霊界物語.ネット
~出口王仁三郎 大図書館~
目 次
設 定
閉じる
×
霊界物語
三鏡
大本神諭
伊都能売神諭
出口王仁三郎全集
出口王仁三郎著作集
王仁文庫
惟神の道
幼ながたり
開祖伝
聖師伝
霧の海(第六歌集)
大本七十年史
大本史料集成
神霊界
新聞記事
新月の光
その他
王仁文献考証
検索は「
王仁DB
」で
←
戻る
霊界物語
霊主体従
第1巻(子の巻)
第2巻(丑の巻)
第3巻(寅の巻)
第4巻(卯の巻)
第5巻(辰の巻)
第6巻(巳の巻)
第7巻(午の巻)
第8巻(未の巻)
第9巻(申の巻)
第10巻(酉の巻)
第11巻(戌の巻)
第12巻(亥の巻)
如意宝珠
第13巻(子の巻)
第14巻(丑の巻)
第15巻(寅の巻)
第16巻(卯の巻)
第17巻(辰の巻)
第18巻(巳の巻)
第19巻(午の巻)
第20巻(未の巻)
第21巻(申の巻)
第22巻(酉の巻)
第23巻(戌の巻)
第24巻(亥の巻)
海洋万里
第25巻(子の巻)
第26巻(丑の巻)
第27巻(寅の巻)
第28巻(卯の巻)
第29巻(辰の巻)
第30巻(巳の巻)
第31巻(午の巻)
第32巻(未の巻)
第33巻(申の巻)
第34巻(酉の巻)
第35巻(戌の巻)
第36巻(亥の巻)
舎身活躍
第37巻(子の巻)
第38巻(丑の巻)
第39巻(寅の巻)
第40巻(卯の巻)
第41巻(辰の巻)
第42巻(巳の巻)
第43巻(午の巻)
第44巻(未の巻)
第45巻(申の巻)
第46巻(酉の巻)
第47巻(戌の巻)
第48巻(亥の巻)
真善美愛
第49巻(子の巻)
第50巻(丑の巻)
第51巻(寅の巻)
第52巻(卯の巻)
第53巻(辰の巻)
第54巻(巳の巻)
第55巻(午の巻)
第56巻(未の巻)
第57巻(申の巻)
第58巻(酉の巻)
第59巻(戌の巻)
第60巻(亥の巻)
山河草木
第61巻(子の巻)
第62巻(丑の巻)
第63巻(寅の巻)
第64巻(卯の巻)上
第64巻(卯の巻)下
第65巻(辰の巻)
第66巻(巳の巻)
第67巻(午の巻)
第68巻(未の巻)
第69巻(申の巻)
第70巻(酉の巻)
第71巻(戌の巻)
第72巻(亥の巻)
特別編 入蒙記
天祥地瑞
第73巻(子の巻)
第74巻(丑の巻)
第75巻(寅の巻)
第76巻(卯の巻)
第77巻(辰の巻)
第78巻(巳の巻)
第79巻(午の巻)
第80巻(未の巻)
第81巻(申の巻)
←
戻る
第23巻(戌の巻)
序文
総説
第1篇 南海の山
01 玉の露
〔713〕
02 副守囁
〔714〕
03 松上の苦悶
〔715〕
04 長高説
〔716〕
第2篇 恩愛の涙
05 親子奇遇
〔717〕
06 神異
〔718〕
07 知らぬが仏
〔719〕
08 縺れ髪
〔720〕
第3篇 有耶無耶
09 高姫騒
〔721〕
10 家宅侵入
〔722〕
11 難破船
〔723〕
12 家島探
〔724〕
13 捨小舟
〔725〕
14 籠抜
〔726〕
第4篇 混線状態
15 婆と婆
〔727〕
16 蜈蚣の涙
〔728〕
17 黄竜姫
〔729〕
18 波濤万里
〔730〕
霊の礎(八)
余白歌
このサイトは『霊界物語』を始めとする出口王仁三郎等の著書を無料で公開しています。
(注・出口王仁三郎の全ての著述を収録しているわけではありません。未収録のものも沢山あります)
閉じる
×
この文献を王仁DBで開く
印刷用画面を開く
[?]
プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。
[×閉じる]
話者名の追加表示
[?]
セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。
[×閉じる]
追加表示する
追加表示しない
【標準】
表示できる章
テキストのタイプ
[?]
ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。
[×閉じる]
通常のテキスト
【標準】
コピー用のテキスト
その他の設定項目を表示する
ここから下を閉じる
文字サイズ
S
【標準】
M
L
フォント
フォント1
【標準】
フォント2
ルビの表示
通常表示
【標準】
括弧の中に表示
表示しない
古いブラウザでうまく表示されない時はこの設定を試してみて下さい
アンカーの表示
[?]
本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。
[×閉じる]
左側にだけ表示する
【標準】
表示しない
全てのアンカーを表示
宣伝歌
[?]
宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。
[×閉じる]
一段組
【標準】
二段組
脚注
[?]
[※]や[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。まだ少ししか付いていませんが、目障りな場合は「表示しない」設定に変えて下さい。ただし[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。
[×閉じる]
全ての脚注を開く
全ての脚注を閉じる(マーク表示)
【標準】
脚注マークを表示しない
文字の色
背景の色
ルビの色
傍点の色
[?]
底本で傍点(圏点)が付いている文字は、『霊界物語ネット』では太字で表示されますが、その色を変えます。
[×閉じる]
外字1の色
[?]
この設定は現在使われておりません。
[×閉じる]
外字2の色
[?]
文字がフォントに存在せず、画像を使っている場合がありますが、その画像の周囲の色を変えます。
[×閉じる]
→
表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。
【新着情報】
[2023/12/19] サイトの全面改修に伴いサブスク化します。
詳しくはこちらをどうぞ
。[2024/6/30]8月中にサイトの大改修を行います。
実験のためのサイトをこちらに作りました
(今はメニューを変更しただけです)。
霊界物語
>
第23巻
> 第3篇 有耶無耶 > 第14章 籠抜
<<< 捨小舟
(B)
(N)
婆と婆 >>>
マーキングパネル
設定パネルで「全てのアンカーを表示」させてアンカーをクリックして下さい。
【引数の設定例】 &mky=a010-a021a034 アンカー010から021と、034を、イエローでマーキング。
第一四章
籠抜
(
かごぬけ
)
〔七二六〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第23巻 如意宝珠 戌の巻
篇:
第3篇 有耶無耶
よみ(新仮名遣い):
うやむや
章:
第14章 籠抜
よみ(新仮名遣い):
かごぬけ
通し章番号:
726
口述日:
1922(大正11)年06月12日(旧05月17日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年4月19日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
[×閉じる]
:
東助が留守の間、洲本の東助館は妻のお百合が守っていた。お百合は東助が何日も帰って来ないことを心配していたが、そこへ門口に宣伝使が尋ねてくる。
宣伝使は、バラモン教の友彦であった。友彦は東助が何日も海へ出たきり帰ってこないことを近所で聞きつけると、それをネタにお百合に取り入って東助の財産を自分のものにしてしまおうと企んでいた。
しかしお百合は、友彦が去年浪速の姉のところで、病気に付け込んで詐欺を働こうとした男であることに気づき、友彦を怒鳴りつけて気を失わせ、縛ってしまった。
そこへ東助が帰還してくる。事の次第を聞いた東助は、友彦に改心を薦め、村人の前で改心の説法をするようにと諭す。しかし友彦は便所に行く振りをして、便壺の穴から逃げてしまった。
東助の部下となった鶴公、清公、武公は、東助に感化されて改心し、言依別命の教えを奉じることになった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-10-15 01:56:22
OBC :
rm2314
愛善世界社版:
226頁
八幡書店版:
第4輯 577頁
修補版:
校定版:
230頁
普及版:
106頁
初版:
ページ備考:
001
洲本
(
すもと
)
の
里
(
さと
)
に
名
(
な
)
も
高
(
たか
)
き、
002
人子
(
ひとご
)
の
司
(
つかさ
)
東助
(
とうすけ
)
が
留守
(
るす
)
の
門前
(
もんぜん
)
に
佇
(
たたず
)
み、
003
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
声低
(
こゑひく
)
に
歌
(
うた
)
ふ
一人
(
ひとり
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
があつた。
004
下女
(
はしため
)
のお
冊
(
さつ
)
は
台所
(
だいどころ
)
より
此
(
この
)
声
(
こゑ
)
を
聞
(
き
)
きつけ、
005
門
(
もん
)
の
戸
(
と
)
を
開
(
ひら
)
いて
眺
(
なが
)
むれば、
006
蓑笠
(
みのかさ
)
、
007
草鞋
(
わらぢ
)
脚絆
(
きやはん
)
の
扮装
(
いでたち
)
したる、
008
四十
(
しじふ
)
恰好
(
かつかう
)
の
男盛
(
をとこざか
)
りの
宣伝使
(
せんでんし
)
であつた。
009
宣伝使
(
せんでんし
)
はお
冊
(
さつ
)
に
向
(
むか
)
ひ、
010
宣伝使
(
せんでんし
)
『
我
(
わ
)
れは
日頃
(
ひごろ
)
の
経験
(
けいけん
)
上
(
じやう
)
、
011
此
(
この
)
館
(
やかた
)
の
前
(
まへ
)
を
通
(
とほ
)
り
見
(
み
)
れば、
012
何
(
なん
)
とはなしに
此
(
この
)
家
(
や
)
には
変事
(
へんじ
)
の
突発
(
とつぱつ
)
せし
如
(
ごと
)
く
覚
(
おぼ
)
ゆる。
013
汝
(
なんぢ
)
が
家
(
いへ
)
に
何事
(
なにごと
)
もなきや』
014
と
言葉
(
ことば
)
淑
(
しと
)
やかに
問
(
と
)
ひかけた。
015
お
冊
(
さつ
)
は
少
(
すこ
)
し
首
(
くび
)
を
傾
(
かたむ
)
け
乍
(
なが
)
ら、
016
お
冊
(
さつ
)
『
一寸
(
ちよつと
)
お
待
(
ま
)
ちを
願
(
ねが
)
ひます。
017
奥
(
おく
)
へ
云
(
い
)
つて
奥様
(
おくさま
)
に
伺
(
うかが
)
つて
参
(
まゐ
)
りますから……』
018
と
言
(
い
)
ひ
残
(
のこ
)
し、
019
其
(
その
)
儘
(
まま
)
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
した。
020
奥
(
おく
)
の
一間
(
ひとま
)
には
女房
(
にようばう
)
のお
百合
(
ゆり
)
、
021
火鉢
(
ひばち
)
の
前
(
まへ
)
にもたれかかり、
022
何事
(
なにごと
)
か
思案
(
しあん
)
の
態
(
てい
)
であつた。
023
お
冊
(
さつ
)
は
襖
(
ふすま
)
をソツと
引
(
ひき
)
あけ、
024
お
冊
(
さつ
)
『
奥様
(
おくさま
)
々々
(
おくさま
)
』
025
と
呼
(
よ
)
んだ。
026
お
百合
(
ゆり
)
は
何事
(
なにごと
)
にか
気
(
き
)
を
取
(
と
)
られしものの
如
(
ごと
)
く、
027
お
冊
(
さつ
)
の
声
(
こゑ
)
が
耳
(
みみ
)
に
入
(
い
)
らなかつた。
028
お
冊
(
さつ
)
は
恐
(
おそ
)
る
恐
(
おそ
)
るお
百合
(
ゆり
)
の
前
(
まへ
)
に
にじ
り
寄
(
よ
)
り、
029
お
冊
(
さつ
)
『モウシ
奥様
(
おくさま
)
、
030
門口
(
かどぐち
)
に
不思議
(
ふしぎ
)
な
宣伝使
(
せんでんし
)
が
立
(
た
)
つて
居
(
を
)
られます。
031
如何
(
どう
)
いたしませうかなア』
032
と
云
(
い
)
ふ
声
(
こゑ
)
に、
033
お
百合
(
ゆり
)
は
顔
(
かほ
)
をあげ、
034
お
百合
(
ゆり
)
『ナニ、
035
宣伝使
(
せんでんし
)
が
門
(
かど
)
にお
立
(
た
)
ちとな。
036
それは
都合
(
つがふ
)
の
好
(
い
)
い
事
(
こと
)
だ。
037
一
(
ひと
)
つ
伺
(
うかが
)
つて
頂
(
いただ
)
きたい
事
(
こと
)
があるから……どうぞ
此方
(
こちら
)
へ
通
(
とほ
)
つて
貰
(
もら
)
うて
下
(
くだ
)
さい』
038
お
冊
(
さつ
)
『ハイ
畏
(
かしこ
)
まりました』
039
と
足早
(
あしばや
)
に
表
(
おもて
)
へ
出
(
い
)
で、
040
お
冊
(
さつ
)
『モシモシ
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
、
041
奥様
(
おくさま
)
が
何
(
なに
)
か
御
(
お
)
願
(
ねがひ
)
なされたい
事
(
こと
)
があるさうですから、
042
どうぞ
奥
(
おく
)
へ
御
(
お
)
通
(
とほ
)
り
下
(
くだ
)
さいませ』
043
宣伝使
(
せんでんし
)
は
打
(
う
)
ち
頷
(
うなづ
)
きお
冊
(
さつ
)
の
後
(
あと
)
に
従
(
したが
)
ひ、
044
草鞋
(
わらぢ
)
を
脱
(
ぬ
)
ぎ
足
(
あし
)
を
洗
(
あら
)
ひ、
045
お
百合
(
ゆり
)
の
居間
(
ゐま
)
に
通
(
とほ
)
された。
046
お
百合
(
ゆり
)
は
座
(
ざ
)
を
下
(
さ
)
がり、
047
宣伝使
(
せんでんし
)
を
上座
(
かみざ
)
に
請
(
しやう
)
じ、
048
丁寧
(
ていねい
)
に
頭
(
かしら
)
を
下
(
さ
)
げ、
049
お
百合
(
ゆり
)
『
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
、
050
よくこそ
御
(
お
)
立寄
(
たちよ
)
り
下
(
くだ
)
さいました。
051
先
(
ま
)
づ
御
(
ご
)
ゆるりと
御
(
ご
)
休息
(
きうそく
)
下
(
くだ
)
さいませ』
052
宣伝使
(
せんでんし
)
『
私
(
わたくし
)
はバラモン
教
(
けう
)
の
友彦
(
ともひこ
)
と
申
(
まを
)
す
宣伝使
(
せんでんし
)
で
御座
(
ござ
)
る。
053
当家
(
たうけ
)
の
門前
(
もんぜん
)
を
通過
(
つうくわ
)
致
(
いた
)
さむとする
時
(
とき
)
、
054
何
(
なん
)
となく
気懸
(
きがか
)
りが
致
(
いた
)
しましてなりませぬので、
055
お
宅
(
うち
)
には
思
(
おも
)
ひも
寄
(
よ
)
らぬ
事件
(
じけん
)
が
突発
(
とつぱつ
)
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
る
様
(
やう
)
に
考
(
かんが
)
へましたから、
056
一寸
(
ちよつと
)
御
(
お
)
尋
(
たづ
)
ね
致
(
いた
)
しました』
057
お
百合
(
ゆり
)
『それはそれは
御
(
ご
)
親切
(
しんせつ
)
に
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
ります。
058
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
は
妾
(
わたし
)
の
主人
(
しゆじん
)
東助
(
とうすけ
)
と
申
(
まを
)
す
者
(
もの
)
、
059
二三
(
にさん
)
日
(
にち
)
以前
(
いぜん
)
より
何処
(
どこ
)
へ
参
(
まゐ
)
りましたか、
060
皆目
(
かいもく
)
行方
(
ゆくへ
)
は
分
(
わか
)
らず、
061
大方
(
おほかた
)
此
(
この
)
間
(
あひだ
)
の
颶風
(
しけ
)
に、
062
船自慢
(
ふねじまん
)
の
主人
(
しゆじん
)
の
事
(
こと
)
とて
船
(
ふね
)
を
操
(
あやつ
)
り、
063
荒波
(
あらなみ
)
に
呑
(
の
)
まれたのではあるまいかと、
064
上
(
うへ
)
を
下
(
した
)
への
大騒動
(
おほさうどう
)
、
065
村中
(
むらぢう
)
の
者
(
もの
)
が
夫
(
そ
)
れ
夫
(
ぞ
)
れ
手分
(
てわ
)
けを
致
(
いた
)
しまして、
066
山林
(
さんりん
)
原野
(
げんや
)
は
申
(
まを
)
すに
及
(
およ
)
ばず、
067
近海
(
きんかい
)
を
隈
(
くま
)
なく
探
(
さが
)
し
廻
(
まは
)
れども
皆目
(
かいもく
)
行方
(
ゆくへ
)
が
知
(
し
)
れず、
068
生
(
いき
)
て
居
(
ゐ
)
るのか
死
(
し
)
んで
居
(
を
)
りますのか、
069
それさへも
分
(
わか
)
りませぬ。
070
どうぞ
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
一応
(
いちおう
)
御
(
お
)
伺
(
うかが
)
ひ
下
(
くだ
)
さいますまいか』
071
友彦
(
ともひこ
)
は
近辺
(
きんぺん
)
の
者
(
もの
)
の
騒
(
さわ
)
ぎを
見
(
み
)
て、
072
遠近
(
をちこち
)
の
人々
(
ひとびと
)
に
東助
(
とうすけ
)
の
紛失
(
ふんしつ
)
せし
事
(
こと
)
を、
073
前
(
まへ
)
以
(
もつ
)
て
聞
(
き
)
き
知
(
し
)
り、
074
ワザと
立寄
(
たちよ
)
つたのである、
075
されど
素知
(
そし
)
らぬ
風
(
ふう
)
を
装
(
よそほ
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
076
友彦
(
ともひこ
)
『それはそれは
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
で
御座
(
ござ
)
いませう。
077
一
(
ひと
)
つ
私
(
わたし
)
が
伺
(
うかが
)
つて
見
(
み
)
ませう』
078
と
手
(
て
)
を
洗
(
あら
)
ひ
口
(
くち
)
を
嗽
(
すす
)
ぎ、
079
あたりに
人
(
ひと
)
無
(
な
)
きを
見
(
み
)
てニタリと
笑
(
わら
)
ひ、
080
舌
(
した
)
を
出
(
だ
)
し、
081
友彦
(
ともひこ
)
『
村人
(
むらびと
)
の
話
(
はなし
)
に
依
(
よ
)
れば、
082
あれ
丈
(
だけ
)
探
(
さが
)
したのだから、
083
最早
(
もはや
)
生
(
い
)
きて
居
(
ゐ
)
る
気遣
(
きづか
)
ひはない。
084
ウマくチヨロまかせば、
085
淡路一
(
あはぢいち
)
の
財産家
(
ざいさんか
)
、
086
友彦
(
ともひこ
)
が
亭主
(
ていしゆ
)
となり、
087
バラモン
教
(
けう
)
を
淡路
(
あはぢ
)
一
(
いち
)
円
(
ゑん
)
に
此
(
この
)
富力
(
ふりよく
)
を
以
(
もつ
)
て
拡張
(
くわくちやう
)
すれば
何
(
なん
)
でもない
事
(
こと
)
だ。
088
あゝ
結構
(
けつこう
)
な
風
(
かぜ
)
が
吹
(
ふ
)
いて
来
(
き
)
たものだ。
089
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
万々一
(
まんまんいち
)
主人
(
しゆじん
)
が
生
(
い
)
きて
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
たら
大変
(
たいへん
)
だが、
090
併
(
しか
)
し
滅多
(
めつた
)
にそんな
事
(
こと
)
はあるまい。
091
一
(
ひと
)
つ
度胸
(
どきよう
)
を
出
(
だ
)
してやつて
見
(
み
)
よう』
092
と
小声
(
こごゑ
)
に
呟
(
つぶや
)
いて
居
(
を
)
る。
093
そこへ
女房
(
にようばう
)
のお
百合
(
ゆり
)
は
新
(
あたら
)
しき
手拭
(
てぬぐひ
)
を
持
(
も
)
ち、
094
お
百合
(
ゆり
)
『
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
、
095
どうぞ
此
(
こ
)
れでお
手
(
て
)
を
御
(
お
)
拭
(
ふ
)
き
下
(
くだ
)
さいませ』
096
とつき
出
(
だ
)
す。
097
其
(
その
)
横顔
(
よこがほ
)
を
見
(
み
)
て、
098
友彦
(
ともひこ
)
『アヽ
何
(
なん
)
と
綺麗
(
きれい
)
な
女
(
をんな
)
だなア。
099
……
併
(
しか
)
し
今
(
いま
)
の
独語
(
ひとりごと
)
を
聞
(
き
)
かれはせなかつたか』
100
と
稍
(
やや
)
不安
(
ふあん
)
の
念
(
ねん
)
に
駆
(
か
)
られ、
101
盗
(
ぬす
)
み
目
(
め
)
にお
百合
(
ゆり
)
の
顔
(
かほ
)
を
覗
(
のぞ
)
いて
見
(
み
)
ると、
102
お
百合
(
ゆり
)
はそんな
気配
(
けはい
)
も
無
(
な
)
かつた。
103
友彦
(
ともひこ
)
はヤツと
安心
(
あんしん
)
の
胸
(
むね
)
を
撫
(
な
)
でおろし、
104
悠々
(
いういう
)
と
床
(
とこ
)
の
間
(
ま
)
に
端坐
(
たんざ
)
し、
105
バラモン
教
(
けう
)
の
経文
(
きやうもん
)
を
唱
(
とな
)
へ
終
(
をは
)
り、
106
偽神憑
(
にせかむがか
)
りとなつて、
107
友彦
(
ともひこ
)
『ウンウンウン、
108
此
(
この
)
方
(
はう
)
は
大自在天
(
だいじざいてん
)
大国別
(
おほくにわけの
)
命
(
みこと
)
なるぞ』
109
と
雷
(
らい
)
の
如
(
ごと
)
く
呶鳴
(
どな
)
り
立
(
た
)
てた。
110
お
百合
(
ゆり
)
は
驚
(
おどろ
)
いて
平伏
(
へいふく
)
し、
111
お
百合
(
ゆり
)
『ハイ
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います』
112
と
涙声
(
なみだごゑ
)
になつて
居
(
ゐ
)
る。
113
友彦
(
ともひこ
)
は
又
(
また
)
もや
口
(
くち
)
を
切
(
き
)
り、
114
友彦
(
ともひこ
)
『
当家
(
たうけ
)
の
主人
(
しゆじん
)
東助
(
とうすけ
)
は、
115
何
(
なに
)
不自由
(
ふじゆう
)
なき
身
(
み
)
であり
乍
(
なが
)
ら、
116
海漁
(
うみれう
)
を
好
(
この
)
み
或
(
あるひ
)
は
冒険
(
ばうけん
)
的
(
てき
)
事業
(
じげふ
)
を
致
(
いた
)
す
悪
(
わる
)
い
癖
(
くせ
)
がある。
117
それが
為
(
ため
)
に
生命
(
いのち
)
を
棄
(
す
)
てたのだ。
118
不憫
(
ふびん
)
なれどモウ
仕方
(
しかた
)
がない。
119
せめて
三日
(
みつか
)
以前
(
いぜん
)
に
此
(
この
)
宣伝使
(
せんでんし
)
が
当家
(
たうけ
)
に
来
(
き
)
て
居
(
を
)
れば、
120
知
(
し
)
らしてやるのであつたが、
121
さてもさても
残念
(
ざんねん
)
な
事
(
こと
)
であつたのう。
122
モウ
此
(
この
)
上
(
うへ
)
は
仕方
(
しかた
)
がない。
123
霊魂
(
みたま
)
の
冥福
(
めいふく
)
を
祈
(
いの
)
り、
124
主人
(
しゆじん
)
の
天国
(
てんごく
)
に
救
(
すく
)
はるる
様
(
やう
)
、
125
鄭重
(
ていちよう
)
なる
祭典
(
さいてん
)
を
行
(
おこな
)
ひ、
126
且
(
かつ
)
有力
(
いうりよく
)
なる
神
(
かみ
)
の
如
(
ごと
)
き
夫
(
をつと
)
を
持
(
も
)
ち、
127
東助
(
とうすけ
)
の
後継
(
あとつぎ
)
を
致
(
いた
)
ささねば、
128
当家
(
たうけ
)
は
到底
(
たうてい
)
永続
(
えいぞく
)
致
(
いた
)
すまいぞよ。
129
又
(
また
)
東助
(
とうすけ
)
は
睾丸病
(
かうぐわんびやう
)
がある
為
(
ため
)
、
130
子
(
こ
)
が
出来
(
でき
)
ないから、
131
折角
(
せつかく
)
蓄
(
た
)
めた
財産
(
ざいさん
)
も
他人
(
たにん
)
に
与
(
や
)
らねばなるまい。
132
汝
(
なんぢ
)
は
神
(
かみ
)
の
申
(
まを
)
す
事
(
こと
)
を、
133
よつく
肚
(
はら
)
に
入
(
い
)
れて、
134
何事
(
なにごと
)
も
大国別
(
おほくにわけの
)
命
(
みこと
)
の
命令
(
めいれい
)
通
(
どほ
)
り
致
(
いた
)
すが
上分別
(
じやうふんべつ
)
だ』
135
お
百合
(
ゆり
)
『ハイハイ
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います。
136
……
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
仰
(
あふ
)
せなら、
137
どんな
事
(
こと
)
でも
背
(
そむ
)
きは
致
(
いた
)
しませぬ』
138
友彦
(
ともひこ
)
『
何
(
なん
)
と
偉
(
えら
)
い
奴
(
やつ
)
だ。
139
其
(
その
)
方
(
はう
)
は
流石
(
さすが
)
東助
(
とうすけ
)
の
妻
(
つま
)
だけあつて、
140
よく
身魂
(
みたま
)
が
研
(
みが
)
けたものだ。
141
神
(
かみ
)
も
感心
(
かんしん
)
致
(
いた
)
すぞよ』
142
お
百合
(
ゆり
)
『
何
(
なに
)
を
申
(
まを
)
しても、
143
世間
(
せけん
)
知
(
し
)
らずの
卑女
(
はしため
)
、
144
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
から
褒
(
ほ
)
められる
様
(
やう
)
な
事
(
こと
)
は
一
(
ひと
)
つも
御座
(
ござ
)
いませぬ』
145
友彦
(
ともひこ
)
『
坊間
(
ばうかん
)
伝
(
つた
)
ふる
所
(
ところ
)
に
依
(
よ
)
れば、
146
汝
(
なんぢ
)
は
実
(
じつ
)
に
貞淑
(
ていしゆく
)
の
女
(
をんな
)
と
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
だ。
147
世間
(
せけん
)
の
噂
(
うはさ
)
を
聞
(
き
)
かずとも、
148
神
(
かみ
)
は
心
(
こころ
)
のドン
底
(
ぞこ
)
までよく
見抜
(
みぬ
)
いて
居
(
を
)
るぞよ。
149
一旦
(
いつたん
)
死
(
し
)
んだ
主人
(
しゆじん
)
は
最早
(
もはや
)
呼
(
よ
)
べど
答
(
こた
)
へず、
150
叫
(
さけ
)
べど
帰
(
かへ
)
らず、
151
是非
(
ぜひ
)
なしと
諦
(
あきら
)
め、
152
後
(
あと
)
の
家
(
いへ
)
を
大切
(
たいせつ
)
に
守
(
まも
)
り、
153
子孫
(
しそん
)
を
生
(
う
)
み
殖
(
ふ
)
やし、
154
祖先
(
そせん
)
の
家
(
いへ
)
を
守
(
まも
)
るが、
155
せめてもの
東助
(
とうすけ
)
への
貞節
(
ていせつ
)
、
156
合点
(
がてん
)
が
行
(
い
)
つたか』
157
お
百合
(
ゆり
)
『ハイハイ
畏
(
かしこ
)
まりまして
御座
(
ござ
)
います。
158
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
妾
(
わたし
)
の
様
(
やう
)
な
者
(
もの
)
に、
159
如何
(
どう
)
して
後添
(
のちぞへ
)
に
来
(
き
)
て
呉
(
く
)
れる
者
(
もの
)
が
御座
(
ござ
)
いませう。
160
何
(
なん
)
だか
夫
(
をつと
)
の
霊
(
れい
)
に
対
(
たい
)
し
気
(
き
)
が
済
(
す
)
まない
様
(
やう
)
に
思
(
おも
)
はれてなりませぬ。
161
そして
其
(
その
)
夫
(
をつと
)
を
持
(
も
)
つのは、
162
せめて
三年祭
(
さんねんさい
)
を
終
(
をは
)
つてからにして
貰
(
もら
)
ふ
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ますまいか』
163
友彦
(
ともひこ
)
『
大国別
(
おほくにわけの
)
命
(
みこと
)
が
申
(
まを
)
す
事
(
こと
)
、
164
しつかり
聞
(
き
)
け。
165
人間
(
にんげん
)
の
理屈
(
りくつ
)
は
論
(
ろん
)
ずるに
足
(
た
)
らぬ。
166
善
(
ぜん
)
は
急
(
いそ
)
げだ、
167
一
(
いち
)
日
(
にち
)
も
早
(
はや
)
く
夫
(
をつと
)
を
迎
(
むか
)
へたがよからう。
168
其
(
その
)
夫
(
をつと
)
は
神
(
かみ
)
が
授
(
さづ
)
けてやる
程
(
ほど
)
に……さうすれば
子孫
(
しそん
)
は
天
(
てん
)
の
星
(
ほし
)
の
数
(
かず
)
の
如
(
ごと
)
く
殖
(
ふ
)
えて、
169
家
(
いへ
)
は
万代
(
ばんだい
)
不易
(
ふえき
)
、
170
世界
(
せかい
)
の
幸福者
(
しあわせもの
)
としてやるぞよ』
171
お
百合
(
ゆり
)
『ハイハイ
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います。
172
どうぞ
宜
(
よろ
)
しう
御
(
お
)
願
(
ねがひ
)
申上
(
まをしあ
)
げます。
173
そして
其
(
その
)
夫
(
をつと
)
と
申
(
まを
)
すのは、
174
何処
(
どこ
)
から
貰
(
もら
)
ひましたら
宜
(
よろ
)
しう
御座
(
ござ
)
いますか、
175
これも
一
(
ひと
)
つ
御
(
お
)
伺
(
うかが
)
ひ
致
(
いた
)
したう
御座
(
ござ
)
います』
176
友彦
(
ともひこ
)
『
別
(
べつ
)
に
何処
(
どこ
)
へも
探
(
さが
)
しに
行
(
ゆ
)
くに
及
(
およ
)
ばぬ。
177
灯台下
(
とうだいもと
)
は
真暗
(
まつくら
)
がり、
178
今
(
いま
)
汝
(
なんぢ
)
が
目
(
め
)
の
前
(
まへ
)
に
三国一
(
さんごくいち
)
の
花婿
(
はなむこ
)
が
来
(
き
)
て
居
(
を
)
るぞよ。
179
これも
神
(
かみ
)
が
媒介
(
なかうど
)
を
致
(
いた
)
さむと、
180
遥々
(
はるばる
)
連
(
つ
)
れて
来
(
き
)
たのだから、
181
喜
(
よろこ
)
び
勇
(
いさ
)
んで
命令
(
めいれい
)
に
服従
(
ふくじゆう
)
するがよからう』
182
お
百合
(
ゆり
)
『
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
、
183
根
(
ね
)
つから
其処
(
そこ
)
らに
誰
(
たれ
)
も
見
(
み
)
えませぬ』
184
友彦
(
ともひこ
)
『ハテ
察
(
さつ
)
しの
悪
(
わる
)
い。
185
今
(
いま
)
汝
(
なんぢ
)
の
目
(
め
)
の
前
(
まへ
)
に
於
(
おい
)
て
神
(
かみ
)
の
託宣
(
たくせん
)
を
伝
(
つた
)
へて
居
(
を
)
る、
186
大国別
(
おほくにわけの
)
命
(
みこと
)
の
生宮
(
いきみや
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
であるぞよ』
187
お
百合
(
ゆり
)
はハツと
驚
(
おどろ
)
き、
188
友彦
(
ともひこ
)
の
顔
(
かほ
)
をつくづく
看守
(
みまも
)
り、
189
お
百合
(
ゆり
)
『あなたは
何時
(
いつ
)
やら、
190
浪速
(
なには
)
の
里
(
さと
)
でお
目
(
め
)
にかかつた
事
(
こと
)
のある
様
(
やう
)
な
方
(
かた
)
ですなア』
191
友彦
(
ともひこ
)
『
馬鹿
(
ばか
)
を
申
(
まを
)
せ。
192
他人
(
たにん
)
の
空似
(
そらに
)
と
申
(
まを
)
して、
193
世界
(
せかい
)
に
同
(
おな
)
じ
顔
(
かほ
)
をした
者
(
もの
)
は、
194
二人
(
ふたり
)
づつ
天
(
てん
)
から
拵
(
こしら
)
へてあるのだ。
195
此
(
この
)
肉体
(
にくたい
)
は
神
(
かみ
)
の
直々
(
ぢきぢき
)
の
生宮
(
いきみや
)
であるぞよ。
196
よく
調
(
しら
)
べたがよからう』
197
お
百合
(
ゆり
)
『
鼻
(
はな
)
の
先
(
さき
)
の
一寸
(
ちよつと
)
赤
(
あか
)
い
所
(
ところ
)
から、
198
目
(
め
)
の
窪
(
くぼ
)
んだ
所
(
ところ
)
、
199
口
(
くち
)
の
大
(
おほ
)
きさ、
200
出
(
で
)
つ
歯
(
ぱ
)
の
先
(
さき
)
の
欠
(
か
)
けた
所
(
ところ
)
、
201
似
(
に
)
たりや
似
(
に
)
たり、
202
よくマア
似
(
に
)
た
方
(
かた
)
も
有
(
あ
)
るものですなア。
203
妾
(
わたし
)
の
姉
(
あね
)
は
浪速
(
なには
)
の
里
(
さと
)
に
嫁入
(
よめい
)
つて
居
(
を
)
りますが、
204
去年
(
きよねん
)
の
冬
(
ふゆ
)
、
205
急飛脚
(
きふひきやく
)
が
来
(
き
)
ましたので、
206
行
(
い
)
て
見
(
み
)
れば
姉
(
あね
)
の
大病
(
たいびやう
)
、
207
そこへ
宣伝使
(
せんでんし
)
がお
見
(
み
)
えになり、
208
イロイロと
仰有
(
おつしや
)
つて……
姉
(
あね
)
の
病気
(
びやうき
)
を
直
(
なほ
)
してやらう、
209
それに
就
(
つい
)
てはコレコレの
薬
(
くすり
)
が
要
(
い
)
るから、
210
薬代
(
くすりだい
)
を
出
(
だ
)
せ……と
仰
(
あふ
)
せられ、
211
大枚
(
たいまい
)
三百
(
さんびやく
)
両
(
りやう
)
を
懐
(
ふところ
)
にし
門口
(
かどぐち
)
を
出
(
で
)
た
限
(
き
)
り、
212
今
(
いま
)
に
顔
(
かほ
)
を
見
(
み
)
せないさうです。
213
妾
(
わたし
)
は
其
(
その
)
時
(
とき
)
に
見
(
み
)
た
顔
(
かほ
)
と
貴方
(
あなた
)
のお
顔
(
かほ
)
と、
214
余
(
あま
)
りよく
似
(
に
)
て
居
(
を
)
りますので、
215
一寸
(
ちよつと
)
御
(
お
)
伺
(
うかが
)
ひ
致
(
いた
)
しました』
216
友彦
(
ともひこ
)
『
神
(
かみ
)
と
詐偽師
(
さぎし
)
と
一
(
ひと
)
つに
見
(
み
)
られては、
217
神
(
かみ
)
も
迷惑
(
めいわく
)
致
(
いた
)
すぞよ』
218
お
百合
(
ゆり
)
『さう
仰有
(
おつしや
)
るお
声
(
こゑ
)
は、
219
あの
詐偽師
(
さぎし
)
とそつくりですワ。
220
声
(
こゑ
)
までそれ
程
(
ほど
)
よく
似
(
に
)
た
人
(
ひと
)
が
有
(
あ
)
るものですかなア』
221
友彦
(
ともひこ
)
『つい
話
(
はなし
)
が
横道
(
よこみち
)
へ
這入
(
はい
)
つた。
222
其
(
その
)
方
(
はう
)
の
覚悟
(
かくご
)
は
如何
(
どう
)
ぢや』
223
お
百合
(
ゆり
)
『どうぞ
二三
(
にさん
)
日
(
にち
)
お
待
(
ま
)
ち
下
(
くだ
)
さいませ。
224
其
(
その
)
上
(
うへ
)
でトツクリと
考
(
かんが
)
へ、
225
親類
(
しんるゐ
)
にも
相談
(
さうだん
)
致
(
いた
)
し、
226
浪速
(
なには
)
の
姉
(
あね
)
も
招
(
よ
)
んで
来
(
き
)
て、
227
其
(
その
)
上
(
うへ
)
に
御
(
ご
)
厄介
(
やくかい
)
に
預
(
あづか
)
りませう。
228
どうぞ
神
(
かみ
)
さま
一先
(
ひとま
)
づ
御
(
お
)
引取
(
ひきと
)
り
下
(
くだ
)
さいませ』
229
ポンポンと
手
(
て
)
を
拍
(
う
)
つた。
230
友彦
(
ともひこ
)
は
顔色
(
かほいろ
)
を
真赤
(
まつか
)
に
染
(
そ
)
め、
231
冷汗
(
ひやあせ
)
を
体
(
からだ
)
一面
(
いちめん
)
ヅクヅクにかいて、
232
湯気
(
ゆげ
)
をポーツポーツと
立
(
た
)
て
乍
(
なが
)
ら、
233
友彦
(
ともひこ
)
『あゝ
失礼
(
しつれい
)
致
(
いた
)
しました。
234
つい
眠
(
ねむ
)
つたと
見
(
み
)
えて、
235
結構
(
けつこう
)
な
風呂
(
ふろ
)
に
入
(
い
)
れて
貰
(
もら
)
うたと
思
(
おも
)
へば、
236
アヽ
夢
(
ゆめ
)
でしたか。
237
体中
(
からだぢう
)
此
(
この
)
通
(
とほ
)
り、
238
守護神
(
しゆごじん
)
が
入浴
(
にふよく
)
したと
見
(
み
)
えまして、
239
湯気
(
ゆげ
)
が
立
(
た
)
つて
居
(
を
)
りまする』
240
お
百合
(
ゆり
)
『イエイエ
決
(
けつ
)
して
夢
(
ゆめ
)
では
御座
(
ござ
)
いませぬ。
241
お
神懸
(
かむがか
)
り
[
※
三版・御校正本・愛世版では「神懸り」、校定版では「神憑り」。
]
で
御座
(
ござ
)
いました。
242
それはそれは
妙
(
めう
)
な
事
(
こと
)
を
仰有
(
おつしや
)
いました。
243
妾
(
わたし
)
は
少
(
すこ
)
し
許
(
ばか
)
り
腑
(
ふ
)
に
落
(
お
)
ちぬ
事
(
こと
)
が
御座
(
ござ
)
いますので、
244
二三
(
にさん
)
日
(
にち
)
猶予
(
いうよ
)
を
願
(
ねが
)
つて
置
(
お
)
きました』
245
友彦
(
ともひこ
)
『あゝさうでしたか。
246
何分
(
なにぶん
)
知覚
(
ちかく
)
精神
(
せいしん
)
を
失
(
うしな
)
つて
了
(
しま
)
ふ
神感法
(
しんかんはふ
)
の
神懸
(
かむがかり
)
[
※
三版・御校正本・愛世版では「神懸」、校定版では「神憑」。
]
ですから、
247
チツトも
分
(
わか
)
りませぬ。
248
神懸
(
かむがかり
)
[
※
三版・御校正本・愛世版では「神懸」、校定版では「神憑」。
]
も
却
(
かへつ
)
て
自分
(
じぶん
)
に
取
(
と
)
つては
不便
(
ふべん
)
なもので
御座
(
ござ
)
います。
249
アハヽヽヽ』
250
と
笑
(
わら
)
ひに
紛
(
まぎ
)
らす。
251
お
百合
(
ゆり
)
『それ
丈
(
だけ
)
立派
(
りつぱ
)
な
神懸
(
かむがかり
)
[
※
三版・御校正本・愛世版では「神懸」、校定版では「神がかり」。
]
が
出来
(
でき
)
ましたら
結構
(
けつこう
)
です。
252
仮令
(
たとへ
)
人間憑
(
にんげんがか
)
りに
致
(
いた
)
しましても、
253
あれ
丈
(
だけ
)
巧妙
(
かうめう
)
に
託宣
(
たくせん
)
が
出来
(
でき
)
ますれば、
254
大抵
(
たいてい
)
の
者
(
もの
)
は
皆
(
みな
)
降参
(
まゐ
)
つて
了
(
しま
)
ひます。
255
妾
(
わたし
)
でさへも
一旦
(
いつたん
)
は、
256
あの
何々
(
なになに
)
でした
位
(
くらゐ
)
ですもの。
257
オホヽヽヽ』
258
友彦
(
ともひこ
)
『
何
(
なん
)
と、
259
合点
(
がてん
)
の
行
(
ゆ
)
かぬ
貴女
(
あなた
)
の
御
(
お
)
言葉尻
(
ことばじり
)
、
260
何
(
なん
)
ぞ
怪
(
あや
)
しい
事
(
こと
)
が
御座
(
ござ
)
いましたか』
261
お
百合
(
ゆり
)
『イエイエ
別
(
べつ
)
に
怪
(
あや
)
しい
事
(
こと
)
は
御座
(
ござ
)
いませぬ。
262
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
引合
(
ひきあは
)
せ、
263
姉
(
あね
)
の
内
(
うち
)
へ
去年
(
きよねん
)
参
(
まゐ
)
りました
泥棒
(
どろばう
)
の
模型
(
もけい
)
か
実物
(
じつぶつ
)
か、
264
それは
後
(
あと
)
で
分
(
わか
)
りますが、
265
……
野太
(
のぶと
)
い
奴
(
やつ
)
が
瞞
(
だま
)
しに
来
(
き
)
ました』
266
と
後
(
あと
)
の
一二句
(
いちにく
)
に
力
(
ちから
)
を
籠
(
こ
)
めて、
267
優
(
やさ
)
しき
女
(
をんな
)
に
似
(
に
)
ず
呶鳴
(
どな
)
りつけた。
268
友彦
(
ともひこ
)
は
此
(
この
)
声
(
こゑ
)
に
打
(
う
)
たれ、
269
思
(
おも
)
はず
尻餅
(
しりもち
)
を
搗
(
つ
)
いて、
270
口
(
くち
)
を
開
(
あ
)
けた
儘
(
まま
)
、
271
火鉢
(
ひばち
)
の
横
(
よこ
)
にバタリと
倒
(
たふ
)
れた。
272
お
百合
(
ゆり
)
は
独語
(
ひとりごと
)
、
273
お
百合
(
ゆり
)
『オホヽヽヽ、
274
何
(
なん
)
と
悪魔
(
あくま
)
と
云
(
い
)
ふものは、
275
どこまでも
抜目
(
ぬけめ
)
のないものだ。
276
的
(
てつ
)
きり
此奴
(
こいつ
)
は
姉
(
ねえ
)
さんの
宅
(
うち
)
で
三百
(
さんびやく
)
両
(
りやう
)
騙
(
かた
)
り
取
(
と
)
つた
奴
(
やつ
)
に
間違
(
まちがひ
)
ない。
277
まだ
主人
(
しゆじん
)
の
生死
(
せいし
)
さへも
分
(
わか
)
らない
内
(
うち
)
から
其処
(
そこ
)
ら
近所
(
きんじよ
)
で
噂
(
うはさ
)
を
聞
(
き
)
いて
来
(
き
)
よつて、
278
良
(
い
)
い
加減
(
かげん
)
な
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
ひ、
279
若後家
(
わかごけ
)
を
誑
(
たぶ
)
らかさうと
思
(
おも
)
うてやつて
来
(
き
)
よつたのだなア。
280
どうやら
目
(
め
)
を
眩
(
ま
)
かして
居
(
ゐ
)
るらしい。
281
今
(
いま
)
の
間
(
うち
)
に
細帯
(
ほそおび
)
で
手足
(
てあし
)
を
括
(
くく
)
り、
282
庭先
(
にはさき
)
へ
引摺
(
ひきず
)
り
出
(
だ
)
し、
283
水
(
みづ
)
でもかけて
気
(
き
)
を
付
(
つ
)
けてやりませう。
284
……アーアそれにしても
東助
(
とうすけ
)
さまは
如何
(
どう
)
なつたのかいな。
285
村
(
むら
)
の
衆
(
しう
)
は、
286
未
(
いま
)
だに
誰
(
たれ
)
も
報告
(
はうこく
)
に
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さらず、
287
イヨイヨ
妾
(
わたし
)
も
未亡人
(
みばうじん
)
になれば、
288
今迄
(
いままで
)
とは
層一層
(
そういつそう
)
腹帯
(
はらおび
)
を
締
(
し
)
めねばなるまい。
289
あゝ
困
(
こま
)
つた
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
て
来
(
き
)
た』
290
と
自語
(
じご
)
する
折
(
をり
)
しも、
291
お
冊
(
さつ
)
は
慌
(
あわただ
)
しく
此
(
この
)
場
(
ば
)
に
駆来
(
かけきた
)
り、
292
お
冊
(
さつ
)
『
奥様
(
おくさま
)
、
293
お
喜
(
よろこ
)
び
下
(
くだ
)
さりませ。
294
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
が
只今
(
ただいま
)
御
(
ご
)
機嫌
(
きげん
)
よう
御
(
お
)
帰
(
かへ
)
りになりました』
295
お
百合
(
ゆり
)
は
飛
(
と
)
び
立
(
た
)
つ
許
(
ばか
)
り
喜
(
よろこ
)
び、
296
お
百合
(
ゆり
)
『ナニ、
297
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
がお
帰
(
かへ
)
りとな。
298
あゝ
斯
(
こ
)
うしては
居
(
を
)
られまい。
299
ドレドレお
迎
(
むか
)
へを
申
(
まを
)
さねばなるまい』
300
と
襟
(
えり
)
を
正
(
ただ
)
し
居
(
ゐ
)
る
所
(
ところ
)
へ、
301
早
(
はや
)
くも
東助
(
とうすけ
)
は
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
男
(
をとこ
)
を
引連
(
ひきつ
)
れ、
302
廊下
(
らうか
)
の
縁板
(
えんいた
)
を
威喝
(
ゐかつ
)
させ
乍
(
なが
)
ら
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
り、
303
東助
(
とうすけ
)
『アヽお
百合
(
ゆり
)
、
304
余
(
あま
)
り
帰
(
かへ
)
るのが
遅
(
おそ
)
かつたので、
305
心配
(
しんぱい
)
しただらうなア。
306
村人
(
むらびと
)
にも
大変
(
たいへん
)
な
厄介
(
やくかい
)
をかけたさうだ。
307
俺
(
おれ
)
も
到頭
(
たうとう
)
風
(
かぜ
)
に
吹
(
ふ
)
き
流
(
なが
)
されたと
云
(
い
)
ふ
訳
(
わけ
)
でもないが、
308
家島
(
えじま
)
まで
往
(
い
)
つて
来
(
き
)
たのだ。
309
マア
安心
(
あんしん
)
して
呉
(
く
)
れ』
310
お
百合
(
ゆり
)
『それはそれは
何
(
なに
)
よりも
嬉
(
うれ
)
しい
事
(
こと
)
で
御座
(
ござ
)
います。
311
つきましては
貴方
(
あなた
)
のお
不在中
(
るすちゆう
)
に、
312
四足
(
よつあし
)
が
一匹
(
いつぴき
)
這
(
は
)
ひ
込
(
こ
)
んで
来
(
き
)
ましたので、
313
今
(
いま
)
生捕
(
いけどり
)
にして
置
(
お
)
きました。
314
どうぞトツクリ
御覧
(
ごらん
)
下
(
くだ
)
さいませ』
315
と
友彦
(
ともひこ
)
を
指
(
ゆび
)
ざす。
316
東助
(
とうすけ
)
『
何
(
なに
)
、
317
これは
人間
(
にんげん
)
だないか。
318
厳
(
きび
)
しく
縛
(
ばく
)
されて
居
(
を
)
るではないか』
319
お
百合
(
ゆり
)
『ハイ、
320
一寸
(
ちよつと
)
妾
(
わたし
)
が
縛
(
ばく
)
しておきました。
321
此奴
(
こいつ
)
は
去年
(
きよねん
)
の
冬
(
ふゆ
)
、
322
姉
(
ねえ
)
さまの
内
(
うち
)
で
三百
(
さんびやく
)
両
(
りやう
)
騙
(
かた
)
り
取
(
と
)
つた
泥棒
(
どろばう
)
ですよ。
323
あなたが
行方
(
ゆくへ
)
が
知
(
し
)
れないと
云
(
い
)
ふ
噂
(
うはさ
)
を
聞
(
き
)
いて、
324
ウマく
妾
(
わたし
)
を
誑
(
たぶ
)
らかし、
325
此
(
この
)
家
(
いへ
)
を
横領
(
わうりやう
)
しようと
思
(
おも
)
うて
出
(
で
)
て
来
(
き
)
た
図太
(
づぶと
)
い
代物
(
しろもの
)
です』
326
東助
(
とうすけ
)
『それは
怪
(
け
)
しからぬ
奴
(
やつ
)
だ。
327
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
斯
(
こ
)
うしてはおかれまい。
328
助
(
たす
)
けてやらねばならぬから……コレコレ
鶴公
(
つるこう
)
、
329
清公
(
きよこう
)
、
330
武公
(
たけこう
)
、
331
お
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
だが、
332
縛
(
いましめ
)
を
解
(
と
)
き
水
(
みづ
)
でも
与
(
あた
)
へて、
333
気
(
き
)
を
付
(
つ
)
けてやつて
下
(
くだ
)
さい』
334
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
命
(
めい
)
の
儘
(
まま
)
に
縛
(
いましめ
)
を
解
(
と
)
き
水
(
みづ
)
を
吹
(
ふ
)
き
注
(
か
)
けた。
335
漸
(
やうや
)
くの
事
(
こと
)
で
友彦
(
ともひこ
)
は
正気
(
しやうき
)
に
復
(
ふく
)
し
起
(
お
)
きあがり、
336
東助
(
とうすけ
)
其
(
その
)
他
(
た
)
の
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
て
大
(
おほい
)
に
驚
(
おどろ
)
き、
337
畳
(
たたみ
)
に
頭
(
かしら
)
を
摺
(
す
)
りつけ、
338
涙
(
なみだ
)
と
共
(
とも
)
に
詫入
(
わびい
)
る。
339
東助
(
とうすけ
)
は
友彦
(
ともひこ
)
に
向
(
むか
)
ひ、
340
東助
『お
前
(
まへ
)
は
立派
(
りつぱ
)
な
宣伝使
(
せんでんし
)
の
風
(
ふう
)
をして
居
(
ゐ
)
るが、
341
今
(
いま
)
聞
(
き
)
く
所
(
ところ
)
に
依
(
よ
)
れば、
342
大変
(
たいへん
)
な
悪党
(
あくたう
)
らしい。
343
此
(
この
)
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
何処
(
どこ
)
までも
悪
(
あく
)
では
通
(
とほ
)
れませぬぞ』
344
友彦
(
ともひこ
)
『ハイ
誠
(
まこと
)
に
悪
(
わる
)
う
御座
(
ござ
)
いました。
345
面目
(
めんぼく
)
次第
(
しだい
)
も
御座
(
ござ
)
いませぬ。
346
どうぞ
生命
(
いのち
)
計
(
ばか
)
りはお
助
(
たす
)
け
下
(
くだ
)
さいませ。
347
これつきりモウ
宣伝使
(
せんでんし
)
は
廃
(
や
)
めまする』
348
東助
(
とうすけ
)
『
結構
(
けつこう
)
な
宣伝使
(
せんでんし
)
の
役
(
やく
)
をやめとは
申
(
まを
)
さぬ。
349
ますます
魂
(
たましひ
)
を
研
(
みが
)
いて
立派
(
りつぱ
)
な
宣伝使
(
せんでんし
)
にお
成
(
な
)
りなさい。
350
そして
世界
(
せかい
)
の
人民
(
じんみん
)
を
善道
(
ぜんだう
)
に
導
(
みちび
)
きなさるのが
貴方
(
あなた
)
の
天職
(
てんしよく
)
だ。
351
今迄
(
いままで
)
の
様
(
やう
)
な
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
を
松魚節
(
かつをぶし
)
にして
女
(
をんな
)
を
籠絡
(
ろうらく
)
したり、
352
病人
(
びやうにん
)
の
在
(
あ
)
る
家
(
いへ
)
を
探
(
さが
)
して、
353
弱身
(
よわみ
)
に
付
(
つ
)
け
込
(
こ
)
み
詐欺
(
さぎ
)
をしたりする
様
(
やう
)
な
事
(
こと
)
は、
354
これ
限
(
ぎ
)
りお
廃
(
や
)
めなさるがよからう』
355
友彦
(
ともひこ
)
『ハイ
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います。
356
どうぞお
助
(
たす
)
け
下
(
くだ
)
さいませ。
357
これ
限
(
かぎ
)
り
悪
(
あく
)
は
改
(
あらた
)
めまする』
358
斯
(
か
)
かる
所
(
ところ
)
へ
門口
(
かどぐち
)
に
大勢
(
おほぜい
)
の
声
(
こゑ
)
にて、
359
『
東助
(
とうすけ
)
さまが
生
(
い
)
きてござつた。
360
無事
(
ぶじ
)
に
帰
(
かへ
)
られた、
361
ウローウロー』
362
と
山岳
(
さんがく
)
も
揺
(
ゆる
)
ぐ
計
(
ばか
)
り
歓呼
(
くわんこ
)
の
声
(
こゑ
)
聞
(
きこ
)
え
来
(
く
)
る。
363
東助
(
とうすけ
)
『お
前
(
まへ
)
、
364
イヨイヨ
改心
(
かいしん
)
を
志
(
し
)
たのならば、
365
あの
通
(
とほ
)
り
今
(
いま
)
門口
(
かどぐち
)
に
沢山
(
たくさん
)
の
村人
(
むらびと
)
が
来
(
き
)
て
居
(
を
)
るから、
366
一
(
ひと
)
つ
懺悔
(
ざんげ
)
演説
(
えんぜつ
)
でもして
下
(
くだ
)
され。
367
一伍
(
いちぶ
)
一什
(
しじふ
)
包
(
つつ
)
み
隠
(
かく
)
さず、
368
旧悪
(
きうあく
)
をさらけ
出
(
だ
)
して
改心
(
かいしん
)
の
状
(
じやう
)
をお
示
(
しめ
)
しなされ。
369
それが
出来
(
でき
)
ねば
大泥棒
(
おほどろばう
)
として、
370
此
(
この
)
東助
(
とうすけ
)
が
酋長
(
しうちやう
)
の
職権
(
しよくけん
)
を
以
(
もつ
)
て
成敗
(
せいばい
)
を
致
(
いた
)
す』
371
友彦
(
ともひこ
)
小
(
ちひ
)
さい
声
(
こゑ
)
で、
372
友彦
『ハイ
致
(
いた
)
しまする』
373
東助
(
とうすけ
)
『サア
早
(
はや
)
く
門口
(
かどぐち
)
へ
出
(
で
)
て、
374
懺悔
(
ざんげ
)
演説
(
えんぜつ
)
を
始
(
はじ
)
めたが
宜
(
よろ
)
しからう』
375
友彦
(
ともひこ
)
は、
376
友彦
『ハイ
直
(
すぐ
)
に
参
(
まゐ
)
ります。
377
俄
(
にはか
)
に
大便
(
だいべん
)
が
催
(
もよほ
)
して
来
(
き
)
ました。
378
どうぞ
便所
(
べんじよ
)
へ
往
(
ゆ
)
く
間
(
あひだ
)
御
(
ご
)
猶予
(
いうよ
)
を
願
(
ねが
)
ひます』
379
東助
(
とうすけ
)
『
便所
(
べんじよ
)
ならば
其処
(
そこ
)
にある。
380
サア
早
(
はや
)
く
行
(
い
)
つて
来
(
き
)
たがよからう』
381
友彦
(
ともひこ
)
は、
382
友彦
『ハイ
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います』
383
と
直様
(
すぐさま
)
雪隠
(
せつちん
)
に
入
(
い
)
り、
384
跨
(
また
)
げ
穴
(
あな
)
から
潜
(
くぐ
)
つて
外
(
そと
)
に
這
(
は
)
ひ
出
(
だ
)
し、
385
折柄
(
をりから
)
日
(
ひ
)
の
暮
(
く
)
れかかつたのを
幸
(
さいは
)
ひ、
386
裏山
(
うらやま
)
の
密林
(
みつりん
)
指
(
さ
)
して
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
隠
(
かく
)
れたりける。
387
鶴公
(
つるこう
)
、
388
清公
(
きよこう
)
、
389
武公
(
たけこう
)
の
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
暫
(
しばら
)
く
東助
(
とうすけ
)
の
家
(
いへ
)
に
厄介
(
やくかい
)
となり、
390
遂
(
つひ
)
に
東助
(
とうすけ
)
に
感化
(
かんくわ
)
されて
前非
(
ぜんぴ
)
を
悔
(
く
)
い、
391
心
(
こころ
)
の
底
(
そこ
)
より
言依別
(
ことよりわけの
)
命
(
みこと
)
の
教
(
をしへ
)
を
奉
(
ほう
)
ずる
事
(
こと
)
となりにける。
392
(
大正一一・六・一二
旧五・一七
松村真澄
録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
<<< 捨小舟
(B)
(N)
婆と婆 >>>
霊界物語
>
第23巻
> 第3篇 有耶無耶 > 第14章 籠抜
Tweet
ロシアのプーチン大統領が霊界物語に予言されていた!?<絶賛発売中>
オニド関連サイト
最新更新情報
10/22
【霊界物語ネット】
『
王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)
』をテキスト化しました。
9/18
【
飯塚弘明.com
】
飯塚弘明著『
PTC2 出口王仁三郎の霊界物語で透見する世界現象 T之巻
』発刊!
5/8
【霊界物語ネット】
霊界物語ネットに出口王仁三郎の
第六歌集『霧の海』
を掲載しました。
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【
メールアドレス
】
【14 籠抜|第23巻(戌の巻)|霊界物語/rm2314】
合言葉「みろく」を入力して下さい→