一、王仁夜毎本宮山に登りて戦勝の祈念と幽斎の修行に余念なかりし折、幽冥に通ひけるに、言霊彦神現はれて戒め諭し給はく、
二、「汝はかつて高熊の山において教へたる事を忘れたるや。汝救世の為めには、如何なる艱難に逢ふも屈するな。今や汝が率いる所の弟子たち皆心弱し。聊かの苦しみに逢ひて心を苦しめつつあり。かかる志もて何んぞ天の使命を全くする事を得ん。家に引かれ、妻子に引かれ、その日の暮向きに心を引かるる者はいかでか全き神の国の戦士となる事を得んや。神の道の布教より先にせよ。神あれば汝らの家や妻子は守りなんに、ああ人は心の動き易き者かな。汝宜敷くこの意を体し弟子達に伝へもつて過つことなからしめよ」と厳しく諭し給へり。
三、また更に教へ給はく、「汝の弟子らは神官たらんとして、心を籠め神典を調べつつあり。実によろしき心掛けなり。されどよく思ふべし、汝らが神界より命ぜられたる天職は、一神社に奉仕せしめんとするにあらず。外に重大なる使命あるにあらずや。
四、まず神の許しを得て何事にも志すべし。神許さば宮司になるもいと易く、許されざれば村社の社掌にもなること難し。今や大本教の種を播きし時なり、兎角今はその苗の立つために力を竭すべし。王愛には神より彼れが家を厚く守りやれば一日も早く本教のために尽力せしめよ。王智は今暫らく控へさせよ」と、いとも厳かに教へ諭されたり。
五、また小松林の命現はれて教へ諭し給はく、「苦しみをもつて楽みとせよとは汝らの本教によりて聞きし所なり。百練千麿の功を経て始めて何事も成り遂ぐるものなれば、本教の為には一歩もたゆたうことなく進むべし。また汝は大本教の柱石たれば軽々しく動く事なかれ。まず司教、副司教を始め修斎をして一心不乱に運動せしむべし。神界は一刻の猶予も許し給はず、よく学べ、よく手足を使へ、よく主教として主教たるの実を挙げよ」と厳しく諭し給へり。
六、松岡の神現はれて諭し給はく、「汝ら教の道にある者、心に任せずして憂れたく思ふは、これ本教に居ながら本教を知らぬ故なり。大船に入りてはかへつてその船の全形を見ざるが如く、未だ全からざるが故なり。本教はこれ天の正道なり、天の道の適ふ時は何事も意の如くなるべきはずなり。一日も早く悔い改めて天工に代る所の本教の柱石たるべし。布教伝道のほか小事に心を痛むる事なかれ」とくれぐれも説き諭し給ひぬ。惟神霊幸倍坐世
道の大本 終