霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
×
設定
URL:
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
行間
ルビの表示


アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注[※]用語解説 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

脚注[*]編集用 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

外字の外周色 [?]一般のフォントに存在しない文字は専用の外字フォントを使用しています。目立つようにその文字の外周の色を変えます。[×閉じる]
現在のページには外字は使われていません

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。

第一五章 波(なみ)の上(うへ)〔一六二二〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第63巻 山河草木 寅の巻 篇:第4篇 四鳥の別 よみ(新仮名遣い):しちょうのわかれ
章:第15章 波の上 よみ(新仮名遣い):なみのうえ 通し章番号:1622
口述日:1923(大正12)年05月25日(旧04月10日) 口述場所:竜宮館 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1926(大正15)年2月3日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一部の章はAIによって要約を作成しています。[×閉じる]:
玉国別、初稚姫が乗ってきた二艘の船は、伊太彦たちを分乗させてエルの港に帰っていく。船上ではいろいろな成功談や失敗談に花が咲いた。
伊太彦はエルでブラヷーダと夫婦の約束をしたこと、死線を越えて竜王の岩窟に入ったが、神力が足らずに仮死状態となり、幽界で高姫と問答し悪霊に苦しめられ、初稚姫に救われたことを話して聞かせた。
三千彦は玉国別に、伊太彦夫婦を認めるかと問いかけた。玉国別は反対はしないが、暗に神業を完遂したのちに夫婦となることを示した。
一行は互いに歌を歌い雑談にふけりながら船中を過ごした。玉国別の船は翌日の東雲ごろにエルの港に着いた。初稚姫の船は先について上陸しており、玉国別一行のくるのを待っていた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2017-06-07 23:35:09 文字数:4312 OBC :rm6315
愛善世界社版:207頁 八幡書店版:第11輯 337頁 修補版: 校定版:213頁 普及版:64頁 初版: ページ備考:
001 玉国別(たまくにわけ)、002初稚姫(はつわかひめ)二人(ふたり)の乗(の)り来(きた)れる二艘(にそう)の船(ふね)は伊太彦(いたひこ)以下(いか)四(よ)人(にん)を分乗(ぶんじやう)せしめ、003スーラヤの湖面(こめん)を西南(せいなん)に向(むか)つて走(か)け出(だ)し、004折柄(をりから)の順風(じゆんぷう)に真帆(まほ)をあげてエルの港(みなと)に進(すす)み行(ゆ)く。
005 初稚姫(はつわかひめ)の船(ふね)にはブラヷーダ、006アスマガルダ、007カークス、008ベースが乗(の)せられた。009玉国別(たまくにわけ)の船(ふね)には伊太彦(いたひこ)が只(ただ)一人(ひとり)乗(の)つて居(ゐ)る。
010 漂渺(へうべう)として際限(さいげん)もなき湖面(こめん)を渡(わた)り行(ゆ)く退屈(たいくつ)紛(まぎ)れに011いろいろの成功談(せいこうだん)や失敗談(しつぱいだん)に花(はな)が咲(さ)いた。012真純彦(ますみひこ)は伊太彦(いたひこ)に向(むか)ひ、
013真純(ますみ)『伊太彦(いたひこ)さま、014随分(ずいぶん)お手柄(てがら)で厶(ござ)いましたな。015まアこれで貴方(あなた)も夜光(やくわう)の玉(たま)が手(て)に這入(はい)つて御(ご)不足(ふそく)もありますまい。016何(なん)と云(い)つてもタクシャカ竜王(りうわう)を言向和(ことむけやは)すと云(い)ふ勇者(ゆうしや)だから、017到底(たうてい)吾々(われわれ)はお側(そば)へも寄(よ)れませぬわい』
018伊太(いた)『いやもうさう言(い)はれては面目(めんぼく)次第(しだい)もありませぬ。019実(じつ)の所(ところ)ウバナンダ竜王(りうわう)は、020拙者(せつしや)には神力(しんりき)が足(た)らぬからお渡(わた)しせぬが、021初稚姫(はつわかひめ)様(さま)ならお渡(わた)しすると云(い)つて散々(さんざん)文句(もんく)言(い)つて渡(わた)して呉(く)れたのですよ。022サツパリ今度(こんど)は失敗(しつぱい)でしたよ。023アハヽヽヽ』
024真純(ますみ)『然(しか)し伊太彦(いたひこ)さま、025貴方(あなた)はブラヷーダとか云(い)ふ奥(おく)さまが出来(でき)たさうですな』
026 伊太彦(いたひこ)は真赤(まつか)な顔(かほ)をし乍(なが)ら、
027伊太(いた)『いや、028どうも痛(いた)み入(い)ります。029何(なに)程(ほど)断(ことわ)つても先方(むかふ)が肯(き)かないものですから、030又(また)親子(おやこ)兄弟(きやうだい)の懇望(こんまう)によつて予約(よやく)丈(だ)けはして置(お)きました。031然(しか)し乍(なが)ら032まだ正妻(せいさい)と云(い)ふ訳(わけ)には行(ゆ)きませぬ。033兎(と)も角(かく)先生(せんせい)のお許(ゆる)しを得(え)なくちやなりませぬからな。034ウバナンダ竜王(りうわう)が云(い)ふには、035伊太彦(いたひこ)司(つかさ)は女(をんな)に心(こころ)をとられて居(を)るから神力(しんりき)が弱(よわ)つたと云(い)ひましたよ。036別(べつ)に女(をんな)等(など)に心(こころ)をとられては居(ゐ)ないのだが不思議(ふしぎ)ですな』
037 玉国別(たまくにわけ)、038三千彦(みちひこ)は可笑(をか)しさを堪(こら)へて俯向(うつむ)いてクウクウと笑(わら)ふて居(ゐ)る。
039真純(ますみ)『伊太彦(いたひこ)さま、040貴方(あなた)に限(かぎ)つて女(をんな)に心(こころ)をとらるると云(い)ふ筈(はず)はありませぬが、041大方(おほかた)竜王(りうわう)の奴(やつ)、042岡嫉妬(をかやき)をして、043そんな事(こと)云(い)つて揶揄(からか)つたのですよ。044本当(ほんたう)なら初稚姫(はつわかひめ)さまに渡(わた)すべき玉(たま)を貴方(あなた)に渡(わた)したぢやありませぬか。045ブラヷーダさまがお側(そば)に居(を)ると思(おも)つて貴方(あなた)に渡(わた)したのですよ。046さう云(い)へば何(なに)かお心(こころ)に障(さは)るか知(し)りませぬが、047そこはそれ、048奥(おく)さまの手前(てまへ)、049竜王(りうわう)さまも気(き)を利(き)かしたのですわい。050アツハヽヽヽ』
051伊太(いた)『いえいえ決(けつ)して決(けつ)して、052そんな訳(わけ)ぢやありませぬ。053到頭(たうとう)あの山(やま)の死線(しせん)を越(こ)えて岩窟(がんくつ)に這入(はい)つた所(ところ)、054神力(しんりき)が足(た)らぬので一行(いつかう)五(ご)人(にん)とも邪気(じやき)にうたれ、055仮死(かし)状態(じやうたい)に陥(おちい)り、056幽冥界(いうめいかい)の旅行(りよかう)と出掛(でか)け、057ウラナイ教(けう)の高姫(たかひめ)に会(あ)ふて一談判(ひとだんぱん)をやり、058つまらぬ小理窟(こりくつ)を振(ふ)り廻(まは)し、059暗(くら)い暗(くら)い原野(げんや)を進(すす)んで行(ゆ)くと針(はり)の様(やう)な山(やま)にぶつつかり、060それはそれは えらい目(め)に会(あ)ひましたよ。061そこへスマートさまが現(あら)はれ、062次(つ)いで初稚姫(はつわかひめ)様(さま)が現(あら)はれて高姫(たかひめ)の守護神(しゆごじん)を追払(おつぱら)ひ、063再(ふたた)び現界(げんかい)へかへして下(くだ)さつたのですよ。064いやもう思(おも)ひ出(だ)してもゾツと致(いた)しますわ。065「功(こう)は成(な)り難(がた)くして敗(やぶ)れ易(やす)く、066時(とき)は得難(えがた)くして失(うしな)ひ易(やす)し」とか云(い)つて067中々(なかなか)世(よ)の中(なか)は、0671うまく行(ゆ)かぬものですわい。068知(し)らず知(し)らずに何時(いつ)の間(ま)にか慢心(まんしん)し、069夫婦(ふうふ)気取(きど)りでやつて行(い)つたのが私(わたし)の失敗(しつぱい)、070高姫(たかひめ)の奴(やつ)に幽冥界(いうめいかい)に於(おい)ても大変(たいへん)な膏(あぶら)をとられましたよ』
071真純(ますみ)『貴方(あなた)は何故(なぜ)072死線(しせん)を越(こ)へて死生(しせい)を共(とも)にした奥(おく)さまを初稚姫(はつわかひめ)にお渡(わた)ししたのですか。073あまり水臭(みづくさ)いぢやありませぬか』
074伊太(いた)『いいえ、075エルの港(みなと)迄(まで)お世話(せわ)になつたのですよ。076又(また)船(ふね)の中(なか)で貴方(あなた)等(がた)に冷(ひや)かされると困(こま)りますからな』
077真純(ますみ)『いや伊太彦(いたひこ)さまは078三千彦(みちひこ)さまの御(ご)夫婦(ふうふ)に就(つ)いて揶揄(からか)つたので機(き)を見(み)るに敏(びん)なる伊太彦(いたひこ)さまの事(こと)だから079予防線(よばうせん)を張(は)つたのでせう』
080伊太(いた)『アハヽヽヽ、081それ迄(まで)内兜(うちかぶと)を見透(みす)かされては仕方(しかた)がありませぬわい』
082三千(みち)『伊太彦(いたひこ)さま、083随分(ずいぶん)冷(ひや)かされるのは苦(くる)しいと見(み)えますな』
084伊太(いた)『三千彦(みちひこ)さま、085こんな処(ところ)で敵討(かたきうち)とは、086ひどいぢやありませんか。087いやもう貴方(あなた)御(ご)夫婦(ふうふ)の事(こと)は申(まを)しませぬ。088何卒(どうぞ)何事(なにごと)もスーラヤの水(みづ)と消(け)して下(くだ)さい』
089三千(みち)『決(けつ)して敵討(かたきうち)でも何(なん)でもありませぬよ。090人(ひと)に揶揄(からか)はれる時(とき)の御(ご)感想(かんさう)を承(うけたま)はり度(た)いと思(おも)つた丈(だ)けですわ。091然(しか)し先生(せんせい)、092伊太彦(いたひこ)さまの縁談(えんだん)はお許(ゆる)しになるでせうね』
093玉国(たまくに)『三千彦(みちひこ)さまの夫婦(ふうふ)を承諾(しようだく)したのだからな』
094伊太(いた)『ヤア先生(せんせい)、095有難(ありがた)う厶(ござ)います。096そのお言葉(ことば)でお許(ゆる)しを得(え)たも同然(どうぜん)と認(みと)めます』
097玉国(たまくに)『まだ私(わたし)は許(ゆる)して居(を)りませぬ。098然(しか)し乍(なが)ら099結婚(けつこん)問題(もんだい)は当人(たうにん)と当人(たうにん)の自由(じいう)ですから、100そんな点(てん)までは干渉(かんせう)しませぬわい』
101 伊太彦(いたひこ)はつまらな相(さう)な顔(かほ)して頭(あたま)を掻(か)いて居(ゐ)る。102治道(ちだう)居士(こじ)はニコツともせず、103目(め)を塞(ふさ)ぎ腕(うで)を組(く)み、104此(この)問答(もんだふ)を一生(いつしやう)懸命(けんめい)聞(き)いて居(ゐ)る。105バット、106ベルも治道(ちだう)居士(こじ)の傍(かたはら)に小(ちひ)さくなつて伊太彦(いたひこ)の顔(かほ)ばかり見(み)つめて居(ゐ)る。
107玉国別(たまくにわけ)『神(かみ)ならぬ玉国別(たまくにわけ)は皇神(すめかみ)の
108結(むす)ぶ赤縄(えにし)を如何(いか)で論争(あげつら)はむや。
109伊太彦(いたひこ)の神(かみ)の司(つかさ)は皇神(すめかみ)の
110御言(みこと)のままに従(したが)へば宜(よ)し。
111皇神(すめかみ)の任(よ)さし玉(たま)ひし神業(かむわざ)を
112遂(と)げ終(をは)るまで心(こころ)しませよ』
113伊太彦(いたひこ)『有難(ありがた)し吾(わが)師(し)の君(きみ)の御心(みこころ)は
114その言(こと)の葉(は)に知(し)られけるかな。
115皇神(すめかみ)の結(むす)ばせ玉(たま)ふ縁(えん)なれば
116否(いな)むによしなき伊太彦(いたひこ)の身(み)よ』
117真純彦(ますみひこ)『月(つき)の国(くに)ハルナの都(みやこ)に立(たち)向(むか)ふ
118旅(たび)にも芽出度(めでた)き話(はなし)聞(き)くかな。
119言霊(ことたま)の軍(いくさ)の君(きみ)も春(はる)めきて
120花(はな)の色香(いろか)に酔(よ)ひつつぞ行(ゆ)く』
121三千彦(みちひこ)『若草(わかくさ)の妻(つま)定(さだ)めてゆ何(なん)となく
122心(こころ)苦(くる)しく思(おも)ひつつ行(ゆ)く』
123真純彦(ますみひこ)『苦(くる)しさの中(なか)に楽(たの)しみあるものは
124妹背(いもせ)の旅(たび)に如(し)くものはなし。
125苦(くる)しみと口(くち)には云(い)へど心(こころ)には
126笑(ゑ)みと栄(さか)えの花(はな)匂(にほ)ふらむ』
127デビス姫(ひめ)『真純彦(ますみひこ)神(かみ)の司(つかさ)の言(こと)の葉(は)は
128妾(わらは)の胸(むね)によくもかなへり』
129真純彦(ますみひこ)『デビス姫(ひめ)その言(こと)の葉(は)は詐(いつは)りの
130なき真人(まさびと)の心(こころ)なりけり』
131治道(ちだう)『三五(あななひ)の神(かみ)の大道(おほぢ)に入(い)りしより
132いつも心(こころ)は春(はる)めき渡(わた)りぬ。
133花(はな)と花(はな)月(つき)と月(つき)との夫婦(めをと)連(づ)れ
134花(はな)の都(みやこ)へ清(きよ)くつきませ。
135大空(おほぞら)に冴(さ)えたる月(つき)の影(かげ)見(み)れば
136笑(ゑ)ませ玉(たま)ひぬ今(いま)の話(はなし)に』
137伊太彦(いたひこ)『大空(おほぞら)の月(つき)の御神(みかみ)の笑(ゑ)ませるは
138夜光(やくわう)の玉(たま)をみそなはしてならむ。
139大空(おほぞら)に夜光(やくわう)の月(つき)は輝(かがや)きて
140吾(わが)懐(ふところ)の玉(たま)に照(て)りそふ。
141ウバナンダ・ナーガラシャーの珍宝(うづたから)
142吾(わが)懐(ふところ)に光(ひか)らせ玉(たま)ふ。
143願(ねが)はくばこれの光(ひかり)を友(とも)として
144常夜(とこよ)の暗(やみ)を照(て)らしてや行(ゆ)かむ』
145 艫(とも)に立(た)つて船頭(せんどう)は146艪(ろ)を操(あやつ)り乍(なが)ら声(こゑ)も涼(すず)しく謡(うた)ひ出(だ)した。
147『ここは名(な)に負(お)ふスーラヤ湖水(こすい)
148  水(みづ)の深(ふか)さは底(そこ)知(し)れぬ。
149底(そこ)知(し)れぬ神(かみ)の恵(めぐみ)と喜(よろこ)びに
150  会(あ)ふた伊太彦(いたひこ)神司(かむづかさ)。
151初稚(はつわか)の姫(ひめ)の命(みこと)の玉(たま)の舟(ふね)
152  さぞや見(み)たからうブラヷーダ姫(ひめ)を。
153ウバナンダ竜王(りうわう)さまの宝(たから)をば
154  乗(の)せて漕(こ)ぎ行(ゆ)く此(この)御船(みふね)。
155風(かぜ)も吹(ふ)け波(なみ)も立(た)て立(た)て竜神(りうじん)躍(をど)れ
156  いつかなこたへぬ神(かみ)の舟(ふね)。
157玉国別(たまくにわけ)の神(かみ)の司(つかさ)の居(ゐ)ます舟(ふね)に
158  醜(しこ)の悪魔(あくま)のさやるべき。
159スーラヤの山(やま)は霞(かすみ)に包(つつ)まれて
160  今(いま)は光(ひかり)も見(み)えずなりぬ。
161夜(よる)光(ひか)るスーラヤ山(さん)も伊太彦(いたひこ)の
162  神(かみ)の身霊(みたま)に暗(くら)くなる。
163これからは百(ひやく)里(り)を照(て)らした山燈台(やまとうだい)も
164  消(き)えて跡(あと)なき波(なみ)の泡(あわ)。
165月(つき)も日(ひ)も波間(なみま)に浮(うか)ぶスーラヤ湖水(こすい)
166  今日(けふ)は天女(てんによ)が渡(わた)り行(ゆ)く。
167天人(てんにん)の列(つら)に加(くは)はる神司(かむづかさ)
168  嘸(さぞ)や心(こころ)が勇(いさ)むだらう。
169漸(やうや)くにエルの港(みなと)が見(み)えかけた
170  かすかに目(め)につくエルの山(やま)。
171十五夜(じふごや)の月(つき)は御空(みそら)に有明(ありあけ)の
172  朝(あさ)も早(はや)うから船(ふね)を漕(こ)ぐ。
173エル港(みなと)越(こ)えて進(すす)むはエルサレム
174  一度(いちど)詣(まゐ)り度(た)や神(かみ)の前(まへ)。
175朝夕(あさゆふ)に波(なみ)のまにまに漂(ただよ)ふ俺(わし)は
176  何時(いつ)も月日(つきひ)の水鏡(みづかがみ)見(み)る』
177 毎晩(まいばん)光(ひか)つて居(ゐ)たスーラヤ山(さん)も178夜光(やくわう)の玉(たま)が伊太彦(いたひこ)の懐(ふところ)に入(い)つてからは光(ひかり)を失(うしな)ひ、179今(いま)船頭(せんどう)の謡(うた)つた如(ごと)く唯一(ゆゐいつ)の燈台(とうだい)をとられて了(しま)つた。180十六(じふろく)日(にち)の満月(まんげつ)は東(ひがし)の波間(なみま)より傘(かさ)の様(やう)な大(おほ)きな姿(すがた)を現(あら)はして昇(のぼ)り初(はじ)めた。
181 波(なみ)に姿(すがた)を半分(はんぶん)出(だ)した時(とき)は182丁度(ちやうど)黄金山(わうごんざん)が浮(う)いた様(やう)に見(み)えて来(き)た。
183玉国別(たまくにわけ)『金銀(きんぎん)の波(なみ)漂(ただよ)ひし湖(うみ)の上(へ)に
184黄金山(わうごんざん)の光(ひかり)輝(かがや)く。
185東(ひむがし)の波間(なみま)を昇(のぼ)る月影(つきかげ)は
186黄金(こがね)の玉(たま)か夜光(やくわう)の玉(たま)か。
187如意(によい)宝珠(ほつしゆ)黄金(こがね)の玉(たま)も及(およ)ぶまじ
188波間(なみま)を分(わ)けて昇(のぼ)る月影(つきかげ)』
189真純彦(ますみひこ)『空(そら)清(きよ)く海原(うなばら)清(きよ)き中空(なかぞら)に
190月(つき)はおひおひ円(まる)くなり行(ゆ)く。
191月々(つきづき)に月(つき)見(み)る月(つき)は多(おほ)けれど
192今宵(こよひ)の月(つき)は殊更(ことさら)清(きよ)し』
193三千彦(みちひこ)『御恵(みめぐ)みの露(つゆ)は天地(てんち)に三千彦(みちひこ)の
194今(いま)さし昇(のぼ)る月(つき)の大神(おほかみ)。
195瑞御霊(みづみたま)早(はや)くも月(つき)は波間(なみま)をば
196離(はな)れて御空(みそら)にかかりましけり』
197伊太彦(いたひこ)『波間(なみま)をば分(わ)けて出(い)でたる如意(によい)宝珠(ほつしゆ)
198吾(わが)懐(ふところ)の玉(たま)に勝(まさ)れる。
199夜(よる)光(ひか)る珍(うづ)の宝珠(ほつしゆ)も瑞御霊(みづみたま)
200昇(のぼ)り給(たま)へば見(み)る影(かげ)もなし』
201デビス姫(ひめ)『真純彦(ますみひこ)三千彦(みちひこ)司(つかさ)の守(まも)ります
202珍(うづ)の宝(たから)も月(つき)に如(し)かめや。
203月(つき)の国(くに)ハルナの都(みやこ)へ進(すす)み行(ゆ)く
204旅路(たびぢ)の空(そら)に清(きよ)き月影(つきかげ)』
205治道(ちだう)『大空(おほぞら)に昇(のぼ)り輝(かがや)く月(つき)見(み)れば
206吾(わが)魂(たましひ)の恥(はづか)しくなりぬ。
207日(ひ)は西(にし)に早(は)や傾(かたむ)きて東(ひむがし)の
208波間(はかん)を出(い)づる珍(うづ)の月影(つきかげ)』
209玉国別(たまくにわけ)『西(にし)へ行(ゆ)く吾(わが)一行(いつかう)を見送(みおく)りて
210昇(のぼ)らせ玉(たま)ふか月(つき)の大神(おほかみ)。
211仰(あふ)ぎ見(み)る清(きよ)き大空(おほぞら)隈(くま)もなく
212照(て)らし玉(たま)ひぬ一(ひと)つの玉(たま)に。
213日(ひ)は暑(あつ)く月(つき)は涼(すず)しく澄(す)み渡(わた)る
214百(もも)の草木(くさき)も露(つゆ)に生(い)きなむ』
215伊太彦(いたひこ)『朝日(あさひ)は照(て)るとも曇(くも)るとも
216月(つき)は盈(み)つとも虧(か)くるとも
217仮令(たとへ)命(いのち)は失(う)するとも
218誠(まこと)の神(かみ)の御教(みをしへ)に
219任(まか)しまつりし吾々(われわれ)は
220如何(いか)なる枉(まが)の攻(せ)め来(く)とも
221必(かなら)ず神(かみ)の恵(めぐ)みあり
222歓喜竜王(ナーガラシャー)の岩窟(がんくつ)に
223一行(いつかう)五(ご)人(にん)進(すす)み入(い)り
224邪気(じやき)に襲(おそ)はれ吾(わが)魂(たま)は
225浮世(うきよ)にけがれし肉体(からたま)を
226脱(ぬ)けて忽(たちま)ち死出(しで)の旅(たび)
227枯野(かれの)ケ原(はら)をさまよひつ
228ウラナイ教(けう)の高姫(たかひめ)が
229醜(しこ)の精霊(せいれい)に廻(めぐ)り合(あ)ひ
230いろいろ雑多(ざつた)と論争(あげつら)ひ
231揚句(あげく)の果(は)ては大喧嘩(おほげんくわ)
232おつ初(ぱじ)めたる恥(はづか)しさ
233アスマガルダは鉄拳(てつけん)を
234かためて高姫(たかひめ)打(う)たむとす
235流石(さすが)の高姫(たかひめ)驚(おどろ)いて
236裏口(うらぐち)あけて裏山(うらやま)の
237枯木林(かれきばやし)に身(み)をかくし
238雲(くも)を霞(かすみ)と消(き)えにける
239吾(われ)等(ら)五(ご)人(にん)は勇(いさ)み立(た)ち
240凱歌(かちどき)あげし心地(ここち)して
241枯野(かれの)ケ原(はら)をさまよひつ
242神(かみ)の試練(ためし)に会(あ)ひ乍(なが)ら
243三五教(あななひけう)の信仰(しんかう)を
244生命(いのち)にかへて守(まも)りたる
245その報(むく)いにや神使(かむつかひ)
246スマートさまが現(あら)はれて
247高姫司(たかひめつかさ)の守護神(しゆごじん)
248銀毛(ぎんまう)八尾(はつぴ)の悪狐(あくこ)をば
249追(お)ひやり玉(たま)へば忽(たちま)ちに
250四辺(あたり)の光景(くわうけい)一変(いつぺん)し
251いと苦(くる)しみし吾(わが)身体(からだ)
252俄(にはか)に快(こころよ)くなりて
253勇気(ゆうき)日頃(ひごろ)に百倍(ひやくばい)し
254天地(てんち)の神(かみ)に打(うち)向(むか)ひ
255感謝(かんしや)祈願(きぐわん)の太祝詞(ふとのりと)
256唱(とな)ふる折(をり)しも三五(あななひ)の
257神(かみ)の司(つかさ)の初稚姫(はつわかひめ)が
258此(この)場(ば)に現(あらは)れましまして
259吾(われ)等(ら)が迷(まよ)ふ霊身(れいしん)を
260明(あか)きに救(すく)ひ玉(たま)ひけり
261気(き)をとり直(なほ)し四辺(あたり)をば
262よくよく見(み)ればこは如何(いか)に
263歓喜竜王(ナーガラシャー)の岩窟(がんくつ)と
264判(わか)りし時(とき)の嬉(うれ)しさよ
265ここに竜王(りうわう)は初稚姫(はつわかひめ)の
266生言霊(いくことたま)に歓喜(くわんき)して
267多年(たねん)の苦悶(くもん)を免(のが)れしと
268喜(よろこ)び勇(いさ)み幾度(いくたび)か
269感謝(かんしや)の言葉(ことば)奉(たてまつ)り
270夜光(やくわう)の玉(たま)を伊太彦(いたひこ)に
271手(て)づから渡(わた)し玉(たま)ひつつ
272別離(わかれ)の歌(うた)を宣(の)りおへて
273大空(おほぞら)高(たか)く昇(のぼ)りけり
274あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
275神(かみ)の恵(めぐみ)の有難(ありがた)さ
276初稚姫(はつわかひめ)に従(したが)ひて
277海(うみ)に通(つう)ずる岩窟(がんくつ)の
278光(ひかり)を見当(めあ)てに隧道(すいだう)を
279探(さぐ)り出(い)づれば有難(ありがた)や
280吾(わが)師(し)の君(きみ)は玉(たま)の舟(ふね)
281波打際(なみうちぎは)に横(よこ)たへて
282吾(われ)等(ら)を救(すく)ひ玉(たま)ふべく
283待(ま)たせ玉(たま)ふぞ尊(たふと)けれ
284朝日(あさひ)は照(て)るとも曇(くも)るとも
285月(つき)は盈(み)つとも虧(か)くるとも
286神(かみ)の恵(めぐ)みと師(し)の恵(めぐ)み
287幾千代(いくちよ)迄(まで)も忘(わす)れまじ
288思(おも)へば思(おも)へば有難(ありがた)や
289大空(おほぞら)清(きよ)く海(うみ)清(きよ)く
290月(つき)亦(また)清(きよ)き玉(たま)の舟(ふね)
291清(きよ)き真帆(まほ)をば掲(かか)げつつ
292清(きよ)けき風(かぜ)に送(おく)られて
293清(きよ)き教(をしへ)の司(つかさ)等(ら)と
294清(きよ)き話(はなし)を取交(とりか)はし
295珍(うづ)の都(みやこ)へ指(さ)して行(ゆ)く
296吾(わが)身(み)の上(うへ)こそ嬉(うれ)しけれ
297あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
298御霊(みたま)幸(さち)はひましませよ』
299 斯(か)く互(たがひ)に歌(うた)を謡(うた)ひ或(あるひ)は雑談(ざつだん)に耽(ふけ)り乍(なが)ら、300翌日(あくるひ)の東雲(しののめ)頃(ごろ)玉国別(たまくにわけ)の舟(ふね)はエルの港(みなと)に着(つ)いた。301早(はや)くも初稚姫(はつわかひめ)は一行(いつかう)と共(とも)に上陸(じやうりく)し玉(たま)ひて302スマートを引(ひき)連(つ)れ波止場(はとば)に立(た)つて一行(いつかう)の来(きた)るを待(ま)ち受(う)け玉(たま)ひつつあつた。303スマートは喜(よろこ)んで「ウワッウワッ」と鳴(な)き立(た)てて居(ゐ)る。
304(大正一二・五・二五 旧四・一〇 於竜宮館 北村隆光録)
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス】
合言葉「みろく」を入力して下さい→