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霊界物語
天祥地瑞(第73~81巻)
第81巻(申の巻)
総説
第1篇 伊佐子の島
第1章 イドム戦
第2章 月光山
第3章 月見の池
第4章 遷座式
第5章 心の禊
第6章 月見の宴
第2篇 イドムの嵐
第7章 月音し
第8章 人魚の勝利
第9章 維新の叫び
第10章 復古運動
第3篇 木田山城
第11章 五月闇
第12章 木田山颪
第13章 思ひの掛川
第14章 鷺と烏
第15章 厚顔無恥
第4篇 猛獣思想
第16章 亀神の救ひ
第17章 再生再会
第18章 蠑螈の精
第19章 悪魔の滅亡
第20章 悔悟の花
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第81巻(申の巻)
> 第1篇 伊佐子の島 > 第5章 心の禊
<<< 遷座式
(B)
(N)
月見の宴 >>>
第五章
心
(
こころ
)
の
禊
(
みそぎ
)
〔二〇三二〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第81巻 天祥地瑞 申の巻
篇:
第1篇 伊佐子の島
よみ(新仮名遣い):
いさごのしま
章:
第5章 心の禊
よみ(新仮名遣い):
こころのみそぎ
通し章番号:
2032
口述日:
1934(昭和9)年08月04日(旧06月24日)
口述場所:
伊豆別院
筆録者:
森良仁
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1934(昭和9)年12月30日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
アヅミ王以下重臣たちは、高鉾の神・神鉾の神の御宣旨に感激し、百日の修祓に取り掛かろうと、今度は山麓を流れる駒井川に集った。
駒井川の水はとうとうとして壮観な勢いを見せていた。一同は川中の巌に陣取り、日夜心力を尽くして禊の神事に仕えていた。
国津神たちは禊の祈念に余念なく取り組んでいる折しも、突如、上流から半死半生となって助けを求めながら流れ落ちてくる、一人の男があった。
国津神たちがよく見ると、それはかねてから敵と狙う、サール国王エールスに他ならなかった。アヅミ王はとっさにわが身の危険も忘れて激流に飛び込むと、エールス王を川州に助け上げ、介抱を始めた。
王以外の神々はこのときばかり恨みを晴らそうと、おのおの石を掴んでエールスを打ち殺そうと集まってきた。アヅミ王は右手を差し上げ、罪はわれわれの心にあったのであり、エールスといえども神の子、乱暴してはならないと一同を制した。
エールス王はアヅミ王の介抱により正気を取り戻すと、回りを見回して、助けてくれたお礼を言うどころか、自分の禊を邪魔したと言って、アヅミ王一同を非難した。
王妃、大臣以下の神々は怒ってエールス王に襲いかかろうとした。アヅミ王は一人必死に一同をなだめて回ったが制しきれず、王以外の神々はいっせいにエールス王に石を投げつけた。
すると不思議なことに、エールス王の姿は煙となって水中に消えてしまった。一同が茫然としていると、水中から大きな蛟竜が現ると、神鉾の神の化身であると自らの正体を明かした。
そして、アヅミ王の心は禊を終わり、大神の大御心にかなったことを告げた。また王妃以下大臣たちはまだ心の修行が足りず、改めて百日の修祓に仕えるべきことを宣言した。そして、山の神殿には神鉾の神が御霊を止めることを託宣した。
ここにアヅミ王は三日の禊によって許され、月光山の神殿に奉仕し、国政を司ることを得た。王妃以下大臣たちは改めて百日の荒行を命じられ、その後月光山の神殿に仕えることを許された。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm8105
愛善世界社版:
八幡書店版:
第14輯 447頁
修補版:
校定版:
99頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001
アヅミ
王
(
わう
)
以下
(
いか
)
の
国津神
(
くにつかみ
)
等
(
たち
)
は
高鉾
(
たかほこ
)
の
神
(
かみ
)
、
002
神鉾
(
かみほこ
)
の
神
(
かみ
)
の
御宣示
(
みことのり
)
により
感激
(
かんげき
)
し、
003
七日
(
なぬか
)
七夜
(
ななよ
)
の
禊
(
みそぎ
)
を
修
(
しう
)
し
再
(
ふたた
)
び
百
(
ひやく
)
日
(
にち
)
の
修祓
(
しうばつ
)
に
取
(
と
)
りかからむと、
004
今回
(
こんくわい
)
は
月見
(
つきみ
)
ケ
池
(
いけ
)
の
聖場
(
せいぢやう
)
を
離
(
さ
)
けて、
005
山麓
(
さんろく
)
を
流
(
なが
)
るる
駒井川
(
こまゐがは
)
の
清流
(
せいりう
)
に
修祓式
(
しうばつしき
)
を
行
(
おこな
)
ひにける。
006
駒井川
(
こまゐがは
)
の
水
(
みづ
)
は
滔々
(
たうたう
)
として
蒼
(
あを
)
く
流
(
なが
)
れ、
007
川中
(
かはなか
)
の
巌
(
いはほ
)
を
噛
(
か
)
みて
立
(
た
)
ち
上
(
あが
)
る
飛沫
(
しぶき
)
は
霧
(
きり
)
の
如
(
ごと
)
く
日光
(
につくわう
)
に
映
(
えい
)
じ、
008
宛然
(
さながら
)
白銀
(
はくぎん
)
の
錦
(
にしき
)
を
散
(
ち
)
らせし
如
(
ごと
)
く、
009
その
壮観
(
さうくわん
)
さ
目
(
め
)
も
眩
(
くら
)
むばかりなりける。
010
一同
(
いちどう
)
は
川中
(
かはなか
)
の
大巌
(
おほいは
)
の
上
(
うへ
)
に
起立
(
きりつ
)
し、
011
或
(
あるひ
)
は
端坐
(
たんざ
)
し、
012
日夜
(
にちや
)
心力
(
しんりよく
)
を
尽
(
つく
)
し、
013
禊
(
みそぎ
)
の
神事
(
みわざ
)
に
仕
(
つか
)
へ
奉
(
まつ
)
りける。
014
アヅミ
王
(
わう
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
015
『
月見池
(
つきみいけ
)
七日
(
なぬか
)
七夜
(
ななよ
)
の
禊
(
みそぎ
)
さへ
016
吾
(
わが
)
魂
(
たましひ
)
の
垢
(
あか
)
は
取
(
と
)
れなく
017
大神
(
おほかみ
)
の
大御
(
おほみ
)
言葉
(
ことば
)
に
省
(
かへり
)
みれば
018
身体
(
からたま
)
霊魂
(
みたま
)
は
未
(
ま
)
だ
清
(
きよ
)
まらず
019
速川
(
はやかは
)
の
滝津瀬
(
たきつせ
)
聞
(
き
)
けば
物凄
(
ものすご
)
し
020
高鉾神
(
たかほこがみ
)
の
御声
(
みこゑ
)
にも
似
(
に
)
て
021
魂
(
たましひ
)
を
打
(
う
)
ち
叩
(
たた
)
かるる
心地
(
ここち
)
かな
022
駒井
(
こまゐ
)
の
川
(
かは
)
の
滝津瀬
(
たきつせ
)
の
音
(
ね
)
は
023
速川
(
はやかは
)
の
中
(
なか
)
に
峙
(
そばだ
)
つ
巌ケ根
(
いはがね
)
に
024
吾
(
われ
)
立
(
た
)
ち
居
(
を
)
れば
水煙
(
みづけむり
)
立
(
た
)
つも
025
駒井川
(
こまゐがは
)
速瀬
(
はやせ
)
に
立
(
た
)
ちて
身体
(
からたま
)
を
026
洗
(
あら
)
ふ
禊
(
みそぎ
)
の
勇
(
いさ
)
ましきかも
027
川底
(
かはそこ
)
の
真砂
(
まさご
)
の
白
(
しろ
)
も
見
(
み
)
えぬまで
028
水
(
みづ
)
蒼
(
あを
)
みたる
深
(
ふか
)
き
流
(
なが
)
れよ
029
駒井川
(
こまゐがは
)
深
(
ふか
)
き
流
(
なが
)
れの
底
(
そこ
)
よりも
030
なほまさるらむ
吾
(
わが
)
身
(
み
)
の
汚
(
けが
)
れは
031
月光山
(
つきみつやま
)
聖所
(
すがど
)
に
城
(
しろ
)
を
構
(
かま
)
へつつ
032
吾
(
わが
)
曇
(
くも
)
りたる
心
(
こころ
)
を
嘆
(
なげ
)
かふ
033
嘆
(
なげ
)
くべき
時
(
とき
)
にはあらじ
吾
(
わが
)
魂
(
たま
)
を
034
清
(
きよ
)
めてイドムの
城
(
しろ
)
をかへさむ
035
形
(
かたち
)
ある
宝
(
たから
)
に
心
(
こころ
)
引
(
ひ
)
かれつつ
036
吾
(
わが
)
魂
(
たましひ
)
の
曇
(
くも
)
りを
恐
(
おそ
)
るる
037
さはいへど
親
(
おや
)
の
賜
(
たま
)
ひしイドム
城
(
じやう
)
038
やみやみ
人手
(
ひとで
)
に
渡
(
わた
)
すべきかは
039
月
(
つき
)
も
日
(
ひ
)
も
流
(
なが
)
るる
駒井
(
こまゐ
)
の
川水
(
かはみづ
)
に
040
吾
(
わが
)
魂
(
たましひ
)
の
垢
(
あか
)
を
洗
(
あら
)
はむ
041
勇
(
いさ
)
ましき
駒井
(
こまゐ
)
の
川
(
かは
)
の
水音
(
みなおと
)
は
042
吾
(
わが
)
魂
(
たましひ
)
を
蘇
(
よみがへ
)
らすも
043
山
(
やま
)
と
山
(
やま
)
に
包
(
つつ
)
まれ
流
(
なが
)
るる
駒井川
(
こまゐがは
)
の
044
水
(
みづ
)
澄
(
す
)
み
切
(
き
)
りて
冷
(
ひ
)
え
渡
(
わた
)
るなり
045
大魚
(
おほな
)
小魚
(
をな
)
あまた
集
(
つど
)
へる
谷川
(
たにがは
)
に
046
禊
(
みそぎ
)
し
居
(
を
)
れば
足
(
あし
)
こそばゆき
047
吾
(
わが
)
足
(
あし
)
を
魚族
(
うろくづ
)
来
(
きた
)
りつつくらし
048
未
(
ま
)
だ
身体
(
からたま
)
の
垢
(
あか
)
の
取
(
と
)
れずや』
049
ムラジ
姫
(
ひめ
)
は
汀
(
みぎは
)
の
浅瀬
(
あさせ
)
に
立
(
た
)
ちながら、
050
半身
(
はんしん
)
を
浸
(
ひた
)
し
静
(
しづ
)
かに
歌
(
うた
)
ふ。
051
『
心地
(
ここち
)
よき
流
(
なが
)
れなるかな
吾
(
わが
)
魂
(
たま
)
は
052
この
水音
(
みなおと
)
に
洗
(
あら
)
はれにける
053
洗
(
あら
)
へども
身体
(
からたま
)
霊魂
(
みたま
)
の
汚
(
けが
)
れをば
054
完全
(
うまら
)
に
委曲
(
つばら
)
に
落
(
お
)
とす
術
(
すべ
)
なし
055
吾
(
わが
)
王
(
きみ
)
の
速瀬
(
はやせ
)
に
立
(
た
)
ちて
巌ケ根
(
いはがね
)
に
056
禊
(
みそぎ
)
給
(
たま
)
へる
御姿
(
みすがた
)
雄々
(
をを
)
しも
057
駒井川
(
こまゐがは
)
速瀬
(
はやせ
)
を
見
(
み
)
れば
村肝
(
むらきも
)
の
058
心
(
こころ
)
勇
(
いさ
)
みて
身体
(
からたま
)
戦
(
をのの
)
く
059
主
(
ス
)
の
神
(
かみ
)
の
御旨
(
みむね
)
に
叶
(
かな
)
ひ
奉
(
まつ
)
らむと
060
百日
(
ももか
)
百夜
(
ももよ
)
の
禊
(
みそぎ
)
に
立
(
た
)
つも
061
百木々
(
ももきぎ
)
の
茂
(
しげ
)
みの
露
(
つゆ
)
のかたまりて
062
この
速川
(
はやかは
)
となりにけるかも
063
川幅
(
かははば
)
は
広
(
ひろ
)
く
水底
(
みなそこ
)
深
(
ふか
)
くして
064
流
(
なが
)
れ
急
(
せは
)
しき
駒井
(
こまゐ
)
の
滝津瀬
(
たきつせ
)
065
岸
(
きし
)
の
辺
(
べ
)
の
木々
(
きぎ
)
の
梢
(
こずゑ
)
に
鶯
(
うぐひす
)
は
066
春
(
はる
)
を
歌
(
うた
)
へど
吾
(
わが
)
魂
(
たま
)
寒
(
さむ
)
し
067
庭躑躅
(
にはつつじ
)
岸辺
(
きしべ
)
に
匂
(
にほ
)
ひて
水底
(
みなそこ
)
に
068
赤
(
あか
)
白
(
しろ
)
紫
(
むらさき
)
の
花
(
はな
)
を
写
(
うつ
)
せり
069
滝津瀬
(
たきつせ
)
の
音
(
おと
)
高々
(
たかだか
)
と
夜
(
よ
)
もすがら
070
響
(
ひび
)
かひながら
月
(
つき
)
を
流
(
なが
)
せり
071
朝
(
あさ
)
されば
天津
(
あまつ
)
日
(
ひ
)
流
(
なが
)
れ
夕
(
ゆふ
)
されば
072
月
(
つき
)
の
流
(
なが
)
れる
駒井
(
こまゐ
)
の
川水
(
かはみづ
)
』
073
シウランは
歌
(
うた
)
ふ。
074
『
七日
(
なぬか
)
七夜
(
ななよ
)
禊
(
みそぎ
)
の
業
(
わざ
)
も
甲斐
(
かひ
)
なくて
075
百日
(
ももか
)
の
禊
(
みそぎ
)
を
此処
(
ここ
)
にするかも
076
吾
(
わが
)
魂
(
たま
)
は
十重
(
とへ
)
に
二十重
(
はたへ
)
に
汚
(
けが
)
れしか
077
月見
(
つきみ
)
の
池
(
いけ
)
の
水
(
みづ
)
にも
洗
(
あら
)
へず
078
速川
(
はやかは
)
の
流
(
なが
)
れをあびて
吾
(
わが
)
魂
(
たま
)
は
079
軍
(
いくさ
)
の
司
(
つかさ
)
と
仕
(
つか
)
へ
得
(
う
)
べけむ
080
今日
(
けふ
)
よりは
猛
(
たけ
)
き
心
(
こころ
)
を
洗
(
あら
)
ひ
去
(
さ
)
り
081
言霊軍
(
ことたまいくさ
)
の
司
(
つかさ
)
とならばや
082
岸
(
きし
)
の
辺
(
べ
)
に
清
(
すが
)
しく
鳴
(
な
)
ける
河鹿
(
かはしか
)
の
083
声
(
こゑ
)
は
水面
(
みのも
)
に
慄
(
ふる
)
へて
流
(
なが
)
るる
084
夜昼
(
よるひる
)
の
差別
(
けぢめ
)
もあらず
清
(
すが
)
しかる
085
言霊
(
ことたま
)
宣
(
の
)
れる
天晴
(
あは
)
れ
河鹿
(
かじか
)
よ
086
河鹿
(
かじか
)
にも
劣
(
おと
)
れる
醜
(
しこ
)
の
言霊
(
ことたま
)
を
087
持
(
も
)
てる
吾
(
わが
)
身
(
み
)
の
愧
(
はづ
)
かしき
哉
(
かな
)
088
夜昼
(
よるひる
)
を
河鹿
(
かじか
)
は
駒井
(
こまゐ
)
の
川水
(
かはみづ
)
に
089
洗
(
あら
)
ひて
言霊
(
ことたま
)
澄
(
す
)
みたりにけむ
090
桃
(
もも
)
桜
(
さくら
)
匂
(
にほ
)
へる
花
(
はな
)
のあかあかと
091
水
(
みづ
)
にうつろふ
春
(
はる
)
は
長閑
(
のど
)
けし
092
速川
(
はやかは
)
の
瀬筋
(
せすぢ
)
流
(
なが
)
るる
桜花
(
さくらばな
)
は
093
何処
(
いづく
)
の
海
(
うみ
)
に
息所
(
やすど
)
を
定
(
さだ
)
めむ
094
吾
(
わが
)
心
(
こころ
)
瀬筋
(
せすぢ
)
流
(
なが
)
るる
花
(
はな
)
の
如
(
ごと
)
095
果
(
はて
)
しも
知
(
し
)
らずなりにけりしな
096
水
(
みづ
)
冷
(
ひ
)
ゆる
此
(
こ
)
の
谷川
(
たにがは
)
に
禊
(
みそぎ
)
して
097
蘇
(
よみがへ
)
らさむ
吾
(
わが
)
魂
(
たましひ
)
を
098
月光山
(
つきみつやま
)
新
(
あらた
)
に
建
(
た
)
てし
宮内
(
みやうち
)
に
099
神
(
かみ
)
や
天降
(
あも
)
らすを
待
(
ま
)
つ
禊
(
みそぎ
)
なり
100
一度
(
ひとたび
)
は
天降
(
あも
)
りましたる
主
(
ス
)
の
神
(
かみ
)
の
101
汚
(
けが
)
れを
忌
(
い
)
みて
帰
(
かへ
)
りましける
102
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に
神
(
かみ
)
の
守
(
まも
)
りのなかりせば
103
片時
(
かたとき
)
だにも
生命
(
いのち
)
保
(
たも
)
てじ
104
谷々
(
たにだに
)
を
縫
(
ぬ
)
ひて
流
(
なが
)
るる
速川
(
はやかは
)
の
105
水瀬
(
みなせ
)
の
水
(
みづ
)
は
冷
(
ひ
)
え
渡
(
わた
)
りけり
106
川水
(
かはみづ
)
はよし
冷
(
ひ
)
ゆるとも
百日日
(
ももかひ
)
は
107
この
川中
(
かはなか
)
に
立
(
た
)
ちて
禊
(
そそ
)
がむ
108
玉
(
たま
)
の
緒
(
を
)
の
生命
(
いのち
)
消
(
き
)
ゆると
思
(
おも
)
ふまで
109
冷
(
ひ
)
え
渡
(
わた
)
るなり
駒井
(
こまゐ
)
の
流
(
なが
)
れは』
110
左守
(
さもり
)
のナーマンは
歌
(
うた
)
ふ。
111
『
吾
(
わが
)
王
(
きみ
)
の
御後
(
みあと
)
に
従
(
したが
)
ひ
来
(
き
)
て
見
(
み
)
れば
112
駒井
(
こまゐ
)
の
禊
(
みそぎ
)
は
冷
(
ひ
)
え
渡
(
わた
)
るなり
113
冷
(
ひ
)
ゆるとも
何
(
なに
)
か
恐
(
おそ
)
れむ
王
(
きみ
)
のため
114
御国
(
みくに
)
の
為
(
ため
)
と
思
(
おも
)
へば
安
(
やす
)
し
115
王
(
きみ
)
の
為
(
ため
)
国
(
くに
)
の
為
(
ため
)
にはあらずして
116
吾
(
わが
)
魂
(
たましひ
)
を
清
(
きよ
)
むる
為
(
ため
)
なり
117
吾
(
わが
)
魂
(
たま
)
の
汚
(
けが
)
れ
全
(
まつた
)
く
清
(
きよ
)
まらば
118
国
(
くに
)
と
王
(
きみ
)
との
為
(
ため
)
となるべし
119
吾
(
わが
)
魂
(
たま
)
の
曇
(
くも
)
りし
故
(
ゆゑ
)
に
吾
(
わが
)
王
(
きみ
)
を
120
月光山
(
つきみつやま
)
に
忍
(
しの
)
ばせ
奉
(
まつ
)
るも
121
思
(
おも
)
ひ
見
(
み
)
ればさも
恐
(
おそ
)
ろしき
吾
(
われ
)
なるよ
122
王
(
きみ
)
を
悩
(
なや
)
ませ
国
(
くに
)
失
(
うしな
)
ひて
123
祭政
(
さいせい
)
一致
(
いつち
)
この
大道
(
だいだう
)
を
忘
(
わす
)
れしゆ
124
イドムの
国
(
くに
)
は
覆
(
くつが
)
へりたり
125
政治
(
まつりごと
)
なさむと
思
(
おも
)
へば
身体
(
からたま
)
も
126
霊魂
(
みたま
)
も
共
(
とも
)
に
清
(
きよ
)
むべきなり
127
主
(
ス
)
の
神
(
かみ
)
の
生
(
う
)
ませ
給
(
たま
)
ひし
国原
(
くにはら
)
に
128
禊
(
みそぎ
)
なくして
生命
(
いのち
)
保
(
たも
)
たむ
129
玉
(
たま
)
の
緒
(
を
)
の
生命
(
いのち
)
は
神
(
かみ
)
の
賜物
(
たまもの
)
と
130
思
(
おも
)
ひて
禊
(
みそぎ
)
の
業
(
わざ
)
にいそしむ
131
政治
(
まつりごと
)
なさむと
思
(
おも
)
へば
真先
(
まつさき
)
に
132
禊
(
みそぎ
)
の
祓
(
はら
)
ひ
勤
(
つと
)
むべきなり
133
主
(
ス
)
の
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐ
)
みを
忘
(
わす
)
れ
吾
(
わが
)
力
(
ちから
)
に
134
国
(
くに
)
治
(
をさ
)
むると
誤
(
あやま
)
りてゐし
135
誤
(
あやま
)
てる
心
(
こころ
)
抱
(
いだ
)
きて
政治
(
まつりごと
)
136
如何
(
いか
)
になすとも
治
(
をさ
)
まるべしやは
137
政治
(
まつりごと
)
は
第一
(
だいいち
)
神
(
かみ
)
を
祀
(
まつ
)
ることよ
138
神
(
かみ
)
の
御国
(
みくに
)
は
神
(
かみ
)
の
任意
(
まま
)
なり
139
百
(
ひやく
)
日
(
にち
)
の
禊
(
みそぎ
)
終
(
をは
)
れば
村肝
(
むらきも
)
の
140
心
(
こころ
)
改
(
あらた
)
めて
王事
(
わうじ
)
に
仕
(
つか
)
へむ
141
言霊
(
ことたま
)
の
剣
(
つるぎ
)
を
右手
(
めて
)
に
振
(
ふ
)
りかざし
142
王
(
きみ
)
が
政治
(
まつり
)
を
補
(
たす
)
け
奉
(
まつ
)
らむ
143
滔々
(
たうたう
)
と
流
(
なが
)
るる
水
(
みづ
)
の
瀬
(
せ
)
をはやみ
144
行方
(
ゆくへ
)
を
知
(
し
)
らぬ
駒井
(
こまゐ
)
の
川
(
かは
)
かな
145
月光山
(
つきみつやま
)
峯
(
みね
)
より
落
(
お
)
つる
木々
(
きぎ
)
の
葉
(
は
)
の
146
露
(
つゆ
)
は
集
(
つど
)
ひて
川
(
かは
)
となりしか
147
一
(
いち
)
人
(
にん
)
の
露
(
つゆ
)
の
力
(
ちから
)
も
重
(
かさ
)
なれば
148
末
(
すゑ
)
に
誠
(
まこと
)
の
川
(
かは
)
となるべし』
149
ターマンは
歌
(
うた
)
ふ。
150
『
春霞
(
はるがすみ
)
棚引
(
たなび
)
きそむる
谷間
(
たにあひ
)
に
151
吾
(
われ
)
は
謹
(
つつし
)
み
禊
(
みそぎ
)
するかも
152
巌
(
いは
)
を
噛
(
か
)
み
流
(
なが
)
るる
水
(
みづ
)
の
音
(
おと
)
高
(
たか
)
く
153
生言霊
(
いくことたま
)
を
非時
(
ときじく
)
歌
(
うた
)
ふ
154
巌
(
いは
)
を
打
(
う
)
つ
速瀬
(
はやせ
)
の
水
(
みづ
)
の
響
(
ひびき
)
さへ
155
心
(
こころ
)
にかかる
国
(
くに
)
の
行末
(
ゆくすゑ
)
156
王
(
きみ
)
思
(
おも
)
ひ
国
(
くに
)
を
思
(
おも
)
ひて
月光
(
つきみつ
)
の
157
山
(
やま
)
に
朝夕
(
あさゆふ
)
詣
(
まう
)
でけるかな
158
汚
(
けが
)
れたる
吾
(
わが
)
身体
(
からたま
)
を
主
(
ス
)
の
神
(
かみ
)
の
159
御前
(
みまへ
)
に
運
(
はこ
)
ぶと
思
(
おも
)
へば
恐
(
おそ
)
ろし
160
山
(
やま
)
は
裂
(
さ
)
け
海
(
うみ
)
はあせなむ
世
(
よ
)
ありとも
161
誠
(
まこと
)
の
道
(
みち
)
は
踏
(
ふ
)
み
外
(
はづ
)
すまじ
162
速川
(
はやかは
)
の
水
(
みづ
)
に
浸
(
ひた
)
れば
自
(
おのづか
)
ら
163
吾
(
わが
)
魂
(
たましひ
)
は
清
(
きよ
)
まる
心地
(
ここち
)
す
164
主
(
ス
)
の
神
(
かみ
)
の
誠
(
まこと
)
の
道
(
みち
)
をあゆめども
165
禊
(
みそぎ
)
の
業
(
わざ
)
は
始
(
はじ
)
めなりけり
166
天地
(
あめつち
)
の
雲霧
(
くもきり
)
汚
(
けが
)
れも
払
(
はら
)
ふべし
167
禊
(
みそぎ
)
の
道
(
みち
)
の
功
(
いさを
)
ありせば』
168
かく
神々
(
かみがみ
)
等
(
たち
)
は
禊
(
みそぎ
)
に
余念
(
よねん
)
なき
折
(
をり
)
もあれ、
169
上流
(
じやうりう
)
より
生命
(
いのち
)
を
助
(
たす
)
けて
呉
(
く
)
れいと
死物狂
(
しにものぐる
)
ひに
叫
(
さけ
)
びつつ
半死
(
はんし
)
半生
(
はんしやう
)
の
体
(
てい
)
となり、
170
彼方
(
あちら
)
此方
(
こちら
)
の
巌
(
いは
)
に
頭
(
あたま
)
を
打
(
う
)
ちつけながら、
171
全身
(
ぜんしん
)
紅
(
あけ
)
に
染
(
そ
)
みつつ
流
(
なが
)
れ
来
(
きた
)
る
一人
(
ひとり
)
の
男
(
をとこ
)
あり。
172
禊
(
みそぎ
)
に
余念
(
よねん
)
なかりしアヅミ
王
(
わう
)
は
目
(
め
)
ざとくも
打
(
う
)
ち
見
(
み
)
やれば、
173
豈計
(
あにはか
)
らむや、
174
日頃
(
ひごろ
)
敵
(
てき
)
とねらひしエールス
王
(
わう
)
の
無残
(
むざん
)
なる
姿
(
すがた
)
なりけるにぞ、
175
アヅミ
王
(
わう
)
は
吾
(
わが
)
身
(
み
)
の
危険
(
きけん
)
を
忘
(
わす
)
れて
激流
(
げきりう
)
に
飛
(
と
)
び
込
(
こ
)
み、
176
半死
(
はんし
)
半生
(
はんしやう
)
のエールス
王
(
わう
)
を
脇
(
わき
)
に
抱
(
かか
)
へ
下流
(
かりう
)
の
稍
(
やや
)
水瀬
(
みなせ
)
弱
(
よわ
)
き
処
(
ところ
)
へ
救
(
すく
)
ひ
来
(
きた
)
り、
177
川
(
かは
)
の
洲
(
す
)
へ
救
(
すく
)
ひ
上
(
あ
)
げ、
178
水
(
みづ
)
を
吐
(
は
)
かせ
種々
(
しゆじゆ
)
様々
(
さまざま
)
と
介抱
(
かいはう
)
なしける。
179
シウランを
始
(
はじ
)
めナーマン、
180
ターマン、
181
ムラジ
姫
(
ひめ
)
も、
182
何人
(
なんびと
)
ならむと
速瀬
(
はやせ
)
を
横切
(
よこぎ
)
り
近付
(
ちかづ
)
き
見
(
み
)
れば、
183
吾
(
わが
)
本城
(
ほんじやう
)
を
攻
(
せ
)
め
落
(
おと
)
したるエールスなりければ、
184
怨
(
うら
)
みを
晴
(
は
)
らし、
185
城
(
しろ
)
を
取返
(
とりかへ
)
さむは
此
(
こ
)
の
時
(
とき
)
なりと
集
(
あつま
)
り
来
(
きた
)
り、
186
荒石
(
あらいし
)
を
掴
(
つか
)
んで
打
(
う
)
ち
殺
(
ころ
)
さむといきまき
居
(
ゐ
)
る。
187
ムラジ
姫
(
ひめ
)
は
声
(
こゑ
)
高
(
たか
)
らかに
歌
(
うた
)
ふ。
188
『
我国
(
わがくに
)
に
仇
(
あだ
)
を
為
(
な
)
したるエールスの
189
司
(
つかさ
)
の
知死期
(
ちしご
)
心地
(
ここち
)
よきかな』
190
ナーマンは
歌
(
うた
)
ふ。
191
『
吾
(
わが
)
王
(
きみ
)
を
悩
(
なや
)
まし
奉
(
まつ
)
りし
仇
(
あだ
)
なれば
192
神
(
かみ
)
の
罰
(
きため
)
にあひしなるらむ
193
今
(
いま
)
こそは
天
(
てん
)
の
与
(
あた
)
へよ
首
(
くび
)
打
(
う
)
ちて
194
イドムの
城
(
しろ
)
を
奪
(
うば
)
ひ
還
(
かへ
)
さむ』
195
ターマンは
歌
(
うた
)
ふ。
196
『
荒川
(
あらかは
)
に
禊
(
みそぎ
)
なしたる
報
(
むく
)
いにて
197
仇
(
あだ
)
は
吾手
(
わがて
)
に
入
(
い
)
りにけるかも
198
川
(
かは
)
の
瀬
(
せ
)
の
石
(
いし
)
を
拾
(
ひろ
)
ひて
此
(
こ
)
の
仇
(
あだ
)
を
199
打
(
う
)
ちて
殺
(
ころ
)
さむ
面白
(
おもしろ
)
きかな』
200
アヅミ
王
(
わう
)
は
右手
(
みぎて
)
を
差
(
さ
)
し
上
(
あ
)
げ、
201
空中
(
くうちう
)
を
押
(
おさ
)
へる
如
(
ごと
)
き
体
(
てい
)
をしながら、
202
『
待
(
ま
)
て
暫
(
しば
)
しエールス
王
(
わう
)
も
主
(
ス
)
の
神
(
かみ
)
の
203
貴
(
うづ
)
の
御子
(
みこ
)
なりただに
許
(
ゆる
)
せよ
204
吾
(
わが
)
御霊
(
みたま
)
神
(
かみ
)
に
離
(
はな
)
れし
罪
(
つみ
)
なれば
205
エールス
王
(
わう
)
を
怨
(
うら
)
むに
及
(
およ
)
ばじ』
206
エールス
王
(
わう
)
は
稍
(
やや
)
正気付
(
しやうきづ
)
き、
207
四辺
(
あたり
)
をキヨロキヨロ
見廻
(
みまは
)
しながら、
208
アヅミ
王
(
わう
)
の
吾
(
わが
)
前
(
まへ
)
に
立
(
た
)
ち
介抱
(
かいはう
)
せるを
見
(
み
)
て、
209
声
(
こゑ
)
高
(
たか
)
らかに
笑
(
わら
)
ひ
歌
(
うた
)
ふ。
210
『
吾
(
わが
)
生命
(
いのち
)
何故
(
なにゆゑ
)
ならば
助
(
たす
)
けしぞ
211
吾
(
わが
)
荒行
(
あらぎやう
)
をよぎらむとするか
212
吾
(
われ
)
こそはエールス
王
(
わう
)
よ
腰
(
こし
)
弱
(
よわ
)
き
213
汝
(
なれ
)
に
救
(
すく
)
はれ
顔
(
かほ
)
の
立
(
た
)
つべき』
214
ムラジ
姫
(
ひめ
)
は
目
(
め
)
を
釣
(
つ
)
り
上
(
あ
)
げて
歌
(
うた
)
ふ。
215
『
心
(
こころ
)
弱
(
よわ
)
き
吾
(
わが
)
王
(
きみ
)
なるかもイドム
城
(
じやう
)
216
奪
(
うば
)
ひし
仇
(
あだ
)
を
許
(
ゆる
)
し
給
(
たま
)
ふか
217
生命
(
いのち
)
をば
救
(
すく
)
はれ
彼
(
かれ
)
は
逆
(
さか
)
しまに
218
譏
(
そし
)
り
散
(
ち
)
らせり
許
(
ゆる
)
し
給
(
たま
)
ふな』
219
アヅミ
王
(
わう
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
220
『
悪
(
にく
)
らしと
日頃
(
ひごろ
)
思
(
おも
)
ひし
仇
(
あだ
)
ながら
221
艱
(
なや
)
める
見
(
み
)
れば
助
(
たす
)
けたくなりぬ
222
とに
角
(
かく
)
に
仇
(
あだ
)
の
艱
(
なや
)
みにつけ
入
(
い
)
りて
223
報
(
むく
)
ゆる
心
(
こころ
)
は
愧
(
は
)
づべきものぞや
224
堂々
(
だうだう
)
と
表
(
おもて
)
に
立
(
た
)
ちて
戦
(
たたか
)
はむ
225
されど
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
は
弓矢
(
ゆみや
)
の
要
(
えう
)
なし
226
主
(
ス
)
の
神
(
かみ
)
の
生言霊
(
いくことたま
)
を
振
(
ふ
)
りかざし
227
仇
(
あだ
)
を
言向
(
ことむ
)
け
和
(
やは
)
さむと
思
(
おも
)
ふ』
228
ナーマンは
歌
(
うた
)
ふ。
229
『
吾
(
わが
)
王
(
きみ
)
の
仰
(
おほ
)
せ
宜
(
うべ
)
よと
思
(
おも
)
へども
230
悪
(
にく
)
き
仇
(
あだ
)
をば
許
(
ゆる
)
すべきやは
231
玉
(
たま
)
の
緒
(
を
)
の
生命
(
いのち
)
救
(
すく
)
はれ
譏
(
そし
)
り
言
(
ごと
)
232
吐
(
は
)
くこの
仇
(
あだ
)
を
如何
(
いか
)
で
許
(
ゆる
)
さむ』
233
ターマンは
歌
(
うた
)
ふ。
234
『
主
(
ス
)
の
神
(
かみ
)
の
悪
(
にく
)
しみに
依
(
よ
)
りて
玉
(
たま
)
の
緒
(
を
)
の
235
生命
(
いのち
)
危
(
あやふ
)
き
汝
(
なれ
)
にあらずや
236
救
(
すく
)
はれて
荒
(
あら
)
き
言葉
(
ことば
)
を
吐
(
は
)
き
散
(
ち
)
らす
237
汝
(
なれ
)
は
誠
(
まこと
)
の
曲津
(
まがつ
)
神
(
かみ
)
なり
238
いざさらば
石
(
いし
)
もて
打
(
う
)
たむエールスの
239
玉
(
たま
)
の
生命
(
いのち
)
の
消
(
き
)
ゆる
処
(
とこ
)
まで』
240
茲
(
ここ
)
にアヅミ
王
(
わう
)
はエールス
王
(
わう
)
の
生命
(
いのち
)
を
救
(
すく
)
へよと
頻
(
しき
)
りに
厳命
(
げんめい
)
すれども、
241
怨
(
うら
)
み
骨髄
(
こつずい
)
に
徹
(
てつ
)
したる
他
(
た
)
の
司
(
つかさ
)
等
(
たち
)
は、
242
この
機会
(
きくわい
)
に
打殺
(
うちころ
)
さむと
四方
(
しはう
)
八方
(
はつぱう
)
より
石
(
いし
)
を
拾
(
ひろ
)
つて
投
(
な
)
げつけければ、
243
不思議
(
ふしぎ
)
やエールスの
姿
(
すがた
)
は
水煙
(
みづけむり
)
となりて
水中
(
すいちう
)
に
消
(
き
)
えにける。
244
アヅミ
王
(
わう
)
を
始
(
はじ
)
め
一行
(
いつかう
)
禊
(
みそぎ
)
の
面々
(
めんめん
)
は
此
(
こ
)
の
体
(
てい
)
を
見
(
み
)
て
不思議
(
ふしぎ
)
の
念
(
ねん
)
に
堪
(
た
)
へやらず、
245
茫然
(
ばうぜん
)
として
水中
(
すいちう
)
を
見詰
(
みつ
)
めけるが、
246
胴
(
どう
)
の
廻
(
まは
)
り
七八丈
(
しちはちぢやう
)
もあらむかと
思
(
おも
)
はるる
蛟竜
(
かうりう
)
、
247
大口
(
おほぐち
)
を
開
(
ひら
)
き
紅
(
あか
)
き
舌
(
した
)
を
吐
(
は
)
き
出
(
だ
)
しながら、
248
一行
(
いつかう
)
の
頭上
(
づじやう
)
に
鎌首
(
かまくび
)
を
立
(
た
)
て、
249
一呑
(
ひとの
)
みにせむず
勢
(
いきほひ
)
を
示
(
しめ
)
しける。
250
茲
(
ここ
)
にアヅミ
王
(
わう
)
は
従容
(
しようよう
)
として
少
(
すこ
)
しも
騒
(
さわ
)
がず、
251
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
狼狽
(
らうばい
)
せる
姿
(
すがた
)
を
静
(
しづ
)
かに
眺
(
なが
)
めながら、
252
『
一
(
ひと
)
二
(
ふた
)
三
(
み
)
四
(
よ
)
五
(
いつ
)
六
(
むゆ
)
七
(
なな
)
八
(
や
)
九
(
ここの
)
十
(
たり
)
百
(
もも
)
千
(
ち
)
万
(
よろづ
)
』
253
と
歌
(
うた
)
ひ
行
(
ゆ
)
くにつれ、
254
蛟竜
(
かうりう
)
の
姿
(
すがた
)
は
次第
(
しだい
)
々々
(
しだい
)
に
細
(
ほそ
)
り
行
(
ゆ
)
きて、
255
終
(
つひ
)
には
小
(
ちひ
)
さき
蠑螈
(
いもり
)
となり、
256
アヅミ
王
(
わう
)
の
足許
(
あしもと
)
に
這
(
は
)
ひ
寄
(
よ
)
り
来
(
きた
)
る。
257
アヅミ
王
(
わう
)
は
蠑螈
(
いもり
)
を
掌
(
てのひら
)
に
載
(
の
)
せ、
258
再
(
ふたた
)
び
天
(
あま
)
の
数歌
(
かずうた
)
を
宣
(
の
)
りければ、
259
掌
(
てのひら
)
よりシユーシユーと
煙
(
けむり
)
立
(
た
)
ち
昇
(
のぼ
)
り、
260
見
(
み
)
る
見
(
み
)
る
天
(
てん
)
に
冲
(
ちう
)
し、
261
煙
(
けむり
)
の
中
(
なか
)
より
仄
(
ほの
)
かに
見
(
み
)
ゆる
竜
(
りう
)
の
姿
(
すがた
)
以前
(
いぜん
)
に
優
(
まさ
)
る
巨体
(
きよたい
)
なりける。
262
何処
(
いづく
)
ともなく
神
(
かみ
)
の
声
(
こゑ
)
あり、
263
雷
(
いかづち
)
の
如
(
ごと
)
く
響
(
ひび
)
き
来
(
きた
)
る。
264
『
美
(
うつく
)
しきアヅミの
王
(
きみ
)
の
魂
(
たましひ
)
を
265
主
(
ス
)
の
大神
(
おほかみ
)
は
諾
(
うべな
)
ひ
給
(
たま
)
へり
266
汝
(
な
)
が
心
(
こころ
)
清
(
きよ
)
まりぬれば
百
(
ひやく
)
日
(
にち
)
の
267
禊
(
みそぎ
)
は
済
(
す
)
みぬはや
帰
(
かへ
)
りませよ
268
吾
(
われ
)
こそは
高日
(
たかひ
)
の
宮
(
みや
)
より
天降
(
あも
)
りたる
269
神鉾神
(
かみほこがみ
)
ぞ
心
(
こころ
)
安
(
やす
)
かれ』
270
アヅミ
王
(
わう
)
は
恭
(
うやうや
)
しく
歌
(
うた
)
ふ。
271
『
有難
(
ありがた
)
し
吾
(
わが
)
魂
(
たましひ
)
をみそなはす
272
神
(
かみ
)
の
言葉
(
ことば
)
に
蘇
(
よみがへ
)
りたり』
273
空中
(
くうちう
)
より
再
(
ふたた
)
び
神
(
かみ
)
の声あり。
274
『
高光
(
たかみつ
)
の
山
(
やま
)
の
尾
(
を
)
の
上
(
へ
)
の
神苑
(
かみぞの
)
に
275
神鉾
(
かみほこ
)
の
神
(
かみ
)
御霊
(
みたま
)
とどめむ
276
アヅミ
王
(
わう
)
は
神
(
かみ
)
の
御殿
(
みとの
)
に
仕
(
つか
)
へつつ
277
イドムの
国
(
くに
)
の
基
(
もとゐ
)
を
定
(
さだ
)
めよ
278
ムラジ
姫
(
ひめ
)
の
心
(
こころ
)
は
未
(
いま
)
だ
汚
(
けが
)
れたり
279
百日
(
ももか
)
の
禊
(
みそぎ
)
の
功
(
いさを
)
は
消
(
き
)
えたり
280
シウランやナーマン、ターマン
三柱
(
みはしら
)
の
281
禊
(
みそぎ
)
は
水
(
みづ
)
の
泡
(
あわ
)
となりけり
282
改
(
あらた
)
めて
百日
(
ももか
)
の
禊
(
みそぎ
)
に
仕
(
つか
)
ふべし
283
月光山
(
つきみつやま
)
は
聖所
(
すがど
)
なりせば』
284
茲
(
ここ
)
にアヅミ
王
(
わう
)
は
三日
(
みつか
)
の
禊
(
みそぎ
)
にて
許
(
ゆる
)
され、
285
月光山
(
つきみつやま
)
の
神殿
(
しんでん
)
に
奉仕
(
ほうし
)
し、
286
国政
(
こくせい
)
を
見
(
み
)
る
事
(
こと
)
となり、
287
ムラジ
姫
(
ひめ
)
以下
(
いか
)
は
改
(
あらた
)
めて
百日
(
ももか
)
百夜
(
ももよ
)
の
荒行
(
あらぎやう
)
を
命
(
めい
)
ぜられ、
288
月光山
(
つきみつやま
)
の
神殿
(
しんでん
)
及
(
およ
)
び
政務
(
せいむ
)
に
仕
(
つか
)
ふることを
許
(
ゆる
)
されにける。
289
(
昭和九・八・四
旧六・二四
於伊豆別院
森良仁
謹録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
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【第5章 心の禊|第81巻|天祥地瑞|霊界物語|/rm8105】
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