霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一二章 五託宣(ごたくせん)〔一六一九〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第63巻 山河草木 寅の巻 篇:第3篇 幽迷怪道 よみ(新仮名遣い):ゆうめいかいどう
章:第12章 五託宣 よみ(新仮名遣い):ごたくせん 通し章番号:1619
口述日:1923(大正12)年05月24日(旧04月9日) 口述場所: 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1926(大正15)年2月3日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
カークスとベースは不審の念を抱いて、近づいてくる宣伝歌に耳をすませた。歌の主は伊太彦であった。
伊太彦はアスマガルダ、ブラヷーダを連れて、竜王の岩窟の向こうにこれほど広い原野があることを不思議に思いながら歌を歌いながらやってきた。
カークスとベースは伊太彦に出会えたことを喜び、先ほどの怪しい婆の話をした。伊太彦は岩窟だから妖怪が出たのだろうと答え、ウバナンダ竜王に会うために先に進もうと一同を促した。
一同が進んでいくと、はげ山の麓に草ぶき屋根の小屋が一軒建っていた。小屋から出てきたのは高姫であった。高姫は一行を呼び止め、けっこうなウラナイ教の話を聞かせてやろうと引き留めた。
しかしカークスとベースは、高姫の居丈高な物言いに不快の念をあらわにし、無視して先に進もうと伊太彦にもちかけた。高姫は怒り、二人は身魂が悪いから自分の館に入ることはならないと言い渡した。
高姫は伊太彦、アスマガルダ、ブラヷーダの三人を引き入れようとするが、ブラヷーダはここまで生死を共にしてきたのだから、カークスとベースが入れない家にやっかいになるのは止めようと言い出した。
伊太彦とアスマガルダも同調したので、高姫は仕方なく五人とも招き入れようとするが、その物言いがまた居丈高なので、カークスとベースは家に入るのを拒否した。
高姫は門口でウラナイ教の説法をすることにした。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2017-06-06 18:17:50 文字数:4487 OBC :rm6312
愛善世界社版:164頁 八幡書店版:第11輯 321頁 修補版: 校定版:168頁 普及版:64頁 初版: ページ備考:
001 カークス、002ベース両人(りやうにん)は不審(ふしん)の胸(むね)を抱(いだ)き乍(なが)ら、003路傍(ろばう)に直立(ちよくりつ)せる立岩(たちいは)の側(そば)に佇(たたず)んで、004宣伝歌(せんでんか)の声(こゑ)の近寄(ちかよ)るのを耳(みみ)をすませて聞(き)いて居(ゐ)る。
005伊太彦(いたひこ)『三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)
006吾(われ)は伊太彦(いたひこ)司(つかさ)なり
007玉国別(たまくにわけ)に従(したが)ひて
008スダルマ山(さん)の麓(ふもと)迄(まで)
009進(すす)み来(きた)れる折(をり)もあれ
010木蔭(こかげ)に休(やす)む両人(りやうにん)に
011不図(ふと)出会(でつくは)してスーラヤの
012山(やま)に夜光(やくわう)の玉(たま)ありと
013聞(き)くより心(こころ)勇(いさ)み立(た)ち
014吾(わが)師(し)の君(きみ)に許(ゆる)されて
015カークス、ベース両人(りやうにん)を
016従(したが)へ間道(かんだう)潜(くぐ)り抜(ぬ)け
017スーラヤ湖辺(こへん)のテルの里(さと)
018ルーブヤ館(やかた)に立(たち)寄(よ)りて
019神(かみ)の仕組(しぐみ)のブラヷーダ
020姫(ひめ)の命(みこと)と赤縄(えにし)をば
021結(むす)び終(をは)りて兄(あに)とます
022アスマガルダの舟(ふね)に乗(の)り
023波(なみ)に漂(ただよ)ひ漸(やうや)くに
024スーラヤ山(さん)に漕(こ)ぎつけて
025一夜(いちや)を明(あ)かす折(をり)もあれ
026得体(えたい)の知(し)れぬ怪物(くわいぶつ)が
027忽(たちま)ちここに現(あら)はれて
028いろはにほへとちりぬるを
029わかよたれそつねならむ
030うゐのおくやまけふこえて
031あさきゆめみしゑひもせす
032京味(きやうみ)の深(ふか)い問答(もんだふ)を
033敗(ま)けず劣(おと)らず開始(かいし)して
034火花(ひばな)を散(ち)らせば怪物(くわいぶつ)は
035煙(けぶり)となりて消(き)え失(う)せぬ
036夜(よ)も漸(やうや)くに明(あ)け放(はな)れ
037一行(いつかう)五(ご)人(にん)はスーラヤの
038危(あやふ)き死線(しせん)を突破(とつぱ)して
039足(あし)を痛(いた)めつ頂上(ちやうじやう)に
040登(のぼ)り終(おう)せてウバナンダ
041ナーガラシャーの潜(ひそ)みたる
042醜(しこ)の岩窟(いはや)に立(たち)向(むか)ひ
043山(やま)の尾(を)の上(へ)に茂(しげ)り生(は)ふ
044藤蔓(ふぢつる)切(き)りて縄梯子(なははしご)
045やつと拵(こしら)へ吊(つ)り下(お)ろし
046五(ご)人(にん)一度(いちど)にスルスルと
047下(くだ)りて見(み)れば思(おも)ひきや
048果(は)てしも知(し)らぬ広(ひろ)い穴(あな)
049際限(さいげん)もなく展開(てんかい)し
050山河(さんか)草木(さうもく)立(たち)並(なら)ぶ
051広(ひろ)き原野(げんや)となりにけり
052あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
053神(かみ)の仕組(しぐみ)の玉糸(たまいと)に
054索(ひ)かれて来(きた)る吾々(われわれ)は
055何処(いづこ)をあてと白雲(しらくも)の
056行(ゆ)ける所(とこ)迄(まで)進(すす)まむと
057ここ迄(まで)来(きた)り息(いき)休(やす)め
058後(あと)振(ふ)り返(かへ)り眺(なが)むれば
059如何(いか)になしけむカークスや
060ベースの二人(ふたり)は落伍(らくご)して
061姿(すがた)も見(み)えずなりにけり
062あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
063御霊(みたま)幸(さち)はひましまして
064一(いち)時(じ)も早(はや)く両人(りやうにん)が
065吾(われ)等(ら)の後(あと)を追(おつ)かけて
066互(たがひ)に無事(ぶじ)を祝(しゆく)し合(あ)ふ
067喜(よろこ)び与(あた)へ玉(たま)へかし
068醜(しこ)の岩窟(いはや)の入口(いりぐち)は
069いとも狭(せま)けく覚(おぼ)ゆれど
070此(この)岩窟(がんくつ)の広々(ひろびろ)と
071展開(てんかい)したる不思議(ふしぎ)さよ
072空(そら)は岩窟(いはや)に包(つつ)まれて
073月日(つきひ)の影(かげ)は見(み)えねども
074何(なん)とはなしに心地(ここち)よし
075あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
076神(かみ)のまにまに進(すす)み行(ゆ)く』
077と云(い)ひつつ両人(りやうにん)の傍(そば)に近寄(ちかよ)つて来(き)た。078カークスは三(さん)人(にん)の姿(すがた)を見(み)るより飛(と)び立(た)つやうに喜(よろこ)んで、
079カークス『あゝ先生(せんせい)で厶(ござ)りましたか。080ブラヷーダさまに、081アスマガルダさま、082どれだけ尋(たづ)ねて居(を)つた事(こと)か知(し)れませぬよ。083どうして居(ゐ)られましたか』
084伊太(いた)『いや有難(ありがた)う。085実(じつ)の所(ところ)はお前(まへ)等(たち)二人(ふたり)の姿(すがた)が見(み)えぬので086又(また)足(あし)を痛(いた)めて遅(おく)れて居(を)るのではあるまいかと、087幾度(いくど)も幾度(いくど)も路傍(ろばう)に佇(たたず)み見合(みあは)せ見合(みあは)せやつて来(き)たものだから、088斯(か)う遅(おく)れて了(しま)つたのだ。089随分(ずいぶん)待(ま)たしただらうな』
090カークス『随分(ずいぶん)待(ま)ちましたよ。091然(しか)しここは妙(めう)な所(ところ)ですな。092只今(たつたいま)濁流(だくりう)漲(みなぎ)る大川(おほかは)が横(よこた)はり、093汚(きたな)い婆(ばば)が現(あら)はれて色々(いろいろ)雑多(ざつた)と嚇(おど)し文句(もんく)を並(なら)べやがるものだから、094ベースと二人(ふたり)一生(いつしやう)懸命(けんめい)に掛合(かけあ)つてゐましたが095其(その)婆(ばば)は岩(いは)と化(ば)けて了(しま)ひ、096川(かは)は薄原(すすきはら)となりました。097一体(いつたい)ここは冥途(めいど)ぢやありますまいかな』
098伊太(いた)『死(し)んだ覚(おぼ)えもないのに、099どうして冥途(めいど)へ来(く)るものか。100ここはスーラヤ山(さん)の岩窟(がんくつ)から此(この)通(とほ)り展開(てんかい)してゐる大(おほ)きな広場(ひろば)だ。101あまり広(ひろ)い穴(あな)だから102此(この)通(とほ)り目(め)の届(とど)かぬ程(ほど)草原(さうげん)が展開(てんかい)してゐるのだ。103何(なん)と不思議(ふしぎ)な事(こと)ぢやないか』
104カークス『いや、105それ聞(き)いて安心(あんしん)しました。106私(わたし)は又(また)ベースと両人(りやうにん)冥途(めいど)の旅(たび)ぢやないかと、107どれだけ気(き)を揉(も)んだか知(し)れませぬよ。108なア、109ベース、110随分(ずいぶん)いやらしかつたな』
111ベース『婆(ばば)の出(で)た時(とき)は本当(ほんたう)に肝(きも)潰(つぶ)しましたよ。112そして婆(ばば)が113貴方(あなた)等(がた)三(さん)人(にん)が此(この)川(かは)を渡(わた)つて向(むか)ふへ行(い)つたと嘘(うそ)ばかり吐(こ)きやがるものだから、114早(はや)く追付(おつつ)かうと思(おも)つて、115どれ丈(だ)け気(き)をもんだか知(し)れませぬわ』
116伊太(いた)『ア、1161さうだつたか、117ここは岩窟内(がんくつない)の事(こと)だから四辺(あたり)の光景(くわうけい)も違(ちが)ふて居(ゐ)るなり、118何(いづ)れ妖怪(えうくわい)も出(で)るだらうよ。119さア之(これ)から奥(おく)に行(ゆ)かう。120屹度(きつと)ウバナンダ竜王(りうわう)が玉(たま)を翳(かざ)して待(ま)つて居(ゐ)るだらう』
121カークス『そんならお伴(とも)を致(いた)しませう。122おいベース、123どうやら此方(こつち)のものらしいぞ。124まア喜(よろこ)んだり喜(よろこ)んだり。125一(ひと)つ宣伝歌(せんでんか)でも謡(うた)つて潔(いさぎよ)う行(ゆ)きませう』
126カークス『不思議(ふしぎ)な事(こと)があるものだ
127スーラヤ山(さん)の岩窟(がんくつ)に
128藤(ふぢ)で造(つく)つた縄梯子(なははしご)
129垂(た)らしてスルスルスルと下(お)り
130見(み)れば四辺(あたり)は思(おも)うたより
131広(ひろ)き山川(さんせん)草木(そうもく)が
132縦横(じうわう)無尽(むじん)に展開(てんかい)し
133岩窟(いはや)の中(なか)とは思(おも)へない
134心(こころ)の迷(まよ)ひか知(し)らねども
135三途(せうづ)の川(かは)の渡(わた)し場(ば)で
136お岩(いは)幽霊(いうれい)の醜婆(しこばば)が
137萱(かや)の中(なか)から現(あら)はれて
138凄(すご)い文句(もんく)を並(なら)べ立(た)て
139二人(ふたり)の肝玉(きもだま)とり挫(ひし)ぎ
140忽(たちま)ち岩(いは)と化(ば)けよつた
141いざ之(これ)よりは伊太彦(いたひこ)の
142司(つかさ)と共(とも)にある限(かぎ)り
143如何(いか)なる曲(まが)の来(きた)るとも
144如何(いか)で恐(おそ)れむ惟神(かむながら)
145神(かみ)の光(ひかり)に照(て)らされて
146曲津(まがつ)の潜(ひそ)む岩窟(いはやど)も
147何(なん)の苦(く)もなく進(すす)み行(ゆ)く
148吾(わが)身(み)の上(うへ)ぞ楽(たの)しけれ
149朝日(あさひ)は照(てら)ず月(つき)はなく
150風(かぜ)さへ碌(ろく)に吹(ふ)かねども
151皇(すめ)大神(おほかみ)の御(おん)為(ため)に
152進(すす)む吾(わが)身(み)は有難(ありがた)や
153八大(はちだい)竜王(りうわう)の其(その)一(ひと)つ
154歓喜(くわんき)竜王(りうわう)と聞(きこ)えたる
155ナーガラシャーの宝(たから)をば
156伊太彦(いたひこ)さまが手(て)に入(い)れて
157珍(うづ)の都(みやこ)のエルサレム
158黄金山(わうごんざん)に献(たてまつ)り
159五六七(みろく)神政(しんせい)の完成(くわんせい)を
160計(はか)らせ玉(たま)ふ神業(しんげふ)の
161その一端(いつたん)に仕(つか)ふるは
162神代(かみよ)も聞(き)かぬ功績(いさをし)ぞ
163あゝ勇(いさ)ましや勇(いさ)ましや
164如何(いか)なる枉(まが)のさやるとも
165神(かみ)に任(まか)せし吾(わが)身魂(みたま)
166何(なに)か恐(おそ)れむ敷島(しきしま)の
167神国(みくに)魂(だましひ)を振(ふ)り起(おこ)し
168地獄(ぢごく)の底(そこ)迄(まで)進(すす)み行(ゆ)く
169あゝ面白(おもしろ)や勇(いさ)ましや
170神(かみ)は吾(われ)等(ら)と共(とも)にあり
171神(かみ)に守(まも)られ進(すす)む身(み)は
172如何(いか)なる嶮(けは)しき山阪(やまさか)も
173濁流(だくりう)漲(みなぎ)る大川(おほかは)も
174いと安々(やすやす)と進(すす)むべし
175来(きた)れよ来(きた)れいざ来(きた)れ
176勝利(しようり)の都(みやこ)は近(ちか)づきぬ
177朝日(あさひ)は照(て)るとも曇(くも)るとも
178月(つき)は盈(み)つとも虧(か)くるとも
179仮令(たとへ)大地(だいち)は沈(しづ)むとも
180吾(わが)身(み)の命(いのち)は亡(ほろ)ぶとも
181此(この)神業(しんげふ)を果(はた)さねば
182決(けつ)して後(あと)には引(ひ)きはせぬ
183守(まも)らせ玉(たま)へ大御神(おほみかみ)
184御霊(みたま)の恩頼(ふゆ)を願(ね)ぎ奉(まつ)る』
185 斯(か)く謡(うた)ひつつ進(すす)んで行(ゆ)くと186禿山(はげやま)の麓(ふもと)に草葺(くさふき)の屋根(やね)が一軒(いつけん)建(た)つてゐる。187そして屋根(やね)は所々(ところどころ)洩(も)り188幾条(いくすぢ)も幾条(いくすぢ)も谷(たに)が出来(でき)て青(あを)い草(くさ)が生(は)え、189下地(したぢ)の竹(たけ)が骨(ほね)を出(だ)して居(ゐ)る。190「ハテ不思議(ふしぎ)な家(いへ)があるものだな」と一同(いちどう)は佇(たたず)んで首(くび)を傾(かたむ)けて考(かんが)へて居(ゐ)る。
191 そこへ一人(ひとり)の婆(ばば)が破(やぶ)れ戸(ど)を、192ガタつかせ乍(なが)らニユツと現(あら)はれ来(きた)り、193アトラスのやうな斑(まんだら)な顔(かほ)をして、
194婆(ばば)『これこれ旅(たび)のお方(かた)、195一寸(ちよつと)寄(よ)つて下(くだ)さい。196渋茶(しぶちや)でも進(しん)ぜ度(た)いから……随分(ずいぶん)お前(まへ)さまも草臥(くたびれ)ただらう。197お前(まへ)の草鞋(わらぢ)には泥埃(どろぼこり)の寄生虫(きせいちう)が湧(わ)いてるやうだ。198さぞ足(あし)が重(おも)たい事(こと)だらう』
199伊太(いた)『ハイ、200有難(ありがた)う。201然(しか)し乍(なが)ら御(ご)親切(しんせつ)を無(む)にするは誠(まこと)に済(す)みませぬが、202少(すこ)し急(せ)く旅(たび)ですから又(また)帰(かへ)りがけにお世話(せわ)に預(あづか)りませう』
203婆(ばば)『これこれ、204お前(まへ)は心得(こころえ)が悪(わる)いぞや。205此(この)婆(ばば)が親切(しんせつ)に茶(ちや)を与(あた)へようと云(い)ふのに、206何(なに)辞退(じたい)をなさるのか。207急(せ)く旅(たび)ぢやと云(い)つても一(いち)日(にち)歩(ある)く訳(わけ)にも行(ゆ)くまい。208此処(ここ)で休(やす)んで行(ゆ)かつしやい。209結構(けつこう)な結構(けつこう)な三五教(あななひけう)の話(はなし)を聞(き)かして上(あ)げませうぞや』
210伊太(いた)『貴女(あなた)は三五教(あななひけう)のお方(かた)ですか。211実(じつ)は私(わたし)も三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)で厶(ござ)います』
212婆(ばば)『お前(まへ)も何(なん)と目(め)の悪(わる)い事(こと)だな。213俺(わし)の相貌(そつぽ)を見(み)ても神司(かむづかさ)であるか、214神司(かむづかさ)でないか分(わか)らなならぬ筈(はず)だ。215実(じつ)の所(ところ)は三五教(あななひけう)の高姫(たかひめ)と云(い)ふ変性(へんじやう)男子(なんし)の系統(ひつぽう)、216日出(ひのでの)神(かみ)の生宮(いきみや)だが、217言依別(ことよりわけ)や東助(とうすけ)の没分暁漢(わからずや)に愛憎(あいそ)をつかし、218又(また)旧(もと)のウラナイ教(けう)を開(ひら)いて此処(ここ)でお道(みち)を説(と)いて居(を)るのだ。219まアまア聞(き)いて行(ゆ)かつしやい。220決(けつ)して悪(わる)いことは云(い)はぬぞや』
221伊太(いた)『あゝ貴女(あなた)が噂(うはさ)に高(たか)き高姫(たかひめ)さまで厶(ござ)いましたか。222いや初(はじ)めてお目(め)にかかります。223さうして又(また)三五教(あななひけう)を捨(す)てウラナイ教(けう)へお這入(はい)りになるとは、224どう云(い)ふお考(かんが)へですか、225如何(いか)に言依別(ことよりわけ)や東助(とうすけ)さまと御(ご)意見(いけん)が合(あ)はぬと云(い)つても神(かみ)様(さま)に二(ふた)つはありますまい。226貴女(あなた)は人間(にんげん)を信用(しんよう)なさるから、227そんな間違(まちがひ)が出来(でき)るのでせう』
228高姫(たかひめ)『まアまア道端(みちばた)に立(た)つて話(はな)しても仕方(しかた)がない。229一厘(いちりん)の仕組(しぐみ)を教(をし)へて上(あ)げますから、230とつととお這入(はい)りなさい。231まア綺麗(きれい)なお姫(ひめ)様(さま)だこと、232三五教(あななひけう)は夫婦(ふうふ)ありては御用(ごよう)が出来(でき)ないと神(かみ)様(さま)が仰有(おつしや)るのだが、233今(いま)は言依別(ことよりわけ)のド灰殻(はひから)や東助(とうすけ)が幹部(かんぶ)を占(し)めて居(を)るものだから、234何(なに)もかも規律(きりつ)が乱(みだ)れて……アタ阿呆(あはう)らしい。235宣伝使(せんでんし)が女房(にようばう)を連(つ)れて……何(なん)の事(こと)ぢやいな。236それだから三五教(あななひけう)は駄目(だめ)だと云(い)ふのだよ』
237伊太(いた)『まア兎(と)も角(かく)一服(いつぷく)さして貰(もら)はう。238なア ブラヷーダさま、239アスマガルダさま』
240ブラヷーダ『はい、241そんならお世話(せわ)になりませうかな』
242高姫(たかひめ)『サアサアお世話(せわ)になりなさい。243何(なん)と云(い)ふても日出(ひのでの)神(かみ)の生宮(いきみや)だから、244三千(さんぜん)世界(せかい)の事(こと)は此(この)生宮(いきみや)に聞(き)かねば分(わか)りはせぬぞや』
245カークス『もし先生(せんせい)、246こんな我(が)の強(つよ)い婆(ば)アさまの所(ところ)へ休(やす)むのは胸(むね)が悪(わる)いぢやありませぬか。247なア、248ベース、249一(ひと)つ先生(せんせい)に歎願(たんぐわん)してここへ這入(はい)るのは止(や)めて貰(もら)はうぢやないか』
250ベース『ウン、251あまり偉(えら)さうに云(い)ふぢやないか。252渋茶(しぶちや)を飲(の)ますと云(い)つて馬(うま)の小便(せうべん)でも飲(の)ますか知(し)れないぞ。253こりやうつかり這入(はい)れまい』
254高姫(たかひめ)『こりや瓢六玉(へうろくだま)、255何(なん)と云(い)ふ事(こと)を云(い)ふのだい。256嫌(いや)なら這入(はい)らいでも宜(よ)いわい。257何(なん)だ、258泥坊(どろばう)の様(やう)な面(つら)して、259側(そば)から何(なに)を横槍(よこやり)を入(い)れるのだ。260さアさア三(さん)人(にん)のお方(かた)、261貴方(あなた)はどうも利口(りこう)さうなお方(かた)だ。262屹度(きつと)身魂(みたま)が宜(よ)いのでせう。263サア遠慮(ゑんりよ)は要(い)らぬ、264早(はや)うお這入(はい)り下(くだ)さい』
265伊太(いた)『さアさア、266カークス、267ベースの両人(りやうにん)さま、268お前(まへ)もそんな理窟(りくつ)云(い)はずに這入(はい)つたらどうだ』
269高姫(たかひめ)『これ伊太彦(いたひこ)さま、270あんな瓢六玉(へうろくだま)は日出(ひのでの)神(かみ)の館(やかた)に入(い)る資格(しかく)はありませぬわい。271又(また)這入(はい)つて貰(もら)ふと家(いへ)が穢(けが)れるから、272山門(さんもん)の仁王(にわう)の様(やう)に門番(もんばん)をさして置(お)けば、273それで結構(けつこう)だ』
274ブラヷーダ『もし伊太彦(いたひこ)さま、275妾(わらは)は斯(か)うして五(ご)人(にん)生死(せいし)を共(とも)にして御用(ごよう)に来(き)たので厶(ござ)いますから、276カークス、277ベースさまが這入(はい)れぬ宅(うち)へはお世話(せわ)になる事(こと)はやめませうか』
278伊太(いた)『ウン、279それもさうだ』
280高姫(たかひめ)『扨(さて)も扨(さて)も分(わか)らぬ姫(ひめ)様(さま)だな。281お前(まへ)は身魂(みたま)の善悪(ぜんあく)正邪(せいじや)を知(し)らないから、282そんな小理窟(こりくつ)を云(い)ふのだよ。283此(この)高姫(たかひめ)の眼(め)で一寸(ちよつと)睨(にら)んだら金輪(こんりん)奈落(ならく)、284違(ちが)ひはせぬぞや。285オツホヽヽヽ286何分(なにぶん)立派(りつぱ)な男(をとこ)の中(なか)に混(まじ)つて宣伝(せんでん)に歩(ある)くと云(い)ふやうな新(あたら)しい女(をんな)の事(こと)だから、287どうで此(この)婆(ばば)の言(い)ふ事(こと)は気(き)に合(あ)ひますまい。288然(しか)し、289そこは一(ひと)つ胸(むね)に手(て)を当(あ)てて考(かんが)へたが宜(よろ)しからうぞや』
290ブラヷーダ『お言葉(ことば)で厶(ござ)いますが、291妾(わらは)はカークス、292ベースさまに同情(どうじやう)して一緒(いつしよ)に立番(たちばん)を致(いた)しませう。293伊太彦(いたひこ)様(さま)、294お兄様(あにさま)、295どうぞ中(なか)に入(はい)つて高姫(たかひめ)さまのお話(はなし)を聞(き)いて下(くだ)さい』
296伊太(いた)『いやお前(まへ)が外(そと)へ居(を)るのに私(わし)が中(なか)に入(はい)る事(こと)は出来(でき)ない。297そんなら私(わし)も断(ことわ)らうかな』
298アスマガルダ『そんなら私(わし)も断(ことわ)らう。299高姫(たかひめ)さまとやら、300大(おほ)きに有難(ありがた)う、301又(また)御縁(ごえん)があつたらお目(め)にかかりませう』
302高姫(たかひめ)『オホヽヽヽ流石(さすが)の伊太彦(いたひこ)宣伝使(せんでんし)も女(をんな)に掛(か)けたら弱(よわ)いものだな。303涎(よだれ)をくつたり眥(めじり)を下(さ)げたり……そんな事(こと)でお道(みち)が、304どうして開(ひら)けますか』
305伊太(いた)『高姫(たかひめ)さま、306そんなら貴女(あなた)もドツと譲歩(じやうほ)して307五(ご)人(にん)ともお世話(せわ)になる訳(わけ)には行(ゆ)きませぬか』
308高姫(たかひめ)『エー、309仕方(しかた)が無(な)い。310そんならお前(まへ)さまに免(めん)じて入(い)れて上(あ)げませう。311決(けつ)して座敷(ざしき)なぞへ上(あが)つてはなりませぬぞ。312庭(には)の隅(すみ)になつと蹲踞(ちやうつくば)つて居(ゐ)なさいや』
313カークス『それ程(ほど)むつかしいお屋敷(やしき)へは這入(はい)りませぬわい。314なア、315ベース、316馬鹿(ばか)にしてるわ』
317ベース『ウン、318さうだ。319絶対(ぜつたい)俺(おれ)も這入(はい)らぬ積(つも)りだ。320それより高姫(たかひめ)に外(そと)に出(で)て貰(もら)つて、321茶(ちや)はどうでもいいから結構(けつこう)なお話(はなし)を聞(き)かして貰(もら)はうかい』
322高姫(たかひめ)『オホヽヽヽ、323それはよい思案(しあん)だ。324さうすれば俺(わし)の宅(うち)も穢(けが)さんで都合(つがふ)が好(よ)い。325俺(わし)は此処(ここ)で坐(すわ)つてお話(はなし)するから326五(ご)人(にん)は外(そと)に蹲踞(ちやうつくば)つて聞(き)きなさい。327それが身魂(みたま)相応(さうおう)だらう。328どれ 329平易(やす)い処(ところ)から話(はな)して上(あ)げようから、330よく耳(みみ)をすまして聞(き)きなさいや』
331伊太(いた)『アツハヽヽヽ』
332アスマガルダ『ウツフヽヽヽ』
333ブラヷーダ『オツホヽヽヽ』
334カークス『エツヘヽヽヽ』
335ベース『イツヒヽヽヽ』
336(大正一二・五・二四 旧四・九 北村隆光録)
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