顔(かほ)をよくよくみれば、168豈計(あにはか)らむや野中(のなか)の森(もり)で別(わか)れた治国別(はるくにわけ)の徒弟(とてい)五三公(いそこう)であつた。169宣伝使(せんでんし)の五三公(いそこう)は、170治国別(はるくにわけ)、171竜公(たつこう)のここに来(きた)り居(を)ることを一目(ひとめ)見(み)て看破(かんぱ)してゐたけれど、172二人(ふたり)が自然(しぜん)に吾(われ)を認(みと)めるまでワザと名乗(なの)らなかつたのである。173治国別(はるくにわけ)は心(こころ)の中(うち)に、
174治国別『あゝ似(に)たりや似(に)たり、175よく似(に)たり、176吾(わが)徒弟(とてい)の五三公(いそこう)にソツクリだ。177只(ただ)どこともなく、178肌(はだ)の色合(いろあひ)が透(す)き通(とほ)つてみえるばかりで、179どこに一所(ひととこ)違(ちが)つた所(ところ)がない。180名乗(なの)つて見(み)ようか、181イヤイヤ五三公(いそこう)如(ごと)き者(もの)が何(ど)うして霊国(れいごく)の宣伝使(せんでんし)になり得(う)るものか、182なまじひに質問(しつもん)をして無礼(ぶれい)になつてはすまない』
183と心(こころ)にとつおいつ、184煩悶(はんもん)をつづけて居(ゐ)る。185竜公(たつこう)も亦(また)被面布(ひめんぷ)の中(なか)から宣伝使(せんでんし)の姿(すがた)をためつすかしつ、186首(くび)を切(しき)りにかたげ、187或(あるひ)は右(みぎ)に左(ひだり)にふりながら、
188竜公『ハテナ、189よく似(に)てゐる、190妙(めう)だなア、191ヤツパリ違(ちが)ふかなア、192イヤイヤ違(ちが)ひはしようまい。193何(なに)は兎(と)もあれ不思議(ふしぎ)千万(せんばん)なことだ。194何(ど)うしても合点(がてん)の虫(むし)が承知(しようち)せぬ。195何程(なにほど)天国(てんごく)には相似(さうじ)の面貌(めんばう)があると云(い)つても、196これ丈(だけ)似(に)た顔(かほ)は二度(にど)とあるまい』
197などと四辺(あたり)かまはず、198無垢(むく)の心(こころ)より、199遠慮(ゑんりよ)会釈(ゑしやく)もなく喋(しやべ)つてゐる。200宣伝使(せんでんし)は輝(かがや)きの面貌(めんばう)を両人(りやうにん)に向(む)け、201ニコニコと笑(わら)つてゐる。202竜公(たつこう)は構(かま)はず、
203竜公『モシ先生(せんせい)、204あの宣伝使(せんでんし)の顔(かほ)を御覧(ごらん)なさい。205三日月(みかづき)眉毛(まゆげ)に頬(ほほ)のゑくぼ、206目(め)のつき方(かた)から、207鼻(はな)の格好(かくかう)、208口(くち)のチヨンモリした所(ところ)、209五三公(いそこう)にそつくりぢやありませぬか』
210 治国別(はるくにわけ)は始(はじ)めて口(くち)を開(ひら)き、
211治国別『よく似(に)てゐられるなア』
212竜公『先生(せんせい)、213似(に)るも似(に)ぬもありますか。214本真者(ほんまもの)の五三公(いそこう)ですよ。215オイ五三公(いそこう)、216何(なん)だ偉相(えらさう)に、217俺(おれ)だ俺(おれ)だ、218俺(おれ)は被面布(ひめんぷ)を被(かぶ)つてるから分(わか)らぬだらうが、219竜公(たつこう)さまだ。220そして一人(ひとり)はお前(まへ)の大切(たいせつ)な先生(せんせい)治国別(はるくにわけ)さまだ。221座(ざ)を下(さが)つて挨拶(あいさつ)をせないか、222エヽーン、223いつの間(ま)に夫(そ)れ程(ほど)出世(しゆつせ)したのだ』
224 宣伝使(せんでんし)はますますニコニコと笑(わら)つてゐる。
225治国別『これはこれは木花姫(このはなひめの)命(みこと)様(さま)、226よくもマア私(わたくし)如(ごと)き者(もの)の徒弟(とてい)となり、227化相(けさう)の術(じゆつ)を以(もつ)て今迄(いままで)此(この)愚鈍(ぐどん)な治国別(はるくにわけ)をよくもお導(みちび)き下(くだ)さいました。228有難(ありがた)く感謝(かんしや)致(いた)します』
229 宣伝使(せんでんし)は始(はじ)めて口(くち)を開(ひら)き、
230宣伝使(言霊別)『治国別(はるくにわけ)様(さま)、231竜公(たつこう)様(さま)、232失礼(しつれい)を致(いた)しました。233併(しか)し私(わたくし)は月(つき)の大神(おほかみ)の御側(みそば)に仕(つか)へまつる言霊別(ことたまわけの)命(みこと)で厶(ござ)います。234此(この)度(たび)大神(おほかみ)の命(めい)に依(よ)り、235地上(ちじやう)に降(くだ)り、236五三公(いそこう)の精霊(せいれい)を充(み)たし神国(しんこく)成就(じやうじゆ)の為(ため)に、237貴方(あなた)と共(とも)に活動(くわつどう)をしてゐた者(もの)で厶(ござ)います。238夫(そ)れ故(ゆゑ)私(わたくし)と五三公(いそこう)とは全(まつた)く別個(べつこ)の人間(にんげん)です。239併(しか)しながら私(わたくし)の神格(しんかく)の全部(ぜんぶ)が、240五三公(いそこう)の精霊(せいれい)をみたしたる為(ため)、241面貌(めんばう)までが能(よ)く似(に)てゐるのでせう。242今後(こんご)に於(おい)ても時々(ときどき)五三公(いそこう)の精霊(せいれい)に下(くだ)り、243地上(ちじやう)に天国(てんごく)を建設(けんせつ)する為(ため)、244化相(けさう)を以(もつ)て活動(くわつどう)を致(いた)しますれば、245五三公(いそこう)はヤハリ貴方(あなた)の徒弟(とてい)としてお使(つか)ひを願(ねが)ひます』
246 治国別(はるくにわけ)は此(この)物語(ものがたり)に打驚(うちおどろ)き、
247治国別『ハイ』
248と言(い)つたきり、249神(かみ)の恵(めぐみ)の広大(くわうだい)無辺(むへん)なるに感謝(かんしや)の涙(なみだ)をこぼしてゐる。
250竜公(たつこう)『モシ宣伝使(せんでんし)様(さま)……否(いな)言霊別(ことたまわけの)命(みこと)様(さま)、251私(わたくし)が現界(げんかい)へ帰(かへ)りました時(とき)は、252五三公(いそこう)さまに対(たい)し、253今迄(いままで)の通(とほ)りの交際振(かうさいぶり)をやつて居(を)ればいいのですか、254之(これ)を伺(うかが)つておかねば、255今後(こんご)の都合(つがふ)が厶(ござ)いますからなア』
256言霊別『化相(けさう)を以(もつ)て現(あら)はるれば、257ヤハリ五三公(いそこう)です。258従前(じゆうぜん)の通(とほ)り交際(かうさい)を願(ねが)ひます』
259竜公『ヤ、260五三公(いそこう)、261承知(しようち)した。262お前(まへ)がこんな偉(えら)い者(もの)になることを思(おも)へば、263俺(おれ)だつてヤツパリ友達(ともだち)だ。264何程(なにほど)智慧(ちゑ)証覚(しようかく)があるといつても、265現界(げんかい)へ出(で)れば、266俺(おれ)とチーと偉(えら)いか、267少(すこ)し劣(をと)つた位(くらゐ)なものだ。268俺(おれ)が一升(いつしよう)でお前(まへ)が九合(くがふ)か、269お前(まへ)が一升(いつしよう)で俺(おれ)が九合(くがふ)か位(くらゐ)なものだ。270なア五三公(いそこう)、271さうだらう』
272 言霊別(ことたまわけ)はパツと上衣(うはぎ)を脱(ぬ)いだ。273忽(たちま)ち現界(げんかい)で見(み)た五三公(いそこう)と、274風体(ふうてい)まで変(かは)らないやうになり、275言葉(ことば)もなれなれしくなつて来(き)た。
276五三公『天国(てんごく)の法衣(ほふい)をぬいで、277暫(しばら)く気楽(きらく)に又(また)お前(まへ)と天国(てんごく)の旅行(りよかう)をしようぢやないか。278治国別(はるくにわけ)の先生(せんせい)、279これから五三公(いそこう)が第二(だいに)天国(てんごく)は云(い)ふも更(さら)也(なり)、280第一(だいいち)天国(てんごく)まで御(ご)案内(あんない)を致(いた)しませう』
281治国別『何卒(なにとぞ)宜(よろ)しく御(お)願(ねがひ)致(いた)します』
282竜公『コレ先生(せんせい)、283融通(ゆうづう)の利(き)かぬ人(ひと)だな。284ヨシ五三公(いそこう)、285お供(とも)を許(ゆる)すと何故(なぜ)仰有(おつしや)らぬのだ。286なア五三公(いそこう)、287さうぢやないか』
288五三公『ウン、289化(ばけ)の皮(かは)をぬいだら、290ヤツパリ元(もと)の五三公(いそこう)だ。291ヤア珍彦(うづひこ)様(さま)、292珍姫(うづひめ)様(さま)、293有難(ありがた)う厶(ござ)いました。294之(これ)から天国(てんごく)の巡覧(じゆんらん)を致(いた)しますから、295之(これ)でお別(わか)れ致(いた)しませう』
296 珍彦(うづひこ)夫婦(ふうふ)は意外(いぐわい)の此(この)問答(もんだふ)に呆(あき)れ果(は)て、297黙然(もくねん)として三(さん)人(にん)の顔(かほ)を見(み)つめてゐる。298二人(ふたり)の宣伝使(せんでんし)の侍者(じしや)はどこへ行(い)つたか、299影(かげ)も形(かたち)も見(み)えなくなつて居(ゐ)た。
300 茲(ここ)に治国別(はるくにわけ)は五三公(いそこう)、301竜公(たつこう)を伴(ともな)ひ珍彦(うづひこ)、302珍姫(うづひめ)に厚(あつ)く礼(れい)を述(の)べ、303宣伝歌(せんでんか)を歌(うた)ひながら、304五三公(いそこう)の案内(あんない)につれて、305南方(なんぱう)さして進(すす)み行(ゆ)く。
306(大正一二・一・一〇 旧一一・一一・二四 松村真澄録)
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