霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一五章 災会(さいくわい)〔一八二四〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第72巻 山河草木 亥の巻 篇:第2篇 杢迂拙婦 よみ(新仮名遣い):もくうせっぷ
章:第15章 災会 よみ(新仮名遣い):さいかい 通し章番号:1824
口述日:1926(大正15)年06月30日(旧05月21日) 口述場所:天之橋立なかや別館 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1929(昭和4)年4月3日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
高姫はウラナイ教の館に集まった善男善女を前に、講演を始めている。
自分が救世主であること、三五教がいかに堕落した教えであるか、など気炎を上げている。
そこへ、キューバーがやってきて三五教を攻撃する演説を始め、ウラナイ教を援護する。
演説が終わって、高姫とキューバーは久しぶりの対面となる(トルマン国では、幽冥界旅行をした折に夫婦の契りをし、一緒に国取りの謀議をした仲であった)。
キューバーは、ヨリコ姫が、「自分を説き伏せた者にはスガの宮を明渡す」などといって、宗教問答の挑戦者を募っていることを知らせる。
高姫は早速乗り込もうとする。
キューバーは、高姫が今は杢助と夫婦になっていることを知り、「自分こそ誠の夫」と乗り込もうとするが、高姫に当て身を食わされ、床下に放り込まれてしまった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ:スコブツエン宗(スコブッツエン宗) データ凡例: データ最終更新日:2025-05-14 07:15:17 文字数:3323 OBC :rm7215
愛善世界社版:176頁 八幡書店版:第12輯 666頁 修補版: 校定版:183頁 普及版:69頁 初版: ページ備考:
001トルマン国(ごく)の王妃(わうひ)なる
002千草(ちぐさ)の姫(ひめ)の体(たい)をかり
003再(ふたた)び娑婆(しやば)に甦(よみがへ)り
004千草(ちぐさ)の高姫(たかひめ)と名(な)を変(か)へて
005曲(まが)の精霊(せいれい)に沁(し)み込(こ)んだ
006ウラナイ教(けう)をどこ迄(まで)も
007たてにやおかぬと雄猛(をたけ)びし
008前世(ぜんせ)に契(ちぎり)を結(むす)びたる
009大雲山(たいうんざん)の洞穴(ほらあな)に
010棲(すま)へる大蛇(をろち)の乾児(こぶん)なる
011妖幻坊(えうげんばう)に再会(さいくわい)し
012又(また)もや夫婦(ふうふ)の縁(えん)結(むす)び
013彼方(あなた)此方(こなた)と彷徨(さまよ)ひつ
014スガの港(みなと)の北町(きたまち)に
015漸(やうや)く吾(わが)家(や)を買(かひ)求(もと)め
016スガの聖地(せいち)に建(た)てられし
017三五教(あななひけう)の神殿(しんでん)を
018向(むか)ふに廻(まは)して勢力(せいりよく)を
019比(くら)べむものと雄猛(をたけ)びし
020立派(りつぱ)な神殿(しんでん)造(つく)り上(あ)げ
021俄(にはか)役員(やくゐん)二三(にさん)人(にん)
022雇(やと)ひ来(きた)りて厳(おごそ)かな
023口調(くてう)を以(もつ)て寄(よ)り来(きた)る
024善男(ぜんなん)善女(ぜんによ)に相向(あひむか)ひ
025四脚(しきやく)の机(つくゑ)を前(まへ)に置(お)き
026椅子(いす)に腰(こし)かけ悠然(いうぜん)と
027コツプの水(みづ)を啜(すす)りつつ
028エヘンと一声(ひとこゑ)咳払(せきばら)ひ
029扇(あふぎ)片手(かたて)に持(も)ち乍(なが)ら
030信者(しんじや)の上(うへ)に目(め)を注(そそ)ぎ
031花(はな)を欺(あざむ)く美貌(びばう)もて
032涼(すず)しき声(こゑ)にて語(かた)るらく
033『皆(みな)さまようこそお詣(まゐ)りよ
034妾(わたし)は人間(にんげん)に見(み)ゆれども
035決(けつ)して俗人(ぞくじん)ぢやありませぬ
036第一(だいいち)霊国(れいごく)天人(てんにん)の
037霊(みたま)を受(う)けて生(うま)れたる
038日出(ひのでの)神(かみ)の生宮(いきみや)で
039底津(そこつ)岩根(いはね)の大弥勒(おほみろく)
040三千(さんぜん)世界(せかい)の救世主(きうせいしゆ)
041千草(ちぐさ)の高姫(たかひめ)と申(まを)します
042妾(わたし)の教(をし)ふる御教(みをしへ)は
043ウラナイ教(けう)と云(い)ひまして
044天下(てんか)に比類(たぐひ)のない教(をしへ)
045盲(めくら)は目(め)が開(あ)き聾(つんぼ)は聞(きこ)え
046躄(いざり)は立(た)つて歩(ある)きます
047肺病(はいびやう)、腎臓(じんざう)、心臓病(しんざうびやう)
048胃病(ゐびやう)は愚(おろ)か十二(じふに)指腸(しちやう)
049盲腸炎(まうちやうえん)に神経痛(しんけいつう)
050気管支(きくわんし)加答児(かたる)に肺(はい)加答児(かたる)
051流行性(りうかうせい)感冒(かんぱう)コレラ病(びやう)
052猩紅熱(しやうこうねつ)にパラチブス
053横根(よこね)や疳瘡(かんさう)や骨(ほね)うづき
054陰睾(いんきん)田虫(たむし)に疥癬虫(ひぜんむし)
055如何(いか)なる病(やまひ)も高姫(たかひめ)が
056心(こころ)に叶(かな)うた人(ひと)ならば
057即座(そくざ)に癒(なほ)して上(あ)げますよ
058それぢやと云(い)つてウラナイの
059誠(まこと)の教(をしへ)の分(わか)らない
060お方(かた)にや神徳(しんとく)やりませぬ
061三五教(あななひけう)の神(かみ)様(さま)と
062どちらが偉(えら)いと云(い)ふやうな
063比較(ひかく)研究(けんきう)の信者(しんじや)には
064罰(ばち)こそあたれ神徳(おかげ)ない
065ここの道理(だうり)を聞(き)きわけて
066絶対(ぜつたい)服従(ふくじう)の信仰(しんかう)を
067皆(みな)さま励(はげ)んでなさいませ
068斎苑(いそ)の館(やかた)に総務(そうむ)をば
069務(つと)めて御座(ござ)つた杢助(もくすけ)さま
070神(かむ)素盞嗚(すさのを)の大神(おほかみ)の
071三羽烏(さんばがらす)と云(い)はれたる
072天下(てんか)唯一(ゆゐいつ)の宣伝使(せんでんし)
073三五教(あななひけう)に愛想(あいそ)をば
074おつかしなさつて高姫(たかひめ)が
075教(をしへ)の道(みち)に賛同(さんどう)し
076遂(つひ)に進(すす)んで背(せ)の君(きみ)と
077おなり遊(あそ)ばし御教(みをしへ)を
078天下(てんか)に開(ひら)いて御座(ござ)ると云(い)ふ
079珍現象(ちんげんしやう)になつたのも
080決(けつ)して不思議(ふしぎ)な事(こと)でない
081メツキは直(す)ぐに剥(は)げるぞや
082正真(しやうしん)正銘(しやうめい)のウラナイ教(けう)
083擦(こす)れば擦(こす)る程(ほど)光(ひか)り出(だ)す
084鋭敏(えいびん)の頭脳(づなう)の持主(もちぬし)の
085杢助(もくすけ)さまは逸早(いちはや)く
086ウラナイ教(けう)の誠(まこと)をば
087感得(かんとく)されて三五(あななひ)の
088曲津(まがつ)の教(をしへ)を捨(す)てられた
089これ丈(だ)け見(み)ても分(わか)るだらう
090スガの宮居(みやゐ)の神司(かむづかさ)
091玉清別(たまきよわけ)と云(い)ふ人(ひと)は
092何処(いづこ)の馬骨(ばこつ)か牛骨(ぎうこつ)か
093或(あるひ)は狐(きつね)の容器(いれもの)か
094狸(たぬき)のお化(ばけ)か知(し)らねども
095どうしてあのやうなスタイルで
096神(かみ)の聖場(せいぢやう)が保(たも)てませう
097見(み)てゐて下(くだ)され一月(ひとつき)も
098経(た)たない中(うち)にメチヤメチヤに
099壊(こは)れて了(しま)ふは目(ま)のあたり
100鏡(かがみ)にかけし如(ごと)くです
101誠(まこと)の救(すく)ひの神(かみ)様(さま)は
102ウラナイ教(けう)より外(ほか)にない
103ヨリコの姫(ひめ)や花香姫(はなかひめ)
104ダリヤの姫(ひめ)とか云(い)ふ女(をんな)
105何(なに)をしとるか知(し)らねども
106清浄(せいじやう)無垢(むく)の神館(かむやかた)
107月(つき)に七日(なぬか)の不浄(ふじやう)ある
108女(をんな)を三人(みたり)も泊(とま)らせて
109どうして神(かみ)が喜(よろこ)ばう
110若(も)しも喜(よろこ)ぶ神(かみ)なれば
111必(かなら)ず曲津(まがつ)に違(ちが)ひない
112妾(わたし)も最早(もはや)四十三(しじふさん)
113若(わか)い姿(すがた)はして居(を)れど
114月(つき)に七日(なぬか)のお客(きやく)さま
115宿泊(しゆくはく)なさるやうな身(み)ではない
116之(これ)を思(おも)うてもウラナイの
117神(かみ)の教(をしへ)は誠(まこと)ぞや
118気(き)をつけなされよ皆(みな)の人(ひと)
119必(かなら)ず曲津(まがつ)の御教(みをしへ)に
120迷(まよ)うて地獄(ぢごく)の先駆(さきが)けを
121なさらぬやうにと気(き)をつける
122あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
123ウラナイ教(けう)の大御神(おほみかみ)
124ヘグレのヘグレのヘグレ武者(むしや)
125ヘグレ神社(じんじや)の大御神(おほみかみ)
126リントウビテンの大御神(おほみかみ)
127地上(ちじやう)大臣(だいじん)地上姫(ちじやうひめ)
128地上丸(ちじやうまる)さま行成(ゆきなり)さま
129定子(さだこ)の姫(ひめ)さま杵築姫(きつきひめ)
130弥勒(みろく)成就(じやうじゆ)の大御神(おほみかみ)
131貞彦姫(さだひこひめ)の大御神(おほみかみ)
132言上姫(ことじやうひめ)さま春子(はるこ)さま
133その外(ほか)百(もも)の神(かみ)様(さま)の
134御前(みまへ)に謹(つつし)み高姫(たかひめ)が
135日出(ひのでの)神(かみ)と現(あら)はれて
136この場(ば)に集(つど)ふ人々(ひとびと)の
137守護(しゆご)を命(めい)じおきまする
138あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
139御霊(みたま)幸(さきは)ひましませよ』
140かかる処(ところ)へ修験者(しうげんじや)
141錫杖(しやくぢやう)左手(ゆんで)につき乍(なが)ら
142深網笠(ふかあみがさ)に顔(かほ)隠(かく)し
143いと荘重(さうちよう)な言霊(ことたま)を
144張(は)り上(あ)げ乍(なが)ら入(い)り来(きた)り
145『ウラナイ教(けう)の大本部(だいほんぶ)
146教祖(けうそ)の君(きみ)に御(ご)面会(めんくわい)
147お願(ねがひ)申(まを)す』と云(い)ひ乍(なが)ら
148群集(ぐんしふ)の中(なか)をかき分(わ)けて
149演壇(えんだん)目(め)蒐(が)けて進(すす)みより
150高姫司(たかひめつかさ)の前(まへ)に立(た)ち
151『拙僧(せつそう)こそは月(つき)の国(くに)
152ハルナの都(みやこ)に現(あ)れませる
153大黒主(おほくろぬし)の御(ご)寵臣(ちようしん)
154スコブッツエン宗(しう)の大教祖(だいけうそ)
155キユーバーと申(まを)す僧(そう)で御座(ござ)る
156どうか一場(いちぢやう)の演説(えんぜつ)を
157許(ゆる)させ玉(たま)へ』と呼(よば)はれば
158高姫(たかひめ)不審(ふしん)の眉(まゆ)ひそめ
159何処(どこ)かで聞(き)いた声(こゑ)の色(いろ)
160面(おもて)は笠(かさ)で見(み)えねども
161もしや自分(じぶん)の恋(こ)ひ慕(した)ふ
162キユーバーの君(きみ)ではあるまいか
163『何(なに)は兎(と)もあれ御(ご)登壇(とうだん)
164結構(けつこう)なお話(はなし)頼(たの)みます
165これこれ皆(みな)の御(ご)信者(しんじや)よ
166妾(わたし)はこれから降壇(かうだん)し
167奥(おく)の一室(ひとま)で休(やす)みます
168この御(おん)方(かた)は修験者(しうげんじや)
169必(かなら)ず尊(たふと)いお話(はなし)を
170して下(くだ)さるに違(ちが)ひない
171神妙(しんめう)にお聞(き)きなされや』と
172云(い)ひつつ人(ひと)をかき分(わ)けて
173隣(とな)りの部屋(へや)に身(み)を潜(ひそ)め
174様子(やうす)如何(いか)にと窺(うかが)ひぬ
175キユーバーも千草(ちぐさ)の高姫(たかひめ)の
176顔(かほ)を見(み)るより仰天(ぎやうてん)し
177ハートに浪(なみ)は騒(さわ)げども
178そしらぬ顔(かほ)を装(よそほ)ひつ
179賛成(さんせい)演説(えんぜつ)初(はじ)めける
180キユーバーはコップに水(みづ)をつぎ
181オホンと一声(ひとこゑ)咳払(せきばら)ひ
182神官扇(しんくわんあふぎ)を斜(しや)に構(かま)へ
183笠(かさ)抜(ぬ)ぎ捨(す)てて群集(ぐんしふ)を
184ジロジロ見廻(みまは)し声(こゑ)高(たか)く
185『拙僧(せつそう)こそはウラナイの
186道(みち)に永年(ながねん)苦労(くらう)した
187諸国(しよこく)巡礼(じゆんれい)の行者(ぎやうじや)です
188今(いま)現(あら)はれた高姫(たかひめ)の
189教主(けうしゆ)の君(きみ)は人(ひと)でない
190天津空(あまつそら)より雲(くも)に乗(の)り
191小北(こぎた)の山(やま)の聖場(せいぢやう)に
192天降(あも)り玉(たま)ひし生神(いきがみ)ぞ
193皆(みな)さま喜(よろこ)びなさいませ
194此(この)神(かみ)様(さま)を信(しん)じなば
195寿命(じゆみやう)長久(ちやうきう)福徳(ふくとく)円満(ゑんまん)
196五穀(ごこく)豊穣(ほうじやう)息災(そくさい)延命(えんめい)まがひなし
197そもそも神(かみ)には正神(せいしん)と
198邪神(じやしん)の二(ふた)つの区別(くべつ)あり
199神(かみ)を信仰(しんかう)するならば
200誠(まこと)の神(かみ)を敬(うやま)うて
201邪神(よこしまがみ)を捨(す)てなされ
202誠(まこと)の神(かみ)は生命(いのち)を与(あた)へ
203病(やまひ)を癒(い)やし福徳(ふくとく)を
204授(さづ)け玉(たま)ふ仁慈(じんじ)無限(むげん)の御(お)やり方(かた)
205曲津(まがつ)の神(かみ)は病気(びやうき)を起(おこ)し
206貧乏(びんばふ)を齎(もたら)し命(いのち)を縮(ちぢ)め
207大雨(おほあめ)大風(おほかぜ)地震(ぢしん)まで
208人(ひと)の嫌(いや)がる事(こと)許(ばか)り
209一生(いつしやう)懸命(けんめい)にするものだ
210スガの御山(みやま)に建(た)てられし
211三五教(あななひけう)も其(その)通(とほ)り
212善(ぜん)の仮面(かめん)を被(かぶ)りつつ
213悪魔(あくま)の神(かみ)を呼(よ)び集(つど)へ
214此(この)世(よ)の中(なか)を乱(みだ)さむと
215朝(あさ)な夕(ゆふ)なに念(ねん)じてる
216何卒(なにとぞ)皆(みな)さま気(き)をつけて
217スガの山(やま)へは行(ゆ)かぬやう
218近所(きんじよ)合壁(がつぺき)いましめて
219ウラナイ教(けう)の神(かみ)様(さま)の
220おかげを頂(いただ)きなされませ
221あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
222私(わたし)も教主(けうしゆ)に用(よう)がある
223一先(ひとま)づ御免(ごめん)』と云(い)ひ乍(なが)ら
224悠々(いういう)演壇(えんだん)降(くだ)りつつ
225高姫司(たかひめつかさ)の潜(ひそ)みたる
226隣(となり)の部屋(へや)をさして行(ゆ)く
227数多(あまた)の信者(しんじや)は怪訝顔(けげんがほ)
228何(なに)が何(なに)やら分(わか)らぬと
229互(たがひ)に小言(こごと)をつき乍(なが)ら
230ボツボツ家路(いへぢ)に帰(かへ)り行(ゆ)く
231あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
232目玉(めだま)飛(とび)出(だ)す面白(おもしろ)さ。
233 高姫(たかひめ)は一室(ひとま)に隠(かく)れてキユーバーの演説(えんぜつ)を聞(き)いてゐたが、
234『背恰好(せかつかう)と云(い)ひ、235顔(かほ)の形(かたち)と云(い)ひ、236声色(こはいろ)と云(い)ひ、237トルマン城(じやう)で会(あ)うたキユーバーに少(すこ)しも違(ちが)はない。238ハテ妙(めう)な事(こと)になつて来(き)たワイ、239悋気(りんき)の深(ふか)い杢助(もくすけ)さまは別館(べつくわん)に寝(ね)てゐらつしやるから、240いいやうなものの何時(なんどき)目(め)が醒(さ)めるか分(わか)らない。241もしキユーバーさまであつたなら、242如何(どう)しようかな』
243と胸(むね)を抱(いだ)いて考(かんが)へて居(ゐ)る。244其処(そこ)へキユーバーが足音(あしおと)忍(しの)ばせ入(い)り来(きた)り小声(こごゑ)になつて、
245『これ、246千草姫(ちぐさひめ)どの、247この面(つら)を覚(おぼ)えてゐますか』
248高(たか)『ハイ、249そのお顔(かほ)を忘(わす)れてなりませうか、250天下(てんか)に類例(るゐれい)のない御(ご)容貌(ようばう)ですもの。251そして貴方(あなた)、252ひどいぢやありませぬか、253何処(どこ)をうろついてゐらつしやつたのです』
254キユ『時(とき)に千草殿(ちぐさどの)、255スガ山(やま)の神館(かむやかた)にはヨリコ姫(ひめ)と云(い)ふ山賊(さんぞく)上(あが)りの女(をんな)が傲然(がうぜん)と構(かま)へ込(こ)み、256宗教(しうけう)問答所(もんだふどころ)と大看板(おほかんばん)を掲(かか)げ、257「妾(わらは)を説(と)き伏(ふ)せた人(ひと)には此(この)館(やかた)の役目(やくめ)をお渡(わた)し申(まを)す」と図々(づうづう)しくも掲(かか)げて居(ゐ)るのだ、258どうだ259お前(まへ)は一(ひと)つ問答(もんだふ)に行(ゆ)く気(き)はないか』
260高(たか)『ナニ、261ヨリコ姫(ひめ)がそんな事(こと)を書(か)いて居(を)りますか、262何(なん)と云(い)ふ馬鹿(ばか)でせう、263己(おの)が刀(かたな)で己(おの)が首(くび)、264飛(と)んで火(ひ)に入(い)る夏(なつ)の虫(むし)とは此(この)事(こと)でせう。265ヤア面白(おもしろ)い、266それぢや今日(けふ)から準備(じゆんび)しておいて、267明日(あす)は出(で)かけてやりませう』
268キユ『ヤ、269早速(さつそく)の御(ご)承知(しようち)有難(ありがた)い、270及(およ)ばず乍(なが)ら拙者(せつしや)もお伴(とも)致(いた)しませう。271然(しか)し千草姫(ちぐさひめ)さま、272お前(まへ)さまにこれはあるのかい』
273と親指(おやゆび)をつき出(だ)す。
274 高姫(たかひめ)はやや口(くち)ごもり乍(なが)ら思(おも)ひきつて、
275『ハイ、276時置師(ときおかし)の神(かみ)の杢助(もくすけ)さまと云(い)ふ立派(りつぱ)な夫(をつと)が御座(ござ)います。277大(おほ)きな声(こゑ)で仰有(おつしや)ると目(め)が醒(さ)めますから、278どうか小声(こごゑ)で云(い)つて下(くだ)さい』
279キユ『誠(まこと)の夫(をつと)が来(き)て居(ゐ)るのに、280誠(まこと)の夫(をつと)の俺(おれ)が何(なに)遠慮(ゑんりよ)する必要(ひつえう)があるか、281その杢助(もくすけ)とか云(い)ふ奴(やつ)、282俺(おれ)の女房(にようばう)を横取(よこど)りしよつた曲者(くせもの)だ。283ヨーシ、284奥(おく)へ踏(ふ)み込(こ)んで談判(だんぱん)をやつてやらう』
285と立(たち)上(あが)らうとする、286高姫(たかひめ)は矢庭(やには)に胸倉(むなぐら)をグツと取(と)り、287喉(のど)を締(し)め、288あて身(み)をくわし、289床(ゆか)の下(した)にソツと投(ほ)り込(こ)んで了(しま)つた。290あゝキユーバーの運命(うんめい)は如何(どう)なるであらうか。
291(大正一五・六・三〇 旧五・二一 於天之橋立なかや旅館 北村隆光録)
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