霊界物語.ネット
~出口王仁三郎 大図書館~
設定
|
ヘルプ
ホーム
霊界物語
如意宝珠(第13~24巻)
第18巻(巳の巻)
序
凡例
総説
第1篇 弥仙の神山
第1章 春野の旅
第2章 厳の花
第3章 神命
第2篇 再探再険
第4章 四尾山
第5章 赤鳥居
第6章 真か偽か
第3篇 反間苦肉
第7章 神か魔か
第8章 蛙の口
第9章 朝の一驚
第10章 赤面黒面
第4篇 舎身活躍
第11章 相身互
第12章 大当違
第13章 救の神
第5篇 五月五日祝
第14章 蛸の揚壺
第15章 遠来の客
第16章 返り討
第17章 玉照姫
霊の礎(四)
余白歌
×
設定
この文献を王仁DBで開く
印刷用画面を開く
[?]
プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。
[×閉じる]
話者名の追加表示
[?]
セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。
[×閉じる]
追加表示する
追加表示しない
【標準】
表示できる章
テキストのタイプ
[?]
ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。
[×閉じる]
通常のテキスト
【標準】
コピー用のテキスト
文字サイズ
S
【標準】
M
L
ルビの表示
通常表示
【標準】
括弧の中に表示
表示しない
アンカーの表示
[?]
本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。
[×閉じる]
左側だけに表示する
【標準】
表示しない
全てのアンカーを表示
宣伝歌
[?]
宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。
[×閉じる]
一段組
【標準】
二段組
脚注[※]用語解説
[?]
[※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。
[×閉じる]
脚注マークを表示する
【標準】
脚注マークを表示しない
脚注[*]編集用
[?]
[※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。
[×閉じる]
脚注マークを表示する
脚注マークを表示しない
【標準】
外字の外周色
[?]
一般のフォントに存在しない文字は専用の外字フォントを使用しています。目立つようにその文字の外周の色を変えます。
[×閉じる]
無色
【標準】
赤色
現在のページには外字は使われていません
表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。
【新着情報】
サイトをリニューアルしました。不具合がある場合は
従来バージョン
をお使い下さい|
サブスク
のお知らせ
霊界物語
>
如意宝珠(第13~24巻)
>
第18巻(巳の巻)
> 第3篇 反間苦肉 > 第10章 赤面黒面
<<< 朝の一驚
(B)
(N)
相身互 >>>
第一〇章
赤面
(
せきめん
)
黒面
(
こくめん
)
〔六三八〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第18巻 如意宝珠 巳の巻
篇:
第3篇 反間苦肉
よみ(新仮名遣い):
はんかんくにく
章:
第10章 赤面黒面
よみ(新仮名遣い):
せきめんこくめん
通し章番号:
638
口述日:
1922(大正11)年04月26日(旧03月30日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年2月10日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
[×閉じる]
:
帰ってきた梅公は、黒姫に、自分は因縁の身魂だから、とつっかかる。黒姫は梅公をたしなめて、綾彦・お民に初の宣伝を聞かせるのだから、お前たちも聞くように、と言って宣伝歌を歌う。
黒姫はこのあと、百日百夜宮川の滝に禊をなし、高山彦と一緒にいったんフサの国に戻って高姫に報告をした。高姫は自転倒島に戻り、衣懸松の下に庵を結んで三五教覆滅を企んでいた。また由良の港の秋山彦の館に入って鍵を盗み、如意宝珠を呑み込んで逃げ出した。
黒姫はそれと行き違いに自転倒島の魔窟ケ原に戻ってきたが、夏彦、常彦らがウラナイ教を見限って出て行ってしまった。それというのも、黒姫と高山彦はもともと夫婦であったが、黒姫が独身主義を標榜して宣伝をしていた手前、夫があるとは信者たちに言えなかった。そこで、神界の都合と称して高山彦を婿入りさせたために、信望を失ったのである。
綾彦は魔窟ケ原で黒姫の身辺を世話し、お民は高城山の松姫の侍女となった。しかしウラナイ教では綾彦・お民の素性を知らず、普通の信者として遇していた。
黒姫が綾彦を共にまたもや宮川で禊中、青彦一行と出会い、青彦一行は何を思ったかにわかにウラナイ教に寝返ったため、黒姫は意気揚々として魔窟ケ原に戻ってきた。
黒姫は高山彦に青彦らを紹介する。黒姫が紫姫にウラナイ教の心得を説いていると、板公と滝公が帰ってきた。板公と滝公は、黒姫の命令でお節を捕まえに行ったが失敗した旨を報告する。
黒姫は板公、滝公の無体に怒って叱り付ける。紫姫が、お節は自分たちが助け出して、青彦と共にここに来ている、と言うと、板公と滝公はあわてて逃げ出していく。黒姫は泣きまねをして紫姫の手間をごまかした。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2021-03-07 03:18:22
OBC :
rm1810
愛善世界社版:
160頁
八幡書店版:
第3輯 696頁
修補版:
校定版:
165頁
普及版:
72頁
初版:
ページ備考:
001
谷川
(
たにがは
)
に
禊
(
みそぎ
)
を
済
(
す
)
まして、
002
梅公
(
うめこう
)
一行
(
いつかう
)
は
再
(
ふたた
)
び
地底
(
ちてい
)
の
館
(
やかた
)
に
帰
(
かへ
)
り
来
(
き
)
たり、
003
梅公
(
うめこう
)
『
高山彦
(
たかやまひこ
)
様
(
さま
)
、
004
黒姫
(
くろひめ
)
様
(
さま
)
、
005
お
蔭
(
かげ
)
で
大江山
(
おほえやま
)
の
悪霊
(
あくれい
)
も、
006
スツカリ
退散
(
たいさん
)
致
(
いた
)
しました。
007
そこら
中
(
ぢう
)
が
何
(
なん
)
ともなしに
軽
(
かる
)
くなつた
様
(
やう
)
で、
008
明晰
(
めいせき
)
な
頭脳
(
づなう
)
が
益々
(
ますます
)
明晰
(
めいせき
)
になり、
009
モウ
是
(
こ
)
れで
大宇宙
(
だいうちう
)
の
根本
(
こつぽん
)
が、
010
現界
(
げんかい
)
、
011
神界
(
しんかい
)
、
012
幽界
(
いうかい
)
の、
013
万事
(
ばんじ
)
万端
(
ばんたん
)
手
(
て
)
に
取
(
と
)
る
如
(
ごと
)
く
明瞭
(
めいれう
)
に、
014
梅
(
うめ
)
が
心鏡
(
しんきやう
)
に
映
(
えい
)
ずる
様
(
やう
)
になつて
来
(
き
)
ました。
015
随分
(
ずゐぶん
)
御禊
(
みそぎ
)
と
云
(
い
)
ふものは
結構
(
けつこう
)
なものですなア』
016
黒姫
(
くろひめ
)
『さうだろさうだろ、
017
何時
(
いつ
)
もそれぢやから、
018
朝
(
あさ
)
と
晩
(
ばん
)
と
昼
(
ひる
)
と、
019
間
(
ま
)
さへあれば、
020
お
水
(
みづ
)
を
頂
(
いただ
)
きなさいと
云
(
い
)
うとるのぢや。
021
火
(
ひ
)
と
水
(
みづ
)
とお
土
(
つち
)
の
御恩
(
ごおん
)
が
第一
(
だいいち
)
ぢや。
022
何時
(
いつ
)
も
水
(
みづ
)
を
被
(
かぶ
)
るのは、
023
蛙
(
かはづ
)
の
行
(
ぎやう
)
ぢやと
言
(
い
)
つてブツブツ
叱言
(
こごと
)
を
云
(
い
)
つてらつしやるが、
024
今日
(
けふ
)
は
合点
(
がてん
)
がいつただらう』
025
梅公
(
うめこう
)
『ヤアもう
徹底
(
てつてい
)
的
(
てき
)
に
分
(
わか
)
りました。
026
有難
(
ありがた
)
い
事
(
こと
)
には、
027
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
様
(
さま
)
と
竜宮
(
りうぐう
)
の
乙姫
(
おとひめ
)
さまが
私
(
わたくし
)
の
肉体
(
にくたい
)
にお
懸
(
かか
)
り
下
(
くだ
)
さいまして、
028
結構
(
けつこう
)
で
御座
(
ござ
)
いました』
029
黒姫
(
くろひめ
)
『これこれ
梅公
(
うめこう
)
、
030
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふ
傲慢
(
ごうまん
)
不遜
(
ふそん
)
な
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
ひなさる。
031
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
様
(
さま
)
は、
032
誠
(
まこと
)
水晶
(
すゐしやう
)
の
生粋
(
きつすゐ
)
の
根本
(
こつぽん
)
の
元
(
もと
)
の
身魂
(
みたま
)
でなければお
憑
(
うつ
)
りなさらず、
033
又
(
また
)
竜宮
(
りうぐう
)
の
乙姫
(
おとひめ
)
さまは、
034
因縁
(
いんねん
)
の
身魂
(
みたま
)
でなければ、
035
誰
(
たれ
)
にも、
036
彼
(
か
)
れにもお
憑
(
うつ
)
りなさる
筈
(
はず
)
がない。
037
「
昔
(
むかし
)
から
神
(
かみ
)
はものを
言
(
い
)
はなンだぞよ。
038
世
(
よ
)
の
変
(
かは
)
り
目
(
め
)
に
神
(
かみ
)
が
憑
(
うつ
)
りて、
039
世界
(
せかい
)
の
人
(
ひと
)
に
何
(
なに
)
かの
事
(
こと
)
を
知
(
し
)
らせねばならぬから、
040
因縁
(
いんねん
)
の
身魂
(
みたま
)
に
神
(
かみ
)
が
憑
(
うつ
)
りて、
041
世界
(
せかい
)
の
初
(
はじ
)
まりの
事
(
こと
)
から、
042
行末
(
ゆくすゑ
)
の
事
(
こと
)
、
043
身魂
(
みたま
)
の
因縁
(
いんねん
)
性来
(
しやうらい
)
を
細
(
こま
)
かう
説
(
と
)
いて
聞
(
き
)
かして、
044
世界
(
せかい
)
の
人民
(
じんみん
)
を
改心
(
かいしん
)
さすぞよ。
045
稲荷
(
いなり
)
位
(
くらゐ
)
は
誰
(
たれ
)
にも
憑
(
うつ
)
るが、
046
誠
(
まこと
)
の
大神
(
おほかみ
)
は
禰宜
(
ねぎ
)
や
巫子
(
みこ
)
には
憑
(
うつ
)
らぬぞよ」と
変性
(
へんじやう
)
男子
(
なんし
)
の
身魂
(
みたま
)
が
仰有
(
おつしや
)
つて
御座
(
ござ
)
る。
047
それに
何
(
なん
)
ぞや、
048
下司
(
げす
)
の
身魂
(
みたま
)
にソンナ
結構
(
けつこう
)
な
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
が
憑
(
うつ
)
りなさる
筈
(
はず
)
があるものか。
049
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
が、
050
さう
二
(
ふた
)
つもあつたり、
051
竜宮
(
りうぐう
)
の
乙姫
(
おとひめ
)
さまの
生宮
(
いきみや
)
が、
052
さう
彼方
(
あつち
)
にも
此方
(
こつち
)
にも
出来
(
でき
)
て
堪
(
たま
)
るものか。
053
お
前
(
まへ
)
は
一寸
(
ちよつと
)
良
(
よ
)
いと
直
(
ぢき
)
によい
気
(
き
)
になつて、
054
慢心
(
まんしん
)
をするなり、
055
一寸
(
ちよつと
)
叱
(
しか
)
られると、
056
直
(
すぐ
)
に
青
(
あを
)
くなつてビシヨビシヨとして
了
(
しま
)
ふ。
057
それと
云
(
い
)
ふのも、
058
モ
一
(
ひと
)
つ
腹帯
(
はらおび
)
が
締
(
しま
)
つて
居
(
を
)
らぬからぢや。
059
身魂
(
みたま
)
相応
(
さうおう
)
の
御用
(
ごよう
)
をさされるのぢやから、
060
慢心
(
まんしん
)
をし、
061
高上
(
たかあが
)
りをしてブチヤダレヌ
様
(
やう
)
にしなされや、
062
灯台下
(
とうだいもと
)
はまつ
暗
(
くら
)
がり、
063
自分
(
じぶん
)
の
顔
(
かほ
)
の
墨
(
すみ
)
は
分
(
わか
)
るまい。
064
空
(
そら
)
向
(
む
)
いて
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
を
歩
(
ある
)
かうと
思
(
おも
)
へば、
065
高
(
たか
)
い
石
(
いし
)
に
躓
(
つまづ
)
いて、
066
逆
(
さか
)
トンボリを
打
(
う
)
たねばならぬぞよ。
067
開
(
あ
)
いた
口
(
くち
)
がすぼまらぬ
様
(
やう
)
なことのない
様
(
やう
)
に、
068
各自
(
めいめい
)
に
心得
(
こころえ
)
たが
宜
(
よ
)
いぞ』
069
梅公
(
うめこう
)
『ヤア
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
しました。
070
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら、
071
臨時
(
りんじ
)
御
(
ご
)
降臨
(
かうりん
)
遊
(
あそ
)
ばしたのだから
仕方
(
しかた
)
がありませぬ』
072
黒姫
(
くろひめ
)
『そら
何
(
なに
)
を
云
(
い
)
ひなさる。
073
神憑
(
しんぺう
)
には
公憑
(
こうひよう
)
、
074
私憑
(
しひよう
)
と
二
(
ふた
)
つの
種類
(
しゆるゐ
)
がある。
075
其
(
その
)
中
(
なか
)
でも
私憑
(
しひよう
)
と
云
(
い
)
ふのは、
076
因縁
(
いんねん
)
の
身魂
(
みたま
)
丈
(
だけ
)
によりお
憑
(
うつ
)
りなさらぬと
云
(
い
)
う
事
(
こと
)
ぢや。
077
国治立
(
くにはるたちの
)
命
(
みこと
)
は
変性
(
へんじやう
)
男子
(
なんし
)
の
肉体
(
にくたい
)
、
078
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
は
系統
(
ひつぽう
)
の
肉体
(
にくたい
)
、
079
竜宮
(
りうぐう
)
の
乙姫
(
おとひめ
)
は
又
(
また
)
その
系統
(
ひつぽう
)
の
肉体
(
にくたい
)
と、
080
チヤンと
定
(
きま
)
つて
居
(
を
)
るのぢや。
081
公憑
(
こうひよう
)
と
云
(
い
)
うて、
082
上
(
うへ
)
の
方
(
はう
)
の
身魂
(
みたま
)
にも、
083
中
(
なか
)
の
身魂
(
みたま
)
にも、
084
下
(
げ
)
の
身魂
(
みたま
)
にも
臨機
(
りんき
)
応変
(
おうへん
)
に
憑
(
うつ
)
ると
云
(
い
)
ふ
様
(
やう
)
な、
085
ソンナ
自堕落
(
じだらく
)
な
神
(
かみ
)
さまとは
違
(
ちが
)
ひまつせ。
086
竜宮
(
りうぐう
)
の
乙姫
(
おとひめ
)
さまを、
087
何
(
なん
)
と
思
(
おも
)
うて
居
(
を
)
りなさる。
088
チツトお
筆先
(
ふでさき
)
でも
拝読
(
いただ
)
きなさい。
089
お
筆
(
ふで
)
さへ
腹
(
はら
)
へ
締
(
し
)
め
込
(
こ
)
みておきたら、
090
目前
(
まさか
)
の
時
(
とき
)
に、
091
ドンナ
神力
(
しんりき
)
でも
与
(
あた
)
へて
下
(
くだ
)
さる。
092
兎角
(
とかく
)
お
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
は、
093
字
(
じ
)
が
悪
(
わる
)
いとか、
094
読
(
よ
)
み
難
(
にく
)
いとか、
095
クドイとか、
096
首尾
(
しゆび
)
一貫
(
いつくわん
)
せぬとか、
097
肉体
(
にくたい
)
が
混
(
まぜ
)
つとるとか、
098
ここは
神諭
(
しんゆ
)
ぢや、
099
此
(
この
)
点
(
てん
)
は
人諭
(
じんゆ
)
ぢやと、
100
屁理屈
(
へりくつ
)
ばつかり
仰有
(
おつしや
)
るから、
101
サツパリ
訳
(
わけ
)
が
分
(
わか
)
らぬ
様
(
やう
)
になつて
了
(
しま
)
うのだ。
102
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
のお
書
(
か
)
き
遊
(
あそ
)
ばしたお
筆先
(
ふでさき
)
を
審神
(
さには
)
したり、
103
しやうとするから
間違
(
まちが
)
ふのだ。
104
是
(
こ
)
れから、
105
絶対
(
ぜつたい
)
に
有難
(
ありがた
)
いと
思
(
おも
)
うていただきなさい』
106
梅公
(
うめこう
)
『
私
(
わたくし
)
はお
道
(
みち
)
を
開
(
ひら
)
く
因縁
(
いんねん
)
の
身魂
(
みたま
)
ぢやありませぬか』
107
黒姫
(
くろひめ
)
『きまつた
事
(
こと
)
ぢや。
108
因縁
(
いんねん
)
なくて、
109
此
(
この
)
結構
(
けつこう
)
なウラナイ
教
(
けう
)
へ
来
(
こ
)
られるものか』
110
梅公
(
うめこう
)
『
因縁
(
いんねん
)
の
身魂
(
みたま
)
の
中
(
なか
)
でも、
111
私
(
わたくし
)
は
最
(
もつと
)
も
因縁
(
いんねん
)
の
深
(
ふか
)
いものでせう。
112
高姫
(
たかひめ
)
さまは
高天原
(
たかあまはら
)
に
因縁
(
いんねん
)
のある
名
(
な
)
ぢやし、
113
黒姫
(
くろひめ
)
さまは、
114
くろう
の
固
(
かた
)
まりの
花
(
はな
)
が
咲
(
さ
)
くとお
筆先
(
ふでさき
)
に
因縁
(
いんねん
)
があるなり、
115
私
(
わたくし
)
は
三千
(
さんぜん
)
世界
(
せかい
)
一度
(
いちど
)
に
開
(
ひら
)
く
梅
(
うめ
)
の
花
(
はな
)
と
云
(
い
)
ふ、
116
変性
(
へんじやう
)
男子
(
なんし
)
の
初発
(
しよつぱつ
)
のお
筆先
(
ふでさき
)
に
出
(
で
)
て
居
(
を
)
る
因縁
(
いんねん
)
の
名
(
な
)
ぢやありませぬか。
117
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
梅
(
うめ
)
は
梅
(
うめ
)
、
118
一度
(
いちど
)
に
開
(
ひら
)
く
役
(
やく
)
は
梅公
(
うめこう
)
の
守護神
(
しゆごじん
)
のお
役
(
やく
)
でせう』
119
黒姫
(
くろひめ
)
『
此
(
この
)
広
(
ひろ
)
い
世界
(
せかい
)
に、
120
梅
(
うめ
)
の
名
(
な
)
のつくのは、
121
お
前
(
まへ
)
ばつかりぢやないわいな』
122
梅公
(
うめこう
)
『それでも、
123
今
(
いま
)
あなた、
124
因縁
(
いんねん
)
の
身魂
(
みたま
)
ばつかり
引
(
ひ
)
き
寄
(
よ
)
せて
有
(
あ
)
ると
仰有
(
おつしや
)
つたぢやありませぬか。
125
ウラナイ
教
(
けう
)
へ
引寄
(
ひきよ
)
せられた
人間
(
にんげん
)
の
中
(
うち
)
に、
126
梅
(
うめ
)
の
名
(
な
)
の
付
(
つ
)
いた
者
(
もの
)
が、
127
一人
(
ひとり
)
でもありますか。
128
松
(
まつ
)
で
治
(
をさ
)
めると
云
(
い
)
ふ、
129
松
(
まつ
)
に
因縁
(
いんねん
)
のある
松姫
(
まつひめ
)
さまは、
130
高城山
(
たかしろやま
)
であの
通
(
とほ
)
り
羽振
(
はぶ
)
りを
利
(
き
)
かし、
131
なぜ
此
(
この
)
梅公
(
うめこう
)
は、
132
さうあなたから
軽蔑
(
けいべつ
)
されるのでせう』
133
黒姫
(
くろひめ
)
『もうチツと
修業
(
しうげふ
)
しなされ。
134
さうしたら
又
(
また
)
、
135
松姫
(
まつひめ
)
と
肩
(
かた
)
を
並
(
なら
)
べる
様
(
やう
)
にならうも
知
(
し
)
れぬ。
136
併
(
しか
)
し
今日
(
けふ
)
は
初
(
はじ
)
めて
綾彦
(
あやひこ
)
、
137
お
民
(
たみ
)
に、
138
宣伝
(
せんでん
)
を、
139
竜宮
(
りうぐう
)
の
乙姫
(
おとひめ
)
の
肉体
(
にくたい
)
が、
140
直接
(
ちよくせつ
)
にしてあげるから、
141
お
前
(
まへ
)
もシツカリ
聴
(
き
)
きなされ。
142
そして
此
(
この
)
肉体
(
にくたい
)
の
宣伝振
(
せんでんぶり
)
をよく
腹
(
はら
)
へ
締
(
し
)
め
込
(
こ
)
みて、
143
世界
(
せかい
)
を
誠
(
まこと
)
で
開
(
ひら
)
くのぢやぞえ』
144
梅公
(
うめこう
)
『それは
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います。
145
吾々
(
われわれ
)
も
傍聴
(
ばうちやう
)
の
栄
(
えい
)
を
得
(
え
)
まして……』
146
黒姫
(
くろひめ
)
『コレコレあまり
喋
(
しやべ
)
るものぢやない……
男
(
をとこ
)
だてら……
口
(
くち
)
は
禍
(
わざはひ
)
の
門
(
もん
)
ぢや。
147
黙
(
だま
)
つて
謹聴
(
きんちやう
)
しなさい』
148
と
押
(
おさ
)
へつけ
乍
(
なが
)
ら、
149
少
(
すこ
)
し
曲
(
まが
)
つた
腰付
(
こしつき
)
をして
底太
(
そこぶと
)
い
声
(
こゑ
)
を
張上
(
はりあ
)
げ
歌
(
うた
)
ひ
始
(
はじ
)
めたり。
150
黒姫
『
昔
(
むかし
)
の
昔
(
むかし
)
その
昔
(
むかし
)
151
遠
(
とほ
)
き
神代
(
かみよ
)
の
初
(
はじ
)
めより
152
国治立
(
くにはるたち
)
の
大神
(
おほかみ
)
は
153
千座
(
ちくら
)
の
置戸
(
おきど
)
を
負
(
お
)
ひ
給
(
たま
)
ひ
154
世
(
よ
)
を
艮
(
うしとら
)
に
隠
(
かく
)
れまし
155
三千
(
さんぜん
)
年
(
ねん
)
の
其
(
その
)
間
(
あひだ
)
156
苦労
(
くらう
)
艱難
(
かんなん
)
遊
(
あそ
)
ばして
157
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
永久
(
とは
)
に
開
(
ひら
)
かむと
158
種々
(
いろいろ
)
雑多
(
ざつた
)
と
身
(
み
)
をやつし
159
蔭
(
かげ
)
の
守護
(
しゆご
)
を
遊
(
あそ
)
ばされ
160
ミロクの
御代
(
みよ
)
を
待
(
ま
)
ち
給
(
たま
)
ふ
161
時節
(
じせつ
)
参
(
まゐ
)
りて
煎豆
(
いりまめ
)
に
162
花
(
はな
)
咲
(
さ
)
く
御代
(
みよ
)
となりかはり
163
変性
(
へんじやう
)
男子
(
なんし
)
の
御
(
おん
)
身魂
(
みたま
)
164
道具
(
だうぐ
)
に
使
(
つか
)
ふて
昔
(
むかし
)
から
165
末
(
すゑ
)
の
末
(
すゑ
)
まで
見通
(
みとほ
)
され
166
尊
(
たふと
)
きお
筆
(
ふで
)
を
出
(
いだ
)
しまし
167
世
(
よ
)
に
落
(
お
)
ちぶれた
神々
(
かみがみ
)
を
168
今度
(
こんど
)
一緒
(
いつしよ
)
に
世
(
よ
)
にあげて
169
それぞれお
名
(
な
)
を
賜
(
たま
)
ひつつ
170
神
(
かみ
)
の
御用
(
ごよう
)
に
立
(
た
)
て
給
(
たま
)
ふ
171
時節
(
じせつ
)
来
(
き
)
たのを
竜宮
(
りうぐう
)
の
172
乙姫
(
おとひめ
)
様
(
さま
)
は
活溌
(
くわつぱつ
)
な
173
御
(
お
)
察
(
さつ
)
しの
良
(
よ
)
い
神
(
かみ
)
故
(
ゆゑ
)
に
174
今
(
いま
)
まで
生命
(
いのち
)
と
蓄
(
たくは
)
へた
175
金銀
(
きんぎん
)
、
珠玉
(
しゆぎよく
)
、
珊瑚珠
(
さんごじゆ
)
も
176
残
(
のこ
)
らず
宝
(
たから
)
投
(
な
)
げ
出
(
だ
)
して
177
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
へ
献
(
たてま
)
つり
178
穢
(
きた
)
ない
心
(
こころ
)
をスツパリと
179
海
(
うみ
)
へ
流
(
なが
)
して
因縁
(
いんねん
)
の
180
身魂
(
みたま
)
と
現
(
あ
)
れし
黒姫
(
くろひめ
)
を
181
神政
(
しんせい
)
成就
(
じやうじゆ
)
の
機関
(
きくわん
)
とし
182
現
(
あら
)
はれ
給
(
たま
)
うた
尊
(
たふと
)
さよ
183
今
(
いま
)
まで
竜宮
(
りうぐう
)
の
乙姫
(
おとひめ
)
の
184
醜
(
みぐる
)
しかつた
御霊
(
みたま
)
丈
(
だけ
)
185
系統
(
ひつぽう
)
の
身魂
(
みたま
)
に
憑
(
うつ
)
られて
186
懺悔
(
ざんげ
)
遊
(
あそ
)
ばし
一番
(
いちばん
)
に
187
改心
(
かいしん
)
なされた
利巧者
(
りかうもの
)
188
三千
(
さんぜん
)
世界
(
せかい
)
の
世
(
よ
)
に
落
(
お
)
ちた
189
神々
(
かみがみ
)
さまは
竜宮
(
りうぐう
)
の
190
乙姫
(
おとひめ
)
さまを
手本
(
てほん
)
とし
191
力
(
ちから
)
一杯
(
いつぱい
)
身魂
(
みたま
)
をば
192
磨
(
みが
)
いて
今度
(
こんど
)
の
御
(
ご
)
大謨
(
たいも
)
に
193
お
役
(
やく
)
に
立
(
た
)
つた
其
(
その
)
上
(
うへ
)
で
194
それぞれお
名
(
な
)
を
頂
(
いただ
)
いて
195
結構
(
けつこう
)
な
神
(
かみ
)
と
祀
(
まつ
)
られる
196
三千
(
さんぜん
)
世界
(
せかい
)
の
梅
(
うめ
)
の
花
(
はな
)
197
一度
(
いちど
)
に
開
(
ひら
)
くと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
は
198
永
(
なが
)
らく
海
(
うみ
)
の
底
(
そこ
)
の
底
(
そこ
)
199
お
住居
(
すまゐ
)
なされた
竜宮
(
りうぐう
)
さま
200
肉
(
にく
)
のお
宮
(
みや
)
にをさまりて
201
広
(
ひろ
)
い
世界
(
せかい
)
の
民草
(
たみくさ
)
に
202
誠
(
まこと
)
一
(
ひと
)
つのお
仕組
(
しぐみ
)
を
203
現
(
あら
)
はしなさるお
働
(
はたら
)
き
204
日
(
ひ
)
の
出
(
で
)
の
神
(
かみ
)
と
引
(
ひ
)
つ
添
(
そ
)
うて
205
今度
(
こんど
)
の
御用
(
ごよう
)
の
地
(
もと
)
となり
206
神
(
かみ
)
の
大望
(
たいもう
)
成就
(
じやうじゆ
)
させ
207
天
(
てん
)
にまします
三体
(
さんたい
)
の
208
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
へ
地
(
ち
)
の
世界
(
せかい
)
209
斯
(
か
)
うなりましたとお
目
(
め
)
にかけ
210
お
手柄
(
てがら
)
遊
(
あそ
)
ばす
仕組
(
しぐみ
)
ぞや
211
此
(
この
)
お
仕組
(
しぐみ
)
は
三五
(
あななひ
)
の
212
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
を
厳御霊
(
いづみたま
)
213
変性
(
へんじやう
)
男子
(
なんし
)
の
筆先
(
ふでさき
)
に
214
くまめる
様
(
やう
)
に
書
(
か
)
いてある
215
其
(
その
)
筆先
(
ふでさき
)
の
読
(
よ
)
み
様
(
やう
)
が
216
足
(
た
)
らぬ
盲
(
めくら
)
のミヅ
御霊
(
みたま
)
217
変性
(
へんじやう
)
女子
(
によし
)
が
混
(
ま
)
ぜ
返
(
かへ
)
し
218
蛙
(
かはづ
)
の
行列
(
ぎやうれつ
)
向
(
むか
)
ふミヅ
219
瑞
(
みづ
)
の
御霊
(
みたま
)
と
偉相
(
えらさう
)
に
220
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
筆先
(
ふでさき
)
を
221
何
(
なん
)
ぢや
彼
(
か
)
ンぢやとケチをつけ
222
黒姫
(
くろひめ
)
までも
馬鹿
(
ばか
)
にする
223
され
共
(
ども
)
此方
(
こちら
)
はどこまでも
224
耐
(
こば
)
り
耐
(
こば
)
りて
出
(
で
)
て
来
(
き
)
たが
225
余
(
あま
)
り
何時
(
いつ
)
まで
分
(
わか
)
らねば
226
是非
(
ぜひ
)
に
及
(
およ
)
ばず
帳
(
ちやう
)
を
切
(
き
)
り
227
悪
(
あく
)
の
鑑
(
かがみ
)
と
現
(
あら
)
はして
228
万劫
(
まんごう
)
末代
(
まつだい
)
書
(
か
)
き
残
(
のこ
)
す
229
変性
(
へんじやう
)
男子
(
なんし
)
は
唯
(
ただ
)
一人
(
ひとり
)
230
変性
(
へんじやう
)
女子
(
によし
)
も
亦
(
また
)
一人
(
ひとり
)
231
それに
何
(
なん
)
ぞや
三
(
み
)
つ
御霊
(
みたま
)
232
三
(
み
)
つもあつてたまるかい
233
此
(
この
)
事
(
こと
)
からが
間違
(
まちが
)
ひぢや
234
変性
(
へんじやう
)
男子
(
なんし
)
は
経
(
たて
)
の
役
(
やく
)
235
変性
(
へんじやう
)
女子
(
によし
)
は
緯
(
よこ
)
の
役
(
やく
)
236
経
(
たて
)
と
緯
(
よこ
)
とを
和合
(
わがふ
)
させ
237
錦
(
にしき
)
の
機
(
はた
)
を
織
(
お
)
る
仕組
(
しぐみ
)
238
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
が
地
(
ぢ
)
となりて
239
竜宮
(
りうぐう
)
様
(
さま
)
のお
手伝
(
てつだ
)
ひ
240
今度
(
こんど
)
一番
(
いちばん
)
御
(
ご
)
出世
(
しゆつせ
)
を
241
遊
(
あそ
)
ばす
事
(
こと
)
を
知
(
し
)
らないか
242
必
(
かなら
)
ず
必
(
かなら
)
ず
三五
(
あななひ
)
の
243
緯
(
よこ
)
の
教
(
をしへ
)
に
迷
(
まよ
)
ふなよ
244
経
(
たて
)
が
七分
(
しちぶ
)
に
緯
(
よこ
)
三分
(
さんぶ
)
245
これでなければ
立派
(
りつぱ
)
なる
246
誠
(
まこと
)
の
機
(
はた
)
は
織
(
お
)
れないに
247
三五教
(
あななひけう
)
の
大本
(
おほもと
)
は
248
次第
(
しだい
)
々々
(
しだい
)
に
紊
(
みだ
)
れ
来
(
き
)
て
249
経
(
たて
)
が
三分
(
さんぶ
)
に
緯
(
よこ
)
七分
(
しちぶ
)
250
変性
(
へんじやう
)
男子
(
なんし
)
は
先走
(
さきばし
)
り
251
変性
(
へんじやう
)
女子
(
によし
)
は
弥勒
(
みろく
)
さま
252
何
(
なん
)
ぢや
彼
(
か
)
ンぢやと
身勝手
(
みがつて
)
な
253
理屈
(
りくつ
)
を
並
(
なら
)
べて
煙
(
けむ
)
に
巻
(
ま
)
く
254
此
(
この
)
儘
(
まま
)
棄
(
す
)
てて
置
(
お
)
いたなら
255
変性
(
へんじやう
)
男子
(
なんし
)
の
永年
(
ながねん
)
の
256
艱難
(
かんなん
)
苦労
(
くらう
)
も
水
(
みづ
)
の
泡
(
あわ
)
257
水
(
みづ
)
の
泡
(
あわ
)
にはさせまいと
258
系統
(
ひつぽう
)
の
身魂
(
みたま
)
を
選
(
え
)
り
抜
(
ぬ
)
いて
259
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
が
現
(
あら
)
はれて
260
誠
(
まこと
)
の
筆先
(
ふでさき
)
書
(
か
)
きしるし
261
一度
(
いちど
)
読
(
よ
)
めよと
勧
(
すす
)
むれど
262
変性
(
へんじやう
)
女子
(
によし
)
の
頑固者
(
ぐわんこもの
)
263
どうして
此
(
こ
)
れが
読
(
よ
)
まれよかと
264
声
(
こゑ
)
を
荒立
(
あらだ
)
て
投
(
な
)
げつける
265
それ
程
(
ほど
)
厭
(
いや
)
なら
読
(
よ
)
までよい
266
後
(
あと
)
で
吠面
(
ほえづら
)
かわくなと
267
言
(
い
)
うて
聞
(
き
)
かしてやつたれど
268
訳
(
わけ
)
の
分
(
わか
)
らぬ
頑固者
(
ぐわんこもの
)
269
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐみ
)
を
仇
(
あだ
)
に
取
(
と
)
り
270
何
(
なに
)
ほど
親切
(
しんせつ
)
尽
(
つく
)
しても
271
モウこの
上
(
うへ
)
は
助
(
たす
)
けやうが
272
無
(
な
)
いと
悔
(
くや
)
みて
高姫
(
たかひめ
)
が
273
何時
(
いつ
)
も
涙
(
なみだ
)
をポロポロと
274
零
(
こぼ
)
して
御座
(
ござ
)
るお
慈悲心
(
じひしん
)
275
それに
続
(
つづ
)
いて
分
(
わか
)
らぬは
276
金勝要
(
きんかつかね
)
の
大御神
(
おほみかみ
)
277
この
肉体
(
にくたい
)
もド
渋
(
しぶ
)
とい
278
まだまだ
渋
(
しぶ
)
とい
奴
(
やつ
)
がある
279
仮令
(
たとへ
)
大地
(
だいち
)
は
沈
(
しづ
)
むとも
280
生命
(
いのち
)
の
綱
(
つな
)
が
切
(
き
)
れるとも
281
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
筆先
(
ふでさき
)
は
282
当
(
あて
)
にならぬと
撥
(
は
)
ねつける
283
木
(
こ
)
の
花姫
(
はなひめ
)
の
生宮
(
いきみや
)
と
284
嘘
(
うそ
)
か
本真
(
ほんま
)
か
知
(
し
)
らねども
285
現
(
あら
)
はれ
出
(
い
)
でた
男女郎
(
をとこめらう
)
286
火
(
ひ
)
が
蛇
(
じや
)
になろがどうしようが
287
改心
(
かいしん
)
させねば
置
(
お
)
くものか
288
縦
(
たて
)
から
横
(
よこ
)
から
八方
(
はつぱう
)
から
289
探女
(
さぐめ
)
醜女
(
しこめ
)
を
遣
(
つか
)
はして
290
いろいろ
骨
(
ほね
)
を
折
(
お
)
るけれど
291
固
(
もと
)
より
愚鈍
(
ぐどん
)
な
生
(
うま
)
れつき
292
石
(
いし
)
の
地蔵
(
ぢざう
)
に
打向
(
うちむか
)
ひ
293
説教
(
せつけう
)
するよな
塩梅
(
あんばい
)
で
294
どしても
聞
(
き
)
かうと
致
(
いた
)
さない
295
木
(
こ
)
の
花姫
(
はなひめ
)
の
肉体
(
にくたい
)
を
296
改心
(
かいしん
)
させねば
何時
(
いつ
)
までも
297
神
(
かみ
)
の
仕組
(
しぐみ
)
は
成就
(
じやうじゆ
)
せぬ
298
ウラナイ
教
(
けう
)
も
栄
(
さか
)
やせぬ
299
サア
是
(
こ
)
れからは
黒姫
(
くろひめ
)
の
300
指図
(
さしづ
)
に
従
(
したが
)
ひ
身
(
み
)
をやつし
301
千変
(
せんぺん
)
万化
(
ばんくわ
)
に
活動
(
くわつどう
)
し
302
一日
(
ひとひ
)
も
早
(
はや
)
く
因縁
(
いんねん
)
の
303
身魂
(
みたま
)
を
改心
(
かいしん
)
さす
様
(
やう
)
に
304
祈
(
いの
)
つて
呉
(
く
)
れよ
黒姫
(
くろひめ
)
も
305
これから
百
(
ひやく
)
日
(
にち
)
百夜
(
ひやくよさ
)
は
306
剣尖山
(
けんさきやま
)
の
谷川
(
たにがは
)
の
307
産
(
うぶ
)
のお
水
(
みづ
)
で
身
(
み
)
を
清
(
きよ
)
め
308
一心
(
いつしん
)
不乱
(
ふらん
)
に
祈念
(
きねん
)
する
309
アヽ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
310
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はひましませよ』
311
と
汗
(
あせ
)
をブルブルに
掻
(
か
)
き、
312
身体
(
しんたい
)
一面
(
いちめん
)
ポーツポーツと
湯気
(
ゆげ
)
を
立
(
た
)
て、
313
黒姫
『アーア
苦
(
くる
)
しいこと。
314
……
世界
(
せかい
)
の
人民
(
じんみん
)
を
助
(
たす
)
けようと
思
(
おも
)
へば、
315
並大抵
(
なみたいてい
)
ぢやない、
316
変性
(
へんじやう
)
男子
(
なんし
)
や
高姫
(
たかひめ
)
さまの
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
が
身
(
み
)
に
浸
(
し
)
みて、
317
おいと
しう
御座
(
ござ
)
るわいの、
318
オンオンオン』
319
と
泣
(
な
)
き
崩
(
くづ
)
れる。
320
これより
黒姫
(
くろひめ
)
は、
321
百
(
ひやく
)
日
(
にち
)
百夜
(
ひやくや
)
、
322
宮川
(
みやかは
)
の
滝
(
たき
)
に
水行
(
すゐぎやう
)
をなし、
323
高山彦
(
たかやまひこ
)
の
懇望
(
こんもう
)
もだし
難
(
がた
)
く、
324
一旦
(
いつたん
)
数多
(
あまた
)
の
信徒
(
しんと
)
を
宣伝使
(
せんでんし
)
に
仕立
(
した
)
てて、
325
自転倒
(
おのころ
)
島
(
じま
)
の
東西
(
とうざい
)
南北
(
なんぼく
)
に
間配
(
まくば
)
り
置
(
お
)
き、
326
手
(
て
)
に
手
(
て
)
を
把
(
と
)
つて、
327
フサの
国
(
くに
)
へ
渡
(
わた
)
り、
328
高姫
(
たかひめ
)
の
身許
(
みもと
)
に
着
(
つ
)
きける。
329
高姫
(
たかひめ
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
勢力
(
せいりよく
)
侮
(
あなど
)
り
難
(
がた
)
きを
黒姫
(
くろひめ
)
より
聞
(
き
)
き、
330
黒姫
(
くろひめ
)
を
北山村
(
きたやまむら
)
の
本山
(
ほんざん
)
に
残
(
のこ
)
し
置
(
お
)
き、
331
自
(
みづか
)
らは
二三
(
にさん
)
の
弟子
(
でし
)
と
共
(
とも
)
に、
332
自転倒
(
おのころ
)
島
(
じま
)
に
渡
(
わた
)
り、
333
再
(
ふたた
)
び
魔窟
(
まくつ
)
ケ
原
(
はら
)
に
現
(
あら
)
はれ、
334
衣懸松
(
きぬかけまつ
)
の
下
(
した
)
にて
庵
(
いほり
)
を
結
(
むす
)
び、
335
三五教
(
あななひけう
)
覆滅
(
ふくめつ
)
の
根拠地
(
こんきよち
)
を
作
(
つく
)
らむとして
居
(
ゐ
)
たのである。
336
又
(
また
)
もやそれより
由良
(
ゆら
)
の
湊
(
みなと
)
の
人子
(
ひとご
)
の
司
(
つかさ
)
、
337
秋山彦
(
あきやまひこ
)
が
館
(
やかた
)
に
於
(
おい
)
て、
338
冠島
(
かむりじま
)
、
339
沓島
(
くつじま
)
の
宝庫
(
はうこ
)
の
鍵
(
かぎ
)
を
盗
(
と
)
り、
340
遂
(
つひ
)
には
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
の
玉
(
たま
)
を
呑
(
の
)
み、
341
空中
(
くうちう
)
に
白煙
(
はくえん
)
となりて
再
(
ふたた
)
び
逃
(
に
)
げ
帰
(
かへ
)
りしが、
342
それと
行違
(
ゆきちがひ
)
に
黒姫
(
くろひめ
)
は、
343
又
(
また
)
もや
魔窟
(
まくつ
)
ケ
原
(
はら
)
に
現
(
あら
)
はれ、
344
草庵
(
さうあん
)
の
焼跡
(
やけあと
)
に
新
(
あらた
)
に
庵
(
いほり
)
を
結
(
むす
)
び、
345
前年
(
ぜんねん
)
高姫
(
たかひめ
)
と
共
(
とも
)
に
築
(
きづ
)
き
置
(
お
)
きたる
地底
(
ちてい
)
の
大岩窟
(
だいがんくつ
)
に
居
(
きよ
)
を
定
(
さだ
)
め、
346
極力
(
きよくりよく
)
宣伝
(
せんでん
)
に
従事
(
じうじ
)
して
居
(
ゐ
)
たりしなり。
347
然
(
しか
)
るに
黒姫
(
くろひめ
)
の
部下
(
ぶか
)
に
仕
(
つか
)
ふる
夏彦
(
なつひこ
)
、
348
常彦
(
つねひこ
)
、
349
其
(
その
)
他
(
た
)
の
弟子
(
でし
)
共
(
ども
)
は、
350
フサの
国
(
くに
)
より
扈従
(
こじう
)
し
来
(
きた
)
り
乍
(
なが
)
ら、
351
少
(
すこ
)
しも
黒姫
(
くろひめ
)
に
夫
(
をつと
)
ある
事
(
こと
)
を
知
(
し
)
らざりける。
352
黒姫
(
くろひめ
)
は
独身
(
どくしん
)
主義
(
しゆぎ
)
を
高唱
(
かうしやう
)
し、
353
盛
(
さか
)
ンに
宣伝
(
せんでん
)
をして
居
(
ゐ
)
た
手前
(
てまへ
)
、
354
今更
(
いまさら
)
夫
(
をつと
)
ありとは
打明
(
うちあ
)
け
兼
(
か
)
ね、
355
私
(
ひそか
)
に
高姫
(
たかひめ
)
に
通
(
つう
)
じて、
356
神界
(
しんかい
)
の
都合
(
つがふ
)
と
称
(
しよう
)
し、
357
始
(
はじ
)
めて
夫
(
をつと
)
を
持
(
も
)
つた
如
(
ごと
)
く
装
(
よそほ
)
ひける。
358
高山彦
(
たかやまひこ
)
の
表面
(
へうめん
)
入婿
(
いりむこ
)
として
来
(
きた
)
るや、
359
以前
(
いぜん
)
の
事情
(
じじやう
)
を
知
(
し
)
らざりし
弟子
(
でし
)
達
(
たち
)
は、
360
黒姫
(
くろひめ
)
の
此
(
この
)
行動
(
かうどう
)
に
慊
(
あきた
)
らず、
361
遂
(
つひ
)
にウラナイ
教
(
けう
)
を
脱退
(
だつたい
)
するに
至
(
いた
)
りたるなり。
362
夏彦
(
なつひこ
)
、
363
常彦
(
つねひこ
)
以下
(
いか
)
の
主
(
おも
)
なる
者
(
もの
)
は、
364
此
(
この
)
時
(
とき
)
高城山
(
たかしろやま
)
に
立籠
(
たてこも
)
り、
365
東南
(
とうなん
)
地方
(
ちはう
)
を
宣伝
(
せんでん
)
し
居
(
ゐ
)
たれば、
366
梅
(
うめ
)
、
367
浅
(
あさ
)
、
368
幾
(
いく
)
などの
計
(
はか
)
らひに
依
(
よ
)
りて、
369
新
(
あらた
)
に
入信
(
にふしん
)
したる
綾彦
(
あやひこ
)
の
事
(
こと
)
は
少
(
すこ
)
しも
知
(
し
)
らざりける。
370
また
高城山
(
たかしろやま
)
の
松姫
(
まつひめ
)
が
侍女
(
じぢよ
)
として
仕
(
つか
)
へ
居
(
ゐ
)
るお
民
(
たみ
)
の
素性
(
すじやう
)
も、
371
気
(
き
)
が
付
(
つ
)
かず、
372
唯
(
ただ
)
普通
(
ふつう
)
の
信者
(
しんじや
)
とのみ
思
(
おも
)
ひて
取扱
(
とりあつか
)
ひ
居
(
ゐ
)
たりしなり。
373
黒姫
(
くろひめ
)
は
又
(
また
)
もや
剣尖山
(
けんさきやま
)
の
麓
(
ふもと
)
を
流
(
なが
)
るる
宮川
(
みやかは
)
に、
374
綾彦
(
あやひこ
)
外
(
ほか
)
一人
(
ひとり
)
を
伴
(
ともな
)
ひ、
375
禊
(
みそぎ
)
の
最中
(
さいちう
)
、
376
紫姫
(
むらさきひめ
)
、
377
青彦
(
あをひこ
)
の
一行
(
いつかう
)
に
出会
(
でつくは
)
し、
378
青彦
(
あをひこ
)
が
再
(
ふたた
)
びウラナイ
教
(
けう
)
に
復帰
(
ふくき
)
せしと
聞
(
き
)
き、
379
喜
(
よろこ
)
び
勇
(
いさ
)
みて、
380
この
岩窟
(
がんくつ
)
に
意気
(
いき
)
揚々
(
やうやう
)
として
帰
(
かへ
)
り
来
(
き
)
たりしなり。
381
○
382
黒姫
(
くろひめ
)
『サアサアこれが
妾
(
わし
)
の
仮
(
かり
)
の
出張所
(
しゆつちやうじよ
)
だ。
383
大江山
(
おほえやま
)
の
悪魔
(
あくま
)
防
(
ふせ
)
ぎに
地下室
(
ちかしつ
)
を
拵
(
こしら
)
へて
有
(
あ
)
るのだから、
384
這入
(
はい
)
つて
下
(
くだ
)
さいませ。
385
……
青彦
(
あをひこ
)
、
386
お
前
(
まへ
)
は
勝手
(
かつて
)
をよく
知
(
し
)
つてる
筈
(
はず
)
ぢや。
387
どうぞ
皆
(
みな
)
さまを
叮嚀
(
ていねい
)
に
案内
(
あんない
)
をしてあげて
下
(
くだ
)
さいな』
388
鹿公
(
しかこう
)
『ヤアこれは
又
(
また
)
奇妙
(
きめう
)
なお
住居
(
すまゐ
)
ですな、
389
三五教
(
あななひけう
)
の
反対
(
はんたい
)
で、
390
穴有教
(
あなありけう
)
だなア、
391
ヤア
結構
(
けつこう
)
結構
(
けつこう
)
、
392
穴有難
(
あなありがた
)
や
穴
(
あな
)
たふとやだ』
393
と
一人
(
ひとり
)
々々
(
ひとり
)
、
394
ゾロゾロと
辷
(
すべ
)
り
込
(
こ
)
む。
395
黒姫
(
くろひめ
)
『モシモシ
高山彦
(
たかやまひこ
)
さま、
396
極道
(
ごくだう
)
息子
(
むすこ
)
が
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
ました。
397
どうぞ
勘当
(
かんどう
)
を
赦
(
ゆる
)
してやつて
下
(
くだ
)
さい』
398
高山彦
(
たかやまひこ
)
『ヤアお
前
(
まへ
)
の
常々
(
つねづね
)
喧
(
やかま
)
しう
言
(
い
)
つて
居
(
を
)
つた……これが
青彦
(
あをひこ
)
だらう』
399
青彦
(
あをひこ
)
『ハイ
始
(
はじ
)
めてお
目
(
め
)
にかかります。
400
どうぞ
宜
(
よろ
)
しう
御
(
お
)
願
(
ねが
)
ひ
致
(
いた
)
します』
401
高山彦
(
たかやまひこ
)
『ハイハイ、
402
もう
是
(
こ
)
れからは、
403
あまりグラつかぬ
様
(
やう
)
にして
下
(
くだ
)
さい』
404
青彦
(
あをひこ
)
『
決
(
けつ
)
して
決
(
けつ
)
して、
405
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
下
(
くだ
)
さいますな』
406
高山彦
(
たかやまひこ
)
『ヤアなンと
綺麗
(
きれい
)
な
娘
(
むすめ
)
さまがお
出
(
いで
)
になつたぢやないか』
407
青彦
(
あをひこ
)
『
此
(
この
)
お
方
(
かた
)
は
由緒
(
ゆいしよ
)
ある
都
(
みやこ
)
の
方
(
かた
)
で
御座
(
ござ
)
いますが、
408
お
伊勢
(
いせ
)
様
(
さま
)
へ
御
(
ご
)
参拝
(
さんぱい
)
の
折
(
をり
)
、
409
黒姫
(
くろひめ
)
様
(
さま
)
の
言霊
(
ことたま
)
を
聞
(
き
)
いて、
410
大変
(
たいへん
)
感心
(
かんしん
)
遊
(
あそ
)
ばし、
411
「どうぞ
妾
(
わたし
)
も
入信
(
にふしん
)
が
致
(
いた
)
したう
御座
(
ござ
)
いますから、
412
青彦
(
あをひこ
)
さま、
413
頼
(
たの
)
みて
下
(
くだ
)
さいな」ナンテ、
414
それはそれはお
優
(
やさ
)
しい
口許
(
くちもと
)
でお
頼
(
たの
)
みになりました。
415
私
(
わたくし
)
もコンナ
綺麗
(
きれい
)
な
方
(
かた
)
が、
416
男
(
をとこ
)
ばつかりの
所
(
ところ
)
へお
出
(
いで
)
になつては、
417
嘸
(
さぞ
)
御
(
ご
)
迷惑
(
めいわく
)
だらうと
思
(
おも
)
ひましたけれども、
418
折角
(
せつかく
)
のお
頼
(
たの
)
み、
419
無下
(
むげ
)
に
断
(
ことわ
)
る
訳
(
わけ
)
にもゆかず、
420
黒姫
(
くろひめ
)
様
(
さま
)
に
御
(
お
)
取次
(
とりつぎ
)
致
(
いた
)
しました。
421
黒姫
(
くろひめ
)
さまは
二
(
ふた
)
つ
返辞
(
へんじ
)
で
承知
(
しようち
)
して
下
(
くだ
)
さいました』
422
紫姫
(
むらさきひめ
)
『ホヽヽヽヽ』
423
と
袖
(
そで
)
に
顔
(
かほ
)
を
隠
(
かく
)
す。
424
黒姫
(
くろひめ
)
『コレ
青彦
(
あをひこ
)
、
425
チツと
違
(
ちが
)
つては
居
(
を
)
らぬかな』
426
青彦
(
あをひこ
)
『アーさうでしたかなア。
427
あまり
嬉
(
うれ
)
しかつたので、
428
精神
(
せいしん
)
錯乱
(
さくらん
)
致
(
いた
)
しました。
429
どうぞ
見直
(
みなほ
)
し
聞直
(
ききなほ
)
しを
願
(
ねが
)
ひます』
430
黒姫
(
くろひめ
)
『
青彦
(
あをひこ
)
お
前
(
まへ
)
は
久振
(
ひさしぶり
)
で
親
(
おや
)
の
家
(
うち
)
へ
帰
(
かへ
)
つたのだから、
431
気
(
き
)
を
許
(
ゆる
)
して
奥
(
おく
)
でゆつくりと
寝
(
ね
)
なされ、
432
今
(
いま
)
は
新顔
(
しんがほ
)
ばつかりで、
433
お
前
(
まへ
)
の
知
(
し
)
つて
居
(
を
)
る
者
(
もの
)
は、
434
みなフサの
国
(
くに
)
の
本山
(
ほんざん
)
へ
往
(
い
)
つたり、
435
高城山
(
たかしろやま
)
へ
行
(
い
)
つて
居
(
を
)
る、
436
馴染
(
なじみ
)
がなくて
寂
(
さび
)
しいだらうが、
437
気
(
き
)
の
良
(
よ
)
い
者
(
もの
)
ばつかりだから、
438
気兼
(
きがね
)
なしにユツクリと
休
(
やす
)
まつしやい。
439
馬公
(
うまこう
)
鹿公
(
しかこう
)
も、
440
トツトとお
休
(
やす
)
み、
441
又
(
また
)
明日
(
あす
)
になつたら
結構
(
けつこう
)
な
話
(
はなし
)
を
聞
(
き
)
かしてあげる。
442
……サテ
紫姫
(
むらさきひめ
)
さまとやら、
443
あなたは
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
におなりになつたのは、
444
何
(
なに
)
を
感
(
かん
)
じてですかなア。
445
何
(
なに
)
か
一
(
ひと
)
つの
動機
(
どうき
)
がなければ、
446
あなたの
様
(
やう
)
な
賢明
(
けんめい
)
な
淑女
(
しゆくぢよ
)
が、
447
あの
様
(
やう
)
な
瑞
(
みづ
)
の
御霊
(
みたま
)
の
混
(
ま
)
ぜ
返
(
かへ
)
し
教
(
けう
)
に
入信
(
にふしん
)
なさる
道理
(
だうり
)
がない。
448
みな
奥
(
おく
)
へ
行
(
い
)
つて
睡眼
(
やす
)
みて
了
(
しま
)
つたから、
449
誰
(
たれ
)
も
聞
(
き
)
く
者
(
もの
)
もないから、
450
遠慮
(
ゑんりよ
)
なしに
話
(
はな
)
して
下
(
くだ
)
さいな』
451
紫姫
(
むらさきひめ
)
『ハイ
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います、
452
別
(
べつ
)
に
是
(
こ
)
れと
云
(
い
)
ふ
動機
(
どうき
)
も
御座
(
ござ
)
いませぬ。
453
国家
(
こくか
)
の
為
(
ため
)
社会
(
しやくわい
)
の
為
(
ため
)
に
舎身
(
しやしん
)
的
(
てき
)
の
活動
(
くわつどう
)
をなさる
瑞
(
みづ
)
の
御霊
(
みたま
)
の
大神
(
おほかみ
)
さまに
同情
(
どうじやう
)
を
表
(
へう
)
しまして、
454
つい
何
(
なん
)
とはなしに
宣伝使
(
せんでんし
)
になりました』
455
黒姫
(
くろひめ
)
『それはそれは
結構
(
けつこう
)
な
事
(
こと
)
だ。
456
身魂
(
みたま
)
の
因縁
(
いんねん
)
がなくては、
457
到底
(
たうてい
)
尊
(
たふと
)
い
宣伝使
(
せんでんし
)
にはなれませぬ。
458
三五教
(
あななひけう
)
もウラナイ
教
(
けう
)
も、
459
みな
変性
(
へんじやう
)
男子
(
なんし
)
、
460
変性
(
へんじやう
)
女子
(
によし
)
と、
461
経
(
たて
)
と
緯
(
よこ
)
との
身魂
(
みたま
)
が
現
(
あら
)
はれて
錦
(
にしき
)
の
機
(
はた
)
の
仕組
(
しぐみ
)
をなさるのぢやが、
462
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら、
463
素盞嗚
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
は
天
(
あま
)
の
岩戸
(
いはと
)
を
閉
(
し
)
めるお
役
(
やく
)
で、
464
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
が、
465
此
(
この
)
世
(
よ
)
の
乱
(
みだ
)
れた
行方
(
やりかた
)
がさしてあると
仰有
(
おつしや
)
る。
466
ナンボ
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
仰有
(
おつしや
)
る
事
(
こと
)
でも……これ
丈
(
だけ
)
乱
(
みだ
)
れた
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
を、
467
治
(
をさ
)
める
事
(
こと
)
を
措
(
お
)
いて、
468
乱
(
みだ
)
れた
方
(
はう
)
の
御
(
ご
)
守護
(
しゆご
)
をしられて
堪
(
たま
)
りますか。
469
そこで
吾々
(
われわれ
)
は
元
(
もと
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
熱心
(
ねつしん
)
な
取次
(
とりつぎ
)
だが、
470
今
(
いま
)
では
変性
(
へんじやう
)
女子
(
によし
)
の
行方
(
やりかた
)
に
愛想
(
あいさう
)
をつかし、
471
已
(
や
)
むを
得
(
え
)
ず、
472
ウラナイ
教
(
けう
)
と
名
(
な
)
をつけて、
473
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御用
(
ごよう
)
をして
居
(
を
)
りますのぢや。
474
同
(
おな
)
じ
事
(
こと
)
なら
三五教
(
あななひけう
)
の
名
(
な
)
が
附
(
つ
)
けたいけれど、
475
高姫
(
たかひめ
)
や
黒姫
(
くろひめ
)
は、
476
支部
(
しぶ
)
ぢやとか、
477
隠居
(
いんきよ
)
ぢやとか
言
(
い
)
はれるのが
癪
(
しやく
)
に
障
(
さは
)
るので、
478
已
(
や
)
むを
得
(
え
)
ず
結構
(
けつこう
)
な
結構
(
けつこう
)
なウラル
教
(
けう
)
の「ウラ」の
二字
(
にじ
)
を
取
(
と
)
り、
479
アナナイ
教
(
けう
)
の「ナイ」の
二字
(
にじ
)
をとつて、
480
表
(
おもて
)
ばつかり、
481
裏鬼門
(
うらきもん
)
金神
(
こんじん
)
の
変性
(
へんじやう
)
女子
(
によし
)
の
教
(
をしへ
)
は
一寸
(
ちよつと
)
も
無
(
な
)
いと
云
(
い
)
ふ、
482
生粋
(
きつすゐ
)
の
日本
(
やまと
)
魂
(
だましひ
)
のウラナイ
教
(
けう
)
ぢや。
483
お
前
(
まへ
)
も、
484
同
(
おな
)
じ
宣伝使
(
せんでんし
)
になるのなら、
485
喰
(
く
)
はせものの
三五教
(
あななひけう
)
を
廃
(
や
)
めてウラナイ
教
(
けう
)
になりなされ。
486
あなたのお
得
(
とく
)
ぢや。
487
否々
(
いやいや
)
天下
(
てんか
)
の
為
(
ため
)
ぢや』
488
紫姫
(
むらさきひめ
)
『
素盞嗚
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
さまは、
489
それ
程
(
ほど
)
悪
(
わる
)
いお
方
(
かた
)
で
御座
(
ござ
)
いますか。
490
世界
(
せかい
)
万民
(
ばんみん
)
の
為
(
ため
)
に
千座
(
ちくら
)
の
置戸
(
おきど
)
を
負
(
お
)
うて、
491
世界
(
せかい
)
の
悪
(
あく
)
を
一身
(
いつしん
)
に
引受
(
ひきう
)
け、
492
人民
(
じんみん
)
の
悪
(
わる
)
い
事
(
こと
)
は、
493
みな
吾
(
われ
)
が
悪
(
わる
)
いのぢやと
言
(
い
)
つて、
494
犠牲
(
ぎせい
)
になつて
下
(
くだ
)
さる
神
(
かみ
)
さまぢや
有
(
あ
)
りませぬか』
495
黒姫
(
くろひめ
)
『それはさうぢやけれども、
496
モ
一
(
ひと
)
つ
我
(
が
)
が
強
(
つよ
)
うて
改心
(
かいしん
)
が
出来
(
でき
)
ぬものぢやから、
497
神界
(
しんかい
)
のお
仕組
(
しぐみ
)
が
成就
(
じやうじゆ
)
しませぬ。
498
何
(
なん
)
と
言
(
い
)
うても、
499
高天原
(
たかあまはら
)
から、
500
手足
(
てあし
)
の
爪
(
つめ
)
まで
抜
(
ぬ
)
かれて、
501
おつ
放
(
ぽ
)
り
出
(
だ
)
される
様
(
やう
)
な
神
(
かみ
)
ぢやから、
502
大抵
(
たいてい
)
云
(
い
)
はいでも
分
(
わか
)
つとる。
503
お
前
(
まへ
)
も
能
(
よ
)
う
胸
(
むね
)
に
手
(
て
)
を
当
(
あ
)
てて
御
(
ご
)
思案
(
しあん
)
なさいませ』
504
紫姫
(
むらさきひめ
)
『ウラナイ
教
(
けう
)
には、
505
ちツとも……
仰有
(
おつしや
)
る
通
(
とほ
)
り
裏
(
うら
)
がないので
御座
(
ござ
)
いますか』
506
黒姫
(
くろひめ
)
『
勿論
(
もちろん
)
の
事
(
こと
)
、
507
見
(
み
)
えた
向
(
む
)
きの、
508
正真
(
しやうしん
)
正銘
(
しやうめい
)
、
509
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら、
510
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
仕組
(
しぐみ
)
は
奥
(
おく
)
が
深
(
ふか
)
いからなア、
511
一寸
(
ちよつと
)
やそつとに、
512
人間
(
にんげん
)
の
理屈
(
りくつ
)
位
(
くらゐ
)
では
分
(
わか
)
りませぬ。
513
マアマア
暫
(
しばら
)
く
絶対
(
ぜつたい
)
服従
(
ふくじゆう
)
で
信神
(
しんじん
)
して
見
(
み
)
なさい。
514
御
(
お
)
神徳
(
かげ
)
が
段々
(
だんだん
)
分
(
わか
)
つて
来
(
く
)
るから』
515
斯
(
か
)
く
話
(
はな
)
す
折
(
をり
)
しも、
516
慌
(
あは
)
ただしく
走
(
はし
)
り
帰
(
かへ
)
つた
二人
(
ふたり
)
の
男
(
をとこ
)
。
517
黒姫
(
くろひめ
)
『ヤアお
前
(
まへ
)
は
滝
(
たき
)
と
板
(
いた
)
とぢやないか』
518
滝公、板公
『ハイ
左様
(
さやう
)
で
御座
(
ござ
)
います』
519
黒姫
(
くろひめ
)
『
昨日
(
きのふ
)
から
此処
(
ここ
)
を
飛
(
と
)
び
出
(
だ
)
した
限
(
き
)
り、
520
どこをウロウロ
迂路
(
うろ
)
ついとつたのだい』
521
滝公
(
たきこう
)
『ハイ
昨日
(
きのふ
)
遅
(
おそ
)
がけに、
522
一人
(
ひとり
)
の
女
(
をんな
)
が
通
(
とほ
)
りましただらう。
523
それをあなたが
捉
(
つか
)
まへて
来
(
こ
)
いと
仰有
(
おつしや
)
つたものだから、
524
此奴
(
こいつ
)
ア
又
(
また
)
、
525
梅公
(
うめこう
)
の
故智
(
こち
)
に
倣
(
なら
)
つて、
526
一
(
ひと
)
つ
大手柄
(
おほてがら
)
を
現
(
あら
)
はし、
527
あの
女
(
をんな
)
を
入信
(
にふしん
)
させてやるか、
528
あまり
諾
(
き
)
かねば、
529
何
(
いづ
)
れ
三五教
(
あななひけう
)
の
奴
(
やつ
)
だから、
530
叩
(
たた
)
き
潰
(
つぶ
)
してやらうかと
思
(
おも
)
うて、
531
あなたの
御
(
ご
)
命令
(
めいれい
)
で
追
(
お
)
ひかけて
行
(
ゆ
)
きました』
532
黒姫
(
くろひめ
)
『
誰
(
たれ
)
が
叩
(
たた
)
き
潰
(
つぶ
)
せと
言
(
い
)
つたのか。
533
丹波村
(
たんばむら
)
のお
節
(
せつ
)
に
違
(
ちが
)
ひないから、
534
捉
(
つか
)
まへて
来
(
こ
)
いと
言
(
い
)
つたのだ、
535
そして
其
(
その
)
お
節
(
せつ
)
を
如何
(
どう
)
したのぢやい』
536
滝公
(
たきこう
)
『
板公
(
いたこう
)
と
二人
(
ふたり
)
、
537
尻引
(
しりひ
)
き
捲
(
まく
)
つて……お
節
(
せつ
)
は
走
(
はし
)
る、
538
二人
(
ふたり
)
は
追
(
お
)
ひかける、
539
船岡山
(
ふなをかやま
)
の
手前
(
てまへ
)
までやつて
来
(
く
)
ると、
540
日
(
ひ
)
は
暮
(
く
)
れかける。
541
お
節
(
せつ
)
は
石
(
いし
)
に
躓
(
つまづ
)
きパタリと
倒
(
たふ
)
れたので、
542
其
(
その
)
間
(
あひだ
)
に
追
(
お
)
ひつき、
543
無理
(
むり
)
無体
(
むたい
)
に
手足
(
てあし
)
を
括
(
くく
)
り、
544
暗
(
やみ
)
の
林
(
はやし
)
に
連
(
つ
)
れ
往
(
い
)
つて、
545
グツと
縛
(
しば
)
りつけ、
546
猿轡
(
さるぐつわ
)
を
箝
(
は
)
ませ、
547
再
(
ふたた
)
び
姿
(
すがた
)
を
改
(
あら
)
ため、
548
……コレコレどこのお
女中
(
ぢよちう
)
か
知
(
し
)
らぬが、
549
コンナ
所
(
ところ
)
に
悪者
(
わるもの
)
に
括
(
くく
)
られて
可愛想
(
かあいさう
)
に……と
云
(
い
)
つて
助
(
たす
)
けてやる。
550
さうすれば
如何
(
いか
)
なお
節
(
せつ
)
もウラナイ
教
(
けう
)
の
親切
(
しんせつ
)
に
感
(
かん
)
じて、
551
三五教
(
あななひけう
)
を
思
(
おも
)
ひ
切
(
き
)
るだらう……と
思
(
おも
)
ひまして、
552
一寸
(
ちよつと
)
智慧
(
ちゑ
)
を
出
(
だ
)
しました。
553
さうした
所
(
ところ
)
が、
554
お
前
(
まへ
)
さまがやつて
来
(
き
)
て、
555
種々
(
いろいろ
)
と
仰有
(
おつしや
)
るものだから、
556
暗
(
くら
)
がり
乍
(
なが
)
ら
御
(
ご
)
案内
(
あんない
)
しました。
557
……あなた
覚
(
おぼ
)
えが
御座
(
ござ
)
いませう……
忽
(
たちま
)
ちお
節
(
せつ
)
は
息
(
いき
)
が
切
(
き
)
れ、
558
厭
(
いや
)
らしい
声
(
こゑ
)
を
出
(
だ
)
して、
559
化
(
ば
)
けて
出
(
で
)
よつた、
560
其
(
その
)
途端
(
とたん
)
に
私
(
わたくし
)
は
尻餅
(
しりもち
)
を
搗
(
つ
)
いて、
561
暗
(
くら
)
さは
暗
(
くら
)
し、
562
傍
(
かたはら
)
の
谷川
(
たにがは
)
へサクナダリに
落
(
お
)
ち
滝
(
たき
)
つ、
563
腰
(
こし
)
イタツ
磐根
(
いはね
)
に
打据
(
うちす
)
ゑて、
564
それはそれは
酷
(
えら
)
い
目
(
め
)
に
遭
(
あ
)
ひました。
565
暫
(
しばら
)
くは
気
(
き
)
を
取
(
と
)
り
失
(
うしな
)
うて、
566
半死
(
はんじに
)
になつて
了
(
しま
)
ひ、
567
苦
(
くるし
)
みて
居
(
を
)
るのに、
568
あなたは
側
(
そば
)
へ
来
(
き
)
て
居
(
を
)
り
乍
(
なが
)
ら
私
(
わたくし
)
を
見殺
(
みごろ
)
しにして
帰
(
かへ
)
りなさつたぢやないか。
569
何時
(
いつ
)
も
人
(
ひと
)
を
助
(
たす
)
ける
助
(
たす
)
けると
仰有
(
おつしや
)
るが、
570
アンナ
時
(
とき
)
に
助
(
たす
)
けて
貰
(
もら
)
はねば、
571
常
(
つね
)
に
御
(
おん
)
大将
(
たいしやう
)
と
仰
(
あふ
)
いで
居
(
ゐ
)
る
甲斐
(
かひ
)
がありませぬワ』
572
黒姫
(
くろひめ
)
『そら
何
(
なに
)
を
云
(
い
)
うのだ、
573
妾
(
わし
)
が
何故
(
なぜ
)
ソンナ
所
(
ところ
)
へ
行
(
ゆ
)
く
必要
(
ひつえう
)
があるか、
574
又
(
また
)
何
(
なん
)
とした
乱暴
(
らんばう
)
な
事
(
こと
)
をするのだい。
575
ソンナ
事
(
こと
)
がウラナイ
教
(
けう
)
の
教
(
をしへ
)
にありますか。
576
モウ
今日
(
けふ
)
限
(
かぎ
)
り、
577
破門
(
はもん
)
するツ、
578
サア
出
(
で
)
て
行
(
ゆ
)
け
出
(
で
)
て
行
(
ゆ
)
け』
579
滝公
(
たきこう
)
『
悪人
(
あくにん
)
は
悪人
(
あくにん
)
とせず、
580
鬼
(
おに
)
でも、
581
蛇
(
じや
)
でも、
582
餓鬼
(
がき
)
虫
(
むし
)
けらでも
助
(
たす
)
けるのが、
583
ウラナイ
教
(
けう
)
ぢや
有
(
あ
)
りませぬか。
584
出
(
で
)
て
行
(
ゆ
)
けとはチツと
聞
(
きこ
)
えませぬワ』
585
黒姫
(
くろひめ
)
『モシ
紫姫
(
むらさきひめ
)
さま、
586
斯
(
か
)
う
云
(
い
)
ふ
取違
(
とりちがひ
)
する
者
(
もの
)
がチヨコチヨコ
出来
(
でき
)
ますので、
587
誠
(
まこと
)
に
困
(
こま
)
ります。
588
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら、
589
コンナ
者
(
もの
)
ばつかりぢや
御座
(
ござ
)
いませぬ。
590
これは
大勢
(
おほぜい
)
の
中
(
なか
)
でも、
591
選
(
よ
)
りに
選
(
よ
)
つて
一番
(
いちばん
)
悪
(
わる
)
い
奴
(
やつ
)
で
御座
(
ござ
)
います。
592
そして
又
(
また
)
入信
(
にふしん
)
してから、
593
幾
(
いく
)
らもならぬものですから、
594
つい
脱線
(
だつせん
)
をしましてナ』
595
板公
(
いたこう
)
『モシモシ
黒姫
(
くろひめ
)
さま、
596
余
(
あんま
)
り
甚
(
ひど
)
いぢやありませぬか、
597
私
(
わたくし
)
が
悪人
(
あくにん
)
なら、
598
モツとモツと
大悪人
(
だいあくにん
)
が
沢山
(
たくさん
)
居
(
を
)
りますで……
綾彦
(
あやひこ
)
だつて、
599
お
民
(
たみ
)
だつて、
600
改心
(
かいしん
)
さしたのは、
601
あなた
知
(
し
)
らぬか
知
(
し
)
らぬが、
602
それはそれは
大変
(
たいへん
)
な
酷
(
えら
)
い
事
(
こと
)
をやつて
入信
(
にふしん
)
させたのだ。
603
私
(
わたし
)
も
兄弟子
(
あにでし
)
の
兵法
(
へいはふ
)
を
倣
(
なら
)
つて
巧
(
うま
)
くやらうと
思
(
おも
)
つたのが
当
(
あて
)
が
外
(
はづ
)
れた
丈
(
だけ
)
のものですよ、
604
あれ
程
(
ほど
)
喧
(
やかま
)
しう
下
(
した
)
の
者
(
もの
)
が
噂
(
うはさ
)
をして
居
(
を
)
るのに、
605
あなたの
耳
(
みみ
)
へ
這入
(
はい
)
らぬ
筈
(
はず
)
はない、
606
一
(
いち
)
年
(
ねん
)
からになるのに、
607
世界
(
せかい
)
が
見
(
み
)
え
透
(
す
)
くと
云
(
い
)
ふあなたが、
608
知
(
し
)
つとらぬとは
言
(
い
)
はれませぬ。
609
腹
(
はら
)
の
底
(
そこ
)
を
叩
(
たた
)
けば、
610
「
権謀
(
けんぼう
)
術数
(
じゆつすう
)
的
(
てき
)
手段
(
しゆだん
)
は
用
(
もち
)
ゐるな。
611
併
(
しか
)
し
俺
(
おれ
)
の
知
(
し
)
らぬ
所
(
ところ
)
では
都合
(
つがふ
)
よく
行
(
や
)
れ、
612
勝手
(
かつて
)
たるべし」と
云
(
い
)
ふ、
613
あなたの
御
(
ご
)
精神
(
せいしん
)
でせう』
614
滝公
(
たきこう
)
『ソンナこたア、
615
言
(
い
)
はなくても
定
(
き
)
まつて
居
(
を
)
るワイ。
616
あれ
程
(
ほど
)
、
617
神
(
かみ
)
の
取次
(
とりつぎ
)
する
者
(
もの
)
は、
618
独身
(
ひとりみ
)
でなければ
可
(
い
)
かぬと
仰有
(
おつしや
)
つた
黒姫
(
くろひめ
)
さまでさへも、
619
ヤツパリ
言
(
い
)
うた
事
(
こと
)
をケロリと
忘
(
わす
)
れて
因縁
(
いんねん
)
だとか、
620
御
(
ご
)
都合
(
つがふ
)
だとか
理屈
(
りくつ
)
を
附
(
つ
)
けて、
621
ハズバンドを
持
(
も
)
たつしやるのだもの、
622
言
(
い
)
ふ
丈
(
だけ
)
野暮
(
やぼ
)
だよ』
623
黒姫
(
くろひめ
)
『
何
(
なに
)
を
言
(
い
)
ふのだ。
624
早
(
はや
)
う
出
(
で
)
て
下
(
くだ
)
さい』
625
滝公
(
たきこう
)
『
都合
(
つがふ
)
が
悪
(
わる
)
うおますかなア……
初
(
はじ
)
めての
入信者
(
にふしんじや
)
の
前
(
まへ
)
ですから、
626
成
(
な
)
るべくは、
627
コンナ
内幕話
(
うちまくばなし
)
は
言
(
い
)
ひたくはありませぬが、
628
お
前
(
まへ
)
さまが
今日
(
けふ
)
から
除名
(
ぢよめい
)
すると
仰有
(
おつしや
)
つた
以上
(
いじやう
)
は、
629
今迄
(
いままで
)
の
師匠
(
ししやう
)
でもなければ、
630
弟子
(
でし
)
でもない。
631
力
(
ちから
)
一杯
(
いつぱい
)
奮戦
(
ふんせん
)
して、
632
どこまでも
素破抜
(
すつぱぬ
)
きませうか』
633
黒姫
(
くろひめ
)
は
唇
(
くちびる
)
を
震
(
ふる
)
はし、
634
目
(
め
)
を
逆立
(
さかだ
)
て、
635
クウクウ
歯
(
は
)
を
喰
(
く
)
ひしばつて、
636
怒
(
いか
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
637
滝公
(
たきこう
)
『モシ
黒姫
(
くろひめ
)
さま、
638
怒
(
いか
)
る
勿
(
なか
)
れ……と
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
がありますなア。
639
怒
(
いか
)
つて
居
(
ゐ
)
るのぢやありませぬか。
640
チツと
笑
(
わら
)
ひなされ』
641
黒姫
(
くろひめ
)
『ウーム ウーム』
642
と
歯
(
は
)
を
喰
(
く
)
ひしばり、
643
目
(
め
)
を
剥
(
む
)
いて
居
(
ゐ
)
る。
644
紫姫
(
むらさきひめ
)
『これはこれは
滝
(
たき
)
さまとやら、
645
板
(
いた
)
さまとやら、
646
良
(
い
)
い
加減
(
かげん
)
にお
静
(
しづ
)
まりなさいませ。
647
夜前
(
やぜん
)
あなたがお
節
(
せつ
)
さまを
悩
(
なや
)
めて
御座
(
ござ
)
る
所
(
ところ
)
を、
648
妾
(
わたし
)
外
(
ほか
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
者
(
もの
)
がよく
見
(
み
)
て
居
(
を
)
りました。
649
黒姫
(
くろひめ
)
さまは
決
(
けつ
)
してお
出
(
い
)
でぢやありませぬ。
650
妾
(
わたし
)
の
連
(
つれ
)
の
鹿
(
しか
)
と
云
(
い
)
ふ
男
(
をとこ
)
が
黒姫
(
くろひめ
)
さまの……
暗
(
やみ
)
を
幸
(
さいは
)
ひ……
声色
(
こはいろ
)
を
使
(
つか
)
つたのですよ。
651
それに
黒姫
(
くろひめ
)
さまがお
出
(
い
)
でになつたなぞと
仰有
(
おつしや
)
つてはお
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
ですワ、
652
お
節
(
せつ
)
さまはこの
奥
(
おく
)
へ
来
(
き
)
て、
653
スヤスヤ
寝
(
やす
)
みてゐらつしやいますよ』
654
滝公、板公
『エー
何
(
なん
)
と
仰有
(
おつしや
)
る、
655
お
節
(
せつ
)
さまが……そいちやア
大変
(
たいへん
)
だ』
656
紫姫
(
むらさきひめ
)
『さう
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
なされますな、
657
青彦
(
あをひこ
)
さまも
見
(
み
)
えて
居
(
を
)
ります』
658
滝公
(
たきこう
)
『ヤアうつかりして
居
(
を
)
ると、
659
ドンナ
目
(
め
)
に
合
(
あ
)
ふか
分
(
わか
)
らぬぞ。
660
仇討
(
かたきうち
)
に……
岩窟
(
いはや
)
退治
(
たいぢ
)
に
来
(
き
)
よつたのだなア。
661
……オイ
板公
(
いたこう
)
、
662
黒姫
(
くろひめ
)
さまはどうでも
良
(
い
)
い。
663
生命
(
いのち
)
あつての
物種
(
ものだね
)
だ、
664
見付
(
みつ
)
からぬ
間
(
うち
)
に、
665
一刻
(
いつこく
)
も
早
(
はや
)
く
此
(
この
)
場
(
ば
)
を
退却
(
たいきやく
)
だ』
666
と
滝
(
たき
)
は
駆出
(
かけだ
)
す。
667
板
(
いた
)
も
続
(
つづ
)
いて、
668
板公
『オイ
合点
(
がつてん
)
だ』
669
と
後
(
あと
)
を
追
(
お
)
ふ。
670
黒姫
(
くろひめ
)
は、
671
黒姫
『オイこれこれ、
672
滝公
(
たきこう
)
、
673
板公
(
いたこう
)
、
674
待
(
ま
)
つた
待
(
ま
)
つた、
675
言
(
い
)
ひたい
事
(
こと
)
がある』
676
滝
(
たき
)
板
(
いた
)
の
両人
(
りやうにん
)
は、
677
岩穴
(
いはあな
)
の
外
(
そと
)
から
内
(
うち
)
を
覗
(
のぞ
)
いて、
678
滝公、板公
『
黒姫
(
くろひめ
)
さま、
679
左様
(
さやう
)
なら、
680
ゆつくりと、
681
青彦
(
あをひこ
)
やお
節
(
せつ
)
に、
682
脂
(
あぶら
)
を
搾
(
しぼ
)
られなさつたが
宜
(
よ
)
からう、
683
アバヨ、
684
アハヽヽヽ、
685
ウフヽヽヽ』
686
と
云
(
い
)
つた
限
(
き
)
り、
687
何処
(
どこ
)
ともなく……それ
限
(
き
)
りウラナイ
教
(
けう
)
には
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
せなくなりにけり。
688
紫姫
(
むらさきひめ
)
は
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
がり、
689
紫姫
『モシモシ
黒姫
(
くろひめ
)
さま、
690
お
腹
(
はら
)
が
立
(
た
)
ちませうが、
691
若
(
わか
)
い
人
(
ひと
)
の
仰有
(
おつしや
)
る
事
(
こと
)
、
692
どうぞ
宥
(
ゆる
)
して
上
(
あ
)
げて
下
(
くだ
)
さいませ、
693
……イヤもう
人
(
ひと
)
を
使
(
つか
)
へば
苦
(
く
)
を
使
(
つか
)
ふと
申
(
まを
)
しまして、
694
御
(
ご
)
苦心
(
くしん
)
の
程
(
ほど
)
、
695
お
察
(
さつ
)
し
申
(
まを
)
します』
696
黒姫
(
くろひめ
)
『これはこれは、
697
ご
親切
(
しんせつ
)
によう
言
(
い
)
うて
下
(
くだ
)
さいました。
698
無茶
(
むちや
)
ばつかり
申
(
まを
)
しまして
困
(
こま
)
ります。
699
これと
言
(
い
)
ふのも、
700
決
(
けつ
)
して
決
(
けつ
)
して、
701
滝
(
たき
)
や
板
(
いた
)
が
申
(
まを
)
すのぢや
御座
(
ござ
)
いませぬ。
702
又
(
また
)
さう
云
(
い
)
ふ
様
(
やう
)
な
悪
(
わる
)
い
事
(
こと
)
をする
男
(
をとこ
)
ぢや
有
(
あ
)
りませぬが、
703
素盞嗚
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
の
悪神
(
あくがみ
)
の
眷属
(
けんぞく
)
が
憑
(
うつ
)
つて、
704
吾々
(
われわれ
)
を
苦
(
くるし
)
めやうと
思
(
おも
)
うて、
705
アンナ
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
つたり、
706
したりするのです。
707
チツとも
油断
(
ゆだん
)
はなりませぬ。
708
悪神
(
あくがみ
)
に
使
(
つか
)
はれた、
709
滝公
(
たきこう
)
板公
(
いたこう
)
こそ
不憫
(
ふびん
)
な
者
(
もの
)
で
御座
(
ござ
)
います、
710
オンオンオン』
711
と
泣
(
な
)
き
真似
(
まね
)
をする。
712
紫姫
(
むらさきひめ
)
『
黒姫
(
くろひめ
)
さま、
713
モウお
休
(
やす
)
みなさいましたらどうでせう。
714
大分
(
だいぶん
)
夜
(
よ
)
も
更
(
ふ
)
けた
様
(
やう
)
です』
715
黒姫
(
くろひめ
)
『ハイ
有難
(
ありがた
)
う、
716
ソンナラお
先
(
さき
)
へ
御免
(
ごめん
)
蒙
(
かうむ
)
りませう。
717
明日
(
あす
)
又
(
また
)
ゆつくりと、
718
根本
(
こつぽん
)
のお
話
(
はなし
)
を
聴
(
き
)
いて
貰
(
もら
)
ひませう』
719
紫姫
(
むらさきひめ
)
『ハイ
有難
(
ありがた
)
う』
720
と
互
(
たがひ
)
に
寝
(
しん
)
に
就
(
つ
)
きにける。
721
(
大正一一・四・二六
旧三・三〇
松村真澄
録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
<<< 朝の一驚
(B)
(N)
相身互 >>>
霊界物語
>
如意宝珠(第13~24巻)
>
第18巻(巳の巻)
> 第3篇 反間苦肉 > 第10章 赤面黒面
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【
メールアドレス
】
【第10章 赤面黒面|第18巻|如意宝珠|霊界物語|/rm1810】
合言葉「みろく」を入力して下さい→