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霊界物語
天祥地瑞(第73~81巻)
第81巻(申の巻)
総説
第1篇 伊佐子の島
第1章 イドム戦
第2章 月光山
第3章 月見の池
第4章 遷座式
第5章 心の禊
第6章 月見の宴
第2篇 イドムの嵐
第7章 月音し
第8章 人魚の勝利
第9章 維新の叫び
第10章 復古運動
第3篇 木田山城
第11章 五月闇
第12章 木田山颪
第13章 思ひの掛川
第14章 鷺と烏
第15章 厚顔無恥
第4篇 猛獣思想
第16章 亀神の救ひ
第17章 再生再会
第18章 蠑螈の精
第19章 悪魔の滅亡
第20章 悔悟の花
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霊界物語
>
天祥地瑞(第73~81巻)
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第81巻(申の巻)
> 第3篇 木田山城 > 第11章 五月闇
<<< 復古運動
(B)
(N)
木田山颪 >>>
第一一章
五月闇
(
さつきやみ
)
〔二〇三八〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第81巻 天祥地瑞 申の巻
篇:
第3篇 木田山城
よみ(新仮名遣い):
きたやまじょう
章:
第11章 五月闇
よみ(新仮名遣い):
さつきやみ
通し章番号:
2038
口述日:
1934(昭和9)年08月14日(旧07月5日)
口述場所:
水明閣
筆録者:
谷前清子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1934(昭和9)年12月30日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
サール国王エールスは、イドム城を落としたときに、多くの敵軍を捕虜として捕らえ、牢獄につなぐために、サール国に護送させていた。
サール国には大栄山から流れる、うす濁った木田川という川が流れており、川を越えた東側の丘陵の木田山に城があった。
サール国の太子エームスは、木田山城の師団長として留守を守り、数多の敵軍の捕虜が護送されてくるのを朝夕眺めていた。
ある日、捕虜の中に美しい三人連れの美人を認め、たちまち恋慕の情にとらわれると、敵国の女性であろうとも何とかして妻にしたいと煩悶苦悩するようになってしまった。この三人の美女とは、アヅミ王の娘チンリウ姫、侍女のアララギ、姫の乳母の娘センリウの三人であった。
太子エームスの侍臣、朝月と夕月は、太子の様子がただならないことに気づき、心を痛めてなんとかして太子の気を晴らそうと、さまざま歌や踊り、小鳥や虫の鳴き声などを催してみたが、太子は日に日に憔悴していくばかりであった。
ある日朝月、夕月は太子に花ケ丘の清遊を進めようと、花咲く丘の美しさを歌に歌った。太子は花鳥風月に心は動かず、花ケ丘に咲く花ではない花に、今は心を奪われているのだ、とそれとなく自分の思いを歌に歌った。
朝月は太子の心を察し、自分が太子の花への使者となりましょう、と歌うと、太子は、自分が恋焦がれる花は、実は敵国の捕虜の中にいるのだと歌い、高貴な身なりから、間違いなくあれはアヅミ王の王女であろうと明かした。
太子は、王女にとって自分は親の敵であり、どうやって王女の心を掴んだらよいか、朝月、夕月に相談を持ちかけた。朝月、夕月はなんとしても王女に太子の心を伝え心をなびかせてみようと、太子の思いを承った。
かくして、朝月、夕月はひとまず太子の前を下がっていった。太子は一人、木田川の流れを眺めながら、述懐の歌を歌っていた。侍女の滝津瀬、山風がお茶を汲みに参上したが、太子の心は晴れず、茶にも菓子にも手をつけずにうつむいていた。
侍女たちは太子の様子を心配するが、太子もう夜が遅いのでひとまず下がるように言いつけ、侍女たちは下がっていった。かくして、木田山城の夜は更けていった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm8111
愛善世界社版:
八幡書店版:
第14輯 484頁
修補版:
校定版:
231頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001
サールの
国王
(
こくわう
)
エールスが、
002
イドムの
国
(
くに
)
を
占領
(
せんりやう
)
せむとして
大兵
(
たいへい
)
を
募
(
つの
)
り、
003
イドム
城
(
じやう
)
に
疾風
(
しつぷう
)
迅雷
(
じんらい
)
的
(
てき
)
に
攻
(
せ
)
め
寄
(
よ
)
せ、
004
一挙
(
いつきよ
)
にして
王城
(
わうじやう
)
を
占領
(
せんりやう
)
し、
005
アヅミ
王
(
わう
)
を
始
(
はじ
)
めムラジ
妃
(
ひ
)
及
(
およ
)
び
左守
(
さもり
)
、
006
右守
(
うもり
)
、
007
軍師
(
ぐんし
)
も
共
(
とも
)
に
月光山
(
つきみつやま
)
に
逃走
(
たうそう
)
せしめ、
008
数多
(
あまた
)
の
敵軍
(
てきぐん
)
を
捕虜
(
ほりよ
)
としてサールの
国
(
くに
)
の
牢獄
(
らうごく
)
に
繋
(
つな
)
ぐべく
騎士
(
ナイト
)
をして
護送
(
ごそう
)
せしめた。
009
サールの
国
(
くに
)
には
大栄山
(
おほさかやま
)
より
流
(
なが
)
れ
落
(
お
)
つる
木田川
(
きたがは
)
と
言
(
い
)
ふ
薄濁
(
うすにご
)
つた
流
(
なが
)
れがある。
010
ここには
橋梁
(
けうりやう
)
もなければ
船
(
ふね
)
もないので、
011
いづれも
水馬
(
すゐば
)
の
術
(
じゆつ
)
を
以
(
もつ
)
て
渡
(
わた
)
ることとなし、
012
木田川
(
きたがは
)
をへだて、
013
東
(
ひがし
)
の
丘陵
(
きうりよう
)
木田山
(
きたやま
)
にエールスは
城壁
(
じやうへき
)
を
構
(
かま
)
へ、
014
要害
(
えうがい
)
堅固
(
けんご
)
の
陣地
(
ぢんち
)
とたのんでゐる。
015
エールス
王
(
わう
)
の
太子
(
たいし
)
エームスは
木田山
(
きたやま
)
城
(
じやう
)
の
留守
(
るす
)
師団長
(
しだんちやう
)
として
守
(
まも
)
つてゐたが、
016
数多
(
あまた
)
の
敵軍
(
てきぐん
)
の
捕虜
(
ほりよ
)
の
送
(
おく
)
られて
来
(
く
)
るのを
見
(
み
)
むと、
017
城内
(
じやうない
)
の
広場
(
ひろば
)
に
夕月
(
ゆふづき
)
、
018
朝月
(
あさづき
)
の
侍臣
(
じしん
)
を
従
(
したが
)
へ、
019
その
状
(
さま
)
を
愉快
(
ゆくわい
)
げに
眺
(
なが
)
めてゐたるが、
020
其
(
そ
)
の
中
(
なか
)
に
気品
(
きひん
)
優
(
すぐ
)
れて
高
(
たか
)
く、
021
面貌
(
めんばう
)
麗
(
うるは
)
しき
三人
(
さんにん
)
連
(
づ
)
れの
美人
(
びじん
)
を
認
(
みと
)
め、
022
独
(
ひと
)
り
身
(
み
)
のエームスはたとへ
敵国
(
てきこく
)
の
女性
(
ぢよせい
)
にもせよ、
023
何
(
なん
)
とかして
吾
(
わが
)
妻
(
つま
)
に
為
(
な
)
さむものと、
024
それより
吾
(
わが
)
館
(
やかた
)
に
帰
(
かへ
)
り、
025
忽
(
たちま
)
ち
恋慕
(
れんぼ
)
の
鬼
(
おに
)
に
捉
(
とら
)
はれ、
026
夜
(
よる
)
も
昼
(
ひる
)
も
煩悶
(
はんもん
)
苦悩
(
くなう
)
の
溜息
(
ためいき
)
ばかり
続
(
つづ
)
け
居
(
ゐ
)
たりける。
027
この
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
美女
(
びぢよ
)
は
言
(
い
)
ふ
迄
(
まで
)
もなく、
028
アヅミ
王
(
わう
)
の
娘
(
むすめ
)
チンリウ
姫
(
ひめ
)
にして、
029
稍
(
やや
)
年老
(
としお
)
いたるのは
侍女
(
じぢよ
)
のアララギ
及
(
およ
)
びチンリウ
姫
(
ひめ
)
の
乳兄弟
(
ちきやうだい
)
なる
乳母
(
うば
)
の
娘
(
むすめ
)
センリウの
三
(
さん
)
人
(
にん
)
なりける。
030
朝月
(
あさづき
)
、
031
夕月
(
ゆふづき
)
はエームスの
日夜
(
にちや
)
の
様子
(
やうす
)
只
(
ただ
)
ならざるに
心
(
こころ
)
をいため、
032
如何
(
いか
)
にもして
爽快
(
さうくわい
)
なる
太子
(
たいし
)
の
笑顔
(
ゑがほ
)
を
見
(
み
)
むものと、
033
あらゆる
手段
(
しゆだん
)
をつくし、
034
声
(
こゑ
)
美
(
うるは
)
しき
小鳥
(
ことり
)
も
集
(
あつ
)
め
或
(
あるひ
)
は
虫
(
むし
)
を
啼
(
な
)
かせ、
035
種々
(
しゆじゆ
)
の
禾本類
(
くわほんるゐ
)
を
太子
(
たいし
)
の
眼近
(
めぢか
)
き
所
(
ところ
)
に
陳列
(
ちんれつ
)
し、
036
その
上
(
うへ
)
歌
(
うた
)
を
歌
(
うた
)
ひ
或
(
あるひ
)
は
踊
(
をど
)
り
舞
(
ま
)
ひ、
037
種々
(
いろいろ
)
と
心力
(
しんりよく
)
をつくせども、
038
太子
(
たいし
)
の
身体
(
しんたい
)
は
日夜
(
にちや
)
に
憔悴
(
せうすゐ
)
するばかりなりければ、
039
或日
(
あるひ
)
朝月
(
あさづき
)
、
040
夕月
(
ゆふづき
)
は
太子
(
たいし
)
に
花ケ丘
(
はながをか
)
の
清遊
(
せいいう
)
を
勧
(
すす
)
めむと、
041
側
(
そば
)
近
(
ちか
)
く
参入
(
さんにふ
)
して
歌
(
うた
)
もて
勧
(
すす
)
めける。
042
朝月
(
あさづき
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
043
『
朝月
(
あさづき
)
の
光
(
かげ
)
はおぼろに
白
(
しら
)
けつつ
044
花
(
はな
)
の
蕾
(
つぼみ
)
に
露
(
つゆ
)
を
宿
(
やど
)
せり
045
花ケ丘
(
はながをか
)
の
百花
(
ももばな
)
千花
(
ちばな
)
悉
(
ことごと
)
く
046
若王
(
きみ
)
が
情
(
なさけ
)
の
露
(
つゆ
)
に
濡
(
ぬ
)
れつつ
047
若王
(
わかぎみ
)
の
心
(
こころ
)
の
蕾
(
つぼみ
)
開
(
ひら
)
かむと
048
涙
(
なみだ
)
の
露
(
つゆ
)
を
降
(
ふ
)
らす
朝月
(
あさづき
)
』
049
エームスはかすかに
朝月
(
あさづき
)
の
歌
(
うた
)
を
聞
(
き
)
いて、
050
稍
(
やや
)
心
(
こころ
)
動
(
うご
)
きたる
如
(
ごと
)
く、
051
二三歩
(
にさんぽ
)
前
(
まへ
)
に
進
(
すす
)
み
来
(
きた
)
りて
歌
(
うた
)
ふ。
052
『
朝月
(
あさづき
)
の
光
(
かげ
)
は
白
(
しら
)
けて
大空
(
おほぞら
)
は
053
かすめり
吾
(
われ
)
が
心
(
こころ
)
にも
似
(
に
)
て
054
吾
(
わが
)
心
(
こころ
)
朝
(
あさ
)
な
夕
(
ゆふ
)
なに
晴
(
は
)
れやらず
055
花鳥
(
くわてふ
)
風月
(
ふうげつ
)
楽
(
たの
)
しみにならず
056
百鳥
(
ももどり
)
の
囀
(
さへづ
)
る
声
(
こゑ
)
も
松虫
(
まつむし
)
の
057
共啼
(
むたな
)
きさへもかなしき
吾
(
われ
)
なり
058
吾
(
わが
)
父
(
ちち
)
は
生死
(
せいし
)
の
巷
(
ちまた
)
に
戦
(
たたか
)
へり
059
されど
吾
(
われ
)
にはかかはりもなし
060
吾
(
わが
)
心
(
こころ
)
戦
(
いくさ
)
に
出
(
い
)
でます
垂乳根
(
たらちね
)
に
061
いつか
離
(
はな
)
れて
花
(
はな
)
に
悩
(
なや
)
めり
062
花ケ丘
(
はながをか
)
に
匂
(
にほ
)
へる
桃
(
もも
)
のよそほひも
063
吾
(
われ
)
にはかなしき
便
(
たよ
)
りなりけり
064
山
(
やま
)
も
川
(
かは
)
も
吾
(
われ
)
にはかなし
木田山
(
きたやま
)
の
065
館
(
やかた
)
もさびし
思
(
おも
)
ひはれねば』
066
朝月
(
あさづき
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
067
『
吾
(
わが
)
若王
(
きみ
)
の
御心
(
みこころ
)
かすかに
悟
(
さと
)
りたり
068
朝月
(
あさづき
)
吾
(
われ
)
は
花便
(
はなだよ
)
りせむ』
069
エームスは
歌
(
うた
)
ふ。
070
『たらちねの
仇
(
あだ
)
なる
花
(
はな
)
にあこがれて
071
吾
(
われ
)
はくるしき
夢
(
ゆめ
)
を
見
(
み
)
るなり
072
斯
(
か
)
くならば
誉
(
ほまれ
)
も
位
(
くらゐ
)
も
玉
(
たま
)
の
緒
(
を
)
の
073
吾
(
わが
)
生命
(
いのち
)
さへ
惜
(
を
)
しけくはなし
074
ままならぬ
人
(
ひと
)
を
恋
(
こ
)
ひつつままならぬ
075
わが
世
(
よ
)
を
歎
(
なげ
)
きぬ
朝
(
あした
)
夕
(
ゆふ
)
べに
076
はてしなき
広
(
ひろ
)
きサールの
国中
(
くになか
)
に
077
かかる
目出度
(
めでた
)
き
花
(
はな
)
は
見
(
み
)
ざりき』
078
朝月
(
あさづき
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
079
『
若王
(
わかぎみ
)
の
欲
(
ほ
)
りする
花
(
はな
)
は
捕
(
とら
)
はれの
080
花
(
はな
)
にあらずや
語
(
かた
)
らせ
給
(
たま
)
へ』
081
エームスは
歌
(
うた
)
ふ。
082
『
恥
(
はづ
)
かしと
思
(
おも
)
へど
吾
(
われ
)
は
村肝
(
むらきも
)
の
083
心
(
こころ
)
明
(
あか
)
さむ
汝
(
な
)
が
言葉
(
ことば
)
あたれり
084
捕
(
とら
)
はれの
女
(
をみな
)
の
姿
(
すがた
)
気高
(
けだか
)
ければ
085
正
(
まさ
)
しくアヅミの
娘
(
むすめ
)
なりけむ
086
吾
(
わが
)
父
(
ちち
)
はアヅミの
国
(
くに
)
を
滅
(
ほろ
)
ぼして
087
恨
(
うら
)
みを
買
(
か
)
ひしことのかなしさ
088
心安
(
うらやす
)
く
手折
(
たを
)
り
得
(
う
)
べけむその
花
(
はな
)
を
089
父
(
ちち
)
の
嵐
(
あらし
)
に
散
(
ち
)
らされむとすも』
090
朝月
(
あさづき
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
091
『
吾
(
わが
)
若王
(
きみ
)
のかなしき
心
(
こころ
)
まつぶさに
092
牢獄
(
ひとや
)
の
女
(
をみな
)
に
吾
(
われ
)
は
伝
(
つた
)
へむ
093
言霊
(
ことたま
)
の
舌
(
した
)
の
剣
(
つるぎ
)
を
振
(
ふ
)
りかざし
094
若王
(
きみ
)
の
心
(
こころ
)
をはらし
奉
(
まつ
)
らむ
095
麗
(
うるは
)
しき
三人
(
みたり
)
の
女
(
をみな
)
のその
中
(
なか
)
に
096
すぐれてたかきを
若王
(
きみ
)
に
進
(
すす
)
めむ
097
どこまでも
吾
(
わが
)
真心
(
まごころ
)
を
打
(
う
)
ち
明
(
あ
)
けて
098
イドムの
国
(
くに
)
の
花
(
はな
)
をなびかせむ』
099
エームスは
稍
(
やや
)
面色
(
かほいろ
)
をやはらげながら
嬉
(
うれ
)
しげに
歌
(
うた
)
ふ。
100
『
朝月
(
あさづき
)
の
露
(
つゆ
)
の
情
(
なさけ
)
にうるほひて
101
蘇
(
よみがへ
)
るらむ
朝顔
(
あさがほ
)
の
花
(
はな
)
は
102
初恋
(
はつこひ
)
の
吾
(
わが
)
初花
(
はつはな
)
を
手折
(
たを
)
らむと
103
露
(
つゆ
)
の
涙
(
なみだ
)
に
朝夕
(
あさゆふ
)
くれけり』
104
朝月
(
あさづき
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
105
『
木田川
(
きたがは
)
の
流
(
なが
)
れはよしや
涸
(
か
)
るるとも
106
若王
(
きみ
)
の
依
(
よ
)
さしを
遂
(
と
)
げずにおくべき
107
斯
(
か
)
くならば
吾
(
われ
)
は
今日
(
けふ
)
よりアヅミの
娘
(
むすめ
)
108
若王
(
わかぎみ
)
が
床
(
とこ
)
の
花
(
はな
)
と
咲
(
さ
)
かせむ』
109
エームスは
歌
(
うた
)
ふ。
110
『たのもしき
汝
(
なれ
)
が
言葉
(
ことば
)
よ
朝月
(
あさづき
)
の
111
光
(
かげ
)
を
力
(
ちから
)
に
夕
(
ゆふ
)
べを
待
(
ま
)
たむ』
112
朝月
(
あさづき
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
113
『
朝月
(
あさづき
)
の
光
(
かげ
)
消
(
き
)
ゆるとも
夕月
(
ゆふづき
)
の
114
光
(
かげ
)
清
(
きよ
)
ければ
心
(
こころ
)
安
(
やす
)
かれ』
115
夕月
(
ゆふづき
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
116
『
吾
(
わが
)
若王
(
きみ
)
の
情
(
なさけ
)
の
露
(
つゆ
)
にほだされて
117
アヅミの
花
(
はな
)
は
御側
(
みそば
)
に
薫
(
かを
)
らむ
118
夕月
(
ゆふづき
)
の
光
(
かげ
)
を
合図
(
あひづ
)
に
忍
(
しの
)
びよりて
119
若王
(
きみ
)
が
真心
(
まごころ
)
伝
(
つた
)
へ
奉
(
まつ
)
らむ
120
朝月
(
あさづき
)
と
夕月
(
ゆふづき
)
心
(
こころ
)
を
一
(
ひと
)
つにし
121
露
(
つゆ
)
の
情
(
なさけ
)
になびかせ
奉
(
まつ
)
らむ
122
三柱
(
みはしら
)
の
美
(
うるは
)
しき
姫
(
ひめ
)
朝夕
(
あさゆふ
)
を
123
うなかぶしつつ
涙
(
なみだ
)
にしめれり
124
朝夕
(
あさゆふ
)
に
涙
(
なみだ
)
の
露
(
つゆ
)
にうなだるる
125
花
(
はな
)
をし
見
(
み
)
ればあはれもよほす
126
若王
(
わかぎみ
)
の
真心
(
まごころ
)
つぶさに
伝
(
つた
)
へなむ
127
物言
(
ものい
)
ふ
花
(
はな
)
も
笑
(
ゑ
)
みて
栄
(
さか
)
えむ
128
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
も
善事
(
よごと
)
は
急
(
いそ
)
げと
昔
(
むかし
)
より
129
世
(
よ
)
のことわざもありしを
思
(
おも
)
ふ
130
一時
(
ひととき
)
も
早
(
はや
)
く
御心
(
みこころ
)
安
(
やす
)
めむと
131
心
(
こころ
)
の
駒
(
こま
)
は
勇
(
いさ
)
み
立
(
た
)
つなり』
132
エームスは
欣然
(
きんぜん
)
として
歌
(
うた
)
ふ。
133
『
朝月
(
あさづき
)
の
光
(
かげ
)
はさやけし
夕月
(
ゆふづき
)
の
134
光
(
ひか
)
りは
強
(
つよ
)
し
夕顔
(
ゆふがほ
)
の
花
(
はな
)
135
夕顔
(
ゆふがほ
)
の
花
(
はな
)
の
白
(
しろ
)
きにあこがれて
136
吾
(
われ
)
は
生命
(
いのち
)
をかけて
待
(
ま
)
つなり』
137
朝月
(
あさづき
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
138
『いざさらば
三人
(
みたり
)
の
姫
(
ひめ
)
のこもりたる
139
牢獄
(
ひとや
)
に
進
(
すす
)
みて
言霊
(
ことたま
)
開
(
ひら
)
かむ』
140
夕月
(
ゆふづき
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
141
『
若王
(
わかぎみ
)
の
生命
(
いのち
)
の
恋
(
こひ
)
をかなへむと
142
真心
(
まごころ
)
の
駒
(
こま
)
に
鞭
(
むち
)
うち
進
(
すす
)
まむ』
143
エームスは
歌
(
うた
)
ふ。
144
『
恥
(
はづ
)
かしきかなしき
心
(
こころ
)
を
推
(
お
)
しはかり
145
出
(
い
)
でゆく
汝
(
なれ
)
が
復命
(
かへりごと
)
待
(
ま
)
たむ』
146
斯
(
か
)
く
主従
(
しうじう
)
は
歌
(
うた
)
を
交
(
かは
)
しながら
暫
(
しば
)
し
袂
(
たもと
)
を
別
(
わか
)
ちける。
147
朝月
(
あさづき
)
、
148
夕月
(
ゆふづき
)
の
立出
(
たちい
)
でし
後
(
あと
)
に、
149
エームスは
一時
(
いつとき
)
千秋
(
せんしう
)
の
思
(
おも
)
ひしながら、
150
高殿
(
たかどの
)
より
眼下
(
がんか
)
を
流
(
なが
)
るる
木田川
(
きたがは
)
の
薄濁
(
うすにご
)
りを
瞰下
(
みおろ
)
しながら
静
(
しづ
)
かに
述懐
(
じゆつくわい
)
を
歌
(
うた
)
ふ。
151
『
木田川
(
きたがは
)
の
流
(
なが
)
れは
如何
(
いか
)
に
濁
(
にご
)
るとも
152
吾
(
わが
)
真心
(
まごころ
)
のうつらざらめや
153
月
(
つき
)
も
日
(
ひ
)
も
浮
(
うか
)
びて
流
(
なが
)
るる
木田川
(
きたがは
)
の
154
水
(
みづ
)
はかなしもかげくだけつつ
155
百千々
(
ももちぢ
)
に
心
(
こころ
)
くだけど
口
(
くち
)
なしの
156
花
(
はな
)
にも
似
(
に
)
たる
吾
(
われ
)
なりにけり
157
大栄山
(
おほさかやま
)
越
(
こ
)
えてはるばる
吾
(
わが
)
父
(
ちち
)
は
158
なやみの
種
(
たね
)
を
蒔
(
ま
)
き
給
(
たま
)
ひける
159
父
(
ちち
)
も
母
(
はは
)
もとほくイドムの
国
(
くに
)
に
在
(
あ
)
り
160
吾
(
われ
)
さびしくも
恋
(
こひ
)
に
泣
(
な
)
くなり
161
ままならぬ
花
(
はな
)
を
恋
(
こ
)
ひつつ
手折
(
たを
)
るべき
162
よすがなき
身
(
み
)
のかなしき
吾
(
われ
)
なり
163
朝月
(
あさづき
)
はいかがなしけむ
夕月
(
ゆふづき
)
は
164
いづらにあるか
御空
(
みそら
)
曇
(
くも
)
らふ
165
村肝
(
むらきも
)
の
心
(
こころ
)
の
空
(
そら
)
の
雲霧
(
くもきり
)
を
166
いかに
晴
(
は
)
らさむ
五月雨
(
さみだれ
)
の
降
(
ふ
)
る
167
五月雨
(
さみだれ
)
にしめり
勝
(
がち
)
なる
吾
(
わが
)
袂
(
たもと
)
168
知
(
し
)
る
由
(
よし
)
もなくほととぎす
鳴
(
な
)
く
169
百鳥
(
ももどり
)
も
必
(
かなら
)
ず
恋
(
こひ
)
を
叫
(
さけ
)
ぶらむ
170
独
(
ひと
)
り
身
(
み
)
吾
(
われ
)
の
心
(
こころ
)
にも
似
(
に
)
て
171
妻
(
つま
)
恋
(
こ
)
ふる
尾
(
を
)
の
上
(
へ
)
の
鹿
(
しか
)
のそれならで
172
吾
(
わが
)
面
(
おも
)
ざしに
散
(
ち
)
る
紅葉
(
もみぢ
)
かな
173
朝夕
(
あさゆふ
)
に
青息
(
あをいき
)
吐息
(
といき
)
つきながら
174
生命
(
いのち
)
の
恋
(
こひ
)
にあこがれにけり
175
吾
(
わが
)
父
(
ちち
)
に
恨
(
うら
)
みを
買
(
か
)
ひしアヅミ
王
(
わう
)
の
176
娘
(
むすめ
)
と
思
(
おも
)
へば
一入
(
ひとしほ
)
かなしき
177
晴
(
は
)
れやらぬ
五月
(
さつき
)
の
空
(
そら
)
に
吾
(
われ
)
は
只
(
ただ
)
178
空
(
そら
)
を
仰
(
あふ
)
ぎて
吐息
(
といき
)
するのみ
179
庭
(
には
)
の
面
(
も
)
にあやめ、かきつばた
匂
(
にほ
)
へども
180
吾
(
われ
)
には
何
(
なん
)
の
望
(
のぞ
)
みだになし
181
しとしとと
降
(
ふ
)
る
五月雨
(
さみだれ
)
は
吾
(
わが
)
袖
(
そで
)
の
182
乾
(
かわ
)
く
間
(
ま
)
もなき
涙
(
なみだ
)
ならずや
183
かかる
世
(
よ
)
に
生
(
うま
)
れてかかるかなしさを
184
今日
(
けふ
)
が
日
(
ひ
)
までも
悟
(
さと
)
らざりけり
185
木田川
(
きたがは
)
の
水
(
みづ
)
とこしへに
流
(
なが
)
るとも
186
吾
(
われ
)
の
悩
(
なや
)
みを
洗
(
あら
)
ふすべなき
187
捕
(
とら
)
はれし
清
(
きよ
)
き
女
(
をみな
)
はアヅミ
王
(
わう
)
の
188
娘
(
むすめ
)
と
聞
(
き
)
きて
驚
(
おどろ
)
きしはや
189
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
も
朝月
(
あさづき
)
、
夕月
(
ゆふづき
)
言霊
(
ことたま
)
の
190
露
(
つゆ
)
に
匂
(
にほ
)
はむ
朝顔
(
あさがほ
)
夕顔
(
ゆふがほ
)
191
夕顔
(
ゆふがほ
)
の
花
(
はな
)
に
心
(
こころ
)
を
奪
(
うば
)
はれて
192
吾
(
わが
)
魂
(
たましひ
)
は
闇
(
やみ
)
となりける
193
恋
(
こひ
)
すてふ
心
(
こころ
)
のかなしさ
悟
(
さと
)
りけり
194
アヅミの
王
(
きみ
)
の
娘
(
むすめ
)
に
会
(
あ
)
ひて
195
一目
(
ひとめ
)
見
(
み
)
て
吾
(
わが
)
魂
(
たましひ
)
は
乱
(
みだ
)
れたり
196
恋
(
こひ
)
の
悪魔
(
あくま
)
に
捕
(
とら
)
はれにけむ
197
よしやよし
吾
(
わが
)
玉
(
たま
)
の
緒
(
を
)
は
消
(
き
)
ゆるとも
198
一夜
(
いちや
)
の
語
(
かた
)
らひなさでおくべき
199
国
(
くに
)
も
城
(
しろ
)
も
吾
(
わが
)
身
(
み
)
も
総
(
すべ
)
てを
忘
(
わす
)
れたり
200
只
(
ただ
)
あこがるる
夕顔
(
ゆふがほ
)
の
花
(
はな
)
201
夕暮
(
ゆふぐれ
)
にふと
眺
(
なが
)
めたる
花
(
はな
)
なれば
202
吾
(
われ
)
夕顔
(
ゆふがほ
)
と
名
(
な
)
づけてあこがる
203
夕顔
(
ゆふがほ
)
の
心
(
こころ
)
如何
(
いか
)
にと
案
(
あん
)
じつつ
204
吾
(
わが
)
垂乳根
(
たらちね
)
の
心
(
こころ
)
を
恨
(
うら
)
むも
205
いたづらに
平地
(
へいち
)
に
浪
(
なみ
)
を
起
(
おこ
)
したる
206
父
(
ちち
)
のすさびをかなしく
思
(
おも
)
ふ
207
父母
(
ちちはは
)
の
仇
(
あだ
)
なる
敵
(
てき
)
に
夕顔
(
ゆふがほ
)
の
208
君
(
きみ
)
は
心
(
こころ
)
をまかさざるべし』
209
斯
(
か
)
く
独
(
ひと
)
り
述懐
(
じゆつくわい
)
を
述
(
の
)
べ
居
(
ゐ
)
たる
折
(
をり
)
もあれ、
210
侍女
(
じぢよ
)
の
滝津瀬
(
たきつせ
)
、
211
山風
(
やまかぜ
)
の
両人
(
りやうにん
)
は、
212
各自
(
おのもおのも
)
茶
(
ちや
)
を
汲
(
く
)
み
菓子
(
くわし
)
を
捧
(
ささ
)
げながら
恭
(
うやうや
)
しくエームスの
前
(
まへ
)
に
進
(
すす
)
み
来
(
きた
)
り、
213
憂
(
うれ
)
ひに
沈
(
しづ
)
める
太子
(
わかぎみ
)
の
態
(
てい
)
をいぶかりがら
滝津瀬
(
たきつせ
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
214
『
滝津瀬
(
たきつせ
)
の
清水
(
しみづ
)
を
汲
(
く
)
みてわかしたる
215
お
湯
(
ゆ
)
召
(
め
)
し
上
(
あが
)
れエームスの
君
(
きみ
)
』
216
山風
(
やまかぜ
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
217
『
大栄山
(
おほさかやま
)
なぞへに
実
(
みの
)
りし
果実
(
くだもの
)
よ
218
いざ
召
(
め
)
し
上
(
あが
)
れ
生命
(
いのち
)
の
桃
(
もも
)
の
実
(
み
)
』
219
エームスは
黙然
(
もくねん
)
として、
220
侍女
(
じぢよ
)
が
捧
(
ささ
)
ぐる
茶
(
ちや
)
の
湯
(
ゆ
)
にも、
221
果実
(
このみ
)
にも、
222
手
(
て
)
を
附
(
つ
)
けようともせず
俯
(
うつむ
)
いてゐる。
223
滝津瀬
(
たきつせ
)
は
再
(
ふたた
)
び、
224
『
若王
(
わかぎみ
)
の
御
(
おん
)
面
(
おも
)
ざしのすぐれぬは
225
身
(
み
)
にいたづきのおはしますにや
226
若王
(
わかぎみ
)
の
今日
(
けふ
)
のよそほひ
見
(
み
)
るにつけて
227
かなしくなりぬ
滝津瀬
(
たきつせ
)
吾
(
われ
)
は
228
月
(
つき
)
も
日
(
ひ
)
も
隈
(
くま
)
なく
照
(
て
)
れる
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に
229
何
(
なに
)
歎
(
なげ
)
かすか
太子
(
ひつぎ
)
の
君
(
きみ
)
は
230
御心
(
みこころ
)
のなぐさむるならば
吾
(
わが
)
生命
(
いのち
)
231
若王
(
きみ
)
に
捧
(
ささ
)
ぐもいとはざるべし
232
朝夕
(
あさゆふ
)
に
若王
(
きみ
)
に
仕
(
つか
)
ふる
滝津瀬
(
たきつせ
)
も
233
今日
(
けふ
)
はさびしき
思
(
おも
)
ひするなり
234
若王
(
わかぎみ
)
のすぐれ
給
(
たま
)
はぬ
顔
(
かむばせ
)
を
235
拝
(
をが
)
みて
吾
(
われ
)
はくだくる
思
(
おも
)
ひす
236
一言
(
ひとこと
)
のいらへの
言葉
(
ことば
)
願
(
ねが
)
はしや
237
吾
(
われ
)
は
為
(
な
)
すべきすべもあらねば』
238
山風
(
やまかぜ
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
239
『
若王
(
わかぎみ
)
の
御
(
おん
)
面
(
おも
)
いたく
曇
(
くも
)
らへり
240
いかなる
悩
(
なや
)
みを
持
(
も
)
たせ
給
(
たま
)
ふか
241
咲
(
さ
)
き
匂
(
にほ
)
ふ
花
(
はな
)
をつれなく
吹
(
ふ
)
き
散
(
ち
)
らし
242
梢
(
こずゑ
)
清
(
すが
)
しき
山風
(
やまかぜ
)
の
吾
(
われ
)
243
いかならむ
悩
(
なや
)
みおはすか
知
(
し
)
らねども
244
山風
(
やまかぜ
)
吾
(
われ
)
は
吹
(
ふ
)
き
払
(
はら
)
ふべし
245
大栄
(
おほさか
)
の
山
(
やま
)
の
尾
(
を
)
の
上
(
へ
)
の
黒雲
(
くろくも
)
も
246
吹
(
ふ
)
き
散
(
ち
)
らすべし
小夜
(
さよ
)
の
山風
(
やまかぜ
)
247
若王
(
わかぎみ
)
の
心
(
こころ
)
の
雲霧
(
くもきり
)
払
(
はら
)
はむと
248
山風
(
やまかぜ
)
吾
(
われ
)
は
心
(
こころ
)
くだきつ』
249
エームスはかすかに
歌
(
うた
)
ふ。
250
『
滝津瀬
(
たきつせ
)
や
山風
(
やまかぜ
)
の
心
(
こころ
)
よみすれど
251
吾
(
わが
)
宣
(
の
)
る
言葉
(
ことば
)
なきがかなしき
252
朝
(
あさ
)
されば
朝顔
(
あさがほ
)
思
(
おも
)
ひ
夕
(
ゆふ
)
されば
253
夕顔
(
ゆうがほ
)
思
(
おも
)
ひてしめらふ
吾
(
われ
)
なり
254
木田川
(
きたがは
)
の
水
(
みづ
)
とこしへに
流
(
なが
)
るれど
255
いつか
晴
(
は
)
れなむ
心
(
こころ
)
の
闇
(
やみ
)
は
256
ほととぎす
朝
(
あした
)
夕
(
ゆふ
)
べの
分
(
わか
)
ちなく
257
鳴
(
な
)
きつる
空
(
そら
)
は
吾
(
わが
)
心
(
こころ
)
かも
258
月
(
つき
)
も
日
(
ひ
)
も
光
(
かげ
)
をかくせる
五月闇
(
さつきやみ
)
に
259
鳴
(
な
)
くほととぐす
吾
(
われ
)
ならなくに
260
滝津瀬
(
たきつせ
)
も
早
(
はや
)
く
寝
(
ね
)
よかし
山風
(
やまかぜ
)
も
261
吾
(
わが
)
前
(
まへ
)
を
去
(
さ
)
れ
小夜
(
さよ
)
更
(
ふ
)
けぬれば
262
吾
(
われ
)
は
只
(
ただ
)
思
(
おも
)
ひの
淵
(
ふち
)
に
沈
(
しづ
)
みつつ
263
闇
(
やみ
)
の
水音
(
みなおと
)
聞
(
き
)
きて
明
(
あか
)
さむ』
264
滝津瀬
(
たきつせ
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
265
『
若王
(
わかぎみ
)
の
御言
(
みこと
)
畏
(
かしこ
)
みいざさらば
266
まかり
退
(
さが
)
らむ
貴
(
うづ
)
の
御前
(
みまへ
)
を』
267
山風
(
やまかぜ
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
268
『
若王
(
わかぎみ
)
の
悲
(
かな
)
しき
心
(
こころ
)
ははかれども
269
せむすべもなき
吾
(
わが
)
身
(
み
)
なりけり』
270
斯
(
か
)
く
歌
(
うた
)
ひて
二人
(
ふたり
)
の
侍女
(
じぢよ
)
は
吾
(
わが
)
居間
(
ゐま
)
にすごすごと
帰
(
かへ
)
りゆく。
271
小夜更
(
さよふ
)
けの
空
(
そら
)
に
鳴
(
な
)
き
渡
(
わた
)
るほととぎすの
声
(
こゑ
)
、
272
四方
(
しはう
)
八方
(
はつぱう
)
よりしきりに
木田山
(
きたやま
)
城
(
じやう
)
の
森
(
もり
)
をかすめて
響
(
ひび
)
き
来
(
きた
)
る。
273
(
昭和九・八・一四
旧七・五
水明閣
谷前清子
謹録)
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