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霊界物語
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
第72巻(亥の巻)
序文
総説
第1篇 水波洋妖
第1章 老の高砂
第2章 時化の湖
第3章 厳の欵乃
第4章 銀杏姫
第5章 蛸船
第6章 夜鷹姫
第7章 鰹の網引
第2篇 杢迂拙婦
第8章 街宣
第9章 欠恋坊
第10章 清の歌
第11章 問答所
第12章 懺悔の生活
第13章 捨台演
第14章 新宅入
第15章 災会
第16章 東西奔走
第3篇 転化退閉
第17章 六樫問答
第18章 法城渡
第19章 旧場皈
第20章 九官鳥
第21章 大会合
第22章 妖魅帰
筑紫潟
余白歌
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第72巻(亥の巻)
> 第1篇 水波洋妖 > 第3章 厳の欵乃
<<< 時化の湖
(B)
(N)
銀杏姫 >>>
第三章
厳
(
いづ
)
の
欵乃
(
ふなうた
)
〔一八一二〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第72巻 山河草木 亥の巻
篇:
第1篇 水波洋妖
よみ(新仮名遣い):
すいはようよう
章:
第3章 厳の欵乃
よみ(新仮名遣い):
いずのふなうた
通し章番号:
1812
口述日:
1926(大正15)年06月29日(旧05月20日)
口述場所:
天之橋立なかや別館
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1929(昭和4)年4月3日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
照国別一行は常磐丸に乗り込み、各人これまでの経緯と今後の目的を歌にうたいながらハルの海を航行していた。
突然、暴風雨に巻き込まれたが、照国別は、高砂丸が遭難しているのを見ると、わが身の危険も顧みず救いに駆けつけた。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm7203
愛善世界社版:
25頁
八幡書店版:
第12輯 616頁
修補版:
校定版:
30頁
普及版:
10頁
初版:
ページ備考:
001
豊栄
(
とよさか
)
昇
(
のぼ
)
る
旭影
(
あさひかげ
)
002
厳
(
いづ
)
の
光
(
ひかり
)
も
照国別
(
てるくにわけ
)
の
003
司
(
つかさ
)
の
一行
(
いつかう
)
朝
(
あさ
)
まだき
004
眼
(
まなこ
)
を
醒
(
さま
)
し
凪
(
な
)
ぎ
渡
(
わた
)
る
005
清
(
きよ
)
けきハルの
湖
(
うみ
)
の
岸
(
きし
)
006
入江
(
いりえ
)
の
港
(
みなと
)
を
舟出
(
ふなで
)
して
007
珍
(
うづ
)
の
教
(
をしへ
)
も
照公
(
てるこう
)
や
008
一度
(
いちど
)
に
開
(
ひら
)
く
梅公別
(
うめこうわけ
)
009
玄真坊
(
げんしんばう
)
と
諸共
(
もろとも
)
に
010
名
(
な
)
さへ
芽出度
(
めでた
)
き
常磐丸
(
ときはまる
)
011
松
(
まつ
)
の
教
(
をしへ
)
の
一行
(
いつかう
)
は
012
艪櫂
(
ろかい
)
を
操
(
あやつ
)
り
悠々
(
いういう
)
と
013
ハルの
港
(
みなと
)
を
辷
(
すべ
)
り
行
(
ゆ
)
く
014
魚鱗
(
ぎよりん
)
の
波
(
なみ
)
を
湛
(
たた
)
へたる
015
ハルの
海原
(
うなばら
)
影
(
かげ
)
清
(
きよ
)
く
016
彼方
(
あなた
)
此方
(
こなた
)
にアンボイナ
017
信天翁
(
しんてんをう
)
や
鴎鳥
(
かもめどり
)
018
飛
(
と
)
び
交
(
か
)
ふ
様
(
さま
)
の
美
(
うる
)
はしさ
019
照国別
(
てるくにわけ
)
は
立
(
た
)
ち
上
(
あが
)
り
020
天津
(
あまつ
)
日影
(
ひかげ
)
を
伏
(
ふ
)
し
拝
(
をが
)
み
021
声
(
こゑ
)
朗
(
ほがら
)
かに
太祝詞
(
ふとのりと
)
022
唱
(
とな
)
ふる
声
(
こゑ
)
は
海若
(
かいじやく
)
を
023
驚
(
おどろ
)
かしつつ
船端
(
ふなばた
)
に
024
波
(
なみ
)
の
皷
(
つづみ
)
を
打
(
う
)
ちそへて
025
神国来
(
しんこくらい
)
を
叫
(
さけ
)
びつつ
026
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
くこそ
勇
(
いさ
)
ましき。
027
照国別
(
てるくにわけ
)
『
神代
(
かみよ
)
の
昔
(
むかし
)
天教
(
てんけう
)
の
028
山
(
やま
)
に
現
(
あ
)
れます
元津
(
もとつ
)
神
(
かみ
)
029
木花姫
(
このはなひめ
)
の
神勅
(
みこと
)
もて
030
厳
(
いづ
)
の
御霊
(
みたま
)
や
瑞御霊
(
みづみたま
)
031
教
(
をしへ
)
を
四方
(
よも
)
に
開
(
ひら
)
かむと
032
数多
(
あまた
)
のエンゼル
任
(
ま
)
け
玉
(
たま
)
ひ
033
白雲
(
しらくも
)
棚引
(
たなび
)
く
其
(
その
)
極
(
きは
)
み
034
青雲
(
あをくも
)
堕居
(
おりゐ
)
向伏
(
むかふ
)
せる
035
極
(
きは
)
みも
知
(
し
)
らず
皇神
(
すめかみ
)
の
036
尊
(
たふと
)
き
教
(
のり
)
を
伝
(
つた
)
へ
行
(
ゆ
)
く
037
その
御諭
(
みさとし
)
に
従
(
したが
)
ひて
038
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
に
現
(
あ
)
れませる
039
瑞
(
みづ
)
の
御霊
(
みたま
)
の
神柱
(
かむばしら
)
040
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのを
)
の
大神
(
おほかみ
)
は
041
千座
(
ちくら
)
の
置戸
(
おきど
)
を
負
(
お
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
042
雨
(
あめ
)
に
体
(
からだ
)
はそぼち
濡
(
ぬ
)
れ
043
御髪
(
みくし
)
は
風
(
かぜ
)
に
梳
(
くしけづ
)
り
044
手足
(
てあし
)
は
霜
(
しも
)
にやけただれ
045
食物
(
おしもの
)
着物
(
きもの
)
乏
(
とぼ
)
しくて
046
身
(
み
)
をきる
寒
(
さむ
)
き
夕
(
ゆふ
)
の
夜
(
よ
)
も
047
やけるが
如
(
ごと
)
き
夏
(
なつ
)
の
日
(
ひ
)
も
048
撓
(
たゆ
)
まず
屈
(
くつ
)
せず
道
(
みち
)
のため
049
世人
(
よびと
)
の
悩
(
なや
)
みを
救
(
すく
)
はむと
050
いそしみ
玉
(
たま
)
ふぞ
尊
(
たふと
)
けれ
051
ウブスナ
山
(
やま
)
の
聖場
(
せいぢやう
)
に
052
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
を
建
(
た
)
て
玉
(
たま
)
ひ
053
曲
(
まが
)
の
霊魂
(
みたま
)
に
犯
(
をか
)
されし
054
人
(
ひと
)
の
心
(
こころ
)
を
清
(
きよ
)
めつつ
055
真人
(
まびと
)
と
生
(
うま
)
れ
代
(
かは
)
らしめ
056
罪科
(
つみとが
)
深
(
ふか
)
き
吾々
(
われわれ
)
に
057
名
(
な
)
さへ
目出度
(
めでた
)
き
宣伝使
(
せんでんし
)
058
称号
(
しようがう
)
さへも
賜
(
たまは
)
りて
059
浮瀬
(
うきせ
)
に
落
(
お
)
ちて
苦
(
くるし
)
める
060
世
(
よ
)
の
諸人
(
もろびと
)
を
救
(
すく
)
ふべく
061
ハルナの
都
(
みやこ
)
に
蟠
(
わだか
)
まる
062
曲津
(
まがつ
)
の
神
(
かみ
)
を
言向
(
ことむ
)
けて
063
神
(
かみ
)
の
御国
(
みくに
)
を
永久
(
とこしへ
)
に
064
建
(
た
)
てむと
図
(
はか
)
り
玉
(
たま
)
ひつつ
065
四方
(
よも
)
に
遣
(
つか
)
はす
神司
(
かむつかさ
)
066
青雲
(
あをくも
)
高
(
たか
)
し
久方
(
ひさかた
)
の
067
高天原
(
たかあまはら
)
より
降
(
くだ
)
ります
068
天人
(
てんにん
)
天女
(
てんによ
)
の
精霊
(
せいれい
)
を
069
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
の
身魂
(
みたま
)
に
下
(
くだ
)
しまし
070
守
(
まも
)
らせ
玉
(
たま
)
ふぞ
有難
(
ありがた
)
き
071
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
072
神
(
かみ
)
の
任
(
よ
)
さしのメツセージ
073
仕遂
(
しと
)
げおほせし
暁
(
あかつき
)
は
074
再
(
ふたた
)
び
斎苑
(
いそ
)
の
神館
(
かむやかた
)
075
ウブスナ
山
(
やま
)
の
聖場
(
せいぢやう
)
に
076
復命
(
ふくめい
)
なして
大神
(
おほかみ
)
の
077
いと
美
(
うるは
)
しき
尊顔
(
かんばせ
)
を
078
拝
(
はい
)
し
奉
(
まつ
)
りて
玉
(
たま
)
の
声
(
こゑ
)
079
かからせ
玉
(
たま
)
ふ
暁
(
あかつき
)
を
080
待
(
ま
)
つも
嬉
(
うれ
)
しき
神
(
かみ
)
の
道
(
みち
)
081
踏
(
ふ
)
みて
行
(
ゆ
)
く
身
(
み
)
ぞ
楽
(
たの
)
しけれ
082
吾
(
わが
)
行
(
ゆ
)
く
道
(
みち
)
は
皇神
(
すめかみ
)
の
083
御守
(
みまも
)
り
厚
(
あつ
)
く
坐
(
ましま
)
せば
084
如何
(
いか
)
なる
枉
(
まが
)
の
襲
(
おそ
)
うとも
085
如何
(
いか
)
で
恐
(
おそ
)
れむ
敷島
(
しきしま
)
の
086
神国魂
(
みくにだまし
)
の
丈夫
(
ますらを
)
は
087
たとへ
天地
(
てんち
)
は
覆
(
かへ
)
るとも
088
月
(
つき
)
落
(
お
)
ち
星
(
ほし
)
は
沈
(
しづ
)
むとも
089
如何
(
いか
)
で
撓
(
たゆ
)
まむ
真心
(
まごころ
)
の
090
心
(
こころ
)
揺
(
ゆる
)
がぬ
梓弓
(
あづさゆみ
)
091
ハルの
海原
(
うなばら
)
渡
(
わた
)
り
行
(
ゆ
)
く
092
吾
(
わが
)
一行
(
いつかう
)
に
幸
(
さち
)
あれや
093
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
094
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐみ
)
ぞ
畏
(
かしこ
)
けれ
095
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐみ
)
ぞ
畏
(
かしこ
)
けれ』
096
照公
(
てるこう
)
『
照国別
(
てるくにわけ
)
の
師
(
し
)
の
君
(
きみ
)
の
097
御名
(
みな
)
の
一字
(
いちじ
)
を
賜
(
たまは
)
りて
098
神
(
かみ
)
の
御稜威
(
みいづ
)
も
照公別
(
てるこうわけ
)
099
名
(
な
)
を
負
(
お
)
ふ
吾
(
われ
)
ぞ
尊
(
たふと
)
けれ
100
ウブスナ
山
(
やま
)
を
立
(
た
)
ちしより
101
吾
(
あが
)
師
(
し
)
の
君
(
きみ
)
と
諸共
(
もろとも
)
に
102
あらゆる
悩
(
なや
)
みを
凌
(
しの
)
ぎつつ
103
彼方
(
あなた
)
此方
(
こなた
)
の
曲神
(
まがかみ
)
を
104
言向
(
ことむけ
)
和
(
やは
)
し
諸人
(
もろびと
)
の
105
艱難
(
なやみ
)
を
救
(
すく
)
ひ
恙
(
つつが
)
なく
106
此処
(
ここ
)
迄
(
まで
)
来
(
きた
)
りし
宣伝
(
せんでん
)
の
107
旅
(
たび
)
の
空
(
そら
)
こそ
楽
(
たの
)
しけれ
108
此処
(
ここ
)
は
名
(
な
)
に
負
(
お
)
ふハルの
湖
(
うみ
)
109
波
(
なみ
)
こまやかに
風
(
かぜ
)
清
(
きよ
)
く
110
真帆
(
まほ
)
を
孕
(
はら
)
ませ
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く
111
常磐
(
ときは
)
の
丸
(
まる
)
は
神
(
かみ
)
の
船
(
ふね
)
112
あまねく
世人
(
よびと
)
を
天国
(
てんごく
)
に
113
導
(
みちび
)
き
渡
(
わた
)
す
神
(
かみ
)
の
船
(
ふね
)
114
あらゆる
罪
(
つみ
)
や
穢
(
けがれ
)
をば
115
乗
(
の
)
せて
千
(
せん
)
里
(
り
)
の
海原
(
うなばら
)
に
116
彷徨
(
さすら
)
ひ
失
(
うしな
)
ふ
神
(
かみ
)
の
船
(
ふね
)
117
あゝ
勇
(
いさ
)
ましや
勇
(
いさ
)
ましや
118
波
(
なみ
)
よ
立
(
た
)
て
立
(
た
)
て
風
(
かぜ
)
も
吹
(
ふ
)
け
119
一瀉
(
いつしや
)
千里
(
せんり
)
の
勢
(
いきほひ
)
で
120
吾
(
わが
)
乗
(
の
)
る
舟
(
ふね
)
は
逸早
(
いちはや
)
く
121
スガの
港
(
みなと
)
へ
走
(
はし
)
れかし
122
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
123
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
の
旅立
(
たびだ
)
ちは
124
世
(
よ
)
の
人々
(
ひとびと
)
の
夢
(
ゆめ
)
にだに
125
知
(
し
)
らぬ
楽
(
たの
)
しき
節
(
ふし
)
ぞある
126
伏
(
ふ
)
しては
地
(
つち
)
に
幸
(
さち
)
祈
(
いの
)
り
127
天
(
てん
)
を
仰
(
あふ
)
いで
国々
(
くにぐに
)
の
128
民
(
たみ
)
安
(
やす
)
かれと
祈
(
いの
)
りつつ
129
草
(
くさ
)
の
褥
(
しとね
)
に
石枕
(
いしまくら
)
130
木々
(
きぎ
)
の
梢
(
こずゑ
)
を
屋根
(
やね
)
として
131
月
(
つき
)
照
(
て
)
る
空
(
そら
)
を
眺
(
なが
)
めつつ
132
幾夜
(
いくよ
)
の
野辺
(
のべ
)
の
仮枕
(
かりまくら
)
133
実
(
げ
)
にも
楽
(
たの
)
しき
旅出
(
たびで
)
かな
134
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
135
御霊
(
みたま
)
幸
(
さちは
)
ひ
坐
(
ましま
)
せよ』
136
梅公
(
うめこう
)
『
吾
(
わが
)
師
(
し
)
の
君
(
きみ
)
に
従
(
したが
)
ひて
137
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのを
)
の
大神
(
おほかみ
)
の
138
任
(
よ
)
さしのまにまに
斎苑
(
いそ
)
館
(
やかた
)
139
後
(
あと
)
に
眺
(
なが
)
めて
出
(
い
)
でて
行
(
ゆ
)
く
140
吾
(
わが
)
一行
(
いつかう
)
は
恙
(
つつが
)
なく
141
河鹿
(
かじか
)
の
難所
(
なんしよ
)
を
乗
(
の
)
り
越
(
こ
)
えて
142
祠
(
ほこら
)
の
森
(
もり
)
や
小北山
(
こぎたやま
)
143
浮木
(
うきき
)
の
森
(
もり
)
には
目
(
め
)
も
呉
(
く
)
れず
144
テームス
峠
(
たうげ
)
を
打
(
うち
)
渡
(
わた
)
り
145
葵
(
あふひ
)
の
沼
(
ぬま
)
に
辿
(
たど
)
り
着
(
つ
)
き
146
月
(
つき
)
の
光
(
ひかり
)
も
黄金
(
わうごん
)
の
147
姫
(
ひめ
)
の
命
(
みこと
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
148
沼
(
ぬま
)
に
輝
(
かがや
)
く
清照
(
きよてる
)
の
149
姫
(
ひめ
)
の
命
(
みこと
)
と
袂
(
たもと
)
をば
150
右
(
みぎ
)
と
左
(
ひだり
)
に
別
(
わか
)
ちつつ
151
トルマン
国
(
ごく
)
の
危急
(
ききふ
)
をば
152
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐ
)
みに
救
(
すく
)
ひつつ
153
吾
(
わが
)
師
(
し
)
の
君
(
きみ
)
に
再会
(
さいくわい
)
し
154
漸
(
やうや
)
く
此処
(
ここ
)
に
来
(
きた
)
りけり
155
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
156
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐみ
)
ぞ
畏
(
かしこ
)
けれ
157
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐみ
)
ぞ
畏
(
かしこ
)
けれ』
158
玄真坊
(
げんしんばう
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
159
『オーラの
山
(
やま
)
に
立籠
(
たてこも
)
り
160
悪逆
(
あくぎやく
)
無道
(
ぶだう
)
の
企
(
たく
)
みをば
161
敢行
(
かんかう
)
したる
吾
(
われ
)
こそは
162
八岐
(
やまた
)
大蛇
(
をろち
)
の
片腕
(
かたうで
)
か
163
たとへ
方
(
かた
)
なき
人非人
(
にんぴにん
)
164
ヨリコの
姫
(
ひめ
)
を
唆
(
そその
)
かし
165
オーラの
山
(
やま
)
を
根拠
(
こんきよ
)
とし
166
泥棒頭
(
どろぼうがしら
)
のシーゴーを
167
謀主
(
ぼうしゆ
)
と
仰
(
あふ
)
ぎオーラ
山
(
さん
)
168
高
(
たか
)
く
聳
(
そび
)
ゆる
大杉
(
おほすぎ
)
の
169
梢
(
こずゑ
)
に
仕掛
(
しかけ
)
けた
星下
(
ほしくだ
)
し
170
良家
(
りやうか
)
の
婦女
(
ふぢよ
)
を
拐
(
かどは
)
かし
171
善男
(
ぜんなん
)
善女
(
ぜんによ
)
を
迷
(
まよ
)
はして
172
金穀
(
きんこく
)
物品
(
ぶつぴん
)
奪
(
うば
)
ひとり
173
七千
(
しちせん
)
余国
(
よこく
)
の
月
(
つき
)
の
国
(
くに
)
174
横領
(
わうりやう
)
せむと
企
(
たくら
)
める
175
時
(
とき
)
しもあれや
三五
(
あななひ
)
の
176
教
(
をしへ
)
の
道
(
みち
)
の
神司
(
かむつかさ
)
177
梅公別
(
うめこうわけ
)
に
踏
(
ふ
)
み
込
(
こ
)
まれ
178
吾
(
わが
)
計画
(
けいくわく
)
も
画餅
(
ぐわへい
)
となり
179
よるべなくなく
三百
(
さんびやく
)
の
180
不良
(
ふりやう
)
分子
(
ぶんし
)
を
選抜
(
せんばつ
)
し
181
ハルの
湖原
(
うなばら
)
打
(
うち
)
渡
(
わた
)
り
182
タラハン
城
(
じやう
)
に
忍
(
しの
)
び
込
(
こ
)
み
183
様子
(
やうす
)
を
聞
(
き
)
けば
左守
(
さもり
)
なる
184
智勇
(
ちゆう
)
兼備
(
けんび
)
のシヤカンナは
185
十年
(
ととせ
)
の
昔
(
むかし
)
追放
(
つゐはう
)
され
186
山林
(
さんりん
)
深
(
ふか
)
く
姿
(
すがた
)
をば
187
隠
(
かく
)
して
再挙
(
さいきよ
)
を
図
(
はか
)
るてふ
188
噂
(
うはさ
)
を
聞
(
き
)
いて
雀躍
(
こをどり
)
し
189
天帝
(
てんてい
)
の
化身
(
けしん
)
と
化
(
ば
)
け
込
(
こ
)
んで
190
夢寐
(
むび
)
にも
忘
(
わす
)
れぬダリヤをば
191
吾
(
わ
)
が
夜
(
よ
)
の
伽
(
とぎ
)
にせむものと
192
色
(
いろ
)
と
欲
(
よく
)
との
二道
(
ふたみち
)
を
193
かけて
踏
(
ふ
)
み
込
(
こ
)
む
山
(
やま
)
の
奥
(
おく
)
194
タニグク
山
(
やま
)
の
岩窟
(
いはやど
)
に
195
小盗人
(
こぬすと
)
共
(
ども
)
に
導
(
みちび
)
かれ
196
一夜
(
いちや
)
を
明
(
あ
)
かす
折
(
をり
)
もあれ
197
命
(
いのち
)
と
頼
(
たの
)
むダリヤ
姫
(
ひめ
)
198
吾
(
わ
)
が
酔
(
よ
)
ふ
隙
(
すき
)
を
窺
(
うかが
)
ひて
199
忽
(
たちま
)
ち
水沫
(
みなわ
)
と
消
(
き
)
えしより
200
シヤカンナも
糞
(
くそ
)
もあるものか
201
二百
(
にひやく
)
の
手下
(
てした
)
を
借
(
か
)
り
受
(
う
)
けて
202
ダリヤの
行衛
(
ゆくゑ
)
を
探
(
さが
)
しつつ
203
神谷村
(
かみたにむら
)
の
村長
(
むらをさ
)
の
204
家
(
いへ
)
に
潜
(
ひそ
)
むをつきとめし
205
その
暁
(
あかつき
)
の
嬉
(
うれ
)
しさは
206
天
(
てん
)
にも
上
(
のぼ
)
る
心地
(
ここち
)
しぬ
207
天
(
てん
)
に
叢雲
(
むらくも
)
花
(
はな
)
に
風
(
かぜ
)
208
吹
(
ふ
)
く
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
是非
(
ぜひ
)
もなし
209
掴
(
つか
)
むに
由
(
よし
)
なき
水
(
みづ
)
の
月
(
つき
)
210
心
(
こころ
)
残
(
のこ
)
して
渋々
(
しぶしぶ
)
に
211
暗路
(
やみぢ
)
を
辿
(
たど
)
り
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く
212
上
(
のぼ
)
れば
高
(
たか
)
きタラハンの
213
峠
(
たうげ
)
の
岩
(
いは
)
に
腰
(
こし
)
かけて
214
前方
(
ぜんぱう
)
遥
(
はる
)
かに
見渡
(
みわた
)
せば
215
野中
(
のなか
)
に
建
(
た
)
てる
城廓
(
じやうくわく
)
は
216
吾
(
われ
)
の
住居
(
すまゐ
)
に
適
(
かな
)
へりと
217
雄猛
(
をたけ
)
びし
乍
(
なが
)
ら
小泥棒
(
こどろぼう
)
218
二人
(
ふたり
)
と
共
(
とも
)
に
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く
219
道
(
みち
)
の
行
(
ゆ
)
く
手
(
て
)
もいろいろに
220
恋路
(
こひぢ
)
の
雲
(
くも
)
に
包
(
つつ
)
まれつ
221
果
(
はた
)
し
終
(
おほ
)
せぬ
果無
(
はかな
)
さに
222
心
(
こころ
)
を
苛
(
いら
)
ちてタラハンの
223
城下
(
じやうか
)
に
忍
(
しの
)
び
待
(
ま
)
つ
程
(
ほど
)
に
224
タラハン
城下
(
じやうか
)
の
大火災
(
だいくわさい
)
225
天
(
てん
)
の
時
(
とき
)
こそ
到
(
いた
)
れりと
226
タラハン
城
(
じやう
)
に
乗
(
の
)
り
込
(
こ
)
んで
227
宝
(
たから
)
の
倉
(
くら
)
に
忍
(
しの
)
び
入
(
い
)
り
228
軍用金
(
ぐんようきん
)
をせしめむと
229
逸
(
はや
)
る
折
(
をり
)
しも
捕
(
とら
)
へられ
230
一度
(
ひとたび
)
獄
(
ごく
)
に
繋
(
つな
)
がれて
231
少時
(
しばし
)
憂目
(
うきめ
)
は
見
(
み
)
たれども
232
泥棒頭
(
どろぼうがしら
)
のシヤカンナが
233
左守
(
さもり
)
の
司
(
かみ
)
となりすまし
234
国政
(
こくせい
)
を
握
(
にぎ
)
ると
聞
(
き
)
くよりも
235
悪口
(
あくこう
)
憎言
(
ざうごん
)
並
(
なら
)
べ
立
(
た
)
て
236
遂
(
つひ
)
には
左守
(
さもり
)
に
腹
(
はら
)
切
(
き
)
らせ
237
黄金
(
わうごん
)
数万
(
すうまん
)
貢
(
みつ
)
がせて
238
踏
(
ふ
)
みも
習
(
なら
)
はぬ
谷川
(
たにがは
)
に
239
沿
(
そ
)
へる
細路
(
ほそみち
)
走
(
はし
)
る
折
(
をり
)
240
追手
(
おつて
)
に
追
(
お
)
はれ
是非
(
ぜひ
)
もなく
241
運命
(
うんめい
)
を
天
(
てん
)
に
任
(
まか
)
しつつ
242
ザンブとばかり
谷川
(
たにがは
)
に
243
身
(
み
)
を
躍
(
をど
)
らして
飛
(
と
)
び
込
(
こ
)
めば
244
人事
(
じんじ
)
不省
(
ふせい
)
となり
果
(
は
)
てて
245
忽
(
たちま
)
ち
幽界
(
いうかい
)
の
旅枕
(
たびまくら
)
246
百
(
もも
)
の
責苦
(
せめく
)
に
遇
(
あ
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
247
人
(
ひと
)
の
情
(
なさけ
)
に
救
(
たす
)
けられ
248
再
(
ふたた
)
び
悪
(
あく
)
を
企
(
たくら
)
みつ
249
入江
(
いりえ
)
の
浜屋
(
はまや
)
に
泊
(
とま
)
り
込
(
こ
)
み
250
ホロ
酔
(
よ
)
ひ
機嫌
(
きげん
)
の
折
(
をり
)
もあれ
251
花
(
はな
)
に
嘘
(
うそ
)
つく
絶世
(
ぜつせい
)
の
252
美人
(
びじん
)
千草
(
ちぐさ
)
の
高姫
(
たかひめ
)
が
253
色香
(
いろか
)
に
迷
(
まよ
)
ひ
涎
(
よだれ
)
くり
254
巾着
(
きんちやく
)
迄
(
まで
)
も
締
(
し
)
められて
255
所持金
(
ありがね
)
スツカリ
奪
(
ば
)
ひ
取
(
と
)
られ
256
命
(
いのち
)
危
(
あやふ
)
くなりし
折
(
をり
)
257
照国別
(
てるくにわけ
)
の
師
(
し
)
の
君
(
きみ
)
に
258
ヤツト
救
(
すく
)
はれ
今
(
いま
)
此処
(
ここ
)
に
259
法
(
のり
)
の
友船
(
ともぶね
)
常磐丸
(
ときはまる
)
260
松
(
まつ
)
の
心
(
こころ
)
に
立直
(
たてなほ
)
し
261
心
(
こころ
)
に
匂
(
にほ
)
ふ
梅公別
(
うめこうわけ
)
262
日
(
ひ
)
も
麗
(
うらら
)
かに
照公
(
てるこう
)
の
263
神
(
かみ
)
の
司
(
つかさ
)
と
諸共
(
もろとも
)
に
264
涼
(
すず
)
しき
風
(
かぜ
)
を
浴
(
あ
)
び
乍
(
なが
)
ら
265
縮緬皺
(
ちりめんじわ
)
の
漂
(
ただよ
)
へる
266
大湖原
(
おほうなばら
)
を
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く
267
吾
(
わが
)
身
(
み
)
の
幸
(
さち
)
ぞ
楽
(
たの
)
しけれ
268
朝日
(
あさひ
)
は
照
(
て
)
るとも
曇
(
くも
)
るとも
269
月
(
つき
)
は
盈
(
み
)
つとも
虧
(
か
)
くるとも
270
仮令
(
たとへ
)
天地
(
てんち
)
は
覆
(
かへ
)
るとも
271
神
(
かみ
)
に
誓
(
ちか
)
ひし
真心
(
まごころ
)
は
272
幾千代
(
いくちよ
)
かけても
違
(
たが
)
ふまじ
273
松
(
まつ
)
のミロクの
末
(
すゑ
)
迄
(
まで
)
も
274
守
(
まも
)
らせ
玉
(
たま
)
へ
惟神
(
かむながら
)
275
神
(
かみ
)
の
御前
(
みまへ
)
に
謹
(
つつし
)
みて
276
吾
(
わが
)
身
(
み
)
の
行末
(
ゆくすゑ
)
祈
(
ね
)
ぎ
奉
(
まつ
)
る』
277
照国別
(
てるくにわけ
)
『
梓弓
(
あづさゆみ
)
ハルの
湖原
(
うなばら
)
乗
(
の
)
り
行
(
ゆ
)
けば
278
百鳥
(
ももどり
)
千鳥
(
ちどり
)
大空
(
おほぞら
)
に
飛
(
と
)
ぶ。
279
天国
(
てんごく
)
の
春
(
はる
)
にも
擬
(
まが
)
ふハルの
湖
(
うみ
)
280
乗
(
の
)
り
行
(
ゆ
)
く
吾
(
われ
)
の
幸
(
さち
)
多
(
おほ
)
きかな』
281
照公別
(
てるこうわけ
)
『
大空
(
おほぞら
)
に
日
(
ひ
)
は
麗
(
うらら
)
かに
照公
(
てるこう
)
の
282
湖路
(
うなぢ
)
静
(
しづか
)
に
進
(
すす
)
む
楽
(
たの
)
しさ。
283
風
(
かぜ
)
清
(
きよ
)
く
波
(
なみ
)
穏
(
おだや
)
かに
吾
(
わが
)
乗
(
の
)
れる
284
船端
(
ふなばた
)
波
(
なみ
)
の
皷
(
つづみ
)
打
(
う
)
ち
行
(
ゆ
)
く』
285
梅公別
(
うめこうわけ
)
『
御教
(
みをしへ
)
の
一度
(
いちど
)
に
開
(
ひら
)
く
梅
(
うめ
)
の
花
(
はな
)
286
三千
(
さんぜん
)
世界
(
せかい
)
に
匂
(
にほ
)
ふなるらむ。
287
梅
(
うめ
)
薫
(
かほ
)
る
春
(
はる
)
の
景色
(
けしき
)
に
酔
(
よ
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
288
ハルの
湖
(
みづうみ
)
渡
(
わた
)
り
行
(
ゆ
)
くかな』
289
玄真坊
(
げんしんばう
)
『
吾
(
わが
)
為
(
な
)
せし
昔
(
むかし
)
の
枉
(
まが
)
を
思
(
おも
)
ひ
出
(
い
)
でて
290
神
(
かみ
)
の
御船
(
みふね
)
もいとど
苦
(
くる
)
しき。
291
今
(
いま
)
よりは
誠
(
まこと
)
の
神
(
かみ
)
の
大道
(
おほみち
)
に
292
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
かなむ
仮令
(
たとへ
)
死
(
し
)
すとも』
293
斯
(
か
)
く
各自
(
めいめい
)
に
歌
(
うた
)
を
詠
(
よ
)
み
乍
(
なが
)
ら
波
(
なみ
)
静
(
しづ
)
かなるハルの
湖面
(
こめん
)
を
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
294
時
(
とき
)
しもあれや、
295
一天
(
いつてん
)
俄
(
にはか
)
に
掻
(
か
)
き
曇
(
くも
)
り、
296
暴風
(
ばうふう
)
吹
(
ふ
)
き
荒
(
すさ
)
び、
297
激浪
(
げきらう
)
怒濤
(
どたう
)
は
山岳
(
さんがく
)
の
如
(
ごと
)
く
押
(
お
)
し
寄
(
よ
)
せ
来
(
きた
)
り、
298
常磐丸
(
ときはまる
)
は
木
(
こ
)
の
葉
(
は
)
の
風
(
かぜ
)
に
散
(
ち
)
る
如
(
ごと
)
く
実
(
じつ
)
に
危
(
あやふ
)
き
光景
(
くわうけい
)
となつた。
299
彼方
(
かなた
)
の
海面
(
かいめん
)
を
遠
(
とほ
)
く
見渡
(
みわた
)
せばハルの
湖面
(
こめん
)
にて
名
(
な
)
も
高
(
たか
)
き
高砂丸
(
たかさごまる
)
の
船体
(
せんたい
)
は
木端
(
こつぱ
)
微塵
(
みぢん
)
に
打
(
うち
)
砕
(
くだ
)
け、
300
乗客
(
じやうきやく
)
の
一同
(
いちどう
)
は
激浪
(
げきらう
)
怒濤
(
どたう
)
に
翻弄
(
ほんろう
)
され、
301
命
(
いのち
)
限
(
かぎ
)
りに
救
(
すく
)
ひを
叫
(
さけ
)
ぶ
声
(
こゑ
)
、
302
恰
(
あたか
)
も
叫喚
(
けうくわん
)
地獄
(
ぢごく
)
の
状態
(
じやうたい
)
を
現出
(
げんしゆつ
)
したるが
如
(
ごと
)
くであつた。
303
照国別
(
てるくにわけ
)
は
吾
(
わが
)
身
(
み
)
の
危難
(
きなん
)
を
忘
(
わす
)
れ
高砂丸
(
たかさごまる
)
の
遭難
(
さうなん
)
を
救
(
すく
)
はむと
304
船頭
(
せんどう
)
を
励
(
はげ
)
まし
八梃艪
(
はつちやうろ
)
を
漕
(
こ
)
ぎ
乍
(
なが
)
ら、
305
高砂丸
(
たかさごまる
)
の
難船場
(
なんせんば
)
目蒐
(
めが
)
けて
力
(
ちから
)
限
(
かぎ
)
りに
漕
(
こ
)
ぎつける。
306
あゝ
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
。
307
(
大正一五・六・二九
旧五・二〇
於天之橋立なかや別館
北村隆光
録)
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