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霊界物語
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
第63巻(寅の巻)
序歌
総説
第1篇 妙法山月
第1章 玉の露
第2章 妙法山
第3章 伊猛彦
第4章 山上訓
第5章 宿縁
第6章 テルの里
第2篇 日天子山
第7章 湖上の影
第8章 怪物
第9章 超死線
第3篇 幽迷怪道
第10章 鷺と鴉
第11章 怪道
第12章 五託宣
第13章 蚊燻
第14章 嬉し涙
第4篇 四鳥の別
第15章 波の上
第16章 諒解
第17章 峠の涙
第18章 夜の旅
第5篇 神検霊査
第19章 仕込杖
第20章 道の苦
第21章 神判
第22章 蚯蚓の声
余白歌
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霊界物語
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山河草木(第61~72巻、入蒙記)
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第63巻(寅の巻)
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<<< 怪道
(B)
(N)
蚊燻 >>>
第一二章
五託宣
(
ごたくせん
)
〔一六一九〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第63巻 山河草木 寅の巻
篇:
第3篇 幽迷怪道
よみ(新仮名遣い):
ゆうめいかいどう
章:
第12章 五託宣
よみ(新仮名遣い):
ごたくせん
通し章番号:
1619
口述日:
1923(大正12)年05月24日(旧04月9日)
口述場所:
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1926(大正15)年2月3日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
カークスとベースは不審の念を抱いて、近づいてくる宣伝歌に耳をすませた。歌の主は伊太彦であった。
伊太彦はアスマガルダ、ブラヷーダを連れて、竜王の岩窟の向こうにこれほど広い原野があることを不思議に思いながら歌を歌いながらやってきた。
カークスとベースは伊太彦に出会えたことを喜び、先ほどの怪しい婆の話をした。伊太彦は岩窟だから妖怪が出たのだろうと答え、ウバナンダ竜王に会うために先に進もうと一同を促した。
一同が進んでいくと、はげ山の麓に草ぶき屋根の小屋が一軒建っていた。小屋から出てきたのは高姫であった。高姫は一行を呼び止め、けっこうなウラナイ教の話を聞かせてやろうと引き留めた。
しかしカークスとベースは、高姫の居丈高な物言いに不快の念をあらわにし、無視して先に進もうと伊太彦にもちかけた。高姫は怒り、二人は身魂が悪いから自分の館に入ることはならないと言い渡した。
高姫は伊太彦、アスマガルダ、ブラヷーダの三人を引き入れようとするが、ブラヷーダはここまで生死を共にしてきたのだから、カークスとベースが入れない家にやっかいになるのは止めようと言い出した。
伊太彦とアスマガルダも同調したので、高姫は仕方なく五人とも招き入れようとするが、その物言いがまた居丈高なので、カークスとベースは家に入るのを拒否した。
高姫は門口でウラナイ教の説法をすることにした。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2017-06-06 18:17:50
OBC :
rm6312
愛善世界社版:
164頁
八幡書店版:
第11輯 321頁
修補版:
校定版:
168頁
普及版:
64頁
初版:
ページ備考:
001
カークス、
002
ベース
両人
(
りやうにん
)
は
不審
(
ふしん
)
の
胸
(
むね
)
を
抱
(
いだ
)
き
乍
(
なが
)
ら、
003
路傍
(
ろばう
)
に
直立
(
ちよくりつ
)
せる
立岩
(
たちいは
)
の
側
(
そば
)
に
佇
(
たたず
)
んで、
004
宣伝歌
(
せんでんか
)
の
声
(
こゑ
)
の
近寄
(
ちかよ
)
るのを
耳
(
みみ
)
をすませて
聞
(
き
)
いて
居
(
ゐ
)
る。
005
伊太彦
(
いたひこ
)
『
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
006
吾
(
われ
)
は
伊太彦
(
いたひこ
)
司
(
つかさ
)
なり
007
玉国別
(
たまくにわけ
)
に
従
(
したが
)
ひて
008
スダルマ
山
(
さん
)
の
麓
(
ふもと
)
迄
(
まで
)
009
進
(
すす
)
み
来
(
きた
)
れる
折
(
をり
)
もあれ
010
木蔭
(
こかげ
)
に
休
(
やす
)
む
両人
(
りやうにん
)
に
011
不図
(
ふと
)
出会
(
でつくは
)
してスーラヤの
012
山
(
やま
)
に
夜光
(
やくわう
)
の
玉
(
たま
)
ありと
013
聞
(
き
)
くより
心
(
こころ
)
勇
(
いさ
)
み
立
(
た
)
ち
014
吾
(
わが
)
師
(
し
)
の
君
(
きみ
)
に
許
(
ゆる
)
されて
015
カークス、ベース
両人
(
りやうにん
)
を
016
従
(
したが
)
へ
間道
(
かんだう
)
潜
(
くぐ
)
り
抜
(
ぬ
)
け
017
スーラヤ
湖辺
(
こへん
)
のテルの
里
(
さと
)
018
ルーブヤ
館
(
やかた
)
に
立
(
たち
)
寄
(
よ
)
りて
019
神
(
かみ
)
の
仕組
(
しぐみ
)
のブラヷーダ
020
姫
(
ひめ
)
の
命
(
みこと
)
と
赤縄
(
えにし
)
をば
021
結
(
むす
)
び
終
(
をは
)
りて
兄
(
あに
)
とます
022
アスマガルダの
舟
(
ふね
)
に
乗
(
の
)
り
023
波
(
なみ
)
に
漂
(
ただよ
)
ひ
漸
(
やうや
)
くに
024
スーラヤ
山
(
さん
)
に
漕
(
こ
)
ぎつけて
025
一夜
(
いちや
)
を
明
(
あ
)
かす
折
(
をり
)
もあれ
026
得体
(
えたい
)
の
知
(
し
)
れぬ
怪物
(
くわいぶつ
)
が
027
忽
(
たちま
)
ちここに
現
(
あら
)
はれて
028
いろはにほへとちりぬるを
029
わかよたれそつねならむ
030
うゐのおくやまけふこえて
031
あさきゆめみしゑひもせす
032
京味
(
きやうみ
)
の
深
(
ふか
)
い
問答
(
もんだふ
)
を
033
敗
(
ま
)
けず
劣
(
おと
)
らず
開始
(
かいし
)
して
034
火花
(
ひばな
)
を
散
(
ち
)
らせば
怪物
(
くわいぶつ
)
は
035
煙
(
けぶり
)
となりて
消
(
き
)
え
失
(
う
)
せぬ
036
夜
(
よ
)
も
漸
(
やうや
)
くに
明
(
あ
)
け
放
(
はな
)
れ
037
一行
(
いつかう
)
五
(
ご
)
人
(
にん
)
はスーラヤの
038
危
(
あやふ
)
き
死線
(
しせん
)
を
突破
(
とつぱ
)
して
039
足
(
あし
)
を
痛
(
いた
)
めつ
頂上
(
ちやうじやう
)
に
040
登
(
のぼ
)
り
終
(
おう
)
せてウバナンダ
041
ナーガラシャーの
潜
(
ひそ
)
みたる
042
醜
(
しこ
)
の
岩窟
(
いはや
)
に
立
(
たち
)
向
(
むか
)
ひ
043
山
(
やま
)
の
尾
(
を
)
の
上
(
へ
)
に
茂
(
しげ
)
り
生
(
は
)
ふ
044
藤蔓
(
ふぢつる
)
切
(
き
)
りて
縄梯子
(
なははしご
)
045
やつと
拵
(
こしら
)
へ
吊
(
つ
)
り
下
(
お
)
ろし
046
五
(
ご
)
人
(
にん
)
一度
(
いちど
)
にスルスルと
047
下
(
くだ
)
りて
見
(
み
)
れば
思
(
おも
)
ひきや
048
果
(
は
)
てしも
知
(
し
)
らぬ
広
(
ひろ
)
い
穴
(
あな
)
049
際限
(
さいげん
)
もなく
展開
(
てんかい
)
し
050
山河
(
さんか
)
草木
(
さうもく
)
立
(
たち
)
並
(
なら
)
ぶ
051
広
(
ひろ
)
き
原野
(
げんや
)
となりにけり
052
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
053
神
(
かみ
)
の
仕組
(
しぐみ
)
の
玉糸
(
たまいと
)
に
054
索
(
ひ
)
かれて
来
(
きた
)
る
吾々
(
われわれ
)
は
055
何処
(
いづこ
)
をあてと
白雲
(
しらくも
)
の
056
行
(
ゆ
)
ける
所
(
とこ
)
迄
(
まで
)
進
(
すす
)
まむと
057
ここ
迄
(
まで
)
来
(
きた
)
り
息
(
いき
)
休
(
やす
)
め
058
後
(
あと
)
振
(
ふ
)
り
返
(
かへ
)
り
眺
(
なが
)
むれば
059
如何
(
いか
)
になしけむカークスや
060
ベースの
二人
(
ふたり
)
は
落伍
(
らくご
)
して
061
姿
(
すがた
)
も
見
(
み
)
えずなりにけり
062
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
063
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はひましまして
064
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
両人
(
りやうにん
)
が
065
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
の
後
(
あと
)
を
追
(
おつ
)
かけて
066
互
(
たがひ
)
に
無事
(
ぶじ
)
を
祝
(
しゆく
)
し
合
(
あ
)
ふ
067
喜
(
よろこ
)
び
与
(
あた
)
へ
玉
(
たま
)
へかし
068
醜
(
しこ
)
の
岩窟
(
いはや
)
の
入口
(
いりぐち
)
は
069
いとも
狭
(
せま
)
けく
覚
(
おぼ
)
ゆれど
070
此
(
この
)
岩窟
(
がんくつ
)
の
広々
(
ひろびろ
)
と
071
展開
(
てんかい
)
したる
不思議
(
ふしぎ
)
さよ
072
空
(
そら
)
は
岩窟
(
いはや
)
に
包
(
つつ
)
まれて
073
月日
(
つきひ
)
の
影
(
かげ
)
は
見
(
み
)
えねども
074
何
(
なん
)
とはなしに
心地
(
ここち
)
よし
075
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
076
神
(
かみ
)
のまにまに
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く』
077
と
云
(
い
)
ひつつ
両人
(
りやうにん
)
の
傍
(
そば
)
に
近寄
(
ちかよ
)
つて
来
(
き
)
た。
078
カークスは
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
るより
飛
(
と
)
び
立
(
た
)
つやうに
喜
(
よろこ
)
んで、
079
カークス『あゝ
先生
(
せんせい
)
で
厶
(
ござ
)
りましたか。
080
ブラヷーダさまに、
081
アスマガルダさま、
082
どれだけ
尋
(
たづ
)
ねて
居
(
を
)
つた
事
(
こと
)
か
知
(
し
)
れませぬよ。
083
どうして
居
(
ゐ
)
られましたか』
084
伊太
(
いた
)
『いや
有難
(
ありがた
)
う。
085
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
はお
前
(
まへ
)
等
(
たち
)
二人
(
ふたり
)
の
姿
(
すがた
)
が
見
(
み
)
えぬので
086
又
(
また
)
足
(
あし
)
を
痛
(
いた
)
めて
遅
(
おく
)
れて
居
(
を
)
るのではあるまいかと、
087
幾度
(
いくど
)
も
幾度
(
いくど
)
も
路傍
(
ろばう
)
に
佇
(
たたず
)
み
見合
(
みあは
)
せ
見合
(
みあは
)
せやつて
来
(
き
)
たものだから、
088
斯
(
か
)
う
遅
(
おく
)
れて
了
(
しま
)
つたのだ。
089
随分
(
ずいぶん
)
待
(
ま
)
たしただらうな』
090
カークス『
随分
(
ずいぶん
)
待
(
ま
)
ちましたよ。
091
然
(
しか
)
しここは
妙
(
めう
)
な
所
(
ところ
)
ですな。
092
只今
(
たつたいま
)
濁流
(
だくりう
)
漲
(
みなぎ
)
る
大川
(
おほかは
)
が
横
(
よこた
)
はり、
093
汚
(
きたな
)
い
婆
(
ばば
)
が
現
(
あら
)
はれて
色々
(
いろいろ
)
雑多
(
ざつた
)
と
嚇
(
おど
)
し
文句
(
もんく
)
を
並
(
なら
)
べやがるものだから、
094
ベースと
二人
(
ふたり
)
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
掛合
(
かけあ
)
つてゐましたが
095
其
(
その
)
婆
(
ばば
)
は
岩
(
いは
)
と
化
(
ば
)
けて
了
(
しま
)
ひ、
096
川
(
かは
)
は
薄原
(
すすきはら
)
となりました。
097
一体
(
いつたい
)
ここは
冥途
(
めいど
)
ぢやありますまいかな』
098
伊太
(
いた
)
『
死
(
し
)
んだ
覚
(
おぼ
)
えもないのに、
099
どうして
冥途
(
めいど
)
へ
来
(
く
)
るものか。
100
ここはスーラヤ
山
(
さん
)
の
岩窟
(
がんくつ
)
から
此
(
この
)
通
(
とほ
)
り
展開
(
てんかい
)
してゐる
大
(
おほ
)
きな
広場
(
ひろば
)
だ。
101
あまり
広
(
ひろ
)
い
穴
(
あな
)
だから
102
此
(
この
)
通
(
とほ
)
り
目
(
め
)
の
届
(
とど
)
かぬ
程
(
ほど
)
草原
(
さうげん
)
が
展開
(
てんかい
)
してゐるのだ。
103
何
(
なん
)
と
不思議
(
ふしぎ
)
な
事
(
こと
)
ぢやないか』
104
カークス『いや、
105
それ
聞
(
き
)
いて
安心
(
あんしん
)
しました。
106
私
(
わたし
)
は
又
(
また
)
ベースと
両人
(
りやうにん
)
冥途
(
めいど
)
の
旅
(
たび
)
ぢやないかと、
107
どれだけ
気
(
き
)
を
揉
(
も
)
んだか
知
(
し
)
れませぬよ。
108
なア、
109
ベース、
110
随分
(
ずいぶん
)
いやらしかつたな』
111
ベース『
婆
(
ばば
)
の
出
(
で
)
た
時
(
とき
)
は
本当
(
ほんたう
)
に
肝
(
きも
)
潰
(
つぶ
)
しましたよ。
112
そして
婆
(
ばば
)
が
113
貴方
(
あなた
)
等
(
がた
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
が
此
(
この
)
川
(
かは
)
を
渡
(
わた
)
つて
向
(
むか
)
ふへ
行
(
い
)
つたと
嘘
(
うそ
)
ばかり
吐
(
こ
)
きやがるものだから、
114
早
(
はや
)
く
追付
(
おつつ
)
かうと
思
(
おも
)
つて、
115
どれ
丈
(
だ
)
け
気
(
き
)
をもんだか
知
(
し
)
れませぬわ』
116
伊太
(
いた
)
『ア、
1161
さうだつたか、
117
ここは
岩窟内
(
がんくつない
)
の
事
(
こと
)
だから
四辺
(
あたり
)
の
光景
(
くわうけい
)
も
違
(
ちが
)
ふて
居
(
ゐ
)
るなり、
118
何
(
いづ
)
れ
妖怪
(
えうくわい
)
も
出
(
で
)
るだらうよ。
119
さア
之
(
これ
)
から
奥
(
おく
)
に
行
(
ゆ
)
かう。
120
屹度
(
きつと
)
ウバナンダ
竜王
(
りうわう
)
が
玉
(
たま
)
を
翳
(
かざ
)
して
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
るだらう』
121
カークス『そんならお
伴
(
とも
)
を
致
(
いた
)
しませう。
122
おいベース、
123
どうやら
此方
(
こつち
)
のものらしいぞ。
124
まア
喜
(
よろこ
)
んだり
喜
(
よろこ
)
んだり。
125
一
(
ひと
)
つ
宣伝歌
(
せんでんか
)
でも
謡
(
うた
)
つて
潔
(
いさぎよ
)
う
行
(
ゆ
)
きませう』
126
カークス『
不思議
(
ふしぎ
)
な
事
(
こと
)
があるものだ
127
スーラヤ
山
(
さん
)
の
岩窟
(
がんくつ
)
に
128
藤
(
ふぢ
)
で
造
(
つく
)
つた
縄梯子
(
なははしご
)
129
垂
(
た
)
らしてスルスルスルと
下
(
お
)
り
130
見
(
み
)
れば
四辺
(
あたり
)
は
思
(
おも
)
うたより
131
広
(
ひろ
)
き
山川
(
さんせん
)
草木
(
そうもく
)
が
132
縦横
(
じうわう
)
無尽
(
むじん
)
に
展開
(
てんかい
)
し
133
岩窟
(
いはや
)
の
中
(
なか
)
とは
思
(
おも
)
へない
134
心
(
こころ
)
の
迷
(
まよ
)
ひか
知
(
し
)
らねども
135
三途
(
せうづ
)
の
川
(
かは
)
の
渡
(
わた
)
し
場
(
ば
)
で
136
お
岩
(
いは
)
幽霊
(
いうれい
)
の
醜婆
(
しこばば
)
が
137
萱
(
かや
)
の
中
(
なか
)
から
現
(
あら
)
はれて
138
凄
(
すご
)
い
文句
(
もんく
)
を
並
(
なら
)
べ
立
(
た
)
て
139
二人
(
ふたり
)
の
肝玉
(
きもだま
)
とり
挫
(
ひし
)
ぎ
140
忽
(
たちま
)
ち
岩
(
いは
)
と
化
(
ば
)
けよつた
141
いざ
之
(
これ
)
よりは
伊太彦
(
いたひこ
)
の
142
司
(
つかさ
)
と
共
(
とも
)
にある
限
(
かぎ
)
り
143
如何
(
いか
)
なる
曲
(
まが
)
の
来
(
きた
)
るとも
144
如何
(
いか
)
で
恐
(
おそ
)
れむ
惟神
(
かむながら
)
145
神
(
かみ
)
の
光
(
ひかり
)
に
照
(
て
)
らされて
146
曲津
(
まがつ
)
の
潜
(
ひそ
)
む
岩窟
(
いはやど
)
も
147
何
(
なん
)
の
苦
(
く
)
もなく
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く
148
吾
(
わが
)
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
ぞ
楽
(
たの
)
しけれ
149
朝日
(
あさひ
)
は
照
(
てら
)
ず
月
(
つき
)
はなく
150
風
(
かぜ
)
さへ
碌
(
ろく
)
に
吹
(
ふ
)
かねども
151
皇
(
すめ
)
大神
(
おほかみ
)
の
御
(
おん
)
為
(
ため
)
に
152
進
(
すす
)
む
吾
(
わが
)
身
(
み
)
は
有難
(
ありがた
)
や
153
八大
(
はちだい
)
竜王
(
りうわう
)
の
其
(
その
)
一
(
ひと
)
つ
154
歓喜
(
くわんき
)
竜王
(
りうわう
)
と
聞
(
きこ
)
えたる
155
ナーガラシャーの
宝
(
たから
)
をば
156
伊太彦
(
いたひこ
)
さまが
手
(
て
)
に
入
(
い
)
れて
157
珍
(
うづ
)
の
都
(
みやこ
)
のエルサレム
158
黄金山
(
わうごんざん
)
に
献
(
たてまつ
)
り
159
五六七
(
みろく
)
神政
(
しんせい
)
の
完成
(
くわんせい
)
を
160
計
(
はか
)
らせ
玉
(
たま
)
ふ
神業
(
しんげふ
)
の
161
その
一端
(
いつたん
)
に
仕
(
つか
)
ふるは
162
神代
(
かみよ
)
も
聞
(
き
)
かぬ
功績
(
いさをし
)
ぞ
163
あゝ
勇
(
いさ
)
ましや
勇
(
いさ
)
ましや
164
如何
(
いか
)
なる
枉
(
まが
)
のさやるとも
165
神
(
かみ
)
に
任
(
まか
)
せし
吾
(
わが
)
身魂
(
みたま
)
166
何
(
なに
)
か
恐
(
おそ
)
れむ
敷島
(
しきしま
)
の
167
神国魂
(
みくにだましひ
)
を
振
(
ふ
)
り
起
(
おこ
)
し
168
地獄
(
ぢごく
)
の
底
(
そこ
)
迄
(
まで
)
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く
169
あゝ
面白
(
おもしろ
)
や
勇
(
いさ
)
ましや
170
神
(
かみ
)
は
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
と
共
(
とも
)
にあり
171
神
(
かみ
)
に
守
(
まも
)
られ
進
(
すす
)
む
身
(
み
)
は
172
如何
(
いか
)
なる
嶮
(
けは
)
しき
山阪
(
やまさか
)
も
173
濁流
(
だくりう
)
漲
(
みなぎ
)
る
大川
(
おほかは
)
も
174
いと
安々
(
やすやす
)
と
進
(
すす
)
むべし
175
来
(
きた
)
れよ
来
(
きた
)
れいざ
来
(
きた
)
れ
176
勝利
(
しようり
)
の
都
(
みやこ
)
は
近
(
ちか
)
づきぬ
177
朝日
(
あさひ
)
は
照
(
て
)
るとも
曇
(
くも
)
るとも
178
月
(
つき
)
は
盈
(
み
)
つとも
虧
(
か
)
くるとも
179
仮令
(
たとへ
)
大地
(
だいち
)
は
沈
(
しづ
)
むとも
180
吾
(
わが
)
身
(
み
)
の
命
(
いのち
)
は
亡
(
ほろ
)
ぶとも
181
此
(
この
)
神業
(
しんげふ
)
を
果
(
はた
)
さねば
182
決
(
けつ
)
して
後
(
あと
)
には
引
(
ひ
)
きはせぬ
183
守
(
まも
)
らせ
玉
(
たま
)
へ
大御神
(
おほみかみ
)
184
御霊
(
みたま
)
の
恩頼
(
ふゆ
)
を
願
(
ね
)
ぎ
奉
(
まつ
)
る』
185
斯
(
か
)
く
謡
(
うた
)
ひつつ
進
(
すす
)
んで
行
(
ゆ
)
くと
186
禿山
(
はげやま
)
の
麓
(
ふもと
)
に
草葺
(
くさふき
)
の
屋根
(
やね
)
が
一軒
(
いつけん
)
建
(
た
)
つてゐる。
187
そして
屋根
(
やね
)
は
所々
(
ところどころ
)
洩
(
も
)
り
188
幾条
(
いくすぢ
)
も
幾条
(
いくすぢ
)
も
谷
(
たに
)
が
出来
(
でき
)
て
青
(
あを
)
い
草
(
くさ
)
が
生
(
は
)
え、
189
下地
(
したぢ
)
の
竹
(
たけ
)
が
骨
(
ほね
)
を
出
(
だ
)
して
居
(
ゐ
)
る。
190
「ハテ
不思議
(
ふしぎ
)
な
家
(
いへ
)
があるものだな」と
一同
(
いちどう
)
は
佇
(
たたず
)
んで
首
(
くび
)
を
傾
(
かたむ
)
けて
考
(
かんが
)
へて
居
(
ゐ
)
る。
191
そこへ
一人
(
ひとり
)
の
婆
(
ばば
)
が
破
(
やぶ
)
れ
戸
(
ど
)
を、
192
ガタつかせ
乍
(
なが
)
らニユツと
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
り、
193
アトラスのやうな
斑
(
まんだら
)
な
顔
(
かほ
)
をして、
194
婆
(
ばば
)
『これこれ
旅
(
たび
)
のお
方
(
かた
)
、
195
一寸
(
ちよつと
)
寄
(
よ
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
196
渋茶
(
しぶちや
)
でも
進
(
しん
)
ぜ
度
(
た
)
いから……
随分
(
ずいぶん
)
お
前
(
まへ
)
さまも
草臥
(
くたびれ
)
ただらう。
197
お
前
(
まへ
)
の
草鞋
(
わらぢ
)
には
泥埃
(
どろぼこり
)
の
寄生虫
(
きせいちう
)
が
湧
(
わ
)
いてるやうだ。
198
さぞ
足
(
あし
)
が
重
(
おも
)
たい
事
(
こと
)
だらう』
199
伊太
(
いた
)
『ハイ、
200
有難
(
ありがた
)
う。
201
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
御
(
ご
)
親切
(
しんせつ
)
を
無
(
む
)
にするは
誠
(
まこと
)
に
済
(
す
)
みませぬが、
202
少
(
すこ
)
し
急
(
せ
)
く
旅
(
たび
)
ですから
又
(
また
)
帰
(
かへ
)
りがけにお
世話
(
せわ
)
に
預
(
あづか
)
りませう』
203
婆
(
ばば
)
『これこれ、
204
お
前
(
まへ
)
は
心得
(
こころえ
)
が
悪
(
わる
)
いぞや。
205
此
(
この
)
婆
(
ばば
)
が
親切
(
しんせつ
)
に
茶
(
ちや
)
を
与
(
あた
)
へようと
云
(
い
)
ふのに、
206
何
(
なに
)
辞退
(
じたい
)
をなさるのか。
207
急
(
せ
)
く
旅
(
たび
)
ぢやと
云
(
い
)
つても
一
(
いち
)
日
(
にち
)
歩
(
ある
)
く
訳
(
わけ
)
にも
行
(
ゆ
)
くまい。
208
此処
(
ここ
)
で
休
(
やす
)
んで
行
(
ゆ
)
かつしやい。
209
結構
(
けつこう
)
な
結構
(
けつこう
)
な
三五教
(
あななひけう
)
の
話
(
はなし
)
を
聞
(
き
)
かして
上
(
あ
)
げませうぞや』
210
伊太
(
いた
)
『
貴女
(
あなた
)
は
三五教
(
あななひけう
)
のお
方
(
かた
)
ですか。
211
実
(
じつ
)
は
私
(
わたし
)
も
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
で
厶
(
ござ
)
います』
212
婆
(
ばば
)
『お
前
(
まへ
)
も
何
(
なん
)
と
目
(
め
)
の
悪
(
わる
)
い
事
(
こと
)
だな。
213
俺
(
わし
)
の
相貌
(
そつぽ
)
を
見
(
み
)
ても
神司
(
かむづかさ
)
であるか、
214
神司
(
かむづかさ
)
でないか
分
(
わか
)
らなならぬ
筈
(
はず
)
だ。
215
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
高姫
(
たかひめ
)
と
云
(
い
)
ふ
変性
(
へんじやう
)
男子
(
なんし
)
の
系統
(
ひつぽう
)
、
216
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
だが、
217
言依別
(
ことよりわけ
)
や
東助
(
とうすけ
)
の
没分暁漢
(
わからずや
)
に
愛憎
(
あいそ
)
をつかし、
218
又
(
また
)
旧
(
もと
)
のウラナイ
教
(
けう
)
を
開
(
ひら
)
いて
此処
(
ここ
)
でお
道
(
みち
)
を
説
(
と
)
いて
居
(
を
)
るのだ。
219
まアまア
聞
(
き
)
いて
行
(
ゆ
)
かつしやい。
220
決
(
けつ
)
して
悪
(
わる
)
いことは
云
(
い
)
はぬぞや』
221
伊太
(
いた
)
『あゝ
貴女
(
あなた
)
が
噂
(
うはさ
)
に
高
(
たか
)
き
高姫
(
たかひめ
)
さまで
厶
(
ござ
)
いましたか。
222
いや
初
(
はじ
)
めてお
目
(
め
)
にかかります。
223
さうして
又
(
また
)
三五教
(
あななひけう
)
を
捨
(
す
)
てウラナイ
教
(
けう
)
へお
這入
(
はい
)
りになるとは、
224
どう
云
(
い
)
ふお
考
(
かんが
)
へですか、
225
如何
(
いか
)
に
言依別
(
ことよりわけ
)
や
東助
(
とうすけ
)
さまと
御
(
ご
)
意見
(
いけん
)
が
合
(
あ
)
はぬと
云
(
い
)
つても
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
二
(
ふた
)
つはありますまい。
226
貴女
(
あなた
)
は
人間
(
にんげん
)
を
信用
(
しんよう
)
なさるから、
227
そんな
間違
(
まちがひ
)
が
出来
(
でき
)
るのでせう』
228
高姫
(
たかひめ
)
『まアまア
道端
(
みちばた
)
に
立
(
た
)
つて
話
(
はな
)
しても
仕方
(
しかた
)
がない。
229
一厘
(
いちりん
)
の
仕組
(
しぐみ
)
を
教
(
をし
)
へて
上
(
あ
)
げますから、
230
とつととお
這入
(
はい
)
りなさい。
231
まア
綺麗
(
きれい
)
なお
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
だこと、
232
三五教
(
あななひけう
)
は
夫婦
(
ふうふ
)
ありては
御用
(
ごよう
)
が
出来
(
でき
)
ないと
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
が
仰有
(
おつしや
)
るのだが、
233
今
(
いま
)
は
言依別
(
ことよりわけ
)
のド
灰殻
(
はひから
)
や
東助
(
とうすけ
)
が
幹部
(
かんぶ
)
を
占
(
し
)
めて
居
(
を
)
るものだから、
234
何
(
なに
)
もかも
規律
(
きりつ
)
が
乱
(
みだ
)
れて……アタ
阿呆
(
あはう
)
らしい。
235
宣伝使
(
せんでんし
)
が
女房
(
にようばう
)
を
連
(
つ
)
れて……
何
(
なん
)
の
事
(
こと
)
ぢやいな。
236
それだから
三五教
(
あななひけう
)
は
駄目
(
だめ
)
だと
云
(
い
)
ふのだよ』
237
伊太
(
いた
)
『まア
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
一服
(
いつぷく
)
さして
貰
(
もら
)
はう。
238
なア ブラヷーダさま、
239
アスマガルダさま』
240
ブラヷーダ『はい、
241
そんならお
世話
(
せわ
)
になりませうかな』
242
高姫
(
たかひめ
)
『サアサアお
世話
(
せわ
)
になりなさい。
243
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふても
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
だから、
244
三千
(
さんぜん
)
世界
(
せかい
)
の
事
(
こと
)
は
此
(
この
)
生宮
(
いきみや
)
に
聞
(
き
)
かねば
分
(
わか
)
りはせぬぞや』
245
カークス『もし
先生
(
せんせい
)
、
246
こんな
我
(
が
)
の
強
(
つよ
)
い
婆
(
ば
)
アさまの
所
(
ところ
)
へ
休
(
やす
)
むのは
胸
(
むね
)
が
悪
(
わる
)
いぢやありませぬか。
247
なア、
248
ベース、
249
一
(
ひと
)
つ
先生
(
せんせい
)
に
歎願
(
たんぐわん
)
してここへ
這入
(
はい
)
るのは
止
(
や
)
めて
貰
(
もら
)
はうぢやないか』
250
ベース『ウン、
251
あまり
偉
(
えら
)
さうに
云
(
い
)
ふぢやないか。
252
渋茶
(
しぶちや
)
を
飲
(
の
)
ますと
云
(
い
)
つて
馬
(
うま
)
の
小便
(
せうべん
)
でも
飲
(
の
)
ますか
知
(
し
)
れないぞ。
253
こりやうつかり
這入
(
はい
)
れまい』
254
高姫
(
たかひめ
)
『こりや
瓢六玉
(
へうろくだま
)
、
255
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
ふのだい。
256
嫌
(
いや
)
なら
這入
(
はい
)
らいでも
宜
(
よ
)
いわい。
257
何
(
なん
)
だ、
258
泥坊
(
どろばう
)
の
様
(
やう
)
な
面
(
つら
)
して、
259
側
(
そば
)
から
何
(
なに
)
を
横槍
(
よこやり
)
を
入
(
い
)
れるのだ。
260
さアさア
三
(
さん
)
人
(
にん
)
のお
方
(
かた
)
、
261
貴方
(
あなた
)
はどうも
利口
(
りこう
)
さうなお
方
(
かた
)
だ。
262
屹度
(
きつと
)
身魂
(
みたま
)
が
宜
(
よ
)
いのでせう。
263
サア
遠慮
(
ゑんりよ
)
は
要
(
い
)
らぬ、
264
早
(
はや
)
うお
這入
(
はい
)
り
下
(
くだ
)
さい』
265
伊太
(
いた
)
『さアさア、
266
カークス、
267
ベースの
両人
(
りやうにん
)
さま、
268
お
前
(
まへ
)
もそんな
理窟
(
りくつ
)
云
(
い
)
はずに
這入
(
はい
)
つたらどうだ』
269
高姫
(
たかひめ
)
『これ
伊太彦
(
いたひこ
)
さま、
270
あんな
瓢六玉
(
へうろくだま
)
は
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
の
館
(
やかた
)
に
入
(
い
)
る
資格
(
しかく
)
はありませぬわい。
271
又
(
また
)
這入
(
はい
)
つて
貰
(
もら
)
ふと
家
(
いへ
)
が
穢
(
けが
)
れるから、
272
山門
(
さんもん
)
の
仁王
(
にわう
)
の
様
(
やう
)
に
門番
(
もんばん
)
をさして
置
(
お
)
けば、
273
それで
結構
(
けつこう
)
だ』
274
ブラヷーダ『もし
伊太彦
(
いたひこ
)
さま、
275
妾
(
わらは
)
は
斯
(
か
)
うして
五
(
ご
)
人
(
にん
)
生死
(
せいし
)
を
共
(
とも
)
にして
御用
(
ごよう
)
に
来
(
き
)
たので
厶
(
ござ
)
いますから、
276
カークス、
277
ベースさまが
這入
(
はい
)
れぬ
宅
(
うち
)
へはお
世話
(
せわ
)
になる
事
(
こと
)
はやめませうか』
278
伊太
(
いた
)
『ウン、
279
それもさうだ』
280
高姫
(
たかひめ
)
『
扨
(
さて
)
も
扨
(
さて
)
も
分
(
わか
)
らぬ
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
だな。
281
お
前
(
まへ
)
は
身魂
(
みたま
)
の
善悪
(
ぜんあく
)
正邪
(
せいじや
)
を
知
(
し
)
らないから、
282
そんな
小理窟
(
こりくつ
)
を
云
(
い
)
ふのだよ。
283
此
(
この
)
高姫
(
たかひめ
)
の
眼
(
め
)
で
一寸
(
ちよつと
)
睨
(
にら
)
んだら
金輪
(
こんりん
)
奈落
(
ならく
)
、
284
違
(
ちが
)
ひはせぬぞや。
285
オツホヽヽヽ
286
何分
(
なにぶん
)
立派
(
りつぱ
)
な
男
(
をとこ
)
の
中
(
なか
)
に
混
(
まじ
)
つて
宣伝
(
せんでん
)
に
歩
(
ある
)
くと
云
(
い
)
ふやうな
新
(
あたら
)
しい
女
(
をんな
)
の
事
(
こと
)
だから、
287
どうで
此
(
この
)
婆
(
ばば
)
の
言
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
は
気
(
き
)
に
合
(
あ
)
ひますまい。
288
然
(
しか
)
し、
289
そこは
一
(
ひと
)
つ
胸
(
むね
)
に
手
(
て
)
を
当
(
あ
)
てて
考
(
かんが
)
へたが
宜
(
よろ
)
しからうぞや』
290
ブラヷーダ『お
言葉
(
ことば
)
で
厶
(
ござ
)
いますが、
291
妾
(
わらは
)
はカークス、
292
ベースさまに
同情
(
どうじやう
)
して
一緒
(
いつしよ
)
に
立番
(
たちばん
)
を
致
(
いた
)
しませう。
293
伊太彦
(
いたひこ
)
様
(
さま
)
、
294
お
兄様
(
あにさま
)
、
295
どうぞ
中
(
なか
)
に
入
(
はい
)
つて
高姫
(
たかひめ
)
さまのお
話
(
はなし
)
を
聞
(
き
)
いて
下
(
くだ
)
さい』
296
伊太
(
いた
)
『いやお
前
(
まへ
)
が
外
(
そと
)
へ
居
(
を
)
るのに
私
(
わし
)
が
中
(
なか
)
に
入
(
はい
)
る
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ない。
297
そんなら
私
(
わし
)
も
断
(
ことわ
)
らうかな』
298
アスマガルダ『そんなら
私
(
わし
)
も
断
(
ことわ
)
らう。
299
高姫
(
たかひめ
)
さまとやら、
300
大
(
おほ
)
きに
有難
(
ありがた
)
う、
301
又
(
また
)
御縁
(
ごえん
)
があつたらお
目
(
め
)
にかかりませう』
302
高姫
(
たかひめ
)
『オホヽヽヽ
流石
(
さすが
)
の
伊太彦
(
いたひこ
)
宣伝使
(
せんでんし
)
も
女
(
をんな
)
に
掛
(
か
)
けたら
弱
(
よわ
)
いものだな。
303
涎
(
よだれ
)
をくつたり
眥
(
めじり
)
を
下
(
さ
)
げたり……そんな
事
(
こと
)
でお
道
(
みち
)
が、
304
どうして
開
(
ひら
)
けますか』
305
伊太
(
いた
)
『
高姫
(
たかひめ
)
さま、
306
そんなら
貴女
(
あなた
)
もドツと
譲歩
(
じやうほ
)
して
307
五
(
ご
)
人
(
にん
)
ともお
世話
(
せわ
)
になる
訳
(
わけ
)
には
行
(
ゆ
)
きませぬか』
308
高姫
(
たかひめ
)
『エー、
309
仕方
(
しかた
)
が
無
(
な
)
い。
310
そんならお
前
(
まへ
)
さまに
免
(
めん
)
じて
入
(
い
)
れて
上
(
あ
)
げませう。
311
決
(
けつ
)
して
座敷
(
ざしき
)
なぞへ
上
(
あが
)
つてはなりませぬぞ。
312
庭
(
には
)
の
隅
(
すみ
)
になつと
蹲踞
(
ちやうつくば
)
つて
居
(
ゐ
)
なさいや』
313
カークス『それ
程
(
ほど
)
むつかしいお
屋敷
(
やしき
)
へは
這入
(
はい
)
りませぬわい。
314
なア、
315
ベース、
316
馬鹿
(
ばか
)
にしてるわ』
317
ベース『ウン、
318
さうだ。
319
絶対
(
ぜつたい
)
俺
(
おれ
)
も
這入
(
はい
)
らぬ
積
(
つも
)
りだ。
320
それより
高姫
(
たかひめ
)
に
外
(
そと
)
に
出
(
で
)
て
貰
(
もら
)
つて、
321
茶
(
ちや
)
はどうでもいいから
結構
(
けつこう
)
なお
話
(
はなし
)
を
聞
(
き
)
かして
貰
(
もら
)
はうかい』
322
高姫
(
たかひめ
)
『オホヽヽヽ、
323
それはよい
思案
(
しあん
)
だ。
324
さうすれば
俺
(
わし
)
の
宅
(
うち
)
も
穢
(
けが
)
さんで
都合
(
つがふ
)
が
好
(
よ
)
い。
325
俺
(
わし
)
は
此処
(
ここ
)
で
坐
(
すわ
)
つてお
話
(
はなし
)
するから
326
五
(
ご
)
人
(
にん
)
は
外
(
そと
)
に
蹲踞
(
ちやうつくば
)
つて
聞
(
き
)
きなさい。
327
それが
身魂
(
みたま
)
相応
(
さうおう
)
だらう。
328
どれ
329
平易
(
やす
)
い
処
(
ところ
)
から
話
(
はな
)
して
上
(
あ
)
げようから、
330
よく
耳
(
みみ
)
をすまして
聞
(
き
)
きなさいや』
331
伊太
(
いた
)
『アツハヽヽヽ』
332
アスマガルダ『ウツフヽヽヽ』
333
ブラヷーダ『オツホヽヽヽ』
334
カークス『エツヘヽヽヽ』
335
ベース『イツヒヽヽヽ』
336
(
大正一二・五・二四
旧四・九
北村隆光
録)
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