霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第二〇章 九官鳥(きうくわんてう)〔一八二九〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第72巻 山河草木 亥の巻 篇:第3篇 転化退閉 よみ(新仮名遣い):てんかたいへい
章:第20章 九官鳥 よみ(新仮名遣い):きゅうかんちょう 通し章番号:1829
口述日:1926(大正15)年07月01日(旧05月22日) 口述場所:天之橋立なかや別館 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1929(昭和4)年4月3日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一部の章はAIによって要約を作成しています。[×閉じる]: 主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ:スコブツエン宗(スコブッツエン宗) データ凡例: データ最終更新日:2025-05-14 07:16:00 文字数:3361 OBC :rm7220
愛善世界社版:249頁 八幡書店版:第12輯 691頁 修補版: 校定版:260頁 普及版:98頁 初版: ページ備考:
001 キユーバーは、002杢助(もくすけ)に呶鳴(どな)りつけられ003高姫(たかひめ)には嘲笑(てうせう)され、004お為(ため)ごかしに五百(ごひやく)円(ゑん)で買(か)つた北町(きたまち)の家(いへ)を貰(もら)つた事(こと)は貰(もら)つたものの、005杢助(もくすけ)、006高姫(たかひめ)の事(こと)だから、007何時(いつ)変替(へんがへ)を云(い)うて来(く)るかも分(わか)らない。
008キユーバー『エヽ本当(ほんたう)につまらない、009高姫(たかひめ)さまの提灯持(ちやうちんもち)をして町々(まちまち)をふれ廻(まは)り、010杢助(もくすけ)の奴(やつ)は手(て)を濡(ぬら)さずして結構(けつこう)な神館(かむやかた)を占領(せんりやう)し、011千草姫(ちぐさひめ)と喋々(てふてふ)喃々(なんなん)、012意茶(いちや)ついて居(ゐ)るかと思(おも)へば、013ごふ腹(ばら)で耐(たま)らないワ。014待(ま)て待(ま)て015茲(ここ)が一(ひと)つ辛抱(しんばう)のし所(どころ)だ、016時節(じせつ)を待(ま)つて杢助(もくすけ)を叩(たた)き出(だ)し、017完全(くわんぜん)に高姫(たかひめ)を此方(こつち)の物(もの)となし018スガの神館(かむやかた)の神司(かむづかさ)となつて一(ひと)つ羽振(はぶり)を利(き)かしてやらう』
019と、0191伊万里(いまり)焼(やき)の達磨(だるま)の出来損(できそこ)なひのやうな面構(つらがまへ)を晒(さら)し乍(なが)ら悄々(しほしほ)と帰(かへ)つて行(ゆ)く。020北町(きたまち)の神館(かむやかた)に帰(かへ)つて見(み)ればきちんと錠(ぢやう)が卸(お)り、021こじても捻(ね)ぢても、0211些(ちつ)とも開(あ)かない。
022キユ『エヽ杢助(もくすけ)の奴(やつ)023人(ひと)を馬鹿(ばか)にして居(ゐ)やがる。024待(ま)て待(ま)て、025ひよつとしたら隣(となり)の元(もと)の家主(やぬし)に鍵(かぎ)を預(あづ)けて置(お)きやがつたかも知(し)れぬ』
026と呟(つぶや)き乍(なが)ら樽屋(たるや)の表(おもて)へ立(たち)はだかり、
027キユ『御免(ごめん)なさい、028拙僧(せつそう)はウラナイ教(けう)本部(ほんぶ)の高等(かうとう)役員(やくゐん)キユーバーですが、029もしや杢助(もくすけ)さまが鍵(かぎ)でも預(あづ)けては置(お)かなかつたでせうか、030一寸(ちよつと)お尋(たづ)ね致(いた)します』
031 主人(しゆじん)の久助(きうすけ)は蛙(かへる)の鳴(な)くやうな妙(めう)な声(こゑ)がするので表(おもて)へ来(き)て見(み)ると妖僧(えうそう)が立(た)つて居(ゐ)る。
032久助(きうすけ)『ヤ、033御用(ごよう)で御座(ござ)いますかな』
034キユ『別(べつ)に用(よう)と云(い)ふやうな事(こと)はありませぬが、035今日(けふ)からあの神館(かむやかた)は拙僧(せつそう)の所有物(しよいうぶつ)となり居住(すまゐ)する積(つも)りです。036杢助(もくすけ)さまが鍵(かぎ)でも預(あづ)けて置(お)きはしませぬかな』
037久(きう)『確(たしか)に預(あづ)かつて居(ゐ)ますが、038………この鍵(かぎ)は誰(たれ)が来(き)ても渡(わた)して呉(く)れな………との仰(おほ)せ、039仮令(たとへ)貴方(あなた)がお買(か)ひになつても滅多(めつた)にお渡(わた)し申(まを)す訳(わけ)には参(まゐ)りませぬ』
040キユ『元来(ぐわんらい)この家(や)の代金(だいきん)は拙者(せつしや)が三百(さんびやく)円(えん)、041杢助(もくすけ)さまが三百(さんびやく)円(えん)出(だ)して買(か)つたのですから、042当然(たうぜん)半分(はんぶん)は拙者(せつしや)の物(もの)、043併(しか)し乍(なが)ら044お前(まへ)さまも聞(き)いて居(ゐ)られるだらうが、045スガの宮(みや)の神館(かむやかた)は問答(もんだふ)の結果(けつくわ)、046杢助(もくすけ)さまの領有(りやういう)となり、047最早(もはや)此(この)神館(かむやかた)は不必用(ふひつよう)となつたので、048拙僧(せつそう)に買(か)つて呉(く)れぬかとのお頼(たの)みだから、049残(のこ)り三百(さんびやく)円(えん)をおつ放(ぽ)り出(だ)し今(いま)買(か)つて来(き)たのですよ。050怪(あや)しう思(おも)はれるのなら、051余(あま)り遠(とほ)くもないからスガの神館(かむやかた)迄(まで)行(い)つて調(しら)べて来(き)て下(くだ)さい』
052久(きう)『あのお金(かね)はさうすると貴方(あなた)が半分(はんぶん)お出(だ)しなさつたのですか、053ヘエー』
054キウ『さうですとも、055拙僧(せつそう)はスコブッツエン宗(しう)の教祖(けうそ)大黒主(おほくろぬし)様(さま)の片腕(かたうで)とも云(い)ふべき豪僧(がうそう)だ、056何時(いつ)もお金(かね)が懐(ふところ)に目(め)を剥(む)いて居(ゐ)る。057杢助(もくすけ)如(ごと)きは諸国(しよこく)修業(しうげふ)の遍歴者(へんれきしや)だからお金(かね)の有(あ)らう筈(はず)はなし、058話(はなし)に聞(き)けば、059ハルの湖(みづうみ)で高砂丸(たかさごまる)に乗(の)り込(こ)み、060高姫(たかひめ)が暴風雨(しけ)に遇(あ)うて沈没(ちんぼつ)したので、061夫婦(ふうふ)共(とも)真裸(まつぱだか)となり、062命(いのち)辛々(からがら)スガの港(みなと)に着(つ)いた位(くらゐ)だから、063一文(いちもん)半銭(きなか)も金(かね)を持(も)つて居(ゐ)る道理(だうり)がないのだ。064あの三百(さんびやく)円(えん)も実(じつ)は怪(あや)しいものだよ。065どこかで何々(なになに)して来(き)よつたのかも知(し)れたものぢやない』
066久(きう)『アヽ左様(さやう)で御座(ござ)いますか。067そんなら如才(じよさい)は御座(ござ)いますまいから鍵(かぎ)をお渡(わた)し申(まをし)ます』
068と懐(ふところ)より取(と)り出(だ)しキユーバーに渡(わた)した。069キユーバーは機嫌(きげん)を直(なほ)しながら肩(かた)を四角(しかく)に揺(ゆす)り、070北町(きたまち)の小路(こうぢ)を大股(おほまた)に跨(また)げて帰(かへ)り行(ゆ)く。
071キユ『ヤア久(ひさ)し振(ぶり)に俺(おれ)の巣(す)が出来(でき)たワイ、072ヤ巣(す)では無(な)い073御(ご)本丸(ほんまる)が出来(でき)たのだ。074弥々(いよいよ)今日(けふ)から北町城(きたまちじやう)の城主(じやうしゆ)天然坊(てんねんばう)キユーバーの君様(きみさま)だ。075斯(か)うなると第一(だいいち)に必要(ひつえう)なものは嬶村屋(かかむらや)だ、076否(いな)女帝(によてい)様(さま)だ。077何(いづ)れこの神館(かむやかた)へは些(ち)つとは美(うつく)しい女(をんな)も参(まゐ)つて来(く)るだらう、078四五(しご)日(にち)の間(うち)に物色(ぶつしよく)して、079これぞと云(い)ふ奴(やつ)を選(えら)み出(だ)し、080当座(たうざ)の鼻(はな)ふさぎに引(ひ)つ張(ぱ)り込(こ)んで置(お)かう、081その間(あひだ)に千草姫(ちぐさひめ)が何(なん)とかならうから』
082等(など)と独(ひとり)言(ごと)をほざき乍(なが)ら、083押入(おしい)れから夜具(やぐ)を引(ひ)つぱり出(だ)し、084揚股(あげまた)をうつて寝(ね)て仕舞(しま)つた。
085 暫(しばら)くすると、086トントンと表戸(おもてど)を叩(たた)いて隣(となり)のお三(さん)がやつて来(き)た。
087お三(さん)『御免(ごめん)なさいませ、088キユーバー様(さま)はお宅(たく)で御座(ござ)いますか』
089武士(ぶし)の子(こ)は轡(くつわ)の音(おと)に目(め)を醒(さ)まし
090乞食(こじき)の子(こ)は茶碗(ちやわん)の音(おと)に目(め)を醒(さ)まし
091キユーバーは女(をんな)の声(こゑ)に目(め)を醒(さ)ます
092寝呆(ねぼ)けた顔(かほ)を撫(な)でながら
093ひびきのいつた濁声(だくせい)で
094キユ『ハイハイハイハイようお出(い)で
095何用(なによう)あつて御座(ござ)つたか
096御用(ごよう)の赴(おもむ)き聞(き)きませう』と
097寝床(ねどこ)を立(た)つて上(あが)り口(ぐち)
098火鉢(ひばち)の前(まへ)に四角(しかく)ばり
099お三(さん)の顔(かほ)を睨(ねめ)つける
100お三(さん)はぎよつとしながらも
101揉手(もみで)をなして丁寧(ていねい)に
102鈴(すず)の鳴(な)るよな声(こゑ)出(だ)して
103お三(さん)『これはこれは当家(たうけ)の主(あるじ)のキユーバー様(さま)
104お寝(やす)み中(ちう)を驚(おどろ)かしまして
105誠(まこと)に申(まをし)訳(わけ)御座(ござ)いませぬ
106妾(わたし)は主人(しゆじん)の言(い)ひつけで
107お伺(うかが)ひ申(まを)しに参(まゐ)りました
108やがて主人(しゆじん)が見(み)えますから
109何処(どこ)へも往(ゆ)つては下(くだ)さるな』
110云(い)へばキユーバーは禿頭(はげあたま)
111縦(たて)に揺(ゆすぶ)つて涎(よだれ)繰(く)り
112キウ『てもまア綺麗(きれい)な女(をんな)だな
113俺(おれ)もお前(まへ)の知(し)る通(とほ)り
114今日(けふ)から此所(ここ)の主(あるじ)とはなつたれど
115飯(めし)たく女(をんな)もない始末(しまつ)
116お前(まへ)のやうな渋皮(しぶかは)の
117剥(む)けた女(をんな)をいつ迄(まで)も
118宿屋(やどや)の下女(げぢよ)にしておくは
119可惜(あつたら)ものよ勿体(もつたい)ない
120おほかたお前(まへ)を俺(おれ)の女房(にようばう)に
121貰(もら)うて呉(く)れとの掛合(かけあひ)に
122久助(きうすけ)さまがエチエチと
123媒介(なかうど)せうとて来(く)るのだらう
124お前(まへ)も俺(おれ)に添(そ)うたなら
125今日(けふ)から此方(ここ)の奥様(おくさま)だ
126この家(いへ)屋敷(やしき)もすつかりと
127お前(まへ)と俺(おれ)の共有物(きよういうぶつ)
128俄(にはか)に蠑螈(いもり)が竜(りう)となり
129天上(てんじやう)したよな出世(しゆつせ)ぞや
130キユーバー司(つかさ)の救世主(きうせいしゆ)は
131お前(まへ)の為(ため)には福(ふく)の神(かみ)
132あまり憎(にく)うはあるまい』と
133曲(まが)つた口(くち)から吹(ふ)き立(た)てる
134お三(さん)は顔(かほ)を赤(あか)くして
135お三(さん)『これこれ申(まを)しキユーバーさま
136そんな話(はなし)ぢやありませぬ
137深(ふか)い様子(やうす)は知(し)らね共(ども)
138杢助(もくすけ)さまが渡(わた)された
139お金(かね)がさつぱり夜(よる)の間(ま)に
140木(こ)の葉(は)になつて仕舞(しま)うたと
141親方(おやかた)さまの御(ご)立腹(りつぷく)
142これや斯(か)うしては居(ゐ)られない
143お役人衆(やくにんしう)に訴(うつた)へて
144お前(まへ)と杢助(もくすけ)夫婦(ふうふ)をば
145縛(しば)つて貰(もら)ふかと御(ご)相談(さうだん)
146妾(わたし)は聞(き)くに聞(き)き兼(か)ねて
147まうしまうし御(ご)主人(しゆじん)様(さま)
148御(ご)立腹(りつぷく)遊(あそ)ばすは尤(もつと)もなれど
149短気(たんき)は損気(そんき)と申(まをし)ます
150一(ひと)先(ま)づ隣(となり)のキユーバーさまに
151実否(じつぴ)を糺(ただ)した其(その)上(うへ)で
152訴(うつた)へなさるが宜(よ)からうと
153申(まをし)上(あ)げたら御(ご)主人(しゆじん)は
154そんならお前(まへ)に任(まか)すから
155キユーバーが居(を)るか居(を)らないか
156調(しら)べて来(こ)いとの御(ご)命令(めいれい)
157よもや如才(じよさい)はありますまいが
158贋札(にせさつ)などを使(つか)うたら
159お上(かみ)の規則(きそく)に照(て)らされて
160臭(くさ)いお飯(まんま)食(く)はにやならむ
161それが気(き)の毒(どく)と思(おも)うた故(ゆゑ)
162主人(しゆじん)の鋭鋒(えいほう)止(と)めおいて
163親切(しんせつ)づくで来(き)ましたよ』
164云(い)へばキユーバーは驚(おどろ)いて
165キユ『そんな怪体(けたい)の事(こと)あろか
166正真(しやうしん)正銘(しやうめい)の百円札(ひやくゑんさつ)
167手(て)の切(き)れさうな新(あたら)しい
168立派(りつぱ)なお金(かね)ぢやなかつたか
169昨夜(さくや)の間(あひだ)に泥棒(どろばう)が
170お前(まへ)の家(うち)へ飛(と)び込(こ)んで
171お金(かね)をすつかりかつ攫(さら)へ
172木(こ)の葉(は)とかへておいたのだらう
173そんな馬鹿(ばか)らしい出来事(できごと)が
174三千(さんぜん)世界(せかい)にあるものか
175何(なに)は兎(と)も角(かく)久助(きうすけ)を
176連(つ)れて出(で)て来(こ)いキユーバーが
177天地(てんち)の道理(だうり)を説(と)き聞(きか)せ
178疑念(うたがひ)晴(はら)してやる程(ほど)に
179アハヽヽハヽヽ訳(わけ)もない
180しやつちもない事(こと)云(い)うて来(く)る』
181などと嘯(うそぶ)き取(とり)合(あ)はぬ
182お三(さん)は止(や)むなく立(たち)帰(かへ)り
183主人(しゆじん)の前(まへ)に両手(りやうて)つき
184キユーバーの言葉(ことば)其(その)儘(まま)に
185委曲(つぶさ)に談(かた)れば久助(きうすけ)は
186しきりに首(くび)を振(ふ)り乍(なが)ら
187キユーバー館(やかた)をさして行(ゆ)く
188キユーバーは又(また)もや揚股(あげまた)を
189打(う)つて鼻歌(はなうた)謡(うた)ひつつ
190冥想(めいさう)に耽(ふけ)る折(をり)もあれ
191表戸(おもてど)ガラリと引開(ひきあ)けて
192血相(けつさう)荒(あら)く入(い)り来(きた)る
193樽屋(たるや)の主(あるじ)久助(きうすけ)は
194御免(ごめん)なさいと慳貪(けんどん)な
195言葉(ことば)の端(はし)も荒(あら)らかに
196庭(には)にすつくと立(た)つたまま
197久助(きうすけ)『山子(やまこ)坊主(ばうず)のキユーバーさま
198お前(まへ)はよつぽど悪党(あくたう)だ
199杢助(もくすけ)夫婦(ふうふ)と腹(はら)合(あは)せ
200魔法(まはふ)を使(つか)つて木(き)の落葉(おちば)
201金(かね)と見(み)せかけ甘々(うまうま)と
202大事(だいじ)の大事(だいじ)の吾(わが)家(いへ)を
203横領(わうりやう)いたした曲者(くせもの)よ
204もう了見(れうけん)はならない程(ほど)に
205如何(どん)な云(い)ひ訳(わけ)なさろとも
206決(けつ)して耳(みみ)は借(か)しませぬ
207バラモン役所(やくしよ)へ訴(うつた)へて
208私(わたし)が白(しろ)いかお前(まへ)等(ら)の
209腹(はら)が黒(くろ)いかきつぱりと
210分(わ)けて貰(もら)はにやおきませぬ
211覚悟(かくご)を定(き)めて居(ゐ)て下(くだ)されよ
212いま番頭(ばんとう)をお役所(やくしよ)へ
213出頭(しゆつとう)さしておきました
214やがて縄目(なはめ)の恥(はぢ)をかき
215町内(ちやうない)隈(くま)なく籐丸籠(とうまるかご)に乗(の)せられて
216詐欺(さぎ)横領(わうりやう)の罪人(ざいにん)と
217引(ひ)き廻(まは)されて町人(まちびと)の
218笑(わら)ひの種(たね)となつた上(うへ)
219お前(まへ)の命(いのち)は風前(ふうぜん)の
220燈火(とうくわ)となつて消(き)えるだろ
221南無(なむ)阿弥陀仏(あみだぶつ)阿弥陀(あみだ)仏(ぶつ)
222頓生(とんしやう)菩提(ぼだい)惟神(かむながら)
223目玉(めだま)飛(と)び出(だ)しましませ』と
224体(からだ)をぷりぷりゆすりつつ
225閾(しきゐ)を蹴(け)たてて帰(かへ)り行(ゆ)く
226後(あと)にキユーバーは手(て)を組(く)んで
227キユ『自分(じぶん)の金(かね)でもないものを
228自分(じぶん)の金(かね)だと法螺(ほら)吹(ふ)いた
229其(その)天罰(てんばつ)が報(むく)い来(き)て
230杢助(もくすけ)夫婦(ふうふ)の罪科(つみとが)の
231相伴(しやうばん)せなくちやならないか
232ほんに思(おも)へば口惜(くちを)しい
233昔(むかし)の聖人(せいじん)の教(をしへ)にも
234口(くち)は禍(わざはひ)の門(もん)とやら
235もうこれからは心得(こころえ)て
236決(けつ)して嘘(うそ)は言(い)はうまい
237とは云(い)ふものの此(この)証(あか)り
238どしたらはつきり立(た)つだらう』
239などと青息(あをいき)吐息(といき)つき
240表戸(おもてど)ぴしやりと引(ひ)きしめて
241離棟(はなれ)の館(やかた)に立籠(たてこも)り
242中(なか)から錠(ぢやう)を卸(おろ)しおき
243長持(ながもち)開(あ)けて中(なか)に入(い)り
244布団(ふとん)被(かぶ)つて慄(ふる)ひ居(ゐ)る
245キユーバーの身(み)こそ憐(あは)れなり。
246(大正一五・七・一 旧五・二二 於天之橋立なかや別館 加藤明子録)
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