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霊界物語
海洋万里(第25~36巻)
第27巻(寅の巻)
序文
凡例
総説歌
第1篇 聖地の秋
第1章 高姫館
第2章 清潔法
第3章 魚水心
第2篇 千差万別
第4章 教主殿
第5章 玉調べ
第6章 玉乱
第7章 猫の恋
第3篇 神仙霊境
第8章 琉と球
第9章 女神託宣
第10章 太平柿
第11章 茶目式
第4篇 竜神昇天
第12章 湖上の怪物
第13章 竜の解脱
第14章 草枕
第15章 情意投合
第5篇 清泉霊沼
第16章 琉球の神
第17章 沼の女神
第18章 神格化
余白歌
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」「
Onido AI研究室
」
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海洋万里(第25~36巻)
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第27巻(寅の巻)
> 第1篇 聖地の秋 > 第1章 高姫館
<<< 総説歌
(B)
(N)
清潔法 >>>
第一章
高姫
(
たかひめ
)
館
(
やかた
)
〔七八三〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第27巻 海洋万里 寅の巻
篇:
第1篇 聖地の秋
よみ(新仮名遣い):
せいちのあき
章:
第1章 高姫館
よみ(新仮名遣い):
たかひめやかた
通し章番号:
783
口述日:
1922(大正11)年07月22日(旧閏05月28日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年6月20日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
桶伏山の東麓に建つ高姫館に、高山彦・黒姫夫婦がやってきた。門番の勝公・安公は丁寧に出迎えて、奥へと迎え入れた。
高姫は奥の間へ現れ、火鉢の前に座ると四角張って、二人が夫婦連れでやってきたことに嫌味を言った。黒姫は高山彦のたもとを引っ張って、早く帰れと促した。高山彦は、高姫の嫌味に賛同を表し、黒姫と口げんかをしている。
黒姫は、このようなことをしに来たのではない、と言って来意を告げた。国依別が高姫に進上するようにと、魚だと称して川石をどっさり持って来たので、高姫に処置を伺いに来たのであった。
高姫、黒姫は、これはてっきり国依別が意趣返しだと合点した。高姫は、国依別本人に問いただすのだと言い出し、安公に国依別を呼んで来るように言いつけた。
安公が国依別を呼びに行くと、秋彦も着いて来た。二人は滑稽を演じながらやってきて、安公を巻き込んで高姫館の門口で三文芝居をしている。
高姫は声を聞きつけて門口に出てきた。国依別は芝居の姿のまま、高姫の問いかけに俳句で答えている。そのまま国依別、秋彦は奥の間に入った。
高姫が、石の魚を寄越した意図を問いただしたが、国依別は相変わらずずっと俳句で答えて、高姫、黒姫を罵倒してなぶっている。黒姫は、高山彦に悔しくないのかとけしかけて、反撃するように促した。
高山彦は自分を滑稽に歌った歌を返してしまう。黒姫は怒って国依別の過去をあげつらった歌を歌って返した。それを聞いた国依別は大笑いして、黒姫の歌を褒め称える滑稽歌を返した。
さすがの高姫もあきれてしまう。再度の高姫の問いかけに、国依別は、石より固い高姫の心に敬意を表したのであり、食ってくれとは一言も言っていないと洒落の意を明かした。高姫も、あきれが過ぎて感心してしまう。
そこへ夏彦と常彦が、高姫のご機嫌伺いにやってきた。二人は案に相違して国依別、秋彦がその場に居たのでどぎまぎしている。国依別と秋彦は、密談の邪魔になるだろうから、と言って高姫館を去って行った。
帰り道、国依別は高姫もずいぶん辛抱強くなったと感心している。二人は滑稽口をたたきながら、国依別の庵まで戻ってきた。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
末で一つになる仕組(秋彦のセリフ「末になりたら~」)
データ凡例:
データ最終更新日:
2024-06-03 23:27:38
OBC :
rm2701
愛善世界社版:
9頁
八幡書店版:
第5輯 245頁
修補版:
校定版:
9頁
普及版:
3頁
初版:
ページ備考:
001
五六七
(
みろく
)
の
神世
(
かみよ
)
の
経綸地
(
けいりんち
)
002
青垣山
(
あをがきやま
)
を
繞
(
めぐ
)
らせる
003
霊山
(
れいざん
)
会場
(
ゑぢやう
)
の
蓮華台
(
れんげだい
)
004
桶伏山
(
をけぶせやま
)
の
東麓
(
とうろく
)
に
005
旭
(
あさひ
)
を
受
(
う
)
けて
小雲川
(
こくもがは
)
006
清
(
きよ
)
き
流
(
なが
)
れを
瞰下
(
かんか
)
する
007
風景
(
ふうけい
)
絶佳
(
ぜつか
)
の
岩
(
いは
)
が
根
(
ね
)
に
008
丸木柱
(
まるきばしら
)
に
笹
(
ささ
)
の
屋根
(
やね
)
009
厚
(
あつ
)
く
葺
(
ふ
)
いたる
神館
(
かむやかた
)
010
静
(
しづ
)
かに
建
(
た
)
てる
冠木門
(
かぶきもん
)
011
天然石
(
てんねんいし
)
を
敷
(
し
)
き
並
(
なら
)
べ
012
梅
(
うめ
)
と
松
(
まつ
)
との
庭園
(
ていゑん
)
を
013
可
(
か
)
なりに
広
(
ひろ
)
く
繞
(
めぐ
)
らして
014
建
(
た
)
てる
館
(
やかた
)
は
四間造
(
よまづく
)
り
015
奥
(
おく
)
の
離
(
はな
)
れの
一棟
(
ひとむね
)
は
016
高姫
(
たかひめ
)
さまが
書斎
(
しよさい
)
の
間
(
ま
)
017
萩
(
はぎ
)
の
小柴
(
こしば
)
を
編
(
あ
)
み
立
(
た
)
てて
018
造
(
つく
)
り
上
(
あ
)
げたる
文机
(
ふみづくゑ
)
019
天然石
(
てんねんいし
)
の
硯
(
すずり
)
をば
020
お
鍋
(
なべ
)
が
味噌
(
みそ
)
を
摺
(
す
)
る
様
(
やう
)
に
021
焼木杭
(
やけぼくくひ
)
をクリクリと
022
連木
(
れんぎ
)
の
様
(
やう
)
に
摺
(
す
)
り
減
(
へ
)
らし
023
竹
(
たけ
)
の
篦
(
へら
)
にて
造
(
つく
)
りたる
024
筆
(
ふで
)
に
墨
(
すみ
)
をば
染
(
そ
)
ませつつ
025
青
(
あを
)
く
乾
(
かわ
)
きし
芭蕉葉
(
ばせうば
)
に
026
何
(
なに
)
か
知
(
し
)
らねどスラスラと
027
書
(
か
)
き
記
(
しる
)
し
居
(
を
)
る
時
(
とき
)
もあれ
028
門
(
もん
)
を
開
(
ひら
)
いて
入
(
い
)
り
来
(
きた
)
る
029
高山彦
(
たかやまひこ
)
や
黒姫
(
くろひめ
)
の
030
姿
(
すがた
)
眺
(
なが
)
めて
下男
(
しもをとこ
)
031
勝公
(
かつこう
)
安公
(
やすこう
)
両人
(
りやうにん
)
は
032
竜宮
(
りうぐう
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
入来
(
じゆらい
)
と
033
いと
丁寧
(
ていねい
)
に
腰
(
こし
)
屈
(
かが
)
め
034
敬意
(
けいい
)
を
表
(
へう
)
せば
黒姫
(
くろひめ
)
は
035
高姫
(
たかひめ
)
様
(
さま
)
は
在宅
(
ざいたく
)
か
036
高山彦
(
たかやまひこ
)
の
夫婦
(
ふうふ
)
連
(
づ
)
れ
037
参
(
まゐ
)
りましたと
奥
(
おく
)
の
間
(
ま
)
へ
038
伝
(
つた
)
へてお
呉
(
く
)
れと
促
(
うなが
)
せば
039
ハイハイと
答
(
こた
)
へて
勝公
(
かつこう
)
は
040
コレコレ
安公
(
やすこう
)
門
(
もん
)
の
番
(
ばん
)
041
しつかり
頼
(
たの
)
むと
言
(
い
)
ひ
捨
(
す
)
てて
042
いそいそ
奥
(
おく
)
へ
駆
(
か
)
けて
行
(
ゆ
)
く
043
暫
(
しばら
)
くありて
勝公
(
かつこう
)
は
044
二人
(
ふたり
)
の
前
(
まへ
)
に
腰
(
こし
)
屈
(
かが
)
め
045
高姫
(
たかひめ
)
さまの
仰
(
あふ
)
せには
046
待兼山
(
まちかねやま
)
の
時鳥
(
ほととぎす
)
047
お
二人
(
ふたり
)
共
(
とも
)
に
奥
(
おく
)
の
間
(
ま
)
へ
048
早
(
はや
)
くお
進
(
すす
)
み
下
(
くだ
)
さんせ
049
以
(
もつ
)
ての
外
(
ほか
)
の
御
(
ご
)
機嫌
(
きげん
)
と
050
話
(
はな
)
せば
黒姫
(
くろひめ
)
羽撃
(
はばた
)
きし
051
高山彦
(
たかやまひこ
)
も
教服
(
けうふく
)
の
052
塵
(
ちり
)
打払
(
うちはら
)
ひ
悠々
(
いういう
)
と
053
細
(
ほそ
)
き
廊下
(
らうか
)
を
伝
(
つた
)
ひつつ
054
奥
(
おく
)
の
間
(
ま
)
さして
忍
(
しの
)
び
入
(
い
)
る
055
高姫
(
たかひめ
)
は
別棟
(
べつむね
)
の
書斎
(
しよさい
)
から
廊下
(
らうか
)
伝
(
づた
)
ひに
袴
(
はかま
)
も
着
(
つ
)
けず、
056
板縁
(
いたえん
)
をめきめき
云
(
い
)
はせ
乍
(
なが
)
ら、
057
稍
(
やや
)
空向
(
そらむ
)
き
気味
(
ぎみ
)
になつて
奥
(
おく
)
の
間
(
ま
)
に
現
(
あら
)
はれ、
058
木
(
き
)
の
株
(
かぶ
)
を
切抜
(
きりぬ
)
いた
火鉢
(
ひばち
)
を
前
(
まへ
)
に
据
(
す
)
ゑ、
059
煎餅
(
せんべい
)
の
様
(
やう
)
な
薄
(
うす
)
い
座蒲団
(
ざぶとん
)
の
上
(
うへ
)
に
四角張
(
しかくば
)
つて、
060
高姫
(
たかひめ
)
『コレハコレハ
高山彦
(
たかやまひこ
)
さまに
黒姫
(
くろひめ
)
さま、
061
お
仲
(
なか
)
の
良
(
よ
)
いこと。
062
独身者
(
どくしんもの
)
の
高姫
(
たかひめ
)
の
前
(
まへ
)
にそんなお
目出度
(
めでた
)
いとこを
展開
(
てんかい
)
して
貰
(
もら
)
ひますと、
063
堪
(
たま
)
りませぬワ。
064
オホヽヽヽ、
065
まあまあ
御
(
ご
)
遠慮
(
ゑんりよ
)
は
要
(
い
)
りませぬ。
066
ズツと
奥
(
おく
)
へ
御
(
お
)
通
(
とほ
)
り
下
(
くだ
)
さい。
067
………さう
遠慮
(
ゑんりよ
)
をして
貰
(
もら
)
うと、
068
肝心要
(
かんじんかなめ
)
の
話
(
はなし
)
も
見
(
み
)
えず、
069
お
顔
(
かほ
)
も
聞
(
きこ
)
えず、
070
大変
(
たいへん
)
に
都合
(
つがふ
)
がよくありませぬワ』
071
と
態
(
わざ
)
とに
顔
(
かほ
)
が
聞
(
きこ
)
えぬの、
072
話
(
はなし
)
が
見
(
み
)
えぬのと、
073
脱線振
(
だつせんぶり
)
を
発揮
(
はつき
)
して、
074
高山彦
(
たかやまひこ
)
夫婦
(
ふうふ
)
に
対
(
たい
)
し
大日
(
おほひ
)
の
照
(
て
)
るのに、
075
昼日中
(
ひるひなか
)
気楽
(
きらく
)
相
(
さう
)
に
夫婦
(
ふうふ
)
連
(
づ
)
れでやつて
来
(
き
)
たのは、
076
チツト
脱線
(
だつせん
)
ぢやないかとの
意味
(
いみ
)
を
仄
(
ほのめ
)
かして
居
(
ゐ
)
る。
077
黒姫
(
くろひめ
)
の
顔
(
かほ
)
はサツと
変
(
かは
)
り、
078
高山彦
(
たかやまひこ
)
の
袂
(
たもと
)
をチヨイチヨイと
引張
(
ひつぱ
)
り、
079
早
(
はや
)
く
気
(
き
)
を
利
(
き
)
かして
貴方
(
あなた
)
はお
帰
(
かへ
)
りと
云
(
い
)
ふ
意味
(
いみ
)
を
私
(
ひそ
)
かに
示
(
しめ
)
した。
080
高山彦
(
たかやまひこ
)
『コレ
黒姫
(
くろひめ
)
、
081
お
前
(
まへ
)
は
何時
(
いつ
)
も
人
(
ひと
)
の
袂
(
たもと
)
をチヨイチヨイ
引張
(
ひつぱ
)
るが、
082
唖
(
おし
)
でもあるまいに、
083
何故
(
なぜ
)
明瞭
(
はつきり
)
と
言
(
い
)
はないのだ。
084
わしはそんな、
085
狐鼠
(
こそ
)
々々
(
こそ
)
と
手真似
(
てまね
)
や
仕方
(
しかた
)
で
以心
(
いしん
)
伝心
(
でんしん
)
の
使分
(
つかひわ
)
けは
嫌
(
きら
)
ひだからなア』
086
黒姫
(
くろひめ
)
『エー
気
(
き
)
の
利
(
き
)
かぬ……
瓢六爺
(
へうろくおやぢ
)
だなア。
087
高姫
(
たかひめ
)
さまが
最前
(
さいぜん
)
の
御
(
お
)
言葉
(
ことば
)
、
088
貴方
(
あなた
)
は
何
(
なん
)
と
聞
(
き
)
きましたか。
089
竹生島
(
ちくぶしま
)
でも
仰有
(
おつしや
)
つた
通
(
とほ
)
り、
090
夫婦
(
ふうふ
)
ありては
御用
(
ごよう
)
の
出来
(
でき
)
ぬ
御
(
お
)
道
(
みち
)
だのに、
091
高山
(
たかやま
)
さまを
貰
(
もら
)
うてから、
092
私
(
わたし
)
の
間
(
ま
)
が
抜
(
ぬ
)
けたとキツパリ
仰有
(
おつしや
)
りましたでせう』
093
高山彦
(
たかやまひこ
)
『オホヽヽヽ、
094
いやもう
恐
(
おそ
)
れ
入
(
い
)
りました。
095
此
(
この
)
高山彦
(
たかやまひこ
)
も
高姫
(
たかひめ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
精神
(
せいしん
)
に、
096
大賛成
(
だいさんせい
)
です』
097
黒姫
(
くろひめ
)
目
(
め
)
に
角
(
かど
)
を
立
(
た
)
て、
098
少
(
すこ
)
しく
口角
(
こうかく
)
より
泡
(
あわ
)
を
滲
(
にじ
)
ませ
乍
(
なが
)
ら、
099
黒姫
(
くろひめ
)
『それ
程
(
ほど
)
何々
(
なになに
)
さまがお
気
(
き
)
に
入
(
い
)
りますれば、
100
どうぞ
御
(
お
)
好
(
す
)
きな
様
(
やう
)
になさいませ。
101
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
何時
(
いつ
)
も
貴方
(
あなた
)
の
仰有
(
おつしや
)
る
通
(
とほ
)
り、
102
色
(
いろ
)
の
黒
(
くろ
)
い
烏
(
からす
)
の
嫁
(
よめ
)
に、
103
首
(
くび
)
や
手足
(
てあし
)
の
長
(
なが
)
い
鶴
(
つる
)
の
婿
(
むこ
)
さまは
釣合
(
つりあ
)
ひませぬ。
104
ヘン……
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
の
空
(
そら
)
と
男
(
をとこ
)
の
心
(
こころ
)
、
105
折角
(
せつかく
)
御
(
お
)
邪魔
(
じやま
)
を
致
(
いた
)
しましたが、
106
私
(
わたし
)
は
是
(
これ
)
で
御免
(
ごめん
)
を
蒙
(
かうむ
)
ります。
107
高山彦
(
たかやまひこ
)
に
鷹鳥姫
(
たかとりひめ
)
様
(
さま
)
、
108
高
(
たか
)
と
鷹
(
たか
)
との
情意
(
じやうい
)
投合
(
とうがふ
)
、
109
私
(
わたし
)
も
是
(
これ
)
にて
断念
(
だんねん
)
致
(
いた
)
します。
110
こんな
厄介
(
やくかい
)
な
爺
(
おやぢ
)
を
誰
(
たれ
)
が
好
(
す
)
き
好
(
この
)
んでハズバンドにしたい
者
(
もの
)
が
御座
(
ござ
)
いませうか。
111
高姫
(
たかひめ
)
さまの
御
(
ご
)
紹介
(
せうかい
)
だと
思
(
おも
)
つてお
道
(
みち
)
の
為
(
ため
)
、
112
国家
(
こくか
)
の
為
(
ため
)
に
今迄
(
いままで
)
辛抱
(
しんばう
)
して
参
(
まゐ
)
りました。
113
男鰥
(
をとこやもめ
)
に
蛆
(
うじ
)
が
湧
(
わ
)
く、
114
女鰥夫
(
をんなやもを
)
に
花
(
はな
)
が
咲
(
さ
)
く、
115
ヘン…
済
(
す
)
まないが
私
(
わたし
)
だつて……ヘーン』
116
高山彦
(
たかやまひこ
)
『
大変
(
たいへん
)
な
所
(
とこ
)
へ
鋒鋩
(
ほうばう
)
を
向
(
む
)
けるのだなア。
117
ここを
何
(
なん
)
と
心得
(
こころえ
)
てる』
118
黒姫
(
くろひめ
)
『ヘン、
119
仰有
(
おつしや
)
いますな、
120
そんな
事
(
こと
)
の
分
(
わか
)
らぬ
様
(
やう
)
な
黒姫
(
くろひめ
)
ですかいな。
121
擬
(
まが
)
ふ
方
(
かた
)
なき
高姫
(
たかひめ
)
さまの
御
(
お
)
館
(
やかた
)
、
122
桶伏山
(
をけふせやま
)
の
朝日
(
あさひ
)
の
直刺
(
たださ
)
す
景勝
(
けいしよう
)
の
地
(
ち
)
、
123
小雲川
(
こくもがは
)
の
畔
(
ほとり
)
で
御座
(
ござ
)
んすぞえ』
124
高姫
(
たかひめ
)
『オホヽヽヽ、
125
随分
(
ずゐぶん
)
御
(
お
)
気楽
(
きらく
)
なことですな。
126
私
(
わたし
)
等
(
ら
)
は
春
(
はる
)
の
花
(
はな
)
も
仲秋
(
ちうしう
)
の
月
(
つき
)
も、
127
楽
(
たの
)
しむ
暇
(
いとま
)
は
無
(
な
)
く、
128
何
(
なん
)
だか
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
為
(
ため
)
にかうヂツとして
居
(
ゐ
)
ても、
129
気
(
き
)
が
焦々
(
いらいら
)
し、
130
忙
(
せは
)
しくつてなりませぬワ。
131
小心者
(
せうしんもの
)
の
高姫
(
たかひめ
)
に
比
(
くら
)
べては、
132
余裕
(
よゆう
)
綽々
(
しやくしやく
)
たる
御
(
ご
)
夫婦仲
(
ふうふなか
)
、
133
実
(
じつ
)
にお
羨
(
うらや
)
ましう
御座
(
ござ
)
います。
134
ホツホヽヽ』
135
黒姫
(
くろひめ
)
『
今日
(
けふ
)
は
左様
(
さやう
)
な
貴女
(
あなた
)
の
嘲罵
(
てうば
)
的
(
てき
)
御
(
お
)
話
(
はなし
)
を
聞
(
き
)
きに
参
(
まゐ
)
つたのぢや
御座
(
ござ
)
いませぬ。
136
国依別
(
くによりわけ
)
が
高姫
(
たかひめ
)
さまに
進上
(
しんじやう
)
して
呉
(
く
)
れと
云
(
い
)
つて、
137
妙
(
めう
)
な
物
(
もの
)
を
持
(
も
)
つて
来
(
き
)
ました。
138
開
(
あ
)
けて
見
(
み
)
れば
大変
(
たいへん
)
な
立派
(
りつぱ
)
な
重
(
ぢう
)
の
内
(
うち
)
、
139
上
(
うへ
)
に
一
(
ひと
)
つの
短冊
(
たんざく
)
が
載
(
の
)
つてゐる。
140
其
(
その
)
文面
(
ぶんめん
)
には………
鮒
(
ふな
)
もろこ
、
141
鯰
(
なまづ
)
からかぎ
鯉
(
こひ
)
に
鱒
(
ます
)
、
142
酒
(
さけ
)
の
肴
(
さかな
)
に
鰌
(
どぢやう
)
ニヨロニヨロ、
143
ふんぞくらい
に
砂
(
すな
)
くぐり
、
144
石食
(
いしく
)
ひ
魚
(
うを
)
に
釜掴
(
かまつか
)
み、
145
直
(
すぐ
)
におあがり
下
(
くだ
)
さらねば、
146
直
(
ただち
)
に
石
(
いし
)
に
変化
(
へんくわ
)
する
虞
(
おそれ
)
あり………と
書
(
か
)
いてありました。
147
こら
妙
(
めう
)
だと
開
(
あ
)
けて
見
(
み
)
れば、
148
不思議
(
ふしぎ
)
も
不思議
(
ふしぎ
)
、
149
上
(
うへ
)
の
重
(
ぢう
)
も
中
(
なか
)
の
重
(
ぢう
)
も
下
(
した
)
の
重
(
ぢう
)
も
残
(
のこ
)
らず
石
(
いし
)
ばつかり、
150
何程
(
なにほど
)
国依別
(
くによりわけ
)
が
悪戯
(
いたづら
)
好
(
ず
)
きだと
云
(
い
)
つても、
151
まさか
石
(
いし
)
を
初
(
はじめ
)
から
持
(
も
)
つては
来
(
き
)
ますまい。
152
貴女
(
あなた
)
に
怒
(
おこ
)
られると
大変
(
たいへん
)
だと
思
(
おも
)
ひ、
153
一寸
(
ちよつと
)
私
(
わたし
)
の
宅
(
たく
)
に
其
(
その
)
儘
(
まま
)
預
(
あづか
)
つておきました。
154
どう
致
(
いた
)
しませうかな』
155
高姫
(
たかひめ
)
俄
(
にはか
)
に
面
(
つら
)
を
膨
(
ふく
)
らし、
156
高姫
(
たかひめ
)
『
黒姫
(
くろひめ
)
サン』
157
と
言葉尻
(
ことばじり
)
をピンと
撥
(
は
)
ね、
158
高姫
(
たかひめ
)
『お
前
(
まへ
)
さまは
余程
(
よつぽど
)
良
(
よ
)
い
馬鹿
(
ばか
)
ですね』
159
黒姫
(
くろひめ
)
『ヘー……』
160
高山彦
(
たかやまひこ
)
『
何分
(
なにぶん
)
にも
竜宮
(
りうぐう
)
の
乙姫
(
おとひめ
)
様
(
さま
)
が
一
(
ひと
)
つ
島
(
じま
)
とやらへ、
161
御
(
ご
)
旅行
(
りよかう
)
遊
(
あそ
)
ばした
不在宅
(
るすたく
)
のガラン
洞
(
どう
)
ですからなア、
162
アハヽヽヽ』
163
黒姫
(
くろひめ
)
『
情意
(
じやうい
)
投合
(
とうがふ
)
のお
二人
(
ふたり
)
様
(
さま
)
、
164
どうなつと
仰有
(
おつしや
)
りませ。
165
あなたは
何時
(
いつ
)
も
サカナ
理屈
(
りくつ
)
を
言
(
い
)
うてお
イシ
が
悪
(
わる
)
いから、
166
意趣
(
いしゆ
)
返
(
がへ
)
しに
団子
(
だんご
)
理屈
(
りくつ
)
………オツトドツコイ
団子石
(
だんごいし
)
を
国依別
(
くによりわけ
)
が
態
(
わざ
)
と
持
(
も
)
つて
来
(
き
)
たのでせう。
167
そんな
事
(
こと
)
の
気
(
き
)
の
付
(
つ
)
かぬ
様
(
やう
)
な
黒姫
(
くろひめ
)
ぢや
御座
(
ござ
)
りませぬ。
168
金剛
(
こんがう
)
不壊
(
ふえ
)
の
宝珠
(
ほつしゆ
)
でさへも
御
(
お
)
呑
(
の
)
み
遊
(
あそ
)
ばす
高姫
(
たかひめ
)
さまだから、
169
今度
(
こんど
)
はお
生憎
(
あひにく
)
様
(
さま
)
、
170
堅
(
かた
)
い
玉
(
たま
)
がないから、
171
これなつと
御
(
お
)
あがり
遊
(
あそ
)
ばして、
172
腹
(
はら
)
の
虫
(
むし
)
を
御
(
お
)
癒
(
い
)
やしなされと
云
(
い
)
ふ、
173
国依別
(
くによりわけ
)
の
皮肉
(
ひにく
)
な
謎
(
なぞ
)
ですよ』
174
高姫
(
たかひめ
)
『
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
国依別
(
くによりわけ
)
を
招
(
よ
)
んで
来
(
き
)
ませうか。
175
本人
(
ほんにん
)
に
直接
(
ちよくせつ
)
承
(
うけたま
)
はれば
一番
(
いちばん
)
近道
(
ちかみち
)
だから………コレコレ
安公
(
やすこう
)
さま、
176
お
前
(
まへ
)
ちよつと
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
だが、
177
杢助館
(
もくすけやかた
)
の
隣
(
となり
)
の
豚小屋
(
ぶたごや
)
の
様
(
やう
)
な
小
(
ちひ
)
さい
家
(
うち
)
に、
178
国依別
(
くによりわけ
)
が
今頃
(
いまごろ
)
は
昼寝
(
ひるね
)
の
夢
(
ゆめ
)
でも
見
(
み
)
て
居
(
ゐ
)
るに
違
(
ちが
)
ひないから、
179
高姫
(
たかひめ
)
さまが
此
(
この
)
間
(
あひだ
)
の
御
(
お
)
礼
(
れい
)
に
御
(
ご
)
馳走
(
ちそう
)
をあげたい。
180
就
(
つ
)
いては
折入
(
をりい
)
つて
御
(
お
)
頼
(
たの
)
みしたい
事
(
こと
)
があるから、
181
最大
(
さいだい
)
急行
(
きふかう
)
で
御
(
お
)
出
(
い
)
で
下
(
くだ
)
さいと、
182
呼
(
よ
)
んで
来
(
く
)
るのだよ』
183
安公
(
やすこう
)
『ハイ、
184
さう
御
(
ご
)
註文
(
ちうもん
)
通
(
どほ
)
り、
185
国依別
(
くによりわけ
)
さまが
来
(
き
)
て
呉
(
く
)
れませうかな』
186
高姫
(
たかひめ
)
『
来
(
こ
)
いでかい。
187
もし
来
(
こ
)
なかつたら……
系統
(
ひつぽう
)
の
生宮
(
いきみや
)
の
命令
(
めいれい
)
を
何故
(
なぜ
)
聞
(
き
)
かないか、
188
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
を
何
(
なん
)
と
心得
(
こころえ
)
て
御座
(
ござ
)
る……と
一本
(
いつぽん
)
、
189
槍
(
やり
)
を
突
(
つ
)
つ
込
(
こ
)
んでおくのだ。
190
さうすると
国依別
(
くによりわけ
)
は
取
(
と
)
るものも
取
(
と
)
り
敢
(
あへ
)
ず、
191
スタスタとやつて
来
(
く
)
るよ。
192
サア
早
(
はや
)
く
往
(
い
)
つてお
呉
(
く
)
れ』
193
安公
(
やすこう
)
『アイ』
194
と
一声
(
ひとこゑ
)
後
(
あと
)
に
残
(
のこ
)
し、
195
国依別
(
くによりわけ
)
の
矮屋
(
わいをく
)
の
前
(
まへ
)
に
走
(
はし
)
り
着
(
つ
)
いた。
196
安公
(
やすこう
)
『もしもし、
197
国
(
くに
)
の
大将
(
たいしやう
)
さま、
198
大変
(
たいへん
)
だ。
199
高姫
(
たかひめ
)
さまの
御
(
お
)
居間
(
ゐま
)
で
高山彦
(
たかやまひこ
)
と
黒姫
(
くろひめ
)
が
夫婦
(
ふうふ
)
喧嘩
(
げんくわ
)
をおつ
始
(
ぱじ
)
め、
200
組
(
く
)
んず
組
(
く
)
まれつ、
201
乱痴気
(
らんちき
)
騒
(
さわ
)
ぎ、
202
イヤもう
大変
(
たいへん
)
な
事
(
こと
)
ですよ。
203
それに
就
(
つい
)
て、
204
国依別
(
くによりわけ
)
が
愚図
(
ぐづ
)
々々
(
ぐづ
)
吐
(
ぬか
)
すと、
205
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
だ、
206
系統
(
ひつぽう
)
の
身魂
(
みたま
)
を
何
(
なん
)
と
心得
(
こころえ
)
てる……と
云
(
い
)
うて
剣突
(
けんつく
)
を……ドツコイ
違
(
ちが
)
うた。
207
槍
(
やり
)
を
一本
(
いつぽん
)
突
(
つ
)
つ
込
(
こ
)
んで
帰
(
かへ
)
れと
仰有
(
おつしや
)
つた。
208
もう
邪魔臭
(
じやまくさ
)
いから
何
(
なに
)
も
彼
(
か
)
も
一緒
(
いつしよ
)
に
申
(
まを
)
し
上
(
あ
)
げますワ』
209
国依別
(
くによりわけ
)
『アハヽヽヽ、
210
夫婦
(
ふうふ
)
喧嘩
(
げんくわ
)
ぢやあるまい、
211
石
(
いし
)
の
問題
(
もんだい
)
だらう、
212
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
は
陽気
(
やうき
)
が
悪
(
わる
)
いで、
213
早
(
はや
)
く
料理
(
れうり
)
するか、
214
煮
(
に
)
しめん
事
(
こと
)
にや、
215
石
(
いし
)
に
変化
(
へんくわ
)
して
了
(
しま
)
ふさうだ。
216
山
(
やま
)
の
芋
(
いも
)
が
鰻
(
うなぎ
)
になつたり、
217
鮒
(
ふな
)
が
化石
(
くわせき
)
したり、
218
青雲山
(
せいうんざん
)
ぢやないが、
219
木
(
き
)
の
枝
(
えだ
)
に
魚
(
さかな
)
が
実
(
な
)
つたり、
220
川
(
かは
)
の
瀬
(
せ
)
に
兎
(
うさぎ
)
が
泳
(
およ
)
いだりする
例
(
ため
)
しもあるからなア』
221
安公
(
やすこう
)
『
国
(
くに
)
さま、
222
最大
(
さいだい
)
急行
(
きふかう
)
だよ。
223
早
(
はや
)
う
来
(
き
)
て
貰
(
もら
)
はないと、
224
高姫館
(
たかひめやかた
)
は
地震
(
ぢしん
)
雷
(
かみなり
)
火
(
ひ
)
の
車
(
くるま
)
、
225
地異
(
ちい
)
天変
(
てんぺん
)
のガラガラ、
226
ドタンバタンの
幕
(
まく
)
が
下
(
お
)
りる。
227
急行
(
きふかう
)
々々
(
きふかう
)
』
228
と
国依別
(
くによりわけ
)
の
手
(
て
)
を
取
(
と
)
りて
無理
(
むり
)
に
表
(
おもて
)
へ
引摺
(
ひきず
)
り
出
(
だ
)
す。
229
国依別
(
くによりわけ
)
『オイ
安公
(
やすこう
)
、
230
手
(
て
)
を
放
(
はな
)
せ。
231
コレから
往
(
い
)
つてやらう』
232
と
先
(
さき
)
に
立
(
た
)
ち
高姫
(
たかひめ
)
の
館
(
やかた
)
に
行
(
ゆ
)
かんとする
時
(
とき
)
、
233
秋彦
(
あきひこ
)
は
後
(
あと
)
より
走
(
はし
)
り
寄
(
よ
)
つて、
234
秋彦
(
あきひこ
)
『
国依別
(
くによりわけ
)
さま、
235
どこへ
御
(
お
)
出
(
い
)
で
遊
(
あそ
)
ばす、
236
高姫館
(
たかひめやかた
)
ぢやありませぬか』
237
国依別
(
くによりわけ
)
『オウさうだ。
238
これから
一談判
(
ひとだんぱん
)
始
(
はじ
)
まる
所
(
ところ
)
だ。
239
お
前
(
まへ
)
も
来
(
こ
)
ぬか、
240
随分
(
ずゐぶん
)
面白
(
おもしろ
)
いぞ』
241
秋彦
(
あきひこ
)
『
有難
(
ありがた
)
う、
242
サア
参
(
まゐ
)
りませう。
243
……オイ
安公
(
やすこう
)
、
244
しつかり
案内
(
あんない
)
せいよ。
245
何分
(
なにぶん
)
天地
(
てんち
)
暗澹
(
あんたん
)
、
246
黒姫
(
くろひめ
)
の
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
ですから、
247
道路
(
だうろ
)
の
石
(
いし
)
の
高姫
(
たかひめ
)
に
躓
(
つまづ
)
いて、
248
鼻
(
はな
)
の
高山彦
(
たかやまひこ
)
を
台無
(
だいな
)
しにしちや
堪
(
たま
)
らないからなア、
249
アツハヽヽヽ』
250
と
嘲笑
(
あざわら
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
251
スタスタと
高姫
(
たかひめ
)
の
門前
(
もんぜん
)
迄
(
まで
)
立向
(
たちむか
)
うた。
252
秋彦
(
あきひこ
)
は
形
(
かたち
)
計
(
ばか
)
りの
門
(
もん
)
を
開
(
ひら
)
いて
先
(
さき
)
へ
飛
(
と
)
び
込
(
こ
)
み、
253
少
(
すこ
)
しく
腰
(
こし
)
を
曲
(
ま
)
げ、
254
右
(
みぎ
)
の
手指
(
てゆび
)
を
固
(
かた
)
めて
細
(
ほそ
)
くし
乍
(
なが
)
ら、
255
秋彦
(
あきひこ
)
『コレハコレハ
国依別
(
くによりわけ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
、
256
妾
(
わらは
)
が
如
(
ごと
)
き
見窄
(
みすぼ
)
らしき
茅屋
(
あばらや
)
へよくこそ
御
(
ご
)
入来
(
じゆらい
)
下
(
くだ
)
さいました。
257
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
、
258
心
(
こころ
)
の
底
(
そこ
)
より
光栄
(
くわうえい
)
に
存
(
ぞん
)
じます。
259
又
(
また
)
先達
(
せんだつ
)
ては
黒姫
(
くろひめ
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
手
(
て
)
を
通
(
とほ
)
し、
260
結構
(
けつこう
)
な
結構
(
けつこう
)
な
堅
(
かた
)
いお
魚
(
さかな
)
を
沢山
(
たくさん
)
に
頂戴
(
ちやうだい
)
致
(
いた
)
しまして
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います。
261
何
(
なに
)
か
御
(
ご
)
返礼
(
へんれい
)
をしたいと
思
(
おも
)
ひましても、
262
御存
(
ごぞん
)
じの
通
(
とほ
)
り
貧家
(
ひんか
)
に
暮
(
くら
)
す
高姫
(
たかひめ
)
、
263
御
(
お
)
礼
(
れい
)
の
仕様
(
しやう
)
も
厶
(
ござ
)
いませぬ。
264
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
折釘
(
をれくぎ
)
の
かます
子
(
ご
)
に、
265
最後屁
(
さいごべ
)
の
かます
、
266
手製
(
てせい
)
の
左巻
(
ひだりま
)
き、
267
かいちう
虫
(
むし
)
の
饂飩
(
うどん
)
、
268
雪隠虫
(
せつちんむし
)
の
汁
(
しる
)
の
子
(
こ
)
、
269
青菜
(
あをな
)
に
塩
(
しほ
)
の
蛭
(
ひる
)
の
素麺
(
そうめん
)
、
270
蛇
(
へび
)
の
蒲焼
(
かばやき
)
、
271
蛙
(
かはづ
)
の
吸物
(
すひもの
)
、
272
なめくじ
の
胡瓜
(
きうり
)
揉
(
も
)
み、
273
どうぞ
御
(
ご
)
遠慮
(
ゑんりよ
)
なく、
274
サア
奥
(
おく
)
へチヤツと
行
(
い
)
つて
腹一杯
(
はらいつぱい
)
おあがり
下
(
くだ
)
さいませ。
275
ホツホヽヽヽ、
276
あのマア
国依別
(
くによりわけ
)
さまの
御
(
ご
)
迷惑
(
めいわく
)
相
(
さう
)
な
御
(
お
)
顔付
(
かほつき
)
…』
277
国依別
(
くによりわけ
)
『コレコレ
鹿
(
しか
)
さま……ではない……お
鹿
(
しか
)
さま。
278
いい
加減
(
かげん
)
に
戯談
(
ぜうだん
)
仰有
(
おつしや
)
いませ』
279
秋彦
(
あきひこ
)
『お
鹿
(
しか
)
さまが
申
(
まを
)
すのでは
厶
(
ござ
)
いませぬ。
280
高姫
(
たかひめ
)
さまの
副
(
ふく
)
守護神
(
しゆごじん
)
が
此
(
この
)
門
(
もん
)
を
入
(
はい
)
るや
否
(
いな
)
や
神憑
(
かむがか
)
り
[
※
初版・校定版では「神憑り」、愛世版では「神懸り」。
]
されまして、
281
斯様
(
かやう
)
な
事
(
こと
)
を
仰有
(
おつしや
)
ります。
282
決
(
けつ
)
して
秋彦
(
あきひこ
)
のお
鹿
(
しか
)
が
言
(
い
)
うたとは
思
(
おも
)
つて
下
(
くだ
)
さいますな、
283
オホヽヽヽ』
284
と
出歯
(
でば
)
の
口
(
くち
)
を
無理
(
むり
)
にオチヨボ
口
(
ぐち
)
にしようと
努
(
つと
)
むる
可笑
(
をか
)
しさ。
285
国依別
(
くによりわけ
)
『
左様
(
さやう
)
ならば、
286
遠慮
(
ゑんりよ
)
なしに
罷
(
まか
)
り
通
(
とほ
)
るツ。
287
出歯鹿
(
でばしか
)
殿
(
どの
)
、
288
案内
(
あんない
)
召
(
め
)
され』
289
安公
(
やすこう
)
『アハヽヽヽ、
290
門芝居
(
かどしばゐ
)
がお
上手
(
じやうづ
)
な
事
(
こと
)
、
291
高姫
(
たかひめ
)
さまが
御覧
(
ごらん
)
になつたら
嘸
(
さぞ
)
御
(
お
)
笑
(
わら
)
ひでせう…イヤ
腮
(
あご
)
を
外
(
はづ
)
してひつくり
返
(
かへ
)
り、
292
又
(
また
)
もや
外科
(
げくわ
)
医者
(
いしや
)
を
頼
(
たの
)
みに
行
(
ゆ
)
かねばならない
様
(
やう
)
なことが
突発
(
とつぱつ
)
したら、
293
又候
(
またぞろ
)
……
安公
(
やすこう
)
さま、
294
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
乍
(
なが
)
ら、
295
お
前
(
まへ
)
一寸
(
ちよつと
)
外科医
(
げくわい
)
の
山井
(
やまゐ
)
養仙
(
やうせん
)
さま
所
(
とこ
)
へ、
296
最大
(
さいだい
)
急行
(
きふかう
)
で
頼
(
たの
)
みに
往
(
い
)
つて
呉
(
く
)
れ……なんて
仰有
(
おつしや
)
るのは
目
(
ま
)
のあたりだ、
297
腮
(
あご
)
阿呆
(
あほ
)
らしい。
298
ワツハヽヽヽ』
299
国依別
(
くによりわけ
)
『
汝
(
なんぢ
)
安公
(
やすこう
)
とやら、
300
今日
(
こんにち
)
只今
(
ただいま
)
より
国依別
(
くによりわけ
)
が
直接
(
ちよくせつ
)
の
家来
(
けらい
)
となし、
301
名
(
な
)
を
安彦
(
やすひこ
)
と
授
(
さづ
)
くる。
302
其
(
その
)
積
(
つも
)
りで
国依別
(
くによりわけ
)
に
随
(
つ
)
いて
来
(
く
)
るがよからう』
303
安公
(
やすこう
)
『コレハコレハ
思
(
おも
)
ひもよらぬ
御
(
ご
)
恩命
(
おんめい
)
、
304
安彦
(
やすひこ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
、
305
確
(
たし
)
かに
御
(
ご
)
恩命
(
おんめい
)
を
拝
(
はい
)
しませぬ、
306
アタ
阿呆
(
あほ
)
らしい、
307
言依別
(
ことよりわけの
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
から
頂
(
いただ
)
くのなら、
308
結構
(
けつこう
)
だが、
309
巡礼
(
じゆんれい
)
上
(
あが
)
りの
胸
(
むね
)
の
悪
(
わる
)
い
宗彦
(
むねひこ
)
に
宣伝使
(
せんでんし
)
を
任命
(
にんめい
)
されて
堪
(
たま
)
らうかい』
310
秋彦
(
あきひこ
)
『どうでも
良
(
よ
)
いぢやないか。
311
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
頂戴
(
ちやうだい
)
しておけ。
312
お
前
(
まへ
)
は
松鷹彦
(
まつたかひこ
)
になるのだよ。
313
さうしておれはお
勝
(
かつ
)
になつて、
314
此
(
この
)
宗彦
(
むねひこ
)
さまと
巡礼
(
じゆんれい
)
に
歩
(
ある
)
くのだ。
315
少
(
すこ
)
し
川
(
かは
)
は
届
(
とど
)
かぬけれど、
316
あの
小雲川
(
こくもがは
)
を
宇都山
(
うづやま
)
川
(
がは
)
と
見做
(
みな
)
し、
317
高姫館
(
たかひめやかた
)
を
松鷹彦
(
まつたかひこ
)
の
茅屋
(
あばらや
)
に
擬
(
ぎ
)
し、
318
茲
(
ここ
)
で
一
(
ひと
)
つ
面白
(
おもしろ
)
い
芝居
(
しばゐ
)
をやるのだな』
319
安公
(
やすこう
)
『そんな
事
(
こと
)
言
(
い
)
つたつて、
320
松鷹彦
(
まつたかひこ
)
がどうするのか、
321
ちつとも
分
(
わか
)
らぬだないか』
322
国依別
(
くによりわけ
)
『そこは
臨機
(
りんき
)
応変
(
おうへん
)
だ。
323
そこは……
此方
(
こち
)
から
言
(
い
)
ふのに
応
(
おう
)
じて
答
(
こた
)
へればよいのだ。
324
お
前
(
まへ
)
は
霊界
(
れいかい
)
物語
(
ものがたり
)
の
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
の
未
(
ひつじ
)
の
巻
(
まき
)
を
読
(
よ
)
んで
居
(
ゐ
)
ないから、
325
其
(
その
)
間
(
かん
)
の
消息
(
せうそく
)
が
分
(
わか
)
るまいが、
326
其
(
その
)
時
(
とき
)
は
又
(
また
)
其
(
その
)
時
(
とき
)
の
絵
(
ゑ
)
を
書
(
か
)
くのだ』
327
安公
(
やすこう
)
『よし、
328
棹
(
さを
)
が
無
(
な
)
いが、
329
茲
(
ここ
)
にチツと
太
(
ふと
)
いけれど
物干
(
ものほ
)
し
竿
(
ざを
)
がある、
330
これでマア
鷹
(
たか
)
や
鴉
(
からす
)
を
釣
(
つ
)
ることにしようかい。
331
サア
早
(
はや
)
く
巡礼
(
じゆんれい
)
御
(
ご
)
夫婦
(
ふうふ
)
、
332
やつて
来
(
き
)
なさいや』
333
国依別
(
くによりわけ
)
『よし、
334
ここを
川辺
(
かはべ
)
と
見做
(
みな
)
し、
335
向
(
むか
)
ふから
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
歌
(
うた
)
ひつつやつて
来
(
く
)
るから、
336
お
前
(
まへ
)
は
太公望
(
たいこうばう
)
気取
(
きど
)
りで
竿
(
さを
)
を
垂
(
た
)
れて
居
(
ゐ
)
るのだ』
337
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
国依別
(
くによりわけ
)
、
338
秋彦
(
あきひこ
)
は
門
(
もん
)
を
出
(
で
)
て
一二丁
(
いちにちやう
)
後返
(
あとがへ
)
りをなし、
339
出鱈目
(
でたらめ
)
の
歌
(
うた
)
を
歌
(
うた
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
進
(
すす
)
んで
来
(
く
)
る。
340
安公
(
やすこう
)
は
庭先
(
にはさき
)
の
飛石
(
とびいし
)
を
川
(
かは
)
の
瀬
(
せ
)
と
見做
(
みな
)
し、
341
物干
(
ものほ
)
し
竿
(
ざを
)
の
先
(
さき
)
に
藤蔓
(
ふぢづる
)
を
糸
(
いと
)
の
代
(
かは
)
りに
付
(
つ
)
け、
342
太公望
(
たいこうばう
)
気取
(
きど
)
りで
魚釣
(
うをつ
)
りの
真似
(
まね
)
をして
居
(
ゐ
)
る。
343
そこへ
勝公
(
かつこう
)
が
飛
(
と
)
んで
来
(
き
)
て、
344
勝公
(
かつこう
)
『オイ
安
(
やす
)
、
345
貴様
(
きさま
)
何
(
なに
)
して
居
(
ゐ
)
るのだ。
346
最前
(
さいぜん
)
から
高姫
(
たかひめ
)
さまが
大変
(
たいへん
)
に
御
(
お
)
待兼
(
まちかね
)
だ、
347
まだ
使
(
つかひ
)
に
行
(
ゆ
)
かぬのか』
348
安公
(
やすこう
)
『
喧
(
やかま
)
しく
云
(
い
)
ふない、
349
無声
(
むせい
)
霊話
(
れいわ
)
をかけて
招
(
よ
)
んであるのだ。
350
俺
(
おれ
)
は
武志
(
たけし
)
の
宮
(
みや
)
の
松鷹彦
(
まつたかひこ
)
だぞ。
351
まあグヅグヅして
居
(
ゐ
)
るより
見
(
み
)
てをれ、
352
かうして
居
(
を
)
れば
国依別
(
くによりわけ
)
や
秋彦
(
あきひこ
)
が
引
(
ひ
)
つかかつて
来
(
く
)
るのだよ。
353
俺
(
おれ
)
が
此
(
この
)
竿
(
さを
)
を
振
(
ふ
)
るや
否
(
いな
)
や、
354
妙
(
めう
)
な
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
歌
(
うた
)
つてツルツルツルと
引摺
(
ひきず
)
られて
来
(
く
)
るのだ』
355
勝公
(
かつこう
)
『そんな
馬鹿
(
ばか
)
な
事
(
こと
)
があるものか。
356
是
(
これ
)
から
高姫
(
たかひめ
)
様
(
さま
)
に
注進
(
ちうしん
)
するぞ』
357
と
云
(
い
)
ひすてて、
358
屋内
(
をくない
)
に
隠
(
かく
)
れた。
359
国依別
(
くによりわけ
)
はどこで
寄
(
よ
)
せて
来
(
き
)
たか、
360
蓑笠
(
みのかさ
)
を
被
(
かぶ
)
り、
361
俄作
(
にはかづく
)
りの
金剛杖
(
こんがうづゑ
)
を
突
(
つ
)
き、
362
国依別
(
くによりわけ
)
『
嬶
(
かか
)
が
表
(
おもて
)
に
現
(
あら
)
はれて
363
善
(
ぜん
)
ぢや
悪
(
あく
)
ぢやと
立騒
(
たちさわ
)
ぐ
364
此
(
この
)
世
(
よ
)
の
困
(
こま
)
つた
娑婆塞
(
しやばふさ
)
ぎ
365
乞食心
(
こじきごころ
)
の
高姫
(
たかひめ
)
が
366
只
(
ただ
)
玉々
(
たまたま
)
と
朝夕
(
あさゆふ
)
に
367
心
(
こころ
)
を
焦
(
いら
)
つ
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
さ
368
われは
宗彦
(
むねひこ
)
バラモンの
369
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
の
修験者
(
しうげんじや
)
370
殺生
(
せつしやう
)
するのは
善
(
よ
)
くないと
371
高姫
(
たかひめ
)
さまが
言
(
い
)
うた
故
(
ゆゑ
)
372
小雲
(
こくも
)
の
川
(
かは
)
におり
立
(
た
)
つて
373
生物
(
せいぶつ
)
擁護
(
ようご
)
の
実行
(
じつかう
)
と
374
無心
(
むしん
)
無霊
(
むれい
)
の
団子石
(
だんごいし
)
375
魚
(
さかな
)
と
見做
(
みな
)
して
釣
(
つ
)
り
上
(
あ
)
げる
376
手間暇
(
てまひま
)
要
(
い
)
らぬ
漁
(
すなど
)
りは
377
経済
(
けいざい
)
上
(
じやう
)
の
大便利
(
だいべんり
)
378
刃物
(
はもの
)
も
要
(
い
)
らねば
煮
(
に
)
る
世話
(
せわ
)
も
379
一寸
(
ちよつと
)
も
要
(
い
)
らぬ
石
(
いし
)
の
魚
(
うを
)
380
さざれ
石
(
いし
)
さへ
年
(
とし
)
経
(
ふ
)
れば
381
巌
(
いはほ
)
となりて
苔
(
こけ
)
が
蒸
(
む
)
す
382
瓢箪
(
へうたん
)
からも
駒
(
こま
)
が
出
(
で
)
る
383
団子石
(
だんごいし
)
とて
馬鹿
(
ばか
)
にはならぬ
384
如意
(
によい
)
の
宝珠
(
ほつしゆ
)
や
紫
(
むらさき
)
の
385
玉
(
たま
)
に
変
(
かは
)
るか
分
(
わか
)
らない
386
サア
是
(
これ
)
からは
是
(
これ
)
からは
387
宇都
(
うづ
)
の
河原
(
かはら
)
の
川辺
(
かはべり
)
に
388
松鷹彦
(
まつたかひこ
)
の
庵
(
いほ
)
を
訪
(
と
)
ひ
389
一
(
ひと
)
つ
談判
(
だんぱん
)
してやらう
390
秋公
(
あきこう
)
来
(
きた
)
れ
早
(
はや
)
来
(
きた
)
れ
391
オツと
違
(
ちが
)
うた
妻
(
つま
)
お
勝
(
かつ
)
392
教
(
をしへ
)
の
道
(
みち
)
の
兄弟
(
きやうだい
)
が
393
夫婦
(
ふうふ
)
気取
(
きどり
)
で
面白
(
おもしろ
)
く
394
高姫川
(
たかひめがは
)
の
川堤
(
かはづつみ
)
395
やつて
来
(
き
)
たのは
安公
(
やすこう
)
が
396
芝居
(
しばゐ
)
気取
(
きどり
)
の
太公望
(
たいこうばう
)
397
もうし もうしお
爺
(
ぢい
)
さま
398
お
前
(
まへ
)
は
古
(
ふる
)
い
年
(
とし
)
をして
399
水
(
みづ
)
なき
川
(
かは
)
に
竿
(
さを
)
を
垂
(
た
)
れ
400
何
(
なに
)
を
釣
(
つ
)
るのか
気
(
き
)
が
知
(
し
)
れぬ
401
諸行
(
しよぎやう
)
無常
(
むじやう
)
や
是生
(
ぜしやう
)
滅法
(
めつぽふ
)
402
高姫
(
たかひめ
)
さまの
目的
(
もくてき
)
は
403
寂滅
(
じやくめつ
)
為楽
(
ゐらく
)
となるであろ
404
黒姫
(
くろひめ
)
さまや
高山
(
たかやま
)
の
405
女大黒
(
をんなだいこく
)
福禄寿
(
げほう
)
面
(
づら
)
406
欲
(
よく
)
の
川原
(
かはら
)
に
竿
(
さを
)
たれて
407
金剛
(
こんがう
)
不壊
(
ふえ
)
の
玉
(
たま
)
の
魚
(
うを
)
408
釣
(
つ
)
らむとするも
辛
(
つら
)
からう
409
欲
(
よく
)
につられて
高姫
(
たかひめ
)
が
410
南洋
(
なんやう
)
三界
(
さんかい
)
駆
(
か
)
け
巡
(
めぐ
)
り
411
黒
(
くろ
)
くなつたる
面
(
つら
)
の
皮
(
かは
)
412
つらつら
思
(
おも
)
ひ
廻
(
めぐ
)
らせば
413
燻
(
くすぼ
)
り
返
(
かへ
)
つた
釣
(
つ
)
られ
鯛
(
だい
)
414
睨
(
にら
)
み
合
(
あ
)
うたる
二人仲
(
ふたりなか
)
415
恵比須
(
ゑびす
)
でさへも
尾
(
を
)
を
巻
(
ま
)
いて
416
跣足
(
はだし
)
でサツサと
逃
(
に
)
げて
行
(
ゆ
)
く
417
あゝ
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
や
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
や
418
安公
(
やすこう
)
までが
国
(
くに
)
さまの
419
言葉
(
ことば
)
に
釣
(
つ
)
られて
欲
(
よく
)
の
川
(
かは
)
420
物干竿
(
ものほしざを
)
に
綱
(
つな
)
をつけ
421
宗彦
(
むねひこ
)
お
勝
(
かつ
)
の
巡礼
(
じゆんれい
)
が
422
茲
(
ここ
)
に
来
(
きた
)
るを
待暮
(
まちくら
)
す
423
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
424
叶
(
かな
)
はん
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
て
来
(
き
)
た
425
高姫
(
たかひめ
)
さまが
腹
(
はら
)
を
立
(
た
)
て
426
コレコレ
国
(
くに
)
よ
国公
(
くにこう
)
よ
427
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
を
428
馬鹿
(
ばか
)
にするのも
程
(
ほど
)
がある
429
何程
(
なにほど
)
呑
(
の
)
み
込
(
こ
)
みよい
妾
(
わし
)
も
430
歯節
(
はぶし
)
の
立
(
た
)
たぬ
団子石
(
だんごいし
)
431
団子
(
だんご
)
理屈
(
りくつ
)
を
捏
(
こ
)
ねやうと
432
二重
(
にぢう
)
三重
(
さんぢう
)
に
封
(
ふう
)
をして
433
持
(
も
)
つて
来
(
き
)
たのが
憎
(
にく
)
らしい
434
此
(
この
)
因縁
(
いんねん
)
を
聞
(
き
)
かうかと
435
面
(
つら
)
ふくらして
飛
(
と
)
びかかり
436
胸倉
(
むなぐら
)
とつて
一騒
(
ひとさわ
)
ぎ
437
おつ
始
(
ぱじ
)
まるに
違
(
ちがひ
)
ない
438
スワ
一大事
(
いちだいじ
)
と
言
(
い
)
ふ
時
(
とき
)
に
439
逃
(
に
)
げる
用意
(
ようい
)
をしておかう
440
秋公
(
あきこう
)
横門
(
よこもん
)
開
(
あ
)
けておけ
441
まさか
厠
(
かはや
)
の
股
(
また
)
げ
穴
(
あな
)
442
脱
(
ぬ
)
け
出
(
だ
)
す
訳
(
わけ
)
にも
行
(
ゆ
)
かうまい
443
太公望
(
たいこうばう
)
の
安公
(
やすこう
)
よ
444
もう
釣竿
(
つりざを
)
は
流
(
なが
)
すのだ
445
是
(
これ
)
から
釣
(
つ
)
るのは
高姫
(
たかひめ
)
ぢや
446
もうし もうし
高山
(
たかやま
)
の
447
福禄寿
(
げほう
)
爺
(
おやぢ
)
と
黒
(
くろ
)
さまは
448
当家
(
たうけ
)
におゐで
遊
(
あそ
)
ばすか
449
一寸
(
ちよつと
)
お
尋
(
たづ
)
ね
致
(
いた
)
します』
450
此
(
この
)
声
(
こゑ
)
聞
(
き
)
いて
勝公
(
かつこう
)
は
451
戸口
(
とぐち
)
をガラリ
引
(
ひき
)
あけて
452
勝公
『
賤
(
いや
)
しき
巡礼
(
じゆんれい
)
の
二人
(
ふたり
)
連
(
づれ
)
453
国依別
(
くによりわけ
)
や
秋彦
(
あきひこ
)
に
454
よう
似
(
に
)
た
声
(
こゑ
)
を
出
(
だ
)
しやがつて
455
瞞
(
だま
)
しに
来
(
き
)
てもそりやあかぬ
456
スツカリ
駄目
(
だめ
)
だと
諦
(
あきら
)
めて
457
早
(
はや
)
く
帰
(
かへ
)
つて
下
(
くだ
)
さんせ
458
巡礼
(
じゆんれい
)
なぞのノソノソと
459
出
(
で
)
て
来
(
く
)
る
場所
(
ばしよ
)
ではない
程
(
ほど
)
に
460
高姫
(
たかひめ
)
さまが
見付
(
みつ
)
けたら
461
長
(
なが
)
い
柄杓
(
ひしやく
)
に
水
(
みづ
)
汲
(
く
)
んで
462
頭
(
あたま
)
の
上
(
うへ
)
からザブザブと
463
熱
(
ねつ
)
吹
(
ふ
)
きかけるに
違
(
ちがひ
)
ない
464
犬
(
いぬ
)
ぢやなけれど
尾
(
を
)
を
振
(
ふ
)
つて
465
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
イヌ
がよい
466
ワンワンワンと
いが
み
合
(
あ
)
ひ
467
喧嘩
(
けんくわ
)
をされては
堪
(
たま
)
らない
468
巡礼
(
じゆんれい
)
に
化
(
ば
)
けた
国
(
くに
)
さまや
469
秋
(
あき
)
さま
二人
(
ふたり
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
470
危険
(
きけん
)
区域
(
くゐき
)
を
逸早
(
いちはや
)
く
471
逃
(
のが
)
れてお
帰
(
かへ
)
り
下
(
くだ
)
さんせ
472
奥
(
おく
)
に
高姫
(
たかひめ
)
黒姫
(
くろひめ
)
が
473
額
(
ひたひ
)
の
静脈
(
じやうみやく
)
血
(
ち
)
を
充
(
み
)
たし
474
青筋
(
あをすぢ
)
立
(
た
)
てて
控
(
ひか
)
へ
居
(
を
)
る』
475
早
(
はや
)
く
早
(
はや
)
くと
手
(
て
)
を
拡
(
ひろ
)
げ
476
つき
出
(
だ
)
す
様
(
やう
)
な
真似
(
まね
)
をする。
477
高姫
(
たかひめ
)
は
門口
(
かどぐち
)
の
怪
(
あや
)
しき
声
(
こゑ
)
に、
478
黒姫
(
くろひめ
)
、
479
高山彦
(
たかやまひこ
)
を
奥
(
おく
)
の
間
(
ま
)
に
残
(
のこ
)
し、
480
自
(
みづか
)
ら
茲
(
ここ
)
に
現
(
あら
)
はれ、
481
高姫
(
たかひめ
)
『
勝公
(
かつこう
)
さま、
482
お
前
(
まへ
)
今
(
いま
)
何
(
なに
)
を
言
(
い
)
つて
居
(
ゐ
)
たの、
483
どこに
私
(
わし
)
が
青筋
(
あをすぢ
)
を
立
(
た
)
てて
居
(
ゐ
)
ますか』
484
勝公
(
かつこう
)
『イイエ
滅相
(
めつさう
)
もない、
485
そんな
事
(
こと
)
は
申
(
まを
)
した
覚
(
おぼ
)
えはテンで
厶
(
ござ
)
いませぬ。
486
今
(
いま
)
そんな
男
(
をとこ
)
が
一寸
(
ちよつと
)
やつて
来
(
き
)
ましたので、
487
高姫
(
たかひめ
)
さまのお
目
(
め
)
にかけたら、
488
嘸
(
さぞ
)
お
笑
(
わら
)
ひ
遊
(
あそ
)
ばすだらうと
云
(
い
)
つて
居
(
ゐ
)
たので
厶
(
ござ
)
います……それ、
489
そこに
乞食
(
こじき
)
巡礼
(
じゆんれい
)
が
二人
(
ふたり
)
立
(
た
)
つて
居
(
ゐ
)
ませうがなア。
490
一人
(
ひとり
)
は
宗彦
(
むねひこ
)
、
491
一人
(
ひとり
)
はお
勝
(
かつ
)
、
492
もう
一人
(
ひとり
)
は
松鷹彦
(
まつたかひこ
)
、
493
欲
(
よく
)
の
川
(
かは
)
で
竿
(
さを
)
をたれ、
494
鷹
(
たか
)
とか
鴉
(
からす
)
とか
つる
とか
言
(
い
)
つて
居
(
ゐ
)
ました。
495
……ヘーまあ、
496
何
(
なん
)
で
厶
(
ござ
)
います、
497
ザツと
此
(
この
)
通
(
とほ
)
りで』
498
とモヂモヂして
頭
(
あたま
)
を
掻
(
か
)
く。
499
高姫
(
たかひめ
)
『お
前
(
まへ
)
は
国依別
(
くによりわけ
)
さま、
500
秋彦
(
あきひこ
)
の
両人
(
りやうにん
)
でせう。
501
大
(
だい
)
それた
悪戯
(
いたづら
)
をなさつて、
502
此
(
この
)
高姫
(
たかひめ
)
に
合
(
あは
)
す
顔
(
かほ
)
がなくなり、
503
蓑笠
(
みのかさ
)
を
被
(
かぶ
)
つて
元
(
もと
)
の
宗彦
(
むねひこ
)
時代
(
じだい
)
に
立返
(
たちかへ
)
り、
504
心
(
こころ
)
の
底
(
そこ
)
から
改心
(
かいしん
)
を
致
(
いた
)
しました、
505
と
云
(
い
)
ふ
証拠
(
しようこ
)
でやつて
来
(
き
)
たのだらう。
506
そんな
芸当
(
げいたう
)
は
世界
(
せかい
)
の
見
(
み
)
え
透
(
す
)
く
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
前
(
まへ
)
では
通用
(
つうよう
)
致
(
いた
)
しませぬぞえ。
507
サアサア
早
(
はや
)
く
正体
(
しやうたい
)
を
現
(
あら
)
はして
這入
(
はい
)
つて
下
(
くだ
)
さい』
508
国依別
(
くによりわけ
)
『
幽霊
(
いうれい
)
の
正体
(
しやうたい
)
見
(
み
)
たり
枯尾花
(
かれをばな
)
。
509
たそがれて
山
(
やま
)
低
(
ひく
)
う
見
(
み
)
る
薄
(
すすき
)
かな』
510
高姫
(
たかひめ
)
『
俄
(
にはか
)
に
風流人
(
ふうりうじん
)
めいた
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
つて、
511
誤魔化
(
ごまくわ
)
さうと
思
(
おも
)
つてもあきませぬぞや。
512
サアサアとつとと
這入
(
はい
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
513
お
前
(
まへ
)
さまに
尋
(
たづ
)
ねたい
因縁
(
いんねん
)
があるのだから……』
514
国依別
(
くによりわけ
)
『
因縁
(
いんねん
)
の
玉
(
たま
)
を
集
(
あつ
)
むる
此
(
この
)
館
(
やかた
)
……
因縁
(
いんねん
)
つける
高姫
(
たかひめ
)
大根
(
だいこん
)
……
515
旅役者
(
たびやくしや
)
大根
(
だいこん
)
と
聞
(
き
)
いて
顔
(
かほ
)
しかめ。
516
大根
(
だいこん
)
役者
(
やくしや
)
どこやらとなく
魂
(
たま
)
が
脱
(
ぬ
)
け。
517
玉
(
たま
)
おちのラムネぶつぶつ
泡
(
あわ
)
を
吹
(
ふ
)
き。
518
今
(
いま
)
抜
(
ぬ
)
いたラムネの
泡
(
あわ
)
や
高姫
(
たかひめ
)
……オツト
高
(
たか
)
く
飛
(
と
)
び。
519
黒姫
(
くろひめ
)
の
様
(
やう
)
な
葡萄酒
(
ぶだうしゆ
)
萩
(
はぎ
)
の
茶屋
(
ちやや
)
。
520
高山
(
たかやま
)
も
低
(
ひく
)
う
見
(
み
)
ゆるや
萩
(
はぎ
)
の
花
(
はな
)
。
521
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
空
(
そら
)
に
輝
(
かがや
)
く
秋
(
あき
)
の
月
(
つき
)
。
522
秋彦
(
あきひこ
)
の
空
(
そら
)
高
(
たか
)
くして
馬
(
うま
)
は
肥
(
こ
)
え』
523
高姫
(
たかひめ
)
『コレコレ、
524
国
(
くに
)
さま、
525
何
(
なに
)
を
愚図
(
ぐづ
)
々々
(
ぐづ
)
言
(
い
)
つて
居
(
ゐ
)
るのだ。
526
這入
(
はい
)
れと
云
(
い
)
つたら、
527
這入
(
はい
)
りなさい』
528
国依別
(
くによりわけ
)
『
這入
(
はい
)
れよと
言
(
い
)
はれて
躊躇
(
ためら
)
ふ
熱
(
あつ
)
い
風呂
(
ふろ
)
。
529
風呂吹
(
ふろぶき
)
を
喰
(
く
)
はぬ
役者
(
やくしや
)
の
子供
(
こども
)
哉
(
かな
)
。
530
大根
(
だいこん
)
の
役者
(
やくしや
)
の
芝居
(
しばゐ
)
チヨボ
葱
(
ねぶか
)
』
531
高姫
(
たかひめ
)
『エー、
532
辛気
(
しんき
)
臭
(
くさ
)
い。
533
気
(
き
)
が
咎
(
とが
)
めて
閾
(
しきひ
)
が
高
(
たか
)
いのだな』
534
国依別
(
くによりわけ
)
『
高姫
(
たかひめ
)
の
敷居
(
しきゐ
)
の
欲
(
よく
)
に
股
(
また
)
が
裂
(
さ
)
け。
535
股
(
また
)
裂
(
さ
)
けた
五
(
いつ
)
つの
玉
(
たま
)
は
不在
(
るす
)
の
間
(
ま
)
に。
536
黒姫
(
くろひめ
)
は
酒
(
さけ
)
より
男
(
をとこ
)
好
(
す
)
きと
言
(
い
)
ひ。
537
高山
(
たかやま
)
に
黒雲
(
くろくも
)
起
(
おこ
)
り
日
(
ひ
)
は
隠
(
かく
)
れ。
538
東天
(
とうてん
)
に
日
(
ひ
)
の
出
(
で
)
の
光
(
ひかり
)
暗
(
やみ
)
は
晴
(
は
)
れ。
539
堂々
(
だうだう
)
と
国依別
(
くによりわけ
)
は
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
り』
540
と
言
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
秋彦
(
あきひこ
)
を
伴
(
ともな
)
ひ、
541
高姫
(
たかひめ
)
に
先立
(
さきだ
)
つて
奥
(
おく
)
の
間
(
ま
)
に
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
る。
542
高姫
(
たかひめ
)
、
543
黒姫
(
くろひめ
)
、
544
高山彦
(
たかやまひこ
)
、
545
国依別
(
くによりわけ
)
、
546
秋彦
(
あきひこ
)
の
五
(
いつ
)
つの
頭
(
あたま
)
は
火鉢
(
ひばち
)
を
中
(
なか
)
に
置
(
お
)
いて、
547
五弁
(
ごべん
)
の
梅
(
うめ
)
の
花
(
はな
)
の
開
(
ひら
)
いた
様
(
やう
)
に
行儀
(
ぎやうぎ
)
よく
並
(
なら
)
んだ。
548
国依別
(
くによりわけ
)
『
明月
(
めいげつ
)
や
高山頭
(
たかやまがしら
)
に
照
(
て
)
り
渡
(
わた
)
り。
549
高山
(
たかやま
)
を
透
(
す
)
かして
見
(
み
)
れば
星
(
ほし
)
低
(
ひく
)
し』
550
高姫
(
たかひめ
)
『
国依別
(
くによりわけ
)
さま、
551
此
(
この
)
間
(
あひだ
)
は
御
(
お
)
心
(
こころ
)
を
籠
(
こ
)
められた
沢山
(
たくさん
)
な
魚
(
さかな
)
を
頂戴
(
ちやうだい
)
致
(
いた
)
しまして、
552
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います。
553
これには
何
(
なに
)
か
御
(
ご
)
意趣
(
いしゆ
)
のあることで
御座
(
ござ
)
いませう。
554
サア
其
(
その
)
因縁
(
いんねん
)
から
包
(
つつ
)
まず
隠
(
かく
)
さず
聞
(
き
)
かして
下
(
くだ
)
され』
555
国依別
(
くによりわけ
)
『
和知川
(
わちがは
)
に
洗
(
あら
)
ひ
曝
(
さら
)
した
石
(
いし
)
の
玉
(
たま
)
、
556
我
(
われ
)
は
尊
(
たふと
)
き
人
(
ひと
)
に
捧
(
ささ
)
げつ。
557
身魂
(
みたま
)
相応
(
さうおう
)
堅
(
かた
)
くなつたる
石
(
いし
)
の
玉
(
たま
)
。
558
石
(
いし
)
よりも
堅
(
かた
)
い
決心
(
けつしん
)
感
(
かん
)
じ
入
(
い
)
り。
559
激流
(
げきりう
)
に
揉
(
も
)
まれて
石
(
いし
)
は
円
(
まる
)
くなり。
560
瀬
(
せ
)
を
早
(
はや
)
み
岩
(
いは
)
に
堰
(
せ
)
かれて
石
(
いし
)
の
魚
(
うを
)
』
561
高姫
(
たかひめ
)
『エーもどかしい。
562
そんなむつかしい
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
つて
分
(
わか
)
りますかいな。
563
救世軍
(
きうせいぐん
)
のブース
大将
(
たいしやう
)
が
言
(
い
)
つた
事
(
こと
)
を
知
(
し
)
つて
居
(
ゐ
)
ますか。
564
例
(
たと
)
へば
一軒
(
いつけん
)
の
家
(
うち
)
でも
一番
(
いちばん
)
小
(
ちい
)
さい
三
(
み
)
つ
児
(
ご
)
か、
565
無学
(
むがく
)
な
下女
(
げぢよ
)
に
分
(
わか
)
る
言葉
(
ことば
)
でなければ
名語
(
めいご
)
ぢやありませぬぞ。
566
俳人
(
はいじん
)
気取
(
きど
)
りで
何
(
なに
)
を
駄句
(
だく
)
るのだ。
567
お
前
(
まへ
)
さまチツト
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
はどうかしとりますねえ。
568
小雲川
(
こくもがは
)
で
一
(
ひと
)
つ
顔
(
かほ
)
を
冷
(
ひや
)
し
目
(
め
)
を
醒
(
さ
)
まして
来
(
き
)
なさい』
569
国依別
(
くによりわけ
)
『
底
(
そこ
)
までも
澄
(
す
)
みきりにけり
秋
(
あき
)
の
水
(
みづ
)
。
570
秋
(
あき
)
の
水
(
みず
)
腐
(
くさ
)
つて
居
(
を
)
れどいと
清
(
きよ
)
し。
571
清
(
きよ
)
らかな
水
(
みづ
)
には
棲
(
す
)
まぬ
鮒
(
ふな
)
もろこ。
572
濁江
(
にごりえ
)
の
深
(
ふか
)
きに
魚
(
うを
)
は
潜
(
ひそ
)
むとも など
川蝉
(
かはせみ
)
の
取
(
と
)
らでおくべき』
573
高姫
(
たかひめ
)
『おきなさんせ、
574
大石
(
おほいし
)
内蔵之助
(
くらのすけ
)
の
真似
(
まね
)
をしたり、
575
何
(
なに
)
も
知
(
し
)
らぬと
言
(
い
)
へば
調子
(
てうし
)
に
乗
(
の
)
つて、
576
人
(
ひと
)
の
歌
(
うた
)
まで
自分
(
じぶん
)
が
作
(
つく
)
つた
様
(
やう
)
な
顔
(
かほ
)
をしようと
思
(
おも
)
つて……
本当
(
ほんたう
)
にお
前
(
まへ
)
は
歌泥坊
(
うたどろばう
)
だ』
577
国依別
(
くによりわけ
)
『
床
(
ゆか
)
の
下
(
した
)
深
(
ふか
)
きに
玉
(
たま
)
は
隠
(
かく
)
すとも
578
など
高姫
(
たかひめ
)
の
取
(
と
)
らでおくべき。
579
アツハヽヽヽ』
580
高姫
(
たかひめ
)
『コレ
国
(
くに
)
さま、
581
どこまでも
人
(
ひと
)
を
馬鹿
(
ばか
)
にするのかい』
582
国依別
(
くによりわけ
)
『
馬鹿
(
ばか
)
野郎
(
やろう
)
夜這
(
よばひ
)
の
晨
(
あした
)
狼狽
(
らうばい
)
し ゆき
詰
(
つま
)
りては
胸
(
むね
)
も
高姫
(
たかひめ
)
。
583
………
動悸
(
どうき
)
は
玉
(
たま
)
の
置所
(
おきどころ
)
。
584
竜宮
(
りうぐう
)
へおと
姫
(
ひめ
)
したかと
気
(
き
)
を
焦
(
いら
)
ち
世界
(
せかい
)
隈
(
くま
)
なく
探
(
さが
)
す
馬鹿者
(
ばかもの
)
』
585
高姫
(
たかひめ
)
『コレ
黒姫
(
くろひめ
)
さま、
586
国
(
くに
)
さまに
是
(
これ
)
丈
(
だけ
)
馬鹿
(
ばか
)
にされてお
前
(
まへ
)
さま
何
(
なん
)
ともありませぬか。
587
チツト
日頃
(
ひごろ
)
の
弁舌
(
べんぜつ
)
をお
使
(
つかひ
)
なさつたらどうですかい』
588
黒姫
(
くろひめ
)
『
何
(
なん
)
だか
人間
(
にんげん
)
らしうないので、
589
話
(
はなし
)
の
仕様
(
しやう
)
がありませぬもの』
590
国依別
(
くによりわけ
)
『
人間
(
にんげん
)
を
超越
(
てうゑつ
)
したり
神司
(
かむづかさ
)
。
591
黒雲
(
くろくも
)
に
包
(
つつ
)
まれ
星
(
ほし
)
は
影
(
かげ
)
潜
(
ひそ
)
め。
592
高山
(
たかやま
)
に
黒雲
(
くろくも
)
懸
(
かか
)
り
雨
(
あめ
)
は
降
(
ふ
)
り。
593
涙川
(
なみだがは
)
忽
(
たちま
)
ち
濁
(
にご
)
る
玉
(
たま
)
の
雨
(
あめ
)
』
594
黒姫
(
くろひめ
)
『コレ
高山
(
たかやま
)
さま、
595
今
(
いま
)
国
(
くに
)
さまがどうやらお
前
(
まへ
)
さまや
妾
(
わたし
)
の
事
(
こと
)
を、
596
俳句
(
はいく
)
とやらで
罵倒
(
ばたふ
)
して
居
(
ゐ
)
るやうだ。
597
お
前
(
まへ
)
さまも
立派
(
りつぱ
)
な
男
(
をとこ
)
だないか、
598
何
(
なん
)
とか
一
(
ひと
)
つ
言霊
(
ことたま
)
で
遣
(
や
)
り
返
(
かへ
)
し、
599
国
(
くに
)
を
遣
(
や
)
り
込
(
こ
)
めて
了
(
しま
)
ふ
丈
(
だけ
)
の
甲斐性
(
かひしやう
)
は
無
(
な
)
いのかい』
600
高山彦
(
たかやまひこ
)
『
苦
(
く
)
にするな
国依別
(
くによりわ
)
けて
大切
(
たいせつ
)
な
601
げほう
頭
(
あたま
)
は
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
……
光
(
ひかり
)
は
玉
(
たま
)
の
如
(
ごと
)
くなりけり』
602
黒姫
(
くろひめ
)
『
高山
(
たかやま
)
さま、
603
自分
(
じぶん
)
の
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
つてるのだないか。
604
国
(
くに
)
さまに
対
(
たい
)
して
言
(
い
)
ふのだよ。
605
エーエ、
606
鈍
(
どん
)
な
男
(
をとこ
)
に
緞子
(
どんす
)
の
羽織
(
はおり
)
、
607
女房
(
にようばう
)
も
随分
(
ずゐぶん
)
気
(
き
)
の
揉
(
も
)
める
事
(
こと
)
だなア。
608
そんなら
妾
(
わたし
)
が
代
(
かは
)
つて
言
(
い
)
ひませう。
609
聞
(
き
)
いて
居
(
ゐ
)
なされ、
610
斯
(
こ
)
う
云
(
い
)
ふのだよ。
611
……
612
黒姫
(
くろひめ
)
の
黒
(
くろ
)
い
眼
(
まなこ
)
で
睨
(
にら
)
んだら
613
神
(
かみ
)
の
国依別
(
くによりわけ
)
もなく
散
(
ち
)
る
614
桜
(
さくら
)
の
花
(
はな
)
は
神風
(
かみかぜ
)
に
615
吹
(
ふ
)
かれてバラバラバラモン
信者
(
しんじや
)
616
聞
(
き
)
いてもムネ
彦
(
ひこ
)
悪
(
わる
)
くなる
617
負
(
まけ
)
てもお
勝
(
かつ
)
の
尻
(
しり
)
を
追
(
お
)
ひ
618
肥桶担
(
こえたごかつ
)
ぎの
玉治別
(
たまはるわけ
)
に
619
玉
(
たま
)
を
取
(
と
)
られし
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
さ
620
泣面
(
なきつら
)
に
蜂
(
はち
)
621
止
(
と
)
まつて
咬
(
か
)
んだ
如
(
ごと
)
くなりけり』
622
国依別
(
くによりわけ
)
『アハヽヽヽ、
623
ウフヽヽヽ、
624
此奴
(
こいつ
)
ア
面白
(
おもしろ
)
い。
625
始
(
はじ
)
めて
聞
(
き
)
いた
名歌
(
めいか
)
だ。
626
柿本
(
かきのもとの
)
人麿
(
ひとまろ
)
も
丸跣足
(
まるはだし
)
だ。
627
与謝野
(
よさの
)
晶子
(
あきこ
)
の
所
(
とこ
)
へ
持
(
も
)
つて
往
(
い
)
つたら、
628
屹度
(
きつと
)
秀逸点
(
しういつてん
)
を
呉
(
く
)
れるだらう。
629
イヒヽヽヽ、
630
エヘヽヽヽ、
631
オホヽヽヽ……
632
黒姫
(
くろひめ
)
の
歌
(
うた
)
にお
臍
(
へそ
)
が
宿替
(
やどが
)
へし。
633
脇
(
わき
)
の
下
(
した
)
キユウキユウキユウと
鼠
(
ねずみ
)
鳴
(
な
)
き。
634
名歌
(
めいか
)
の
徳
(
とく
)
床板
(
ゆかいた
)
迄
(
まで
)
が
動
(
うご
)
き
出
(
だ
)
し。
635
睾玉
(
きんたま
)
の
皺
(
しわ
)
まで
伸
(
の
)
ばす
此
(
この
)
名歌
(
めいか
)
』
636
高姫
(
たかひめ
)
『
黒姫
(
くろひめ
)
さま、
637
こんな
男
(
をとこ
)
にかかつちや、
638
口八丁
(
くちはつちやう
)
手八丁
(
てはつちやう
)
の
高姫
(
たかひめ
)
だつて、
639
三舎
(
さんしや
)
を
避
(
さ
)
けねばなりませぬワ。
640
もうそんな
歌
(
うた
)
などで
話
(
はな
)
しちや
駄目
(
だめ
)
ですよ。
641
……コレ
国
(
くに
)
さま、
642
お
前
(
まへ
)
さまは
何
(
なん
)
の
為
(
ため
)
にあの
様
(
やう
)
な
物
(
もの
)
を、
643
私
(
わし
)
に
贈
(
おく
)
つたのだ。
644
失礼
(
しつれい
)
ぢやありませぬか。
645
何程
(
なにほど
)
物喰
(
ものぐひ
)
のよい
豚
(
ぶた
)
だつて
石
(
いし
)
は
喰
(
く
)
ひませぬよ』
646
国依別
(
くによりわけ
)
『
豚
(
ぶた
)
よりも
物喰
(
ものぐ
)
ひのよき
人
(
ひと
)
もあり。
647
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
玉
(
たま
)
さへ
噛
(
かぢ
)
る
狂女
(
きやうぢよ
)
哉
(
かな
)
。
648
今
(
いま
)
の
世
(
よ
)
は
砂利
(
じやり
)
さへ
喰
(
くら
)
ふ
人
(
ひと
)
もあり。
649
嫁入
(
よめいり
)
の
祝
(
いは
)
ひに
据
(
す
)
ゑる
石肴
(
いしざかな
)
二世
(
にせ
)
を
固
(
かた
)
めの
標
(
しるし
)
なるらむ。
650
マアざつと
斯
(
か
)
う
云
(
い
)
ふ
精神
(
せいしん
)
で、
651
貴方
(
あなた
)
の
堅固
(
けんご
)
な
精神
(
せいしん
)
をお
祝
(
いは
)
ひ
申
(
まを
)
し、
652
お
賞
(
ほ
)
め
申
(
まを
)
した
国依別
(
くによりわけ
)
の
真心
(
まごころ
)
。
653
岩
(
いは
)
さへも
射貫
(
いぬ
)
く
女
(
をんな
)
の
心
(
こころ
)
哉
(
かな
)
。
654
と
云
(
い
)
ふ
様
(
やう
)
なものですワイ。
655
悪気
(
わるぎ
)
を
廻
(
まは
)
して
貰
(
もら
)
つちや、
656
折角
(
せつかく
)
の
国依別
(
くによりわけ
)
の
志
(
こころざし
)
が
水泡
(
すゐほう
)
に
帰
(
き
)
しまする。
657
魚
(
うを
)
だつて……
魚
(
うを
)
が
水
(
みづ
)
に
棲
(
す
)
めば、
658
此
(
この
)
石
(
いし
)
だつて
綺麗
(
きれい
)
な
流水
(
りうすゐ
)
にすみきつて、
659
神世
(
かみよ
)
の
昔
(
むかし
)
から
永久
(
とこしへ
)
に
川底
(
かはぞこ
)
に
納
(
をさ
)
まりきつて
居
(
を
)
つた
石肴
(
いしざかな
)
ですよ。
660
別
(
べつ
)
に
喰
(
く
)
つて
下
(
くだ
)
されと
云
(
い
)
つて
贈
(
おく
)
つたのぢやありませぬ。
661
お
目
(
め
)
にかけると
云
(
い
)
つたのだから、
662
食
(
く
)
へる
食
(
く
)
へぬはお
前
(
まへ
)
さまの
御
(
ご
)
勝手
(
かつて
)
、
663
そんな
問題
(
もんだい
)
は
些
(
ち
)
いと
的外
(
まとはづ
)
れでせう』
664
高姫
(
たかひめ
)
『
流石
(
さすが
)
はドハイカラの
仕込
(
しこ
)
み
丈
(
だけ
)
あつて、
665
巧
(
うま
)
いものだワイ。
666
オホヽヽヽ。
667
コレコレ
黒姫
(
くろひめ
)
さま、
668
高山彦
(
たかやまひこ
)
さま、
669
お
前
(
まへ
)
も
随分
(
ずゐぶん
)
鉈理屈
(
なたりくつ
)
が
上手
(
じやうづ
)
だが、
670
国
(
くに
)
さまにかけちや
側
(
そば
)
へも
寄
(
よ
)
れますまい。
671
言霊
(
ことたま
)
の
幸
(
さち
)
はふ
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
だ。
672
チツト
是
(
これ
)
から
言霊
(
ことたま
)
の
練習
(
れんしふ
)
をなされませ』
673
斯
(
か
)
かる
所
(
ところ
)
へ
夏彦
(
なつひこ
)
、
674
常彦
(
つねひこ
)
両人
(
りやうにん
)
は、
675
言依別
(
ことよりわけ
)
の
目
(
め
)
を
忍
(
しの
)
び
系統
(
ひつぽう
)
の
高姫
(
たかひめ
)
に
御
(
ご
)
機嫌
(
きげん
)
伺
(
うかが
)
ひの
為
(
ため
)
、
676
太平柿
(
たいへいがき
)
を
風呂敷
(
ふろしき
)
に
包
(
つつ
)
み、
677
やつて
来
(
き
)
た。
678
勝公
(
かつこう
)
は
直
(
ただち
)
に
奥
(
おく
)
の
間
(
ま
)
に
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
り、
679
勝公
(
かつこう
)
『もしもし
高姫
(
たかひめ
)
さま、
680
夏彦
(
なつひこ
)
、
681
常彦
(
つねひこ
)
の
両人
(
りやうにん
)
が
御
(
ご
)
機嫌
(
きげん
)
伺
(
うかが
)
ひだと
云
(
い
)
つて
今
(
いま
)
見
(
み
)
えました。
682
如何
(
いかが
)
致
(
いた
)
しませう』
683
高姫
(
たかひめ
)
したり
顔
(
がほ
)
に、
684
嫌
(
いや
)
らしく
笑
(
わら
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
685
国依別
(
くによりわけ
)
、
686
秋彦
(
あきひこ
)
に
目
(
め
)
を
注
(
そそ
)
ぎ、
687
高姫
(
たかひめ
)
『
勝公
(
かつこう
)
さま、
688
どうぞ
御
(
ご
)
両人
(
りやうにん
)
様
(
さま
)
、
689
ズツと
奥
(
おく
)
へ
御
(
お
)
通
(
とほ
)
り
下
(
くだ
)
さい、
690
と
丁寧
(
ていねい
)
に
御
(
お
)
迎
(
むか
)
へ
申
(
まを
)
してお
出
(
い
)
で………アーアやつぱり
身魂
(
みたま
)
の
良
(
よ
)
い
者
(
もの
)
は
分
(
わか
)
るワイ。
691
落魄
(
おちぶ
)
れて
袖
(
そで
)
に
涙
(
なみだ
)
のかかる
時
(
とき
)
人
(
ひと
)
の
心
(
こころ
)
の
奥
(
おく
)
ぞ
知
(
し
)
らるる
692
だ。
693
妾
(
わし
)
が
聖地
(
せいち
)
へ
帰
(
かへ
)
つてから
今日
(
けふ
)
で
三日目
(
みつかめ
)
だ。
694
それに
言依別
(
ことよりわけ
)
を
始
(
はじ
)
め、
695
杢助
(
もくすけ
)
迄
(
まで
)
が
不心得
(
ふこころえ
)
千万
(
せんばん
)
な、
696
系統
(
ひつぽう
)
のお
帰
(
かへ
)
りを
邪魔者
(
じやまもの
)
扱
(
あつかひ
)
に
致
(
いた
)
して、
697
馬鹿
(
ばか
)
にして
居
(
ゐ
)
る………エー、
698
今
(
いま
)
に
見
(
み
)
ておぢやれよ、
699
アフンと
致
(
いた
)
さして
見
(
み
)
せるぞよと、
700
日
(
ひ
)
の
出
(
で
)
さまが
仰有
(
おつしや
)
るので、
701
先
(
ま
)
づ
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
にお
任
(
まか
)
せして
辛抱
(
しんばう
)
して
居
(
ゐ
)
るのだ。
702
人間
(
にんげん
)
と
云
(
い
)
ふ
者
(
もの
)
は
薄情
(
はくじやう
)
なものだ。
703
冷酷
(
れいこく
)
無惨
(
むざん
)
の
浮世
(
うきよ
)
とは
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
704
人情
(
にんじやう
)
薄
(
うす
)
きこと
紙
(
かみ
)
の
如
(
ごと
)
しだ』
705
国依別
(
くによりわけ
)
『
此
(
この
)
国
(
くに
)
さまは
人情
(
にんじやう
)
厚
(
あつ
)
きこと
神
(
かみ
)
の
如
(
ごと
)
しでせう』
706
高姫
(
たかひめ
)
『さうでせうとも、
707
偶
(
たまたま
)
の
挨拶
(
あいさつ
)
に
団子石
(
だんごいし
)
を
贈
(
おく
)
つて
来
(
く
)
る
様
(
やう
)
な、
708
無情
(
むじやう
)
……オツトドツコイ
親切
(
しんせつ
)
なお
方
(
かた
)
ですからな』
709
国依別
(
くによりわけ
)
『イヤその
御
(
お
)
礼
(
れい
)
には
及
(
およ
)
びませぬ。
710
沢山
(
たくさん
)
なもので
厶
(
ござ
)
いますから……』
711
斯
(
かか
)
る
所
(
ところ
)
へ
勝公
(
かつこう
)
に
導
(
みちび
)
かれ、
712
夏彦
(
なつひこ
)
、
713
常彦
(
つねひこ
)
は
目
(
め
)
をギヨロつかせ
乍
(
なが
)
ら、
714
此
(
この
)
場
(
ば
)
に
恐
(
おそ
)
る
恐
(
おそ
)
る
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
り、
715
国依別
(
くによりわけ
)
や
秋彦
(
あきひこ
)
の
其
(
その
)
場
(
ば
)
に
端坐
(
たんざ
)
せるを
見
(
み
)
て、
716
聊
(
いささ
)
か
手持
(
てもち
)
無沙汰
(
ぶさた
)
な
顔付
(
かほつき
)
にて、
717
ドギマギして
居
(
ゐ
)
る
可笑
(
をか
)
しさ。
718
夏
(
なつ
)
、
719
常
(
つね
)
両人
(
りやうにん
)
、
720
丁寧
(
ていねい
)
に
高姫
(
たかひめ
)
の
前
(
まへ
)
に
手
(
て
)
をつかへ、
721
両人
(
りやうにん
)
『
是
(
これ
)
は
是
(
これ
)
は
高姫
(
たかひめ
)
様
(
さま
)
、
722
御
(
ご
)
遠方
(
ゑんぱう
)
の
所
(
ところ
)
永
(
なが
)
らく
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
様
(
さま
)
で
厶
(
ござ
)
いました』
723
高姫
(
たかひめ
)
『イヤもう
御
(
ご
)
挨拶
(
あいさつ
)
痛
(
いた
)
み
入
(
い
)
ります。
724
何分
(
なにぶん
)
身魂
(
みたま
)
が
研
(
みが
)
けぬもので
厶
(
ござ
)
いますから、
725
不調法
(
ぶてうはふ
)
計
(
ばか
)
り
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
ります』
726
両人
(
りやうにん
)
『
滅相
(
めつさう
)
もない、
727
貴方
(
あなた
)
は
決
(
けつ
)
して
無駄
(
むだ
)
では
厶
(
ござ
)
いませぬ。
728
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
筆
(
ふで
)
にも、
729
人民
(
じんみん
)
から
見
(
み
)
れば
何
(
なん
)
でもないやうだが、
730
神
(
かみ
)
の
方
(
はう
)
からは
大
(
おほ
)
きな
御用
(
ごよう
)
が
出来
(
でき
)
て
居
(
ゐ
)
るぞよ……と
現
(
あら
)
はれて
居
(
を
)
りますから、
731
屹度
(
きつと
)
結構
(
けつこう
)
な
御用
(
ごよう
)
が
出来
(
でき
)
てをるに
違
(
ちが
)
ひありませぬ。
732
兎角
(
とかく
)
神界
(
しんかい
)
のことは
人民
(
じんみん
)
では
分
(
わか
)
りませぬから、
733
形
(
かたち
)
の
上
(
うへ
)
で
彼此
(
かれこれ
)
申
(
まを
)
すのは、
734
申
(
まを
)
す
人
(
ひと
)
が
分
(
わか
)
らぬので
御座
(
ござ
)
いませう』
735
高姫
(
たかひめ
)
『ハイ、
736
有難
(
ありがた
)
う』
737
と
涙
(
なみだ
)
含
(
ぐ
)
む。
738
両人
(
りやうにん
)
『
是
(
これ
)
は
是
(
これ
)
は
高山彦
(
たかやまひこ
)
様
(
さま
)
、
739
黒姫
(
くろひめ
)
様
(
さま
)
、
740
つい
申
(
まを
)
し
遅
(
おく
)
れました。
741
あなたも
永
(
なが
)
らく
神界
(
しんかい
)
の
為
(
ため
)
に
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
様
(
さま
)
で
厶
(
ござ
)
いました。
742
直様
(
すぐさま
)
御
(
お
)
伺
(
うかが
)
ひ
致
(
いた
)
すのが
本意
(
ほんい
)
で
厶
(
ござ
)
いますけれど、
743
二三
(
にさん
)
日前
(
にちまへ
)
から
杢助
(
もくすけ
)
さまに………エー、
744
一寸
(
ちよつと
)
…
何
(
なん
)
で
厶
(
ござ
)
いますので………つい
遅
(
おく
)
れまして
厶
(
ござ
)
います。
745
マア
御
(
ご
)
無事
(
ぶじ
)
で
御
(
ご
)
両所
(
りやうしよ
)
共
(
とも
)
御
(
お
)
帰
(
かへ
)
り
下
(
くだ
)
さいまして、
746
聖地
(
せいち
)
は
益々
(
ますます
)
御
(
ご
)
神徳
(
しんとく
)
が
上
(
あ
)
がるであらうと、
747
一同
(
いちどう
)
影
(
かげ
)
から
御
(
お
)
喜
(
よろこ
)
び
申
(
まを
)
してをる
様
(
やう
)
な
次第
(
しだい
)
で
厶
(
ござ
)
います』
748
高山彦
(
たかやまひこ
)
『ヤア
常彦
(
つねひこ
)
さま、
749
夏彦
(
なつひこ
)
さま、
750
あなたも
御
(
ご
)
無事
(
ぶじ
)
で
御
(
お
)
目出度
(
めでた
)
う』
751
黒姫
(
くろひめ
)
『ヨウ
親切
(
しんせつ
)
に
此
(
この
)
婆
(
ばば
)
アを
訪
(
たづ
)
ねて
下
(
くだ
)
さいました。
752
年
(
とし
)
がよると
腰
(
こし
)
が
屈
(
かが
)
む、
753
目汁
(
めじる
)
鼻汁
(
はなじる
)
……イヤもう
醜
(
むさ
)
くるしいもので、
754
誰
(
たれ
)
もふりかへつて
呉
(
く
)
れるものは
御座
(
ござ
)
いませぬワイ。
755
力
(
ちから
)
と
頼
(
たの
)
むは
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
と、
756
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
様
(
さま
)
、
757
竜宮
(
りうぐう
)
の
乙姫
(
おとひめ
)
様
(
さま
)
計
(
ばか
)
りで
厶
(
ござ
)
います。
758
人情
(
にんじやう
)
紙
(
かみ
)
の
如
(
ごと
)
き
軽薄
(
けいはく
)
な
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に、
759
ようマア
御
(
お
)
訪
(
たづ
)
ね
下
(
くだ
)
さいました。
760
あなたも
御
(
ご
)
無事
(
ぶじ
)
で
結構
(
けつこう
)
で
厶
(
ござ
)
いますなア』
761
両人
(
りやうにん
)
『ハイ、
762
有難
(
ありがた
)
う。
763
……ヤア
国依別
(
くによりわけ
)
さま、
764
秋彦
(
あきひこ
)
さま、
765
あなたは
何時
(
いつ
)
御
(
お
)
越
(
こ
)
しになりましたか』
766
国依別
(
くによりわけ
)
『………』
767
秋彦
(
あきひこ
)
『つい、
768
最前
(
さいぜん
)
参
(
まゐ
)
りました。
769
お
三方
(
さんかた
)
が
久
(
ひさ
)
し
振
(
ぶり
)
で
御
(
お
)
帰
(
かへ
)
りになつたので、
770
我々
(
われわれ
)
も
何
(
なん
)
となく
心
(
こころ
)
勇
(
いさ
)
み、
771
御
(
お
)
祝
(
いは
)
ひ
旁
(
かたがた
)
お
訪
(
たづ
)
ねしたのですよ』
772
国依別
(
くによりわけ
)
『
来客
(
らいきやく
)
に
其
(
その
)
場
(
ば
)
を
外
(
はづ
)
す
悧巧
(
りかう
)
かな。
773
心
(
こころ
)
から
除
(
の
)
けて
見
(
み
)
たきは
襖
(
ふすま
)
かな。
774
石
(
いし
)
よりも
堅
(
かた
)
き
心
(
こころ
)
の
集
(
つど
)
ひかな。
775
鐘
(
かね
)
一
(
ひと
)
つ
年
(
とし
)
は
二
(
ふた
)
つに
分
(
わ
)
かれけり』
776
と
口吟
(
くちずさ
)
み、
777
一同
(
いちどう
)
に、
778
国依別
(
くによりわけ
)
『
御
(
ご
)
密談
(
みつだん
)
の
御
(
お
)
邪魔
(
じやま
)
になりませうから、
779
我々
(
われわれ
)
両人
(
りやうにん
)
は
御
(
ご
)
遠慮
(
ゑんりよ
)
致
(
いた
)
します』
780
との
意
(
い
)
を
示
(
しめ
)
し、
781
目礼
(
もくれい
)
し
乍
(
なが
)
らスタスタと
帰
(
かへ
)
つて
行
(
ゆ
)
く。
782
門
(
もん
)
をくぐり
出
(
で
)
た
両人
(
りやうにん
)
、
783
互
(
たがひ
)
に
顔
(
かほ
)
を
見合
(
みあは
)
せ
乍
(
なが
)
ら、
784
ニタリと
笑
(
わら
)
ひ、
785
国依別
(
くによりわけ
)
『
高姫
(
たかひめ
)
も
大分
(
だいぶん
)
に
我
(
が
)
が
折
(
を
)
れたねえ。
786
あれなればもう
気遣
(
きづか
)
ひあるまいね』
787
秋彦
(
あきひこ
)
『さうでせう。
788
黒姫
(
くろひめ
)
も、
789
高山彦
(
たかやまひこ
)
も
余程
(
よほど
)
変
(
かは
)
つて
来
(
き
)
ましたよ。
790
何時
(
いつ
)
もなら、
791
あんな
石
(
いし
)
でも
贈
(
おく
)
らうものなら、
792
忽
(
たちま
)
ち
低気圧
(
ていきあつ
)
が
襲来
(
しふらい
)
して
雷鳴
(
らいめい
)
轟
(
とどろ
)
きわたり、
793
地異
(
ちい
)
天変
(
てんぺん
)
の
勃発
(
ぼつぱつ
)
するところですが、
794
矢張
(
やつぱり
)
苦労
(
くらう
)
はせんならぬものですなア』
795
国依別
(
くによりわけ
)
『アヽ
是
(
これ
)
で
杢助
(
もくすけ
)
さまに
対
(
たい
)
し、
796
相当
(
さうたう
)
の
報告
(
はうこく
)
が
出来
(
でき
)
るワイ。
797
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
経綸
(
けいりん
)
は
到底
(
たうてい
)
我々
(
われわれ
)
には
分
(
わか
)
るものでない。
798
それにつけても
貧乏籤
(
びんばふくじ
)
を
引
(
ひ
)
いたのは
此
(
この
)
国依別
(
くによりわけ
)
だ。
799
いつとても
揶揄役
(
からかひやく
)
を
仰
(
あふ
)
せ
付
(
つ
)
けられて
居
(
を
)
るのだから、
800
堪
(
たま
)
つたものぢやない』
801
秋彦
(
あきひこ
)
『
身魂
(
みたま
)
の
因縁
(
いんねん
)
で
善
(
ぜん
)
の
御用
(
ごよう
)
をするものと、
802
悪
(
あく
)
の
御用
(
ごよう
)
をするものとあるのだから、
803
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
な…あなたも
御
(
お
)
役
(
やく
)
ですな』
804
国依別
(
くによりわけ
)
『
三千
(
さんぜん
)
世界
(
せかい
)
改造
(
かいざう
)
の
大神劇
(
だいしんげき
)
の
登場
(
とうぢやう
)
役者
(
やくしや
)
だから、
805
仕方
(
しかた
)
がない。
806
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
悪役
(
あくやく
)
ばつかりは
御免
(
ごめん
)
蒙
(
かうむ
)
りたいワ』
807
秋彦
(
あきひこ
)
『
末
(
すゑ
)
になりたら、
808
皆
(
みな
)
一所
(
ひととこ
)
に
集
(
あつ
)
まつて
互
(
たがひ
)
に
打解
(
うちと
)
け
合
(
あ
)
ひ、
809
あゝ
斯
(
こ
)
うであつたか、
810
さうだつたかと
云
(
い
)
つて、
811
力
(
ちから
)
一杯
(
いつぱい
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
使
(
つか
)
はれて、
812
こんなことを
思
(
おも
)
つて
居
(
を
)
つたのかと、
813
笑
(
わら
)
ひの
止
(
と
)
まらぬ
仕組
(
しぐみ
)
ださうですから、
814
さう
気投
(
きな
)
げをしたものぢやありますまいで、
815
常彦
(
つねひこ
)
や
夏彦
(
なつひこ
)
が
忠義顔
(
ちうぎがほ
)
して、
816
高姫
(
たかひめ
)
の
前
(
まへ
)
で
味噌
(
みそ
)
を
摺
(
す
)
つて
居
(
ゐ
)
るのも、
817
あれも
何
(
なに
)
かの
御
(
お
)
仕組
(
しぐみ
)
の
一端
(
いつたん
)
でせう。
818
一寸
(
ちよつと
)
聞
(
き
)
くとムカツキますがなア。
819
よく
考
(
かんが
)
へて
見
(
み
)
ると、
820
どんな
仕組
(
しぐみ
)
がしてあるか
分
(
わか
)
りませぬからなア』
821
国依別
(
くによりわけ
)
『そらさうだ。
822
マア
細工
(
さいく
)
は
流々
(
りうりう
)
仕上
(
しあ
)
げを
御覧
(
ごら
)
うじと
仰有
(
おつしや
)
るのだから、
823
改造
(
かいざう
)
鉄道
(
てつだう
)
の
終点
(
しうてん
)
迄
(
まで
)
行
(
ゆ
)
かねば
分
(
わか
)
らぬなア。
824
ヤアもう
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
にか、
825
国依別
(
くによりわけ
)
館
(
やかた
)
の
門前
(
もんぜん
)
まで
来
(
き
)
て
了
(
しま
)
つた』
826
秋彦
(
あきひこ
)
『ハヽヽヽヽ、
827
何処
(
どこ
)
に
門
(
もん
)
があるのですかい』
828
国依別
(
くによりわけ
)
『
有
(
あ
)
つても
無
(
な
)
うても、
829
有
(
あ
)
ると
思
(
おも
)
へばある、
830
無
(
な
)
いと
思
(
おも
)
へば
無
(
な
)
いのだ。
831
俺
(
わし
)
の
居宅
(
きよたく
)
は
九尺
(
くしやく
)
二間
(
にけん
)
の
豚小屋
(
ぶたごや
)
の
様
(
やう
)
に、
832
お
前
(
まへ
)
の
眼
(
め
)
では
見
(
み
)
えるだらうが、
833
国依別
(
くによりわけ
)
の
天空
(
てんくう
)
海濶
(
かいくわつ
)
なる
霊眼
(
れいがん
)
を
以
(
もつ
)
て
見
(
み
)
る
時
(
とき
)
は、
834
錦
(
にしき
)
の
宮
(
みや
)
の
八尋殿
(
やひろどの
)
同様
(
どうやう
)
に
広
(
ひろ
)
く
見
(
み
)
えるのだからな。
835
これ
丈
(
だけ
)
広
(
ひろ
)
い
世界
(
せかい
)
も
心
(
こころ
)
の
持様
(
もちやう
)
一
(
ひと
)
つで、
836
我
(
わが
)
七
(
しち
)
尺
(
しやく
)
の
体
(
からだ
)
を
置
(
お
)
く
所
(
ところ
)
もない
様
(
やう
)
に
見
(
み
)
えたり、
837
又
(
また
)
こんな
小
(
ちい
)
さい
居宅
(
きよたく
)
が
宇宙大
(
うちうだい
)
に
見
(
み
)
えたりするのだから、
838
色即
(
しきそく
)
是空
(
ぜくう
)
、
839
空即
(
くうそく
)
是色
(
ぜしき
)
だ。
840
娑婆
(
しやば
)
即
(
そく
)
寂光
(
じやくくわう
)
浄土
(
じやうど
)
の
真諦
(
しんたい
)
はこんな
小
(
ちい
)
さい
家
(
いへ
)
の
中
(
なか
)
に
居
(
を
)
つて、
841
魂
(
みたま
)
を
研
(
みが
)
くとよく
了解
(
れうかい
)
が
出来
(
でき
)
るよ。
842
アハヽヽヽ』
843
秋彦
(
あきひこ
)
『そんなものですかいな。
844
私
(
わたし
)
の
眼
(
め
)
には
如何
(
どう
)
しても
八尋殿
(
やひろどの
)
と
同
(
おな
)
じ
様
(
やう
)
には
見
(
み
)
えませぬワイ。
845
裏口
(
うらぐち
)
出
(
で
)
た
所
(
ところ
)
に
厠
(
かはや
)
が
附着
(
ひつつ
)
いたり、
846
小便壺
(
せうべんつぼ
)
が
有
(
あ
)
つたり、
847
その
横
(
よこ
)
に
井戸
(
ゐど
)
が
在
(
あ
)
つたり、
848
走
(
はし
)
りに
竈
(
かまど
)
、
849
何
(
なん
)
だか
醜
(
むさ
)
くるしい
様
(
やう
)
な
気分
(
きぶん
)
がするぢやありませぬか。
850
一寸
(
ちよつと
)
聞
(
き
)
くと、
851
あんたの
御
(
お
)
言葉
(
ことば
)
は
痩我慢
(
やせがまん
)
を
言
(
い
)
つてるやうに
聞
(
きこ
)
えますで。
852
何程
(
なにほど
)
無形
(
むけい
)
的
(
てき
)
に
広
(
ひろ
)
いと
云
(
い
)
つても、
853
現実
(
げんじつ
)
が
斯
(
こ
)
う
矮小
(
わいせう
)
醜陋
(
しうろふ
)
では、
854
余
(
あんま
)
り
大
(
おほ
)
きなことも
云
(
い
)
へますまい。
855
これから
国依別
(
くによりわけ
)
さま、
856
私
(
わたくし
)
になら
何
(
なに
)
を
言
(
い
)
つてもよろしいが、
857
人
(
ひと
)
の
前
(
まへ
)
でそんなことを
仰有
(
おつしや
)
ると、
858
皆
(
みんな
)
が
取違
(
とりちがひ
)
して、
859
国依別
(
くによりわけ
)
は
負惜
(
まけをし
)
みの
強
(
つよ
)
い
奴
(
やつ
)
だ、
860
減
(
へ
)
らず
口
(
ぐち
)
を
叩
(
たた
)
く
奴
(
やつ
)
だと
却
(
かへつ
)
て
軽蔑
(
けいべつ
)
しますよ』
861
国依別
(
くによりわけ
)
『
形
(
かたち
)
ある
宝
(
たから
)
は
錆
(
さ
)
び、
862
腐
(
くさ
)
り、
863
焼
(
や
)
け、
864
亡
(
ほろ
)
び、
865
流
(
なが
)
れ
壊
(
こは
)
るる
虞
(
おそれ
)
がある。
866
起
(
お
)
きて
半畳
(
はんでふ
)
寝
(
ね
)
て
一畳
(
いちでう
)
だ。
867
広
(
ひろ
)
い
館
(
やかた
)
に
住
(
す
)
んで
居
(
を
)
れば、
868
あつたら
光陰
(
くわういん
)
を
掃除
(
さうぢ
)
三昧
(
ざんまい
)
に
空費
(
くうひ
)
し、
869
肝腎
(
かんじん
)
の
神業
(
しんげふ
)
の
妨害
(
ばうがい
)
になるだないか。
870
小
(
ちい
)
さいのは
結構
(
けつこう
)
だ、
871
何
(
なに
)
かに
都合
(
つがふ
)
が
好
(
よ
)
い。
872
第一
(
だいいち
)
経済
(
けいざい
)
上
(
じやう
)
から
云
(
い
)
つても
得策
(
とく
)
だからなア』
873
秋彦
(
あきひこ
)
『あなた
掃除
(
さうぢ
)
をなさつた
事
(
こと
)
があるんですか。
874
雪隠
(
せんち
)
の
虫
(
むし
)
が
竈
(
かまど
)
の
前
(
まへ
)
に
這
(
は
)
うて
居
(
ゐ
)
るぢやありませんか』
875
国依別
(
くによりわけ
)
『……ここ
暫
(
しば
)
し
家
(
いへ
)
の
美醜
(
びしう
)
は
忘
(
わす
)
れけり
神
(
かみ
)
大切
(
たいせつ
)
に
思
(
おも
)
ふ
計
(
ばか
)
りに……
876
と
云
(
い
)
ふ
様
(
やう
)
なものだな』
877
秋彦
(
あきひこ
)
『ヘーエあなたも
余程
(
よつぽど
)
高姫化
(
たかひめくわ
)
しましたねえ。
878
弁舌
(
べんぜつ
)
滔々
(
たうたう
)
風塵
(
ふうぢん
)
を
捲
(
ま
)
く。
879
実
(
じつ
)
に
揶揄役
(
からかひやく
)
のあなたは、
880
高姫
(
たかひめ
)
さまに
接
(
せつ
)
するの
度
(
ど
)
が
多
(
おほ
)
いから
余程
(
よほど
)
の
経験
(
けいけん
)
が
積
(
つ
)
んだと
見
(
み
)
えますワイ。
881
都合
(
つがふ
)
の
悪
(
わる
)
い
時
(
とき
)
には、
882
発句
(
ほつく
)
か
川柳
(
せんりう
)
か、
883
鵺式
(
ぬへしき
)
の
言葉
(
ことば
)
を
使
(
つか
)
つて
駄句
(
だく
)
り
続
(
つづ
)
け、
884
腰折歌
(
こしをれうた
)
を
並
(
なら
)
べ
随分
(
ずゐぶん
)
側
(
そば
)
から
聞
(
き
)
いてると
苦
(
くるし
)
さうでしたよ』
885
国依別
(
くによりわけ
)
『
苦
(
く
)
中
(
ちう
)
楽
(
らく
)
あり、
886
楽
(
らく
)
中
(
ちう
)
苦
(
く
)
ありだ。
887
それも
見
(
み
)
やうによるのだよ。
888
一葉
(
いちえふ
)
目
(
め
)
を
蔽
(
おほ
)
へば、
889
大空
(
たいくう
)
一度
(
いちど
)
に
隠
(
かく
)
れ、
890
一葉
(
いちえふ
)
を
掃
(
はら
)
へば、
891
大空
(
たいくう
)
我
(
わが
)
目
(
め
)
に
映
(
えい
)
ずと
云
(
い
)
つて、
892
凡
(
すべ
)
て
物
(
もの
)
は
見方
(
みかた
)
に
依
(
よ
)
るのだ、
893
見方
(
みかた
)
が
大切
(
たいせつ
)
だ』
894
秋彦
(
あきひこ
)
『
味方
(
みかた
)
計
(
ばか
)
り
大切
(
たいせつ
)
だと
云
(
い
)
つて
愛
(
あい
)
する
訳
(
わけ
)
には
行
(
ゆ
)
きますまい。
895
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
は
敵
(
てき
)
する
者
(
もの
)
を
愛
(
あい
)
せよと
仰有
(
おつしや
)
るぢやありませぬか』
896
国依別
(
くによりわけ
)
『それだから
高姫
(
たかひめ
)
さまに
対
(
たい
)
し、
897
私
(
わたし
)
は
何時
(
いつ
)
も
適対
(
てきた
)
ふのではない、
898
適当
(
てきたう
)
の
処置
(
しよち
)
を
取
(
と
)
つて
居
(
ゐ
)
るのだ。
899
ヤツパリ
見方
(
みかた
)
によつては
味方
(
みかた
)
に
見
(
み
)
えるだらう』
900
秋彦
(
あきひこ
)
『
何程
(
なにほど
)
贔屓目
(
ひいきめ
)
に
見
(
み
)
ても、
901
あなたが
高姫
(
たかひめ
)
さまに
対
(
たい
)
して
為
(
な
)
さることは、
902
余
(
あま
)
り
同情
(
どうじやう
)
のある
遣
(
や
)
り
方
(
かた
)
とは
見
(
み
)
えませぬぜ。
903
何時
(
いつ
)
も
高姫
(
たかひめ
)
さまの
鼻
(
はな
)
を
めしやげ
たり、
904
手古摺
(
てこず
)
らしては
痛快
(
つうくわい
)
がつてるぢやありませぬか』
905
国依別
(
くによりわけ
)
『……
心
(
こころ
)
なき
人
(
ひと
)
は
何
(
なん
)
とも
言
(
い
)
はば
言
(
い
)
へ
世
(
よ
)
をも
怨
(
うら
)
みじ
人
(
ひと
)
も
恨
(
うら
)
みじ……
906
燕雀
(
えんじやく
)
何
(
なん
)
ぞ
鴻鵠
(
こうこう
)
の
志
(
こころざし
)
[
※
「鴻鵠」は一般には「こうこく」と読むが、ここでは「こうこう」とフリガナが付いている。誤字か?
]
を
知
(
し
)
らんやだ。
907
紫蘭
(
しらん
)
満路
(
まんろ
)
に
咲
(
さ
)
く、
908
芳香
(
はうかう
)
何
(
なん
)
ぞ
没暁漢
(
ぼつげうかん
)
の
知
(
し
)
る
所
(
ところ
)
ならんやだ。
909
アハヽヽヽ』
910
(
大正一一・七・二二
旧閏五・二八
松村真澄
録)
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(N)
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