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霊界物語
如意宝珠(第13~24巻)
第18巻(巳の巻)
序
凡例
総説
第1篇 弥仙の神山
第1章 春野の旅
第2章 厳の花
第3章 神命
第2篇 再探再険
第4章 四尾山
第5章 赤鳥居
第6章 真か偽か
第3篇 反間苦肉
第7章 神か魔か
第8章 蛙の口
第9章 朝の一驚
第10章 赤面黒面
第4篇 舎身活躍
第11章 相身互
第12章 大当違
第13章 救の神
第5篇 五月五日祝
第14章 蛸の揚壺
第15章 遠来の客
第16章 返り討
第17章 玉照姫
霊の礎(四)
余白歌
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> 第4篇 舎身活躍 > 第12章 大当違
<<< 相身互
(B)
(N)
救の神 >>>
第一二章
大当
(
おほあて
)
違
(
ちがひ
)
〔六四〇〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第18巻 如意宝珠 巳の巻
篇:
第4篇 舎身活躍
よみ(新仮名遣い):
しゃしんかつやく
章:
第12章 大当違
よみ(新仮名遣い):
おおあてちがい
通し章番号:
640
口述日:
1922(大正11)年04月28日(旧04月02日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年2月10日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
黒姫から、玉照姫をウラナイ教に向かえるようにと命令を受けた、富彦、寅若、菊若、の三人は、豊彦の家へやってきた。三人は弥仙山の神のお告げだと偽って、豊彦を説得しようとする。
しかしのっけから、豊彦のあばら家を馬鹿にした発現をし、豊彦の不興を買う。三人は偽の神懸りをするが、豊彦に見破られて追い出されてしまう。
三人は作戦を練り、明日お玉が七十五日の忌明けのお参りに弥仙山に登る際に誘拐し、自分たちが助け出したように見せかけて、豊彦に取り入ることにした。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-10-15 00:51:35
OBC :
rm1812
愛善世界社版:
202頁
八幡書店版:
第3輯 712頁
修補版:
校定版:
209頁
普及版:
92頁
初版:
ページ備考:
001
月
(
つき
)
傾
(
かたむ
)
いて
山
(
やま
)
を
慕
(
した
)
ひ
002
人
(
ひと
)
老
(
おい
)
て
妄
(
みだ
)
りに
道
(
みち
)
を
説
(
と
)
くとかや
003
弥仙
(
みせん
)
の
山
(
やま
)
の
麓
(
ふもと
)
なる
004
賤
(
しづ
)
が
伏家
(
ふせや
)
の
豊彦
(
とよひこ
)
は
005
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
006
悦子
(
よしこ
)
の
姫
(
ひめ
)
の
一行
(
いつかう
)
に
007
娘
(
むすめ
)
のお
玉
(
たま
)
を
助
(
たす
)
けられ
008
世
(
よ
)
にも
優
(
すぐ
)
れし
初孫
(
うひまご
)
の
009
顔
(
かほ
)
を
眺
(
なが
)
めて
老夫婦
(
らうふうふ
)
010
蝶
(
てふ
)
よ
花
(
はな
)
よと
労
(
いた
)
はりつ
011
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
を
説
(
と
)
き
諭
(
さと
)
す
012
此
(
この
)
事
(
こと
)
四方
(
よも
)
に
何時
(
いつ
)
となく
013
風
(
かぜ
)
のまにまに
伝
(
つた
)
はりて
014
於与岐
(
およぎ
)
の
郷
(
さと
)
の
爺
(
ぢい
)
さまは
015
弥仙
(
みせん
)
の
山
(
やま
)
と
諸共
(
もろとも
)
に
016
其
(
その
)
名
(
な
)
も
高
(
たか
)
くなりにける
017
老若
(
らうにやく
)
男女
(
なんによ
)
は
絡繹
(
らくえき
)
と
018
蟻
(
あり
)
の
甘
(
うま
)
きに
集
(
つど
)
ふが
如
(
ごと
)
く
019
豊彦
(
とよひこ
)
老爺
(
らうや
)
の
教示
(
けうじ
)
をば
020
神
(
かみ
)
の
如
(
ごと
)
くに
敬
(
うやま
)
ひて
021
昼
(
ひる
)
は
終日
(
ひねもす
)
夜
(
よ
)
は
終夜
(
よもすがら
)
022
救
(
すく
)
ひを
求
(
もと
)
めて
詣
(
まゐ
)
り
来
(
く
)
る。
023
中
(
なか
)
に
目立
(
めだ
)
つて
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
大男
(
おほをとこ
)
、
024
宣伝使
(
せんでんし
)
の
服
(
ふく
)
を
着
(
つ
)
けながら、
025
男
(
をとこ
)
『
御免
(
ごめん
)
なさいませ。
026
私
(
わたし
)
は
富彦
(
とみひこ
)
、
027
寅若
(
とらわか
)
、
028
菊若
(
きくわか
)
と
申
(
まを
)
す
者
(
もの
)
、
029
此
(
この
)
度
(
たび
)
弥仙山
(
みせんざん
)
のお
宮
(
みや
)
に
参拝
(
さんぱい
)
を
致
(
いた
)
し、
030
神勅
(
しんちよく
)
に
依
(
よ
)
りて
承
(
うけたま
)
はれば、
031
此
(
この
)
山麓
(
さんろく
)
の
一
(
ひと
)
つ
家
(
や
)
に
豊彦
(
とよひこ
)
と
云
(
い
)
ふ
方
(
かた
)
現
(
あら
)
はれ、
032
誠
(
まこと
)
の
教
(
をしへ
)
を
伝
(
つた
)
ふる
故
(
ゆゑ
)
、
033
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
帰路
(
きろ
)
に
立寄
(
たちよ
)
り、
034
彼
(
か
)
れ
豊彦
(
とよひこ
)
をウラナイ
教
(
けう
)
に
誘
(
いざな
)
ひ
帰
(
かへ
)
れ、
035
娘
(
むすめ
)
のお
玉
(
たま
)
及
(
およ
)
び
今度
(
こんど
)
生
(
うま
)
れた
玉照姫
(
たまてるひめ
)
を
本山
(
ほんざん
)
に
迎
(
むか
)
ひ
帰
(
かへ
)
れ……との、
036
有
(
あ
)
り
有
(
あ
)
りとの
御
(
おん
)
神示
(
しめし
)
、
037
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
言葉
(
ことば
)
は
疑
(
うたが
)
はれずと、
038
弥仙
(
みせん
)
の
山麓
(
さんろく
)
を
彼方
(
あちら
)
此方
(
こちら
)
と
探
(
さが
)
す
内
(
うち
)
、
039
道
(
みち
)
行
(
ゆ
)
く
人
(
ひと
)
に
承
(
うけたま
)
はれば
於与岐
(
およぎ
)
の
森
(
もり
)
の
彼方
(
あなた
)
の
一
(
ひと
)
つ
家
(
や
)
こそ、
040
豊彦
(
とよひこ
)
さまの
住宅
(
ぢうたく
)
と
聞
(
き
)
いた
故
(
ゆゑ
)
、
041
御
(
ご
)
神勅
(
しんちよく
)
により
出張
(
しゆつちやう
)
仕
(
つかまつ
)
りました』
042
と
門口
(
かどぐち
)
に
立
(
た
)
つた
儘
(
まま
)
呶鳴
(
どな
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
043
幸
(
さいは
)
ひ
今日
(
けふ
)
は
参詣者
(
さんけいしや
)
もなく、
044
老夫婦
(
らうふうふ
)
と
娘
(
むすめ
)
、
045
孫
(
まご
)
の
四
(
よ
)
人
(
にん
)
、
046
弥仙
(
みせん
)
の
神霊
(
しんれい
)
を
祀
(
まつ
)
りたる
霊前
(
れいぜん
)
に、
047
拝跪
(
はいき
)
黙祷
(
もくたう
)
する
最中
(
さいちう
)
であつた。
048
豊彦
(
とよひこ
)
は
拝礼
(
はいれい
)
を
終
(
を
)
へ、
049
門口
(
かどぐち
)
近
(
ちか
)
く
進
(
すす
)
み
来
(
きた
)
り、
050
豊彦
(
とよひこ
)
『どなたか
知
(
し
)
らぬが、
051
門口
(
かどぐち
)
に
何
(
なに
)
か
尋
(
たづ
)
ぬる
人
(
ひと
)
が
有
(
あ
)
るらしい、
052
何
(
いづ
)
れの
方
(
かた
)
か、
053
先
(
ま
)
づ
戸
(
と
)
を
開
(
あ
)
けてお
這入
(
はい
)
りなされませ』
054
寅若
(
とらわか
)
『ハイ
有難
(
ありがた
)
う』
055
と
斜交
(
はすかひ
)
になつた
雨戸
(
あまど
)
をガラリと
開
(
あ
)
け、
056
寅若
(
とらわか
)
『ヤア
随分
(
ずゐぶん
)
立派
(
りつぱ
)
な
家
(
うち
)
だなア……オイ
富彦
(
とみひこ
)
、
057
菊若
(
きくわか
)
、
058
這入
(
はい
)
れ、
059
……
汚
(
きたな
)
い
家
(
うち
)
に
不似合
(
ふにあひ
)
な
綺麗
(
きれい
)
な
娘
(
むすめ
)
さまが
御座
(
ござ
)
るなア、
060
下水
(
せせなぎ
)
に
咲
(
さ
)
いた
杜若
(
かきつばた
)
と
云
(
い
)
はうか、
061
谷底
(
たにそこ
)
の
山桜
(
やまざくら
)
、
062
これはどつか
良
(
い
)
い
所
(
ところ
)
へ
植替
(
うゑか
)
へたならば、
063
随分
(
ずゐぶん
)
立派
(
りつぱ
)
な
者
(
もの
)
になるだろう』
064
豊彦
(
とよひこ
)
『コレコレお
前
(
まへ
)
さまの
仰有
(
おつしや
)
る
通
(
とほ
)
りムサ
苦
(
くる
)
しい
茅屋
(
あばらや
)
なれど、
065
これでも
私
(
わたし
)
の
唯一
(
ゆゐいつ
)
の
休養場
(
きうやうば
)
ぢや、
066
……あまり
失礼
(
しつれい
)
ぢやありませぬか』
067
と
足音
(
あしおと
)
荒
(
あら
)
く、
068
破
(
やぶ
)
れ
畳
(
だたみ
)
を
威喝
(
ゐかつ
)
し
乍
(
なが
)
ら、
069
上
(
あが
)
り
口
(
ぐち
)
に
下
(
お
)
りて
来
(
き
)
て、
070
ジロジロと
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
顔
(
かほ
)
を
睨
(
にら
)
みつけて
居
(
ゐ
)
る。
071
寅若
(
とらわか
)
『ヤアこれはお
爺
(
ぢい
)
さま、
072
誠
(
まこと
)
に
失言
(
しつげん
)
を
致
(
いた
)
しました。
073
決
(
けつ
)
して
悪
(
わる
)
く
申
(
まを
)
したのぢや
御座
(
ござ
)
いませぬ。
074
少
(
すこ
)
しも
飾
(
かざ
)
りのない、
075
正直
(
しやうぢき
)
正銘
(
しやうめい
)
な、
076
心
(
こころ
)
に
映
(
えい
)
じた
儘
(
まま
)
を
申上
(
まをしあ
)
げたのだから、
077
お
悪
(
わる
)
く
思
(
おも
)
つて
下
(
くだ
)
さいますな、
078
歪
(
ゆが
)
みかかつた
家
(
いへ
)
を、
079
立派
(
りつぱ
)
な
家
(
いへ
)
だと
云
(
い
)
つた
方
(
はう
)
が
却
(
かへ
)
つて
嘲弄
(
てうろう
)
した
事
(
こと
)
になりませう。
080
お
多福
(
かめ
)
を
掴
(
つか
)
まへて、
081
お
前
(
まへ
)
は
別嬪
(
べつぴん
)
だと
言
(
い
)
へば、
082
お
多福
(
かめ
)
は
馬鹿
(
ばか
)
にしたと
言
(
い
)
つて
怒
(
おこ
)
る
様
(
やう
)
なもので、
083
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
も
神
(
かみ
)
の
道
(
みち
)
に
仕
(
つか
)
へて
居
(
ゐ
)
る
者
(
もの
)
は、
084
チツとも
斟酌
(
しんしやく
)
とか
巧言
(
じやうず
)
とかが
有
(
あ
)
りませぬ、
085
お
気
(
き
)
に
障
(
さは
)
りましたら、
086
どうぞ
宥
(
ゆる
)
して
下
(
くだ
)
さいませ』
087
豊彦
(
とよひこ
)
『ソレヤお
前
(
まへ
)
の
言
(
い
)
ふ
通
(
とほ
)
りぢやが、
088
併
(
しか
)
し
碌
(
ろく
)
に
挨拶
(
あいさつ
)
もせないで、
089
イキナリ
吾々
(
われわれ
)
の
住宅
(
ぢうたく
)
を
非難
(
ひなん
)
すると
云
(
い
)
ふのは、
090
あまり
此方
(
こつち
)
も
気
(
き
)
の
良
(
よ
)
いものぢやない。
091
お
前
(
まへ
)
も
宣伝使
(
せんでんし
)
だと
仰有
(
おつしや
)
つたが、
092
斯
(
か
)
う
云
(
い
)
うたら
人
(
ひと
)
が
感情
(
かんじやう
)
を
害
(
がい
)
するか、
093
害
(
がい
)
せないか
位
(
くらゐ
)
は
分
(
わか
)
りさうなものだなア』
094
寅若
(
とらわか
)
『
只今
(
ただいま
)
申
(
まを
)
したのは
決
(
けつ
)
して
寅若
(
とらわか
)
では
有
(
あ
)
りませぬ。
095
弥仙山
(
みせんざん
)
に
鎮
(
しづ
)
まります
大神
(
おほかみ
)
の
眷属
(
けんぞく
)
、
096
寅若
(
とらわか
)
天狗
(
てんぐ
)
が
言
(
い
)
つたのです。
097
天狗
(
てんぐ
)
と
云
(
い
)
ふ
奴
(
やつ
)
は
世
(
よ
)
に
落
(
お
)
ちぶれて、
098
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
下働
(
したばたら
)
きばつかりやつて
居
(
ゐ
)
ますから、
099
行儀
(
ぎやうぎ
)
も
無
(
な
)
ければ、
100
作法
(
さはふ
)
も
知
(
し
)
らず、
101
酒
(
さけ
)
呑
(
の
)
みの
極道
(
ごくだう
)
天狗
(
てんぐ
)
もあり、
102
どうぞお
赦
(
ゆる
)
し
下
(
くだ
)
さいませ。
103
何分
(
なにぶん
)
身魂
(
みたま
)
が
研
(
みが
)
け
過
(
す
)
ぎて
居
(
を
)
るものだから、
104
感
(
かん
)
じ
易
(
やす
)
うて
直
(
すぐ
)
に
憑
(
うつ
)
られて
困
(
こま
)
ります、
105
アハヽヽヽ』
106
豊彦
(
とよひこ
)
『さうして
御
(
ご
)
神勅
(
しんちよく
)
の
趣
(
おもむき
)
はどう
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
だ、
107
早
(
はや
)
く
聞
(
き
)
かして
貰
(
もら
)
ひませう』
108
寅若
(
とらわか
)
『
御存
(
ごぞん
)
じの
通
(
とほ
)
り、
109
私
(
わたくし
)
はあまり
素直
(
すなほ
)
な
身魂
(
みたま
)
で、
110
種々
(
いろいろ
)
の
神
(
かみ
)
が
憑依
(
ひようい
)
致
(
いた
)
しますから、
111
余程
(
よほど
)
審神
(
さには
)
をせねばなりませぬが、
112
此
(
この
)
富彦
(
とみひこ
)
と
云
(
い
)
ふ
宣伝使
(
せんでんし
)
は、
113
それはそれは
立派
(
りつぱ
)
な
者
(
もの
)
で
御座
(
ござ
)
います。
114
実
(
じつ
)
は
富彦
(
とみひこ
)
に
御
(
ご
)
神勅
(
しんちよく
)
が
有
(
あ
)
つたのです。
115
サア
富彦
(
とみひこ
)
さま、
116
御
(
ご
)
神勅
(
しんちよく
)
の
次第
(
しだい
)
をお
爺
(
ぢい
)
さまにお
知
(
し
)
らせなされ』
117
富彦
(
とみひこ
)
、
118
両手
(
りやうて
)
を
組
(
く
)
み、
119
威丈高
(
ゐたけだか
)
になり、
120
富彦
(
とみひこ
)
『コヽヽ
此
(
この
)
方
(
はう
)
は、
121
弥仙山
(
みせんざん
)
に
守護
(
しゆご
)
致
(
いた
)
す
木花
(
このはな
)
咲耶姫
(
さくやひめ
)
であるぞよ。
122
此
(
この
)
度
(
たび
)
汝
(
なんぢ
)
が
家
(
うち
)
に、
123
木花姫
(
このはなひめ
)
の
御霊
(
みたま
)
、
124
玉照姫
(
たまてるひめ
)
を
遣
(
つか
)
はしたのは、
125
深
(
ふか
)
き
仕組
(
しぐみ
)
の
有
(
あ
)
る
事
(
こと
)
ぢや、
126
何事
(
なにごと
)
も
皆
(
みな
)
神
(
かみ
)
からさせられて
居
(
を
)
るのだから、
127
吾
(
わが
)
子
(
こ
)
であつて、
128
吾
(
わが
)
子
(
こ
)
ではないぞよ。
129
体内
(
たいない
)
に
宿
(
やど
)
つて
十
(
じつ
)
ケ
月目
(
げつめ
)
に
生
(
うま
)
れ
出
(
い
)
でたる
此
(
この
)
玉照姫
(
たまてるひめ
)
は、
130
神
(
かみ
)
のお
役
(
やく
)
に
立
(
た
)
てる
為
(
ため
)
に、
131
昔
(
むかし
)
から
因縁
(
いんねん
)
の
身魂
(
みたま
)
を
探
(
さが
)
して、
132
其
(
その
)
方
(
はう
)
が
娘
(
むすめ
)
に
御用
(
ごよう
)
をさせたのであるぞよ。
133
サア
是
(
こ
)
れからは
其
(
その
)
玉照姫
(
たまてるひめ
)
を
神
(
かみ
)
の
御用
(
ごよう
)
に
立
(
た
)
てるが
良
(
よ
)
いぞよ。
134
神
(
かみ
)
の
申
(
まを
)
す
事
(
こと
)
を
諾
(
き
)
かねば
諾
(
き
)
く
様
(
やう
)
に
致
(
いた
)
して
諾
(
き
)
かしてやるぞよ。
135
返答
(
へんたふ
)
はどうぢや、
136
豊彦
(
とよひこ
)
、
137
承
(
うけたま
)
はらう』
138
豊彦
(
とよひこ
)
、
139
平気
(
へいき
)
な
顔
(
かほ
)
でニタリと
笑
(
わら
)
ひ、
140
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
顔
(
かほ
)
をギヨロギヨロ
眺
(
なが
)
め、
141
豊彦
『ハヽヽヽヽ、
142
お
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
、
143
巧妙
(
うま
)
い
事
(
こと
)
を
行
(
や
)
りますなア。
144
田舎
(
いなか
)
の
老爺
(
ぢぢい
)
ぢやと
思
(
おも
)
うて、
145
一杯
(
いつぱい
)
欺
(
か
)
けようと
企
(
たく
)
んで
来
(
き
)
ても、
146
斯
(
か
)
う
見
(
み
)
えても
此
(
この
)
爺
(
ぢい
)
はナカナカ、
147
酢
(
す
)
でも
蒟蒻
(
こんにやく
)
でも
行
(
い
)
く
奴
(
やつ
)
ぢやない。
148
お
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
とは
役者
(
やくしや
)
が
七八
(
しちはち
)
枚
(
まい
)
も
上
(
うへ
)
だから、
149
其
(
その
)
手
(
て
)
は
喰
(
く
)
ひませぬワイ、
150
アツハヽヽヽ、
151
なる
程
(
ほど
)
人間
(
にんげん
)
の
子
(
こ
)
は
十月
(
とつき
)
で
生
(
うま
)
れるだらうが、
152
此方
(
こちら
)
の
子
(
こ
)
はそんな
仕入
(
しいれ
)
とはチツと
種
(
たね
)
が
違
(
ちが
)
ふのだ。
153
神
(
かみ
)
さまもタヨリ
無
(
な
)
いものだなア。
154
実際
(
じつさい
)
お
前様
(
まへさん
)
に
大神
(
おほかみ
)
が
懸
(
うつ
)
つて
仕組
(
しぐ
)
まれたのならば、
155
此
(
この
)
玉照姫
(
たまてるひめ
)
は
何時
(
いつ
)
宿
(
やど
)
つて、
156
何
(
なん
)
ケ
月目
(
げつめ
)
に
分娩
(
ぶんべん
)
したか、
157
又
(
また
)
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふ
方
(
かた
)
が
取上
(
とりあ
)
げて
下
(
くだ
)
さつたか
分
(
わか
)
つて
居
(
を
)
る
筈
(
はず
)
だ。
158
サアそれを
聞
(
き
)
かして
下
(
くだ
)
さい』
159
富彦
(
とみひこ
)
、
160
汗
(
あせ
)
をタラタラ
出
(
だ
)
し、
161
真青
(
まつさを
)
な
顔
(
かほ
)
をして、
162
富彦
『ヤア
大神
(
おほかみ
)
と
云
(
い
)
つたのは
実
(
じつ
)
は
眷属
(
けんぞく
)
だ。
163
……ケヽヽ
眷属
(
けんぞく
)
はモウ
引取
(
ひきと
)
る。
164
今度
(
こんど
)
は
本当
(
ほんたう
)
の
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
がお
憑
(
うつ
)
りなさるから、
165
御
(
ご
)
無礼
(
ぶれい
)
を
致
(
いた
)
してはならぬぞ。
166
ウーム』
167
と
言
(
い
)
つた
限
(
き
)
り、
168
パタリと
倒
(
たふ
)
れ、
169
又
(
また
)
もや
手
(
て
)
を
振
(
ふ
)
つて、
170
姿勢
(
ゐずまゐ
)
を
直
(
なほ
)
し、
171
富彦
『
今度
(
こんど
)
こそは
真正
(
ほんま
)
の
神
(
かみ
)
だ。
172
頭
(
あたま
)
が
高
(
たか
)
い、
173
下
(
さが
)
れ
下
(
さが
)
れ
下
(
さが
)
り
居
(
を
)
らう……』
174
豊彦
(
とよひこ
)
『ヘン、
175
又
(
また
)
かいな、
176
どうで
碌
(
ろく
)
な
神
(
かみ
)
ぢやあるまい。
177
大方
(
おほかた
)
羽
(
はね
)
の
無
(
な
)
い
天狗
(
てんぐ
)
か、
178
尾
(
を
)
の
無
(
な
)
い
狐
(
きつね
)
なんかだらう。
179
随分
(
ずゐぶん
)
此
(
この
)
暑
(
あつ
)
いのに、
180
そんな
芸当
(
げいたう
)
を
無報酬
(
むほうしう
)
でやつて
見
(
み
)
せて
下
(
くだ
)
さるのも
大抵
(
たいてい
)
ぢやない。
181
あんたは
慈悲心
(
じひしん
)
の
深
(
ふか
)
い
人
(
ひと
)
ぢや、
182
其
(
その
)
点
(
てん
)
丈
(
だけ
)
は
此
(
この
)
爺
(
ぢい
)
も
大
(
おほ
)
いに
感謝
(
かんしや
)
する。
183
今朝
(
けさ
)
も
二三
(
にさん
)
人
(
にん
)
参
(
まゐ
)
つて
来
(
き
)
よつたが、
184
お
前
(
まへ
)
の
様
(
やう
)
な
野天狗
(
のてんぐ
)
憑
(
つき
)
がやつて
来
(
き
)
て、
185
法螺
(
ほら
)
を
吹
(
ふ
)
くの
吹
(
ふ
)
かんのつて、
186
随分
(
ずゐぶん
)
面白
(
おもしろ
)
かつた。
187
お
前
(
まへ
)
もウラナイ
教
(
けう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
なら、
188
モ
一
(
ひと
)
つ
修業
(
しうげふ
)
をなされ。
189
其
(
その
)
様
(
やう
)
な
事
(
こと
)
で
衆生
(
しうじやう
)
済度
(
さいど
)
なぞとは、
190
思
(
おも
)
ひも
寄
(
よ
)
りませぬぞい』
191
富彦
(
とみひこ
)
『
大神
(
おほかみ
)
に
向
(
むか
)
つて
無礼
(
ぶれい
)
千万
(
せんばん
)
な、
192
其
(
その
)
方
(
はう
)
は
此
(
この
)
神
(
かみ
)
を
嘲弄
(
てうろう
)
致
(
いた
)
すか。
193
量見
(
りやうけん
)
ならぬぞ』
194
豊彦
(
とよひこ
)
『ハヽヽヽヽ、
195
此方
(
こつち
)
から
量見
(
りやうけん
)
ならぬ。
196
サア
一
(
ひと
)
つ
審神
(
さには
)
してやらう。
197
……
娘
(
むすめ
)
のお
玉
(
たま
)
の
妊娠
(
にんしん
)
の
日
(
ひ
)
は
何時
(
いつ
)
ぢや。
198
何
(
なん
)
ケ
月
(
げつ
)
孕
(
はら
)
んで
居
(
を
)
つた、
199
ハツキリ
云
(
い
)
うて
見
(
み
)
よ。
200
十月
(
とつき
)
位
(
くらゐ
)
で
出来
(
でき
)
た
様
(
やう
)
な
普通
(
ふつう
)
の
粗製
(
そせい
)
濫造品
(
らんざうひん
)
とはチツと
違
(
ちが
)
ふのだ。
201
特別
(
とくべつ
)
神界
(
しんかい
)
から
念
(
ねん
)
に
念
(
ねん
)
を
入
(
い
)
れて、
202
鍛錬
(
たんれん
)
に
鍛錬
(
たんれん
)
を
加
(
くは
)
へ
調製
(
てうせい
)
された
玉照姫
(
たまてるひめ
)
だよ。
203
サアサア
当
(
あ
)
てて
御覧
(
ごらん
)
なさい』
204
富彦
(
とみひこ
)
『
十二
(
じふに
)
ケ
月
(
げつ
)
だ。
205
間違
(
まちが
)
ひなからう。
206
此
(
この
)
お
玉
(
たま
)
は
牛
(
うし
)
の
綱
(
つな
)
を
跨
(
また
)
げたに
依
(
よ
)
つて、
207
十二
(
じふに
)
ケ
月
(
げつ
)
掛
(
かか
)
つたのぢや。
208
どうぢや
恐
(
おそ
)
れ
入
(
い
)
つたか』
209
豊彦
(
とよひこ
)
『アハヽヽヽ、
210
これ
富彦
(
とみひこ
)
さんとやら、
211
良
(
い
)
い
加減
(
かげん
)
に、
212
そんな
芸当
(
げいたう
)
はお
止
(
や
)
めなさい。
213
随分
(
ずゐぶん
)
エライ
汗
(
あせ
)
だ』
214
富彦
(
とみひこ
)
『
大神
(
おほかみ
)
は
折角
(
せつかく
)
結構
(
けつこう
)
な
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
うて
聞
(
き
)
かしてやらうと
思
(
おも
)
ひ、
215
因縁
(
いんねん
)
の
身魂
(
みたま
)
に
憑
(
うつ
)
つて
知
(
し
)
らしてやれ
共
(
ども
)
、
216
此
(
この
)
爺
(
ぢい
)
は
我
(
が
)
が
強
(
つよ
)
うて、
217
少
(
すこ
)
しも
改心
(
かいしん
)
致
(
いた
)
さぬから、
218
神
(
かみ
)
は
已
(
や
)
むを
得
(
え
)
ず、
219
帳
(
ちやう
)
を
切
(
き
)
つて
引取
(
ひきと
)
るより
仕方
(
しかた
)
はないぞよ。
220
後
(
あと
)
で
後悔
(
こうくわい
)
致
(
いた
)
さぬ
様
(
やう
)
に
気
(
き
)
を
付
(
つ
)
けて
置
(
お
)
くぞよ』
221
豊彦
(
とよひこ
)
『ヘエヘエ
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
んす。
222
お
狸
(
たぬき
)
さまか、
223
お
狐
(
きつね
)
さまか
知
(
し
)
らぬが、
224
斯
(
か
)
う
見
(
み
)
えても、
225
此
(
この
)
家
(
うち
)
は
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
立派
(
りつぱ
)
なお
宮
(
みや
)
だ。
226
エー
四足
(
よつあし
)
の
這入
(
はい
)
る
所
(
ところ
)
ぢやない。
227
穢
(
けが
)
らはしい、
228
出
(
で
)
て
下
(
くだ
)
さい、
229
玉照姫
(
たまてるひめ
)
様
(
さま
)
が
大変
(
たいへん
)
御
(
ご
)
機嫌
(
きげん
)
が
悪
(
わる
)
い。
230
サアサア
帰
(
い
)
なつしやい
帰
(
い
)
なつしやい』
231
と
箒
(
はうき
)
を
把
(
と
)
つて
掃
(
は
)
き
立
(
た
)
てる。
232
富彦
(
とみひこ
)
は
手持
(
てもち
)
無沙汰
(
ぶさた
)
に、
233
手拭
(
てぬぐひ
)
で
顔
(
かほ
)
を
拭
(
ふ
)
いて
居
(
ゐ
)
る。
234
寅若
(
とらわか
)
『オイ
爺
(
ぢい
)
さま、
235
あまりぢやないか。
236
人
(
ひと
)
を
埃
(
ほこり
)
か
何
(
なん
)
ぞの
様
(
やう
)
に、
237
箒
(
はうき
)
で
掃
(
は
)
き
出
(
だ
)
すと
云
(
い
)
ふ
法
(
はふ
)
があるか。
238
よい
年
(
とし
)
して
居
(
を
)
つて、
239
チツと
位
(
くらゐ
)
行儀
(
ぎやうぎ
)
作法
(
さはふ
)
を
心得
(
こころえ
)
たらどうだい』
240
豊彦
(
とよひこ
)
『エーエー
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
宮
(
みや
)
の
中
(
なか
)
へ、
241
ノコノコ
這入
(
はい
)
つて
来
(
く
)
る
四足
(
よつあし
)
に、
242
行儀
(
ぎやうぎ
)
も
何
(
なに
)
も
要
(
い
)
るものかい、
243
行儀
(
ぎやうぎ
)
と
云
(
い
)
ふものは
人間
(
にんげん
)
同士
(
どうし
)
、
244
又
(
また
)
は
人間
(
にんげん
)
か、
245
より
以上
(
いじやう
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
対
(
たい
)
してこそ
必要
(
ひつえう
)
だ。
246
グヅグヅ
吐
(
ぬか
)
すと、
247
此
(
この
)
箒
(
はうき
)
が
頭
(
あたま
)
の
上
(
うへ
)
まで
参
(
まゐ
)
るぞ』
248
菊若
(
きくわか
)
は
爺
(
ぢい
)
の
振
(
ふ
)
り
上
(
あ
)
げた
箒
(
はうき
)
をクワツと
掴
(
つか
)
み、
249
菊若
(
きくわか
)
『モシモシお
爺
(
ぢい
)
さま、
250
お
静
(
しづ
)
まり
下
(
くだ
)
さい。
251
短気
(
たんき
)
は
損気
(
そんき
)
だ。
252
さうお
前
(
まへ
)
の
様
(
やう
)
に
神懸
(
かむがかり
)
を
けなし
ては
話
(
はなし
)
が
出来
(
でき
)
ぬ。
253
マア
静
(
しづ
)
まつた
静
(
しづ
)
まつた』
254
豊彦
(
とよひこ
)
『お
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
に
説教
(
せつけう
)
を
聴
(
き
)
く
耳
(
みみ
)
持
(
も
)
たぬ。
255
斯
(
か
)
う
見
(
み
)
えても、
256
此
(
この
)
豊彦
(
とよひこ
)
は
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
神徳
(
しんとく
)
を
頂
(
いただ
)
いて、
257
何処
(
どこ
)
の
教
(
をしへ
)
にもつかず、
258
独立
(
どくりつ
)
独歩
(
どくぽ
)
で、
259
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
直接
(
ちよくせつ
)
の
御用
(
ごよう
)
を
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
るのだ。
260
人
(
ひと
)
を
助
(
たす
)
けるのは
神
(
かみ
)
の
道
(
みち
)
だから、
261
お
前
(
まへ
)
さへ
改心
(
かいしん
)
して、
262
低
(
ひく
)
うなつて
来
(
く
)
れば、
263
どんな
結構
(
けつこう
)
な
事
(
こと
)
でも
教
(
をし
)
へてやるが、
264
そんな
態度
(
たいど
)
では
一息
(
ひといき
)
の
間
(
ま
)
も
置
(
お
)
く
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ぬ。
265
サアサア
帰
(
かへ
)
つた
帰
(
かへ
)
つた』
266
お
玉
(
たま
)
『お
爺
(
ぢい
)
さま、
267
あまり
酷
(
ひど
)
い
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
はぬが
宜
(
よろ
)
しい』
268
豊彦
(
とよひこ
)
『コレコレお
玉
(
たま
)
、
269
お
前
(
まへ
)
は
黙
(
だま
)
つて
居
(
ゐ
)
なさい。
270
又
(
また
)
こんな
奴
(
やつ
)
に
因縁
(
いんねん
)
を
附
(
つ
)
けられては
煩雑
(
うるさ
)
いから……』
271
寅若
(
とらわか
)
『ヤアお
玉
(
たま
)
さま、
272
話
(
はな
)
せる、
273
さうなくては
女
(
をんな
)
ではない。
274
ヤツパリ
社交界
(
しやかうかい
)
の
花
(
はな
)
は
女
(
をんな
)
だ。
275
挨拶
(
あいさつ
)
は
時
(
とき
)
の
氏神
(
うぢがみ
)
、
276
そこを
巧
(
うま
)
く
斡旋
(
あつせん
)
の
労
(
らう
)
を
取
(
と
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
277
お
前
(
まへ
)
さま
所
(
ところ
)
の
床
(
ゆか
)
の
置物
(
おきもの
)
を
御覧
(
ごらん
)
なされ。
278
私
(
わたくし
)
等
(
ら
)
が
此処
(
ここ
)
の
門
(
もん
)
を
潜
(
くぐ
)
るや
否
(
いな
)
や、
279
能
(
よ
)
うお
出
(
いで
)
やす……と
云
(
い
)
つて、
280
あの
長
(
なが
)
い
頭
(
あたま
)
をうちつけて、
281
福禄寿
(
げほう
)
の
像
(
ざう
)
が
叮嚀
(
ていねい
)
に
挨拶
(
あいさつ
)
をして
居
(
を
)
るぢやないか。
282
あんな
無心
(
むしん
)
の
福禄寿
(
げほう
)
さまでも、
283
吾々
(
われわれ
)
の
御
(
ご
)
威勢
(
ゐせい
)
には……いや
神格
(
しんかく
)
には
感応
(
かんのう
)
して、
284
畏
(
かしこ
)
まつて
御座
(
ござ
)
る。
285
それに
此
(
この
)
お
爺
(
ぢい
)
さまはあまり
剛情
(
がうじやう
)
が
過
(
す
)
ぎる。
286
私
(
わたし
)
達
(
たち
)
が
言
(
い
)
つても、
287
中々
(
なかなか
)
年寄
(
としよ
)
りの
片意地
(
かたいぢ
)
で
諾
(
き
)
かつしやるまいから……
娘
(
むすめ
)
にかけたら
目
(
め
)
も
鼻
(
はな
)
も
無
(
な
)
い
爺
(
おやぢ
)
さまに、
288
お
玉
(
たま
)
さまからトツクリと
気
(
き
)
の
軟
(
やは
)
らぐ
様
(
やう
)
に
言
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さい』
289
お
玉
(
たま
)
『ホヽヽヽヽ』
290
豊彦
(
とよひこ
)
『エー
帰
(
い
)
ねと
言
(
い
)
つたら
帰
(
い
)
なぬか』
291
と
床
(
ゆか
)
が
落
(
お
)
ちる
程
(
ほど
)
四股
(
しこ
)
を
踏
(
ふ
)
む。
292
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は、
293
三人
『エーお
爺
(
ぢい
)
さま、
294
又
(
また
)
お
目
(
め
)
にかかります。
295
今日
(
けふ
)
は
大変
(
たいへん
)
天候
(
てんこう
)
が
悪
(
わる
)
いから……
又
(
また
)
日和
(
ひより
)
を
考
(
かんが
)
へてお
邪魔
(
じやま
)
に
参
(
まゐ
)
ります』
296
豊彦
(
とよひこ
)
『エーグヅグヅ
言
(
い
)
はずに、
297
早
(
はや
)
く
帰
(
い
)
んで
呉
(
く
)
れ、
298
玉照姫
(
たまてるひめ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
機嫌
(
きげん
)
が
悪
(
わる
)
くなると
困
(
こま
)
るから……オイ
婆
(
ば
)
ア、
299
塩
(
しほ
)
持
(
も
)
つて
来
(
こ
)
い。
300
そこらを
一
(
ひと
)
つ
浄
(
きよ
)
めないと、
301
何
(
なん
)
だか
四足
(
よつあし
)
の
香
(
にほひ
)
がして
仕方
(
しかた
)
がないワ、
302
アハヽヽヽ』
303
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
突出
(
つきだ
)
される
様
(
やう
)
に
怪訝
(
けげん
)
な
顔
(
かほ
)
して
此
(
この
)
家
(
や
)
を
立出
(
たちい
)
で、
304
スタスタと
弥仙山
(
みせんざん
)
の
急坂
(
きふはん
)
にさしかかる。
305
菊若
(
きくわか
)
『オイ
此処
(
ここ
)
らで
一
(
ひと
)
つ、
306
一服
(
いつぷく
)
しやうぢやないか』
307
寅若
(
とらわか
)
『あまり
怪体
(
けつたい
)
が
悪
(
わる
)
くつて、
308
黒姫
(
くろひめ
)
さまに
会
(
あ
)
はす
顔
(
かほ
)
がない。
309
休
(
やす
)
む
気
(
き
)
にもならぬぢやないか。
310
そこらの
蝶々
(
てふてふ
)
や
糞蛙
(
くそがへる
)
まで、
311
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
の
顔
(
かほ
)
を
見
(
み
)
て、
312
馬鹿
(
ばか
)
にして
居
(
ゐ
)
やがる
様
(
やう
)
な
心持
(
こころもち
)
がする。
313
どつか、
314
蛙
(
かへる
)
や
蝶
(
てふ
)
の
居
(
を
)
らぬ
所
(
ところ
)
へ
行
(
い
)
つて
一服
(
いつぷく
)
しやうかい』
315
と
胸突坂
(
むなつきざか
)
を
後
(
あと
)
から
追手
(
おつて
)
にでも
追
(
お
)
ひかけられる
様
(
やう
)
な、
316
慌
(
あは
)
てた
姿
(
すがた
)
で、
317
三本桧
(
さんぼんひのき
)
の
麓
(
ふもと
)
までやつて
来
(
き
)
た。
318
三人
『アヽ
此処
(
ここ
)
に
良
(
い
)
い
休息所
(
きうそくしよ
)
がある。
319
清水
(
しみづ
)
も
湧
(
わ
)
いて
居
(
を
)
る。
320
水
(
みづ
)
でも
飲
(
の
)
んで、
321
ゆつくりと
第二
(
だいに
)
の
作戦
(
さくせん
)
計画
(
けいくわく
)
に
着手
(
ちやくしゆ
)
する
事
(
こと
)
としやうかい』
322
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
樹下
(
じゆか
)
に
涼風
(
すずかぜ
)
を
入
(
い
)
れ
乍
(
なが
)
ら、
323
雑談
(
ざつだん
)
に
時
(
とき
)
を
移
(
うつ
)
した。
324
菊若
(
きくわか
)
『これ
程
(
ほど
)
名高
(
なだか
)
くなつた
豊彦
(
とよひこ
)
と
云
(
い
)
ふ
爺
(
ぢい
)
も、
325
あの
玉照姫
(
たまてるひめ
)
と
云
(
い
)
ふ
赤
(
あか
)
ん
坊
(
ばう
)
が
出来
(
でき
)
て、
326
それがイロイロの
事
(
こと
)
を
知
(
し
)
らすと
云
(
い
)
ふのが
呼
(
よ
)
びものになつて、
327
毎日
(
まいにち
)
日日
(
ひにち
)
、
328
桃李
(
たうり
)
物
(
もの
)
言
(
い
)
はずして
小径
(
せうけい
)
をなす
様
(
やう
)
に、
329
あちらこちらから、
330
信者
(
しんじや
)
が
集
(
あつ
)
まるのだ。
331
黒姫
(
くろひめ
)
さまが
毎朝
(
まいあさ
)
起
(
お
)
きて、
332
行水
(
ぎやうずゐ
)
をなさると
東
(
ひがし
)
の
天
(
てん
)
に
当
(
あた
)
つて
紫
(
むらさき
)
の
雲
(
くも
)
が
靉靆
(
たなび
)
くから、
333
何
(
なん
)
でも
弥仙山
(
みせんざん
)
の
方面
(
はうめん
)
に
違
(
ちが
)
ひないから
一遍
(
いつぺん
)
偵察
(
ていさつ
)
に
行
(
い
)
て
来
(
こ
)
いと
言
(
い
)
はれ、
334
此
(
この
)
間
(
あひだ
)
、
335
俺
(
おれ
)
一人
(
ひとり
)
此
(
この
)
山麓
(
さんろく
)
まで
来
(
き
)
て
見
(
み
)
ると、
336
大変
(
たいへん
)
な
人気
(
にんき
)
だ。
337
紫
(
むらさき
)
の
雲
(
くも
)
の
出所
(
でどころ
)
は、
338
どうしても、
339
あの
茅屋
(
あばらや
)
に
間違
(
まちが
)
ひない。
340
そして
毎晩
(
まいばん
)
東
(
ひがし
)
の
天
(
てん
)
に
当
(
あた
)
つて
大変
(
たいへん
)
な
綺麗
(
きれい
)
な
星
(
ほし
)
が
輝
(
かがや
)
き
始
(
はじ
)
めた。
341
偉人
(
ゐじん
)
の
出現
(
しゆつげん
)
には、
342
キツと
天
(
てん
)
に
明星
(
みやうぜう
)
が
現
(
あら
)
はれると
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
だが、
343
テツキリそれに
間違
(
まちがひ
)
ないと、
344
直
(
ただち
)
に
立帰
(
たちかへ
)
つて
報告
(
はうこく
)
をした
所
(
ところ
)
、
345
黒姫
(
くろひめ
)
さまは……「マア
待
(
ま
)
て、
346
一
(
いつ
)
週間
(
しうかん
)
水行
(
すゐぎやう
)
をして、
347
ハツキリと
神勅
(
しんちよく
)
を
受
(
う
)
ける」と
仰有
(
おつしや
)
つて、
348
夜
(
よる
)
、
349
丑
(
うし
)
の
刻
(
こく
)
から
起
(
お
)
き
出
(
い
)
でて、
350
皆
(
みな
)
の
知
(
し
)
らぬ
間
(
ま
)
に、
351
何百杯
(
なんびやくぱい
)
とも
知
(
し
)
れぬ
水行
(
すゐぎやう
)
を
遊
(
あそ
)
ばした
結果
(
けつくわ
)
、
352
イヨイヨそれに
間違
(
まちがひ
)
ない。
353
グツグツして
居
(
ゐ
)
ると、
354
三五教
(
あななひけう
)
の
奴
(
やつ
)
に
取
(
と
)
られて
了
(
しま
)
ふから、
355
お
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
早
(
はや
)
く
外
(
ほか
)
の
者
(
もの
)
に
秘密
(
ひみつ
)
で、
356
其
(
その
)
子供
(
こども
)
を
貰
(
もら
)
つて
来
(
こ
)
い……との
御
(
おん
)
仰
(
あふ
)
せ、
357
あんな
茅屋
(
あばらや
)
の
娘
(
むすめ
)
、
358
二
(
ふた
)
つ
返事
(
へんじ
)
でウラナイ
教
(
けう
)
に、
359
熨斗
(
のし
)
を
付
(
つ
)
けて
献上
(
けんじやう
)
するかと
思
(
おも
)
ひきや、
360
今日
(
けふ
)
の
鼻息
(
はないき
)
、
361
到底
(
たうてい
)
一通
(
ひととほ
)
りや
二通
(
ふたとほり
)
りでは、
362
梃子
(
てこ
)
に
合
(
あ
)
はぬ。
363
それに
寅若
(
とらわか
)
の
先生
(
せんせい
)
、
364
最初
(
さいしよ
)
からヘマな
神懸
(
かむがか
)
り
[
※
三版・御校正本・愛世版では「神懸り」、校定版では「神憑り」。
]
を
行
(
や
)
つて
爺
(
おやぢ
)
に
睨
(
にら
)
まれ、
365
第二線
(
だいにせん
)
として
現
(
あら
)
はれた
富彦
(
とみひこ
)
は、
366
老爺
(
ぢぢい
)
の
審神
(
さには
)
に
睨
(
にら
)
まれ、
367
ヨロヨロと
受太刀
(
うけだち
)
になり……これはヤツパリ
野天狗
(
のてんぐ
)
で
御座
(
ござ
)
いました……と
出直
(
でなほ
)
した
所
(
ところ
)
は
巧
(
うま
)
いものだが、
368
今度
(
こんど
)
又
(
また
)
大神
(
おほかみ
)
と、
369
太
(
ふと
)
う
出
(
で
)
やがつて、
370
零敗
(
ゼロはい
)
を
喰
(
く
)
はされ、
371
最早
(
もはや
)
回復
(
くわいふく
)
の
見込
(
みこ
)
みなく、
372
終局
(
しまひ
)
の
果
(
は
)
てにや、
373
箒
(
ほうき
)
で
掃出
(
はきだ
)
された
無態
(
ぶざま
)
さ……
斯
(
こ
)
んな
事
(
こと
)
を、
374
怪我
(
けが
)
の
端
(
はし
)
にでも、
375
黒姫
(
くろひめ
)
さまや
外
(
ほか
)
の
連中
(
れんちう
)
に
聞
(
き
)
かれようものなら、
376
馬鹿
(
ばか
)
らしくつて、
377
外
(
そと
)
も
歩
(
ある
)
けやしない。
378
何
(
なん
)
とか
一
(
ひと
)
つ
智慧
(
ちゑ
)
を
絞
(
しぼ
)
り
出
(
だ
)
して、
379
会稽
(
くわいけい
)
の
恥
(
はぢ
)
を
雪
(
すす
)
がねばなるまい。
380
何
(
なん
)
ぞよい
考
(
かんが
)
へはなからうか』
381
寅若
(
とらわか
)
『
別
(
べつ
)
に
方法
(
はうはふ
)
手段
(
しゆだん
)
もないが、
382
先
(
ま
)
づ
梅公
(
うめこう
)
式
(
しき
)
だなア。
383
それが
最後
(
さいご
)
の
手段
(
しゆだん
)
だ』
384
富彦
(
とみひこ
)
『
梅公
(
うめこう
)
式
(
しき
)
を
行
(
や
)
り
損
(
そこ
)
なうと、
385
滝板
(
たきいた
)
式
(
しき
)
になり、
386
終局
(
しまひ
)
におつ
放
(
ぽ
)
り
出
(
だ
)
されにやならぬ
様
(
やう
)
な
事
(
こと
)
になると
大変
(
たいへん
)
だ。
387
此奴
(
こいつ
)
ア
一
(
ひと
)
つ、
388
熟思
(
じゆくし
)
熟考
(
じゆくかう
)
の
余地
(
よち
)
は
充分
(
じゆうぶん
)
に
存
(
そん
)
するぞ』
389
寅若
(
とらわか
)
『ナーニ、
390
目的
(
もくてき
)
は
手段
(
しゆだん
)
を
選
(
えら
)
ばずだ。
391
善
(
ぜん
)
の
為
(
ため
)
にするのだから、
392
別
(
べつ
)
に
罪
(
つみ
)
になると
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
もあるまい。
393
一
(
ひと
)
つ
決行
(
けつかう
)
しやうぢやないか』
394
菊若
(
きくわか
)
『アヽ
結構
(
けつこう
)
々々
(
けつこう
)
、
395
結構
(
けつこう
)
毛
(
け
)
だらけ、
396
猫
(
ねこ
)
灰
(
はい
)
だらけだ。
397
弥仙山
(
みせんざん
)
の
大神
(
おほかみ
)
さまは、
398
猫
(
ねこ
)
が
使者
(
つかはしめ
)
だと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
だ、
399
何
(
なん
)
でも
今度
(
こんど
)
は
猫
(
ねこ
)
を
被
(
かぶ
)
つて、
400
梅滝流
(
うめたきりう
)
を
行
(
や
)
らうぢやないか』
401
富彦
(
とみひこ
)
『
梅滝流
(
うめたきりう
)
とはソラ
何
(
なん
)
だ』
402
菊若
(
きくわか
)
『
其
(
その
)
正中
(
まんなか
)
を
行
(
ゆ
)
くのだ。
403
普甲峠
(
ふかふたうげ
)
の
梅公
(
うめこう
)
の
行
(
や
)
り
口
(
くち
)
は、
404
味方
(
みかた
)
八
(
はち
)
人
(
にん
)
も
居
(
を
)
つたものだから、
405
大変
(
たいへん
)
に
都合
(
つがふ
)
が
好
(
よ
)
かつた。
406
船岡山
(
ふなをかやま
)
の
近所
(
きんじよ
)
で
行
(
や
)
つた
滝板
(
たきいた
)
の
芝居
(
しばゐ
)
は、
407
何分
(
なにぶん
)
役者
(
やくしや
)
が
少
(
すくな
)
いものだから、
408
バレて
了
(
しま
)
つたのだよ。
409
併
(
しか
)
し
吾々
(
われわれ
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
では、
410
どうする
事
(
こと
)
も
出来
(
でき
)
ぬぢやないか、
411
三
(
さん
)
人
(
にん
)
寄
(
よ
)
れば
文珠
(
もんじゆ
)
の
智慧
(
ちゑ
)
と
云
(
い
)
つても、
412
程
(
ほど
)
よい
考案
(
かうあん
)
が
浮
(
うか
)
んで
来
(
こ
)
ない。
413
ハテ
困
(
こま
)
つた
事
(
こと
)
だなア』
414
寅若
(
とらわか
)
『
噂
(
うはさ
)
に
聞
(
き
)
けば、
415
明日
(
あす
)
はお
玉
(
たま
)
が
七十五
(
しちじふご
)
日
(
にち
)
の
忌明
(
いみあけ
)
で、
416
弥仙山
(
みせんざん
)
へお
参
(
まゐ
)
りするさうだ。
417
どうぢや。
418
吾々
(
われわれ
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
一
(
ひと
)
つ、
419
体
(
からだ
)
一面
(
いちめん
)
に
日蔭葛
(
ひかげかづら
)
でも
被
(
かぶ
)
つて、
420
お
玉
(
たま
)
の
参詣路
(
さんけいみち
)
を
脅
(
おびや
)
かし、
421
グツと
括
(
くく
)
つて
猿轡
(
さるぐつわ
)
を
箝
(
は
)
め、
422
山伝
(
やまづた
)
ひに
連
(
つ
)
れ
帰
(
かへ
)
り、
423
さうして
外
(
ほか
)
の
連中
(
れんちう
)
を
爺
(
ぢぢ
)
の
家
(
うち
)
へ
差
(
さ
)
し
向
(
む
)
け、
424
「お
前
(
まへ
)
さまの
家
(
うち
)
は、
425
大事
(
だいじ
)
のお
玉
(
たま
)
さまを
悪者
(
わるもの
)
の
為
(
ため
)
に
拐
(
かどは
)
かされたさうぢや。
426
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
なが、
427
何
(
なん
)
と
吾々
(
われわれ
)
が
力
(
ちから
)
一杯
(
いつぱい
)
骨
(
ほね
)
を
折
(
お
)
つて
探
(
さが
)
して
来
(
く
)
るから、
428
其
(
その
)
褒美
(
ほうび
)
に
玉照姫
(
たまてるひめ
)
さまを、
429
三日
(
みつか
)
でも、
430
四日
(
よつか
)
でもよいから、
431
貸
(
か
)
して
下
(
くだ
)
さらぬか」……と
云
(
い
)
つて、
432
チヨロまかすより
外
(
ほか
)
に
途
(
みち
)
は
有
(
あ
)
るまい、
433
どうだ
賛成
(
さんせい
)
かなア』
434
菊若、富彦
『ヤアあまり
名案
(
めいあん
)
でもないが、
435
斯
(
か
)
うなれば
仕方
(
しかた
)
が
無
(
な
)
い。
436
マアそれ
位
(
くらゐ
)
な
事
(
こと
)
で
辛抱
(
しんばう
)
しやうかい。
437
併
(
しか
)
し
巧
(
うま
)
くいかうかな』
438
寅若
『
何
(
なに
)
は
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
一遍
(
いつぺん
)
都合
(
つがふ
)
よくいく
様
(
やう
)
に、
439
お
空
(
そら
)
の
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
へ
参拝
(
さんぱい
)
をして
来
(
こ
)
う。
440
今晩中
(
こんばんぢう
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
が
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に、
441
木花姫
(
このはなひめ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
分霊
(
ぶんれい
)
の
前
(
まへ
)
で、
442
祈
(
いの
)
つて
祈
(
いの
)
つて
祈
(
いの
)
り
倒
(
たふ
)
すのだ、
443
さうすれば
神
(
かみ
)
さまだつて……
終局
(
しまひ
)
にや
五月蠅
(
うるさ
)
いから……エー
仕方
(
しかた
)
がない、
444
一遍
(
いつぺん
)
は
諾
(
き
)
いてやらう……と
仰有
(
おつしや
)
るに
違
(
ちが
)
ひない。
445
さうでなくちや、
446
どうしてウラナイ
教
(
けう
)
へ
帰
(
かへ
)
る
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ようか。
447
青彦
(
あをひこ
)
さまや、
448
紫姫
(
むらさきひめ
)
さまに
恥
(
はづ
)
かしいぞ』
449
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
450
山上
(
さんじやう
)
目蒐
(
めが
)
けて
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
451
一夜
(
いちや
)
は
頂上
(
ちやうじやう
)
の
社前
(
しやぜん
)
に
夜
(
よ
)
を
明
(
あ
)
かし、
452
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
願望
(
ぐわんばう
)
成就
(
じやうじゆ
)
の
祈願
(
きぐわん
)
を
凝
(
こ
)
らし
居
(
ゐ
)
る。
453
果
(
はた
)
して
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
は
御
(
ご
)
聴許
(
ちやうきよ
)
遊
(
あそ
)
ばすであらうか。
454
(
大正一一・四・二八
旧四・二
松村真澄
録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
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(B)
(N)
救の神 >>>
霊界物語
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如意宝珠(第13~24巻)
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第18巻(巳の巻)
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