霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第二章 生臭坊(なまぐさばう)〔一七九一〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第71巻 山河草木 戌の巻 篇:第1篇 追僧軽迫 よみ(新仮名遣い):ついそうけいはく
章:第2章 生臭坊 よみ(新仮名遣い):なまぐさぼう 通し章番号:1791
口述日:1925(大正14)年11月07日(旧09月21日) 口述場所:不明 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1929(昭和4)年2月1日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
玄真坊とコブライは穴から抜け出して、性懲りもなくダリヤ探索に日を費やしている。二人は秋の七草の効能について四方山の話をしながら山を下り、二、三十戸の小さな村に出た。
二、三人の小僧たちが小魚釣りをやっていたが、一人が玄真坊を見て、その禿げ頭をからかう。
小僧は、この神谷村の庄屋の息子、「神の子」と名乗る。「神の子」は、神谷村が代々三五教を奉じていると語る。神の子は、玄真坊の素性、ダリヤ姫を捜索していること、今七草の話をしながら村にやってきたことなどを当てて見せる。
また、自分の庄屋の家で、ダリヤをかくまっていることを明かす。
玄真坊は小僧からダリヤの隠し場所を聞こうとするが、「神の子」は玄真坊を馬鹿にする狂歌を歌い、白い煙となって姿を隠してしまった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm7102
愛善世界社版:24頁 八幡書店版:第12輯 507頁 修補版: 校定版:25頁 普及版:10頁 初版: ページ備考:
派生[?]この文献を底本として書かれたと思われる文献です。[×閉じる]出口王仁三郎著作集 > 第三巻 愛と美といのち > [5] 自然といのち > [5-4] 心の病いと身の病い > [5-4-9] 七草の効用
001オーラの(やま)(たて)(こも)
002天来(てんらい)唯一(ゆゐいつ)救世主(きうせいしゆ)
003天帝(てんてい)化身(けしん)()れこみて
004女盗賊(をんなたうぞく)ヨリコ(ひめ)
005シーゴーの二人(ふたり)共謀(きようぼう)
006三千(さんぜん)(にん)賊徒(ぞくと)()
007四方(しはう)八方(はつぱう)間配(まくば)りて
008七千(しちせん)余国(よこく)(つき)(くに)
009占領(せんりやう)せむと大陰謀(だいいんぼう)
010(たく)らみゐたる(をり)もあれ
011三五教(あななひけう)()(たか)
012梅公(うめこう)さまに()()まれ
013常磐(ときは)堅磐(かきは)岩窟(いはやど)
014(うち)(やぶ)られて降伏(かうふく)
015ヨリコの(ひめ)やシーゴーは
016(まこと)(みち)帰順(きじゆん)して
017天下(てんか)公共(こうきよう)(その)(ため)
018余生(よせい)(ささ)(まつ)らむと
019真心(まごころ)(つく)すに()()へて
020一旦(いつたん)帰順(きじゆん)(よそほ)ひし
021売僧(まいす)坊主(ばうず)玄真(げんしん)
022ハルの(みづうみ)横断(わうだん)
023スガの(みなと)富豪(ふうがう)
024()(きこ)えたる薬屋(くすりや)
025(むすめ)ダリヤに恋着(れんちやく)
026言葉(ことば)たくみに誘惑(いうわく)
027タニグク(だに)山奥(やまおく)
028左守(さもり)(かみ)のシヤカンナが
029数多(あまた)手下(てした)(したが)へて
030(こも)りゐるよと()くよりも
031(また)一旗(ひとはた)あげむとて
032さも鷹揚(おうやう)面付(つらつき)
033ダリヤの()をば(たづさ)へつ
034一夜(いちや)()かし振舞(ふるまひ)
035(さけ)(した)をばもつらせつ
036グツと寝入(ねい)つた(その)(すき)
037ダリヤの(ひめ)泥棒(どろばう)
038バルギーと(とも)踪跡(そうせき)
039(くら)ましたるぞ可笑(をか)しけれ
040天帝(てんてい)化身(けしん)誤魔化(ごまくわ)せる
041玄真坊(げんしんばう)()(たて)
042(たま)りかねてかシヤカンナの
043二百(にひやく)部下(ぶか)借用(しやくよう)
044(ひめ)(あと)をば(たづ)ねむと
045小才(こさい)()いたコブライを
046引具(ひきぐ)谷道(たにみち)トントンと
047(あへ)(あへ)ぎて立岩(たていは)
048(ふもと)にズツポリ()()れぬ
049(やみ)陥穽(かんせい)におち()りて
050(さび)しき一夜(いちや)(おく)りつつ
051(ふぢ)(つる)をば辿(たど)りつつ
052(やうや)虎口(ここう)(まぬが)れて
053(くさ)茫々(ばうばう)()(しげ)
054羊腸(やうちやう)小径(こみち)辿(たど)りつつ
055交尾期(さかり)()()犬猫(いぬねこ)
056(めす)のお(しり)()ぐやうに
057夢路(ゆめぢ)辿(たど)(あは)れさよ
058(やみ)(とびら)()げられて
059(あづま)(そら)(あかね)()
060草葉(くさば)(つゆ)はキラキラと
061七宝(しつぽう)(ひかり)(かがや)ける
062その真中(まんなか)二人(ふたり)()
063ダリヤダリヤと一筋(ひとすぢ)
064(いは)()()()()みさくみ
065(あせ)をタラタラ(なが)しつつ
066(くるし)(さか)()にもせず
067(こころ)(さき)(のぼ)()く。
068天真坊(てんしんばう)『オイ、069もう余程(よほど)テクツて()たやうだから、070(ひと)(この)見晴(みは)らしのよい(ところ)暫時(ざんじ)休養(きうやう)しようぢやないか。071この山頂(さんちやう)から四方(よも)連山(れんざん)見渡(みわた)景色(けしき)()つたら、072まるで(ゆめ)(くに)辿(たど)つてゐるやうだのう』
073コブライ『本当(ほんたう)(ゆめ)()たやうですな、074昨夜(さくや)だつて、075ダリヤさまの(ゆめ)()(ふか)陥穽(おとしあな)へなだれ()んだ(とき)なんざ、076ホントに()きた心地(ここち)もなく、077これが(ゆめ)だつたらなアと、078このやうに(おも)ひましたよ。079あの(とき)ア、080ホントに、081どうなる(こと)やらと、082チツト(ばか)心配(しんぱい)(いた)しましたワイ』
083(てん)(ゆめ)建築者(けんちくしや)(みな)人間(にんげん)だからな、084(ゆめ)がなければ人生(じんせい)(さび)しいものだ。085人生(じんせい)(にじ)(ゆめ)だからな、086かうして夢想郷(むさうきやう)(あそ)んでゐる()人間(にんげん)(はな)だ。087(はる)若葉(わかば)銀風(ぎんぷう)のそよぐ(ごと)きダリヤ(ひめ)風情(ふぜい)088()るもスガスガしい(おも)ひがするぢやないか。089その(あで)姿(すがた)にあこがれてゐる()が、090人生(じんせい)(はな)だ、091(ゆめ)建築(けんちく)だ、092人生(じんせい)(にじ)だ』
093コ『成程(なるほど)094さうすると、095(この)()(なか)(なに)()もサツパリ(ゆめ)(かい)すれば()いのですか』
096(てん)(もつと)もだ、097(ゆめ)浮世(うきよ)()ふぢやないか、098(しか)(なが)(ゆめ)にも(わす)れられないのは、099ヤツパリ、100ダリヤ(ひめ)だ。
101(ゆめ)になりとも()()いものは
102 小判(こばん)(せん)(りやう)とダリヤ(ひめ)
103だ、104アツハヽヽヽヽ』
105コ『これ()四方(しはう)開展(かいてん)した(やま)(うへ)で、106それ()けタツプリお惚気(のろけ)拝聴(はいちやう)する(われ)()は、1061(じつ)光栄(くわうえい)でも(なん)でも、107ありませぬわい。108アツタ109ケツタ(くそ)(わる)110とも(なん)とも(まを)しませぬ、111さぞ(やま)(かみ)さま(たち)(よだれ)をくつて貴方(あなた)(きよ)いお姿(すがた)拝顔(はいがん)してる(こと)でせう』
112(てん)『ウツフヽヽヽ天下(てんか)幸福(かうふく)一身(いつしん)(あつ)めて天帝(てんてい)化身(けしん)113天来(てんらい)救世主(きうせいしゆ)114玄真坊(げんしんばう)(また)(おん)()天真坊(てんしんばう)(さま)だもの、115泥棒(どろばう)仲間(なかま)貴様(きさま)とは、116チツト(ばか)りクラスが(ちが)ふのだからなア』
117コ『ヘン、118ヒ、119ヒーンだ』
120(てん)『ヒ、121ヒーンとは(なん)だ、122まるで(うま)のやうな(こと)()ふぢやないか』
123コ『ヒ、124ヒーン、125ボトボト(うま)(くそ)だ、126(うし)(けつ)天真坊(てんしんばう)さまとは、127いい相棒(あいぼう)でせう、128イツヒヽヽヽヒ』
129(てん)(なん)でもいいわ、130何処(どこ)かここらにダリヤの(はな)()いてゐさうなものだなア、131(かぜ)()てくるダリヤの香気(かうき)(はな)について、132(なん)とも()れぬ(ゆか)しみを(かん)ずるやうだ。133これから(さき)は、134ダリヤ(さか)だ、135(あし)(かる)いだらうよ、136ウツフヽヽヽフ』
137コ『モシモシ電信棒(でんしんぼう)さま、138この山道(やまみち)(むかし)から有名(いうめい)腥草(なまぐさ)名所(めいしよ)139(あき)になると随分(ずいぶん)(たのし)(たび)出来(でき)ますよ。140泥棒稼(どろぼうかせ)ぎを()つて()吾々(われわれ)同類(どうるゐ)も、141(この)(へん)通過(つうくわ)する(とき)には142優美(いうび)なデリケートななま(くさ)()(にほ)(はな)()143悪徒(あくと)善人(ぜんにん)墜落(つゐらく)した(やう)心持(こころも)ちに()りましたよ』
144(げん)『そりや()ンと()脱線振(だつせんぶり)だ。145(おれ)()電信棒(でんしんぼう)ぢや()い、146天帝(てんてい)化身(けしん)天来(てんらい)救世主(きうせいしゆ)玄真坊(げんしんばう)(まを)すのだ。147天帝(てんてい)(てん)一字(いちじ)玄真坊(げんしんばう)(しん)一字(いちじ)()つて天真坊(てんしんばう)()ふのだ。148そして(いま)(まへ)腥臭(なまくさ)()(にほ)山道(やまみち)だと()つたが149()れも(また)脱線(だつせん)だよ。150七草(ななくさ)()ふて151(あき)()景色(けしき)()へたり種々(いろいろ)薬品(やくひん)になる重宝(ちようはう)草花(くさばな)だ』
152コ『天真坊(てんしんばう)さま153コンナ山道(やまみち)()へる草花(くさばな)(くすり)になると仰有(おつしや)つたが、154一体(いつたい)全体(ぜんたい)(なん)(やまひ)()きますかい。155(ほれ)(ぐすり)にでもなりませぬかな』
156(げん)七草(ななくさ)()へば157(はぎ)(くづ)尾花(をばな)撫子(なでしこ)女郎花(をみなへし)桔梗(ききやう)藤袴(ふぢばかま)158これで七種(なないろ)ある、159それ(ゆゑ)七草(ななくさ)()ふのだ。160(あき)山野(さんや)()ふものは(きは)めて詩的(してき)なもので、161(そぞ)ろに哀愁(あいしう)(ねん)(かん)ずるものだ。162釣瓶落(つるべおと)しに()れて()夕日(ゆふひ)()びた路傍(ろばう)草花(くさばな)(さび)しき(あき)名残(なご)りとし163(ひと)(こころ)(いた)ましめ()(なぐさ)むるものだ。164薬用(やくよう)植物(しよくぶつ)としても仲々(なかなか)効力(かうりよく)があるものだ』
165コ『(はぎ)(なん)(くすり)になりますか』
166(げん)(はぎ)(あき)七草(ななくさ)書出(かきだ)しで、167莢果(けふくわ)植物(しよくぶつ)亜属(あぞく)胡蝶(こてふ)花科(くわくわ)で、168一名(いちめい)荳科(とうくわ)植物(しよくぶつ)一種(いつしゆ)だ。169この()()んで日光(につくわう)(かわ)かし(ちや)代用品(だいようひん)とするのだ。170(あま)興奮(こうふん)もせないので小供(こども)老人(らうじん)飲料(いんれう)には(きは)めて理想(りさう)(てき)だ。171(まへ)(やう)青春(せいしゆん)()()えて()性悪(せいあく)男子(だんし)は、172平素(へいそ)情欲(じやうよく)鎮圧薬(ちんあつやく)として、173毎日(まいにち)服用(ふくよう)したが()からうよ、174アハヽヽヽ』
175コ『天真(てんしん)さま、176貴方(あなた)チツト服用(ふくよう)されたら如何(どう)ですか。177()(いろ)血走(ちばし)つて()ますよ、178イヒヽヽヽ。179それから(くづ)効能(かうのう)(をし)へて(くだ)さいな』
180(てん)(また)しても葛々(くづくづ)(わけ)もない質問(しつもん)(はつ)する(やつ)ぢやなア。181アタ邪魔(じやま)(くさ)い、182(しか)(なが)天帝(てんてい)化身(けしん)とも()ふべき天真坊(てんしんばう)さまが、183七草(ななくさ)(ぐらゐ)説明(せつめい)出来(でき)ぬと(おも)はれちや、184(かみ)威厳(ゐげん)にも(くわん)する大問題(だいもんだい)だから、185チツト(ばか)解明(かいめい)(らう)()つてやらうかい、186アーン』
187コ『(くづ)解釈(かいしやく)ぐらゐにサウ前置詞(ぜんちし)(おほ)いのでは(じつ)閉口(へいこう)ですワイ。188(しか)(なが)後学(こうがく)(ため)大切(たいせつ)(みみ)暫時(ざんじ)()しませうかい』
189(てん)『アハヽヽヽ随分(ずいぶん)負惜(まけをし)みの(つよ)野郎(やらう)だなア。190(そもそも)(くづ)(はぎ)(おな)じく荳科(とうくわ)植物(しよくぶつ)一種(いつしゆ)で、191(むかし)から葛根(くづね)()つて(さか)んに漢方医(かんぱうい)山井(やまゐ)養仙(やうせん)などに使用(しよう)されて()たものだ。192発汗剤(はつかんざい)193下熱剤(げねつざい)として使用(しよう)したり、194胃腸(ゐちやう)粘滑剤(ねんくわつざい)として使用(しよう)し、195(また)諸薬(しよやく)配剤(はいざい)として調法(てうはふ)なものだ。196(くづ)葛根(くづね)より搾取(さくしゆ)したもので最上等(さいじやうとう)澱粉(でんぷん)だ。197色々(いろいろ)料理(れうり)や、198夏季(かき)()ける汗打粉(あせうちこ)としての材料(ざいれう)となる。199それだから美人(びじん)には()くてならない好植物(かうしよくぶつ)だ』
200コ『(また)しても美人(びじん)()()ひに()ましたな。201一層(いつそう)のこと(くづ)澱粉(でんぷん)製造(せいざう)して、202ダリヤ(ひめ)女帝(によてい)土産物(みやげもの)となし、203その歓心(くわんしん)()つたら如何(どう)でせう。204これが女帝(によてい)(こころ)(うご)かす唯一(ゆゐいつ)無二(むに)秘策(ひさく)でせう、205エヘヽヽヽ』
206(てん)『クヅクヅ()ふな。207サア(これ)から(ひと)ツいやらしい(やつ)説明(せつめい)してやらう。208幽霊(いうれい)因縁(いんねん)(ふか)尾花(をばな)だ。209……幽霊(いうれい)正体(しやうたい)()たり枯尾花(かれをばな)……と()つて随分(ずいぶん)ゾツとする代物(しろもの)だ。210(ただ)ちに石塔(せきたふ)(うら)(おも)()(やつ)だ、211アハヽヽヽ』
212コ『エヽ天真(てんしん)さま、213モウ()めて(くだ)さい。214こんな山道(やまみち)気分(きぶん)(わる)いぢやありませぬか。215ヒユードロドロと()けて()られちや(たま)りませぬわ。216モツト真面目(まじめ)()つて(くだ)さいな』
217(てん)『ヨシヨシ(おれ)(あま)心持(こころもち)()くないのだ。218尾花(をばな)禾本科(くわほんくわ)植物(しよくぶつ)で、219こいつの()(あつ)め、220日光(につくわう)乾燥(かんさう)すると立派(りつぱ)綿(わた)(やう)なものが出来(でき)る。221この綿(わた)(かる)擦過傷(さつくわしやう)や、222切傷(きりきず)(くち)にふりかけると血止(ちど)(ぐすり)になる。223夜具(やぐ)にでも使用(しよう)すると(かる)くて(あたた)かくて大変(たいへん)工合(ぐあひ)()いものだ』
224コ『ダリヤ(ひめ)さまとの結婚式(けつこんしき)()使用(しよう)になるお(かんが)へですか、225エヘヽヽヽ』
226(てん)『エヽ(ひと)(ひと)(なん)とか()とか()つてダリヤ(ひめ)喰付(くつつ)けようと(いた)すのだなア』
227コ『ヘンお()()りませぬかな、228()れよりもモツトモツト優美(いうび)撫子(なでしこ)説明(せつめい)をして(くだ)はいな、229一寸(ちよつと)撫子(なでしこ)なんて(おつ)名前(なまへ)でせう』
230(てん)『エヘン、231撫子(なでしこ)石竹科(せきちくくわ)一種(いつしゆ)で、232日光(につくわう)全草(ぜんさう)乾燥(かんさう)させ、233(いち)(にち)四五匁(しごもんめ)ばかりを(せん)じて利尿剤(りねうざい)となし、234第一(だいいち)腎臓病(じんざうびやう)235脚気(かつけ)236水腫(みづばれ)なぞの(ほか)難病(なんびやう)(もち)ゆると特効(とくかう)(あら)はれるものだ』
237コ『いやはや感心(かんしん)々々(かんしん)238(おほい)感心(かんしん)(いた)しました。239今度(こんど)(もつと)(すゐ)()()いた女郎花(をみなへし)効能(かうのう)説明(せつめい)(ねが)ひます』
240(てん)女郎花(をみなへし)茜草(せんさう)植物(しよくぶつ)亜属(あぞく)敗醤科(はいしやうくわ)一種(いつしゆ)で、241(その)()秋季(しうき)採取(さいしゆ)(みづ)()(あら)ひ、242日光(につくわう)(かわ)かして(たくは)へておき、243(よう)(のぞ)んで(いち)(にち)四五匁(しごもんめ)(ばか)りを(せん)じて服用(のむ)と、244婦人(ふじん)()(みち)順血薬(じゆんけつやく)として特効(とくかう)ありと()ふことだ。245婦人(ふじん)趣味(しゆみ)()男子(だんし)246如何(どう)しても女郎花(をみなへし)(ばか)りは()をつけて平素(へいそ)から用意(ようい)しておく()きものだ、247アハヽヽヽ』
248コ『エヘヽヽヽ流石(さすが)女殺(をんなごろ)しの後家(ごけ)(だま)しの天真坊(てんしんばう)さま、249何事(なにごと)にも抜目(ぬけめ)はありませぬな。250益々(ますます)このコブライ()感珍(かんちん)(いた)しましたわい。251サア(これ)から桔梗(ききやう)効能(かうのう)説明(せつめい)して(いただ)きませう』
252(てん)桔梗(ききやう)桔梗科(ききやうくわ)植物(しよくぶつ)で、253その()秋季(しうき)()日光(につくわう)乾燥(かんさう)したものを桔梗根(ききやうね)()ふ。254風邪(かぜ)(とき)255鎮咳(ちんがい)去痰薬(きよたんやく)として(もち)ゆると(かう)がある。256(いち)(にち)四五匁(しごもんめ)(みづ)(せん)じて()むと()い、257エヘン。258血液(けつえき)溶解(ようかい)するサボニンが(ふく)まれて()るのだ。259その()から近時(きんじ)フストールやヱバニンと()新薬(しんやく)製造(せいざう)されるのだ。260(ついで)藤袴(ふぢばかま)説明(せつめい)しておくが、261(これ)菊科(きくくわ)植物(しよくぶつ)一種(いつしゆ)で、262この()日光(につくわう)乾燥(かんさう)して(せん)じて()めば、263撫子(なでしこ)(おな)じく利尿剤(りねうざい)として効能(かうのう)があるのだ。264貴様(きさま)()うな痳病(りんびやう)問屋(とひや)さまは(あき)(きた)(わす)れずに採取(さいしゆ)しておくが()からうよ、265アハヽヽヽ』
266コ『ウフヽヽヽ、267小便(せうべん)のタンク()破裂(はれつ)しさうだ。268天真(てんしん)さま、269御免(ごめん)(くだ)さい』
270()(なが)ら、271オチコを()ててジヤアジヤアと()()した。
272 二人(ふたり)(やうや)(くだ)(ざか)となつたので足許(あしもと)(はや)く、273やや展開(てんかい)した野村(のむら)()た。274此処(ここ)には二三十(にさんじつ)()百姓家(ひやくしやうや)(さび)しげに()つてゐる。275二三(にさん)(にん)腕白(わんぱく)小僧(こぞう)小川(をがは)竿(さを)()小魚(さな)()(なが)(うた)つてゐる。
 
276(みづ)はサラサラ  ()(あを)
277 (なが)(つつみ)()(かげ)で  今日(けふ)(あさ)から小魚(こうを)()
278 ()れた(そら)には何処(どこ)やらで  雲雀(ひばり)でも()いてゐるやうな
279 (とき)(をり)(きこ)える(ねむ)さうな  (うし)(うめ)きも午后(うまさがり)
280
281 (なが)れサラサラ  ()(あを)
282 つれない竿(さを)を  ()()して
283 (なが)めてゐれば(みづ)すまし  (みづ)をすまして()ふばかり』
 
284 そこへ天真坊(てんしんばう)(あたま)をテカテカ日光(につくわう)(かがや)かし(なが)らコブライを(したが)へやつて()ると、285腕白(わんぱく)小僧(こぞう)遠慮(ゑんりよ)会釈(ゑしやく)もなく、286(あたま)(ひか)つてるのを(あや)しみ(なが)(うた)()した。
 
287『モシモシ禿(はげ)禿(はげ)さんよ  世界(せかい)(うち)でお(まへ)ほど
288 (ひかり)(うす)いものはない  どうしてそんなに(くら)いのか
289
290 ナーンと仰有(おつしや)電気(でんき)さん  そんならお(まへ)(ひか)りつこ
291 (むか)ふの小山(こやま)太陽()()たら  どちらがよけいにピカつくか
292
293 どんなに禿(はげ)をみがいても  どうで(ぼく)より(くら)いだろ
294 ここらで一寸(ちよつと)一休(ひとやす)み  ブラブラブラブラ ブーラブラ
295
296 これはしまつた()()けた  ピカピカピカピカ ピーカピカ
297 あんまり(くら)電気(でんき)さん  サツキの自慢(じまん)はどうしたね』
 
298 天真坊(てんしんばう)(この)(うた)()いて、299ヤヤ悄気(しよげ)気味(ぎみ)になり、300錫杖(しやくぢやう)をガチヤン ガチヤンと、301ワザとに手荒(てあら)くゆり(なが)ら、
302『コーラ、303我太郎(がたらう)304(いま)()つたこと、305一度(いちど)()つて()い、306場合(ばあひ)によつては承知(しようち)せないぞ。307餓鬼(がき)大将(だいしやう)()が』
308小供(こども)『アツハヽヽヽ、309オイ坊主(ばうず)310(この)(むら)はなア、311(むかし)から三五教(あななひけう)占有地(せんいうち)だ、312そんな怪体(けつたい)(ふう)をした化物(ばけもの)一寸(ちよつと)()れる(こと)出来(でき)ないのだよ。313どつかへ(はや)姿(すがた)をかくさないと線香(せんかう)()てるぞ』
314(てん)『チエ、315青大将(あをだいしやう)座敷(ざしき)這入(はい)()んだやうな(こと)ぬかしやがる、316小供(こども)だつて油断(ゆだん)のならぬものだ。317小供(こども)318オイ、319坊主(ばうず)320ここを(うつく)しい(をんな)が、321(とほ)らなかつたかのう』
322子供(こども)(とほ)つたよ。323一人(ひとり)(やつこ)さんを()れて、324(たがひ)背中(せなか)(たた)いたり、325頬辺(ほほべた)をつめつたり、326イチヤつきもつて、327ツイ(いま)()き、328ここを(とほ)りよつた(はず)だ。329(おれ)(いま)330坊主(ばうず)()つたが(おれ)坊主(ばうず)ぢやないよ、331(まへ)こそ坊主(ばうず)ぢやないか。332(おれ)はなア神谷村(かみたにむら)庄屋(しやうや)息子(むすこ)で、333(かみ)()()神童(しんどう)だ。334世界(せかい)(こと)なら(なん)でも(おれ)()いて()よ。335(なん)でも(かん)でも(たなごころ)()(ごと)くに()らしてやるよ。336(まへ)はオーラ(さん)立籠(たてこも)つて大山子(おほやまこ)をやつてゐた玄真坊(げんしんばう)のなれの(はて)だらうがな。337スガの(みなと)のダリヤ(ひめ)恋着(れんちやく)し、338うまく誤魔化(ごまくわ)してタニグク(やま)岩窟(がんくつ)につれ()み、339()てゐる()(かほ)草紙(さうし)にされ、340トカゲ(づら)(をとこ)一緒(いつしよ)()げられて(あわ)()き、341昨夜(さくや)立岩(たていは)(そば)人造(じんざう)化物(ばけもの)(たぶらか)され、342(ふか)陥穽(おとしあな)へおち()んで(むかふ)(ずね)をすりむき343()()山上(さんじやう)(まで)辿(たど)りつき、344七草(ななくさ)講釈(かうしやく)(えら)(さう)におつ(ぱじ)め、345それから、346ここ(まで)ダリヤの(あと)をおつてやつて()たのだらう。347どうだ(ちが)ふかな』
348(てん)『ウンー、349いかにも、350(まへ)()(とほ)り、351(おれ)()(とほ)り、352(もり)(からす)()(とほ)り、353受取(うけとり)(みぎ)(とほ)り、354その(とほ)りだ、355アツハヽヽヽ』
356(かみ)()『オイ、357禿(はげ)チヤン、358もう(あきら)めたがよからうぞ。359ダリヤ(ひめ)なんて、360(まへ)(しやう)()はないや。361(いま)(うち)改心(かいしん)して(おれ)尻拭(しりふき)になれ、362さうすりや(また)(うか)()もあらうぞ。363いつ(まで)悪業(あくごふ)をつづけてゐると364八万(はちまん)地獄(ぢごく)(かま)(こげ)おこしに(おと)されて(しま)ふぞ』
365(てん)『オイ子供(こども)366そのダリヤ(ひめ)は、367(まへ)(うち)にかくしてあるのと(ちが)ふか』
368(かみ)()『ウン、369(かく)してある、370(たしか)に、371かくまつてあるのだ』
372(てん)『そりや、373どこに(かく)してあるのだ。374一寸(ちよつと)()つて(もら)へまいかな』
375(かみ)()『バカを()ふない、376かくしたものを()阿呆(あはう)があるかい。377(かく)した以上(いじやう)は、378どこ(まで)もかくすのが本当(ほんたう)だ』
379コブライ『もしもし天真坊(てんしんばう)さま、380この子供(こども)本当(ほんたう)(かみ)(さま)()たやうな子供(こども)ですな。381貴方(あなた)ももういい加減(かげん)(かぶと)()いだらどうですか。382ダリヤさまを(あきら)めては如何(どう)ですか。383貴方(あなた)(ひたひ)には悪相(あくさう)(あら)はれてゐますがな、384改心(かいしん)するのは(いま)(とき)ですよ。385(わたし)はここ(まで)ついて()ましたが、386貴方(あなた)改心(かいしん)するとせないとに(かかは)らず、387もう此処(ここ)でお(ひま)(もら)つて()(かみ)さまのやうな子供(こども)にお尻拭(しりふき)にでも使(つか)つて(もら)ひますよ』
388(かみ)()(かみ)()(かみ)(つか)ふる(きよ)きもの
389(たれ)泥棒(どろばう)(しり)()かすか』
390コブライ『これはしたり失礼(しつれい)(こと)()ひました
391泥棒(どろばう)()をも(わきま)へずして』
392(てん)小賢(こざか)しく(かみ)()らしく(まを)すとも
393天真坊(てんしんばう)にはトテも(かな)ふまい。
394それよりもダリヤの(ひめ)在所(ありか)をば
395(はや)()らせよお(かね)やるから』
396(かみ)()(けつ)(くら)観音(くわんおん)さまの化身(けしん)ぞや
397(うそ)をこくなよ玄真(げんしん)(まが)
398()(なが)399プスツと(ざう)()をこいたやうな(おと)()(しろ)(けむり)となつて(しま)つた。400つれの子供(こども)(かげ)(かたち)もなくなつて(しま)つた。
401大正一四・一一・七 旧九・二一 北村隆光録)
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