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霊界物語
天祥地瑞(第73~81巻)
第81巻(申の巻)
総説
第1篇 伊佐子の島
第1章 イドム戦
第2章 月光山
第3章 月見の池
第4章 遷座式
第5章 心の禊
第6章 月見の宴
第2篇 イドムの嵐
第7章 月音し
第8章 人魚の勝利
第9章 維新の叫び
第10章 復古運動
第3篇 木田山城
第11章 五月闇
第12章 木田山颪
第13章 思ひの掛川
第14章 鷺と烏
第15章 厚顔無恥
第4篇 猛獣思想
第16章 亀神の救ひ
第17章 再生再会
第18章 蠑螈の精
第19章 悪魔の滅亡
第20章 悔悟の花
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<<< 月光山
(B)
(N)
遷座式 >>>
第三章
月見
(
つきみ
)
の
池
(
いけ
)
〔二〇三〇〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第81巻 天祥地瑞 申の巻
篇:
第1篇 伊佐子の島
よみ(新仮名遣い):
いさごのしま
章:
第3章 月見の池
よみ(新仮名遣い):
つきみのいけ
通し章番号:
2030
口述日:
1934(昭和9)年08月04日(旧06月24日)
口述場所:
伊豆別院
筆録者:
林弥生
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1934(昭和9)年12月30日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
百日間の工程を経て、麗しい神殿は完成を見た。アヅミ王を始め重臣たちは斎殿に集まり、七日七夜の修祓(しゅうばつ)を終えると、遷座式を行う段取りとなった。
月光山の中腹には月見の池という清らかな泉が湧いていた。
アヅミ王いかの修祓行者たちはこの池に集まり、おのおの泉の水を頭上からかぶりながら禊を行い、イドム国の再興やチンリウ王女の無事を神に祈る歌を歌った。
アヅミ王はいままでの心のあり方におごりがあったことに気づき、今後は心を立て直して、神の御前に畏み仕える気持ちで国を治めなければならないことを悟った。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm8103
愛善世界社版:
八幡書店版:
第14輯 436頁
修補版:
校定版:
56頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001
月光山
(
つきみつやま
)
の
聖場
(
せいぢやう
)
は、
002
アヅミ
王
(
わう
)
の
発起
(
ほつき
)
により、
003
百
(
ひやく
)
日
(
にち
)
の
工程
(
こうてい
)
を
急
(
いそ
)
ぎ、
004
漸
(
やうや
)
く
美
(
うつく
)
しき
神殿
(
しんでん
)
の
建築
(
けんちく
)
を
終
(
をは
)
りければ、
005
ここにアヅミ
王
(
わう
)
を
始
(
はじ
)
め
左守
(
さもり
)
、
006
右守
(
うもり
)
、
007
軍師
(
ぐんし
)
其
(
その
)
他
(
た
)
の
司
(
つかさ
)
等
(
たち
)
は、
008
斎殿
(
いみどの
)
に
集
(
あつま
)
り、
009
七日
(
なぬか
)
七夜
(
ななよ
)
の
修祓
(
しうばつ
)
を
終
(
をは
)
り、
010
主
(
ス
)
の
大神
(
おほかみ
)
の
遷座式
(
せんざしき
)
を
行
(
おこな
)
ふべき
段取
(
だんど
)
りとなりにける。
011
月光山
(
つきみつやま
)
の
中腹
(
ちうふく
)
には
月見
(
つきみ
)
の
池
(
いけ
)
と
称
(
しよう
)
する
清泉
(
せいせん
)
涌出
(
ゆうしゆつ
)
して、
012
蒼空
(
さうくう
)
の
月
(
つき
)
を
底
(
そこ
)
深
(
ふか
)
く
写
(
うつ
)
せり。
013
恰
(
あだか
)
も
白銀
(
はくぎん
)
の
玉
(
たま
)
を
水底
(
みなそこ
)
に
沈
(
しづ
)
めし
如
(
ごと
)
く
見
(
み
)
えて、
014
その
床
(
ゆか
)
しさ
限
(
かぎ
)
りなし。
015
アヅミ
王
(
わう
)
以下
(
いか
)
の
修祓
(
しうばつ
)
修行者
(
しゆぎやうしや
)
は、
016
七日目
(
なぬかめ
)
の
夕
(
ゆふべ
)
月見
(
つきみ
)
の
池
(
いけ
)
に
集
(
あつま
)
り
来
(
きた
)
り、
017
各自
(
おのもおのも
)
清泉
(
せいせん
)
を
頭上
(
づじやう
)
より
引
(
ひ
)
きかぶりながら
歌
(
うた
)
ふ。
018
アヅミ
王
(
わう
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
019
『
身体
(
からたま
)
も
霊魂
(
みたま
)
も
清
(
すが
)
しくなりにけり
020
七日
(
なぬか
)
七夜
(
ななよ
)
の
修祓
(
しうばつ
)
を
経
(
へ
)
て
021
月光山
(
つきみつやま
)
月見
(
つきみ
)
の
池
(
いけ
)
に
佇
(
たたず
)
めば
022
水底
(
みなそこ
)
深
(
ふか
)
く
月
(
つき
)
はかがよふ
023
仰
(
あふ
)
ぎ
見
(
み
)
れば
月読
(
つきよみ
)
の
舟
(
ふね
)
俯
(
ふ
)
して
見
(
み
)
れば
024
水底
(
みそこ
)
の
月
(
つき
)
は
玉
(
たま
)
とかがよふ
025
月
(
つき
)
と
月
(
つき
)
の
中
(
なか
)
に
佇
(
たたず
)
む
心地
(
ここち
)
して
026
禊
(
みそぎ
)
をはりし
夕
(
ゆふ
)
べ
清
(
すが
)
しき
027
主
(
ス
)
の
神
(
かみ
)
の
御霊
(
みたま
)
を
御殿
(
みとの
)
に
招
(
お
)
ぎ
奉
(
まつ
)
り
028
明日
(
あす
)
はいよいよ
御祭
(
みまつり
)
仕
(
つか
)
へむ
029
果
(
は
)
てしなき
御空
(
みそら
)
の
蒼
(
あを
)
を
写
(
うつ
)
したる
030
月見
(
つきみ
)
の
池
(
いけ
)
の
底
(
そこ
)
にも
月
(
つき
)
あり
031
月
(
つき
)
も
星
(
ほし
)
も
水底
(
みそこ
)
に
清
(
きよ
)
く
輝
(
かがや
)
けり
032
われは
空
(
そら
)
ゆく
鳥
(
とり
)
にあらずや
033
佇
(
たたず
)
みて
月見
(
つきみ
)
の
池
(
いけ
)
を
眺
(
なが
)
めつつ
034
雲井
(
くもゐ
)
を
伊行
(
いゆ
)
く
心地
(
ここち
)
するかな
035
春
(
はる
)
さりて
紫躑躅
(
むらさきつつじ
)
紅躑躅
(
べにつつじ
)
036
月見
(
つきみ
)
の
池
(
いけ
)
の
汀
(
みぎは
)
に
匂
(
にほ
)
へり
037
白
(
しろ
)
き
蝶
(
てふ
)
花
(
はな
)
にたはむるやさしかげ
038
月見
(
つきみ
)
の
池
(
いけ
)
の
底
(
そこ
)
にも
遊
(
あそ
)
べる
039
常磐木
(
ときはぎ
)
の
松
(
まつ
)
の
木蔭
(
こかげ
)
に
咲
(
さ
)
き
匂
(
にほ
)
ふ
040
躑躅
(
つつじ
)
は
水底
(
みそこ
)
に
赤
(
あか
)
く
映
(
は
)
えたり
041
天
(
てん
)
も
地
(
ち
)
も
澄
(
す
)
みきらひたる
今日
(
けふ
)
の
日
(
ひ
)
に
042
禊
(
みそぎ
)
終
(
をは
)
りしわれは
嬉
(
うれ
)
しも
043
天地
(
あめつち
)
の
神
(
かみ
)
も
禊
(
みそぎ
)
しわが
魂
(
たま
)
を
044
諾
(
うべな
)
ひまして
天降
(
あも
)
りますらむ
045
イドム
城
(
じやう
)
敵
(
てき
)
に
奪
(
うば
)
はれわれは
今
(
いま
)
046
月光山
(
つきみつやま
)
に
禊
(
みそぎ
)
するかも
047
昼夜
(
ひるよる
)
を
神
(
かみ
)
に
祈
(
いの
)
りて
魂
(
たま
)
を
練
(
ね
)
り
048
力
(
ちから
)
を
強
(
つよ
)
めて
国
(
くに
)
を
守
(
まも
)
らむ
049
仰
(
あふ
)
ぎ
見
(
み
)
れば
御空
(
みそら
)
に
月読
(
つきよみ
)
光
(
かげ
)
清
(
きよ
)
く
050
星
(
ほし
)
の
真砂
(
まさご
)
のまたたけるかな
051
月光山
(
つきみつやま
)
吹
(
ふ
)
く
春風
(
はるかぜ
)
の
軟
(
やはら
)
かく
052
夕
(
ゆふ
)
べの
林
(
はやし
)
に
小鳥
(
ことり
)
なくなり』
053
ムラジ
姫
(
ひめ
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
054
『
歎
(
なげ
)
かひの
数
(
かず
)
を
重
(
かさ
)
ねて
今
(
いま
)
此処
(
ここ
)
に
055
水底
(
みそこ
)
にうつる
月
(
つき
)
を
見
(
み
)
るかな
056
水底
(
みなそこ
)
の
澄
(
す
)
みきらひたる
月
(
つき
)
見
(
み
)
れば
057
うべよ
月見
(
つきみ
)
の
池
(
いけ
)
と
称
(
とな
)
ふも
058
水底
(
みなそこ
)
にかげを
沈
(
しづ
)
めて
月読
(
つきよみ
)
は
059
夜
(
よる
)
の
守
(
まも
)
りとかがやき
給
(
たま
)
へり
060
昼
(
ひる
)
の
守
(
まも
)
り
夜
(
よる
)
の
守
(
まも
)
りを
受
(
う
)
けながら
061
月光山
(
つきみつやま
)
に
国
(
くに
)
を
守
(
まも
)
らむ
062
チンリウ
姫
(
ひめ
)
の
行方
(
ゆくへ
)
は
今
(
いま
)
にわからねど
063
月
(
つき
)
をし
見
(
み
)
れば
心
(
こころ
)
やはらぐ
064
大空
(
おほぞら
)
に
冴
(
さ
)
え
渡
(
わた
)
りたる
春
(
はる
)
の
夜
(
よ
)
の
065
月
(
つき
)
朧
(
おぼろ
)
なりわが
子
(
こ
)
を
思
(
おも
)
ふも
066
大空
(
おほぞら
)
は
俄
(
にはか
)
に
霞
(
かすみ
)
包
(
つつ
)
まひて
067
水底
(
みそこ
)
の
月
(
つき
)
の
光
(
かげ
)
をぼかせり
068
春
(
はる
)
の
夜
(
よ
)
の
月
(
つき
)
を
力
(
ちから
)
に
匂
(
にほ
)
ふらむ
069
躑躅
(
つつじ
)
の
露
(
つゆ
)
は
玉
(
たま
)
と
照
(
て
)
りつつ
070
静
(
しづ
)
かなる
夕
(
ゆふ
)
べなるかな
吹
(
ふ
)
く
風
(
かぜ
)
も
071
いとやはらかに
山雀
(
やまがら
)
の
鳴
(
な
)
く
072
夕
(
ゆふ
)
されど
山雀
(
やまがら
)
の
鳴
(
な
)
くこの
山
(
やま
)
は
073
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐみ
)
の
現
(
あら
)
はれなるかも
074
水底
(
みなそこ
)
の
真砂
(
まさご
)
の
数
(
かず
)
も
見
(
み
)
ゆるまで
075
月
(
つき
)
は
冴
(
さ
)
えたり
霞
(
かすみ
)
を
分
(
わ
)
けて
076
吹
(
ふ
)
く
風
(
かぜ
)
に
御空
(
みそら
)
覆
(
おほ
)
ひし
春霞
(
はるがすみ
)
077
忽
(
たちま
)
ち
晴
(
は
)
れて
空
(
そら
)
の
肌
(
はだ
)
見
(
み
)
ゆ
078
主
(
ス
)
の
神
(
かみ
)
の
御舎
(
みあらか
)
とならむ
此
(
こ
)
の
山
(
やま
)
に
079
御魂
(
みたま
)
清
(
きよ
)
めて
清
(
すが
)
しきわれなり
080
大空
(
おほぞら
)
の
月
(
つき
)
も
流転
(
るてん
)
のかげなれば
081
われは
歎
(
なげ
)
かじ
移
(
うつ
)
りゆく
世
(
よ
)
を
082
或
(
ある
)
は
虧
(
か
)
け
或
(
あるい
)
は
盈
(
み
)
つる
月光
(
つきかげ
)
は
083
わが
魂
(
たましひ
)
を
生
(
い
)
かせ
給
(
たま
)
へり
084
光闇
(
ひかりやみ
)
ゆき
交
(
か
)
ふ
世
(
よ
)
ぞと
思
(
おも
)
へども
085
なほ
偲
(
しの
)
ばるるイドムの
城
(
しろ
)
かな
086
朝夕
(
あさゆふ
)
に
恋
(
こ
)
ふる
娘
(
むすめ
)
の
行先
(
ゆくさき
)
を
087
探
(
たづ
)
ねまほしき
月
(
つき
)
にぞありける
088
祖々
(
おやおや
)
の
授
(
さづ
)
け
給
(
たま
)
ひしイドム
城
(
じやう
)
の
089
木
(
こ
)
の
間
(
ま
)
の
月
(
つき
)
を
見
(
み
)
る
由
(
よし
)
もなし
090
わが
仰
(
あふ
)
ぐ
御空
(
みそら
)
の
月
(
つき
)
はイドム
城
(
じやう
)
の
091
常磐木
(
ときはぎ
)
の
松
(
まつ
)
に
懸
(
か
)
かりし
光
(
かげ
)
かも
092
ここに
来
(
き
)
て
心
(
こころ
)
清
(
すが
)
しくなりにけり
093
朝
(
あした
)
夕
(
ゆふ
)
べを
風
(
かぜ
)
の
匂
(
にほ
)
へば
094
月
(
つき
)
冴
(
さ
)
ゆる
樹下
(
こした
)
の
蔭
(
かげ
)
に
丹躑躅
(
につつじ
)
は
095
無心
(
むしん
)
の
色
(
いろ
)
を
湛
(
たた
)
へて
笑
(
わら
)
へり』
096
シウランは
歌
(
うた
)
ふ。
097
『わが
王
(
きみ
)
よ
喜
(
よろこ
)
び
給
(
たま
)
へイドム
城
(
じやう
)
に
098
眺
(
なが
)
めし
月
(
つき
)
は
輝
(
かがや
)
き
給
(
たま
)
へり
099
故郷
(
ふるさと
)
に
眺
(
なが
)
むる
月
(
つき
)
を
月光
(
つきみつ
)
の
100
山
(
やま
)
に
仰
(
あふ
)
ぐと
思
(
おも
)
へば
床
(
ゆか
)
しき
101
何国
(
いづくに
)
の
果
(
は
)
てにも
月日
(
つきひ
)
は
照
(
て
)
るものを
102
如何
(
いか
)
で
歎
(
なげ
)
かむ
過
(
す
)
ぎにし
夢
(
ゆめ
)
を
103
現世
(
うつしよ
)
は
夢
(
ゆめ
)
と
思
(
おも
)
へど
月読
(
つきよみ
)
の
104
かげをし
見
(
み
)
れば
現
(
うつつ
)
にかへる
105
百余
(
ひやくよ
)
里
(
り
)
を
距
(
へだ
)
てて
仰
(
あふ
)
ぐ
月光
(
つきかげ
)
も
106
変
(
かは
)
りなき
世
(
よ
)
と
思
(
おも
)
へば
楽
(
たの
)
し
107
真珠湖
(
しんじゆこ
)
に
浮
(
うか
)
べる
月
(
つき
)
を
人魚
(
にんぎよ
)
等
(
ら
)
は
108
歓
(
えら
)
ぎ
喜
(
よろこ
)
び
仰
(
あふ
)
ぎゐるらむ
109
塩辛
(
しほから
)
き
人魚
(
にんぎよ
)
の
湖
(
うみ
)
に
比
(
くら
)
ぶれば
110
月見
(
つきみ
)
の
池
(
いけ
)
は
一入
(
ひとしほ
)
清
(
すが
)
しき
111
わが
王
(
きみ
)
よ
歎
(
なげ
)
き
給
(
たま
)
ふな
地
(
ち
)
の
上
(
うへ
)
に
112
変
(
かは
)
らぬ
月日
(
つきひ
)
の
輝
(
かがや
)
き
給
(
たま
)
へば
113
かくの
如
(
ごと
)
清
(
すが
)
しき
山
(
やま
)
に
籠
(
こも
)
らひて
114
祭政
(
さいせい
)
一致
(
いつち
)
は
楽
(
たの
)
しかるべし
115
先
(
ま
)
づ
神
(
かみ
)
を
斎
(
いつ
)
きまつりて
此
(
この
)
国
(
くに
)
の
116
政治
(
まつりごと
)
せむ
月日
(
つきひ
)
にならひて
117
天津
(
あまつ
)
日
(
ひ
)
の
恵
(
めぐ
)
み
畏
(
かしこ
)
み
月読
(
つきよみ
)
の
118
露
(
つゆ
)
を
力
(
ちから
)
に
世
(
よ
)
を
治
(
をさ
)
めませ
119
七日
(
なぬか
)
七夜
(
ななよ
)
霊魂
(
みたま
)
身体
(
からたま
)
禊
(
みそぎ
)
して
120
月見
(
つきみ
)
の
池
(
いけ
)
の
月
(
つき
)
に
親
(
した
)
しむ
121
梢
(
こずゑ
)
吹
(
ふ
)
く
風
(
かぜ
)
の
音
(
おと
)
さへ
静
(
しづ
)
かなり
122
王
(
きみ
)
の
御心
(
みこころ
)
現
(
あら
)
はれにつつ
123
村肝
(
むらきも
)
の
心
(
こころ
)
静
(
しづ
)
かに
時
(
とき
)
待
(
ま
)
ちて
124
イドムの
城
(
しろ
)
を
取
(
と
)
り
返
(
かへ
)
さばや
125
エールスの
醜
(
しこ
)
の
司
(
つかさ
)
は
強
(
つよ
)
くとも
126
誠
(
まこと
)
の
神
(
かみ
)
の
力
(
ちから
)
に
及
(
およ
)
ばじ
127
わが
王
(
きみ
)
に
刃向
(
はむか
)
ひまつりしエールスの
128
果
(
は
)
ては
必
(
かなら
)
ずよろしからまじ
129
エールスの
醜
(
しこ
)
の
魂
(
みたま
)
を
救
(
すく
)
ひやりて
130
月光
(
つきかげ
)
の
如
(
ごと
)
清
(
きよ
)
めたきもの
131
われとても
月
(
つき
)
の
光
(
ひかり
)
を
教
(
のり
)
として
132
霊魂
(
みたま
)
身体
(
からたま
)
清
(
きよ
)
く
進
(
すす
)
まむ
133
常闇
(
とこやみ
)
も
光
(
ひかり
)
の
力
(
ちから
)
に
引
(
ひ
)
きさかれ
134
輝
(
かがや
)
く
世
(
よ
)
なり
神
(
かみ
)
に
任
(
まか
)
さむ
135
わが
王
(
きみ
)
の
軍
(
いくさ
)
の
司
(
つかさ
)
と
任
(
まけ
)
られて
136
もろくも
破
(
やぶ
)
れし
思
(
おも
)
へば
恥
(
はづ
)
かし
137
月
(
つき
)
の
面
(
おも
)
仰
(
あふ
)
ぐも
恥
(
はづ
)
かしわが
王
(
きみ
)
の
138
上
(
うへ
)
を
守
(
まも
)
らで
破
(
やぶ
)
れし
思
(
おも
)
へば
139
恥
(
はぢ
)
らひつ
御空
(
みそら
)
の
月
(
つき
)
を
眺
(
なが
)
むれば
140
笑
(
ゑ
)
みておはせり
面
(
おもて
)
穏
(
おだひ
)
に』
141
左守
(
さもり
)
のナーマンは
歌
(
うた
)
ふ。
142
『
戦
(
たたか
)
ひに
敗
(
やぶ
)
れて
歎
(
なげ
)
きのわれながら
143
冴
(
さ
)
えたる
今宵
(
こよひ
)
の
月
(
つき
)
を
見
(
み
)
るかな
144
月
(
つき
)
見
(
み
)
れば
千々
(
ちぢ
)
の
歎
(
なげ
)
きも
晴
(
は
)
れゆきて
145
蘇
(
よみがへ
)
りたる
心地
(
ここち
)
こそすれ
146
イドム
城
(
じやう
)
は
失
(
うしな
)
ひたれどわが
王
(
きみ
)
の
147
まめやかにます
思
(
おも
)
へば
楽
(
たの
)
しき
148
姫君
(
ひめぎみ
)
の
行方
(
ゆくへ
)
はいづくか
知
(
し
)
らねども
149
生
(
い
)
きていまさむ
神
(
かみ
)
の
守
(
まも
)
りに
150
エールスの
醜
(
しこ
)
の
司
(
つかさ
)
を
征討
(
きた
)
めむと
151
思
(
おも
)
ふ
心
(
こころ
)
は
永久
(
とは
)
に
晴
(
は
)
れずも
152
左守
(
さもり
)
われ
国
(
くに
)
の
政治
(
まつり
)
を
誤
(
あやま
)
りて
153
王
(
きみ
)
に
歎
(
なげ
)
きを
見
(
み
)
せまつりける
154
わが
王
(
きみ
)
の
心
(
こころ
)
なやませ
村肝
(
むらきも
)
の
155
心
(
こころ
)
は
立
(
た
)
つても
居
(
ゐ
)
ても
居
(
ゐ
)
られず
156
寛大
(
くわんだい
)
なる
王
(
きみ
)
の
心
(
こころ
)
にほだされて
157
われは
生命
(
いのち
)
を
今日
(
けふ
)
まで
保
(
たも
)
ちし
158
わが
国
(
くに
)
と
王
(
きみ
)
に
対
(
たい
)
して
申訳
(
まうしわけ
)
159
立
(
た
)
たざるわれは
死
(
し
)
なむと
思
(
おも
)
ひし
160
さりながら
死
(
し
)
するは
易
(
やす
)
く
生
(
うま
)
るるは
161
難
(
かた
)
しと
思
(
おも
)
ひて
忍
(
しの
)
び
来
(
き
)
つるも
162
玉
(
たま
)
の
緒
(
を
)
の
生命
(
いのち
)
保
(
たも
)
ちて
王
(
きみ
)
のため
163
わが
敵
(
てき
)
滅
(
ほろ
)
ぼすとながらへ
居
(
ゐ
)
るも
164
心
(
こころ
)
無
(
な
)
き
花
(
はな
)
麗
(
うるは
)
しく
汀辺
(
みぎはべ
)
に
165
春
(
はる
)
を
匂
(
にほ
)
へどわれは
淋
(
さび
)
しき
166
大空
(
おほぞら
)
に
輝
(
かがや
)
く
月
(
つき
)
の
光
(
かげ
)
見
(
み
)
れば
167
わが
愚
(
おろか
)
しさに
恥
(
はぢ
)
らひのわく
168
玉
(
たま
)
の
緒
(
を
)
の
生命
(
いのち
)
の
限
(
かぎ
)
り
王
(
きみ
)
のため
169
恨
(
うらみ
)
晴
(
は
)
らして
城
(
しろ
)
とりもどさむ』
170
アヅミ
王
(
わう
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
171
『ナーマンの
悲
(
かな
)
しき
心
(
こころ
)
はわれ
知
(
し
)
れり
172
心
(
こころ
)
安
(
やす
)
かれ
時
(
とき
)
を
待
(
ま
)
ちつつ
173
ナーマンの
罪
(
つみ
)
にはあらず
天地
(
あめつち
)
の
174
神
(
かみ
)
に
離
(
はな
)
れしわれの
罪
(
つみ
)
ぞや』
175
ナーマンは
歌
(
うた
)
ふ。
176
『わが
王
(
きみ
)
の
優
(
やさ
)
しき
言葉
(
ことば
)
聞
(
き
)
くにつけ
177
わが
目
(
め
)
の
涙
(
なみだ
)
しとど
降
(
ふ
)
るなり
178
わが
王
(
きみ
)
の
思
(
おも
)
ひを
何時
(
いつ
)
か
晴
(
は
)
らさむと
179
朝
(
あした
)
夕
(
ゆふ
)
べを
神
(
かみ
)
に
祈
(
いの
)
りつ
180
主
(
ス
)
の
神
(
かみ
)
の
御舎
(
みあらか
)
漸
(
やうや
)
く
出来上
(
できあが
)
り
181
御霊遷
(
みたまうつ
)
しの
吉
(
よ
)
き
日
(
ひ
)
待
(
ま
)
たるる』
182
右守
(
うもり
)
のターマンは
歌
(
うた
)
ふ。
183
『わが
王
(
きみ
)
の
御言
(
みこと
)
畏
(
かしこ
)
しナーマンの
184
心
(
こころ
)
いぢらしわれは
泣
(
な
)
くなり
185
今
(
いま
)
までの
歎
(
なげ
)
きを
月
(
つき
)
にまかせつつ
186
御国
(
みくに
)
起
(
おこ
)
すと
御神
(
みかみ
)
に
祈
(
いの
)
らむ
187
地
(
ち
)
の
上
(
うへ
)
の
業
(
わざ
)
はことごと
主
(
ス
)
の
神
(
かみ
)
の
188
恵
(
めぐ
)
みに
離
(
はな
)
れて
成
(
な
)
るものはなし
189
主
(
ス
)
の
神
(
かみ
)
を
厚
(
あつ
)
く
祭
(
まつ
)
りて
言霊
(
ことたま
)
の
190
清
(
きよ
)
き
御稜威
(
みいづ
)
を
身
(
み
)
に
受
(
う
)
けむかも
191
言霊
(
ことたま
)
の
軍
(
いくさ
)
を
用
(
もち
)
ゐず
現世
(
うつしよ
)
の
192
弓矢
(
ゆみや
)
の
軍
(
いくさ
)
に
滅
(
ほろ
)
ぼされたり
193
この
上
(
うへ
)
は
人
(
ひと
)
を
傷
(
そこな
)
ふ
弓矢
(
ゆみや
)
を
捨
(
す
)
てて
194
生言霊
(
いくことたま
)
に
戦
(
たたか
)
はむかな
195
七日
(
なぬか
)
七夜
(
ななよ
)
の
修祓
(
しうばつ
)
終
(
をは
)
り
村肝
(
むらきも
)
の
196
心
(
こころ
)
は
頓
(
とみ
)
に
冴
(
さ
)
え
渡
(
わた
)
りける
197
春
(
はる
)
されば
花
(
はな
)
は
自然
(
しぜん
)
に
咲
(
さ
)
くものを
198
何
(
なに
)
を
騒
(
さわ
)
がむ
今日
(
けふ
)
のわが
身
(
み
)
を
199
わが
王
(
きみ
)
を
栄
(
さかえ
)
の
君
(
きみ
)
とあがめつつ
200
月光山
(
つきみつやま
)
に
時
(
とき
)
を
待
(
ま
)
つべし
201
右守
(
うもり
)
われは
王
(
きみ
)
の
御国
(
みくに
)
をあやまりて
202
曲
(
まが
)
の
司
(
つかさ
)
に
奪
(
うば
)
はれにけり
203
わが
罪
(
つみ
)
は
万死
(
ばんし
)
に
当
(
あた
)
り
重
(
おも
)
けれど
204
やがて
酬
(
むく
)
いむ
時
(
とき
)
の
力
(
ちから
)
に
205
しばらくを
心
(
こころ
)
静
(
しづ
)
かに
待
(
ま
)
ち
給
(
たま
)
へ
206
エールス
王
(
わう
)
を
追
(
お
)
ひそけて
見
(
み
)
む
207
エールスの
司
(
つかさ
)
を
征討
(
きた
)
め
破
(
やぶ
)
らねば
208
わが
身
(
み
)
の
罪
(
つみ
)
は
亡
(
ほろ
)
びざるべし
209
久方
(
ひさかた
)
の
御空
(
みそら
)
を
伊行
(
いゆ
)
く
月光
(
つきかげ
)
も
210
虧
(
か
)
けてかくるる
例
(
ためし
)
ある
世
(
よ
)
ぞ
211
闇
(
やみ
)
の
世
(
よ
)
は
久
(
ひさ
)
しからまじやがて
又
(
また
)
212
冴
(
さ
)
えたる
月
(
つき
)
は
輝
(
かがや
)
き
給
(
たま
)
はむ
213
月光
(
つきかげ
)
は
次第
(
しだい
)
々々
(
しだい
)
に
太
(
ふと
)
りつつ
214
まだ
次
(
つ
)
ぎ
次
(
つ
)
ぎに
細
(
ほそ
)
りゆくなり
215
細
(
ほそ
)
りつつ
御空
(
みそら
)
は
闇
(
やみ
)
となりぬれど
216
また
月光
(
つきかげ
)
の
出
(
い
)
づる
世
(
よ
)
なるよ』
217
アヅミ
王
(
わう
)
は
再
(
ふたた
)
び
歌
(
うた
)
ふ。
218
『
月
(
つき
)
清
(
きよ
)
きこの
池
(
いけ
)
の
辺
(
べ
)
に
禊
(
みそぎ
)
して
219
各自
(
おのもおのも
)
が
心
(
こころ
)
照
(
て
)
らしぬ
220
われは
今
(
いま
)
汝
(
なれ
)
等
(
ら
)
が
清
(
きよ
)
き
心根
(
こころね
)
を
221
親
(
した
)
しく
聞
(
き
)
きて
蘇
(
よみがへ
)
りたり
222
大空
(
おほぞら
)
の
月
(
つき
)
もかくるる
世
(
よ
)
なりけり
223
何
(
なに
)
を
歎
(
なげ
)
かむ
汝
(
なれ
)
等
(
ら
)
を
力
(
ちから
)
に
224
われこそは
独身
(
ひとりみ
)
ならずたくましき
225
汝
(
なれ
)
等
(
ら
)
を
力
(
ちから
)
と
頼
(
たの
)
む
身
(
み
)
なれば
226
主
(
ス
)
の
神
(
かみ
)
の
貴
(
うづ
)
の
恵
(
めぐみ
)
をかがふりて
227
静
(
しづ
)
かに
思
(
おも
)
ひを
晴
(
は
)
らさむと
思
(
おも
)
ふ
228
今
(
いま
)
までの
心
(
こころ
)
の
襖
(
ふすま
)
立
(
た
)
て
直
(
なほ
)
し
229
神
(
かみ
)
の
御前
(
みまへ
)
に
畏
(
かしこ
)
み
仕
(
つか
)
へむ
230
主
(
ス
)
の
神
(
かみ
)
をよそになしつつわが
国
(
くに
)
の
231
治
(
をさ
)
まるべしやはと
悟
(
さと
)
らひにけり』
232
右守
(
うもり
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
233
『わが
王
(
きみ
)
の
畏
(
かしこ
)
き
言霊
(
ことたま
)
聞
(
き
)
くにつけ
234
国
(
くに
)
の
栄
(
さかえ
)
を
今
(
いま
)
より
思
(
おも
)
ふ
235
わが
王
(
きみ
)
の
御言
(
みこと
)
宜
(
うべ
)
なり
主
(
ス
)
の
神
(
かみ
)
の
236
功績
(
いさをし
)
なくて
治
(
をさ
)
まるべきかは
237
エールスの
曲
(
まが
)
は
隙間
(
すきま
)
をうかがひて
238
イドムの
国
(
くに
)
を
奪
(
うば
)
ひたりけむ』
239
ムラジ
姫
(
ひめ
)
は
再
(
ふたた
)
び
歌
(
うた
)
ふ。
240
『
何時
(
いつ
)
となく
心
(
こころ
)
驕
(
おご
)
りてわが
力
(
ちから
)
241
頼
(
たの
)
みし
事
(
こと
)
は
禍
(
わざはひ
)
なりしよ
242
明日
(
あす
)
されば
主
(
ス
)
の
大神
(
おほかみ
)
を
招
(
お
)
ぎまつり
243
いとうるはしく
御祭
(
みまつり
)
仕
(
つか
)
へむ』
244
(
昭和九・八・四
旧六・二四
於伊豆別院
林弥生
謹録)
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