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霊界物語
如意宝珠(第13~24巻)
第23巻(戌の巻)
序文
総説
第1篇 南海の山
第1章 玉の露
第2章 副守囁
第3章 松上の苦悶
第4章 長高説
第2篇 恩愛の涙
第5章 親子奇遇
第6章 神異
第7章 知らぬが仏
第8章 縺れ髪
第3篇 有耶無耶
第9章 高姫騒
第10章 家宅侵入
第11章 難破船
第12章 家島探
第13章 捨小舟
第14章 籠抜
第4篇 混線状態
第15章 婆と婆
第16章 蜈蚣の涙
第17章 黄竜姫
第18章 波濤万里
霊の礎(八)
余白歌
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霊界物語
>
如意宝珠(第13~24巻)
>
第23巻(戌の巻)
> 第1篇 南海の山 > 第4章 長高説
<<< 松上の苦悶
(B)
(N)
親子奇遇 >>>
第四章
長高説
(
ちやうかうぜつ
)
〔七一六〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第23巻 如意宝珠 戌の巻
篇:
第1篇 南海の山
よみ(新仮名遣い):
なんかいのやま
章:
第4章 長高説
よみ(新仮名遣い):
ちょうこうぜつ
通し章番号:
716
口述日:
1922(大正11)年06月10日(旧05月15日)
口述場所:
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年4月19日
概要:
舞台:
錦の宮
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
杢助は魔我彦と竹彦をひそかに聖地に連れ帰った後、表戸を閉ざして聖地の様子を窺っていた。また玉治別、若彦、国依別の三人も密かに聖地に戻って高姫一派の陰謀を探っていた。
高姫はそうとは知らず、聖地の役員信者たちに、緊急事態が突発したと触れ回って、錦の宮の八尋殿に集めた。
高姫は、集まった信者一同を前にいかめしく祭典を執り行うと、得意げに壇上に登り、教主言依別命がお節(玉能姫)や杢助を重用することに対して非難を始めた。
座中から加米彦が立って高姫に異議を唱え、秋山彦の館で沓島の鍵を盗んで如意宝珠の玉を呑み込んだ件をたしなめた。
高姫が加米彦に反論すると、加米彦は高姫に異議のある者は起立するように、と呼びかけた。すると満場の者が起立した。
高姫は、自分こそ変性男子の系統で日の出神の生き宮であるから、教祖の資格がある者だとますますいきり立つ。佐田彦と波留彦は立ち上がり、日の出神なら玉の隠し場所を透視せよ、と高姫に挑戦する。
高姫は壇上で、神に理屈を言う者は改心ができていない、魔我彦、竹彦の両宣伝使こそ改心ができた立派な宣伝しだ、とわめきたてる。そこへ杢助が魔我彦と竹彦を連れて現れる。
杢助は、魔我彦と竹彦の説には感服した、と高姫に告げる。高姫はてっきり杢助が自分の見方に付いたと思って居丈高になる。
しかし魔我彦と竹彦は、高姫の案に相違して、高姫の悪事の企みを壇上でしゃべってしまう。杢助に自分の企みを一同の前でさらされて、高姫は壇上から駆け下り、一目散に館に走り帰ってしまった。
そこに言依別命が現れて、一同に会釈すると神前に天津祝詞を唱え、皆は解散することになった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2021-06-24 17:09:42
OBC :
rm2304
愛善世界社版:
57頁
八幡書店版:
第4輯 514頁
修補版:
校定版:
58頁
普及版:
25頁
初版:
ページ備考:
001
杢助
(
もくすけ
)
は
魔我彦
(
まがひこ
)
、
002
竹彦
(
たけひこ
)
二人
(
ふたり
)
と
共
(
とも
)
に
窃
(
ひそか
)
に
聖地
(
せいち
)
に
帰
(
かへ
)
り、
003
表戸
(
おもてど
)
を
閉
(
とざ
)
し
暫
(
しば
)
らく
外出
(
ぐわいしゆつ
)
せず、
004
聖地
(
せいち
)
の
様子
(
やうす
)
を
窺
(
うかが
)
つて
居
(
ゐ
)
た。
005
玉治別
(
たまはるわけ
)
、
006
若彦
(
わかひこ
)
、
007
国依別
(
くによりわけ
)
の
三
(
さん
)
宣伝使
(
せんでんし
)
も
密
(
ひそか
)
に
聖地
(
せいち
)
に
帰
(
かへ
)
り、
008
国依別
(
くによりわけ
)
が
館
(
やかた
)
に
深
(
ふか
)
く
忍
(
しの
)
び、
009
高姫
(
たかひめ
)
一派
(
いつぱ
)
の
陰謀
(
いんぼう
)
を
偵察
(
ていさつ
)
しつつあつた。
010
神
(
かみ
)
ならぬ
身
(
み
)
の
高姫
(
たかひめ
)
は
此
(
この
)
事
(
こと
)
は
夢
(
ゆめ
)
にも
知
(
し
)
らず、
011
鬼
(
おに
)
の
来
(
こ
)
ぬ
間
(
ま
)
の
洗濯
(
せんたく
)
するは
今
(
いま
)
此
(
この
)
時
(
とき
)
と、
012
私
(
ひそ
)
かに
聖地
(
せいち
)
の
役員
(
やくゐん
)
信徒
(
しんと
)
の
宅
(
たく
)
に
布令
(
ふれ
)
を
廻
(
まは
)
し、
013
緊急
(
きんきふ
)
事件
(
じけん
)
突発
(
とつぱつ
)
せりと
触
(
ふ
)
れ
込
(
こ
)
んで、
014
錦
(
にしき
)
の
宮
(
みや
)
の
八尋殿
(
やひろどの
)
に
集
(
あつ
)
めた。
015
此
(
この
)
日
(
ひ
)
は
風
(
かぜ
)
烈
(
はげ
)
しく
急雨
(
きふう
)
盆
(
ぼん
)
を
覆
(
くつが
)
へす
如
(
ごと
)
く、
016
雷鳴
(
かみなり
)
さへも
天
(
てん
)
の
東西
(
とうざい
)
南北
(
なんぼく
)
に
巻舌
(
まきじた
)
を
使
(
つか
)
つてゴロツキ
出
(
だ
)
した。
017
斯
(
か
)
かる
烈
(
はげ
)
しき
風雨
(
ふうう
)
雷電
(
らいでん
)
にも
屈
(
くつ
)
せず、
018
緊急
(
きんきふ
)
事件
(
じけん
)
と
聞
(
き
)
いて
爺
(
ぢい
)
も
婆
(
ばば
)
も
猫
(
ねこ
)
も
杓子
(
しやくし
)
も、
019
脛腰
(
すねこし
)
の
立
(
た
)
つ
者
(
もの
)
は
満場
(
まんぢやう
)
立錐
(
りつすゐ
)
の
余地
(
よち
)
なきまでに
寄
(
よ
)
り
集
(
あつ
)
まつた。
020
此
(
この
)
時
(
とき
)
高姫
(
たかひめ
)
は
烏帽子
(
えぼし
)
、
021
狩衣
(
かりぎぬ
)
厳
(
いか
)
めしく
神殿
(
しんでん
)
に
進
(
すす
)
み、
022
言依別
(
ことよりわけ
)
の
教主
(
けうしゆ
)
、
023
尻
(
けつ
)
でも
喰
(
くら
)
へと
言
(
い
)
ふ
鼻息
(
はないき
)
にて
斎主
(
さいしゆ
)
を
勤
(
つと
)
め、
024
型
(
かた
)
の
如
(
ごと
)
く
祭典
(
さいてん
)
を
済
(
す
)
ませ、
025
アトラスの
様
(
やう
)
な
曼陀羅
(
まんだら
)
の
面
(
つら
)
を
講座
(
かうざ
)
の
上
(
うへ
)
に
曝
(
さら
)
し、
026
満座
(
まんざ
)
の
一同
(
いちどう
)
に
向
(
むか
)
ひ、
027
鬼
(
おに
)
の
首
(
くび
)
を
篦
(
へら
)
で
掻
(
か
)
き
斬
(
き
)
つた
様
(
やう
)
に
得意気
(
とくいげ
)
に
壇上
(
だんじやう
)
に
肩
(
かた
)
を
揺
(
ゆす
)
り、
028
腮
(
あご
)
を
上下
(
うへした
)
にしやくり
乍
(
なが
)
ら、
029
高姫
(
たかひめ
)
『
皆
(
みな
)
さま、
030
今日
(
けふ
)
は
斯
(
か
)
くの
如
(
ごと
)
き
結構
(
けつこう
)
なお
日和
(
ひより
)
にも
拘
(
かかは
)
らず、
031
残
(
のこ
)
らず
御
(
ご
)
参集
(
さんしふ
)
下
(
くだ
)
さいまして、
032
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
も
満足
(
まんぞく
)
に
存
(
ぞん
)
じます。
033
言依別
(
ことよりわけ
)
の
教主
(
けうしゆ
)
は
先日
(
せんじつ
)
より
少
(
すこ
)
しく
病気
(
びやうき
)
の
態
(
てい
)
にて
引
(
ひ
)
き
籠
(
こも
)
られ、
034
又
(
また
)
杢助
(
もくすけ
)
の
総務殿
(
そうむどの
)
は
何
(
いづ
)
れへかお
出
(
い
)
でになり、
035
此
(
この
)
三五教
(
あななひけう
)
の
本山
(
ほんざん
)
は
首
(
くび
)
の
無
(
な
)
い
人間
(
にんげん
)
の
様
(
やう
)
だ、
036
二進
(
につち
)
も
三進
(
さつち
)
も
動
(
うご
)
きが
取
(
と
)
れないと、
037
大勢
(
おほぜい
)
様
(
さま
)
の
中
(
なか
)
には
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
遊
(
あそ
)
ばしたお
方
(
かた
)
があつた
様
(
やう
)
ですが、
038
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
御
(
ご
)
神徳
(
しんとく
)
は
偉
(
えら
)
いものです。
039
教主
(
けうしゆ
)
が
出勤
(
しゆつきん
)
せなくても、
040
杢助
(
もくすけ
)
其
(
その
)
他
(
た
)
の
幹部
(
かんぶ
)
宣伝使
(
せんでんし
)
が
居
(
ゐ
)
なくても、
041
御
(
ご
)
神力
(
しんりき
)
に
依
(
よ
)
つて、
042
斯
(
か
)
くの
如
(
ごと
)
く
一人
(
ひとり
)
も
残
(
のこ
)
らず
参集
(
さんしふ
)
して
下
(
くだ
)
さつたと
言
(
い
)
ふのは、
043
未
(
いま
)
だ
天道
(
てんだう
)
様
(
さま
)
は
此
(
この
)
高姫
(
たかひめ
)
を
捨
(
す
)
て
給
(
たま
)
はざる
証
(
しるし
)
で
御座
(
ござ
)
いませう。
044
杢助
(
もくすけ
)
総務
(
そうむ
)
の
召集
(
せうしふ
)
でも
言依別
(
ことよりわけ
)
の
教主
(
けうしゆ
)
の
召集
(
せうしふ
)
でも、
045
此
(
この
)
八尋殿
(
やひろどの
)
の
建設
(
けんせつ
)
以来
(
いらい
)
、
046
是
(
これ
)
だけ
立錐
(
りつすゐ
)
の
余地
(
よち
)
なき
迄
(
まで
)
お
集
(
あつ
)
まりになつた
事
(
こと
)
は
御座
(
ござ
)
いませぬ。
047
それだから
神力
(
しんりき
)
が
強
(
つよ
)
いか、
048
学力
(
がくりき
)
が
強
(
つよ
)
いか、
049
神力
(
しんりき
)
と
学力
(
がくりき
)
との
力競
(
ちからくら
)
べを
致
(
いた
)
さうと
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
が
仰有
(
おつしや
)
るのです。
050
論
(
ろん
)
より
証拠
(
しようこ
)
、
051
実地
(
じつち
)
を
見
(
み
)
て
御
(
ご
)
改心
(
かいしん
)
なさるが
一等
(
いつとう
)
です。
052
時
(
とき
)
に
緊急
(
きんきふ
)
事件
(
じけん
)
と
申
(
まを
)
しまするのは
外
(
ほか
)
でも
御座
(
ござ
)
らぬ。
053
我々
(
われわれ
)
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
、
054
而
(
しか
)
も
変性
(
へんじやう
)
男子
(
なんし
)
の
系統
(
ひつぽう
)
の
肉体
(
にくたい
)
、
055
及
(
およ
)
び
錚々
(
さうさう
)
たる
幹部
(
かんぶ
)
の
御
(
ご
)
連中
(
れんちう
)
を
差措
(
さしお
)
き、
056
たか
の
知
(
し
)
れたお
節
(
せつ
)
の
成
(
な
)
り
上
(
あが
)
りの
玉能姫
(
たまのひめ
)
や、
057
杢助
(
もくすけ
)
の
娘
(
むすめ
)
お
初
(
はつ
)
の
如
(
ごと
)
き
者
(
もの
)
に、
058
ハイカラの
教主
(
けうしゆ
)
が
大切
(
たいせつ
)
なる
御
(
ご
)
神業
(
しんげふ
)
をソツと
命令
(
めいれい
)
し、
059
吾々
(
われわれ
)
始
(
はじ
)
め
幹部
(
かんぶ
)
の
御
(
お
)
歴々
(
れきれき
)
にスツパヌケを
喰
(
く
)
はすと
言
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
は、
060
如何
(
いか
)
に
御
(
ご
)
神業
(
しんげふ
)
とは
言
(
い
)
へ、
061
吾々
(
われわれ
)
一同
(
いちどう
)
を
侮辱
(
ぶじよく
)
したる
仕打
(
しう
)
ちでは
御座
(
ござ
)
りますまいか。
062
幹部
(
かんぶ
)
役員
(
やくゐん
)
は
申
(
まを
)
すも
更
(
さら
)
なり
此処
(
ここ
)
にお
集
(
あつ
)
まりの
方々
(
かたがた
)
は
何
(
いづ
)
れも
熱心
(
ねつしん
)
なる
三五教
(
あななひけう
)
の
信者
(
しんじや
)
様
(
さま
)
計
(
ばか
)
りで
御座
(
ござ
)
りませう、
063
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
仕組
(
しぐみ
)
の
御用
(
ごよう
)
を
各々
(
めいめい
)
に
致
(
いた
)
し
度
(
た
)
いばつかりで、
064
地位
(
ちゐ
)
財産
(
ざいさん
)
を
捨
(
す
)
てて
此処
(
ここ
)
へ
来
(
き
)
乍
(
なが
)
ら、
065
訳
(
わけ
)
の
分
(
わか
)
らぬ
杢助
(
もくすけ
)
一派
(
いつぱ
)
の
者
(
もの
)
に
蹂躙
(
じうりん
)
されて、
066
指
(
ゆび
)
を
啣
(
くは
)
へてアフンとして
見
(
み
)
て
居
(
を
)
ると
言
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
がありませうか。
067
斯
(
か
)
う
見渡
(
みわた
)
す
所
(
ところ
)
、
068
大分
(
だいぶん
)
立派
(
りつぱ
)
な
男
(
をとこ
)
さまも
居
(
を
)
られますが、
069
貴方
(
あなた
)
等
(
がた
)
は
睾丸
(
きんたま
)
を
提
(
さ
)
げて
居
(
を
)
られますか。
070
実
(
じつ
)
に
心外
(
しんぐわい
)
千万
(
せんばん
)
ではありますまいかな』
071
加米彦
(
かめひこ
)
は
満座
(
まんざ
)
の
中
(
なか
)
よりヌツと
立
(
た
)
ち
上
(
あが
)
り、
072
加米彦
『
高姫
(
たかひめ
)
さまに
質問
(
しつもん
)
があります、
073
何事
(
なにごと
)
も
神界
(
しんかい
)
の
御
(
ご
)
経綸
(
けいりん
)
は
我々
(
われわれ
)
人間
(
にんげん
)
の
容喙
(
ようかい
)
すべき
所
(
ところ
)
ではありますまい。
074
如何
(
いか
)
に
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
ぢやと
仰有
(
おつしや
)
つても、
075
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
が
高姫
(
たかひめ
)
さまの
命令
(
めいれい
)
に
服従
(
ふくじゆう
)
せよとは、
076
何処
(
どこ
)
の
筆先
(
ふでさき
)
にも
書
(
か
)
いてはありませぬ。
077
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
呼
(
よ
)
ばはりは
廃
(
や
)
めて
貰
(
もら
)
ひ
度
(
た
)
い。
078
貴女
(
あなた
)
こそ
聖地
(
せいち
)
及
(
およ
)
び
神界
(
しんかい
)
の
御
(
ご
)
経綸
(
けいりん
)
を
混乱
(
こんらん
)
顛覆
(
てんぷく
)
させる
魔神
(
まがみ
)
の
容器
(
いれもの
)
でせう』
079
高姫
(
たかひめ
)
は
講座
(
かうざ
)
より
地団駄
(
ぢだんだ
)
を
踏
(
ふ
)
み、
080
目
(
め
)
を
釣
(
つ
)
りあげ、
081
高姫
『
誰
(
たれ
)
かと
思
(
おも
)
へば
汝
(
おまへ
)
は
秋山彦
(
あきやまひこ
)
の
門番
(
もんばん
)
加米彦
(
かめひこ
)
ではないか。
082
世界
(
せかい
)
の
大門開
(
おほもんびら
)
きを
致
(
いた
)
す
此
(
この
)
高姫
(
たかひめ
)
の
申
(
まを
)
す
事
(
こと
)
、
083
たか
が
知
(
し
)
れた
一軒
(
いつけん
)
の
家
(
うち
)
の
門番
(
もんばん
)
が
容喙
(
ようかい
)
すべき
限
(
かぎ
)
りでない。
084
すつ
込
(
こ
)
つで
居
(
ゐ
)
なされ』
085
と
一口
(
ひとくち
)
に
叩
(
たた
)
きつけ
様
(
やう
)
とする。
086
加米彦
(
かめひこ
)
は
負
(
まけ
)
ず
気
(
ぎ
)
になり、
087
高姫
(
たかひめ
)
の
立
(
た
)
てる
壇上
(
だんじやう
)
に
現
(
あら
)
はれて
一同
(
いちどう
)
を
見渡
(
みわた
)
し、
088
加米彦
『
皆
(
みな
)
さま、
089
私
(
わたくし
)
は
今
(
いま
)
高姫
(
たかひめ
)
さまの
仰
(
あふ
)
せられた
如
(
ごと
)
く、
090
秋山彦
(
あきやまひこ
)
の
門番
(
もんばん
)
を
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
りました
加米彦
(
かめひこ
)
で
御座
(
ござ
)
いますが、
091
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
高姫
(
たかひめ
)
さまも
大門
(
おほもん
)
の
番人
(
ばんにん
)
ぢやと
只今
(
ただいま
)
自白
(
じはく
)
されたではありませぬか。
092
門番
(
もんばん
)
の
分際
(
ぶんざい
)
として
大奥
(
おほおく
)
の
事
(
こと
)
が
如何
(
どう
)
して
分
(
わか
)
りませう。
093
それに
就
(
つ
)
いても
私
(
わたくし
)
は
秋山彦
(
あきやまひこ
)
の
館
(
やかた
)
、
094
即
(
すなは
)
ち
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのをの
)
大神
(
おほかみ
)
、
095
国武彦
(
くにたけひこの
)
命
(
みこと
)
様
(
さま
)
の
御
(
おん
)
隠
(
かく
)
れ
館
(
やかた
)
の
門番
(
もんばん
)
を
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
つた
者
(
もの
)
、
096
其
(
その
)
時
(
とき
)
に
冠島
(
かむりじま
)
、
097
沓島
(
くつじま
)
の
鍵
(
かぎ
)
を
応答
(
こたへ
)
なく
盗
(
ぬす
)
んで
行
(
い
)
つて
玉
(
たま
)
を
呑
(
の
)
み
込
(
こ
)
んだ
人
(
ひと
)
があると
言
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
は、
098
私
(
わたくし
)
が
今
(
いま
)
申
(
まを
)
し
上
(
あ
)
げずとも、
099
皆
(
みな
)
さんは
既
(
すで
)
に
已
(
すで
)
に
御
(
ご
)
承知
(
しようち
)
の
事
(
こと
)
と
存
(
ぞん
)
じます。
100
斯様
(
かやう
)
なる
権謀
(
けんぼう
)
術数
(
じゆつすう
)
到
(
いた
)
らざるなき
生宮
(
いきみや
)
さまの
言葉
(
ことば
)
が、
101
如何
(
どう
)
して
真剣
(
しんけん
)
に
真面目
(
まじめ
)
に
信
(
しん
)
ぜられませうか。
102
皆
(
みな
)
様
(
さま
)
冷静
(
れいせい
)
によく
御
(
お
)
考
(
かんが
)
へを
願
(
ねが
)
ひます』
103
座中
(
ざちう
)
より『
尤
(
もつと
)
も
尤
(
もつと
)
も』『
賛成
(
さんせい
)
々々
(
さんせい
)
』『ヒヤヒヤ』『ノウノウ』の
声
(
こゑ
)
交々
(
こもごも
)
起
(
おこ
)
つて
来
(
く
)
る。
104
高姫
(
たかひめ
)
は
烈火
(
れつくわ
)
の
如
(
ごと
)
く、
105
高姫
(
たかひめ
)
『
今
(
いま
)
「ノウノウ」と
言
(
い
)
つたお
方
(
かた
)
は
此
(
この
)
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
前
(
まへ
)
に
出
(
で
)
て
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さい。
106
吾
(
わが
)
党
(
たう
)
の
士
(
し
)
と
考
(
かんが
)
へます。
107
サア
早
(
はや
)
く
此処
(
ここ
)
へお
越
(
こ
)
しなされ』
108
加米彦
(
かめひこ
)
『
恐
(
おそ
)
らく
一人
(
ひとり
)
もありますまい、
109
私
(
わたくし
)
の
説
(
せつ
)
に
対
(
たい
)
し「ノウノウ」と
言
(
い
)
つたお
方
(
かた
)
は
賛成
(
さんせい
)
の
意味
(
いみ
)
を
間違
(
まちが
)
つて
言
(
い
)
はれたのでせう。
110
皆
(
みな
)
さま、
111
失礼
(
しつれい
)
な
申
(
まを
)
し
分
(
ぶん
)
で
御座
(
ござ
)
いますが、
112
中
(
なか
)
には
老人
(
らうじん
)
や
子供衆
(
こどもしう
)
も
居
(
を
)
られますから、
113
一寸
(
ちよつと
)
説明
(
せつめい
)
を
致
(
いた
)
します。
114
「ヒヤヒヤ」と
言
(
い
)
へば
私
(
わたくし
)
の
説
(
せつ
)
に
賛成
(
さんせい
)
したと
言
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
、
115
「ノウノウ」と
言
(
い
)
へば
賛成
(
さんせい
)
せないと
言
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
です。
116
如何
(
どう
)
です。
117
尚
(
ま
)
一度
(
いちど
)
宣
(
の
)
り
直
(
なほ
)
して
貰
(
もら
)
ひませう。
118
さうして
不賛成
(
ふさんせい
)
のお
方
(
かた
)
は「ノウノウ」と
言
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さい』
119
場
(
ぢやう
)
の
四隅
(
しすみ
)
よりは『ヒヤヒヤ』の
声
(
こゑ
)
計
(
ばか
)
りである。
120
殊更
(
ことさら
)
大
(
おほ
)
きな
声
(
こゑ
)
で『ノウノウ、
121
然
(
しか
)
し
高姫
(
たかひめ
)
の
説
(
せつ
)
にはノウノウだ』と
付
(
つ
)
け
加
(
くは
)
へた。
122
高姫
(
たかひめ
)
は
口角
(
こうかく
)
泡
(
あわ
)
を
吹
(
ふ
)
き
乍
(
なが
)
ら、
123
高姫
『
皆
(
みな
)
さま、
124
今
(
いま
)
となつて
分
(
わか
)
らぬと
言
(
い
)
うても
余
(
あんま
)
りぢやありませぬか、
125
大切
(
たいせつ
)
なるお
宝
(
たから
)
を
隠
(
かく
)
されて、
126
よう
平気
(
へいき
)
で
居
(
を
)
られますな。
127
第一
(
だいいち
)
言依別
(
ことよりわけ
)
のドハイカラの
教主
(
けうしゆ
)
は、
128
杢助
(
もくすけ
)
の
様
(
やう
)
な
奴
(
やつ
)
にチヨロまかされ、
129
系統
(
ひつぽう
)
の
生宮
(
いきみや
)
の
高姫
(
たかひめ
)
を
疎外
(
そぐわい
)
し、
130
さうして
其
(
その
)
宝
(
たから
)
をば
何処
(
どこ
)
かへ
隠
(
かく
)
して
仕舞
(
しま
)
つた。
131
皆
(
みな
)
さまはそんな
章魚
(
たこ
)
の
揚壺
(
あげつぼ
)
を
喰
(
く
)
はされた
様
(
やう
)
な
目
(
め
)
に
遇
(
あ
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
132
平気
(
へいき
)
で
御座
(
ござ
)
るとは
無神経
(
むしんけい
)
にも
程
(
ほど
)
があるぢやありませぬか。
133
何程
(
なにほど
)
言依別
(
ことよりわけ
)
の
教主
(
けうしゆ
)
が
偉
(
えら
)
くても、
134
杢助
(
もくすけ
)
の
力
(
ちから
)
が
強
(
つよ
)
くても、
135
神界
(
しんかい
)
の
事
(
こと
)
が
学
(
がく
)
や
智慧
(
ちゑ
)
で
分
(
わか
)
りますか。
136
昔
(
むかし
)
からの
根本
(
こつぽん
)
の
因縁
(
いんねん
)
、
137
大先祖
(
おほせんぞ
)
は
如何
(
いか
)
なる
事
(
こと
)
を
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
つたか、
138
如何
(
いか
)
なる
因縁
(
いんねん
)
で
此
(
この
)
世
(
よ
)
へ
生
(
うま
)
れて
来
(
き
)
たか、
139
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
誠
(
まこと
)
のお
活動
(
はたらき
)
は
如何
(
どん
)
なものか、
140
竜宮
(
りうぐう
)
の
乙姫
(
おとひめ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
正体
(
しやうたい
)
は
如何
(
どう
)
かと
言
(
い
)
ふ
明瞭
(
めいれう
)
な
答
(
こた
)
へが
出来
(
でき
)
ますか。
141
モウ
是
(
これ
)
からは
錦
(
にしき
)
の
宮
(
みや
)
を
始
(
はじ
)
め
此
(
この
)
八尋殿
(
やひろどの
)
は、
142
及
(
およ
)
ばず
乍
(
なが
)
ら
此
(
この
)
高姫
(
たかひめ
)
が
総監
(
そうかん
)
致
(
いた
)
します。
143
玉能姫
(
たまのひめ
)
や
初稚姫
(
はつわかひめ
)
の
女
(
をんな
)
を
選
(
えら
)
んで、
144
大切
(
たいせつ
)
な
御用
(
ごよう
)
をさせると
言
(
い
)
ふ
訳
(
わけ
)
の
分
(
わか
)
からぬ
教主
(
けうしゆ
)
に、
145
随喜
(
ずゐき
)
渇仰
(
かつかう
)
して
居
(
を
)
る
方々
(
かたがた
)
の
気
(
き
)
が
知
(
し
)
れませぬ。
146
チツと
皆
(
みな
)
さん、
147
耳
(
みみ
)
の
穴
(
あな
)
を
掃除
(
さうぢ
)
して
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
託宣
(
たくせん
)
を
聞
(
き
)
き、
148
活眼
(
くわつがん
)
を
開
(
ひら
)
いて
実地
(
じつち
)
の
行
(
おこな
)
ひをよくお
調
(
しら
)
べなされ。
149
根本
(
こつぽん
)
の
要
(
かなめ
)
を
掴
(
つか
)
んだ
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
を
差措
(
さしお
)
いて、
150
枝
(
えだ
)
の
神
(
かみ
)
の
憑
(
うつ
)
つた
肉体
(
にくたい
)
に
何
(
なに
)
が
分
(
わか
)
りますか。
151
ここは
一
(
ひと
)
つ……
誰
(
たれ
)
の
事
(
こと
)
でも
無
(
な
)
い、
152
皆
(
みな
)
お
前
(
まへ
)
さん
等
(
ら
)
の
一身
(
いつしん
)
上
(
じやう
)
に
関
(
くわん
)
する
大問題
(
だいもんだい
)
、
153
否
(
いや
)
国家
(
こくか
)
の
大問題
(
だいもんだい
)
です』
154
加米彦
(
かめひこ
)
『
只今
(
ただいま
)
高姫
(
たかひめ
)
さまのお
言葉
(
ことば
)
に
就
(
つ
)
いて
異議
(
いぎ
)
のある
方
(
かた
)
は
起立
(
きりつ
)
を
願
(
ねが
)
ひます』
155
一同
(
いちどう
)
は
残
(
のこ
)
らず
起立
(
きりつ
)
し『
異議
(
いぎ
)
あり
異議
(
いぎ
)
あり』と
叫
(
さけ
)
んだ。
156
加米彦
(
かめひこ
)
『
皆
(
みな
)
さまの
御
(
ご
)
精神
(
せいしん
)
は
分
(
わか
)
りました。
157
私
(
わたくし
)
の
申
(
まを
)
した
事
(
こと
)
に
御
(
ご
)
賛成
(
さんせい
)
のお
方
(
かた
)
は
何卒
(
どうぞ
)
尚
(
も
)
一度
(
いちど
)
起立
(
きりつ
)
を
願
(
ねが
)
ひます』
158
高姫
(
たかひめ
)
は
隼
(
はやぶさ
)
の
如
(
ごと
)
き
目
(
め
)
を
睜
(
みは
)
り、
159
各人
(
かくじん
)
の
行動
(
かうどう
)
を
監視
(
かんし
)
して
居
(
ゐ
)
る。
160
壇下
(
だんか
)
の
信者
(
しんじや
)
は
高姫
(
たかひめ
)
に
顔
(
かほ
)
を
睨
(
にら
)
まれ、
161
起立
(
きりつ
)
もせず
坐
(
すわ
)
りもせず、
162
中腰
(
ちうごし
)
で
居
(
を
)
るものも
沢山
(
たくさん
)
あつた。
163
加米彦
(
かめひこ
)
『
皆
(
みな
)
さまに
伺
(
うかが
)
ひますが、
164
教主
(
けうしゆ
)
が
神界
(
しんかい
)
の
御
(
ご
)
命令
(
めいれい
)
に
拠
(
よ
)
つて、
165
玉能姫
(
たまのひめ
)
さま、
166
初稚姫
(
はつわかひめ
)
さまに
御用
(
ごよう
)
を
仰
(
あふ
)
せ
付
(
つ
)
けられたのが
悪
(
わる
)
いとすれば、
167
まだまだ
横暴
(
わうばう
)
極
(
きは
)
まる
悪
(
わる
)
い
事
(
こと
)
が
此処
(
ここ
)
に
一
(
ひと
)
つある
様
(
やう
)
に
思
(
おも
)
ひます』
168
聴衆
(
ちやうしう
)
の
中
(
なか
)
より『
有
(
あ
)
る
有
(
あ
)
る、
169
沢山
(
たくさん
)
にある』と
呶鳴
(
どな
)
る
者
(
もの
)
がある。
170
加米彦
(
かめひこ
)
『その
職
(
しよく
)
に
非
(
あら
)
ざる
身
(
み
)
を
以
(
もつ
)
て、
171
神勅
(
しんちよく
)
も
伺
(
うかが
)
はず、
172
教主
(
けうしゆ
)
の
承諾
(
しようだく
)
も
得
(
え
)
ず、
173
部下
(
ぶか
)
の
役員
(
やくゐん
)
を
任免
(
にんめん
)
黜陟
(
ちゆつちよく
)
すると
言
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
は、
174
少
(
すこ
)
しく
横暴
(
わうばう
)
ではありますまいか。
175
黒姫
(
くろひめ
)
様
(
さま
)
、
176
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
様
(
さま
)
、
177
竜国別
(
たつくにわけ
)
様
(
さま
)
、
178
テーリスタン、
179
カーリンスを
聖地
(
せいち
)
より
追出
(
おひだ
)
したのは、
180
果
(
はた
)
して
何人
(
なんぴと
)
の
所為
(
しよゐ
)
だと
思
(
おも
)
ひますか』
181
此
(
この
)
時
(
とき
)
高姫
(
たかひめ
)
は
肩
(
かた
)
を
斜
(
ななめ
)
に
聳
(
そび
)
やかし
乍
(
なが
)
ら、
182
高姫
(
たかひめ
)
『
加米彦
(
かめひこ
)
、
183
そりや
何
(
なに
)
を
言
(
い
)
ひなさる。
184
系統
(
ひつぽう
)
の
生宮
(
いきみや
)
、
185
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
が
命令
(
めいれい
)
をなさつて、
186
黒姫
(
くろひめ
)
以下
(
いか
)
を
海外
(
かいぐわい
)
諸国
(
しよこく
)
へ
玉
(
たま
)
探
(
さが
)
しにお
遣
(
や
)
り
遊
(
あそ
)
ばしたのだ。
187
何程
(
なにほど
)
言依別
(
ことよりわけ
)
や
初稚姫
(
はつわかひめ
)
が
偉
(
えら
)
いと
言
(
い
)
つても、
188
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
には
叶
(
かな
)
ひますまい。
189
学
(
がく
)
や
智慧
(
ちゑ
)
で
定
(
さだ
)
めた
規則
(
きそく
)
が
何
(
なに
)
になるか。
190
そんな
屁理屈
(
へりくつ
)
は
神界
(
しんかい
)
には
通
(
とほ
)
りませぬぞや』
191
加米彦
(
かめひこ
)
『これ
高姫
(
たかひめ
)
さま、
192
お
前
(
まへ
)
さまは
二
(
ふた
)
つ
目
(
め
)
には
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
だと
仰有
(
おつしや
)
るが、
193
そんな
立派
(
りつぱ
)
な
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
なら
何故
(
なぜ
)
宝玉
(
ほうぎよく
)
を
隠
(
かく
)
されて、
194
それを
知
(
し
)
らずに
居
(
を
)
りましたか。
195
それの
分
(
わか
)
らぬ
様
(
やう
)
な
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
なら
我々
(
われわれ
)
は
信頼
(
しんらい
)
する
丈
(
だ
)
けの
価値
(
かち
)
がありませぬ』
196
一同
(
いちどう
)
は『ヒヤヒヤ』と
叫
(
さけ
)
ぶ。
197
中
(
なか
)
には『
加米彦
(
かめひこ
)
さま、
198
確
(
しつか
)
り
頼
(
たの
)
みます』と
弥次
(
やじ
)
る
者
(
もの
)
もあつた。
199
高姫
(
たかひめ
)
『
誰
(
たれ
)
が
何
(
なん
)
と
言
(
い
)
つても
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
に
間違
(
まちが
)
ひはない。
200
そんな
小
(
ちひ
)
さい
事
(
こと
)
に
齷齪
(
あくせく
)
して
居
(
を
)
る
様
(
やう
)
な
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
なれば、
201
如何
(
どう
)
して
此
(
この
)
三千
(
さんぜん
)
世界
(
せかい
)
の
御用
(
ごよう
)
が
勤
(
つと
)
まりますか。
202
物
(
もの
)
が
分
(
わか
)
らぬにも
程
(
ほど
)
がある。
203
仮令
(
たとへ
)
此
(
この
)
高姫
(
たかひめ
)
一人
(
ひとり
)
になつたとて
此
(
この
)
事
(
こと
)
仕遂
(
しと
)
げねば
措
(
お
)
きませぬぞ』
204
加米彦
(
かめひこ
)
『
高姫
(
たかひめ
)
さま、
205
一人
(
ひとり
)
になつてもと
今
(
いま
)
言
(
い
)
はれましたな。
206
此
(
この
)
通
(
とほ
)
り
沢山
(
たくさん
)
の
方々
(
かたがた
)
が
見
(
み
)
えて
居
(
を
)
つても、
207
只
(
ただ
)
一人
(
ひとり
)
も
貴女
(
あなた
)
の
説
(
せつ
)
に
賛成
(
さんせい
)
する
者
(
もの
)
が
無
(
な
)
いのを
見
(
み
)
れば、
208
既
(
すで
)
に
已
(
すで
)
に
一人
(
ひとり
)
になつて
居
(
ゐ
)
るのではありませぬか』
209
場
(
ぢやう
)
の
四隅
(
よすみ
)
より『
妙々
(
めうめう
)
』『
賛成
(
さんせい
)
々々
(
さんせい
)
』『しつかり
頼
(
たの
)
む』『
孤城
(
こじやう
)
落日
(
らくじつ
)
』
等
(
とう
)
の
弥次
(
やじ
)
り
声
(
ごゑ
)
が
聞
(
きこ
)
えて
来
(
き
)
た。
210
高姫
(
たかひめ
)
『
盲目
(
めくら
)
千
(
せん
)
人
(
にん
)
、
211
目明
(
めあき
)
一人
(
ひとり
)
の
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
とはよくも
言
(
い
)
つた
者
(
もの
)
だ。
212
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
心中
(
しんちう
)
をお
察
(
さつ
)
し
申
(
まを
)
す。
213
あゝあ、
214
斯
(
こ
)
んな
分
(
わか
)
らぬ
身魂
(
みたま
)
の
曇
(
くも
)
つた
人民
(
じんみん
)
計
(
ばか
)
りを、
215
根
(
ね
)
の
国
(
くに
)
、
216
底
(
そこ
)
の
国
(
くに
)
の
苦
(
くる
)
しみから
助
(
たす
)
けてやらうと
思召
(
おぼしめ
)
す
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
や、
217
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
様
(
さま
)
の
広大
(
くわうだい
)
無辺
(
むへん
)
のお
心
(
こころ
)
が
おいと
しい』
218
と
涙
(
なみだ
)
を
拭
(
ぬぐ
)
ふ。
219
加米彦
(
かめひこ
)
『
高姫
(
たかひめ
)
さま、
220
貴女
(
あなた
)
の
誠心
(
まごころ
)
は
我々
(
われわれ
)
も
認
(
みと
)
めて
居
(
を
)
りますが、
221
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
根本
(
こんぽん
)
的
(
てき
)
に
大誤解
(
だいごかい
)
があるのを
我々
(
われわれ
)
は
遺憾
(
ゐかん
)
に
存
(
ぞん
)
じます。
222
貴女
(
あなた
)
の
肉体
(
にくたい
)
は
変性
(
へんじやう
)
男子
(
なんし
)
の
系統
(
ひつぽう
)
だから
曲津
(
まがつ
)
神
(
かみ
)
が
抱込
(
だきこ
)
んで、
223
国治立
(
くにはるたちの
)
大神
(
おほかみ
)
のおでましを
妨害
(
ばうがい
)
し、
224
再
(
ふたた
)
び
悪魔
(
あくま
)
の
世界
(
せかい
)
にしやうとして
居
(
ゐ
)
るのですから、
225
ちつとは
省
(
かへり
)
みなさつたが
宜
(
よろ
)
しからう、
226
我々
(
われわれ
)
の
様
(
やう
)
な
肉体
(
にくたい
)
に
憑
(
うつ
)
つた
処
(
ところ
)
で
悪魔
(
あくま
)
の
目的
(
もくてき
)
は
達
(
たつ
)
しない。
227
断
(
き
)
つても
断
(
き
)
れぬ
系統
(
ひつぽう
)
の
肉体
(
にくたい
)
を
応用
(
おうよう
)
して
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
だと
誤魔化
(
ごまくわ
)
すのですから
御
(
ご
)
用心
(
ようじん
)
なさらぬと、
228
遂
(
つひ
)
には
貴女
(
あなた
)
の
身
(
み
)
の
破滅
(
はめつ
)
は
言
(
い
)
ふに
及
(
およ
)
ばず、
229
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
経綸
(
けいりん
)
を
妨害
(
ばうがい
)
し
天下
(
てんか
)
に
大害毒
(
だいがいどく
)
を
流
(
なが
)
す
様
(
やう
)
になりますから、
230
此処
(
ここ
)
は
一
(
ひと
)
つ
冷静
(
れいせい
)
にお
考
(
かんが
)
へを
願
(
ねが
)
ひたい。
231
寄
(
よ
)
ると
触
(
さは
)
ると
幹部
(
かんぶ
)
を
始
(
はじ
)
め
数多
(
あまた
)
の
信者
(
しんじや
)
は、
232
此
(
この
)
事
(
こと
)
計
(
ばか
)
りに
頭
(
あたま
)
を
悩
(
なや
)
めて
居
(
を
)
りますが、
233
然
(
しか
)
し
貴女
(
あなた
)
が
変性
(
へんじやう
)
男子
(
なんし
)
の
系統
(
ひつぽう
)
でもあり、
234
断
(
き
)
つても
断
(
き
)
れぬお
方
(
かた
)
ぢやと
言
(
い
)
ふので
皆
(
みんな
)
遠慮
(
ゑんりよ
)
して
居
(
を
)
るのです。
235
此
(
この
)
加米彦
(
かめひこ
)
なればこそ、
236
職
(
しよく
)
を
賭
(
と
)
して
斯
(
か
)
かる
苦言
(
くげん
)
を
申
(
まを
)
し
上
(
あ
)
げるのです。
237
決
(
けつ
)
して
貴女
(
あなた
)
を
排斥
(
はいせき
)
しようとか、
238
除
(
の
)
け
者
(
もの
)
にしようとの
悪
(
わる
)
い
心
(
こころ
)
は
少
(
すこ
)
しもありませぬ。
239
第一
(
だいいち
)
貴女
(
あなた
)
のお
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
を
案
(
あん
)
じ、
240
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
経綸
(
けいりん
)
を
完全
(
くわんぜん
)
に
成就
(
じやうじゆ
)
して
頂
(
いただ
)
き、
241
世界
(
せかい
)
の
人民
(
じんみん
)
もミロクの
神政
(
しんせい
)
を
謳歌
(
おうか
)
し、
242
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
松
(
まつ
)
の
世
(
よ
)
をつくり
上
(
あ
)
げ
度
(
た
)
いとの
熱心
(
ねつしん
)
から
御
(
ご
)
忠告
(
ちうこく
)
を
申
(
まを
)
し
上
(
あ
)
げるのです。
243
何卒
(
どうぞ
)
よくお
考
(
かんが
)
へを
願
(
ねが
)
ひます』
244
高姫
(
たかひめ
)
『
秋山彦
(
あきやまひこ
)
の
門番
(
もんばん
)
、
245
加米彦
(
かめひこ
)
、
246
そりや
何
(
なに
)
を
言
(
い
)
ふか。
247
ヤツとの
事
(
こと
)
で
宣伝使
(
せんでんし
)
の
末席
(
はしくれ
)
に
加
(
くは
)
へられたと
思
(
おも
)
つて、
248
ようツベコベと
其
(
そ
)
んな
屁理屈
(
へりくつ
)
が
言
(
い
)
へたものだ。
249
系統
(
ひつぽう
)
を
抱
(
だ
)
き
込
(
こ
)
んで
目的
(
もくてき
)
を
立
(
た
)
てると
言
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
は、
250
それは
言依別
(
ことよりわけの
)
命
(
みこと
)
の
事
(
こと
)
だ。
251
此
(
この
)
高姫
(
たかひめ
)
は
正真
(
しやうしん
)
正銘
(
しやうめい
)
の
変性
(
へんじやう
)
男子
(
なんし
)
よりも
早
(
はや
)
い
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
降臨
(
かうりん
)
、
252
云
(
い
)
はば
変性
(
へんじやう
)
男子
(
なんし
)
よりも
高姫
(
たかひめ
)
の
方
(
はう
)
が
先輩
(
せんぱい
)
と
云
(
い
)
つても
異論
(
いろん
)
はありますまい。
253
打割
(
うちわ
)
つて
言
(
い
)
へば、
254
変性
(
へんじやう
)
男子
(
なんし
)
よりも
此
(
この
)
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
が
教祖
(
けうそ
)
とならねばならぬ
者
(
もの
)
だ。
255
変性
(
へんじやう
)
男子
(
なんし
)
の
肉体
(
にくたい
)
は
最早
(
もはや
)
昇天
(
しようてん
)
されたのだから、
256
後
(
あと
)
は
高姫
(
たかひめ
)
が
教祖
(
けうそ
)
の
御用
(
ごよう
)
をするのが
神界
(
しんかい
)
の
経綸
(
けいりん
)
上
(
じやう
)
当然
(
たうぜん
)
の
帰結
(
きけつ
)
であります。
257
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
一歩
(
いつぽ
)
を
譲
(
ゆづ
)
つて
変性
(
へんじやう
)
女子
(
によし
)
の
言依別
(
ことよりわけ
)
を
教主
(
けうしゆ
)
にしてやつて
置
(
お
)
いてあるのは、
258
皆
(
みんな
)
此
(
この
)
高姫
(
たかひめ
)
が
黙
(
だま
)
つて
居
(
を
)
るからだ。
259
然
(
しか
)
し
最早
(
もはや
)
斯
(
こ
)
うなつては
勘忍袋
(
かんにんぶくろ
)
の
緒
(
を
)
がきれて
来
(
き
)
た。
260
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
が
加米彦
(
かめひこ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
を
今日
(
けふ
)
限
(
かぎ
)
り
免職
(
めんしよく
)
させ、
261
杢助
(
もくすけ
)
の
総務役
(
そうむやく
)
を
解
(
と
)
き、
262
言依別
(
ことよりわけの
)
命
(
みこと
)
を
放逐
(
はうちく
)
し、
263
玉治別
(
たまはるわけ
)
、
264
国依別
(
くによりわけ
)
の
没分暁漢
(
わからずや
)
も
今日
(
けふ
)
限
(
かぎ
)
り
免職
(
めんしよく
)
させるから、
265
今後
(
こんご
)
ノソノソ
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
ても
皆
(
みな
)
さまは
相手
(
あひて
)
になつてはなりませぬぞ』
266
加米彦
(
かめひこ
)
『アハヽヽヽ、
267
何程
(
なにほど
)
高姫
(
たかひめ
)
さまが
地団駄
(
ぢだんだ
)
踏
(
ふ
)
んで
呶鳴
(
どな
)
らつしやつても、
268
少
(
すこ
)
しも
我々
(
われわれ
)
に
於
(
おい
)
ては
痛痒
(
つうよう
)
を
感
(
かん
)
じませぬ。
269
お
前
(
まへ
)
に
任命
(
にんめい
)
されたのではない。
270
言依別
(
ことよりわけの
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
任
(
にん
)
ぜられたのだから、
271
要
(
い
)
らぬ
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
をして
下
(
くだ
)
さいますな』
272
高姫
(
たかひめ
)
『お
前
(
まへ
)
等
(
ら
)
の
知
(
し
)
つた
事
(
こと
)
ぢや
無
(
な
)
い。
273
善一筋
(
ぜんひとすぢ
)
の
誠
(
まこと
)
正直
(
しやうぢき
)
を
立
(
た
)
て
通
(
とほ
)
す
妾
(
わたし
)
の
仕込
(
しこ
)
んだ
魔我彦
(
まがひこ
)
、
274
竹彦
(
たけひこ
)
両人
(
りやうにん
)
こそ、
275
本当
(
ほんたう
)
に
立派
(
りつぱ
)
な
宣伝使
(
せんでんし
)
だ。
276
是
(
これ
)
から
誰
(
たれ
)
が
何
(
なん
)
と
言
(
い
)
つても
魔我彦
(
まがひこ
)
を
総務
(
そうむ
)
にし、
277
竹彦
(
たけひこ
)
を
副総務
(
ふくそうむ
)
に
神
(
かみ
)
が
致
(
いた
)
すから
左様
(
さやう
)
心得
(
こころえ
)
なされ。
278
嫌
(
いや
)
なお
方
(
かた
)
は
退
(
の
)
いて
下
(
くだ
)
され。
279
此
(
この
)
錦
(
にしき
)
の
宮
(
みや
)
は
高姫
(
たかひめ
)
が
誰
(
たれ
)
が
何
(
なん
)
と
言
(
い
)
つても
総監
(
そうかん
)
致
(
いた
)
すのだから』
280
此
(
この
)
時
(
とき
)
佐田彦
(
さだひこ
)
、
281
波留彦
(
はるひこ
)
の
両人
(
りやうにん
)
は
壇上
(
だんじやう
)
に
駆上
(
かけあが
)
り、
282
佐田彦
(
さだひこ
)
『
吾々
(
われわれ
)
は
言依別
(
ことよりわけの
)
命
(
みこと
)
様
(
さま
)
より
或
(
ある
)
特別
(
とくべつ
)
の
使命
(
しめい
)
を
帯
(
お
)
び、
283
御
(
ご
)
神宝
(
しんぱう
)
の
御用
(
ごよう
)
を
勤
(
つと
)
めた
者
(
もの
)
であります。
284
何
(
なん
)
と
言
(
い
)
つても
高姫
(
たかひめ
)
さまは
其
(
その
)
隠
(
かく
)
し
場所
(
ばしよ
)
が
分
(
わか
)
らなくては
駄目
(
だめ
)
ですよ。
285
大勢
(
おほぜい
)
の
者
(
もの
)
が
如何
(
どう
)
しても
貴女
(
あなた
)
に
畏服
(
ゐふく
)
するのは、
286
貴方
(
あなた
)
が
天眼力
(
てんがんりき
)
で
玉
(
たま
)
の
所在
(
ありか
)
を
言
(
い
)
ひ
当
(
あて
)
なくては
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
も
通
(
とほ
)
りませぬ』
287
高姫
(
たかひめ
)
は
目
(
め
)
を
瞋
(
いか
)
らせ、
288
高姫
(
たかひめ
)
『エヽ、
289
又
(
また
)
しても
門掃
(
かどはき
)
の
成上
(
なりあが
)
りがツベコベと
何
(
なに
)
を
言
(
い
)
ふのだ。
290
玉
(
たま
)
の
所在
(
ありか
)
が
分
(
わか
)
らぬ
様
(
やう
)
な
事
(
こと
)
で、
291
斯
(
こ
)
んな
啖呵
(
たんか
)
がきれますか。
292
屹度
(
きつと
)
時節
(
じせつ
)
が
来
(
き
)
たなれば
現
(
あらは
)
して
見
(
み
)
せて
上
(
あ
)
げよう』
293
佐田彦
(
さだひこ
)
『
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
も
時節
(
じせつ
)
には
叶
(
かな
)
ひませぬかな』
294
波留彦
(
はるひこ
)
『
吾々
(
われわれ
)
の
心
(
こころ
)
の
裡
(
うち
)
にチヤンと
仕舞
(
しま
)
ひ
込
(
こ
)
んであるのだが、
295
常平生
(
つねへいぜい
)
から
人
(
ひと
)
の
心
(
こころ
)
が
見
(
み
)
え
透
(
す
)
くと
仰有
(
おつしや
)
る
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
さまに、
296
此
(
この
)
胸
(
むね
)
の
中
(
なか
)
を
一寸
(
ちよつと
)
透視
(
とうし
)
して
貰
(
もら
)
ひませうか』
297
と
襟
(
えり
)
を
両方
(
りやうはう
)
に
開
(
あ
)
け、
298
胸板
(
むないた
)
を
出
(
だ
)
して
稍
(
やや
)
反身
(
そりみ
)
になり、
299
握
(
にぎ
)
り
拳
(
こぶし
)
を
固
(
かた
)
めてウンウンと
殴
(
なぐ
)
つて
見
(
み
)
せた。
300
高姫
(
たかひめ
)
『ツベコベと
神
(
かみ
)
に
向
(
むか
)
つて
理屈
(
りくつ
)
を
言
(
い
)
ふ
間
(
あひだ
)
は
駄目
(
だめ
)
だ。
301
誰
(
たれ
)
が
何
(
なん
)
と
言
(
い
)
つても
魔我彦
(
まがひこ
)
、
302
竹彦
(
たけひこ
)
位
(
ぐらゐ
)
立派
(
りつぱ
)
な
者
(
もの
)
はありませぬワイ。
303
妾
(
わたし
)
の
言
(
い
)
ふことが
気
(
き
)
に
喰
(
く
)
はぬ
人
(
ひと
)
はトツトと
尻
(
しり
)
からげて
帰
(
かへ
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
304
お
筆先
(
ふでさき
)
に
此
(
この
)
大本
(
おほもと
)
は
大勢
(
おほぜい
)
は
要
(
い
)
らぬ。
305
誠
(
まこと
)
の
者
(
もの
)
が
三
(
さん
)
人
(
にん
)
さへあれば
立派
(
りつぱ
)
に
御用
(
ごよう
)
が
勤
(
つと
)
めあがると、
306
変性
(
へんじやう
)
男子
(
なんし
)
のお
筆
(
ふで
)
にチヤンと
出
(
で
)
て
居
(
を
)
る。
307
今
(
いま
)
が
立替
(
たてかへ
)
立直
(
たてなほ
)
しの
時期
(
じき
)
ぢや、
308
サアサア
早
(
はや
)
う
各自
(
めいめい
)
に
覚悟
(
しがく
)
を
成
(
な
)
さいませ。
309
此処
(
ここ
)
は
大勢
(
おほぜい
)
は
要
(
い
)
りませぬ。
310
大勢
(
おほぜい
)
あるとゴテついて、
311
肝腎
(
かんじん
)
の
御用
(
ごよう
)
の
邪魔
(
じやま
)
になる。
312
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
が
天晴
(
あつぱ
)
れ
神政
(
しんせい
)
成就
(
じやうじゆ
)
さして
見
(
み
)
せるから、
313
其
(
その
)
時
(
とき
)
には
又
(
また
)
集
(
あつ
)
まつて
御座
(
ござ
)
れ。
314
神
(
かみ
)
は
我
(
わが
)
子
(
こ
)
、
315
他人
(
ひと
)
の
子
(
こ
)
の
隔
(
へだ
)
ては
致
(
いた
)
さぬから、
316
其
(
その
)
時
(
とき
)
になつたら、
317
「
高姫
(
たかひめ
)
様
(
さま
)
始
(
はじ
)
め
魔我彦
(
まがひこ
)
、
318
竹彦
(
たけひこ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
、
319
エライ
取違
(
とりちが
)
ひを
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
りましたから、
320
何卒
(
どうぞ
)
御
(
ご
)
勘弁
(
かんべん
)
下
(
くだ
)
さりませ」と
逆
(
さか
)
トンボリになつてお
詫
(
わび
)
に
来
(
き
)
なされ。
321
気好
(
きよ
)
う
赦
(
ゆる
)
して
上
(
あ
)
げるから、
322
今
(
いま
)
は
御
(
ご
)
神業
(
しんげふ
)
の
邪魔
(
じやま
)
になるからトツトと
帰
(
かへ
)
つて
下
(
くだ
)
され。
323
帰
(
かへ
)
るのが
嫌
(
いや
)
なら
高姫
(
たかひめ
)
の
言
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を
聞
(
き
)
いて、
324
改心
(
かいしん
)
をなさるが
宜
(
よ
)
からう』
325
斯
(
か
)
かる
所
(
ところ
)
へ
杢助
(
もくすけ
)
は
魔我彦
(
まがひこ
)
、
326
竹彦
(
たけひこ
)
両人
(
りやうにん
)
を
従
(
したが
)
へ、
327
ノソリノソリと
人
(
ひと
)
を
分
(
わ
)
けてやつて
来
(
き
)
た。
328
群集
(
ぐんしふ
)
は
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
て
思
(
おも
)
はず
雨霰
(
あめあられ
)
と
拍手
(
はくしゆ
)
した。
329
杢助
(
もくすけ
)
一行
(
いつかう
)
は
一同
(
いちどう
)
に
目礼
(
もくれい
)
し
乍
(
なが
)
ら
講座
(
かうざ
)
に
上
(
のぼ
)
り、
330
杢助
(
もくすけ
)
『アヽ
是
(
これ
)
は
是
(
これ
)
は
高姫
(
たかひめ
)
様
(
さま
)
、
331
御
(
ご
)
演説
(
えんぜつ
)
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
で
御座
(
ござ
)
いました。
332
嘸
(
さぞ
)
お
疲
(
つか
)
れでせう。
333
貴女
(
あなた
)
の
御
(
ご
)
信任
(
しんにん
)
厚
(
あつ
)
き
魔我彦
(
まがひこ
)
、
334
竹彦
(
たけひこ
)
の
立派
(
りつぱ
)
な
宣伝使
(
せんでんし
)
が
見
(
み
)
えました。
335
是
(
これ
)
から
貴女
(
あなた
)
に
代
(
かは
)
つて
演説
(
えんぜつ
)
なさるさうです。
336
私
(
わたし
)
も
大変
(
たいへん
)
に
両人
(
りやうにん
)
さんのお
説
(
せつ
)
には
感服
(
かんぷく
)
致
(
いた
)
しました』
337
高姫
(
たかひめ
)
は
百万
(
ひやくまん
)
の
援軍
(
ゑんぐん
)
を
得
(
え
)
たる
如
(
ごと
)
き
得意面
(
とくいづら
)
を
曝
(
さら
)
し、
338
肩
(
かた
)
を
聳
(
そび
)
やかし
稍
(
やや
)
仰向
(
あふむ
)
き
乍
(
なが
)
ら、
339
高姫
(
たかひめ
)
『
杢助殿
(
もくすけどの
)
、
340
アヽそれは
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
であつた。
341
よう
其処
(
そこ
)
迄
(
まで
)
改心
(
かいしん
)
が
出来
(
でき
)
て
結構
(
けつこう
)
だ。
342
是
(
これ
)
から
何事
(
なにごと
)
も
高姫
(
たかひめ
)
の
申
(
まを
)
す
事
(
こと
)
を
聞
(
き
)
きなさるか、
343
イヤ
改心
(
かいしん
)
をなさるか』
344
杢助
(
もくすけ
)
『
改心
(
かいしん
)
の
徹底
(
とことん
)
迄
(
まで
)
いつたものは、
345
最早
(
もはや
)
改心
(
かいしん
)
する
余地
(
よち
)
がありませぬ。
346
貴女
(
あなた
)
の
様
(
やう
)
に
改心
(
かいしん
)
から
後戻
(
あともど
)
りをして
慢心
(
まんしん
)
が
出来
(
でき
)
ると、
347
又
(
また
)
改心
(
かいしん
)
する
機会
(
きくわい
)
がありまするが、
348
吾々
(
われわれ
)
の
如
(
ごと
)
き
者
(
もの
)
は、
349
融通
(
ゆうづう
)
の
利
(
き
)
かぬ
困
(
こま
)
つた
者
(
もの
)
です。
350
貴女
(
あなた
)
の
様
(
やう
)
に
慢心
(
まんしん
)
しては
改心
(
かいしん
)
し、
351
改心
(
かいしん
)
しては
慢心
(
まんしん
)
し、
352
慢心
(
まんしん
)
改心
(
かいしん
)
、
353
改心
(
かいしん
)
慢心
(
まんしん
)
と
自由
(
じいう
)
自在
(
じざい
)
の
芸当
(
げいたう
)
は、
354
到底
(
たうてい
)
吾々
(
われわれ
)
の
様
(
やう
)
な
朴訥
(
ぼくとつ
)
な
人間
(
にんげん
)
では
不可能事
(
ふかのうじ
)
です、
355
アツハヽヽヽ』
356
と
豪傑
(
がうけつ
)
笑
(
わら
)
ひをする。
357
群集
(
ぐんしふ
)
は
手
(
て
)
を
拍
(
う
)
つて
笑
(
わら
)
ふ。
358
高姫
(
たかひめ
)
『アヽ
魔我彦
(
まがひこ
)
、
359
竹彦
(
たけひこ
)
、
360
好
(
い
)
い
処
(
ところ
)
へ
帰
(
かへ
)
つて
御座
(
ござ
)
つた。
361
皆
(
みな
)
さまに
合点
(
がつてん
)
の
往
(
ゆ
)
く
様
(
やう
)
に
此処
(
ここ
)
で
改心
(
かいしん
)
の
話
(
はなし
)
を
聞
(
き
)
かして
下
(
くだ
)
さい。
362
さうすれば
此
(
この
)
高姫
(
たかひめ
)
の
日頃
(
ひごろ
)
教育
(
けういく
)
した
力
(
ちから
)
も
現
(
あら
)
はるるなり、
363
お
前
(
まへ
)
さまの
善一筋
(
ぜんひとすぢ
)
の
一分
(
いちぶ
)
一厘
(
いちりん
)
歪
(
くる
)
はぬ
日本
(
やまと
)
魂
(
だましひ
)
の
生粋
(
きつすゐ
)
が
証明
(
しようめい
)
されるのだから、
364
サア
早
(
はや
)
うチヤツと
皆
(
みな
)
さまに
大々
(
だいだい
)
的
(
てき
)
訓戒
(
くんかい
)
を
与
(
あた
)
へて
下
(
くだ
)
さい。
365
これこれ
加米彦
(
かめひこ
)
、
366
佐田彦
(
さだひこ
)
、
367
波留彦
(
はるひこ
)
、
368
余
(
あんま
)
り
沢山
(
たくさん
)
に
講座
(
かうざ
)
に
居
(
を
)
ると
窮屈
(
きうくつ
)
でいかぬ。
369
暫
(
しば
)
らく
下
(
した
)
へおりて、
370
魔我彦
(
まがひこ
)
や、
371
竹彦
(
たけひこ
)
の
大
(
だい
)
宣伝使
(
せんでんし
)
の
御
(
ご
)
説教
(
せつけう
)
を
聞
(
き
)
くのだよ。
372
さうすれば、
373
チツトはお
前
(
まへ
)
さまの
我
(
が
)
も
折
(
を
)
れて
宜
(
よ
)
からう』
374
と
得意
(
とくい
)
満面
(
まんめん
)
に
溢
(
あふ
)
れ
肩
(
かた
)
を
揺
(
ゆす
)
りイソイソと
いきつ
て
居
(
ゐ
)
る。
375
魔我彦
(
まがひこ
)
は
大勢
(
おほぜい
)
に
向
(
むか
)
ひ、
376
魔我彦
『
皆
(
みな
)
さま、
377
私
(
わたくし
)
は
高姫
(
たかひめ
)
様
(
さま
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
御
(
ご
)
熱心
(
ねつしん
)
なる
御
(
ご
)
態度
(
たいど
)
に
心
(
こころ
)
の
底
(
そこ
)
から
感銘
(
かんめい
)
致
(
いた
)
しまして、
378
如何
(
どう
)
かして
高姫
(
たかひめ
)
様
(
さま
)
の
思惑
(
おもわく
)
を
立
(
た
)
てさし
度
(
た
)
いと
思
(
おも
)
ひ、
379
御
(
ご
)
心中
(
しんちう
)
を
忖度
(
そんたく
)
致
(
いた
)
しまして
紀伊
(
きい
)
の
国
(
くに
)
に
罷
(
まか
)
り
出
(
い
)
で、
380
実
(
じつ
)
の
処
(
ところ
)
は
若彦
(
わかひこ
)
を
巧
(
うま
)
く
誑
(
たぶら
)
かし
聖地
(
せいち
)
へ
連
(
つ
)
れ
帰
(
かへ
)
り、
381
杢助
(
もくすけ
)
さま、
382
言依別
(
ことよりわけ
)
の
教主
(
けうしゆ
)
を
或
(
ある
)
難題
(
なんだい
)
を
塗
(
ぬ
)
りつけ
放逐
(
はうちく
)
しやうと
企
(
たく
)
みつつ、
383
大台
(
おほだい
)
ケ
原
(
はら
)
の
峰続
(
みねつづ
)
き
青山峠
(
あをやまたうげ
)
までスタスタやつて
往
(
い
)
つた
所
(
ところ
)
、
384
玉治別
(
たまはるわけ
)
、
385
国依別
(
くによりわけ
)
の
両
(
りやう
)
宣伝使
(
せんでんし
)
が
谷
(
たに
)
の
風景
(
ふうけい
)
を
眺
(
なが
)
めて、
386
休息
(
きうそく
)
して
居
(
を
)
られました。
387
そこで
高姫
(
たかひめ
)
様
(
さま
)
の
一番
(
いちばん
)
お
邪魔
(
じやま
)
になるのは
言依別
(
ことよりわけの
)
命
(
みこと
)
、
388
それについで
命
(
みこと
)
の
信任
(
しんにん
)
厚
(
あつ
)
き
玉治別
(
たまはるわけ
)
、
389
国依別
(
くによりわけ
)
の
両人
(
りやうにん
)
を、
390
何
(
なん
)
とかして
葬
(
はうむ
)
り
去
(
さ
)
らうと
思
(
おも
)
ひ
進
(
すす
)
んで
行
(
い
)
つた
所
(
ところ
)
、
391
折
(
をり
)
よくも
日
(
ひ
)
の
暮前
(
くれまへ
)
両人
(
りやうにん
)
に
出会
(
でつくわ
)
し、
392
二人
(
ふたり
)
の
隙
(
すき
)
を
覗
(
うかが
)
ひ
千仭
(
せんじん
)
の
谷間
(
たにま
)
へ
突落
(
つきおと
)
し、
393
高姫
(
たかひめ
)
様
(
さま
)
の
邪魔
(
じやま
)
ものを
除
(
のぞ
)
かむものと
考
(
かんが
)
へて
居
(
を
)
りました。
394
万々一
(
まんまんいち
)
都合
(
つがふ
)
よく
行
(
ゆ
)
けば、
395
あとに
残
(
のこ
)
つた
言依別
(
ことよりわけの
)
命
(
みこと
)
位
(
ぐらゐ
)
は
最早
(
もはや
)
物
(
もの
)
の
数
(
かず
)
でもないと、
396
忽
(
たちま
)
ち
悪心
(
あくしん
)
を
起
(
おこ
)
し、
397
思
(
おも
)
ひきつて
谷底
(
たにぞこ
)
へ
突
(
つ
)
き
込
(
こ
)
みました。
398
両人
(
りやうにん
)
は
五体
(
ごたい
)
が
滅茶
(
めちや
)
々々
(
めちや
)
になつて
斃死
(
くたば
)
つただらうと
思
(
おも
)
つて
居
(
ゐ
)
ましたが、
399
あに
計
(
はか
)
らむや
妹図
(
いもうとはか
)
らむや、
400
若彦
(
わかひこ
)
の
館
(
やかた
)
に
於
(
おい
)
て
杢助
(
もくすけ
)
様
(
さま
)
始
(
はじ
)
め
玉
(
たま
)
、
401
国
(
くに
)
両
(
りやう
)
宣伝使
(
せんでんし
)
に
出会
(
でくわ
)
した
時
(
とき
)
のその
苦
(
くる
)
しさ
怖
(
こは
)
さ、
402
屹度
(
きつと
)
復讎
(
かたき
)
を
討
(
う
)
たれるに
相違
(
さうゐ
)
ないと
思
(
おも
)
つて
心配
(
しんぱい
)
を
致
(
いた
)
し、
403
生
(
い
)
きた
心地
(
ここち
)
も
無
(
な
)
くガタガタ
慄
(
ふる
)
へ
乍
(
なが
)
ら、
404
矢庭
(
やには
)
に
庭先
(
にはさき
)
の
松
(
まつ
)
の
樹
(
き
)
に
駆上
(
かけのぼ
)
り、
405
神憑
(
かむがか
)
りの
言
(
げん
)
を
信
(
しん
)
じ
雲
(
くも
)
に
乗
(
の
)
つて
逃
(
に
)
げ
出
(
だ
)
さうと
思
(
おも
)
ひ、
406
過
(
あやま
)
つて
二人
(
ふたり
)
共
(
とも
)
樹上
(
じゆじやう
)
より
大地
(
だいち
)
に
向
(
むか
)
つて
真逆
(
まつさか
)
様
(
さま
)
に
墜落
(
つゐらく
)
し、
407
人事
(
じんじ
)
不省
(
ふせい
)
に
陥
(
おちい
)
つて
居
(
を
)
る
所
(
ところ
)
を、
408
玉
(
たま
)
、
409
国
(
くに
)
の
両
(
りやう
)
宣伝使
(
せんでんし
)
の
手厚
(
てあつ
)
き
御
(
ご
)
保護
(
ほご
)
を
受
(
う
)
け、
410
さうして
鵜
(
う
)
の
毛
(
け
)
の
露
(
つゆ
)
ほども
怨
(
うら
)
み
給
(
たま
)
はず、
411
却
(
かへつ
)
て
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
から
結構
(
けつこう
)
な
教訓
(
けうくん
)
を
受
(
う
)
けたと
喜
(
よろこ
)
んで
下
(
くだ
)
さつた
時
(
とき
)
の
吾々
(
われわれ
)
の
心
(
こころ
)
、
412
到底
(
たうてい
)
高姫
(
たかひめ
)
さまの
教
(
をし
)
へられる
事
(
こと
)
とは
天地
(
てんち
)
雲泥
(
うんでい
)
の
違
(
ちが
)
ひで
御座
(
ござ
)
いました。
413
そこで
私
(
わたくし
)
は
何故
(
なぜ
)
此
(
この
)
様
(
やう
)
な
善
(
ぜん
)
のお
方
(
かた
)
を
悪
(
わる
)
く
思
(
おも
)
つたか
知
(
し
)
らぬと、
414
懺悔
(
ざんげ
)
の
念
(
ねん
)
に
堪
(
た
)
へず
考
(
かんが
)
へ
込
(
こ
)
んで
居
(
を
)
りましたが、
415
矢張
(
やつぱり
)
言依別
(
ことよりわけ
)
の
教主
(
けうしゆ
)
の
教理
(
けうり
)
を
聞
(
き
)
いて
御座
(
ござ
)
るお
蔭
(
かげ
)
で、
416
斯
(
こ
)
んな
立派
(
りつぱ
)
な
人格
(
じんかく
)
になられたのであらうと
深
(
ふか
)
く
感
(
かん
)
じました。
417
又
(
また
)
私
(
わたくし
)
があの
様
(
やう
)
な
悪心
(
あくしん
)
を
起
(
おこ
)
したのも、
418
矢張
(
やつぱり
)
高姫
(
たかひめ
)
さまの
感化力
(
かんくわりよく
)
がさせた
事
(
こと
)
だとホトホト
恐
(
おそ
)
ろしくなりました。
419
如何
(
どう
)
しても
人間
(
にんげん
)
は
師匠
(
ししやう
)
を
選
(
えら
)
ばねばなりませぬ。
420
水
(
みづ
)
は
方円
(
はうゑん
)
の
器
(
うつは
)
に
随
(
したが
)
ふとか
申
(
まを
)
しまして、
421
教
(
をそ
)
はる
師匠
(
ししやう
)
、
422
交
(
まじ
)
はる
友
(
とも
)
によつて
善
(
ぜん
)
にもなり、
423
悪
(
あく
)
にもなるものと
堅
(
かた
)
く
信
(
しん
)
じます。
424
私
(
わたくし
)
は
皆
(
みな
)
さまに
今日
(
こんにち
)
迄
(
まで
)
の
取違
(
とりちがひ
)
を
此処
(
ここ
)
にお
詫
(
わび
)
致
(
いた
)
します』
425
高姫
(
たかひめ
)
『コレコレ
魔我彦
(
まがひこ
)
、
426
誰
(
たれ
)
がそんな
乱暴
(
らんばう
)
な
事
(
こと
)
をせいと
言
(
い
)
ひましたか、
427
それは
大方
(
おほかた
)
言依別
(
ことよりわけ
)
の
霊
(
れい
)
が
憑
(
うつ
)
つたのだらう』
428
竹彦
(
たけひこ
)
『イヽエ、
429
言依別
(
ことよりわけ
)
さまの
身魂
(
みたま
)
は
余
(
あんま
)
り
尊
(
たふと
)
く
清
(
きよ
)
らかで、
430
我々
(
われわれ
)
の
様
(
やう
)
な
小
(
ちひ
)
さい
曇
(
くも
)
つた
鏡
(
かがみ
)
にはおうつりに
成
(
な
)
りませぬ。
431
全
(
まつた
)
く
高姫
(
たかひめ
)
さまや、
432
黒姫
(
くろひめ
)
さまの
生霊
(
いきりやう
)
が
憑
(
うつ
)
りましてな』
433
聴衆
(
ちやうしう
)
は
手
(
て
)
を
拍
(
う
)
つてドヨメキ
渡
(
わた
)
る。
434
杢助
(
もくすけ
)
は
又
(
また
)
もや
口
(
くち
)
を
開
(
ひら
)
き、
435
杢助
(
もくすけ
)
『
皆
(
みな
)
さま、
436
私
(
わたくし
)
は
言依別
(
ことよりわけ
)
の
教主
(
けうしゆ
)
より
内命
(
ないめい
)
を
奉
(
ほう
)
じ、
437
十津川
(
とつがは
)
の
谷間
(
たにあひ
)
へ
急行
(
きふかう
)
せよとの
仰
(
あふ
)
せにより
行
(
い
)
つて
見
(
み
)
れば、
438
谷川
(
たにがは
)
に
似合
(
にあ
)
はぬ
大滝
(
おほたき
)
の
下
(
した
)
に
立派
(
りつぱ
)
な
青
(
あを
)
い
淵
(
ふち
)
がありました。
439
そこで
水行
(
すゐぎやう
)
して
居
(
ゐ
)
ると
上
(
うへ
)
から
二人
(
ふたり
)
の
男
(
をとこ
)
が
突然
(
とつぜん
)
降
(
ふ
)
り
来
(
きた
)
り、
440
ザンブとばかり
淵
(
ふち
)
へ
落
(
お
)
ち
込
(
こ
)
んだ。
441
日
(
ひ
)
の
暮
(
くれ
)
紛
(
まぎ
)
れに
何人
(
なんぴと
)
か
分
(
わか
)
らねども
見逃
(
みのが
)
す
訳
(
わけ
)
にも
行
(
ゆ
)
かぬ、
442
直
(
ただち
)
に
淵
(
ふち
)
へとび
込
(
こ
)
んで
救
(
すく
)
ひ
上
(
あ
)
げ
色々
(
いろいろ
)
と
介抱
(
かいほう
)
した
所
(
ところ
)
、
443
二人
(
ふたり
)
の
男
(
をとこ
)
は
漸
(
やうや
)
く
息
(
いき
)
を
吹
(
ふ
)
き
返
(
かへ
)
しました。
444
よくよく
見
(
み
)
れば、
445
玉治別
(
たまはるわけ
)
、
446
国依別
(
くによりわけ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
で
御座
(
ござ
)
いました。
447
それより
両人
(
りやうにん
)
に
向
(
むか
)
ひ
如何
(
どう
)
して
斯
(
こ
)
んな
所
(
ところ
)
へ
落
(
お
)
ち
込
(
こ
)
んだのですかと
尋
(
たづ
)
ねて
見
(
み
)
ましたが、
448
御
(
ご
)
両人
(
りやうにん
)
は
他人
(
たにん
)
に
瑕瑾
(
きず
)
をつけまいと
言
(
い
)
ふ
誠心
(
まごころ
)
から、
449
現在
(
げんざい
)
此
(
この
)
魔我彦
(
まがひこ
)
、
450
竹彦
(
たけひこ
)
につき
落
(
おと
)
された
事
(
こと
)
を
一言
(
いちごん
)
も
発
(
はつ
)
せず
隠
(
かく
)
して
居
(
を
)
られました。
451
さうして
二人
(
ふたり
)
に
対
(
たい
)
して
毛頭
(
まうとう
)
怨
(
うら
)
みを
抱
(
いだ
)
いて
居
(
を
)
られないのには
私
(
わたくし
)
も
感服
(
かんぷく
)
致
(
いた
)
しました。
452
是
(
これ
)
と
言
(
い
)
ふのも
全
(
まつた
)
く
瑞
(
みづ
)
の
御霊
(
みたま
)
の
大精神
(
だいせいしん
)
を
体得
(
たいとく
)
して
居
(
を
)
られるからだと、
453
流石
(
さすが
)
の
杢助
(
もくすけ
)
も
感涙
(
かんるゐ
)
に
咽
(
むせ
)
び、
454
それより
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
道
(
みち
)
を
急
(
いそ
)
いで
若彦
(
わかひこ
)
の
館
(
やかた
)
に
行
(
い
)
つて
見
(
み
)
れば、
455
魔我彦
(
まがひこ
)
、
456
竹彦
(
たけひこ
)
の
両人
(
りやうにん
)
が
何事
(
なにごと
)
か
善
(
よ
)
からぬ
虚言
(
きよげん
)
を
構
(
かま
)
へ
若彦
(
わかひこ
)
を
唆
(
そその
)
かし
大陰謀
(
だいいんぼう
)
を
企
(
たく
)
まむとして
居
(
ゐ
)
る
所
(
ところ
)
でありました。
457
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
流石
(
さすが
)
の
悪人
(
あくにん
)
も
誠
(
まこと
)
の
心
(
こころ
)
に
感
(
かん
)
じ
斯
(
か
)
くの
如
(
ごと
)
く
改心
(
かいしん
)
を
致
(
いた
)
して、
458
自分
(
じぶん
)
の
罪状
(
ざいじやう
)
を
逐一
(
ちくいち
)
皆
(
みな
)
さまの
前
(
まへ
)
に
曝
(
さら
)
け
出
(
だ
)
し
真心
(
まごころ
)
を
示
(
しめ
)
して
居
(
を
)
られます。
459
之
(
これ
)
でも
言依別
(
ことよりわけ
)
様
(
さま
)
の
教
(
をしへ
)
が
悪
(
あく
)
と
言
(
い
)
はれませうか。
460
高姫
(
たかひめ
)
さまの
教
(
をしへ
)
は
果
(
はた
)
して
完全
(
くわんぜん
)
なもので
御座
(
ござ
)
いませうか』
461
と
釘
(
くぎ
)
をさされて
高姫
(
たかひめ
)
はグツとつまり、
462
壇上
(
だんじやう
)
を
蹴散
(
けち
)
らす
如
(
ごと
)
き
勢
(
いきほひ
)
で
肩
(
かた
)
を
斜
(
はすかい
)
に
首
(
くび
)
を
左右
(
さいう
)
に
振
(
ふ
)
り
乍
(
なが
)
ら、
463
己
(
おの
)
が
館
(
やかた
)
へ
足早
(
あしばや
)
に
帰
(
かへ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
464
斯
(
か
)
かる
所
(
ところ
)
へ
言依別
(
ことよりわけ
)
の
教主
(
けうしゆ
)
は
莞爾
(
くわんじ
)
として
現
(
あら
)
はれ、
465
一場
(
いちぢやう
)
の
演説
(
えんぜつ
)
を
試
(
こころ
)
みた。
466
玉治別
(
たまはるわけ
)
、
467
国依別
(
くによりわけ
)
、
468
若彦
(
わかひこ
)
の
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
此
(
この
)
場
(
ば
)
に
悠然
(
いうぜん
)
として
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
り、
469
一同
(
いちどう
)
に
会釈
(
ゑしやく
)
し、
470
神殿
(
しんでん
)
に
向
(
むか
)
ひ
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し
終
(
をは
)
つて
一同
(
いちどう
)
解散
(
かいさん
)
したり。
471
今後
(
こんご
)
の
高姫
(
たかひめ
)
は
如何
(
いか
)
なる
行動
(
かうどう
)
を
執
(
と
)
るならむか。
472
(
大正一一・六・一〇
旧五・一五
北村隆光
録)
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