バルギーはいつのまにか、破れ寺にやってきていて、一夜の宿を頼んでいる。
寺から現れた尼僧は、尼寺に男を泊めることはできないといってバルギーを閉め出す。
途方にくれたバルギーは野宿を覚悟するが、そこへ宿の客引き婆がやってきて、小さな宿に案内する。
婆が宿の戸を開けると、そこには牛頭・馬頭の妖怪が何十と居て、人間を食っていた。
婆は突然、真っ黒な熊となってバルギーを捕まえてしまう。客引き婆は、バルギーを妖怪の晩飯にしようと、連れてきたのであった。
バルギーは命乞いするが、熊はバルギーの悪業を数え上げる。
牛頭・馬頭の妖怪は、これまでバルギーが殺めて来た人々の化身であり、この地獄はバルギー自身が作ったものであった。
バルギーは進退きわまり、ダリヤ姫から聞き覚えた三五教の数歌を唱えた。すると、熊や牛頭馬頭の妖怪たちは次第に影が薄くなり、消えてしまった。気が付くと、枯草が生い茂る道のかたわらに、泥まみれになって倒れていた。
バルギーはよろよろと再び歩き出す。すると、以前に尼寺であった尼僧が、青黒い顔を枯草の中からあらわし、バルギーを呼び止め、自分はダリヤ姫であると名乗る。
尼僧は言う。
自分は、バルギーをだまして家まで送らせようとした、ダリヤ姫の悪念である。
不公平のない神界では、だました相手の許しを得て罪の償いをしなければならない。
そのために、このようなところにうろついている。
神谷村からバルギーが追い出されるとき、バルギーを諭すつもりで頭を三つたたいたが、その罪で、バルギーに頭を三つたたいてもらわなければ浮かばれないのだ、と語る。
バルギー尼から渡された扇子で尼の頭を三つ打つと、尼僧の姿はぱっと消えてしまった。
次に、山の向こうから「オーイオーイ」と自分を呼ぶ声がする。聞き覚えがある声に引かれてそちらに進んでいくと、たちまち東方の天から大きな火光が現れ、バルギーの面前に落下し、ドンと地響きを立てて爆発した。
気が付くと、自分はハル山峠のふもとに、がんじがらめに縛られていた。
そこへ、ダリヤ姫、玉清別、村人らがやってきて、助け起こした。
村人たちは、神素盞嗚大神の託宣により、バルギーが命をかけて玄真坊らに抵抗してダリヤ姫の居場所を明かさなかったことを知り、助けに来たのであった。
バルギーは村に運ばれ、ダリヤ姫に介抱されて玉清別の館で一ケ月ばかり養生することとなった。