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霊界物語
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
第71巻(戌の巻)
序文
総説
第1篇 追僧軽迫
第1章 追劇
第2章 生臭坊
第3章 門外漢
第4章 琴の綾
第5章 転盗
第6章 達引
第7章 夢の道
第2篇 迷想痴色
第8章 夢遊怪
第9章 踏違ひ
第10章 荒添
第11章 異志仏
第12章 泥壁
第13章 詰腹
第14章 障路
第15章 紺霊
第3篇 惨嫁僧目
第16章 妖魅返
第17章 夢現神
第18章 金妻
第19章 角兵衛獅子
第20章 困客
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霊界物語
>
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
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第71巻(戌の巻)
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<<< 角兵衛獅子
(B)
(N)
余白歌 >>>
第二〇章
困客
(
こんきやく
)
〔一八〇九〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第71巻 山河草木 戌の巻
篇:
第3篇 惨嫁僧目
よみ(新仮名遣い):
さんかそうもく
章:
第20章 困客
よみ(新仮名遣い):
こんきゃく
通し章番号:
1809
口述日:
1926(大正15)年02月01日(旧12月19日)
口述場所:
月光閣
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1929(昭和4)年2月1日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
月の国々を宣伝に回っている照国別、照公、梅公別の三人は、宣伝歌を歌いながら入江村の近くまでやってきていた
3人はスガの里への道程として、入江村に逗留しようとしていた。そこへ、草むらの中から人の唸り声が聞こえてくる。梅公別は倒れている坊主を見つけ、天の数歌を奏上すると、坊主は息を吹き返した。
梅公別がふと見れば、それはオーラ山で自分が言向け和した、玄真坊であった。玄真坊はここまできてようやく改心し、一行の共に加えてくれと梅公別に頼み込む。
一行は入江村の浜屋旅館に宿を取る。まず、梅公別が高姫に気づき、玄真坊は高姫に黄金を奪い取られたことを一同に話す。
一方、高姫も照国別一行に気づく。宣伝使たちを恐れた妖幻坊の杢助と高姫は、旅館を抜け出すと夜陰にまぎれ、舟を盗んでハルの海をスガの里に向けて漕ぎ出し、逃げてしまった。
翌朝、照国別一行も船をあつらえ、スガの港を指して出立した。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2019-05-11 01:35:17
OBC :
rm7120
愛善世界社版:
271頁
八幡書店版:
第12輯 599頁
修補版:
校定版:
282頁
普及版:
133頁
初版:
ページ備考:
001
『
瑞魂
(
みづのみたま
)
の
大神
(
おほかみ
)
が
002
勅命
(
みこと
)
を
畏
(
かしこ
)
みフサの
国
(
くに
)
003
ウブスナ
山
(
やま
)
の
霊場
(
れいぢやう
)
ゆ
004
月
(
つき
)
の
神国
(
みくに
)
に
蟠
(
わだか
)
まる
005
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
悪身魂
(
あくみたま
)
006
言向和
(
ことむけやは
)
し
天国
(
てんごく
)
の
007
神園
(
みその
)
に
救
(
すく
)
ひ
助
(
たす
)
けむと
008
照国別
(
てるくにわけ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
009
一行
(
いつかう
)
四
(
よ
)
人
(
にん
)
は
河鹿山
(
かじかやま
)
010
烈
(
はげ
)
しき
風
(
かぜ
)
に
吹
(
ふ
)
かれつつ
011
祠
(
ほこら
)
の
森
(
もり
)
や
山口
(
やまぐち
)
や
012
怪
(
あや
)
しの
森
(
もり
)
を
乗
(
の
)
り
越
(
こ
)
えて
013
彼方
(
あなた
)
此方
(
こなた
)
と
駆
(
か
)
けめぐり
014
神
(
かみ
)
の
誠
(
まこと
)
の
御教
(
みをしへ
)
を
015
国人
(
くにびと
)
達
(
たち
)
に
宣
(
の
)
り
伝
(
つた
)
へ
016
病
(
や
)
めるを
癒
(
いや
)
し
貧
(
まづ
)
しきを
017
救
(
すく
)
ひ
助
(
たす
)
けて
今
(
いま
)
此所
(
ここ
)
に
018
百
(
もも
)
の
神業
(
かむわざ
)
仕
(
つか
)
へつつ
019
トルマン
国
(
ごく
)
の
危難
(
きなん
)
をば
020
救
(
すく
)
ひて
此所
(
ここ
)
迄
(
まで
)
来
(
きた
)
りけり
021
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
022
神
(
かみ
)
の
身魂
(
みたま
)
の
幸
(
さちは
)
ひて
023
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
が
使命
(
しめい
)
を
詳細
(
まつぶさ
)
に
024
遂
(
と
)
げさせ
玉
(
たま
)
へと
願
(
ね
)
ぎ
奉
(
まつ
)
る
025
大日
(
おほひ
)
は
照
(
て
)
るとも
曇
(
くも
)
るとも
026
月
(
つき
)
は
盈
(
み
)
つとも
虧
(
か
)
くる
共
(
とも
)
027
仮令
(
たとへ
)
大地
(
だいち
)
は
沈
(
しづ
)
むとも
028
曲津
(
まがつ
)
の
神
(
かみ
)
は
猛
(
たけ
)
ぶとも
029
誠
(
まこと
)
の
神
(
かみ
)
の
御
(
おん
)
力
(
ちから
)
030
吾
(
わが
)
身
(
み
)
に
浴
(
あ
)
びし
其
(
その
)
上
(
うへ
)
は
031
如何
(
いか
)
なる
曲
(
まが
)
も
恐
(
おそ
)
れむや
032
進
(
すす
)
めや
進
(
すす
)
めいざ
進
(
すす
)
め
033
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
は
神
(
かみ
)
の
子
(
こ
)
神
(
かみ
)
の
宮
(
みや
)
034
虎
(
とら
)
狼
(
おほかみ
)
や
獅子
(
しし
)
熊
(
くま
)
や
035
鬼
(
おに
)
や
大蛇
(
をろち
)
の
曲神
(
まがかみ
)
が
036
如何
(
いか
)
程
(
ほど
)
猛
(
たけ
)
り
狂
(
くる
)
ふとも
037
何
(
なに
)
か
恐
(
おそ
)
れむ
敷島
(
しきしま
)
の
038
大和
(
やまと
)
男子
(
をのこ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
039
勝利
(
しようり
)
の
都
(
みやこ
)
に
至
(
いた
)
る
迄
(
まで
)
040
いつかな
怯
(
ひるま
)
ぬ
雄心
(
をごころ
)
の
041
大和心
(
やまとごころ
)
を
振
(
ふ
)
り
起
(
おこ
)
し
042
進
(
すす
)
みて
行
(
ゆ
)
かむ
大野原
(
おほのはら
)
043
地獄
(
ぢごく
)
は
忽
(
たちま
)
ち
天国
(
てんごく
)
と
044
吾
(
わが
)
言霊
(
ことたま
)
に
宣
(
の
)
り
直
(
なほ
)
し
045
上
(
かみ
)
は
王侯
(
わうこう
)
貴人
(
きじん
)
より
046
下
(
しも
)
旃陀羅
(
せんだら
)
に
至
(
いた
)
るまで
047
神
(
かみ
)
の
救
(
すく
)
ひの
手
(
て
)
を
伸
(
の
)
べて
048
一蓮
(
いちれん
)
托生
(
たくしやう
)
救
(
すく
)
ひ
上
(
あ
)
げ
049
瑞
(
みづ
)
の
霊
(
みたま
)
の
神力
(
しんりき
)
を
050
現
(
あら
)
はしまつる
吾
(
わが
)
使命
(
しめい
)
051
遂
(
と
)
げさせ
玉
(
たま
)
へ
惟神
(
かむながら
)
052
皇
(
すめ
)
大神
(
おほかみ
)
の
御
(
おん
)
前
(
まへ
)
に
053
畏
(
かしこ
)
み
畏
(
かしこ
)
み
願
(
ね
)
ぎ
奉
(
まつ
)
る
054
三千
(
さんぜん
)
世界
(
せかい
)
の
梅
(
うめ
)
の
花
(
はな
)
055
一度
(
いちど
)
に
開
(
ひら
)
く
神
(
かみ
)
の
国
(
くに
)
056
開
(
ひら
)
いて
散
(
ち
)
りて
実
(
み
)
を
結
(
むす
)
ぶ
057
日
(
ひ
)
の
大神
(
おほかみ
)
や
月
(
つき
)
の
神
(
かみ
)
058
大地
(
だいち
)
を
守
(
まも
)
らす
荒金
(
あらがね
)
の
059
司
(
つかさ
)
とゐます
瑞魂
(
みづみたま
)
060
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのを
)
の
大神
(
おほかみ
)
の
061
深
(
ふか
)
き
恵
(
めぐみ
)
は
忘
(
わす
)
れまじ
062
尊
(
たふと
)
き
勲功
(
いさを
)
は
忘
(
わす
)
れまじ
063
進
(
すす
)
めよ
進
(
すす
)
めいざ
進
(
すす
)
め
064
悪魔
(
あくま
)
の
砦
(
とりで
)
に
立向
(
たちむか
)
ひ
065
摂受
(
せつじゆ
)
の
剣
(
つるぎ
)
を
抜
(
ぬ
)
き
持
(
も
)
ちて
066
言向和
(
ことむけやは
)
すは
案
(
あん
)
の
内
(
うち
)
067
アヽ
勇
(
いさ
)
ましや
勇
(
いさ
)
ましや
068
神
(
かみ
)
の
使命
(
しめい
)
を
身
(
み
)
に
受
(
う
)
けし
069
名
(
な
)
さへ
尊
(
たふと
)
き
宣伝使
(
せんでんし
)
070
到
(
いた
)
る
所
(
ところ
)
に
敵
(
てき
)
はなし
071
バラモン
教
(
けう
)
やウラル
教
(
けう
)
072
如何
(
いか
)
程
(
ほど
)
刃向
(
はむか
)
ひ
来
(
きた
)
るとも
073
皇
(
すめ
)
大神
(
おほかみ
)
の
賜
(
たま
)
ひてし
074
厳言霊
(
いづことたま
)
の
光
(
ひかり
)
にて
075
暗夜
(
やみよ
)
を
照
(
て
)
らし
神徳
(
しんとく
)
を
076
月
(
つき
)
の
御国
(
みくに
)
に
輝
(
かがや
)
かし
077
照
(
て
)
らさにやおかぬ
吾
(
わが
)
使命
(
しめい
)
078
守
(
まも
)
らせ
玉
(
たま
)
へと
願
(
ね
)
ぎ
奉
(
まつ
)
る
079
アヽ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
080
霊
(
みたま
)
幸
(
さちは
)
ひましませよ』
081
斯
(
か
)
く
歌
(
うた
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
入江
(
いりえ
)
の
村
(
むら
)
近
(
ちか
)
き
田圃道
(
たんぼみち
)
まで、
082
やつて
来
(
き
)
たのは
照国別
(
てるくにわけ
)
、
083
照公
(
てるこう
)
、
084
梅公別
(
うめこうわけ
)
の
三
(
さん
)
人
(
にん
)
であつた。
085
照公
(
てるこう
)
『モシ、
086
先生
(
せんせい
)
、
087
モウ
日
(
ひ
)
も
暮
(
く
)
れ
近
(
ちか
)
くなりましたが
今晩
(
こんばん
)
は
入江
(
いりえ
)
の
村
(
むら
)
で
宿
(
やど
)
をとり、
088
緩
(
ゆつく
)
り
休息
(
きうそく
)
を
致
(
いた
)
しまして、
089
明日
(
みやうにち
)
は
船
(
ふね
)
でスガの
港
(
みなと
)
へ
行
(
ゆ
)
かうぢやありませぬか』
090
照国別
(
てるくにわけ
)
『
成程
(
なるほど
)
、
091
大分
(
だいぶん
)
に
疲
(
つか
)
れたやうだ、
092
先
(
ま
)
づ
此所
(
ここ
)
で
一服
(
いつぷく
)
しよう。
093
モウあの
村
(
むら
)
へは
遠
(
とほ
)
くはあるまいから』
094
梅公別
(
うめこうわけ
)
『
先生
(
せんせい
)
、
095
今晩
(
こんばん
)
は
是非
(
ぜひ
)
入江村
(
いりえむら
)
で
泊
(
とま
)
りませう。
096
浜屋
(
はまや
)
と
云
(
い
)
ふ
景色
(
けしき
)
よい
宿屋
(
やどや
)
が
御座
(
ござ
)
いますから
是非
(
ぜひ
)
そこへ
泊
(
とま
)
つて、
097
明日
(
あす
)
スガの
港
(
みなと
)
に
着
(
つ
)
く
事
(
こと
)
に
致
(
いた
)
しませう。
098
スガの
港
(
みなと
)
にはアリスと
云
(
い
)
ふ
薬屋
(
くすりや
)
の
長者
(
ちやうじや
)
がありまして、
099
その
息子
(
むすこ
)
には、
0991
イルク、
100
娘
(
むすめ
)
にはダリヤ
姫
(
ひめ
)
と
云
(
い
)
ふ
熱心
(
ねつしん
)
な
三五教
(
あななひけう
)
の
信者
(
しんじや
)
が
居
(
を
)
ります。
101
キツト
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
るに
違
(
ちが
)
ひありませぬから』
102
照国
(
てるくに
)
『さうだ、
103
梅公別
(
うめこうわけ
)
さまは
一度
(
いちど
)
お
泊
(
とま
)
りになつた
事
(
こと
)
があるさうだから、
104
心
(
こころ
)
安
(
やす
)
くてよからう』
105
照
(
てる
)
『
四方
(
よも
)
八方
(
やま
)
の
景色
(
けしき
)
を
遠
(
とほ
)
く
見渡
(
みわた
)
せば
106
コバルト
色
(
いろ
)
に
遠山
(
とほやま
)
かすめり』
107
照国
(
てるくに
)
『
薄墨
(
うすずみ
)
にぼかしたやうな
山影
(
やまかげ
)
は
108
スガの
里
(
さと
)
なる
高山
(
たかやま
)
ならむ』
109
梅
(
うめ
)
『
夏草
(
なつぐさ
)
の
生
(
お
)
ひ
茂
(
しげ
)
りたる
広野原
(
ひろのはら
)
110
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く
身
(
み
)
の
楽
(
たの
)
しくもある
哉
(
かな
)
。
111
今日
(
けふ
)
の
日
(
ひ
)
も
早
(
は
)
や
暮
(
く
)
れむとす
草枕
(
くさまくら
)
112
旅
(
たび
)
の
疲
(
つか
)
れを
宿
(
やど
)
に
癒
(
いや
)
さむ』
113
三
(
さん
)
人
(
にん
)
が
休
(
やす
)
んでゐる
後
(
うしろ
)
の
草
(
くさ
)
の
中
(
なか
)
から
何
(
なん
)
だか、
114
ウンウンと
呻
(
うな
)
り
声
(
ごゑ
)
が
聞
(
きこ
)
えて
来
(
く
)
る。
115
梅公別
(
うめこうわけ
)
は
耳敏
(
みみざと
)
くも
之
(
これ
)
を
聞
(
き
)
き、
116
ツカツカと
叢
(
くさむら
)
の
中
(
なか
)
の
呻
(
うめ
)
き
声
(
ごゑ
)
を
尋
(
たづ
)
ねて
近
(
ちか
)
づき
見
(
み
)
れば、
117
醜
(
みにく
)
い
賤
(
いや
)
しい
面
(
つら
)
をした
坊主
(
ばうず
)
が
一人
(
ひとり
)
半死
(
はんし
)
半生
(
はんしやう
)
の
態
(
てい
)
で
倒
(
たふ
)
れて
居
(
ゐ
)
る。
118
梅公別
(
うめこうわけ
)
は
直様
(
すぐさま
)
天
(
あま
)
の
数歌
(
かずうた
)
を
奏上
(
そうじやう
)
するや、
119
倒
(
たふ
)
れ
人
(
びと
)
はムクムクと
起
(
お
)
き
上
(
あが
)
り、
120
『
何方
(
どなた
)
か
知
(
し
)
りませぬが、
121
よくまア
助
(
たす
)
けて
下
(
くだ
)
さいました。
122
拙僧
(
せつそう
)
はバラモン
教
(
けう
)
の
修験者
(
しゆげんじや
)
で
天真坊
(
てんしんばう
)
と
申
(
まを
)
します』
123
梅公別
(
うめこうわけ
)
は、
124
どこか
見覚
(
みおぼ
)
えのある
顔
(
かほ
)
だなア……とよくよく
念入
(
ねんい
)
りに
調
(
しら
)
べて
見
(
み
)
ると、
125
オーラ
山
(
さん
)
に
立籠
(
たてこも
)
つて
大望
(
たいまう
)
を
企
(
たくら
)
んでゐた
妖僧
(
えうそう
)
の
玄真坊
(
げんしんばう
)
なる
事
(
こと
)
を
知
(
し
)
り、
126
『やアお
前
(
まへ
)
は
玄真坊
(
げんしんばう
)
ぢやないか、
127
オーラ
山
(
さん
)
で
改心
(
かいしん
)
をすると
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
128
再
(
ふたた
)
び
悪
(
あく
)
に
復
(
かへ
)
つて
三百
(
さんびやく
)
の
手下
(
てした
)
を
引率
(
ひきつ
)
れ、
129
各地
(
かくち
)
に
押入
(
おしいり
)
強盗
(
がうたう
)
をやつて
居
(
ゐ
)
ると
云
(
い
)
ふ
噂
(
うはさ
)
であつたが、
130
天罰
(
てんばつ
)
は
恐
(
おそ
)
ろしいものだ。
131
何人
(
なにびと
)
に、
132
お
前
(
まへ
)
は
虐
(
しひた
)
げられて、
133
こんな
所
(
ところ
)
へ
倒
(
たふ
)
れて
居
(
ゐ
)
たのだ。
134
察
(
さつ
)
する
処
(
ところ
)
持前
(
もちまへ
)
のデレ
根性
(
こんじやう
)
を
起
(
おこ
)
し、
135
女
(
をんな
)
に
一物
(
いちもつ
)
を
締
(
しめ
)
つけられ、
136
息
(
いき
)
の
根
(
ね
)
の
止
(
と
)
まつたのを
幸
(
さいは
)
ひ、
137
かやうな
淋
(
さび
)
しき
原野
(
げんや
)
に
遺棄
(
ゐき
)
されたのだらう、
138
扨
(
さて
)
も
扨
(
さて
)
も
憐
(
あは
)
れな
代物
(
しろもの
)
だな』
139
玄
(
げん
)
『これはこれは
恐
(
おそ
)
れ
入
(
い
)
りました。
140
私
(
わたし
)
はお
察
(
さつ
)
しの
通
(
とほ
)
り、
141
女
(
をんな
)
に
睾丸
(
きんたま
)
を
締
(
し
)
めつけられ、
142
三万
(
さんまん
)
両
(
りやう
)
の
金
(
かね
)
をぼつたくられ、
143
かやうな
所
(
ところ
)
へ、
144
ほかされたもので
御座
(
ござ
)
います。
145
只今
(
ただいま
)
限
(
かぎ
)
り
悪事
(
あくじ
)
は
止
(
や
)
めまする。
146
さうして
女
(
をんな
)
等
(
など
)
には、
147
キツト
今後
(
こんご
)
目
(
め
)
をくれませぬから、
148
何卒
(
どうぞ
)
私
(
わたし
)
をお
荷物持
(
にもつもち
)
にでも
構
(
かま
)
ひませぬ、
149
お
伴
(
とも
)
に
連
(
つ
)
れて
行
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さいませぬか』
150
梅
(
うめ
)
『やア、
151
俺
(
おれ
)
にはお
師匠
(
ししやう
)
様
(
さま
)
がある。
152
俺
(
おれ
)
一人
(
ひとり
)
の
一量見
(
いちりやうけん
)
では
如何
(
どう
)
する
事
(
こと
)
も
出来
(
でき
)
ぬ。
153
先
(
ま
)
づお
師匠
(
ししやう
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
意見
(
いけん
)
を
聞
(
き
)
いた
上
(
うへ
)
の
事
(
こと
)
にしよう』
154
照国別
(
てるくにわけ
)
は
最前
(
さいぜん
)
から
二人
(
ふたり
)
の
問答
(
もんだふ
)
を
聞
(
き
)
き
終
(
をは
)
り
様子
(
やうす
)
を
知
(
し
)
つて
居
(
ゐ
)
るので、
155
梅公別
(
うめこうわけ
)
の
言葉
(
ことば
)
も
待
(
ま
)
たず、
156
『ヤ、
157
玄真坊
(
げんしんばう
)
とやら、
158
最早
(
もは
)
や
日
(
ひ
)
の
暮
(
くれ
)
にも
近
(
ちか
)
いから、
159
緩
(
ゆつく
)
りと
宿屋
(
やどや
)
にでも
行
(
い
)
つて
話
(
はなし
)
を
承
(
うけたま
)
はらう。
160
之
(
これ
)
から
吾々
(
われわれ
)
は
入江村
(
いりえむら
)
の
浜屋
(
はまや
)
旅館
(
りよくわん
)
に
一泊
(
いつぱく
)
するつもりだ。
161
お
前
(
まへ
)
も
一緒
(
いつしよ
)
に
行
(
ゆ
)
かうぢやないか』
162
玄
(
げん
)
『へ、
163
何
(
なん
)
と
仰有
(
おつしや
)
います、
164
浜屋
(
はまや
)
旅館
(
りよくわん
)
にお
泊
(
とま
)
りで
御座
(
ござ
)
いますか。
165
あの
家
(
いへ
)
はお
客
(
きやく
)
があまり
沢山
(
たくさん
)
で、
166
どさくつてゐますから、
167
少
(
すこ
)
し
景色
(
けしき
)
は
悪
(
わる
)
う
御座
(
ござ
)
いますが、
168
玉屋
(
たまや
)
と
云
(
い
)
ふ
立派
(
りつぱ
)
な
宿屋
(
やどや
)
がありますから、
169
其処
(
そこ
)
へお
泊
(
とま
)
りになつては
如何
(
いかが
)
で
御座
(
ござ
)
いませう。
170
私
(
わたし
)
もお
伴
(
とも
)
をさせて
頂
(
いただ
)
きますから』
171
梅
(
うめ
)
『ヤ、
172
一旦
(
いつたん
)
浜屋
(
はまや
)
旅館
(
りよくわん
)
と
相談
(
さうだん
)
が
定
(
きま
)
つた
上
(
うへ
)
は
是非
(
ぜひ
)
とも
浜屋
(
はまや
)
へ
行
(
ゆ
)
かう。
173
吾々
(
われわれ
)
の
精霊
(
せいれい
)
は
已
(
すで
)
に
浜屋
(
はまや
)
に
納
(
をさ
)
まつて
居
(
ゐ
)
るのだから』
174
玄
(
げん
)
『そら、
175
さうで
御座
(
ござ
)
いませうが、
176
ならう
事
(
こと
)
なら
待遇
(
あしらひ
)
も
良
(
よ
)
し、
177
夜具
(
やぐ
)
も
上等
(
じやうとう
)
なり、
178
家
(
いへ
)
も
新
(
あたら
)
しう
御座
(
ござ
)
いますから、
179
玉屋
(
たまや
)
になさつたら
如何
(
いかが
)
で
御座
(
ござ
)
いませうかな』
180
梅
(
うめ
)
『ハヽヽヽヽ、
181
此
(
この
)
男
(
をとこ
)
は
十日
(
とをか
)
許
(
ばか
)
り
浜屋
(
はまや
)
旅館
(
りよくわん
)
に
泊
(
とま
)
つてゐたのだらう。
182
越後
(
えちご
)
獅子
(
じし
)
に
小
(
こつ
)
ぴどくこみ
割
(
わ
)
られ、
183
捕手
(
とりて
)
にフン
込
(
ご
)
まれた
鬼門
(
きもん
)
の
場所
(
ばしよ
)
だから、
184
浜屋
(
はまや
)
は
厭
(
いや
)
だらう。
185
ヤ、
186
それは
無理
(
むり
)
もない。
187
然
(
しか
)
し
吾々
(
われわれ
)
がついてゐる
以上
(
いじやう
)
は
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
だ。
188
ソツと
後
(
うしろ
)
から
跟
(
つ
)
いて
来
(
こ
)
い。
189
お
前
(
まへ
)
の
身柄
(
みがら
)
は
引受
(
ひきう
)
けてやるから、
190
その
代
(
かは
)
り
191
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
のやうな
心
(
こころ
)
では
一
(
いち
)
日
(
にち
)
だつて
安心
(
あんしん
)
に
世
(
よ
)
を
暮
(
くら
)
す
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ぬぞ。
192
心
(
こころ
)
の
底
(
そこ
)
から
悔
(
く
)
い
改
(
あらた
)
めるか、
193
どうぢや』
194
玄
(
げん
)
『ハイ、
195
生
(
うま
)
れ
赤子
(
あかご
)
になつてお
仕
(
つか
)
へ
致
(
いた
)
します。
196
何卒
(
なにとぞ
)
お
助
(
たす
)
け
下
(
くだ
)
さいませ』
197
梅
(
うめ
)
『ウン、
198
ヨシ、
199
先生
(
せんせい
)
、
200
今
(
いま
)
斯様
(
かやう
)
に
申
(
まを
)
してゐますが、
201
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
此奴
(
こいつ
)
の
悪事
(
あくじ
)
は
芝
(
しば
)
を
被
(
かぶ
)
らねば
直
(
なほ
)
らない
奴
(
やつ
)
で
御座
(
ござ
)
いますが、
202
私
(
わたし
)
も
何
(
なん
)
とかして、
203
改心
(
かいしん
)
をさして
遣
(
や
)
り
度
(
た
)
う
御座
(
ござ
)
いますから、
204
お
伴
(
とも
)
をさせて
下
(
くだ
)
さいませ。
205
梅公別
(
うめこうわけ
)
が
無調法
(
ぶてうはふ
)
のないやうに
引
(
ひ
)
き
受
(
う
)
けますから』
206
照国
(
てるくに
)
『
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
、
207
二三
(
にさん
)
日間
(
にちかん
)
連
(
つ
)
れて
見
(
み
)
よう。
208
如何
(
どう
)
してもいかなけりや、
209
突放
(
つつぱな
)
す
迄
(
まで
)
の
事
(
こと
)
だ。
210
さア
日
(
ひ
)
も
暮
(
く
)
れかかつた、
211
急
(
いそ
)
いで
行
(
ゆ
)
かう』
212
と
又
(
また
)
もや
声
(
こゑ
)
も
涼
(
すず
)
しく
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
歌
(
うた
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
213
入江村
(
いりえむら
)
の
浜屋
(
はまや
)
をさして
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
214
浜屋
(
はまや
)
の
表口
(
おもてぐち
)
にさしかかると
客引
(
きやくひき
)
の
女
(
をんな
)
が、
215
二三
(
にさん
)
人
(
にん
)
門口
(
かどぐち
)
に
立
(
た
)
つて、
216
女
(
をんな
)
『もしお
客
(
きやく
)
さま、
217
どちらにお
出
(
いで
)
で
御座
(
ござ
)
います。
218
明日
(
みやうにち
)
の
船
(
ふね
)
の
都合
(
つがふ
)
も
宜
(
よろ
)
しう
御座
(
ござ
)
いますから
此方
(
こちら
)
にお
泊
(
とま
)
り
下
(
くだ
)
さいませ。
219
十分
(
じふぶん
)
丁寧
(
ていねい
)
に、
220
待遇
(
あしらひ
)
も
致
(
いた
)
しますから。
221
さうして、
222
加減
(
かげん
)
のいい
潮湯
(
しほゆ
)
も
沸
(
わ
)
いてゐますから、
223
何卒
(
どうぞ
)
当家
(
たうけ
)
でお
泊
(
とま
)
りを
願
(
ねが
)
ひます』
224
梅
(
うめ
)
『ヤ、
225
お
前
(
まへ
)
がさう
云
(
い
)
はなくても、
226
此方
(
こちら
)
の
方
(
はう
)
からお
世話
(
せわ
)
になりたいと
思
(
おも
)
つて
来
(
き
)
たのだ。
227
一行
(
いつかう
)
四
(
よ
)
人
(
にん
)
だ、
228
よい
居間
(
ゐま
)
があるかな』
229
女
(
をんな
)
『ハイ、
230
裏
(
うら
)
に
離棟
(
はなれ
)
が
御座
(
ござ
)
いまして、
231
そのお
座敷
(
ざしき
)
からはハルの
海
(
うみ
)
の
鏡
(
かがみ
)
が
居
(
ゐ
)
乍
(
なが
)
らに
見
(
み
)
えまする。
232
何
(
なん
)
なら
二三
(
にさん
)
日
(
にち
)
御
(
ご
)
逗留
(
とうりう
)
下
(
くだ
)
さいますれば、
233
真帆
(
まほ
)
片帆
(
かたほ
)
の
行
(
ゆ
)
き
交
(
か
)
ふ
景色
(
けしき
)
は、
234
まるで
胡蝶
(
こてふ
)
が
春
(
はる
)
の
野辺
(
のべ
)
に
飛
(
と
)
び
交
(
か
)
ふやうで
御座
(
ござ
)
います』
235
梅
(
うめ
)
『もし
先生
(
せんせい
)
、
236
さアお
這入
(
はい
)
り
下
(
くだ
)
さい』
237
照国
(
てるくに
)
『そんなら
御免
(
ごめん
)
蒙
(
かうむ
)
らうか』
238
と
先
(
さき
)
に
立
(
た
)
つて
縄暖簾
(
なはのうれん
)
をくぐる。
239
玄真坊
(
げんしんばう
)
はビクビク
慄
(
ふる
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
240
照国別
(
てるくにわけ
)
の
後
(
うしろ
)
になり
小
(
ちひ
)
さくなつて
跟
(
つ
)
いて
行
(
ゆ
)
く。
241
次
(
つぎ
)
に
照公
(
てるこう
)
、
242
梅公別
(
うめこうわけ
)
は
亭主
(
ていしゆ
)
や
下女
(
げぢよ
)
に
愛嬌
(
あいけう
)
を
振
(
ふ
)
り
撒
(
ま
)
き
乍
(
なが
)
ら、
243
奥
(
おく
)
の
離棟
(
はなれ
)
に
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
244
先
(
ま
)
づ
入浴
(
にふよく
)
を
済
(
す
)
ませ
夕食
(
ゆふしよく
)
を
終
(
をは
)
り、
245
四
(
よ
)
人
(
にん
)
は
浴衣
(
ゆかた
)
がけになつて、
246
団扇
(
うちは
)
片手
(
かたて
)
に
罪
(
つみ
)
のない
話
(
はなし
)
に
耽
(
ふけ
)
つて
居
(
ゐ
)
ると、
247
表
(
おもて
)
の
二階
(
にかい
)
の
間
(
ま
)
に、
248
なまめかしい
声
(
こゑ
)
が
聞
(
きこ
)
えて
来
(
く
)
る。
249
梅公別
(
うめこうわけ
)
は
不思議
(
ふしぎ
)
さうに
首
(
くび
)
を
傾
(
かたむ
)
け
聞
(
き
)
いてゐる。
250
照
(
てる
)
『これ
梅公別
(
うめこうわけ
)
さま、
251
何
(
なに
)
思案
(
しあん
)
をして
居
(
ゐ
)
るのだい。
252
ありや
何処
(
どつか
)
の
女
(
をんな
)
が
客
(
きやく
)
と
ふざけ
て
居
(
ゐ
)
るのだい』
253
梅
(
うめ
)
『いや、
254
どうも
合点
(
がてん
)
の
行
(
ゆ
)
かぬ
声
(
こゑ
)
だ。
255
千草
(
ちぐさ
)
の
高姫
(
たかひめ
)
ぢやあるまいかな』
256
照
(
てる
)
『ヘン、
257
馬鹿
(
ばか
)
を
云
(
い
)
ふない、
258
千草
(
ちぐさ
)
の
高姫
(
たかひめ
)
が、
259
こんな
所
(
ところ
)
へ
泊
(
とま
)
るものか。
260
彼奴
(
あいつ
)
は
屹度
(
きつと
)
何処
(
どこ
)
かの
王城
(
わうじやう
)
へ
忍
(
しの
)
び
入
(
い
)
り、
261
又
(
また
)
もや
刹帝利
(
せつていり
)
の
后
(
きさき
)
に
化
(
ば
)
け
込
(
こ
)
んでゐやがるだらう』
262
梅
(
うめ
)
『ヤ、
263
どうも
怪
(
あや
)
しいぞ。
264
一
(
ひと
)
つ
照公
(
てるこう
)
、
265
お
前
(
まへ
)
調
(
しら
)
べて
見
(
み
)
てくれぬか』
266
玄真坊
(
げんしんばう
)
は
小
(
ちひ
)
さい
声
(
こゑ
)
で、
267
玄
(
げん
)
『モシお
三
(
さん
)
人
(
にん
)
さま、
268
あの
声
(
こゑ
)
は
千草
(
ちぐさ
)
の
高姫
(
たかひめ
)
に
間違
(
まちが
)
ひ
御座
(
ござ
)
いませぬ。
269
私
(
わたし
)
の
睾丸
(
きんたま
)
を
締
(
し
)
めつけ、
270
三万
(
さんまん
)
両
(
りやう
)
の
金
(
かね
)
をぼつたくつた
大悪人
(
だいあくにん
)
で
御座
(
ござ
)
います。
271
何卒
(
どうぞ
)
彼奴
(
あいつ
)
をとつちめ、
272
三万
(
さんまん
)
両
(
りやう
)
を
取
(
と
)
り
返
(
かへ
)
して
下
(
くだ
)
さい。
273
さうすりや
一万
(
いちまん
)
両
(
りやう
)
宛
(
づつ
)
、
274
お
前
(
まへ
)
さま
等
(
たち
)
に
進上
(
しんじやう
)
致
(
いた
)
しまする』
275
梅
(
うめ
)
『
馬鹿
(
ばか
)
を
云
(
い
)
ふな、
276
吾々
(
われわれ
)
は
金
(
かね
)
なんか
必要
(
ひつえう
)
はない。
277
況
(
ま
)
して
左守
(
さもり
)
の
館
(
やかた
)
でぼつたくつた
金
(
かね
)
ぢやないか』
278
玄
(
げん
)
『ハイ、
279
お
察
(
さつ
)
しの
通
(
とほ
)
りで
御座
(
ござ
)
います』
280
梅
(
うめ
)
『どうやら
千草
(
ちぐさ
)
の
高姫
(
たかひめ
)
の
相客
(
あひきやく
)
は
人間
(
にんげん
)
ぢやないらしいぞ。
281
先生
(
せんせい
)
、
282
之
(
これ
)
から
私
(
わたし
)
が
正体
(
しやうたい
)
を
見届
(
みとど
)
けて
来
(
き
)
ます。
283
何卒
(
どうぞ
)
暫
(
しばら
)
く
此処
(
ここ
)
に
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
て
下
(
くだ
)
さいや』
284
照国
(
てるくに
)
『
人
(
ひと
)
さまの
居間
(
ゐま
)
へ
飛
(
と
)
び
込
(
こ
)
んで
調
(
しら
)
べると
云
(
い
)
ふ
失礼
(
しつれい
)
な
事
(
こと
)
はないぢやないか、
285
そんな
事
(
こと
)
せずとも
自然
(
しぜん
)
に
分
(
わか
)
つて
来
(
く
)
るよ』
286
斯
(
か
)
く
話
(
はな
)
す
時
(
とき
)
しも
二階
(
にかい
)
の
障子
(
しやうじ
)
をサツと
開
(
あ
)
けて
離
(
はな
)
れ
座敷
(
ざしき
)
を
覗
(
のぞ
)
いたのは
千草
(
ちぐさ
)
の
高姫
(
たかひめ
)
であつた、
287
梅公
(
うめこう
)
の
顔
(
かほ
)
と
高姫
(
たかひめ
)
の
顔
(
かほ
)
はピツタリと
合
(
あ
)
つた。
288
千草
(
ちぐさ
)
の
高姫
(
たかひめ
)
は
梅公
(
うめこう
)
の
顔
(
かほ
)
をパツと
見
(
み
)
るより、
289
恋
(
こひ
)
しいやら
怖
(
おそ
)
ろしいやら、
290
顔
(
かほ
)
を
真蒼
(
まつさを
)
にしてピリピリと
慄
(
ふる
)
ふた。
291
妖幻坊
(
えうげんばう
)
の
杢助
(
もくすけ
)
は
高姫
(
たかひめ
)
の
様子
(
やうす
)
の
只
(
ただ
)
ならぬに
不審
(
ふしん
)
を
起
(
おこ
)
し、
292
『オイ、
293
高
(
たか
)
チヤン、
294
お
前
(
まへ
)
は
様子
(
やうす
)
が
変
(
へん
)
ぢやないか、
295
何
(
なに
)
をオヂオヂして
居
(
ゐ
)
るのだ』
296
千
(
ち
)
『
杢助
(
もくすけ
)
さま、
297
あれ
御覧
(
ごらん
)
なさいませ、
298
三五教
(
あななひけう
)
の
照国別
(
てるくにわけ
)
、
299
照公
(
てるこう
)
、
300
梅公別
(
うめこうわけ
)
の
三
(
さん
)
宣伝使
(
せんでんし
)
が
離棟
(
はなれ
)
の
居間
(
ゐま
)
に
泊
(
とま
)
つて
居
(
ゐ
)
ます。
301
そして
玄真坊
(
げんしんばう
)
が
横
(
よこ
)
にゐますのを
見
(
み
)
れば、
302
三万
(
さんまん
)
両
(
りやう
)
の
金
(
かね
)
を
取
(
と
)
り
返
(
かへ
)
す
為
(
ため
)
に、
303
息
(
いき
)
をふきかへして
来
(
き
)
たものと
思
(
おも
)
はれます』
304
杢
(
もく
)
『やアそりや
大変
(
たいへん
)
だ、
305
三五教
(
あななひけう
)
の
奴
(
やつ
)
と
聞
(
き
)
けば
俺
(
おれ
)
もチツト
虫
(
むし
)
が
好
(
す
)
かない、
306
何
(
なん
)
とかしてお
前
(
まへ
)
と
二人
(
ふたり
)
、
307
此所
(
ここ
)
を
逃
(
に
)
げ
出
(
だ
)
さうぢやないか』
308
千
(
ち
)
『
杢助
(
もくすけ
)
さま、
309
貴方
(
あなた
)
も
気
(
き
)
の
弱
(
よわ
)
い
事
(
こと
)
を
仰有
(
おつしや
)
いますな、
310
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
で
彼奴
(
あいつ
)
等
(
ら
)
を
家来扱
(
けらいあつかひ
)
をして
居
(
を
)
つたぢやありませぬか。
311
一
(
ひと
)
つ
貴方
(
あなた
)
の
大
(
おほ
)
きな
声
(
こゑ
)
で、
3111
呶鳴
(
どな
)
つて
下
(
くだ
)
されば
312
照国別
(
てるくにわけ
)
等
(
など
)
と
云
(
い
)
ふ
へぼ
宣伝使
(
せんでんし
)
は、
313
一
(
ひと
)
たまりもなく
逃
(
に
)
げ
出
(
だ
)
すぢやありませぬか』
314
杢
(
もく
)
『ウン、
315
それもさうだが、
316
今
(
いま
)
荒立
(
あらだ
)
てては
事
(
こと
)
が
面倒
(
めんだう
)
になる。
317
俺
(
おれ
)
にも
一
(
ひと
)
つの
考
(
かんが
)
へがあるからのう』
318
千
(
ち
)
『
智謀
(
ちぼう
)
絶倫
(
ぜつりん
)
と
聞
(
きこ
)
えた
貴方
(
あなた
)
の
事
(
こと
)
ですから、
319
滅多
(
めつた
)
に
如才
(
じよさい
)
はありますまい。
320
それで
何
(
なに
)
も
彼
(
か
)
も
貴方
(
あなた
)
にお
任
(
まか
)
せ
致
(
いた
)
して
置
(
お
)
きます』
321
杢
(
もく
)
『ウン、
322
今夜
(
こんや
)
の
処置
(
しよち
)
は
俺
(
おれ
)
に
任
(
まか
)
しておけ。
323
俺
(
おれ
)
に
計略
(
けいりやく
)
があるから、
324
さア
千草
(
ちぐさ
)
の
高姫
(
たかひめ
)
、
325
此方
(
こちら
)
へおじや』
326
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
二階
(
にかい
)
の
段梯子
(
だんばしご
)
をトントントンと
下
(
お
)
り、
327
表
(
おもて
)
へ
出
(
で
)
て
番頭
(
ばんとう
)
に
小判
(
こばん
)
を
一
(
いち
)
枚
(
まい
)
握
(
にぎ
)
らせ、
328
杢
(
もく
)
『
一寸
(
ちよつと
)
月
(
つき
)
を
賞
(
しやう
)
して
半時
(
はんとき
)
ばかり
経
(
た
)
てば
帰
(
かへ
)
つて
来
(
く
)
るから、
329
表戸
(
おもてど
)
開
(
あ
)
けて
置
(
お
)
いてくれよ』
330
と、
331
巧
(
うま
)
く
誤魔化
(
ごまくわ
)
し
高姫
(
たかひめ
)
と
共
(
とも
)
に
浜辺
(
はまべ
)
に
駆
(
か
)
け
出
(
だ
)
し、
332
一艘
(
いつさう
)
の
舟
(
ふね
)
を
盗
(
ぬす
)
んで
[
※
第72巻第2章では高砂丸という客船に乗り込んだことになっている。
]
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
にハルの
湖
(
うみ
)
の
波
(
なみ
)
を
分
(
わ
)
けてスガの
港
(
みなと
)
へ
向
(
む
)
け
漕
(
こ
)
いで
行
(
ゆ
)
く。
333
照国別
(
てるくにわけ
)
の
一行
(
いつかう
)
は
一夜
(
いちや
)
を
此所
(
ここ
)
に
明
(
あ
)
かし、
334
あくる
日
(
ひ
)
の
朝
(
あさ
)
早
(
はや
)
くより
一艘
(
いつそう
)
の
船
(
ふね
)
を
誂
(
あつら
)
へ、
335
之
(
これ
)
亦
(
また
)
スガの
港
(
みなと
)
をさして
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く
事
(
こと
)
となつた。
336
あゝ
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
。
337
(
大正一五・二・一
旧一四・一二・一九
於月光閣
北村隆光
録)
338
(昭和一〇・六・二四 王仁校正)
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