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霊界物語
如意宝珠(第13~24巻)
第18巻(巳の巻)
序
凡例
総説
第1篇 弥仙の神山
第1章 春野の旅
第2章 厳の花
第3章 神命
第2篇 再探再険
第4章 四尾山
第5章 赤鳥居
第6章 真か偽か
第3篇 反間苦肉
第7章 神か魔か
第8章 蛙の口
第9章 朝の一驚
第10章 赤面黒面
第4篇 舎身活躍
第11章 相身互
第12章 大当違
第13章 救の神
第5篇 五月五日祝
第14章 蛸の揚壺
第15章 遠来の客
第16章 返り討
第17章 玉照姫
霊の礎(四)
余白歌
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霊界物語
>
如意宝珠(第13~24巻)
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第18巻(巳の巻)
> 第5篇 五月五日祝 > 第17章 玉照姫
<<< 返り討
(B)
(N)
霊の礎(四) >>>
第一七章
玉照姫
(
たまてるひめ
)
〔六四五〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第18巻 如意宝珠 巳の巻
篇:
第5篇 五月五日祝
よみ(新仮名遣い):
ごがついつかのいわい
章:
第17章 玉照姫
よみ(新仮名遣い):
たまてるひめ
通し章番号:
645
口述日:
1922(大正11)年04月28日(旧04月02日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年2月10日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
常彦ら三人は、四継王山の麓にできた、悦子姫の館に逃げて帰ってきた。そして、加米彦と夏彦に、事の顛末を報告し、青彦たちがウラナイ教に寝返ったことを伝えた。
加米彦は慌てて魔窟ケ原に乗り込もうとするが、夏彦は落ち着いて加米彦を引き止める。夏彦は一日ゆっくりしていれば、青彦、紫姫らの動向がきっとわかる、と落ち着いている。
翌日、悦子姫と音彦が、五十子姫を伴って館に帰ってきた。加米彦と夏彦は慌てて大掃除をして一行を迎える。そこへ、ウラナイ教に潜入していた馬公と鹿公が、けっこうな神様を奉戴して戻ってきた、と報告に来る。
丹州を先頭に、玉照姫を抱いたお玉を連れて、青彦ら一行が館に戻ってきた。悦子姫は嬉し涙を流して玉照姫を迎えた。
青彦はこれまでの経緯を宣伝歌に込めて歌った。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2021-03-26 18:20:24
OBC :
rm1817
愛善世界社版:
275頁
八幡書店版:
第3輯 739頁
修補版:
校定版:
282頁
普及版:
125頁
初版:
ページ備考:
001
自転倒
(
おのころ
)
島
(
じま
)
の
第一
(
だいいち
)
の
002
霊地
(
れいち
)
と
世
(
よ
)
にも
鳴
(
な
)
りひびく
003
世界
(
せかい
)
に
無二
(
むに
)
の
神策地
(
しんさくち
)
004
瑞
(
みづ
)
の
御霊
(
みたま
)
の
隠
(
かく
)
れ
場所
(
ばしよ
)
005
青葉
(
あをば
)
も、そよぐ
夏彦
(
なつひこ
)
が
006
万世
(
ばんせい
)
不動
(
ふどう
)
の
瑞祥
(
ずゐしやう
)
を
007
祝
(
いは
)
ふ
加米彦
(
かめひこ
)
、
諸共
(
もろとも
)
に
008
四
(
よ
)
つの
手足
(
てあし
)
を
働
(
はたら
)
かせ
009
朝
(
あさ
)
な
夕
(
ゆふ
)
なに
勉強
(
いそし
)
みて
010
主
(
あるじ
)
の
留守
(
るす
)
を
守
(
まも
)
り
居
(
ゐ
)
る
011
世継王
(
よつわう
)
の
山
(
やま
)
の
夕嵐
(
ゆふあらし
)
012
雨戸
(
あまど
)
を
敲
(
たた
)
く
折
(
をり
)
からに
013
息
(
いき
)
もせきせき
尋
(
たづ
)
ね
来
(
く
)
る
014
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
015
常
(
つね
)
に
変
(
かは
)
りし
常彦
(
つねひこ
)
が
016
顔
(
かほ
)
に
紅葉
(
もみぢ
)
を
散
(
ち
)
らしつつ
017
音
(
おと
)
もサワサワ
滝公
(
たきこう
)
や
018
心
(
こころ
)
痛
(
いた
)
むる
板公
(
いたこう
)
が
019
これの
庵
(
いほり
)
を
打叩
(
うちたた
)
き
020
頼
(
たの
)
も
頼
(
たの
)
もと
訪
(
おと
)
なへば
021
オウと
答
(
こた
)
へて
加米彦
(
かめひこ
)
は
022
雨戸
(
あまど
)
ガラリと
引開
(
ひきあ
)
けて
023
此
(
この
)
真夜中
(
まよなか
)
に
一
(
ひと
)
つ
家
(
や
)
を
024
訪
(
おと
)
なふ
神
(
かみ
)
は
何者
(
なにもの
)
ぞ
025
鬼
(
おに
)
か
大蛇
(
をろち
)
か
曲神
(
まがかみ
)
か
026
まさか
違
(
ちが
)
へば
木常彦
(
きつねひこ
)
027
唯
(
ただ
)
一言
(
いちごん
)
の
言霊
(
ことたま
)
の
028
愛想
(
あいさう
)
もコソも
夕嵐
(
ゆふあらし
)
029
吹
(
ふ
)
き
払
(
はら
)
はむと
夕月夜
(
ゆふづくよ
)
030
キツと
透
(
すか
)
して
眺
(
なが
)
むれば
031
何
(
なん
)
とは、なしに
見覚
(
みおぼ
)
えの
032
姿
(
すがた
)
に
心
(
こころ
)
和
(
やは
)
らげつ
033
林
(
はやし
)
の
中
(
なか
)
の
一
(
ひと
)
つ
家
(
いえ
)
034
訪
(
おと
)
なふ
人
(
ひと
)
は
何人
(
なにびと
)
ぞ
035
御名
(
みな
)
を
名乗
(
なの
)
らせ
給
(
たま
)
へよと
036
いと
慇懃
(
いんぎん
)
に
言霊
(
ことたま
)
を
037
宣
(
の
)
り
直
(
なほ
)
すれば
常彦
(
つねひこ
)
は
038
首
(
かうべ
)
をかたげ
腰
(
こし
)
を
曲
(
ま
)
げ
039
両手
(
りやうて
)
を
膝
(
ひざ
)
の
上
(
うへ
)
に
置
(
お
)
き
040
鬼
(
おに
)
ケ
城
(
じやう
)
にて
別
(
わか
)
れたる
041
吾
(
わ
)
れは
常彦
(
つねひこ
)
宣伝使
(
せんでんし
)
042
汝
(
なれ
)
は
加米彦
(
かめひこ
)
、
夏彦
(
なつひこ
)
か
043
申上
(
まをしあ
)
げたき
仔細
(
しさい
)
あり
044
紫姫
(
むらさきひめ
)
や
青彦
(
あをひこ
)
が
045
三五教
(
あななひけう
)
にアキの
空
(
そら
)
046
天津
(
あまつ
)
御空
(
みそら
)
も
黒姫
(
くろひめ
)
が
047
醜
(
しこ
)
の
魔風
(
まかぜ
)
に
包
(
つつ
)
まれて
048
誠
(
まこと
)
の
道
(
みち
)
を
取
(
と
)
りはづし
049
悪魔
(
あくま
)
の
擒
(
とりこ
)
となりにける
050
友
(
とも
)
の
身魂
(
みたま
)
を
救
(
すく
)
はむと
051
夜
(
よ
)
を
日
(
ひ
)
についで
遥々
(
はるばる
)
と
052
茲
(
ここ
)
まで
訪
(
たづ
)
ね
来
(
きた
)
りしぞ。
053
加米彦
(
かめひこ
)
はこれを
聞
(
き
)
くより、
054
加米彦
『ナニ、
055
紫姫
(
むらさきひめ
)
、
056
青彦
(
あをひこ
)
がウラナイ
教
(
けう
)
に
沈没
(
ちんぼつ
)
しましたか。
057
それは
大変
(
たいへん
)
、
058
先
(
ま
)
づ
先
(
ま
)
づお
這入
(
はい
)
り
下
(
くだ
)
さいませ……ヤア
見馴
(
みなれ
)
ぬ
方
(
かた
)
が、
059
しかもお
二人
(
ふたり
)
』
060
滝
(
たき
)
、
061
板
(
いた
)
一度
(
いちど
)
に、
062
滝公、板公
『
私
(
わたくし
)
は
常彦
(
つねひこ
)
様
(
さま
)
のお
伴
(
とも
)
を
致
(
いた
)
して
参
(
まゐ
)
りました
新参者
(
しんざんもの
)
で
御座
(
ござ
)
います、
063
何卒
(
なにとぞ
)
宜
(
よろ
)
しうお
願
(
ねがひ
)
致
(
いた
)
します』
064
加米彦
(
かめひこ
)
『アーよしよし、
065
御
(
お
)
互
(
たがひ
)
にお
心安
(
こころやす
)
う
願
(
ねが
)
ひませう。
066
……
夏彦
(
なつひこ
)
の
御
(
おん
)
大将
(
たいしやう
)
、
067
何
(
なに
)
をグヅグヅして
御座
(
ござ
)
る。
068
天変
(
てんぺん
)
地妖
(
ちえう
)
の
大事変
(
だいじへん
)
が
出来
(
しゆつたい
)
致
(
いた
)
しましたぞ』
069
夏彦
(
なつひこ
)
は
奥
(
おく
)
の
間
(
ま
)
より、
070
ノソノソ
出
(
い
)
で
来
(
きた
)
り、
071
夏彦
『ヤア
常彦
(
つねひこ
)
さま、
072
暫
(
しばら
)
くでしたネ、
073
ようこそお
出
(
いで
)
下
(
くだ
)
さいました。
074
マアマアお
上
(
あが
)
り
下
(
くだ
)
さいませ。
075
ユツクリと
内開
(
うちあ
)
け
話
(
ばなし
)
でも
致
(
いた
)
しませうか』
076
加米彦
(
かめひこ
)
『コレコレ
夏彦
(
なつひこ
)
の
大将
(
たいしやう
)
、
077
そんな
陽気
(
やうき
)
な
所
(
ところ
)
ぢやありませぬワ』
078
夏彦
(
なつひこ
)
『そう
慌
(
あは
)
てずとも
宜
(
よろ
)
しいワイ。
079
何事
(
なにごと
)
も
皆
(
みな
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のなさる
事
(
こと
)
ぢや。
080
ヤア
常彦
(
つねひこ
)
さま、
081
決
(
けつ
)
して
決
(
けつ
)
して
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
は
要
(
い
)
りませぬ。
082
今
(
いま
)
に
紫姫
(
むらさきひめ
)
、
083
青彦
(
あをひこ
)
も、
084
意気
(
いき
)
揚々
(
やうやう
)
として
此家
(
ここ
)
へ
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
ますよ』
085
常彦
(
つねひこ
)
『そうかは
存
(
ぞん
)
じませぬが、
086
只今
(
ただいま
)
の
所
(
ところ
)
では
非常
(
ひじやう
)
な
勢
(
いきほひ
)
で
御座
(
ござ
)
います。
087
私
(
わたくし
)
も
青彦
(
あをひこ
)
、
088
紫姫
(
むらさきひめ
)
の
堕落
(
だらく
)
を
救
(
すく
)
はむ
為
(
ため
)
に、
089
ワザワザ
敵
(
てき
)
の
本城
(
ほんじやう
)
へ
侵入
(
しんにふ
)
し、
090
忠告
(
ちうこく
)
を
加
(
くは
)
へてやりました。
091
そうした
所
(
ところ
)
、
092
青彦
(
あをひこ
)
の
人格
(
じんかく
)
はガラリと
悪化
(
あくくわ
)
し、
093
終結
(
しまひ
)
の
果
(
は
)
てには
乱暴
(
らんばう
)
狼藉
(
ろうぜき
)
、
094
棍棒
(
こんぼう
)
を
以
(
もつ
)
て
吾々
(
われわれ
)
の
身体
(
しんたい
)
を、
095
所
(
ところ
)
構
(
かま
)
はず
滅多
(
めつた
)
打
(
う
)
ち、
096
斯
(
か
)
かる
乱暴者
(
らんばうもの
)
は
最早
(
もはや
)
救
(
すく
)
ふべき
手段
(
しゆだん
)
なしと、
097
取
(
と
)
る
物
(
もの
)
も
取敢
(
とりあへ
)
ず
此
(
この
)
二人
(
ふたり
)
を
伴
(
ともな
)
ひ、
098
悦子姫
(
よしこひめ
)
様
(
さま
)
初
(
はじ
)
めあなた
方
(
がた
)
に、
099
何
(
なん
)
とか
良
(
い
)
い
智慧
(
ちゑ
)
を
借
(
か
)
りたいと
思
(
おも
)
つて、
100
一先
(
ひとま
)
づ
引返
(
ひきかへ
)
して
来
(
き
)
ました。
101
そう
楽観
(
らくくわん
)
は
出来
(
でき
)
ませぬ』
102
加米彦
(
かめひこ
)
『ヤア
其奴
(
そいつ
)
ア
大変
(
たいへん
)
だ。
103
悦子姫
(
よしこひめ
)
さまは
竹生島
(
ちくぶしま
)
へ、
104
英子姫
(
ひでこひめ
)
さまの
後
(
あと
)
を
追
(
お
)
うてお
出
(
い
)
でになつた
不在中
(
ふざいちゆう
)
、
105
こんな
突発
(
とつぱつ
)
事件
(
じけん
)
を
等閑
(
とうかん
)
に
附
(
ふ
)
して
置
(
お
)
くと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
は、
106
不忠実
(
ふちうじつ
)
の
極
(
きは
)
まりだ。
107
サア
常彦
(
つねひこ
)
さま、
108
時
(
とき
)
を
移
(
うつ
)
さず
魔窟
(
まくつ
)
ケ
原
(
はら
)
の
黒姫
(
くろひめ
)
の
本陣
(
ほんぢん
)
へ
乗込
(
のりこ
)
み、
109
言霊戦
(
ことたません
)
の
大攻撃
(
だいこうげき
)
を
致
(
いた
)
しませう』
110
と
早
(
はや
)
くも
尻
(
しり
)
ひつからげ
飛
(
と
)
び
出
(
だ
)
さむとする。
111
夏彦
(
なつひこ
)
『アハヽヽヽ、
112
よく
慌
(
あは
)
てる
奴
(
やつ
)
だなア。
113
これだから
若
(
わか
)
い
奴
(
やつ
)
は
困
(
こま
)
るのだ。
114
マアゆるゆると
久
(
ひさ
)
し
振
(
ぶり
)
だ、
115
お
神酒
(
みき
)
でも
戴
(
いただ
)
いて、
116
作戦
(
さくせん
)
計画
(
けいくわく
)
をやらうぢやないか。
117
急
(
せ
)
いては
事
(
こと
)
を
仕損
(
しそん
)
ずる』
118
加米彦
(
かめひこ
)
『
急
(
せ
)
かねば
事
(
こと
)
が
間
(
ま
)
に
合
(
あ
)
はぬ。
119
芽出度
(
めでたく
)
凱旋
(
がいせん
)
した
其
(
その
)
上
(
うへ
)
で、
120
ゆるゆるお
神酒
(
みき
)
をあがる
事
(
こと
)
にせう。
121
刻一刻
(
こくいつこく
)
と
心
(
こころ
)
の
底
(
そこ
)
に
浸潤
(
しんじゆん
)
し
来
(
きた
)
るウラナイ
教
(
けう
)
が
悪霊
(
あくれい
)
の
誘拐
(
いうかい
)
の
矢
(
や
)
は
日
(
ひ
)
に
日
(
ひ
)
に
烈
(
はげ
)
しくなるであらう、
122
老耄爺
(
おいぼれおやぢ
)
の
夏彦
(
なつひこ
)
の
腰折
(
こしお
)
れ、
123
モウ
俺
(
おれ
)
は
愛想
(
あいさう
)
が
尽
(
つ
)
きた。
124
悦子姫
(
よしこひめ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
命令
(
めいれい
)
だから、
125
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
に
仕
(
つか
)
へると
思
(
おも
)
つて、
126
今迄
(
いままで
)
は
如何
(
いか
)
なる
愚論
(
ぐろん
)
拙策
(
せつさく
)
も、
127
目
(
め
)
を
塞
(
ふさ
)
いで
盲従
(
まうじゆう
)
して
来
(
き
)
たが、
128
それは
平安時
(
へいあんじ
)
の
時
(
とき
)
の
事
(
こと
)
だ。
129
危急
(
ききふ
)
存亡
(
そんばう
)
の
此
(
この
)
場合
(
ばあひ
)
、
130
臨機
(
りんき
)
応変
(
おうへん
)
の
処置
(
しよち
)
を
執
(
と
)
らねばならぬ。
131
平和
(
へいわ
)
の
時
(
とき
)
の
宰相
(
さいさう
)
には、
132
カナリ
適当
(
てきたう
)
かは
知
(
し
)
らぬが
国家
(
こくか
)
興亡
(
こうばう
)
危機
(
きき
)
一髪
(
いつぱつ
)
の
此
(
この
)
際
(
さい
)
、
133
仮令
(
たとへ
)
上官
(
じやうくわん
)
の
夏彦
(
なつひこ
)
が
命令
(
めいれい
)
たりとも、
134
服従
(
ふくじゆう
)
すべき
限
(
かぎ
)
りにあらずだ。
135
サアサア
常彦
(
つねひこ
)
外
(
ほか
)
両人
(
りやうにん
)
加米彦
(
かめひこ
)
に
続
(
つづ
)
かせられい……』
136
夏彦
(
なつひこ
)
『アツハヽヽヽ、
137
石亀
(
いしがめ
)
の
地団駄
(
ぢだんだ
)
、
138
何程
(
なにほど
)
騒
(
さわ
)
いだ
所
(
ところ
)
で
駄目
(
だめ
)
だよ。
139
マアゆつくりと
落着
(
おちつ
)
いたが
宜
(
よ
)
からう。
140
俺
(
おれ
)
は
一寸
(
ちよつと
)
紫姫
(
むらさきひめ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
意中
(
いちう
)
を
以心
(
いしん
)
伝心
(
でんしん
)
的
(
てき
)
に
感得
(
かんとく
)
して
居
(
ゐ
)
るから、
141
滅多
(
めつた
)
な
事
(
こと
)
は
無
(
な
)
い。
142
何
(
なに
)
か
深
(
ふか
)
いお
考
(
かんが
)
へが
有
(
あ
)
つての
事
(
こと
)
だ。
143
万一
(
まんいち
)
紫姫
(
むらさきひめ
)
を
始
(
はじ
)
め、
144
青彦
(
あをひこ
)
其
(
その
)
他
(
た
)
の
者
(
もの
)
、
145
一人
(
ひとり
)
にてもウラナイ
教
(
けう
)
の
黒姫
(
くろひめ
)
に
籠絡
(
ろうらく
)
さるる
様
(
やう
)
な
事
(
こと
)
が
実現
(
じつげん
)
したら、
146
此
(
この
)
夏彦
(
なつひこ
)
が
一
(
ひと
)
つより
無
(
な
)
い
首
(
くび
)
を、
147
幾
(
いく
)
つでも
加米彦
(
かめひこ
)
、
148
常彦
(
つねひこ
)
さまに
献上
(
けんじやう
)
する』
149
加米彦
(
かめひこ
)
『
今日
(
けふ
)
に
限
(
かぎ
)
つて
夏彦
(
なつひこ
)
の
大将
(
たいしやう
)
、
150
糞落
(
くそお
)
ち
着
(
つき
)
に
落
(
お
)
ち
着
(
つ
)
いて
御座
(
ござ
)
るぢやないか。
151
コラちと
変
(
へん
)
だ
黒姫
(
くろひめ
)
の
悪霊
(
あくれい
)
が
憑依
(
ひようい
)
して
居
(
を
)
るのではなからうかなア。
152
一
(
ひと
)
つ
厳重
(
げんぢう
)
なる
審神
(
さには
)
を
施行
(
しかう
)
するの
余地
(
よち
)
充分
(
じゆうぶん
)
あるワイ』
153
夏彦
(
なつひこ
)
、
154
二人
(
ふたり
)
の
耳元
(
みみもと
)
に
口
(
くち
)
を
寄
(
よ
)
せ、
155
何事
(
なにごと
)
か
囁
(
ささや
)
いた。
156
加米彦
(
かめひこ
)
『アーさうか、
157
ア、
158
それなら
安心
(
あんしん
)
だ。
159
ナア
常彦
(
つねひこ
)
、
160
肝腎
(
かんじん
)
の
事
(
こと
)
を
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
に
言
(
い
)
つて
呉
(
く
)
れぬものだから、
161
要
(
い
)
らぬ
気
(
き
)
を
揉
(
も
)
んだぢやないか』
162
夏彦
(
なつひこ
)
『
身魂
(
みたま
)
にチツとでも
曇
(
くも
)
りの
有
(
あ
)
る
間
(
うち
)
は、
163
神
(
かみ
)
は
今
(
いま
)
の
今迄
(
いままで
)
誠
(
まこと
)
の
仕組
(
しぐみ
)
は
申
(
まを
)
さぬぞよ。
164
誠
(
まこと
)
が
聞
(
き
)
きたくば、
165
我
(
が
)
を
折
(
お
)
りて
生
(
うま
)
れ
赤児
(
あかご
)
の
心
(
こころ
)
になり、
166
水晶
(
すゐしやう
)
の
身魂
(
みたま
)
に
研
(
みが
)
いて
下
(
くだ
)
されよ。
167
神
(
かみ
)
は
誠
(
まこと
)
を
聞
(
き
)
かしてやりたいなれど、
168
悪
(
あく
)
の
身魂
(
みたま
)
の
混
(
まじ
)
りて
居
(
を
)
る
守護神
(
しゆごじん
)
には、
169
実地
(
じつち
)
正真
(
しやうまつ
)
の
事
(
こと
)
が
云
(
い
)
うてやれぬぞよ……とお
筆先
(
ふでさき
)
に
現
(
あら
)
はれて
居
(
を
)
りますぞ』
170
加米彦
(
かめひこ
)
『ヤアさうすると
常彦
(
つねひこ
)
さま、
171
吾々
(
われわれ
)
二人
(
ふたり
)
はまだ
数
(
かず
)
に
入
(
い
)
つて
居
(
を
)
らぬのだ。
172
なんとムツカしいものだなア』
173
夏彦
(
なつひこ
)
『
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
、
174
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
にお
礼
(
れい
)
を
申上
(
まをしあ
)
げ、
175
此処
(
ここ
)
で
一
(
いち
)
日
(
にち
)
二日
(
ふつか
)
休養
(
きうやう
)
して
下
(
くだ
)
さい。
176
其
(
その
)
間
(
あひだ
)
にキツと
紫姫
(
むらさきひめ
)
様
(
さま
)
、
177
青彦
(
あをひこ
)
の
消息
(
せうそく
)
が
分
(
わか
)
るでせう』
178
加米彦
(
かめひこ
)
『
流石
(
さすが
)
は
御
(
おん
)
大将
(
たいしやう
)
、
179
イヤもう
今日
(
こんにち
)
限
(
かぎ
)
り、
180
何事
(
なにごと
)
も
盲従
(
まうじゆう
)
致
(
いた
)
しませう。
181
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
間違
(
まちが
)
つたら、
182
約束
(
やくそく
)
の
通
(
とほ
)
り、
183
常彦
(
つねひこ
)
と
加米彦
(
かめひこ
)
が、
184
夏彦
(
なつひこ
)
の
御首
(
みしるし
)
頂戴
(
ちやうだい
)
仕
(
つかまつ
)
るから……
御
(
お
)
覚悟
(
かくご
)
は
確
(
たしか
)
でせうな』
185
夏彦
(
なつひこ
)
『アハヽヽヽ、
186
たしかだ たしかだ』
187
斯
(
か
)
く
話
(
はなし
)
に
眈
(
ふけ
)
り
乍
(
なが
)
ら、
188
其
(
その
)
夜
(
よ
)
は
主客
(
しゆきやく
)
五
(
ご
)
人
(
にん
)
枕
(
まくら
)
を
並
(
なら
)
べて
寝
(
しん
)
に
就
(
つ
)
いた。
189
連日
(
れんじつ
)
連夜
(
れんや
)
曇
(
くも
)
り
果
(
は
)
てたる
五月
(
さつき
)
の
空
(
そら
)
も、
190
今日
(
けふ
)
はカラリと
日本晴
(
にほんばれ
)
の
好天気
(
かうてんき
)
、
191
煎
(
い
)
りつく
様
(
やう
)
な
大空
(
おほぞら
)
に、
192
朝鮮燕
(
てうせんつばめ
)
の
幾十
(
いくじふ
)
となく
泥
(
どろ
)
を
含
(
ふく
)
みて、
193
前後
(
ぜんご
)
左右
(
さいう
)
に
飛
(
と
)
び
交
(
か
)
ふ
有様
(
ありさま
)
を、
194
夏彦
(
なつひこ
)
外
(
ほか
)
四
(
よ
)
人
(
にん
)
は
窓
(
まど
)
を
開
(
ひら
)
いて
愉快気
(
ゆくわいげ
)
に
眺
(
なが
)
めて
居
(
ゐ
)
る。
195
加米彦
(
かめひこ
)
『
随分
(
ずゐぶん
)
よく
活動
(
くわつどう
)
をしたものだなア。
196
我々
(
われわれ
)
も
燕
(
つばめ
)
に
傚
(
なら
)
つて、
197
一層
(
いつそう
)
の
雄飛
(
ゆうひ
)
活躍
(
くわつやく
)
をやらねばなるまい。
198
……ヤア
向
(
むか
)
うの
方
(
はう
)
へ、
199
白
(
しろ
)
い
笠
(
かさ
)
が
揺
(
ゆ
)
らついて
来
(
き
)
たぞ』
200
と
話
(
はな
)
す
折
(
をり
)
しも、
201
勢
(
いきほひ
)
よく
此方
(
こなた
)
に
向
(
むか
)
つて、
202
青葉
(
あをば
)
の
中
(
なか
)
を
波
(
なみ
)
打
(
う
)
たせつつ
進
(
すす
)
み
来
(
きた
)
れる
饅頭笠
(
まんじうがさ
)
、
203
三本
(
さんぼん
)
の
金剛杖
(
こんがうづゑ
)
、
204
黒
(
くろ
)
い
脚
(
あし
)
が
二本
(
にほん
)
、
205
白
(
しろ
)
い
脚
(
あし
)
が
四本
(
しほん
)
。
206
加米彦
(
かめひこ
)
『モシモシ
夏彦
(
なつひこ
)
の
大将
(
たいしやう
)
、
207
青彦
(
あをひこ
)
がどうやら
凱旋
(
がいせん
)
と
見
(
み
)
えますワイ。
208
一
(
ひと
)
つ
万歳
(
ばんざい
)
を
三唱
(
さんしやう
)
しませうか。
209
祝砲
(
しゆくはう
)
でも
上
(
あ
)
げませうか』
210
と
言
(
い
)
ひも
終
(
をは
)
らず「プツプツプウ」と
放射
(
はうしや
)
する。
211
夏彦
(
なつひこ
)
『アーア
煙硝
(
えんせう
)
臭
(
くさ
)
い、
212
屋内
(
をくない
)
で
花火
(
はなび
)
を
揚
(
あ
)
げるのは
険呑
(
けんのん
)
だ、
213
外
(
そと
)
へ
行
(
い
)
つてやつて
下
(
くだ
)
さい』
214
加米彦
(
かめひこ
)
『モウ
裏
(
うら
)
の
言霊
(
ことたま
)
は
材料
(
ざいれう
)
欠乏
(
けつぼう
)
、
215
これから
表
(
おもて
)
の
言霊
(
ことたま
)
だ……ウローウロー』
216
と
唯
(
ただ
)
一人
(
ひとり
)
呶鳴
(
どな
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
217
近
(
ちか
)
づいた
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
男女
(
だんぢよ
)
、
218
三人(音彦、悦子姫、五十子姫)
『ヤア
加米彦
(
かめひこ
)
さま、
219
エライ
元気
(
げんき
)
だなア』
220
加米彦
(
かめひこ
)
『サア エライ
元気
(
げんき
)
だ。
221
紫姫
(
むらさきひめ
)
に、
222
青彦
(
あをひこ
)
に、
223
モ
一人
(
ひとり
)
は……
大方
(
おほかた
)
お
節
(
せつ
)
だらう。
224
よう
帰
(
かへ
)
つて
下
(
くだ
)
さつた。
225
サアサア
奮戦
(
ふんせん
)
の
情況
(
じやうきやう
)
、
226
委細
(
つぶさ
)
に
夏彦
(
なつひこ
)
の
御
(
おん
)
大将
(
たいしやう
)
に
言上
(
ごんじやう
)
遊
(
あそ
)
ばせ』
227
男(音彦)
『アハヽヽヽ』
228
と
一人
(
ひとり
)
の
男
(
をとこ
)
は
笠
(
かさ
)
を
脱
(
ぬ
)
ぐ。
229
加米彦
(
かめひこ
)
『ヤアお
前
(
まへ
)
は
音彦
(
おとひこ
)
様
(
さま
)
か。
230
……アヽこれはしたり、
231
悦子姫
(
よしこひめ
)
様
(
さま
)
……ア
何
(
なん
)
だ、
232
五十子
(
いそこ
)
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
……ヤア
音彦
(
おとひこ
)
様
(
さま
)
、
233
お
芽出度
(
めでた
)
う。
234
悦子
(
よしこ
)
女王
(
ぢよわう
)
が
居
(
ゐ
)
らせられなかつたら、
235
大変
(
たいへん
)
御
(
ご
)
夫婦
(
ふうふ
)
ご
愉快
(
ゆくわい
)
で
有
(
あ
)
りましただらうに……ヤアもう
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
思
(
おも
)
う
様
(
やう
)
に
行
(
ゆ
)
かぬものですナア
[
※
音彦と五十子姫は夫婦である。
]
』
236
悦子姫
(
よしこひめ
)
『オホヽヽヽ』
237
加米彦
(
かめひこ
)
『
中
(
なか
)
を
隔
(
へだ
)
つる
悦子川
(
よしこがは
)
かなア、
238
可哀相
(
かはいさう
)
に、
239
焦
(
こが
)
れ
焦
(
こが
)
れたコガの
助
(
すけ
)
、
240
お
顔
(
かほ
)
見
(
み
)
乍
(
なが
)
ら
儘
(
まま
)
ならぬ……と
云
(
い
)
ふ、
241
喜劇
(
きげき
)
、
242
悲劇
(
ひげき
)
の
活動
(
くわつどう
)
写真
(
しやしん
)
……ヤア
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
お
這入
(
はい
)
り
下
(
くだ
)
さいませ』
243
音彦
(
おとひこ
)
『
然
(
しか
)
らば
許
(
ゆる
)
しめされよ』
244
加米彦
(
かめひこ
)
『
姫御前
(
ひめごぜん
)
と
道中
(
だうちう
)
を
遊
(
あそ
)
ばしたお
蔭
(
かげ
)
で、
245
大変
(
たいへん
)
言霊
(
ことたま
)
が
向上
(
かうじやう
)
しました。
246
……サア
夏彦
(
なつひこ
)
さま、
247
今日
(
けふ
)
限
(
かぎ
)
り
吾々
(
われわれ
)
と
同僚
(
どうれう
)
だ、
248
何時
(
いつ
)
までも
女王
(
ぢよわう
)
の
代
(
かは
)
りは
出来
(
でき
)
ませぬぞ。
249
……サア
悦子姫
(
よしこひめ
)
女王
(
ぢよわう
)
、
250
ズツと
奥
(
おく
)
へお
通
(
とほ
)
り
下
(
くだ
)
さいませ』
251
悦子姫
(
よしこひめ
)
『
加米彦
(
かめひこ
)
さま、
252
夏彦
(
なつひこ
)
さま、
253
よく
神妙
(
しんめう
)
にお
留守
(
るす
)
をして
下
(
くだ
)
さいました。
254
あなた
方
(
がた
)
の
健実
(
まめ
)
な
事
(
こと
)
、
255
よく
気
(
き
)
を
附
(
つ
)
けて
下
(
くだ
)
さると
見
(
み
)
えて、
256
風流
(
ふうりう
)
な
夏草
(
なつくさ
)
が
家
(
いへ
)
の
周囲
(
まはり
)
に
一杯
(
いつぱい
)
生
(
は
)
えて
居
(
を
)
ります。
257
小蛇
(
こへび
)
でも
出
(
で
)
そうに
御座
(
ござ
)
いますな。
258
オホヽヽヽ』
259
加米彦
(
かめひこ
)
、
260
頭
(
あたま
)
を
掻
(
か
)
き
乍
(
なが
)
ら、
261
加米彦
『イヤもう……エー
外
(
そと
)
は
惟神
(
かむながら
)
に
任
(
まか
)
し、
262
内
(
うち
)
は
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に、
263
内容
(
ないよう
)
の
充実
(
じゆうじつ
)
を
主
(
しゆ
)
と
致
(
いた
)
しました。
264
これが
所謂
(
いはゆる
)
内主
(
ないしゆ
)
外従
(
ぐわいじゆう
)
と
云
(
い
)
ふものです』
265
悦子姫
(
よしこひめ
)
『ホヽヽヽ、
266
成程
(
なるほど
)
外
(
そと
)
には
茫々
(
ばうばう
)
と
美
(
うつく
)
しい
草
(
くさ
)
が
御
(
お
)
天道
(
てんだう
)
様
(
さま
)
のお
蔭
(
かげ
)
で
繁茂
(
はんも
)
して
居
(
ゐ
)
ます。
267
室内
(
しつない
)
はザツクバラン、
268
沢山
(
たくさん
)
に
紙片
(
かみぎれ
)
が
散乱
(
さんらん
)
して、
269
まるで
花見
(
はなみ
)
の
庭
(
には
)
の
様
(
やう
)
です』
270
加米彦
(
かめひこ
)
『イヤ
此間
(
こなひだ
)
から、
271
夏彦
(
なつひこ
)
の
仮
(
かり
)
の
大将
(
たいしやう
)
、
272
寝冷
(
ねび
)
えを
致
(
いた
)
し、
273
風邪
(
かぜ
)
を
引
(
ひ
)
いたものですから、
274
鼻紙
(
はながみ
)
をそこら
中
(
ぢう
)
に
散
(
ち
)
らして
置
(
お
)
いたのです。
275
……
一寸
(
ちよつと
)
待
(
ま
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
276
箒
(
はうき
)
で
今
(
いま
)
掃
(
は
)
いて
除
(
の
)
けます、
277
ウツカリ
踏
(
ふ
)
んで
貰
(
もら
)
へば、
278
足
(
あし
)
の
裏
(
うら
)
にニチヤツとひつつきます。
279
……オイ
夏彦
(
なつひこ
)
鼻紙
(
はながみ
)
の
大将
(
たいしやう
)
、
280
何
(
なに
)
をグヅグヅして
居
(
を
)
るのだ。
281
此
(
この
)
加米彦
(
かめひこ
)
は
何事
(
なにごと
)
も
盲従
(
まうじゆう
)
して
来
(
き
)
たのだ。
282
どうだ、
283
此
(
この
)
鼻紙
(
はながみ
)
を
箒
(
はうき
)
で
掃
(
は
)
き
散
(
ち
)
らしても、
284
お
叱
(
しか
)
りは
御座
(
ござ
)
いませぬかなア』
285
夏彦
(
なつひこ
)
『これはこれは
悦子姫
(
よしこひめ
)
様
(
さま
)
、
286
今
(
いま
)
煤掃
(
すすはき
)
の
最中
(
さいちう
)
へお
帰
(
かへ
)
り
下
(
くだ
)
さいまして、
287
誠
(
まこと
)
に
申訳
(
まをしわけ
)
が
御座
(
ござ
)
いませぬ。
288
どうぞ
暫
(
しばら
)
く、
289
裏
(
うら
)
の
森林
(
しんりん
)
に
美
(
うつく
)
しい
花
(
はな
)
も
咲
(
さ
)
いて
居
(
ゐ
)
ます、
290
恰度
(
ちやうど
)
菖蒲
(
あやめ
)
が
真
(
ま
)
つ
盛
(
さか
)
り、
291
お
三
(
さん
)
人
(
にん
)
共
(
とも
)
暫
(
しばら
)
く
御覧
(
ごらん
)
なし
下
(
くだ
)
さいませ。
292
其
(
その
)
間
(
あひだ
)
に
夏季
(
かき
)
大
(
だい
)
清潔法
(
せいけつはふ
)
を
執行
(
しつかう
)
致
(
いた
)
します。
293
……オイ
加米彦
(
かめひこ
)
、
294
箒
(
はうき
)
だ、
295
水
(
みづ
)
を
汲
(
く
)
め、
296
采払
(
さいはらひ
)
だ……』
297
加米彦
(
かめひこ
)
『
貴様
(
きさま
)
はジツとして
手
(
て
)
を
出
(
だ
)
さずに、
298
頤
(
あご
)
ばつかりで……そう
一度
(
いちど
)
に……
千手
(
せんじゆ
)
観音
(
くわんのん
)
様
(
さま
)
ぢやあるまいに、
299
水
(
みづ
)
を
汲
(
く
)
む、
300
采払
(
さいはらひ
)
を
使
(
つか
)
ふ、
301
箒
(
はうき
)
を
使
(
つか
)
うと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
るものか。
302
貴様
(
きさま
)
も
一
(
ひと
)
つ
活動
(
くわつどう
)
せぬか。
303
門外
(
かど
)
の
燕
(
つばめ
)
の
活動
(
くわつどう
)
を、
304
チツと
傚
(
なら
)
へ』
305
夏彦
(
なつひこ
)
『ハイハイ
畏
(
かしこ
)
まりました』
306
と
襷
(
たすき
)
をかけ、
307
夏彦
『わしはお
家
(
いへ
)
を
掃除
(
さうぢ
)
する。
308
お
前
(
まへ
)
は
庭
(
には
)
を
掃除
(
さうぢ
)
して
呉
(
く
)
れ…』
309
俄
(
にはか
)
にバタバタ、
310
ガタガタ……、
311
夏彦
(
なつひこ
)
『オイ
常彦
(
つねひこ
)
、
312
板
(
いた
)
、
313
滝
(
たき
)
、
314
手伝
(
てつだ
)
ひして
呉
(
く
)
れぬか。
315
……ヤアどつか
往
(
ゆ
)
きやがつたなア』
316
と
窓
(
まど
)
を
覗
(
のぞ
)
き、
317
夏彦
『ヤア
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
草
(
くさ
)
をひいて
居
(
を
)
るワイ』
318
半時
(
はんとき
)
ばかりかかつて
大掃除
(
おほさうぢ
)
を、
319
吐血
(
とけつ
)
の
起
(
お
)
こつた
様
(
やう
)
な
騒
(
さわ
)
ぎでやつてのけた。
320
時
(
とき
)
を
見計
(
みはか
)
らひ
悦子姫
(
よしこひめ
)
、
321
音彦
(
おとひこ
)
、
322
五十子
(
いそこ
)
姫
(
ひめ
)
、
323
ニコニコし
乍
(
なが
)
ら、
324
音彦
(
おとひこ
)
『ヤア
俄
(
にはか
)
に
参
(
まゐ
)
りまして、
325
エライ
御
(
ご
)
雑作
(
ざふさ
)
をかけました』
326
加米彦
(
かめひこ
)
『ヤア
有難
(
ありがた
)
う。
327
斯
(
こ
)
う
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
が
無
(
な
)
ければ、
328
モウ
一月
(
ひとつき
)
も
経
(
た
)
たぬ
内
(
うち
)
に、
329
此
(
この
)
家
(
いへ
)
は
草
(
くさ
)
の
中
(
なか
)
に
沈没
(
ちんぼつ
)
する
所
(
ところ
)
でした。
330
アハヽヽヽ』
331
音彦
(
おとひこ
)
『
身魂
(
みたま
)
相応
(
さうおう
)
の
御
(
ご
)
住宅
(
ぢうたく
)
で……』
332
悦子姫
(
よしこひめ
)
『オホヽヽヽ』
333
茲
(
ここ
)
に
八
(
やつ
)
つの
笠
(
かさ
)
の
台
(
だい
)
は、
334
畳
(
たたみ
)
の
上
(
うへ
)
に
二列
(
にれつ
)
に
並列
(
へいれつ
)
した。
335
悦子姫
(
よしこひめ
)
を
始
(
はじ
)
め
一同
(
いちどう
)
は、
336
互
(
たがひ
)
に
久濶
(
きうくわつ
)
を
叙
(
じよ
)
し、
337
打解話
(
うちとけばなし
)
に
時
(
とき
)
を
移
(
うつ
)
す。
338
折
(
をり
)
しも
門口
(
かどぐち
)
に
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
る
馬公
(
うまこう
)
、
339
鹿公
(
しかこう
)
、
340
馬公、鹿公
『モシモシ
夏彦
(
なつひこ
)
さま、
341
馬
(
うま
)
、
342
鹿
(
しか
)
の
両人
(
りやうにん
)
です。
343
御
(
ご
)
注進
(
ちうしん
)
に
参
(
まゐ
)
りました』
344
と
門口
(
かどぐち
)
より
呶鳴
(
どな
)
り
込
(
こ
)
んだ。
345
夏彦
(
なつひこ
)
『ヤア
馬公
(
うまこう
)
に
鹿公
(
しかこう
)
、
346
よう
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
た。
347
併
(
しか
)
し
今日
(
けふ
)
は
奥
(
おく
)
に
珍
(
めづ
)
らしいお
客
(
きやく
)
さまだ。
348
御
(
ご
)
主人公
(
しゆじんこう
)
の
紫姫
(
むらさきひめ
)
さま
始
(
はじ
)
め
青彦
(
あをひこ
)
はどうなつた』
349
馬公
(
うまこう
)
『
只今
(
ただいま
)
結構
(
けつこう
)
な
生神
(
いきがみ
)
さまの
玉子
(
たまご
)
を
奉迎
(
ほうげい
)
して、
350
これへお
帰
(
かへ
)
りになります。
351
どうぞ
座敷
(
ざしき
)
を
片付
(
かたづ
)
けて、
352
充分
(
じゆうぶん
)
清潔
(
せいけつ
)
にして
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
て
呉
(
く
)
れいとの、
353
青彦
(
あをひこ
)
さまの
御
(
ご
)
命令
(
めいれい
)
、
354
宙
(
ちう
)
を
飛
(
と
)
んで
御
(
ご
)
報告
(
はうこく
)
に
参
(
まゐ
)
りました。
355
やがて
御
(
ご
)
入来
(
じゆらい
)
になりませう』
356
夏彦
(
なつひこ
)
『アーそれはそれは
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
でした。
357
マア
一服
(
いつぷく
)
して
下
(
くだ
)
さい』
358
とイソイソとして
奥
(
おく
)
に
入
(
い
)
り、
359
夏彦
『
悦子姫
(
よしこひめ
)
様
(
さま
)
、
360
只今
(
ただいま
)
紫姫
(
むらさきひめ
)
様
(
さま
)
、
361
青彦
(
あをひこ
)
がこれへ
帰
(
かへ
)
つて
来
(
く
)
るそうで
御座
(
ござ
)
います』
362
悦子姫
(
よしこひめ
)
『アーそうだらう。
363
床
(
とこ
)
の
間
(
ま
)
もよく
掃除
(
さうぢ
)
して
御
(
お
)
待受
(
まちう
)
けを
致
(
いた
)
しませう。
364
キツと
玉照姫
(
たまてるひめ
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
光来
(
いで
)
でせう』
365
夏彦
(
なつひこ
)
『そんな
事
(
こと
)
が
御座
(
ござ
)
いませうかなア。
366
どうして
又
(
また
)
それが
分
(
わか
)
りますか』
367
悦子姫
(
よしこひめ
)
『
何事
(
なにごと
)
も
英子姫
(
ひでこひめ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
経綸
(
けいりん
)
、
368
キツと
今
(
いま
)
にお
越
(
こ
)
しになります』
369
斯
(
か
)
く
言
(
い
)
ふ
所
(
ところ
)
へ、
370
丹州
(
たんしう
)
を
先頭
(
せんとう
)
に、
371
お
玉
(
たま
)
は
玉照姫
(
たまてるひめ
)
を
恭
(
うやうや
)
しく
捧持
(
ほうぢ
)
し、
372
紫姫
(
むらさきひめ
)
、
373
青彦
(
あをひこ
)
、
374
お
節
(
せつ
)
の
一行
(
いつかう
)
ゾロゾロと
此
(
この
)
一
(
ひと
)
つ
家
(
や
)
に
勢
(
いきほひ
)
よく
入
(
い
)
り
来
(
きた
)
る。
375
加米彦
(
かめひこ
)
、
376
慌
(
あわて
)
て
飛
(
と
)
んで
出
(
い
)
で、
377
加米彦
(
かめひこ
)
『ヤア
杏
(
あんず
)
るより
桃
(
もも
)
が
安
(
やす
)
い。
378
今日
(
けふ
)
はモモだらけだ。
379
モウモウ
忙
(
いそが
)
しうて
忙
(
いそが
)
しうて、
380
嬉
(
うれ
)
しいやら
面白
(
おもしろ
)
いやら、
381
勇
(
いさ
)
ましいやら、
382
根
(
ね
)
つから、
383
葉
(
は
)
つから
見当
(
けんたう
)
が
取
(
と
)
れなくなつた。
384
改心
(
かいしん
)
致
(
いた
)
すとマサカの
時
(
とき
)
に、
385
嬉
(
うれ
)
しうてキリキリ
舞
(
まひ
)
を
致
(
いた
)
す
身魂
(
みたま
)
と、
386
辛
(
つら
)
うてキリキリ
舞
(
まひ
)
致
(
いた
)
す
身魂
(
みたま
)
とが
出来
(
でき
)
るぞよ……とは
此
(
この
)
事
(
こと
)
だ。
387
サアサア
皆
(
みな
)
さま、
388
ズツと
奥
(
おく
)
へ、
389
キリキリ
舞
(
ま
)
ひもつてお
這入
(
はい
)
り
下
(
くだ
)
さいませ……ドツコイシヨのヤツトコシヨ…』
390
と
面白
(
おもしろ
)
い
手
(
て
)
つきをして
踊
(
をど
)
つて
居
(
を
)
る。
391
青彦
(
あをひこ
)
、
392
青彦
(
あをひこ
)
『コレコレ
加米彦
(
かめひこ
)
さま、
393
早
(
はや
)
く
玉照姫
(
たまてるひめ
)
様
(
さま
)
を、
394
悦子姫
(
よしこひめ
)
様
(
さま
)
に
御
(
ご
)
紹介
(
せうかい
)
して
下
(
くだ
)
さい』
395
悦子姫
(
よしこひめ
)
は
奥
(
おく
)
より
走
(
はし
)
り
来
(
きた
)
り、
396
恭
(
うやうや
)
しく
拍手
(
はくしゆ
)
し、
397
嬉
(
うれ
)
し
涙
(
なみだ
)
をタラタラと
流
(
なが
)
し
乍
(
なが
)
ら、
398
悦子姫
(
よしこひめ
)
『
玉照姫
(
たまてるひめ
)
様
(
さま
)
、
399
よくもお
越
(
こ
)
し
下
(
くだ
)
さいました。
400
これで
愈
(
いよいよ
)
神政
(
しんせい
)
成就
(
じやうじゆ
)
疑
(
うたがひ
)
なし。
401
アヽ
有難
(
ありがた
)
し、
402
辱
(
かたじけ
)
なし』
403
と
言
(
い
)
つた
限
(
き
)
り、
404
嬉
(
うれ
)
し
涙
(
なみだ
)
に
暮
(
く
)
れて、
405
顔
(
かほ
)
さへあげず
泣
(
な
)
きいる。
406
加米彦
(
かめひこ
)
『これはこれは
悦子姫
(
よしこひめ
)
の
女王
(
ぢよわう
)
様
(
さま
)
、
407
何
(
なに
)
を
此
(
この
)
芽出度
(
めでた
)
い
時
(
とき
)
に、
408
メソメソお
泣
(
な
)
き
遊
(
あそ
)
ばすのだ。
409
ヤツパリ
女
(
をんな
)
は
女
(
をんな
)
だなア。
410
涙脆
(
なみだもろ
)
いと
見
(
み
)
えるワイ。
411
アヽ
矢張
(
やつぱ
)
り
俺
(
おれ
)
も
何
(
なん
)
だか
泣
(
な
)
きたくなつて
来
(
き
)
た、
412
アンアンアン』
413
青彦
(
あをひこ
)
は
歌
(
うた
)
ふ、
414
青彦
『
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのをの
)
大神
(
おほかみ
)
の
415
御言
(
みこと
)
畏
(
かしこ
)
み
曇
(
くも
)
りたる
416
世
(
よ
)
を
照
(
てら
)
さむと
英子姫
(
ひでこひめ
)
417
神
(
かみ
)
の
仕組
(
しぐみ
)
を
奥山
(
おくやま
)
の
418
心
(
こころ
)
に
深
(
ふか
)
く
包
(
つつ
)
みつつ
419
隠
(
かく
)
して
容易
(
ようい
)
に
弥仙山
(
みせんざん
)
420
万代
(
よろづよ
)
祝
(
いは
)
ふ
亀彦
(
かめひこ
)
を
421
伴
(
ともな
)
ひ
聖地
(
せいち
)
を
後
(
あと
)
にして
422
国
(
くに
)
の
栄
(
さか
)
えも
豊彦
(
とよひこ
)
が
423
娘
(
むすめ
)
のお
玉
(
たま
)
に
木花
(
このはな
)
の
424
姫
(
ひめ
)
の
命
(
みこと
)
の
分霊
(
わけみたま
)
425
咲耶
(
さくや
)
の
姫
(
ひめ
)
を
取
(
と
)
り
懸
(
か
)
けて
426
後
(
あと
)
白雲
(
しらくも
)
と
帰
(
かへ
)
り
行
(
ゆ
)
く
427
心
(
こころ
)
も
春
(
はる
)
の
山家道
(
やまがみち
)
428
折
(
をり
)
こそよけれ
悦子姫
(
よしこひめ
)
429
音彦
(
おとひこ
)
、
加米彦
(
かめひこ
)
、
夏彦
(
なつひこ
)
が
430
川辺
(
かはべ
)
の
木蔭
(
こかげ
)
に
立寄
(
たちよ
)
りて
431
英子
(
ひでこ
)
の
姫
(
ひめ
)
の
神界
(
しんかい
)
の
432
それとはなしに
秘事
(
ひめごと
)
を
433
以心
(
いしん
)
伝心
(
でんしん
)
語
(
かた
)
りつつ
434
父
(
ちち
)
に
近江
(
あふみ
)
の
竹生島
(
ちくぶしま
)
435
足
(
あし
)
を
速
(
はや
)
めて
出
(
い
)
で
給
(
たま
)
ふ。
436
悦子
(
よしこ
)
の
姫
(
ひめ
)
は
急坂
(
きふはん
)
を
437
三人
(
みたり
)
の
男
(
をとこ
)
と
諸共
(
もろとも
)
に
438
辿
(
たど
)
りて、やうやう
弥仙山
(
みせんざん
)
439
麓
(
ふもと
)
に
建
(
た
)
てる
豊彦
(
とよひこ
)
が
440
賤
(
しづ
)
の
伏家
(
ふせや
)
に
立寄
(
たちよ
)
りて
441
俄
(
にはか
)
産婆
(
さんば
)
の
神業
(
しんげふ
)
に
442
思
(
おも
)
ひも
寄
(
よ
)
らぬ
貴
(
うづ
)
の
声
(
こゑ
)
443
お
玉
(
たま
)
の
腹
(
はら
)
を
藉
(
か
)
つて
出
(
で
)
た
444
玉照姫
(
たまてるひめ
)
を
取
(
と
)
りあげて
445
イソイソ
帰
(
かへ
)
る
世継王
(
よつわう
)
の
446
山
(
やま
)
の
麓
(
ふもと
)
に
霊場
(
れいぢやう
)
を
447
卜
(
ぼく
)
して
庵
(
いほり
)
を
結
(
むす
)
びつつ
448
二人
(
ふたり
)
の
男
(
をとこ
)
に
留守
(
るす
)
をさせ
449
紫姫
(
むらさきひめ
)
に
何事
(
なにごと
)
か
450
囁
(
ささや
)
き
合
(
あ
)
ひて
右左
(
みぎひだ
)
り
451
悦子
(
よしこ
)
の
姫
(
ひめ
)
は
近江路
(
あふみぢ
)
へ
452
紫姫
(
むらさきひめ
)
や
青彦
(
あをひこ
)
は
453
馬
(
うま
)
、
鹿
(
しか
)
二人
(
ふたり
)
を
伴
(
ともな
)
ひて
454
西北
(
せいほく
)
指
(
さ
)
して
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く
455
船岡山
(
ふなをかやま
)
の
山麓
(
さんろく
)
に
456
かかる
折
(
をり
)
しも
夕闇
(
ゆふやみ
)
を
457
透
(
すか
)
して
聞
(
きこ
)
ゆる
叫
(
さけ
)
び
声
(
ごゑ
)
458
青彦
(
あをひこ
)
、
馬
(
うま
)
、
鹿
(
しか
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
459
声
(
こゑ
)
を
尋
(
たづ
)
ねて
暗
(
やみ
)
の
路
(
みち
)
460
進
(
すす
)
む
折
(
をり
)
しもウラナイの
461
道
(
みち
)
の
教
(
をしへ
)
の
滝
(
たき
)
、
板
(
いた
)
が
462
一人
(
ひとり
)
の
女
(
をんな
)
を
引捉
(
ひつとら
)
へ
463
松
(
まつ
)
の
古木
(
こぼく
)
に
縛
(
しば
)
りつけ
464
権謀
(
けんぼう
)
術数
(
じゆつすう
)
の
最中
(
さいちう
)
を
465
闇
(
やみ
)
を
幸
(
さいは
)
ひ
黒姫
(
くろひめ
)
の
466
声色
(
こわいろ
)
使
(
つか
)
ふ
鹿公
(
しかこう
)
が
467
早速
(
さつそく
)
の
頓智
(
とんち
)
、
滝
(
たき
)
、
板
(
いた
)
は
468
おののき
怖
(
おそ
)
れ
幽霊
(
いうれい
)
と
469
思
(
おも
)
ひ
誤
(
あやま
)
り
谷底
(
たにそこ
)
に
470
スツテンコロリと
転落
(
てんらく
)
し
471
腰骨
(
こしぼね
)
打
(
う
)
つてウンウンと
472
闇
(
やみ
)
に
苦
(
くるし
)
む
憐
(
あは
)
れさよ
473
紫姫
(
むらさきひめ
)
は
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
474
男
(
をとこ
)
にお
節
(
せつ
)
を
守
(
まも
)
らせつ
475
進
(
すす
)
んで
来
(
きた
)
る
元伊勢
(
もといせ
)
の
476
稜威
(
いづ
)
の
御前
(
みまへ
)
に
参拝
(
さんぱい
)
し
477
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し
478
神示
(
しんじ
)
を
仰
(
あふ
)
ぐ
時
(
とき
)
もあれ
479
谷
(
たに
)
に
聞
(
きこ
)
ゆる
言霊
(
ことたま
)
の
480
怪
(
あや
)
しき
響
(
ひびき
)
に
青彦
(
あをひこ
)
は
481
紫姫
(
むらさきひめ
)
を
伴
(
ともな
)
ひて
482
剣先山
(
けんさきやま
)
の
深谷
(
ふかたに
)
を
483
尋
(
たづ
)
ねて
行
(
ゆ
)
けば、こは
如何
(
いか
)
に
484
顔色
(
かほいろ
)
黒
(
くろ
)
き
黒姫
(
くろひめ
)
が
485
二人
(
ふたり
)
の
男
(
をとこ
)
と
諸共
(
もろとも
)
に
486
一心
(
いつしん
)
不乱
(
ふらん
)
に
水垢離
(
みづごうり
)
487
其
(
その
)
熱烈
(
ねつれつ
)
な
信仰
(
しんかう
)
に
488
何
(
いづ
)
れも
肝
(
きも
)
を
冷
(
ひや
)
しつつ
489
紫姫
(
むらさきひめ
)
や
青彦
(
あをひこ
)
は
490
何
(
なに
)
か
心
(
こころ
)
に
諾
(
うなづ
)
きつ
491
俄
(
にはか
)
に
変
(
かは
)
るウラナイの
492
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
493
馬公
(
うまこう
)
、
鹿公
(
しかこう
)
諸共
(
もろとも
)
に
494
魔窟
(
まくつ
)
ケ
原
(
はら
)
に
築
(
きづ
)
きたる
495
黒姫館
(
くろひめやかた
)
に
出
(
いで
)
て
行
(
ゆ
)
く
496
高山彦
(
たかやまひこ
)
や
黒姫
(
くろひめ
)
は
497
相好
(
さうがう
)
崩
(
くづ
)
してニコニコと
498
忽
(
たちま
)
ち
変
(
かは
)
る
地蔵顔
(
ぢざうがほ
)
499
勝
(
か
)
ち
誇
(
ほこ
)
りたる
会心
(
くわいしん
)
の
500
笑
(
ゑみ
)
にあたりの
雰囲気
(
ふんゐき
)
は
501
乾燥
(
かんさう
)
無味
(
むみ
)
の
岩窟
(
がんくつ
)
も
502
忽
(
たちま
)
ち
春
(
はる
)
の
花
(
はな
)
咲
(
さ
)
いて
503
飲
(
の
)
めよ
騒
(
さわ
)
げの
賑
(
にぎ
)
はしさ
504
大洪水
(
だいこうずゐ
)
の
氾濫
(
はんらん
)
し
505
堤防
(
ていぼう
)
崩
(
くづ
)
した
如
(
ごと
)
くなる
506
乱痴気
(
らんちき
)
騒
(
さわ
)
ぎの
最中
(
さいちう
)
に
507
阿修羅
(
あしゆら
)
の
如
(
ごと
)
き
勢
(
いきほひ
)
で
508
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
る
常彦
(
つねひこ
)
が
509
滝公
(
たきこう
)
板公
(
いたこう
)
伴
(
ともな
)
ひて
510
青彦
(
あおひこ
)
さまが
胸
(
むね
)
の
内
(
うち
)
511
知
(
し
)
らぬが
仏
(
ほとけ
)
の
黒姫
(
くろひめ
)
や
512
折柄
(
をりから
)
来
(
きた
)
れる
高姫
(
たかひめ
)
に
513
喰
(
く
)
つてかかつた
可笑
(
おか
)
しさよ
514
可哀相
(
かあいさう
)
とは
知
(
し
)
り
乍
(
なが
)
ら
515
時
(
とき
)
を
繕
(
つくろ
)
ふ
青彦
(
あをひこ
)
が
516
早速
(
さそく
)
の
頓智
(
とんち
)
、
棍棒
(
こんぼう
)
を
517
打
(
う
)
ち
振
(
ふ
)
り
打
(
う
)
ち
振
(
ふ
)
り
常彦
(
つねひこ
)
が
518
体
(
からだ
)
を
目
(
め
)
がけて
滅多打
(
めつたうち
)
519
地蟹
(
づがに
)
の
様
(
やう
)
に
泡
(
あわ
)
吹
(
ふ
)
いて
520
涙
(
なみだ
)
を
流
(
なが
)
す
滝公
(
たきこう
)
や
521
痛々
(
いたいた
)
しげに
板公
(
いたこう
)
が
522
雲
(
くも
)
を
霞
(
かすみ
)
と
逃
(
にげ
)
て
行
(
ゆ
)
く
523
この
振舞
(
ふるまひ
)
に
高姫
(
たかひめ
)
や
524
道
(
みち
)
に
迷
(
まよ
)
うた
黒姫
(
くろひめ
)
が
525
始
(
はじ
)
めてヤツと
気
(
き
)
を
許
(
ゆる
)
し
526
紫姫
(
むらさきひめ
)
や
青彦
(
あをひこ
)
に
527
大事
(
だいじ
)
の
大事
(
だいじ
)
の
宝物
(
たからもの
)
528
玉照姫
(
たまてるひめ
)
の
人質
(
ひとじち
)
を
529
何
(
なん
)
の
気
(
き
)
もなく
吾々
(
われわれ
)
に
530
渡
(
わた
)
して
呉
(
く
)
れた
其
(
その
)
お
蔭
(
かげ
)
531
綾彦
(
あやひこ
)
、お
民
(
たみ
)
を
伴
(
ともな
)
ひて
532
心
(
こころ
)
イソイソ
山坂
(
やまさか
)
を
533
右
(
みぎ
)
に
左
(
ひだり
)
に
飛
(
と
)
び
越
(
こ
)
えつ
534
於与岐
(
およぎ
)
の
里
(
さと
)
の
豊彦
(
とよひこ
)
が
535
館
(
やかた
)
に
到
(
いた
)
りいろいろと
536
一伍
(
いちぶ
)
一什
(
しじふ
)
を
物語
(
ものがた
)
る
537
紫姫
(
むらさきひめ
)
の
言霊
(
ことたま
)
に
538
豊彦
(
とよひこ
)
夫婦
(
ふうふ
)
は
雀踊
(
こをど
)
りし
539
お
玉
(
たま
)
を
添
(
そ
)
へて
玉照
(
たまてる
)
の
540
姫
(
ひめ
)
の
命
(
みこと
)
の
貴
(
うづ
)
の
御子
(
みこ
)
541
一
(
いち
)
も
二
(
に
)
もなく
奉
(
たてまつ
)
る
542
大願
(
たいぐわん
)
成就
(
じやうじゆ
)
、
大勝利
(
だいしようり
)
543
長居
(
ながゐ
)
は
恐
(
おそ
)
れ
又
(
また
)
御意
(
ぎよい
)
の
544
変
(
かは
)
らぬ
内
(
うち
)
に
帰
(
かへ
)
らむと
545
丹州
(
たんしう
)
、お
玉
(
たま
)
に
送
(
おく
)
られて
546
イヨイヨ
聖地
(
せいち
)
に
来
(
き
)
て
見
(
み
)
れば
547
思
(
おも
)
ひかけぬは
悦子姫
(
よしこひめ
)
548
科戸
(
しなど
)
の
風
(
かぜ
)
の
音彦
(
おとひこ
)
や
549
心
(
こころ
)
いそいそ
五十子
(
いそこ
)
姫
(
ひめ
)
550
並
(
なら
)
ぶ
五
(
ご
)
月
(
ぐわつ
)
の
雛祭
(
ひなまつり
)
551
悠々然
(
いういうぜん
)
と
構
(
かま
)
へ
居
(
ゐ
)
る
552
此方
(
こなた
)
の
隅
(
すみ
)
を
眺
(
なが
)
むれば
553
常
(
つね
)
に
変
(
かは
)
つた
常彦
(
つねひこ
)
が
554
むつかしい
顔
(
かほ
)
の
紐
(
ひも
)
を
解
(
と
)
き
555
滝公
(
たきこう
)
、
板公
(
いたこう
)
従
(
したが
)
へて
556
坐
(
すわ
)
つて
御座
(
ござ
)
る
勇
(
いさ
)
ましさ
557
剽軽者
(
へうきんもの
)
の
加米彦
(
かめひこ
)
が
558
主人
(
あるじ
)
の
留守
(
るす
)
を
幸
(
さいは
)
ひに
559
なまくら、したる
其
(
その
)
酬
(
むく
)
ゐ
560
捻鉢巻
(
ねぢはちまき
)
に
尻
(
しり
)
からげ
561
庭
(
には
)
を
掃
(
は
)
くやら
采払
(
さいはら
)
ひ
562
そこらバタバタ
叩
(
たた
)
くやら
563
戸口
(
とぐち
)
の
外
(
そと
)
を
眺
(
なが
)
むれば
564
蛙
(
かわづ
)
や
蛇
(
へび
)
の
巣窟
(
さうくつ
)
と
565
なつた
庭
(
には
)
をば
滝
(
たき
)
、
板
(
いた
)
の
566
二人
(
ふたり
)
は
忽
(
たちま
)
ち
頬
(
ほほ
)
かぶり
567
汗
(
あせ
)
をタラタラ
流
(
なが
)
しつつ
568
狼狽
(
うろた
)
へ
騒
(
さわ
)
ぐ
草
(
くさ
)
むしり
569
蓬ケ原
(
よもぎがはら
)
を
掻
(
か
)
き
分
(
わ
)
けて
570
黄金
(
こがね
)
花
(
はな
)
咲
(
さ
)
く
今日
(
けふ
)
の
空
(
そら
)
571
黄金
(
こがね
)
の
峰
(
みね
)
に
現
(
あら
)
はれし
572
木花姫
(
このはなひめ
)
の
分霊
(
わけみたま
)
573
咲耶
(
さくや
)
の
姫
(
ひめ
)
の
再来
(
さいらい
)
と
574
仰
(
あふ
)
ぐ
玉照姫
(
たまてるひめ
)
の
神
(
かみ
)
575
迎
(
むか
)
へ
奉
(
まつ
)
りて
三五
(
あななひ
)
の
576
教
(
をしへ
)
を
守
(
まも
)
る
元津
(
もとつ
)
神
(
かみ
)
577
国武彦
(
くにたけひこ
)
の
隠
(
かく
)
れます
578
世継王
(
よつわう
)
山
(
ざん
)
の
表口
(
おもてぐち
)
579
朝日
(
あさひ
)
輝
(
かがや
)
く
夕日
(
ゆうひ
)
照
(
て
)
る
580
これの
聖地
(
せいち
)
に
永久
(
とこしへ
)
に
581
鎮
(
しづ
)
まり
居
(
ゐ
)
まして
常闇
(
とこやみ
)
の
582
天
(
あま
)
の
岩戸
(
いはと
)
を
開
(
ひら
)
きます
583
ミロクの
御代
(
みよ
)
の
礎
(
いしずゑ
)
と
584
寿
(
ことほ
)
ぎまつる
今日
(
けふ
)
の
空
(
そら
)
585
壬戌
(
みづのえいぬ
)
の
閏
(
うる
)
五
(
ご
)
月
(
ぐわつ
)
586
五日
(
いつか
)
の
宵
(
よひ
)
の
此
(
この
)
仕組
(
しぐみ
)
587
イツカは
晴
(
は
)
れて
松
(
まつ
)
の
世
(
よ
)
の
588
栄
(
さかえ
)
を
見
(
み
)
るぞ
目出度
(
めでた
)
けれ
589
アヽ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
590
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はへましませよ』
591
と
青彦
(
あをひこ
)
は
声
(
こゑ
)
も
涼
(
すず
)
しく
謡
(
うた
)
ひ
終
(
をは
)
りぬ。
592
十八
(
じふはち
)
バムの
仮名
(
かな
)
に
因
(
ちな
)
みし
松
(
まつ
)
の
神代
(
かみよ
)
の
物語
(
ものがたり
)
、
593
松竹梅
(
まつたけうめ
)
と
祝
(
いは
)
ひ
納
(
をさ
)
むる。
594
(
大正一一・四・二八
旧四・二
松村真澄
録)
595
(昭和一〇・六・三 王仁校正)
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【第17章 玉照姫|第18巻|如意宝珠|霊界物語|/rm1817】
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