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霊界物語
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
第71巻(戌の巻)
序文
総説
第1篇 追僧軽迫
第1章 追劇
第2章 生臭坊
第3章 門外漢
第4章 琴の綾
第5章 転盗
第6章 達引
第7章 夢の道
第2篇 迷想痴色
第8章 夢遊怪
第9章 踏違ひ
第10章 荒添
第11章 異志仏
第12章 泥壁
第13章 詰腹
第14章 障路
第15章 紺霊
第3篇 惨嫁僧目
第16章 妖魅返
第17章 夢現神
第18章 金妻
第19章 角兵衛獅子
第20章 困客
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霊界物語
>
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
>
第71巻(戌の巻)
> 第2篇 迷想痴色 > 第14章 障路
<<< 詰腹
(B)
(N)
紺霊 >>>
第一四章
障路
(
しようろ
)
〔一八〇三〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第71巻 山河草木 戌の巻
篇:
第2篇 迷想痴色
よみ(新仮名遣い):
めいそうちしき
章:
第14章 障路
よみ(新仮名遣い):
しょうろ
通し章番号:
1803
口述日:
1926(大正15)年01月31日(旧12月18日)
口述場所:
月光閣
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1929(昭和4)年2月1日
概要:
舞台:
タラハン国の森林、中有界
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
玄真坊、コブライ、コオロはシャカンナから奪った黄金を胴に巻きつけ、山野を歩いてタラハン国を抜けようとする。
しかしそこで十数人の捕り手に囲まれ、行く手を失った三人は進退窮まり、思い切って断崖絶壁の谷底に身を投げてしまった。
場面は変わって、だだっ広い原野を、切腹して果てたはずのシャカンナが一人、来し方の事を歌いながら歩いている。
すると、土の中から頭だけを出している玄真坊と出会う。玄真坊は、たくさんの黄金をゆすり取った罪で、幽冥主宰の神から罰をくらっているのだ、と答える。そして、シャカンナに許しを請う。
そこへ今度はコブライ・コオロが濡れ鼠でやってくる。彼らは谷底に飛び込んだとたん、黄金をすっかり捨ててしまっていた。
玄真坊もあまりの苦しさに、ついに黄金を捨てると宣言する。と、とたんに地面から抜け出すことができるようになった。
一同は気を取り直し、幽冥界の道を行ける所まで行こうと、歌を歌いながら行進する。
玄真坊が先に立って行くが、辻の立石に頭をぶつけてその場にふん伸びてしまった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm7114
愛善世界社版:
181頁
八幡書店版:
第12輯 567頁
修補版:
校定版:
189頁
普及版:
90頁
初版:
ページ備考:
001
玄真坊
(
げんしんばう
)
、
002
コブライ、
003
コオロの
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
左守
(
さもり
)
の
情
(
なさ
)
けに
仍
(
よ
)
つて、
004
漸
(
やうや
)
くに
死罪
(
しざい
)
を
免
(
まぬが
)
れ、
005
持
(
も
)
てる
丈
(
だけ
)
の
黄金
(
わうごん
)
を
胴巻
(
どうまき
)
に
押
(
お
)
し
込
(
こ
)
み、
006
重
(
おも
)
たい
腰
(
こし
)
をゆすり
乍
(
なが
)
ら、
007
人跡
(
じんせき
)
稀
(
まれ
)
なる
森林
(
しんりん
)
を
探
(
さぐ
)
りて、
008
一日
(
いちにち
)
一夜
(
いちや
)
西
(
にし
)
へ
西
(
にし
)
へと
駆
(
か
)
け
出
(
だ
)
して
行
(
ゆ
)
く。
009
三
(
さん
)
人
(
にん
)
共
(
とも
)
身体
(
しんたい
)
縄
(
なは
)
の
如
(
ごと
)
くに
疲
(
つか
)
れ
果
(
は
)
て、
010
最早
(
もはや
)
一歩
(
いつぽ
)
も
歩
(
あゆ
)
めなくなつて
了
(
しま
)
つた。
011
コブライ『モシ
玄真
(
げんしん
)
さま、
012
何程
(
なにほど
)
黄金
(
わうごん
)
を
沢山
(
たくさん
)
貰
(
もら
)
つても
体
(
からだ
)
が
達者
(
たつしや
)
になるといふでもなし、
013
腹
(
はら
)
が
膨
(
ふく
)
れると
云
(
い
)
ふでもなし、
014
斯
(
か
)
うなつて
見
(
み
)
ると
黄金
(
わうごん
)
も
何
(
なに
)
も
役
(
やく
)
に
立
(
た
)
たないものですな。
015
重
(
おも
)
たい
許
(
ばか
)
りで
016
こんな
事
(
こと
)
三日
(
みつか
)
も
続
(
つづ
)
けやうものなら、
017
到底
(
たうてい
)
命
(
いのち
)
はありませぬワ』
018
玄真坊
(
げんしんぼう
)
『
馬鹿
(
ばか
)
を
云
(
い
)
ふな、
019
金
(
かね
)
さへ
有
(
あ
)
れば、
020
どんな
甘
(
うま
)
い
物
(
もの
)
でも
食
(
たべ
)
られるし、
021
どんな
別嬪
(
べつぴん
)
でも
買
(
か
)
はふと
儘
(
まま
)
だ。
022
今日
(
こんにち
)
は
黄金
(
わうごん
)
万能
(
ばんのう
)
の
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
だからのう、
023
着炭
(
ちやくたん
)
議員
(
ぎゐん
)
に
成
(
な
)
らうとしても
五万
(
ごまん
)
や
十万
(
じふまん
)
の
金
(
かね
)
は
要
(
い
)
る。
024
短命
(
たんめい
)
内閣
(
ないかく
)
の
総理
(
そうり
)
大臣
(
だいじん
)
に
成
(
な
)
らうて
思
(
おも
)
つても、
025
二千万
(
にせんまん
)
両
(
りやう
)
や
三千万
(
さんぜんまん
)
両
(
りやう
)
の
金
(
かね
)
が
要
(
い
)
るのだ』
026
コ『さうかも
知
(
し
)
れませぬが、
027
斯
(
か
)
う
山林
(
さんりん
)
許
(
ばか
)
し
跋渉
(
ばつせう
)
してゐては、
028
別嬪
(
べつぴん
)
も
見付
(
みつ
)
からず、
029
甘
(
うま
)
いもの
食
(
く
)
はうにも、
030
味
(
あぢ
)
無
(
な
)
いもの
食
(
く
)
はうにも、
031
テンで
店屋
(
みせや
)
も
無
(
な
)
いぢやありませぬか。
032
一千
(
いつせん
)
万
(
まん
)
円
(
ゑん
)
の
包
(
つつみ
)
より
一升米
(
いつしやうごめ
)
が
貴
(
たふと
)
いやうに
私
(
わたし
)
は
思
(
おも
)
ひますわ。
033
アーア
何
(
なん
)
とかして
食料
(
しよくれう
)
に
有
(
あり
)
付
(
つ
)
き
度
(
た
)
いものだなア』
034
玄
(
げん
)
『そんな
弱音
(
よわね
)
を
吹
(
ふ
)
くな。
035
もう
一
(
いち
)
日
(
にち
)
許
(
ばか
)
り
走
(
はし
)
れば
安全
(
あんぜん
)
地帯
(
ちたい
)
がある。
036
其処
(
そこ
)
へ
行
(
ゆ
)
けば
女郎
(
ぢよらう
)
も
居
(
ゐ
)
るし、
037
どんな
綺麗
(
きれい
)
な
着物
(
きもの
)
でも
売
(
う
)
つてゐる。
038
百味
(
ひやくみ
)
の
飲食
(
おんじき
)
も
待
(
ま
)
つてゐる。
039
マ、
040
其処
(
そこ
)
迄
(
まで
)
辛抱
(
しんばう
)
したが
可
(
よ
)
からう、
041
腹
(
はら
)
が
空
(
へ
)
つて
仕方
(
しかた
)
なければ
拇指
(
おやゆび
)
の
爪
(
つめ
)
なつと
甜
(
ねぶ
)
つて
居
(
を
)
れ。
042
さうすりや
些
(
ちつ
)
と
許
(
ばか
)
り
飢
(
うゑ
)
を
凌
(
しの
)
ぐ
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
やうも
知
(
し
)
れぬ。
043
彼
(
あ
)
の
章魚
(
たこ
)
を
見
(
み
)
い、
044
章魚
(
たこ
)
は
食
(
く
)
ふ
物
(
もの
)
が
無
(
な
)
くなると、
045
自分
(
じぶん
)
の
足
(
あし
)
を
皆
(
みな
)
食
(
く
)
つて
了
(
しま
)
ふものだ』
046
コ『
人間
(
にんげん
)
を
章魚
(
たこ
)
に
譬
(
たとへ
)
られちや
堪
(
たま
)
りませぬがな。
047
お
前様
(
まへさま
)
こそタコ
坊主
(
ばうず
)
だから
足
(
あし
)
なつと
甜
(
ねぶ
)
つて
居
(
を
)
りなさい。
048
コブライは
痩
(
やせ
)
ても
枯
(
か
)
れても
一人前
(
いちにんまへ
)
の
人間
(
にんげん
)
様
(
さま
)
だ。
049
タコの
真似
(
まね
)
は
出来
(
でき
)
ませぬ
哩
(
わい
)
、
050
喃
(
の
)
うコオロ。
051
最
(
も
)
う
一足
(
ひとあし
)
も
歩
(
ある
)
けぬぢやないか』
052
コオ『
俺
(
おれ
)
も
苦
(
くる
)
しうて
堪
(
たま
)
らぬが、
053
何処
(
どつか
)
で
此
(
この
)
お
金
(
かね
)
を
以
(
もつ
)
て
甘
(
うま
)
いものを
買
(
か
)
ひ、
054
別嬪
(
べつぴん
)
を
抱
(
だ
)
いて
寝
(
ね
)
ようと
思
(
おも
)
へば、
055
又
(
また
)
元気
(
げんき
)
が
出
(
で
)
て
来
(
き
)
て、
056
些
(
ちつ
)
と
許
(
ばか
)
り
歩
(
ある
)
ける
様
(
やう
)
になるのだ。
057
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
人間
(
にんげん
)
は
心次第
(
こころしだい
)
だ。
058
最
(
も
)
う
暫時
(
しばらく
)
だから
玄真坊
(
げんしんばう
)
様
(
さま
)
の
仰有
(
おつしや
)
る
通
(
とほ
)
り、
059
辛抱
(
しんばう
)
して
跟
(
つ
)
いて
行
(
ゆ
)
かうぢやないか。
060
こんな
所
(
ところ
)
で
野垂死
(
のたれじに
)
しても
約
(
つま
)
らぬからの』
061
コ『エー、
062
仕方
(
しかた
)
がない。
063
又
(
また
)
コンパスに
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
をかけやうかな』
064
と
渋々
(
しぶしぶ
)
乍
(
なが
)
ら
一二丁
(
いちにちやう
)
許
(
ばか
)
り
進
(
すす
)
んで
行
(
ゆ
)
くと、
065
十手
(
じつて
)
指叉
(
さすまた
)
を
持
(
も
)
つた
十数
(
じふすう
)
人
(
にん
)
の
捕手
(
とりて
)
が
066
身
(
み
)
を
没
(
ぼつ
)
する
許
(
ばか
)
りの
萱草
(
かやぐさ
)
の
中
(
なか
)
から
現
(
あら
)
はれ
出
(
い
)
で、
067
三
(
さん
)
人
(
にん
)
を
取
(
とり
)
まいて
了
(
しま
)
つた。
068
右
(
みぎ
)
の
方
(
はう
)
は
千仭
(
せんじん
)
の
谷間
(
たにあひ
)
、
069
三方
(
さんぱう
)
は
捕手
(
とりて
)
に
囲
(
かこ
)
まれ
進退
(
しんたい
)
これ
谷
(
きは
)
まり
最早
(
もはや
)
これ
迄
(
まで
)
と、
070
三
(
さん
)
人
(
にん
)
一度
(
いちど
)
に
青淵
(
あをぶち
)
めがけて、
071
九死
(
きうし
)
に
一生
(
いつしやう
)
を
僥倖
(
げうかう
)
せむものと、
072
命
(
いのち
)
の
安売
(
やすうり
)
をやつてみた。
073
捕手
(
とりて
)
はアレヨアレヨと
眺
(
なが
)
めて
居
(
を
)
れど、
074
名
(
な
)
に
負
(
お
)
ふ
断岩
(
だんがん
)
絶壁
(
ぜつぺき
)
近
(
ちか
)
よることも
出来
(
でき
)
ず、
075
みすみす
敵
(
てき
)
を
見捨
(
みす
)
てて
076
ブツブツ
小言
(
こごと
)
を
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
帰
(
かへ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
077
○
078
渺茫
(
べうばう
)
として
際限
(
さいげん
)
もなき
大原野
(
だいげんや
)
の
真中
(
まんなか
)
を
079
只
(
ただ
)
一人
(
ひとり
)
の
老人
(
らうじん
)
が
蚊
(
か
)
の
鳴
(
な
)
くやうな
声
(
こゑ
)
で
歌
(
うた
)
を
唄
(
うた
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
通
(
とほ
)
つてゐる。
080
『
川
(
かは
)
の
流
(
なが
)
れと
人
(
ひと
)
の
身
(
み
)
の
081
行末
(
ゆくすゑ
)
こそは
不思議
(
ふしぎ
)
なれ
082
タラハン
城
(
じやう
)
に
仕
(
つか
)
へたる
083
吾
(
われ
)
は
左守
(
さもり
)
の
司
(
かみ
)
なるぞ
084
いつの
間
(
ま
)
にかは
知
(
し
)
らね
共
(
ども
)
085
限
(
かぎり
)
も
知
(
し
)
らぬ
大野原
(
おほのはら
)
086
さまよひ
来
(
きた
)
る
訝
(
いぶ
)
かしさ
087
道
(
みち
)
ゆく
人
(
ひと
)
も
無
(
な
)
きままに
088
言問
(
ことと
)
ふ
由
(
よし
)
もなく
許
(
ばか
)
り
089
あゝいかにせむ
千秋
(
せんしう
)
の
090
恨
(
うらみ
)
を
野辺
(
のべ
)
に
残
(
のこ
)
しつつ
091
あへなき
最後
(
さいご
)
を
遂
(
と
)
ぐるのか
092
あゝ
浅
(
あさ
)
ましや
浅
(
あさ
)
ましや
093
タラハン
城
(
じやう
)
の
方面
(
はうめん
)
は
094
何処
(
いづこ
)
の
空
(
そら
)
に
当
(
あた
)
るやら
095
百里
(
ひやくり
)
夢中
(
むちう
)
にさまよひし
096
吾
(
わが
)
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
こそ
悲
(
かな
)
しけれ
097
原野
(
げんや
)
に
千草
(
ちぐさ
)
は
生
(
は
)
えぬれど
098
花
(
はな
)
も
実
(
み
)
もなき
枯野原
(
かれのはら
)
099
吹
(
ふ
)
き
来
(
く
)
る
風
(
かぜ
)
さへ
音
(
おと
)
もなく
100
烏
(
からす
)
の
声
(
こゑ
)
さへ
聞
(
きこ
)
え
来
(
こ
)
ず
101
寂光
(
じやくくわう
)
浄土
(
じやうど
)
か
知
(
し
)
らね
共
(
ども
)
102
天地
(
てんち
)
一度
(
いちど
)
に
眠
(
ねむ
)
りたる
103
如
(
ごと
)
き
此
(
この
)
場
(
ば
)
の
光景
(
くわうけい
)
は
104
淋
(
さび
)
しさたとふる
物
(
もの
)
もなし
105
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
106
三五教
(
あななひけう
)
の
大御神
(
おほみかみ
)
107
導
(
みちび
)
き
玉
(
たま
)
へ
永久
(
とこしへ
)
の
108
棲処
(
すみか
)
と
定
(
さだ
)
めしタラハンの
109
城下
(
じやうか
)
に
建
(
た
)
ちし
左守家
(
さもりけ
)
へ
110
思
(
おも
)
へば
思
(
おも
)
へば
人
(
ひと
)
の
身
(
み
)
の
111
行末
(
ゆくすゑ
)
こそは
果敢
(
はか
)
なけれ
112
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
造
(
つく
)
りし
神直日
(
かむなほひ
)
113
心
(
こころ
)
も
広
(
ひろ
)
き
大直日
(
おほなほひ
)
114
只
(
ただ
)
何事
(
なにごと
)
も
人
(
ひと
)
の
世
(
よ
)
は
115
直日
(
なほひ
)
に
見直
(
みなほ
)
し
聞直
(
ききなほ
)
し
116
身
(
み
)
の
過
(
あやまち
)
は
宣直
(
のりなほ
)
す
117
三五教
(
あななひけう
)
の
御教
(
みをしへ
)
は
118
梅公別
(
うめこうわけ
)
の
師
(
し
)
の
君
(
きみ
)
ゆ
119
完全
(
うまら
)
に
詳細
(
つばら
)
に
聞
(
き
)
きつれど
120
見直
(
みなほ
)
す
術
(
すべ
)
も
無
(
な
)
きままに
121
名
(
な
)
さへ
分
(
わか
)
らぬ
荒野原
(
あれのはら
)
122
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
は
何
(
なん
)
の
罪
(
つみ
)
あつて
123
かかる
処
(
ところ
)
へ
落
(
お
)
ちたのか
124
合点
(
がてん
)
のゆかぬ
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
ぞ
125
憐
(
あはれ
)
み
玉
(
たま
)
へ
大御神
(
おほみかみ
)
126
導
(
みちび
)
き
玉
(
たま
)
へ
吾
(
わが
)
宿
(
やど
)
へ
127
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
128
御霊
(
みたま
)
幸
(
さちは
)
ひましませよ
129
旭
(
あさひ
)
は
照
(
て
)
る
共
(
とも
)
曇
(
くも
)
る
共
(
とも
)
130
月
(
つき
)
は
盈
(
み
)
つ
共
(
とも
)
虧
(
か
)
くる
共
(
とも
)
131
仮令
(
たとへ
)
大地
(
だいち
)
は
沈
(
しづ
)
む
共
(
とも
)
132
誠
(
まこと
)
の
力
(
ちから
)
は
世
(
よ
)
を
救
(
すく
)
ふ
133
神
(
かみ
)
が
表
(
おもて
)
に
現
(
あら
)
はれて
134
善
(
ぜん
)
と
悪
(
あく
)
とを
立別
(
たてわ
)
ける
135
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
造
(
つく
)
りし
神直日
(
かむなほひ
)
136
心
(
こころ
)
も
広
(
ひろ
)
き
大直日
(
おほなほひ
)
137
只
(
ただ
)
何事
(
なにごと
)
も
人
(
ひと
)
の
世
(
よ
)
は
138
直日
(
なほひ
)
に
見直
(
みなほ
)
す
道
(
みち
)
ぢやげな
139
誠
(
まこと
)
の
力
(
ちから
)
といふ
事
(
こと
)
は
140
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
造
(
つく
)
り
玉
(
たま
)
ひたる
141
真
(
まこと
)
の
神
(
かみ
)
の
力
(
ちから
)
だろ
142
人間界
(
にんげんかい
)
に
身
(
み
)
をおいて
143
どうして
真
(
まこと
)
が
出
(
で
)
るものか
144
真
(
まこと
)
の
力
(
ちから
)
の
神
(
かみ
)
さまよ
145
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
の
淋
(
さび
)
しき
境遇
(
きやうぐう
)
を
146
何卒
(
なにとぞ
)
救
(
すく
)
ひ
玉
(
たま
)
へかし
147
偏
(
ひとへ
)
に
願
(
ねが
)
ひ
奉
(
たてまつ
)
る
148
三千
(
さんぜん
)
世界
(
せかい
)
の
梅
(
うめ
)
の
花
(
はな
)
149
一度
(
いちど
)
に
開
(
ひら
)
く
神
(
かみ
)
の
国
(
くに
)
150
開
(
ひら
)
いて
散
(
ち
)
りて
実
(
み
)
を
結
(
むす
)
ぶ
151
月日
(
つきひ
)
と
土
(
つち
)
の
恩
(
おん
)
を
知
(
し
)
れ
152
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
救
(
すく
)
ふ
活神
(
いきがみ
)
は
153
高天原
(
たかあまはら
)
に
神集
(
かむつど
)
ふ
154
などと
尊
(
たふと
)
き
宣伝歌
(
せんでんか
)
155
肝
(
きも
)
に
銘
(
めい
)
じて
忘
(
わす
)
れねど
156
只
(
ただ
)
一輪
(
いちりん
)
の
梅
(
うめ
)
さへも
157
開
(
ひら
)
いて
居
(
を
)
らぬ
此
(
この
)
野辺
(
のべ
)
は
158
地獄
(
ぢごく
)
の
道
(
みち
)
の
八丁目
(
はつちやうめ
)
159
八衢
(
やちまた
)
街道
(
かいだう
)
の
続
(
つづき
)
だろ
160
かかる
淋
(
さび
)
しき
大野原
(
おほのはら
)
161
さまよひ
来
(
きた
)
る
吾
(
わが
)
身
(
み
)
こそ
162
前世
(
ぜんせ
)
現界
(
げんかい
)
相共
(
あひとも
)
に
163
無限
(
むげん
)
の
罪
(
つみ
)
を
重
(
かさ
)
ね
来
(
き
)
て
164
神
(
かみ
)
の
懲戒
(
いましめ
)
うけ
乍
(
なが
)
ら
165
身魂
(
みたま
)
を
研
(
みが
)
いて
居
(
を
)
るのだろ
166
死
(
し
)
んだ
覚
(
おぼえ
)
のない
吾
(
わ
)
れは
167
幽冥界
(
いうめいかい
)
とも
思
(
おも
)
へない
168
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
169
神
(
かみ
)
が
此
(
この
)
世
(
よ
)
にあるならば
170
何卒
(
なにとぞ
)
吾
(
わが
)
身
(
み
)
を
導
(
みちび
)
いて
171
恋
(
こひ
)
しき
吾
(
わが
)
家
(
や
)
にかやせかし
172
偏
(
ひとへ
)
に
願
(
ねが
)
ひ
奉
(
たてまつ
)
る』
173
斯
(
か
)
く
歌
(
うた
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
174
大野原
(
おほのはら
)
に
蚯蚓
(
みみづ
)
の
這
(
は
)
ふたやうについた
細路
(
ほそみち
)
を
辿
(
たど
)
り
行
(
ゆ
)
くと、
175
土
(
つち
)
の
中
(
なか
)
からムクムクと
頭
(
あたま
)
丈
(
だけ
)
が
動
(
うご
)
いてゐる。
176
シヤカンナは
此
(
この
)
淋
(
さび
)
しい
原野
(
げんや
)
の
正中
(
まんなか
)
に
松露
(
しようろ
)
のやうな
頭
(
あたま
)
が
動
(
うご
)
いてゐるのは
合点
(
がてん
)
が
行
(
ゆ
)
かぬと、
177
手
(
て
)
に
持
(
も
)
つた
杖
(
つゑ
)
で
二
(
ふた
)
つ
三
(
み
)
つこついてみると「アイタタ アイタタ」と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
178
月
(
つき
)
が
山
(
やま
)
の
端
(
は
)
を
昇
(
のぼ
)
るやうに、
179
チクリ チクリと
土
(
つち
)
から
抜
(
ぬ
)
け
出
(
い
)
で、
180
肩
(
かた
)
まで
現
(
あら
)
はして
来
(
き
)
た。
181
よくよく
見
(
み
)
れば
玄真坊
(
げんしんばう
)
の
姿
(
すがた
)
そつくりである。
182
シヤカンナは
驚
(
おどろ
)
いて、
183
『オイ、
184
コラ、
185
汝
(
きさま
)
は
玄真坊
(
げんしんばう
)
ぢやないか。
186
こんな
所
(
ところ
)
に
何
(
なに
)
をしてゐるのだ』
187
玄
(
げん
)
『ヤ、
188
私
(
わし
)
はお
前
(
まへ
)
にお
詫
(
わび
)
をせにやならぬ
事
(
こと
)
があるのだ、
189
確
(
たしか
)
には
覚
(
おぼ
)
えてをらぬが、
190
お
前
(
まへ
)
の
館
(
やかた
)
へ
行
(
い
)
つて
無理
(
むり
)
難題
(
なんだい
)
を
吹
(
ふ
)
きかけ、
191
ドツサリ
金
(
かね
)
をぼつたくつて
帰
(
かへ
)
つた
天罰
(
てんばつ
)
で、
192
幽冥
(
いうめい
)
主宰
(
しゆさい
)
の
神
(
かみ
)
から
沢山
(
たくさん
)
な
黄金
(
わうごん
)
を
罰則
(
ばつそく
)
として
体
(
からだ
)
に
縛
(
しば
)
りつけられ、
193
其
(
その
)
重
(
おも
)
みで
体
(
からだ
)
が
地
(
ち
)
の
中
(
なか
)
へにえ
込
(
こ
)
んで
了
(
しま
)
ひ、
194
今
(
いま
)
ヤツとの
事
(
こと
)
で
首
(
くび
)
丈
(
だけ
)
地上
(
ちじやう
)
へ
現
(
あら
)
はした
所
(
ところ
)
だ。
195
どうか「
許
(
ゆる
)
す」と
一言
(
ひとこと
)
云
(
い
)
つてくれ。
196
さうすりや
俺
(
おれ
)
の
罪
(
つみ
)
も
軽
(
かる
)
うなるだらうから……』
197
シヤ『
何
(
なん
)
だか
俺
(
おれ
)
は
足
(
あし
)
がヒヨロヒヨロするけれど、
198
体
(
からだ
)
が
軽
(
かる
)
くて
足
(
あし
)
が
地上
(
ちじやう
)
を
離
(
はな
)
れ
相
(
さう
)
で
危険
(
きけん
)
で
堪
(
たま
)
らないが、
199
お
前
(
まへ
)
は
又
(
また
)
体
(
からだ
)
が
重
(
おも
)
いとは
不思議
(
ふしぎ
)
な
事
(
こと
)
だのう。
200
それぢやお
前
(
まへ
)
の
首
(
くび
)
を
千切
(
ちぎ
)
つてやるから
201
胴柄
(
どうがら
)
位
(
ぐらゐ
)
土
(
つち
)
に
托
(
たく
)
しておいたらどうだ。
202
何
(
いづ
)
れ
遅
(
おそ
)
かれ
早
(
はや
)
かれ
土
(
つち
)
の
中
(
なか
)
へ
這入
(
はい
)
る
体
(
からだ
)
だからのう』
203
玄
(
げん
)
『オイ
兄貴
(
あにき
)
、
204
そんな
無茶
(
むちや
)
な
事
(
こと
)
云
(
い
)
ふてくれない。
205
天一
(
てんいち
)
の
手品師
(
てじなし
)
なら、
206
首
(
くび
)
をチヨン
切
(
ぎ
)
つても
又
(
また
)
つげるだらうが、
207
俺
(
おれ
)
のはさうはいけないよ。
208
どうか
兄貴
(
あにき
)
、
209
金剛力
(
こんがうりき
)
を
出
(
だ
)
して
俺
(
おれ
)
の
体
(
からだ
)
をグツと
引
(
ひ
)
き
上
(
あ
)
げて
貰
(
もら
)
へまいかの』
210
シヤ『
体
(
からだ
)
を
引
(
ひ
)
き
上
(
あ
)
げと
云
(
い
)
つたつて、
211
首
(
くび
)
から
下
(
した
)
が
埋
(
うづも
)
つてゐるのだから、
212
手
(
て
)
をかける
所
(
ところ
)
もないぢやないか、
213
それでも
強
(
た
)
つて
引
(
ひ
)
き
上
(
あ
)
げと
云
(
い
)
ふのなら、
214
両方
(
りやうはう
)
の
耳
(
みみ
)
を
掴
(
つか
)
んで
試
(
ためし
)
にやつてみようかな』
215
玄
(
げん
)
『どうでも
可
(
よ
)
いから、
216
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
一寸
(
いつすん
)
でも
体
(
からだ
)
を
地上
(
ちじやう
)
へ
出
(
だ
)
してくれ、
217
苦
(
くる
)
しくて
堪
(
たま
)
らぬ、
218
どうやら
地
(
ち
)
の
底
(
そこ
)
の
地獄
(
ぢごく
)
へ
引
(
ひつ
)
ぱり
込
(
こ
)
まれ
相
(
さう
)
だ』
219
「ヨーシ」と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
らシヤカンナは
220
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
冷
(
つめ
)
たい
手
(
て
)
で
冷
(
つめ
)
たい
耳
(
みみ
)
を
掴
(
つか
)
んでみたが、
221
磐石
(
ばんじやく
)
の
如
(
ごと
)
くビクとも
動
(
うご
)
かない。
222
さう
斯
(
か
)
うしてる
所
(
ところ
)
へ、
223
又
(
また
)
もや
二人
(
ふたり
)
の
男
(
をとこ
)
が、
224
濡衣
(
ぬれぎぬ
)
を
纏
(
まと
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
225
力
(
ちから
)
なげにトボトボとやつて
来
(
く
)
る。
226
シヤカンナは
後
(
あと
)
ふり
向
(
む
)
いて、
227
『ヤ、
228
お
前
(
まへ
)
はコブライにコオロの
両人
(
りやうにん
)
、
229
どして
又
(
また
)
こんな
淋
(
さび
)
しい
所
(
ところ
)
へやつて
来
(
き
)
たのだい』
230
コブ『ヤ、
231
親方
(
おやかた
)
で
御座
(
ござ
)
いますか、
232
まづ
御
(
ご
)
壮健
(
さうけん
)
でお
芽出度
(
めでた
)
う。
233
実
(
じつ
)
アはつきり
覚
(
おぼ
)
えませぬが、
234
お
前
(
まへ
)
さま
所
(
ところ
)
で
金
(
かね
)
を
貰
(
もら
)
つて
帰
(
かへ
)
る
途中
(
とちう
)
追手
(
おつて
)
に
出会
(
であ
)
ひ、
235
谷川
(
たにがは
)
へ
飛
(
と
)
び
込
(
こ
)
んだと
思
(
おも
)
や、
236
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
にか
斯
(
こ
)
んな
所
(
ところ
)
へ
来
(
き
)
てゐます。
237
併
(
しか
)
し
飛
(
と
)
び
込
(
こ
)
んだ
際
(
さい
)
に
折角
(
せつかく
)
貰
(
もら
)
つた
山吹色
(
やまぶきいろ
)
は
皆
(
みんな
)
谷底
(
たにぞこ
)
へ
捨
(
す
)
てて
了
(
しま
)
ひ、
238
今
(
いま
)
ぢや
欠
(
か
)
けた
かんつ
も
御座
(
ござ
)
いませぬが、
239
どうか
親方
(
おやかた
)
、
240
チツと
許
(
ばか
)
りお
金
(
かね
)
を
恵
(
めぐ
)
んで
貰
(
もら
)
へますまいかな』
241
シヤ『
俺
(
おれ
)
だとて
其
(
その
)
通
(
とほ
)
りだ。
242
一文
(
いちもん
)
生中
(
きなか
)
も
身
(
み
)
につけてゐないのだ。
243
こんな
所
(
ところ
)
を
旅行
(
りよかう
)
するのに
家
(
いへ
)
もなし
店
(
みせ
)
もなし、
244
金
(
かね
)
が
要
(
い
)
るものかい。
245
腹
(
はら
)
が
減
(
へ
)
つたら
草
(
くさ
)
でも
千切
(
ちぎ
)
つて
食
(
く
)
つて
行
(
ゆ
)
くより
仕様
(
しやう
)
がないぢやないか』
246
コブ『ヤ、
247
其処
(
そこ
)
にゐるのは
玄真
(
げんしん
)
さまぢやないか、
248
何
(
なん
)
ぢやい、
249
首
(
くび
)
許
(
ばか
)
り
出
(
だ
)
しやがつて、
250
……サ、
251
起
(
お
)
きたり
起
(
お
)
きたり』
252
玄真
(
げんしん
)
は
目
(
め
)
を
無性
(
むしやう
)
矢鱈
(
やたら
)
にジヤイロコンパスのやうに
廻転
(
くわいてん
)
し
始
(
はじ
)
め、
253
口
(
くち
)
も
目
(
め
)
も
鼻
(
はな
)
も
一所
(
ひとところ
)
に
集中
(
しふちう
)
し
254
顔面
(
がんめん
)
筋肉
(
きんにく
)
を
頻
(
しきり
)
に
活動
(
くわつどう
)
させ
出
(
だ
)
した。
255
シヤ『ヤ、
256
此奴
(
こいつ
)
アどうやら
地獄
(
ぢごく
)
落
(
お
)
ちらしいぞ。
257
まだ
黄金
(
わうごん
)
に
執着心
(
しふちやくしん
)
を
持
(
も
)
つてるらしいぞ、
258
オイ、
259
玄真
(
げんしん
)
、
260
すつぱりその
金
(
かね
)
を
思
(
おも
)
ひ
切
(
き
)
つて
了
(
しま
)
へ。
261
そすりや
助
(
たす
)
かるだらう』
262
玄真
(
げんしん
)
『ヤア、
263
何
(
なに
)
程
(
ほど
)
金
(
かね
)
が
欲
(
ほ
)
しうても、
264
かう
苦
(
くる
)
しうては
欲
(
よく
)
にも
得
(
とく
)
にもかへられないワ、
265
モウ
金
(
かね
)
はコリコリだ。
266
一文
(
いちもん
)
も
要
(
い
)
らない。
267
オイ
黄金
(
わうごん
)
の
奴
(
やつ
)
、
268
今日
(
けふ
)
から
暇
(
ひま
)
をやるから
勝手
(
かつて
)
に
何処
(
どつか
)
へ
行
(
い
)
つてくれ』
269
と
云
(
い
)
ふが
否
(
いな
)
や、
270
子供
(
こども
)
の
玩具
(
おもちや
)
の
猿
(
さる
)
が
弓弾
(
ゆみはぢ
)
きに
弾
(
はぢ
)
かれたやうな
勢
(
いきほひ
)
で、
271
ポンと
地上
(
ちじやう
)
三間
(
さんげん
)
許
(
ばか
)
りも
飛
(
と
)
び
上
(
あが
)
り、
272
ドスンと
又
(
また
)
元
(
もと
)
の
所
(
ところ
)
へ
落
(
お
)
ちて
来
(
き
)
た。
273
シヤ『オイ、
274
玄真坊
(
げんしんばう
)
、
275
欲
(
よく
)
といふ
奴
(
やつ
)
ア
怖
(
こわ
)
いものぢやのう』
276
玄
(
げん
)
『
本当
(
ほんたう
)
にさうだ、
277
おらモウ
金
(
かね
)
にはコリコリしたよ。
278
併
(
しか
)
しお
前
(
まへ
)
は
結構
(
けつこう
)
なタラハン
城
(
じやう
)
の
館
(
やかた
)
を
捨
(
す
)
てて、
279
何故
(
なぜ
)
又
(
また
)
こんな
所
(
ところ
)
へ
来
(
き
)
たのだ。
280
チツと
合点
(
がてん
)
が
行
(
ゆ
)
かぬぢやないか、
281
……ハハー、
282
大方
(
おほかた
)
俺
(
おれ
)
の
金
(
かね
)
が
惜
(
を
)
しうなつて、
283
追駆
(
おつかけ
)
て
来
(
き
)
たのだな。
284
それで
俺
(
おれ
)
を
器械
(
きかい
)
仕掛
(
じかけ
)
で
地
(
ち
)
の
中
(
なか
)
へ
電気
(
でんき
)
ででも
引張
(
ひつぱ
)
つてゐやがつたのだなア』
285
シヤ『
馬鹿
(
ばか
)
を
云
(
い
)
ふない。
286
俺
(
おれ
)
はモウ
金
(
かね
)
なんか
見
(
み
)
るのも
厭
(
いや
)
だ。
287
併
(
しか
)
し
俺
(
おれ
)
は、
288
今
(
いま
)
フツと
思
(
おも
)
ひ
出
(
だ
)
したがお
前
(
まへ
)
を
逃
(
に
)
がした
跡
(
あと
)
で、
289
確
(
たしか
)
に
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
前
(
まへ
)
で
切腹
(
せつぷく
)
をして
果
(
は
)
てた
積
(
つもり
)
だが、
290
何故
(
なぜ
)
又
(
また
)
こんな
所
(
ところ
)
へやつて
来
(
き
)
て
生
(
い
)
きてゐるのだろ。
291
丸
(
まる
)
で
狐
(
きつね
)
につままれたやうで、
292
現界
(
げんかい
)
か
幽界
(
いうかい
)
かチツとも
訳
(
わけ
)
が
分
(
わか
)
らないのだ。
293
一体
(
いつたい
)
此処
(
ここ
)
は
何処
(
どこ
)
だと
思
(
おも
)
つてゐるか』
294
玄
(
げん
)
『サ、
295
どうも
不思議
(
ふしぎ
)
で
堪
(
たま
)
らぬのだ。
296
お
前
(
まへ
)
の
話
(
はなし
)
を
聞
(
き
)
くと、
297
お
前
(
まへ
)
が
俺
(
おれ
)
より
先
(
さき
)
死
(
し
)
んだ
者
(
もの
)
とすれば、
298
先
(
さき
)
に
此所
(
ここ
)
へ
来
(
き
)
て
居
(
を
)
らにやならぬ
筈
(
はず
)
だ。
299
俺
(
おれ
)
等
(
たち
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
一日
(
いちにち
)
一夜
(
いちや
)
山
(
やま
)
や
谷
(
たに
)
を
走
(
はし
)
つて
谷川
(
たにがは
)
へ
飛
(
と
)
び
込
(
こ
)
んだやうな
気
(
き
)
がする。
300
それが
先
(
ま
)
づ
此処
(
ここ
)
へ
来
(
き
)
てる
筈
(
はず
)
がない。
301
てもさても
合点
(
がてん
)
の
行
(
ゆ
)
かぬ
事
(
こと
)
だのう』
302
コブ『コリヤ
何
(
ど
)
うしても、
303
玄真
(
げんしん
)
さま、
304
幽界
(
いうかい
)
旅行
(
りよかう
)
をやつてゐるのに
違
(
ちがひ
)
ありませぬよ。
305
吾々
(
われわれ
)
はかうして
生
(
い
)
きてると
思
(
おも
)
つてるが
肉体
(
にくたい
)
はとうに
死
(
し
)
んで
了
(
しま
)
ひ、
306
精霊体
(
せいれいたい
)
許
(
ばか
)
りが
此所
(
ここ
)
へ
迷
(
まよ
)
ふて
来
(
き
)
たのでせう。
307
霊界
(
れいかい
)
には
時間
(
じかん
)
空間
(
くうかん
)
の
区別
(
くべつ
)
も
無
(
な
)
く、
308
遠
(
とほ
)
い
近
(
ちか
)
いもない
相
(
さう
)
だから、
309
先
(
さき
)
へ
死
(
し
)
んだ
者
(
もの
)
が
後
(
あと
)
へなる
共
(
とも
)
、
310
後
(
あと
)
から
死
(
し
)
んだ
者
(
もの
)
が
先
(
さき
)
へなる
共
(
とも
)
、
311
そんなこた
分
(
わか
)
りませぬワイ。
312
マア
死
(
し
)
んだ
者
(
もの
)
としておけや、
313
後
(
あと
)
で
驚
(
おどろ
)
かいで
宜
(
よろ
)
しかろ』
314
コオ『オイ、
315
コブライ、
316
どうやらこりや
地獄
(
ぢごく
)
街道
(
かいだう
)
の
八丁目
(
はつちやうめ
)
らしいぞ。
317
困
(
こま
)
つた
事
(
こと
)
になつたものぢやないか』
318
玄
(
げん
)
『さうだ、
319
一寸
(
ちよつと
)
面食
(
めんくら
)
つたな、
320
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
らかうして
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
道伴
(
みちづ
)
れが
出来
(
でき
)
た
以上
(
いじやう
)
は、
321
淋
(
さび
)
しさも
稍
(
やや
)
薄
(
うす
)
らいで
来
(
き
)
たやうだ。
322
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
、
323
地獄
(
ぢごく
)
でも
何処
(
どこ
)
でもかまはぬ、
324
行
(
ゆ
)
ける
所
(
とこ
)
迄
(
まで
)
行
(
ゆ
)
かうぢやないか。
325
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
や
元
(
もと
)
より
極楽
(
ごくらく
)
に
行
(
い
)
つて
無聊
(
むれう
)
に
苦
(
くるし
)
むよりも、
326
地獄
(
ぢごく
)
へ
行
(
い
)
つて
車輪
(
しやりん
)
の
活動
(
くわつどう
)
をやるが
望
(
のぞみ
)
だからのう』
327
コブ『
其
(
その
)
お
説
(
せつ
)
はハル
山峠
(
やまたうげ
)
の
岩上
(
がんじやう
)
で
承
(
うけたま
)
はりましたね、
328
サ、
329
行
(
ゆ
)
きませう。
330
余
(
あま
)
り
淋
(
さび
)
しいから
一
(
ひと
)
つ
行進歌
(
かうしんか
)
でも
唄
(
うた
)
はふぢやありませぬか』
331
玄
(
げん
)
『そら
面白
(
おもしろ
)
からう、
332
先
(
ま
)
づ
俺
(
おれ
)
から
歌
(
うた
)
ふてやる。
333
限
(
かぎり
)
も
知
(
し
)
らぬ
大野原
(
おほのはら
)
334
此所
(
ここ
)
は
地獄
(
ぢごく
)
の
八丁目
(
はつちやうめ
)
335
八衢
(
やちまた
)
街道
(
かいだう
)
か
知
(
し
)
らね
共
(
ども
)
336
三人
(
みたり
)
の
家来
(
けらい
)
を
引
(
ひ
)
きつれて
337
名
(
な
)
さへ
分
(
わか
)
らぬ
荒野原
(
あらのはら
)
338
進
(
すす
)
みゆくこそ
勇
(
いさ
)
ましき
339
もしも
此
(
この
)
世
(
よ
)
に
天国
(
てんごく
)
が
340
あるものとすりや
行
(
い
)
つてみよう
341
無
(
な
)
ければ
是非
(
ぜひ
)
なく
地獄道
(
ぢごくだう
)
342
肩肱
(
かたひぢ
)
いからし
進
(
すす
)
まうか
343
併
(
しか
)
し
此
(
この
)
世
(
よ
)
に
地獄
(
ぢごく
)
とか
344
極楽
(
ごくらく
)
などがあるものか
345
どこ
迄
(
まで
)
行
(
い
)
つても
此
(
この
)
通
(
とほ
)
り
346
冷
(
つめた
)
い
風
(
かぜ
)
がピユーピユーと
347
草
(
くさ
)
の
葉末
(
はずゑ
)
をなで
乍
(
なが
)
ら
348
遠慮
(
ゑんりよ
)
もなしに
通
(
とほ
)
つてゐる
349
これがヤツパリ
地獄
(
ぢごく
)
だろ
350
何
(
なに
)
程
(
ほど
)
地獄
(
ぢごく
)
が
怖
(
こは
)
く
共
(
とも
)
351
こんな
事
(
こと
)
なら
屁
(
へ
)
のお
茶
(
ちや
)
だ
352
ドツコイ ドツコイ ドツコイシヨ
353
コラコラ
三人
(
みたり
)
の
家来
(
けらい
)
共
(
ども
)
354
しつかり
後
(
あと
)
からついて
来
(
こ
)
よ
355
落伍
(
らくご
)
をしても
知
(
し
)
らないぞ
356
アレアレ
不思議
(
ふしぎ
)
アレ
不思議
(
ふしぎ
)
357
向方
(
むかふ
)
に
妙
(
めう
)
な
建物
(
たてもの
)
が
358
チラチラ
吾
(
わが
)
目
(
め
)
につき
出
(
だ
)
した
359
此奴
(
こいつあ
)
ヤツパリ
現界
(
げんかい
)
か
360
現界
(
げんかい
)
ならば
尚
(
なほ
)
の
事
(
こと
)
361
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
にはしやいで
362
元気
(
げんき
)
をつけて
行
(
ゆ
)
かうかい
363
タラハン
城
(
じやう
)
を
占領
(
せんりやう
)
し
364
天晴
(
あつぱれ
)
国王
(
こくわう
)
と
成
(
なり
)
すまし
365
羽振
(
はぶり
)
を
利
(
き
)
かそと
思
(
おも
)
ふたに
366
いつの
間
(
ま
)
にかは
知
(
し
)
らね
共
(
ども
)
367
こんな
所
(
ところ
)
へ
彷徨
(
さまよ
)
ふて
368
東西
(
とうざい
)
南北
(
なんぼく
)
方位
(
はうゐ
)
さへ
369
分
(
わか
)
らぬ
今日
(
けふ
)
の
不思議
(
ふしぎ
)
さよ
370
向方
(
むかふ
)
に
見
(
み
)
ゆる
建物
(
たてもの
)
は
371
鬼
(
おに
)
か
悪魔
(
あくま
)
の
住処
(
すみか
)
だろ
372
サアサア
行
(
ゆ
)
かうサア
行
(
ゆ
)
かう
373
何
(
なに
)
をビリビリしとるのだ
374
もしも
地獄
(
ぢごく
)
があるならば
375
地獄
(
ぢごく
)
の
鬼
(
おに
)
を
引捉
(
ひつとら
)
へ
376
蝗
(
いなご
)
のやうに
竹串
(
たけぐし
)
に
377
並
(
なら
)
べて
刺
(
さ
)
して
火
(
ひ
)
に
炙
(
あぶ
)
り
378
片
(
かた
)
つ
端
(
ぱし
)
から
食
(
く
)
てやろか
379
あゝ
面白
(
おもしろ
)
い
面白
(
おもしろ
)
い
380
地獄
(
ぢごく
)
の
王
(
わう
)
の
御
(
ご
)
出立
(
しゆつたつ
)
381
鬼
(
おに
)
でも
蛇
(
じや
)
でもやつて
来
(
こ
)
い
382
ドツコイ ドツコイ ドツコイシヨ』
383
などと
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
歌
(
うた
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
384
頭
(
あたま
)
を
前方
(
ぜんぱう
)
に
突出
(
とつしゆつ
)
し、
385
チヨコチヨコ
走
(
ばし
)
りに
進
(
すす
)
んでゆく。
386
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
四五丁
(
しごちやう
)
許
(
ばか
)
り
取
(
と
)
り
残
(
のこ
)
され、
387
ヨボヨボと
細
(
ほそ
)
い
声
(
こゑ
)
で
行進歌
(
かうしんか
)
を
歌
(
うた
)
ひ
乍
(
なが
)
らついて
行
(
ゆ
)
く。
388
玄真坊
(
げんしんばう
)
は
足許
(
あしもと
)
ばかり
見詰
(
みつ
)
めて
突進
(
とつしん
)
した
途端
(
とたん
)
に
四辻
(
よつつじ
)
の
立石
(
たていし
)
に
頭
(
あたま
)
をぶつつけ、
389
キヤア、
390
ウーンと
云
(
い
)
つたきり、
391
其
(
その
)
場
(
ば
)
に
蛙
(
かへる
)
をぶつつけたやうにふん
伸
(
の
)
びて
了
(
しま
)
つた。
392
(
大正一五・一・三一
旧一四・一二・一八
於月光閣
松村真澄
録)
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