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霊界物語
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
第63巻(寅の巻)
序歌
総説
第1篇 妙法山月
第1章 玉の露
第2章 妙法山
第3章 伊猛彦
第4章 山上訓
第5章 宿縁
第6章 テルの里
第2篇 日天子山
第7章 湖上の影
第8章 怪物
第9章 超死線
第3篇 幽迷怪道
第10章 鷺と鴉
第11章 怪道
第12章 五託宣
第13章 蚊燻
第14章 嬉し涙
第4篇 四鳥の別
第15章 波の上
第16章 諒解
第17章 峠の涙
第18章 夜の旅
第5篇 神検霊査
第19章 仕込杖
第20章 道の苦
第21章 神判
第22章 蚯蚓の声
余白歌
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霊界物語
>
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
>
第63巻(寅の巻)
> 第4篇 四鳥の別 > 第15章 波の上
<<< 嬉し涙
(B)
(N)
諒解 >>>
第一五章
波
(
なみ
)
の
上
(
うへ
)
〔一六二二〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第63巻 山河草木 寅の巻
篇:
第4篇 四鳥の別
よみ(新仮名遣い):
しちょうのわかれ
章:
第15章 波の上
よみ(新仮名遣い):
なみのうえ
通し章番号:
1622
口述日:
1923(大正12)年05月25日(旧04月10日)
口述場所:
竜宮館
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1926(大正15)年2月3日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
玉国別、初稚姫が乗ってきた二艘の船は、伊太彦たちを分乗させてエルの港に帰っていく。船上ではいろいろな成功談や失敗談に花が咲いた。
伊太彦はエルでブラヷーダと夫婦の約束をしたこと、死線を越えて竜王の岩窟に入ったが、神力が足らずに仮死状態となり、幽界で高姫と問答し悪霊に苦しめられ、初稚姫に救われたことを話して聞かせた。
三千彦は玉国別に、伊太彦夫婦を認めるかと問いかけた。玉国別は反対はしないが、暗に神業を完遂したのちに夫婦となることを示した。
一行は互いに歌を歌い雑談にふけりながら船中を過ごした。玉国別の船は翌日の東雲ごろにエルの港に着いた。初稚姫の船は先について上陸しており、玉国別一行のくるのを待っていた。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2017-06-07 23:35:09
OBC :
rm6315
愛善世界社版:
207頁
八幡書店版:
第11輯 337頁
修補版:
校定版:
213頁
普及版:
64頁
初版:
ページ備考:
001
玉国別
(
たまくにわけ
)
、
002
初稚姫
(
はつわかひめ
)
二人
(
ふたり
)
の
乗
(
の
)
り
来
(
きた
)
れる
二艘
(
にそう
)
の
船
(
ふね
)
は
伊太彦
(
いたひこ
)
以下
(
いか
)
四
(
よ
)
人
(
にん
)
を
分乗
(
ぶんじやう
)
せしめ、
003
スーラヤの
湖面
(
こめん
)
を
西南
(
せいなん
)
に
向
(
むか
)
つて
走
(
か
)
け
出
(
だ
)
し、
004
折柄
(
をりから
)
の
順風
(
じゆんぷう
)
に
真帆
(
まほ
)
をあげてエルの
港
(
みなと
)
に
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
005
初稚姫
(
はつわかひめ
)
の
船
(
ふね
)
にはブラヷーダ、
006
アスマガルダ、
007
カークス、
008
ベースが
乗
(
の
)
せられた。
009
玉国別
(
たまくにわけ
)
の
船
(
ふね
)
には
伊太彦
(
いたひこ
)
が
只
(
ただ
)
一人
(
ひとり
)
乗
(
の
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
010
漂渺
(
へうべう
)
として
際限
(
さいげん
)
もなき
湖面
(
こめん
)
を
渡
(
わた
)
り
行
(
ゆ
)
く
退屈
(
たいくつ
)
紛
(
まぎ
)
れに
011
いろいろの
成功談
(
せいこうだん
)
や
失敗談
(
しつぱいだん
)
に
花
(
はな
)
が
咲
(
さ
)
いた。
012
真純彦
(
ますみひこ
)
は
伊太彦
(
いたひこ
)
に
向
(
むか
)
ひ、
013
真純
(
ますみ
)
『
伊太彦
(
いたひこ
)
さま、
014
随分
(
ずいぶん
)
お
手柄
(
てがら
)
で
厶
(
ござ
)
いましたな。
015
まアこれで
貴方
(
あなた
)
も
夜光
(
やくわう
)
の
玉
(
たま
)
が
手
(
て
)
に
這入
(
はい
)
つて
御
(
ご
)
不足
(
ふそく
)
もありますまい。
016
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つてもタクシャカ
竜王
(
りうわう
)
を
言向和
(
ことむけやは
)
すと
云
(
い
)
ふ
勇者
(
ゆうしや
)
だから、
017
到底
(
たうてい
)
吾々
(
われわれ
)
はお
側
(
そば
)
へも
寄
(
よ
)
れませぬわい』
018
伊太
(
いた
)
『いやもうさう
言
(
い
)
はれては
面目
(
めんぼく
)
次第
(
しだい
)
もありませぬ。
019
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
ウバナンダ
竜王
(
りうわう
)
は、
020
拙者
(
せつしや
)
には
神力
(
しんりき
)
が
足
(
た
)
らぬからお
渡
(
わた
)
しせぬが、
021
初稚姫
(
はつわかひめ
)
様
(
さま
)
ならお
渡
(
わた
)
しすると
云
(
い
)
つて
散々
(
さんざん
)
文句
(
もんく
)
言
(
い
)
つて
渡
(
わた
)
して
呉
(
く
)
れたのですよ。
022
サツパリ
今度
(
こんど
)
は
失敗
(
しつぱい
)
でしたよ。
023
アハヽヽヽ』
024
真純
(
ますみ
)
『
然
(
しか
)
し
伊太彦
(
いたひこ
)
さま、
025
貴方
(
あなた
)
はブラヷーダとか
云
(
い
)
ふ
奥
(
おく
)
さまが
出来
(
でき
)
たさうですな』
026
伊太彦
(
いたひこ
)
は
真赤
(
まつか
)
な
顔
(
かほ
)
をし
乍
(
なが
)
ら、
027
伊太
(
いた
)
『いや、
028
どうも
痛
(
いた
)
み
入
(
い
)
ります。
029
何
(
なに
)
程
(
ほど
)
断
(
ことわ
)
つても
先方
(
むかふ
)
が
肯
(
き
)
かないものですから、
030
又
(
また
)
親子
(
おやこ
)
兄弟
(
きやうだい
)
の
懇望
(
こんまう
)
によつて
予約
(
よやく
)
丈
(
だ
)
けはして
置
(
お
)
きました。
031
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
032
まだ
正妻
(
せいさい
)
と
云
(
い
)
ふ
訳
(
わけ
)
には
行
(
ゆ
)
きませぬ。
033
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
先生
(
せんせい
)
のお
許
(
ゆる
)
しを
得
(
え
)
なくちやなりませぬからな。
034
ウバナンダ
竜王
(
りうわう
)
が
云
(
い
)
ふには、
035
伊太彦
(
いたひこ
)
司
(
つかさ
)
は
女
(
をんな
)
に
心
(
こころ
)
をとられて
居
(
を
)
るから
神力
(
しんりき
)
が
弱
(
よわ
)
つたと
云
(
い
)
ひましたよ。
036
別
(
べつ
)
に
女
(
をんな
)
等
(
など
)
に
心
(
こころ
)
をとられては
居
(
ゐ
)
ないのだが
不思議
(
ふしぎ
)
ですな』
037
玉国別
(
たまくにわけ
)
、
038
三千彦
(
みちひこ
)
は
可笑
(
をか
)
しさを
堪
(
こら
)
へて
俯向
(
うつむ
)
いてクウクウと
笑
(
わら
)
ふて
居
(
ゐ
)
る。
039
真純
(
ますみ
)
『
伊太彦
(
いたひこ
)
さま、
040
貴方
(
あなた
)
に
限
(
かぎ
)
つて
女
(
をんな
)
に
心
(
こころ
)
をとらるると
云
(
い
)
ふ
筈
(
はず
)
はありませぬが、
041
大方
(
おほかた
)
竜王
(
りうわう
)
の
奴
(
やつ
)
、
042
岡嫉妬
(
をかやき
)
をして、
043
そんな
事
(
こと
)
云
(
い
)
つて
揶揄
(
からか
)
つたのですよ。
044
本当
(
ほんたう
)
なら
初稚姫
(
はつわかひめ
)
さまに
渡
(
わた
)
すべき
玉
(
たま
)
を
貴方
(
あなた
)
に
渡
(
わた
)
したぢやありませぬか。
045
ブラヷーダさまがお
側
(
そば
)
に
居
(
を
)
ると
思
(
おも
)
つて
貴方
(
あなた
)
に
渡
(
わた
)
したのですよ。
046
さう
云
(
い
)
へば
何
(
なに
)
かお
心
(
こころ
)
に
障
(
さは
)
るか
知
(
し
)
りませぬが、
047
そこはそれ、
048
奥
(
おく
)
さまの
手前
(
てまへ
)
、
049
竜王
(
りうわう
)
さまも
気
(
き
)
を
利
(
き
)
かしたのですわい。
050
アツハヽヽヽ』
051
伊太
(
いた
)
『いえいえ
決
(
けつ
)
して
決
(
けつ
)
して、
052
そんな
訳
(
わけ
)
ぢやありませぬ。
053
到頭
(
たうとう
)
あの
山
(
やま
)
の
死線
(
しせん
)
を
越
(
こ
)
えて
岩窟
(
がんくつ
)
に
這入
(
はい
)
つた
所
(
ところ
)
、
054
神力
(
しんりき
)
が
足
(
た
)
らぬので
一行
(
いつかう
)
五
(
ご
)
人
(
にん
)
とも
邪気
(
じやき
)
にうたれ、
055
仮死
(
かし
)
状態
(
じやうたい
)
に
陥
(
おちい
)
り、
056
幽冥界
(
いうめいかい
)
の
旅行
(
りよかう
)
と
出掛
(
でか
)
け、
057
ウラナイ
教
(
けう
)
の
高姫
(
たかひめ
)
に
会
(
あ
)
ふて
一談判
(
ひとだんぱん
)
をやり、
058
つまらぬ
小理窟
(
こりくつ
)
を
振
(
ふ
)
り
廻
(
まは
)
し、
059
暗
(
くら
)
い
暗
(
くら
)
い
原野
(
げんや
)
を
進
(
すす
)
んで
行
(
ゆ
)
くと
針
(
はり
)
の
様
(
やう
)
な
山
(
やま
)
にぶつつかり、
060
それはそれは えらい
目
(
め
)
に
会
(
あ
)
ひましたよ。
061
そこへスマートさまが
現
(
あら
)
はれ、
062
次
(
つ
)
いで
初稚姫
(
はつわかひめ
)
様
(
さま
)
が
現
(
あら
)
はれて
高姫
(
たかひめ
)
の
守護神
(
しゆごじん
)
を
追払
(
おつぱら
)
ひ、
063
再
(
ふたた
)
び
現界
(
げんかい
)
へかへして
下
(
くだ
)
さつたのですよ。
064
いやもう
思
(
おも
)
ひ
出
(
だ
)
してもゾツと
致
(
いた
)
しますわ。
065
「
功
(
こう
)
は
成
(
な
)
り
難
(
がた
)
くして
敗
(
やぶ
)
れ
易
(
やす
)
く、
066
時
(
とき
)
は
得難
(
えがた
)
くして
失
(
うしな
)
ひ
易
(
やす
)
し」とか
云
(
い
)
つて
067
中々
(
なかなか
)
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は、
0671
うまく
行
(
ゆ
)
かぬものですわい。
068
知
(
し
)
らず
知
(
し
)
らずに
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
にか
慢心
(
まんしん
)
し、
069
夫婦
(
ふうふ
)
気取
(
きど
)
りでやつて
行
(
い
)
つたのが
私
(
わたし
)
の
失敗
(
しつぱい
)
、
070
高姫
(
たかひめ
)
の
奴
(
やつ
)
に
幽冥界
(
いうめいかい
)
に
於
(
おい
)
ても
大変
(
たいへん
)
な
膏
(
あぶら
)
をとられましたよ』
071
真純
(
ますみ
)
『
貴方
(
あなた
)
は
何故
(
なぜ
)
072
死線
(
しせん
)
を
越
(
こ
)
へて
死生
(
しせい
)
を
共
(
とも
)
にした
奥
(
おく
)
さまを
初稚姫
(
はつわかひめ
)
にお
渡
(
わた
)
ししたのですか。
073
あまり
水臭
(
みづくさ
)
いぢやありませぬか』
074
伊太
(
いた
)
『いいえ、
075
エルの
港
(
みなと
)
迄
(
まで
)
お
世話
(
せわ
)
になつたのですよ。
076
又
(
また
)
船
(
ふね
)
の
中
(
なか
)
で
貴方
(
あなた
)
等
(
がた
)
に
冷
(
ひや
)
かされると
困
(
こま
)
りますからな』
077
真純
(
ますみ
)
『いや
伊太彦
(
いたひこ
)
さまは
078
三千彦
(
みちひこ
)
さまの
御
(
ご
)
夫婦
(
ふうふ
)
に
就
(
つ
)
いて
揶揄
(
からか
)
つたので
機
(
き
)
を
見
(
み
)
るに
敏
(
びん
)
なる
伊太彦
(
いたひこ
)
さまの
事
(
こと
)
だから
079
予防線
(
よばうせん
)
を
張
(
は
)
つたのでせう』
080
伊太
(
いた
)
『アハヽヽヽ、
081
それ
迄
(
まで
)
内兜
(
うちかぶと
)
を
見透
(
みす
)
かされては
仕方
(
しかた
)
がありませぬわい』
082
三千
(
みち
)
『
伊太彦
(
いたひこ
)
さま、
083
随分
(
ずいぶん
)
冷
(
ひや
)
かされるのは
苦
(
くる
)
しいと
見
(
み
)
えますな』
084
伊太
(
いた
)
『
三千彦
(
みちひこ
)
さま、
085
こんな
処
(
ところ
)
で
敵討
(
かたきうち
)
とは、
086
ひどいぢやありませんか。
087
いやもう
貴方
(
あなた
)
御
(
ご
)
夫婦
(
ふうふ
)
の
事
(
こと
)
は
申
(
まを
)
しませぬ。
088
何卒
(
どうぞ
)
何事
(
なにごと
)
もスーラヤの
水
(
みづ
)
と
消
(
け
)
して
下
(
くだ
)
さい』
089
三千
(
みち
)
『
決
(
けつ
)
して
敵討
(
かたきうち
)
でも
何
(
なん
)
でもありませぬよ。
090
人
(
ひと
)
に
揶揄
(
からか
)
はれる
時
(
とき
)
の
御
(
ご
)
感想
(
かんさう
)
を
承
(
うけたま
)
はり
度
(
た
)
いと
思
(
おも
)
つた
丈
(
だ
)
けですわ。
091
然
(
しか
)
し
先生
(
せんせい
)
、
092
伊太彦
(
いたひこ
)
さまの
縁談
(
えんだん
)
はお
許
(
ゆる
)
しになるでせうね』
093
玉国
(
たまくに
)
『
三千彦
(
みちひこ
)
さまの
夫婦
(
ふうふ
)
を
承諾
(
しようだく
)
したのだからな』
094
伊太
(
いた
)
『ヤア
先生
(
せんせい
)
、
095
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います。
096
そのお
言葉
(
ことば
)
でお
許
(
ゆる
)
しを
得
(
え
)
たも
同然
(
どうぜん
)
と
認
(
みと
)
めます』
097
玉国
(
たまくに
)
『まだ
私
(
わたし
)
は
許
(
ゆる
)
して
居
(
を
)
りませぬ。
098
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
099
結婚
(
けつこん
)
問題
(
もんだい
)
は
当人
(
たうにん
)
と
当人
(
たうにん
)
の
自由
(
じいう
)
ですから、
100
そんな
点
(
てん
)
までは
干渉
(
かんせう
)
しませぬわい』
101
伊太彦
(
いたひこ
)
はつまらな
相
(
さう
)
な
顔
(
かほ
)
して
頭
(
あたま
)
を
掻
(
か
)
いて
居
(
ゐ
)
る。
102
治道
(
ちだう
)
居士
(
こじ
)
はニコツともせず、
103
目
(
め
)
を
塞
(
ふさ
)
ぎ
腕
(
うで
)
を
組
(
く
)
み、
104
此
(
この
)
問答
(
もんだふ
)
を
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
聞
(
き
)
いて
居
(
ゐ
)
る。
105
バット、
106
ベルも
治道
(
ちだう
)
居士
(
こじ
)
の
傍
(
かたはら
)
に
小
(
ちひ
)
さくなつて
伊太彦
(
いたひこ
)
の
顔
(
かほ
)
ばかり
見
(
み
)
つめて
居
(
ゐ
)
る。
107
玉国別
(
たまくにわけ
)
『
神
(
かみ
)
ならぬ
玉国別
(
たまくにわけ
)
は
皇神
(
すめかみ
)
の
108
結
(
むす
)
ぶ
赤縄
(
えにし
)
を
如何
(
いか
)
で
論争
(
あげつら
)
はむや。
109
伊太彦
(
いたひこ
)
の
神
(
かみ
)
の
司
(
つかさ
)
は
皇神
(
すめかみ
)
の
110
御言
(
みこと
)
のままに
従
(
したが
)
へば
宜
(
よ
)
し。
111
皇神
(
すめかみ
)
の
任
(
よ
)
さし
玉
(
たま
)
ひし
神業
(
かむわざ
)
を
112
遂
(
と
)
げ
終
(
をは
)
るまで
心
(
こころ
)
しませよ』
113
伊太彦
(
いたひこ
)
『
有難
(
ありがた
)
し
吾
(
わが
)
師
(
し
)
の
君
(
きみ
)
の
御心
(
みこころ
)
は
114
その
言
(
こと
)
の
葉
(
は
)
に
知
(
し
)
られけるかな。
115
皇神
(
すめかみ
)
の
結
(
むす
)
ばせ
玉
(
たま
)
ふ
縁
(
えん
)
なれば
116
否
(
いな
)
むによしなき
伊太彦
(
いたひこ
)
の
身
(
み
)
よ』
117
真純彦
(
ますみひこ
)
『
月
(
つき
)
の
国
(
くに
)
ハルナの
都
(
みやこ
)
に
立
(
たち
)
向
(
むか
)
ふ
118
旅
(
たび
)
にも
芽出度
(
めでた
)
き
話
(
はなし
)
聞
(
き
)
くかな。
119
言霊
(
ことたま
)
の
軍
(
いくさ
)
の
君
(
きみ
)
も
春
(
はる
)
めきて
120
花
(
はな
)
の
色香
(
いろか
)
に
酔
(
よ
)
ひつつぞ
行
(
ゆ
)
く』
121
三千彦
(
みちひこ
)
『
若草
(
わかくさ
)
の
妻
(
つま
)
定
(
さだ
)
めてゆ
何
(
なん
)
となく
122
心
(
こころ
)
苦
(
くる
)
しく
思
(
おも
)
ひつつ
行
(
ゆ
)
く』
123
真純彦
(
ますみひこ
)
『
苦
(
くる
)
しさの
中
(
なか
)
に
楽
(
たの
)
しみあるものは
124
妹背
(
いもせ
)
の
旅
(
たび
)
に
如
(
し
)
くものはなし。
125
苦
(
くる
)
しみと
口
(
くち
)
には
云
(
い
)
へど
心
(
こころ
)
には
126
笑
(
ゑ
)
みと
栄
(
さか
)
えの
花
(
はな
)
匂
(
にほ
)
ふらむ』
127
デビス
姫
(
ひめ
)
『
真純彦
(
ますみひこ
)
神
(
かみ
)
の
司
(
つかさ
)
の
言
(
こと
)
の
葉
(
は
)
は
128
妾
(
わらは
)
の
胸
(
むね
)
によくもかなへり』
129
真純彦
(
ますみひこ
)
『デビス
姫
(
ひめ
)
その
言
(
こと
)
の
葉
(
は
)
は
詐
(
いつは
)
りの
130
なき
真人
(
まさびと
)
の
心
(
こころ
)
なりけり』
131
治道
(
ちだう
)
『
三五
(
あななひ
)
の
神
(
かみ
)
の
大道
(
おほぢ
)
に
入
(
い
)
りしより
132
いつも
心
(
こころ
)
は
春
(
はる
)
めき
渡
(
わた
)
りぬ。
133
花
(
はな
)
と
花
(
はな
)
月
(
つき
)
と
月
(
つき
)
との
夫婦
(
めをと
)
連
(
づ
)
れ
134
花
(
はな
)
の
都
(
みやこ
)
へ
清
(
きよ
)
く
つき
ませ。
135
大空
(
おほぞら
)
に
冴
(
さ
)
えたる
月
(
つき
)
の
影
(
かげ
)
見
(
み
)
れば
136
笑
(
ゑ
)
ませ
玉
(
たま
)
ひぬ
今
(
いま
)
の
話
(
はなし
)
に』
137
伊太彦
(
いたひこ
)
『
大空
(
おほぞら
)
の
月
(
つき
)
の
御神
(
みかみ
)
の
笑
(
ゑ
)
ませるは
138
夜光
(
やくわう
)
の
玉
(
たま
)
をみそなはしてならむ。
139
大空
(
おほぞら
)
に
夜光
(
やくわう
)
の
月
(
つき
)
は
輝
(
かがや
)
きて
140
吾
(
わが
)
懐
(
ふところ
)
の
玉
(
たま
)
に
照
(
て
)
りそふ。
141
ウバナンダ・ナーガラシャーの
珍宝
(
うづたから
)
142
吾
(
わが
)
懐
(
ふところ
)
に
光
(
ひか
)
らせ
玉
(
たま
)
ふ。
143
願
(
ねが
)
はくばこれの
光
(
ひかり
)
を
友
(
とも
)
として
144
常夜
(
とこよ
)
の
暗
(
やみ
)
を
照
(
て
)
らしてや
行
(
ゆ
)
かむ』
145
艫
(
とも
)
に
立
(
た
)
つて
船頭
(
せんどう
)
は
146
艪
(
ろ
)
を
操
(
あやつ
)
り
乍
(
なが
)
ら
声
(
こゑ
)
も
涼
(
すず
)
しく
謡
(
うた
)
ひ
出
(
だ
)
した。
147
『ここは
名
(
な
)
に
負
(
お
)
ふスーラヤ
湖水
(
こすい
)
148
水
(
みづ
)
の
深
(
ふか
)
さは
底
(
そこ
)
知
(
し
)
れぬ。
149
底
(
そこ
)
知
(
し
)
れぬ
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐみ
)
と
喜
(
よろこ
)
びに
150
会
(
あ
)
ふた
伊太彦
(
いたひこ
)
神司
(
かむづかさ
)
。
151
初稚
(
はつわか
)
の
姫
(
ひめ
)
の
命
(
みこと
)
の
玉
(
たま
)
の
舟
(
ふね
)
152
さぞや
見
(
み
)
たからうブラヷーダ
姫
(
ひめ
)
を。
153
ウバナンダ
竜王
(
りうわう
)
さまの
宝
(
たから
)
をば
154
乗
(
の
)
せて
漕
(
こ
)
ぎ
行
(
ゆ
)
く
此
(
この
)
御船
(
みふね
)
。
155
風
(
かぜ
)
も
吹
(
ふ
)
け
波
(
なみ
)
も
立
(
た
)
て
立
(
た
)
て
竜神
(
りうじん
)
躍
(
をど
)
れ
156
いつかなこたへぬ
神
(
かみ
)
の
舟
(
ふね
)
。
157
玉国別
(
たまくにわけ
)
の
神
(
かみ
)
の
司
(
つかさ
)
の
居
(
ゐ
)
ます
舟
(
ふね
)
に
158
醜
(
しこ
)
の
悪魔
(
あくま
)
のさやるべき。
159
スーラヤの
山
(
やま
)
は
霞
(
かすみ
)
に
包
(
つつ
)
まれて
160
今
(
いま
)
は
光
(
ひかり
)
も
見
(
み
)
えずなりぬ。
161
夜
(
よる
)
光
(
ひか
)
るスーラヤ
山
(
さん
)
も
伊太彦
(
いたひこ
)
の
162
神
(
かみ
)
の
身霊
(
みたま
)
に
暗
(
くら
)
くなる。
163
これからは
百
(
ひやく
)
里
(
り
)
を
照
(
て
)
らした
山燈台
(
やまとうだい
)
も
164
消
(
き
)
えて
跡
(
あと
)
なき
波
(
なみ
)
の
泡
(
あわ
)
。
165
月
(
つき
)
も
日
(
ひ
)
も
波間
(
なみま
)
に
浮
(
うか
)
ぶスーラヤ
湖水
(
こすい
)
166
今日
(
けふ
)
は
天女
(
てんによ
)
が
渡
(
わた
)
り
行
(
ゆ
)
く。
167
天人
(
てんにん
)
の
列
(
つら
)
に
加
(
くは
)
はる
神司
(
かむづかさ
)
168
嘸
(
さぞ
)
や
心
(
こころ
)
が
勇
(
いさ
)
むだらう。
169
漸
(
やうや
)
くにエルの
港
(
みなと
)
が
見
(
み
)
えかけた
170
かすかに
目
(
め
)
につくエルの
山
(
やま
)
。
171
十五夜
(
じふごや
)
の
月
(
つき
)
は
御空
(
みそら
)
に
有明
(
ありあけ
)
の
172
朝
(
あさ
)
も
早
(
はや
)
うから
船
(
ふね
)
を
漕
(
こ
)
ぐ。
173
エル
港
(
みなと
)
越
(
こ
)
えて
進
(
すす
)
むはエルサレム
174
一度
(
いちど
)
詣
(
まゐ
)
り
度
(
た
)
や
神
(
かみ
)
の
前
(
まへ
)
。
175
朝夕
(
あさゆふ
)
に
波
(
なみ
)
のまにまに
漂
(
ただよ
)
ふ
俺
(
わし
)
は
176
何時
(
いつ
)
も
月日
(
つきひ
)
の
水鏡
(
みづかがみ
)
見
(
み
)
る』
177
毎晩
(
まいばん
)
光
(
ひか
)
つて
居
(
ゐ
)
たスーラヤ
山
(
さん
)
も
178
夜光
(
やくわう
)
の
玉
(
たま
)
が
伊太彦
(
いたひこ
)
の
懐
(
ふところ
)
に
入
(
い
)
つてからは
光
(
ひかり
)
を
失
(
うしな
)
ひ、
179
今
(
いま
)
船頭
(
せんどう
)
の
謡
(
うた
)
つた
如
(
ごと
)
く
唯一
(
ゆゐいつ
)
の
燈台
(
とうだい
)
をとられて
了
(
しま
)
つた。
180
十六
(
じふろく
)
日
(
にち
)
の
満月
(
まんげつ
)
は
東
(
ひがし
)
の
波間
(
なみま
)
より
傘
(
かさ
)
の
様
(
やう
)
な
大
(
おほ
)
きな
姿
(
すがた
)
を
現
(
あら
)
はして
昇
(
のぼ
)
り
初
(
はじ
)
めた。
181
波
(
なみ
)
に
姿
(
すがた
)
を
半分
(
はんぶん
)
出
(
だ
)
した
時
(
とき
)
は
182
丁度
(
ちやうど
)
黄金山
(
わうごんざん
)
が
浮
(
う
)
いた
様
(
やう
)
に
見
(
み
)
えて
来
(
き
)
た。
183
玉国別
(
たまくにわけ
)
『
金銀
(
きんぎん
)
の
波
(
なみ
)
漂
(
ただよ
)
ひし
湖
(
うみ
)
の
上
(
へ
)
に
184
黄金山
(
わうごんざん
)
の
光
(
ひかり
)
輝
(
かがや
)
く。
185
東
(
ひむがし
)
の
波間
(
なみま
)
を
昇
(
のぼ
)
る
月影
(
つきかげ
)
は
186
黄金
(
こがね
)
の
玉
(
たま
)
か
夜光
(
やくわう
)
の
玉
(
たま
)
か。
187
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
黄金
(
こがね
)
の
玉
(
たま
)
も
及
(
およ
)
ぶまじ
188
波間
(
なみま
)
を
分
(
わ
)
けて
昇
(
のぼ
)
る
月影
(
つきかげ
)
』
189
真純彦
(
ますみひこ
)
『
空
(
そら
)
清
(
きよ
)
く
海原
(
うなばら
)
清
(
きよ
)
き
中空
(
なかぞら
)
に
190
月
(
つき
)
はおひおひ
円
(
まる
)
くなり
行
(
ゆ
)
く。
191
月々
(
つきづき
)
に
月
(
つき
)
見
(
み
)
る
月
(
つき
)
は
多
(
おほ
)
けれど
192
今宵
(
こよひ
)
の
月
(
つき
)
は
殊更
(
ことさら
)
清
(
きよ
)
し』
193
三千彦
(
みちひこ
)
『
御恵
(
みめぐ
)
みの
露
(
つゆ
)
は
天地
(
てんち
)
に
三千彦
(
みちひこ
)
の
194
今
(
いま
)
さし
昇
(
のぼ
)
る
月
(
つき
)
の
大神
(
おほかみ
)
。
195
瑞御霊
(
みづみたま
)
早
(
はや
)
くも
月
(
つき
)
は
波間
(
なみま
)
をば
196
離
(
はな
)
れて
御空
(
みそら
)
にかかりましけり』
197
伊太彦
(
いたひこ
)
『
波間
(
なみま
)
をば
分
(
わ
)
けて
出
(
い
)
でたる
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
198
吾
(
わが
)
懐
(
ふところ
)
の
玉
(
たま
)
に
勝
(
まさ
)
れる。
199
夜
(
よる
)
光
(
ひか
)
る
珍
(
うづ
)
の
宝珠
(
ほつしゆ
)
も
瑞御霊
(
みづみたま
)
200
昇
(
のぼ
)
り
給
(
たま
)
へば
見
(
み
)
る
影
(
かげ
)
もなし』
201
デビス
姫
(
ひめ
)
『
真純彦
(
ますみひこ
)
三千彦
(
みちひこ
)
司
(
つかさ
)
の
守
(
まも
)
ります
202
珍
(
うづ
)
の
宝
(
たから
)
も
月
(
つき
)
に
如
(
し
)
かめや。
203
月
(
つき
)
の
国
(
くに
)
ハルナの
都
(
みやこ
)
へ
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く
204
旅路
(
たびぢ
)
の
空
(
そら
)
に
清
(
きよ
)
き
月影
(
つきかげ
)
』
205
治道
(
ちだう
)
『
大空
(
おほぞら
)
に
昇
(
のぼ
)
り
輝
(
かがや
)
く
月
(
つき
)
見
(
み
)
れば
206
吾
(
わが
)
魂
(
たましひ
)
の
恥
(
はづか
)
しくなりぬ。
207
日
(
ひ
)
は
西
(
にし
)
に
早
(
は
)
や
傾
(
かたむ
)
きて
東
(
ひむがし
)
の
208
波間
(
はかん
)
を
出
(
い
)
づる
珍
(
うづ
)
の
月影
(
つきかげ
)
』
209
玉国別
(
たまくにわけ
)
『
西
(
にし
)
へ
行
(
ゆ
)
く
吾
(
わが
)
一行
(
いつかう
)
を
見送
(
みおく
)
りて
210
昇
(
のぼ
)
らせ
玉
(
たま
)
ふか
月
(
つき
)
の
大神
(
おほかみ
)
。
211
仰
(
あふ
)
ぎ
見
(
み
)
る
清
(
きよ
)
き
大空
(
おほぞら
)
隈
(
くま
)
もなく
212
照
(
て
)
らし
玉
(
たま
)
ひぬ
一
(
ひと
)
つの
玉
(
たま
)
に。
213
日
(
ひ
)
は
暑
(
あつ
)
く
月
(
つき
)
は
涼
(
すず
)
しく
澄
(
す
)
み
渡
(
わた
)
る
214
百
(
もも
)
の
草木
(
くさき
)
も
露
(
つゆ
)
に
生
(
い
)
きなむ』
215
伊太彦
(
いたひこ
)
『
朝日
(
あさひ
)
は
照
(
て
)
るとも
曇
(
くも
)
るとも
216
月
(
つき
)
は
盈
(
み
)
つとも
虧
(
か
)
くるとも
217
仮令
(
たとへ
)
命
(
いのち
)
は
失
(
う
)
するとも
218
誠
(
まこと
)
の
神
(
かみ
)
の
御教
(
みをしへ
)
に
219
任
(
まか
)
しまつりし
吾々
(
われわれ
)
は
220
如何
(
いか
)
なる
枉
(
まが
)
の
攻
(
せ
)
め
来
(
く
)
とも
221
必
(
かなら
)
ず
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐ
)
みあり
222
歓喜竜王
(
ナーガラシャー
)
の
岩窟
(
がんくつ
)
に
223
一行
(
いつかう
)
五
(
ご
)
人
(
にん
)
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
り
224
邪気
(
じやき
)
に
襲
(
おそ
)
はれ
吾
(
わが
)
魂
(
たま
)
は
225
浮世
(
うきよ
)
にけがれし
肉体
(
からたま
)
を
226
脱
(
ぬ
)
けて
忽
(
たちま
)
ち
死出
(
しで
)
の
旅
(
たび
)
227
枯野
(
かれの
)
ケ
原
(
はら
)
をさまよひつ
228
ウラナイ
教
(
けう
)
の
高姫
(
たかひめ
)
が
229
醜
(
しこ
)
の
精霊
(
せいれい
)
に
廻
(
めぐ
)
り
合
(
あ
)
ひ
230
いろいろ
雑多
(
ざつた
)
と
論争
(
あげつら
)
ひ
231
揚句
(
あげく
)
の
果
(
は
)
ては
大喧嘩
(
おほげんくわ
)
232
おつ
初
(
ぱじ
)
めたる
恥
(
はづか
)
しさ
233
アスマガルダは
鉄拳
(
てつけん
)
を
234
かためて
高姫
(
たかひめ
)
打
(
う
)
たむとす
235
流石
(
さすが
)
の
高姫
(
たかひめ
)
驚
(
おどろ
)
いて
236
裏口
(
うらぐち
)
あけて
裏山
(
うらやま
)
の
237
枯木林
(
かれきばやし
)
に
身
(
み
)
をかくし
238
雲
(
くも
)
を
霞
(
かすみ
)
と
消
(
き
)
えにける
239
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
五
(
ご
)
人
(
にん
)
は
勇
(
いさ
)
み
立
(
た
)
ち
240
凱歌
(
かちどき
)
あげし
心地
(
ここち
)
して
241
枯野
(
かれの
)
ケ
原
(
はら
)
をさまよひつ
242
神
(
かみ
)
の
試練
(
ためし
)
に
会
(
あ
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
243
三五教
(
あななひけう
)
の
信仰
(
しんかう
)
を
244
生命
(
いのち
)
にかへて
守
(
まも
)
りたる
245
その
報
(
むく
)
いにや
神使
(
かむつかひ
)
246
スマートさまが
現
(
あら
)
はれて
247
高姫司
(
たかひめつかさ
)
の
守護神
(
しゆごじん
)
248
銀毛
(
ぎんまう
)
八尾
(
はつぴ
)
の
悪狐
(
あくこ
)
をば
249
追
(
お
)
ひやり
玉
(
たま
)
へば
忽
(
たちま
)
ちに
250
四辺
(
あたり
)
の
光景
(
くわうけい
)
一変
(
いつぺん
)
し
251
いと
苦
(
くる
)
しみし
吾
(
わが
)
身体
(
からだ
)
252
俄
(
にはか
)
に
快
(
こころよ
)
くなりて
253
勇気
(
ゆうき
)
日頃
(
ひごろ
)
に
百倍
(
ひやくばい
)
し
254
天地
(
てんち
)
の
神
(
かみ
)
に
打
(
うち
)
向
(
むか
)
ひ
255
感謝
(
かんしや
)
祈願
(
きぐわん
)
の
太祝詞
(
ふとのりと
)
256
唱
(
とな
)
ふる
折
(
をり
)
しも
三五
(
あななひ
)
の
257
神
(
かみ
)
の
司
(
つかさ
)
の
初稚姫
(
はつわかひめ
)
が
258
此
(
この
)
場
(
ば
)
に
現
(
あらは
)
れましまして
259
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
が
迷
(
まよ
)
ふ
霊身
(
れいしん
)
を
260
明
(
あか
)
きに
救
(
すく
)
ひ
玉
(
たま
)
ひけり
261
気
(
き
)
をとり
直
(
なほ
)
し
四辺
(
あたり
)
をば
262
よくよく
見
(
み
)
ればこは
如何
(
いか
)
に
263
歓喜竜王
(
ナーガラシャー
)
の
岩窟
(
がんくつ
)
と
264
判
(
わか
)
りし
時
(
とき
)
の
嬉
(
うれ
)
しさよ
265
ここに
竜王
(
りうわう
)
は
初稚姫
(
はつわかひめ
)
の
266
生言霊
(
いくことたま
)
に
歓喜
(
くわんき
)
して
267
多年
(
たねん
)
の
苦悶
(
くもん
)
を
免
(
のが
)
れしと
268
喜
(
よろこ
)
び
勇
(
いさ
)
み
幾度
(
いくたび
)
か
269
感謝
(
かんしや
)
の
言葉
(
ことば
)
奉
(
たてまつ
)
り
270
夜光
(
やくわう
)
の
玉
(
たま
)
を
伊太彦
(
いたひこ
)
に
271
手
(
て
)
づから
渡
(
わた
)
し
玉
(
たま
)
ひつつ
272
別離
(
わかれ
)
の
歌
(
うた
)
を
宣
(
の
)
りおへて
273
大空
(
おほぞら
)
高
(
たか
)
く
昇
(
のぼ
)
りけり
274
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
275
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐみ
)
の
有難
(
ありがた
)
さ
276
初稚姫
(
はつわかひめ
)
に
従
(
したが
)
ひて
277
海
(
うみ
)
に
通
(
つう
)
ずる
岩窟
(
がんくつ
)
の
278
光
(
ひかり
)
を
見当
(
めあ
)
てに
隧道
(
すいだう
)
を
279
探
(
さぐ
)
り
出
(
い
)
づれば
有難
(
ありがた
)
や
280
吾
(
わが
)
師
(
し
)
の
君
(
きみ
)
は
玉
(
たま
)
の
舟
(
ふね
)
281
波打際
(
なみうちぎは
)
に
横
(
よこ
)
たへて
282
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
を
救
(
すく
)
ひ
玉
(
たま
)
ふべく
283
待
(
ま
)
たせ
玉
(
たま
)
ふぞ
尊
(
たふと
)
けれ
284
朝日
(
あさひ
)
は
照
(
て
)
るとも
曇
(
くも
)
るとも
285
月
(
つき
)
は
盈
(
み
)
つとも
虧
(
か
)
くるとも
286
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐ
)
みと
師
(
し
)
の
恵
(
めぐ
)
み
287
幾千代
(
いくちよ
)
迄
(
まで
)
も
忘
(
わす
)
れまじ
288
思
(
おも
)
へば
思
(
おも
)
へば
有難
(
ありがた
)
や
289
大空
(
おほぞら
)
清
(
きよ
)
く
海
(
うみ
)
清
(
きよ
)
く
290
月
(
つき
)
亦
(
また
)
清
(
きよ
)
き
玉
(
たま
)
の
舟
(
ふね
)
291
清
(
きよ
)
き
真帆
(
まほ
)
をば
掲
(
かか
)
げつつ
292
清
(
きよ
)
けき
風
(
かぜ
)
に
送
(
おく
)
られて
293
清
(
きよ
)
き
教
(
をしへ
)
の
司
(
つかさ
)
等
(
ら
)
と
294
清
(
きよ
)
き
話
(
はなし
)
を
取交
(
とりか
)
はし
295
珍
(
うづ
)
の
都
(
みやこ
)
へ
指
(
さ
)
して
行
(
ゆ
)
く
296
吾
(
わが
)
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
こそ
嬉
(
うれ
)
しけれ
297
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
298
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はひましませよ』
299
斯
(
か
)
く
互
(
たがひ
)
に
歌
(
うた
)
を
謡
(
うた
)
ひ
或
(
あるひ
)
は
雑談
(
ざつだん
)
に
耽
(
ふけ
)
り
乍
(
なが
)
ら、
300
翌日
(
あくるひ
)
の
東雲
(
しののめ
)
頃
(
ごろ
)
玉国別
(
たまくにわけ
)
の
舟
(
ふね
)
はエルの
港
(
みなと
)
に
着
(
つ
)
いた。
301
早
(
はや
)
くも
初稚姫
(
はつわかひめ
)
は
一行
(
いつかう
)
と
共
(
とも
)
に
上陸
(
じやうりく
)
し
玉
(
たま
)
ひて
302
スマートを
引
(
ひき
)
連
(
つ
)
れ
波止場
(
はとば
)
に
立
(
た
)
つて
一行
(
いつかう
)
の
来
(
きた
)
るを
待
(
ま
)
ち
受
(
う
)
け
玉
(
たま
)
ひつつあつた。
303
スマートは
喜
(
よろこ
)
んで「ウワッウワッ」と
鳴
(
な
)
き
立
(
た
)
てて
居
(
ゐ
)
る。
304
(
大正一二・五・二五
旧四・一〇
於竜宮館
北村隆光
録)
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(B)
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【第15章 波の上|第63巻|山河草木|霊界物語|/rm6315】
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