霊界物語.ネット
~出口王仁三郎 大図書館~
設定
|
ヘルプ
ホーム
霊界物語
如意宝珠(第13~24巻)
第18巻(巳の巻)
序
凡例
総説
第1篇 弥仙の神山
第1章 春野の旅
第2章 厳の花
第3章 神命
第2篇 再探再険
第4章 四尾山
第5章 赤鳥居
第6章 真か偽か
第3篇 反間苦肉
第7章 神か魔か
第8章 蛙の口
第9章 朝の一驚
第10章 赤面黒面
第4篇 舎身活躍
第11章 相身互
第12章 大当違
第13章 救の神
第5篇 五月五日祝
第14章 蛸の揚壺
第15章 遠来の客
第16章 返り討
第17章 玉照姫
霊の礎(四)
余白歌
×
設定
この文献を王仁DBで開く
印刷用画面を開く
[?]
プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。
[×閉じる]
話者名の追加表示
[?]
セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。
[×閉じる]
追加表示する
追加表示しない
【標準】
表示できる章
テキストのタイプ
[?]
ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。
[×閉じる]
通常のテキスト
【標準】
コピー用のテキスト
文字サイズ
S
【標準】
M
L
ルビの表示
通常表示
【標準】
括弧の中に表示
表示しない
アンカーの表示
[?]
本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。
[×閉じる]
左側だけに表示する
【標準】
表示しない
全てのアンカーを表示
宣伝歌
[?]
宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。
[×閉じる]
一段組
【標準】
二段組
脚注[※]用語解説
[?]
[※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。
[×閉じる]
脚注マークを表示する
【標準】
脚注マークを表示しない
脚注[*]編集用
[?]
[※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。
[×閉じる]
脚注マークを表示する
脚注マークを表示しない
【標準】
外字の外周色
[?]
一般のフォントに存在しない文字は専用の外字フォントを使用しています。目立つようにその文字の外周の色を変えます。
[×閉じる]
無色
【標準】
赤色
現在のページには外字は使われていません
表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。
【新着情報】
サイトをリニューアルしました。不具合がある場合は
従来バージョン
をお使い下さい|
サブスク
のお知らせ
霊界物語
>
如意宝珠(第13~24巻)
>
第18巻(巳の巻)
> 第4篇 舎身活躍 > 第13章 救の神
<<< 大当違
(B)
(N)
蛸の揚壺 >>>
第一三章
救
(
すくひ
)
の
神
(
かみ
)
〔六四一〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第18巻 如意宝珠 巳の巻
篇:
第4篇 舎身活躍
よみ(新仮名遣い):
しゃしんかつやく
章:
第13章 救の神
よみ(新仮名遣い):
すくいのかみ
通し章番号:
641
口述日:
1922(大正11)年04月28日(旧04月02日)
口述場所:
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年2月10日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
[×閉じる]
:
三人は弥仙山(金峰山)山頂の神社でお玉を待ち伏せする。その間にも、寅若はお玉をウラナイ教に翻そうと、木花姫命の神勅を装った落書を神社の前に掲げた。ウラナイ教に変心した印に、日陰葛をかぶって下山するように、と書いた。
参拝後、日陰葛をかぶらずに下ってくるお玉を見て、三人はお玉に飛び掛り、猿轡をはめてしまう。そこへ、山を登ってくる笠が見えた。
男は三人に、お玉の所在を尋ねる。三人はごまかすが、男は三人に霊縛をかけると、茂みの中に隠されていたお玉を助け出した。男は丹州であった。
霊縛を解かれた三人は、逃げていく。丹州はお玉の家に迎えられ、丁重にもてなされた。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2021-03-07 12:37:48
OBC :
rm1813
愛善世界社版:
217頁
八幡書店版:
第3輯 717頁
修補版:
校定版:
224頁
普及版:
100頁
初版:
ページ備考:
001
寅若
(
とらわか
)
、
002
富彦
(
とみひこ
)
、
003
菊若
(
きくわか
)
の
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
金峰山
(
きんぷせん
)
の
頂上
(
ちやうじやう
)
、
004
弥仙
(
みせん
)
神社
(
じんしや
)
の
前
(
まへ
)
に
一心
(
いつしん
)
不乱
(
ふらん
)
に
願望
(
ぐわんばう
)
成就
(
じやうじゆ
)
の
祈願
(
きぐわん
)
を
凝
(
こ
)
らし、
005
遂
(
つひ
)
に
夜
(
よ
)
を
明
(
あ
)
かした。
006
寅若
(
とらわか
)
『アヽ
大分
(
だいぶん
)
沢山
(
たくさん
)
に
神言
(
かみごと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し、
007
最早
(
もはや
)
声
(
こゑ
)
の
倉庫
(
さうこ
)
は
窮乏
(
きうばふ
)
を
告
(
つ
)
げたと
見
(
み
)
え、
008
そろそろかすつて
来
(
き
)
だした』
009
と
瘡
(
かさ
)
かきの
様
(
やう
)
な
声
(
こゑ
)
で
云
(
い
)
ふ。
010
二人
(
ふたり
)
も
同
(
おな
)
じくかすり
声
(
ごゑ
)
、
011
寅若
(
とらわか
)
『もう
仕方
(
しかた
)
がない、
012
ありだけの
言霊
(
ことたま
)
を
献納
(
けんなふ
)
したのだから、
013
声
(
こゑ
)
としては
殆
(
ほと
)
んど
無一物
(
むいちぶつ
)
だ、
014
声
(
こゑ
)
の
裸
(
はだか
)
になつた
様
(
やう
)
なものだ、
015
これだけ
生
(
うま
)
れ
赤子
(
あかご
)
になれば、
016
如何
(
どん
)
な
願
(
ねがひ
)
も
聞
(
き
)
いて
下
(
くだ
)
さるだらう』
017
と
枯
(
か
)
れ
草
(
くさ
)
の
上
(
うへ
)
を
竹箒
(
たけばうき
)
で
撫
(
な
)
でる
様
(
やう
)
な
貧弱
(
ひんじやく
)
な
言霊
(
ことたま
)
をやつと
発射
(
はつしや
)
してゐる。
018
寅若
(
とらわか
)
、
019
懐中
(
くわいちゆう
)
の
短刀
(
たんたう
)
をヒラリと
抜
(
ぬ
)
いて
傍
(
あたり
)
の
木
(
き
)
を
削
(
けづ
)
り、
020
それへ
向
(
む
)
けて
矢立
(
やたて
)
から、
021
竹片
(
たけぎれ
)
を
叩
(
たた
)
いた、
022
笹葉
(
ささら
)
の
様
(
やう
)
な、
023
長三角
(
ちやうさんかく
)
の
筆
(
ふで
)
を
取
(
と
)
り
出
(
だ
)
し、
024
何
(
なに
)
かクシヤクシヤ
書
(
か
)
き
初
(
はじ
)
めた。
025
書
(
か
)
き
終
(
をは
)
つて
唖
(
おし
)
の
様
(
やう
)
にウンウンと
木
(
き
)
の
文字
(
もんじ
)
を
見
(
み
)
よと
指
(
ゆび
)
さし
得意顔
(
とくいがほ
)
、
026
二人
(
ふたり
)
は
立
(
た
)
ち
寄
(
よ
)
つて
読
(
よ
)
み
下
(
お
)
ろすと、
027
『
木花姫
(
このはなひめ
)
の
命
(
みこと
)
の
筆先
(
ふでさき
)
、
028
今日
(
けふ
)
は
七十五
(
しちじふご
)
日
(
にち
)
の
忌明
(
いみあけ
)
で
必
(
かなら
)
ず
参拝
(
さんぱい
)
致
(
いた
)
す
筈
(
はず
)
のお
玉
(
たま
)
に
神
(
かみ
)
が
気
(
き
)
をつける、
029
汝
(
なんぢ
)
に
授
(
さづ
)
けた
玉照姫
(
たまてるひめ
)
は
普通
(
ふつう
)
の
人間
(
にんげん
)
の
子
(
こ
)
で
無
(
な
)
いぞよ、
030
神
(
かみ
)
が
御用
(
ごよう
)
に
立
(
た
)
てる
為
(
た
)
めに
汝
(
なんぢ
)
の
肉体
(
にくたい
)
に、
031
そつと
這入
(
はい
)
つて
生
(
うま
)
れ
変
(
かは
)
つたのであるから、
032
今
(
いま
)
此処
(
ここ
)
で
改心
(
かいしん
)
を
致
(
いた
)
してウラナイ
教
(
けう
)
に
献
(
たてまつ
)
り、
033
神
(
かみ
)
のお
役
(
やく
)
に
立
(
た
)
てて
下
(
くだ
)
されよ、
034
これが
神
(
かみ
)
の
仕組
(
しぐみ
)
であるぞよ、
035
若
(
も
)
し
承知
(
しようち
)
を
致
(
いた
)
したなれば
其
(
その
)
しるし
に
日蔭葛
(
ひかげかづら
)
を
頭
(
あたま
)
にのせて、
036
其方
(
そなた
)
の
家
(
いへ
)
まで
帰
(
かへ
)
つて
下
(
くだ
)
されよ、
037
若
(
も
)
し
不承知
(
ふしようち
)
なれば
其
(
その
)
儘
(
まま
)
で
帰
(
かへ
)
るがよい、
038
又
(
また
)
後
(
あと
)
から
神
(
かみ
)
が
みせしめ
を
致
(
いた
)
すぞよ』
039
と
書
(
か
)
いてある。
040
菊若
(
きくわか
)
、
041
かすり
声
(
ごゑ
)
で、
042
菊若
(
きくわか
)
『アハヽヽヽ、
043
うまいうまい、
044
ナア
富彦
(
とみひこ
)
、
045
やつぱり
哥兄貴
(
あにき
)
だなア』
046
寅若
(
とらわか
)
『
哥兄貴
(
あにき
)
だらう』
047
と、
048
かすり
声
(
ごゑ
)
で
云
(
い
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
049
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
軈
(
やが
)
てお
玉
(
たま
)
が
朝参詣
(
あさまゐり
)
して
登
(
のぼ
)
つて
来
(
く
)
る
時刻
(
じこく
)
と
裏山
(
うらやま
)
より、
050
ずり
下
(
お
)
り、
051
そつと
廻
(
まは
)
つて
中腹
(
ちうふく
)
の
灌木
(
くわんぼく
)
の
繁茂
(
しげみ
)
に
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
し、
052
お
玉
(
たま
)
の
下向
(
げかう
)
を
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
た。
053
お
玉
(
たま
)
は
只
(
ただ
)
一人
(
ひとり
)
桜
(
さくら
)
の
杖
(
つゑ
)
をつき
乍
(
なが
)
ら
漸
(
やうや
)
く
頂上
(
ちやうじやう
)
に
達
(
たつ
)
し、
054
神前
(
しんぜん
)
に
向
(
むか
)
つて
感謝
(
かんしや
)
の
辞
(
じ
)
を
奉
(
たてまつ
)
り、
055
フツと
社側
(
しやそく
)
の
大木
(
たいぼく
)
を
見
(
み
)
れば
何
(
なに
)
か
文字
(
もじ
)
が
現
(
あら
)
はれて
居
(
ゐ
)
る。
056
『ハテ
不思議
(
ふしぎ
)
』と
近寄
(
ちかよ
)
つて
見
(
み
)
れば
以前
(
いぜん
)
の
文面
(
ぶんめん
)
、
057
暫
(
しばら
)
く
其
(
その
)
木
(
き
)
と
睨
(
にら
)
め
くら
し、
058
腕
(
うで
)
を
組
(
く
)
んで
思案
(
しあん
)
に
暮
(
く
)
れて
居
(
ゐ
)
た。
059
暫時
(
しばし
)
あつて、
060
お
玉
(
たま
)
『エー、
061
馬鹿
(
ばか
)
らしい、
062
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
が
斯
(
こ
)
んな
事
(
こと
)
をお
書
(
か
)
き
遊
(
あそ
)
ばすものか、
063
何者
(
なにもの
)
かの
悪戯
(
いたづら
)
であらう。
064
日蔭葛
(
ひかげかづら
)
を
被
(
かぶ
)
つて
帰
(
かへ
)
る
所
(
ところ
)
を
眺
(
なが
)
めて、
065
近在村
(
きんざいむら
)
の
若
(
わか
)
い
衆
(
しう
)
が
手
(
て
)
を
拍
(
たた
)
いて
笑
(
わら
)
つてやらうとの
悪戯
(
いたづら
)
だらう、
066
ホヽヽヽ、
067
阿呆
(
あほ
)
らしい』
068
と
独語
(
ひとりご
)
ちつつ
又
(
また
)
もや
神前
(
しんぜん
)
に
軽
(
かる
)
く
会釈
(
ゑしやく
)
をし、
069
もと
来
(
き
)
し
急坂
(
きふはん
)
を
下
(
くだ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
070
半分
(
はんぶん
)
あまり
下
(
くだ
)
つたと
思
(
おも
)
ふ
時
(
とき
)
、
071
寅若
(
とらわか
)
『ヤア、
072
駄目
(
だめ
)
だ、
073
日蔭葛
(
ひかげかづら
)
を
被
(
かぶ
)
つて
居
(
ゐ
)
やがらぬぞ、
074
不承諾
(
ふしようだく
)
だと
見
(
み
)
える、
075
もう
斯
(
こ
)
うなる
上
(
うへ
)
は
直接
(
ちよくせつ
)
行動
(
かうどう
)
だ、
076
サア、
077
一
(
ひい
)
、
078
二
(
ふ
)
、
079
三
(
み
)
つで
一度
(
いちど
)
にかからうかい』
080
菊若
(
きくわか
)
『オイオイ、
081
あまり
慌
(
あわて
)
るな、
082
彼奴
(
あいつ
)
の
身体
(
からだ
)
を
見
(
み
)
よ、
083
一歩
(
ひとあし
)
々々
(
ひとあし
)
些
(
ちつ
)
とも
隙
(
すき
)
がない、
084
うつかりかからうものなら、
085
谷底
(
たにそこ
)
へ
取
(
と
)
つて
放
(
はう
)
られるかも
知
(
し
)
れないから、
086
余程
(
よほど
)
ここは
慎重
(
しんちよう
)
の
態度
(
たいど
)
をとらねばなるまいぞ』
087
富彦
(
とみひこ
)
『
愚図
(
ぐづ
)
々々
(
ぐづ
)
云
(
い
)
つてる
間
(
ま
)
に、
088
さつさと
帰
(
かへ
)
つて
仕舞
(
しま
)
うちや
仕方
(
しかた
)
がないぢやないか、
089
もう
斯
(
か
)
うなつては
何
(
なん
)
の
猶予
(
いうよ
)
もない、
090
サア
一
(
ひい
)
、
091
二
(
ふう
)
、
092
三
(
みつ
)
つだ』
093
とお
玉
(
たま
)
の
前
(
まへ
)
に
身体
(
からだ
)
一面
(
いちめん
)
、
094
日蔭葛
(
ひかげかづら
)
で
取
(
と
)
り
巻
(
ま
)
いた
化物
(
ばけもの
)
の
様
(
やう
)
な
姿
(
すがた
)
で
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
現
(
あら
)
はれた。
095
お
玉
(
たま
)
『シイツ、
096
オイ
畜生
(
ちくしやう
)
、
097
何
(
なん
)
と
心得
(
こころえ
)
て
居
(
ゐ
)
る、
098
此処
(
ここ
)
は
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
宮
(
みや
)
だ、
099
昼中
(
ひるなか
)
に
四
(
よ
)
つ
足
(
あし
)
が
出
(
で
)
ると
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
があるものか、
100
昼
(
ひる
)
は
人間
(
にんげん
)
の
世界
(
せかい
)
、
101
夜
(
よる
)
はお
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
の
世界
(
せかい
)
だ、
102
早
(
はや
)
く
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
せ、
103
一
(
ひと
)
二
(
ふた
)
三
(
み
)
四
(
よ
)
五
(
いつ
)
六
(
むゆ
)
七
(
なな
)
八
(
や
)
九
(
ここの
)
十
(
たり
)
百
(
もも
)
千
(
ち
)
万
(
よろづ
)
……』
104
寅若
(
とらわか
)
、
105
作
(
つく
)
り
声
(
ごゑ
)
をして、
106
寅若
(
とらわか
)
『オイ、
107
お
玉
(
たま
)
、
108
其
(
その
)
方
(
はう
)
は
生神
(
いきがみ
)
様
(
さま
)
に
向
(
むか
)
つて
獣
(
けだもの
)
と
云
(
い
)
つたな、
109
もう
量見
(
りやうけん
)
がならぬ、
110
覚悟
(
かくご
)
致
(
いた
)
せ』
111
お
玉
(
たま
)
『オホヽヽヽヽ、
112
お
前
(
まへ
)
は
昨日
(
きのふ
)
妾
(
わたし
)
の
家
(
うち
)
へやつて
来
(
き
)
て、
113
お
爺
(
ぢい
)
さまに
審神
(
さには
)
をせられた
狐
(
きつね
)
や
狸
(
たぬき
)
の
生宮
(
いきみや
)
だらう、
114
やつぱり
争
(
あらそ
)
はれぬもの、
115
宅
(
うち
)
のお
爺
(
ぢい
)
さまは
目
(
め
)
が
高
(
たか
)
い、
116
今日
(
けふ
)
は
正真
(
せうまつ
)
になつて
姿
(
すがた
)
を
現
(
あら
)
はし
遊
(
あそ
)
ばしたな、
117
ホヽヽヽヽ』
118
寅若
(
とらわか
)
『
何
(
なに
)
を
吐
(
ぬか
)
すのだ、
119
もう
斯
(
こ
)
う
成
(
な
)
つた
上
(
うへ
)
は
此方
(
こちら
)
も
死物狂
(
しにものぐる
)
ひだ、
120
幸
(
さいは
)
ひ
外
(
ほか
)
に
人
(
ひと
)
は
無
(
な
)
し、
121
何程
(
なにほど
)
貴様
(
きさま
)
に
神力
(
しんりき
)
があるか、
122
手
(
て
)
が
利
(
き
)
いて
居
(
ゐ
)
るか、
123
荒
(
あら
)
くれ
男
(
をとこ
)
の
三
(
さん
)
人
(
にん
)
と
女
(
をんな
)
一人
(
ひとり
)
、
124
愚図
(
ぐづ
)
々々
(
ぐづ
)
吐
(
ぬか
)
さず
後
(
うしろ
)
へ
手
(
て
)
を
廻
(
まは
)
せ』
125
お
玉
(
たま
)
『オホヽヽヽ、
126
お
前
(
まへ
)
こそ、
127
ちつと
尻
(
しり
)
へ
手
(
て
)
を
廻
(
まは
)
さぬと
大変
(
たいへん
)
な
失敗
(
しつぱい
)
が
出来
(
でき
)
ますよ、
128
後
(
うしろ
)
へ
手
(
て
)
を
廻
(
まは
)
す
様
(
やう
)
な
人間
(
にんげん
)
はお
前
(
まへ
)
の
様
(
やう
)
な
悪人
(
あくにん
)
ばつかりだ、
129
やがて
捕手
(
とりて
)
が
出
(
で
)
て
来
(
き
)
て……
括
(
くく
)
つて
去
(
い
)
なれぬ
様
(
やう
)
に
御
(
ご
)
注意
(
ちうい
)
なさいませや』
130
菊若
(
きくわか
)
『エー
自暴糞
(
やけくそ
)
だ、
131
やつて
仕舞
(
しま
)
へ、
132
サア
一
(
ひい
)
、
133
二
(
ふう
)
、
134
三
(
みつ
)
つ』
135
お
玉
(
たま
)
『オホヽヽヽ、
136
随分
(
ずゐぶん
)
偉
(
えら
)
い
馬力
(
ばりき
)
ですこと、
137
お
宮
(
みや
)
の
前
(
まへ
)
に
綺麗
(
きれい
)
な
楽書
(
らくがき
)
がして
御座
(
ござ
)
いましたな、
138
妾
(
わたし
)
拝見
(
はいけん
)
致
(
いた
)
しまして、
139
見事
(
みごと
)
なる
御
(
ご
)
手跡
(
しゆせき
)
だと
感心
(
かんしん
)
しましたのよ』
140
寅若
(
とらわか
)
『エー、
141
ベラベラと
怖
(
こわ
)
くなつたものだから
追従
(
つゐしやう
)
ならべやがつて、
142
此
(
この
)
場
(
ば
)
を
ちよろまか
して
逃
(
に
)
げ
様
(
やう
)
と
思
(
おも
)
つたつて、
143
仏
(
ほとけ
)
の
碗
(
わん
)
ぢや、
144
もう
かなわん
ぞ、
145
神妙
(
しんめう
)
に
手
(
て
)
を
廻
(
まは
)
さぬかい』
146
お
玉
(
たま
)
『
大
(
おほ
)
きに
憚
(
はばか
)
りさま、
147
廻
(
まは
)
さうと、
148
廻
(
まは
)
すまいと
妾
(
わたし
)
の
手
(
て
)
、
149
自由
(
じいう
)
の
権利
(
けんり
)
だ、
150
お
構
(
かま
)
ひ
下
(
くだ
)
さいますな、
151
それよりも
貴方
(
あなた
)
の
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
を
御
(
ご
)
注意
(
ちうい
)
なさいませ、
152
玩具
(
おもちや
)
のピストルを
突
(
つ
)
きつける
様
(
やう
)
な
脅喝
(
けふかつ
)
手段
(
しゆだん
)
にのる
様
(
やう
)
なお
玉
(
たま
)
ぢや
御座
(
ござ
)
いませぬワ』
153
富彦
(
とみひこ
)
『
何程
(
なんぼ
)
口
(
くち
)
は
達者
(
たつしや
)
でも
力
(
ちから
)
には
叶
(
かな
)
うまい、
154
オイ
寅若
(
とらわか
)
菊若
(
きくわか
)
、
155
もう
斯
(
こ
)
うなれば
容赦
(
ようしや
)
はならぬ、
156
愚図
(
ぐづ
)
々々
(
ぐづ
)
して
居
(
ゐ
)
ると、
157
人
(
ひと
)
に
見付
(
みつ
)
かつちや
大変
(
たいへん
)
だ、
158
早
(
はや
)
う
事業
(
じげふ
)
に
着手
(
ちやくしゆ
)
しようぢやないか』
159
寅若、菊若
『オツト
合点
(
がつてん
)
だ』
160
と
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
武者
(
むしや
)
振
(
ぶ
)
り
付
(
つ
)
く。
161
お
玉
(
たま
)
は
右
(
みぎ
)
に
隙
(
す
)
かし
左
(
ひだり
)
に
隙
(
す
)
かし、
162
飛鳥
(
ひてう
)
の
如
(
ごと
)
く
揉
(
も
)
み
合
(
あ
)
ひ
へし
合
(
あ
)
ひ
戦
(
たたか
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
163
寅若
(
とらわか
)
はお
玉
(
たま
)
の
足
(
あし
)
に
喰
(
く
)
ひついた
途端
(
とたん
)
にお
玉
(
たま
)
は
仰向態
(
あふむけざま
)
に、
164
ひつくりかへり
二三間
(
にさんげん
)
谷
(
たに
)
を
目蒐
(
めが
)
けて、
165
寅若
(
とらわか
)
と
上
(
うへ
)
になり
下
(
した
)
になりクレリクレリと
三四回
(
さんしくわい
)
軽業
(
かるわざ
)
を
演
(
えん
)
じた。
166
菊若
(
きくわか
)
、
167
富彦
(
とみひこ
)
は
予
(
かね
)
て
用意
(
ようい
)
の
藤綱
(
ふぢつな
)
を
以
(
もつ
)
て
後手
(
うしろで
)
に
縛
(
しば
)
り、
168
猿轡
(
さるぐつわ
)
を
箝
(
は
)
め
様
(
やう
)
とする。
169
此
(
この
)
時
(
とき
)
下
(
した
)
の
方
(
はう
)
から
白
(
しろ
)
い
笠
(
かさ
)
が
揺
(
ゆ
)
らついて
登
(
のぼ
)
つて
来
(
く
)
る。
170
寅若
(
とらわか
)
『ヤア、
171
何
(
なん
)
だか
怪
(
あや
)
しげな
奴
(
やつ
)
が
一匹
(
いつぴき
)
やつて
来
(
き
)
やがつたぞ、
172
大方
(
おほかた
)
豊彦爺
(
とよひこぢい
)
だらう』
173
菊若
(
きくわか
)
『
親爺
(
おやぢ
)
にしては
随分
(
ずゐぶん
)
足並
(
あしなみ
)
が
早
(
はや
)
い
様
(
やう
)
だ、
174
早
(
はや
)
く
縛
(
しば
)
りあげて
其処辺
(
そこら
)
へ
隠
(
かく
)
し、
175
彼奴
(
あいつ
)
の
通
(
とほ
)
るのをば
待
(
ま
)
とうぢやないか』
176
と
慌
(
あわて
)
て
括
(
くく
)
つたお
玉
(
たま
)
の
肉体
(
にくたい
)
を
灌木
(
くわんぼく
)
の
繁茂
(
しげみ
)
に
隠
(
かく
)
して
仕舞
(
しま
)
つた。
177
そこへ
上
(
のぼ
)
つて
来
(
き
)
た
一人
(
ひとり
)
の
男
(
をとこ
)
、
178
男(丹州)
『ヤアお
前
(
まへ
)
はウラナイ
教
(
けう
)
の
方
(
かた
)
ぢやなア、
179
一寸
(
ちよつと
)
物
(
もの
)
をお
尋
(
たづ
)
ね
致
(
いた
)
します、
180
此処
(
ここ
)
へ
於与岐
(
およぎ
)
の
豊彦
(
とよひこ
)
の
娘
(
むすめ
)
お
玉
(
たま
)
と
云
(
い
)
ふ
綺麗
(
きれい
)
な
女
(
をんな
)
は
通
(
とほ
)
らなかつたかな、
181
見
(
み
)
れば
貴方
(
あなた
)
等
(
がた
)
は
身体
(
からだ
)
一面
(
いちめん
)
、
182
狐
(
きつね
)
の
襷
(
たすき
)
を
身
(
み
)
に
纒
(
まと
)
うて
居
(
ゐ
)
るが、
183
何
(
なん
)
ぞ
面白
(
おもしろ
)
い
事
(
こと
)
でもありましたか』
184
寅若
(
とらわか
)
『イヤ、
185
別
(
べつ
)
に
何
(
なに
)
もありませぬ、
186
お
玉
(
たま
)
さまはねつからお
目
(
め
)
にかかりませぬがな』
187
と
故意
(
わざ
)
とお
玉
(
たま
)
を
隠
(
かく
)
した
反対
(
はんたい
)
の
方
(
はう
)
へ
目
(
め
)
を
注
(
そそ
)
ぐ。
188
男
(
をとこ
)
(丹州)
『もう
此処
(
ここ
)
へ
来
(
き
)
て
居
(
を
)
らねばならぬ
時刻
(
じこく
)
ですが……
彼方
(
あちら
)
から
一寸
(
ちよつと
)
窺
(
うかが
)
つて
居
(
ゐ
)
ましたが
人
(
ひと
)
の
影
(
かげ
)
が
四
(
よつ
)
ばかり
動
(
うご
)
いて
居
(
を
)
つた
様
(
やう
)
だ』
189
寅若
(
とらわか
)
『ハイ、
190
そう
見
(
み
)
えましたかな。
191
それは
大方
(
おほかた
)
昼
(
ひる
)
の
事
(
こと
)
でもあり
影法師
(
かげぼうし
)
がさしたのでせう』
192
男
(
をとこ
)
(丹州)
『
天
(
てん
)
を
封
(
ふう
)
じた
此
(
この
)
密林
(
みつりん
)
、
193
影
(
かげ
)
が
映
(
さ
)
すとは
妙
(
めう
)
ですな、
194
私
(
わたくし
)
も
此処
(
ここ
)
で
一
(
ひと
)
つ
煙草
(
たばこ
)
でも……さして
貰
(
もら
)
ひませう、
195
何
(
なん
)
だか
女
(
をんな
)
の
息
(
いき
)
が
聞
(
きこ
)
える
様
(
やう
)
だ、
196
ハツハツハヽヽヽ、
197
お
前
(
まへ
)
、
198
隠
(
かく
)
して
居
(
ゐ
)
るのぢやあるまいな』
199
寅若
(
とらわか
)
『
滅相
(
めつさう
)
な、
200
此
(
この
)
昼中
(
ひるなか
)
に
隠
(
かく
)
すと
云
(
い
)
つたつて……
何
(
なに
)
を
隠
(
かく
)
す
必要
(
ひつえう
)
がありますものか、
201
かくす
れば
斯
(
か
)
くなるものと
知
(
し
)
り
乍
(
なが
)
ら
止
(
や
)
むにやまれぬ
日本
(
やまと
)
魂
(
だましひ
)
と
云
(
い
)
ひまして、
202
ホンの
一寸
(
ちよつと
)
……』
203
男
(
をとこ
)
(丹州)
『
何
(
なに
)
が
一寸
(
ちよつと
)
……だ、
204
其
(
その
)
一寸
(
ちよつと
)
が
聞
(
き
)
かして
欲
(
ほ
)
しい』
205
寅若
(
とらわか
)
『そう
四角張
(
しかくば
)
つて
仰有
(
おつしや
)
るに
及
(
およ
)
びませぬワ、
206
サアサアお
伴
(
とも
)
致
(
いた
)
しませう、
207
貴方
(
あなた
)
お
空
(
そら
)
へお
詣
(
まゐ
)
りでせう、
208
私
(
わたくし
)
お
伴
(
とも
)
致
(
いた
)
します。
209
オイ
菊若
(
きくわか
)
、
210
富彦
(
とみひこ
)
、
211
宜
(
い
)
いか、
212
合点
(
がつてん
)
か、
213
お
前
(
まへ
)
は
足弱
(
あしよわ
)
だから、
214
先
(
さき
)
へ
何
(
なに
)
を
何々
(
なになに
)
せい、
215
私
(
わたし
)
は
此
(
この
)
お
方
(
かた
)
のお
伴
(
とも
)
をしてお
空
(
そら
)
へ
詣
(
まゐ
)
つて
来
(
く
)
るから……』
216
菊若
(
きくわか
)
『
昨晩
(
ゆうべ
)
詣
(
まゐ
)
つただないか』
217
寅若
(
とらわか
)
、
218
グツと
目
(
め
)
を
剥
(
む
)
き、
219
寅若
(
とらわか
)
『シイツ、
220
何
(
なに
)
を
云
(
い
)
ふのだい、
221
夢
(
ゆめ
)
を
見
(
み
)
やがつて……
此処
(
ここ
)
までやつて
来
(
き
)
て「アヽお
山
(
やま
)
はきついから……
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
は
何処
(
どこ
)
からも
同
(
おな
)
じことだ、
222
ここで
勘
(
こら
)
へて
貰
(
もら
)
はう」と
平太
(
へた
)
つて
仕舞
(
しま
)
つたぢやないか、
223
アハヽヽヽ。
224
昨晩
(
ゆうべ
)
のうちに
詣
(
まゐ
)
りよつた
夢
(
ゆめ
)
を
見
(
み
)
たのぢやな、
225
旅人
(
たびびと
)
、
226
こんな
弱虫
(
よわむし
)
を
連
(
つ
)
れて
居
(
ゐ
)
ますと
閉口
(
へいこう
)
致
(
いた
)
しますワイ、
227
サアお
伴
(
とも
)
致
(
いた
)
しませう』
228
男
(
をとこ
)
(丹州)
『
御
(
ご
)
親切
(
しんせつ
)
は
有難
(
ありがた
)
いが、
229
私
(
わたくし
)
はお
空
(
そら
)
には
一寸
(
ちよつと
)
も
用
(
よう
)
はない、
230
私
(
わたくし
)
の
許嫁
(
いひなづけ
)
のお
玉
(
たま
)
と
云
(
い
)
ふものに
会
(
あ
)
ひさへすればよいのだ、
231
何
(
なん
)
だか
此処
(
ここ
)
へ
来
(
く
)
ると
足
(
あし
)
がピツタリ
止
(
と
)
まつて、
232
お
玉
(
たま
)
臭
(
くさ
)
い
匂
(
にほ
)
ひがして
来
(
き
)
た』
233
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
徐々
(
そろそろ
)
目
(
め
)
と
目
(
め
)
とを
見合
(
みあは
)
して
逃
(
に
)
げかけ
様
(
やう
)
とする。
234
男
(
をとこ
)
(丹州)
『オイオイ、
235
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
奴
(
やつ
)
共
(
ども
)
、
236
貴様
(
きさま
)
に
談判
(
だんぱん
)
がある、
237
一寸
(
ちよつと
)
待
(
ま
)
て』
238
寅若
(
とらわか
)
『ヘイ、
239
なゝゝゝ
何
(
なん
)
と
仰
(
おつ
)
しやいます』
240
男
(
をとこ
)
(丹州)
『
一寸
(
ちよつと
)
待
(
ま
)
てと
云
(
い
)
うのだ』
241
寅若
(
とらわか
)
『
ぢや
と
申
(
まを
)
して……
鬼
(
おに
)
と
申
(
まを
)
して……
寅
(
とら
)
と
申
(
まを
)
して……』
242
男
(
をとこ
)
(丹州)
『アハヽヽヽ、
243
随分
(
ずゐぶん
)
よく
動
(
うご
)
くぢやないか、
244
その
態
(
ざま
)
は
何
(
なん
)
ぢやい』
245
寅若
(
とらわか
)
『ハイ………
地震
(
ぢしん
)
の
霊
(
れい
)
が
憑依
(
ひようい
)
しまして……いやもう
慄
(
ふる
)
つて
居
(
ゐ
)
ますワイ』
246
男
(
をとこ
)
(丹州)
『
真
(
ほん
)
に
三
(
さん
)
人
(
にん
)
共
(
とも
)
慄
(
ふる
)
つてるな、
247
まてまて
今一
(
いまひと
)
つ
退屈
(
たいくつ
)
覚
(
ざま
)
しに
悪霊
(
あくれい
)
注射
(
ちうしや
)
でもやつて
霊縛
(
れいばく
)
してやらう』
248
菊若
(
きくわか
)
『めゝゝゝ
滅相
(
めつさう
)
な、
249
もう
之
(
これ
)
で
沢山
(
たくさん
)
で
御座
(
ござ
)
います』
250
男
(
をとこ
)
(丹州)
『ウン』
251
と
一声
(
ひとこゑ
)
、
252
霊縛
(
れいばく
)
を
施
(
ほどこ
)
した。
253
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
腰
(
こし
)
から
下
(
した
)
は
鞍掛
(
くらかけ
)
の
足
(
あし
)
の
様
(
やう
)
に
踏
(
ふ
)
ん
張
(
ば
)
つたまま
地
(
ち
)
から
生
(
は
)
えた
木
(
き
)
の
様
(
やう
)
にビクツとも
動
(
うご
)
かず、
254
腰
(
こし
)
から
上
(
うへ
)
は
貧乏
(
びんばふ
)
ぶるひをやり
乍
(
なが
)
ら
目
(
め
)
許
(
ばか
)
りぎろつかせて
居
(
ゐ
)
る
可笑
(
おか
)
しさ。
255
男
(
をとこ
)
(丹州)
『アーア、
256
お
玉
(
たま
)
さまを
之
(
これ
)
から
助
(
たす
)
けて
上
(
あ
)
げねばなるまい』
257
と
傍
(
かたはら
)
の
灌木
(
くわんぼく
)
の
中
(
なか
)
に
倒
(
たふ
)
れて
居
(
ゐ
)
るお
玉
(
たま
)
の
綱
(
つな
)
を
解
(
と
)
き
猿轡
(
さるぐつわ
)
を
取
(
と
)
り
外
(
はづ
)
し、
258
男
(
をとこ
)
(丹州)
『
旅
(
たび
)
のお
女中
(
ぢよちう
)
、
259
否
(
いや
)
お
玉
(
たま
)
さま、
260
えらい
目
(
め
)
に
会
(
あ
)
ひましたね、
261
サ、
262
しつかりなさいませ、
263
もう
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
ですよ、
264
あの
通
(
とほ
)
り
霊縛
(
れいばく
)
を
施
(
ほどこ
)
して
置
(
お
)
きました』
265
お
玉
(
たま
)
はキヨロキヨロ
男
(
をとこ
)
の
顔
(
かほ
)
を
見廻
(
みまは
)
し、
266
お
玉
(
たま
)
『ヤア、
267
其
(
その
)
方
(
はう
)
は
同類
(
どうるゐ
)
であらう、
268
そんな
八百長
(
やほちやう
)
をしたつて
欺
(
だま
)
される
様
(
やう
)
なお
玉
(
たま
)
ではありませぬよ』
269
男
(
をとこ
)
(丹州)
『これは
迷惑
(
めいわく
)
千万
(
せんばん
)
、
270
私
(
わたくし
)
は
丹州
(
たんしう
)
と
云
(
い
)
ふ
男
(
をとこ
)
、
271
豊彦
(
とよひこ
)
さまの
知己
(
ちき
)
ですよ』
272
お
玉
(
たま
)
は
男
(
をとこ
)
の
顔
(
かほ
)
を
熟視
(
じゆくし
)
し、
273
お
玉
(
たま
)
『ヤア
貴方
(
あなた
)
は
先日
(
せんじつ
)
お
越
(
こ
)
し
下
(
くだ
)
さいました
丹州
(
たんしう
)
さまで
御座
(
ござ
)
いますか、
274
これはこれはよい
処
(
ところ
)
へ
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さいました、
275
サア
帰
(
かへ
)
りませう』
276
丹州
(
たんしう
)
『マア、
277
ゆつくり
成
(
な
)
さいませ、
278
足
(
あし
)
は
歩
(
ある
)
かねども
天
(
あめ
)
の
下
(
した
)
の
事
(
こと
)
悉
(
ことごと
)
く
知
(
し
)
る
神
(
かみ
)
なりと
云
(
い
)
ふ
案山子
(
かがし
)
彦
(
ひこ
)
又
(
また
)
の
御名
(
みな
)
は
曽富斗
(
そふど
)
の
神
(
かみ
)
が
御
(
ご
)
三体
(
さんたい
)
現
(
あら
)
はれました、
279
アハヽヽヽ』
280
お
玉
(
たま
)
『ほんに、
281
マア
見事
(
みごと
)
な
案山子
(
かがし
)
彦
(
ひこ
)
の
神
(
かみ
)
さまですこと』
282
丹州
(
たんしう
)
『
何
(
なん
)
でも
世界
(
せかい
)
の
事
(
こと
)
は
御存
(
ごぞん
)
じのお
方
(
かた
)
だから、
283
一
(
ひと
)
つ
伺
(
うかが
)
つて
見
(
み
)
ませうか』
284
お
玉
(
たま
)
『それは
面白
(
おもしろ
)
からう、
285
いやいや
面白
(
おもしろ
)
いでせう』
286
丹州
(
たんしう
)
『
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
伺
(
うかが
)
ふのに
面白
(
おもしろ
)
いなんて、
287
……そんな
失敬
(
しつけい
)
な
事
(
こと
)
がありますか、
288
ちつと
言霊
(
ことたま
)
をお
慎
(
つつし
)
みなさい』
289
お
玉
(
たま
)
『ホヽヽヽ、
290
屹度
(
きつと
)
慎
(
つつし
)
みませう』
291
と
寅若
(
とらわか
)
の
前
(
まへ
)
に
徐々
(
しづしづ
)
と
現
(
あら
)
はれ、
292
お
玉
(
たま
)
『ハヽア、
293
此
(
この
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
は
目
(
め
)
ばかり
剥
(
む
)
いて
居
(
ゐ
)
らつしやる、
294
何
(
なに
)
かお
供
(
そな
)
へしたいが
何
(
なに
)
もありませぬ、
295
丹州
(
たんしう
)
さま、
296
如何
(
どう
)
でせう、
297
大
(
おほ
)
きな
口
(
くち
)
を
開
(
あ
)
けて
居
(
ゐ
)
らつしやいますが………』
298
丹州
(
たんしう
)
『お
土
(
つち
)
かお
石
(
いし
)
の
団子
(
だんご
)
でも
腹一杯
(
はらいつぱい
)
捻込
(
ねぢこ
)
んであげたら
如何
(
どう
)
でせう、
299
アハヽヽヽ』
300
お
玉
(
たま
)
『それは
経済
(
けいざい
)
で
宜
(
よろ
)
しいね、
301
お
三方
(
さんかた
)
とも
勝負
(
かちまけ
)
のない
様
(
やう
)
にお
供
(
そな
)
へしませうか』
302
丹州
(
たんしう
)
『ヤア
手
(
て
)
が
汚
(
よご
)
れますから
措
(
を
)
きませうかい、
303
こらこら
六本足
(
ろつぽんあし
)
、
304
霊縛
(
れいばく
)
を
解
(
と
)
いてやる、
305
一時
(
いつとき
)
も
早
(
はや
)
く
立帰
(
たちかへ
)
り
此
(
この
)
由
(
よし
)
を
高姫
(
たかひめ
)
、
306
黒姫
(
くろひめ
)
、
307
高山彦
(
たかやまひこ
)
の
御
(
おん
)
前
(
まへ
)
に
包
(
つつ
)
まず
隠
(
かく
)
さず
注進
(
ちうしん
)
致
(
いた
)
して、
308
御
(
ご
)
褒美
(
ほうび
)
に
預
(
あづか
)
つたが
宜
(
よ
)
からう』
309
『ウン』と
一声
(
ひとこゑ
)
霊縛
(
れいばく
)
を
解
(
と
)
くや
否
(
いな
)
や
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
ガラガラガラと
坂道
(
さかみち
)
に
石礫
(
ばらす
)
を
打
(
ぶ
)
ちあけた
様
(
やう
)
に
転
(
ころ
)
んで
逃
(
に
)
げて
行
(
ゆ
)
く。
310
丹州
(
たんしう
)
はお
玉
(
たま
)
と
共
(
とも
)
に
於与岐
(
およぎ
)
の
豊彦
(
とよひこ
)
の
家
(
いへ
)
に
黄昏
(
たそがれ
)
ごろ
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
た。
311
豊彦
(
とよひこ
)
夫婦
(
ふうふ
)
はお
玉
(
たま
)
の
遭難
(
さうなん
)
の
顛末
(
てんまつ
)
より
丹州
(
たんしう
)
が
助
(
たす
)
けて
呉
(
く
)
れた
一条
(
いちでう
)
を
涙
(
なみだ
)
と
共
(
とも
)
に
聞
(
き
)
き
非常
(
ひじやう
)
に
感謝
(
かんしや
)
し、
312
丹州
(
たんしう
)
は
生命
(
いのち
)
の
親
(
おや
)
として
鄭重
(
ていちよう
)
に
待遇
(
もてな
)
され、
313
それよりお
玉
(
たま
)
の
宅
(
うち
)
に
暫時
(
ざんじ
)
同棲
(
どうせい
)
する
事
(
こと
)
となつた。
314
されど
丹州
(
たんしう
)
とお
玉
(
たま
)
との
両人
(
りやうにん
)
の
仲
(
なか
)
は
一点
(
いつてん
)
の
怪
(
あや
)
しき
関係
(
くわんけい
)
も
無
(
な
)
く
極
(
きは
)
めて
純潔
(
じゆんけつ
)
であつた。
315
(
大正一一・四・二八
旧四・二
北村隆光
録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
<<< 大当違
(B)
(N)
蛸の揚壺 >>>
霊界物語
>
如意宝珠(第13~24巻)
>
第18巻(巳の巻)
> 第4篇 舎身活躍 > 第13章 救の神
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【
メールアドレス
】
【第13章 救の神|第18巻|如意宝珠|霊界物語|/rm1813】
合言葉「みろく」を入力して下さい→