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霊界物語
天祥地瑞(第73~81巻)
第81巻(申の巻)
総説
第1篇 伊佐子の島
第1章 イドム戦
第2章 月光山
第3章 月見の池
第4章 遷座式
第5章 心の禊
第6章 月見の宴
第2篇 イドムの嵐
第7章 月音し
第8章 人魚の勝利
第9章 維新の叫び
第10章 復古運動
第3篇 木田山城
第11章 五月闇
第12章 木田山颪
第13章 思ひの掛川
第14章 鷺と烏
第15章 厚顔無恥
第4篇 猛獣思想
第16章 亀神の救ひ
第17章 再生再会
第18章 蠑螈の精
第19章 悪魔の滅亡
第20章 悔悟の花
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>
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第81巻(申の巻)
> 第2篇 イドムの嵐 > 第8章 人魚の勝利
<<< 月音し
(B)
(N)
維新の叫び >>>
第八章
人魚
(
にんぎよ
)
の
勝利
(
しようり
)
〔二〇三五〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第81巻 天祥地瑞 申の巻
篇:
第2篇 イドムの嵐
よみ(新仮名遣い):
いどむのあらし
章:
第8章 人魚の勝利
よみ(新仮名遣い):
にんぎょのしょうり
通し章番号:
2035
口述日:
1934(昭和9)年08月05日(旧06月25日)
口述場所:
伊豆別院
筆録者:
白石恵子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1934(昭和9)年12月30日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
大栄山の南面にある真珠の湖には多くの人魚が生息していた。人魚たちは湖の東西南北に人魚郷を作って平和に暮らしていたが、イドム王の部下が襲来して人魚の乙女を捕らえて行く事件がたびたび起こっていた。
そこで、国津神たちの襲来を防ぐために空き地に鋭くとがった貝殻を敷き詰めるなど、防衛線を敷いて警戒する態勢になっていた。
あるとき、東西南北の各人魚郷の酋長たちは、湖の中央にある真珠島に集まり、協議をこらしていた。
イドム国が戦に破れて、サール国に城を奪われたニュースは人魚たちの下にも届いていた。人魚たちは、サール国王エールスが荒々しい気性の持ち主であると聞いていたので、必ずやイドム国にも増して、人魚の乙女を捕らえに兵隊を遣わしてくるだろうと予測していたのである。
酋長たちは協議の結果、サール国の兵隊が来たら、岸に山が迫っていて険しい北郷にすべての人魚を避難させ、敵を迎え撃つ作戦を練った。
折りしも、サール国女王となったサックスは早速、数百の騎士を従えて大栄山に登ってくると、人魚を捕獲しようと真珠の湖に迫ってきた。
東西南北の酋長たちは、さっそく人魚たちに知らせを出して、全員を北郷に避難させた。酋長たちは、真珠島の岩頭に立って、サール国の騎士たちを待ち構えていた。
サールの騎士たちは東、西、南の人魚郷を目指して馬に乗ったまま湖に飛び込み襲ってきたが、一人の人魚も見つけることができず、泳ぎ着かれて溺れ死ぬ馬が続出した。
サックス女王は一度岸に引き返し、丸木舟を作って湖の奥に進む作戦に変更した。真珠島に上陸して人魚の酋長を捕らえ、人魚たちの隠れ家を自白させようとしたのである。
しかし、丸木舟が真珠島に近寄ってくるやいなや、酋長たちは島の断崖の上から、いっせいに真珠の岩を岩石落としに投げつけた。
あわれ、女王をはじめ従軍していた左守チクター、数多の騎士たちは舟もろとも湖中に沈没し、水の藻屑と消え去ってしまった。これ以降、真珠の湖を侵して人魚を攻めようとする者もなく、ここは神仙郷として人魚たちは栄えることとなった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm8108
愛善世界社版:
八幡書店版:
第14輯 467頁
修補版:
校定版:
167頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001
大栄山
(
おほさかやま
)
の
南面
(
なんめん
)
の
中腹
(
ちうふく
)
には
広
(
ひろ
)
き
平地
(
へいち
)
ありて、
002
東西
(
とうざい
)
二十
(
にじふ
)
里
(
り
)
、
003
南北
(
なんぼく
)
十
(
じふ
)
里
(
り
)
の
潮水
(
しほみづ
)
漂
(
ただよ
)
ひ、
004
真珠
(
しんじゆ
)
の
湖
(
うみ
)
と
称
(
たた
)
へられて
居
(
ゐ
)
る。
005
此
(
こ
)
の
湖水
(
こすい
)
の
周囲
(
しうゐ
)
には
数多
(
あまた
)
の
人魚
(
にんぎよ
)
棲
(
す
)
み、
006
殆
(
ほと
)
んど
国津
(
くにつ
)
神
(
かみ
)
と
同様
(
どうやう
)
の
生活
(
せいくわつ
)
を
為
(
な
)
し、
007
よく
物
(
もの
)
を
言
(
い
)
ひ、
008
人魚郷
(
にんぎよきやう
)
をつくりて、
009
南
(
みなみ
)
にあるを
南郷
(
なんきやう
)
と
言
(
い
)
ひ、
010
北
(
きた
)
にあるを
北郷
(
ほくきやう
)
と
言
(
い
)
ひ、
011
東
(
ひがし
)
にあるを
東郷
(
とうきやう
)
と
称
(
しよう
)
し、
012
西
(
にし
)
を
西郷
(
せいきやう
)
と
称
(
とな
)
へ、
013
人魚
(
にんぎよ
)
の
群
(
むれ
)
は
此
(
こ
)
の
湖水
(
こすい
)
を
永久
(
とこしへ
)
の
棲処
(
すみか
)
として、
014
魚貝
(
ぎよかひ
)
を
餌食
(
ゑじき
)
とし、
015
他
(
た
)
よりの
国津
(
くにつ
)
神
(
かみ
)
の
侵入
(
しんにふ
)
を
防
(
ふせ
)
ぎ、
016
天地
(
てんち
)
の
恩沢
(
おんたく
)
を
楽
(
たの
)
しみ
居
(
ゐ
)
たりける。
017
かかる
平和
(
へいわ
)
の
神仙郷
(
しんせんきやう
)
も、
018
時々
(
ときどき
)
イドム
王
(
わう
)
の
部下
(
ぶか
)
襲来
(
しふらい
)
し
来
(
きた
)
りて、
019
人魚
(
にんぎよ
)
の
乙女
(
をとめ
)
を
捕
(
とら
)
へ
去
(
さ
)
る
事
(
こと
)
一再
(
いつさい
)
ならざりければ、
020
茲
(
ここ
)
に
人魚
(
にんぎよ
)
の
王
(
わう
)
は
首
(
くび
)
を
鳩
(
あつ
)
めて
協議
(
けふぎ
)
を
凝
(
こ
)
らし、
021
国津
(
くにつ
)
神
(
かみ
)
の
襲来
(
しふらい
)
に
備
(
そな
)
へむとして、
022
後先
(
あとさき
)
の
鋭
(
するど
)
く
尖
(
とが
)
りたる
貝殻
(
かひがら
)
を
空地
(
あきち
)
なくつきたて、
023
襲
(
おそ
)
ひ
来
(
きた
)
る
敵
(
てき
)
の
足
(
あし
)
を
傷
(
きず
)
つけむと
防禦線
(
ぼうぎよせん
)
を
張
(
は
)
り
居
(
ゐ
)
たりける。
024
或時
(
あるとき
)
人魚
(
にんぎよ
)
の
王
(
わう
)
は、
025
此
(
こ
)
の
湖水
(
こすい
)
の
中央
(
ちうあう
)
に
突出
(
とつしゆつ
)
せる
真珠島
(
しんじゆたう
)
に
集
(
あつま
)
りて、
026
湖面
(
こめん
)
に
浮
(
うか
)
ぶ
月
(
つき
)
を
眺
(
なが
)
めながら
一夜
(
いちや
)
を
明
(
あか
)
しつつ
互
(
たがひ
)
に
歌
(
うた
)
ふ。
027
東郷
(
とうきやう
)
の
酋長
(
しうちやう
)
春野
(
はるの
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
028
『
天地
(
あめつち
)
の
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐみ
)
に
生
(
な
)
り
出
(
い
)
でし
029
これの
湖水
(
こすい
)
は
永久
(
とは
)
の
苑
(
その
)
なり
030
大空
(
おほぞら
)
の
月
(
つき
)
を
浮
(
うか
)
べて
波
(
なみ
)
静
(
しづ
)
か
031
輝
(
かがや
)
く
湖
(
うみ
)
の
広
(
ひろ
)
くもあるかな
032
かくの
如
(
ごと
)
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
は
清
(
きよ
)
き
湖
(
みづうみ
)
に
033
人魚
(
にんぎよ
)
となりて
年
(
とし
)
ふりにけり
034
風
(
かぜ
)
吹
(
ふ
)
けど
雨
(
あめ
)
は
降
(
ふ
)
れども
此
(
こ
)
の
湖
(
うみ
)
は
035
波
(
なみ
)
の
秀
(
ほ
)
さへも
立
(
た
)
たぬ
静
(
しづ
)
けさ
036
春夏
(
はるなつ
)
の
眺
(
なが
)
め
妙
(
たへ
)
なる
此
(
こ
)
の
湖
(
うみ
)
に
037
大栄山
(
おほさかやま
)
の
錦
(
にしき
)
うつろふ
038
大栄山
(
おほさかやま
)
溪
(
たに
)
の
清水
(
しみづ
)
は
此
(
こ
)
の
湖
(
うみ
)
に
039
少
(
すこ
)
しも
入
(
い
)
らず
落
(
お
)
ちたぎつなり
040
此
(
こ
)
の
湖
(
うみ
)
は
竜宮海
(
りうぐうかい
)
に
続
(
つづ
)
けるか
041
湖水
(
こすい
)
ながらも
潮水
(
しほみづ
)
なりけり
042
不思議
(
ふしぎ
)
なるこれの
高処
(
たかど
)
に
潮
(
うしほ
)
湧
(
わ
)
く
043
湖水
(
こすい
)
は
神
(
かみ
)
の
賜物
(
たまもの
)
なるらむ
044
百年
(
ももとせ
)
をこの
湖
(
みづうみ
)
にやすらひて
045
思
(
おも
)
ふ
事
(
こと
)
なき
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
が
暮
(
くら
)
しよ
046
折々
(
をりをり
)
は
神仙郷
(
しんせんきやう
)
なる
此
(
こ
)
の
湖
(
うみ
)
に
047
襲
(
おそ
)
ひ
来
(
く
)
るなり
国津神
(
くにつかみ
)
等
(
ら
)
は
048
国津
(
くにつ
)
神
(
かみ
)
仮令
(
たとへ
)
幾万
(
いくまん
)
寄
(
よ
)
せ
来
(
く
)
とも
049
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
は
飽
(
あ
)
くまで
戦
(
たたか
)
はむかも
050
天津
(
あまつ
)
日
(
ひ
)
は
終日
(
ひねもす
)
輝
(
かがや
)
き
月舟
(
つきふね
)
は
051
終夜
(
よもすがら
)
照
(
て
)
る
真珠
(
しんじゆ
)
の
湖
(
うみ
)
よ』
052
南郷
(
なんきやう
)
の
酋長
(
しうちやう
)
夏草
(
なつぐさ
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
053
『
人
(
ひと
)
の
面
(
おも
)
持
(
も
)
てども
未
(
いま
)
だ
身体
(
からたま
)
は
054
浅
(
あさ
)
ましきかな
鱗
(
うろこ
)
覆
(
おほ
)
へば
055
さりながら
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐみ
)
に
抱
(
いだ
)
かれて
056
煩
(
わづら
)
ひもなくすむは
嬉
(
うれ
)
しき
057
安
(
やす
)
らかに
真珠
(
しんじゆ
)
の
湖
(
うみ
)
に
育
(
そだ
)
ちたる
058
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
は
悩
(
なや
)
み
知
(
し
)
らざりにけり
059
恐
(
おそ
)
ろしきイドムの
王
(
わう
)
の
手下
(
てした
)
等
(
ら
)
は
060
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
が
輩
(
やから
)
を
奪
(
うば
)
ひて
帰
(
かへ
)
るも
061
如何
(
いか
)
にして
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
が
仇
(
あだ
)
を
防
(
ふせ
)
がむと
062
朝
(
あさ
)
な
夕
(
ゆふ
)
なに
心
(
こころ
)
砕
(
くだ
)
くも
063
さりながら
此
(
こ
)
の
湖
(
みづうみ
)
は
深
(
ふか
)
ければ
064
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
は
水底
(
みそこ
)
潜
(
くぐ
)
りて
遁
(
のが
)
れむ
065
時折
(
ときをり
)
は
陸
(
くが
)
に
上
(
のぼ
)
りて
眠
(
ねむ
)
る
間
(
ま
)
を
066
忍
(
しの
)
び
来
(
きた
)
れる
仇
(
あだ
)
に
捕
(
とら
)
はる
067
明日
(
あす
)
よりは
人魚
(
にんぎよ
)
は
汀
(
みぎは
)
に
眠
(
ねむ
)
らずて
068
湖中
(
こちう
)
に
浮
(
うか
)
び
休
(
やす
)
らふべきかな
069
悠々
(
いういう
)
と
波
(
なみ
)
に
浮
(
うか
)
びて
魚族
(
うろくづ
)
を
070
食
(
く
)
ひて
生
(
い
)
くるは
恵
(
めぐみ
)
なりけり
071
天地
(
あめつち
)
の
恵
(
めぐみ
)
忘
(
わす
)
れし
輩
(
やから
)
のみ
072
生命
(
いのち
)
奪
(
うば
)
はれ
苦
(
くる
)
しむなるべし
073
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
とて
主
(
ス
)
の
大神
(
おほかみ
)
の
御賜物
(
みたまもの
)
074
神
(
かみ
)
は
必
(
かなら
)
ず
守
(
まも
)
りますらむ
075
イドム
城
(
じやう
)
はサールの
王
(
わう
)
の
現
(
あら
)
はれて
076
破
(
やぶ
)
れしと
聞
(
き
)
きぬ
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
が
敵
(
かたき
)
は
077
わが
輩
(
やから
)
の
真珠
(
しんじゆ
)
持
(
も
)
てりと
争
(
あらそ
)
ひて
078
此
(
こ
)
の
湖
(
みづうみ
)
に
忍
(
しの
)
び
来
(
く
)
るなり
079
サール
国
(
こく
)
のエールス
王
(
わう
)
は
心
(
こころ
)
荒
(
あら
)
き
080
神
(
かみ
)
とし
聞
(
き
)
けば
安
(
やす
)
からず
思
(
おも
)
ふ
081
兎
(
と
)
にもあれ
角
(
かく
)
にもあれや
波
(
なみ
)
の
上
(
へ
)
に
082
澄
(
す
)
む
月光
(
つきかげ
)
を
眺
(
なが
)
めて
明
(
あ
)
かさむ
083
月
(
つき
)
見
(
み
)
れば
歎
(
なげ
)
かひ
心
(
こころ
)
消
(
き
)
えゆきて
084
春野
(
はるの
)
に
咲
(
さ
)
ける
花
(
はな
)
を
思
(
おも
)
ふも
085
花見
(
はなみ
)
むと
陸
(
くが
)
に
上
(
のぼ
)
りて
捕
(
とら
)
はれし
086
輩
(
やから
)
思
(
おも
)
へば
悲
(
かな
)
しかりけり
087
春
(
はる
)
さればわがともがらは
次々
(
つぎつぎ
)
に
088
捕
(
とら
)
はれにけり
油断
(
ゆだん
)
の
心
(
こころ
)
に』
089
西郷
(
せいきやう
)
の
酋長
(
しうちやう
)
秋月
(
あきづき
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
090
『
天
(
てん
)
蒼
(
あを
)
く
湖
(
うみ
)
また
青
(
あを
)
き
真中
(
まんなか
)
に
091
浮
(
うか
)
べる
真珠
(
しんじゆ
)
の
島
(
しま
)
に
酒
(
さけ
)
酌
(
く
)
む
092
御空
(
みそら
)
ゆく
月
(
つき
)
の
光
(
ひかり
)
に
照
(
て
)
らされて
093
此
(
こ
)
の
湖原
(
うなばら
)
は
真白
(
ましろ
)
に
映
(
は
)
ゆるも
094
波
(
なみ
)
の
間
(
ま
)
に
出没
(
しゆつぼつ
)
するはわが
輩
(
やから
)
095
御空
(
みそら
)
の
月
(
つき
)
を
仰
(
あふ
)
ぐなるらむ
096
八千尋
(
やちひろ
)
の
湖底
(
うなぞこ
)
までも
照
(
て
)
り
透
(
とほ
)
す
097
月
(
つき
)
の
光
(
ひかり
)
の
偉大
(
ゐだい
)
なるかな
098
闇
(
やみ
)
の
夜
(
よ
)
は
汀辺
(
みぎはべ
)
に
輩
(
やから
)
集
(
あつ
)
まりて
099
歌
(
うた
)
と
踊
(
をど
)
りに
夜
(
よ
)
を
明
(
あか
)
すなり
100
人魚
(
にんぎよ
)
等
(
ら
)
の
歌
(
うた
)
ふ
声々
(
こゑごゑ
)
波
(
なみ
)
の
間
(
ま
)
に
101
こだまなしつつ
夜
(
よ
)
は
明
(
あ
)
けにける
102
大栄
(
おほさか
)
の
山
(
やま
)
の
紅葉
(
もみぢ
)
を
仰
(
あふ
)
ぎつつ
103
湖水
(
こすい
)
に
浸
(
ひた
)
る
秋
(
あき
)
は
楽
(
たの
)
しき
104
秋月
(
あきづき
)
は
大栄山
(
おほさかやま
)
に
照
(
て
)
り
映
(
は
)
えて
105
錦
(
にしき
)
に
映
(
は
)
ゆる
真珠
(
しんじゆ
)
の
湖原
(
うなばら
)
106
波
(
なみ
)
の
色
(
いろ
)
朱
(
あけ
)
に
染
(
そ
)
めつつ
大栄
(
おほさか
)
の
107
山
(
やま
)
の
紅葉
(
もみぢ
)
は
照
(
て
)
り
渡
(
わた
)
るなり』
108
北郷
(
ほくきやう
)
の
酋長
(
しうちやう
)
冬風
(
ふゆかぜ
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
109
『
冬
(
ふゆ
)
されど
此
(
こ
)
の
仙郷
(
せんきやう
)
は
暖
(
あたた
)
かし
110
大栄山
(
おほさかやま
)
は
北
(
きた
)
に
峙
(
そばだ
)
つ
111
大栄
(
おほさか
)
の
山
(
やま
)
嶮
(
けは
)
しければ
国津
(
くにつ
)
神
(
かみ
)
は
112
此
(
こ
)
の
仙郷
(
せんきやう
)
に
来
(
きた
)
る
少
(
すく
)
なし
113
吾
(
わが
)
棲
(
す
)
める
北
(
きた
)
の
郷
(
さと
)
には
人魚
(
にんぎよ
)
とる
114
仇
(
あだ
)
も
来
(
きた
)
らず
安
(
やす
)
く
過
(
す
)
ぎ
行
(
ゆ
)
く
115
若
(
も
)
しや
若
(
も
)
し
敵
(
てき
)
の
来
(
きた
)
らば
人魚
(
にんぎよ
)
等
(
ら
)
を
116
ことごと
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
が
郷
(
さと
)
に
集
(
あつ
)
めよ』
117
斯
(
か
)
く
歌
(
うた
)
ふ
折
(
をり
)
もあれ、
118
イドム
城
(
じやう
)
の
女王
(
ぢよわう
)
サツクス
姫
(
ひめ
)
は、
119
数百
(
すうひやく
)
の
騎士
(
ナイト
)
を
従
(
したが
)
へ、
120
大栄山
(
おほさかやま
)
の
急坂
(
きふはん
)
を
鬨
(
とき
)
を
作
(
つく
)
りて
登
(
のぼ
)
り
来
(
きた
)
り、
121
一網
(
いちまう
)
打尽
(
だじん
)
に
人魚
(
にんぎよ
)
の
群
(
むれ
)
を
襲
(
おそ
)
ひ
捕獲
(
ほくわく
)
せむとのぼり
来
(
きた
)
る。
122
この
物音
(
ものおと
)
に
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
酋長
(
しうちやう
)
は、
123
スハ
一大事
(
いちだいじ
)
、
124
人魚
(
にんぎよ
)
の
輩
(
やから
)
悉
(
ことごと
)
く
北郷
(
ほくきやう
)
に
集
(
あつ
)
めむと、
125
泳
(
およ
)
ぎの
早
(
はや
)
き
人魚
(
にんぎよ
)
を
東西南
(
とうざいなん
)
の
三郷
(
さんきやう
)
に
遣
(
つか
)
はし
急
(
きふ
)
を
報
(
ほう
)
じければ、
126
数万
(
すうまん
)
の
人魚
(
にんぎよ
)
はわれ
遅
(
おく
)
れじと
深
(
ふか
)
き
水底
(
みなそこ
)
を
潜
(
もぐ
)
りて、
127
一人
(
ひとり
)
も
残
(
のこ
)
らず
北郷
(
ほくきやう
)
にかたまり、
128
いづれも
声
(
こゑ
)
を
潜
(
ひそ
)
めて
敵
(
てき
)
の
襲来
(
しふらい
)
を
遥
(
はる
)
かに
眺
(
なが
)
めつつありける。
129
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
酋長
(
しうちやう
)
は
真珠島
(
しんじゆたう
)
の
巌頭
(
がんとう
)
に
立
(
た
)
ち、
130
悠然
(
いうぜん
)
として
敵
(
てき
)
の
襲来
(
しふらい
)
を
眺
(
なが
)
め
居
(
ゐ
)
たり。
131
サツクス
女王
(
ぢよわう
)
の
指揮
(
しき
)
のもとに、
132
数百
(
すうひやく
)
の
騎士
(
ナイト
)
は
東西南
(
とうざいなん
)
の
三郷
(
さんきやう
)
に
陣取
(
ぢんと
)
り、
133
湖水
(
こすい
)
を
囲
(
かこ
)
みて
擦鉦
(
すりがね
)
太鼓
(
たいこ
)
を
打
(
う
)
ち
鳴
(
な
)
らしつつ、
134
山
(
やま
)
も
砕
(
くだ
)
けむばかりの
勢
(
いきほひ
)
にて
襲
(
おそ
)
ひ
来
(
きた
)
り、
135
人魚
(
にんぎよ
)
の
影
(
かげ
)
の
一
(
ひと
)
つも
湖面
(
こめん
)
になきに
失望
(
しつばう
)
し、
136
各々
(
おのおの
)
馬上
(
ばじやう
)
ながら
湖中
(
こちう
)
に
飛
(
と
)
び
入
(
い
)
り、
137
馬
(
うま
)
をたよりに
捜索
(
そうさく
)
すれども、
138
東西南
(
とうざいなん
)
の
三郷
(
さんきやう
)
附近
(
ふきん
)
には
一
(
ひと
)
つの
人魚
(
にんぎよ
)
も
見当
(
みあた
)
らず、
139
遂
(
つひ
)
には
馬
(
うま
)
疲
(
つか
)
れ、
140
湖中
(
こちう
)
に
溺
(
おぼ
)
るるもの
多
(
おほ
)
くなりければ、
141
さすがのサツクス
女王
(
ぢよわう
)
も、
142
すごすごと
岸辺
(
きしべ
)
に
引
(
ひ
)
き
返
(
かへ
)
し、
143
馬
(
うま
)
の
疲
(
つか
)
れを
休
(
やす
)
め、
144
自分
(
じぶん
)
もまた
顔
(
かほ
)
青
(
あを
)
ざめて
太
(
ふと
)
き
息
(
いき
)
を
吐
(
は
)
き
居
(
ゐ
)
たり。
145
サツクス
女王
(
ぢよわう
)
は
声
(
こゑ
)
も
細々
(
ほそぼそ
)
と
歌
(
うた
)
ふ。
146
『
月
(
つき
)
澄
(
す
)
める
真珠
(
しんじゆ
)
の
湖
(
うみ
)
に
来
(
き
)
て
見
(
み
)
れば
147
波
(
なみ
)
ばかりにて
人魚
(
にんぎよ
)
の
影
(
かげ
)
なし
148
此
(
こ
)
の
湖
(
うみ
)
に
永久
(
とこしへ
)
に
棲
(
す
)
む
人魚
(
にんぎよ
)
等
(
ら
)
は
149
如何
(
いかが
)
なりしか
吾
(
われ
)
いぶかしき
150
潮水
(
しほみづ
)
に
飛
(
と
)
び
込
(
こ
)
み
進
(
すす
)
みしわが
騎士
(
ナイト
)
の
151
その
大方
(
おほかた
)
は
溺
(
おぼ
)
れ
死
(
し
)
したり
152
人魚
(
にんぎよ
)
等
(
ら
)
は
水底
(
みなそこ
)
深
(
ふか
)
く
潜
(
ひそ
)
みつつ
153
駒
(
こま
)
の
脚
(
あし
)
をばひけるなるらむ
154
斯
(
か
)
くならば
駒
(
こま
)
は
詮
(
せん
)
なし
木
(
き
)
を
伐
(
き
)
りて
155
独木
(
まるき
)
の
舟
(
ふね
)
を
造
(
つく
)
り
進
(
すす
)
まむ』
156
茲
(
ここ
)
に
生
(
い
)
き
残
(
のこ
)
りたる
騎士
(
ナイト
)
等
(
ら
)
は、
157
湖辺
(
こへん
)
に
立
(
た
)
てる
数多
(
あまた
)
の
大木
(
たいぼく
)
を
伐
(
き
)
り
倒
(
たふ
)
し
独木舟
(
まるきぶね
)
を
造
(
つく
)
りて、
158
七日
(
なぬか
)
七夜
(
ななよ
)
の
丹精
(
たんせい
)
をこめ
漸
(
やうや
)
く
数艘
(
すうさう
)
の
舟
(
ふね
)
を
造
(
つく
)
り、
159
真珠
(
しんじゆ
)
の
島
(
しま
)
に
渡
(
わた
)
り
酋長
(
しうちやう
)
を
捕縛
(
ほばく
)
し、
160
人魚
(
にんぎよ
)
の
在処
(
ありか
)
を
自白
(
じはく
)
させむと、
161
茲
(
ここ
)
に
数十
(
すうじふ
)
人
(
にん
)
の
騎士
(
ナイト
)
は
独木舟
(
まるきぶね
)
に
棹
(
さを
)
をさし
櫂
(
かい
)
を
操
(
あやつ
)
りながら、
162
稍
(
やや
)
広
(
ひろ
)
き
真珠
(
しんじゆ
)
の
島
(
しま
)
へと
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
163
勿論
(
もちろん
)
サツクス
女王
(
ぢよわう
)
もその
舟
(
ふね
)
に
安
(
やす
)
く
坐
(
ざ
)
してありける。
164
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
酋長
(
しうちやう
)
は
寄
(
よ
)
せ
来
(
きた
)
る
舟
(
ふね
)
を
遥
(
はる
)
かに
見
(
み
)
ながら、
165
悠々
(
いういう
)
として
騒
(
さわ
)
がず
急
(
あせ
)
らず
眺
(
なが
)
め
入
(
い
)
る。
166
北郷
(
ほくきやう
)
の
酋長
(
しうちやう
)
冬風
(
ふゆかぜ
)
は、
167
三
(
さん
)
人
(
にん
)
と
何
(
なに
)
か
諜
(
しめ
)
し
合
(
あは
)
せ
居
(
ゐ
)
たりしが、
168
忽
(
たちま
)
ち
湖中
(
こちう
)
に
飛
(
と
)
び
込
(
こ
)
み、
169
水底
(
みなそこ
)
を
潜
(
くぐ
)
つて
北郷
(
ほくきやう
)
に
急
(
いそ
)
ぎ
帰
(
かへ
)
り、
170
数万
(
すうまん
)
の
人魚
(
にんぎよ
)
に
急
(
きふ
)
を
告
(
つ
)
げ、
171
且
(
か
)
つ
一斉
(
いつせい
)
に
敵
(
てき
)
に
向
(
むか
)
つて
必死
(
ひつし
)
の
力
(
ちから
)
を
加
(
くは
)
へ
殲滅
(
せんめつ
)
せむ
事
(
こと
)
を
訓示
(
くんじ
)
した。
172
酋長
(
しうちやう
)
の
言葉
(
ことば
)
に
数万
(
すうまん
)
の
人魚
(
にんぎよ
)
は
勢
(
いきほひ
)
を
得
(
え
)
、
173
日頃
(
ひごろ
)
の
仇
(
あだ
)
を
報
(
むく
)
い、
174
禍
(
わざはひ
)
の
根
(
ね
)
を
断
(
た
)
つは
此
(
こ
)
の
時
(
とき
)
と、
175
固唾
(
かたづ
)
を
呑
(
の
)
んで
控
(
ひか
)
へ
居
(
ゐ
)
る。
176
サツクス
女王
(
ぢよわう
)
は
勝
(
か
)
ち
誇
(
ほこ
)
りたる
面
(
おも
)
もちにて、
177
独木舟
(
まるきぶね
)
を
漕
(
こ
)
がせながら、
178
月
(
つき
)
照
(
て
)
り
渡
(
わた
)
る
真珠
(
しんじゆ
)
の
湖原
(
うなばら
)
を
眺
(
なが
)
めて
歌
(
うた
)
ふ。
179
『あはれあはれ
心地
(
ここち
)
よきかな
吾
(
われ
)
は
今
(
いま
)
180
真珠
(
しんじゆ
)
の
島
(
しま
)
を
占領
(
せんりやう
)
せむとす
181
人魚
(
にんぎよ
)
等
(
ら
)
の
宝
(
たから
)
の
真珠
(
しんじゆ
)
を
集
(
あつ
)
めたる
182
島根
(
しまね
)
は
夜
(
よ
)
ながら
輝
(
かがや
)
きにけり
183
幾万
(
いくまん
)
の
真珠
(
しんじゆ
)
の
光
(
ひかり
)
かたまりて
184
月
(
つき
)
の
光
(
ひかり
)
も
褪
(
あ
)
せにけらしな
185
幾万
(
いくまん
)
の
人魚
(
にんぎよ
)
はいづれに
逃
(
に
)
げしぞや
186
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
が
威勢
(
ゐせい
)
に
驚
(
おどろ
)
けるらし
187
面白
(
おもしろ
)
し
月
(
つき
)
の
浮
(
うか
)
べる
湖原
(
うなばら
)
に
188
真珠
(
しんじゆ
)
の
島
(
しま
)
を
取
(
と
)
らむと
出
(
い
)
で
行
(
ゆ
)
く』
189
春野
(
はるの
)
は
遥
(
はる
)
かに
此
(
こ
)
の
体
(
てい
)
を
見
(
み
)
て
歌
(
うた
)
ふ。
190
『
玉
(
たま
)
の
緒
(
を
)
の
生命
(
いのち
)
知
(
し
)
らずの
出
(
い
)
で
立
(
た
)
ちを
191
見
(
み
)
つつあはれを
催
(
もよほ
)
す
吾
(
われ
)
なり
192
欲
(
よく
)
深
(
ふか
)
く
真珠
(
しんじゆ
)
の
玉
(
たま
)
に
目
(
め
)
が
眩
(
くら
)
み
193
生命
(
いのち
)
捨
(
す
)
つると
思
(
おも
)
へばいぢらし
194
北郷
(
ほくきやう
)
に
手具脛
(
てぐすね
)
ひきて
待
(
ま
)
ち
待
(
ま
)
てる
195
人魚
(
にんぎよ
)
の
力
(
ちから
)
を
恐
(
おそ
)
れざるらし
196
森閑
(
しんかん
)
としづまりかへる
湖原
(
うなばら
)
に
197
やがて
血汐
(
ちしほ
)
の
雨
(
あめ
)
は
降
(
ふ
)
るらむ
198
心地
(
ここち
)
よき
今宵
(
こよひ
)
なるかも
祖々
(
おやおや
)
の
199
仇
(
あだ
)
を
報
(
むく
)
ゆる
時
(
とき
)
は
来
(
き
)
にけり
200
サツクスはイドムの
国
(
くに
)
を
奪
(
うば
)
ひ
取
(
と
)
り
201
夫
(
つま
)
の
生命
(
いのち
)
をとりしくせもの
202
サツクスの
悪魔
(
あくま
)
は
尚
(
なほ
)
も
飽
(
あ
)
きたらで
203
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
が
宝
(
たから
)
を
奪
(
うば
)
はむとすも
204
限
(
かぎ
)
りなき
欲
(
よく
)
につられて
玉
(
たま
)
の
緒
(
を
)
の
205
生命
(
いのち
)
を
捨
(
す
)
つるは
浅
(
あさ
)
はかなるかな』
206
南郷
(
なんきやう
)
の
酋長
(
しうちやう
)
夏草
(
なつぐさ
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
207
『
夏草
(
なつぐさ
)
の
茂
(
しげ
)
みを
分
(
わ
)
けてのぼり
来
(
く
)
る
208
ナイトは
死出
(
しで
)
の
旅
(
たび
)
をするかも
209
わが
輩
(
やから
)
影
(
かげ
)
なきを
見
(
み
)
てナイト
等
(
ら
)
は
210
馬
(
うま
)
諸共
(
もろとも
)
に
湖中
(
こちう
)
に
駈
(
か
)
け
入
(
い
)
りぬ
211
駿馬
(
はやこま
)
は
疲
(
つか
)
れはてけむ
力
(
ちから
)
なく
212
人
(
ひと
)
もろともに
溺
(
おぼ
)
れ
死
(
し
)
したり
213
次々
(
つぎつぎ
)
に
溺
(
おぼ
)
るるを
見
(
み
)
てサツクスは
214
陸
(
くが
)
に
向
(
むか
)
つて
逃
(
に
)
げゆくをかしさ
215
駿馬
(
はやこま
)
の
嘶
(
いなな
)
きを
知
(
し
)
りてサツクスは
216
汀
(
みぎは
)
に
並木
(
なみき
)
を
伐
(
き
)
り
倒
(
たふ
)
したり
217
七日
(
なぬか
)
七夜
(
ななよ
)
独木
(
まるき
)
の
舟
(
ふね
)
を
造
(
つく
)
り
了
(
を
)
へて
218
渡
(
わた
)
り
来
(
く
)
るかも
生命
(
いのち
)
知
(
し
)
らずに
219
近寄
(
ちかよ
)
らば
真珠
(
しんじゆ
)
の
岩
(
いは
)
を
投
(
な
)
げつけて
220
仇
(
あだ
)
悉
(
ことごと
)
く
打
(
う
)
ち
殺
(
ころ
)
すべし』
221
西郷
(
せいきやう
)
の
酋長
(
しうちやう
)
秋月
(
あきづき
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
222
『
面白
(
おもしろ
)
き
世
(
よ
)
とはなりけり
居
(
ゐ
)
ながらに
223
仇
(
あだ
)
を
滅
(
ほろ
)
ぼす
今宵
(
こよひ
)
とおもへば
224
水中
(
すいちう
)
に
力
(
ちから
)
を
保
(
たも
)
つわが
輩
(
やから
)
225
捕
(
とら
)
へむとする
愚
(
おろか
)
さを
思
(
おも
)
ふ
226
愚
(
おろか
)
なるサツクス
王
(
わう
)
の
手下
(
てした
)
等
(
ら
)
を
227
水
(
みづ
)
の
藻屑
(
もくづ
)
と
葬
(
はうむ
)
り
去
(
さ
)
らむ
228
面白
(
おもしろ
)
しああ
勇
(
いさ
)
ましし
吾
(
わが
)
敵
(
てき
)
は
229
真珠
(
しんじゆ
)
の
島根
(
しまね
)
近
(
ちか
)
く
寄
(
よ
)
せたり』
230
斯
(
か
)
く
歌
(
うた
)
ふ
折
(
をり
)
しも、
231
サツクス
女王
(
ぢよわう
)
の
一行
(
いつかう
)
数十
(
すうじふ
)
人
(
にん
)
は
島
(
しま
)
に
近寄
(
ちかよ
)
らむとするや、
232
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
酋長
(
しうちやう
)
は
此処
(
ここ
)
を
先途
(
せんど
)
と、
233
真珠
(
しんじゆ
)
の
岩
(
いは
)
を
頭上
(
づじやう
)
に
高
(
たか
)
くささげ、
234
寄
(
よ
)
せ
来
(
く
)
る
敵
(
てき
)
に
向
(
むか
)
つて
岩石落
(
がんせきおと
)
しに
投
(
な
)
げつくれば、
235
何条
(
なんでう
)
以
(
もつ
)
て
堪
(
たま
)
るべき、
236
舟
(
ふね
)
諸共
(
もろとも
)
に
湖中
(
こちう
)
に
残
(
のこ
)
らず
沈没
(
ちんぼつ
)
し、
237
湖
(
うみ
)
の
水泡
(
みなわ
)
と
消
(
き
)
えにける。
238
北郷
(
ほくきやう
)
に
集
(
あつま
)
りし
数万
(
すうまん
)
の
人魚
(
にんぎよ
)
は、
239
「ウオーウオー」と
一斉
(
いつせい
)
に
歓声
(
くわんせい
)
を
挙
(
あ
)
げ、
240
為
(
ため
)
に
天地
(
てんち
)
も
崩
(
くづ
)
るるばかりなりける。
241
イドムの
城
(
しろ
)
を
占領
(
せんりやう
)
し、
242
エールス
王
(
わう
)
を
謀殺
(
ぼうさつ
)
し、
243
恋
(
こひ
)
の
勝利者
(
しようりしや
)
とときめき
渡
(
わた
)
り、
244
豪奢
(
がうしや
)
を
極
(
きは
)
めたりし
悪虐
(
あくぎやく
)
無道
(
ぶだう
)
の
張本
(
ちやうほん
)
サツクス
女王
(
ぢよわう
)
も、
245
天運
(
てんうん
)
いよいよ
尽
(
つ
)
きて
水
(
みづ
)
の
藻屑
(
もくづ
)
となりけるぞ
天命
(
てんめい
)
恐
(
おそ
)
ろしき。
246
これより
真珠
(
しんじゆ
)
の
湖
(
うみ
)
の
人魚
(
にんぎよ
)
の
群
(
むれ
)
に
向
(
むか
)
つて
攻
(
せ
)
め
寄
(
よ
)
するもの
跡
(
あと
)
を
断
(
た
)
ち、
247
永遠
(
えいゑん
)
の
神仙郷
(
しんせんきやう
)
として
人魚
(
にんぎよ
)
の
群
(
むれ
)
は
栄
(
さか
)
えけるとなむ。
248
(
昭和九・八・五
旧六・二五
於伊豆別院
白石恵子
謹録)
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