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霊界物語
海洋万里(第25~36巻)
第27巻(寅の巻)
序文
凡例
総説歌
第1篇 聖地の秋
第1章 高姫館
第2章 清潔法
第3章 魚水心
第2篇 千差万別
第4章 教主殿
第5章 玉調べ
第6章 玉乱
第7章 猫の恋
第3篇 神仙霊境
第8章 琉と球
第9章 女神託宣
第10章 太平柿
第11章 茶目式
第4篇 竜神昇天
第12章 湖上の怪物
第13章 竜の解脱
第14章 草枕
第15章 情意投合
第5篇 清泉霊沼
第16章 琉球の神
第17章 沼の女神
第18章 神格化
余白歌
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霊界物語
>
海洋万里(第25~36巻)
>
第27巻(寅の巻)
> 第3篇 神仙霊境 > 第9章 女神託宣
<<< 琉と球
(B)
(N)
太平柿 >>>
第九章
女神
(
めがみの
)
託宣
(
たくせん
)
〔七九一〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第27巻 海洋万里 寅の巻
篇:
第3篇 神仙霊境
よみ(新仮名遣い):
しんせんれいきょう
章:
第9章 女神託宣
よみ(新仮名遣い):
めがみのたくせん
通し章番号:
791
口述日:
1922(大正11)年07月25日(旧06月02日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年6月20日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
国依別は、もし数万の土人の襲来であれば衆寡敵せず、三五教は権謀術数は禁じられているが、ここは言依別命が熟睡しているのを幸い、茶目式で土人たちを驚かせて荒肝を取ってやろうと一人ごちた。
見れば、人々は白髪の老人を先頭に洞に近づいて来る。国依別は突然、虎狼が吠え猛るような唸り声を発した。声は洞穴に反響して、いっそう大きくなった。
外の男たちが二三人、小声で相談するのが聞こえた。人々は、ハーリス山の竜神征服のために出かけていたが、国依別の吠え声を聞いて、その間に虎狼か、あるいは竜神の片割れが洞穴に入り込んだと思い込んでいるようであった。そして、数歌を歌って征服しようか、と相談している。
国依別はこれを聞くと、先にこちらから数歌を怒鳴って聞かせた。人々は驚いて、魔神に自分たちの位置を悟られないようにといっせいに松明の火を消してしまった。あたりは真っ暗になった。
大勢の中から一人の男が大幣を打ち振りながらやってきて、洞穴の中の国依別に、正体を現すようにと問いかけた。国依別はその声に聞き覚えがあるように思ったが、ここぞとばかり南洋語でまくしたてた。
琉球の人々の中から現れたのは、若彦であった。国依別はハーリス山の竜神の振りをして若彦に語りかけて託宣を告げた。若彦は、一緒にいた常楠に、人々に竜神の託宣を告げるように言ったが、常楠は、声色が国依別の仕業ではないかと疑っていた。
国依別はなおも洞穴の中から話していたが、地声が現れてしまった。国依別はまた作り声に戻したが、問答するうちについに正体を現してしまった。
言依別命は目を覚まし、常楠と若彦が来ているだろうと声をかけた。一同は座して改めて会した。若彦は久しぶりの教主との対面となり、常楠は初対面となった。
常楠の語るに、先日から若彦の供としてこの島に渡り、ハーリス山の竜神と言霊戦を開始しているとのことであった。そのおかげで暴風が収まり、島人たちが二人を尊敬するようになった、また竜神は九分九厘恭順しており、あと一息執着心を絶てば宝玉を明け渡すところまで来ている、と報告した。
言依別命は、国依別の茶目式をたしなめた。夜が明けると、言依別命は四五十人の島人たちを引き連れて、ハーリス山に登って行った。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2021-10-29 18:28:33
OBC :
rm2709
愛善世界社版:
153頁
八幡書店版:
第5輯 298頁
修補版:
校定版:
159頁
普及版:
68頁
初版:
ページ備考:
001
国依別
(
くによりわけ
)
は
空洞
(
くうどう
)
の
入口
(
いりぐち
)
に
立
(
た
)
ち、
002
刻々
(
こくこく
)
に
近
(
ちか
)
より
来
(
きた
)
る
人影
(
ひとかげ
)
、
003
篝火
(
かがりび
)
の
光
(
ひかり
)
を
眺
(
なが
)
めて
独語
(
ひとりごと
)
、
004
国依別
(
くによりわけ
)
『あの
仰々
(
ぎやうぎやう
)
しい
松明
(
たいまつ
)
の
光
(
ひか
)
り、
005
数多
(
あまた
)
の
人
(
ひと
)
の
足音
(
あしおと
)
、
006
唯事
(
ただごと
)
ではあるまい。
007
万一
(
まんいち
)
猛悪
(
まうあく
)
なる
土人
(
どじん
)
の
襲来
(
しふらい
)
せし
者
(
もの
)
とすれば、
008
到底
(
たうてい
)
我々
(
われわれ
)
一人
(
ひとり
)
や
二人
(
ふたり
)
、
009
如何
(
いか
)
に
言霊
(
ことたま
)
の
神力
(
しんりき
)
を
応用
(
おうよう
)
すればとて、
010
容易
(
ようい
)
に
降服
(
かうふく
)
致
(
いた
)
すまい。
011
権謀
(
けんぼう
)
術数
(
じゆつすう
)
は
神
(
かみ
)
の
許
(
ゆる
)
し
玉
(
たま
)
はざる
所
(
ところ
)
なれ
共
(
ども
)
、
012
爰
(
ここ
)
は
一
(
ひと
)
つ
言依別
(
ことよりわけ
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
睡眠
(
やすみ
)
を
幸
(
さいは
)
ひ
茶目
(
ちやめ
)
式
(
しき
)
を
発揮
(
はつき
)
して、
013
裏手
(
うらて
)
を
用
(
もち
)
ひ、
014
寄
(
よ
)
せ
来
(
く
)
る
数万
(
すうまん
)
の
連中
(
れんちう
)
をアツと
驚
(
おどろ
)
かせ、
015
荒肝
(
あらぎも
)
を
取
(
と
)
りて
置
(
お
)
かねばなるまい。
016
オヽさうぢや さうぢや』
017
と
諾
(
うなづ
)
き
乍
(
なが
)
ら
入口
(
いりぐち
)
の
暗
(
くら
)
がりに、
018
ボンヤリと
浮
(
う
)
いた
様
(
やう
)
に
立
(
た
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
019
最早
(
もはや
)
間近
(
まぢか
)
くなつて
来
(
き
)
た。
020
暗
(
くら
)
がりにも
確
(
たしか
)
に
男女
(
なんによ
)
の
区別
(
くべつ
)
位
(
くらゐ
)
はつく
様
(
やう
)
になつた。
021
先頭
(
せんとう
)
に
立
(
た
)
つた
人
(
ひと
)
の
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
れば、
022
確
(
たしか
)
に
白髪
(
はくはつ
)
の
老人
(
らうじん
)
らしい。
023
国依別
(
くによりわけ
)
は
突然
(
とつぜん
)
洞穴内
(
どうけつない
)
より
虎
(
とら
)
狼
(
おほかみ
)
の
吼
(
ほ
)
えたける
如
(
ごと
)
き
唸
(
うな
)
り
声
(
ごゑ
)
を
立
(
た
)
て、
024
力
(
ちから
)
限
(
かぎ
)
り、
025
国依別
『ウーツ』
026
と
唸
(
うな
)
つてみた。
027
其
(
その
)
声
(
こゑ
)
は
洞穴内
(
どうけつない
)
に
反響
(
はんきやう
)
して
一層
(
いつそう
)
巨声
(
きよせい
)
になつた。
028
外
(
そと
)
の
男
(
をとこ
)
二三
(
にさん
)
人
(
にん
)
小声
(
こごゑ
)
で、
029
男
(
をとこ
)
『ヤアこりや
大変
(
たいへん
)
だぞ。
030
我々
(
われわれ
)
がハーリス
山
(
ざん
)
へ
竜神
(
りうじん
)
征服
(
せいふく
)
の
為
(
ため
)
に
行
(
い
)
つて
居
(
を
)
つた
不在中
(
るすちう
)
に、
031
何
(
なん
)
だか
怪
(
あや
)
しい
虎
(
とら
)
狼
(
おほかみ
)
か
或
(
あるひ
)
は
竜神
(
りうじん
)
の
片割
(
かたわ
)
れか、
032
先廻
(
さきまは
)
りして
我々
(
われわれ
)
の
天然
(
てんねん
)
ホテルを
占領
(
せんりやう
)
しやがつたと
見
(
み
)
える。
033
コリヤうつかり
這入
(
はい
)
らうものなら
大変
(
たいへん
)
だぞ。
034
オイどうだ。
035
数歌
(
かずうた
)
を
唱
(
とな
)
へて
征服
(
せいふく
)
して
見
(
み
)
ようぢやないか』
036
国依別
(
くによりわけ
)
はさとくも
其
(
その
)
囁
(
ささやき
)
の
一端
(
いつたん
)
を
耳
(
みみ
)
に
挟
(
はさ
)
み、
037
国依別
(
くによりわけ
)
『ヤア
面白
(
おもしろ
)
い、
038
虎
(
とら
)
狼
(
おほかみ
)
か
竜神
(
りうじん
)
の
片割
(
かたわ
)
れだらうと
云
(
い
)
つて
居
(
を
)
るな。
039
ヨシ
此方
(
こつち
)
にも
覚悟
(
かくご
)
がある』
040
と
独語
(
ひとりごち
)
し
乍
(
なが
)
ら、
041
満身
(
まんしん
)
の
息
(
いき
)
をこめて、
042
反対
(
はんたい
)
にこちらから「
一
(
ひと
)
二
(
ふた
)
三
(
み
)
四
(
よ
)
五
(
いつ
)
六
(
むゆ
)
七
(
なな
)
八
(
や
)
九
(
ここの
)
十
(
たり
)
百
(
もも
)
千
(
ち
)
万
(
よろづ
)
」と
含
(
ふく
)
んだ
様
(
やう
)
な
声
(
こゑ
)
でワザと
呶鳴
(
どな
)
つて
見
(
み
)
せた。
043
此
(
この
)
声
(
こゑ
)
と
共
(
とも
)
に
今迄
(
いままで
)
木
(
こ
)
の
間
(
ま
)
に
瞬
(
またた
)
いてゐた
松明
(
たいまつ
)
は
言
(
い
)
ひ
合
(
あ
)
はした
様
(
やう
)
にパツタリと
消
(
き
)
えて、
044
洞穴
(
どうけつ
)
の
内外
(
ないぐわい
)
は
真
(
しん
)
の
暗
(
やみ
)
となつて
了
(
しま
)
つた。
045
寄
(
よ
)
せ
手
(
て
)
は
驚
(
おどろ
)
いて、
046
魔神
(
まがみ
)
に
自分
(
じぶん
)
等
(
ら
)
の
所在
(
ありか
)
を
探
(
さぐ
)
られない
為
(
ため
)
と
火
(
ひ
)
を
消
(
け
)
したのであつた。
047
外
(
そと
)
からは
流暢
(
りうちやう
)
な
声
(
こゑ
)
で
天
(
あま
)
の
数歌
(
かずうた
)
が
聞
(
きこ
)
えて
来
(
き
)
た。
048
一同
(
いちどう
)
はそれに
合
(
あは
)
して、
049
森林
(
しんりん
)
の
木谺
(
こだま
)
に
響
(
ひび
)
く
声
(
こゑ
)
、
050
天
(
てん
)
にも
届
(
とど
)
く
許
(
ばか
)
り
思
(
おも
)
はれた。
051
大勢
(
おほぜい
)
の
中
(
なか
)
より
一人
(
ひとり
)
の
男
(
をとこ
)
稍
(
やや
)
近
(
ちか
)
くに
進
(
すす
)
み
来
(
きた
)
り、
052
大麻
(
おほぬさ
)
を
左右左
(
さいうさ
)
に
打振
(
うちふ
)
り
乍
(
なが
)
ら、
053
男
(
をとこ
)
『ヤア
我々
(
われわれ
)
の
不在中
(
ふざいちう
)
を
狙
(
ねら
)
つて
住
(
す
)
み
込
(
こ
)
む
奴
(
やつ
)
は
大蛇
(
をろち
)
か、
054
曲鬼
(
まがおに
)
か、
055
或
(
あるひ
)
は
猛獣
(
まうじう
)
か、
056
言語
(
げんご
)
の
通
(
つう
)
ずるものならば、
057
速
(
すみや
)
かに
返答
(
へんたふ
)
致
(
いた
)
せ。
058
それとも
畜生
(
ちくしやう
)
ならば、
059
一刻
(
いつこく
)
も
早
(
はや
)
く
此処
(
ここ
)
を
退散
(
たいさん
)
致
(
いた
)
せ。
060
若
(
も
)
し
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
ならば
御名
(
みな
)
を
名乗
(
なの
)
らせ
玉
(
たま
)
へ』
061
国依別
(
くによりわけ
)
は
何
(
なん
)
だか
其
(
その
)
言葉
(
ことば
)
に
馴染
(
なじみ
)
のある
様
(
やう
)
な
気分
(
きぶん
)
がした。
062
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
此
(
この
)
琉球
(
りうきう
)
の
離
(
はな
)
れ
島
(
じま
)
に
我々
(
われわれ
)
の
知人
(
ちじん
)
が
来
(
き
)
て
居
(
を
)
るべき
筈
(
はず
)
もない。
063
あの
声
(
こゑ
)
は
確
(
たしか
)
に
男子
(
だんし
)
であつた。
064
さうして
何
(
なん
)
となく
言霊
(
ことたま
)
が
冴
(
さ
)
えて
居
(
ゐ
)
た。
065
こりや
決
(
けつ
)
して
案
(
あん
)
ずるには
及
(
およ
)
ぶまい。
066
機先
(
きせん
)
を
制
(
せい
)
するは
今
(
いま
)
の
此
(
この
)
時
(
とき
)
だ……と
心
(
こころ
)
に
思
(
おも
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
067
暗
(
くら
)
がりを
幸
(
さいは
)
ひ、
068
国依別
(
くによりわけ
)
『アール、
069
シヤイト、
070
チーチヤーバンド、
071
ジヤンジヤヘール、
072
サーチライト、
073
パツクス、
074
エール、
075
シーエー、
076
ピツク、
077
ホース』
078
と
云
(
い
)
つた。
079
外
(
そと
)
の
男
(
をとこ
)
『ヤア
此奴
(
こいつ
)
ア
南洋
(
なんやう
)
の
土人
(
どじん
)
が
漂着
(
へうちやく
)
して
来
(
き
)
よつたのだなア。
080
天
(
あま
)
の
数歌
(
かずうた
)
まがひの
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
つて
居
(
ゐ
)
やがつたぞ。
081
大方
(
おほかた
)
ジヤンナの
郷
(
さと
)
の
三五教
(
あななひけう
)
の
信者
(
しんじや
)
が、
082
此
(
この
)
島
(
しま
)
に
漂着
(
へうちやく
)
して
此
(
この
)
洞穴
(
どうけつ
)
を
見付
(
みつ
)
け
出
(
だ
)
し、
083
這入
(
はい
)
つて
居
(
ゐ
)
やがるのだらう。
084
困
(
こま
)
つた
奴
(
やつ
)
が
来
(
き
)
たものだ。
085
土人
(
どじん
)
の
言葉
(
ことば
)
はこちらでは
分
(
わか
)
らないし、
086
如何
(
どう
)
云
(
い
)
つてやらうかなア』
087
国依別
(
くによりわけ
)
『
此
(
この
)
方
(
はう
)
はハーリス
山
(
ざん
)
に、
088
遠
(
とほ
)
き
神代
(
かみよ
)
の
昔
(
むかし
)
より
住居
(
すまゐ
)
致
(
いた
)
す
大竜神
(
だいりうじん
)
であるぞよ。
089
此
(
この
)
度
(
たび
)
神勅
(
しんちよく
)
に
依
(
よ
)
つて
高天原
(
たかあまはら
)
より
言依別
(
ことよりわけの
)
命
(
みこと
)
、
090
其
(
その
)
玉
(
たま
)
を
受取
(
うけと
)
りにお
越
(
こ
)
し
遊
(
あそ
)
ばされたるを
以
(
もつ
)
て、
091
今迄
(
いままで
)
大切
(
たいせつ
)
に
保存
(
ほぞん
)
して
居
(
ゐ
)
た
琉
(
りう
)
、
092
球
(
きう
)
の
二
(
ふた
)
つの
玉
(
たま
)
も、
093
已
(
や
)
むを
得
(
え
)
ず
御
(
お
)
渡
(
わた
)
し
致
(
いた
)
さねばならぬ
事
(
こと
)
になつて
来
(
き
)
た。
094
神勅
(
しんちよく
)
はもだし
難
(
がた
)
し、
095
執着心
(
しふちやくしん
)
を
去
(
さ
)
つてスツパリと
渡
(
わた
)
し
切
(
き
)
る
考
(
かんが
)
へだ。
096
此
(
この
)
二
(
ふた
)
つの
玉
(
たま
)
の
琉球
(
りうきう
)
を
去
(
さ
)
るや
否
(
いな
)
や、
097
如何
(
いか
)
なる
事
(
こと
)
が
出来
(
しゆつたい
)
致
(
いた
)
すも
分
(
わか
)
りはせぬぞ。
098
其
(
その
)
方
(
はう
)
は
我
(
われ
)
を
是
(
これ
)
より
誠
(
まこと
)
の
神
(
かみ
)
と
尊敬
(
そんけい
)
致
(
いた
)
し、
099
此
(
この
)
洞穴
(
どうけつ
)
の
中
(
なか
)
を
我
(
わが
)
居宅
(
きよたく
)
に
献
(
たてまつ
)
り、
100
山海
(
さんかい
)
の
珍味
(
ちんみ
)
を
以
(
もつ
)
て
供養
(
くやう
)
せば、
101
地異
(
ちい
)
天変
(
てんぺん
)
の
災害
(
さいがい
)
を
免
(
まぬが
)
れしめ、
102
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
一同
(
いちどう
)
をして
安
(
やす
)
く
楽
(
たの
)
しく
長寿
(
ちやうじゆ
)
を
与
(
あた
)
へ、
103
天国
(
てんごく
)
の
喜
(
よろこ
)
びを
永久
(
とこしへ
)
に
保
(
たも
)
たしめむ。
104
返答
(
へんたふ
)
如何
(
いか
)
に』
105
と
声
(
こゑ
)
まで
十七八
(
じふしちはち
)
位
(
くらゐ
)
の
女
(
をんな
)
になつた
気
(
き
)
で、
106
若々
(
わかわか
)
しげに
述
(
の
)
べ
立
(
た
)
てた。
107
外
(
そと
)
の
男
(
をとこ
)
の
一人
(
ひとり
)
、
108
稍
(
やや
)
前
(
まへ
)
に
進
(
すす
)
み
寄
(
よ
)
り、
109
外
(
そと
)
の
男
(
をとこ
)
『
早速
(
さつそく
)
のあなたの
御
(
ご
)
承諾
(
しようだく
)
、
110
若彦
(
わかひこ
)
身
(
み
)
にとりて、
111
有難
(
ありがた
)
き
仕合
(
しあは
)
せに
存
(
ぞん
)
じます。
112
先日
(
せんじつ
)
より
一
(
いち
)
日
(
にち
)
も
欠
(
か
)
かさず、
113
ハーリス
山
(
ざん
)
に
駆上
(
かけのぼ
)
り、
114
言霊
(
ことたま
)
を
手向
(
たむ
)
け
候
(
さふらう
)
処
(
ところ
)
、
115
竜
(
たつ
)
の
腮
(
あぎと
)
の
琉
(
りう
)
と
球
(
きう
)
、
116
容易
(
ようい
)
に
御
(
お
)
渡
(
わた
)
し
下
(
くだ
)
さる
形跡
(
けいせき
)
も
見
(
み
)
えず、
117
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
は、
118
心中
(
しんちう
)
稍
(
やや
)
不安
(
ふあん
)
の
念
(
ねん
)
に
駆
(
か
)
られて
居
(
を
)
りました。
119
其
(
その
)
お
言葉
(
ことば
)
を
聞
(
き
)
くからは、
120
これなる
土人
(
どじん
)
に
命
(
めい
)
じ、
121
あらゆる
珍
(
めづら
)
しき
果物
(
くだもの
)
を
持
(
も
)
たせお
供
(
そな
)
へ
致
(
いた
)
します。
122
どうか
今迄
(
いままで
)
の
様
(
やう
)
に
時々
(
ときどき
)
暴風雨
(
ばうふうう
)
を
起
(
おこ
)
し、
123
人民
(
じんみん
)
を
苦
(
くるし
)
むるなどの
暴行
(
ばうかう
)
は
是
(
こ
)
れ
限
(
かぎ
)
り
御
(
お
)
止
(
とど
)
め
下
(
くだ
)
さいまする
様
(
やう
)
に、
124
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
若彦
(
わかひこ
)
、
125
慎
(
つつし
)
んで
御
(
お
)
願
(
ねが
)
ひ
致
(
いた
)
します』
126
国依別
(
くによりわけ
)
、
127
中
(
なか
)
より、
128
国依別
(
くによりわけ
)
『
言
(
い
)
ふにや
及
(
およ
)
ぶ。
129
我
(
われ
)
こそは
国依
(
くにより
)
……オツト
違
(
ちが
)
うた、
130
国
(
くに
)
より
も
我
(
わが
)
身
(
み
)
が
大事
(
だいじ
)
と、
131
今迄
(
いままで
)
は
執着心
(
しふちやくしん
)
にかられ、
132
琉
(
りう
)
、
133
球
(
きう
)
の
二
(
ふた
)
つの
玉
(
たま
)
を
私有物
(
しいうぶつ
)
として
楽
(
たの
)
しんでゐた。
134
さうして
此
(
この
)
玉
(
たま
)
を
以
(
もつ
)
て、
135
風雨
(
ふうう
)
雷霆
(
らいてい
)
を
駆使
(
くし
)
し、
136
種々
(
しゆじゆ
)
雑多
(
ざつた
)
の
乱暴
(
らんばう
)
を
致
(
いた
)
したが、
137
今日
(
こんにち
)
限
(
かぎ
)
り
根本
(
こんぽん
)
より
悔
(
く
)
い
改
(
あらた
)
めて
若彦
(
わかひこ
)
の
言葉
(
ことば
)
に
従
(
したが
)
ふ
程
(
ほど
)
に、
138
必
(
かなら
)
ず
必
(
かなら
)
ず
心配
(
しんぱい
)
致
(
いた
)
すな。
139
サア
早
(
はや
)
く
芳醇
(
はうじゆん
)
なる
酒
(
さけ
)
を
献
(
けん
)
じ、
140
林檎
(
りんご
)
、
141
バナナ、
142
竜眼肉
(
りうがんにく
)
を
我
(
わが
)
前
(
まへ
)
に
献上
(
けんじやう
)
致
(
いた
)
せ。
143
随分
(
ずゐぶん
)
空腹
(
くうふく
)
に
悩
(
なや
)
んで
居
(
ゐ
)
るぞよ。
144
言依別
(
ことよりわけの
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
やがて
日
(
ひ
)
を
移
(
うつ
)
さず
此処
(
ここ
)
に
御
(
お
)
越
(
こ
)
しあらん。
145
大勢
(
おほぜい
)
ここに
集
(
あつ
)
まるも
無益
(
むえき
)
なれば、
146
大半
(
たいはん
)
は
浜辺
(
はまべ
)
に
到
(
いた
)
つて
言依別
(
ことよりわけ
)
様
(
さま
)
御
(
ご
)
到着
(
たうちやく
)
の
御
(
お
)
出迎
(
でむか
)
への
準備
(
じゆんび
)
をいたすがよからうぞ。
147
其
(
その
)
時
(
とき
)
には
三五教
(
あななひけう
)
の
大
(
だい
)
宣伝使
(
せんでんし
)
国依別
(
くによりわけ
)
お
供
(
とも
)
に
仕
(
つか
)
へ
居
(
を
)
る
筈
(
はず
)
なれば、
148
待遇
(
たいぐう
)
に
区別
(
くべつ
)
をつけず、
149
極
(
ごく
)
鄭重
(
ていちよう
)
にもてなしを
致
(
いた
)
せよ。
150
ハーリス
山
(
ざん
)
の
竜神
(
りうじん
)
、
151
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
一統
(
いつとう
)
に
気
(
き
)
をつけるぞよ。
152
若彦
(
わかひこ
)
、
153
及
(
およ
)
び
其
(
その
)
前
(
まへ
)
に
立
(
た
)
つ
白髪
(
はくはつ
)
の
老人
(
らうじん
)
にも
申
(
まを
)
しわたす
仔細
(
しさい
)
あらば
此処
(
ここ
)
に
居
(
ゐ
)
よ。
154
其
(
その
)
他
(
た
)
の
住民
(
ぢうみん
)
共
(
ども
)
は
浜辺
(
はまべ
)
へさして
一刻
(
いつこく
)
も
早
(
はや
)
く
御
(
お
)
迎
(
むか
)
へに
参
(
まゐ
)
り、
155
万事
(
ばんじ
)
落度
(
おちど
)
なく
心
(
こころ
)
を
配
(
くば
)
り
気
(
き
)
を
配
(
くば
)
れよ。
156
ウーン』
157
と
唸
(
うな
)
り
止
(
や
)
んだ。
158
若彦
(
わかひこ
)
『
委細
(
ゐさい
)
承知
(
しようち
)
仕
(
つかまつ
)
りました。
159
……モシ
常楠
(
つねくす
)
様
(
さま
)
、
160
あなた
何卒
(
どうぞ
)
、
161
大勢
(
おほぜい
)
の
連中
(
れんちう
)
に
此
(
この
)
由
(
よし
)
を
御
(
お
)
伝
(
つた
)
へ
下
(
くだ
)
さいまして、
162
言依別
(
ことよりわけ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
到着
(
たうちやく
)
の
待受
(
まちうけ
)
準備
(
じゆんび
)
にかかるべく
御
(
ご
)
命令
(
めいれい
)
下
(
くだ
)
さいませ』
163
常楠
(
つねくす
)
『ハイ
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
しました。
164
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
嘘
(
うそ
)
ではありますまいかな。
165
どうも
我々
(
われわれ
)
の
考
(
かんが
)
へでは
言依別
(
ことよりわけの
)
命
(
みこと
)
様
(
さま
)
は、
166
此
(
この
)
洞穴内
(
どうけつない
)
に
安々
(
やすやす
)
と
御
(
お
)
休
(
やす
)
みなされてるような
心持
(
こころもち
)
が
致
(
いた
)
します。
167
そして
此
(
この
)
竜神
(
りうじん
)
の
化身
(
けしん
)
女神
(
めがみ
)
様
(
さま
)
は、
168
私
(
わたし
)
の
心
(
こころ
)
のひがみか
存
(
ぞん
)
じませぬが、
169
国依別
(
くによりわけ
)
様
(
さま
)
のように
思
(
おも
)
はれてなりませぬ。
170
悪戯好
(
いたづらずき
)
の
国依別
(
くによりわけ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
の
事
(
こと
)
とて、
171
ワザとに
女神
(
めがみ
)
の
声色
(
こわいろ
)
を
使
(
つか
)
つて
居
(
を
)
られるのでは
御座
(
ござ
)
いますまいか。
172
数多
(
あまた
)
の
土人
(
どじん
)
を
引
(
ひき
)
つれ
浜辺
(
はまべ
)
へ
参
(
まゐ
)
り、
173
言依別
(
ことよりわけの
)
命
(
みこと
)
様
(
さま
)
今
(
いま
)
か
今
(
いま
)
かと
待呆
(
まちぼう
)
けに
遭
(
あ
)
はせ、
174
あとでアフンとさして
大笑
(
おほわら
)
ひをしようと
云
(
い
)
ふ
企
(
たく
)
みだなからうかと
思
(
おも
)
はれます。
175
そんな
手
(
て
)
に
乗
(
の
)
るものなら
折角
(
せつかく
)
我々
(
われわれ
)
を
神
(
かみ
)
と
信
(
しん
)
じてる
土人
(
どじん
)
の
信用
(
しんよう
)
はサツパリ
地
(
ち
)
におち、
176
却
(
かへつ
)
て
我
(
われ
)
等
(
ら
)
の
身辺
(
しんぺん
)
に
危険
(
きけん
)
の
及
(
およ
)
ぶやも
計
(
はか
)
り
知
(
し
)
れませぬ。
177
コリヤうかうかと
聞
(
き
)
く
訳
(
わけ
)
には
行
(
ゆ
)
けますまいぞ』
178
国依別
(
くによりわけ
)
洞穴内
(
どうけつない
)
より、
179
一層
(
いつそう
)
やさしき
女
(
をんな
)
の
作
(
つく
)
り
声
(
ごゑ
)
で
甲高
(
かんだか
)
に、
180
国依別
(
くによりわけ
)
『
来
(
く
)
るか
来
(
く
)
るかと
浜
(
はま
)
へ
出
(
で
)
て
見
(
み
)
れば
181
浜
(
はま
)
の
松風
(
まつかぜ
)
音
(
おと
)
ばかり
182
待
(
ま
)
ちに
待
(
ま
)
つたる
国
(
くに
)
さまは
183
遠
(
とほ
)
の
昔
(
むかし
)
に
此
(
この
)
島
(
しま
)
に
184
上
(
あが
)
つて
御座
(
ござ
)
るを
知
(
し
)
らないか
185
ホンニ
盲
(
めくら
)
は
仕様
(
しやう
)
がない
186
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
187
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はひましませよ』
188
と
追々
(
おひおひ
)
鍍金
(
めつき
)
がはげて、
189
知
(
し
)
らぬ
間
(
ま
)
に
自分
(
じぶん
)
の
地声
(
ぢごゑ
)
になつて
居
(
ゐ
)
たのに
気
(
き
)
がついた。
190
国依別
『ヤア
是
(
こ
)
りや
失策
(
しま
)
つた』
191
と
思
(
おも
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
192
又
(
また
)
声
(
こゑ
)
を
改
(
あらた
)
めて、
193
国依別
(
くによりわけ
)
『
我
(
われ
)
こそは
琉
(
りう
)
と
球
(
きう
)
との
玉
(
たま
)
を
守護
(
しゆご
)
致
(
いた
)
す
国依別
(
くによりわけ
)
の
姫神
(
ひめがみ
)
であるぞよ。
194
国依別
(
くによりわけ
)
とはタマで
代物
(
しろもの
)
が
違
(
ちが
)
ふぞよ。
195
国依別
(
くによりわけ
)
が
例
(
たと
)
へば
黄金
(
わうごん
)
なれば、
196
此
(
この
)
方
(
はう
)
は
銅
(
あかがね
)
位
(
くらゐ
)
なものであるぞよ。
197
今迄
(
いままで
)
の
国依別
(
くによりわけ
)
は、
198
実
(
じつ
)
に
困
(
こま
)
つた
奴
(
やつ
)
であつたなれども、
199
身魂
(
みたま
)
の
因縁
(
いんねん
)
現
(
あら
)
はれて
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
は、
200
立派
(
りつぱ
)
な
立派
(
りつぱ
)
な
言依別
(
ことよりわけの
)
命
(
みこと
)
の
片腕
(
かたうで
)
にお
成
(
な
)
り
遊
(
あそ
)
ばして
御座
(
ござ
)
るぞよ。
201
其
(
その
)
方
(
はう
)
は
紀州
(
きしう
)
の
辺鄙
(
へんぴ
)
に
永
(
なが
)
らく
蟄居
(
ちつきよ
)
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
つた
故
(
ゆゑ
)
、
202
知
(
し
)
らぬは
無理
(
むり
)
なき
事
(
こと
)
であるぞよ。
203
今
(
いま
)
に
国依別
(
くによりわけの
)
命
(
みこと
)
参
(
まゐ
)
りなば
鄭重
(
ていちよう
)
にいたし、
204
琉
(
りう
)
、
205
球
(
きう
)
二
(
ふた
)
つの
玉
(
たま
)
を
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
手
(
て
)
に
入
(
い
)
れなば、
206
一
(
いつ
)
は
言依別
(
ことよりわけの
)
命
(
みこと
)
に
献
(
けん
)
じ、
207
一
(
いつ
)
は
国依別
(
くによりわけの
)
命
(
みこと
)
に
献
(
けん
)
ぜよ。
208
これ
国依姫
(
くによりひめの
)
命
(
みこと
)
の
御心
(
みこころ
)
であるぞよ。
209
ゆめゆめ
疑
(
うたが
)
ふこと
勿
(
なか
)
れ』
210
若彦
(
わかひこ
)
『ハイ
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
しました。
211
誰
(
たれ
)
の
御
(
お
)
手
(
て
)
に
渡
(
わた
)
しまするも
天下
(
てんか
)
を
救
(
すく
)
ふ
宝玉
(
ほうぎよく
)
ならば、
212
結構
(
けつこう
)
で
御座
(
ござ
)
います。
213
三五教
(
あななひけう
)
の
物
(
もの
)
とならば
之
(
これ
)
に
越
(
こ
)
したる
喜
(
よろこ
)
びは
御座
(
ござ
)
いませぬ』
214
常楠
(
つねくす
)
小声
(
こごゑ
)
で、
215
常楠
(
つねくす
)
『モシ
若彦
(
わかひこ
)
さま、
216
どう
思
(
おも
)
うても
私
(
わたくし
)
は
腑
(
ふ
)
に
落
(
お
)
ちませぬ。
217
……コレコレ
女神
(
めがみ
)
と
称
(
しよう
)
する
国依別
(
くによりわけ
)
さま、
218
良
(
い
)
い
加減
(
かげん
)
に
茶目
(
ちやめ
)
式
(
しき
)
を
発揮
(
はつき
)
しておいたらどうだい。
219
そんな
事
(
こと
)
ア
若彦
(
わかひこ
)
さまなれば、
220
一
(
いち
)
時
(
じ
)
誤魔化
(
ごまくわ
)
しが
利
(
き
)
くだらうが、
221
何
(
なに
)
もかも
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
の
辛酸
(
しんさん
)
を
嘗
(
な
)
めつくした
此
(
この
)
常楠
(
つねくす
)
の
前
(
まへ
)
には
通用
(
つうよう
)
致
(
いた
)
しませぬぞよ』
222
国依別
(
くによりわけ
)
『
真偽
(
しんぎ
)
の
判断
(
はんだん
)
は
其
(
その
)
方
(
はう
)
に
任
(
まか
)
す。
223
我
(
われ
)
に
従
(
したが
)
ひ
遠慮
(
ゑんりよ
)
は
要
(
い
)
らぬ。
224
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
両人
(
りやうにん
)
奥
(
おく
)
の
間
(
ま
)
に
進
(
すす
)
み
来
(
きた
)
れ』
225
と
先
(
さき
)
に
立
(
た
)
つて
暗
(
くら
)
がりを
進
(
すす
)
んで
行
(
ゆ
)
く。
226
国依別
(
くによりわけ
)
『
待
(
ま
)
てよ、
227
前
(
まへ
)
へ
無茶
(
むちや
)
苦茶
(
くちや
)
に
進
(
すす
)
むと
云
(
い
)
うと、
228
壁際
(
かべぎは
)
に
頭
(
あたま
)
を
打
(
う
)
ち、
229
言依別
(
ことよりわけ
)
様
(
さま
)
のお
眠
(
やす
)
みの
上
(
うへ
)
を
踏
(
ふ
)
みなどしたら
大変
(
たいへん
)
だ。
230
コリヤ
一
(
ひと
)
つ
松明
(
たいまつ
)
をつけさしてやらうかな』
231
と
小声
(
こごゑ
)
で
囁
(
ささや
)
き
乍
(
なが
)
ら、
232
国依別
(
くによりわけ
)
『ヤア
若彦
(
わかひこ
)
、
233
松明
(
たいまつ
)
をつけよ。
234
暗
(
くら
)
くて
少
(
すこ
)
しも
見
(
み
)
えぬでないか』
235
若彦
(
わかひこ
)
『
私
(
わたくし
)
はここへ
参
(
まゐ
)
つてから
余程
(
よほど
)
慣
(
な
)
れましたから、
236
松明
(
たいまつ
)
がなくても
大抵
(
たいてい
)
分
(
わか
)
つて
居
(
ゐ
)
ます。
237
あなたは
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
なれば
夜
(
よる
)
目
(
め
)
が
見
(
み
)
えさうなものですなア……
神
(
かみ
)
は
無遠近
(
むゑんきん
)
、
238
無大小
(
むだいせう
)
、
239
無明暗
(
むめいあん
)
、
240
無広狭
(
むくわうけふ
)
、
241
一
(
いつ
)
も
見
(
み
)
ざるなしと
云
(
い
)
ふではありませぬか』
242
国依別
(
くによりわけ
)
ヒヤリとし
乍
(
なが
)
ら、
243
尚
(
なほ
)
も
荘重
(
さうちよう
)
な
口調
(
くてう
)
にて、
244
国依別
(
くによりわけ
)
『
若彦
(
わかひこ
)
、
245
馬鹿
(
ばか
)
を
申
(
まを
)
せ。
246
暗
(
くら
)
がりの
目
(
め
)
の
見
(
み
)
える
者
(
もの
)
は
畜生
(
ちくしやう
)
であるぞよ。
247
人間
(
にんげん
)
は
暗
(
くら
)
がりに
目
(
め
)
の
見
(
み
)
えぬのは
神
(
かみ
)
の
分霊
(
ぶんれい
)
たる
証拠
(
しようこ
)
であるぞよ。
248
すべて
高等
(
かうとう
)
動物
(
どうぶつ
)
になる
程
(
ほど
)
、
249
夜分
(
やぶん
)
に
目
(
め
)
が
見
(
み
)
えないものだ。
250
それだから
最高級
(
さいかうきふ
)
にある
神
(
かみ
)
は
目
(
め
)
が
見
(
み
)
えぬが
道理
(
だうり
)
だらうがな。
251
それだから
人民
(
じんみん
)
が
神
(
かみ
)
に
灯明
(
とうみやう
)
を
献
(
けん
)
ずると
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を
知
(
し
)
らないか』
252
常楠
(
つねくす
)
吹
(
ふ
)
き
出
(
だ
)
して、
253
常楠
『オホヽヽヽ』
254
国依別
(
くによりわけ
)
『アイヤ
常楠
(
つねくす
)
とやら、
255
神
(
かみ
)
の
言葉
(
ことば
)
が
何故
(
なぜ
)
それ
程
(
ほど
)
可笑
(
をか
)
しいか』
256
常楠
(
つねくす
)
『あなたは
余程
(
よほど
)
鈍
(
どん
)
な
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
と
見
(
み
)
えますな。
257
道路神
(
だうろくじん
)
とかいつて、
258
盲神
(
めくらがみ
)
様
(
さま
)
があると
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
だ。
259
大方
(
おほかた
)
お
前
(
まへ
)
さまは
道路神
(
だうろくじん
)
か
道楽神
(
だうらくじん
)
だらう。
260
宗彦
(
むねひこ
)
、
261
お
勝
(
かつ
)
の
昔
(
むかし
)
を
思
(
おも
)
ひ
出
(
だ
)
しになつたら、
262
さぞ
今日
(
こんにち
)
は
感慨
(
かんがい
)
無量
(
むりやう
)
で
御座
(
ござ
)
いませうナ』
263
国依別
(
くによりわけ
)
『
何
(
なん
)
でも
宜
(
よろ
)
しい。
264
炬火
(
たいまつ
)
をつけて
下
(
くだ
)
さらぬか。
265
実
(
じつ
)
は
御
(
お
)
察
(
さつ
)
しの
通
(
とほ
)
り
国依別
(
くによりわけ
)
ですよ。
266
アハヽヽヽ』
267
常楠
(
つねくす
)
『オホヽヽヽ』
268
若彦
(
わかひこ
)
『なんだ、
269
又
(
また
)
いかれたか。
270
エー
仕方
(
しかた
)
がない。
271
よく
化
(
ば
)
ける
男
(
をとこ
)
だな。
272
そんなら
炬火
(
たいまつ
)
をつけて
上
(
あ
)
げませうかい』
273
と
懐
(
ふところ
)
より
燧石
(
ひうち
)
をとり
出
(
だ
)
し「カチカチ」とやつて
居
(
ゐ
)
る。
274
言依別
(
ことよりわけ
)
は
二三
(
にさん
)
人
(
にん
)
の
人声
(
ひとごゑ
)
何
(
なに
)
かザワザワ
聞
(
きこ
)
えるのに
目
(
め
)
をさまし、
275
耳
(
みみ
)
をすまして
聞
(
き
)
いて
居
(
を
)
れば、
276
国依別
(
くによりわけ
)
とか
常楠
(
つねくす
)
とか
若彦
(
わかひこ
)
とかの
声
(
こゑ
)
がきこえて
来
(
き
)
た。
277
(言依別?)
『ハテなア』
278
と
無言
(
むごん
)
のまま
考
(
かんが
)
へ
込
(
こ
)
んで
居
(
ゐ
)
る。
279
どうしたものか
火
(
ひ
)
は
打
(
う
)
つても
打
(
う
)
つても
火口
(
ほくち
)
につかぬ。
280
若彦
(
わかひこ
)
『アヽ
今日
(
けふ
)
は
盲
(
めくら
)
の
神
(
かみ
)
さまの
守護
(
しゆご
)
と
見
(
み
)
えて、
281
暗
(
くら
)
がりの
御
(
ご
)
守護
(
しゆご
)
らしい。
282
何程
(
なんぼ
)
打
(
う
)
つても
火
(
ひ
)
は
出
(
で
)
ませぬワ。
283
……ナア
常楠
(
つねくす
)
さま
如何
(
どう
)
しませう』
284
常楠
(
つねくす
)
『エー
仕方
(
しかた
)
がない。
285
そんなら
暗
(
くら
)
がりで
休
(
やす
)
みませうかい。
286
……
時
(
とき
)
に
国依別
(
くによりわけ
)
さま、
287
言依別
(
ことよりわけ
)
の
教主
(
けうしゆ
)
様
(
さま
)
はここに
居
(
を
)
られるのだらうな。
288
ウカウカ
歩
(
ある
)
くとお
眠
(
やす
)
みになつて
居
(
を
)
る
所
(
ところ
)
を
踏
(
ふ
)
みでもしたら
大変
(
たいへん
)
だから、
289
在否
(
ざいひ
)
を
言
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さいな』
290
国依別
(
くによりわけ
)
『お
前
(
まへ
)
さまの
最前
(
さいぜん
)
仰
(
あふ
)
せられた
通
(
とほ
)
り、
291
盲神
(
めくらがみ
)
の
国依別
(
くによりわけ
)
、
292
まして
此
(
この
)
暗夜
(
あんや
)
、
293
言依別
(
ことよりわけ
)
様
(
さま
)
の
在否
(
ざいひ
)
が
見
(
み
)
えて
堪
(
たま
)
りますか。
294
アハヽヽヽ』
295
言依別
(
ことよりわけの
)
命
(
みこと
)
は
声
(
こゑ
)
を
掛
(
か
)
け、
296
言依別
(
ことよりわけ
)
『イヤ
国依別
(
くによりわけ
)
、
297
何
(
なん
)
とかして
火
(
ひ
)
をつけて
呉
(
く
)
れないか。
298
常楠
(
つねくす
)
、
299
若彦
(
わかひこ
)
の
両人
(
りやうにん
)
が
見
(
み
)
えて
居
(
ゐ
)
るであらう』
300
国依別
(
くによりわけ
)
『ハイ、
301
確
(
たしか
)
にお
見
(
み
)
えになりませぬ。
302
あなたでさへも
見
(
み
)
えぬ
位
(
くらゐ
)
ですから……』
303
言依別
(
ことよりわけ
)
『
暗
(
くら
)
がりで
見
(
み
)
えるか
見
(
み
)
えぬかと
云
(
い
)
つたのだない。
304
来
(
き
)
て
居
(
を
)
られるか
居
(
を
)
られぬかと
言
(
い
)
ふのだ』
305
国依別
(
くによりわけ
)
『
来
(
き
)
て
居
(
を
)
られますが、
306
サツパリ
見
(
み
)
えて
居
(
を
)
られませぬ。
307
アハヽヽヽ』
308
かくする
所
(
ところ
)
へ
入口
(
いりぐち
)
よりチヤール、
309
ベースと
云
(
い
)
ふ
二人
(
ふたり
)
の
男
(
をとこ
)
、
310
松明
(
たいまつ
)
をかがやかし
乍
(
なが
)
ら
這入
(
はい
)
つて
来
(
き
)
た。
311
チヤール、
312
ベース
両人
(
りやうにん
)
腰
(
こし
)
を
届
(
かが
)
めて、
313
両人
(
りやうにん
)
『
嘸
(
さぞ
)
御
(
ご
)
不自由
(
ふじゆう
)
で
御座
(
ござ
)
いましたでせう。
314
つい
うつかり
致
(
いた
)
してをりました。
315
松明
(
たいまつ
)
をここに
灯
(
とも
)
しておきますから……
私
(
わたくし
)
は
入口
(
いりぐち
)
に
立番
(
たちばん
)
を
致
(
いた
)
しますから、
316
御用
(
ごよう
)
があらば
直
(
すぐ
)
に
手
(
て
)
を
御
(
お
)
拍
(
う
)
ち
下
(
くだ
)
さいませ』
317
国依別
(
くによりわけ
)
『ハーリス
山
(
ざん
)
の
竜神
(
りうじん
)
、
318
国依姫
(
くによりひめの
)
命
(
みこと
)
、
319
チヤール、
320
ベースの
両人
(
りやうにん
)
、
321
よくも
気
(
き
)
を
利
(
き
)
かしよつた。
322
神
(
かみ
)
満足
(
まんぞく
)
に
思
(
おも
)
ふぞよ』
323
両人
(
りやうにん
)
『ハー、
324
有難
(
ありがた
)
う
存
(
ぞん
)
じます』
325
と
恐
(
おそ
)
る
恐
(
おそ
)
る、
326
坑外
(
かうぐわい
)
に
出
(
で
)
て
行
(
ゆ
)
く。
327
坑内
(
かうない
)
は
二
(
ふた
)
つの
松明
(
たいまつ
)
にて
昼
(
ひる
)
の
如
(
ごと
)
く
明
(
あか
)
くなつた。
328
所々
(
ところどころ
)
に
節穴
(
ふしあな
)
の
窓
(
まど
)
が
開
(
あ
)
いて
居
(
ゐ
)
た。
329
煙
(
けぶり
)
は
其
(
その
)
穴
(
あな
)
より
逸出
(
いつしゆつ
)
すると
見
(
み
)
えて、
330
少
(
すこ
)
しも、
331
けむたさを
感
(
かん
)
じなかつた。
332
言依別
(
ことよりわけの
)
命
(
みこと
)
は
起
(
お
)
き
上
(
あが
)
り、
333
行儀
(
ぎやうぎ
)
よく
菅莚
(
すがむしろ
)
の
上
(
うへ
)
に
端坐
(
たんざ
)
し、
334
常楠
(
つねくす
)
、
335
若彦
(
わかひこ
)
の
顔
(
かほ
)
を
見
(
み
)
て、
336
『ヤア』と
言
(
い
)
つた。
337
若彦
(
わかひこ
)
『これはこれは
教主
(
けうしゆ
)
様
(
さま
)
、
338
よくも
御
(
お
)
入来
(
いで
)
下
(
くだ
)
さいました』
339
と
早
(
はや
)
くも
嬉
(
うれ
)
し
涙
(
なみだ
)
にくれて
居
(
ゐ
)
る。
340
言依別
(
ことよりわけ
)
『
若彦
(
わかひこ
)
殿
(
どの
)
、
341
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
で
御座
(
ござ
)
つた。
342
此
(
この
)
老人
(
らうじん
)
は
噂
(
うはさ
)
の
高
(
たか
)
い
秋彦
(
あきひこ
)
、
343
駒彦
(
こまひこ
)
の
縁類
(
えんるゐ
)
なる
常楠翁
(
つねくすをう
)
かなア』
344
若彦
(
わかひこ
)
『ハイ
左様
(
さやう
)
で
御座
(
ござ
)
います』
345
常楠
(
つねくす
)
『
教主
(
けうしゆ
)
様
(
さま
)
、
346
一度
(
いちど
)
御
(
お
)
伺
(
うかが
)
ひを
致
(
いた
)
したく
存
(
ぞん
)
じて
居
(
を
)
りましたが、
347
遠方
(
ゑんぱう
)
の
事
(
こと
)
と
云
(
い
)
ひ、
348
老人
(
としより
)
の
事
(
こと
)
とて
山道
(
やまみち
)
を
歩
(
あゆ
)
むのが
辛労
(
おつくう
)
になり、
349
つい
御
(
ご
)
無沙汰
(
ぶさた
)
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
りました。
350
伜
(
せがれ
)
共
(
ども
)
が
篤
(
あつ
)
き
御
(
お
)
世話
(
せわ
)
に
預
(
あづか
)
りまして、
351
有難
(
ありがた
)
う
御
(
お
)
礼
(
れい
)
申
(
まを
)
し
上
(
あ
)
げます。
352
今度
(
こんど
)
は
私
(
わたくし
)
も
千騎
(
せんき
)
一騎
(
いつき
)
の
最後
(
さいご
)
の
活動
(
くわつどう
)
と
思
(
おも
)
ひ、
353
神恩
(
しんおん
)
の
万分一
(
まんぶいち
)
に
報
(
はう
)
ぜむと、
354
若彦
(
わかひこ
)
様
(
さま
)
のお
伴
(
とも
)
をなし、
355
先日
(
せんじつ
)
より
此
(
この
)
島
(
しま
)
へ
参
(
まゐ
)
り、
356
ハーリス
山
(
ざん
)
の
竜神
(
りうじん
)
に
向
(
むか
)
つて、
357
言霊戦
(
ことたません
)
を
開始
(
かいし
)
して
居
(
を
)
ります。
358
其
(
その
)
御
(
お
)
蔭
(
かげ
)
で
毎日
(
まいにち
)
毎晩
(
まいばん
)
吹
(
ふ
)
き
荒
(
すさ
)
ぶ
暴風
(
ばうふう
)
も
凪
(
な
)
ぎわたり、
359
それが
為
(
ため
)
土人
(
どじん
)
は
我々
(
われわれ
)
二人
(
ふたり
)
を
大変
(
たいへん
)
に
神
(
かみ
)
の
如
(
ごと
)
く
尊敬
(
そんけい
)
いたして
居
(
を
)
ります。
360
どこへ
行
(
い
)
つても
日輪
(
にちりん
)
さまの
御
(
お
)
光
(
ひかり
)
は
照
(
て
)
らせ
給
(
たま
)
ふ
如
(
ごと
)
く、
361
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
神徳
(
しんとく
)
の
満遍
(
まんべん
)
なく
行
(
ゆ
)
きわたつて
居
(
ゐ
)
らせられるには
感謝
(
かんしや
)
の
至
(
いた
)
りにたへませぬ。
362
何分
(
なにぶん
)
耄碌爺
(
まうろくおやぢ
)
の
私
(
わたくし
)
、
363
どうぞ
御
(
お
)
見捨
(
みすて
)
なく
御
(
ご
)
用命
(
ようめい
)
あらん
事
(
こと
)
を
懇願
(
こんぐわん
)
仕
(
つかまつ
)
ります』
364
と
言
(
い
)
ひ
終
(
をは
)
つて、
365
嬉
(
うれ
)
し
涙
(
なみだ
)
を
袖
(
そで
)
に
拭
(
ぬぐ
)
ふ。
366
言依別
(
ことよりわけ
)
『
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
示
(
しめ
)
し
通
(
どほ
)
り、
367
これで
愈
(
いよいよ
)
四魂
(
しこん
)
揃
(
そろ
)
ひました。
368
玉照彦
(
たまてるひこ
)
様
(
さま
)
、
369
玉照姫
(
たまてるひめ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
神力
(
しんりき
)
は
今更
(
いまさら
)
乍
(
なが
)
ら
恐
(
おそ
)
れ
入
(
い
)
る
外
(
ほか
)
はありませぬ。
370
いよいよ
願望
(
ぐわんもう
)
成就
(
じやうじゆ
)
して、
371
琉
(
りう
)
、
372
球
(
きう
)
の
宝玉
(
ほうぎよく
)
手
(
て
)
に
入
(
い
)
るは
目
(
ま
)
のあたりでせう』
373
常楠
(
つねくす
)
『
最早
(
もはや
)
九分
(
くぶ
)
九厘
(
くりん
)
まで、
374
竜神
(
りうじん
)
は
帰順
(
きじゆん
)
して
居
(
を
)
ります。
375
モウ
一
(
ひと
)
つ
執着心
(
しふちやくしん
)
さへ
取
(
と
)
れれば
渡
(
わた
)
して
呉
(
く
)
れるでせう。
376
我々
(
われわれ
)
は
若彦
(
わかひこ
)
さまと
共
(
とも
)
に
能
(
あた
)
ふ
限
(
かぎ
)
りの
最善
(
さいぜん
)
のベストを
尽
(
つく
)
して
来
(
き
)
ましたがモウ
此
(
この
)
上
(
うへ
)
は
教主
(
けうしゆ
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
力
(
ちから
)
を
借
(
か
)
りるより
仕方
(
しかた
)
がありませぬ』
377
若彦
(
わかひこ
)
『
如何
(
いか
)
に
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
仕組
(
しぐみ
)
だと
云
(
い
)
つても、
378
かような
所
(
ところ
)
で
教主
(
けうしゆ
)
様
(
さま
)
にお
目
(
め
)
にかかるとは、
379
今
(
いま
)
の
今迄
(
いままで
)
、
380
神
(
かみ
)
ならぬ
身
(
み
)
の
存
(
ぞん
)
じて
居
(
を
)
りませなんだ。
381
アヽ
人間
(
にんげん
)
は
脆
(
もろ
)
いもので
御座
(
ござ
)
いますワイ。
382
現
(
げん
)
に
目
(
め
)
の
前
(
まへ
)
に
居
(
を
)
る
国依別
(
くによりわけ
)
さまにさへ
瞞
(
だま
)
された
位
(
くらゐ
)
で
御座
(
ござ
)
いますから』
383
国依別
(
くによりわけ
)
『クツクツクツ、
384
ウツプーツ』
385
と
吹
(
ふ
)
き
出
(
だ
)
して
居
(
を
)
る。
386
言依別
(
ことよりわけ
)
『
国依別
(
くによりわけ
)
さま、
387
此
(
この
)
島
(
しま
)
へ
来
(
き
)
た
以上
(
いじやう
)
は
余程
(
よほど
)
謹厳
(
きんげん
)
の
態度
(
たいど
)
を
持
(
も
)
つて
居
(
ゐ
)
て
貰
(
もら
)
はぬと、
388
中々
(
なかなか
)
強敵
(
きやうてき
)
ですから、
389
茶目
(
ちやめ
)
式
(
しき
)
所
(
どころ
)
ぢやありませぬぞ』
390
国依別
(
くによりわけ
)
『
左様
(
さやう
)
で
御座
(
ござ
)
います。
391
斯様
(
かやう
)
な
所
(
ところ
)
で
茶目坊
(
ちやめばう
)
をやつても、
392
サツパリ
茶目
(
ちやめ
)
ですから、
393
只今
(
ただいま
)
限
(
かぎ
)
り
左様
(
さやう
)
なことは
茶目
(
ちやめ
)
に
致
(
いた
)
しますから、
394
どうぞ
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
下
(
くだ
)
さいますな』
395
言依別
(
ことよりわけ
)
『
仕方
(
しかた
)
のない
面白
(
おもしろ
)
い
男
(
をとこ
)
だなア』
396
若彦
(
わかひこ
)
、
397
肩
(
かた
)
をゆすり
乍
(
なが
)
ら、
398
可笑
(
をか
)
しさをこらへて、
399
若彦
『キユーキユー』
400
と
言
(
い
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
401
常楠
(
つねくす
)
は
何
(
なに
)
が
可笑
(
をか
)
しい、
402
若
(
わか
)
い
奴
(
やつ
)
と
云
(
い
)
ふ
者
(
もの
)
は、
403
箸
(
はし
)
のこけたのでも
可笑
(
をか
)
しがるものだ……と
云
(
い
)
ふ
様
(
やう
)
な
態度
(
たいど
)
で
真面目
(
まじめ
)
くさつて
控
(
ひか
)
へて
居
(
ゐ
)
た。
404
漸
(
やうや
)
くにして
夜
(
よ
)
は
明
(
あ
)
け
放
(
はな
)
れた。
405
言依別
(
ことよりわけの
)
命
(
みこと
)
は
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
外
(
ほか
)
にチヤール、
406
ベース
外
(
ほか
)
四五
(
しご
)
人
(
にん
)
の
土人
(
どじん
)
を
引率
(
ひきぐ
)
し、
407
ハーリス
山
(
ざん
)
の
谷道
(
たにみち
)
を
若彦
(
わかひこ
)
の
案内
(
あんない
)
にて
進
(
すす
)
む
事
(
こと
)
となつた。
408
(
大正一一・七・二五
旧六・二
松村真澄
録)
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