霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一二章 大当(おほあて)違(ちがひ)〔六四〇〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第18巻 如意宝珠 巳の巻 篇:第4篇 舎身活躍 よみ(新仮名遣い):しゃしんかつやく
章:第12章 大当違 よみ(新仮名遣い):おおあてちがい 通し章番号:640
口述日:1922(大正11)年04月28日(旧04月02日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年2月10日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
黒姫から、玉照姫をウラナイ教に向かえるようにと命令を受けた、富彦、寅若、菊若、の三人は、豊彦の家へやってきた。三人は弥仙山の神のお告げだと偽って、豊彦を説得しようとする。
しかしのっけから、豊彦のあばら家を馬鹿にした発現をし、豊彦の不興を買う。三人は偽の神懸りをするが、豊彦に見破られて追い出されてしまう。
三人は作戦を練り、明日お玉が七十五日の忌明けのお参りに弥仙山に登る際に誘拐し、自分たちが助け出したように見せかけて、豊彦に取り入ることにした。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2022-10-15 00:51:35 文字数:5809 OBC :rm1812
愛善世界社版:202頁 八幡書店版:第3輯 712頁 修補版: 校定版:209頁 普及版:92頁 初版: ページ備考:
001月(つき)傾(かたむ)いて山(やま)を慕(した)ひ
002人(ひと)老(おい)て妄(みだ)りに道(みち)を説(と)くとかや
003弥仙(みせん)の山(やま)の麓(ふもと)なる
004賤(しづ)が伏家(ふせや)の豊彦(とよひこ)は
005三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)
006悦子(よしこ)の姫(ひめ)の一行(いつかう)に
007娘(むすめ)のお玉(たま)を助(たす)けられ
008世(よ)にも優(すぐ)れし初孫(うひまご)の
009顔(かほ)を眺(なが)めて老夫婦(らうふうふ)
010蝶(てふ)よ花(はな)よと労(いた)はりつ
011神(かみ)の教(をしへ)を説(と)き諭(さと)す
012此(この)事(こと)四方(よも)に何時(いつ)となく
013風(かぜ)のまにまに伝(つた)はりて
014於与岐(およぎ)の郷(さと)の爺(ぢい)さまは
015弥仙(みせん)の山(やま)と諸共(もろとも)に
016其(その)名(な)も高(たか)くなりにける
017老若(らうにやく)男女(なんによ)は絡繹(らくえき)と
018蟻(あり)の甘(うま)きに集(つど)ふが如(ごと)く
019豊彦(とよひこ)老爺(らうや)の教示(けうじ)をば
020神(かみ)の如(ごと)くに敬(うやま)ひて
021昼(ひる)は終日(ひねもす)夜(よ)は終夜(よもすがら)
022救(すく)ひを求(もと)めて詣(まゐ)り来(く)る。
023 中(なか)に目立(めだ)つて三(さん)人(にん)の大男(おほをとこ)、024宣伝使(せんでんし)の服(ふく)を着(つ)けながら、
025男(をとこ)『御免(ごめん)なさいませ。026私(わたし)は富彦(とみひこ)、027寅若(とらわか)、028菊若(きくわか)と申(まを)す者(もの)、029此(この)度(たび)弥仙山(みせんざん)のお宮(みや)に参拝(さんぱい)を致(いた)し、030神勅(しんちよく)に依(よ)りて承(うけたま)はれば、031此(この)山麓(さんろく)の一(ひと)つ家(や)に豊彦(とよひこ)と云(い)ふ方(かた)現(あら)はれ、032誠(まこと)の教(をしへ)を伝(つた)ふる故(ゆゑ)、033汝(なんぢ)等(ら)三(さん)人(にん)は帰路(きろ)に立寄(たちよ)り、034彼(か)れ豊彦(とよひこ)をウラナイ教(けう)に誘(いざな)ひ帰(かへ)れ、035娘(むすめ)のお玉(たま)及(およ)び今度(こんど)生(うま)れた玉照姫(たまてるひめ)を本山(ほんざん)に迎(むか)ひ帰(かへ)れ……との、036有(あ)り有(あ)りとの御(おん)神示(しめし)、037神(かみ)様(さま)のお言葉(ことば)は疑(うたが)はれずと、038弥仙(みせん)の山麓(さんろく)を彼方(あちら)此方(こちら)と探(さが)す内(うち)、039道(みち)行(ゆ)く人(ひと)に承(うけたま)はれば於与岐(およぎ)の森(もり)の彼方(あなた)の一(ひと)つ家(や)こそ、040豊彦(とよひこ)さまの住宅(ぢうたく)と聞(き)いた故(ゆゑ)、041御(ご)神勅(しんちよく)により出張(しゆつちやう)仕(つかまつ)りました』
042と門口(かどぐち)に立(た)つた儘(まま)呶鳴(どな)つて居(ゐ)る。043幸(さいは)ひ今日(けふ)は参詣者(さんけいしや)もなく、044老夫婦(らうふうふ)と娘(むすめ)、045孫(まご)の四(よ)人(にん)、046弥仙(みせん)の神霊(しんれい)を祀(まつ)りたる霊前(れいぜん)に、047拝跪(はいき)黙祷(もくたう)する最中(さいちう)であつた。048豊彦(とよひこ)は拝礼(はいれい)を終(を)へ、049門口(かどぐち)近(ちか)く進(すす)み来(きた)り、
050豊彦(とよひこ)『どなたか知(し)らぬが、051門口(かどぐち)に何(なに)か尋(たづ)ぬる人(ひと)が有(あ)るらしい、052何(いづ)れの方(かた)か、053先(ま)づ戸(と)を開(あ)けてお這入(はい)りなされませ』
054寅若(とらわか)『ハイ有難(ありがた)う』
055と斜交(はすかひ)になつた雨戸(あまど)をガラリと開(あ)け、
056寅若(とらわか)『ヤア随分(ずゐぶん)立派(りつぱ)な家(うち)だなア……オイ富彦(とみひこ)、057菊若(きくわか)、058這入(はい)れ、059……汚(きたな)い家(うち)に不似合(ふにあひ)な綺麗(きれい)な娘(むすめ)さまが御座(ござ)るなア、060下水(せせなぎ)に咲(さ)いた杜若(かきつばた)と云(い)はうか、061谷底(たにそこ)の山桜(やまざくら)、062これはどつか良(い)い所(ところ)へ植替(うゑか)へたならば、063随分(ずゐぶん)立派(りつぱ)な者(もの)になるだろう』
064豊彦(とよひこ)『コレコレお前(まへ)さまの仰有(おつしや)る通(とほ)りムサ苦(くる)しい茅屋(あばらや)なれど、065これでも私(わたし)の唯一(ゆゐいつ)の休養場(きうやうば)ぢや、066……あまり失礼(しつれい)ぢやありませぬか』
067と足音(あしおと)荒(あら)く、068破(やぶ)れ畳(だたみ)を威喝(ゐかつ)し乍(なが)ら、069上(あが)り口(ぐち)に下(お)りて来(き)て、070ジロジロと三(さん)人(にん)の顔(かほ)を睨(にら)みつけて居(ゐ)る。
071寅若(とらわか)『ヤアこれはお爺(ぢい)さま、072誠(まこと)に失言(しつげん)を致(いた)しました。073決(けつ)して悪(わる)く申(まを)したのぢや御座(ござ)いませぬ。074少(すこ)しも飾(かざ)りのない、075正直(しやうぢき)正銘(しやうめい)な、076心(こころ)に映(えい)じた儘(まま)を申上(まをしあ)げたのだから、077お悪(わる)く思(おも)つて下(くだ)さいますな、078歪(ゆが)みかかつた家(いへ)を、079立派(りつぱ)な家(いへ)だと云(い)つた方(はう)が却(かへ)つて嘲弄(てうろう)した事(こと)になりませう。080お多福(かめ)を掴(つか)まへて、081お前(まへ)は別嬪(べつぴん)だと言(い)へば、082お多福(かめ)は馬鹿(ばか)にしたと言(い)つて怒(おこ)る様(やう)なもので、083兎(と)も角(かく)も神(かみ)の道(みち)に仕(つか)へて居(ゐ)る者(もの)は、084チツとも斟酌(しんしやく)とか巧言(じやうず)とかが有(あ)りませぬ、085お気(き)に障(さは)りましたら、086どうぞ宥(ゆる)して下(くだ)さいませ』
087豊彦(とよひこ)『ソレヤお前(まへ)の言(い)ふ通(とほ)りぢやが、088併(しか)し碌(ろく)に挨拶(あいさつ)もせないで、089イキナリ吾々(われわれ)の住宅(ぢうたく)を非難(ひなん)すると云(い)ふのは、090あまり此方(こつち)も気(き)の良(よ)いものぢやない。091お前(まへ)も宣伝使(せんでんし)だと仰有(おつしや)つたが、092斯(か)う云(い)うたら人(ひと)が感情(かんじやう)を害(がい)するか、093害(がい)せないか位(くらゐ)は分(わか)りさうなものだなア』
094寅若(とらわか)『只今(ただいま)申(まを)したのは決(けつ)して寅若(とらわか)では有(あ)りませぬ。095弥仙山(みせんざん)に鎮(しづ)まります大神(おほかみ)の眷属(けんぞく)、096寅若(とらわか)天狗(てんぐ)が言(い)つたのです。097天狗(てんぐ)と云(い)ふ奴(やつ)は世(よ)に落(お)ちぶれて、098神(かみ)様(さま)の下働(したばたら)きばつかりやつて居(ゐ)ますから、099行儀(ぎやうぎ)も無(な)ければ、100作法(さはふ)も知(し)らず、101酒(さけ)呑(の)みの極道(ごくだう)天狗(てんぐ)もあり、102どうぞお赦(ゆる)し下(くだ)さいませ。103何分(なにぶん)身魂(みたま)が研(みが)け過(す)ぎて居(を)るものだから、104感(かん)じ易(やす)うて直(すぐ)に憑(うつ)られて困(こま)ります、105アハヽヽヽ』
106豊彦(とよひこ)『さうして御(ご)神勅(しんちよく)の趣(おもむき)はどう云(い)ふ事(こと)だ、107早(はや)く聞(き)かして貰(もら)ひませう』
108寅若(とらわか)『御存(ごぞん)じの通(とほ)り、109私(わたくし)はあまり素直(すなほ)な身魂(みたま)で、110種々(いろいろ)の神(かみ)が憑依(ひようい)致(いた)しますから、111余程(よほど)審神(さには)をせねばなりませぬが、112此(この)富彦(とみひこ)と云(い)ふ宣伝使(せんでんし)は、113それはそれは立派(りつぱ)な者(もの)で御座(ござ)います。114実(じつ)は富彦(とみひこ)に御(ご)神勅(しんちよく)が有(あ)つたのです。115サア富彦(とみひこ)さま、116御(ご)神勅(しんちよく)の次第(しだい)をお爺(ぢい)さまにお知(し)らせなされ』
117 富彦(とみひこ)、118両手(りやうて)を組(く)み、119威丈高(ゐたけだか)になり、
120富彦(とみひこ)『コヽヽ此(この)方(はう)は、121弥仙山(みせんざん)に守護(しゆご)致(いた)す木花(このはな)咲耶姫(さくやひめ)であるぞよ。122此(この)度(たび)汝(なんぢ)が家(うち)に、123木花姫(このはなひめ)の御霊(みたま)、124玉照姫(たまてるひめ)を遣(つか)はしたのは、125深(ふか)き仕組(しぐみ)の有(あ)る事(こと)ぢや、126何事(なにごと)も皆(みな)神(かみ)からさせられて居(を)るのだから、127吾(わが)子(こ)であつて、128吾(わが)子(こ)ではないぞよ。129体内(たいない)に宿(やど)つて十(じつ)ケ月目(げつめ)に生(うま)れ出(い)でたる此(この)玉照姫(たまてるひめ)は、130神(かみ)のお役(やく)に立(た)てる為(ため)に、131昔(むかし)から因縁(いんねん)の身魂(みたま)を探(さが)して、132其(その)方(はう)が娘(むすめ)に御用(ごよう)をさせたのであるぞよ。133サア是(こ)れからは其(その)玉照姫(たまてるひめ)を神(かみ)の御用(ごよう)に立(た)てるが良(よ)いぞよ。134神(かみ)の申(まを)す事(こと)を諾(き)かねば諾(き)く様(やう)に致(いた)して諾(き)かしてやるぞよ。135返答(へんたふ)はどうぢや、136豊彦(とよひこ)、137承(うけたま)はらう』
138 豊彦(とよひこ)、139平気(へいき)な顔(かほ)でニタリと笑(わら)ひ、140三(さん)人(にん)の顔(かほ)をギヨロギヨロ眺(なが)め、
141豊彦『ハヽヽヽヽ、142お前(まへ)達(たち)、143巧妙(うま)い事(こと)を行(や)りますなア。144田舎(いなか)の老爺(ぢぢい)ぢやと思(おも)うて、145一杯(いつぱい)欺(か)けようと企(たく)んで来(き)ても、146斯(か)う見(み)えても此(この)爺(ぢい)はナカナカ、147酢(す)でも蒟蒻(こんにやく)でも行(い)く奴(やつ)ぢやない。148お前(まへ)達(たち)とは役者(やくしや)が七八(しちはち)枚(まい)も上(うへ)だから、149其(その)手(て)は喰(く)ひませぬワイ、150アツハヽヽヽ、151なる程(ほど)人間(にんげん)の子(こ)は十月(とつき)で生(うま)れるだらうが、152此方(こちら)の子(こ)はそんな仕入(しいれ)とはチツと種(たね)が違(ちが)ふのだ。153神(かみ)さまもタヨリ無(な)いものだなア。154実際(じつさい)お前様(まへさん)に大神(おほかみ)が懸(うつ)つて仕組(しぐ)まれたのならば、155此(この)玉照姫(たまてるひめ)は何時(いつ)宿(やど)つて、156何(なん)ケ月目(げつめ)に分娩(ぶんべん)したか、157又(また)何(なん)と云(い)ふ方(かた)が取上(とりあ)げて下(くだ)さつたか分(わか)つて居(を)る筈(はず)だ。158サアそれを聞(き)かして下(くだ)さい』
159 富彦(とみひこ)、160汗(あせ)をタラタラ出(だ)し、161真青(まつさを)な顔(かほ)をして、
162富彦『ヤア大神(おほかみ)と云(い)つたのは実(じつ)は眷属(けんぞく)だ。163……ケヽヽ眷属(けんぞく)はモウ引取(ひきと)る。164今度(こんど)は本当(ほんたう)の大神(おほかみ)様(さま)がお憑(うつ)りなさるから、165御(ご)無礼(ぶれい)を致(いた)してはならぬぞ。166ウーム』
167と言(い)つた限(き)り、168パタリと倒(たふ)れ、169又(また)もや手(て)を振(ふ)つて、170姿勢(ゐずまゐ)を直(なほ)し、
171富彦『今度(こんど)こそは真正(ほんま)の神(かみ)だ。172頭(あたま)が高(たか)い、173下(さが)れ下(さが)れ下(さが)り居(を)らう……』
174豊彦(とよひこ)『ヘン、175又(また)かいな、176どうで碌(ろく)な神(かみ)ぢやあるまい。177大方(おほかた)羽(はね)の無(な)い天狗(てんぐ)か、178尾(を)の無(な)い狐(きつね)なんかだらう。179随分(ずゐぶん)此(この)暑(あつ)いのに、180そんな芸当(げいたう)を無報酬(むほうしう)でやつて見(み)せて下(くだ)さるのも大抵(たいてい)ぢやない。181あんたは慈悲心(じひしん)の深(ふか)い人(ひと)ぢや、182其(その)点(てん)丈(だけ)は此(この)爺(ぢい)も大(おほ)いに感謝(かんしや)する。183今朝(けさ)も二三(にさん)人(にん)参(まゐ)つて来(き)よつたが、184お前(まへ)の様(やう)な野天狗(のてんぐ)憑(つき)がやつて来(き)て、185法螺(ほら)を吹(ふ)くの吹(ふ)かんのつて、186随分(ずゐぶん)面白(おもしろ)かつた。187お前(まへ)もウラナイ教(けう)の宣伝使(せんでんし)なら、188モ一(ひと)つ修業(しうげふ)をなされ。189其(その)様(やう)な事(こと)で衆生(しうじやう)済度(さいど)なぞとは、190思(おも)ひも寄(よ)りませぬぞい』
191富彦(とみひこ)『大神(おほかみ)に向(むか)つて無礼(ぶれい)千万(せんばん)な、192其(その)方(はう)は此(この)神(かみ)を嘲弄(てうろう)致(いた)すか。193量見(りやうけん)ならぬぞ』
194豊彦(とよひこ)『ハヽヽヽヽ、195此方(こつち)から量見(りやうけん)ならぬ。196サア一(ひと)つ審神(さには)してやらう。197……娘(むすめ)のお玉(たま)の妊娠(にんしん)の日(ひ)は何時(いつ)ぢや。198何(なん)ケ月(げつ)孕(はら)んで居(を)つた、199ハツキリ云(い)うて見(み)よ。200十月(とつき)位(くらゐ)で出来(でき)た様(やう)な普通(ふつう)の粗製(そせい)濫造品(らんざうひん)とはチツと違(ちが)ふのだ。201特別(とくべつ)神界(しんかい)から念(ねん)に念(ねん)を入(い)れて、202鍛錬(たんれん)に鍛錬(たんれん)を加(くは)へ調製(てうせい)された玉照姫(たまてるひめ)だよ。203サアサア当(あ)てて御覧(ごらん)なさい』
204富彦(とみひこ)『十二(じふに)ケ月(げつ)だ。205間違(まちが)ひなからう。206此(この)お玉(たま)は牛(うし)の綱(つな)を跨(また)げたに依(よ)つて、207十二(じふに)ケ月(げつ)掛(かか)つたのぢや。208どうぢや恐(おそ)れ入(い)つたか』
209豊彦(とよひこ)『アハヽヽヽ、210これ富彦(とみひこ)さんとやら、211良(い)い加減(かげん)に、212そんな芸当(げいたう)はお止(や)めなさい。213随分(ずゐぶん)エライ汗(あせ)だ』
214富彦(とみひこ)『大神(おほかみ)は折角(せつかく)結構(けつこう)な事(こと)を言(い)うて聞(き)かしてやらうと思(おも)ひ、215因縁(いんねん)の身魂(みたま)に憑(うつ)つて知(し)らしてやれ共(ども)、216此(この)爺(ぢい)は我(が)が強(つよ)うて、217少(すこ)しも改心(かいしん)致(いた)さぬから、218神(かみ)は已(や)むを得(え)ず、219帳(ちやう)を切(き)つて引取(ひきと)るより仕方(しかた)はないぞよ。220後(あと)で後悔(こうくわい)致(いた)さぬ様(やう)に気(き)を付(つ)けて置(お)くぞよ』
221豊彦(とよひこ)『ヘエヘエ有難(ありがた)う御座(ござ)んす。222お狸(たぬき)さまか、223お狐(きつね)さまか知(し)らぬが、224斯(か)う見(み)えても、225此(この)家(うち)は神(かみ)様(さま)の立派(りつぱ)なお宮(みや)だ。226エー四足(よつあし)の這入(はい)る所(ところ)ぢやない。227穢(けが)らはしい、228出(で)て下(くだ)さい、229玉照姫(たまてるひめ)様(さま)が大変(たいへん)御(ご)機嫌(きげん)が悪(わる)い。230サアサア帰(い)なつしやい帰(い)なつしやい』
231と箒(はうき)を把(と)つて掃(は)き立(た)てる。232富彦(とみひこ)は手持(てもち)無沙汰(ぶさた)に、233手拭(てぬぐひ)で顔(かほ)を拭(ふ)いて居(ゐ)る。
234寅若(とらわか)『オイ爺(ぢい)さま、235あまりぢやないか。236人(ひと)を埃(ほこり)か何(なん)ぞの様(やう)に、237箒(はうき)で掃(は)き出(だ)すと云(い)ふ法(はふ)があるか。238よい年(とし)して居(を)つて、239チツと位(くらゐ)行儀(ぎやうぎ)作法(さはふ)を心得(こころえ)たらどうだい』
240豊彦(とよひこ)『エーエー神(かみ)様(さま)のお宮(みや)の中(なか)へ、241ノコノコ這入(はい)つて来(く)る四足(よつあし)に、242行儀(ぎやうぎ)も何(なに)も要(い)るものかい、243行儀(ぎやうぎ)と云(い)ふものは人間(にんげん)同士(どうし)、244又(また)は人間(にんげん)か、245より以上(いじやう)の神(かみ)様(さま)に対(たい)してこそ必要(ひつえう)だ。246グヅグヅ吐(ぬか)すと、247此(この)箒(はうき)が頭(あたま)の上(うへ)まで参(まゐ)るぞ』
248 菊若(きくわか)は爺(ぢい)の振(ふ)り上(あ)げた箒(はうき)をクワツと掴(つか)み、
249菊若(きくわか)『モシモシお爺(ぢい)さま、250お静(しづ)まり下(くだ)さい。251短気(たんき)は損気(そんき)だ。252さうお前(まへ)の様(やう)に神懸(かむがかり)をけなしては話(はなし)が出来(でき)ぬ。253マア静(しづ)まつた静(しづ)まつた』
254豊彦(とよひこ)『お前(まへ)達(たち)に説教(せつけう)を聴(き)く耳(みみ)持(も)たぬ。255斯(か)う見(み)えても、256此(この)豊彦(とよひこ)は神(かみ)様(さま)の御(ご)神徳(しんとく)を頂(いただ)いて、257何処(どこ)の教(をしへ)にもつかず、258独立(どくりつ)独歩(どくぽ)で、259神(かみ)様(さま)直接(ちよくせつ)の御用(ごよう)を致(いた)して居(を)るのだ。260人(ひと)を助(たす)けるのは神(かみ)の道(みち)だから、261お前(まへ)さへ改心(かいしん)して、262低(ひく)うなつて来(く)れば、263どんな結構(けつこう)な事(こと)でも教(をし)へてやるが、264そんな態度(たいど)では一息(ひといき)の間(ま)も置(お)く事(こと)は出来(でき)ぬ。265サアサア帰(かへ)つた帰(かへ)つた』
266お玉(たま)『お爺(ぢい)さま、267あまり酷(ひど)い事(こと)を言(い)はぬが宜(よろ)しい』
268豊彦(とよひこ)『コレコレお玉(たま)、269お前(まへ)は黙(だま)つて居(ゐ)なさい。270又(また)こんな奴(やつ)に因縁(いんねん)を附(つ)けられては煩雑(うるさ)いから……』
271寅若(とらわか)『ヤアお玉(たま)さま、272話(はな)せる、273さうなくては女(をんな)ではない。274ヤツパリ社交界(しやかうかい)の花(はな)は女(をんな)だ。275挨拶(あいさつ)は時(とき)の氏神(うぢがみ)、276そこを巧(うま)く斡旋(あつせん)の労(らう)を取(と)つて下(くだ)さい。277お前(まへ)さま所(ところ)の床(ゆか)の置物(おきもの)を御覧(ごらん)なされ。278私(わたくし)等(ら)が此処(ここ)の門(もん)を潜(くぐ)るや否(いな)や、279能(よ)うお出(いで)やす……と云(い)つて、280あの長(なが)い頭(あたま)をうちつけて、281福禄寿(げほう)の像(ざう)が叮嚀(ていねい)に挨拶(あいさつ)をして居(を)るぢやないか。282あんな無心(むしん)の福禄寿(げほう)さまでも、283吾々(われわれ)の御(ご)威勢(ゐせい)には……いや神格(しんかく)には感応(かんのう)して、284畏(かしこ)まつて御座(ござ)る。285それに此(この)お爺(ぢい)さまはあまり剛情(がうじやう)が過(す)ぎる。286私(わたし)達(たち)が言(い)つても、287中々(なかなか)年寄(としよ)りの片意地(かたいぢ)で諾(き)かつしやるまいから……娘(むすめ)にかけたら目(め)も鼻(はな)も無(な)い爺(おやぢ)さまに、288お玉(たま)さまからトツクリと気(き)の軟(やは)らぐ様(やう)に言(い)つて下(くだ)さい』
289お玉(たま)『ホヽヽヽヽ』
290豊彦(とよひこ)『エー帰(い)ねと言(い)つたら帰(い)なぬか』
291と床(ゆか)が落(お)ちる程(ほど)四股(しこ)を踏(ふ)む。292三(さん)人(にん)は、
293三人『エーお爺(ぢい)さま、294又(また)お目(め)にかかります。295今日(けふ)は大変(たいへん)天候(てんこう)が悪(わる)いから……又(また)日和(ひより)を考(かんが)へてお邪魔(じやま)に参(まゐ)ります』
296豊彦(とよひこ)『エーグヅグヅ言(い)はずに、297早(はや)く帰(い)んで呉(く)れ、298玉照姫(たまてるひめ)様(さま)の御(ご)機嫌(きげん)が悪(わる)くなると困(こま)るから……オイ婆(ば)ア、299塩(しほ)持(も)つて来(こ)い。300そこらを一(ひと)つ浄(きよ)めないと、301何(なん)だか四足(よつあし)の香(にほひ)がして仕方(しかた)がないワ、302アハヽヽヽ』
303 三(さん)人(にん)は突出(つきだ)される様(やう)に怪訝(けげん)な顔(かほ)して此(この)家(や)を立出(たちい)で、304スタスタと弥仙山(みせんざん)の急坂(きふはん)にさしかかる。
305菊若(きくわか)『オイ此処(ここ)らで一(ひと)つ、306一服(いつぷく)しやうぢやないか』
307寅若(とらわか)『あまり怪体(けつたい)が悪(わる)くつて、308黒姫(くろひめ)さまに会(あ)はす顔(かほ)がない。309休(やす)む気(き)にもならぬぢやないか。310そこらの蝶々(てふてふ)や糞蛙(くそがへる)まで、311俺(おれ)達(たち)の顔(かほ)を見(み)て、312馬鹿(ばか)にして居(ゐ)やがる様(やう)な心持(こころもち)がする。313どつか、314蛙(かへる)や蝶(てふ)の居(を)らぬ所(ところ)へ行(い)つて一服(いつぷく)しやうかい』
315と胸突坂(むなつきざか)を後(あと)から追手(おつて)にでも追(お)ひかけられる様(やう)な、316慌(あは)てた姿(すがた)で、317三本桧(さんぼんひのき)の麓(ふもと)までやつて来(き)た。
318三人『アヽ此処(ここ)に良(い)い休息所(きうそくしよ)がある。319清水(しみづ)も湧(わ)いて居(を)る。320水(みづ)でも飲(の)んで、321ゆつくりと第二(だいに)の作戦(さくせん)計画(けいくわく)に着手(ちやくしゆ)する事(こと)としやうかい』
322 三(さん)人(にん)は樹下(じゆか)に涼風(すずかぜ)を入(い)れ乍(なが)ら、323雑談(ざつだん)に時(とき)を移(うつ)した。
324菊若(きくわか)『これ程(ほど)名高(なだか)くなつた豊彦(とよひこ)と云(い)ふ爺(ぢい)も、325あの玉照姫(たまてるひめ)と云(い)ふ赤(あか)ん坊(ばう)が出来(でき)て、326それがイロイロの事(こと)を知(し)らすと云(い)ふのが呼(よ)びものになつて、327毎日(まいにち)日日(ひにち)、328桃李(たうり)物(もの)言(い)はずして小径(せうけい)をなす様(やう)に、329あちらこちらから、330信者(しんじや)が集(あつ)まるのだ。331黒姫(くろひめ)さまが毎朝(まいあさ)起(お)きて、332行水(ぎやうずゐ)をなさると東(ひがし)の天(てん)に当(あた)つて紫(むらさき)の雲(くも)が靉靆(たなび)くから、333何(なん)でも弥仙山(みせんざん)の方面(はうめん)に違(ちが)ひないから一遍(いつぺん)偵察(ていさつ)に行(い)て来(こ)いと言(い)はれ、334此(この)間(あひだ)、335俺(おれ)一人(ひとり)此(この)山麓(さんろく)まで来(き)て見(み)ると、336大変(たいへん)な人気(にんき)だ。337紫(むらさき)の雲(くも)の出所(でどころ)は、338どうしても、339あの茅屋(あばらや)に間違(まちが)ひない。340そして毎晩(まいばん)東(ひがし)の天(てん)に当(あた)つて大変(たいへん)な綺麗(きれい)な星(ほし)が輝(かがや)き始(はじ)めた。341偉人(ゐじん)の出現(しゆつげん)には、342キツと天(てん)に明星(みやうぜう)が現(あら)はれると云(い)ふ事(こと)だが、343テツキリそれに間違(まちがひ)ないと、344直(ただち)に立帰(たちかへ)つて報告(はうこく)をした所(ところ)、345黒姫(くろひめ)さまは……「マア待(ま)て、346一(いつ)週間(しうかん)水行(すゐぎやう)をして、347ハツキリと神勅(しんちよく)を受(う)ける」と仰有(おつしや)つて、348夜(よる)、349丑(うし)の刻(こく)から起(お)き出(い)でて、350皆(みな)の知(し)らぬ間(ま)に、351何百杯(なんびやくぱい)とも知(し)れぬ水行(すゐぎやう)を遊(あそ)ばした結果(けつくわ)、352イヨイヨそれに間違(まちがひ)ない。353グツグツして居(ゐ)ると、354三五教(あななひけう)の奴(やつ)に取(と)られて了(しま)ふから、355お前(まへ)達(たち)早(はや)く外(ほか)の者(もの)に秘密(ひみつ)で、356其(その)子供(こども)を貰(もら)つて来(こ)い……との御(おん)仰(あふ)せ、357あんな茅屋(あばらや)の娘(むすめ)、358二(ふた)つ返事(へんじ)でウラナイ教(けう)に、359熨斗(のし)を付(つ)けて献上(けんじやう)するかと思(おも)ひきや、360今日(けふ)の鼻息(はないき)、361到底(たうてい)一通(ひととほ)りや二通(ふたとほり)りでは、362梃子(てこ)に合(あ)はぬ。363それに寅若(とらわか)の先生(せんせい)、364最初(さいしよ)からヘマな神懸(かむがか)り[※三版・御校正本・愛世版では「神懸り」、校定版では「神憑り」。]を行(や)つて爺(おやぢ)に睨(にら)まれ、365第二線(だいにせん)として現(あら)はれた富彦(とみひこ)は、366老爺(ぢぢい)の審神(さには)に睨(にら)まれ、367ヨロヨロと受太刀(うけだち)になり……これはヤツパリ野天狗(のてんぐ)で御座(ござ)いました……と出直(でなほ)した所(ところ)は巧(うま)いものだが、368今度(こんど)又(また)大神(おほかみ)と、369太(ふと)う出(で)やがつて、370零敗(ゼロはい)を喰(く)はされ、371最早(もはや)回復(くわいふく)の見込(みこ)みなく、372終局(しまひ)の果(は)てにや、373箒(ほうき)で掃出(はきだ)された無態(ぶざま)さ……斯(こ)んな事(こと)を、374怪我(けが)の端(はし)にでも、375黒姫(くろひめ)さまや外(ほか)の連中(れんちう)に聞(き)かれようものなら、376馬鹿(ばか)らしくつて、377外(そと)も歩(ある)けやしない。378何(なん)とか一(ひと)つ智慧(ちゑ)を絞(しぼ)り出(だ)して、379会稽(くわいけい)の恥(はぢ)を雪(すす)がねばなるまい。380何(なん)ぞよい考(かんが)へはなからうか』
381寅若(とらわか)『別(べつ)に方法(はうはふ)手段(しゆだん)もないが、382先(ま)づ梅公(うめこう)式(しき)だなア。383それが最後(さいご)の手段(しゆだん)だ』
384富彦(とみひこ)『梅公(うめこう)式(しき)を行(や)り損(そこ)なうと、385滝板(たきいた)式(しき)になり、386終局(しまひ)におつ放(ぽ)り出(だ)されにやならぬ様(やう)な事(こと)になると大変(たいへん)だ。387此奴(こいつ)ア一(ひと)つ、388熟思(じゆくし)熟考(じゆくかう)の余地(よち)は充分(じゆうぶん)に存(そん)するぞ』
389寅若(とらわか)『ナーニ、390目的(もくてき)は手段(しゆだん)を選(えら)ばずだ。391善(ぜん)の為(ため)にするのだから、392別(べつ)に罪(つみ)になると云(い)ふ事(こと)もあるまい。393一(ひと)つ決行(けつかう)しやうぢやないか』
394菊若(きくわか)『アヽ結構(けつこう)々々(けつこう)、395結構(けつこう)毛(け)だらけ、396猫(ねこ)灰(はい)だらけだ。397弥仙山(みせんざん)の大神(おほかみ)さまは、398猫(ねこ)が使者(つかはしめ)だと云(い)ふ事(こと)だ、399何(なん)でも今度(こんど)は猫(ねこ)を被(かぶ)つて、400梅滝流(うめたきりう)を行(や)らうぢやないか』
401富彦(とみひこ)『梅滝流(うめたきりう)とはソラ何(なん)だ』
402菊若(きくわか)『其(その)正中(まんなか)を行(ゆ)くのだ。403普甲峠(ふかふたうげ)の梅公(うめこう)の行(や)り口(くち)は、404味方(みかた)八(はち)人(にん)も居(を)つたものだから、405大変(たいへん)に都合(つがふ)が好(よ)かつた。406船岡山(ふなをかやま)の近所(きんじよ)で行(や)つた滝板(たきいた)の芝居(しばゐ)は、407何分(なにぶん)役者(やくしや)が少(すくな)いものだから、408バレて了(しま)つたのだよ。409併(しか)し吾々(われわれ)三(さん)人(にん)では、410どうする事(こと)も出来(でき)ぬぢやないか、411三(さん)人(にん)寄(よ)れば文珠(もんじゆ)の智慧(ちゑ)と云(い)つても、412程(ほど)よい考案(かうあん)が浮(うか)んで来(こ)ない。413ハテ困(こま)つた事(こと)だなア』
414寅若(とらわか)『噂(うはさ)に聞(き)けば、415明日(あす)はお玉(たま)が七十五(しちじふご)日(にち)の忌明(いみあけ)で、416弥仙山(みせんざん)へお参(まゐ)りするさうだ。417どうぢや。418吾々(われわれ)三(さん)人(にん)は一(ひと)つ、419体(からだ)一面(いちめん)に日蔭葛(ひかげかづら)でも被(かぶ)つて、420お玉(たま)の参詣路(さんけいみち)を脅(おびや)かし、421グツと括(くく)つて猿轡(さるぐつわ)を箝(は)め、422山伝(やまづた)ひに連(つ)れ帰(かへ)り、423さうして外(ほか)の連中(れんちう)を爺(ぢぢ)の家(うち)へ差(さ)し向(む)け、424「お前(まへ)さまの家(うち)は、425大事(だいじ)のお玉(たま)さまを悪者(わるもの)の為(ため)に拐(かどは)かされたさうぢや。426気(き)の毒(どく)なが、427何(なん)と吾々(われわれ)が力(ちから)一杯(いつぱい)骨(ほね)を折(お)つて探(さが)して来(く)るから、428其(その)褒美(ほうび)に玉照姫(たまてるひめ)さまを、429三日(みつか)でも、430四日(よつか)でもよいから、431貸(か)して下(くだ)さらぬか」……と云(い)つて、432チヨロまかすより外(ほか)に途(みち)は有(あ)るまい、433どうだ賛成(さんせい)かなア』
434菊若、富彦『ヤアあまり名案(めいあん)でもないが、435斯(か)うなれば仕方(しかた)が無(な)い。436マアそれ位(くらゐ)な事(こと)で辛抱(しんばう)しやうかい。437併(しか)し巧(うま)くいかうかな』
438寅若『何(なに)は兎(と)も角(かく)一遍(いつぺん)都合(つがふ)よくいく様(やう)に、439お空(そら)の大神(おほかみ)様(さま)へ参拝(さんぱい)をして来(こ)う。440今晩中(こんばんぢう)三(さん)人(にん)が一生(いつしやう)懸命(けんめい)に、441木花姫(このはなひめ)様(さま)の御(ご)分霊(ぶんれい)の前(まへ)で、442祈(いの)つて祈(いの)つて祈(いの)り倒(たふ)すのだ、443さうすれば神(かみ)さまだつて……終局(しまひ)にや五月蠅(うるさ)いから……エー仕方(しかた)がない、444一遍(いつぺん)は諾(き)いてやらう……と仰有(おつしや)るに違(ちが)ひない。445さうでなくちや、446どうしてウラナイ教(けう)へ帰(かへ)る事(こと)が出来(でき)ようか。447青彦(あをひこ)さまや、448紫姫(むらさきひめ)さまに恥(はづ)かしいぞ』
449と云(い)ひ乍(なが)ら、450山上(さんじやう)目蒐(めが)けて進(すす)み行(ゆ)く。451一夜(いちや)は頂上(ちやうじやう)の社前(しやぜん)に夜(よ)を明(あ)かし、452一生(いつしやう)懸命(けんめい)に願望(ぐわんばう)成就(じやうじゆ)の祈願(きぐわん)を凝(こ)らし居(ゐ)る。453果(はた)して大神(おほかみ)様(さま)は御(ご)聴許(ちやうきよ)遊(あそ)ばすであらうか。
454(大正一一・四・二八 旧四・二 松村真澄録)
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