霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一八章 一心(いつしん)同体(どうたい)〔一二五一〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第47巻 舎身活躍 戌の巻 篇:第3篇 天国巡覧 よみ(新仮名遣い):てんごくじゅんらん
章:第18章 一心同体 よみ(新仮名遣い):いっしんどうたい 通し章番号:1251
口述日:1923(大正12)年01月10日(旧11月24日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年10月6日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
高天原の霊国および天国の天人は、人間が数時間を費やす雄弁な言語よりも、わずか二三分で簡単明瞭にその意志を通じることができる。天人の言語は優美と平和と愛善と信真に充ちているため、いかなる悪魔もその言葉に抵抗することはできない。
天国の言葉は善言美詞に充たされている。何事も善意に解し見直し聞き直し宣り直しという神律が行われている。
日の国の天国天人の言語はウとオの大父音多く、月の国の霊国天人の言語はエとイの大父音に富んでいる。天人はみな一様の言語を有し、現界人のように言語の違いや訛りはない。また面貌によってあらわす言語や、概念を見るように成した言葉など、さまざまな形容詞が使われている。
治国別と竜公はこの団体の統制者、珍彦・珍姫夫婦に導かれ、種々の花卉などで囲まれた麗しい邸宅に招待された。珍彦は鋭敏な証覚によって、治国別が肉体がありながら修業のために天国を訪れたことを悟ることができた。
珍彦は、治国別の知る言語を用いて談話をなした。珍彦は、今日は大神様の祭典日だから、その場で治国別が現界からの修行者であることを発表しようと伝えた。
竜公は、団体中は子供からせいぜい三十才くらいまでの者しか見当たらないわけを珍彦に尋ねた。珍彦は、精霊は不老不死であり、心は人間では二十才かから三十才くらいで成就するので、天国の住民はそのとおりの姿をしているのだと説明した。
天国の生活について珍彦は、天人各自、農工商に励み、互いに喜び勇んで事業に汗をかいて従事しており、上下一致、億兆一心にて大事にも小事にもあたるので、何事も完全無欠に成就すると説明した。
感心する治国別に珍彦は、すでに天国の団体に来った以上は、互いに心と知性が通じて融合統一しており、だからこそ相対座して話をすることができていると語った。だからこの心をいつまでも忘れなければ、地上へ下っても依然として天国の住民であると諭した。
三人が歓談に笑い興じている間に、珍彦の妻・珍姫が現れて挨拶をなした。竜公は、珍彦と珍彦の容貌がそっくりなことを尋ねた。珍彦は、天国の夫婦は愛と真の和合によって成立するから同心同体、相応の理によってこのようになるのだ、と説明した。
また竜公の諧謔については、滑稽として聴けばたとえ悪言暴語であっても、笑いによってたちまち善言美詞となるので心配することはないと諭した。
そのうちに一人の男が祭典の準備ができたと珍彦夫婦を呼びに来た。治国別と竜公も共に参加することになった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2023-04-30 17:36:38 文字数:6685 OBC :rm4718
愛善世界社版:245頁 八幡書店版:第8輯 563頁 修補版: 校定版:257頁 普及版:120頁 初版: ページ備考:
001 高天原(たかあまはら)の霊国(れいごく)及(および)天国(てんごく)の天人(てんにん)は、002人間(にんげん)が数時間(すうじかん)費(つひや)しての雄弁(ゆうべん)なる言語(げんご)よりも、003僅(わづか)に二三(にさん)分間(ぷんかん)にて、004簡単(かんたん)明瞭(めいれう)に其(その)意思(いし)を通(つう)ずることが出来(でき)る。005又(また)人間(にんげん)が数十(すうじつ)頁(ページ)の原稿(げんかう)にて書(か)き表(あら)はし得(え)ざる事(こと)も、006只(ただ)の一(いつ)頁(ページ)位(ぐらゐ)にて明白(めいはく)に其(その)意味(いみ)を現(あら)はすことが出来(でき)る、007又(また)それを聞(き)いたり読(よ)んだりする処(ところ)の天人(てんにん)も能(よ)く会得(ゑとく)し得(う)るものである。008凡(すべ)て天人(てんにん)の言語(げんご)は優美(いうび)と平和(へいわ)と愛善(あいぜん)と信真(しんしん)に充(み)ちて居(ゐ)るが故(ゆゑ)に、009如何(いか)なる悪魔(あくま)と雖(いへど)も、010其(その)言葉(ことば)には抵抗(ていかう)する事(こと)が出来(でき)ない。011すべて天国(てんごく)の言葉(ことば)は善言(ぜんげん)美詞(びし)に充(み)たされてゐるからである。012さうして何事(なにごと)も善意(ぜんい)に解(かい)し見直(みなほ)し聞直(ききなほ)し宣直(のりなほ)しといふ神律(しんりつ)が行(おこな)はれてゐる。013それから日(ひ)の国(くに)即(すなは)ち天国(てんごく)天人(てんにん)の言語(げんご)には、014ウとオとの大父音(だいふおん)多(おほ)く、015月(つき)の国(くに)即(すなは)ち霊国(れいごく)天人(てんにん)の言語(げんご)にはエとイの大父音(だいふおん)に富(と)んでゐる。016而(しか)して声音(せいおん)の中(うち)には何(いづ)れも愛(あい)の情動(じやうどう)がある。017善(ぜん)を含(ふく)める言葉(ことば)や文字(もじ)は多(おほ)くはウとオを用(もち)ひ、018又(また)少(すこ)しくアを用(もち)ふるものである。019真(しん)を含(ふく)んでゐる言葉(ことば)や文字(もじ)にはエ及(およ)びイの音(おん)が多(おほ)い。020そして天人(てんにん)は皆(みな)一様(いちやう)の言語(げんご)を有(いう)し、021現界人(げんかいじん)の如(ごと)く東西洋(とうざいやう)を隔(へだ)つるに従(したが)つて、022其(その)言語(げんご)に変化(へんくわ)があり、023或(あるひ)は地方(ちはう)々々(ちはう)にいろいろの訛(なまり)がある様(やう)な不都合(ふつがふ)はない。024されども、025ここに少(すこ)し相違(さうゐ)のある点(てん)は証覚(しようかく)に充(みた)された者(もの)の言語(げんご)は、026凡(すべ)て内的(ないてき)にして、027情動(じやうだう)の変化(へんくわ)に富(と)み且(か)つ想念(さうねん)上(じやう)の概念(がいねん)を最(もつと)も多(おほ)く含(ふく)んでゐる。028証覚(しようかく)の少(すくな)い者(もの)の言語(げんご)は外的(ぐわいてき)にして、029又(また)しかく充分(じうぶん)でない。030愚直(ぐちよく)なる天人(てんにん)の言語(げんご)に至(いた)りては、031往々(わうわう)外的(ぐわいてき)にして、032人間(にんげん)相互(さうご)の間(あひだ)に於(お)けるが如(ごと)く、033語句(ごく)の中(なか)から其(その)意義(いぎ)を推度(すゐたく)せなくてはならぬ事(こと)がある。034又(また)面貌(めんばう)を以(もつ)てする言葉(ことば)がある。035此(この)言語(げんご)は概念(がいねん)に依(よ)つて抑揚(よくやう)頓挫(とんざ)曲折(きよくせつ)の音声(おんせい)を発(はつ)すが如(ごと)きものにて其(その)終局(しうきよく)を結(むす)ぶものもある。036又(また)天界(てんかい)の表像(へうざう)を概念(がいねん)に和合(わがふ)せしめたる言葉(ことば)がある。037又(また)概念(がいねん)を自(おのづか)らに見(み)る様(やう)、038成(な)したる言葉(ことば)もある。039又(また)情動(じやうだう)に相似(さうじ)したる身振(みぶり)を以(もつ)てなす語(ご)もある。040此(この)身振(みぶり)は其(その)言句(げんく)にて現(あら)はれる事物(じぶつ)と相似(あひに)たるものを現(あら)はしてゐる。041又(また)諸情動(しよじやうだう)及(および)諸概念(しよがいねん)の一般(いつぱん)的(てき)原義(げんぎ)を以(もつ)てする言葉(ことば)がある。042又(また)雷鳴(らいめい)の如(ごと)き言葉(ことば)もあり其(その)外(ほか)種々(しゆじゆ)雑多(ざつた)な形容詞(けいようし)が使(つか)はれてある。
043 治国別(はるくにわけ)、044竜公(たつこう)は団体(だんたい)の統制者(とうせいしや)に導(みちび)かれ、045種々(しゆじゆ)の花卉(くわき)等(など)を以(もつ)て取囲(とりかこ)まれた相当(さうたう)に美(うる)はしき邸宅(ていたく)に入(い)る事(こと)を得(え)た。046此処(ここ)は此(この)団体(だんたい)の中心(ちうしん)に当(あた)り他(た)の天人(てんにん)は櫛比(しつぴ)したる家屋(かをく)に住(す)んでゐるにも拘(かかは)らず、047一戸(いつこ)分立(ぶんりつ)して建(た)つてゐる。048現界(げんかい)にて言(い)へば丁度(ちやうど)町村長(ちやうそんちやう)の様(やう)な役(やく)を勤(つと)めてゐる天人(てんにん)の宅(たく)である。049二人(ふたり)は案内(あんない)されて奥(おく)の間(ま)に進(すす)むと、050真善美(しんぜんび)といふ額(がく)がかけられ、051そして床(とこ)の間(ま)には七宝(しつぽう)を以(もつ)て欄間(らんま)が飾(かざ)られ、052玻璃(はり)水晶(すゐしやう)の茶器(ちやき)などがキチンと行儀(ぎやうぎ)よく配置(はいち)され、053珊瑚珠(さんごじゆ)の火鉢(ひばち)に金瓶(きんびん)がかけられてある。054ここは第二(だいに)天国(てんごく)に於(おい)ても最(もつと)も証覚(しようかく)の秀(すぐ)れたる天人(てんにん)の団体(だんたい)であり、055主人(しゆじん)夫婦(ふうふ)の面貌(めんばう)や衣服(いふく)は特(とく)に他(た)の天人(てんにん)に比(ひ)して秀(すぐ)れて居(ゐ)る。056治国別(はるくにわけ)は恐(おそ)る恐(おそ)る奥(おく)の間(ま)に導(みちび)かれ、057無言(むごん)の儘(まま)行儀(ぎやうぎ)よく坐(すわ)つてゐる。058此(この)天人(てんにん)の名(な)は珍彦(うづひこ)といひ、059妻(つま)は珍姫(うづひめ)と云(い)つた。060珍彦(うづひこ)は治国別(はるくにわけ)の未(いま)だ現界(げんかい)に肉体(にくたい)があり精霊(せいれい)として神(かみ)に許(ゆる)され、061修業(しうげふ)の為(ため)に天国(てんごく)巡覧(じゆんらん)に来(きた)りし事(こと)を、062其(その)鋭敏(えいびん)なる証覚(しようかく)に仍(よ)つて吾(わが)居間(ゐま)に通(とほ)すと共(とも)に悟(さと)り得(え)たのである。063ここに珍彦(うづひこ)は始(はじ)めて治国別(はるくにわけ)の知(し)れる範囲内(はんゐない)の言語(げんご)を用(もち)ひて、064いろいろの談話(だんわ)を交(まじ)ゆることとなつた。
065珍彦『治国別(はるくにわけ)さま、066あなたは未(ま)だ精霊(せいれい)でゐらつしやいますのですな。067実(じつ)の所(ところ)は天国(てんごく)に復活(ふくくわつ)なされた方(かた)と存(ぞん)じまして、068其(その)考(かんが)へで待遇(たいぐう)致(いた)しましたので嘸(さぞ)お困(こま)りで厶(ござ)いましただらう』
069治国別『ハイ、070実(じつ)の所(ところ)はイソの館(やかた)から大神(おほかみ)様(さま)の命(めい)を奉(ほう)じ、071月(つき)の国(くに)ハルナの都(みやこ)に蟠(わだか)まる八岐(やまた)大蛇(をろち)の悪霊(あくれい)を言向和(ことむけやは)すべく出陣(しゆつぢん)の途中(とちう)、072浮木(うきき)ケ原(はら)に於(おい)て、073吾(わが)不覚(ふかく)の為(ため)ランチ将軍(しやうぐん)の奸計(かんけい)に陥(おちい)り、074深(ふか)き暗(くら)き穴(あな)に落(おと)され、075吾(わが)精霊(せいれい)は肉体(にくたい)を脱離(だつり)して、076いつとはなしに八衢(やちまた)に迷(まよ)ひ込(こ)み、077大神(おほかみ)の化身(けしん)に導(みちび)かれ、078第三(だいさん)天国(てんごく)の一部分(いちぶぶん)を覗(のぞ)かして頂(いただ)き、079又(また)もや木花姫(このはなひめ)の御(ご)案内(あんない)に依(よ)つて、080ここ迄(まで)昇(のぼ)つて来(き)た所(ところ)で厶(ござ)います。081何分(なにぶん)善(ぜん)と真(しん)が備(そな)はらず、082智慧(ちゑ)証覚(しようかく)が足(た)らない者(もの)で厶(ござ)いますから、083天人(てんにん)達(たち)の言語(げんご)を解(かい)しかね、084大変(たいへん)に面喰(めんくら)ひましたよ。085丸(まる)で唖(おし)の旅行(りよかう)でしたワ。086アハヽヽヽ』
087珍彦『どうぞ、088ゆるりと珍彦館(うづひこやかた)で御(ご)休息(きうそく)下(くだ)さいませ。089今日(けふ)は幸(さいは)ひ、090大神(おほかみ)様(さま)の祭典日(さいてんび)で厶(ござ)いますれば、091やがて団体(だんたい)の天人(てんにん)共(ども)が吾(わが)館(やかた)へ集(あつ)まつて参(まゐ)るでせう。092其(その)時(とき)は此(この)団体(だんたい)に限(かぎ)つて、093あなたの精霊(せいれい)にゐらせられる事(こと)を発表(はつぺう)致(いた)します。094さうすれば、095吾(わが)団体(だんたい)の天人(てんにん)は其(その)積(つも)りで、096あなたと言葉(ことば)を交(まじ)へるでせう』
097治国別『ハイ、098有難(ありがた)う厶(ござ)います。099何分(なにぶん)勝手(かつて)を知(し)らない愚鈍(ぐどん)な人間(にんげん)で厶(ござ)いますから……』
100竜公『これはこれは珍彦(うづひこ)様(さま)、101偉(えら)い御(ご)厄介(やくかい)に預(あづ)かりました。102先生(せんせい)を何分(なにぶん)宜(よろ)しく御(お)願(ねがひ)致(いた)します』
103珍彦『イエイエ、104決(けつ)して私(わたくし)があなたの御(お)世話(せわ)をしたのぢや厶(ござ)いませぬ。105又(また)御(ご)厄介(やくかい)になつたなぞと礼(れい)を言(い)はれては大変(たいへん)に迷惑(めいわく)を致(いた)します。106何事(なにごと)も吾々(われわれ)は大神(おほかみ)様(さま)の御(ご)命令(めいれい)のままに、107機械(きかい)的(てき)に活動(くわつどう)してゐるので厶(ござ)いますから、108もし一(ひと)つでも感謝(かんしや)すべき事(こと)があれば、109直様(すぐさま)大神(おほかみ)様(さま)に感謝(かんしや)して下(くだ)さいませ。110すべて吾々(われわれ)は大神(おほかみ)様(さま)の善(ぜん)と真(しん)との内流(ないりう)に依(よ)つて働(はたら)かして頂(いただ)くばかりで厶(ござ)います。111吾々(われわれ)天人(てんにん)として何(ど)うして一力(いちりき)で虫(むし)一匹(いつぴき)助(たす)けることが出来(でき)ませう』
112治国(はるくに)『成程(なるほど)、113さすが天国(てんごく)の天人(てんにん)様(さま)、114真理(しんり)に明(あか)るいのには感服(かんぷく)の外(ほか)厶(ござ)いませぬ』
115珍彦『神(かみ)様(さま)の御(ご)神格(しんかく)の内流(ないりう)を受(う)けまして、116実(じつ)に楽(たの)しき生涯(しやうがい)を、117吾々(われわれ)天人(てんにん)は送(おく)らして頂(いただ)いて居(を)ります』
118竜公(たつこう)『モシ珍彦(うづひこ)様(さま)、119此(この)団体(だんたい)の天人(てんにん)は、120何(いづ)れも若(わか)い方(かた)ばかりですな。121そしてどのお方(かた)の顔(かほ)を見(み)ても、122本当(ほんたう)に能(よ)く似(に)てゐるぢやありませぬか』
123珍彦『左様(さやう)です、124人間(にんげん)の面貌(めんばう)は心(こころ)の鏡(かがみ)で厶(ござ)いますから、125愛(あい)の善(ぜん)に充(み)ちた者(もの)同士(どうし)同気(どうき)相求(あひもと)めて群居(ぐんきよ)してゐるのですから、126内分(ないぶん)の同(おな)じき者(もの)は従(したが)つて外分(ぐわいぶん)も相似(あひに)るもので厶(ござ)います。127それ故(ゆゑ)天国(てんごく)の団体(だんたい)には余(あま)り変(かは)つた者(もの)が厶(ござ)いませぬ。128心(こころ)が一(ひと)つですからヤハリ面貌(めんばう)も姿(すがた)も同(おな)じ型(かた)に出来(でき)て居(を)ります』
129竜公『成程(なるほど)、130それで分(わか)りました。131併(しか)しながら子供(こども)は沢山(たくさん)ある様(やう)ですが、132三十(さんじふ)以上(いじやう)の面貌(めんばう)をした老人(らうじん)は根(ね)つから見当(みあた)りませぬが、133天国(てんごく)の養老院(ようらうゐん)にでも御(ご)収容(しうよう)になつてゐるのですか』
134珍彦『人間(にんげん)の心霊(しんれい)は不老(ふらう)不死(ふし)ですよ。135天人(てんにん)だとて人間(にんげん)の向上(かうじやう)発達(はつたつ)したものですから、136人間(にんげん)の心(こころ)は男(をとこ)ならば三十(さんじつ)才(さい)、137女(をんな)ならば二十(にじつ)才(さい)位(くらゐ)で、138大抵(たいてい)完全(くわんぜん)に成就(じやうじゆ)するでせう、139而(しか)して仮令(たとへ)肉体(にくたい)は老衰(らうすゐ)しても其(その)心(こころ)はどこ迄(まで)も弱(よわ)りますまい。140否(いな)益々(ますます)的確(てきかく)明瞭(めいれう)になるものでせう。141天国(てんごく)は凡(すべ)て想念(さうねん)の世界(せかい)で、142すべて事物(じぶつ)が霊的(れいてき)で厶(ござ)いますから、143現界(げんかい)に於(おい)て何程(なにほど)老人(らうじん)であつた所(ところ)が天国(てんごく)の住民(ぢゆうみん)となれば、144あの通(とほ)り、145男子(だんし)は三十(さんじつ)才(さい)、146女子(ぢよし)は二十(にじつ)才(さい)位(くらゐ)な面貌(めんばう)や肉付(にくづき)をしてゐるのです。147それだから天国(てんごく)にては不老(ふらう)不死(ふし)と云(い)つて、148いまはしい老病(らうびやう)生死(せいし)の苦(く)は絶対(ぜつたい)にありませぬ』
149治国別『成程(なるほど)、150感心(かんしん)致(いた)しました。151吾々(われわれ)は到底(たうてい)容易(ようい)に肉体(にくたい)を脱離(だつり)した所(ところ)で、152天国(てんごく)の住民(ぢゆうみん)になるのは六ケ(むつか)しいものですなア。153いつ迄(まで)も中有(ちうう)に迷(まよ)ふ八衢(やちまた)人間(にんげん)でせう。154実(じつ)にあなた方(がた)の光明(くわうみやう)に照(て)らされて、155治国別(はるくにわけ)は何(なん)とも慚愧(ざんき)に堪(た)へませぬ』
156珍彦『イヤ決(けつ)して御(ご)心配(しんぱい)は要(い)りませぬ。157あなたはキツト或(ある)時機(じき)が到来(たうらい)して、158肉体(にくたい)を脱離(だつり)し給(たま)うた時(とき)は、159立派(りつぱ)なる霊国(れいごく)の宣伝使(せんでんし)にお成(な)りなさいますよ。160如何(いか)なる水晶(すゐしやう)の水(みづ)も氷(こほり)とならば忽(たちま)ち不透明(ふとうめい)となります。161あなたの今日(こんにち)の情態(じやうたい)は即(すなは)ち其(その)氷(こほり)です。162一度(ひとたび)光熱(くわうねつ)に会(あ)うて元(もと)の水(みづ)に復(かへ)れば、163依然(いぜん)として水晶(すゐしやう)の清水(せいすゐ)です。164肉体(にくたい)のある間(あひだ)は、165何程(なにほど)善人(ぜんにん)だといつても証覚(しようかく)が強(つよ)いと云(い)つても、166肉体(にくたい)といふ悪分子(あくぶんし)に遮(さへぎ)られますから、167之(これ)は止(や)むを得(え)ませぬ。168併(しか)し肉体(にくたい)の保護(ほご)の上(うへ)に於(おい)て、169少々(せうせう)の悪(あく)も必要(ひつえう)であります。170精霊(せいれい)も人間(にんげん)もヤハリ此(この)体悪(たいあく)の為(ため)に現界(げんかい)に於(おい)ては生命(せいめい)を保持(ほぢ)し得(う)るのですからなア』
171治国別『ヤ有難(ありがた)う、172其(その)御(ご)説明(せつめい)に仍(よ)つて、173私(わたし)も稍(やや)安心(あんしん)を致(いた)しました。174あゝ大神(おほかみ)様(さま)、175珍彦(うづひこ)様(さま)の口(くち)を通(とほ)して、176尊(たふと)き教(をしへ)を垂(た)れさせ給(たま)ひ、177実(じつ)に感謝(かんしや)に堪(た)へませぬ。178あゝ惟神(かむながら)霊(たま)幸(ち)はへませ』
179竜公(たつこう)『天国(てんごく)に於(おい)ては、180すべての天人(てんにん)は日々(にちにち)何(なに)を職業(しよくげう)にしてゐられるのですか。181田畑(たはた)もある様(やう)なり、182いろいろの果樹(くわじゆ)も作(つく)つてある様(やう)ですが、183あれは何処(どこ)から来(き)て作(つく)るのですか』
184珍彦『天人(てんにん)が各自(かくじ)に農工商(のうこうしやう)を励(はげ)み、185互(たがひ)に喜(よろこ)び勇(いさ)んで、186其(その)事業(じげふ)に汗(あせ)をかいて、187従事(じゆうじ)してゐるのですよ』
188竜公『さうすると、189天国(てんごく)でも随分(ずゐぶん)現界(げんかい)同様(どうやう)に忙(いそが)しいのですなア』
190珍彦『現界(げんかい)の様(やう)に天国(てんごく)にては人(ひと)を頤(あご)で使(つか)ひ、191自分(じぶん)は金(かね)の利息(りそく)や株(かぶ)の収益(しうえき)で遊(あそ)んで暮(くら)す人間(にんげん)はありませぬ。192上(うへ)から下(した)迄(まで)心(こころ)を一(ひと)つにして共々(ともども)に働(はたら)くのですから、193何事(なにごと)も埓(らち)よく早(はや)く事業(じげふ)がはか取(ど)ります。194丁度(ちやうど)一団体(いちだんたい)は人間(にんげん)一人(ひとり)の形式(けいしき)となつて居(を)ります。195例(たと)へばペン一本(いつぽん)握(にぎ)つて原稿(げんかう)を書(か)くにも、196外観(ぐわいくわん)から見(み)れば一方(いつぱう)の手(て)のみが働(はたら)いてゐるやうに見(み)えますが、197其(その)実(じつ)は脳髄(なうずゐ)も心臓(しんざう)肺臓(はいざう)は申(まを)すに及(およ)ばず、198神経(しんけい)繊維(せんゐ)から運動(うんどう)機関(きくわん)、199足(あし)の趾(ゆび)の先(さき)まで緊張(きんちやう)してゐる様(やう)なものです。200今日(こんにち)の現界(げんかい)のやり方(かた)は、201ペンを持(も)つ手(て)のみを動(うご)かして、202はたの諸官能(しよくわんのう)は我(われ)関(くわん)せず焉(えん)といふ行方(やりかた)、203それでは迚(とて)も治(をさ)まりませぬ。204天国(てんごく)では上下(しやうか)一致(いつち)、205億兆(おくてう)一心(いつしん)、206大事(だいじ)にも小事(せうじ)にも当(あた)るのですから、207何事(なにごと)も完全(くわんぜん)無欠(むけつ)に成就(じやうじゆ)致(いた)しますよ。208人間(にんげん)の肉体(にくたい)が一(いち)日(にち)働(はたら)いて夜(よる)になつたら、209凡(すべ)てを忘(わす)れて、210安々(やすやす)と眠(ねむ)りにつく如(ごと)く、211休(やす)む時(とき)は又(また)団体(だんたい)一同(いちどう)に快(こころ)よく休(やす)むのです。212私(わたし)は天人(てんにん)の団体(だんたい)より選(えら)まれて、213団体長(だんたいちやう)を勤(つと)めて居(を)りますが、214私(わたし)の心(こころ)は団体(だんたい)一同(いちどう)の心(こころ)、215団体(だんたい)一同(いちどう)の心(こころ)は私(わたし)の心(こころ)で厶(ござ)いますから……』
216治国(はるくに)『成程(なるほど)、217現界(げんかい)も此(この)通(とほ)りになれば、218地上(ちじやう)に天国(てんごく)が築(きづ)かれるといふものですなア。219仮令(たとへ)一(いち)日(にち)なりとも、220こんな生涯(しやうがい)を送(おく)りたいものです。221天国(てんごく)の団体(だんたい)と和合(わがふ)する想念(さうねん)の生涯(しやうがい)が送(おく)りたいもので厶(ござ)います』
222珍彦『あなたは已(すで)に天国(てんごく)の団体(だんたい)にお出(い)でになつた以上(いじやう)は、223私(わたし)の心(こころ)はあなたの心(こころ)、224あなたの智性(ちせい)は私(わたし)の智性(ちせい)、225融合(ゆうがふ)統一(とういつ)して居(を)ればこそ、226かうして相対坐(あひたいざ)してお話(はなし)をすることが出来(でき)るのですよ。227只今(ただいま)の心(こころ)を何時(いつ)迄(まで)もお忘(わす)れにならなかつたならば、228所謂(いはゆる)あなたは、229仮令(たとへ)地上(ちじやう)へ降(くだ)られても天国(てんごく)の住民(ぢゆうみん)ですよ。230併(しか)しながら、231あなたは大神(おほかみ)様(さま)より現界(げんかい)の宣伝使(せんでんし)と選(えら)まれ、232死後(しご)は霊国(れいごく)へ昇(のぼ)つて宣伝使(せんでんし)となり、233天国(てんごく)布教(ふけう)の任(にん)に当(あた)らるべき方(かた)ですから、234到底(たうてい)其(その)時(とき)は、235吾々(われわれ)の智慧(ちゑ)証覚(しようかく)はあなたのお側(そば)に寄(よ)り付(つ)く事(こと)も出来(でき)ない様(やう)になりますよ。236あなたが霊国(れいごく)の宣伝使(せんでんし)にお成(な)りなさつた時(とき)は、237吾(わが)団体(だんたい)へも時々(ときどき)御(ご)出張(しゆつちやう)を願(ねが)ふ事(こと)が出来(でき)るでせう』
238治国別『成程(なるほど)、239さう承(うけたま)はればさうに間違(まちが)ひは厶(ござ)いませぬ』
240竜公『先生(せんせい)、241慢心(まんしん)しちや可(い)けませぬよ』
242治国別『イヤ、243決(けつ)して慢心(まんしん)でない、244珍彦(うづひこ)様(さま)の心(こころ)は治国別(はるくにわけ)の心(こころ)と和合(わがふ)し、245治国別(はるくにわけ)の心(こころ)は珍彦(うづひこ)様(さま)と和合(わがふ)し、246珍彦(うづひこ)様(さま)は大神(おほかみ)様(さま)の内流(ないりう)を受(う)け、247大神(おほかみ)様(さま)と和合(わがふ)して厶(ござ)るのだから、248少(すこ)しも疑(うたが)ふ余地(よち)はない。249お言葉(ことば)を信(しん)ずればいいのだ。250高天原(たかあまはら)には愛善(あいぜん)と信真(しんしん)とより外(ほか)には無(な)いのだ。251疑(うたがひ)を抱(いだ)くのは中有界(ちううかい)以下(いか)の精霊(せいれい)の所為(しよゐ)だ』
252竜公『さうすると、253あなたは已(すで)に天人(てんにん)気取(きど)りになつてゐるのですか、254まだ精霊(せいれい)ぢやありませぬか』
255治国別『已(すで)に天人(てんにん)となつてゐるのだ。256珍彦(うづひこ)様(さま)も同様(どうやう)だ』
257竜公『ヘーン、258さうですか、259そら結構(けつこう)です、260お目出度(めでた)う、261そして此(この)竜公(たつこう)は何(ど)うですか、262ヤツパリ天人(てんにん)でせうなア』
263治国別『無論(むろん)天人(てんにん)様(さま)だ。264大神(おほかみ)様(さま)の御(ご)内流(ないりう)を受(う)けた尊(たふと)き天人(てんにん)様(さま)だよ』
265竜公『何(なん)だか乗(の)せられてゐる様(やう)な気(き)が致(いた)しますワ。266モシ、267先生(せんせい)、268からかつちや可(い)けませぬよ』
269珍彦(うづひこ)『アハヽヽヽ』
270治国(はるくに)『ウツフヽヽヽ』
271竜公(たつこう)『オホヽヽヽ』
272治国別『コレ竜公(たつこう)、273オホヽヽヽなんて、274おチヨボ口(ぐち)をして女(をんな)の声(こゑ)を出(だ)しちや、275みつともよくないぢやないか』
276竜公『木花姫(このはなひめ)様(さま)の御(ご)神格(しんかく)の内流(ないりう)によりまして、277善(ぜん)と真(しん)との相応(さうおう)に依(よ)り、278忽(たちま)ち神格化(しんかくくわ)し、279竜公(たつこう)は何(なに)も知(し)らねども、280内分(ないぶん)の神音(しんおん)が外分(ぐわいぶん)に顕現(けんげん)したまでですよ。281オツホヽヽヽ』
282 三(さん)人(にん)の笑(わら)ひ声(ごゑ)に引(ひき)つけられて、283勝手元(かつてもと)に在(あ)つた珍姫(うづひめ)は此(この)場(ば)に現(あら)はれ来(きた)り、284三(さん)人(にん)の前(まへ)に手(て)を仕(つか)へ、
285珍姫『遠来(ゑんらい)のお客様(きやくさま)、286よくもゐらせられました。287私(わたし)は珍彦(うづひこ)の妻(つま)珍姫(うづひめ)と申(まを)します』
288治国(はるくに)『何(なん)と御(ご)挨拶(あいさつ)を申(まを)してよいやら、289天国(てんごく)の様子(やうす)は一向(いつかう)不案内(ふあんない)、290併(しか)しながら今(いま)珍彦(うづひこ)様(さま)に承(うけたま)はれば、291同気(どうき)相求(あひもと)むるを以(もつ)て、292かく和合(わがふ)の境遇(きやうぐう)にありとのこと、293さすればあなたの心(こころ)は私(わたし)の心(こころ)、294私(わたし)の心(こころ)は貴女(あなた)の心(こころ)、295他人(たにん)行儀(ぎやうぎ)の挨拶(あいさつ)も出来(でき)ず、296又(また)自分(じぶん)と同様(どうやう)とすれば、297自分(じぶん)に対(たい)しての挨拶(あいさつ)も分(わか)らず、298実(じつ)は困(こま)つてをります』
299珍姫『ハイ私(わたくし)も其(その)通(とほ)りで厶(ござ)います。300現界(げんかい)的(てき)虚礼虚式(きよれいきよしき)は止(や)めまして、301万(まん)年(ねん)の知己(ちき)、302否(いな)同心(どうしん)同体(どうたい)となつて、303打解(うちと)け合(あ)うて、304珍(めづ)らしき話(はなし)を聞(き)かして頂(いただ)きませう』
305治国別『どうも現界(げんかい)の話(はなし)は罪悪(ざいあく)と虚偽(きよぎ)と汚穢(をわい)にみち、306かかる清浄(せいじやう)なる天国(てんごく)へ参(まゐ)りましては、307口(くち)にするも厭(いや)になつて参(まゐ)りました。308それよりも天国(てんごく)のお話(はなし)を承(うけたま)はりたいもので厶(ござ)います』
309珍姫『ハイ、310惟神(かむながら)の許(ゆる)しを得(え)ましたならば、311あなたが何程(なにほど)喧(やかま)しいと仰有(おつしや)つても、312如何(いか)なることを申上(まをしあ)げるか分(わか)りませぬ。313弓弦(ゆづる)をはなれた矢(や)のやうに、314当(あた)る的(まと)に当(あた)らねばやまないでせう、315ホツホヽヽヽ』
316竜公(たつこう)『モシ珍姫(うづひめ)さま、317あなたは珍彦(うづひこ)さまと服装(ふくさう)が違(ちが)ふ丈(だけ)で、318お顔(かほ)はソツクリぢやありませぬか。319ヨモヤ現界(げんかい)に於(おい)て双児(ふたご)にお生(うま)れになつたのぢやありますまいかなア』
320治国別『コレ竜公(たつこう)、321何(なん)といふ失礼(しつれい)なことを仰有(おつしや)る。322チツトたしなみなさい』
323竜公『それでも私(わたし)の心(こころ)に浮(うか)んだのですよ。324思(おも)ふ所(ところ)を言(い)ひ、325志(こころざ)す所(ところ)をなすのが天国(てんごく)ぢやありませぬか。326そんな体裁(ていさい)を作(つく)つて、327現界流(げんかいりう)に虚偽(きよぎ)を飾(かざ)るやうなことは天国(てんごく)には用(もち)ひられますまい。328天国(てんごく)は信(しん)の真(しん)を以(もつ)て光(ひかり)とするのですからなア』
329治国別『ヤ、330恐(おそ)れ入(い)りました、331アハヽヽヽ、332天国(てんごく)へ出(で)て来(く)ると、333治国別(はるくにわけ)も失敗(しつぱい)だらけだ。334かうなると純朴(じゆんぼく)な無垢(むく)な竜公(たつこう)さまは実(じつ)に尊(たふと)いものだな』
335竜公『ソリヤ其(その)通(とほ)りです、336本当(ほんたう)に清(きよ)らかなものでせう。337ホツホヽヽヽ』
338治国別『又(また)木花姫(このはなひめ)の御(ご)神格(しんかく)の内流(ないりう)かな』
339竜公『これは竜公(たつこう)の副守(ふくしゆ)の外流(ぐわいりう)ですよ。340モシ珍彦(うづひこ)さま、341どうぞ私(わたし)の今(いま)の言葉(ことば)が天国(てんごく)を汚(けが)す様(やう)なことが厶(ござ)いますれば直(ただち)に宣(の)り直(なほ)します』
342珍彦『滑稽(こつけい)として承(うけたま)はれば、343仮令(たとへ)悪言(あくげん)暴語(ばうご)でも其(その)笑(わら)ひに仍(よ)つて忽(たちま)ち善言(ぜんげん)美詞(びし)と変化(へんくわ)致(いた)しますから、344御(ご)心配(しんぱい)なさいますな。345天国(てんごく)だつて滑稽(こつけい)諧謔(かいぎやく)が云(い)へないといふことがありますか、346滑稽(こつけい)諧謔(かいぎやく)歓声(くわんせい)は天国(てんごく)の花(はな)ですよ』
347竜公『ヤア有難(ありがた)い、348先生(せんせい)、349これで私(わたし)も少(すこ)し息(いき)が出来(でき)ますワイ』
350治国別『ウン、351さうだなア、352何(なん)だか私(わし)は身(み)がしまる様(やう)にあつて、353何(ど)うしてもお前(まへ)の様(やう)に洒脱(しやだつ)な気分(きぶん)になれないワ』
354竜公『ソラさうでせう、355娑婆(しやば)の執着(しふちやく)がまだ残(のこ)つて居(を)りますからな。356あなたは再(ふたた)び肉体(にくたい)へ帰(かへ)らうといふ欲(よく)があるでせう。357私(わたし)は第三(だいさん)天国(てんごく)でいつたでせう、358最早(もはや)娑婆(しやば)へは帰(かへ)りたくないから、359此処(ここ)に居(を)りたいと言(い)つたことを覚(おぼ)えてゐらつしやいませう。360私(わたし)は仮令(たとへ)再(ふたた)び現界(げんかい)へ帰(かへ)るものとしても、361刹那心(せつなしん)ですからなア。362過去(くわこ)を憂(うれ)へず未来(みらい)を望(のぞ)まず、363今(いま)といふ此(この)瞬間(しゆんかん)は善悪(ぜんあく)正邪(せいじや)の分水嶺(ぶんすゐれい)といふ三五教(あななひけう)の真理(しんり)を体得(たいとく)してますからなア』
364治国別『大変(たいへん)な掘出物(ほりだしもの)を、365治国別(はるくにわけ)は捉(とら)まへたものだなア』
366竜公『本当(ほんたう)に掘出物(ほりだしもの)でせう。367先生(せんせい)もこれだけ竜公(たつこう)に証覚(しようかく)が開(ひら)けてるとは思(おも)はなかつたでせう。368それだから人(ひと)は見(み)かけによらぬものだと現界(げんかい)でも言(い)つてませう』
369治国別『ハイ有難(ありがた)う、370何分(なにぶん)宜(よろ)しう願(ねが)ひます』
371竜公『口先(くちさき)ばかりでは駄目(だめ)ですよ。372心(こころ)の底(そこ)から有難(ありがた)う思(おも)つてゐますか、373まだ少(すこ)しあなたの心(こころ)の底(そこ)には、374竜公(たつこう)に対(たい)し稍(やや)軽侮(けいぶ)の念(ねん)が閃(ひらめ)いてゐるでせう』
375治国別『ヤ恐(おそ)れ入(い)りました、376あなたは大神(おほかみ)様(さま)で厶(ござ)いませう』
377竜公『大神(おほかみ)様(さま)ぢや厶(ござ)いませぬ。378吾(わが)精霊(せいれい)に大神(おほかみ)様(さま)の神格(しんかく)が充(み)ち、379竜公(たつこう)の口(くち)を通(とほ)して、380治国別(はるくにわけ)にお諭(さと)しになつてゐるのですよ。381時(とき)に珍彦(うづひこ)さま、382奥(おく)さまとあなたと双児(ふたご)の様(やう)に能(よ)く似(に)た御(ご)面相(めんさう)、383其(その)理由(りいう)を一(ひと)つ説明(せつめい)して頂(いただ)きたいものですなア』
384珍彦『夫婦(ふうふ)は愛(あい)と信(しん)との和合(わがふ)に依(よ)つて成立(せいりつ)するものです。385所謂(いはゆる)夫(をつと)の智性(ちせい)は妻(つま)の意思中(いしちう)に入(い)り、386妻(つま)の意思(いし)は夫(をつと)の智性中(ちせいちう)に深(ふか)く入(い)り込(こ)み、387茲(ここ)に始(はじ)めて天国(てんごく)の結婚(けつこん)が行(おこな)はれるのです。388言(い)はば夫婦(ふうふ)同心(どうしん)同体(どうたい)ですから、389面貌(めんばう)の相似(さうじ)するは相応(さうおう)の道理(だうり)に仍(よ)つて避(さ)くべからざる情態(じやうたい)です。390現界人(げんかいじん)の結婚(けつこん)は、391地位(ちゐ)だとか名望(めいばう)だとか、392世間(せけん)の面目(めんぼく)だとか、393財産(ざいさん)の多寡(たくわ)によつて婚姻(こんいん)を結(むす)ぶのですから、394云(い)はば虚偽(きよぎ)の婚姻(こんいん)です。395天国(てんごく)の婚姻(こんいん)は凡(すべ)て霊的(れいてき)婚姻(こんいん)ですから、396夫婦(ふうふ)は密着(みつちやく)不離(ふり)の情態(じやうたい)にあるのです。397故(ゆゑ)に天国(てんごく)に於(おい)ては夫婦(ふうふ)は二人(ふたり)とせず一人(ひとり)として数(かぞ)へることになつてゐます。398現界(げんかい)の様(やう)に、399人口(じんこう)名簿(めいぼ)に男子(だんし)何名(なんめい)女子(ぢよし)何名(なんめい)などの面倒(めんだう)はありませぬ。400只(ただ)一人(ひとり)二人(ふたり)と云(い)へば、401それで一夫婦(ひとふうふ)二夫婦(ふたふうふ)といふことが分(わか)るのです。402それで天国(てんごく)に於(おい)て百(ひやく)人(にん)といへば頭(あたま)が二百(にひやく)あります。403これが現界(げんかい)と相違(さうゐ)の点(てん)ですよ。404君民(くんみん)一致(いつち)、405夫婦(ふうふ)一体(いつたい)、406上下(しやうか)和合(わがふ)の真相(しんさう)は到底(たうてい)天国(てんごく)でなくては実見(じつけん)することは出来(でき)ますまい。407治国別(はるくにわけ)様(さま)も竜公(たつこう)様(さま)も現界(げんかい)へお下(くだ)りになつたら、408どうか地上(ちじやう)の世界(せかい)をして、409幾部分(いくぶぶん)なりとも、410天国(てんごく)気分(きぶん)を造(つく)つて貰(もら)ひたいものですなア』
411治国(はるくに)『ハイ微力(びりよく)の及(およ)ぶ限(かぎ)り……否々(いないな)神(かみ)様(さま)の御(ご)神格(しんかく)に依(よ)つて吾(わが)身(み)を使(つか)つて戴(いただ)きませう。412あゝ惟神(かむながら)霊(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)』
413 かく話(はな)す所(ところ)へ、414玄関口(げんくわんぐち)より一人(ひとり)の男(をとこ)現(あら)はれ来(きた)り、
415男『珍彦(うづひこ)様(さま)、416祭典(さいてん)の用意(ようい)が出来(でき)ました、417サアどうぞ皆(みな)が待(ま)つて居(を)ります。418お宮(みや)まで御(ご)出張(しゆつちやう)下(くだ)さいませ』
419珍彦『あゝ御(ご)苦労(くらう)でした。420直様(すぐさま)参(まゐ)りませう。421お二人(ふたり)さま、422どうです、423之(これ)から天国(てんごく)の祭典(さいてん)に加(くは)はり拝礼(はいれい)をなさつたら……』
424治国別『お供(とも)致(いた)しませう』
425竜公『天国(てんごく)の祭典(さいてん)は定(さだ)めて立派(りつぱ)でせう。426竜公(たつこう)もお供(とも)が叶(かな)ひますかなア』
427珍彦『ハイ、428さうなされませ』
429治国(はるくに)『もし叶(かな)はなかつたら、430木花姫(このはなひめ)の神格(しんかく)の内流(ないりう)によつて、431参拝(さんぱい)すれば良(よ)いぢやないか、432アハヽヽヽ』
433竜公(たつこう)『ウーオーアー』
434珍彦(うづひこ)『竜公(たつこう)さま、435どうぞお供(とも)をして下(くだ)さい』
436竜公(たつこう)『ハイ有難(ありがた)う』
437(大正一二・一・一〇 旧一一・一一・二四 松村真澄録)
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