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霊界物語
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
第71巻(戌の巻)
序文
総説
第1篇 追僧軽迫
第1章 追劇
第2章 生臭坊
第3章 門外漢
第4章 琴の綾
第5章 転盗
第6章 達引
第7章 夢の道
第2篇 迷想痴色
第8章 夢遊怪
第9章 踏違ひ
第10章 荒添
第11章 異志仏
第12章 泥壁
第13章 詰腹
第14章 障路
第15章 紺霊
第3篇 惨嫁僧目
第16章 妖魅返
第17章 夢現神
第18章 金妻
第19章 角兵衛獅子
第20章 困客
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霊界物語
>
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
>
第71巻(戌の巻)
> 第1篇 追僧軽迫 > 第5章 転盗
<<< 琴の綾
(B)
(N)
達引 >>>
第五章
転盗
(
てんたう
)
〔一七九四〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第71巻 山河草木 戌の巻
篇:
第1篇 追僧軽迫
よみ(新仮名遣い):
ついそうけいはく
章:
第5章 転盗
よみ(新仮名遣い):
てんとう
通し章番号:
1794
口述日:
1925(大正14)年11月07日(旧09月21日)
口述場所:
祥明館
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1929(昭和4)年2月1日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
バルギーは黄金で姫の歓心を買って名誉を挽回しようと、夜が明けぬうちに、村へ盗賊に出てしまう。
バルギーは村の一軒に暴れこみ、家人を縛って金銭を奪い逃げ出すが、井戸に落ちてつかまってしまう。
バルギーは村の掟に従い、村から追い出されることになった。ダリヤは哀れを催し、ついに自分が、山賊の岩窟から逃げ出すためにバルギーをだましていたことを打ち明ける。
バルギーは村から去っていくが、ダリヤ姫は玉清別の勧めに従い、玄真坊を避けるためにしばらくまた村に滞在することとなった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2019-01-11 17:47:43
OBC :
rm7105
愛善世界社版:
66頁
八幡書店版:
第12輯 523頁
修補版:
校定版:
68頁
普及版:
31頁
初版:
ページ備考:
001
玉清別
(
たまきよわけ
)
夫婦
(
ふうふ
)
は
神
(
かみ
)
の
子
(
こ
)
、
002
玉
(
たま
)
の
子
(
こ
)
と
共
(
とも
)
に、
003
まだ
夜
(
よ
)
のあけぬ
中
(
うち
)
から
神殿
(
しんでん
)
の
大掃除
(
おほさうぢ
)
をなし
004
山野
(
やまぬ
)
の
供物
(
くもつ
)
を
献
(
けん
)
じ
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
してゐる。
005
『
高天原
(
たかあまはら
)
の
聖場
(
せいぢやう
)
に
元津
(
もとつ
)
御祖
(
みおや
)
の
大神
(
おほかみ
)
の
大神言
(
おほみこと
)
もちて、
006
天
(
あま
)
かけり
国
(
くに
)
かける
天使
(
あまつかひ
)
八百万
(
やほよろづ
)
神集
(
かむつど
)
ひに
集
(
つど
)
ひます、
007
東
(
ひがし
)
の
都
(
みやこ
)
は
日出
(
ひいづ
)
る
国
(
くに
)
の
御名
(
みな
)
も
高
(
たか
)
き、
008
いと
清々
(
すがすが
)
しき
小雲
(
こくも
)
の
川
(
かは
)
を
囲
(
めぐ
)
らせる
綾
(
あや
)
の
聖地
(
せいち
)
の
八尋殿
(
やひろどの
)
、
009
又
(
また
)
西
(
にし
)
の
国
(
くに
)
に
至
(
いた
)
りては、
010
パレスチナの
国
(
くに
)
の
御名
(
みな
)
も
高
(
たか
)
きエルサレムの
都
(
みやこ
)
、
011
オリブ
山
(
やま
)
の
頂
(
いただ
)
きに
宮柱
(
みやばしら
)
太
(
ふと
)
しく
立
(
た
)
てて
鎮
(
しづ
)
まります
厳
(
いづ
)
と
瑞
(
みづ
)
との
二柱
(
ふたはしら
)
従
(
したが
)
ひ
玉
(
たま
)
ふ
神使
(
かむづかひ
)
012
朝夕
(
あしたゆふべ
)
に
天
(
あま
)
かけり
国
(
くに
)
かけりまし、
013
ウブスナ
山
(
やま
)
の
聖場
(
せいぢやう
)
には
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのを
)
の
尊
(
みこと
)
、
014
常磐
(
ときは
)
堅磐
(
かきは
)
に
御
(
み
)
あとを
垂
(
た
)
れさせ
玉
(
たま
)
ひ、
015
四方
(
よも
)
の
青人草
(
あをひとぐさ
)
は
云
(
い
)
ふも
更
(
さら
)
なり、
016
草木
(
くさき
)
虫族
(
むしけら
)
の
端
(
はし
)
に
至
(
いた
)
る
迄
(
まで
)
、
017
恵
(
めぐ
)
みの
露
(
つゆ
)
を
垂
(
た
)
れさせ
玉
(
たま
)
ふ
尊
(
たふと
)
き
清
(
きよ
)
き
大御心
(
おほみこころ
)
を
拝
(
をろが
)
み
奉
(
まつ
)
り、
018
朝
(
あさ
)
な
夕
(
ゆふ
)
なに
此
(
この
)
神床
(
かむどこ
)
に
厳
(
いづ
)
の
御魂
(
みたま
)
を
斎
(
いつ
)
き
奉
(
まつ
)
りて
仕
(
つか
)
へまつる
事
(
こと
)
の
由
(
よし
)
を、
019
いと
平
(
たひら
)
けく
安
(
やす
)
らけく
聞召
(
きこしめ
)
し
相諾
(
あひうづな
)
ひ
玉
(
たま
)
ひて、
020
バラモンの
枉神
(
まがかみ
)
に
退
(
やら
)
はれたる
三五
(
あななひ
)
の
神柱
(
かむばしら
)
玉清別
(
たまきよわけ
)
をして、
021
再
(
ふたた
)
び
世
(
よ
)
の
光
(
ひかり
)
となり、
022
塩
(
しほ
)
となり、
023
花
(
はな
)
ともなりて、
024
天晴
(
あつぱれ
)
大御神
(
おほみかみ
)
の
大神業
(
おほみわざ
)
に
仕
(
つか
)
へ
奉
(
まつ
)
らしめ
玉
(
たま
)
へ、
025
仰
(
あふ
)
ぎ
願
(
ねが
)
はくばこれの
家内
(
やぬち
)
をして
諸々
(
もろもろ
)
の
枉事
(
まがごと
)
、
026
罪
(
つみ
)
穢
(
けがれ
)
あらしめず、
027
日々
(
ひび
)
の
業務
(
なりはひ
)
を
励
(
いそし
)
み
勤
(
つと
)
めて、
028
ゆるぶ
事
(
こと
)
なく、
029
怠
(
おこた
)
る
事
(
こと
)
なく、
030
神谷
(
かみたに
)
の
村
(
むら
)
の
鑑
(
かがみ
)
として
常磐
(
ときは
)
堅磐
(
かきは
)
に
臨
(
のぞ
)
ませ
玉
(
たま
)
へと
畏
(
かしこ
)
み
畏
(
かしこ
)
み
祈願
(
こひの
)
み
奉
(
まつ
)
らくと
申
(
まを
)
す。
031
三五
(
あななひ
)
の
大神
(
おほかみ
)
守
(
まも
)
り
玉
(
たま
)
へ
幸
(
さち
)
はへ
玉
(
たま
)
へ、
032
惟神
(
かむながら
)
の
御魂
(
みたま
)
幸
(
さちは
)
へましませ』
033
と
祝詞
(
のりと
)
を
終
(
をは
)
り、
034
庭園
(
ていゑん
)
を
親子
(
おやこ
)
四
(
よ
)
人
(
にん
)
連
(
づ
)
れ
新空気
(
しんくうき
)
を
呼吸
(
こきふ
)
すべく
逍遥
(
せうえう
)
し
初
(
はじ
)
めた。
035
バルギーはダリヤ
姫
(
ひめ
)
が
寝息
(
ねいき
)
を
窺
(
うかが
)
ひ、
036
ソツと
裏口
(
うらぐち
)
よりかけ
出
(
いだ
)
し、
037
何処
(
どこ
)
かの
家
(
いへ
)
へ
忍
(
しの
)
び
込
(
こ
)
み、
038
沢山
(
たくさん
)
な
黄金
(
わうごん
)
をせしめてダリヤ
姫
(
ひめ
)
を
驚
(
おどろ
)
かせ
歓心
(
くわんしん
)
を
買
(
か
)
はむものと
039
無謀
(
むぼう
)
にも
飛
(
と
)
び
出
(
だ
)
して
了
(
しま
)
つた。
040
ダリヤ
姫
(
ひめ
)
は
玉清別
(
たまきよわけ
)
が
祝詞
(
のりと
)
の
声
(
こゑ
)
にフツと
目
(
め
)
をさまし、
041
慌
(
あわ
)
てて
手水
(
てうづ
)
を
使
(
つか
)
ひ
神殿
(
しんでん
)
に
簡単
(
かんたん
)
なる
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し、
042
終
(
をは
)
つて
吾
(
わが
)
居間
(
ゐま
)
へ
帰
(
かへ
)
り、
043
クラヴィコードをいぢつてゐると、
044
其処
(
そこ
)
へ
玉清別
(
たまきよわけ
)
夫婦
(
ふうふ
)
が
襖
(
ふすま
)
を
静
(
しづか
)
に
押
(
お
)
しあけ、
045
入
(
い
)
り
来
(
きた
)
り、
046
玉清
(
たまきよ
)
『ダリヤ
様
(
さま
)
、
047
お
早
(
はや
)
う
御座
(
ござ
)
います』
048
玉子
(
たまこ
)
『
朝
(
あさ
)
も
早
(
はや
)
うから
丹精
(
たんせい
)
な
事
(
こと
)
で
御座
(
ござ
)
いますな、
049
ほんとうに
御
(
お
)
手際
(
てぎは
)
がよく
冴
(
さ
)
えてゐますワ』
050
ダリヤはクラヴィコードを
床
(
とこ
)
に
直
(
なほ
)
し、
051
一二
(
いちに
)
尺
(
しやく
)
後
(
あと
)
しざりし
乍
(
なが
)
ら
丁寧
(
ていねい
)
に
両手
(
りやうて
)
をつき、
052
『これはこれは
御
(
ご
)
主人
(
しゆじん
)
様
(
さま
)
、
053
奥様
(
おくさま
)
、
054
お
早
(
はや
)
う
御座
(
ござ
)
います。
055
いかいお
世話
(
せわ
)
に
預
(
あづか
)
りまして
誠
(
まこと
)
に
申
(
まをし
)
訳
(
わけ
)
が
御座
(
ござ
)
いませぬ』
056
玉子
(
たまこ
)
『
姫
(
ひめ
)
さま、
057
何
(
なに
)
を
仰有
(
おつしや
)
います、
058
此処
(
ここ
)
は
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
家
(
いへ
)
、
059
お
世話
(
せわ
)
さして
頂
(
いただ
)
くのは
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
への
御
(
ご
)
奉公
(
ほうこう
)
で
御座
(
ござ
)
います。
060
御
(
お
)
礼
(
れい
)
を
申
(
まを
)
されましては
却
(
かへつ
)
て
困
(
こま
)
ります、
061
何卒
(
どうぞ
)
気
(
き
)
を
使
(
つか
)
はずにユルユル
御
(
ご
)
逗留
(
とうりう
)
下
(
くだ
)
さいませ』
062
ダリ『ハイ、
063
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います。
064
お
言葉
(
ことば
)
に
甘
(
あま
)
へて、
065
ユツクリとお
世話
(
せわ
)
に
預
(
あづか
)
つて
居
(
を
)
りまする』
066
玉清
(
たまきよ
)
『
然
(
しか
)
しダリヤ
様
(
さま
)
、
067
貴女
(
あなた
)
のおつれになつたバルギーとか
云
(
い
)
ふ
方
(
かた
)
は、
068
何処
(
どこ
)
へ
行
(
ゆ
)
かれましたか
御存
(
ごぞん
)
じでせうなア』
069
ダリ『ハイ、
070
夜前
(
やぜん
)
、
071
妾
(
わらは
)
のクラヴィコードをお
聞
(
き
)
きになり、
072
直
(
すぐ
)
おやすみになつたやうに
思
(
おも
)
つてゐますが』
073
玉清
(
たまきよ
)
『ハテ、
074
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
は
御存
(
ごぞん
)
じがないのですか、
075
今朝
(
けさ
)
からお
姿
(
すがた
)
が
見
(
み
)
えないのですよ』
076
ダリ『ハ、
077
左様
(
さやう
)
で
御座
(
ござ
)
いますか』
078
と
平然
(
へいぜん
)
としてゐる。
079
玉清
(
たまきよ
)
『
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
、
080
一寸
(
ちよつと
)
お
伺
(
うかが
)
ひ
致
(
いた
)
し
度
(
た
)
いのですが、
081
あの
男
(
をとこ
)
の
素性
(
すじやう
)
は
御存
(
ごぞん
)
じで
御座
(
ござ
)
いませうね』
082
ダリ『あれはバルギーと
申
(
まを
)
しまして、
083
タニグク
山
(
やま
)
の
泥棒
(
どろばう
)
の
岩窟
(
がんくつ
)
に
小頭
(
こがしら
)
をやつてゐましたのだが、
084
妾
(
わらは
)
が、
085
昨夜
(
さくや
)
参
(
まゐ
)
つた
玄真坊
(
げんしんばう
)
と
云
(
い
)
ふ
妖僧
(
えうそう
)
にそそのかされ、
086
泥棒
(
どろばう
)
の
岩窟
(
がんくつ
)
に
囚
(
とらは
)
れ
087
どうかして
逃
(
に
)
げ
度
(
た
)
いと
考
(
かんが
)
へ、
088
悪僧
(
あくそう
)
の
酒
(
さけ
)
に
酔
(
よ
)
ふたのを
幸
(
さいは
)
ひ、
089
あのバルギーを
色
(
いろ
)
を
以
(
もつ
)
てちよろまかし、
090
うまく
虎口
(
ここう
)
を
逃
(
のが
)
れたので
御座
(
ござ
)
います。
091
まだ
家
(
いへ
)
にかへる
迄
(
まで
)
道程
(
みちのり
)
も
御座
(
ござ
)
いますので、
092
腹
(
はら
)
の
悪
(
わる
)
い
事
(
こと
)
と
知
(
し
)
りながらスガの
里
(
さと
)
にかへる
迄
(
まで
)
、
093
何
(
なん
)
とか
彼
(
かん
)
とか
申
(
まを
)
して
送
(
おく
)
らしてやらうかと
考
(
かんが
)
へ、
094
道連
(
みちづ
)
れになつてるので
御座
(
ござ
)
います。
095
実
(
じつ
)
の
処
(
ところ
)
は
096
実際
(
じつさい
)
の
事
(
こと
)
を
御
(
ご
)
夫婦
(
ふうふ
)
様
(
さま
)
に
打
(
う
)
ち
明
(
あ
)
け
度
(
た
)
いと
存
(
ぞん
)
じましたが、
097
バルギーが
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
側
(
そば
)
を
離
(
はな
)
れないので
申
(
まをし
)
上
(
あ
)
げる
機会
(
きくわい
)
を
得
(
え
)
ずに
居
(
を
)
りました。
098
御
(
ご
)
夫婦
(
ふうふ
)
様
(
さま
)
は
妾
(
わらは
)
が
悪
(
わる
)
い
男
(
をとこ
)
を
連
(
つ
)
れてゐると、
099
さぞお
蔑
(
さげす
)
みで
御座
(
ござ
)
いませうが、
100
右
(
みぎ
)
のやうな
次第
(
しだい
)
で
御座
(
ござ
)
いますから
101
何卒
(
どうぞ
)
宜
(
よろ
)
しくお
願
(
ねが
)
ひ
申
(
まを
)
します』
102
玉清
(
たまきよ
)
『いかにも、
103
吾
(
わが
)
家
(
や
)
へお
訪
(
たづ
)
ねになつた
時
(
とき
)
から
妙
(
めう
)
な
夫婦
(
ふうふ
)
だと
思
(
おも
)
つて
居
(
ゐ
)
ました。
104
どうして、
105
まあ、
106
貴女
(
あなた
)
のやうな
淑女
(
しゆくぢよ
)
と
泥棒面
(
どろぼうづら
)
の
三品
(
さんぴん
)
野郎
(
やらう
)
と
御
(
ご
)
夫婦
(
ふうふ
)
で
旅行
(
りよかう
)
されたのか、
107
まるつきり……
木馬
(
もくば
)
嘶
(
いなな
)
いて
石女
(
せきぢよ
)
が
子
(
こ
)
を
産
(
う
)
むやうな
話
(
はなし
)
だ……と
云
(
い
)
つて
家内
(
かない
)
と
囁
(
ささや
)
いてゐた
処
(
ところ
)
で
御座
(
ござ
)
います。
108
ヤアそれ
聞
(
き
)
いて
安心
(
あんしん
)
致
(
いた
)
しました。
109
彼
(
か
)
のバルギーは、
110
最早
(
もはや
)
此処
(
ここ
)
へは
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
ますまい、
111
キツト
吾々
(
われわれ
)
夫婦
(
ふうふ
)
がお
宅
(
たく
)
迄
(
まで
)
送
(
おく
)
つて
上
(
あ
)
げますから
御
(
ご
)
安心
(
あんしん
)
なさいませ』
112
ダリ『
如何
(
どう
)
して
又
(
また
)
、
113
あのバルギーが
此処
(
ここ
)
へ
帰
(
かへ
)
らないのでせう、
114
貴方
(
あなた
)
に
送
(
おく
)
つて
頂
(
いただ
)
けばあのやうな
危険
(
きけん
)
な
者
(
もの
)
に
道連
(
みちづ
)
れにならずによいから
一安心
(
ひとあんしん
)
ですが、
115
彼
(
かれ
)
は
又
(
また
)
何
(
なに
)
かよからぬ
事
(
こと
)
でも
致
(
いた
)
したので
御座
(
ござ
)
いますか』
116
玉清
(
たまきよ
)
『エー、
117
彼
(
かれ
)
は
昨夜
(
ゆうべ
)
深更
(
しんかう
)
に、
118
村内
(
そんない
)
の
杢兵衛
(
もくべゑ
)
が
家
(
いへ
)
に
覆面
(
ふくめん
)
頭巾
(
づきん
)
で
暴
(
あば
)
れ
込
(
こ
)
み、
119
家族
(
かぞく
)
をフン
縛
(
じば
)
り、
120
金銭
(
きんせん
)
を
残
(
のこ
)
らず
奪
(
うば
)
ひとり
逃
(
に
)
げ
出
(
だ
)
す
途端
(
とたん
)
、
121
門口
(
かどぐち
)
の
深井戸
(
ふかゐど
)
に
落
(
お
)
ち
込
(
こ
)
み、
122
バサバサと
騒
(
さわ
)
いで
居
(
を
)
つた
所
(
ところ
)
、
123
不寝番
(
ふしんばん
)
が
見付
(
みつ
)
け
出
(
だ
)
し、
124
井戸
(
ゐど
)
より
引
(
ひ
)
き
上
(
あ
)
げ
彼
(
かれ
)
を
引縛
(
ひきくく
)
つて、
125
杢兵衛
(
もくべゑ
)
の
家
(
いへ
)
に、
126
つないであるさうで
御座
(
ござ
)
います。
127
今
(
いま
)
の
先
(
さき
)
不寝番
(
ふしんばん
)
からさう
訴
(
うつた
)
へて
参
(
まゐ
)
りました』
128
ダリヤはビツクリし
乍
(
なが
)
ら、
129
『エー、
130
何
(
なん
)
とマア
悪
(
わる
)
い
奴
(
やつ
)
で
御座
(
ござ
)
いますな、
131
忽
(
たちま
)
ち
天罰
(
てんばつ
)
が
報
(
むく
)
ふて
来
(
き
)
て
吾
(
われ
)
と
吾
(
わが
)
手
(
て
)
に
深井戸
(
ふかゐど
)
に
陥込
(
おちこ
)
んだので
御座
(
ござ
)
いませう。
132
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
泥棒
(
どろばう
)
とは
云
(
い
)
へ、
133
此
(
この
)
山阪
(
やまさか
)
をタニグク
谷
(
だに
)
から
此処
(
ここ
)
迄
(
まで
)
送
(
おく
)
つて
来
(
き
)
てくれた
男
(
をとこ
)
、
134
見捨
(
みす
)
てておく
訳
(
わけ
)
にも
行
(
ゆ
)
きませぬから、
135
一目
(
ひとめ
)
会
(
あ
)
はして
下
(
くだ
)
さいませぬか。
136
彼
(
かれ
)
に
誠
(
まこと
)
の
道
(
みち
)
を
説
(
と
)
き
聞
(
き
)
かせてやり
度
(
た
)
う
御座
(
ござ
)
いますから、
137
それとも
村
(
むら
)
の
掟
(
きめ
)
で
御
(
ご
)
成敗
(
せいばい
)
なさるのなら
是非
(
ぜひ
)
は
御座
(
ござ
)
いませぬ』
138
玉清
(
たまきよ
)
『
此
(
この
)
村
(
むら
)
は
三十三
(
さんじふさん
)
戸
(
こ
)
御座
(
ござ
)
いまするが、
139
何
(
いづ
)
れも
三五教
(
あななひけう
)
の
信者
(
しんじや
)
で、
140
人間
(
にんげん
)
を
裁
(
さば
)
くと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を
致
(
いた
)
しませぬ。
141
誠
(
まこと
)
の
道
(
みち
)
を
説
(
と
)
き
聞
(
き
)
かせて、
142
この
村外
(
むらはづ
)
れまで
送
(
おく
)
り
追放
(
つゐはう
)
する
事
(
こと
)
になつて
居
(
を
)
ります。
143
幸
(
さいは
)
ひ
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
が
御
(
ご
)
訓戒
(
くんかい
)
を
与
(
あた
)
へて
下
(
くだ
)
さる
事
(
こと
)
なら、
144
彼
(
かれ
)
も
満足
(
まんぞく
)
するでせう。
145
然
(
しか
)
らばこれへ
連
(
つ
)
れ
参
(
まゐ
)
りますから』
146
ダリ『ハイ、
147
お
邪魔
(
じやま
)
乍
(
なが
)
らさう
願
(
ねが
)
へれば
結構
(
けつこう
)
で
御座
(
ござ
)
いますが』
148
玉清
(
たまきよ
)
『
然
(
しか
)
らばこれから
不寝番
(
ふしんばん
)
に
申
(
まをし
)
付
(
つ
)
け、
149
此処
(
ここ
)
へ
引張
(
ひつぱ
)
つて
参
(
まゐ
)
りませう。
150
暫
(
しばら
)
くお
待
(
ま
)
ち
下
(
くだ
)
さい』
151
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
足早
(
あしばや
)
に
出
(
い
)
でて
行
(
ゆ
)
く。
152
玉子姫
(
たまこひめ
)
も
夫
(
をつと
)
の
後
(
あと
)
に
従
(
したが
)
ひ
軽
(
かる
)
き
目礼
(
もくれい
)
を
施
(
ほどこ
)
し
乍
(
なが
)
ら
吾
(
わが
)
居間
(
ゐま
)
へと
帰
(
かへ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
153
あとに
残
(
のこ
)
つたダリヤ
姫
(
ひめ
)
は
悪人
(
あくにん
)
とは
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
154
何処
(
どこ
)
ともなしに
憐
(
あは
)
れを
催
(
もよほ
)
し、
155
如何
(
どう
)
かして
彼
(
かれ
)
の
心
(
こころ
)
を
改
(
あらた
)
めしめむと、
156
クラヴィコードを
弾
(
だん
)
じ
乍
(
なが
)
ら
神
(
かみ
)
に
祈
(
いの
)
つてゐる。
157
『
天
(
あめ
)
と
地
(
つち
)
とのその
中
(
なか
)
に
158
生
(
い
)
きとし
生
(
い
)
ける
物
(
もの
)
は
沢
(
さは
)
あれど
159
神
(
かみ
)
の
形
(
かたち
)
に
造
(
つく
)
られし
160
人
(
ひと
)
は
霊
(
かみ
)
の
子
(
こ
)
霊
(
かみ
)
の
宮
(
みや
)
と
云
(
い
)
ふ
161
そも
人生
(
じんせい
)
の
行路
(
かうろ
)
を
尋
(
たづ
)
ぬれば
162
川瀬
(
かはせ
)
の
水
(
みづ
)
の
流
(
なが
)
るる
如
(
ごと
)
く
163
朝
(
あした
)
夕
(
ゆふべ
)
に
変
(
かは
)
り
行
(
ゆ
)
く
164
浮
(
う
)
きつ
沈
(
しづ
)
みつ
倒
(
こ
)
けつ
転
(
まろ
)
びつ
又
(
また
)
起
(
お
)
きつ
165
人生
(
じんせい
)
の
波
(
なみ
)
を
渡
(
わた
)
り
行
(
ゆ
)
く
166
善
(
よ
)
きも
悪
(
あ
)
しきも
押
(
おし
)
なべて
167
何
(
いづ
)
れも
人
(
ひと
)
は
神
(
かみ
)
の
御子
(
みこ
)
168
なすべき
業
(
わざ
)
は
沢
(
さは
)
あれど
169
人
(
ひと
)
の
宝
(
たから
)
を
掠
(
かす
)
めとり
170
月日
(
つきひ
)
を
送
(
おく
)
る
人
(
ひと
)
こそは
171
人
(
ひと
)
にして
人
(
ひと
)
に
非
(
あら
)
ず
172
人
(
ひと
)
の
皮
(
かは
)
着
(
き
)
る
獣
(
けもの
)
ならめ
173
バルギーだとて
生
(
うま
)
れついての
174
盗人
(
ぬすびと
)
には
非
(
あら
)
ざらめ
175
浮世
(
うきよ
)
の
波
(
なみ
)
に
襲
(
おそ
)
はれて
176
聞
(
き
)
くも
嫌
(
いや
)
らし
盗人
(
ぬすびと
)
の
177
群
(
むれ
)
に
入
(
い
)
りたる
事
(
こと
)
ならむ
178
人
(
ひと
)
の
情
(
なさけ
)
は
彼
(
かれ
)
も
知
(
し
)
る
179
吾
(
われ
)
を
慕
(
した
)
ひて
山阪
(
やまさか
)
を
180
此処
(
ここ
)
迄
(
まで
)
送
(
おく
)
り
来
(
きた
)
りしは
181
恋
(
こひ
)
とは
云
(
い
)
へど
一片
(
いつぺん
)
の
182
誠心
(
まことごころ
)
の
輝
(
かがや
)
きあればこそ
183
スガの
港
(
みなと
)
に
至
(
いた
)
りなば
184
悪
(
あ
)
しき
心
(
こころ
)
を
改
(
あらた
)
めて
185
真人
(
まびと
)
にならむと
誓
(
ちか
)
ひたる
186
その
舌
(
した
)
の
根
(
ね
)
の
乾
(
ひ
)
ぬ
間
(
うち
)
に
187
アヽあさましや
人
(
ひと
)
の
子
(
こ
)
の
188
家
(
いへ
)
に
忍
(
しの
)
びて
黄金
(
わうごん
)
を
189
盗
(
ぬす
)
む
心
(
こころ
)
は
何事
(
なにごと
)
ぞや
190
吾
(
わが
)
身
(
み
)
を
恋
(
こ
)
ふるその
余
(
あま
)
り
191
黄金
(
こがね
)
の
宝
(
たから
)
を
奪
(
うば
)
ひとり
192
吾
(
わが
)
歓心
(
くわんしん
)
を
買
(
か
)
はむとや
193
扨
(
て
)
もあさましの
心
(
こころ
)
かな
194
三五教
(
あななひけう
)
の
大御神
(
おほみかみ
)
195
彼
(
かれ
)
が
心
(
こころ
)
に
光明
(
くわうみやう
)
を
196
射照
(
いて
)
り
通
(
とほ
)
らせ
片時
(
かたとき
)
も
197
早
(
はや
)
く
真人
(
まびと
)
の
群
(
むれ
)
に
入
(
い
)
り
198
生
(
い
)
きて
此
(
この
)
世
(
よ
)
の
用
(
よう
)
に
立
(
た
)
ち
199
死
(
し
)
しては
神
(
かみ
)
の
常久
(
とことは
)
に
200
あれます
国
(
くに
)
に
上
(
のぼ
)
り
行
(
ゆ
)
き
201
永久
(
とは
)
の
生命
(
いのち
)
を
楽
(
たの
)
しげに
202
送
(
おく
)
らせ
玉
(
たま
)
へ
惟神
(
かむながら
)
203
バルギーの
男
(
を
)
の
子
(
こ
)
に
相代
(
あひかは
)
り
204
ダリヤの
姫
(
ひめ
)
が
真心
(
まごころ
)
を
205
こめて
祈願
(
こひの
)
み
奉
(
たてまつ
)
る
206
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
207
恩頼
(
みたまのふゆ
)
を
垂
(
た
)
れ
玉
(
たま
)
へ
208
恩頼
(
みたまのふゆ
)
を
垂
(
た
)
れ
玉
(
たま
)
へ』
209
かかる
所
(
ところ
)
へ
村人
(
むらびと
)
の
声
(
こゑ
)
ガヤガヤと
210
バルギーを
引立
(
ひつた
)
て
乍
(
なが
)
ら
門口
(
もんぐち
)
に
送
(
おく
)
つて
来
(
き
)
た。
211
バルギーは
庭
(
には
)
の
植込
(
うゑこみ
)
の
中
(
なか
)
に
蹲
(
しやが
)
み
乍
(
なが
)
ら
212
ダリヤ
姫
(
ひめ
)
に
合
(
あ
)
はす
顔
(
かほ
)
なしと、
213
顔
(
かほ
)
をも
得
(
え
)
あげず
落涙
(
らくるゐ
)
してゐる。
214
ダリヤ
姫
(
ひめ
)
は
庭下駄
(
にはげた
)
を
穿
(
は
)
き、
215
ツカツカと
其
(
その
)
側
(
そば
)
により、
216
扇子
(
せんす
)
もて
二
(
ふた
)
つ
三
(
み
)
つ
彼
(
かれ
)
の
頭
(
かうべ
)
を
軽
(
かる
)
く
打
(
う
)
ち
乍
(
なが
)
ら、
217
涙
(
なみだ
)
の
声
(
こゑ
)
を
張
(
は
)
り
上
(
あ
)
げて、
218
『これ、
219
バルギーさま、
220
お
前
(
まへ
)
さまは、
221
妾
(
わらは
)
に
改心
(
かいしん
)
したと
云
(
い
)
つた
事
(
こと
)
はスツカリ
嘘
(
うそ
)
だつたのですね、
222
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふあさましい
事
(
こと
)
をなさいました。
223
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に
為
(
な
)
す
業
(
わざ
)
は
沢山
(
たくさん
)
あるに、
224
夜陰
(
やいん
)
に
紛
(
まぎ
)
れて
人様
(
ひとさま
)
の
家
(
いへ
)
に
忍
(
しの
)
び
入
(
い
)
り
225
悪虐
(
あくぎやく
)
無道
(
ぶだう
)
にも
人
(
ひと
)
を
括
(
くく
)
り
上
(
あ
)
げ
嚇
(
おど
)
し
文句
(
もんく
)
を
並
(
なら
)
べ
立
(
た
)
て、
226
汗
(
あせ
)
や
膏
(
あぶら
)
で
貯
(
たくは
)
へた
金
(
かね
)
を
盗
(
と
)
らうとは
実
(
じつ
)
に
男子
(
だんし
)
の
面汚
(
つらよご
)
し、
227
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふ
悪魔
(
あくま
)
が
貴方
(
あなた
)
に
魅
(
みい
)
つたのでせう。
228
妾
(
わらは
)
は
貴方
(
あなた
)
のやうな
方
(
かた
)
と
例令
(
たとへ
)
三日
(
みつか
)
でも
道連
(
みちづ
)
れになつたのが
残念
(
ざんねん
)
で
御座
(
ござ
)
います。
229
然
(
しか
)
し
妾
(
わらは
)
も
貴方
(
あなた
)
にお
断
(
ことわ
)
り
申
(
まを
)
さねばならぬ
事
(
こと
)
が
御座
(
ござ
)
います。
230
三五教
(
あななひけう
)
のピユリタンであり
乍
(
なが
)
ら
231
如何
(
どう
)
かしてあの
岩窟
(
いはや
)
から
身
(
み
)
を
逃
(
のが
)
れむと、
232
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
心
(
こころ
)
にもない
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
つて
貴方
(
あなた
)
を
騙
(
たばか
)
つてゐました。
233
決
(
けつ
)
して
私
(
わたし
)
は
貴方
(
あなた
)
に
恋慕
(
れんぼ
)
してはゐませぬ。
234
腹
(
はら
)
の
底
(
そこ
)
をたたけば、
235
いやでいやで
堪
(
たま
)
らないのですよ。
236
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら、
237
スガの
里
(
さと
)
へ
帰
(
かへ
)
るまで
貴方
(
あなた
)
をうまく
利用
(
りよう
)
せうと
思
(
おも
)
つた
私
(
わたし
)
の
罪
(
つみ
)
、
238
幾重
(
いくへ
)
にもお
詫
(
わび
)
を
致
(
いた
)
します。
239
お
前
(
まへ
)
さまが
此
(
この
)
村
(
むら
)
へ
来
(
き
)
て
赤恥
(
あかはぢ
)
をかくのも、
240
ヤツパリ
私
(
わたし
)
があつたため、
241
私
(
わたし
)
が
悪
(
わる
)
いのです。
242
どうぞ
只今
(
ただいま
)
限
(
かぎ
)
り
心
(
こころ
)
を
改
(
あらた
)
めて
真人間
(
まにんげん
)
になつて
下
(
くだ
)
さいませ。
243
そして
又
(
また
)
スガの
里
(
さと
)
の
方
(
はう
)
へでもお
越
(
こ
)
しになりましたら、
244
どうぞ
吾
(
わが
)
家
(
や
)
へ
訪問
(
はうもん
)
して
下
(
くだ
)
さいや。
245
此
(
この
)
村
(
むら
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
信者
(
しんじや
)
で、
246
人
(
ひと
)
のよい
方
(
かた
)
許
(
ばか
)
りだから
貴方
(
あなた
)
の
罪
(
つみ
)
を
許
(
ゆる
)
して
下
(
くだ
)
さるさうですから、
247
サア
早
(
はや
)
くどつかへおいでなさいませ。
248
必
(
かなら
)
ず
必
(
かなら
)
ず
道
(
みち
)
で
悪
(
わる
)
い
事
(
こと
)
をなすつちやいけませぬよ。
249
これは
少
(
すこ
)
し
許
(
ばか
)
りですが
路銀
(
ろぎん
)
に
使
(
つか
)
つて
下
(
くだ
)
さい』
250
と
襟
(
えり
)
に
縫
(
ぬ
)
ひこんであつた
小判
(
こばん
)
を
一
(
いち
)
枚
(
まい
)
とり
出
(
だ
)
しバルギーの
懐
(
ふところ
)
に
捻
(
ね
)
ぢこみ、
251
『
左様
(
さやう
)
なら』と
云
(
い
)
ひつつ、
252
しやくり
泣
(
な
)
きし
乍
(
なが
)
ら
与
(
あた
)
へられた
吾
(
わが
)
居間
(
ゐま
)
へと
帰
(
かへ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
253
村人
(
むらびと
)
はムラムラとバルギーの
周囲
(
しうゐ
)
をとりまき、
254
青竹
(
あをたけ
)
持
(
も
)
つて
大地
(
だいち
)
を
叩
(
たた
)
き
乍
(
なが
)
ら、
255
『サア
立
(
た
)
て、
256
帰
(
かへ
)
れ』
257
と
後
(
あと
)
をおつたて、
258
村外
(
むらはづ
)
れをさして
送
(
おく
)
り
行
(
ゆ
)
く。
259
玉清別
(
たまきよわけ
)
夫婦
(
ふうふ
)
はヤツと
胸
(
むね
)
を
撫
(
な
)
で
下
(
おろ
)
し、
260
再
(
ふたた
)
びダリヤ
姫
(
ひめ
)
の
居間
(
ゐま
)
に
入
(
い
)
り
来
(
きた
)
り、
261
玉清
(
たまきよ
)
『ダリヤ
様
(
さま
)
、
262
貴女
(
あなた
)
の
見上
(
みあ
)
げたお
志
(
こころざし
)
、
263
側
(
そば
)
に
聞
(
き
)
いてゐた
吾々
(
われわれ
)
二人
(
ふたり
)
は
心
(
こころ
)
の
底
(
そこ
)
から
泣
(
な
)
かされましたよ。
264
あの
御
(
ご
)
訓戒
(
くんかい
)
によつてバルギーも
改心
(
かいしん
)
するで
御座
(
ござ
)
いませう』
265
ダリ『ハイ
誠
(
まこと
)
に
赤面
(
せきめん
)
の
至
(
いた
)
りで
御座
(
ござ
)
います。
266
バルギーさまが、
267
あのやうな
ザマ
になつたのも、
268
もとを
訊
(
ただ
)
せば
私
(
わたし
)
が
悪
(
わる
)
いので
御座
(
ござ
)
います。
269
お
館
(
やかた
)
に
迷惑
(
めいわく
)
を
掛
(
か
)
けて
相済
(
あひす
)
みませぬ。
270
穴
(
あな
)
でもあればもぐり
込
(
こ
)
み
度
(
た
)
いやうな
気分
(
きぶん
)
が
致
(
いた
)
します』
271
玉子
(
たまこ
)
『
何
(
なに
)
仰有
(
おつしや
)
います、
272
ダリヤ
様
(
さま
)
、
273
貴女
(
あなた
)
の
立場
(
たちば
)
としては、
274
時
(
とき
)
と
場合
(
ばあひ
)
によつて、
275
バルギーを
騙
(
だま
)
しなさるのも
止
(
や
)
むを
得
(
え
)
ませぬ、
276
何事
(
なにごと
)
も
皆
(
みな
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のなさる
業
(
わざ
)
で
御座
(
ござ
)
います。
277
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
天真坊
(
てんしんばう
)
と
云
(
い
)
ふ
奴
(
やつ
)
、
278
途中
(
とちう
)
に
待
(
ま
)
ち
受
(
う
)
け、
279
どんな
事
(
こと
)
をするかも
知
(
し
)
れませぬから、
280
二三
(
にさん
)
日
(
にち
)
逗留
(
とうりう
)
なさつてお
帰
(
かへ
)
りなさつたら
安全
(
あんぜん
)
で
御座
(
ござ
)
いませう。
281
その
時
(
とき
)
は、
282
屈強
(
くつきやう
)
な
村人
(
むらびと
)
を
二三
(
にさん
)
人
(
にん
)
つけて
送
(
おく
)
らせますから
御
(
ご
)
安心
(
あんしん
)
下
(
くだ
)
さい』
283
ダリ『
何
(
なに
)
から
何
(
なに
)
まで、
284
お
世話
(
せわ
)
になりまして
誠
(
まこと
)
に
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います。
285
何分
(
なにぶん
)
宜
(
よろ
)
しくお
願
(
ねが
)
ひ
申
(
まを
)
します』
286
(
大正一四・一一・七
旧九・二一
於祥明館
北村隆光
録)
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