霊界物語.ネット
~出口王仁三郎 大図書館~
設定
|
ヘルプ
ホーム
霊界物語
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
第72巻(亥の巻)
序文
総説
第1篇 水波洋妖
第1章 老の高砂
第2章 時化の湖
第3章 厳の欵乃
第4章 銀杏姫
第5章 蛸船
第6章 夜鷹姫
第7章 鰹の網引
第2篇 杢迂拙婦
第8章 街宣
第9章 欠恋坊
第10章 清の歌
第11章 問答所
第12章 懺悔の生活
第13章 捨台演
第14章 新宅入
第15章 災会
第16章 東西奔走
第3篇 転化退閉
第17章 六樫問答
第18章 法城渡
第19章 旧場皈
第20章 九官鳥
第21章 大会合
第22章 妖魅帰
筑紫潟
余白歌
×
設定
この文献を王仁DBで開く
印刷用画面を開く
[?]
プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。
[×閉じる]
話者名の追加表示
[?]
セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。
[×閉じる]
追加表示する
追加表示しない
【標準】
表示できる章
テキストのタイプ
[?]
ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。
[×閉じる]
通常のテキスト
【標準】
コピー用のテキスト
文字サイズ
S
【標準】
M
L
ルビの表示
通常表示
【標準】
括弧の中に表示
表示しない
アンカーの表示
[?]
本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。
[×閉じる]
左側だけに表示する
【標準】
表示しない
全てのアンカーを表示
宣伝歌
[?]
宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。
[×閉じる]
一段組
【標準】
二段組
脚注[※]用語解説
[?]
[※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。
[×閉じる]
脚注マークを表示する
【標準】
脚注マークを表示しない
脚注[*]編集用
[?]
[※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。
[×閉じる]
脚注マークを表示する
脚注マークを表示しない
【標準】
外字の外周色
[?]
一般のフォントに存在しない文字は専用の外字フォントを使用しています。目立つようにその文字の外周の色を変えます。
[×閉じる]
無色
【標準】
赤色
現在のページには外字は使われていません
表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。
【新着情報】
サブスク完了しました
。どうもありがとうございます。
|
サイトをリニューアルしました。不具合がある場合は
従来バージョン
をお使い下さい
霊界物語
>
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
>
第72巻(亥の巻)
> 第1篇 水波洋妖 > 第2章 時化の湖
<<< 老の高砂
(B)
(N)
厳の欵乃 >>>
第二章
時化
(
しけ
)
の
湖
(
うみ
)
〔一八一一〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第72巻 山河草木 亥の巻
篇:
第1篇 水波洋妖
よみ(新仮名遣い):
すいはようよう
章:
第2章 時化の湖
よみ(新仮名遣い):
しけのうみ
通し章番号:
1811
口述日:
1926(大正15)年06月29日(旧05月20日)
口述場所:
天之橋立なかや別館
筆録者:
加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1929(昭和4)年4月3日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
[×閉じる]
:
妖幻坊と高姫の経緯を歌う:
初稚姫と霊犬スマートに祠の森を追い出された妖幻坊と高姫は、小北山の霊場から曲輪の玉を奪い、妖幻坊の妖術で曲輪城を作る。妖幻坊は高宮彦、高姫は高宮姫と名乗る。
そこへ初稚姫に踏み込まれ、妖幻坊は術が破れる。妖幻坊は高姫を抱え、月の国へ空を翔けて逃げ去るが、烈風によって高姫は吹き飛ばされ墜落し、息絶える。
高姫は幽界にさまよう。さまよいつつ八衢(やちまた)でウラナイ教の布教をしていたが、トルマン国の王妃・千草姫の他界と共にその肉体に宿り、現界によみがえる。
梅公別によって金毛九尾の正体をあらわしトルマン国を逃げ去った後、浜屋旅館の一室で妖幻坊の杢助に再開し、乗合船・高砂丸でスガの港をさして行く。
三五教の光を恐れた妖幻坊は、その神の道を破ろうと、三五教に捨てられた高姫に目をつけ、杢助に変装してたぶらかしたのであった。
高砂丸には、「高砂笑」といって、どんな身分の人間であれ、あらゆる人物を忌憚なく批評し、悪口をいい、嘲笑することが許される、面白い習慣が残っていた。
先客となっていたコブライ、コオロ(元玄真坊の部下)は、さっそく話の花を咲かせている。
玄真坊が千草の高姫に有り金を巻き上げられた上に殺されかけたこと、その高姫と、大雲山の妖怪の化身・妖幻坊が、万民を苦しめ三五教の聖地を横領しようと、ハルの海を渡ろうとしていること、などを語っている。
妖幻坊と高姫は、その話を聞き腹を立てつつ、水に弱いがために、悔し涙を流しながら黙って素知らぬ顔をしていた。
突然暴風雨が吹き出し、高砂丸はたちまち転覆してしまう。乗客一同は湖に投げ出されてしまうが、そこへ新造船が勢いよくやってくる。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2019-05-11 01:37:24
OBC :
rm7202
愛善世界社版:
17頁
八幡書店版:
第12輯 612頁
修補版:
校定版:
18頁
普及版:
5頁
初版:
ページ備考:
001
妖幻坊
(
えうげんばう
)
の
杢助
(
もくすけ
)
や
002
金毛
(
きんまう
)
九尾
(
きうび
)
の
高姫
(
たかひめ
)
は
003
初稚姫
(
はつわかひめ
)
の
神徳
(
しんとく
)
と
004
猛犬
(
まうけん
)
スマートの
威
(
ゐ
)
に
怖
(
おそ
)
れ
005
祠
(
ほこら
)
の
森
(
もり
)
を
逸早
(
いちはや
)
く
006
雲
(
くも
)
を
霞
(
かすみ
)
と
逃
(
にげ
)
出
(
いだ
)
し
007
薄
(
すすき
)
の
茂
(
しげ
)
る
大野原
(
おほのはら
)
008
彼方
(
あなた
)
此方
(
こなた
)
とかけ
廻
(
めぐ
)
り
009
迂路
(
うろ
)
つき
魔誤
(
まご
)
つき
歯噛
(
しが
)
みつき
010
意茶
(
いちや
)
つき
喧嘩
(
けんくわ
)
も
病
(
やみ
)
つきで
011
施
(
ほどこ
)
す
術
(
すべ
)
も
月
(
つき
)
の
空
(
そら
)
012
遥
(
はるか
)
にかがやく
小北山
(
こぎたやま
)
013
其
(
その
)
霊場
(
れいぢやう
)
に
蠑螈別
(
いもりわけ
)
014
魔我彦
(
まがひこ
)
司
(
つかさ
)
の
居
(
ゐ
)
ると
聞
(
き
)
き
015
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
の
総務職
(
そうむしよく
)
016
笠
(
かさ
)
にきながら
妖幻坊
(
えうげんばう
)
017
ウラナイ
教
(
けう
)
の
大教祖
(
だいけうそ
)
018
高姫司
(
たかひめつかさ
)
と
名乗
(
なの
)
りつつ
019
二人
(
ふたり
)
は
手
(
て
)
に
手
(
て
)
を
把
(
と
)
りながら
020
一本橋
(
いつぽんばし
)
を
撓
(
たわ
)
づかせ
021
河鹿
(
かじか
)
の
流
(
ながれ
)
を
打
(
うち
)
渡
(
わた
)
り
022
魔風
(
まかぜ
)
恋風
(
こひかぜ
)
吹
(
ふ
)
き
荒
(
すさ
)
ぶ
023
蠑螈館
(
いもりやかた
)
に
来
(
き
)
て
見
(
み
)
れば
024
目界
(
めかい
)
の
見
(
み
)
えぬ
文助
(
ぶんすけ
)
が
025
白
(
しろ
)
き
衣
(
ころも
)
を
着
(
つ
)
けながら
026
受付席
(
うけつけせき
)
に
控
(
ひか
)
へ
居
(
ゐ
)
る
027
高姫
(
たかひめ
)
見
(
み
)
るより
驚
(
おどろ
)
いて
028
『これこれお
前
(
まへ
)
は
文助
(
ぶんすけ
)
か
029
此
(
この
)
聖場
(
せいぢやう
)
は
高姫
(
たかひめ
)
の
030
教
(
をしへ
)
を
伝
(
つた
)
ふる
蠑螈別
(
いもりわけ
)
031
神
(
かみ
)
の
司
(
つかさ
)
の
館
(
やかた
)
ぞや
032
蠑螈
(
いもり
)
の
別
(
わけ
)
の
教
(
のり
)
の
祖
(
おや
)
033
高姫司
(
たかひめつかさ
)
をさしおいて
034
教
(
をしへ
)
を
布
(
し
)
くとは
虫
(
むし
)
がよい
035
些
(
ち
)
つと
心得
(
こころえ
)
なさりませ
036
此
(
この
)
御
(
おん
)
方
(
かた
)
は
産土
(
うぶすな
)
の
037
山
(
やま
)
の
台
(
うてな
)
に
千木
(
ちぎ
)
高
(
たか
)
く
038
大宮柱
(
おほみやばしら
)
太知
(
ふとし
)
りて
039
鎮
(
しづ
)
まり
居
(
ゐ
)
ます
素盞嗚
(
すさのを
)
の
040
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
に
仕
(
つか
)
へます
041
三羽烏
(
さんばがらす
)
の
御
(
おん
)
一人
(
ひとり
)
042
杢助
(
もくすけ
)
総務
(
そうむ
)
で
御座
(
ござ
)
るぞや
043
早
(
はや
)
く
挨拶
(
あいさつ
)
した
上
(
うへ
)
で
044
いと
丁寧
(
ていねい
)
におもてなし
045
神
(
かみ
)
の
如
(
ごと
)
くに
敬
(
うやま
)
へ』と
046
大法螺
(
おほぼら
)
吹
(
ふ
)
き
立
(
た
)
て
尻
(
しり
)
を
振
(
ふ
)
り
047
松姫館
(
まつひめやかた
)
に
駆
(
か
)
け
込
(
こ
)
んで
048
お
千代
(
ちよ
)
やお
菊
(
きく
)
に
揶揄
(
からか
)
はれ
049
腹
(
はら
)
は
立
(
た
)
てども
虫
(
むし
)
耐
(
こら
)
へ
050
木端
(
こつぱ
)
役員
(
やくゐん
)
初
(
はつ
)
、
徳
(
とく
)
を
051
旨
(
うま
)
く
抱
(
だ
)
き
込
(
こ
)
み
小北山
(
こぎたやま
)
052
神
(
かみ
)
の
館
(
やかた
)
を
奪
(
うば
)
はむと
053
あらゆる
手段
(
しゆだん
)
を
尽
(
つく
)
す
折
(
をり
)
054
頂上
(
ちやうじやう
)
の
宮
(
みや
)
の
鳴動
(
めいどう
)
に
055
荒胆
(
あらぎも
)
つぶし
逃
(
に
)
げ
出
(
いだ
)
し
056
二百
(
にひやく
)
の
階段
(
かいだん
)
驀地
(
まつしぐら
)
057
下
(
くだ
)
る
折
(
をり
)
しも
文助
(
ぶんすけ
)
に
058
思
(
おも
)
はず
知
(
し
)
らず
衝突
(
しようとつ
)
し
059
曲輪
(
まがわ
)
の
玉
(
たま
)
を
遺失
(
ゐしつ
)
して
060
高姫
(
たかひめ
)
、
初
(
はつ
)
、
徳
(
とく
)
諸共
(
もろとも
)
に
061
雲
(
くも
)
を
霞
(
かす
)
みと
逃
(
に
)
げ
出
(
いだ
)
し
062
怪
(
あや
)
しの
森
(
もり
)
の
近
(
ちか
)
く
迄
(
まで
)
063
逃
(
に
)
げ
来
(
く
)
る
折
(
をり
)
しも
妖幻坊
(
えうげんばう
)
064
吾
(
わが
)
懐
(
ふところ
)
に
隠
(
かく
)
したる
065
曲輪
(
まがわ
)
の
玉
(
たま
)
の
影
(
かげ
)
なきに
066
顔
(
かほ
)
青
(
あを
)
ざめて
思案顔
(
しあんがほ
)
067
芝生
(
しばふ
)
の
上
(
うへ
)
にどつと
坐
(
ざ
)
し
068
萎
(
しを
)
れかかりし
其
(
その
)
風情
(
ふぜい
)
069
見
(
み
)
るより
高姫
(
たかひめ
)
怪
(
あや
)
しみて
070
様子
(
やうす
)
を
問
(
と
)
へば
妖幻坊
(
えうげんばう
)
071
如意
(
によい
)
の
宝珠
(
ほつしゆ
)
に
勝
(
まさ
)
りたる
072
曲輪
(
まがわ
)
の
玉
(
たま
)
をはしなくも
073
小北
(
こぎた
)
の
山
(
やま
)
に
落
(
おと
)
したり
074
初
(
はつ
)
、
徳
(
とく
)
両人
(
りやうにん
)
吾
(
わが
)
命
(
めい
)
を
075
奉
(
ほう
)
じて
小北
(
こぎた
)
の
山
(
やま
)
に
行
(
ゆ
)
き
076
曲輪
(
まがわ
)
の
玉
(
たま
)
を
奪
(
と
)
り
返
(
かへ
)
し
077
帰
(
かへ
)
り
来
(
きた
)
れと
命
(
めい
)
ずれば
078
尻
(
しり
)
を
痛
(
いた
)
めた
両人
(
りやうにん
)
は
079
チガチガ
坂
(
ざか
)
をよぢ
登
(
のぼ
)
り
080
文助司
(
ぶんすけつかさ
)
を
気絶
(
きぜつ
)
させ
081
漸
(
やうや
)
く
曲輪
(
まがわ
)
の
玉
(
たま
)
を
奪
(
と
)
り
082
再
(
ふたた
)
び
怪
(
あや
)
しの
森影
(
もりかげ
)
に
083
走
(
はし
)
り
帰
(
かへ
)
れば
妖幻坊
(
えうげんばう
)
084
高姫
(
たかひめ
)
二人
(
ふたり
)
は
喜
(
よろこ
)
びて
085
やにわに
玉
(
たま
)
を
引奪
(
ひつたく
)
り
086
其
(
その
)
懐
(
ふところ
)
に
捻
(
ね
)
ぢ
込
(
こ
)
みぬ
087
折柄
(
をりから
)
下
(
さが
)
る
闇
(
やみ
)
の
幕
(
まく
)
088
是
(
これ
)
幸
(
さいは
)
ひと
両人
(
りやうにん
)
は
089
闇
(
やみ
)
に
潜
(
ひそ
)
める
初
(
はつ
)
、
徳
(
とく
)
の
090
頭
(
あたま
)
の
辺
(
あたり
)
を
目
(
め
)
がけつつ
091
闇
(
やみ
)
に
打
(
う
)
ち
出
(
だ
)
す
石礫
(
いしつぶて
)
092
夜目
(
よるめ
)
の
見
(
み
)
える
妖幻坊
(
えうげんばう
)
093
金毛
(
きんまう
)
九尾
(
きうび
)
の
二人
(
ふたり
)
連
(
づ
)
れ
094
雲
(
くも
)
を
霞
(
かすみ
)
と
逃
(
に
)
げ
出
(
いだ
)
し
095
浮木
(
うきき
)
の
森
(
もり
)
の
狸穴
(
まみあな
)
に
096
暫
(
しばら
)
く
身
(
み
)
をば
潜
(
ひそ
)
めつつ
097
曲輪
(
まがわ
)
の
玉
(
たま
)
を
応用
(
おうよう
)
し
098
一夜
(
いちや
)
に
造
(
つく
)
る
城廓
(
じやうくわく
)
は
099
天
(
てん
)
を
摩
(
ま
)
しつつ
聳
(
そそり
)
立
(
た
)
つ
100
金毛
(
きんまう
)
九尾
(
きうび
)
の
高姫
(
たかひめ
)
は
101
実
(
まこと
)
の
城
(
しろ
)
と
思
(
おも
)
ひ
詰
(
つ
)
め
102
杢助司
(
もくすけつかさ
)
の
妙術
(
めうじゆつ
)
を
103
口
(
くち
)
を
極
(
きは
)
めて
称讃
(
しようさん
)
し
104
高宮彦
(
たかみやひこ
)
は
妖幻坊
(
えうげんばう
)
105
己
(
おのれ
)
は
高宮姫
(
たかみやひめ
)
となり
106
高子
(
たかこ
)
宮子
(
みやこ
)
の
侍女
(
こしもと
)
を
107
狸
(
たぬき
)
と
知
(
し
)
らず
侍
(
はべ
)
らせて
108
恋
(
こひ
)
に
狂
(
くる
)
へる
折
(
をり
)
もあれ
109
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
110
初稚姫
(
はつわかひめ
)
に
踏
(
ふ
)
み
込
(
こ
)
まれ
111
妖術
(
えうじゆつ
)
ここに
暴露
(
ばくろ
)
して
112
妖幻坊
(
えうげんばう
)
は
座
(
ざ
)
に
堪
(
た
)
へず
113
高姫司
(
たかひめつかさ
)
を
引
(
ひ
)
つ
抱
(
かか
)
へ
114
もはや
運命
(
うんめい
)
月
(
つき
)
の
国
(
くに
)
115
デカタン
国
(
ごく
)
の
高原
(
かうげん
)
の
116
空
(
そら
)
翔
(
か
)
けり
行
(
ゆ
)
く
折
(
をり
)
もあれ
117
俄
(
にはか
)
に
吹
(
ふ
)
き
来
(
く
)
る
烈風
(
れつぷう
)
に
118
耐
(
たま
)
りかねてか
高姫
(
たかひめ
)
を
119
かかへし
腕
(
かひな
)
くつろげば
120
空中
(
くうちう
)
滑走
(
くわつそう
)
の
曲芸
(
きよくげい
)
を
121
演
(
えん
)
じて
地上
(
ちじやう
)
に
墜落
(
つゐらく
)
し
122
高姫
(
たかひめ
)
息
(
いき
)
は
絶
(
た
)
えにけり
123
さは
然
(
さ
)
りながら
高姫
(
たかひめ
)
は
124
吾
(
わが
)
肉体
(
にくたい
)
の
失
(
う
)
せしをば
125
夢
(
ゆめ
)
にも
知
(
し
)
らず
幽界
(
いうかい
)
の
126
八衢
(
やちまた
)
街道
(
かいだう
)
をとぼとぼと
127
彼方
(
あなた
)
此方
(
こなた
)
に
彷徨
(
さまよ
)
ひつ
128
杢助司
(
もくすけつかさ
)
の
所在
(
ありか
)
をば
129
探
(
さが
)
し
求
(
もと
)
めて
三年振
(
みとせぶり
)
130
月日
(
つきひ
)
も
照
(
て
)
らぬ
岩山
(
いはやま
)
の
131
麓
(
ふもと
)
に
荒屋
(
あばらや
)
構
(
かま
)
へつつ
132
往来
(
ゆきき
)
の
精霊
(
せいれい
)
引
(
ひ
)
つ
捕
(
とら
)
へ
133
底
(
そこ
)
つ
岩根
(
いはね
)
の
大
(
おほ
)
ミロク
134
日
(
ひ
)
の
出
(
で
)
の
神
(
かみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
を
135
悟
(
さと
)
れよ
知
(
し
)
れよ
救世主
(
きうせいしゆ
)
136
此処
(
ここ
)
に
居
(
ゐ
)
ますと
法螺
(
ほら
)
を
吹
(
ふ
)
き
137
騒
(
さわ
)
ぎ
廻
(
まは
)
るぞ
可笑
(
をか
)
しけれ
138
三年
(
みとせ
)
を
過
(
す
)
ぎし
暁
(
あかつき
)
に
139
トルマン
国
(
ごく
)
の
王妃
(
わうひ
)
なる
140
千草
(
ちぐさ
)
の
姫
(
ひめ
)
の
身
(
み
)
死
(
まか
)
りし
141
其
(
その
)
肉体
(
にくたい
)
を
宿
(
やど
)
となし
142
再
(
ふたた
)
び
現世
(
このよ
)
に
蘇生
(
よみがへ
)
り
143
千草
(
ちぐさ
)
の
高姫
(
たかひめ
)
となりすまし
144
国王
(
こくわう
)
迄
(
まで
)
も
尻
(
しり
)
に
敷
(
し
)
き
145
あらむ
限
(
かぎ
)
りの
狂態
(
きやうたい
)
を
146
日夜
(
にちや
)
演
(
えん
)
ずる
折
(
をり
)
もあれ
147
言霊別
(
ことたまわけ
)
の
化身
(
けしん
)
なる
148
梅公司
(
うめこうつかさ
)
に
謀
(
はか
)
られて
149
包
(
つつ
)
むに
由
(
よし
)
なく
忽
(
たちま
)
ちに
150
金毛
(
きんまう
)
九尾
(
きうび
)
と
還元
(
くわんげん
)
し
151
トルマン
城
(
じやう
)
を
後
(
あと
)
にして
152
雲
(
くも
)
を
霞
(
かすみ
)
と
逃
(
に
)
げ
出
(
いだ
)
し
153
妖僧
(
えうそう
)
キユーバーの
行衛
(
ゆくゑ
)
をば
154
探
(
さぐ
)
る
折
(
をり
)
しも
入江港
(
いりえかう
)
155
浜屋
(
はまや
)
旅館
(
りよくわん
)
の
一室
(
いつしつ
)
で
156
思
(
おも
)
はず
知
(
し
)
らず
杢助
(
もくすけ
)
に
157
化
(
ば
)
けおほせたる
妖幻坊
(
えうげんばう
)
に
158
出会
(
でくは
)
し
茲
(
ここ
)
に
両人
(
りやうにん
)
は
159
手
(
て
)
に
手
(
て
)
を
把
(
と
)
つて
夜
(
よる
)
の
道
(
みち
)
160
浜辺
(
はまべ
)
に
出
(
い
)
でて
乗合
(
のりあひ
)
の
161
高砂丸
(
たかさごまる
)
に
身
(
み
)
を
任
(
まか
)
せ
162
スガの
港
(
みなと
)
をさして
行
(
ゆ
)
く
163
波瀾
(
はらん
)
重畳
(
ちようでふ
)
限
(
かぎ
)
りなき
164
いと
面白
(
おもしろ
)
き
物語
(
ものがたり
)
165
完全
(
うまら
)
に
委曲
(
つばら
)
に
述
(
の
)
べてゆく
166
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
167
恩頼
(
みたまのふゆ
)
をたまへかし
168
○
169
曲津
(
まがつ
)
の
運命
(
うんめい
)
月
(
つき
)
の
国
(
くに
)
170
大雲山
(
たいうんざん
)
に
蟠
(
わだか
)
まる
171
八岐
(
やまた
)
大蛇
(
をろち
)
の
片腕
(
かたうで
)
と
172
世
(
よ
)
に
聞
(
きこ
)
えたる
妖幻坊
(
えうげんばう
)
173
三五教
(
あななひけう
)
の
皇神
(
すめかみ
)
の
174
清
(
きよ
)
き
明
(
あか
)
るき
大道
(
おほみち
)
の
175
光
(
ひかり
)
を
怖
(
おそ
)
れ
戦
(
をのの
)
きて
176
数多
(
あまた
)
の
魔神
(
まがみ
)
を
呼
(
よび
)
集
(
つど
)
へ
177
神
(
かみ
)
の
大路
(
おほぢ
)
を
破
(
やぶ
)
らむと
178
心
(
こころ
)
を
砕
(
くだ
)
き
身
(
み
)
を
焦
(
こが
)
し
179
三五教
(
あななひけう
)
に
捨
(
す
)
てられて
180
心
(
こころ
)
ひがめる
高姫
(
たかひめ
)
の
181
腸
(
はらわた
)
探
(
さぐ
)
り
杢助
(
もくすけ
)
と
182
身
(
み
)
をやつしたる
恐
(
おそ
)
ろしさ
183
身
(
み
)
を
粉
(
こ
)
にしても
砕
(
くだ
)
けても
184
潰
(
つぶ
)
さにやおかぬ
三五
(
あななひ
)
の
185
道
(
みち
)
こそ
強
(
つよ
)
き
梓弓
(
あづさゆみ
)
186
ハルの
海原
(
うなばら
)
船出
(
ふなで
)
して
187
再
(
ふたた
)
び
会
(
あ
)
ひし
高姫
(
たかひめ
)
と
188
教
(
のり
)
の
とも
船
(
ぶね
)
高砂
(
たかさご
)
の
189
名
(
な
)
に
負
(
お
)
ふ
船
(
ふね
)
に
身
(
み
)
を
任
(
まか
)
せ
190
油
(
あぶら
)
を
流
(
なが
)
せし
如
(
ごと
)
くなる
191
浪
(
なみ
)
も
静
(
しづか
)
な
海原
(
うなばら
)
を
192
鼻歌
(
はなうた
)
謡
(
うた
)
ひ
勇
(
いさ
)
みつつ
193
スガの
港
(
みなと
)
をさして
行
(
ゆ
)
く。
194
妖幻坊
(
えうげんばう
)
、
195
高姫
(
たかひめ
)
の
乗
(
の
)
り
込
(
こ
)
んだ
高砂丸
(
たかさごまる
)
は
[
※
第71巻第20章では舟を盗んだことになっている。
]
余
(
よ
)
程
(
ほど
)
の
老朽船
(
らうきうせん
)
であつた。
196
此
(
この
)
船
(
ふね
)
には
建造
(
けんざう
)
以来
(
いらい
)
、
197
高砂笑
(
たかさごわらひ
)
と
云
(
い
)
つて
一種
(
いつしゆ
)
の
妙
(
めう
)
な
習慣
(
しふくわん
)
が
残
(
のこ
)
つて
居
(
ゐ
)
た。
198
高砂丸
(
たかさごまる
)
に
乗
(
の
)
り
込
(
こ
)
んだ
者
(
もの
)
は、
199
大
(
だい
)
は
政治
(
せいぢ
)
の
善悪
(
ぜんあく
)
より
下
(
しも
)
は
小役人
(
こやくにん
)
の
行動
(
かうどう
)
をはじめ、
200
主人
(
しゆじん
)
や
下僕
(
しもべ
)
、
201
朋友
(
ほういう
)
知己
(
ちき
)
、
202
其
(
その
)
外
(
ほか
)
所有
(
あらゆる
)
人物
(
じんぶつ
)
を
捉
(
とら
)
へて
忌憚
(
きたん
)
なく
批評
(
ひひやう
)
し、
203
悪罵
(
あくば
)
し、
204
嘲笑
(
てうせう
)
することが
不文律
(
ふぶんりつ
)
として
許
(
ゆる
)
されて
居
(
ゐ
)
た。
205
遅々
(
ちち
)
として
進
(
すす
)
まぬ
船
(
ふね
)
の
脚
(
あし
)
、
206
退屈
(
たいくつ
)
まぎれに
種々
(
いろいろ
)
の
面白
(
おもしろ
)
き
話
(
はなし
)
の
花
(
はな
)
が
咲
(
さ
)
いて
来
(
き
)
た。
207
船客
(
せんきやく
)
の
一人
(
ひとり
)
、
208
甲
(
かふ
)
『オイ、
209
コブライ、
210
玄真坊
(
げんしんばう
)
と
云
(
い
)
ふ
売僧
(
まいす
)
坊主
(
ばうず
)
は
本当
(
ほんたう
)
に
仕方
(
しかた
)
のない
餓鬼
(
がき
)
坊主
(
ばうず
)
ぢやないか。
211
天帝
(
てんてい
)
の
化身
(
けしん
)
だの、
212
天来
(
てんらい
)
の
救世主
(
きうせいしゆ
)
だのと
大法螺
(
おほぼら
)
を
吹
(
ふ
)
きやがつて、
213
オーラ
山
(
さん
)
に
立
(
た
)
て
籠
(
こも
)
り、
214
三五教
(
あななひけう
)
の
梅公別
(
うめこうわけ
)
様
(
さま
)
に
内兜
(
うちかぶと
)
を
見透
(
みすか
)
され、
215
岩窟
(
いはや
)
退治
(
たいぢ
)
をせられてお
払
(
はら
)
ひ
箱
(
ばこ
)
となり、
216
三百
(
さんびやく
)
人
(
にん
)
の
小泥棒
(
こどろぼう
)
を
従
(
したが
)
へて
再
(
ふたた
)
びオーラ
山
(
さん
)
の
二
(
に
)
の
舞
(
まひ
)
をやらうと
企
(
たくら
)
み、
217
スガの
港
(
みなと
)
のダリヤ
姫
(
ひめ
)
に
懸想
(
けさう
)
して
旨
(
うま
)
く
肱鉄砲
(
ひぢてつぱう
)
を
乱射
(
らんしや
)
され、
218
終
(
しまひ
)
の
果
(
は
)
てにやタラハン
城
(
じやう
)
の
左守
(
さもり
)
の
司
(
かみ
)
に
腹
(
はら
)
迄
(
まで
)
切
(
き
)
らせ、
219
しこたま
黄金
(
わうごん
)
を
強奪
(
ふんだく
)
り
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
に
揚壺
(
あげつぼ
)
を
喰
(
く
)
はし、
220
入江港
(
いりえかう
)
の
浜屋
(
はまや
)
旅館
(
りよくわん
)
に
泊
(
とま
)
り
込
(
こ
)
み、
221
千草
(
ちぐさ
)
の
高姫
(
たかひめ
)
とか
云
(
い
)
ふ
妖女
(
えうじよ
)
に
涎
(
よだれ
)
を
垂
(
た
)
らかし、
222
眉毛
(
まゆげ
)
をよまれ
睾丸
(
きんたま
)
を
締
(
しめ
)
られ、
223
所持金
(
ありがね
)
をすつかり
奪
(
と
)
られて、
224
殺
(
ころ
)
されよつたと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
だが、
225
本当
(
ほんたう
)
によい
気味
(
きみ
)
ぢやないか。
226
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
が
越後
(
ゑちご
)
獅子
(
じし
)
に
化
(
ば
)
けて、
227
彼奴
(
きやつ
)
の
面
(
つら
)
を
曝
(
さら
)
してやつた
時
(
とき
)
の
狼狽
(
うろたへ
)
やうつたら
無
(
な
)
かつたぢやないか、
228
本当
(
ほんたう
)
に
思
(
おも
)
うても
溜飲
(
りういん
)
が
下
(
さが
)
るやうぢやのう、
229
エヘヽヽヽ』
230
コブライ『
玄真坊
(
げんしんばう
)
なんか
悪
(
わる
)
いと
云
(
い
)
つたつて
知
(
し
)
れたものだよ、
231
彼奴
(
あいつ
)
は
女
(
をんな
)
さへ
当
(
あて
)
がつておけば
如何
(
どう
)
でもなる
代物
(
しろもの
)
だ。
232
些
(
ち
)
つと
山気
(
やまけ
)
はあるが、
233
根
(
ね
)
が
愚物
(
ぐぶつ
)
だから、
234
あんな
奴
(
やつ
)
は
驚
(
おどろ
)
くに
足
(
た
)
らないが、
235
この
頃
(
ごろ
)
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
の
話
(
はなし
)
に
聞
(
き
)
けば、
236
大雲山
(
たいうんざん
)
の
妖幻坊
(
えうげんばう
)
とか
云
(
い
)
ふ
獅子
(
しし
)
と
虎
(
とら
)
との
混血児
(
こんけつじ
)
なる
大妖魅
(
だいえうみ
)
が
天下
(
てんか
)
を
横行
(
わうかう
)
し
万民
(
ばんみん
)
を
苦
(
くる
)
しめ、
237
三五教
(
あななひけう
)
の
聖地
(
せいち
)
迄
(
まで
)
も
横領
(
わうりやう
)
せむとして、
238
第一
(
だいいち
)
霊国
(
れいごく
)
の
天人
(
てんにん
)
の
御
(
ご
)
化身
(
けしん
)
初稚姫
(
はつわかひめ
)
様
(
さま
)
とやら
云
(
い
)
ふエンゼル
様
(
さま
)
に
太
(
いた
)
く
誡
(
いまし
)
められ、
239
高姫
(
たかひめ
)
とか
云
(
い
)
ふ
淫乱婆
(
いんらんばば
)
と
手
(
て
)
に
手
(
て
)
を
把
(
と
)
つてハルの
湖
(
みづうみ
)
を
渡
(
わた
)
ると
云
(
い
)
ふぢやないか。
240
三五教
(
あななひけう
)
の
照国別
(
てるくにわけ
)
とか
云
(
い
)
ふ
生神
(
いきがみ
)
様
(
さま
)
のお
話
(
はなし
)
だと
云
(
い
)
うて
241
今朝
(
けさ
)
も
埠頭
(
はとば
)
に
沢山
(
たくさん
)
の
人
(
ひと
)
が
居
(
ゐ
)
てこそこそ
話
(
はな
)
して
居
(
ゐ
)
たよ。
242
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
は
玄真坊
(
げんしんばう
)
さへもあの
通
(
とほ
)
りこつぴどくやつつけて
肝玉
(
きもだま
)
を
転倒
(
ひつくりかへ
)
してやつたのだから、
243
万一
(
まんいち
)
妖幻坊
(
えうげんばう
)
に
出会
(
でくは
)
したら
最後
(
さいご
)
素首
(
そつくび
)
を
捻切
(
ねぢき
)
つて
引
(
ひき
)
千
(
ち
)
断
(
ぎ
)
つて、
244
小供
(
こども
)
が
人形
(
にんぎやう
)
を
潰
(
つぶ
)
した
様
(
やう
)
な
目
(
め
)
に
会
(
あは
)
してやり、
245
天下
(
てんか
)
万民
(
ばんみん
)
の
憂
(
うれひ
)
を
除
(
のぞ
)
き
救世主
(
きうせいしゆ
)
にでもなつてやらうと
思
(
おも
)
ひ、
246
もしや
此
(
この
)
高砂丸
(
たかさごまる
)
に
怪
(
あや
)
しい
奴
(
やつ
)
が
乗
(
の
)
つて
居
(
ゐ
)
やしないかと
目
(
め
)
をぎよろつかせて
居
(
ゐ
)
るのだが、
247
ねつから
悪魔
(
あくま
)
らしい
奴
(
やつ
)
も
見
(
み
)
えず、
248
いささか
見当違
(
けんたうちが
)
ひで
面喰
(
めんくら
)
つて
居
(
ゐ
)
るのだ。
249
もしひよつと
船底
(
せんてい
)
にでも
潜伏
(
せんぷく
)
して
居
(
ゐ
)
やうものなら、
250
俺
(
おれ
)
が
口笛
(
くちぶえ
)
を
吹
(
ふ
)
くから、
251
お
前
(
まへ
)
も
加勢
(
かせい
)
を
頼
(
たの
)
むよ。
252
名誉
(
めいよ
)
は
山別
(
やまわ
)
けだからのう、
253
オホン』
254
コオロ『ヘン
偉
(
えら
)
さうに
法螺
(
ほら
)
を
吹
(
ふ
)
くなよ、
255
内弁慶
(
うちべんけい
)
の
外
(
そと
)
すぼり
奴
(
め
)
が、
256
貴様
(
きさま
)
の
面
(
つら
)
で
妖魅
(
えうみ
)
退治
(
たいぢ
)
も
糞
(
くそ
)
もあつたものか、
257
天
(
てん
)
に
口
(
くち
)
あり
壁
(
かべ
)
にも
耳
(
みみ
)
だ。
258
妖幻坊
(
えうげんばう
)
と
云
(
い
)
ふ
奴
(
やつ
)
は
魔神
(
ましん
)
の
大将
(
たいしやう
)
だから、
259
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
の
囁
(
ささや
)
き
話
(
ばなし
)
を
千
(
せん
)
里
(
り
)
外
(
そと
)
からでも
聞
(
き
)
いて
居
(
ゐ
)
ると
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
だ。
260
口
(
くち
)
は
禍
(
わざはひ
)
の
門
(
もん
)
と
云
(
い
)
ふから、
261
先
(
ま
)
づ
沈黙
(
ちんもく
)
したら
宜
(
よ
)
からうぞ』
262
コブ『
馬鹿
(
ばか
)
を
云
(
い
)
ふな、
263
妖幻坊
(
えうげんばう
)
が
怖
(
こは
)
くて
此
(
この
)
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に
居
(
を
)
れるかい。
264
何
(
なに
)
程
(
ほど
)
強
(
つよ
)
いと
云
(
い
)
つても
女
(
をんな
)
の
顔
(
かほ
)
を
見
(
み
)
れや
菎蒻
(
こんにやく
)
のやうになる
代物
(
しろもの
)
だから、
265
知
(
し
)
れたものだよ。
266
見
(
み
)
ると
聞
(
き
)
くとは
大違
(
おほちが
)
ひと
云
(
い
)
ふ
諺
(
ことわざ
)
もあるから、
267
実物
(
じつぶつ
)
に
遇
(
あ
)
うたら
案外
(
あんぐわい
)
しやつち
も
無
(
な
)
い
者
(
もの
)
かも
知
(
し
)
れないよ、
268
アハヽヽヽ』
269
妖幻坊
(
えうげんばう
)
、
270
千草
(
ちぐさ
)
の
高姫
(
たかひめ
)
は
船
(
ふね
)
の
底
(
そこ
)
に
青
(
あを
)
くなつて
縮
(
ちぢ
)
こまり、
271
二人
(
ふたり
)
の
話
(
はなし
)
を
聞
(
き
)
いて
腹
(
はら
)
は
立
(
た
)
つて
堪
(
たま
)
らねど、
272
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
うても
湖
(
うみ
)
の
上
(
うへ
)
、
273
水
(
みづ
)
には
弱
(
よわ
)
い
両人
(
りやうにん
)
の
事
(
こと
)
とて
悔
(
くや
)
し
涙
(
なみだ
)
を
呑
(
の
)
み
乍
(
なが
)
ら、
274
素知
(
そし
)
らぬ
顔
(
かほ
)
して
控
(
ひか
)
へて
居
(
ゐ
)
た。
275
頃
(
ころ
)
しも
晴
(
は
)
れ
渡
(
わた
)
りたる
東北
(
とうほく
)
の
空
(
そら
)
に
一塊
(
いつくわい
)
の
黒雲
(
こくうん
)
現
(
あら
)
はれると
見
(
み
)
る
間
(
ま
)
に、
276
忽
(
たちま
)
ち
東西
(
とうざい
)
南北
(
なんぼく
)
に
拡大
(
くわくだい
)
し、
277
満天
(
まんてん
)
墨
(
すみ
)
を
流
(
なが
)
したる
如
(
ごと
)
く、
278
昼
(
ひる
)
尚
(
な
)
ほ
暗
(
くら
)
く、
279
暴風
(
ばうふう
)
吹
(
ふ
)
き
来
(
きた
)
り、
280
雨
(
あめ
)
沛然
(
はいぜん
)
として
降
(
ふ
)
り
注
(
そそ
)
ぎ、
281
波浪
(
はらう
)
は
山岳
(
さんがく
)
の
如
(
ごと
)
く
猛
(
たけ
)
り
狂
(
くる
)
ひ、
282
半
(
なか
)
ば
荒廃
(
くわうはい
)
に
帰
(
き
)
したる
高砂丸
(
たかさごまる
)
は、
283
めきめきと
怪
(
あや
)
しき
音
(
おと
)
を
立
(
た
)
て、
284
忽
(
たちま
)
ち
転覆
(
てんぷく
)
の
厄
(
やく
)
に
遇
(
あ
)
ひ、
285
乗客
(
じやうきやく
)
一同
(
いちどう
)
は
浮
(
う
)
きつ
沈
(
しづ
)
みつ
声
(
こゑ
)
を
限
(
かぎ
)
りに
助
(
たす
)
けを
呼
(
よ
)
んだ。
286
折
(
をり
)
から
激浪
(
げきらう
)
怒濤
(
どとう
)
を
犯
(
をか
)
して
八挺櫓
(
はつちやうろ
)
を
漕
(
こ
)
ぎながら
勢
(
いきほひ
)
よく
進
(
すす
)
み
来
(
きた
)
る
新造船
(
しんざうせん
)
があつた。
287
嗚呼
(
ああ
)
船客
(
せんきやく
)
一同
(
いちどう
)
の
運命
(
うんめい
)
は
如何
(
どう
)
なるであらうか。
288
(
大正一五・六・二九
旧五・二〇
於天之橋立なかや旅館
加藤明子
録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
<<< 老の高砂
(B)
(N)
厳の欵乃 >>>
霊界物語
>
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
>
第72巻(亥の巻)
> 第1篇 水波洋妖 > 第2章 時化の湖
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【
メールアドレス
】
【第2章 時化の湖|第72巻|山河草木|霊界物語|/rm7202】
合言葉「みろく」を入力して下さい→