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霊界物語
如意宝珠(第13~24巻)
第23巻(戌の巻)
序文
総説
第1篇 南海の山
第1章 玉の露
第2章 副守囁
第3章 松上の苦悶
第4章 長高説
第2篇 恩愛の涙
第5章 親子奇遇
第6章 神異
第7章 知らぬが仏
第8章 縺れ髪
第3篇 有耶無耶
第9章 高姫騒
第10章 家宅侵入
第11章 難破船
第12章 家島探
第13章 捨小舟
第14章 籠抜
第4篇 混線状態
第15章 婆と婆
第16章 蜈蚣の涙
第17章 黄竜姫
第18章 波濤万里
霊の礎(八)
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霊界物語
>
如意宝珠(第13~24巻)
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第23巻(戌の巻)
> 第4篇 混線状態 > 第16章 蜈蚣の涙
<<< 婆と婆
(B)
(N)
黄竜姫 >>>
第一六章
蜈蚣
(
むかで
)
の
涙
(
なみだ
)
〔七二八〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第23巻 如意宝珠 戌の巻
篇:
第4篇 混線状態
よみ(新仮名遣い):
こんせんじょうたい
章:
第16章 蜈蚣の涙
よみ(新仮名遣い):
むかでのなみだ
通し章番号:
728
口述日:
1922(大正11)年06月13日(旧05月18日)
口述場所:
筆録者:
加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年4月19日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
蜈蚣姫と高姫は、バラモン教のために三五教と闘う苦心を明かしながら、打ち解けて話しにふけっている。
そのうちに、高姫が連れている二人の男は誰かと蜈蚣姫が聞いた。高姫が、一人はバラモン教の友彦だと答えると、蜈蚣姫は驚いた。友彦は、過去に蜈蚣姫の娘と駆け落ちしていたという。
高姫に呼ばれた友彦は、ここがバラモン教の蜈蚣姫の館だと知ると、途端に青くなってしまった。友彦はおそるおそる高姫の後について蜈蚣姫の間に進む。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2021-07-06 18:44:20
OBC :
rm2316
愛善世界社版:
261頁
八幡書店版:
第4輯 591頁
修補版:
校定版:
265頁
普及版:
123頁
初版:
ページ備考:
001
バラモン
教
(
けう
)
の
御教
(
みをしへ
)
を
002
自転倒
(
おのころ
)
島
(
じま
)
に
広
(
ひろ
)
めむと
003
はやる
心
(
こころ
)
の
鬼
(
おに
)
ケ
城
(
じやう
)
004
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
の
妻
(
つま
)
となり
005
朝
(
あさ
)
な
夕
(
ゆふ
)
なに
仕
(
つか
)
へてし
006
蜈蚣
(
むかで
)
の
姫
(
ひめ
)
は
一心
(
いつしん
)
に
007
バラモン
教
(
けう
)
の
回復
(
くわいふく
)
を
008
心
(
こころ
)
に
深
(
ふか
)
く
誓
(
ちか
)
ひつつ
009
三国
(
みくに
)
ケ
岳
(
だけ
)
に
立籠
(
たてこも
)
り
010
千々
(
ちぢ
)
に
心
(
こころ
)
を
悩
(
なや
)
ませて
011
三五教
(
あななひけう
)
の
神宝
(
かむだから
)
012
黄金
(
こがね
)
の
玉
(
たま
)
を
奪
(
うば
)
ひ
取
(
と
)
り
013
筐底
(
けうてい
)
深
(
ふか
)
く
納
(
をさ
)
めつつ
014
得意
(
とくい
)
の
鼻
(
はな
)
を
蠢
(
うごめ
)
かせ
015
又
(
また
)
もや
第二
(
だいに
)
の
計画
(
けいくわく
)
に
016
取
(
と
)
りかからむとする
時
(
とき
)
に
017
天
(
あめ
)
の
真浦
(
まうら
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
018
お
玉
(
たま
)
の
方
(
かた
)
に
看破
(
かんぱ
)
され
019
難攻
(
なんこう
)
不落
(
ふらく
)
と
誇
(
ほこ
)
りたる
020
三国
(
みくに
)
ケ
岳
(
だけ
)
の
山寨
(
さんさい
)
も
021
木端
(
こつぱ
)
微塵
(
みじん
)
に
砕
(
くだ
)
かれて
022
無念
(
むねん
)
の
涙
(
なみだ
)
遣
(
や
)
る
瀬
(
せ
)
なく
023
瞋恚
(
しんい
)
の
炎
(
ほのほ
)
を
燃
(
も
)
やしつつ
024
心
(
こころ
)
も
固
(
かた
)
き
老
(
おい
)
の
身
(
み
)
の
025
企
(
たくみ
)
を
通
(
とほ
)
す
魔谷
(
まや
)
ケ
岳
(
だけ
)
026
スマートボールを
始
(
はじ
)
めとし
027
数多
(
あまた
)
の
教徒
(
けうと
)
を
呼集
(
よびつど
)
へ
028
鷹鳥山
(
たかとりやま
)
に
立
(
た
)
て
籠
(
こも
)
る
029
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
030
鷹鳥姫
(
たかとりひめ
)
の
神策
(
しんさく
)
を
031
覆
(
くつがへ
)
さむと
朝夕
(
あさゆふ
)
に
032
心
(
こころ
)
を
砕
(
くだ
)
き
身
(
み
)
を
砕
(
くだ
)
き
033
尽
(
つく
)
せし
甲斐
(
かひ
)
も
荒風
(
あらかぜ
)
に
034
散
(
ち
)
りて
果敢
(
はか
)
なき
夢
(
ゆめ
)
の
間
(
ま
)
の
035
願
(
ねがひ
)
は
脆
(
もろ
)
くも
消
(
き
)
え
失
(
う
)
せて
036
歯
(
は
)
がみしながら
執拗
(
しつえう
)
に
037
又
(
また
)
もや
此処
(
ここ
)
を
飛出
(
とびいだ
)
し
038
曇
(
くも
)
りし
胸
(
むね
)
も
明石潟
(
あかしがた
)
039
朝夕
(
あさゆふ
)
祈
(
いの
)
る
神島
(
かみしま
)
や
040
家島
(
えじま
)
を
左手
(
ゆんで
)
に
眺
(
なが
)
めつつ
041
身
(
み
)
も
魂
(
たましひ
)
も
捨
(
す
)
て
小舟
(
をぶね
)
042
此
(
この
)
世
(
よ
)
の
瀬戸
(
せと
)
の
浪
(
なみ
)
を
越
(
こ
)
え
043
大島
(
おほしま
)
、
小島
(
こじま
)
、
小豆島
(
せうどしま
)
044
浪
(
なみ
)
打
(
う
)
ち
際
(
ぎは
)
に
漂着
(
へうちやく
)
し
045
三
(
み
)
つの
宝
(
たから
)
の
所在
(
ありか
)
をば
046
探
(
さぐ
)
らむものと
国城
(
くにしろ
)
の
047
山
(
やま
)
を
目蒐
(
めが
)
けて
一行
(
いつかう
)
の
048
頭
(
あたま
)
の
数
(
かず
)
も
四十八
(
しじふはち
)
049
醜
(
しこ
)
の
岩窟
(
いはや
)
に
陣取
(
ぢんど
)
りて
050
手下
(
てした
)
を
四方
(
よも
)
に
配
(
くば
)
りつつ
051
山
(
やま
)
の
尾上
(
をのへ
)
や
河
(
かは
)
の
瀬
(
せ
)
を
052
隈
(
くま
)
なく
探
(
さが
)
し
求
(
もと
)
めつつ
053
此
(
この
)
岩窟
(
いはやど
)
を
暫時
(
しばし
)
の
間
(
ま
)
054
仮
(
かり
)
の
住家
(
すみか
)
と
繕
(
つくろ
)
ひて
055
時
(
とき
)
待
(
ま
)
つ
折
(
をり
)
しも
高姫
(
たかひめ
)
が
056
神
(
かみ
)
の
仕組
(
しぐみ
)
も
白浪
(
しらなみ
)
の
057
上
(
うへ
)
を
辷
(
すべ
)
つて
上陸
(
じやうりく
)
し
058
又
(
また
)
もや
此処
(
ここ
)
に
出
(
い
)
で
来
(
きた
)
る
059
不思議
(
ふしぎ
)
の
縁
(
えん
)
に
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
060
心
(
こころ
)
の
角
(
つの
)
を
生
(
はや
)
しつつ
061
肩肱
(
かたひぢ
)
怒
(
いか
)
らし
剛情
(
がうじやう
)
の
062
日頃
(
ひごろ
)
の
固意地
(
かたいぢ
)
どこへやら
063
解
(
と
)
けて
嬉
(
うれ
)
しきバラモンの
064
道
(
みち
)
の
友
(
とも
)
なる
高姫
(
たかひめ
)
と
065
聞
(
き
)
くより
顔色
(
がんしよく
)
一変
(
いつぺん
)
し
066
打
(
う
)
つて
変
(
かは
)
つた
待遇
(
たいぐう
)
に
067
仕
(
し
)
済
(
す
)
ましたりと
高姫
(
たかひめ
)
は
068
後
(
うしろ
)
を
向
(
む
)
いて
舌
(
した
)
を
出
(
だ
)
し
069
素知
(
そし
)
らぬ
顔
(
かほ
)
にて
奥
(
おく
)
の
間
(
ま
)
へ
070
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
るこそ
可笑
(
をか
)
しけれ
071
高姫
(
たかひめ
)
『
久
(
ひさ
)
し
振
(
ぶり
)
で
御座
(
ござ
)
いましたなア。
072
貴女
(
あなた
)
が
魔谷
(
まや
)
ケ
岳
(
だけ
)
に
時
(
とき
)
めいて
居
(
を
)
られました
時
(
とき
)
、
073
妾
(
わたし
)
も
鷹鳥山
(
たかとりやま
)
に
庵
(
いほり
)
を
結
(
むす
)
び、
074
バラモン
教
(
けう
)
に
最
(
もつと
)
も
必要
(
ひつえう
)
なる、
075
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
の
玉
(
たま
)
を
尋
(
たづ
)
ねあてむものと、
076
三五教
(
あななひけう
)
の
馬鹿
(
ばか
)
正直
(
しやうぢき
)
の
信徒
(
しんと
)
を
駆使
(
くし
)
し、
077
一
(
いち
)
日
(
にち
)
も
早
(
はや
)
く
手
(
て
)
に
入
(
い
)
れて、
078
大自在天
(
だいじざいてん
)
様
(
さま
)
に
献納
(
けんなふ
)
仕度
(
した
)
いと
明
(
あ
)
けても
暮
(
く
)
れても
心
(
こころ
)
を
悩
(
なや
)
ませ、
079
何
(
ど
)
うかして
貴女
(
あなた
)
に
面会
(
めんくわい
)
の
機会
(
きくわい
)
を
得度
(
えた
)
いものと
考
(
かんが
)
へて
居
(
を
)
りましたが、
080
何
(
なに
)
を
云
(
い
)
うても
人目
(
ひとめ
)
の
関
(
せき
)
に
隔
(
へだ
)
てられ、
081
思
(
おも
)
ふに
任
(
まか
)
せず、
082
遇
(
あ
)
ひたさ
見
(
み
)
たさを
耐
(
こら
)
へて
今日
(
けふ
)
が
日
(
ひ
)
迄
(
まで
)
暮
(
くら
)
して
来
(
き
)
ました。
083
天運
(
てんうん
)
循環
(
じゆんかん
)
と
云
(
い
)
ひませうか、
084
今日
(
けふ
)
は
又
(
また
)
日頃
(
ひごろ
)
お
慕
(
した
)
ひまうす
貴女
(
あなた
)
に、
085
斯様
(
かやう
)
な
安全
(
あんぜん
)
地帯
(
ちたい
)
で
拝顔
(
はいがん
)
を
得
(
え
)
たと
云
(
い
)
ふのは、
086
是
(
これ
)
全
(
まつた
)
く
大自在天
(
だいじざいてん
)
様
(
さま
)
の
高姫
(
たかひめ
)
が
誠意
(
せいい
)
をお
認
(
みと
)
め
遊
(
あそ
)
ばして、
087
こんな
嬉
(
うれ
)
しい
対面
(
たいめん
)
の
喜
(
よろこ
)
びを
与
(
あた
)
へて
下
(
くだ
)
さつたのでせう。
088
妾
(
わたし
)
は
余
(
あま
)
り
嬉
(
うれ
)
しうて
何
(
なに
)
からお
話
(
はなし
)
をしてよいやら
分
(
わか
)
りませぬ』
089
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
『
時世
(
ときよ
)
時節
(
じせつ
)
で、
090
今日
(
けふ
)
はバラモン
教
(
けう
)
となり、
091
明日
(
あす
)
は
三五教
(
あななひけう
)
と
変
(
へん
)
ずるとも、
092
心
(
こころ
)
のドン
底
(
ぞこ
)
に
大自在天
(
だいじざいてん
)
様
(
さま
)
を
思
(
おも
)
ふ
真心
(
まごころ
)
さへあれば、
093
人間
(
にんげん
)
の
作
(
つく
)
つた
名称
(
めいしよう
)
雅号
(
ががう
)
は
末
(
すゑ
)
の
末
(
すゑ
)
です。
094
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
はキツとお
互
(
たがひ
)
の
心
(
こころ
)
を
鏡
(
かがみ
)
にかけた
如
(
ごと
)
く
御
(
ご
)
洞察
(
どうさつ
)
遊
(
あそ
)
ばして、
095
目的
(
もくてき
)
を
遂
(
と
)
げさせて
下
(
くだ
)
さるでせう「
雪
(
ゆき
)
氷
(
こほり
)
、
096
雨
(
あめ
)
や
霰
(
あられ
)
と
隔
(
へだ
)
つとも、
097
落
(
お
)
つれば
同
(
おな
)
じ
谷川
(
たにがは
)
の
水
(
みづ
)
」とやら、
098
機
(
き
)
に
臨
(
のぞ
)
み
変
(
へん
)
に
応
(
おう
)
じ
円転
(
ゑんてん
)
滑脱
(
くわつだつ
)
、
099
千変
(
せんぺん
)
万化
(
ばんくわ
)
、
100
自由
(
じいう
)
自在
(
じざい
)
の
活動
(
くわつどう
)
をなすだけの
用意
(
ようい
)
がなければ
到底
(
たうてい
)
神業
(
しんげふ
)
に
参加
(
さんか
)
する
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ませぬ。
101
メソポタミヤの
本国
(
ほんごく
)
には
綺羅星
(
きらほし
)
の
如
(
ごと
)
く
立派
(
りつぱ
)
な
神司
(
かんづかさ
)
は
並
(
なら
)
んで
居
(
を
)
りますが、
102
何
(
いづ
)
れも
猪突
(
ちよつとつ
)
主義
(
しゆぎ
)
の
頑愚
(
ぐわんぐ
)
度
(
ど
)
し
難
(
がた
)
き、
103
時勢
(
じせい
)
に
合
(
あは
)
ない
融通
(
ゆうづう
)
の
利
(
き
)
かぬ
者
(
もの
)
計
(
ばか
)
りで、
104
お
前
(
まへ
)
さまのやうな
豁達
(
かつたつ
)
自在
(
じざい
)
の
活動
(
くわつどう
)
をする
人
(
ひと
)
は
一人
(
ひとり
)
もありませぬので、
105
あゝバラモン
教
(
けう
)
も
立派
(
りつぱ
)
な
教理
(
けうり
)
はありながら、
106
之
(
これ
)
を
活用
(
くわつよう
)
する
人物
(
じんぶつ
)
がないと
明
(
あ
)
け
暮
(
く
)
れ
心配
(
しんぱい
)
して
居
(
を
)
りました。
107
然
(
しか
)
るに
貴女
(
あなた
)
のやうな
抜目
(
ぬけめ
)
のない
宣伝使
(
せんでんし
)
が、
108
バラモン
教
(
けう
)
の
中
(
なか
)
に
隠
(
かく
)
れて
居
(
ゐ
)
たかと
思
(
おも
)
へば、
109
勿体
(
もつたい
)
なくて
嬉
(
うれ
)
し
涙
(
なみだ
)
が
零
(
こぼ
)
れます。
110
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
は
何時
(
いつ
)
も
経綸
(
しぐみ
)
の
人間
(
にんげん
)
を
拵
(
こしら
)
へて
神
(
かみ
)
が
使
(
つか
)
うて
居
(
ゐ
)
るから、
111
必
(
かなら
)
ず
心配
(
しんぱい
)
致
(
いた
)
すな、
112
サアと
云
(
い
)
ふ
所
(
ところ
)
になりたら、
113
因縁
(
いんねん
)
の
身魂
(
みたま
)
を
神
(
かみ
)
が
引
(
ひ
)
き
寄
(
よ
)
せて
御用
(
ごよう
)
を
勤
(
つと
)
めさせて、
114
立派
(
りつぱ
)
に
神政
(
しんせい
)
成就
(
じやうじゆ
)
をさして
見
(
み
)
せる
程
(
ほど
)
に、
115
何処
(
どこ
)
に
何
(
ど
)
んな
者
(
もの
)
が
隠
(
かく
)
してあるか
分
(
わか
)
りは
致
(
いた
)
さぬぞよ。
116
敵
(
てき
)
の
中
(
なか
)
にも
味方
(
みかた
)
あり
味方
(
みかた
)
の
中
(
なか
)
にも
敵
(
てき
)
があると
仰有
(
おつしや
)
つた
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
教示
(
けうじ
)
は
争
(
あらそ
)
はれぬもの、
117
もう
此
(
この
)
上
(
うへ
)
は
何事
(
なにごと
)
も
心配
(
しんぱい
)
致
(
いた
)
しませぬ。
118
何卒
(
どうぞ
)
高姫
(
たかひめ
)
さま、
119
是
(
これ
)
からは
打
(
う
)
ち
解
(
と
)
けて
姉妹
(
きやうだい
)
となり、
120
神業
(
しんげふ
)
に
参加
(
さんか
)
しようではありませぬか』
121
高姫
(
たかひめ
)
『
何分
(
なにぶん
)
不束
(
ふつつか
)
な
妾
(
わたし
)
、
122
行
(
ゆ
)
き
届
(
とど
)
かぬ
事
(
こと
)
ばかりで
御座
(
ござ
)
いますから、
123
何卒
(
なにとぞ
)
貴女
(
あなた
)
の
妹
(
いもうと
)
だと
思
(
おも
)
うて、
124
何
(
なに
)
かにつけて
御
(
ご
)
指導
(
しだう
)
を
願
(
ねが
)
ひます』
125
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
『
互
(
たがひ
)
に
気
(
き
)
の
付
(
つ
)
かぬ
事
(
こと
)
は
知
(
し
)
らせあうて、
126
愈
(
いよいよ
)
千騎
(
せんき
)
一騎
(
いつき
)
の
活動
(
くわつどう
)
を
致
(
いた
)
し、
127
夫
(
をつと
)
の
汚名
(
をめい
)
を
回復
(
くわいふく
)
致
(
いた
)
さねば、
128
女房
(
にようばう
)
の
役
(
やく
)
が
済
(
す
)
みませぬからなア。
129
高姫
(
たかひめ
)
様
(
さま
)
、
130
貴女
(
あなた
)
の
夫
(
をつと
)
美山
(
みやま
)
様
(
さま
)
に
対
(
たい
)
し
申訳
(
まをしわけ
)
がありますまい』
131
高姫
(
たかひめ
)
『
妾
(
わたし
)
の
夫
(
をつと
)
美山別
(
みやまわけ
)
は
御
(
ご
)
存知
(
ぞんぢ
)
の
通
(
とほ
)
り
人形
(
にんぎやう
)
のやうな
男
(
をとこ
)
で、
132
妾
(
わたし
)
が
右
(
みぎ
)
へ
向
(
む
)
けと
云
(
い
)
へば「ハイ」と
云
(
い
)
うて
右
(
みぎ
)
を
向
(
む
)
き、
133
左
(
ひだり
)
と
云
(
い
)
へば
左
(
ひだり
)
を
向
(
む
)
くと
云
(
い
)
ふ、
134
本当
(
ほんたう
)
に
柔順
(
おとな
)
しい
結構
(
けつこう
)
な
人
(
ひと
)
ですから、
135
妾
(
わたし
)
が
願望
(
ぐわんもう
)
成就
(
じやうじゆ
)
、
136
手柄
(
てがら
)
を
表
(
あら
)
はして
見
(
み
)
せた
所
(
ところ
)
で、
137
余
(
あま
)
り
喜
(
よろこ
)
びも
致
(
いた
)
しますまい。
138
その
代
(
かは
)
り
失敗
(
しつぱい
)
しても
落胆
(
らくたん
)
もせず、
139
何年間
(
なんねんかん
)
斯
(
こ
)
う
妾
(
わたし
)
が
家
(
いへ
)
を
飛
(
と
)
び
出
(
だ
)
し、
140
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御用
(
ごよう
)
をして
居
(
ゐ
)
ましても、
141
小言
(
こごと
)
一
(
ひと
)
つ
云
(
い
)
はないと
云
(
い
)
ふ
頼
(
たよ
)
りない
男
(
をとこ
)
ですから、
142
まどろしく
て
最早
(
もはや
)
相手
(
あひて
)
には
致
(
いた
)
しませぬ、
143
生人形
(
いきにんぎやう
)
を
据
(
す
)
ゑて
置
(
お
)
いたやうな
心組
(
つもり
)
で
居
(
を
)
りますよ、
144
ホヽヽヽヽ』
145
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
『
妾
(
わたし
)
もそんな
柔順
(
じうじゆん
)
な
夫
(
をつと
)
に
添
(
そ
)
うて
見度
(
みた
)
う
御座
(
ござ
)
いますわ。
146
なんと
高姫
(
たかひめ
)
さま、
147
貴女
(
あなた
)
は
世界一
(
せかいいち
)
のお
仕合
(
しあは
)
せ
者
(
もの
)
、
148
さういふ
柔順
(
じうじゆん
)
な
男
(
をとこ
)
計
(
ばか
)
り
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
にあつたら、
149
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
のやうな
女権
(
ぢよけん
)
拡張
(
くわくちやう
)
だの、
150
男女
(
だんぢよ
)
同権
(
どうけん
)
だのと
騒
(
さわ
)
ぐ
必要
(
ひつえう
)
はありませぬ。
151
妾
(
わたし
)
の
夫
(
をつと
)
も
柔順
(
おとな
)
しい
事
(
こと
)
は
柔順
(
おとな
)
しいが、
152
柔順
(
おとなし
)
やうが
些
(
ちつ
)
と
違
(
ちが
)
ふので
困
(
こま
)
ります、
153
オホヽヽヽ』
154
高姫
(
たかひめ
)
『
斯
(
こ
)
んな
所
(
ところ
)
で
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
のお
惚気
(
のろけ
)
を
聞
(
き
)
かして
貰
(
もら
)
うちや
遣
(
や
)
り
切
(
き
)
れませぬわ、
155
ホヽヽヽヽ』
156
と
嫌
(
いや
)
らしく
笑
(
わら
)
ふ。
157
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
『
高姫
(
たかひめ
)
さま、
158
笑
(
わら
)
ひ
所
(
どころ
)
ぢやありませぬ。
159
此
(
この
)
長
(
なが
)
の
年月
(
としつき
)
、
160
妾
(
わたし
)
は
今日
(
けふ
)
迄
(
まで
)
笑
(
わら
)
ひ
声
(
ごゑ
)
を
聞
(
き
)
いた
事
(
こと
)
もなし、
161
妾
(
わたし
)
も
嬉
(
うれ
)
しいと
思
(
おも
)
うた
事
(
こと
)
は
唯
(
ただ
)
の
一
(
いつ
)
ぺんも
御座
(
ござ
)
いませぬ。
162
メソポタミヤの
顕恩郷
(
けんおんきやう
)
は、
163
素盞嗚
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
の
家来
(
けらい
)
太玉
(
ふとだまの
)
神
(
かみ
)
や、
164
八人
(
やたり
)
乙女
(
をとめ
)
に
蹂躙
(
じうりん
)
され、
165
止
(
や
)
むを
得
(
え
)
ず
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
の
棟梁
(
とうりやう
)
様
(
さま
)
は
遥々
(
はるばる
)
海
(
うみ
)
を
渡
(
わた
)
り、
166
大江山
(
おほえやま
)
に
屈竟
(
くつきやう
)
の
地
(
ち
)
を
選
(
えら
)
み
館
(
やかた
)
を
建
(
た
)
て、
167
立派
(
りつぱ
)
に
神業
(
しんげふ
)
を
開始
(
かいし
)
し
遊
(
あそ
)
ばした
所
(
ところ
)
、
168
部下
(
ぶか
)
の
者共
(
ものども
)
が
余
(
あま
)
り
心得
(
こころえ
)
が
悪
(
わる
)
いのと
利己主義
(
われよし
)
が
強
(
つよ
)
いため、
169
丹波栗
(
たんばぐり
)
ぢやないが、
170
内
(
うち
)
からと
外
(
そと
)
からと
瓦解
(
ぐわかい
)
され、
171
お
痛
(
いた
)
はしや
折角
(
せつかく
)
心
(
こころ
)
を
痛
(
いた
)
めて
造
(
つく
)
り
上
(
あ
)
げた
立派
(
りつぱ
)
な
大江城
(
おほえじやう
)
を
捨
(
す
)
て、
172
伊吹山
(
いぶきやま
)
に
逃
(
に
)
げ
去
(
さ
)
り、
173
此処
(
ここ
)
で
又
(
また
)
もや
素盞嗚
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
の
一派
(
いつぱ
)
に
悩
(
なや
)
まされ、
174
やみやみとフサの
国
(
くに
)
へ
逃
(
に
)
げ
帰
(
かへ
)
り、
175
素盞嗚
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
の
隠
(
かく
)
れ
家
(
が
)
を
脅
(
おびや
)
かさむと、
176
鬼雲姫
(
おにくもひめ
)
の
奥
(
おく
)
さまと
共
(
とも
)
に
帰
(
かへ
)
られました。
177
アヽ
思
(
おも
)
へば
思
(
おも
)
へばお
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
で
堪
(
たま
)
りませぬ。
178
それにつけても
妾
(
わたし
)
の
夫
(
をつと
)
の
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
は、
179
副棟梁
(
ふくとうりやう
)
として
鬼
(
おに
)
ケ
城
(
じやう
)
に
砦
(
とりで
)
を
構
(
かま
)
へ、
180
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
神業
(
しんげふ
)
を
誠心
(
せいしん
)
誠意
(
せいい
)
お
助
(
たす
)
け
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
りましたが、
181
是
(
こ
)
れ
又
(
また
)
脆
(
もろ
)
くも
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
や、
182
味方
(
みかた
)
の
裏返
(
うらがへ
)
りの
為
(
ため
)
、
183
破滅
(
はめつ
)
の
厄
(
やく
)
に
遇
(
あ
)
ひ、
184
アヽ
痛
(
いた
)
ましや
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
の
我
(
わが
)
夫
(
つま
)
は、
185
棟梁
(
とうりやう
)
の
後
(
あと
)
を
追
(
お
)
うて
波斯
(
フサ
)
の
国
(
くに
)
に
帰
(
かへ
)
つて
仕舞
(
しま
)
ひました。
186
其
(
その
)
時
(
とき
)
夫
(
をつと
)
は
妾
(
わたし
)
の
手
(
て
)
を
握
(
にぎ
)
り「これ
女房
(
にようばう
)
、
187
私
(
わたし
)
は
棟梁
(
とうりやう
)
様
(
さま
)
の
御
(
おん
)
為
(
ため
)
に
波斯
(
フサ
)
の
国
(
くに
)
へ
別
(
わか
)
れて
行
(
ゆ
)
くが、
188
何卒
(
どうぞ
)
お
前
(
まへ
)
は
三国
(
みくに
)
ケ
岳
(
だけ
)
に
立
(
た
)
て
籠
(
こも
)
り、
189
会稽
(
くわいけい
)
の
恥
(
はぢ
)
を
雪
(
すす
)
ぎ
宝
(
たから
)
の
所在
(
ありか
)
を
探
(
さが
)
し
出
(
だ
)
し、
190
功名
(
こうみやう
)
手柄
(
てがら
)
を
現
(
あら
)
はして
帰
(
かへ
)
つて
呉
(
く
)
れ」と
云
(
い
)
うて、
191
涙
(
なみだ
)
をホロリと
流
(
なが
)
された
時
(
とき
)
は、
192
妾
(
わたし
)
の
心
(
こころ
)
は
何
(
ど
)
んなで
御座
(
ござ
)
いましたらう。
193
天
(
てん
)
にも
地
(
ち
)
にも
身
(
み
)
の
置
(
お
)
き
所
(
どころ
)
が
無
(
な
)
いやうな
心持
(
こころもち
)
が
致
(
いた
)
しました。
194
人間
(
にんげん
)
として
難
(
かた
)
き
事
(
こと
)
天下
(
てんか
)
に
二
(
ふた
)
つある。
195
其
(
その
)
一
(
ひと
)
つは
天国
(
てんごく
)
に
昇
(
のぼ
)
る
事
(
こと
)
、
196
も
一
(
ひと
)
つは
立派
(
りつぱ
)
な
家来
(
けらい
)
を
得
(
う
)
る
事
(
こと
)
で
御座
(
ござ
)
います。
197
バラモン
教
(
けう
)
もせめて
一人
(
ひとり
)
立派
(
りつぱ
)
な
家来
(
けらい
)
があれば、
198
斯
(
こ
)
んな
惨
(
みぢ
)
めな
事
(
こと
)
にはならないのですが、
199
アヽ
思
(
おも
)
へば
思
(
おも
)
へば
残念
(
ざんねん
)
な
事
(
こと
)
だ』
200
と
皺面
(
しわづら
)
に
涙
(
なみだ
)
を
漂
(
ただよ
)
はせ、
201
遂
(
つひ
)
には
声
(
こゑ
)
を
放
(
はな
)
つて
泣
(
な
)
き
伏
(
ふ
)
しにける。
202
高姫
(
たかひめ
)
『そのお
歎
(
なげ
)
きは
御尤
(
ごもつと
)
もで
御座
(
ござ
)
います。
203
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
、
204
オツトドツコイ
大自在天
(
だいじざいてん
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
眷族
(
けんぞく
)
の
憑
(
かか
)
らせ
給
(
たま
)
ふ
真
(
まこと
)
の
生宮
(
いきみや
)
高姫
(
たかひめ
)
が
現
(
あら
)
はれて、
205
貴女
(
あなた
)
と
相
(
あひ
)
提携
(
ていけい
)
して
活動
(
くわつどう
)
する
上
(
うへ
)
は、
206
最早
(
もはや
)
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
で
御座
(
ござ
)
います。
207
何卒
(
なにとぞ
)
お
力
(
ちから
)
を
落
(
おと
)
さず、
208
もう
一働
(
ひとはたら
)
き
妾
(
わたし
)
と
共
(
とも
)
に
遊
(
あそ
)
ばして
下
(
くだ
)
さいませ。
209
あの
玉
(
たま
)
さへ
手
(
て
)
に
入
(
い
)
らば、
210
バラモン
教
(
けう
)
は
忽
(
たちま
)
ち
暗夜
(
あんや
)
に
太陽
(
たいやう
)
の
現
(
あら
)
はれた
如
(
ごと
)
く、
211
世界
(
せかい
)
に
輝
(
かがや
)
き
渡
(
わた
)
るは
明
(
あきら
)
かで
御座
(
ござ
)
いますから……、
212
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
さま、
213
此
(
この
)
岩窟
(
いはや
)
は
大江山
(
おほえやま
)
の
鬼
(
おに
)
ケ
城
(
じやう
)
とはどちらが
立派
(
りつぱ
)
で
御座
(
ござ
)
いますか』
214
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
『とても
比
(
くら
)
べものにはなりませぬ。
215
三国
(
みくに
)
ケ
岳
(
だけ
)
の
岩窟
(
いはや
)
に
比
(
くら
)
ぶればまアざつと
三分
(
さんぶ
)
の
一
(
いち
)
位
(
くらゐ
)
なものです。
216
妾
(
わたし
)
も
立派
(
りつぱ
)
な
鬼
(
おに
)
ケ
城
(
じやう
)
を
追
(
お
)
はれ、
217
だんだんとこんな
狭
(
せま
)
い
所
(
ところ
)
へ
入
(
はい
)
らねばならないやうに
落
(
お
)
ちて
仕舞
(
しま
)
ひました。
218
思
(
おも
)
へば
思
(
おも
)
へば
残念
(
ざんねん
)
で
耐
(
たま
)
りませぬ。
219
それでも
何
(
なん
)
とかしてこの
目的
(
もくてき
)
を
遂
(
と
)
げたいと
朝夕
(
てうせき
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
を
祈
(
いの
)
り、
220
何卒
(
どうぞ
)
御
(
おん
)
大将
(
たいしやう
)
御
(
ご
)
夫婦
(
ふうふ
)
が
御
(
ご
)
健全
(
けんぜん
)
で
此
(
この
)
目的
(
もくてき
)
を
飽迄
(
あくまで
)
も
遂行
(
すゐかう
)
遊
(
あそ
)
ばすやうに、
221
又
(
また
)
我
(
わが
)
夫
(
つま
)
の
無事
(
ぶじ
)
に
神業
(
しんげふ
)
に
奉仕
(
ほうし
)
するやうにと、
222
夢寐
(
むび
)
にも
忘
(
わす
)
れずに
祈願
(
きぐわん
)
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
ります。
223
是
(
これ
)
からは
貴女
(
あなた
)
と
二人
(
ふたり
)
で
腹
(
はら
)
を
合
(
あは
)
せ、
224
飽迄
(
あくまで
)
も
初志
(
しよし
)
を
貫徹
(
くわんてつ
)
せねばなりませぬ』
225
高姫
(
たかひめ
)
『
左様
(
さやう
)
で
御座
(
ござ
)
います。
226
何分
(
なにぶん
)
に
宜敷
(
よろし
)
く
御
(
ご
)
指導
(
しだう
)
を
願
(
ねがひ
)
ます。
227
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
此
(
この
)
立派
(
りつぱ
)
な
岩窟
(
いはや
)
に
似
(
に
)
ず
今日
(
けふ
)
はお
人
(
ひと
)
が
少
(
すくな
)
い
事
(
こと
)
で
御座
(
ござ
)
いますな』
228
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
『ハイ、
229
今日
(
けふ
)
は
神前
(
しんぜん
)
の
間
(
ま
)
で
祭典
(
さいてん
)
を
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
りますので、
230
誰
(
たれ
)
も
此処
(
ここ
)
には
居
(
を
)
りませぬ。
231
あの
通
(
とほ
)
り
音楽
(
おんがく
)
の
声
(
こゑ
)
が
聞
(
きこ
)
えて
居
(
ゐ
)
るでせう。
232
あれが
祭典
(
さいてん
)
の
声
(
こゑ
)
です』
233
高姫
(
たかひめ
)
『
妾
(
わたし
)
も
一度
(
いちど
)
参拝
(
さんぱい
)
させて
頂
(
いただ
)
き
度
(
た
)
いもので
御座
(
ござ
)
います』
234
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
『
何卒
(
どうぞ
)
後
(
あと
)
で
緩
(
ゆる
)
りと
参拝
(
さんぱい
)
して
下
(
くだ
)
さいませ。
235
中途
(
ちうと
)
に
入
(
はい
)
りますと
皆
(
みな
)
の
者
(
もの
)
の
気
(
き
)
が
散
(
ち
)
り、
236
完全
(
くわんぜん
)
にお
祭
(
まつり
)
が
出来
(
でき
)
ませぬから、
237
……
時
(
とき
)
に
高姫
(
たかひめ
)
さま、
238
貴女
(
あなた
)
のお
連
(
つ
)
れになつた
二人
(
ふたり
)
の
男
(
をとこ
)
は、
239
ありや
一体
(
いつたい
)
何者
(
なにもの
)
で
御座
(
ござ
)
いますか』
240
高姫
(
たかひめ
)
『ついお
話
(
はなし
)
に
身
(
み
)
が
入
(
い
)
つて
貴女
(
あなた
)
に
申上
(
まをしあ
)
げる
事
(
こと
)
を
忘
(
わす
)
れて
居
(
ゐ
)
ましたが、
241
彼
(
かれ
)
はバラモン
教
(
けう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
の
友彦
(
ともひこ
)
と
云
(
い
)
ふ
男
(
をとこ
)
、
242
も
一人
(
ひとり
)
は
妾
(
わたし
)
の
召使
(
めしつかい
)
の
貫州
(
くわんしう
)
と
云
(
い
)
う
阿呆
(
あほう
)
とも
賢
(
かしこ
)
いとも、
243
正
(
せい
)
とも
邪
(
じや
)
とも
見当
(
けんたう
)
の
付
(
つ
)
かない
男
(
をとこ
)
で
御座
(
ござ
)
います』
244
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
『
何
(
なん
)
と
仰
(
あふ
)
せられます。
245
バラモン
教
(
けう
)
の
友彦
(
ともひこ
)
が
来
(
き
)
たとは、
246
それは
又
(
また
)
妙
(
めう
)
な
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
引合
(
ひきあは
)
せ、
247
……
余
(
あま
)
り
姿
(
ふう
)
が
変
(
かは
)
つて
居
(
を
)
るので
見違
(
みちが
)
へて
居
(
を
)
つた。
248
アヽさう
聞
(
き
)
けば
鼻
(
はな
)
の
先
(
さき
)
に
赤
(
あか
)
い
所
(
ところ
)
があつたやうだ。
249
彼奴
(
あいつ
)
は
私
(
わし
)
の
一人娘
(
ひとりむすめ
)
をチヨロまかし、
250
手
(
て
)
に
手
(
て
)
を
取
(
と
)
つて
何処
(
いづく
)
ともなく
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
した
男
(
をとこ
)
、
251
廻
(
めぐ
)
り
廻
(
めぐ
)
つてこんな
所
(
ところ
)
へ
来
(
く
)
るとは
是
(
これ
)
又
(
また
)
不思議
(
ふしぎ
)
、
252
あれに
尋
(
たづ
)
ねたら
定
(
さだ
)
めて
娘
(
むすめ
)
の
消息
(
せうそく
)
が
分
(
わか
)
るであらう。
253
……コレコレ
高姫
(
たかひめ
)
さま、
254
此
(
この
)
事
(
こと
)
は
秘密
(
ないしよ
)
にして
置
(
お
)
いて
下
(
くだ
)
さい。
255
妾
(
わたし
)
が
直接
(
ちよくせつ
)
に
遠廻
(
とほまは
)
しに
聞
(
き
)
いて
見
(
み
)
ますから』
256
と
心臓
(
しんざう
)
に
波
(
なみ
)
を
打
(
う
)
たせながら、
257
そはそはとして
居
(
ゐ
)
る。
258
高姫
(
たかひめ
)
は
此
(
この
)
場
(
ば
)
を
立
(
た
)
つて
次
(
つぎ
)
の
間
(
ま
)
に
現
(
あら
)
はれ
両人
(
りやうにん
)
に
向
(
むか
)
ひ、
259
高姫
(
たかひめ
)
『
友彦
(
ともひこ
)
さまに
貫州
(
くわんしう
)
、
260
退屈
(
たいくつ
)
だつたらう。
261
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
さまが
一寸
(
ちよつと
)
奥
(
おく
)
へ
通
(
とほ
)
つて
呉
(
く
)
れと
仰有
(
おつしや
)
るから
通
(
とほ
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
262
此処
(
ここ
)
もバラモン
教
(
けう
)
の
射場
(
いば
)
だから……、
263
友彦
(
ともひこ
)
さま、
264
お
前
(
まへ
)
は
親
(
おや
)
の
家
(
うち
)
へ
戻
(
もど
)
つたやうなものだ。
265
久
(
ひさ
)
し
振
(
ぶ
)
りで
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
様
(
さま
)
に
御
(
ご
)
面会
(
めんくわい
)
が
出来
(
でき
)
るから
喜
(
よろこ
)
びなさい』
266
友彦
(
ともひこ
)
『
何
(
なん
)
と
仰有
(
おつしや
)
る。
267
此処
(
ここ
)
が
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
様
(
さま
)
のお
館
(
やかた
)
ですか、
268
そりや
違
(
ちが
)
ひませう。
269
世界
(
せかい
)
に
同
(
おな
)
じ
名
(
な
)
は
沢山
(
たくさん
)
御座
(
ござ
)
います。
270
まさか
本山
(
ほんざん
)
に
居
(
を
)
られた、
271
副棟梁
(
ふくとうりやう
)
の
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
の
奥
(
おく
)
さまの
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
さまではありますまい』
272
高姫
(
たかひめ
)
『さうだとも さうだとも、
273
チツとは
不首尾
(
ふしゆび
)
な
事
(
こと
)
があらうが
辛抱
(
しんばう
)
しなくては
仕方
(
しかた
)
がない。
274
逃
(
にげ
)
やうと
云
(
い
)
つたつて
逃
(
に
)
げられはせぬワ。
275
お
前
(
まへ
)
も
可愛
(
かあい
)
い
娘
(
むすめ
)
の
婿
(
むこ
)
だから、
276
さう
酷
(
きつ
)
くも
当
(
あた
)
らつしやるまい。
277
安心
(
あんしん
)
して
妾
(
わたし
)
に
伴
(
つ
)
いて
御座
(
ござ
)
れ』
278
友彦
(
ともひこ
)
は
顔色
(
がんしよく
)
忽
(
たちま
)
ち
蒼白
(
さうはく
)
となり、
279
恐
(
おそ
)
る
恐
(
おそ
)
る
高姫
(
たかひめ
)
の
後
(
あと
)
について
奥
(
おく
)
の
間
(
ま
)
に
進
(
すす
)
み
往
(
ゆ
)
く。
280
(
大正一一・六・一三
旧五・一八
加藤明子
録)
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