霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第二〇章 困客(こんきやく)〔一八〇九〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第71巻 山河草木 戌の巻 篇:第3篇 惨嫁僧目 よみ(新仮名遣い):さんかそうもく
章:第20章 困客 よみ(新仮名遣い):こんきゃく 通し章番号:1809
口述日:1926(大正15)年02月01日(旧12月19日) 口述場所:月光閣 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1929(昭和4)年2月1日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
月の国々を宣伝に回っている照国別、照公、梅公別の三人は、宣伝歌を歌いながら入江村の近くまでやってきていた
3人はスガの里への道程として、入江村に逗留しようとしていた。そこへ、草むらの中から人の唸り声が聞こえてくる。梅公別は倒れている坊主を見つけ、天の数歌を奏上すると、坊主は息を吹き返した。
梅公別がふと見れば、それはオーラ山で自分が言向け和した、玄真坊であった。玄真坊はここまできてようやく改心し、一行の共に加えてくれと梅公別に頼み込む。
一行は入江村の浜屋旅館に宿を取る。まず、梅公別が高姫に気づき、玄真坊は高姫に黄金を奪い取られたことを一同に話す。
一方、高姫も照国別一行に気づく。宣伝使たちを恐れた妖幻坊の杢助と高姫は、旅館を抜け出すと夜陰にまぎれ、舟を盗んでハルの海をスガの里に向けて漕ぎ出し、逃げてしまった。
翌朝、照国別一行も船をあつらえ、スガの港を指して出立した。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2019-05-11 01:35:17 OBC :rm7120
愛善世界社版:271頁 八幡書店版:第12輯 599頁 修補版: 校定版:282頁 普及版:133頁 初版: ページ備考:
001瑞魂(みづのみたま)大神(おほかみ)
002勅命(みこと)(かしこ)みフサの(くに)
003ウブスナ(やま)霊場(れいぢやう)
004(つき)神国(みくに)(わだか)まる
005大黒主(おほくろぬし)悪身魂(あくみたま)
006言向和(ことむけやは)天国(てんごく)
007神園(みその)(すく)(たす)けむと
008照国別(てるくにわけ)宣伝使(せんでんし)
009一行(いつかう)()(にん)河鹿山(かじかやま)
010(はげ)しき(かぜ)()かれつつ
011(ほこら)(もり)山口(やまぐち)
012(あや)しの(もり)()()えて
013彼方(あなた)此方(こなた)()けめぐり
014(かみ)(まこと)御教(みをしへ)
015国人(くにびと)(たち)()(つた)
016()めるを(いや)(まづ)しきを
017(すく)(たす)けて(いま)此所(ここ)
018(もも)神業(かむわざ)(つか)へつつ
019トルマン(ごく)危難(きなん)をば
020(すく)ひて此所(ここ)(まで)(きた)りけり
021あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
022(かみ)身魂(みたま)(さちは)ひて
023(われ)()使命(しめい)詳細(まつぶさ)
024()げさせ(たま)へと()(まつ)
025大日(おほひ)()るとも(くも)るとも
026(つき)()つとも()くる(とも)
027仮令(たとへ)大地(だいち)(しづ)むとも
028曲津(まがつ)(かみ)(たけ)ぶとも
029(まこと)(かみ)(おん)(ちから)
030(わが)()()びし(その)(うへ)
031如何(いか)なる(まが)(おそ)れむや
032(すす)めや(すす)めいざ(すす)
033(われ)()(かみ)()(かみ)(みや)
034(とら)(おほかみ)獅子(しし)(くま)
035(おに)大蛇(をろち)曲神(まがかみ)
036如何(いか)(ほど)(たけ)(くる)ふとも
037(なに)(おそ)れむ敷島(しきしま)
038大和(やまと)男子(をのこ)宣伝使(せんでんし)
039勝利(しようり)(みやこ)(いた)(まで)
040いつかな(ひるま)雄心(をごころ)
041大和心(やまとごころ)()(おこ)
042(すす)みて()かむ大野原(おほのはら)
043地獄(ぢごく)(たちま)天国(てんごく)
044(わが)言霊(ことたま)()(なほ)
045(かみ)王侯(わうこう)貴人(きじん)より
046(しも)旃陀羅(せんだら)(いた)るまで
047(かみ)(すく)ひの()()べて
048一蓮(いちれん)托生(たくしやう)(すく)()
049(みづ)(みたま)神力(しんりき)
050(あら)はしまつる(わが)使命(しめい)
051()げさせ(たま)惟神(かむながら)
052(すめ)大神(おほかみ)(おん)(まへ)
053(かしこ)(かしこ)()(まつ)
054三千(さんぜん)世界(せかい)(うめ)(はな)
055一度(いちど)(ひら)(かみ)(くに)
056(ひら)いて()りて()(むす)
057()大神(おほかみ)(つき)(かみ)
058大地(だいち)(まも)らす荒金(あらがね)
059(つかさ)とゐます瑞魂(みづみたま)
060(かむ)素盞嗚(すさのを)大神(おほかみ)
061(ふか)(めぐみ)(わす)れまじ
062(たふと)勲功(いさを)(わす)れまじ
063(すす)めよ(すす)めいざ(すす)
064悪魔(あくま)(とりで)立向(たちむか)
065摂受(せつじゆ)(つるぎ)()()ちて
066言向和(ことむけやは)すは(あん)(うち)
067アヽ(いさ)ましや(いさ)ましや
068(かみ)使命(しめい)()()けし
069()さへ(たふと)宣伝使(せんでんし)
070(いた)(ところ)(てき)はなし
071バラモン(けう)やウラル(けう)
072如何(いか)(ほど)刃向(はむか)(きた)るとも
073(すめ)大神(おほかみ)(たま)ひてし
074厳言霊(いづことたま)(ひかり)にて
075暗夜(やみよ)()らし神徳(しんとく)
076(つき)御国(みくに)(かがや)かし
077()らさにやおかぬ(わが)使命(しめい)
078(まも)らせ(たま)へと()(まつ)
079アヽ惟神(かむながら)々々(かむながら)
080(みたま)(さちは)ひましませよ』
081 ()(うた)(なが)入江(いりえ)(むら)(ちか)田圃道(たんぼみち)まで、082やつて()たのは照国別(てるくにわけ)083照公(てるこう)084梅公別(うめこうわけ)(さん)(にん)であつた。
085照公(てるこう)『モシ、086先生(せんせい)087モウ()()(ちか)くなりましたが今晩(こんばん)入江(いりえ)(むら)宿(やど)をとり、088(ゆつく)休息(きうそく)(いた)しまして、089明日(みやうにち)(ふね)でスガの(みなと)()かうぢやありませぬか』
090照国別(てるくにわけ)成程(なるほど)091大分(だいぶん)(つか)れたやうだ、092()此所(ここ)一服(いつぷく)しよう。093モウあの(むら)へは(とほ)くはあるまいから』
094梅公別(うめこうわけ)先生(せんせい)095今晩(こんばん)是非(ぜひ)入江村(いりえむら)(とま)りませう。096浜屋(はまや)()景色(けしき)よい宿屋(やどや)御座(ござ)いますから是非(ぜひ)そこへ(とま)つて、097明日(あす)スガの(みなと)()(こと)(いた)しませう。098スガの(みなと)にはアリスと()薬屋(くすりや)長者(ちやうじや)がありまして、099その息子(むすこ)には、0991イルク、100(むすめ)にはダリヤ(ひめ)()熱心(ねつしん)三五教(あななひけう)信者(しんじや)()ります。101キツト()つて()るに(ちが)ひありませぬから』
102照国(てるくに)『さうだ、103梅公別(うめこうわけ)さまは一度(いちど)(とま)りになつた(こと)があるさうだから、104(こころ)(やす)くてよからう』
105(てる)四方(よも)八方(やま)景色(けしき)(とほ)見渡(みわた)せば
106コバルト(いろ)遠山(とほやま)かすめり』
107照国(てるくに)薄墨(うすずみ)にぼかしたやうな山影(やまかげ)
108スガの(さと)なる高山(たかやま)ならむ』
109(うめ)夏草(なつぐさ)()(しげ)りたる広野原(ひろのはら)
110(すす)()()(たの)しくもある(かな)
111今日(けふ)()()()れむとす草枕(くさまくら)
112(たび)(つか)れを宿(やど)(いや)さむ』
113 (さん)(にん)(やす)んでゐる(うしろ)(くさ)(なか)から(なん)だか、114ウンウンと(うな)(ごゑ)(きこ)えて()る。115梅公別(うめこうわけ)耳敏(みみざと)くも(これ)()き、116ツカツカと(くさむら)(なか)(うめ)(ごゑ)(たづ)ねて(ちか)づき()れば、117(みにく)(いや)しい(つら)をした坊主(ばうず)一人(ひとり)半死(はんし)半生(はんしやう)(てい)(たふ)れて()る。118梅公別(うめこうわけ)直様(すぐさま)(あま)数歌(かずうた)奏上(そうじやう)するや、119(たふ)(びと)はムクムクと()(あが)り、
120何方(どなた)()りませぬが、121よくまア(たす)けて(くだ)さいました。122拙僧(せつそう)はバラモン(けう)修験者(しゆげんじや)天真坊(てんしんばう)(まを)します』
123 梅公別(うめこうわけ)は、124どこか見覚(みおぼ)えのある(かほ)だなア……とよくよく念入(ねんい)りに調(しら)べて()ると、125オーラ(さん)立籠(たてこも)つて大望(たいまう)(たくら)んでゐた妖僧(えうそう)玄真坊(げんしんばう)なる(こと)()り、
126『やアお(まへ)玄真坊(げんしんばう)ぢやないか、127オーラ(さん)改心(かいしん)をすると()(なが)ら、128(ふたた)(あく)(かへ)つて三百(さんびやく)手下(てした)引率(ひきつ)れ、129各地(かくち)押入(おしいり)強盗(がうたう)をやつて()ると()(うはさ)であつたが、130天罰(てんばつ)(おそ)ろしいものだ。131何人(なにびと)に、132(まへ)(しひた)げられて、133こんな(ところ)(たふ)れて()たのだ。134(さつ)する(ところ)持前(もちまへ)のデレ根性(こんじやう)(おこ)し、135(をんな)一物(いちもつ)(しめ)つけられ、136(いき)()()まつたのを(さいは)ひ、137かやうな(さび)しき原野(げんや)遺棄(ゐき)されたのだらう、138(さて)(さて)(あは)れな代物(しろもの)だな』
139(げん)『これはこれは(おそ)()りました。140(わたし)はお(さつ)しの(とほ)り、141(をんな)睾丸(きんたま)()めつけられ、142三万(さんまん)(りやう)(かね)をぼつたくられ、143かやうな(ところ)へ、144ほかされたもので御座(ござ)います。145只今(ただいま)(かぎ)悪事(あくじ)()めまする。146さうして(をんな)(など)には、147キツト今後(こんご)()をくれませぬから、148何卒(どうぞ)(わたし)をお荷物持(にもつもち)にでも(かま)ひませぬ、149(とも)()れて()つて(くだ)さいませぬか』
150(うめ)『やア、151(おれ)にはお師匠(ししやう)(さま)がある。152(おれ)一人(ひとり)一量見(いちりやうけん)では如何(どう)する(こと)出来(でき)ぬ。153()づお師匠(ししやう)(さま)()意見(いけん)()いた(うへ)(こと)にしよう』
154 照国別(てるくにわけ)最前(さいぜん)から二人(ふたり)問答(もんだふ)()(をは)様子(やうす)()つて()るので、155梅公別(うめこうわけ)言葉(ことば)()たず、
156『ヤ、157玄真坊(げんしんばう)とやら、158最早(もは)()(くれ)にも(ちか)いから、159(ゆつく)りと宿屋(やどや)にでも()つて(はなし)(うけたま)はらう。160(これ)から吾々(われわれ)入江村(いりえむら)浜屋(はまや)旅館(りよくわん)一泊(いつぱく)するつもりだ。161(まへ)一緒(いつしよ)()かうぢやないか』
162(げん)『へ、163(なん)仰有(おつしや)います、164浜屋(はまや)旅館(りよくわん)にお(とま)りで御座(ござ)いますか。165あの(いへ)はお(きやく)があまり沢山(たくさん)で、166どさくつてゐますから、167(すこ)景色(けしき)(わる)御座(ござ)いますが、168玉屋(たまや)()立派(りつぱ)宿屋(やどや)がありますから、169其処(そこ)へお(とま)りになつては如何(いかが)御座(ござ)いませう。170(わたし)もお(とも)をさせて(いただ)きますから』
171(うめ)『ヤ、172一旦(いつたん)浜屋(はまや)旅館(りよくわん)相談(さうだん)(きま)つた(うへ)是非(ぜひ)とも浜屋(はまや)()かう。173吾々(われわれ)精霊(せいれい)(すで)浜屋(はまや)(をさ)まつて()るのだから』
174(げん)『そら、175さうで御座(ござ)いませうが、176ならう(こと)なら待遇(あしらひ)()し、177夜具(やぐ)上等(じやうとう)なり、178(いへ)(あたら)しう御座(ござ)いますから、179玉屋(たまや)になさつたら如何(いかが)御座(ござ)いませうかな』
180(うめ)『ハヽヽヽヽ、181(この)(をとこ)十日(とをか)(ばか)浜屋(はまや)旅館(りよくわん)(とま)つてゐたのだらう。182越後(えちご)獅子(じし)(こつ)ぴどくこみ()られ、183捕手(とりて)にフン()まれた鬼門(きもん)場所(ばしよ)だから、184浜屋(はまや)(いや)だらう。185ヤ、186それは無理(むり)もない。187(しか)吾々(われわれ)がついてゐる以上(いじやう)大丈夫(だいぢやうぶ)だ。188ソツと(うしろ)から()いて()い。189(まへ)身柄(みがら)引受(ひきう)けてやるから、190その(かは)191(いま)(まで)のやうな(こころ)では(いち)(にち)だつて安心(あんしん)()(くら)(こと)出来(でき)ぬぞ。192(こころ)(そこ)から()(あらた)めるか、193どうぢや』
194(げん)『ハイ、195(うま)赤子(あかご)になつてお(つか)(いた)します。196何卒(なにとぞ)(たす)(くだ)さいませ』
197(うめ)『ウン、198ヨシ、199先生(せんせい)200(いま)斯様(かやう)(まを)してゐますが、201(しか)(なが)此奴(こいつ)悪事(あくじ)(しば)(かぶ)らねば(なほ)らない(やつ)御座(ござ)いますが、202(わたし)(なん)とかして、203改心(かいしん)をさして()()御座(ござ)いますから、204(とも)をさせて(くだ)さいませ。205梅公別(うめこうわけ)無調法(ぶてうはふ)のないやうに()()けますから』
206照国(てるくに)()(かく)207二三(にさん)日間(にちかん)()れて()よう。208如何(どう)してもいかなけりや、209突放(つつぱな)(まで)(こと)だ。210さア()()れかかつた、211(いそ)いで()かう』
212(また)もや(こゑ)(すず)しく宣伝歌(せんでんか)(うた)(なが)213入江村(いりえむら)浜屋(はまや)をさして(すす)()く。
214 浜屋(はまや)表口(おもてぐち)にさしかかると客引(きやくひき)(をんな)が、215二三(にさん)(にん)門口(かどぐち)()つて、
216(をんな)『もしお(きやく)さま、217どちらにお(いで)御座(ござ)います。218明日(みやうにち)(ふね)都合(つがふ)(よろ)しう御座(ござ)いますから此方(こちら)にお(とま)(くだ)さいませ。219十分(じふぶん)丁寧(ていねい)に、220待遇(あしらひ)(いた)しますから。221さうして、222加減(かげん)のいい潮湯(しほゆ)()いてゐますから、223何卒(どうぞ)当家(たうけ)でお(とま)りを(ねが)ひます』
224(うめ)『ヤ、225(まへ)がさう()はなくても、226此方(こちら)(はう)からお世話(せわ)になりたいと(おも)つて()たのだ。227一行(いつかう)()(にん)だ、228よい居間(ゐま)があるかな』
229(をんな)『ハイ、230(うら)離棟(はなれ)御座(ござ)いまして、231そのお座敷(ざしき)からはハルの(うみ)(かがみ)()(なが)らに()えまする。232(なん)なら二三(にさん)(にち)()逗留(とうりう)(くだ)さいますれば、233真帆(まほ)片帆(かたほ)()()景色(けしき)は、234まるで胡蝶(こてふ)(はる)野辺(のべ)()()ふやうで御座(ござ)います』
235(うめ)『もし先生(せんせい)236さアお這入(はい)(くだ)さい』
237照国(てるくに)『そんなら御免(ごめん)(かうむ)らうか』
238(さき)()つて縄暖簾(なはのうれん)をくぐる。239玄真坊(げんしんばう)はビクビク(ふる)(なが)ら、240照国別(てるくにわけ)(うしろ)になり(ちひ)さくなつて()いて()く。241(つぎ)照公(てるこう)242梅公別(うめこうわけ)亭主(ていしゆ)下女(げぢよ)愛嬌(あいけう)()()(なが)ら、243(おく)離棟(はなれ)(すす)()く。
244 ()入浴(にふよく)()ませ夕食(ゆふしよく)(をは)り、245()(にん)浴衣(ゆかた)がけになつて、246団扇(うちは)片手(かたて)(つみ)のない(はなし)(ふけ)つて()ると、247(おもて)二階(にかい)()に、248なまめかしい(こゑ)(きこ)えて()る。249梅公別(うめこうわけ)不思議(ふしぎ)さうに(くび)(かたむ)()いてゐる。
250(てる)『これ梅公別(うめこうわけ)さま、251(なに)思案(しあん)をして()るのだい。252ありや何処(どつか)(をんな)(きやく)ふざけ()るのだい』
253(うめ)『いや、254どうも合点(がてん)()かぬ(こゑ)だ。255千草(ちぐさ)高姫(たかひめ)ぢやあるまいかな』
256(てる)『ヘン、257馬鹿(ばか)()ふない、258千草(ちぐさ)高姫(たかひめ)が、259こんな(ところ)(とま)るものか。260彼奴(あいつ)屹度(きつと)何処(どこ)かの王城(わうじやう)(しの)()り、261(また)もや刹帝利(せつていり)(きさき)()()んでゐやがるだらう』
262(うめ)『ヤ、263どうも(あや)しいぞ。264(ひと)照公(てるこう)265(まへ)調(しら)べて()てくれぬか』
266 玄真坊(げんしんばう)(ちひ)さい(こゑ)で、
267(げん)『モシお(さん)(にん)さま、268あの(こゑ)千草(ちぐさ)高姫(たかひめ)間違(まちが)御座(ござ)いませぬ。269(わたし)睾丸(きんたま)()めつけ、270三万(さんまん)(りやう)(かね)をぼつたくつた大悪人(だいあくにん)御座(ござ)います。271何卒(どうぞ)彼奴(あいつ)をとつちめ、272三万(さんまん)(りやう)()(かへ)して(くだ)さい。273さうすりや一万(いちまん)(りやう)(づつ)274(まへ)さま(たち)進上(しんじやう)(いた)しまする』
275(うめ)馬鹿(ばか)()ふな、276吾々(われわれ)(かね)なんか必要(ひつえう)はない。277()して左守(さもり)(やかた)でぼつたくつた(かね)ぢやないか』
278(げん)『ハイ、279(さつ)しの(とほ)りで御座(ござ)います』
280(うめ)『どうやら千草(ちぐさ)高姫(たかひめ)相客(あひきやく)人間(にんげん)ぢやないらしいぞ。281先生(せんせい)282(これ)から(わたし)正体(しやうたい)見届(みとど)けて()ます。283何卒(どうぞ)(しばら)此処(ここ)()つて()(くだ)さいや』
284照国(てるくに)(ひと)さまの居間(ゐま)()()んで調(しら)べると()失礼(しつれい)(こと)はないぢやないか、285そんな(こと)せずとも自然(しぜん)(わか)つて()るよ』
286 ()(はな)(とき)しも二階(にかい)障子(しやうじ)をサツと()けて(はな)座敷(ざしき)(のぞ)いたのは千草(ちぐさ)高姫(たかひめ)であつた、287梅公(うめこう)(かほ)高姫(たかひめ)(かほ)はピツタリと()つた。288千草(ちぐさ)高姫(たかひめ)梅公(うめこう)(かほ)をパツと()るより、289(こひ)しいやら(おそ)ろしいやら、290(かほ)真蒼(まつさを)にしてピリピリと(ふる)ふた。291妖幻坊(えうげんばう)杢助(もくすけ)高姫(たかひめ)様子(やうす)(ただ)ならぬに不審(ふしん)(おこ)し、
292『オイ、293(たか)チヤン、294(まへ)様子(やうす)(へん)ぢやないか、295(なに)をオヂオヂして()るのだ』
296()杢助(もくすけ)さま、297あれ御覧(ごらん)なさいませ、298三五教(あななひけう)照国別(てるくにわけ)299照公(てるこう)300梅公別(うめこうわけ)(さん)宣伝使(せんでんし)離棟(はなれ)居間(ゐま)(とま)つて()ます。301そして玄真坊(げんしんばう)(よこ)にゐますのを()れば、302三万(さんまん)(りやう)(かね)()(かへ)(ため)に、303(いき)をふきかへして()たものと(おも)はれます』
304(もく)『やアそりや大変(たいへん)だ、305三五教(あななひけう)(やつ)()けば(おれ)もチツト(むし)()かない、306(なん)とかしてお(まへ)二人(ふたり)307此所(ここ)()()さうぢやないか』
308()杢助(もくすけ)さま、309貴方(あなた)()(よわ)(こと)仰有(おつしや)いますな、310斎苑(いそ)(やかた)彼奴(あいつ)()家来扱(けらいあつかひ)をして()つたぢやありませぬか。311(ひと)貴方(あなた)(おほ)きな(こゑ)で、3111呶鳴(どな)つて(くだ)されば312照国別(てるくにわけ)(など)()へぼ宣伝使(せんでんし)は、313(ひと)たまりもなく()()すぢやありませぬか』
314(もく)『ウン、315それもさうだが、316(いま)荒立(あらだ)てては(こと)面倒(めんだう)になる。317(おれ)にも(ひと)つの(かんが)へがあるからのう』
318()智謀(ちぼう)絶倫(ぜつりん)(きこ)えた貴方(あなた)(こと)ですから、319滅多(めつた)如才(じよさい)はありますまい。320それで(なに)()貴方(あなた)にお(まか)(いた)して()きます』
321(もく)『ウン、322今夜(こんや)処置(しよち)(おれ)(まか)しておけ。323(おれ)計略(けいりやく)があるから、324さア千草(ちぐさ)高姫(たかひめ)325此方(こちら)へおじや』
326()(なが)二階(にかい)段梯子(だんばしご)をトントントンと()り、327(おもて)()番頭(ばんとう)小判(こばん)(いち)(まい)(にぎ)らせ、
328(もく)一寸(ちよつと)(つき)(しやう)して半時(はんとき)ばかり()てば(かへ)つて()るから、329表戸(おもてど)()けて()いてくれよ』
330と、331(うま)誤魔化(ごまくわ)高姫(たかひめ)(とも)浜辺(はまべ)()()し、332一艘(いつさう)(ふね)(ぬす)んで第72巻第2章では高砂丸という客船に乗り込んだことになっている。一生(いつしやう)懸命(けんめい)にハルの(うみ)(なみ)()けてスガの(みなと)()()いで()く。
333 照国別(てるくにわけ)一行(いつかう)一夜(いちや)此所(ここ)()かし、334あくる()(あさ)(はや)くより一艘(いつそう)(ふね)(あつら)へ、335(これ)(また)スガの(みなと)をさして(すす)()(こと)となつた。336あゝ惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)
337大正一五・二・一 旧一四・一二・一九 於月光閣 北村隆光録)
338(昭和一〇・六・二四 王仁校正)

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5/8【霊界物語ネット】霊界物語ネットに出口王仁三郎の第六歌集『霧の海』を掲載しました。
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