畏くも皇孫瓊々杵命は、天地経綸の薀奥を極致し給ひ、筑紫の日向の高千穂の久士布流多気に天降り坐て、万世一系の皇統を垂れ給へり。是に因りて詔たまはく『此地者向韓国真木通笠沙之御前而朝日之直刺国。夕日之日照国也。故此地甚吉地詔而。於底津石根。宮柱布斗斯理。於高天原日木高斯理而坐也』是れ神聖なる、皇祖御遺訓に示し給ふ所。嗚呼降臨の霊域、筑紫の日向国は、これ朝日の直射す国と詔給へる。所謂威弦の発溂的弯威あり。彼の桜島の爆発、高千穂の爆煙は、是百度維新の神威ならずとせんや。天下の無道、暗黒無明の世界を照し玉ふ、神聖なる大日本皇道の顕彰すべき事を知らしめ給へる、朝日の直射す曙光を示し給へるものなる可し。
現代物質文明の淵源地は、西欧諸国にして、是れ即ち夕日の日照る国なり。嗚呼夕日の日照る国、この国より御稜威の発せるは、即ち西欧米等の大戦乱は、皇運発展の導火線たる事、国祖の神諭に由りて明瞭なり。
(一) 敢て日本国と謂はず、世界を挙げて、累卵に陥りつつ在るは、目下の惨状なり。由来古今東西の聖哲が、世道人心を治安せむと欲して、唱導せる倫理、宗教、道徳、政治は、之を反復練習せる事幾千年、未だ以て真に社会を平和にし、人心を安息せしむる事能はざりき。然り而して幾種の宗教、幾種の道徳、幾種の倫理、幾種の政治は、各その学者の口に因りて主張せられ、各学派を樹立し、以て相凌轢する所、二千六百年以前の状態なりし、所謂神武天皇の詔ふところの
『遂使邑有君、村有長、各自分彊用相凌轢』と幾許の差異かあらむ。
(二) 上流社会と称して、美衣、美食、酒色に耽溺して、大厦高楼に起居し、尸位素餐、閑居不善を極むる者あり。中流社会と称し、営々として子女を教養し、租税の醸造的機関たる枢軸的階級あり。下流社会と称して、家族を挙げて、生活の物資を得るに、汲々乎として奔走し、以て生命糊口を凌ぎつつある者あり。
由来上中下流と称するも、人間として何の差別あるに非ず、人生の目的は、必ずしも生活するが為に生れたるに非ず。更に禽獣と相等しく、生活の物資を得るために、奔走すべきものなるの理由は断じて無かるべし。物資、財力、権威等の獲得を以て、現代人生経綸の本旨と為し、以て大は国際的の競争と、中は政権争奪に党を結び、小は個人として、各営利の為に相競争し、各自相凌轢して世に処するの状態は、是二千六百年以前に、神武天皇の詔給へる、所謂『遼遠之地猶未霑於王沢遂使邑有君、村有長、各自分彊用相凌轢』[#読み下し文──「遼邈なる地、猶未だ王沢に霑はず。遂に邑に君有り、村に長有りて、各自疆を分ちて、用て相凌ぎ躒はしむ」(岩波文庫『日本書紀(一)』P200)]此世態と幾許の差異あらんや。
(三) 畏れ多くも明治天皇は、教育の根本に関する、大勅語を国民に降下あらせ給ひ、
『斯道ハ実ニ我ガ皇祖皇宗ノ遺訓ニシテ、子孫臣民ノ倶ニ遵守スベキ所、之ヲ古今ニ通シテ謬ラス之ヲ中外ニ施シテ悖ラス、朕爾臣民ト倶ニ拳々服膺シテ、威其徳ヲ一ニセムコトヲ庶幾フ』と詔らせ給へり。
嗚呼日本国民にして、誰か此の大勅語の御本旨を奉体して、以て御国体の精華を発揮し奉り、天壌無窮の皇運を扶翼し奉り、以て祖先の遺風を顕彰したる。誰か、陛下の忠良なる臣民の資格を有する者あるか。六千万の同胞上下を問はず、滔々として世界の濁流に游泳して、私産を作り、虚栄を貪るに、敢て手段の善悪を問はず、偽善詐偽不倫行為が、根本的に天賦の徳器を破壊するも、更に毫も怪しまざるの現状なり。殊に日本の学者にして、神聖なる祖宗の御遺訓皇典古事記は、天武天皇の御勅語にして、斯乃邦家之経緯、王化之鴻基焉と記し給へる御神慮を知らず、恰も西洋印度等の神話と同一視し、布衍教導する洋学に心酔累感せる迂愚学者を輩出するに至れり。彼等は御国体の蝕虫、教育界の蠹魚たるなり。
嗚呼現代は、是れ弊政の窮極なり。無道の政治、無明の教育を以て、曷ぞ能く御国体の精華を発揮し奉る事を得むや。嗚呼、神聖なる皇祖の御遺訓、大日本皇道を奉体せざる輩、曷ぞ皇憲を運用し奉るの資格これ在らむや。
(四) 神武天皇詔曰
『是の時運鴻荒に属し、時は草眛に鍾る。故に蒙以て正を養ひ、此西の偏を治む』
嗚呼畏くも崇神天皇が和光同塵、以て世界統治の神策を建て給ひて以来、殆ど二千有余年、蒙倶以て正を養ひ給ひしが故に、御歴代の天皇が天歩艱難を凌ぎ忍び給ひけること、誠に惶き極みにこそ。皇運発展の時代は、畏くも陛下の御代に於て、万世一系の御天職を発揮し給ふに因りて、実現さる可き事は、炳乎たる事実なり。加之天運循環の神律は、日本国に幸ひ助け、天照り玉ふ言霊の復活と、国祖の神聖なる垂訓に因りて、皇道を顕彰し給ひ、以て現代の無道無明を照し給ふ可し、神聖なる天津日継天皇の御稜威を、八荒に照耀し給ひ、壮厳なる国祖国常立尊の神威は、暗黒界を照明して、天下に皇道を実現せられ、以て世の経綸を革正し、茲に神聖なる済世救民の御天職と、永遠の平和を保全し玉ふは明瞭なり。偉なる哉、日本皇国の天職や。