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霊界物語
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
第63巻(寅の巻)
序歌
総説
第1篇 妙法山月
第1章 玉の露
第2章 妙法山
第3章 伊猛彦
第4章 山上訓
第5章 宿縁
第6章 テルの里
第2篇 日天子山
第7章 湖上の影
第8章 怪物
第9章 超死線
第3篇 幽迷怪道
第10章 鷺と鴉
第11章 怪道
第12章 五託宣
第13章 蚊燻
第14章 嬉し涙
第4篇 四鳥の別
第15章 波の上
第16章 諒解
第17章 峠の涙
第18章 夜の旅
第5篇 神検霊査
第19章 仕込杖
第20章 道の苦
第21章 神判
第22章 蚯蚓の声
余白歌
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霊界物語
>
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
>
第63巻(寅の巻)
> 第2篇 日天子山 > 第8章 怪物
<<< 湖上の影
(B)
(N)
超死線 >>>
第八章
怪物
(
くわいぶつ
)
〔一六一五〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第63巻 山河草木 寅の巻
篇:
第2篇 日天子山
よみ(新仮名遣い):
すーらやさん
章:
第8章 怪物
よみ(新仮名遣い):
かいぶつ
通し章番号:
1615
口述日:
1923(大正12)年05月24日(旧04月9日)
口述場所:
教主殿
筆録者:
加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1926(大正15)年2月3日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
翌日、伊太彦一行はアスマガルダの船に乗ってスーラヤ山指して進んでいく。アスマガルダは舟歌を歌い、伊太彦とブラヷーダは竜王を言向け和すという神業への決意の歌を歌った。
一行は島に上陸し、しばらく登ったところの大岩石の陰に身を潜めて湖上の旅の疲れをいやした。そして明朝登山することと決めた。
深夜になると、あたりの密林の枝をガサガサとゆすり、青い舌を垂らし錫杖をついた怪物が一行の寝所に近づいてきた。怪物は雷のような声を張り上げて、伊太彦を怒鳴りつけた。
伊太彦は目を覚まし、怪物を認めるととどろく胸をぐっと抑え、「惟神霊幸倍坐世」を高唱すると、怪物に向かって言霊で応酬した。
伊太彦は怪物に言い負けると敗北すると聞いていたので、空元気を出してこちらから言霊の問答を仕掛けた。
怪物は伊太彦の粗を並べ立てて責めたてた。またスーラヤ山の中腹に死線という毒が充満する恐ろしい場所があることを明かして登山の意気をくじこうとした。
しかし伊太彦も屁理屈で応戦して一歩もひかなかった。ついに怪物は捨て台詞を吐いて、いずこへともなく消えてしまった。
アスマガルダ兄妹とカークス、ベースは恐ろしさにふるえながら問答を聞いていたが、怪物が伊太彦を言い負かせず消えたので、やっと胸をなでおろした。
その後は何事もなく夜が明け、五人はウバナンダ竜王が潜む岩窟を目指して進んでいくことになった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2017-06-05 20:33:20
OBC :
rm6308
愛善世界社版:
103頁
八幡書店版:
第11輯 298頁
修補版:
校定版:
105頁
普及版:
64頁
初版:
ページ備考:
001
紺青
(
こんじやう
)
の
浪
(
なみ
)
を
湛
(
たた
)
へたスーラヤの
湖面
(
こめん
)
を
002
稍
(
やや
)
新
(
あたら
)
しき
船
(
ふね
)
に
真帆
(
まほ
)
を
孕
(
はら
)
ませ、
0021
晩夏
(
ばんか
)
の
風
(
かぜ
)
を
受
(
う
)
けて、
003
彼方
(
あなた
)
に
霞
(
かす
)
むスーラヤ
山
(
さん
)
を
目蒐
(
めが
)
けて
徐々
(
しづしづ
)
と
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
004
アスマガルダは
艪
(
ろ
)
を
操
(
あやつ
)
りながら
欵乃
(
ふなうた
)
を
謡
(
うた
)
ふ。
005
『テルはよい
所
(
とこ
)
南
(
みなみ
)
をうけて
006
スーラヤ
颪
(
おろし
)
がそよそよと。
007
沖
(
おき
)
に
浮
(
うか
)
べるスーラヤ
嶋
(
じま
)
は
008
夜
(
よる
)
は
千
(
せん
)
里
(
り
)
の
浪
(
なみ
)
てらす。
009
昼
(
ひる
)
は
日輪
(
にちりん
)
夜
(
よ
)
は
竜王
(
りうわう
)
の
010
玉
(
たま
)
の
光
(
ひかり
)
で
澄
(
す
)
み
渡
(
わた
)
る。
011
此
(
この
)
海
(
うみ
)
は
月
(
つき
)
の
国
(
くに
)
でも
名高
(
なだか
)
い
湖
(
うみ
)
よ
012
浪
(
なみ
)
のまにまに
月
(
つき
)
が
浮
(
う
)
く。
013
三五
(
あななひ
)
の
神
(
かみ
)
の
司
(
つかさ
)
の
伊太彦
(
いたひこ
)
さまが
014
今日
(
けふ
)
の
門出
(
かどで
)
のお
目出度
(
めでた
)
さ。
015
空
(
そら
)
高
(
たか
)
く
風
(
かぜ
)
澄
(
す
)
み
渡
(
わた
)
る
此
(
この
)
湖面
(
うなばら
)
は
016
底
(
そこ
)
ひ
分
(
わか
)
らぬテルの
湖
(
うみ
)
』
017
伊太彦
(
いたひこ
)
は
謡
(
うた
)
ひ
出
(
だ
)
した。
018
一同
(
いちどう
)
は
船端
(
ふなばた
)
を
叩
(
たた
)
いて
拍子
(
ひやうし
)
をとる。
019
伊太
(
いた
)
『
三五教
(
あななひけう
)
の
神柱
(
かむばしら
)
020
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのを
)
の
大神
(
おほかみ
)
の
021
瑞
(
みづ
)
の
御言
(
みこと
)
を
畏
(
かしこ
)
みて
022
玉国別
(
たまくにわけ
)
の
師
(
し
)
の
君
(
きみ
)
と
023
山野
(
やまの
)
を
乗
(
の
)
り
越
(
こ
)
え
海
(
うみ
)
渡
(
わた
)
り
024
千々
(
ちぢ
)
に
心
(
こころ
)
を
砕
(
くだ
)
きつつ
025
神
(
かみ
)
の
依
(
よ
)
さしのメッセージ
026
尽
(
つく
)
さむ
為
(
ため
)
に
遙々
(
はるばる
)
と
027
テルの
里
(
さと
)
まで
来
(
き
)
て
見
(
み
)
れば
028
思
(
おも
)
ひがけなきブラヷーダ
029
姫
(
ひめ
)
の
命
(
みこと
)
の
現
(
あ
)
れまして
030
神
(
かみ
)
の
結
(
むす
)
びし
赤縄
(
えにし
)
をば
031
茲
(
ここ
)
に
悟
(
さと
)
らせたまひけり
032
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
は
神
(
かみ
)
の
御言
(
みこと
)
もて
033
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
蟠
(
わだか
)
まる
034
ハルナの
都
(
みやこ
)
へ
言霊
(
ことたま
)
の
035
軍
(
いくさ
)
に
進
(
すす
)
む
身
(
み
)
にしあれば
036
途中
(
とちう
)
に
於
(
おい
)
て
妻
(
つま
)
を
持
(
も
)
ち
037
夫婦
(
ふうふ
)
気取
(
きどり
)
で
征討
(
せいたう
)
に
038
上
(
のぼ
)
るも
如何
(
いかが
)
と
思
(
おも
)
へども
039
三千彦
(
みちひこ
)
司
(
つかさ
)
もデビス
姫
(
ひめ
)
040
妻
(
つま
)
に
持
(
も
)
たせる
例
(
ためし
)
あり
041
吾
(
わが
)
師
(
し
)
の
君
(
きみ
)
も
此
(
この
)
度
(
たび
)
の
042
赤縄
(
えにし
)
をいなませ
給
(
たま
)
ふまじ
043
只
(
ただ
)
何事
(
なにごと
)
も
人
(
ひと
)
の
身
(
み
)
は
044
神
(
かみ
)
のまにまに
進
(
すす
)
むより
045
外
(
ほか
)
に
道
(
みち
)
なし
伊太彦
(
いたひこ
)
は
046
茲
(
ここ
)
に
夫婦
(
ふうふ
)
の
息
(
いき
)
合
(
あは
)
せ
047
スーラヤ
山
(
さん
)
に
駆
(
か
)
け
登
(
のぼ
)
り
048
竜
(
たつ
)
の
腮
(
あぎと
)
の
宝玉
(
はうぎよく
)
を
049
神
(
かみ
)
の
助
(
たす
)
けに
手
(
て
)
に
入
(
い
)
れて
050
ミロク
神政
(
しんせい
)
成就
(
じやうじゆ
)
の
051
珍
(
うづ
)
の
神器
(
しんき
)
と
奉
(
たてまつ
)
り
052
神
(
かみ
)
の
御稜威
(
みいづ
)
を
四方
(
よも
)
八方
(
やも
)
に
053
完全
(
うまら
)
に
委曲
(
つばら
)
に
照
(
て
)
らすべし
054
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
055
スーラヤ
山
(
さん
)
は
高
(
たか
)
くとも
056
ナーガラシャーは
猛
(
たけ
)
くとも
057
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐみ
)
を
笠
(
かさ
)
に
着
(
き
)
て
058
誠
(
まこと
)
の
道
(
みち
)
を
杖
(
つゑ
)
となし
059
進
(
すす
)
まむ
身
(
み
)
には
何
(
なん
)
として
060
醜
(
しこ
)
の
曲津
(
まがつ
)
の
障
(
さや
)
らむや
061
あゝ
勇
(
いさ
)
ましし
勇
(
いさ
)
ましし
062
一度
(
いちど
)
に
開
(
ひら
)
く
木
(
こ
)
の
花姫
(
はなひめ
)
の
063
神
(
かみ
)
の
命
(
みこと
)
の
御
(
おん
)
守
(
まも
)
り
064
ブラヷーダ
姫
(
ひめ
)
と
諸共
(
もろとも
)
に
065
珍
(
うづ
)
の
神業
(
みわざ
)
に
仕
(
つか
)
へむと
066
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
くこそ
楽
(
たの
)
しけれ
067
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
068
御霊
(
みたま
)
幸倍
(
さちはへ
)
ましませよ』
069
ブラヷーダは
又
(
また
)
謡
(
うた
)
ふ。
070
『
父
(
ちち
)
と
母
(
はは
)
とに
育
(
はぐ
)
くまれ
071
十六才
(
とをまりむつ
)
の
年月
(
としつき
)
を
072
蝶
(
てふ
)
よ
花
(
はな
)
よと
愛
(
めで
)
られつ
073
送
(
おく
)
り
来
(
きた
)
りし
身
(
み
)
の
果報
(
くわほう
)
074
思
(
おも
)
へば
思
(
おも
)
へば
有難
(
ありがた
)
し
075
これも
全
(
まつた
)
く
三五
(
あななひ
)
の
076
皇
(
すめ
)
大神
(
おほかみ
)
の
御恵
(
みめぐみ
)
と
077
朝
(
あさ
)
な
夕
(
ゆふ
)
なに
感謝
(
かんしや
)
しつ
078
大御恵
(
おほみめぐみ
)
の
万分一
(
まんぶいち
)
079
報
(
むく
)
はむものと
朝夕
(
あさゆふ
)
に
080
祈
(
いの
)
りし
甲斐
(
かい
)
やあら
尊
(
たふと
)
081
天津国
(
あまつくに
)
より
下
(
くだ
)
らしし
082
御使人
(
みつかひびと
)
の
伊太彦
(
いたひこ
)
に
083
嫁
(
とつ
)
ぎの
契
(
ちぎり
)
結
(
むす
)
びつつ
084
言霊軍
(
ことたまいくさ
)
の
門出
(
かどいで
)
に
085
立
(
た
)
つ
白浪
(
しらなみ
)
と
諸共
(
もろとも
)
に
086
彼方
(
あなた
)
に
浮
(
うか
)
ぶスーラヤの
087
御山
(
みやま
)
に
進
(
すす
)
む
嬉
(
うれ
)
しさよ
088
ナーガラシャーは
猛
(
たけ
)
くとも
089
スーラヤ
山
(
さん
)
は
高
(
たか
)
くとも
090
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐみ
)
に
抱
(
いだ
)
かれし
091
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
は
如何
(
いか
)
で
撓
(
たゆ
)
まむや
092
救世
(
ぐせい
)
の
船
(
ふね
)
に
身
(
み
)
を
任
(
まか
)
せ
093
兄
(
あに
)
の
命
(
みこと
)
に
送
(
おく
)
られて
094
千尋
(
ちひろ
)
の
湖
(
うみ
)
を
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く
095
今日
(
けふ
)
の
旅路
(
たびぢ
)
の
勇
(
いさ
)
ましさ
096
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
097
御霊
(
みたま
)
幸倍
(
さちはへ
)
ましまして
098
吾
(
わが
)
背
(
せ
)
の
君
(
きみ
)
の
使命
(
しめい
)
をば
099
遂
(
と
)
げさせたまへ
大御神
(
おほみかみ
)
100
珍
(
うづ
)
の
御前
(
みまへ
)
に
願
(
ね
)
ぎまつる
101
朝日
(
あさひ
)
は
照
(
て
)
るとも
曇
(
くも
)
るとも
102
月
(
つき
)
は
盈
(
み
)
つとも
虧
(
か
)
くるとも
103
星
(
ほし
)
は
空
(
そら
)
より
墜
(
お
)
つるとも
104
スーラヤの
湖
(
うみ
)
は
涸
(
か
)
るるとも
105
神
(
かみ
)
に
誓
(
ちか
)
ひし
赤心
(
まごころ
)
は
106
いや
永久
(
とこしへ
)
に
動
(
うご
)
かまじ
107
吾
(
わが
)
背
(
せ
)
の
君
(
きみ
)
よ
兄君
(
あにぎみ
)
よ
108
カークス、ベース
両人
(
りやうにん
)
よ
109
勇
(
いさ
)
ませたまへ
惟神
(
かむながら
)
110
神
(
かみ
)
は
汝
(
なんぢ
)
と
共
(
とも
)
にあり
111
神
(
かみ
)
は
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
を
守
(
まも
)
ります
112
神
(
かみ
)
と
神
(
かみ
)
とに
抱
(
いだ
)
かれし
113
人
(
ひと
)
は
神
(
かみ
)
の
子
(
こ
)
神
(
かみ
)
の
宮
(
みや
)
114
天地
(
てんち
)
の
中
(
うち
)
に
恐
(
おそ
)
るべき
115
ものは
微塵
(
みじん
)
も
非
(
あら
)
ざらむ
116
進
(
すす
)
めよ
進
(
すす
)
め
此
(
この
)
御船
(
みふね
)
117
吹
(
ふ
)
けよふけふけ
北
(
きた
)
の
風
(
かぜ
)
118
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
119
御霊
(
みたま
)
幸倍
(
さちはへ
)
ましませよ』
120
今日
(
けふ
)
は
一入
(
ひとしほ
)
天気
(
てんき
)
がよいので
漁船
(
ぎよせん
)
の
影
(
かげ
)
は
殊更
(
ことさら
)
多
(
おほ
)
く、
121
彼方
(
あなた
)
此方
(
こなた
)
に
真帆
(
まほ
)
片帆
(
かたほ
)
浪
(
なみ
)
のまにまに
浮
(
うか
)
んで、
122
春野
(
はるの
)
の
花
(
はな
)
に
蝶
(
てふ
)
の
狂
(
くる
)
ふが
如
(
ごと
)
く
翅
(
はね
)
の
様
(
やう
)
な
帆
(
ほ
)
が
瞬
(
またた
)
いて
居
(
ゐ
)
る。
123
少
(
すこ
)
しく
浪
(
なみ
)
は
北風
(
きたかぜ
)
に
煽
(
あふ
)
られて
高
(
たか
)
けれど、
124
何
(
なん
)
とも
云
(
い
)
へぬ
爽快
(
さうくわい
)
な
気分
(
きぶん
)
である。
125
アスマガルダ、
126
カークス、
127
ベースが
汗
(
あせ
)
をたらたら
流
(
なが
)
して
漕
(
こ
)
ぎ
往
(
ゆ
)
く
船
(
ふね
)
は
128
其
(
その
)
日
(
ひ
)
の
黄昏時
(
たそがれどき
)
に
漸
(
やうや
)
く、
1281
スーラヤ
山
(
さん
)
の
一角
(
いつかく
)
についた。
129
磯端
(
いそばた
)
は
白布
(
しろぬの
)
を
晒
(
さら
)
した
如
(
ごと
)
く、
130
打
(
う
)
ち
寄
(
よ
)
する
浪
(
なみ
)
が
立
(
た
)
ち
上
(
あが
)
つて
岩
(
いは
)
にぶつつかり、
131
砕
(
くだ
)
けては
散
(
ち
)
る
其
(
その
)
光景
(
くわうけい
)
は
可
(
か
)
なり
物凄
(
ものすさま
)
じかつた。
132
雪
(
ゆき
)
のやうな
白
(
しろ
)
い
水煙
(
みづけぶり
)
の
一丈
(
いちぢやう
)
許
(
ばか
)
りも
立
(
た
)
つ
中
(
なか
)
を
船
(
ふね
)
を
漕
(
こ
)
ぎ
寄
(
よ
)
せ、
133
漸
(
やうや
)
くにして
陸地
(
りくち
)
についた。
134
さうして
船
(
ふね
)
を
高
(
たか
)
く
磯端
(
いそばた
)
に
上
(
あ
)
げて
繋
(
つな
)
いで
了
(
しま
)
つた。
135
日
(
ひ
)
は
漸
(
やうや
)
くに
暮
(
く
)
れて
来
(
く
)
る。
136
俄
(
にはか
)
に
暴風
(
ばうふう
)
吹
(
ふ
)
き
荒
(
すさ
)
び、
137
湖面
(
こめん
)
は
荒浪
(
あらなみ
)
立
(
た
)
ち
狂
(
くる
)
ひ、
138
ザアザアと
物騒
(
ものさわ
)
がしき
音
(
おと
)
が
聞
(
きこ
)
えて
来
(
き
)
出
(
だ
)
した。
139
一行
(
いつかう
)
五
(
ご
)
人
(
にん
)
は
上陸
(
じやうりく
)
地点
(
ちてん
)
より
一二町
(
いちにちやう
)
許
(
ばか
)
り
登
(
のぼ
)
つた
所
(
ところ
)
の
大岩石
(
だいがんせき
)
の
蔭
(
かげ
)
に
身
(
み
)
を
潜
(
ひそ
)
めて
140
湖上
(
こじやう
)
の
疲
(
つか
)
れを
休
(
やす
)
める
事
(
こと
)
とした。
141
さうして
明日
(
あす
)
の
払暁
(
ふつげう
)
を
待
(
ま
)
つて
登山
(
とざん
)
する
事
(
こと
)
と
定
(
き
)
めて
仕舞
(
しま
)
つた。
142
蓑
(
みの
)
を
布
(
し
)
き
笠
(
かさ
)
を
顔
(
かほ
)
の
上
(
うへ
)
に
乗
(
の
)
せて
143
岩蔭
(
いはかげ
)
に
一同
(
いちどう
)
は
横
(
よこ
)
たはつた。
144
夜
(
よ
)
はおひおひと
更
(
ふけ
)
わたり
暴風
(
ばうふう
)
も
止
(
や
)
み、
145
海
(
うみ
)
の
唸
(
うな
)
りも
静
(
しづ
)
まり、
146
四辺
(
あたり
)
は
深閑
(
しんかん
)
として
来
(
き
)
た。
147
十四日
(
じふよつか
)
の
月
(
つき
)
は
雲
(
くも
)
を
排
(
はい
)
して
皎々
(
かうかう
)
と
輝
(
かがや
)
き
初
(
はじ
)
めた。
148
伊太彦
(
いたひこ
)
、
149
ブラヷーダ、
150
アスマガルダの
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
他愛
(
たあい
)
もなく
睡
(
ねむ
)
つて
了
(
しま
)
つた。
151
カークス、
152
ベースの
両人
(
りやうにん
)
は
何
(
なん
)
だか
気
(
き
)
が
立
(
た
)
つて
寝
(
ね
)
られぬので、
153
まぢまぢして
居
(
ゐ
)
ると、
154
子
(
ね
)
の
正刻
(
しやうこく
)
と
覚
(
おぼ
)
しき
頃
(
ころ
)
、
155
四辺
(
あたり
)
の
密林
(
みつりん
)
の
枝
(
えだ
)
をガサガサと
揺
(
ゆす
)
つて
怪
(
あや
)
しき
物影
(
ものかげ
)
が
近
(
ちか
)
よつて
来
(
く
)
る。
156
カークスは
慄
(
ふる
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
157
盗
(
ぬす
)
むやうにして
其
(
その
)
姿
(
すがた
)
の
行方
(
ゆくへ
)
を
見詰
(
みつめ
)
て
居
(
ゐ
)
る。
158
怪
(
あや
)
しの
姿
(
すがた
)
は
五
(
ご
)
人
(
にん
)
の
前
(
まへ
)
に
矗
(
すつく
)
と
立
(
た
)
ち
火
(
ひ
)
のやうな
赤
(
あか
)
い
顔
(
かほ
)
を
晒
(
さら
)
し、
159
青
(
あを
)
い
舌
(
した
)
を
五六寸
(
ごろくすん
)
許
(
ばか
)
り
前
(
まへ
)
に
垂
(
た
)
らして
錫杖
(
しやくぢやう
)
をついて
居
(
ゐ
)
る。
160
忽
(
たちま
)
ち
怪物
(
くわいぶつ
)
は
雷
(
らい
)
の
如
(
ごと
)
き
声
(
こゑ
)
を
張
(
は
)
り
上
(
あ
)
げ、
161
怪物
(
くわいぶつ
)
『イーイーイー、
162
伊太彦
(
いたひこ
)
の
神司
(
かむづかさ
)
とやら、
163
其
(
その
)
方
(
はう
)
はスーラヤ
山
(
さん
)
に、
164
ウバナンダ
竜王
(
りうわう
)
の
玉
(
たま
)
を
取
(
と
)
らむとして
来
(
うせ
)
た
心
(
こころ
)
憎
(
にく
)
き
曲者
(
くせもの
)
、
165
これより
一足
(
ひとあし
)
でも
登
(
のぼ
)
れるなら
登
(
のぼ
)
つて
見
(
み
)
よ』
166
と
呶鳴
(
どな
)
りつけた。
167
此
(
この
)
声
(
こゑ
)
に
伊太彦
(
いたひこ
)
も
兄妹
(
きやうだい
)
も
目
(
め
)
を
覚
(
さ
)
まし、
168
きつと
声
(
こゑ
)
する
方
(
はう
)
を
見
(
み
)
れば
以前
(
いぜん
)
の
怪物
(
くわいぶつ
)
が
立
(
た
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
169
伊太彦
(
いたひこ
)
は
轟
(
とどろ
)
く
胸
(
むね
)
をグツと
押
(
おさ
)
へ、
170
「
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
」を
高唱
(
かうしやう
)
し
終
(
をは
)
り、
171
伊太
(
いた
)
『アハヽヽヽ。
172
スーラヤ
山
(
さん
)
に
年古
(
としふる
)
く
棲
(
す
)
む
其
(
その
)
方
(
はう
)
は
古狸
(
ふるだぬき
)
であらうがな。
173
吾々
(
われわれ
)
を
何
(
なん
)
と
心得
(
こころえ
)
て
居
(
ゐ
)
る。
174
勿体
(
もつたい
)
なくも
大神
(
おほかみ
)
の
使命
(
しめい
)
をうけて
大蛇
(
をろち
)
退治
(
たいぢ
)
に
進
(
すす
)
む
神
(
かみ
)
の
使
(
つかひ
)
だ。
175
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
が
如
(
ごと
)
きものの
容喙
(
ようかい
)
し
得
(
う
)
べき
限
(
かぎ
)
りのものでない。
176
控
(
ひか
)
へ
居
(
を
)
らう』
177
アスマガルダ
兄妹
(
きやうだい
)
を
初
(
はじ
)
め、
178
カークス、
179
ベースは
一所
(
いつしよ
)
に
集
(
あつ
)
まり、
180
顔色
(
かほいろ
)
まで
真青
(
まつさを
)
にして
慄
(
ふる
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
181
伊太彦
(
いたひこ
)
は
痩我慢
(
やせがまん
)
を
出
(
だ
)
して
一人
(
ひとり
)
空気焔
(
からきえん
)
を
吐
(
は
)
いてゐる。
182
怪物
(
くわいぶつ
)
には
此方
(
こちら
)
から
云
(
い
)
ひ
負
(
まけ
)
たら
敗北
(
やられ
)
ると
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を
予
(
かね
)
て
聞
(
き
)
いて
居
(
ゐ
)
たので、
183
此方
(
こちら
)
から
負
(
ま
)
かしてやらうと
思
(
おも
)
つて、
184
矗
(
すつく
)
と
立
(
た
)
ち
上
(
あが
)
り
怪物
(
くわいぶつ
)
に
向
(
むか
)
つて、
185
伊太
(
いた
)
『イーイーイー、
186
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
、
187
天下
(
てんか
)
無双
(
むそう
)
の
勇士
(
ゆうし
)
、
188
伊太彦
(
いたひこ
)
とは
俺
(
おれ
)
の
事
(
こと
)
だ。
189
種々
(
いろいろ
)
な
事
(
こと
)
を
致
(
いた
)
して
吾々
(
われわれ
)
の
邪魔
(
じやま
)
を
致
(
いた
)
すと
了見
(
れうけん
)
は
致
(
いた
)
さぬぞ』
190
怪物
(
くわいぶつ
)
『ロ、
191
ロー、
192
碌
(
ろく
)
でもない
女
(
をんな
)
を
連
(
つ
)
れて
193
神聖
(
しんせい
)
無比
(
むひ
)
なるスーラヤ
山
(
さん
)
に
登
(
のぼ
)
るとは
何
(
なん
)
の
事
(
こと
)
だ。
194
汝
(
なんぢ
)
は
聖場
(
せいぢやう
)
を
汚
(
けが
)
す
痴漢
(
しれもの
)
、
195
今
(
いま
)
此
(
この
)
方
(
はう
)
が
神力
(
しんりき
)
によつて
其
(
その
)
方
(
はう
)
の
体
(
からだ
)
を
ビク
とも
動
(
うご
)
かぬ
様
(
やう
)
にして
呉
(
く
)
れる。
196
覚悟
(
かくご
)
を
致
(
いた
)
せ。
197
ワハヽヽヽ、
198
ても
扨
(
さ
)
ても
可憐
(
かはい
)
さうなものだわい』
199
伊太
(
いた
)
『ロヽヽヽ
碌
(
ろく
)
でもない、
200
ど
倒
(
たふ
)
し
者
(
もの
)
奴
(
め
)
、
201
ナヽ
何
(
なに
)
を
吐
(
ぬか
)
すのだ。
202
妖怪
(
えうくわい
)
変化
(
へんげ
)
の
容喙
(
ようかい
)
すべき
限
(
かぎ
)
りでない。
203
早
(
はや
)
くすつ
込
(
こ
)
み
居
(
を
)
らう。
204
ぐづぐづすると
言霊
(
ことたま
)
の
発射
(
はつしや
)
と
出
(
で
)
かけようか』
205
怪物
(
くわいぶつ
)
『ハヽヽヽヽ、
206
腹
(
はら
)
が
立
(
た
)
つか、
207
恥
(
はぢ
)
入
(
い
)
つたか、
208
薄志
(
はくし
)
弱行
(
じやくかう
)
の
腰抜
(
こしぬけ
)
宣伝使
(
せんでんし
)
奴
(
め
)
、
209
高
(
たか
)
が
知
(
し
)
れたウバナンダ
竜王
(
りうわう
)
の
玉
(
たま
)
を
取
(
と
)
るに
加勢
(
かせい
)
を
頼
(
たの
)
み、
210
女
(
をんな
)
を
連
(
つ
)
れて
来
(
く
)
るとは、
211
実
(
じつ
)
に
見下
(
みさ
)
げ
果
(
は
)
てたる
腰抜
(
こしぬけ
)
野郎
(
やらう
)
奴
(
め
)
』
212
伊太
(
いた
)
『ハヽヽ
張子
(
はりこ
)
の
虎
(
とら
)
のやうに
首
(
くび
)
ばかりふりやがつて
何
(
なん
)
の
態
(
ざま
)
だ。
213
サア
早
(
はや
)
く
退散
(
たいさん
)
致
(
いた
)
すか、
214
正体
(
しやうたい
)
を
現
(
あら
)
はすか、
215
何神
(
なにがみ
)
の
化身
(
けしん
)
だと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を
白状
(
はくじやう
)
致
(
いた
)
すか、
216
返答
(
へんたふ
)
次第
(
しだい
)
によつては
此方
(
こちら
)
にも
考
(
かんが
)
へがあるのだ』
217
怪物
(
くわいぶつ
)
『ニヽヽ
憎
(
にく
)
いか、
218
いや
憎
(
にく
)
らしいと
思
(
おも
)
ふか、
219
其
(
その
)
苦
(
にが
)
い
顔
(
かほ
)
は
何
(
なん
)
だ。
220
ホヽヽ
呆
(
はう
)
け
野郎
(
やらう
)
奴
(
め
)
、
221
身
(
み
)
の
程
(
ほど
)
知
(
し
)
らずも
程
(
ほど
)
があるわい。
222
ヘヽヽヽ
下手
(
へた
)
な
事
(
こと
)
を
致
(
いた
)
して、
223
後
(
あと
)
でベースをカークスな。
224
トヽヽヽ
途方
(
とはう
)
途轍
(
とてつ
)
もない
大
(
だい
)
それた
欲望
(
よくばう
)
を
起
(
おこ
)
し、
225
栃麺棒
(
とちめんばう
)
を
振
(
ふ
)
つてトンボ
返
(
がへ
)
りを
致
(
いた
)
し、
226
岩窟
(
がんくつ
)
のドン
底
(
ぞこ
)
迄
(
まで
)
おとされて
頓死
(
とんし
)
すると
云
(
い
)
ふ
災厄
(
さいやく
)
が
227
目
(
め
)
の
前
(
まへ
)
に
近
(
ちか
)
づいて
来
(
き
)
て
居
(
を
)
るのを
知
(
し
)
らないのか。
228
イイ
馬鹿
(
ばか
)
だなア』
229
伊太
(
いた
)
『チヽヽちやァちやァ
吐
(
ぬか
)
すな、
230
些
(
ちつと
)
も
貴様
(
きさま
)
等
(
ら
)
のお
世話
(
せわ
)
に
預
(
あづか
)
ら
無
(
な
)
くてもよいのだ。
231
智謀
(
ちぼう
)
絶倫
(
ぜつりん
)
の
伊太彦
(
いたひこ
)
、
232
リヽヽ
凛々
(
りんりん
)
たる
勇気
(
ゆうき
)
を
鼓
(
こ
)
して、
233
ウバナンダ
竜王
(
りうわう
)
の
館
(
やかた
)
に
進
(
すす
)
む
神軍
(
しんぐん
)
の
勇士
(
ゆうし
)
だ。
234
ヌヽヽぬかりのない
此
(
この
)
方
(
はう
)
、
235
水
(
みづ
)
も
漏
(
もら
)
さぬ
仕組
(
しぐみ
)
を
致
(
いた
)
して
茲
(
ここ
)
に、
236
いづ
御魂
(
みたま
)
が
登山
(
とざん
)
探検
(
たんけん
)
と
出
(
で
)
かけたのだ。
237
すつ
込
(
こ
)
んでおらう。
238
其
(
その
)
方
(
はう
)
の
出
(
で
)
て
来
(
き
)
てゴテゴテ
申
(
まを
)
す
幕
(
まく
)
ぢやないのだ』
239
怪物
(
くわいぶつ
)
『ルヽヽ
累卵
(
るゐらん
)
の
危
(
あやふ
)
きを
知
(
し
)
らぬ
痴呆者
(
うつけもの
)
奴
(
め
)
、
240
類
(
るゐ
)
は
友
(
とも
)
を
呼
(
よ
)
ぶと
云
(
い
)
ふ
馬鹿者
(
ばかもの
)
の
好
(
よ
)
く
揃
(
そろ
)
つたものだ。
241
オヽ
大
(
おほ
)
馬鹿者
(
ばかもの
)
奴
(
め
)
、
242
大泥坊
(
おほどろばう
)
奴
(
め
)
、
243
大
(
おほ
)
戯気者
(
たはけもの
)
、
244
神
(
かみ
)
の
道
(
みち
)
を
歩
(
ある
)
きながら、
245
鬼
(
おに
)
か
大蛇
(
をろち
)
のやうになつて
竜神
(
りうじん
)
の
玉
(
たま
)
を、
246
ぼつたくらう
とは
此
(
この
)
方
(
はう
)
も
おとましう
なつて
来
(
き
)
たわい。
247
身
(
み
)
の
程
(
ほど
)
知
(
し
)
らずの
横道者
(
わうだうもの
)
だな』
248
伊太
(
いた
)
『ワハヽヽヽ、
249
笑
(
わら
)
はしやがるない。
250
没分暁漢
(
わからずや
)
奴
(
め
)
、
251
吾輩
(
わがはい
)
のすることに
容喙
(
ようかい
)
する
権利
(
けんり
)
がどこにあるか。
252
悪
(
わる
)
い
事
(
こと
)
は
些
(
すこ
)
しも
致
(
いた
)
さぬ
善一筋
(
ぜんひとすぢ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
ぢや。
253
分
(
わか
)
らぬ
事
(
こと
)
を
申
(
まを
)
さずに、
254
己
(
おのれ
)
の
住所
(
すみか
)
にトツトと
引込
(
ひつこ
)
んだがよからうぞ』
255
怪物
(
くわいぶつ
)
『カヽヽ
構
(
かま
)
ふな
構
(
かま
)
ふな、
256
惟神
(
かむながら
)
だとか
神
(
かみ
)
の
道
(
みち
)
だとか
何
(
なん
)
とか、
257
かとか
申
(
まをし
)
て、
258
其処辺
(
そこら
)
を
騙
(
かた
)
り
歩
(
ある
)
く
我羅苦多
(
がらくた
)
宣伝使
(
せんでんし
)
だらうがな。
259
第一
(
だいいち
)
女
(
をんな
)
をイヤ
嬶
(
かかあ
)
を
連
(
つ
)
れて
登
(
のぼ
)
つて
来
(
く
)
るとは
以
(
もつ
)
ての
外
(
ほか
)
だ。
260
当山
(
たうざん
)
の
規則
(
きそく
)
を
破
(
やぶ
)
つた
大罪人
(
だいざいにん
)
奴
(
め
)
、
261
サア
覚悟
(
かくご
)
を
致
(
いた
)
せ、
262
頭
(
あたま
)
からこの
大
(
おほ
)
きな
口
(
くち
)
で
噛
(
か
)
ぶつて
食
(
く
)
て
仕舞
(
しま
)
つてやらう』
263
伊太
(
いた
)
『ヨヽヽ
妖怪
(
ようくわい
)
変化
(
へんげ
)
の
分際
(
ぶんざい
)
として
264
此
(
この
)
方
(
はう
)
に
指一本
(
ゆびいつぽん
)
でも
触
(
さ
)
へられるのなら
触
(
さ
)
へて
見
(
み
)
よ。
265
下
(
くだ
)
らぬ
世迷
(
よま
)
ひ
事
(
ごと
)
を
申
(
まを
)
さずに、
266
もはや
夜明
(
よあけ
)
に
間
(
ま
)
もあるまいから、
267
気
(
き
)
の
利
(
き
)
いた
化物
(
ばけもの
)
は
足
(
あし
)
を
洗
(
あら
)
うて
疾
(
とつく
)
に
引込
(
ひつこ
)
む
時間
(
じかん
)
だ。
268
与太
(
よた
)
リスクを
並
(
なら
)
べずに、
269
よい
加減
(
かげん
)
に
伏
(
どぶ
)
さつたらどうだ』
270
怪物
(
くわいぶつ
)
『タヽヽ
痴呆者
(
たわけもの
)
奴
(
め
)
、
271
要
(
い
)
らざる
頬桁
(
ほほげた
)
を
叩
(
たた
)
くと
叩
(
たた
)
きつぶしてやるぞ。
272
高
(
たか
)
が
知
(
し
)
れた
人間
(
にんげん
)
の
三匹
(
さんびき
)
や
五匹
(
ごひき
)
一口
(
ひとくち
)
にも
足
(
た
)
らぬわい。
273
欲
(
よく
)
の
熊鷹
(
くまたか
)
股
(
また
)
が
裂
(
さ
)
けると
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を
貴様
(
きさま
)
は
知
(
し
)
らぬのか
痴呆者
(
たわけもの
)
奴
(
め
)
、
274
レヽヽ、
275
恋愛
(
れんあい
)
至上
(
しじやう
)
主義
(
しゆぎ
)
を
発揮
(
はつき
)
して
神聖
(
しんせい
)
なる
当山
(
たうざん
)
に
迄
(
まで
)
、
276
初
(
はじ
)
めて
嬶
(
かか
)
をもつた
嬉
(
うれ
)
しさにトチ
迷
(
まよ
)
ひ
登
(
のぼ
)
つて
来
(
く
)
ると
云
(
い
)
ふデレ
助
(
すけ
)
だから、
277
吾々
(
われわれ
)
仲間
(
なかま
)
のよい
慰
(
なぐさ
)
み
者
(
もの
)
だ』
278
伊太
(
いた
)
『ソヽヽ、
279
そうかいやい、
280
そらさうだらう。
281
羨
(
けな
)
りいなつたか。
282
一寸
(
ちよつと
)
位
(
ぐらゐ
)
手
(
て
)
を
握
(
にぎ
)
らしてやり
度
(
た
)
いが、
283
矢張
(
やつぱり
)
それも
止
(
や
)
めて
置
(
お
)
こうかい、
284
何
(
なん
)
だ、
285
その
六ケ敷
(
むつかし
)
い
面
(
つら
)
つきは。
286
貧相
(
ひんさう
)
なものだのう』
287
怪物
(
くわいぶつ
)
『ツヽヽ
月
(
つき
)
が
空
(
そら
)
から
貴様
(
きさま
)
の
脱線振
(
だつせんぶり
)
を
見
(
み
)
て
笑
(
わら
)
つて
厶
(
ござ
)
るのも
知
(
し
)
らぬのか。
288
心
(
こころ
)
の
盲
(
めくら
)
、
289
心
(
こころ
)
の
聾
(
つんぼ
)
は
仕方
(
しかた
)
がないものだなア。
290
捉
(
つか
)
まへ
所
(
どころ
)
のない
屁理屈
(
へりくつ
)
を
並
(
なら
)
べて
其処辺
(
そこら
)
を
遍歴
(
へんれき
)
致
(
いた
)
すと
云
(
い
)
ふ
強者
(
つわもの
)
、
291
おつとドツコイ、
292
つまらぬ
代物
(
しろもの
)
だからなア。
293
ネヽ
猫撫声
(
ねこなでごゑ
)
を
出
(
だ
)
しやがつて、
294
夫婦
(
ふうふ
)
がいちやづいて
此
(
この
)
島
(
しま
)
に
打
(
うち
)
渡
(
わた
)
り、
295
グウースケ
八兵衛
(
はちべゑ
)
と
睡
(
ねむ
)
つて
居
(
を
)
るとは
念
(
ねん
)
の
入
(
い
)
つた
痴呆者
(
たわけもの
)
だ』
296
『ナヽヽ、
297
何
(
なに
)
を
吐
(
ぬか
)
しやがるんだい。
298
情
(
なさけ
)
ない
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
ふて
呉
(
く
)
れない。
299
何程
(
なにほど
)
羨
(
うらや
)
ましうても
貴様
(
きさま
)
の
女房
(
にようばう
)
にしてやる
訳
(
わけ
)
には
行
(
ゆ
)
かず、
300
あゝ
難儀
(
なんぎ
)
のものが
出
(
で
)
て
来
(
き
)
たものだ。
301
俺
(
おれ
)
も
同情
(
どうじやう
)
の
涙
(
なみだ
)
に
暮
(
く
)
れぬ
事
(
こと
)
もないのう
怪物
(
くわいぶつ
)
』
302
怪物
(
くわいぶつ
)
『ラヽヽ、
303
らつちも
無
(
な
)
い
事
(
こと
)
を
吐
(
ほざ
)
くもんぢやないわい。
304
ムヽヽ
昔
(
むかし
)
から
誰一人
(
たれひとり
)
目的
(
もくてき
)
を
達
(
たつ
)
した
事
(
こと
)
のない
竜王
(
りうわう
)
の
玉
(
たま
)
を
取
(
と
)
らうとは
無法
(
むはふ
)
にも
程
(
ほど
)
がある。
305
ほんに
命
(
いのち
)
知
(
し
)
らずの
無鉄砲
(
むてつぱう
)
者
(
もの
)
だのう。
306
こりや
無茶彦
(
むちやひこ
)
、
307
向
(
むか
)
つ
腹
(
ぱら
)
が
立
(
た
)
つか、
308
ムツとするか、
309
虫
(
むし
)
が
好
(
す
)
かぬか、
310
夫
(
そ
)
れや
無理
(
むり
)
もない。
311
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
玉
(
たま
)
が
取
(
と
)
りたけれや
明朝
(
あすあさ
)
とつとと
登
(
のぼ
)
つたらよからう。
312
此
(
この
)
山
(
やま
)
の
中腹
(
ちうふく
)
には
死線
(
しせん
)
といつて
人間
(
にんげん
)
の
通
(
とほ
)
れぬ
所
(
ところ
)
があるのだ。
313
其処
(
そこ
)
へ
往
(
ゆ
)
くと
邪気
(
じやき
)
充満
(
じゆうまん
)
し、
314
其
(
その
)
方
(
はう
)
如
(
ごと
)
きものが
其
(
その
)
毒
(
どく
)
にあたると
心臓
(
しんざう
)
痳痺
(
まひ
)
を
起
(
おこ
)
し、
315
水脹
(
みづぶく
)
れになつて
死
(
し
)
ぬるのだから、
316
さうすれば
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
が
寄
(
よ
)
つて
集
(
たか
)
つて
皆
(
みな
)
喰
(
く
)
つて
仕舞
(
しま
)
つてやるのだ。
317
ても
扨
(
さ
)
ても
不愍
(
いぢらしい
)
ものだなア』
318
伊太
(
いた
)
『ウフヽヽヽ、
319
五月蠅
(
うるさい
)
奴
(
やつ
)
だなア、
320
そんな
事
(
こと
)
を
申
(
まをし
)
て
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
の
荒肝
(
あらぎも
)
を
取
(
と
)
らうと
思
(
おも
)
ふても
駄目
(
だめ
)
だぞ。
321
牛
(
うし
)
の
丸焼
(
まるやき
)
でも
二匹
(
にひき
)
三匹
(
さんびき
)
一遍
(
いつぺん
)
に
平
(
たひら
)
げる
此
(
この
)
伊太彦
(
いたひこ
)
さまだ。
322
ウゴウゴ
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
るともう
堪忍袋
(
かんにんぶくろ
)
の
緒
(
を
)
が
切
(
き
)
れるぞよ。
323
イヽヽ
何時
(
いつ
)
迄
(
まで
)
も
何時
(
いつ
)
迄
(
まで
)
も
羨
(
うらや
)
ましさうに
夫婦
(
ふうふ
)
の
睦
(
むつ
)
まじい
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
て
指
(
ゆび
)
を
銜
(
くわ
)
へて
見
(
み
)
て
居
(
を
)
るより、
324
いい
加減
(
かげん
)
に
幻滅
(
げんめつ
)
致
(
いた
)
したらどうだい。
325
悪戯
(
いたづら
)
も
程
(
ほど
)
があるぞよ』
326
怪物
(
くわいぶつ
)
『ノヽヽ、
327
野太
(
のぶと
)
い
代物
(
しろもの
)
だなア。
328
野
(
の
)
に
寝
(
ね
)
たり、
329
山
(
やま
)
に
寝
(
ね
)
たりして
露命
(
ろめい
)
を
繋
(
つな
)
いで
来
(
き
)
て、
330
漸
(
やうや
)
くテルの
里
(
さと
)
で
満足
(
まんぞく
)
の
家
(
いへ
)
に
泊
(
と
)
めて
貰
(
もら
)
つたと
思
(
おも
)
つて
得意
(
とくい
)
になり、
331
ブラヷーダを
女房
(
にようばう
)
に
持
(
も
)
つたと
思
(
おも
)
ふて
其
(
その
)
はしやぎ
方
(
かた
)
は
何
(
なん
)
だ。
332
天下
(
てんか
)
の
馬鹿者
(
ばかもの
)
、
333
命
(
いのち
)
知
(
し
)
らずとは
貴様
(
きさま
)
の
事
(
こと
)
だ。
334
イタイタしい
伊太彦
(
いたひこ
)
の
我羅苦多
(
がらくた
)
奴
(
め
)
、
335
イヒヽヽヽ』
336
伊太
(
いた
)
『オヽヽお
構
(
かま
)
ひだ、
337
俺
(
おれ
)
のする
事
(
こと
)
をゴテゴテ
構
(
かま
)
ふて
呉
(
く
)
れない。
338
クヽヽ
苦労
(
くらう
)
の
凝
(
かたまり
)
の
花
(
はな
)
が
咲
(
さ
)
いたのだ。
339
貴様
(
きさま
)
もこんなナイスが
欲
(
ほ
)
しけりや、
340
ちつと
誠
(
まこと
)
の
道
(
みち
)
に
苦労
(
くらう
)
を
致
(
いた
)
せ』
341
怪物
(
くわいぶつ
)
『ヤヽヽ
矢釜敷
(
やかまし
)
いわい、
342
夜分
(
やぶん
)
に
山
(
やま
)
の
中
(
なか
)
で
露
(
つゆ
)
の
宿
(
やど
)
を
取
(
と
)
る
厄雑
(
やくざ
)
宣伝使
(
せんでんし
)
奴
(
め
)
、
343
八岐
(
やまた
)
大蛇
(
をろち
)
の
一
(
いち
)
の
乾児
(
こぶん
)
の
此方
(
このはう
)
様
(
さま
)
に
344
今
(
いま
)
命
(
いのち
)
を
取
(
と
)
られるのを
御存
(
ごぞん
)
じがないのか。
345
マヽヽ、
346
負惜
(
まけをし
)
みのつよい、
347
真面目
(
まじめ
)
腐
(
くさ
)
つた
其
(
その
)
面付
(
つらつき
)
で
表面
(
うはべ
)
をかざつて
居
(
ゐ
)
るが、
348
貴様
(
きさま
)
の
心
(
こころ
)
の
中
(
なか
)
は
地異
(
ちい
)
天変
(
てんぺん
)
大地震
(
おほぢしん
)
が
揺
(
ゆ
)
つて
居
(
を
)
らうがな。
349
どうだ
恐
(
おそ
)
れ
入
(
い
)
つたか』
350
伊太
(
いた
)
『ケヽヽ
怪体
(
けたい
)
の
悪
(
わる
)
い
怪
(
け
)
しからぬ
奴
(
やつ
)
だ。
351
怪我
(
けが
)
の
無
(
な
)
い
中
(
うち
)
に
早
(
はや
)
く
帰
(
かへ
)
れといつたら
帰
(
かへ
)
らぬか。
352
フヽヽ、
353
不都合
(
ふつがふ
)
な、
354
フザケた
事
(
こと
)
を
致
(
いた
)
すと、
355
捕縛
(
ふんじば
)
つて
仕舞
(
しま
)
ふぞ。
356
いや
踏
(
ふ
)
み
潰
(
つぶ
)
してやらうか、
357
何
(
なに
)
が
不足
(
ふそく
)
で
夜夜中
(
よるよなか
)
、
358
安眠
(
あんみん
)
妨害
(
ばうがい
)
に
出
(
で
)
て
来
(
う
)
せたのだ。
359
不都合
(
ふつがふ
)
な
不届
(
ふとど
)
きな
奴
(
やつ
)
、
360
コヽヽ
耐
(
こら
)
へ
袋
(
ぶくろ
)
が
切
(
き
)
れるぞよ。
361
こん
畜生
(
ちくしやう
)
、
362
八岐
(
やまた
)
大蛇
(
をろち
)
の
眷族
(
けんぞく
)
なぞは
真赤
(
まつか
)
な
偽
(
いつは
)
り、
363
其
(
その
)
方
(
はう
)
は
数千
(
すうせんまん
)
年
(
ねん
)
劫
(
ごふ
)
を
経
(
へ
)
た、
364
苔
(
こけ
)
の
生
(
は
)
えた
小狸
(
こだぬき
)
であらうがな。
365
エヽヽ、
366
邪魔
(
じやま
)
臭
(
くさ
)
ひ、
367
この
金剛杖
(
こんがうづゑ
)
をもつて
叩
(
たた
)
きつけてやらう。
368
最愛
(
さいあい
)
のブラヷーダが
安眠
(
あんみん
)
の
妨害
(
ばうがい
)
になる』
369
怪物
(
くわいぶつ
)
『テヽヽ、
370
てんごう
を
致
(
いた
)
すな、
371
此
(
この
)
方
(
はう
)
の
神力
(
しんりき
)
と
貴様
(
きさま
)
の
力
(
ちから
)
とは
天地
(
てんち
)
の
相違
(
さうゐ
)
だ。
372
デンデン
虫
(
むし
)
の
角
(
つの
)
を
振
(
ふ
)
り
立
(
た
)
てて
気張
(
きば
)
つて
見
(
み
)
たとて
373
岩石
(
がんせき
)
に
蚊
(
か
)
が
襲来
(
しふらい
)
するやうなものだ。
374
アヽヽ
阿呆
(
あはう
)
な
限
(
かぎ
)
りを
尽
(
つく
)
さずと、
375
早
(
はや
)
く
此処
(
ここ
)
を
立
(
た
)
ち
去
(
さ
)
れ。
376
グヅグヅして
居
(
を
)
るとアフンと
致
(
いた
)
して
泡
(
あわ
)
を
吹
(
ふ
)
くぞよ。
377
それでも
聞
(
き
)
かねば、
378
アンポンタンの
黒焼
(
くろやき
)
にして
食
(
くつ
)
てやらうか、
379
サヽヽサア、
380
どうだ
早速
(
さつそく
)
に
口
(
くち
)
が
開
(
あ
)
くまいがな。
381
扨
(
さ
)
ても
扨
(
さ
)
ても
見下
(
みさ
)
げ
果
(
は
)
てたる
腰抜
(
こしぬけ
)
計
(
ばか
)
りだな。
382
キヽヽ
気
(
き
)
に
喰
(
く
)
はぬ
怪物
(
くわいぶつ
)
だと
思
(
おも
)
ふであらうが、
383
この
方
(
はう
)
を
一体
(
いつたい
)
誰
(
たれ
)
だと
心得
(
こころえ
)
て
居
(
ゐ
)
る。
384
鬼神
(
きじん
)
もひしぐ
勇
(
ゆう
)
ある
結構
(
けつこう
)
な
五大力
(
ごだいりき
)
様
(
さま
)
だぞ。
385
ユヽヽ、
386
夢々
(
ゆめゆめ
)
疑
(
うたが
)
ふ
事
(
こと
)
勿
(
なか
)
れ。
387
只今
(
ただいま
)
幽界
(
いうかい
)
より
其
(
その
)
方
(
はう
)
の
命
(
いのち
)
を
召
(
め
)
し
取
(
と
)
りに
来
(
き
)
たのだ。
388
ても
扨
(
さ
)
ても
愉快
(
ゆくわい
)
な
事
(
こと
)
だなア。
389
メヽヽヽ
迷惑
(
めいわく
)
さうな
其
(
その
)
面付
(
つらつき
)
、
390
薩張
(
さつぱり
)
面目玉
(
めんぼくだま
)
を
踏
(
ふ
)
み
潰
(
つぶ
)
され、
391
折角
(
せつかく
)
貰
(
もら
)
ふた
嬶
(
かか
)
には
愛想
(
あいさう
)
尽
(
つ
)
かされ、
392
メソメソ
吠面
(
ほえづら
)
かはくのが、
393
可憐
(
かわい
)
さうだわい。
394
サア
冥途
(
めいど
)
の
旅
(
たび
)
にやつてやらう』
395
伊太
(
いた
)
『ミヽヽ、
396
見
(
み
)
て
居
(
を
)
れ。
397
此
(
この
)
伊太彦
(
いたひこ
)
の
神力
(
しんりき
)
を、
398
何程
(
なにほど
)
貴様
(
きさま
)
が
威張
(
ゐば
)
つた
所
(
ところ
)
が
駄目
(
だめ
)
だ。
399
死線
(
しせん
)
だらうが、
400
五線
(
ごせん
)
だらうが
神力
(
しんりき
)
をもつて
突破
(
とつぱ
)
し、
401
一戦
(
いつせん
)
に
勝鬨
(
かちどき
)
をあぐる
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
だ。
402
え
体
(
たい
)
の
知
(
し
)
れぬ
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
如
(
ごと
)
き
怪物
(
くわいぶつ
)
に
辟易
(
へきえき
)
するやうで、
403
どうしてハルナの
都
(
みやこ
)
に
進
(
すす
)
む
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ようか。
404
タクシャカ
竜王
(
りうわう
)
でさへも
屁込
(
へこ
)
ました
此
(
この
)
方
(
はう
)
だ』
405
怪物
(
くわいぶつ
)
『ヒヽヽ
仰有
(
おつしや
)
りますわい。
406
日向
(
ひなた
)
にあてたらハシャぐやうな
腕
(
うで
)
振
(
ふ
)
りまはし、
407
何程
(
なにほど
)
威張
(
ゐば
)
つて
見
(
み
)
た
所
(
ところ
)
で、
408
モヽヽもう
駄目
(
だめ
)
だ。
409
耄碌
(
まうろく
)
宣伝使
(
せんでんし
)
の
伊太彦
(
いたひこ
)
司
(
つかさ
)
、
410
セヽヽ
雪隠
(
せつちん
)
で
饅頭
(
まんぢう
)
食
(
く
)
ふやうな
甘
(
うま
)
い
事
(
こと
)
を
考
(
かんが
)
へても
薩張
(
さつぱり
)
駄目
(
だめ
)
だ。
411
終
(
をは
)
りの
果
(
はて
)
には
糞
(
ばば
)
を
垂
(
た
)
れるぞよ』
412
伊太
(
いた
)
『スヽヽ、
413
好
(
す
)
かんたらしい
屁理屈
(
へりくつ
)
を
垂
(
た
)
れな。
414
酢
(
す
)
でも
蒟蒻
(
こんにやく
)
でもいかぬ
妖怪
(
えうくわい
)
だな。
415
一
(
ひと
)
二
(
ふた
)
三
(
み
)
四
(
よ
)
五
(
いつ
)
六
(
むゆ
)
七
(
なな
)
八
(
や
)
九
(
ここの
)
十
(
たり
)
百
(
もも
)
千
(
ち
)
万
(
よろづ
)
416
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
』
417
怪物
(
くわいぶつ
)
『キヨキヨキヨ
京
(
きやう
)
疎
(
うと
)
い
事
(
こと
)
を
致
(
いた
)
す
伊太彦
(
いたひこ
)
司
(
つかさ
)
、
418
また
幽冥界
(
いうめいかい
)
でお
目
(
め
)
にかからう。
419
エヘヽヽヽ』
420
と
体
(
からだ
)
を
揺
(
ゆす
)
りながら
何処
(
いづく
)
ともなく
消
(
き
)
えて
仕舞
(
しま
)
つた。
421
伊太
(
いた
)
『アハヽヽ、
422
仕様
(
しやう
)
の
無
(
な
)
い
古狸
(
ふるだぬき
)
がやつて
来
(
き
)
やがつて、
423
嚇
(
おど
)
し
文句
(
もんく
)
を
並
(
なら
)
べ
立
(
た
)
て
面白
(
おもしろ
)
い
事
(
こと
)
だつた。
424
アハヽヽヽ』
425
アスマガルダは
漸
(
やうや
)
く
胸
(
むね
)
をなでおろし、
426
四辺
(
あたり
)
をキヨロキヨロ
見廻
(
みまは
)
し
乍
(
なが
)
ら、
427
『アヽ
先生
(
せんせい
)
428
随分
(
ずいぶん
)
偉
(
えら
)
い
奴
(
やつ
)
がやつて
来
(
き
)
たぢやありませぬか。
429
どうなる
事
(
こと
)
かと
思
(
おも
)
つて
大変
(
たいへん
)
心配
(
しんぱい
)
しましたよ。
430
併
(
しか
)
し
貴方
(
あなた
)
の
我
(
が
)
の
強
(
つよ
)
いのにも
呆
(
あき
)
れましたよ』
431
伊太
(
いた
)
『アハヽヽヽ、
432
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
は
私
(
わたし
)
も
一寸
(
ちよつと
)
面喰
(
めんくら
)
つたのだが、
433
こんな
事
(
こと
)
に
負
(
まけ
)
てはならないと
空元気
(
からげんき
)
を
出
(
だ
)
して
見
(
み
)
た
所
(
ところ
)
、
434
キヤツキヤツと
云
(
い
)
つて
逃
(
に
)
げた
時
(
とき
)
のおかしさ、
435
いや
心地
(
ここち
)
よさ。
436
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
出立
(
しゆつたつ
)
以来
(
いらい
)
のよい
経験
(
けいけん
)
だよ』
437
ブラヷーダ『
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
仰
(
おほせ
)
の
通
(
とほ
)
り
438
妾
(
わらは
)
の
夫
(
をつと
)
伊太彦
(
いたひこ
)
さまは
本当
(
ほんたう
)
に
勇壮
(
ゆうさう
)
活溌
(
くわつぱつ
)
の
神使
(
かむつかひ
)
です。
439
妾
(
わらは
)
はもうこんな
強
(
つよ
)
い
方
(
かた
)
を
夫
(
をつと
)
にもつならば
世
(
よ
)
に
恐
(
おそ
)
るべきものは
厶
(
ござ
)
いませぬわ』
440
カークス『アハヽヽヽ、
441
豪
(
えら
)
いお
惚
(
のろ
)
けで
厶
(
ござ
)
いますこと。
442
なあベース、
443
お
浦山吹
(
うらやまぶき
)
の
至
(
いた
)
りぢやないか』
444
ベース『ウフツ』
445
伊太
(
いた
)
『
古狸
(
ふるだぬき
)
吾
(
わが
)
枕辺
(
まくらべ
)
に
現
(
あら
)
はれて
446
フルナの
弁
(
べん
)
をふるふをかしさ。
447
ブルブルと
慄
(
ふる
)
ひ
乍
(
なが
)
らに
古
(
ふる
)
さまの
448
世迷
(
よま
)
ひ
言
(
ごと
)
をば
聞
(
き
)
く
人
(
ひと
)
もあり』
449
カークス『
恐
(
おそ
)
ろしさカークスと
思
(
おも
)
へど
何
(
なん
)
となく
450
腹
(
はら
)
の
底
(
そこ
)
から
慄
(
ふる
)
ひけるかな』
451
ベース『
恐
(
おそ
)
ろしさにベースをカークス
吾々
(
われわれ
)
は
452
地獄
(
ぢごく
)
におちし
心地
(
ここち
)
なりけり』
453
其
(
その
)
後
(
ご
)
は
何事
(
なにごと
)
もなく
夜
(
よ
)
はカラリと
明
(
あ
)
けた。
454
是
(
これ
)
より
一行
(
いつかう
)
五
(
ご
)
人
(
にん
)
は
死線
(
しせん
)
を
越
(
こ
)
へてウバナンダ
竜王
(
りうわう
)
の
匿
(
かく
)
るる
岩窟
(
がんくつ
)
の
玉
(
たま
)
を
取
(
と
)
らむと
進
(
すす
)
み
往
(
ゆ
)
く
事
(
こと
)
となつた。
455
(
大正一二・五・二四
旧四・九
於教主殿
加藤明子
録)
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